説明

ファクシミリ装置

【課題】QRコードなどの情報記号を送信する際の通信解像度不足に対処可能なファクシミリ装置を提供する。
【解決手段】相手機に送信する画像にQRコードなどの情報記号が含まれているか否かを判別し、含まれている場合はその情報記号を解読可能に送信するための最低解像度を算出し、相手機との能力交換によって得た通信解像度と最低解像度とを比較し、通信解像度が最低解像度より低い場合は、相手機への画像の送信を中断する、あるいは通信中に警告表示する、履歴を残す、情報記号の内容を文字列に変換する、情報記号を拡大する、通信解像度で情報欠落しない複数の情報記号に分割するなどの対応処理を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ファクシミリ装置に係り、特に、QRコードなどの二次元コードを含む画像の送信に対応したファクシミリ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
QRコードなどの情報記号が含まれている原稿をファクシミリ送信する場合、受信機側で印刷出力された画像において、情報記号の読み取り・解読が適切に行われるように送信することが望ましい。
【0003】
たとえば、送信原稿が傾いた状態で読み取られた場合でも受信機側で正常な情報記号を再現させるために、読み取った送信原稿の画像をそのままファクシミリデータとして送信するのではなく、画像中の情報記号については、一度解読してデータ化した後、その解読データに基づいて情報記号のイメージデータを再構築し、その再構築したイメージデータに置換した状態で画像を送信するファクシミリ装置がある(たとえば、特許文献1参照。)。
【0004】
【特許文献1】特開平11−331445号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
原稿から読み取った情報記号を再構築する技術は、読み取り時に発生し得る画像欠損や傾斜などを補正するには有効である。しかしながら、ファクシミリ通信においては、通信規格で規定されているノーマル(主走査方向8ドット/ミリ、副走査方向3.85ドット/ミリ)やファイン(主走査方向8ドット/ミリ、副走査方向7.7ドット/ミリ)などの解像度の中から相手機との能力交換で決定された解像度(通信解像度)で画像の送信が行われる。このため、能力交換で決定された通信解像度が不足する場合には、通信時に情報欠落が生じて、相手機側で印刷出力された情報記号を適切に読み取って解読できないおそれがある。
【0006】
本発明は、上記の問題を解決しようとするものであり、情報記号の送信に際して通信解像度の不足に対処可能なファクシミリ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる目的を達成するための本発明の要旨とするところは、次の各項の発明に存する。
【0008】
[1]相手機に送信する画像に所定の情報記号が含まれているか否かを判別し、含まれている場合はその情報記号を解読可能に送信するための最低解像度を算出し、前記相手機との能力交換によって得た通信解像度と前記最低解像度とを比較し、前記通信解像度が前記最低解像度より低い場合は、前記相手機への前記画像の送信を中断する
ことを特徴とするファクシミリ装置。
【0009】
上記発明では、相手機との能力交換で決めた通信解像度が、情報記号を情報欠落なく送信するための最低解像度より低い場合に、通信を中断するので、読み取りエラーの生じ得る状態のままで情報記号が送信されることが防止される。
【0010】
[2]相手機に送信する画像に所定の情報記号が含まれているか否かを判別し、含まれている場合はその情報記号を解読可能に送信するための最低解像度を算出し、前記相手機との能力交換によって得た通信解像度と前記最低解像度とを比較し、前記通信解像度が前記最低解像度より低い場合は、所定の警告を前記相手機への前記画像の送信中に表示部に表示する
ことを特徴とするファクシミリ装置。
【0011】
上記発明では、情報記号が解像度不足で送信されることを示す警告を表示するので、この警告を見たユーザは、情報記号の必要性に応じた対応を取ることができる。たとえば、送信画像に含まれている情報記号が今回の送信相手には関係ない場合には、解像度不足は実質的に不利益を与えないので通信を継続させ、情報記号の送信を必要とする場合は、送信を中止させたり、別の方法で情報記号を送信したり、情報記号を拡大してから再送信したりするといった対応が可能になる。
【0012】
[3]相手機に送信する画像に所定の情報記号が含まれているか否かを判別し、含まれている場合はその情報記号を解読可能に送信するための最低解像度を算出し、前記相手機との能力交換によって得た通信解像度と前記最低解像度とを比較し、前記通信解像度が前記最低解像度より低い場合は、解像度不足で情報記号が送信されたことを前記相手機への前記画像の送信履歴として記憶する
ことを特徴とするファクシミリ装置。
