説明

ファラデー回転子

【課題】飽和磁界が低く、温度特性が優れたファラデー回転子の製法とそのファラデー回転子を提供することを目的とする。
【解決手段】Caを含んだ化学式TbGdCaBi3−x−y−wFe5−zAl12(式中、0.15≦y/x≦0.65,0.3≦z≦0.5,0.04≦w≦0.1)で示されるビスマス置換希土類鉄ガーネット単結晶からなるファラデー回転子において、製品形状での室温での飽和磁界が200(Oe)以下、温度特性0.07deg/℃以下が達成された。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光アイソレータや光サーキュレータなどのファラデー回転子に用いられる希土類鉄ガーネット単結晶に関する。詳しくは、上記光デバイスの小型化に有効な低飽和磁界を有するファラデー回転子に関する。
【背景技術】
【0002】
光ファイバ通信や光計測では多くの場合、信号源として半導体レーザが使用されている。しかし、半導体レーザは、光ファイバ端面などから反射し、再び半導体レーザ自身に戻ってくるところの所謂反射戻り光があると、発振が不安定になるという重大な欠点がある。そのため半導体レーザの出射側に光アイソレータを設けて、反射戻り光を遮断し、半導体レーザの発振を安定化させることが行われている。
一般的に、光アイソレータは偏光子、検光子、ファラデー回転子およびファラデー回転子を磁気的に飽和させるための永久磁石からなる。そしてファラデー回転子としては、通常一般に、ファラデー効果が大きなビスマス置換希土類鉄ガーネット単結晶(以下、RIGと適宜略す)厚膜が用いられている。また、ファラデー回転子を磁気的に飽和させるための外部磁界、すなわち飽和磁界が低いと、永久磁石も小型化することができ、光アイソレータの小型化やコスト面において非常に大きなメリットがある。
【0003】
ファラデー回転子の飽和磁界は、RIGの材料特性、すなわち飽和磁化と、これを研磨、切断など加工したファラデー回転子の形状によって決まる。ファラデー回転子は、1mm角程度の形状で使われるのが一般的であり、例えば飽和磁化300(Gauss)のRIGを1550nm波長の1mm角のファラデー回転子に加工すると、飽和磁界は飽和磁化のおおよそ2/3の約200(Oe)となる。これは試料形状が変化すると試料内部の反磁界が変化するためである。なお、本出願では、ファラデー回転子の試料形状は代表的な1550nm波長の1mm角を想定しており、飽和磁界もその形状相当で記載している。
また、さらに飽和磁界は環境温度においても変化するが、本願明細書内の飽和磁界は室温の値として記載している。
これまで、低い飽和磁化を特長とするビスマス置換希土類鉄ガーネット単結晶には、(GdYBi)(FeGa)12(特許文献1)、(TbBi)(FeGaAl)12(特許文献2)等が提案され、また、実用化されている。
【0004】
RIGの化学組成は、(RBi)(FeM)12(但し、Rは、Yや希土類元素を意味し、Mは、Al、Ga、In、Si、Scなどの元素を意味する)で表される。このRIGの飽和磁化は、その構成元素や置換量によって変化する。飽和磁化を低くするためには、希土類元素に特許文献1や特許文献2のように、磁気モーメントが大きく飽和磁化を下げる効果のあるTbやGdを選び、かつ四面体サイトの鉄を非磁性元素で置換する方法が一般的である。
四面体サイトの鉄を置換するための非磁性元素には、一般にGaやAlが使われる。これは、GaやAlが、四面体と八面体の2種類ある鉄サイトの内、四面体サイトの方に選択的に置換され、フェリ磁性体であるRIGの飽和磁化を下げる効果があるためである。特にGaの四面体へのサイト選択率は、一般に90%程度と言われていて飽和磁化を下げる目的に適している。また、Alの四面体へのサイト選択率は70%程度と言われていて、Gaよりも飽和磁化を下げる効果は小さいが、Alのイオン半径はGaのそれと比較して小さく、その結果ファラデー回転係数の増加に寄与するBiの置換量を大きくすることができるので、ファラデー回転係数を大きく保ち、飽和磁化を下げる目的に適している。ファラデー回転係数が小さいと、ファラデー回転角45degのファラデー回転子において、必要とする膜厚が大きくなり、結晶育成や研磨等の加工に問題が生じる。本質的にファラデー効果の起因である鉄を非磁性元素で置換するとファラデー効果は悪化することになるため、飽和磁化を調整するためにGaやAlで置換したRIGにおいては一定のファラデー回転係数を持つことも重要となる。
