説明

ファンモータ

【課題】十分な風量および静圧を得ることができ、ファン性能の向上を図ることができるファンモータを提供する。
【解決手段】ファンモータ1のインペラ8において、円周C1上に複数の外周側羽根部23を配置し、ボス部19と外周側羽根部23との間において円周C2上に複数の内周側羽根部24を配置する。このように二重に設けた羽根部23,24において、円周C2の接線L5に対する各内周側羽根部24の傾き角θ2を円周C1の接線L2に対する各外周側羽根部23の傾き角θ1よりも小さくする。傾き角が比較的大きい外周側羽根部23は、主として風量を発生させるのに寄与し、傾き角が比較的小さい内周側羽根部24は、主として静圧を高めるのに寄与する。これらの外周側羽根部23と内周側羽根部24との協働により、十分な風量および静圧を得るようにし、ファン性能の向上を図る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ファンモータに関し、例えばノートパソコン、デジタルビデオカメラ、カーナビゲーションなどの機器に内蔵されて、これらの冷却に利用される小型のブロア型ファンモータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、このような分野の技術として、特開2005−214107号公報に記載されたファンモータがある。このファンモータでは、ケーシングの上下面に形成された吸気口から空気を取り込み、取り込んだ空気をケーシングの側面に形成された排気口から排出する。このファンモータのインペラは、モータを収容するためのモータ収容部(ボス部)を中央に有し、モータ収容部の周囲に上部羽根と下部羽根とを有している。それぞれ複数設けられた上部羽根および下部羽根は、これらの間に延在する連結板によって連結され、一体成形されている。
【0003】
上部羽根および下部羽根は、インペラの回転方向に対して垂直に設けられると共に、回転方向において互いにずれるようにして交互に配置されている。このような構成により、インペラがケーシング内で回転する際に、上部羽根によって発声する音と下部羽根によって発生する音とが互いに打ち消し合うようにし、その結果、ファンモータから発生する騒音を低減している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】2005−214107号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このようなファンモータにおいては、風量および静圧を十分に発揮し得ることが求められる。しかしながら、上記した従来のファンモータでは、騒音の低減が図られるものの、十分な風量および静圧を得ることが難しかった。
【0006】
本発明は、十分な風量および静圧を得ることができ、ファン性能の向上を図ることができるファンモータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決したファンモータは、対面する第1及び第2の壁部の第1の壁部に吸気口が形成されたケーシングと、ケーシング内で第2の壁部に固定されたモータ部と、モータ部に取り付けられて、モータ部の回転軸線を中心に回転するインペラと、を備えたファンモータにおいて、インペラは、モータ部が内部に配置されるボス部と、ボス部の周囲で回転軸線に対し略直交して延在する板部と、板部から回転軸線方向に突出すると共に、回転軸線を中心とする第1の円周上に中心点が位置するように配置された複数の外周側羽根部と、ボス部と外周側羽根部との間において、板部から回転軸線方向に突出すると共に、回転軸線を中心とする第2の円周上に中心点が位置するように配置された複数の内周側羽根部と、を有し、内周側羽根部の中心点における第2の円周の接線とインペラの回転方向における内周側羽根部の両端を結ぶ直線とのなす傾き角は、外周側羽根部の中心点における第1の円周の接線とインペラの回転方向における外周側羽根部の両端を結ぶ直線とのなす傾き角よりも小さいことを特徴とする。
【0008】