【0013】
上記発明では、情報記号が解像度不足で送信されたことを示す送信履歴を残すことで、そのような送信が行われたことを後に確認することが可能になる。たとえば、送信画像に含まれている情報記号が今回の送信相手には関係のない場合には、解像度不足は実質的に不利益を与えないので、通信を中断させずに継続させることが有効であり、また送信履歴を残してあるので、後から送信状態の確認を要する事態が生じても、それに対応することができる。
【0014】
[4]相手機に送信する画像に所定の情報記号が含まれているか否かを判別し、含まれている場合はその情報記号を解読可能に送信するための最低解像度を算出し、前記相手機との能力交換によって得た通信解像度と前記最低解像度とを比較し、前記通信解像度が前記最低解像度より低い場合は、前記通信解像度で解読可能となるサイズに前記情報記号を拡大した前記画像を前記相手機に送信する
ことを特徴とするファクシミリ装置。
【0015】
上記発明では、通信解像度の不足により情報記号を元のサイズのままで情報の欠落なく送信できない場合に、その情報記号を情報欠落の生じない大きさに拡大して送信するので、情報記号を高い信頼性で送信できる。また、拡大した情報記号を余白に挿入すれば、情報記号以外の他の画像に影響がなく、ユーザに不利益を与えない。
【0016】
[5]相手機に送信する画像に所定の情報記号が含まれているか否かを判別し、含まれている場合はその情報記号を解読可能に送信するための最低解像度を算出し、前記相手機との能力交換によって得た通信解像度と前記最低解像度とを比較し、前記通信解像度が前記最低解像度より低い場合は、前記情報記号の内容を示す文字列を付加した前記画像を前記相手機に送信する
ことを特徴とするファクシミリ装置。
【0017】
上記発明では、通信解像度の不足により情報記号を元のサイズのままで情報の欠落なく送信できない場合に、その情報記号の内容を文字列に変換して送信するので、情報記号の内容を確実に受信側に伝達することができる。
【0018】
[6]前記情報記号を前記文字列で置き換える
ことを特徴とする[5]に記載のファクシミリ装置。
【0019】
上記発明では、情報記号を文字列で置き換えるので、送信画像の他の部分に影響を与えない。
【0020】
[7]相手機に送信する画像に所定の情報記号が含まれているか否かを判別し、含まれている場合はその情報記号を解読可能に送信するための最低解像度を算出し、前記相手機との能力交換によって得た通信解像度と前記最低解像度とを比較し、前記通信解像度が前記最低解像度より低い場合は、前記情報記号を前記通信解像度で解読可能な複数の情報記号に分割した前記画像を前記相手機に送信する
ことを特徴とするファクシミリ装置。
【0021】
上記発明では、通信解像度の不足により情報記号を元のサイズのままで情報の欠落なく送信できない場合に、その情報記号の通信解像度で情報欠落なく送信可能な複数の情報記号に分割して送信するので、低解像度の通信においても情報記号の内容を確実に受信側に伝達することができる。
【0022】
[8]前記情報記号は、二次元コードである
ことを特徴とする[1]乃至[7]のいずれか1つの記載のファクシミリ装置。
【0023】
上記発明では、二次元コードは多数のセルで構成されているので、解像度不足の影響を受けやすく、対応処理が重要となる。
【発明の効果】
【0024】
本発明に係るファクシミリ装置によれば、相手機との能力交換によって決定された通信解像度が情報記号の送信にとって解像度不足となった場合に、通信中断、警告表示、履歴を残す、あるいは情報記号の内容を文字列に変換する、情報記号の拡大・分割といった対応処理を行うので、情報記号の送信に関する確実性・信頼性を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、図面に基づき本発明の実施の形態を説明する。
【0026】
図1は、本発明の実施の形態に係るファクシミリ装置10の概略構成を示すブロック図である。ファクシミリ装置10は、当該ファクシミリ装置10の動作を統括制御するCPU(Central Processing Unit)11にバス12を介してスキャナ部13と、プリンタ部14と、プログラムメモリ15と、システムメモリ16と、操作表示部17と、ハードディスク装置18と、不揮発メモリ19と、ネットワークI/F部21と、ファクシミリ通信制御部22とを接続して構成される。
【0027】
スキャナ部13は、原稿を光学的に読み取って画像データを取得する機能を果たす。スキャナ部13は、たとえば、原稿に光を照射する光源と、その反射光を受けて原稿を幅方向に1ライン分読み取るラインイメージセンサと、ライン単位の読取位置を原稿の長さ方向に順次移動させる移動手段と、原稿からの反射光をラインイメージセンサに導いて結像させるレンズやミラーなどからなる光学経路、ラインイメージセンサの出力するアナログ画像信号をデジタルの画像データに変換する変換部などを備えて構成される。
