説明

ピロロ[4,3,2−de]キノリン−8−アミン化合物ならびにそれらの調製および使用方法

本発明は、式(I)の化合物、それらを使用する方法、それらを調製するための方法およびピロロ[4,3,2−de]キノリン−8−アミン化合物を調製することができる単離された放線菌株に関する。
【図1】


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ピロロ[4,3,2−de]キノリン−8−アミン化合物ならびにそれらの使用および調製方法に関する。本発明は、ピロロ[4,3,2−de]キノリン−8−アミン化合物を産生することができる単離された放線菌種にも関する。
【背景技術】
【0002】
海生の植物および動物に由来する多環式芳香族アルカロイドは、様々な生物学的活性を示すことが明らかにされている。例えば、五環式ピロロアクリジン化合物であるプラキニジンは、バヌアツの赤い海綿、Plakortisに由来し、動物において駆虫活性を有することが明らかにされている(米国特許第4,959,370号)。
【0003】
リンホスチンは、ストレプトマイセス属(genus Streptomyces)に属する土壌細菌により産生されるピロロ[4,3,2−de]キノリン−8−アミンであり、免疫抑制活性を有することが示唆されている(米国特許第5,843,955号および第6,815,449号)。リンホスチンは、下記の構造:
【0004】
【化1】

を有する。
【0005】
米国特許第6,815,449号は、リンホスチンから誘導される合成類似体について記載しており、それらの大部分は、分子の4位において修飾されている。リンホスチンの6位における唯一の変形は、リンパ球阻害活性に10倍近い低下をもたらした(米国特許第6,815,449号の表3における化合物番号1を27と比較されたい)。
【0006】
出願者らは、驚いたことに、mTORの強力な阻害活性を示す新規ピロロ[4,3,2−de]キノリン−8−アミン化合物を開発した。mTORは、細胞成長、細胞増殖、細胞運動、細胞生存、タンパク質合成、および転写を調節し、それ故に様々な癌経路に関与しているセリン/スレオニンキナーゼである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、癌などの異常細胞増殖を伴う疾患の治療において使用するための新規ピロロ[4,3,2−de]キノリン−8−アミン化合物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様は、式I:
【0009】
【化2】

(式中、
は、CH=CH−OCHまたは(CHOHであり、
は、C〜Cアルキルであり、
ただし、Rが、メチルである場合、Rは、(CHOHである)のピロロ[4,3,2−de]キノリン−8−アミン化合物、もしくは
その互変異性体;その立体異性体;またはそのような化合物、立体異性体もしくは互変異性体の薬学的に許容できる塩を提供する。
【0010】
本発明の別の態様は、式Iの化合物もしくは互変異性体、立体異性体またはそのような化合物、立体異性体もしくは互変異性体の薬学的に許容できる塩および薬学的に許容できる担体を含む医薬組成物を提供する。
【0011】
本発明の別の態様は、式Iの単離された化合物、またはその互変異性体;その立体異性体;またはそのような化合物、立体異性体もしくは互変異性体の薬学的に許容できる塩を含む組成物を提供する。
【0012】
本発明の別の態様は、受託番号NRRL50168またはNRRL50167を有する単離された放線菌株を提供する。
【0013】
本発明の別の態様は、受託番号NRRL50168またはNRRL50167を有する放線菌株により産生され、ただし、リンホスチンではない単離されたピロロ[4,3,2−de]キノリン−8−アミン化合物、該化合物の互変異性体、または該化合物もしくは互変異性体の薬学的に許容できる塩を提供する。
【0014】
本発明の別の態様は、
発酵液を形成するための塩を含む成長培地中で寄託番号NRRL50168またはNRRL50167を有する放線菌株を発酵させるステップであって、ピロロ[4,3,2−de]キノリン−8−アミン化合物が発酵液中に形成されるステップと、
場合により、ピロロ[4,3,2−de]キノリン−8−アミン化合物を精製するステップとを含む、
(a)ピロロ[4,3,2−de]キノリン−8−アミン化合物を調製するための方法、または(b)方法により調製され、ただし、リンホスチンではないピロロ[4,3,2−de]キノリン−8−アミン化合物もしくは互変異性体、立体異性体またはそのような化合物、立体異性体もしくは互変異性体の薬学的に許容できる塩を提供する。
【0015】
本発明の別の態様は、
(E)−N−(8−アミノ−4−(3−メトキシアクリロイル)ピロロ[4,3,2−de]キノリン−6−イル)−プロピオンアミド;
(E)−N−(8−アミノ−4−(3−メトキシアクリロイル)ピロロ[4,3,2−de]キノリン−6−イル)イソブチルアミド;
(E)−N−(8−アミノ−4−(3−メトキシアクリロイル)ピロロ[4,3,2−de]キノリン−6−イル)−3−メチルブタンアミド;
(E)−N−(8−アミノ−4−(3−メトキシアクリロイル)ピロロ[4,3,2−de]キノリン−6−イル)−2−メチルブタンアミド;
N−(8−アミノ−4−(3−ヒドロキシプロパノイル)ピロロ[4,3,2−de]キノリン−6−イル)プロピオンアミド;
N−(8−アミノ−4−(3−ヒドロキシプロパノイル)ピロロ[4,3,2−de]キノリン−6−イル)イソブチルアミド;
N−(8−アミノ−4−(3−ヒドロキシプロパノイル)ピロロ[4,3,2−de]キノリン−6−イル)−3−メチルブタンアミド;
N−(8−アミノ−4−(3−ヒドロキシプロパノイル)ピロロ[4,3,2−de]キノリン−6−イル)−2−メチルブタンアミド;
N−(8−アミノ−4−(3−ヒドロキシプロパノイル)ピロロ[4,3,2−de]キノリン−6−イル)アセトアミドからなる群から選択される化合物;もしくは
その互変異性体;その立体異性体;またはそのような化合物、立体異性体もしくは互変異性体の薬学的に許容できる塩を提供する。
【0016】
本発明の別の態様は、mTORを阻害する方法またはmTORに関係している疾患、特に癌に罹患している患者を治療する方法を提供する。
【0017】
本発明の別の態様は、受託番号NRRL50168またはNRRL50167を有する単離された放線菌株を提供する。本発明は、前記株により産生される化合物および組成物ならびに式Iの化合物を調製するための方法も提供する。
【0018】
本発明の他の目的、特徴および利点は、下記の詳細な説明から明らかになるであろう。しかしながら、本発明の精神および範囲に包含される様々な変更形態および修正形態が、この詳細な説明から当業者に明らかになるので、詳細な説明および具体例は、本発明の好ましい実施形態を示しているとはいえ、例示のみのために示されていると理解するべきである。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1A】放線菌株DPJ−0019(受託番号NRRL50168)の16S rRNA遺伝子のほぼ完全なポリヌクレオチドDNA配列(配列番号1)を示す図である。
【図1B】DPJ−0024(受託番号NRRL50167)の16S rRNA遺伝子のほぼ完全なポリヌクレオチドDNA配列(配列番号2)を示す図である。
【図1C】サリニスポラアレニコラ(Salinispora arenicola)またはサリニスポラトロピカ(Salinispora tropica)rRNA 16S rRNA遺伝子配列中には存在しない、DPJ−0024の16S rRNA遺伝子における保存DNA配列(配列番号3)を示す図である。
【図2】DPJ−0019およびDPJ−0024の、2種の現在認められているサリニスポラ属種(Salinispora spp.)、サリニスポラアレニコラ(Salinispora arenicola)およびサリニスポラトロピカ(Salinispora tropica)の株との系統発生的関係を説明している図である。系統樹は、完全な16S−23S遺伝子間スペーサーrDNA配列で作成した。近隣結合法を使用して距離を計算した。ブートストラップ値は、1000個の複製で計算されたが、その値が50%以上である場合にそれらのそれぞれの節点に示されている。アクチノマズラマズレ(Actinomadura madurae)を外集団として使用した。
【図3】サリニスポラ属種(Salinispora spp.)、サリニスポラアレニコラ(S.arenicola)(配列番号6)およびサリニスポラトロピカ(S.tropica)(配列番号7)からの16S rRNA遺伝子のポリヌクレオチドDNA配列をDPJ−0024(配列番号2)およびDPJ−0019(配列番号1)と比較するアラインメントの図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
定義:
