説明

ピンホール検出器

【課題】ピンホール検出器に被検出体が存在している様態で、短時間で精度の良い検出感度の校正が可能なピンホール検出器を提供することを目的としている。
【解決手段】走行する被検出板100ピンホール検出器であって、検出部1は、被検出板の幅方向に並置され、ピンホールの通過光を検出する複数の光電変換ユニット11と、予め設定された径の校正ピンホールが存在する校正サンプルを固定し、校正ピンホールを通過させる所定のパルス光を発光する校正光源部12cと、校正光源部を被検出板の幅方向に移動させ、予め設定された位置に停止させる校正光源駆動部12aとを備える校正サンプル設定部12とを備え、校正光源部を幅方向に移動し予め設定された複数の校正位置で停止させ、パルス光を発光させ、複数の光電変換ユニットの幅方向の検出感度の校正を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製鉄所等の薄板圧延工程において、薄板に存在するピンホールを光学的手法で連続的に自動検出するピンホール検出器に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に鋼板、ブリキ等の薄板に発生する欠陥の一種にその開口径が数μ〜数十μ程度のピンホールがある。従来、薄板圧延工程においては、この薄板に発生するピンホールを連続して検出するピンホール検出器が使用されていた。
【0003】
このピンホール検出器は、検出性能を保証するため定期的なピンホールの検出感度の校正が要求されている。従来のピンホール検出器における検出感度の校正方法について図4、図5を参照して説明する。
【0004】
従来のピンホール検出器の検出部110は、図4に示すように、一定方向に進行する長尺の被検出板100の幅方向に平行に配置された蛍光灯などの光源部2と、この光源部2を被検出板100に照射し、被検出板100を透過した微弱光を検出する光電変換ユニット11と、被検出体100の幅方向に複数並置される複数の光電変換ユニット11の検出信号からピンホールの有無を判定するピンホール検出制御部3aとを備える。
【0005】
ピンホール検出制御部3aは、検出信号を増幅する増幅回路3a1、増幅された信号を予め設定されるピンホール設定回路3a3の設定レベルと比較するレベル判定回路3a2と、判定された出力を外部の送るピンホール出力回路3a4とを備える。
【0006】
この光電変換ユニット11は、被検出板100の進行方向に平行な一定の線上に光を収束させる向きに配置された円筒レンズ11aと、この円筒レンズ11aの収束光線上に配置された光電子増倍管等の光検出器11bと、円筒レンズ11aと光検出器11bとの間に配置され円筒レンズ11aを透過した光のうち所定の角度範囲内の光のみを光検出器に入射させるスリット板11cと、円筒レンズ11aを透過した直進光を光検出器11bへ反射・集光させる凹面鏡11dとを備える。
【0007】
さらに、この検出部110は、図5に示すように、被検出板100の幅方向の端部に被検出板100と非接触状態に配置され、被検出板100のピンホールを通過せずに円筒レンズ11aを透過する被検出板100エッジ部から漏洩する所定の角度範囲の光が、円筒レンズ11aへ入射しないように遮光する2つのエッジマスク15a、15bを備えたものがある。(例えば、特許文献1参照。)。
【0008】
次に、このようなピンホール検出器の従来の検出感度の校正方法について図5を参照して説明する。
【0009】
図5(a)は、検出部110を被検出板100の進行方向から見た断面図で、図5(b)は、被検出板100の位置に設定する校正板101を示す。また、図5(c)は、この校正板101の取り付け穴Aに設定するシャッター付テストサンプル120を示す。
【0010】
校正板101に設ける取り付け穴A1〜A25は、夫々の光電変換ユニット11の中央部及び端部に設定される位置に設けられる。
【0011】
シャッター付テストサンプル120は、例えば、10μmの穴を開けた校正サンプル120aと、この校正サンプル120aの穴を、予定の時間開閉するメカニカルシャッター120bとを備える。
【0012】
シャッター時間は、被検出板100のピンホールが、光電変換ユニット11を通過する速度から、例えば、1m秒程度の時間に設定される。
【0013】
そして、夫々の光電変換ユニット11の検出感度の校正は、この取り付け穴A1〜A25にシャッター付テストサンプル120を置き、シャッターを操作し、検出信号が所定のレベルの範囲内に収まるように、光電変換ユニット11の増幅回路3a1の検出信号の増幅度を調整する。この操作を、取り付け穴A1〜A25の全ての位置において繰り返し行う。
【0014】
このようなピンホールの検出感度の校正は、被検出板100が存在しない状態、例えば、薄板圧延工程を流れる帯状の被検出板100をカットして取り除き、校正板101を設定して行う必要があるため、感度の校正作業が制約される問題がある。