【0028】
プリンタ部14は、画像データに応じた画像を記録紙に印刷する機能を果たす。ここでは、記録紙の搬送装置と、感光体ドラムと、帯電装置と、レーザーユニットと、現像装置と、転写分離装置と、クリーニング装置と、定着装置とを有し、電子写真プロセスによって画像形成を行う、所謂、レーザープリンタとして構成されている。他の方式のプリンタであっても構わない。
【0029】
プログラムメモリ15は各種のプログラムを格納し、これらのプログラムに従ってCPU11が処理を実行することによりファクシミリ装置10としての機能が実現される。システムメモリ16はCPU11がプログラムを実行する際に各種のデータを一時的に格納するワークメモリや画像メモリとして使用されるランダム・アクセス・メモリである。不揮発メモリ19は、電源をオフしても記憶内容が保持されるメモリであり、送信先のアドレスや電話番号が登録されたアドレス帳データなどが記憶される。
【0030】
操作表示部17は、押下された座標位置を検出するタッチパネルを表面に備えた液晶ディスプレイ(LCD…Liquid Crystal Display)とテンキーやスタートボタンなどの各種操作スイッチとから構成され、各種の操作画面や設定画面、案内画面、警告を表示したり、ユーザから各種の操作を受け付けたりする。
【0031】
ハードディスク装置18は大容量の不揮発記憶装置であり、送信予約されたジョブおよびその画像データ、他のファクシミリ装置から受信した受信データ(特に未プリントのものなど)、送信履歴、受信履歴などが不揮発に記憶される。
【0032】
ネットワークI/F部25は、LAN(Local Area Network)やインターネットなどのネットワークを通じて外部端末と通信する機能を果たす。ファクシミリ通信制御部22は、ファクシミリ送信やファクシミリ受信のための通信制御、発呼(ダイアル)、着呼、電話回線との接続などを行う。
【0033】
ファクシミリ装置10は、相手機に送信する画像に、二次元コードなどの情報記号が含まれているか否かを判別し、含まれている場合はその情報記号を解読可能に送信するための最低解像度を算出し、この最低解像度と相手機との能力交換によって決定した通信解像度とを比較し、通信解像度が最低解像度より低い場合は、所定の対応処理を行うように構成されている。解読可能とは、好ましくは情報欠落なく送信することである。なお、誤り訂正能力がある場合にはその誤り訂正能力でカバーできる範囲内に情報欠落が収まる場合を解読可能としてもよい。
【0034】
本実施の形態では、以後、情報記号が二次元コードの1つであるQRコードである場合を例に説明する。QRコードは小さな正方形の点(セル)を縦横同じ数だけ並べたマトリックス型2次元コードであり、縦、横二方向に情報を持つことで、記録できる情報量を一次元バーコードに比べて飛躍的に増加させている。QRコードは、数字、英数字、8ビットのバイナリデータなど情報を記録できる。
【0035】
QRコードのセル数は、21セル×21セル〜177セル×177セルの範囲で4セル/辺を単位に設定でき、セル数が多いほどたくさんの情報を記録できる。1セルのサイズの規定はないが、推奨サイズはありそれに従うことが好ましい。QRコードの3つの角には「回」の字型の「切り出しシンボル」(ファインダパターン)が配置されており、360度どの向きから読み取っても情報を読み出せるようにされている。
【0036】
また、QRコードは誤り訂正機能を持っており、QRコードの一部に汚れや破損があってもデータの復元が可能にされている。誤り訂正能力は、コードワードの約7%を復元可能なレベルL、約15%を復元可能なレベルM、約25%を復元可能なレベルQ、約30%の復元が可能なレベルHから選択できる。
【0037】
また、QRコードは、情報を複数のQRコードに分割(最大16分割)して記録することができる。たとえば、細長いエリアに正方形のQRコードを複数配置するように利用される。
【0038】
通常、QRコードの大きさは、データ量や文字種、誤り訂正レベルから必要なセル数を求め、印字するプリンタや読み取るスキャナの性能(解像度)から1セルのサイズを設定することで確定される。
【0039】
以下、QRコード(情報記号)を解読可能に送信するために必要な最低解像度より通信解像度が低い場合に行う対応処理の内容別に、ファクシミリ装置10の送信動作を説明する。
【0040】
<第1の対応処理>
図2は、第1の対応処理を行う場合におけるファクシミリ装置10の送信動作の流れを示している。第1の対応処理は通信の中断である。ファクシミリ装置10は、送信対象の原稿がスキャナ部13にセットされた状態で(ステップS101)、スタートSWの操作を受けると(ステップS102)、スキャナ部13によって原稿を読み取ると共に(ステップS103)、この読み取りで得た送信対象の画像データをシステムメモリ16に蓄積記憶する(ステップS104)。この読み取りから蓄積記憶までの動作は、セットされた全ページの読み取りが完了するまで繰り返し行われる(ステップS105;No)。なお、読み取り解像度は、ファクシミリ通信における最高解像度以上にすることが好ましく、少なくともファイン以上の解像度で読み取る。