「アルキル」とは、1〜6個の炭素原子(C〜Cアルキル)、好ましくは、1〜4個の炭素原子(C〜Cアルキル)を有する一価の飽和脂肪族ヒドロカルビル基を指す。この用語は、一例として、メチル(CH−)、エチル(CHCH−)、n−プロピル(CHCHCH−)、イソプロピル((CHCH−)、n−ブチル(CHCHCHCH−)、イソブチル((CHCHCH−)、sec−ブチル((CH)(CHCH)CH−)、およびt−ブチル((CHC−)などの直線または分岐したヒドロカルビル基を包含する。
【0021】
「ヒドロキシ」とは、基−OHを指す。
【0022】
「メトキシ」とは、基−OCHを指す。
【0023】
「立体異性体」とは、1つまたは複数の立体中心においてキラリティーまたは原子の接続性が異なる化合物を指す。立体異性体は、鏡像異性体、ジアステレオマーならびにシス−トランス(E/Z)異性を包含する。
【0024】
本明細書中の様々な場所において、化合物の置換基は、群または範囲で開示される。説明は、そのような群および範囲のメンバーの各々およびすべての個々のサブコンビネーションを包含することが具体的に意図されている。例えば、「C1〜4アルキル」という用語は、C、C、C、C、C1〜4、C1〜3、C1〜2、C2〜4、C2〜3およびC3〜4を個々に開示していることが具体的に意図されている。
【0025】
「互変異性体」とは、エノール−ケトおよびイミン−エナミン互変異性体、またはイミダゾール、ベンゾイミダゾール、トリアゾール、およびテトラゾールなどの環−NH−部分および環=N−部分に接続している環原子を含有するヘテロアリール基の互変異性形態などの、プロトンの位置が異なる化合物の交互に切り替わる形態を指す。
【0026】
「患者」または「対象」とは、哺乳動物を指し、ヒトおよびイヌ、ネコ、マウス、ラット、ウシ、ウサギおよびサルなどの非ヒト哺乳動物、好ましくは、ヒトを包含する。
【0027】
本明細書で使用されるように、「単離された」化合物は、例えば、約95%純度を超える実質的に純粋な形態か、野生型放線菌株の存在もそれとの接触もないかのどちらかである化合物である。「単離された」株は、その自然の環境から取り出されかつ/または発酵用の成長培地中にある株を示す。
【0028】
本明細書で使用されるように、細菌株の「発酵すること」または「発酵」という用語は、その株の培養および/またはピロロ[4,3,2−de]キノリン−8−アミン化合物の放線菌産生などの、化合物の生合成産生の円滑化を指す。
【0029】
「ピロロ[4,3,2−de]キノリン−8−アミン」化合物は、下記のコア構造
【0030】
【化3】

を有する。
【0031】
「薬学的に許容できる塩」とは、化合物の薬学的に許容できる塩を指し、塩は、当技術分野においてよく知られている様々な有機および無機の対イオンから誘導され、ほんの一例として、ナトリウム、アルミニウム、リチウム、亜鉛、ジエタノールアミン塩、カリウム、カルシウム、マグネシウム、アンモニウム、およびテトラアルキルアンモニウム;ならびに、分子が塩基性官能基を含有する場合に、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、硝酸塩、硫酸塩、重硫酸塩、リン酸塩、酸リン酸塩、イソニコチン酸塩、酢酸塩、乳酸塩、サリチル酸塩、クエン酸塩、酒石酸塩、パントテン酸塩、重酒石酸塩、アスコルビン酸塩、コハク酸塩、マレイン酸塩、ゲンチシン酸塩、フマル酸塩、グルコン酸塩、グルクロン酸塩、糖酸塩、ギ酸塩、安息香酸塩、ベシル酸塩、グルタミン酸塩、メタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩およびパモ酸塩(すなわち、1,1’−メチレン−ビス−(2−ヒドロキシ−3−ナフトエート))塩などの有機または無機の酸の塩を包含する。本発明のある種の化合物は、様々なアミノ酸とも薬学的に許容できる塩を形成することができる。薬学的に許容できる塩に関する総説については、参照により本明細書に組み込まれているBERGEら、66 J.PHRM.SCI.1〜19(1977)を参照されたい。
【0032】
薬学的に許容できる塩は、式(I)の化合物などの化合物を、塩酸、臭化水素酸、酢酸、リン酸、ホウ酸、過塩素酸、酒石酸、マレイン酸、クエン酸、メタンスルホン酸、アスコルビン酸、ヨウ化ナトリウムなどの酸または塩と接触させることにより調製される。用いられる溶媒は、アセトン、ジエチルケトン、メチルエチルケトンなどのケトンまたはそれらの混合物、メタノール、エタノール、n−ヘキサン、酢酸エチル、ベンゼン、ジエチルアミン、ホルムアルデヒド、クロロホルム、ジクロロメタンまたはそれらの混合物から選択することができる。
【0033】
対象における疾患の「治療すること」または「治療」とは、疾患を阻害するかその発生を止めること;疾患の症状を改善すること;または疾患の退行を引き起こすことを指す。したがって、本明細書で使用されるような「癌の治療」は、癌に関係している症状の改善を包含する。
【0034】
「mTOR活性を変調すること」とは、mTORキナーゼに関係しているプロセスまたはシグナル伝達事象に影響を与えること(すなわち、阻害または刺激)を指す。
【0035】
「ナトリウムの非存在」への言及は、ナトリウム金属それ自体か任意のナトリウム含有化合物(例えば、塩化ナトリウム)の非存在を示す。
【0036】
本明細書で使用されるように、「薬学的に許容できる担体」とは、任意のタイプの無毒性で不活性な固体、半固体または液体の充填剤、希釈剤、カプセル化材料または製剤化助剤を意味する。薬学的に許容できる担体の役割を果たすことができる材料の一部の例は、ラクトース、グルコースおよびスクロースなどの糖;トウモロコシデンプンおよびジャガイモデンプンなどのデンプン;セルロースならびにカルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロースおよびセルロースアセテートなどのその誘導体;粉末トラガカント;麦芽;ゼラチン;タルク;カカオ脂および坐剤ワックスなどの賦形剤;ピーナッツ油、綿実油などの油;ベニバナ油;ゴマ油;オリーブ油;トウモロコシ油およびダイズ油;プロピレングリコールなどのグリコール;オレイン酸エチルおよびラウリン酸エチルなどのエステル;寒天;水酸化マグネシウムおよび水酸化アルミニウムなどの緩衝剤;アルギン酸;発熱物質を含まない水;等張食塩水;リンゲル液;エチルアルコール、およびリン酸緩衝液、ならびにラウリル硫酸ナトリウムおよびステアリン酸マグネシウムなどの無毒性の適合性滑沢剤、ならびに着色剤、放出剤、コーティング剤、甘味剤、矯味剤および着香剤、保存剤および抗酸化剤であり、それらは、製剤者(formulator)の判断に従って組成物中に存在することもある。他の適当な薬学的に許容できる賦形剤は、参照により本明細書に組み込まれている「Remington’s Pharmaceutical Sciences」、Mack Pub.Co.、New Jersey、1991に記載されている。
【0037】
「DPJ−0019」という株は、Agricultural Research Service Culture Collection(NRRL)受託番号NRRL50168を割り当てられている。「DPJ−0024」という株は、Agricultural Research Service Culture Collection(NRRL)受託番号NRRL50167を割り当てられている。
【0038】
本発明の一態様は、式I:
【0039】
【化4】

(式中、
は、CH=CH−OCHまたは(CHOHであり、
は、C〜Cアルキルであり、
ただし、Rが、メチルである場合、Rは、(CHOHである)の化合物、もしくは
その互変異性体;その立体異性体;またはそのような化合物、立体異性体もしくは互変異性体の薬学的に許容できる塩を提供する。
【0040】
別の実施形態において、Rは、CH=CH−OCHである。別の実施形態において、Rは、CH=CH−OCHであり、Rは、エチル、イソプロピル、イソブチルおよびsec−ブチルである。別の実施形態において、Rは、C〜Cアルキルである。別の実施形態において、Rは、(CHOHである。別の実施形態において、Rは、(CHOHであり、Rは、メチルである。別の実施形態において、Rは、(CHOHであり、Rは、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、イソブチルおよびsec−ブチルからなる群から選択される。別の実施形態において、Rは、イソプロピルである。別の実施形態において、Rは、CH=CH−OCHであり、Rは、エチルまたはイソプロピルである。別の実施形態において、Rは、(CHOHであり、Rは、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、イソブチルまたはsec−ブチルである。
【0041】
本発明の別の態様は、
(E)−N−(8−アミノ−4−(3−メトキシアクリロイル)ピロロ[4,3,2−de]キノリン−6−イル)−プロピオンアミド;
(E)−N−(8−アミノ−4−(3−メトキシアクリロイル)ピロロ[4,3,2−de]キノリン−6−イル)イソブチルアミド;
(E)−N−(8−アミノ−4−(3−メトキシアクリロイル)ピロロ[4,3,2−de]キノリン−6−イル)−3−メチルブタンアミド;
(E)−N−(8−アミノ−4−(3−メトキシアクリロイル)ピロロ[4,3,2−de]キノリン−6−イル)−2−メチルブタンアミド;