【0005】
さらに飽和磁化を下げるため、上記のようにRIGの組成を調整する場合、RIGの磁気補償温度に注意しなければならない。RIGの磁気補償温度前後では、ファラデー回転角の符号は反転するため、光アイソレータなど光部品としての機能をまったく果たさなくなる。従って、RIGの磁気補償温度は、これら光部品の使用温度範囲に入らない、例えば−40℃以下にすることが望ましい。
【0006】
特許文献1や特許文献2では、希土類元素の種類と鉄を非磁性元素で置換するなどして、飽和磁界を下げている。しかし、特に鉄を非磁性元素で置換すると、ファラデー回転角の温度特性、すなわちファラデー回転角45degのファラデー回転子において、温度1℃当たりのファラデー回転角の変化が悪化することになる。RIGの温度特性が悪いと、光アイソレータは外部温度変化にて性能が低下する。
希土類元素の違いでも、例えばTbとGdを比較した場合、飽和磁界の低下について効果が大きい元素は磁気モーメントの大きいGdであるが、Tbを選択すると温度特性は良くなる。
【0007】
特許文献1記載の(GdYBi)(FeGa)12を使うと、ファラデー回転子の飽和磁界は130(Oe)であるが、温度特性が絶対値で0.1deg/℃と大きくなる(以下、温度特性値は絶対値の値で表記する)。また、特許文献2記載の(TbBi)(FeGaAl)12を使うと、温度特性は0.064deg/℃と小さい値であるが、飽和磁界が350(Oe)とやや大きい。このように、希土類及び非磁性元素の組み合わせで、飽和磁界の調整は従来行われてきた。言い換えると、目標とする飽和磁界を設定すればある程度その組成にて温度特性は決まってしまうのである。
しかし、鉄を置換する非磁性元素の、四面体サイトへのサイト選択率が高まれば、少ない非磁性元素の置換量で飽和磁化を小さくすることができることから、温度特性の悪化を従来よりも抑えることが期待できる。
本発明者らは、特許文献3において、鉄をGaにて置換することで飽和磁界を下げる場合において、Auるつぼを使うことで、従来のPtるつぼを用いた場合に生じるPt+4イオンのRIG中への混入を抑えること、及びCa2+をRIGに混入することで、Gaの四面体サイトへのサイト選択率が上がり、従来よりも少ないGa置換量にて、温度特性を低下させることなく、RIGの飽和磁界を低下させることが可能であるとの知見を得た。Ga以外の非磁性元素、特にAlにおいても同様の効果が得られるか否か検討して、鋭意検討した結果、本発明を完成させた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平07−315995
【特許文献2】特開平11−1394
【特許文献3】特願2009−105979
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明者らは、光アイソレータの小型化につながり、かつ光アイソレータの外部温度変化による性能低下を抑える目的で、飽和磁界が小さく、かつファラデー回転角の温度特性の小さいファラデー回転子を提供することを課題とした。具体的な目標とするファラデー回転子の特性値は、飽和磁界200(Oe)以下、ファラデー回転角の温度特性0.07deg/℃以下、磁気補償温度−40℃以下、波長1550nmでのファラデー回転係数を900deg/cm以上と設定した。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、上記特性値における目標を達成するためには、希土類にGdとTbを選び、また鉄サイトへの置換元素にAlを選んだ上で、RIG中のCa2+の混入がAlのサイト選択率を上げる効果があることの知見を得て、従来よりも少ないAl置換量にて、温度特性を低下させることなく、RIGの飽和磁化を下げられることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、化学式GdTbCaBi3-x-y−wFe5−zAl12(式中、0.15≦y/x≦0.65,0.3≦z≦0.5,0.04≦w≦0.1)で示される、液相エピタキシャル法にて育成されるビスマス置換希土類鉄ガーネット単結晶からなるファラデー回転子において、温度特性に優れたことを特徴とする、低飽和磁界型のファラデー回転子を得ることができる。
