説明

ファンに取り付けられた電流発生装置を備えるターボジェット、及びファンにおける同発生装置の取り付け方法

【課題】ファンの上流において、エンジンの軸の中心にある固定カウルエレメントを有し、固定カウルエレメント上には、低圧ロータシャフトから機械的な動力を取り出して電力に変換するように設計された電流発生装置が取り付けられている、ターボジェットを提供すること。
【解決手段】本発明は、高圧ロータ(1)及び低圧ロータと、その上流端でファンケーシング(14)内に収容されるファン(10)に接続されている低圧ロータシャフト(2)とを備えるツインスプールガスタービンターボジェットに関する。ターボジェットは、ファン(10)の上流において、エンジンの軸(X3)の中心にある固定カウルエレメント(12)を備え、固定カウルエレメント(12)上には、低圧ロータシャフト(2)から機械的な動力を取り出して電力に変換するように設計された電流発生装置(20)が取り付けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、上流ファンを備えるガスタービンターボジェット、及びターボジェットにおける電流発生装置の取り付け方法に関する。
【背景技術】
【0002】
航空用ターボジェットエンジンによって生成される動力の一部は、ターボジェットと、そのターボジェットによって全部又は一部において推進される航空機との双方の様々な部分に動力供給するように使用されている。
【0003】
現在、この動力の一部は、高圧(HP)コンプレッサから取り出され、その圧縮空気は、特に航空機のキャビンの加圧や空調のために使用され、あるいは除氷のために使用されている。この動力の一部は、ターボジェットのケーシング上に位置決めされたアクセサリギアボックスの入力シャフトを駆動するために、ターボジェットの高圧段のシャフトから機械的に取り出される。この入力シャフトは、ケーシングの構造的なアームを介して延在するトランスミッションシャフトによって回転駆動され、それ自身が高圧シャフトに固定されたピニオンによって駆動される。
【0004】
現在の傾向は、使用される電気的な動力が増大する方向に向かっているため、エンジンから機械的な動力を出すことが予期される。
【0005】
しかしながら、機械的な動力を過大に取り出すことは、特にエンジンが低速で作動している場合にエンジンの動作性に悪影響を与えやすいことから、高圧スプールの動作に有害な影響を与えている。
【0006】
FR2882096は、アクセサリギアボックスの入力シャフトを回転駆動する低圧(LP)スプールの機械的な動力の一部を取り出す旨を開示している。このような解決策は、動力伝達ピニオンをそれに追加することによる低圧シャフト2への構造的な変更をともなう。このようなシステムは、大きくて重い金属部分の周囲を運動することをともなうため、組み立てるのが困難である。
【0007】
WO2007/036202はまた、ターボジェットスプールにおける電流発生装置の取り付けについて開示している。発生装置は、ターボジェットの圧縮ケーシング周辺に位置決めされたステータエレメントと、高圧シャフトに固定されたブレードの端に固定されてターボジェットの圧縮ケーシング内において回転駆動されるロータエレメントとから作られる。
【特許文献1】仏国特許出願公開第2882096号明細書
【特許文献2】国際公開第2007/036202号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ロータエレメントの回転運動は、ステータエレメントにおける電流を生じさせ、その電流は、電力を必要とする装置の様々な部分に送られる。このような電流発生装置は、アクセスするのが困難であり、交換や修理が必要である場合にターボジェットの部分的な分解をともなう。コンプレッサのケーシングは、小型であり、発生された電流を装置の様々な部分に送るのを複雑にする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
少なくともこれらの欠点の一部を軽減するために、本件出願人は、高圧ロータ及び低圧ロータと、その上流端でファンケーシング内に収容されるファンに接続されている低圧ロータシャフトとを備えるツインスプールガスタービンターボジェットであって、ファンの上流において、エンジンの軸の中心にある固定カウルエレメントを備え、固定カウルエレメント上には、低圧ロータシャフトから機械的な動力を取り出して電力に変換するように設計された電流発生装置が取り付けられている、ターボジェットを提案した。
