説明

ファイブラスケーシングの製法及びビスコース塗着ノズル

【課題】小さい直径のファイブラスケーシングを製造することが可能なファイブラスケーシングの製法及びビスコース塗着ノズルを提供する。
【解決手段】ファイブラスケーシングの製法は、シート状の原紙Pの一面P1側にビスコースを塗着した後、原紙Pを筒状に成形する。また、シート状の原紙Pの一面P1側にビスコースを塗着した後、ビスコース塗着面P1を内側に原紙Pを筒状体P10に成形し、筒状体P10の外面側P12にビスコースを塗着する。ビスコース塗着ノズル20は、先端側を下方に傾斜し下側部が上側部より突出した吐出口22を有するとともに、吐出口22に連通しかつビスコース供給部23と接続されるビスコース貯留部24を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ファイブラスケーシングの製法及びビスコース塗着ノズルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ハム、ソーセージ等の畜肉加工品は、ビスコース加工紙からなるファイブラスケーシングに畜肉を充填した後、スモーク加工等を行うことによって得られる。この畜肉を加工するためのファイブラスケーシングは、シート状の原紙を筒状体に成形し、該筒状体の外面側あるいは外面側と内面側の双方にビスコースを塗着した後、所定の洗浄処理等を経て得られる。
【0003】
従来のファイブラスケーシングの製法において、筒状体の内外面双方にビスコースを塗着する場合、同心隔離させて配置された環状の内面用ビスコース塗着ダイス(内ダイス)及び外面用ビスコース塗着ダイス(外ダイス)に筒部材が嵌挿されてなるマンドレルに対し、筒状体を内ダイスと外ダイスとの隙間を通過させるように供給して、内ダイス及び外ダイスからビスコースを吐出させて筒状体の内外面双方にビスコースを塗着するように構成される(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
しかしながら、上記従来の製法にあっては、内ダイスからビスコースを吐出させるために、筒状体内面へのビスコース塗着に必要な様々な部材をマンドレル内部に収納する必要があった。そのため、マンドレルの直径が一定以上となり、マンドレル径にあわせて内ダイスを大きくしたり、一定幅以上の原紙を用いなければならず、原紙のサイズが限定されて小さい直径のファイブラスケーシングを製造することができなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭56−155670号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は前記の点に鑑みなされたものであり、小さい直径のファイブラスケーシングを製造することが可能なファイブラスケーシングの製法及びビスコース塗着ノズルを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち、請求項1の発明は、シート状の原紙の一面側にビスコースを塗着した後、前記原紙を筒状体に成形することを特徴とするファイブラスケーシングの製法に係る。
【0008】
請求項2の発明は、シート状の原紙の一面側にビスコースを塗着した後、前記ビスコース塗着面を内側に前記原紙を筒状体に成形し、前記筒状体の外面側にビスコースを塗着することを特徴とするファイブラスケーシングの製法に係る。
【0009】
請求項3の発明は、先端側を下方に傾斜し下側部が上側部より突出した吐出口を有するとともに、前記吐出口に連通しかつビスコース供給部と接続されるビスコース貯留部を有することを特徴とするファイブラスケーシングのためのビスコース塗着ノズルに係る。
【発明の効果】
【0010】
請求項1の発明に係るファイブラスケーシングの製法は、シート状の原紙の一面側にビスコースを塗着した後、前記原紙を筒状体に成形するため、筒状体の内面側または外面側にビスコースを塗着した小径のファイブラスケーシングを容易に製造することができる。
【0011】
請求項2の発明に係るファイブラスケーシングの製法は、シート状の原紙の一面側にビスコースを塗着した後、前記ビスコース塗着面を内側に前記原紙を筒状体に成形し、前記筒状体の外面側にビスコースを塗着するため、筒状体の内面側と外面側の双方にビスコースを塗着した小さい直径のファイブラスケーシングを容易に製造することができる。
【0012】