このファンモータのインペラは、外周側羽根部と内周側羽根部とをそれぞれ複数有している。外周側羽根部は、中心点が第1の円周上に位置するように配置されており、内周側羽根部は、ボス部と外周側羽根部との間において、中心点が第2の円周上に位置するように配置されている。ここで、羽根部の中心点とは、羽根部の厚みを等分する中線の中点である。このように二重に設けられた羽根部において、内周側羽根部の中心点における第2の円周の接線とインペラの回転方向における内周側羽根部の両端を結ぶ直線とのなす傾き角は、外周側羽根部の中心点における第1の円周の接線とインペラの回転方向における外周側羽根部の両端を結ぶ直線とのなす傾き角よりも小さくなっている。このように、円周の接線に対する傾き角が比較的大きい外周側羽根部は、主として風量を発生させるのに寄与し、円周の接線に対する傾き角が比較的小さい内周側羽根部は、空気の逆流を防止することにより、主として静圧を高めるのに寄与する。したがって、これらの外周側羽根部と内周側羽根部との協働により、十分な風量および静圧を得ることができ、ファン性能の向上を図ることができる。
【0009】
また、上記ファンモータにおいて、外周側羽根部の枚数は、内周側羽根部の枚数よりも多い。通常、風量を確保するためには、羽根部は全体として所定の表面積を有することが求められる。ここで、風量の発生に寄与する外周側羽根部の枚数を多くすることで、全体として所定の表面積を維持しながらも、外周側羽根部1枚あたりの表面積を小さくできる。これにより、外周側羽根部1枚あたりによって送られる風量を少なくでき、ケーシングとインペラとの間で生じる騒音を低減することができる。
【0010】
また、上記ファンモータにおいて、内周側羽根部および外周側羽根部は、板部の第1の壁部側に設けられており、板部の第2の壁部側には、ボス部との間に円環状のスペースを確保するようにして複数の他の羽根部のみが設けられている。第2の壁部にはモータ部が固定されるため、モータ部周辺には、リード線等のためのスペースが必要となる。ここで、板部の第2の壁部側には、ボス部との間に円環状のスペースを確保するようにして他の羽根部のみが設けられ、その内周側には羽根部は設けられない。よって、リード線等のためのスペースを確保しつつ、最大限の風量を発揮することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、十分な風量および静圧を得ることができ、ファン性能の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に係るファンモータの一実施形態を示す斜視図である。
【図2】図1のファンモータを底面側から見た斜視図である。
【図3】図1のファンモータの平面図である。
【図4】図1のファンモータの底面図である。
【図5】図1のファンモータの縦断面図である。
【図6】図1中のインペラを示す斜視図である。
【図7】(a)は図6のインペラの平面図、(b)は外周側羽根部の傾き角を示す平面図、(c)は内周側羽根部の傾き角を示す平面図である。
【図8】(a)は図6のインペラの底面図、(b)は羽根部の傾き角を示す底面図である。
【図9】(a)〜(c)は、比較例に係るファンモータのインペラを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0014】
図1〜図5に示されるように、ファンモータ1は、例えばノートパソコン、デジタルビデオカメラ、カーナビゲーションなどの機器に内蔵されて、これらの冷却に利用される小型のブロア型ファンモータである。
【0015】
ファンモータ1のケーシング2は、略円形の第2の壁部3の周縁に第3の壁部4が垂直に連設されてなるケーシング本体2aと、第2の壁部3に対面するようにケーシング本体2aの開口の一部を塞ぐカバー6と、を有する。以下、第2の壁部3及び第3の壁部4は単に壁部3,4という。カバー6には、円形の吸気口6aが形成されており、壁部3には、吸気口6aに対面する3つの吸気口3aが壁部中心3bの周囲に形成されている。また、壁部4の一部には、長方形の排気口4aが形成されている。このように、ファンモータ1は、両面吸気でサイドフロータイプのファンモータである。
【0016】
ファンモータ1は、ケーシング2内に固定されて、通電により回転力を生じるモータ部7と、モータ部7に取り付けられて、モータ部7で生じた回転力により回転軸線Xを中心に回転する樹脂製のインペラ8とを備えている。これらのモータ部7及びインペラ8は、ケーシング2内に収容されている。ファンモータ1は、インペラ8の回転により、吸気口6a,3aから空気を吸い込むと共に排気口4aから空気を排出する。
【0017】