ファラデー回転子の飽和磁界はできるだけ小さい方が好ましい。上記化学式のRIGにて、サイズ1mm角相当のファラデー回転子を得る場合、他の物性値、例えば光挿入損失やファラデー回転係数、温度特性などを考慮の上、TbとGdの比率を上記化学式の範囲内で選択して、Al置換量を微調整して一定の飽和磁界以下とすることは、当業者であれば容易であり、このとき本発明を用いることで、最小限のAl置換量にて、例えば、飽和磁界200(Oe)以下の飽和磁界が達成されるのである。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】GdとTbとの比y/xと飽和磁界を調整するのに必要なAl置換量zの関係を示したグラフ
【図2】飽和磁界を調整した組成において、GdとTbとの比y/xと温度特性値の関係を示したグラフ
【発明を実施するための形態】
【0012】
下表は、実施例1〜4、比較例1〜3の製法で作製したファラデー回転子の評価結果をまとめたものである。
また表内試料はいずれもファラデー回転子の飽和磁界を200(Oe)以下に組成を調整して、得られたものとなる。
【0013】

【表1】





【0014】
表1内、実施例及び比較例記載の(TbGdBi)(FeAl)12組成を有するRIGにおける、GdとTbとの比y/xとAlの置換量zの関係を図1に、またその時のRIGの温度特性の評価結果を図2に示した。
図1と図2では、RIG中のCa置換量が0.04以上とそれ以下で分類した。
図1において、Tbの増加(Gdの減少)と共に、飽和磁界を調整するためのAl置換量はより多く必要になってくる。しかし、図1の○(Ca置換量0.04f.u
未満)と比べ、Ca置換量を増やした●(Ca置換量0.04f.u以上)の方が、飽和磁界の調整のためのAl置換量を減少させることができ、その結果、図2ように温度特性が改善される。
すなわち本発明によると、(TbGdBi)(FeAl)12組成を有するRIG中のCa置換量を0.04以上とし、適宜、TbとGdの比率及びAlの置換量を調整することで、飽和磁界200(Oe)以下、磁気補償温度−40℃以下、波長1550nmでのファラデー回転係数を900deg/cm以上を保ちながら、温度特性0.07deg/℃以下のファラデー回転子が得られる。
また、本発明の実施例はすべて白金るつぼを用いているが、特許文献3と同様に、金るつぼを用いることで、より、飽和磁界を調整するためのAl置換量をさらに減らすことができ、温度特性がより改善される、ということも期待できる。

【0015】
Gdの置換量xとTbの置換量yの比率(y/x)は、0.15以上0.65以下が好ましい。y/xが、0.15未満ではBi置換量が減り、必要な膜厚が厚くなるので好ましくない。また、y/xが、0.65を超えると逆にBiの置換量が増え、結晶内部でのひずみ等が原因で、育成中の割れ及びクラック等により必要な膜厚を得るための育成が困難となる。加えてTbの置換量が増えると、1650nm域での挿入損失が増えるなど、好ましくない。Alの置換量zは、少ないことが好ましい。本発明を用いるとAlの置換量は、0.3〜0.5の範囲に抑えられる。また、Caの置換量wは0.1を超えると挿入損失が上昇し、光学素子として相応しくない。

【0016】
本発明に用いる上記RIG膜の製造に用いる種結晶基板としては、公知のものが使用できる。一般には、格子定数が1.2490nmから1.2515nmの非磁性ガーネット[(GdCa)(GaMgZr)12]基板から適宜選択する。
以下、表1に記載したRIGの製法と評価結果の詳細を記載する。なお、実施例及び比較例に用いている試薬はすべて3Nかそれ以上の高純度試薬を用いている。



