説明

ファイバセンサ

【課題】汎用性が高く長尺化が可能であり、長手方向のどの位置においても曲げを検出でき、かつ、曲げ方向を検出することが可能なファイバセンサを提供する。
【解決手段】少なくとも1本の光ファイバ5を有するセンサケーブル2を有し、光ファイバ5は、コア7と、コア7の周囲を覆うクラッド8と、コア7の中心を軸とする同軸円上にその中心が位置するようにクラッド8に形成された複数の空孔9と、を有し、隣り合う空孔9の同軸円に沿った間隔が、少なくとも1箇所、他の同軸円に沿った間隔よりも広く且つ光の閉じ込め効果が弱い光漏洩部10であり、センサケーブル2を光漏洩部10が外側にくる方向に曲げた際に、光漏洩部10が外側にこない方向に曲げたときと比較して光ファイバ5の曲げ損失が大きくなるようにしたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、センサケーブルに加えられた曲げを検出するファイバセンサに関するものである。
【背景技術】
【0002】
曲げを検出するセンサとして、例えば、可とう性を有する板状の部材で金属薄膜を挟み、曲げが加えられた際の金属薄膜の抵抗値の変化により、曲げを検知するセンサがある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、可とう性を有する板状の部材に圧電フィルムを設け、曲げが加えられた際の圧電フィルムの起電力から、曲げを検知するセンサもある(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
さらに、光ファイバにコア径の異なる短い光ファイバを挿入してセンサ部を形成したセンサケーブルを用い、OTDR(Optical Time Domain Reflectometer)法により光ファイバの光損失を測定することで、センサ部に曲げ変形が加わった際の曲げ損失を検出して、センサケーブルの曲げを検出するものもある(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9−119806号公報
【特許文献2】特開2006−38710号公報
【特許文献3】特許第3180959号公報
【特許文献4】特開2005−24623号公報
【特許文献5】特開2006−308828号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1,2のセンサでは、センサ部が板状に形成されるため、その表面側への曲げか、あるいは裏面側への曲げの2方向の曲げのみしか検出できず、また、他の部材に取り付ける場合、その表面か裏面を部材に接するように取り付ける必要があるので、検出できる曲げ方向が限定され、汎用性が低いという問題がある。さらに、特許文献1,2のセンサは、長尺化が困難であり、長尺な部材の曲げを検出することは困難であるという問題もある。
【0007】
特許文献3のセンサでは、長尺化は可能であるものの、曲げを検出できる位置がセンサ部のみでピンポイントであるため、センサ部以外の部分で曲げが加わった場合には、その曲げを精度良く検出することができないという問題がある。また、特許文献3のセンサでは、センサ部に曲げが加わった場合であっても、その曲げ方向を特定することはできない。
【0008】
そこで、本発明の目的は、上記課題を解決し、汎用性が高く長尺化が可能であり、長手方向のどの位置においても曲げを検出でき、かつ、曲げ方向を検出することが可能なファイバセンサを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は上記目的を達成するために創案されたものであり、少なくとも1本の光ファイバを有するセンサケーブルを有し、前記光ファイバは、コアと、該コアの周囲を覆うクラッドと、前記コアの中心を軸とする同軸円上にその中心が位置するように前記クラッドに形成された複数の空孔と、を有し、隣り合う前記空孔の前記同軸円に沿った間隔が、少なくとも1箇所、他の前記同軸円に沿った間隔よりも広く且つ光の閉じ込め効果が弱い光漏洩部であり、前記センサケーブルを前記光漏洩部が外側にくる方向に曲げた際に、前記光漏洩部が外側にこない方向に曲げたときと比較して前記光ファイバの曲げ損失が大きくなるようにしたファイバセンサである。
【0010】