【0041】
CPU11は、読み取りが完了すると(ステップS105;Yes)、システムメモリ16に蓄積記憶されている送信対象の画像データを解析して、QRコード(情報記号)を検出する(ステップS106)。QRコードが検出されない場合は(ステップS107;No)、システムメモリ16に蓄積記憶されている送信対象の画像データをそのまま相手機へ送信する。詳細には、オフフックし(ステップS117)、相手先へダイアル(発呼)し(ステップS118)、繋がったら相手機と通信に係る能力交換(解像度や符号化方式、通信速度などに係わる能力の交換)を行い(ステップS119)、該能力交換で決定した内容(解像度、符号化方式、通信速度など)に従って送信対象の画像データを相手機に送信して(ステップS120)処理を終了する。
【0042】
送信対象の画像データからQRコードが検出された場合は(ステップS107;Yes)、QRコードをデコードし、このQQRコードに記録されている情報の内容を取得する(ステップS108)。そして、取得した情報を、元のQRコードのサイズ(面積)で送信するために必要な最低解像度を導出して(ステップS109)、システムメモリ16に記憶する(ステップS110)。最低解像度は、QRコードを解読可能に送信するために必要な解像度であり、たとえば、、情報欠落なく相手機(受信機)へQRコードを送信するために必要な最小の解像度である。
【0043】
ここでは、QRコードをデコードして取得した情報の情報量(データ量と文字種)と、所定の誤り訂正能力のレベルとから必要セル数を求め、この必要セル数を元のQRコードと同じ面積の正方形領域に縦横同じ密度でマトリクス状に配置するために必要な解像度を最低解像度として求める。なお、誤り訂正能力として、元のQRコードで設定されていたレベルを使用してもよいし、操作表示部17などから予め設定されて不揮発メモリ19などに記憶されているレベルを使用してもよい。
【0044】
最低解像度を求めて記憶した後、オフフックし(ステップS111)、相手先へダイアル(発呼)し(ステップS112)、繋がったら相手機と能力交換し(ステップS113)、該能力交換により決定された解像度(通信解像度)と先に求めた最低解像度とを比較する(ステップS114)。通信解像度が最低解像度以上の場合は(ステップS115;Yes)、該能力交換で決定した内容に従って送信対象の画像データを相手機に送信して(ステップS120)処理を終了する。一方、通信解像度が最低解像度より低い場合は(ステップS115;No)、相手機との通信を中断して(ステップS116)処理を終了する。
【0045】
このように、相手機との能力交換で決めた通信解像度が、QRコードを情報欠落なく送信するための最低解像度より低い場合に、通信を中断するので、読み取りエラーの生じ得る状態のままでQRコードが送信されることが防止される。
【0046】
なお、元のQRコードと同じサイズ内であって能力交換で決められた通信解像度によって情報欠落なく送信可能なQRコードに記録可能な最大情報量Jを求め、この情報量JとステップS108で求めた元のQRコードに記録されていた情報量Kとを比較し、情報量J≧情報量Kの場合は送信を継続し、情報量J<情報量Kの場合は、解像度不足と判断して通信を中断するように構成されてもよい。
【0047】
たとえば、元のQRコードのサイズが10ミリ×10ミリで、通信解像度がノーマル(副走査方向3.85ドット/ミリ、主走査方向8ドット/ミリ)の場合、マトリクスの密度は3.85ドット/ミリとし、QRコードの1辺は38.5セル未満になる。21セルから4セル単位に増加させた場合に38.5セル以下で取り得る最大セル数は37セルとなる。したがって、元のQRコードのサイズかつ通信解像度で情報欠落なく送信可能なQRコードは37セル×37セルのQRコードである。所定の誤り訂正能力においてこのQRコードで送信可能な情報量Jを求め、該情報量Jが元のQRコードに記録されていた情報量K未満であれば、解像度不足となる。このように情報量を基準に解像度不足を判定してもよい。
【0048】
<第2の対応処理>
図3は、第2の対応処理を行う場合におけるファクシミリ装置10の送信動作の流れを示している。第2の対応処理は警告表示である。図2と同一部分には同一のステップ番号を付して有り、その説明は省略する。
【0049】
能力交換で定めた通信解像度が、QRコードを情報欠落なく送信するのに必要な最低解像度未満の場合(ステップS115;No)、所定の警告表示を通信中に行うと共に(ステップS131)、能力交換で決定した内容に従って送信対象の画像データを相手機に送信して(ステップS120)処理を終了する。警告表示は、QRコードが情報欠落の生じる解像度で送信されることを通知する内容であればよい。たとえば、「<警告> 本原稿中のQRコードは送信先で解読不可となる可能性が高いです。」といったメッセージが警告表示される。警告表示は、通信が終了するまで行われてもよいし、操作表示部17を通じてユーザから所定の確認操作を受けると終了となるようにされてもよい。