N−(8−アミノ−4−(3−ヒドロキシプロパノイル)ピロロ[4,3,2−de]キノリン−6−イル)プロピオンアミド;
N−(8−アミノ−4−(3−ヒドロキシプロパノイル)ピロロ[4,3,2−de]キノリン−6−イル)イソブチルアミド;
N−(8−アミノ−4−(3−ヒドロキシプロパノイル)ピロロ[4,3,2−de]キノリン−6−イル)−3−メチルブタンアミド;N−(8−アミノ−4−(3−ヒドロキシプロパノイル)ピロロ[4,3,2−de]キノリン−6−イル)−2−メチルブタンアミド;N−(8−アミノ−4−(3−ヒドロキシプロパノイル)ピロロ[4,3,2−de]キノリン−6−イル)アセトアミドからなる群から選択される化合物もしくは
その互変異性体;その立体異性体;またはそのような化合物、立体異性体もしくは互変異性体の薬学的に許容できる塩を提供する。
【0042】
本発明の別の態様は、薬学的に許容できる担体および本明細書に記載されている式Iの化合物;もしくは
その互変異性体;その立体異性体;またはそのような化合物、立体異性体もしくは互変異性体の薬学的に許容できる塩を含む医薬組成物を提供する。
【0043】
本発明の別の実施形態は、本明細書に記載されている単離された式Iの化合物;もしくは
その互変異性体;その立体異性体;またはそのような化合物、立体異性体もしくは互変異性体の薬学的に許容できる塩を含む組成物を提供する。
【0044】
本発明の別の実施形態は、配列番号1に対して少なくとも99.9%の相同性を含む16S rRNA遺伝子配列を特徴とする単離された放線菌株であって、ナトリウムの非存在下で成長することができる放線菌株を提供する。
【0045】
本発明の別の実施形態は、Agricultural Research Service Culture Collection(NRRL)受託番号NRRL50168を有する単離された放線菌を提供する。
【0046】
本発明の別の実施形態は、Agricultural Research Service Culture Collection(NRRL)受託番号NRRL50168を有する放線菌株により産生され、ただし、リンホスチンではない本明細書に記載の式Iの化合物、該化合物の互変異性体、または該化合物もしくは互変異性体の薬学的に許容できる塩を提供し、化合物は、より詳細な実施形態において、式Iの化合物は、
(E)−N−(8−アミノ−4−(3−メトキシアクリロイル)ピロロ[4,3,2−de]キノリン−6−イル)−プロピオンアミド;
(E)−N−(8−アミノ−4−(3−メトキシアクリロイル)ピロロ[4,3,2−de]キノリン−6−イル)イソブチルアミド;
(E)−N−(8−アミノ−4−(3−メトキシアクリロイル)ピロロ[4,3,2−de]キノリン−6−イル)−3−メチルブタンアミド;
(E)−N−(8−アミノ−4−(3−メトキシアクリロイル)ピロロ[4,3,2−de]キノリン−6−イル)−2−メチルブタンアミド;
N−(8−アミノ−4−(3−ヒドロキシプロパノイル)ピロロ[4,3,2−de]キノリン−6−イル)プロピオンアミド;
N−(8−アミノ−4−(3−ヒドロキシプロパノイル)ピロロ[4,3,2−de]キノリン−6−イル)イソブチルアミド;
N−(8−アミノ−4−(3−ヒドロキシプロパノイル)ピロロ[4,3,2−de]キノリン−6−イル)−3−メチルブタンアミド;
N−(8−アミノ−4−(3−ヒドロキシプロパノイル)ピロロ[4,3,2−de]キノリン−6−イル)−2−メチルブタンアミド;および
N−(8−アミノ−4−(3−ヒドロキシプロパノイル)ピロロ[4,3,2−de]キノリン−6−イル)アセトアミド;もしくは
その互変異性体;その立体異性体;またはそのような化合物、立体異性体もしくは互変異性体の薬学的に許容できる塩からなる群から選択される。
【0047】
本発明の別の実施形態は、配列番号2に対して少なくとも99.9%の相同性を含み、ただし、配列番号3を含む16S rRNA遺伝子配列を特徴とする単離された放線菌株を提供する。
【0048】
本発明の別の実施形態は、Agricultural Research Service Culture Collection(NRRL)受託番号NRRL50167を有する単離された放線菌株を提供する。
【0049】
本発明の別の実施形態は、Agricultural Research Service Culture Collection(NRRL)受託番号NRRL50167を有する放線菌株により産生され、ただし、リンホスチンではない単離されたピロロ[4,3,2−de]キノリン−8−アミン化合物、該化合物の互変異性体、または該化合物もしくは互変異性体の薬学的に許容できる塩を提供する。
【0050】
本発明の別の実施形態は、本明細書に記載されている単離された式Iの化合物、該化合物の互変異性体、または該化合物もしくは互変異性体の薬学的に許容できる塩を提供し、化合物は、本明細書に記載されている放線菌株により産生される。より詳細な実施形態において、式Iの化合物は、
(E)−N−(8−アミノ−4−(3−メトキシアクリロイル)ピロロ[4,3,2−de]キノリン−6−イル)−プロピオンアミド;
(E)−N−(8−アミノ−4−(3−メトキシアクリロイル)ピロロ[4,3,2−de]キノリン−6−イル)イソブチルアミド;
(E)−N−(8−アミノ−4−(3−メトキシアクリロイル)ピロロ[4,3,2−de]キノリン−6−イル)−3−メチルブタンアミド;
(E)−N−(8−アミノ−4−(3−メトキシアクリロイル)ピロロ[4,3,2−de]キノリン−6−イル)−2−メチルブタンアミド;
N−(8−アミノ−4−(3−ヒドロキシプロパノイル)ピロロ[4,3,2−de]キノリン−6−イル)プロピオンアミド;
N−(8−アミノ−4−(3−ヒドロキシプロパノイル)ピロロ[4,3,2−de]キノリン−6−イル)イソブチルアミド;
N−(8−アミノ−4−(3−ヒドロキシプロパノイル)ピロロ[4,3,2−de]キノリン−6−イル)−3−メチルブタンアミド;
N−(8−アミノ−4−(3−ヒドロキシプロパノイル)ピロロ[4,3,2−de]キノリン−6−イル)−2−メチルブタンアミド;および
N−(8−アミノ−4−(3−ヒドロキシプロパノイル)ピロロ[4,3,2−de]キノリン−6−イル)アセトアミド;もしくは
その互変異性体;その立体異性体;またはそのような化合物、立体異性体もしくは互変異性体の薬学的に許容できる塩からなる群から選択される。
【0051】
本発明の別の実施形態は、癌に罹患している患者を治療する方法であって、有効量の本明細書に記載されている式Iの化合物、もしくは互変異性体または薬学的に許容できるそれらの塩を投与することを含む方法を提供する。より詳細な実施形態において、式Iの化合物は、
(E)−N−(8−アミノ−4−(3−メトキシアクリロイル)ピロロ[4,3,2−de]キノリン−6−イル)−プロピオンアミド;
(E)−N−(8−アミノ−4−(3−メトキシアクリロイル)ピロロ[4,3,2−de]キノリン−6−イル)イソブチルアミド;
(E)−N−(8−アミノ−4−(3−メトキシアクリロイル)ピロロ[4,3,2−de]キノリン−6−イル)−3−メチルブタンアミド;
(E)−N−(8−アミノ−4−(3−メトキシアクリロイル)ピロロ[4,3,2−de]キノリン−6−イル)−2−メチルブタンアミド;
N−(8−アミノ−4−(3−ヒドロキシプロパノイル)ピロロ[4,3,2−de]キノリン−6−イル)プロピオンアミド;
N−(8−アミノ−4−(3−ヒドロキシプロパノイル)ピロロ[4,3,2−de]キノリン−6−イル)イソブチルアミド;
N−(8−アミノ−4−(3−ヒドロキシプロパノイル)ピロロ[4,3,2−de]キノリン−6−イル)−3−メチルブタンアミド;
N−(8−アミノ−4−(3−ヒドロキシプロパノイル)ピロロ[4,3,2−de]キノリン−6−イル)−2−メチルブタンアミド;および
N−(8−アミノ−4−(3−ヒドロキシプロパノイル)ピロロ[4,3,2−de]キノリン−6−イル)アセトアミド;もしくは
その互変異性体;その立体異性体;またはそのような化合物、立体異性体もしくは互変異性体の薬学的に許容できる塩からなる群から選択される。
【0052】
別の実施形態において、患者は、結腸癌、直腸癌、胃癌、甲状腺癌腫、腎細胞癌腫、舌の癌、膀胱癌腫(cilium carcinoma)、繊毛癌腫、肝癌、前立腺癌、子宮癌、咽頭癌、肺癌、乳癌、悪性黒色腫、肉芽腫、カポジ肉腫、脳癌、神経芽細胞腫、卵巣癌、精巣癌、膵癌、副腎腫、血管内皮腫、成人T細胞白血病(ATL)、慢性骨髄性白血病(CML)、急性骨髄性白血病(AML)または多発性骨髄腫に罹患している。
【0053】
本発明の別の実施形態は、mTORを阻害する方法であって、細胞を、本明細書に記載されているような式Iの化合物、その互変異性体;その立体異性体;またはそのような化合物、立体異性体もしくは互変異性体の薬学的に許容できる塩と接触させることを含む方法を提供する。
【0054】
本発明の別の実施形態は、mTORにより仲介される状態に罹患している患者を治療する方法であって、本明細書に記載されているような式Iの化合物、その互変異性体;その立体異性体;またはそのような化合物、立体異性体もしくは互変異性体の薬学的に許容できる塩を投与することを含む方法を提供する。
