説明

ファイルシステム管理方法、ファイルシステム管理装置、及びファイルシステム管理プログラムを記録した記録媒体

【課題】ファイルシステム管理方法、ファイルシステム管理装置、及びファイルシステム管理プログラムを記録した記録媒体において、スーパーブロックを記録した部分の劣化を防ぎ、信頼性を高める。
【解決手段】スーパーブロック領域は、固定スーパーブロックと、状態スーパーブロック領域30とを有する。状態スーパーブロック領域30は、有効な状態スーパーブロック31と、未使用の状態スーパーブロック領域32とから構成される。状態スーパーブロック31に所定回数以上の更新処理が行われると、制御部によって状態スーパーブロック31の記録位置が変更される。そして、状態スーパーブロック領域30は、使用済みの状態スーパーブロック33と、現在の有効なスーパーブロック31と、未使用のスーパーブロック領域32を含むようになる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ファイルシステム管理方法、ファイルシステム管理装置、及びファイルシステム管理プログラムを記録した記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ハードディスク等の記録媒体に対して情報をファイルとして記録させるためのファイルシステムを管理するファイルシステム管理方法が知られている。従来からファイルシステムは、ファイルの実体と、ファイルを管理する管理情報であるスーパーブロックとを記録媒体の別々の位置に記録しているものが多い。
【0003】
スーパーブロックは、ファイルシステムの総容量や空き容量等の情報を含む情報の固まりであり、記録媒体の固定位置に記録されている。そのため、ファイルシステムの使用回数が増加すると、スーパーブロックに対する書き換え処理の回数が増加し、記録媒体の劣化が進行する。その結果、スーパーブロックの情報を読み出すことができないことがあり、機器がこのファイルシステムをマウントできなくなる問題がある。
【0004】
これに対して、特許文献1には、特定のディレクトリに関する管理情報の更新回数が所定値以上となった時点で、この管理情報を記録媒体上の別の位置に記録させるファイルシステム管理方法が開示されている。しかし、この管理方法は、スーパーブロックの劣化を防ぐためのものではなく、ファイルシステム上のユーザ領域であるディレクトリについての管理情報について劣化を防ぐものであるため、上記問題を解決できない。
【0005】
また、特許文献2には、ファイルシステム上のデータ領域が複数の格納ブロックから構成され、変更があった格納ブロックに対してのみ書き換えを行うことにより書き換え回数を低減させ、記録媒体の劣化を防ぐことができるファイルシステム管理方法が開示されている。しかし、この方法は、スーパーブロックの書き換え回数を低減させるものではないため、上記問題を解決できない。
【0006】
また、特許文献3には、記録媒体を複数のブロックに区分し、所定回数の書き換え回数を超えたブロックを、他のブロックにコピーするファイルシステム管理方法が開示されている。しかし、この方法では、記録媒体上におけるスーパーブロックを記録した部分の劣化を防ぐことができないので、上記問題を解決できない。
【特許文献1】特開2004−213089号公報
【特許文献2】特開2002−251310号公報
【特許文献3】特開平8−272664号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、記録媒体上におけるスーパーブロックを記録した部分の劣化を防ぎ、信頼性の高いファイルシステム管理方法、ファイルシステム管理装置、及びファイルシステム管理プログラムを記録した記録媒体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために請求項1の発明は、スーパーブロックを利用して、記録媒体に対して情報をファイルとして記録させるファイルシステムを管理するファイルシステム管理方法において、前記スーパーブロックは、前記ファイルシステムに関する固定情報を記録するための固定スーパーブロックと、該ファイルシステムに関して随時更新される更新情報を記録するための状態スーパーブロックとを有し、前記固定スーパーブロックは、前記記録媒体の固定位置に記録され、前記状態スーパーブロックは、前記記録媒体の任意の位置に記録され、前記状態スーパーブロックに対して所定回数以上の更新処理が行われたとき、該状態スーパーブロックの記録位置を現在の記録位置とは別の記録位置に変更するものである。
【0009】
請求項2の発明は、スーパーブロックを利用して、記録媒体に対して情報をファイルとして記録させるファイルシステムを管理するファイルシステム管理装置において、前記スーパーブロックは、前記ファイルシステムに関する固定情報を記録するための固定スーパーブロックと、該ファイルシステムに関して随時更新される更新情報を記録するための状態スーパーブロックとを有し、前記固定スーパーブロックは、前記記録媒体の固定位置に記録され、前記状態スーパーブロックは、前記記録媒体の任意の位置に記録され、前記状態スーパーブロックに対して所定回数以上の更新処理が行われたとき、該状態スーパーブロックの記録位置を現在の記録位置とは別の記録位置に変更するものである。