【実施例】
【0017】
実施例1
白金るつぼに酸化ビスマス[Bi]4700g、酸化第2鉄[Fe]310g、酸化ほう素[B]85g、酸化鉛[PbO]900g、酸化テルビウム[Tb]20g、酸化ガドリニウム[Gd]45g、酸化アルミニウム[Al]15g、酸化カルシウム [CaO]3gを仕込み融液とした。
この融液を精密縦型管状電気炉の所定の位置に設置し、1000℃に加熱溶融し、十分に攪拌することで均一に混合してRIG育成融液とした。ここに得られた融液の温度を飽和温度以下の温度まで低下させて後、融液表面に、厚さが760μmで、格子定数が1.2.497±0.0002nmの3インチ(111)ガーネット単結晶[(GdCa)(GaMgZr)12]基板の片面を接触させ、基板を回転させながらエピタキシャル成長を行った結果、膜厚520μmのRIG(以下RIG-1と記す)を得た。この結晶をEPMA定量分析により組成分析した結果、組成はGd1.63Tb0.33Ca0.04Bi1.00Fe4.66Al0.3412であった。得られたRIG−1を11mm×11mmに分割した後、基板を除去し、波長1550nmでのファラデー回転角が45度になるように厚さを調整した。厚さは476μmであった。すなわち、ファラデー回転係数は945deg/cmであった。その後、波長1550nmを中心とする反射防止膜を付与した。
次に、任意の11mm×11mmのRIG-1を1枚選択し、磁気補償温度を測定した結果、−40℃以下であったことを確認した。その後、このRIG-1を1mm×1mmに切断後、そのうちの1チップを選択し、飽和磁界を測定した結果、値は140(Oe)であった。また、ファラデー回転角の温度特性を測定した結果、値は0.069(deg/℃)であった。
【0018】
実施例2
白金るつぼに酸化ビスマス[Bi]4650g、酸化第2鉄[Fe]370g、酸化ほう素[B]35g、酸化鉛[PbO]900g、酸化テルビウム[Tb]13g、酸化ガドリニウム[Gd]30g、酸化アルミニウム[Al]14g、酸化カルシウム[CaO]3gを仕込み融液とした。
この融液を精密縦型管状電気炉の所定の位置に設置し、1000℃に加熱溶融し、十分に攪拌することで均一に混合してRIG育成融液とした。ここに得られた融液を用い、実施例1と同様にエピタキシャル成長を行った結果、膜厚550μmのRIG(以下RIG-2と記す)を得た。この結晶をEPMA定量分析により組成分析した結果、組成はGd1.29Tb0.54Ca0.05Bi1.12Fe4.52Al0.4812であった。得られたRIG−2を11mm×11mmに分割した後、基板を除去し、波長1550nmでのファラデー回転角が45度になるように厚さを調整した。厚さは437μmであった。すなわち、ファラデー回転係数は1030deg/cmであった。その後、波長1550nmを中心とする反射防止膜を付与した。
次に、任意の11mm×11mmのRIG-2を1枚選択し、磁気補償温度を測定した結果、−40℃以下であったことを確認した。その後、このRIG-2を1mm×1mmに切断後、そのうちの1チップを選択し、飽和磁界を測定した結果、値は160(Oe)であった。また、ファラデー回転角の温度特性を測定した結果、値は0.069(deg/℃)であった。
【0019】
実施例3
白金るつぼに酸化ビスマス[Bi]4700g、酸化第2鉄[Fe]380g、酸化ほう素[B]30g、酸化鉛[PbO]850g、酸化テルビウム[Tb]15g、酸化ガドリニウム[Gd]35g、酸化アルミニウム[Al]12g、酸化カルシウム[CaO]3gを仕込み融液とした。
この融液を精密縦型管状電気炉の所定の位置に設置し、1000℃に加熱溶融し、十分に攪拌することで均一に混合してRIG育成融液とした。ここに得られた融液を用い、実施例1と同様にエピタキシャル成長を行った結果、膜厚530μmのRIG(以下RIG-3と記す)を得た。この結晶をEPMA定量分析により組成分析した結果、組成はGd1.27Tb0.59Ca0.05Bi1.09Fe4.56Al0.4412であった。得られたRIG−3を11mm×11mmに分割した後、基板を除去し、波長1550nmでのファラデー回転角が45度になるように厚さを調整した。厚さは470μmであった。すなわち、ファラデー回転係数は957deg/cmであった。その後、波長1550nmを中心とする反射防止膜を付与した。