【0015】
その為、代替として光電変換ユニット11内にLEDなどによる模擬光源を設けて、これを発光させて検出感度の構成をする方法も考えられるが、被検出板100の穴を通過した微弱光を検出する光電変換ユニット11の光学検出系の構成とは、光学的な設定条件が異なるため、精度の良い検出感度の校正が出来ない問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】特公昭63−24252号公報(図3、第1頁)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
上述したような従来からの検出感度の校正方法では、校正作業に時間がかかることや、被検出板をカットしなければならない問題があることから、定期的な検出感度の校正が出来ない問題がある。
【0018】
本発明は上記問題点を解決するためになされたもので、ピンホール検出器に被検出体が存在している様態で、短時間で精度の良い検出感度の校正が可能なピンホール検出器を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記目的を達成するために、本発明によるピンホール検出器は、走行する被検出板の一方の表面側に配置され、被検出板の全幅にわたって光を照射する光源部と、前記被検出板を挟んで前記光源部と対向して配置され、前記被検出板のピンホールを通過した前記光源部からの照射光を検出する検出部と、前記被検出板の両幅端部にそれぞれ幅方向に移動可能に設定され、前記光源部からの照射光が前記被検出板の幅端部を回り込んで検出部に入り込むのを防止するためのエッジマスクと、前記検出部の信号からピンホールの有無を判定する制御部とを備えたピンホール検出器であって、前記検出部は、前記被検出板の幅方向に並置され、前記ピンホールの通過光を検出する複数の光電変換ユニットと、予め設定された径の校正ピンホールが存在する校正サンプルを固定し、前記校正ピンホールを通過させる所定のパルス光を発光する校正光源部と、前記校正光源部を前記被検出板を幅方向に移動させ、予め設定された校正位置に停止させる校正光源駆動部とを備える校正サンプル設定部とを備え、前記光源部からの照射光がない状態において、前記校正光源部を幅方向に移動し予め設定された複数の校正位置で停止させ、前記パルス光を発光させ、前記複数の光電変換ユニットの幅方向の検出感度の校正を行うようにしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、ピンホール検出器に被検出体が存在している様態で、短時間で精度の良い検出感度の校正が可能なピンホール検出器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の検出部の構成図。
【図2】本発明の校正光源部の構成図と自動校正の動作を説明する図。
【図3】本発明のピンホール検出器の構成図。
【図4】従来のピンホール検出器の構成図。
【図5】従来のピンホール検出器の校正方法を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施例について図1乃至図3を参照して説明する。先ず、図3を参照して、本発明のピンホール検出器の全体の構成を説明する。
【0023】
本発明のピンホール検出器は、走行する被検出板100の一方の表面側に配置され、被検出板100の全幅にわたって光を照射する光源部2と、被検出板100を挟んで光源部2と対向して配置され、被検出板のピンホールを通過した光源部からの照射光を検出する複数の光電変換ユニット11を有する検出部1を備える。
【0024】
さらに、検出部1からの信号からピンホールの有無を判定する制御部3と、図1(a)の破線で示すように、被検出板100の両幅端部にそれぞれ幅方向に移動可能に配置され、光源部2からの照射光が被検出板100の幅端部を回り込んで検出部1に入り込むのを防止するためのエッジマスク15a、及び15bとを備える。
【0025】
図3の各部について、図4で説明した各部と同一の部分は同じ符号を付し、その説明を省略する。
【0026】
図3のピンホール検出器が、図4と異なる点は、検出部1に校正サンプル120aを通過したパルス光を予め設定された位置で発光する校正サンプル設定部12を備え、制御部3には、この校正サンプル設定部12に対して校正開始信号s1を送り、校正サンプル設定部12の位置設定完了信号s2を受信してパルス光の発光を指令し、制御部3に検出感度の校正を指令する自動校正制御部3bを備えるようにしたことにある。
【0027】