【0050】
このように、QRコードが解像度不足で送信されることを示す警告を表示するので、この警告を見たユーザは、QRコードの必要性に応じた対応を取ることができる。たとえば、送信画像に含まれているQRコードが今回の送信相手には関係ないような場合には、解像度不足は実質的にユーザに不利益を与えないので通信を継続することが有効となる。一方、QRコードを情報の欠落なく送信する必要がある場合には、ユーザはその警告を見て、送信を中止させたり、別の方法でQRコードを送信したり、QRコードを拡大してから再送信したりするといった対応が可能になる。
【0051】
<第3の対応処理>
図4は、第3の対応処理を行う場合におけるファクシミリ装置10の送信動作の流れを示している。第3の対応処理は、送信履歴(ログ)の記録である。図2と同一部分には同一のステップ番号を付して有り、その説明は省略する。
【0052】
能力交換で定めた通信解像度が、QRコードを情報欠落なく送信するのに必要な最低解像度未満の場合(ステップS115;No)、送信画像にQRコードが含まれ、かつ解像度不足で送信されたことを送信履歴として記憶すると共に(ステップS141)、能力交換で決定した内容に従って送信対象の画像データを相手機に送信して(ステップS120)処理を終了する。なお、図中、点線で処理の流れを示したように、能力交換で決定した内容に従って送信対象の画像データを相手機に送信した(ステップS142)後、該送信に係るレポート(ステップS141で記憶した送信履歴の内容)を自動で印刷出力する(ステップS143)ように構成されてもよい。
【0053】
このように、QRコードが解像度不足で送信されたことを示す送信履歴を残すことで、そのような送信が行われたことを後に確認することが可能になる。たとえば、送信画像に含まれているQRコードが今回の送信相手には関係ない場合には、解像度不足は実質的に受信者に不利益を与えないので、通信を中断させずに継続させることが有効であり、また送信履歴を残してあるので、後から送信状態の確認を要する事態が発生しても、それに対応することができる。
【0054】
<第4の対応処理>
図5は、第4の対応処理を行う場合におけるファクシミリ装置10の送信動作の流れを示している。第4の対応処理は、解像度不足が生じないようにQRコードを拡大して送信することである。図2と同一部分には同一のステップ番号を付して有り、その説明は省略する。
【0055】
能力交換で定めた通信解像度が、QRコードを情報欠落なく送信するのに必要な最低解像度未満の場合(ステップS115;No)、送信画像に含まれるQRコードに対して拡大処理を施した(ステップS150)後、その拡大されたQRコードを含む画像の画像データを、能力交換で決定した内容に従って相手機に送信して(ステップS120)処理を終了する。
【0056】
図6は、拡大処理(図5のステップS150)の詳細を示している。まず、元のQRコードに含まれていた情報(情報量)を、能力交換で決まった通信解像度で情報欠落なく送信するために必要なQRコードの大きさ(面積)を算出する(ステップS151)。たとえば、拡大後の面積=元のQRコードの面積×最低通信解像度÷通信解像度にて求める。
【0057】
次に、元のQRコードが含まれている画像(ページ)内の余白を検出し(ステップS152)、その余白に拡大後のQRコードが収まるか否かを調べ(ステップS153)、収まる場合は(ステップS153;Yes)、その余白に拡大後のQRコードを挿入して(ステップS156)、終了する。
【0058】
検出した余白に拡大後のQRコードが収まらない場合は(ステップS153;No)、そのページの裏面または他のページがあるか否かを調べ(ステップS154)、裏面または他のページが存在すれば(ステップS154;Yes)、その裏面またはそのページの余白を検出した(ステップS155)後、ステップS153に移行し、その余白に拡大後のQRコードが収まるか否かを調べる。裏面も他のページも存在しない場合は(ステップS154;No)、エラー終了とする。なお、エラー終了の代わりに、他の対応処理を実行してもよい。
【0059】
このように、通信解像度の不足によりQRコードを元のサイズのままで情報の欠落なく送信できない場合に、そのQRコードを情報欠落の生じない大きさに拡大して余白に収めた画像を送信するので、QRコードを高い信頼性で送信できる。また、余白に挿入するので、QRコード以外の他の画像に影響がなく、ユーザに不利益を与えない。なお、QRコードは単純に拡大してもよいし、拡大後のサイズを有するQRコードを、元のQRコードに含まれていた情報から再構築してもよい。
【0060】
<第5の対応処理>