また本発明は、少なくとも1本の光ファイバを有するセンサケーブルを有し、前記光ファイバは、コアと、該コアの周囲を覆うクラッドと、該クラッドに形成された1つの空孔と、を有し、前記センサケーブルを前記空孔が外側にくる方向に曲げた際に、前記空孔が外側にこない方向に曲げたときと比較して前記光ファイバの曲げ損失が小さくなるようにしたファイバセンサである。
【0011】
また本発明は、少なくとも1本の光ファイバを有するセンサケーブルを有し、前記光ファイバは、コアと、該コアの周囲を覆うクラッドと、前記コアの中心を軸とした軸対称の位置となるように前記クラッドに形成された2つの空孔と、前記センサケーブルを前記空孔が外側にくる方向に曲げた際に、前記空孔が外側にこない方向に曲げたときと比較して前記光ファイバの曲げ損失が小さくなるようにしたファイバセンサである。
【0012】
前記センサケーブルは、前記光ファイバを複数備えると共に、その複数の光ファイバを、曲げ損失が大きく又は小さくなる方向を異ならせて配置してなってもよい。
【0013】
前記光ファイバの光損失を測定するセンサ本体をさらに有し、前記センサ本体は、OTDR(Optical Time Domain Reflectometer)からなり、前記光ファイバの全長に亘る光損失の分布を測定するようにされてもよい。
【0014】
前記センサ本体が測定した光損失の分布を基に、前記センサケーブルに曲げが加わった位置と前記センサケーブルの曲げ形状とを推定する演算手段をさらに備えてもよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、汎用性が高く長尺化が可能であり、長手方向のどの位置においても曲げを検出でき、かつ、曲げ方向を検出することが可能なファイバセンサを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施の形態に係るファイバセンサを示す図であり、(a)は概略構成図、(b)はその1B−1B線断面図である。
【図2】(a)はホーリーファイバの等価屈折率分布を示す図であり、(b)は、ホーリーファイバを曲げた際の等価屈折率分布、および曲げ部分での光のパワー分布を示す図である。
【図3】図1のファイバセンサを曲げた際の等価屈折率分布、および曲げ部分での光のパワー分布を示す図であり、(a)は光漏洩部が曲げの外側にくる場合、(b)は光漏洩部が曲げの内側にくる場合を示す。
【図4】本発明において、センサ本体で測定する後方散乱光の光強度のグラフ図であり、(a)はセンサケーブルを曲げない状態、(b)はセンサケーブルを鋭く曲げた状態、(c)はセンサケーブルを緩やかに曲げた状態を示す。
【図5】(a)は、本発明の一実施の形態に係るファイバセンサを示す図であり、(b),(c)は、そのセンサケーブルの横断面図である。
【図6】本発明の一実施の形態に係るファイバセンサに用いるセンサケーブルの横断面図である。
【図7】本発明の一実施の形態に係るファイバセンサに用いるセンサケーブルの横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の好適な実施の形態を添付図面にしたがって説明する。
【0018】
図1(a)は、本実施の形態に係るファイバセンサの概略構成図であり、図1(b)はその1B−1B線断面図である。
【0019】
図1(a),(b)に示すように、ファイバセンサ1は、センサケーブル2と、センサ本体3と、パーソナルコンピュータなどの演算手段4とを備えている。
【0020】
センサケーブル2は、少なくとも1本の光ファイバ5を有している。本実施の形態では、センサケーブル2として、1本の光ファイバ5の周囲に保護用の被覆6を形成したものを用いる場合を説明する。センサケーブル2の一端は、センサ本体3に接続される。
【0021】
光ファイバ5は、コア7と、コア7の周囲を覆うクラッド8と、コア7の中心を軸とする同軸円上にその中心が位置するようにクラッド8に形成された複数の空孔9と、を有しており、隣り合う空孔9の同軸円に沿った間隔が、少なくとも一箇所、他の同軸円に沿った間隔よりも広くされ、光の閉じ込め効果が弱い光漏洩部10とされている。
【0022】
本実施の形態では、コア7の周縁近傍のクラッド8に6個の空孔9が等間隔に形成されたホーリーファイバを用い、そのホーリーファイバの少なくとも1つの空孔9をクラッド8と同等の屈折率を有する樹脂で埋めることで、光ファイバ5を形成した。ここでは、光ファイバ5として、1つの空孔9(図1(b)では下側)をクラッド8と同等の屈折率を有する樹脂で埋めたものを用いる場合を説明する。つまり、本実施の形態で用いる光ファイバ5は、隣り合う空孔9の同軸円に沿った間隔が、一箇所、他の同軸円に沿った間隔よりも広くされ、他の同軸円に沿った間隔は等しくされている。空孔9をクラッド8と同等の屈折率を有する樹脂で埋めた部分を挟んで隣り合う空孔9の間が、光漏洩部10となる。