【0010】
請求項3の発明は、請求項1に記載のファイルシステム管理方法をコンピュータに実行させるためのファイルシステム管理プログラムを記録したコンピュータ読取可能な記録媒体である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、スーパーブロックは、固定スーパーブロックと、状態スーパーブロックとを有し、状態スーパーブロックに対して所定回数以上の更新処理が行われたとき、状態スーパーブロックは、記録位置を現在の記録位置とは別の記録位置に変更される。そのため、従来と異なり、スーパーブロックの記録位置が実質的に固定されていないので、記録媒体上における同じ記録位置の部分に対して更新処理が繰り返される回数を制限することができ、記録媒体の劣化を抑制することができる。
【0012】
また、特許文献1の発明と異なり、記録媒体上におけるスーパーブロックを記録した部分の劣化を防ぐので、ファイルシステム全体の信頼性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の一実施形態に係るコンピュータ(ファイルシステム管理装置)について、図1を参照して説明する。以下の実施形態では、本発明のファイルシステム管理装置をコンピュータ1に適用した場合について説明する。図1はコンピュータ1の内部構成を示すブロック図である。
【0014】
コンピュータ1は、情報を読み書き可能な記録媒体であるハードディスク(HDD;請求項における記録媒体)12と、装置に各種指示を行うための操作部13と、各種メッセージ等を表示するための表示部14と、演算結果等の情報を一時的に記憶するためのメモリ15と、装置各部を制御するための制御部11とを備える。HDD12は、情報をファイルとして記録するためのファイルシステムを用いて制御されている。制御部11は、HDD12のファイルシステムを管理している。
【0015】
次に、HDD12を制御するファイルシステムについて、図2に示す概念図を参照して説明する。ファイルシステム2は、スーパーブロック領域3と、管理データ領域4と、ユーザデータ領域5とを有する。
【0016】
スーパーブロック領域3は、ファイルシステム2に関する固定情報を記録するための固定スーパーブロック20と、ファイルシステム2に関して随時更新される更新情報を記録するための状態スーパーブロック領域30とを有する。固定スーパーブロック20は、HDD12(図1参照)の固定位置に記録され、状態スーパーブロック領域30は、HDD12(図1参照)の任意の位置に記録される。詳細については後述する。
【0017】
固定スーパーブロック20には、ファイルシステム2の総容量や、管理データ領域4の開始アドレスや、ユーザデータ領域5の情報などの固定情報が記録されている。状態スーパーブロック領域30には、ファイルシステム2の空き情報や、ファイルシステム2の更新日時等の稼動中に更新される情報が記録されている。
【0018】
管理データ領域4には、ユーザデータ領域5のうちのどの領域を使用しているか等の情報が記録されている。ユーザデータ領域5には、ファイル及びディレクトリ等の実データの情報が記録されている。
【0019】
次に、状態スーパーブロック領域30の詳細について、図3を参照して説明する。図3(a)(b)は、状態スーパーブロック領域30の使用状態を説明する図である。
【0020】
まず、状態スーパーブロック領域30は、図3(a)に示すように、有効な状態スーパーブロック31と、未使用の状態スーパーブロック領域32とから構成される。状態スーパーブロック31に所定回数以上の更新処理が行われると、制御部11によって状態スーパーブロック31の記録位置が変更される。
【0021】
状態スーパーブロック31の記録位置が変更されると、状態スーパーブロック領域30は、図3(b)に示すように、状態スーパーブロック31の記録位置が変更されて、使用済みの状態スーパーブロック33と、現在の有効なスーパーブロック31と、未使用のスーパーブロック領域32とから構成される。
【0022】
次に、状態スーパーブロックの記録位置を変更する処理の手順について、図4に示すフローチャートを参照して説明する。まず、状態スーパーブロックが更新されると(S1)、制御部11は、更新回数を1つ増加させ(S2)、更新回数が所定値を超えているか否かの判断を行う(S3)。
【0023】
上記S3の判断の結果、所定値を超えている場合(S4でYES)、更新回数を0にして(S5)、更新後の状態スーパーブロックの内容を、新しい記録位置の状態スーパーブロック領域に書き込む(S6)。そして、制御部11は、メモリ15上に一時記憶されている固定スーパーブロックの情報の中の状態スーパーブロックの記録位置(アドレス)を更新した後(S7)、HDD12上の固定スーパーブロックの情報を書き換える(S8)。
【0024】
一方、上記S3の判断の結果、所定値を超えていない場合(S4でNO)、制御部11は、状態スーパーブロックの上書き処理を行った後(S9)、上記S5以降の処理を行なわないで、本処理を終了する。
【0025】
次に、ファイルシステム2を使用可能状態にする、所謂、マウント処理について、図5に示すフローチャートを参照して説明する。ここでは、ファイルシステム2が、コンピュータ1によってマウントされていないものとする。
【0026】