【0055】
本発明の別の態様は、ピロロ[4,3,2−de]キノリン−8−アミン化合物を調製するための方法であって、
発酵液を形成するための塩を含む成長培地中でAgricultural Research Service Culture Collection(NRRL)受託番号NRRL50168を有する放線菌株を発酵させるステップであり、ピロロ[4,3,2−de]キノリン−8−アミン化合物が発酵液中で形成されるステップと、
場合により、ピロロ[4,3,2−de]キノリン−8−アミン化合物を精製するステップとを含む方法を提供する。
【0056】
より詳細には、該方法は、接触液から化合物を抽出することをさらに含む。より詳細には、該方法は、
発酵液を遠心分離して上清およびペレットを形成させるステップと、
上清からペレットを分離するステップと、
ペレットからピロロ[4,3,2−de]キノリン−8−アミン化合物を抽出するステップとをさらに含む。
【0057】
方法の別の態様において、塩は、塩化ナトリウム(NaCl)ではない。より詳細には、塩は、塩化カリウム(KCl)である。別の実施形態において、塩は、塩化ナトリウム(NaCl)である。別の実施形態において、該方法は、接触ステップの前に、放線菌株からの細胞を含む組織サンプルをホモジナイズすることをさらに含む。別の実施形態において、該方法は、分離ステップの直後に細胞を溶解するステップをさらに含む。別の実施形態において、該方法は、抽出ステップの前にペレットを水溶液で洗浄することをさらに含む。別の実施形態において、抽出ステップは、ペレットを有機溶液と接触させることを含む。別の実施形態において、有機溶液は、酢酸エチルを含む。
【0058】
該方法のより詳細な実施形態は、精製ステップを含み、精製は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を含む。より詳細には、精製ステップは、逆相HPLCを含む。あるいはまたはさらに、精製ステップは、順相HPLCを含む、より詳細には、順相HPLCは、ジオールカラム上で行われる。より詳細には、順相は、トルエン/酢酸エチル混合物中にイソプロパノール約0%〜約10%を含む溶媒グラジエントシステムを含む。別の実施形態において、逆相HPLCは、ODSカラム上で行われる。より詳細には、逆相は、アセトニトリルおよび水を含む。
【0059】
別の実施形態において、精製ステップは、ジオールカラム上で行われる順相HPLCを含み、化合物は、
N−(8−アミノ−4−(3−ヒドロキシプロパノイル)ピロロ[4,3,2−de]キノリン−6−イル)プロピオンアミド;
N−(8−アミノ−4−(3−ヒドロキシプロパノイル)ピロロ[4,3,2−de]キノリン−6−イル)イソブチルアミド;
N−(8−アミノ−4−(3−ヒドロキシプロパノイル)ピロロ[4,3,2−de]キノリン−6−イル)−3−メチルブタンアミド;
N−(8−アミノ−4−(3−ヒドロキシプロパノイル)ピロロ[4,3,2−de]キノリン−6−イル)−2−メチルブタンアミド;および
N−(8−アミノ−4−(3−ヒドロキシプロパノイル)ピロロ[4,3,2−de]キノリン−6−イル)アセトアミド
からなる群から選択される。
【0060】
別の実施形態において、成長培地は、グルコースをさらに含む。別の実施形態において、成長培地は、ピロロ[4,3,2−de]キノリン−8−アミン化合物に特異的な前駆体をさらに含む。
【0061】
本発明の別の態様は、上に記載されている方法により調製され、ただし、リンホスチンではないピロロ[4,3,2−de]キノリン−8−アミン化合物を提供する。別の実施形態において、ピロロ[4,3,2−de]キノリン−8−アミン化合物は、
(E)−N−(8−アミノ−4−(3−メトキシアクリロイル)ピロロ[4,3,2−de]キノリン−6−イル)−プロピオンアミド;
(E)−N−(8−アミノ−4−(3−メトキシアクリロイル)ピロロ[4,3,2−de]キノリン−6−イル)イソブチルアミド;
(E)−N−(8−アミノ−4−(3−メトキシアクリロイル)ピロロ[4,3,2−de]キノリン−6−イル)−3−メチルブタンアミド;
(E)−N−(8−アミノ−4−(3−メトキシアクリロイル)ピロロ[4,3,2−de]キノリン−6−イル)−2−メチルブタンアミド;
N−(8−アミノ−4−(3−ヒドロキシプロパノイル)ピロロ[4,3,2−de]キノリン−6−イル)プロピオンアミド;
N−(8−アミノ−4−(3−ヒドロキシプロパノイル)ピロロ[4,3,2−de]キノリン−6−イル)イソブチルアミド;
N−(8−アミノ−4−(3−ヒドロキシプロパノイル)ピロロ[4,3,2−de]キノリン−6−イル)−3−メチルブタンアミド;
N−(8−アミノ−4−(3−ヒドロキシプロパノイル)ピロロ[4,3,2−de]キノリン−6−イル)−2−メチルブタンアミド;
N−(8−アミノ−4−(3−ヒドロキシプロパノイル)ピロロ[4,3,2−de]キノリン−6−イル)アセトアミド;もしくは
その互変異性体;その立体異性体;またはそのような化合物、立体異性体もしくは互変異性体の薬学的に許容できる塩からなる群から選択される。
【0062】
本発明の別の態様は、ピロロ[4,3,2−de]キノリン−8−アミン化合物を調製するための方法であって、
ホヤのディデムナムプロリフェルム(Didemnum proliferum)からの細胞を、接触液を形成するための塩を含む成長培地と接触させるステップと、
接触液を遠心分離して上清およびペレットを形成させるステップと、
上清からペレットを分離するステップと、
ペレットからピロロ[4,3,2−de]キノリン−8−アミン化合物を抽出するステップとを含む方法を提供する。
【0063】
より詳細には、該方法は、抽出ステップの後にピロロ[4,3,2−de]キノリン−8−アミン化合物を精製するステップをさらに含む。
【0064】
本発明の化合物は、望ましい場合に、従来の無毒性の薬学的に許容できる担体、補助剤、およびビヒクルを含有する用量単位製剤でヒトおよび他の動物に、経口で、非経口で、舌下で、エアゾール化または吸入スプレーにより、直腸に、大槽内に、膣内に、腹腔内に、口腔に、静脈内に、皮下に、髄腔内にまたは局所に投与することができる。局所投与は、経皮パッチ剤などの経皮投与またはイオン泳動装置の使用を含むこともある。本明細書で使用されるような非経口という用語は、皮下注射、静脈内、筋肉内、胸骨内注射、または注入技法を包含する。
【0065】
製剤化の方法は、当技術分野においてよく知られており、例えば、Remington:The Science and Practice of Pharmacy、Mack Publishing Company、Easton、Pa.、第19版(1995)に開示されている。本発明において使用するための医薬組成物は、無菌の発熱物質を含まない液体の溶液剤もしくは懸濁剤、コーティングされたカプセル剤、坐剤、凍結乾燥散剤、経皮パッチ剤の形態または当技術分野において知られている他の形態であってよい。
【0066】
注射用調製物、例えば、無菌の注射用水性または油性の懸濁剤は、適当な分散剤または湿潤剤および懸濁化剤を使用して知られている技術に従って製剤化することができる。無菌注射用調製物は、例えば、1,3−プロパンジオールまたは1,3−ブタンジオール中の溶液として、無毒性の非経口的に許容できる希釈剤または溶媒中の無菌の注射用の溶液、懸濁液または乳濁液であってもよい。用いることができる許容できるビヒクルおよび溶媒には、水、リンゲル液、U.S.P.および等張塩化ナトリウム溶液がある。さらに、無菌の固定油は、溶媒または懸濁化媒質として従来から用いられている。この目的のために、合成のモノグリセリドまたはジグリセリドを包含する任意の無刺激固定油を用いることができる。さらに、オレイン酸などの脂肪酸は、注射剤の調製に使用される。注射用製剤は、例えば、細菌保持フィルターに通して濾過することにより、または使用に先立って無菌水もしくは他の無菌注射用媒質に溶解もしくは分散させることができる無菌固体組成物の形態で滅菌剤を組み入れることにより滅菌することができる。
【0067】
薬物の効果を延ばすために、皮下または筋肉内の注射からの薬物の吸収を遅らせることが望ましいことが多い。このことは、水溶性の乏しい結晶性または非晶性の材料の液体懸濁液の使用により達成することができる。その場合、薬物の吸収速度は、その溶解速度に左右され、結晶サイズおよび結晶形態に左右されることがある。あるいは、非経口で投与された薬物形態の遅延吸収は、油ビヒクル中に薬物を溶解または懸濁させることにより達成することができる。注射用デポー形態は、ポリラクチド−ポリグリコリドなどの生体分解性ポリマー中で薬物のマイクロカプセル化マトリックスを形成することにより製造することができる。薬物のポリマーに対する比および用いられる特定のポリマーの性質に応じて、薬物放出速度を制御することができる。他の生体分解性ポリマーの例は、ポリ(オルトエステル)およびポリ(アンヒドリド)を包含する。デポー注射用製剤は、体組織と適合性であるリポソームまたはマイクロエマルジョン中に薬物を封入することにより調製することもできる。
【0068】