図7は、第5の対応処理を行う場合におけるファクシミリ装置10の送信動作の流れを示している。第5の対応処理では、QRコードの内容を文字列に変換して画像に挿入する。図2と同一部分には同一のステップ番号を付して有り、その説明は省略する。
【0061】
能力交換で定めた通信解像度が、QRコードを情報欠落なく送信するのに必要な最低解像度未満の場合(ステップS115;No)、送信画像に含まれるQRコードに記録されている情報の内容を示す文字列を該送信画像に挿入した(ステップS160)後、その送信画像の画像データを、能力交換で決定した内容に従って相手機に送信して(ステップS120)処理を終了する。
【0062】
図8は、文字列への変換処理(図7のステップS160)の詳細を示している。まず、元のQRコードに記録されていた情報の内容がURL(Uniform Resource Locator)であるか否かを識別し(ステップS161)、URLでない場合は(ステップS162;No)、他の対応処理へ移行する(ステップS163)。URLの場合は(ステップS162;Yes)、ページ内におけるQRコードの位置を検出し(ステップS164)、その位置がページの上または下の余白部内か否かを判定する(ステップS165)。
【0063】
上または下の余白部内の場合は(ステップS165;Yes)、能力交換で決まった通信解像度において判別可能なフォントサイズを、たとえば、予め通信解像度とフォントサイズとが対応付けて記憶されているルックアップテーブルを参照して、求める(ステップS171)。そして、上または下の余白部にこのフォントサイズの文字列で表したURLを挿入して(ステップS172)処理を終了する。
【0064】
QRコードの位置がページ内の上または下の余白部内でない場合は(ステップS165;No)、元のQRコードの面積を算出し(ステップS166)、その面積内に先ほどのURLが収まるフォントサイズを算出する(ステップS167)。算出したフォントサイズが能力交換で決まった通信解像度で判別可能なフォントサイズ以上か否かを判別し(ステップS168)、判別可能なフォントサイズ以上であれば(ステップS168;Yes)、元のQRコードを、算出したフォントサイズの文字列で表したURLに置き換えて(ステップS169)処理を終了する。
【0065】
元のQRコードの面積内にURLを収めるためのフォントサイズが、判別可能なフォントサイズより小さい場合は(ステップS168;No)、QRコードのあった部分に、当該QRコードに対応するURLを上または下の余白部に記載した旨のメッセージを表示する(ステップS170)。そして、能力交換で決まった通信解像度で判別可能なフォントサイズを求め(ステップS171)、上または下の余白部にこのフォントサイズの文字列で表したURLを挿入して(ステップS172)処理を終了する。図9は、元のQRコード40(同図(a)参照)をURL41に置き換えた(同図(b)参照)場合の一例を示している。
【0066】
このように、通信解像度の不足によりQRコードを元のサイズのままで情報の欠落なく送信できない場合に、そのQRコードの内容を文字列に変換して送信するので、QRコードの内容を確実に相手機に伝達することができる。なお、上記の例ではURLの場合にQRコードから文字列への変換を行ったが、文字列への変換は情報内容がURLである場合に限定されるものではない。
【0067】
また、変換後の文字数が多くて、判別可能なフォントサイズで余白に記載できない場合は、エラー終了もしくは他の対応処理へ移行するように構成されてもよい。
【0068】
<第6の対応処理>
図10は、第6の対応処理を行う場合におけるファクシミリ装置10の送信動作の流れを示している。第6の対応処理はQRコードの分割である。図2と同一部分には同一のステップ番号を付して有り、その説明は省略する。
【0069】
能力交換で定めた通信解像度が、QRコードを情報欠落なく送信するのに必要な最低解像度未満の場合は(ステップS115;No)、送信画像に含まれるQRコードを複数のQRコードに分割して元の送信画像に挿入した(ステップS180)後、その送信画像の画像データを、能力交換で決定した内容に従って相手機に送信して(ステップS120)処理を終了する。
【0070】
図11(a)は、200バイトの情報が記録されたQRコード40aを、100バイトの情報を記録した2つのQRコード40b、40cに分割して配列した例を示している。図11(b)は、200バイトの情報が記録されたQRコード40aを、50バイトの情報を記録した4つのQRコード40d、40e、40f、40gに分割して、たとえば、発信元が付加されるページ上部のエリアに配列した例を示している。図11(c)は、200バイトの情報が記録されたQRコード40aを、50バイトの情報を記録した4つのQRコード40d、40e、40f、40gに分割して、ページ下部の余白エリアに配列した例を示している。
【0071】