請求項3の発明に係るファイブラスケーシングのためのビスコース塗着ノズルは、先端側を下方に傾斜し下側部が上側部より突出した吐出口を有するとともに、前記吐出口に連通しかつビスコース供給部と接続されるビスコース貯留部を有するため、シート状の原紙の一面側に簡易な構成で容易にビスコースを塗着することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の第1実施例に係るファイブラスケーシングの製造工程を示す概略図である。
【図2】ビスコース塗着ノズルの要部断面図である。
【図3】図2のA−A線での要部断面図である。
【図4】ビスコース塗着ノズルの吐出口近傍の拡大断面図である。
【図5】本発明の第2実施例に係るファイブラスケーシングの製造工程の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1に示す第1実施例に係るファイブラスケーシングの製造工程は、内面または外面のいずれか一方にビスコースを塗着して筒状のファイブラスケーシングを製造するものであって、シート状の原紙Pの一面P1側にビスコースを塗着した後、前記原紙Pを筒状体P10に成形するように構成される。また、ビスコースが塗着された筒状体P10は、従来公知の凝固浴工程、再生浴工程、水洗浴工程、乾燥工程、巻取工程を経ることにより、製品として得られる。
【0015】
図1において、符号10は原紙Pの一面P1側にビスコースを塗着するためのビスコース塗着装置、50はビスコースが塗着された筒状体P10に凝固浴工程を実施するための凝固浴槽、51は凝固槽に貯留された凝固液、52はビスコースが塗着された筒状体P10を次工程に送り出すための支持ローラ、P2はシート状の原紙Pの他面側、Rは原紙ロールである。
【0016】
次に、第1実施例に係るファイブラスケーシングの製法の好ましい実施例をビスコース塗着装置10とともに具体的に説明する。ビスコース塗着装置10は、シート状の原紙Pの一面P1側にビスコースを塗着するためのビスコース塗着ノズル20と、ビスコースが塗着された筒状体P10に嵌挿されて支持するマンドレル30とを有する。
【0017】
ビスコース塗着ノズル20は、図2〜4に示すように、先端側を下方に傾斜し下側部22Aが上側部22Bより突出した吐出口22を有するとともに、吐出口22に連通しかつビスコース供給部23と接続されるビスコース貯留部24を有する。この図において、符号21はビスコース塗着ノズル20のノズル本体、25,26は吐出口22の幅を調節するための調節部材である。
【0018】
この塗着ノズル20において、吐出口22は、シート状の原紙Pの幅と等しいまたは原紙Pの幅以上の吐出幅を有し、原紙Pの一面P1側にビスコースを不足なく塗着することができる。また、吐出口22の傾斜角度θは、ビスコースの良好な吐出が可能な角度であれば特に限定されるものではないが、実施例の傾斜角度θは約60度である。この塗着ノズル20を用いることにより、塗工されるビスコースの塗工厚みの調整が容易となる。
【0019】
塗着ノズル20により一面P1側にビスコースが塗着された原紙Pは、図示しない従来公知の筒状体形成手段により筒状体P10に形成される。その際、用途に応じてビスコース塗着面(原紙Pの一面P1側)を筒状体P10の内面側あるいは外面側とすることができる。
【0020】
マンドレル30は、ビスコースが塗着された筒状体P10に嵌挿されて支持するための棒状部材である。このマンドレル30では、筒状体P10の内面側に対してビスコースを塗着しないものであるため、内部にビスコースを塗着するための各種部材を収納する必要がなく、製造するファイブラスケーシングの直径に対応した任意の直径とすることができる。
【0021】
上記第1実施例に係るファイブラスケーシングの製法では、シート状の原紙Pの一面P1側にビスコースを塗着した後、前記原紙Pを筒状体P10に成形するように構成されるため、筒状体P10を成形した後にビスコースを塗着する必要がない。そのため、内面側にビスコースが塗着されたファイブラスケーシングを製造する場合であっても、任意の直径(特に小径)のマンドレルやサイズが限定されない任意の幅の原紙を用いて小径のファイブラスケーシングを容易に製造することができる。一方、外面側にビスコースが塗着されたファイブラスケーシングを製造する場合は、ファイブラスケーシングの直径に対応して適宜交換が必要な外面用のビスコース塗着ダイスを用いる必要がないため、簡易な設備で任意の直径(特に小径)のファイブラスケーシングを容易に製造することができる。