【0023】
光ファイバ5を形成する方法については、特に限定するものではないが、例えば、光ファイバ5となるホーリーファイバを製造する際に、空孔9を最初から形成しないようにする(つまり、予め空孔9の数を減らしたものを製造する)か、あるいは、ホーリーファイバの空孔9に、クラッド8と同等の屈折率を有する屈折率整合材を注入し固化させるようにすればよい。
【0024】
本実施の形態では、センサケーブル2の全長に亘って光漏洩部10を形成する場合を説明するが、例えば、センサケーブル2の長手方向における一部分のみで曲げを検出すれば足りるような場合は、その曲げの検出を行う部分のみに光漏洩部10を形成するようにしてもよい。
【0025】
センサ本体3は、光ファイバ5の光損失を測定するものである。本実施の形態では、センサ本体3として、光ファイバ5にパルス状の光を入射し、その後方散乱光の光強度と、後方散乱光を受光した時間とを測定することにより、光ファイバ5の全長に亘る光損失の分布を測定するOTDR(Optical Time Domain Reflectometer)を用いる。センサ本体3は、測定した光損失の分布を演算手段4に出力するようにされる。
【0026】
演算手段4は、センサ本体3が測定した光損失の分布を基に、センサケーブル2に曲げが加わった位置とセンサケーブル2の曲げ形状とを推定するようにされる。また、演算手段4は、ディスプレイなどの表示器4aを有しており、推定したセンサケーブル2に曲げが加わった位置とセンサケーブル2の曲げ形状とを表示器4aに表示するようにされる。本実施の形態では、視覚的に判断しやすいよう、センサケーブル2の立体形状を表示器4aに表示するようにした。但し、表示器4aに表示する表示形式については、これに限定されず、任意の表示形式としてよい。
【0027】
ここで、ファイバセンサ1の原理を説明する。
【0028】
図2(a)に示すように、通常のホーリーファイバ21では、空孔9の部分の屈折率(等価屈折率)が低くなっており、コア7が空孔9による低屈折率領域で囲まれている。よって、図2(b)に示すように、ホーリーファイバ21を曲げても、コア7が低屈折率領域で囲まれているため、コア7を伝搬する光が放射モードに結合しにくく、曲げ損失(曲げによる光損失)が小さくなる。なお、ホーリーファイバ21を曲げると、等価屈折率分布は、曲げの外側が大きく、曲げの内側が小さくなり、その結果、曲げ部分における光のパワー分布(光強度の分布)は、そのピークが若干曲げの外側に移動することになる。
【0029】
これに対して、ファイバセンサ1で用いる光ファイバ5では、図3(a)に示すように、光漏洩部10が曲げの外側にくる方向にセンサケーブル2を曲げると、コア7の外側(曲げの外側)の部分に空孔9、すなわち低屈折率領域が存在しないこととなり、曲げ部分における光のパワー分布のピークがより曲げの外側に移動し、コア7を伝搬する光が放射モードに結合し易くなる。つまり、光漏洩部10が曲げの外側にくる方向にセンサケーブル2を曲げると、光漏洩部10から光が漏れて、曲げ部分での光損失(曲げ損失)が大きくなる。
【0030】
他方、図3(b)に示すように、光漏洩部10が曲げの内側にくる方向(光漏洩部10が曲げの外側にこない方向)にセンサケーブル2を曲げると、コア7の外側(曲げの外側)の部分に空孔9、すなわち低屈折率領域が存在するため、上述の通常のホーリーファイバ21と同様に、コア7を伝搬する光が放射モードに結合しにくい。よって、曲げ部分での光損失(曲げ損失)が小さくなる。
【0031】
このように、ファイバセンサ1では、センサケーブル2を特定の方向(光漏洩部10が曲げの外側にくる方向)に曲げた際に、特定の方向以外の方向(光漏洩部10が曲げの外側にこない方向)に曲げたときと比較して光ファイバ5の曲げ損失が大きくなる。よって、ファイバセンサ1によれば、曲げ損失の大小により、センサケーブル2を曲げた方向を検出することが可能になる。
【0032】
また、図4(a)〜(c)に、センサ本体3で測定する後方散乱光の光強度のグラフの一例を示す。
【0033】