次に、図1を参照して、本発明の検出部1の構成について説明する。図1(a)は、校正サンプル設定部12を説明するための検出部1の平面図、図1(b)は、校正サンプル設定部12の高さ方向の設定位置を説明するための正面断面図、図1(c)は、後述する内箱13に固定される複数の光電変換ユニット11とこの校正サンプル設定部12の位置関係を示す内部断面図である。
【0028】
検出部1は、被検出板100の幅方向に並置され、ピンホールの通過光を検出する複数の光電変換ユニット11と、予め設定された径の校正ピンホールが存在する校正サンプルを固定し、校正ピンホールを通過させる所定のパルス光を発光する校正光源部12cと、校正光源部12cを被検出板100の幅方向に移動させ、予め設定された位置に停止させる校正光源駆動部12aとを備える校正サンプル設定部12とを備える。
【0029】
保守性から複数の光電変換ユニット11は、設置環境における操作性、保守性から内箱13内に幅方向に並べて固定し、この内箱13は、外箱14に幅方向から挿入するように構成しても良い。
【0030】
また、校正サンプル設定部12は、校正光源部12cを被検出板100と複数の光電変換ユニット11との間において、予め設定される高さ位置に設定する上下機構部12b1及び12b2と、校正光源駆動部12aは、校正光源部12cを上下機構部12b1、12b2で設定された高さ位置で、幅方向の所定の位置に設定するスライダー部12a1と被検出板100が移動する軸方向に回転する回転アーム部12a2とを備える。
【0031】
次に、図2を参照して、校正光源部12cの詳細について説明する。校正光源部12cは、ドーム型の反射笠12c1と、この反射笠12c1の上部で反射笠2c1の中心軸に対して45度傾斜した角度で設けられる反射鏡12c2と、反射笠12c1の底部中心位置にピンホールが位置するように固定される校正サンプル120aと、反射笠12c1の内面及び反射鏡12c2で反射した光線がピンホール位置に集光されるように設ける複数のLED光源12c3とそのLED電源12c4とを備える。
【0032】
複数の光電変換ユニット11の検出感度の校正は、校正光源部12cで生成されるパルス光が校正サンプル120aのピンホールを通過する光の強度と発光時間とで設定される。
【0033】
そこで、光の強度は、予め設定されるピンホール径に対して、これを通過する光の強度が要求される値となるようにLED光源12c3の発光波長、その数、及びLED光源12c3に印加するパルス信号の波高値を選択し、また、その発光時間は、走行する被検出板100のピンホールが光電変換ユニット11を通過する時間に相当する程度に、LED電源12c4からLED光源12c3に印加するパルス信号のパル幅時間を調整して設定する。
【0034】
このように設定された校正光源部12cによれば、機械的なシャッターと同様なパルス光を生成できるので、校正サンプル120aを通過するパルス光に基づく検出感度の校正が可能となる。
【0035】
また、パルス幅を選択することで、光電変換ユニット11の応答速度を考慮した動的な感度校正が容易に可能となる。
【0036】
次に、同じく図1及び図2を参照して、複数の光電変換ユニット11に対する幅方向の位置を設定する校正光源駆動部12aについて説明する。
【0037】
校正光源駆動部12aは、校正光源部12cを搭載し、校正光源部12cを被検出体100の幅方向にボールネジ上で直線状に移動させ、予め設定される幅方向位置に設定する駆動制御部を有するスライダー部12a1と、設定された幅方向位置で、校正光源部12cを回転し、被検出体100の移動方向の位置を設定するアーム回転部12a2とを備える。
【0038】
次に、図3を参照して、このように校正された校正サンプル設定部12aを有する検出部1の検出感度の校正動作を制御する自動校正制御部3bの動作例について説明する。
【0039】
例えば、自動校正制御部3bは、ピンホールを検出中であるピンホール検出器100の測定モードを校正モードに切り替え、光源部2に対して照明の消灯を指令し、また、校正サンプル設定部2の上下機構部12b1、12b2に対して予め設定された高さ位置に校正光源駆動部12aを設定する。
【0040】
そして、校正開始指令信号s1を校正光源駆動部12aに送る。校正光源駆動部12aは、予め定められたプログラムにしたがって、最初の校正位置に校正光源部12cを移動する。そして、アーム回転部12a2を回転して、校正サンプルを複数の光電変換ユニット11の被検出体100の移動方向の中心軸位置に設定し、設定完了信号s2を自動校正制御部3bに送る。
【0041】
次に、自動校正制御部3bは、校正光源部12cに点灯指令信号s3を送るとともに、ピンホール検出制御部3aに校正指令信号s4を送る。
【0042】
そして、校正処理が完了する所定の時経過後、次の校正開始信号s1を校正光源駆動部12aに送り、次の設定値で同様の校正動作を行う。以下、この動作を被測定体100の検出幅の全域に対して実行する。