制御部11は、ファイルシステム2の固定スーパーブロック20から情報を読出し(S11)、読出した情報の中の状態スーパーブロック31の記録位置のアドレスを基に、状態スーパーブロック31の情報を読み出す(S12)。そして、固定スーパーブロック20の情報と、状態スーパーブロック31の情報とを検査し(S13)、これらの情報の矛盾がない場合、つまり、検査がOKの場合(S14でYES)、ファイルシステム2のマウントを行う(S16)。一方、情報に不整合が生じている等の理由により、検査がOKではない場合(S14でNO)、ファイルシステム2のマウントを行わない(S15)。
【0027】
上記S13、S14における検査処理は、例えば、固定スーパーブロック20に記録されているファイルシステム2の総容量と、状態スーパーブロック31に記録されている空き容量とを比較して、総容量よりも空き容量の方が多い等の矛盾が生じていないかどうかの検査を行うものである。
【0028】
上述したように、本実施形態に係るコンピュータ1によれば、スーパーブロック3は、固定スーパーブロック20と、状態スーパーブロック31とを有し、状態スーパーブロック31に対して所定回数以上の更新処理が行われたとき、状態スーパーブロック31は、制御部11によって、記録位置を現在の記録位置とは別の記録位置に変更される。そのため、従来と異なり、スーパーブロックの記録位置が実質的に固定されていないので、HDD12における同じ記録位置の部分に対して更新処理が繰り返される回数を制限することができ、HDD12の劣化を抑制することができる。
【0029】
また、特許文献1の発明と異なり、HDD12におけるスーパーブロック3を記録した部分の劣化を防ぐので、ファイルシステム2全体の信頼性を向上させることができる。
【0030】
なお、本発明は上記実施形態の構成に限定されるものではなく、発明の趣旨を変更しない範囲で適宜に種々の変形が可能である。例えば、上記実施形態では、本発明のファイルシステム管理装置をコンピュータ1に適用した例を示したが、これに限られず、例えば、携帯端末に適用したものであってもよい。また、上記実施形態のコンピュータ1が行うファイルシステム管理処理を実行させるためのプログラムを、制御部に読み取らせて実行させるものであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の一実施形態に係るコンピュータの内部構成を示すブロック図。
【図2】上記コンピュータのファイルシステムの概念図。
【図3】(a)(b)は、上記ファイルシステムの状態スーパーブロックの記録位置を示す概念図。
【図4】上記ファイルシステムにおける状態スーパーブロックの更新処理の手順を示すフローチャート。
【図5】上記ファイルシステムのマウント処理の手順を示すフローチャート。
【符号の説明】
【0032】
1 コンピュータ(ファイルシステム管理装置)
2 ファイルシステム
3 スーパーブロック領域
20 固定スーパーブロック
30 状態スーパーブロック領域
31 状態スーパーブロック

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スーパーブロックを利用して、記録媒体に対して情報をファイルとして記録させるファイルシステムを管理するファイルシステム管理方法において、
前記スーパーブロックは、前記ファイルシステムに関する固定情報を記録するための固定スーパーブロックと、該ファイルシステムに関して随時更新される更新情報を記録するための状態スーパーブロックとを有し、
前記固定スーパーブロックは、前記記録媒体の固定位置に記録され、
前記状態スーパーブロックは、前記記録媒体の任意の位置に記録され、
前記状態スーパーブロックに対して所定回数以上の更新処理が行われたとき、該状態スーパーブロックの記録位置を現在の記録位置とは別の記録位置に変更することを特徴とするファイルシステム管理方法。
【請求項2】
スーパーブロックを利用して、記録媒体に対して情報をファイルとして記録させるファイルシステムを管理するファイルシステム管理装置において、
前記スーパーブロックは、前記ファイルシステムに関する固定情報を記録するための固定スーパーブロックと、該ファイルシステムに関して随時更新される更新情報を記録するための状態スーパーブロックとを有し、
前記固定スーパーブロックは、前記記録媒体の固定位置に記録され、
前記状態スーパーブロックは、前記記録媒体の任意の位置に記録され、
前記状態スーパーブロックに対して所定回数以上の更新処理が行われたとき、該状態スーパーブロックの記録位置を現在の記録位置とは別の記録位置に変更することを特徴とするファイルシステム管理装置。
【請求項3】
請求項1に記載のファイルシステム管理方法をコンピュータに実行させるためのファイルシステム管理プログラムを記録したコンピュータ読取可能な記録媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−48749(P2009−48749A)
【公開日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−216441(P2007−216441)
【出願日】平成19年8月22日(2007.8.22)
【出願人】(000201113)船井電機株式会社 (7,855)
【Fターム(参考)】