【0010】
ターボジェットは、高圧ロータシャフトから取り出されるべきでない動力を供給可能であることが有利である。電流発生装置は、アクセスするのが容易であり、最小数のターボジェットの部品を分解することにより、限られた時間で交換されるのを可能とする。
【0011】
電流発生装置は、ターボジェットの冷却領域において、ファンの上流に位置決めされており、その結果、冷却の必要性を低減させ、それにともなってその質量を低減させる。
【0012】
電流発生装置は、固定カウルエレメントに接続されたステータエレメントと、低圧ロータシャフトの上流端によって駆動されるロータエレメントとを備える。
【0013】
一実施形態によれば、ターボジェットは、ファンブレードが取り付けられるファンディスクを備える。電流発生装置のロータエレメントは、上記ファンディスクに固定されたジャーナルによって回転駆動される。
【0014】
カウルエレメントは、放射状の保持アームによってファンケーシングに接続されていることが有利である。
【0015】
放射状の保持アームは、多くの構造的な変更をターボジェットに必要とせずに、電流発生装置のステータエレメントがしっかりと保持されるのを可能とする。
【0016】
電流発生装置に注油するためのダクト及び電気ケーブルは、放射状の保持アームに形成されている。
【0017】
他の実施形態によれば、複数の動力伝達ピニオンが、それぞれ、電流発生装置のロータエレメント上と低圧ロータシャフトの上流端の上とに形成されており、低圧ロータシャフトの回転運動を電流発生装置のロータエレメントに伝達するように互いに噛合している。
【0018】
本発明はまた、ガスターボジェットのファンにおける電流発生装置の取り付け方法に関する。この取り付け方法において:
電流発生装置が、固定カウルエレメント上に取り付けられ、
固定カウルエレメントが、電流発生装置のロータエレメントが低圧ロータシャフトの上流端に一致するようにファン上に位置決めされ、
カウルエレメントが、ファンケーシング上に放射状の保持アームで固定されている。
【0019】
電流発生装置は、取り付けるのが容易であり、この取り付けは、ターボジェットの上流に行われる。取り扱われる必要がある部品は、サイズが小さく軽量であり、その結果、電流発生装置が迅速に交換されるのを可能とする。
【0020】
他の特徴及び利点は、図面を参照して本発明のターボジェットの以下の記述から明らかになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
図1を参照すると、本発明のターボジェットは、ターボジェットの軸X3の周りに回転可能に取り付けられている低圧(LP)ロータ及び高圧(HP)ロータ1を備えるツインスプールガスターボジェット100である。この種のターボジェットは、当業者によく知られている。内部又は外部、内側又は外側という用語は、本明細書にて使用されるとき、ターボジェットの軸X3に関して、ターボジェットの径方向における内部又は外部、あるいは内側又は外側を意味するように理解される。
【0022】
特に、図4に関して、ターボジェットは、ガスが流れる方向の上流から下流にかけて、ファン10と、コンプレッサと、燃焼室と、タービンと、ジェットパイプとを機能的に備える。ツインスプールエンジンであることから、それは、高圧コンプレッサの上流に低圧コンプレッサを備え、低圧タービンの上流に高圧タービンを備える。
【0023】
図1におけるファン10は、それ自身が中間ケーシングに固定されたベアリングによって支持された状態で、フランジによってジャーナル15に取り付けられたファンディスク19を備え、ジャーナル15は、ここでは低圧シャフト2に固定されている。
【0024】
ファン10は、ファンディスク19に固定された可動カウルエレメント11をさらに備える。可動カウルエレメント11は、円錐状を呈し、流入空気の流れを誘導する。固定カウルエレメント12は、可動カウルエレメント11の上流に位置決めされている。
【0025】
ファン10は、可動カウルエレメント11と一体となって回転する低圧ロータシャフト2によってファンケーシング14の内部で回転駆動される。ハウジング13は、可動カウルエレメント11内に形成されている。
【0026】