図12は、QRコードの分割処理(図10のステップS180)の詳細を示している。元のQRコードに記録されている内容(X)を読み取り、その情報量を認識する(ステップS181)。元のQRコードのサイズと、能力交換によって決定された通信解像度とから、該通信解像度で情報欠落なく送信可能なQRコード種(Y)を決定し、そのQRコードに記録可能な情報量Yr(文字数)を求める(ステップS182)。すなわち、通信解像度から元のQRコードの1辺の長さに入るセル数が求まるので、このセル数以下であって、21+4M(Mは任意の正整数)セルの規則で取り得る最大セル数を決定する。次に、いずれかの誤り訂正能力レベルを決定し、記録する文字種を決定することで、QRコード種(Y)およびそのQRコードに記録可能な情報量Yr(文字数)が決まる。
【0072】
たとえば、元のQRコードのサイズが10ミリ×10ミリで、通信解像度がノーマル(副走査方向3.85ドット/ミリ、主走査方向8ドット/ミリ)の場合、QRコードの1辺は38.5セル未満であり、21+4Mの規則から37×37セルのQRコードに決定され、これに対して誤り訂正能力と文字種を指定することで、QRコードの種類Yおよび記録可能な情報量(Yr)が定まる。
【0073】
元のQRコードに記録されていた情報量Xと、Y種のQRコードに記録可能な情報量(Yr)とを比較し、Y種のQRコードに情報量Xを収めることができる(Yr≧X)場合は(ステップS183;No)、内容Xを記録したY種のQRコードを生成し、このQRコードで元のQRコードを置き換えて(ステップS184)処理を終了する。
【0074】
Y種のQRコードに情報量Xを収めることができない(X>Yr)場合は(ステップS183;Yes)、必要な分割個数Zを算出する(ステップS185)。詳細には、X÷Yrの商に「1」を加えた値を分割個数Zとする。次に、元のQRコードに記録されている内容Xを分割個数Zに分割する(ステップS186)。たとえば内容Xが100文字でZが4の場合、25文字ずつに分割する。
【0075】
次に、元のQRコードが含まれていたページ(原稿)の外枠部分(上部または下部)にある余白面積を算出し(ステップS187)、余白面積とZ個のY種QRコードの総面積とを比較し、余白面積がZ個のY種QRコードの総面積以上の場合は(ステップS188;Yes)、分割して得たZ個のQRコードをその余白部分に挿入して(ステップS189)処理を終了する。余白面積が足りない場合は(ステップS188;No)、そのページの裏面または他のページの余白にZ個のQRコードを挿入して(ステップS190)処理を終了する。
【0076】
このように、通信解像度の不足によりQRコードを元のサイズのままで情報の欠落なく送信できない場合に、そのQRコードの通信解像度で情報欠落なく送信可能な複数のQRコードに分割して送信するので、低解像度の通信においてもQRコードの内容を確実に相手機に伝達することができる。
【0077】
上記の例では、分割後の個々のQRコードサイズを元のQRコードのサイズに合わせるようにしたが、余白のサイズに合わせてサイズ変更されてもよい。たとえば、元のサイズのままで上部余白に複数のQRコードを配列できない場合は、余白のサイズに合わせてQRコードのサイズを定めてQRコード種を決定して分割するようにしてもよい。
【0078】
以上、本発明の実施の形態を図面によって説明してきたが、具体的な構成は実施の形態に示したものに限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。
【0079】
たとえば、QRコードを例に説明した他の種類の情報記号であってもかまわない。
【0080】
また、第1〜第6の対応処理のうち、排他的でない複数の対応処理を組み合わせるようにしてもよい。たとえば、第1の対応処理(中断)と第3の対応処理(QRコードが原稿に含まれ、かつ解像度不足のために中断した旨の履歴記録)、第2の対応処理(警告表示)と第3の対応処理(QRコードが含まれかつ解像度不足で送信された旨の履歴記録)とを組み合わせることができる。
【0081】
また、第1〜第6の対応処理に優先順位を付与しておき、その優先順位にしたがって、処理可能な対応処理を施すようにされてもよい。この優先順位は操作表示部17などから任意に設定変更して記憶可能にするとよい。たとえば、第4の対応処理(拡大処理)>第6の対応処理(分割)>第5の対応処理(文字列化)>第1の対応処理(中断)+第3の対応処理(ログ記録)、というような順位の設定が考えられる。なお、この例では第1の対応処理を行う場合には同時に第3の対応処理も行う設定になっている。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】本発明の実施の形態に係るファクシミリ装置の概略構成を示すブロック図である。
【図2】第1の対応処理(中断)を行う場合におけるファクシミリ装置の送信動作の流れを示す流れ図である。
【図3】第2の対応処理(警告表示)を行う場合におけるファクシミリ装置の送信動作の流れを示す流れ図である。