図5に示されるように、3つの吸気口3aの中心に位置する壁部中心3b上には、ケーシング2の内方に向けて突出する円筒部3cが形成されている。モータ部7は、壁部中心3b及び円筒部3cに対して固定されている。
【0018】
モータ部7は、円筒部3c上に固定された回路基板9と、回路基板9上に重ねて固定されて、インペラ8の停止位置を規制するためのフラックスプレート10とを有している。またモータ部7は、フラックスプレート10上に固定されて、磁気回路を形成するためのコア11と、コア11に固定されたコイルボビン12と、コイルボビン12に巻きつけられて、コア11に磁束を流すためのコイル13とを有している。回路基板9には、磁気を検知するホール素子(図示せず)などが搭載され、ホール素子からの電気信号に基づいてコイル13への給電が制御される。
【0019】
さらに、モータ部7は、円筒部3c内に下部が嵌入されて、円筒部3cに固定された円筒状のメタルホルダー14と、メタルホルダー14内に嵌入されて、メタルホルダー14に対し圧入などにより固定された筒状の油含浸軸受16と、油含浸軸受16の軸孔16a内に挿入されて上下方向に延び、油含浸軸受16に対し回転自在なシャフト17とを有している。メタルホルダー14、油含浸軸受16、及びシャフト17は、回転軸線Xを中心として同軸に配置されている。シャフト17の下端と壁部中心3bとの間には、アキシャルベアリング18が配置されている。ファンモータ1において、これらの回路基板9、フラックスプレート10、コア11、コイルボビン12、コイル13、メタルホルダー14、油含浸軸受16、及びアキシャルベアリング18は、ステータを構成している。
【0020】
シャフト17の上端には、インペラ8の中心を構成するキャップ状のボス部19が圧入または接着などにより固定されている。ボス部19の裏面側には、金属製で円環状のロータヨーク20が配置され、ボス部19内でロータヨーク20の内面側には、円環状のマグネット21が接着などにより固定されている。マグネット21は、コア11及びコイル13から回転軸線Xと垂直な方向に離間した位置でコア11及びコイル13に対面している。ファンモータ1において、シャフト17、インペラ8、ロータヨーク20、及びマグネット21は、ロータを構成している。
【0021】
図1〜図5に示されるように、インペラ8は、上記のモータ部7が内部に配置されたボス部19と、ボス部19の周縁に連設されて、ボス部19の周囲で回転軸線Xに対し略直交して延在する円形の板部22と、板部22の上面側(カバー6側)22aに形成されたそれぞれ複数の外周側羽根部23及び内周側羽根部24と、下面側(壁部3側)22bに形成された複数の他の羽根部26とを有している。これらのボス部19、板部22、羽根部23,24,26は、一体成型により成形されている。インペラ8は、モータ部7で生じた回転力により、シャフト17、ロータヨーク20、及びマグネット21と一体となってシャフト17を中心に回転方向Rに回転し、吸気口6a,3aから空気を吸い込むと共に排気口4aから空気を排出する。なお、吸気口6aからの吸気量は、吸気口3aからの吸気量に比べて大きくなる。
【0022】
図6はインペラ8を示す斜視図、図7(a)はインペラ8の平面図である。図6及び図7(a)に示されるように、各外周側羽根部23は、板部22の外周部の上面側22aから回転軸線X方向上方に突出している。複数の外周側羽根部23は、回転軸線Xを中心とする円周C1上で等間隔に配置されている。各外周側羽根部23の中心点23aは、円周C1上に位置している。外周側羽根部23の中心点23aとは、外周側羽根部23の厚みを等分する中線の中点を意味する。
【0023】
さらに、各内周側羽根部24は、板部22の内周部(ボス部19寄りの部分)の上面側22aから回転軸線X方向上方に突出している。複数の内周側羽根部24は、回転軸線Xを中心とする円周C2上で等間隔に配置されている。各内周側羽根部24の中心点24aは、円周C2上に位置している。内周側羽根部24の中心点24aとは、内周側羽根部24の厚みを等分する中線の中点を意味する。円周C2の直径は円周C1の直径よりも小さい。複数の内周側羽根部24は、複数の外周側羽根部23の内側、すなわち複数の外周側羽根部23とボス部19との間に配列されている。
【0024】