【0022】
また、シート状の原紙Pの一面P1側にビスコースを塗着するに際して前記ビスコース塗着ノズル20を用いることにより、原紙Pの一面P1側に簡易な構成で容易にビスコースを塗着することができる。
【0023】
図5に示す第2実施例に係るファイブラスケーシングの製造工程は、内面と外面の双方にビスコースを塗着して筒状のファイブラスケーシングを製造するものであって、シート状の原紙Pの一面P1側にビスコースを塗着した後、ビスコース塗着面(原紙Pの一面P1側)を内側に原紙Pを筒状体P10に成形し、筒状体P10の外面P12側にビスコースを塗着するように構成される。また、外面P12側にビスコースが塗着された筒状体P10は、第1実施例と同様に、従来公知の凝固浴工程、再生浴工程、水洗浴工程、乾燥工程、巻取工程を経ることにより、製品として得られる。図において、符号10Aはシート状の原紙Pの一面P1側にビスコースを塗着するとともに筒状体P10の外面P12側にビスコースを塗着するためのビスコース塗着装置である。
【0024】
次に、第2実施例に係るファイブラスケーシングの製法の好ましい実施例をビスコース塗着装置10Aとともに具体的に説明する。ビスコース塗着装置10Aは、ビスコース塗着ノズル20と、マンドレル30と、筒状体P10の外面P12側にビスコースを塗着するための塗着ダイス40とを有する。なお、以下の説明において、第1実施例と同一の符号は同一の構成を表すものとして、その説明を省略する。
【0025】
塗着ノズル20により一面P1側にビスコースが塗着された原紙Pは、図示しない従来公知の筒状体形成手段により筒状体P10に形成される。その際、ビスコース塗着面(原紙Pの一面P1側)は、筒状体P10の内面側とされる。
【0026】
ビスコース塗着ダイス40は、マンドレル30に設置された環状部材であって、筒状体P10の外面にビスコースを塗着するものである。この塗着ダイス40としては、従来公知の外面用塗着ダイスが好適に使用される。
【0027】
上記第2実施例に係るファイブラスケーシングの製法では、シート状の原紙Pの一面P1側にビスコースを塗着した後、ビスコース塗着面(原紙Pの一面P1側)を内側に原紙Pを筒状体P10に成形し、筒状体P10の外面P12側にビスコースを塗着するように構成されるため、筒状体P10を成形した後に筒状体P10の内面P11側にビスコースを塗着する必要がない。そのため、筒状体P10内面P11へのビスコース塗着に必要な様々な部材をマンドレル30内部に収納する必要がなくなり、任意の直径(特に小径)のマンドレルやサイズが限定されない任意の幅の原紙を用いて小径のファイブラスケーシングを容易に製造することができる。
【0028】
なお、本発明のファイブラスケーシングの製法及びビスコース塗着ノズルは、前述の実施例のみに限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲において構成の一部を適宜に変更して実施することができる。
【符号の説明】
【0029】
10 ビスコース塗着装置
20 ビスコース塗着ノズル
22 吐出口
23 ビスコース供給部
24 ビスコース貯留部
30 マンドレル
P 原紙
P10 筒状体
R 原紙ロール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート状の原紙の一面側にビスコースを塗着した後、前記原紙を筒状体に成形することを特徴とするファイブラスケーシングの製法。
【請求項2】
シート状の原紙の一面側にビスコースを塗着した後、前記ビスコース塗着面を内側に前記原紙を筒状体に成形し、前記筒状体の外面側にビスコースを塗着することを特徴とするファイブラスケーシングの製法。
【請求項3】
先端側を下方に傾斜し下側部が上側部より突出した吐出口を有するとともに、前記吐出口に連通しかつビスコース供給部と接続されるビスコース貯留部を有することを特徴とするファイブラスケーシングのためのビスコース塗着ノズル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−76062(P2012−76062A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−226442(P2010−226442)
【出願日】平成22年10月6日(2010.10.6)
【出願人】(592184876)フタムラ化学株式会社 (60)
【Fターム(参考)】