【図4】第3の対応処理(履歴記録)を行う場合におけるファクシミリ装置の送信動作の流れを示す流れ図である。
【図5】第4の対応処理(拡大)を行う場合におけるファクシミリ装置の送信動作の流れを示す流れ図である。
【図6】第4の対応処理で行う拡大処理の詳細を示す流れ図である。
【図7】第5の対応処理(文字列化)を行う場合におけるファクシミリ装置の送信動作の流れを示す流れ図である。
【図8】第5の対応処理で行う文字列への変換処理の詳細を示す流れ図である。
【図9】元のQRコードをURLに置き換えた場合の一例を示す説明図である。
【図10】第6の対応処理(分割)を行う場合におけるファクシミリ装置の送信動作の流れを示す流れ図である。
【図11】各種の分割例を示す説明図である。
【図12】第6の対応処理で行う分割処理の詳細を示す流れ図である。
【符号の説明】
【0083】
10…ファクシミリ装置
11…CPU
12…バス
13…スキャナ部
14…プリンタ部
15…プログラムメモリ
16…システムメモリ
17…操作表示部
18…ハードディスク装置
19…不揮発メモリ
21…ネットワークI/F部
22…ファクシミリ通信制御部
40、40a〜40g…QRコード
41…URLの文字列

【特許請求の範囲】
【請求項1】
相手機に送信する画像に所定の情報記号が含まれているか否かを判別し、含まれている場合はその情報記号を解読可能に送信するための最低解像度を算出し、前記相手機との能力交換によって得た通信解像度と前記最低解像度とを比較し、前記通信解像度が前記最低解像度より低い場合は、前記相手機への前記画像の送信を中断する
ことを特徴とするファクシミリ装置。
【請求項2】
相手機に送信する画像に所定の情報記号が含まれているか否かを判別し、含まれている場合はその情報記号を解読可能に送信するための最低解像度を算出し、前記相手機との能力交換によって得た通信解像度と前記最低解像度とを比較し、前記通信解像度が前記最低解像度より低い場合は、所定の警告を前記相手機への前記画像の送信中に表示部に表示する
ことを特徴とするファクシミリ装置。
【請求項3】
相手機に送信する画像に所定の情報記号が含まれているか否かを判別し、含まれている場合はその情報記号を解読可能に送信するための最低解像度を算出し、前記相手機との能力交換によって得た通信解像度と前記最低解像度とを比較し、前記通信解像度が前記最低解像度より低い場合は、解像度不足で情報記号が送信されたことを前記相手機への前記画像の送信履歴として記憶する
ことを特徴とするファクシミリ装置。
【請求項4】
相手機に送信する画像に所定の情報記号が含まれているか否かを判別し、含まれている場合はその情報記号を解読可能に送信するための最低解像度を算出し、前記相手機との能力交換によって得た通信解像度と前記最低解像度とを比較し、前記通信解像度が前記最低解像度より低い場合は、前記通信解像度で解読可能となるサイズに前記情報記号を拡大した前記画像を前記相手機に送信する
ことを特徴とするファクシミリ装置。
【請求項5】
相手機に送信する画像に所定の情報記号が含まれているか否かを判別し、含まれている場合はその情報記号を解読可能に送信するための最低解像度を算出し、前記相手機との能力交換によって得た通信解像度と前記最低解像度とを比較し、前記通信解像度が前記最低解像度より低い場合は、前記情報記号の内容を示す文字列を付加した前記画像を前記相手機に送信する
ことを特徴とするファクシミリ装置。
【請求項6】
前記情報記号を前記文字列で置き換える
ことを特徴とする請求項5に記載のファクシミリ装置。
【請求項7】
相手機に送信する画像に所定の情報記号が含まれているか否かを判別し、含まれている場合はその情報記号を解読可能に送信するための最低解像度を算出し、前記相手機との能力交換によって得た通信解像度と前記最低解像度とを比較し、前記通信解像度が前記最低解像度より低い場合は、前記情報記号を前記通信解像度で解読可能な複数の情報記号に分割した前記画像を前記相手機に送信する
ことを特徴とするファクシミリ装置。
【請求項8】
前記情報記号は、二次元コードである
ことを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1つに記載のファクシミリ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2009−272982(P2009−272982A)
【公開日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−123027(P2008−123027)
【出願日】平成20年5月9日(2008.5.9)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.QRコード
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】