経口投与のための固体剤形は、カプセル剤、錠剤、丸剤、散剤、および顆粒剤を包含する。そのような固体剤形において、活性化合物は、少なくとも1つの不活性な薬学的に許容できる、クエン酸ナトリウムまたはリン酸二カルシウムなどの賦形剤または担体および/またはa)デンプン、ラクトース、スクロース、グルコース、マンニトール、およびケイ酸などの充填剤、b)例えば、カルボキシメチルセルロース、アルギネート、ゼラチン、ポリビニルピロリジノン、スクロース、およびアカシアなどの結合剤、c)グリセロールなどの加湿剤、d)寒天、炭酸カルシウム、ジャガイモまたはタピオカのデンプン、アルギン酸、ある種のケイ酸塩、および炭酸ナトリウムなどの崩壊剤、e)パラフィンなどの溶液緩染剤、f)四級アンモニウム化合物などの吸収促進剤、g)例えば、アセチルアルコールおよびモノステアリン酸グリセロールなどの湿潤剤、h)カオリンおよびベントナイト粘土などの吸収剤、およびi)タルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固体ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウム、およびそれらの混合物などの滑沢剤と混合される。カプセル剤、錠剤および丸剤の場合、剤形は、緩衝剤を含むこともある。
【0069】
類似のタイプの固体組成物は、ラクトースすなわち乳糖ならびに高分子量ポリエチレングリコールなどの賦形剤を使用する軟質および硬質の充填済みゼラチンカプセル剤において充填剤として用いられることもある。
【0070】
錠剤、カプセル剤、丸剤、および顆粒剤の固体剤形は、腸溶コーティングおよび医薬製剤技術においてよく知られている他のコーティングなどのコーティングおよびシェルと共に調製することができる。それらは、乳白剤を含有していてもよく、場合により、遅延方式で、腸管のある種の部分において1つまたは複数の活性成分のみを、または優先的に放出する組成物であってもよい。使用することができる包埋組成物の例は、ポリマー物質およびワックスを包含する。
【0071】
活性化合物は、上に述べられているような1つまたは複数の賦形剤と共にマイクロカプセル化形態であってもよい。錠剤、カプセル剤、丸剤、および顆粒剤の固体剤形は、腸溶コーティング、放出制御コーティングおよび医薬製剤技術においてよく知られている他のコーティングなどのコーティングおよびシェルと共に調製することができる。そのような固体剤形において、活性化合物は、スクロース、ラクトースまたはデンプンなどの少なくとも1つの不活性な希釈剤と混合されることがある。そのような剤形は、通常の実施におけるように、不活性な希釈剤以外の追加物質、例えば、錠剤化滑沢剤ならびにステアリン酸マグネシウムおよび微結晶性セルロースなどの他の錠剤化助剤を含むこともある。カプセル剤、錠剤および丸剤の場合、剤形は、緩衝剤を含むこともある。それらは、乳白剤を含有していてもよく、場合により、遅延方式で、腸管のある種の部分において1つまたは複数の活性成分のみを、または優先的に放出する組成物であってもよい。使用することができる包埋組成物の例は、ポリマー物質およびワックスを包含する。
【0072】
経口投与のための液体剤形は、薬学的に許容できるエマルジョン剤、マイクロエマルジョン剤、溶液剤、懸濁剤、シロップ剤およびエリキシル剤を包含する。活性化合物に加えて、液体剤形は、例えば、水または他の溶媒などの当技術分野において一般的に使用される不活性な希釈剤、可溶化剤およびエチルアルコール、イソプロピルアルコール、炭酸エチル、EtOAc、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ジメチルホルムアミド、油(特に、綿実油、ラッカセイ油、トウモロコシ油、胚芽油、オリーブ油、ヒマシ油、およびゴマ油)、グリセロール、テトラヒドロフルフリルアルコール、ポリエチレングリコールおよびソルビタンの脂肪酸エステル、ならびにそれらの混合物などの乳化剤を含有することがある。不活性な希釈剤の他に、経口組成物は、湿潤剤、乳化剤および懸濁化剤、甘味料、矯味剤、および着香剤を包含することもある。
【0073】
本発明の化合物の局所または経皮投与のための剤形は、軟膏剤、パスタ剤、クリーム剤、ローション剤、ゲル剤、散剤、溶液剤、スプレー剤、吸入剤またはパッチ剤を包含する。活性成分は、必要に応じて、薬学的に許容できる担体および任意の必要とされる保存剤または緩衝液と共に無菌条件下で混合される。眼科用製剤、点耳剤なども、本発明の範囲内にあることが企図されている。
【0074】
本発明の組成物は、液体エアゾールまたは吸入可能な乾燥粉末として送達するために製剤化することもできる。液体エアゾール製剤は、終末細気管支および呼吸細気管支へ送達することができる粒子サイズに大部分を噴霧化することができる。
【0075】
本発明の化合物の有効量は、一般的に、mTOR活性を検出可能に変調する、またはmTOR活性に関係しているかmTOR活性変調を受けやすい疾患の症状を緩和するのに十分な任意の量を包含する。有効投与量は、一般的に、単一投与量または分割投与量で宿主に投与される1日総投与量であるはずであり、例えば、1日につき体重1kg当たり0.001〜1000mg、より好ましくは、1日につき体重1kg当たり1.0〜30mgであってよい。容量単位組成物は、1日投与量を構成するためのその約数のような量を含有することができる。一般に、本発明による治療レジメンは、単一投与量または複数投与量で1日当たり本発明の1つまたは複数の化合物約10mg〜約2000mgをそのような治療を必要としている患者に投与することを含む。
【0076】
単一剤形を製造するために担体材料と組み合わせることができる活性成分の量は、治療される宿主および特定の投与様式に応じて異なるであろう。しかしながら、任意の特定の対象についての具体的な投与量レベルは、用いられる具体的な化合物、年齢、体重、一般的健康、性別、食事、投与の時間、投与の経路、排泄の速度、薬物組合せ、および治療を受けている特定の疾患の重症度を包含する様々な要因によって左右されるであろう。所与の状況についての治療有効量は、ルーチンな実験により容易に決定することができ、普通の臨床家の技術と判断の範囲内にある。
【0077】
本発明の別の態様において、本発明の1つまたは複数の化合物を包含するキットが提供される。代表的なキットは、本発明のmTOR阻害剤化合物(例えば、式Iの化合物)および有効量の本発明の化合物を投与することにより癌を治療するための指示書を包含する添付文書または他のラベリングを包含する。
【0078】
本発明は、説明のために本明細書に記載されている実施形態に限定されないが、上の開示の範囲内に入るようなそれらのすべての形態を包含することが理解される。
【0079】
実施例
寄託:放線菌株DPJ−0019およびDPJ−0024は、ブダペスト条約の条項により、Microbial Genomics and Bioprocessing Reserch Unit of the National Center for Agricultural Utillization Research(NCAUR)内にあるAgricultural Research Service(ARS)Culture Collectionに2008年8月14日に寄託された。NCAURの住所は、1815 N.University Street、Peoria、IL、61604である。DPJ−0019株は、特許受託番号NRRL50168を与えられた。DPJ−0024株は、特許受託番号NRRL50167を与えられた。
【実施例】
【0080】
(実施例1)
海生放線菌株DPJ−0024およびDPJ−0019の単離および同定。
細菌株DPJ−0024およびDPJ−0019は、Shishijima Island、Japanにおいてスキューバにより集められたホヤのディデムナムプロリフェルム(Didemnum proliferum)Kottから単離された。凍結サンプルから、内部コア組織120mgを無菌海水1mL中で浸軟させた。得られたホモジナイズされたスラリーを、2種の選択培地上にプレートした。プレートを、放線菌コロニーの存在について定期的に調べた。分離株を新たな寒天培地に移した。
【0081】
塩依存性成長試験を、ナトリウム、カリウム、セシウム、ルビジウム、およびリチウムを包含する異なる塩を添加した培地M1で行った。この試験の場合、DPJ−0024およびDPJ−0019株を、4日にわたって海塩を含有する液体培地中で成長させた。各株の菌糸を収集し、10.3%グルコースで3回洗浄し、同じ溶液中に再懸濁させた。各株10μLを、異なる塩を添加したM1寒天プレート上に広げ、4〜8週にわたって28℃にてインキュベートした。DPJ−0024のみが、0.4または0.45M NaClを添加したM1上で成長し、それが偏性ナトリウム要求株であることを示唆した。DPJ−0019の成長は、0.45M KClを添加したM1ならびに0.4または0.45M NaClを添加したM1上で観察された。0.45M KClのM1寒天からのDPJ−0019のさらなる継代培養は、0.45M KClの添加が、固体および液体のM1培地におけるDPJ−0019の成長を支えるのに十分であることを裏付けた。これらの結果は、DPJ−0019が、偏性ナトリウム要求株ではないことを示している。