次に、任意の11mm×11mmのRIG-3を1枚選択し、磁気補償温度を測定した結果、−40℃以下であったことを確認した。その後、このRIG-3を1mm×1mmに切断後、そのうちの1チップを選択し、飽和磁界を測定した結果、値は143(Oe)であった。また、ファラデー回転角の温度特性を測定した結果、値は0.069(deg/℃)であった。
【0020】
実施例4
白金るつぼに酸化ビスマス[Bi]4500g、酸化第2鉄[Fe]350g、酸化ほう素[B]50g、酸化鉛[PbO]900g、酸化テルビウム[Tb]15g、酸化ガドリニウム[Gd]30g、酸化アルミニウム[Al]15g、酸化カルシウム[CaO]3gを仕込み融液とした。
この融液を精密縦型管状電気炉の所定の位置に設置し、1000℃に加熱溶融し、十分に攪拌することで均一に混合してRIG育成融液とした。ここに得られた融液を用い、実施例1と同様にエピタキシャル成長を行った結果、膜厚560μmのRIG(以下RIG-4と記す)を得た。この結晶をEPMA定量分析により組成分析した結果、組成はGd1.30Tb0.58Ca0.05Bi1.07Fe4.58Al0.4212であった。得られたRIG−4を11mm×11mmに分割した後、基板を除去し、波長1550nmでのファラデー回転角が45度になるように厚さを調整した。厚さは454μmであった。すなわち、ファラデー回転係数は992deg/cmであった。その後、波長1550nmを中心とする反射防止膜を付与した。
次に、任意の11mm×11mmのRIG-4を1枚選択し、磁気補償温度を測定した結果、−40℃以下であったことを確認した。その後、このRIG-4を1mm×1mmに切断後、そのうちの1チップを選択し、飽和磁界を測定した結果、値は147(Oe)であった。また、ファラデー回転角の温度特性を測定した結果、値は0.068(deg/℃)であった。
【0021】
比較例1
白金るつぼに酸化ビスマス[Bi]5100g、酸化第2鉄[Fe]290g、酸化ほう素[B]50g、酸化鉛[PbO]500g、酸化テルビウム[Tb]20g、酸化ガドリニウム[Gd]45g、酸化アルミニウム[Al]13g、酸化カルシウム[CaO]1gを仕込み融液とした。
この融液を精密縦型管状電気炉の所定の位置に設置し、1000℃に加熱溶融し、十分に攪拌することで均一に混合してRIG育成融液とした。ここに得られた融液を用い、実施例1と同様にエピタキシャル成長を行った結果、膜厚530μmのRIG(以下RIG-5と記す)を得た。この結晶をEPMA定量分析により組成分析した結果、組成はGd1.69Tb0.26Ca0.02Bi1.03Fe4.52Al0.4812であった。得られたRIG−5を11mm×11mmに分割した後、基板を除去し、波長1550nmでのファラデー回転角が45度になるように厚さを調整した。厚さは478μmであった。すなわち、ファラデー回転係数は942deg/cmであった。その後、波長1550nmを中心とする反射防止膜を付与した。
次に、任意の11mm×11mmのRIG-5を1枚選択し、磁気補償温度を測定した結果、−40℃以下であったことを確認した。その後、このRIG-5を1mm×1mmに切断後、そのうちの1チップを選択し、飽和磁界を測定した結果、値は154(Oe)であった。また、ファラデー回転角の温度特性を測定した結果、値は0.073(deg/℃)であった。
【0022】
比較例2
白金るつぼに酸化ビスマス[Bi]5200g、酸化第2鉄[Fe]280g、酸化ほう素[B]40g、酸化鉛[PbO]450g、酸化テルビウム[Tb]20g、酸化ガドリニウム[Gd]40g、酸化アルミニウム[Al]13g、酸化カルシウム[CaO]1gを仕込み融液とした。