【0043】
以上述べたように、本発明によれば、光源部2からの照射光がない状態において、校正光源部12cを幅方向に移動し、予め設定された複数の位置でパルス光を発光させ、被検出体100が存在した状態であっても光電変換ユニット11の幅方向全域の検出感度の校正を自動的に行うことが出来る。
【0044】
また、校正光源部12cは任意の点に設定できるので、光電変換ユニット間の検出感度の相違だけでなく、検出間幅全域の検出感度のムラを検査できる効果もある。
【0045】
尚、本発明は上述したような実施例に何ら限定されるものでなく、幅方向での設定位置、自動校正の手順などは、適宜、光電変換ユニットの構成に合わせても良く、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。
【符号の説明】
【0046】
1、110 検出部
2 光源部
3、30 制御部
3a ピンホール検出制御部
3a1 増幅回路
3a2 レベル判定回路
3a3 ピンホール設定回路
3a4 ピンホール出力回路
3a5 ゲイン制御回路
3b 自動校正制御部
11 光電変換ユニット
11a 円筒レンズ
11b 光検出器
11c スリット板
11d 凹面鏡
12 校正サンプル設定部
12a 校正光源駆動部
12a1 スライダー部
12a2 回転アーム部
12b1、12b2 上下機構部
12c 校正光源部
12c1 反射笠
12c2 反射鏡
12c3 LED光源
12c4LED電源
13 内箱
14 外箱
15a、15b エッジマスク
100 被検出板
101 校正板
110 検出部
120 シャッター付校正サンプル
120a 校正サンプル
120b シャッター
s1 校正開始信号
s2 位置設定完了信号
s3 点灯指令信号
s4 校正指令信号

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行する被検出板の一方の表面側に配置され、被検出板の全幅にわたって光を照射する光源部と、前記被検出板を挟んで前記光源部と対向して配置され、前記被検出板のピンホールを通過した前記光源部からの照射光を検出する検出部と、前記被検出板の両幅端部にそれぞれ幅方向に移動可能に設定され、前記光源部からの照射光が前記被検出板の幅端部を回り込んで検出部に入り込むのを防止するためのエッジマスクと、前記検出部の信号からピンホールの有無を判定する制御部と
を備えたピンホール検出器であって、
前記検出部は、前記被検出板の幅方向に並置され、前記ピンホールの通過光を検出する複数の光電変換ユニットと、
予め設定された径の校正ピンホールが存在する校正サンプルを固定し、前記校正ピンホールを通過させる所定のパルス光を発光する校正光源部と、前記校正光源部を前記被検出板を幅方向に移動させ、予め設定された校正位置に停止させる校正光源駆動部とを備える校正サンプル設定部と
を備え、
前記光源部からの照射光がない状態において、前記校正光源部を幅方向に移動し予め設定された複数の校正位置で停止させ、前記パルス光を発光させ、前記複数の光電変換ユニットの幅方向の検出感度の校正を行うようにしたことを特徴とするピンホール検出器。
【請求項2】
前記校正光源部は、ドーム型の反射笠と、前記反射笠の底部中心位置にピンホールが位置するように固定される校正サンプルと、当該ピンホールに集光されるように前記反射笠内に設ける複数のLED光源とを備える請求項1に記載のピンホール検出器。
【請求項3】
前記校正サンプル設定部は、さらに、前記校正光源部を前記被検出板と前記複数の光電変換ユニットとの間の予め設定される高さ位置に設定する上下機構部と、前記校正光源駆動部は、前記校正光源部を前記上下機構部で設定された高さ位置で、予め設定される幅方向位置に設定するスライダー部と、前記被検出板が移動する軸方向に回転する回転アーム部とを備える請求項1に記載のピンホール検出器。
【請求項4】
前記制御部は、前記校正サンプル設定部に対して校正指令信号を送り、その応答として予め設定される設定位置完了信号を受信して、前記校正光源部に対して発光指令信号を送る自動校正制御部を備え、
前記制御部は、前記校正サンプルのピンホールを通過した発光信号を検出し、前記複数の光電変換ユニットの検出感度の自動校正を行うようにした請求項1に記載のピンホール検出器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−185776(P2011−185776A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−51895(P2010−51895)
【出願日】平成22年3月9日(2010.3.9)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】