【0082】
染色体DNAを、リゾチーム、SDS細胞溶解と、続く、フェノール/クロロホルム/イソアミルアルコール沈殿を使用してDPJ−0024およびDPJ−0019の寒天成長培養物から単離した。ほぼ完全な16S rRNAを、8FPLおよび1492FPLの部分プライマーを使用してPCR増幅させた。株DPJ−0024のほぼ完全な16S rRNA遺伝子配列(rDNA)は、GenBankデータベースにおけるサリニスポラアレニコラ(Salinispora arenicola)のそれと99.2%の相同性およびサリニスポラトロピカ(Salinispora tropica)のそれと99.4%の相同性を共有していた(図3におけるアラインメントを参照)。しかしながら、DPJ−0024 rDNAは、すべての現在報告されているサリニスポラ属(Salinispora)株において保存されている4つの独特な署名ヌクレオチドのうちの1つである198位(大腸菌(E.coli)16S rRNA配列の類似位置207に対応する)にアデノシンを有していない。DPJ−0019の16S rDNA配列は、GenBankデータベースにおけるサリニスポラアレニコラ(Salinispora arenicola)のそれと99.2%の相同性およびサリニスポラトロピカ(Salinispora tropica)のそれと99.6%の相同性を共有し、4つのサリニスポラ属(Salinispora)署名ヌクレオチドのすべてを有する(図3)。DPJ−0019およびDPJ−0024の16S−23S遺伝子間スペーサー領域rRNA遺伝子も、プライマー16S−1525F:GGTTGGATCCACCTCCTT(配列番号4)および23S−40R:TCCCACGTCCTTCATCGG(配列番号5)を使用することにより増幅させた。16S−23S遺伝子間スペーサー領域rDNA配列のアラインメントは、ClustalXで行われ、サリニスポラ属種(Salinispora species)のいくつかの配列を包含していた。アラインメントから、系統樹を構築し、系統発生的関係を証明した。明確な区別が、サリニスポラ属種(Salinispora sp.)とDPJ−0019およびDPJ−0024により構成される群の間に見いだされた(図2)。
【0083】
生理学的成長試験、16S rRNA遺伝子配列および16S−23S遺伝子間スペーサーrRNA遺伝子配列比較の結果は、DPJ−0024およびDPJ−0019が、成長のためのナトリウムの偏性必要条件および4つの独特な16S rRNA署名ヌクレオチドを示す今日公表されている属、サリニスポラ属種(Salinispora spp.)と関連していることを示した。しかしながら、DPJ−0024は、4つの独特な16S rRNA署名ヌクレオチドのうちの1つ(A207)を有していないという事実に基づき、これまでに報告されているサリニスポラ属(Salinispora)株と明らかに区別可能である。DPJ−0019は、サリニスポラ属種(Salinispora spp.)に独特な4つの16S rRNA署名ヌクレオチドのすべてを有するが、成長にとってのナトリウムの偏性必要条件を有していない。さらに、DPJ−0019およびDPJ−0024の16S−23S内部転写スペーサー配列は、これら2つの株が、報告されているサリニスポラ属種(Salinispora species)と区別可能である独特な群を形成していることを示している。したがって、DPJ−0019およびDPJ−0024は、他のサリニスポラ属種(Salinispora sp.)と密接に関連しているが、それらと区別可能である群として分類学的に分類されているミクロモノスポラセエ(Micromonosporaceae)科に属している。
【0084】
(実施例2)
株DPJ−0024およびDPJ−0019の発酵
種培養:寒天成長培養物のループまたは凍結保存培養物20μLを使用して無菌WSB4YE1/2SS培地7mLに接種し、72〜96時間にわたって28℃および200rpmにて回転振盪機で増殖させた。WSB4YE1/2SS培地は、pH7.0においてグルコース20g/L、WGE80M(小麦加水分解産物)5g/L、SE50MAF(大豆加水分解産物)15g/L、酵母エキス3g/L、可溶性デンプン10g/Lからなる。
【0085】
発酵:十分に成長したWSB4YE1/2SS種培養からの接種の後、株DPJ−0024およびDPJ−0019を、M48−9発酵培地50mLを含有する250mLのエルレンマイヤーフラスコ中で増殖させ、7〜14日にわたって28℃および200rpmにて回転振盪機で成長させた。M48−9培地は、pH7.0において可溶性デンプン30g/L、糖蜜20g/L、大豆ペプトン7.5g/L、酵母エキス2.5g/L、HP20−10%(w/v)からなる。
【0086】
LCMS分析のためのサンプル処理:培養ブロス2mLを遠心分離し、上清を捨て、ペレットを、酢酸エチルで2回(各2mL、合計4mL)抽出した(菌糸+HP20)。得られた抽出物を真空中で乾燥し、アセトニトリル200μLに再溶解し、小さなEP管に移した。混合物を、約5分にわたって最高速度にて遠心分離し、あらゆる沈殿をペレット化した。澄明な抽出物約100μLを、LC/MS用の挿入部分のある小さなガラスバイアルに移した。
【0087】
(実施例3)
DPJ−0019およびDPJ−0024により産生される三環式アルカロイド代謝産物の分析用LCMS分析。
サンプル(2μL)を、タンデムフォトダイオードアレーおよび質量スペクトル検出付きのHP1100型Hewlett Packard液体クロマトグラフを使用して分析した。化合物を、15分かけて移動相A(水中0.05%ギ酸)中の10〜50%移動相B(アセトニトリル中0.05%ギ酸)の線形グラジエントを使用するYMC ODS−A 2.0×100mm C18 HPLCカラム上で分割した。流速は、0.3ml/分とした。トータルスキャンUVクロマトグラムを、210〜600ナノメートルのスキャン範囲にわたって取得した。UVスペクトルを、2ナノメートルのスキャンステップで210〜600ナノメートルの実行を通じて取得した。UVフローセルから出た後、流出流をThermo Finnigan DECAイオントラップ質量分析計に入れた。質量分析計にエレクトロスプレーイオン化(ESI)プローブを取り付け、交互陽イオンおよび陰イオンフルスキャン(150〜1500質量単位)モードで動作させた。スプレーニードル電圧は、陽極については4.5kVおよび陰極については4.5kVに設定した。キャピラリー電圧は、それぞれ陽極および陰極について24Vおよび−47Vに設定した。キャピラリー温度は、275℃に設定した。窒素を、40単位に設定されたシースガスとして使用した。
【0088】
(実施例4)
三環式アルカロイドの単離および精製のための一般的スキーム。
表1に列挙されている化合物番号1、2、3、4、5、6、7、8および9、ならびにリンホスチンを、DPJ−0019の培養ブロスから精製した。発酵培養物を遠心分離し、化合物を、酢酸エチルを使用して発酵固体の水洗浄ペレットから抽出した。抽出物を減圧下で乾燥して残渣を形成させ、シリカゲル上に吸着させ、イソプロパノール:トルエン:酢酸エチル、5:32:63および10:30:60からなる洗浄液で脱着させた。洗浄液を別々に乾燥し、5%および10%の濃縮類似体混合物の残渣を形成させた。
【0089】
5%イソプロパノール残渣は、化合物番号1、2、3、4、5、8、9およびリンホスチンからなっていた。水中アセトニトリルグラジエント(水中20〜50%および10〜40%アセトニトリルグラジエント)を使用するODSカラム(YMC,Inc.からのYMC−Pack ODS A 250×20mm S−5μm 120Å)上の逆相高速液体クロマトグラフィー(流速8ml/分、検出254nm)により、きれいな化合物1および2ならびに化合物番号3、4、5、8および9を含有する3つの他の分画が得られた。1つの分画に対する2回目の逆相クロマトグラフィーにより、化合物番号4と5の混合物が得られた。他の2つの分画に対するトルエン:酢酸エチルの1:2混合物中イソプロパノールのグラジエント(トルエン:酢酸エチル1:2中0〜10%イソプロパノール)を使用するDiolカラムHPLC(YMC,Inc.からのYMC−Diol−120−NP 250×20mm S−5μm)を取り付けた順相HPLC(流速:10ml/分、検出460nm)により、純粋な化合物番号3および9が得られた。
【0090】
10%イソプロパノール分画は、同様に化合物番号6、7、8、9およびリンホスチンからなっていた。水中アセトニトリルグラジエントを使用するODSカラム上の初回逆相HPLC後に、3つの分画が生じた。そこで、これらの分画の各々を、トルエン:酢酸エチルの1:2混合物中イソプロパノールのグラジエントを使用するDiolカラム上でクロマトグラフにかけると、純粋な化合物番号6、7および8が得られた。
【0091】
(実施例5)
化合物の合成;
【0092】
【化5】