図4(a)に示すように、センサケーブル2を曲げない状態では、後方散乱光の光強度は時間とともに緩やかに小さくなる。センサケーブル2を、光漏洩部10が曲げの外側にこない方向に緩やかまたは鋭く曲げた場合(図3(b)に示す場合)も、同様の特性となる。なお、図4(a)における横軸の時間は、後方散乱光を受光した時間であり、すなわち光ファイバ5の長手方向における位置(センサ本体3からの距離)を表すことになる。また、縦軸の後方散乱光の光強度は、光損失が大きくなると徐々に小さくなることから、図4(a)のグラフは光ファイバ5における光損失の分布を表すことになる。
【0034】
これに対して、光漏洩部10が曲げの外側にくる方向(図3(a)に示す場合)にセンサケーブル2を鋭く曲げた場合(つまり曲率半径が小さくなるように曲げた場合)、図4(b)に示すように、曲げ部分Aにおいて曲げ損失が大きくなり、曲げ部分Aにおけるグラフの傾きが小さく(絶対値でいえば大きく)なる。
【0035】
また、光漏洩部10が曲げの外側にくる方向(図3(a)に示す場合)にセンサケーブル2を緩やかに曲げた場合(つまり曲率半径が大きくなるように曲げた場合)、図4(c)に示すように、曲げ部分Bにおいてグラフの傾きが小さく(絶対値でいえば大きく)なるが、センサケーブル2を鋭く曲げた場合と比較すると、曲げ部分Bにおけるグラフの傾きは大きく(絶対値でいえば小さく)なる。また、図4(c)では、センサケーブル2を図4(b)と同じ角度曲げた場合を示しているが、センサケーブル2を緩やかに曲げると、その分傾きが変化している時間(つまり曲げ部分の長さ)が長くなる。
【0036】
演算手段4は、グラフの傾きが変化している部分の時間から、センサケーブル2に曲げが加わった位置(センサ本体3からの距離)を推定し、かつ、予め曲げ半径とグラフの傾きとの関係から求めておいた近似式を用いてグラフの傾きからセンサケーブル2の曲げ半径を求めると共に、傾きが変化している時間から曲げ部分の長さを求め、求めた曲げ半径と曲げ部分の長さとから、センサケーブル2の曲げ形状を推定して、表示器4aに出力するようにされる。
【0037】
以上説明したように、本実施の形態に係るファイバセンサ1では、センサケーブル2が、コア7の中心を軸とする同軸円上にその中心が位置するようにクラッド8に形成された複数の空孔9を有し、隣り合う空孔9の同軸円に沿った間隔を、少なくとも1箇所、他の同軸円に沿った間隔よりも広くして光の閉じ込め効果が弱い光漏洩部10とした光ファイバ5を有しており、センサケーブル2を光漏洩部10が外側にくる方向に曲げた際に、光漏洩部10が外側にこない方向に曲げたときと比較して光ファイバ5の曲げ損失が大きくなるようにしている。
【0038】
これにより、センサケーブル2に加えられた曲げの方向を検出することが可能となり、また、センサケーブル2のどの位置に曲げが加わった場合であっても曲げを検出することが可能となる。
【0039】
また、ファイバセンサ1では、特許文献1,2のような板状のセンサ部を用いていないため、他の部材に取り付ける際の取り付け方向が限定されず、汎用性が高い。
【0040】
さらに、ファイバセンサ1では、センサケーブル2に光ファイバ5を用いているため、長尺化が容易である。
【0041】
さらにまた、ファイバセンサ1では、ホーリーファイバの空孔9をクラッド8と同等の屈折率を有する樹脂で埋めるという簡易な手段でセンサケーブル2(光ファイバ5)を形成できるため、低コストなファイバセンサ1を実現できる。
【0042】
また、ファイバセンサ1では、センサ本体3がOTDRからなり、センサ本体3にて、光ファイバ5の全長に亘る光損失の分布を測定するようにしているため、得られた光損失の分布を基に、演算手段4にて、センサケーブル2に曲げが加わった位置とセンサケーブル2の曲げ形状とを推定することが可能となる。
【0043】
本発明の他の実施の形態を説明する。
【0044】
図5(a)に示すファイバセンサ51は、基本的に図1のファイバセンサ1と同じ構成であり、光ファイバ5を複数備えると共に、その複数の光ファイバ5を、曲げ損失が大きくなる方向(光漏洩部10の方向)を異ならせて配置したセンサケーブル52を用い、かつ、センサ本体3にて複数の光ファイバ5それぞれの光損失を測定するようにした点が異なる。
【0045】
センサケーブル52としては、図5(b)に示すセンサケーブル52aや、図5(c)に示すセンサケーブル52bを用いることができる。
【0046】