図1及び特に図2を参照すると、電流発生装置20が固定カウルエレメント12の上に取り付けられている。電流発生装置20は、堅固に固定カウルエレメント12に取り付けられたステータエレメント21と、固定カウルエレメント12に対して自由に回転するロータエレメント22とを備える。
【0027】
ここでは、ロータエレメント22は、軸X3に沿って軸方向に延在する電磁石である。ステータエレメント21は、ロータエレメント22に対して同軸に且つロータエレメント22の外部に延在する巻線から作られる。ベアリング23は、ステータエレメント21内でロータエレメント22が回転するように、ロータエレメント22を支持する。
【0028】
電磁石22が軸X3の周りに回転するとき、磁場が生成され、巻線21に電流を誘導する。
【0029】
放射状の保持アーム16は、構造的に固定カウルエレメント12をファンケーシング14に接続する。その結果、電流発生装置20のステータエレメント21は、ファンブレード18が回転しても動かないままとされる。保持アーム16は、フランジによってファンケーシング14に取り付けられている。
【0030】
保持アーム16は、有利には空洞であり、図2に示す電流発生装置20に注油するためのダクト41と電気ケーブル42とを収容することができる。上側の保持アーム16は、電流発生装置20に注油するためのダクト41と電気ケーブル42とを視認できるように、その長さの部分にわたって隠された詳細を見せるように描かれている。
【0031】
電流発生装置20に注油するためのダクト41は、電流発生装置20を冷却して注油するために、油のような潤滑剤をファンの下流に位置決めされたオイルタンクから電流発生装置20へ運ぶのを可能にする。
【0032】
電流発生装置20が冷却されると、熱い油が保持アーム16を介して流れ、その結果、保持アーム16を除氷して油を冷却する。そのような注油ダクト41は、上記油を冷却するために必要である熱交換器のサイズを低減するのを可能とする。
【0033】
電気ケーブル42は、巻線21で発生する電流をエンジンの下流に位置決めされた電気的装置に導くのを可能とする。
【0034】
ここでは、固定カウルエレメント12の保持アーム16は、流入空気の流れをファンブレード18に向かわせるように形成される。ここでの保持アーム16は、その個数が3つであり、120°の間隔で区切られている。エンジンの構成に応じて、この個数が変化してもよいことは言うまでもない。
【0035】
この例示的な実施形態において、ロータエレメント22は、低圧ロータシャフト2の上流端に直接接続されている。動力伝達かさ歯車ピニオン25、26は、それぞれ、電流発生装置20のロータエレメント22の上と低圧ロータシャフト2の上流端の上とに形成されており、電流発生装置20のロータエレメント22に低圧ロータシャフト2の回転運動を伝達するために互いに噛合している。
【0036】
ターボジェットエンジン100が動作すると、低圧ロータシャフト2は、ターボジェット100の低圧タービンによって回転駆動される。
【0037】
低圧ロータシャフト2は、軸X3の周りに電磁石22を回転させ、電流発生装置20の巻線21に電流を誘導する。電流は、保持アーム16内に位置決めされた電気ケーブル42を介して固定カウルエレメント12の保持アーム16によって伝達され、これにより、主にファンの下流に位置する装置に電流が供給される。
【0038】
他の実施形態において、図3を参照すると、追加のジャーナル17が、ファンブレード18を支持するファンディスク19と電流発生装置20のロータエレメント22との間に取り付けられる。低圧ロータシャフト2と一体となって回転するジャーナル17は、ロータエレメント22を回転駆動する。
【0039】
ジャーナル17は、ファンディスク19及びロータエレメント22にねじ−ナット接続によって接続されている。電流発生装置20が固定カウルエレメント12に固定される方法は同じままであり、前の実施形態と異なるのは、ロータエレメント22が駆動される方法のみである。
【0040】
本発明はまた、ターボジェット100における電流発生装置20の取り付け方法に関する。
【0041】
電流発生装置20は、固定カウルエレメント12上に取り付けられる。ここでは、電流発生装置20は、カウルにねじ留めされる。
【0042】
固定カウルエレメント12は、電流発生装置20のロータエレメント22が低圧ロータシャフト2の上流端に一致するようにファン10の上に位置決めされている。