スキームAを参照すると、Pが、ベンジルオキシカルボニル(CBz)またはt−ブトキシカルボニル(BOC)などの適当な保護基である式1の化合物のエステル部分の還元と、続く、ベンジル位炭素の酸化により、式2のケトアルコールが得られる。この還元は、約0℃〜約60℃の温度にて、エーテル、THFなどの非プロトン性溶媒中で水素化ホウ素リチウムまたは水素化リチウムアルミニウムなどの別の適当な還元剤を使用して達成することができる。ベンジル位酸化は、2,3−ジクロロ−5,6−ジシアノベンゾキノン(DDQ)を使用して行うことができる。トリフルオロ酢酸タリウムなどの酸化剤を使用する式2のケトアルコールの芳香族酸化と、続く、DMFなどの溶媒中での硫酸銅による処理は、式3のフェノールを生成するであろう。
【0093】
式4の化合物を形成するための式3のケトンの還元と、続く、式4の化合物のベンゾ環の酸化により、式5のキノンが得られる。還元は、約0℃〜約60℃の温度にて、THFまたはエーテルなどの非プロトン性溶媒中でシアノ水素化ホウ素ナトリウムまたは水素化リチウムアルミニウムもしくは水素化ホウ素ナトリウムなどの別の適当な還元剤を使用して達成することができる。式4の化合物の酸化は、室温にて6.4〜7.0のpHの下に水性メタノールまたはアセトン中で(NO(SOK))(カリウムニトロソジスルファネート(potassium nitrosodisulfanate))を使用して達成することができる。
【0094】
式6の化合物を形成するための式5の化合物の芳香族基へのアミンの選択的導入、およびそれに続く得られる式6の化合物の両アミノ基の脱保護により、式7のジアミノキノンが得られる。アミンの導入は、ベンジルアミンの付加を介して達成することができる。この反応は、典型的には、約0℃〜約60℃の温度にてTHF、ピリジンなどの非プロトン性溶媒中で行われる。得られる式6の化合物の2つの保護されたアミノ基は、約1〜3気圧の圧力および約20℃〜約80℃の温度にて、当業者によく知られている標準的な水素化条件下、例えば、炭素上パラジウムの存在下で水素ガスとの反応を介して脱保護することができる。次いで、得られる式7のジアミノキノンは、約0℃〜約80℃の温度にて酸素または酸素富化空気との反応にかけることにより式8の三環式アルコールに変換することができる。
【0095】
式8の化合物の一級アルコール基は、tert−ブチルジメチルクロロシラン(TBDMSCl)またはtert−ブチルジメチルシリル(TBDMS)トリフレートなどの適当な試薬、または別の適当なシリル化剤を使用して選択的に保護し、さらなる誘導化に利用可能な遊離アミノ基とすることができる。この反応は、約0℃〜約60℃の温度にて、ジクロロメタンまたはTHFなどの非水性溶媒中で行うことができる。遊離アミノ基のアシル化は、カルボン酸または酸塩化物などのアシル化剤を使用して達成することができる。この反応に適している溶媒は、酸塩化物の場合のジクロロメタンまたはTHFおよび酸を使用するカップリング反応の場合のDMFまたはNMPなどの極性溶媒を包含する。温度は、約0℃〜約60℃の範囲であってよい。1−エチル−3−(3’−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDCI)またはジシクロヘキシルジイミド(DCC)などの適切なカップリング試薬により、Rが(C〜C)アルキルである式9の化合物が得られる。式9の化合物は、ピリジン中のトリフルオロメタンスルホン酸無水物(triflic anhydride)との反応と、続く、ジクロロメタンまたはTHFなどの溶媒中でのアジ化テトラブチルアンモニウム(nBuNN)またはアジ化ナトリウムとの反応により式10のアジドに変換することができる。対応するアミノ化合物を得るための式10のアジドの還元と、続く、当業者によく知られている方法を使用するノシル、Bocおよびトシルなどの多くの保護基のうちのいずれかによるアミノ基の保護により、対応する式11の化合物が得られる。アジド還元は、約0℃〜約60℃の温度にてTHFなどの非水性溶媒中で、水素化リチウムアルミニウムまたは当業者によく知られている別の適当な還元剤を使用して行うことができる。
【0096】
式11の保護された一級アルコールは、約0℃〜約60℃の温度にてTHFなどの溶媒中でフッ化テトラブチルアンモニウムまたはフッ化水素などのフッ素源を含有する試薬を使用するか塩酸などの鉱酸を使用して脱保護し、式12のアルコールを製造することができる。約0℃〜約60℃の温度にて、ジクロロメタンまたはピリジンなどの溶媒中でクロロクロム酸ピリジニウム(PCC)または三酸化クロムなどの試薬を使用する式12のアルコールの酸化により、対応する式13の化合物が得られる。
【0097】
約−78℃〜約60℃の温度にて、エーテルまたはTHFなどの非プロトン性溶媒中で式13の化合物を適切に保護されたリチウムエチニル化合物と反応させると、対応する式15のエチニルアルコールが得られ、次いで、酸化して式16のエチニルケトンを形成させることができる。酸化は、約0℃〜約60℃の温度にて、アセトンまたはジクロロメタンなどの溶媒中で二酸化マンガンまたはPCCなどの別の適当な酸化剤を使用して行うことができる。
【0098】
式16のエチニルケトンは、例えば、炭酸カリウムまたは別の適当な塩基の存在下に、塩基性条件下でのメタノールとの反応を介して対応する式17の化合物に変換することができる。この反応に適している溶媒は、メタノールを包含する。適当な温度は、約0℃〜約60℃の範囲である。当業者によく知られている方法を使用する得られる式17の化合物の脱保護により、式18のアセタールが得られ、次いで、モレキュラーシーブなどの脱水剤にかけることにより望ましい式Iの化合物に変換することができる。
【0099】
式Iのさらなる還元は、メタノールなどの溶媒中でPd/CまたはPt/Cのような試薬および水素ガスを使用する接触水素化を使用するかTHFまたはエーテルなどの溶媒中で水素化リチウムアルミニウムなどの水素化物源を使用して行うことができる。
【0100】
(実施例6)
mTORキナーゼアッセイ
精製酵素によるルーチンなヒトTORアッセイを、以下の通りDELFIAフォーマットにより96ウェルプレート中で行った。まず、酵素を、キナーゼアッセイ緩衝液(10mM Hepes(pH7.4)、50mM NaCl、50mM β−グリセロホスフェート、10mM MnCl、0.5mM DTT、0.25μMミクロシスチンLR、および100μg/mL BSA)中で希釈した。各ウェルに、希釈酵素12μLを、試験阻害剤0.5μLまたは対照ビヒクルジメチルスルホキシド(DMSO)と共に短時間混合した。キナーゼ反応を、ATPおよびHis6−S6Kを含有するキナーゼアッセイ緩衝液12.5μLを加え、800ng/mL FLAG−TOR、100μM ATPおよび1.25μM His6−S6Kを含有する25μLの最終反応体積とすることにより開始させた。反応プレートを、穏やかに振盪させながら室温にて2時間にわたって(1〜6時間にて直線的に)インキュベートし、次いで、停止緩衝液(20mM Hepes(pH7.4)、20mM EDTA、20mM EGTA)25μLを加えることにより終了させた。リン酸化(Thr−389)His6−S6KのDELFIA検出は、Europium−N1−ITC(Eu)(1抗体当たり10.4Eu、PerkinElmer)で標識されたモノクローナル抗P(T389)−p70S6K抗体(1A5、Cell Signaling)を使用して室温にて行った。DELFIAアッセイ緩衝液およびEnhancement溶液は、PerkinElmerから購入した。終了したキナーゼ反応混合物45μLを、PBS55μLを含有するMaxiDorpプレート(Nunc)に移した。His6−S6Kを2時間にわたって接続させた後、ウェルを吸引し、PBSで1回洗浄した。40ng/mL Eu−P(T389)−S6K抗体と共にDELFIAアッセイ緩衝液100μLを加えた。抗体結合を、穏やかにかき混ぜながら1時間にわたって続けた。次いで、ウェルを吸引し、0.05% Tween−20を含有するPBS(PBST)で4回洗浄した。DELFIA Enhancement溶液100μLを各ウェルに加え、プレートを、PerkinElmer Victorモデルプレートリーダーで読み取った。得られたデータを使用し、酵素活性および潜在的阻害剤による酵素阻害を計算した。mTOR IC50データ(μMで報告されている)は、表1に提供されている。
【0101】
【表1−1】

【0102】
【表1−2】

【0103】
(実施例7)
インビトロ細胞成長アッセイ
ヒト腫瘍系LNCapおよびMDA468の細胞を、1ウェル当たりおおよそ3000細胞にて96ウェル培養プレートにプレートした。プレートした翌日に、様々な投与量のmTOR阻害剤を細胞に加えた。薬物処理から3日後に、生存細胞密度を、十分に確立された細胞増殖アッセイである色素MTSの代謝的変換(生存細胞による)により決定した。アッセイは、キットと併せて供給されるプロトコルに従ってPromega Corp.(Madison、WI)から購入したアッセイキットを使用して行った。MTSアッセイ結果は、490nmにおいて吸光度を測定することにより96ウェルプレートリーダー中で読み取った。各処理の効果は、同じ培養プレート中で成長させたビヒクル処理細胞に対する成長の制御のパーセントとして計算した。成長の50%阻害をもたらした薬物濃度をIC50(μM)として決定した。表1中の化合物をスクリーニングしたところ、化合物1、2および4は、20〜300nMのLNCap IC50を示した。