外周側羽根部23の枚数は例えば19枚、内周側羽根部24の枚数は例えば13枚である。外周側羽根部23の枚数は、内周側羽根部24の枚数よりも多くなっている。外周側羽根部23の枚数を多くすることにより、外周側羽根部23の1枚あたりの表面積が小さくなっている。外周側羽根部23および内周側羽根部24の枚数は、ファンモータ1に求められる風量や静圧などの条件に応じて適宜設定することができる。
【0025】
図3に示されるように、ケーシング2内に収容された状態で、インペラ8の内周側羽根部24はカバー6の吸気口6aから露出している。外周側羽根部23は、カバー6によって覆われている。
【0026】
図7(b)に示されるように、各外周側羽根部23は、緩やかに湾曲した一般的な翼形状であると共に、中心点23aにおける円周C1の接線L2に対して角度θ1だけ傾斜している。より詳しくは、外周側羽根部23の傾き角θ1は、回転軸線Xと外周側羽根部23の中心点23aとを結ぶ直線L1に直交し且つ中心点23aを通る直線(すなわち接線)L2と、外周側羽根部23の回転方向R前方の端点23bおよび回転方向R後方の端点23cを結ぶ直線L3とのなす角である。
【0027】
図7(c)に示されるように、各内周側羽根部24は、緩やかに湾曲した一般的な翼形状であると共に、中心点24aにおける円周C2の接線L5に対して角度θ2だけ傾斜している。より詳しくは、内周側羽根部24の傾き角θ2は、回転軸線Xと内周側羽根部24の中心点24aとを結ぶ直線L4に直交し且つ中心点24aを通る直線(すなわち接線)L5と、内周側羽根部24の回転方向R前方の端点24bおよび回転方向R後方の端点24cを結ぶ直線L6とのなす角である。
【0028】
ここで、本実施形態のファンモータ1にあっては、インペラ8における各内周側羽根部24の傾き角θ2は、各外周側羽根部23の傾き角θ1よりも小さくなっている。具体的には、各内周側羽根部24の傾き角θ2は例えば20°であり、各外周側羽根部23の傾き角θ1は例えば45°である。
【0029】
図8(a)はインペラ8の底面図である。図8(a)に示されるように、外周側羽根部23及び内周側羽根部24とは別の複数の羽根部26は、板部22の外周部の下面側22bから回転軸線X方向下方に突出している。複数の羽根部26は、回転軸線Xを中心とする円周C3上で等間隔に配置されている。各羽根部26の中心点26aは、円周C3上に位置している。羽根部26の中心点26aとは、羽根部26の厚みを等分する中線の中点を意味する。例えば、羽根部26の枚数は、外周側羽根部23の枚数に等しくなっている。さらに、円周C3は平面視において円周C1に一致しており、羽根部26は、板部22に対して外周側羽根部23と面対称をなしている。
【0030】
板部22の下面側22bには、内周側羽根部24のような羽根部は設けられていない。すなわち、板部22の下面側22bには、複数の羽根部26のみが設けられている。複数の羽根部26は、回転軸線Xに垂直な方向でモータ部7から離間すると共に、モータ部7を包囲している。複数の羽根部26とモータ部7との間には、例えばリード線などを配線するための円環状のスペースSが形成されている(図4及び図5参照)。これらの複数の羽根部26は、ボス部19との間に円環状のスペースSを確保するようにして設けられている。
【0031】
図8(b)に示されるように、各羽根部26は、緩やかに湾曲した一般的な翼形状であると共に、中心点26aにおける円周C3の接線L8に対して角度φだけ傾斜している。より詳しくは、羽根部26の傾き角φは、回転軸線Xと羽根部26の中心点26aとを結ぶ直線L7に直交し且つ中心点26aを通る直線(すなわち接線)L8と、羽根部26の回転方向R前方の端点26bおよび回転方向R後方の端点26cを結ぶ直線L9とのなす角である。各羽根部26の傾き角φは、各外周側羽根部23の傾き角θ1に等しくなっている。
【0032】
図4に示されるように、ケーシング2内に収容された状態で、インペラ8の羽根部26は壁部3によって覆われている。スペースSは壁部3の吸気口3aから露出している。
【0033】