【0043】
ステータエレメント21の動力伝達かさ歯車ピニオン25は、低圧ロータシャフト2の動力伝達かさ歯車ピニオン26に一致するように設けられている。
【0044】
次に、固定カウルエレメント12は、放射状の保持アーム16によってファンケーシング14の上に固定されている。
【0045】
電流発生装置20に注油するためのダクト41は、油を電流発生装置20に供給するために、電流発生装置20に接続されており、電気ケーブル42は、航空機の装置の様々な部分に電流を伝達するために、電流発生装置20のステータエレメント21の巻線に接続されている。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】ターボジェットのファン内に電流発生装置が位置決めされている本発明によるターボジェットの上流部分の断面図を示す。
【図2】図1の電流発生装置をクローズアップした図を示す。
【図3】本発明の他の実施形態を示す。
【図4】本発明のターボジェットの一般的な配置を示す。
【符号の説明】
【0047】
1 低圧ロータ及び高圧ロータ
2 低圧ロータシャフト
10 ファン
11 可動カウルエレメント
12 固定カウルエレメント
13 ハウジング
14 ファンケーシング
15、17 ジャーナル
16 保持アーム
18 ファンブレード
19 ファンディスク
20 電流発生装置
21 ステータエレメント
22 ロータエレメント
23 ベアリング
25、26 動力伝達かさ歯車ピニオン
41 ダクト
42 電気ケーブル
100 ターボジェット
X3 軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高圧ロータ及び低圧ロータと、その上流端でファンケーシング内に収容されるファンに接続されている低圧ロータシャフトとを備えるツインスプールガスタービンターボジェットであって、
ファンの上流において、エンジンの軸の中心にある固定カウルエレメントを備え、
固定カウルエレメント上には、低圧ロータシャフトから機械的な動力を取り出して電力に変換するように設計された電流発生装置が取り付けられている、ターボジェット。
【請求項2】
電流発生装置が、固定カウルエレメントに接続されたステータエレメントと、低圧ロータシャフトの上流端によって駆動されるロータエレメントとを備える、請求項1に記載のターボジェット。
【請求項3】
複数の動力伝達ピニオンが、それぞれ、電流発生装置のロータエレメント上と低圧ロータシャフトの上流端の上とに形成されており、低圧ロータシャフトの回転運動を電流発生装置のロータエレメントに伝達するように互いに噛合している、請求項2に記載のターボジェット。
【請求項4】
ファンブレードが取り付けられるファンディスクを備え、
電流発生装置のロータエレメントが、前記ファンディスクに固定されたジャーナルによって回転駆動される、請求項1に記載のターボジェット。
【請求項5】
カウルエレメントが、放射状の保持アームによってファンケーシングに接続されている、請求項3及び4に記載のターボジェット。
【請求項6】
電流発生装置に注油するためのダクトが、放射状の保持アームに形成されている、請求項5に記載のターボジェット。
【請求項7】
電気ケーブルが、放射状の保持アームに形成されている、請求項5及び6に記載のターボジェット。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか一項に記載のガスターボジェットのファンにおける電流発生装置の取り付け方法であって、
電流発生装置が、固定カウルエレメント上に取り付けられ、
固定カウルエレメントが、電流発生装置のロータエレメントが低圧ロータシャフトの上流端に一致するようにファン上に位置決めされ、
カウルエレメントが、ファンケーシング上に放射状の保持アームで固定されている、電流発生装置の取り付け方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−44956(P2009−44956A)
【公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2008−200449(P2008−200449)
【出願日】平成20年8月4日(2008.8.4)
【出願人】(505277691)スネクマ (567)
【Fターム(参考)】