【0104】
(実施例8)
腫瘍細胞mTOR阻害アッセイ
ヒト癌細胞(LNCap前立腺、U87MG神経膠腫)を、一晩にわたって成長培地中の6ウェルプレートにプレートした。細胞を、6時間にわたって様々な投与量のmTOR阻害剤で処理した。総細胞溶解物を、NuPAGE−LDSサンプル緩衝液(Invitrogen)を使用して調製し、超音波処理し、次いで、遠心分離により清澄化した。等量のタンパク質を、NuPAGE電気泳動システムを使用する免疫ブロッティング分析にかけ、AKT、S6K1、4EBP1などのmTOR経路マーカーに対するホスホ特異的(phospho−specific)抗体で探索した。表1中の化合物をスクリーニングしたところ、化合物1、2および4は、50〜800nMのMDA468 IC50を示した。
【受託番号】
【0105】
NRRL50167
NRRL50168


【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I:
【化1】

(式中、
は、CH=CH−OCHまたは(CHOHであり、
は、C〜Cアルキルであり、
ただし、Rが、メチルである場合、Rは、(CHOHである)の化合物、もしくは
その互変異性体;その立体異性体;またはそのような化合物、立体異性体もしくは互変異性体の薬学的に許容できる塩。
【請求項2】
がCH=CH−OCHである請求項1に記載の化合物、もしくは
その互変異性体;その立体異性体;またはそのような化合物、立体異性体もしくは互変異性体の薬学的に許容できる塩。
【請求項3】
がエチル、イソプロピル、n−プロピル、イソブチルまたはsec−ブチルである請求項1または2に記載の化合物、もしくは
その互変異性体;その立体異性体;またはそのような化合物、立体異性体もしくは互変異性体の薬学的に許容できる塩。
【請求項4】
が(CHOHである請求項1に記載の化合物、もしくは
その互変異性体;その立体異性体;またはそのような化合物、立体異性体もしくは互変異性体の薬学的に許容できる塩。
【請求項5】
がメチルである請求項4に記載の化合物、もしくは
その互変異性体;その立体異性体;またはそのような化合物、立体異性体もしくは互変異性体の薬学的に許容できる塩。
【請求項6】
がイソプロピルである請求項1から4のいずれか一項に記載の化合物、もしくは
その互変異性体;その立体異性体;またはそのような化合物、立体異性体もしくは互変異性体の薬学的に許容できる塩。
【請求項7】
がエチルである請求項1から4のいずれか一項に記載の化合物、もしくは
その互変異性体;その立体異性体;またはそのような化合物、立体異性体もしくは互変異性体の薬学的に許容できる塩。
【請求項8】
(E)−N−(8−アミノ−4−(3−メトキシアクリロイル)ピロロ[4,3,2−de]キノリン−6−イル)−プロピオンアミド;
(E)−N−(8−アミノ−4−(3−メトキシアクリロイル)ピロロ[4,3,2−de]キノリン−6−イル)イソブチルアミド;
(E)−N−(8−アミノ−4−(3−メトキシアクリロイル)ピロロ[4,3,2−de]キノリン−6−イル)−3−メチルブタンアミド;

(E)−N−(8−アミノ−4−(3−メトキシアクリロイル)ピロロ[4,3,2−de]キノリン−6−イル)−2−メチルブタンアミド;
N−(8−アミノ−4−(3−ヒドロキシプロパノイル)ピロロ[4,3,2−de]キノリン−6−イル)プロピオンアミド;
N−(8−アミノ−4−(3−ヒドロキシプロパノイル)ピロロ[4,3,2−de]キノリン−6−イル)イソブチルアミド;
N−(8−アミノ−4−(3−ヒドロキシプロパノイル)ピロロ[4,3,2−de]キノリン−6−イル)−3−メチルブタンアミド;
N−(8−アミノ−4−(3−ヒドロキシプロパノイル)ピロロ[4,3,2−de]キノリン−6−イル)−2−メチルブタンアミド;
N−(8−アミノ−4−(3−ヒドロキシプロパノイル)ピロロ[4,3,2−de]キノリン−6−イル)アセトアミドからなる群から選択される請求項1に記載の化合物、もしくは
その互変異性体;その立体異性体;またはそのような化合物、立体異性体もしくは互変異性体の薬学的に許容できる塩。
【請求項9】
薬学的に許容できる担体および前記請求項のいずれか一項に記載の化合物を含む医薬組成物。
【請求項10】
請求項1から8のいずれか一項に記載の単離された化合物、もしくは
その互変異性体;その立体異性体;またはそのような化合物、立体異性体もしくは互変異性体の薬学的に許容できる塩。
【請求項11】
Agricultural Research Service Culture Collection(NRRL)受託番号NRRL50168またはNRRL50167を有する単離された放線菌株。
【請求項12】
放線菌株Agricultural Research Service Culture Collection(NRRL)受託番号NRRL50168またはNRRL50167により産生され、
ただし、リンホスチンではないピロロ[4,3,2−de]キノリン−8−アミン化合物、前記化合物の互変異性体、または前記化合物もしくは互変異性体の薬学的に許容できる塩。
【請求項13】
請求項1から8のいずれか一項に記載の通りである請求項12に記載のピロロ[4,3,2−de]キノリン−8−アミン化合物。
【請求項14】
癌の治療において使用するための請求項1から10または12のいずれか一項に記載の化合物または組成物。
【請求項15】
癌を治療するための医薬品の製造における請求項1から10または12のいずれか一項に記載の化合物または組成物の使用。
【請求項16】
癌が、結腸癌、直腸癌、胃癌、甲状腺癌腫、腎細胞癌腫、舌の癌、膀胱癌腫、繊毛癌腫、肝癌、前立腺癌、子宮癌、咽頭癌、肺癌、乳癌、悪性黒色腫、肉芽腫、カポジ肉腫、脳癌、神経芽細胞腫、卵巣癌、精巣癌、膵癌、副腎腫、血管内皮腫、成人T細胞白血病(ATL)、慢性骨髄性白血病(CML)、急性骨髄性白血病(AML)または多発性骨髄腫である、請求項14または15に記載の化合物、組成物または使用。
【請求項17】
ピロロ[4,3,2−de]キノリン−8−アミン化合物を調製するための方法であって、
発酵液を形成するための塩を含む成長培地中でAgricultural Research Service Culture Collection(NRRL)受託番号NRRL50167またはNRRL50168を有する放線菌株を発酵させるステップであり、ピロロ[4,3,2−de]キノリン−8−アミン化合物が発酵液中で形成されるステップを含む方法。
【請求項18】
発酵液を遠心分離して上清およびペレットを形成させるステップと、
上清からペレットを分離するステップと、
ペレットからピロロ[4,3,2−de]キノリン−8−アミン化合物を抽出するステップとをさらに含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
(a)分離ステップ直後に細胞を溶解するステップ、
(b)抽出ステップの前にペレットを水溶液で洗浄するステップ、または
(c)抽出ステップ中にペレットを有機溶液と接触させるステップのうちの少なくとも1つをさらに含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
ODSカラム上で場合により行われる逆相HPLCおよび/またはジオールカラム上で場合により行われる順相HPLCから選択される高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を行うことを含む精製ステップをさらに含む、請求項17から19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
ピロロ[4,3,2−de]キノリン−8−アミン化合物が請求項1から8のいずれか一項に記載の通りである、請求項17から20のいずれか一項に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3−1】
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【図3−2】
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【図3−3】
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【図3−4】
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【公表番号】特表2012−500206(P2012−500206A)
【公表日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−523134(P2011−523134)
【出願日】平成21年8月12日(2009.8.12)
【国際出願番号】PCT/US2009/053543
【国際公開番号】WO2010/019659
【国際公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【出願人】(309040701)ワイス・エルエルシー (181)
【Fターム(参考)】