図5(b)に示すセンサケーブル52aは、光漏洩部10を形成しない通常のホーリーファイバからなるリファレンス用光ファイバ53を中央に配置し、そのリファレンス用光ファイバ53を挟むように、光漏洩部10が図示上側に来るように配置した光ファイバ5と、光漏洩部10が図示下側に来るように配置した光ファイバ5を配置し、さらに、これら3本の光ファイバ53,5を挟むように、光ファイバ53,5と並列に、光漏洩部10が外側(隣り合う光ファイバ5と反対側)になるように配置した2本の光ファイバ5を配置し、これら5本の光ファイバ53,5の周囲を、保護用の被覆54で一括被覆したものである。センサケーブル52aは、断面視で長円形状(2本の直線と該2本の直線の端部同士を接続する2本の曲線とからなる形状)に形成される。
【0047】
図5(c)に示すセンサケーブル52bは、リファレンス用光ファイバ53を中央に配置し、そのリファレンス用光ファイバ53の周囲に、周方向に等間隔に4本の光ファイバ5を配置すると共に、それら4本の光ファイバ5を光漏洩部10が外側(リファレンス用光ファイバ53と反対側)になるように配置し、これら5本の光ファイバ53,5の周囲を保護用の被覆55で一括被覆して、断面視で円形状に形成したものである。被覆55の周方向の一部分(図5(c)では上側の部分)には、センサケーブル52bの方向を特定するためのマーカー(目印)56が形成される。
【0048】
センサケーブル52a,52bでは、4本の光ファイバ5により、4方向(図5(b),(c)における上下左右の4方向)の曲げを検出することが可能となる。なお、光ファイバ5の本数はこれに限定されるものではなく、3本以下、あるいは5本以上であってもよい。光ファイバ5の本数は、要求される曲げ方向の判定精度に応じて、適宜決定するとよい。
【0049】
リファレンス用光ファイバ53は、光ファイバ5に用いるホーリーファイバの光漏洩部10を空孔部に変更しただけのもの(つまり、コア7の周囲のクラッド8に等間隔で空孔9が形成されたもの)であり、各部の寸法や空孔の位置関係などは同じものであり、センサ本体3は、リファレンス用に、リファレンス用光ファイバ53の光損失の分布も測定するようにされる。なお、リファレンス用光ファイバ53は必須ではなく、省略可能である。
【0050】
演算手段4は、リファレンス用光ファイバ53における光損失の分布をリファレンスとして用い、4本の光ファイバ5における光損失の分布から、4つの方向それぞれにおける「センサケーブル52に曲げが加わった位置」と「センサケーブル52の曲げ形状」とを推定し、これらを総合して、センサケーブル52のどの位置で、どの方向に、どの程度曲げたかを推定し、センサケーブル52の立体形状を表示器4aに表示するようにされる。
【0051】
ファイバセンサ51によれば、複数方向の曲げを検出することが可能となり、センサケーブル52をどの方向に曲げたかを検出し、センサケーブル52の立体形状を検出することが可能になる。
【0052】
ファイバセンサ51は、例えば、センサケーブル52を埋設管等の管路に通して管路の立体的な形状を検出するセンサ、あるいは、フェンスに沿ってセンサケーブル52を配置し、人間がフェンスに登ることによるセンサケーブル52の曲げ(フェンスの歪み)を検出して侵入検知を行う侵入検知センサ等に用いることができる。侵入検知センサでは、風などの自然現象によるフェンスの振動の影響が問題となるが、ファイバセンサ51では、センサケーブル52の曲げ形状から、フェンス全体が緩やかに歪む自然現象と、フェンスの一部のみが大きく歪む人間がフェンスに登っている状態とを、明確に区別することが可能である。
【0053】
本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加え得ることは勿論である。
【0054】
例えば、上記実施の形態では、センサケーブル2,52として、1つの空孔9をクラッド8と同等の屈折率を有する樹脂で埋め、1箇所の光漏洩部10を形成した光ファイバ5を用いる場合を説明したが、2つ以上の空孔9をクラッド8と同等の屈折率を有する樹脂で埋め、2箇所以上の光漏洩部10を形成するようにしてもよい。例えば、コア7を挟んで向かい合っている空孔9をクラッド8と同等の屈折率を有する樹脂で埋め、2箇所の光漏洩部10を形成してもよい。また、隣り合う複数の空孔9を埋め、埋めた複数の空孔9を挟む空孔9の間を光漏洩部10としてもよい。埋める空孔9の数(つまり光漏洩部10の同軸円に沿った長さ)は、要求される曲げ方向の判定精度に応じて、適宜決定するとよい。
【0055】