この融液を精密縦型管状電気炉の所定の位置に設置し、1000℃に加熱溶融し、十分に攪拌することで均一に混合してRIG育成融液とした。ここに得られた融液を用い、実施例1と同様にエピタキシャル成長を行った結果、膜厚540μmのRIG(以下RIG-6と記す)を得た。この結晶をEPMA定量分析により組成分析した結果、組成はGd1.28Tb0.64Ca0.01Bi1.07Fe4.38Al0.6212であった。得られたRIG−6を11mm×11mmに分割した後、基板を除去し、波長1550nmでのファラデー回転角が45度になるように厚さを調整した。厚さは474μmであった。すなわち、ファラデー回転係数は950deg/cmであった。その後、波長1550nmを中心とする反射防止膜を付与した。
次に、任意の11mm×11mmのRIG-6を1枚選択し、磁気補償温度を測定した結果、−40℃以下であったことを確認した。その後、このRIG-6を1mm×1mmに切断後、そのうちの1チップを選択し、飽和磁界を測定した結果、値は152(Oe)であった。また、ファラデー回転角の温度特性を測定した結果、値は0.074(deg/℃)であった。
【0023】
比較例3
白金るつぼに酸化ビスマス[Bi]4500g、酸化第2鉄[Fe]350g、酸化ほう素[B]35g、酸化鉛[PbO]890g、酸化テルビウム[Tb]15g、酸化ガドリニウム[Gd]25g、酸化アルミニウム[Al]15g、酸化カルシウム[CaO]3gを仕込み融液とした。
この融液を精密縦型管状電気炉の所定の位置に設置し、1000℃に加熱溶融し、十分に攪拌することで均一に混合してRIG育成融液とした。ここに得られた融液を用い、実施例1と同様にエピタキシャル成長を行った結果、膜厚480μmのRIG(以下RIG-7と記す)を得た。この結晶をEPMA定量分析により組成分析した結果、組成はGd1.08Tb0.71Ca0.05Bi1.16Fe4.46Al0.5412であった。得られたRIG−7を11mm×11mmに分割した後、基板を除去し、波長1550nmでのファラデー回転角が45度になるように厚さを調整した。厚さは403μmであった。すなわち、ファラデー回転係数は1116deg/cmであった。その後、波長1550nmを中心とする反射防止膜を付与した。
次に、任意の11mm×11mmのRIG-7を1枚選択し、磁気補償温度を測定した結果、−40℃以下であったことを確認した。その後、このRIG-7を1mm×1mmに切断後、そのうちの1チップを選択し、飽和磁界を測定した結果、値は172(Oe)であった。また、ファラデー回転角の温度特性を測定した結果、値は0.067(deg/℃)であった。次いで波長1650nm挿入損失を測定した結果、0.23dBであった。このような大きな損失はファラデー回転子の特性として相応しくないものである。

【産業上の利用可能性】
【0024】
本発明によれば、飽和磁界が低く、また温度特性に優れたファラデー回転子を得ることができ、その産業上の意義は極めて高い。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
液相エピタキシャル法にて育成され、飽和磁化の小さなことを特徴とする、化学式TbGdCaBi3−x−y−wFe5−zAl12(式中、0.15≦y/x≦0.65,0.3≦z≦0.5,0.04≦w≦0.1)で表わされるビスマス置換希土類鉄ガーネット単結晶。
【請求項2】
請求項1記載のビスマス置換希土類鉄ガーネット単結晶膜からなるファラデー回転子の飽和磁界が200(Oe)以下、かつファラデー回転角の温度特性が0.07deg/℃以下であることを特徴とする請求項1に記載のファラデー回転子。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−11944(P2011−11944A)
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−157464(P2009−157464)
【出願日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【出願人】(505418434)株式会社グラノプト (13)
【Fターム(参考)】