上記構成を有するインペラ8において、複数の外周側羽根部23は、板部22の外周部において円周C1の接線L2に対して比較的大きい角度で傾斜しており、主に風量を生むために設けられている。図1に示されるように、複数の外周側羽根部23は、主として、吸気口6aから吸い込まれた空気を排気口4aに向けて送り出す。一方、複数の内周側羽根部24は、板部22の内周部において円周C2の接線L5に対して比較的小さい角度で傾斜しており、主に静圧を高めるために設けられている。複数の内周側羽根部24は、主として、外周側羽根部23によって排気口4aに送り出された空気が吸気口6a側へ向けて逆流することを防止する。言い換えれば、各内周側羽根部24は、吸気口6aから排気口4aへ向けての空気の流れを大幅に妨げない程度に、回転方向Rに対して鋭角に傾斜している。
【0034】
複数の羽根部26は、板部22の外周部において円周C3の接線L8に対して比較的大きい角度で傾斜しており、主に風量を生むために設けられている。図2に示されるように、複数の羽根部26は、主として、吸気口3aから吸い込まれた空気を排気口4aに向けて送り出す。
【0035】
以上説明したファンモータ1によれば、インペラ8の回転により、吸気口6aから空気が吸い込まれ、吸い込まれた空気が排気口4aから排出される。複数の外周側羽根部23は、中心点23aが円周C1上に位置するように配置されており、複数の内周側羽根部24は、ボス部19と外周側羽根部23との間において、中心点24aが円周C2上に位置するように配置されている。このように二重に設けられた羽根部23,24において、内周側羽根部24の中心点24aにおける円周C2の接線L5と内周側羽根部24の両端24b,24cを結ぶ直線L6とのなす傾き角θ2は、外周側羽根部23の中心点23aにおける円周C1の接線L2と外周側羽根部23の両端23b,23cを結ぶ直線L3とのなす傾き角θ1よりも小さくなっている。(図7参照)。このように、円周C1の接線L2に対する傾き角が比較的大きい外周側羽根部23は、主として風量を発生させるのに寄与し、円周C2の接線L5に対する傾き角が比較的小さい内周側羽根部24は、排気口4a側から吸気口6a側へ向けての空気の逆流を防止することにより、主として静圧を高めるのに寄与する。したがって、これらの外周側羽根部23と内周側羽根部24との協働により、十分な風量および静圧が得られ、ファン性能の向上が図られている。
【0036】
また、複数の外周側羽根部23の枚数は、複数の内周側羽根部24の枚数よりも多い。風量の発生に寄与する外周側羽根部23の枚数を多くすることで、全体として所定の表面積を維持しながらも、外周側羽根部23の1枚あたりの表面積を小さくできる。これにより、外周側羽根部23の1枚あたりによって送られる風量を少なくでき、ケーシング2とインペラ8との間で生じる騒音(風切り音)を低減することができる。
【0037】
さらに、板部22の下面側22bには、ボス部19との間に円環状のスペースSを確保するようにして複数の羽根部26のみが設けられ、その内周側には羽根部は設けられていない。よって、リード線等のためのスペースSを確保しつつ、最大限の風量を発揮することができる。
【0038】
(実験例)
本実施形態の実験例に係るインペラ8を用いた場合と、図9に示した比較例に係るインペラ40,50,60を用いた場合とで、風量および静圧をシミュレーションにより算出した。図9に示されるように、比較例1に係るインペラ40は、くの字状の羽根部41を複数有している。比較例2に係るインペラ50は、板部51の外周部の上下面において羽根部52,53を複数有している。羽根部52,53の枚数や傾き角は、インペラ8の羽根部23,26と同一に設定しており、1枚当たりの表面積は羽根部23,26よりもやや小さく設定している。比較例3に係るインペラ60は、板部61の外周部の上下面において羽根部62,63を複数有している。羽根部62,63の枚数や傾き角は、インペラ8の羽根部23,26と同一に設定しており、1枚当たりの表面積は羽根部23,26よりもやや大きく設定している。
【0039】
このシミュレーションでは、それぞれの場合において略等しい風量を発揮した場合の静圧を比較した。なお、ケーシング2のサイズやインペラ外径の条件は実験例および各比較例において統一している。シミュレーション結果を表1に示す。
【0040】
【表1】

【0041】
表1に示されるように、本実施形態に係るインペラ8を用いた場合、0.058m/sの風量に対し、静圧は49.7Paであった。インペラ40を用いた場合、0.058m/sの風量に対し、静圧は38.3Paであった。インペラ50を用いた場合、0.056m/sの風量に対し、静圧は39.4Paであった。インペラ60を用いた場合、0.061m/sの風量に対し、静圧は33.2Paであった。