また、上記実施の形態では、センサケーブル2,52を特定の方向に曲げた際に、特定の方向以外の方向に曲げたときと比較して光ファイバ5の曲げ損失が大きくなる場合を説明したが、これに限らず、センサケーブル2,52を特定の方向に曲げた際に、特定の方向以外の方向に曲げたときと比較して光ファイバの曲げ損失が小さくなるようにしてもよい。
【0056】
例えば、図6に示すセンサケーブル61のように、クラッド8に1つの空孔9を形成した光ファイバ62を用い、センサケーブル61を空孔9が外側にくる方向に曲げた際に、空孔9が外側にこない方向に曲げたときと比較して光ファイバ62の曲げ損失が小さくなるようにしてもよい。
【0057】
さらに、図7に示すセンサケーブル71のように、コア7の中心を軸とした軸対称の位置となるようにクラッド8に形成された2つの空孔9を有する光ファイバ72を用い、センサケーブル71を空孔9が外側にくる方向に曲げた際に、空孔9が外側にこない方向に曲げたときと比較して光ファイバ72の曲げ損失が小さくなるようにしてもよい。
【0058】
光ファイバ62,72は、例えば、ホーリーファイバの空孔9を1つ、あるいはコア7を挟んで対向する2つの空孔9を残して、残りの空孔9をクラッド8と同等の樹脂で埋めることで形成してもよい。
【符号の説明】
【0059】
1 ファイバセンサ
2 センサケーブル
3 センサ本体
4 演算手段
5 光ファイバ
6 被覆
7 コア
8 クラッド
9 空孔
10 光漏洩部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1本の光ファイバを有するセンサケーブルを有し、
前記光ファイバは、
コアと、
該コアの周囲を覆うクラッドと、
前記コアの中心を軸とする同軸円上にその中心が位置するように前記クラッドに形成された複数の空孔と、
を有し、
隣り合う前記空孔の前記同軸円に沿った間隔が、少なくとも1箇所、他の前記同軸円に沿った間隔よりも広く且つ光の閉じ込め効果が弱い光漏洩部であり、
前記センサケーブルを前記光漏洩部が外側にくる方向に曲げた際に、前記光漏洩部が外側にこない方向に曲げたときと比較して前記光ファイバの曲げ損失が大きくなるようにしたことを特徴とするファイバセンサ。
【請求項2】
少なくとも1本の光ファイバを有するセンサケーブルを有し、
前記光ファイバは、
コアと、
該コアの周囲を覆うクラッドと、
該クラッドに形成された1つの空孔と、
を有し、
前記センサケーブルを前記空孔が外側にくる方向に曲げた際に、前記空孔が外側にこない方向に曲げたときと比較して前記光ファイバの曲げ損失が小さくなるようにしたことを特徴とするファイバセンサ。
【請求項3】
少なくとも1本の光ファイバを有するセンサケーブルを有し、
前記光ファイバは、
コアと、
該コアの周囲を覆うクラッドと、
前記コアの中心を軸とした軸対称の位置となるように前記クラッドに形成された2つの空孔と、
前記センサケーブルを前記空孔が外側にくる方向に曲げた際に、前記空孔が外側にこない方向に曲げたときと比較して前記光ファイバの曲げ損失が小さくなるようにしたことを特徴とするファイバセンサ。
【請求項4】
前記センサケーブルは、前記光ファイバを複数備えると共に、その複数の光ファイバを、曲げ損失が大きく又は小さくなる方向を異ならせて配置してなる請求項1〜3いずれかに記載のファイバセンサ。
【請求項5】
前記光ファイバの光損失を測定するセンサ本体をさらに有し、
前記センサ本体は、OTDR(Optical Time Domain Reflectometer)からなり、前記光ファイバの全長に亘る光損失の分布を測定するようにされる請求項1〜4いずれかに記載のファイバセンサ。
【請求項6】
前記センサ本体が測定した光損失の分布を基に、前記センサケーブルに曲げが加わった位置と前記センサケーブルの曲げ形状とを推定する演算手段をさらに備える請求項5記載のファイバセンサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−257310(P2011−257310A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−133250(P2010−133250)
【出願日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【出願人】(000005120)日立電線株式会社 (3,358)
【Fターム(参考)】