【0042】
上記シミュレーション結果から、インペラ8を用いたファンモータ1では、比較例に係るインペラ40,50,60を用いた各ファンモータよりも、略等しい風量を発揮した場合に、それぞれ約30%、約26%、及び約50%だけ静圧が大きくなることが確認された。外周側羽根部23に加えて内周側羽根部24を設け、二重の配列とすることで、風量および静圧を確保できることが示された。
【0043】
以上、本発明の実施形態について詳述したが、本発明は上記実施形態に限られるものではない。例えば、上記実施形態では、板部22の上面側22aのみに二重の羽根部23,24を設けたが、板部22の下面側22bに二重の羽根部を設けてもよい。外周側羽根部23及び内周側羽根部24は、風量、静圧、騒音などを考慮して適宜配置することができる。例えば、外周側羽根部23と内周側羽根部24とを同じ枚数にし、各外周側羽根部23の間の位置に各内周側羽根部24が配置されるようにしてもよい。また、内周側羽根部24の枚数を外周側羽根部23の枚数の半分にし、2枚の外周側羽根部23の間の位置に内周側羽根部24が設けられる部分と、内周側羽根部24が設けられない部分と、を交互に設けてもよい。
【0044】
また、上記実施形態では、羽根部26が、板部22に対して外周側羽根部23と面対称をなしている場合について説明したが、面対称でなくてもよい。外周側羽根部23および羽根部26のそれぞれは、吸気口6a,3aの直径に応じて適宜配置することができる。また、羽根部は湾曲した形状に限られず、平板状であってもよい。上記実施形態では、両面吸気のファンモータについて説明したが、壁部3に吸気口3aが形成されないファンモータであってもよい。
【符号の説明】
【0045】
1…ファンモータ、2…ケーシング、3…第2の壁部、6…カバー(第1の壁部)、6a…吸気口、7…モータ部、8…インペラ、19…ボス部、22…板部、23…外周側羽根部、23a…中心点、24…内周側羽根部、24a…中心点、26…羽根部(他の羽根部)、C1…円周(第1の円周)、C2…円周(第2の円周)、L2,L5…接線、R…回転方向、X…回転軸線、θ1,θ2…傾き角。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対面する第1及び第2の壁部の前記第1の壁部に吸気口が形成されたケーシングと、前記ケーシング内で前記第2の壁部に固定されたモータ部と、前記モータ部に取り付けられて、前記モータ部の回転軸線を中心に回転するインペラと、を備えたファンモータにおいて、
前記インペラは、
前記モータ部が内部に配置されるボス部と、
前記ボス部の周囲で前記回転軸線に対し略直交して延在する板部と、
前記板部から前記回転軸線方向に突出すると共に、前記回転軸線を中心とする第1の円周上に中心点が位置するように配置された複数の外周側羽根部と、
前記ボス部と前記外周側羽根部との間において、前記板部から前記回転軸線方向に突出すると共に、前記回転軸線を中心とする第2の円周上に中心点が位置するように配置された複数の内周側羽根部と、を有し、
前記内周側羽根部の前記中心点における前記第2の円周の接線と前記インペラの回転方向における前記内周側羽根部の両端を結ぶ直線とのなす傾き角は、前記外周側羽根部の前記中心点における前記第1の円周の接線と前記インペラの回転方向における前記外周側羽根部の両端を結ぶ直線とのなす傾き角よりも小さいことを特徴とするファンモータ。
【請求項2】
前記外周側羽根部の枚数は、前記内周側羽根部の枚数よりも多いことを特徴とする請求項1記載のファンモータ。
【請求項3】
前記内周側羽根部および前記外周側羽根部は、前記板部の前記第1の壁部側に設けられており、前記板部の前記第2の壁部側には、前記ボス部との間に円環状のスペースを確保するようにして複数の他の羽根部のみが設けられていることを特徴とする請求項1又は2記載のファンモータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−72388(P2013−72388A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−212894(P2011−212894)
【出願日】平成23年9月28日(2011.9.28)
【出願人】(000001225)日本電産コパル株式会社 (755)
【Fターム(参考)】