説明

フィラメントの位置変更部材、即ち回収部材および防護構造体を備えた内部人工器官

内部人工器官は、交差構造体を形成すべく部分的に重なる長尺状部材の長手方向部分を有するステント構造体を含む。ステント構造体は交差構造体に隣接するループ構造体を更に含み、ループ構造体を通してフィラメントが延びる。防護構造体はステント構造体に固定され、交差構造体に隣接して位置され、交差構造体の長尺状部材の長手方向部分間のフィラメントの移動を妨害する。内部人工器官を操作する方法は、ステント構造体およびパッチ構造体のそれぞれのプロフィールを低減すべく、縫合糸構造体に対して移動した位置に、フィラメントに沿ってループ構造体を相互に移動させる工程を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内部人工器官に関する。より詳細には、本発明は、ステント構造体、およびステント構造体に固定され、ステント構造体と縫合糸構造体との絡み合いを防止する防護構造体を含む内部人工器官に関する。
【背景技術】
【0002】
内部人工器官は、患者の体内の血管や、非脈管系のオリフィスおよび体腔のうち少なくともいずれか一方のような他の体腔等に移植可能である。内部人工器官は、編み込まれたステントのような医療構造体を含む。編み込まれたステントは、ループ構造体および隣接する交差構造体を含む。交差構造体は、相互に部分的に重なり且つ直接に接触する編み込まれたステントの長尺状部材の長手方向部分を含む。縫合糸構造体はループ構造体を通して延び、例えば、ステント構造体を締める。ステント構造体を締めることは、患者の体内の血管に挿入し、血管を通して移動させるべくプロフィールを低減するために望ましい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ステント構造体の縫合糸構造体を操作することにより、縫合糸構造体は、交差構造体に接近し、長尺状部材の部分的に重なる長手方向部分に対して直接に接触する。長尺状部材の部分的に重なる長手方向部分に対して縫合糸構造体が直接に接触することにより、縫合糸構造体は、長手方向部分と絡み合ってしまう。これに代えて、縫合糸構造体は、十分な圧力により長尺状部材の長手方向部分に対して直接に接触するように張引されてもよく、また、長尺状部材は、縫合糸構造体の直接的な接触により、縫合糸構造体が交差構造体を通して移動する通路を形成すべく長尺状部材を分離させるために十分な弾性を備えてもよい。縫合糸構造体は、縫合糸構造体が最初に通過して延びるループ構造体内に保持されることを通常意図されるため、どちらの状況も通常望ましくない。従って、交差構造体を通した縫合糸構造体の移動は通常望ましくない。更に、ステント構造体に対して略妨害されることなく縫合糸構造体が移動することが通常好ましいため、ステント構造体に対する縫合糸構造体の絡み合いは、通常望ましくない。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明による内部人工器官は、縫合糸構造体が内部を延びるループ構造体を有するステント構造体を備える。ステント構造体は、ループ構造体に隣接する交差構造体を有する。ステント構造体は、交差構造体を形成すべく部分的に重なる、長尺状部材の長手方向部分を有する。防護構造体はステント構造体に固定され、交差構造体に隣接して位置され、交差構造体の長尺状部材の長手方向部分間の縫合糸構造体の移動を妨害する。内部人工器官を操作する方法は、ステント構造体および防護構造体のそれぞれのプロフィールを低減すべく縫合糸構造体に対してループ構造体を縫合糸構造体に沿って移動位置に相互に移動させる工程を含む。ループ構造体は、縮小されるステント構造体および防護構造体のプロフィールを保持すべく移動位置に固定される。
【0005】
防護構造体、および交差構造体に隣接する防護構造体の位置により、交差構造体における長尺状部材の部分的に重なる部分に縫合糸構造体が直接に接触することが妨害される。防護構造体による妨害により、縫合糸構造体が、長尺状部材の部分的に重なる部分と絡み合う危険性が低減される。縫合糸構造体が編み込まれたステント構造体の長尺状部材と絡み合うことが防止されることは、通常望ましい。更に、防護構造体による妨害により、縫合糸構造体が、長尺状部材の部分的に重なる部分を分離し、交差構造体を通して移動する危険性が低減される。縫合糸構造体が交差構造体を通して移動することを防止することが、通常望ましい。
【0006】
本発明のこれらの特徴および他の特徴は、添付の図面と共に後述する本発明の所定の実施例から完全に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】部分的に覆われる編み込まれたステント構造体、およびステント構造体に固定されるリング構造体を含む本発明による内部人工器官を示す斜視図。
【図2】ステント構造体の交差構造体に隣接して位置されるリング構造体、および縫合糸構造体が内部を通して延びるループ構造体を含むステント構造体を示す、図1の円2により包囲された部分の拡大図。
【図3】異なる長手方向部分を有するシリコンリング構造体が固定されたステント構造体の径の拡張の試験結果を示すグラフ。
【図4A】図2のステント構造体の軸4A−4Aに沿った部分断面図。
【図4B】図2のステント構造体の軸4B−4Bに沿った部分断面図。
【図5】織り込まれたリボン防護構造体を示し、本発明によるステントを示す部分平面図。
【図6A】本発明の実施例において、ワイヤの交差部に位置された防護構造体を示し、ステントを示す部分平面図。
【図6B】ワイヤの交差部に位置された図6Aの防護構造体を示し、本発明によるステントを示す部分断面図。
【図6C】防護構造体のないワイヤの交差部を示し、本発明によるステントを示す部分断面図。
【図7】パッチ状の防護構造体を示し、本発明によるステントを示す部分平面図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
対応する参照符号は、図面のいくつかにわたって対応する部分を示す。
図面、より詳細には図1および2において、内部人工器官10は、管状構造体に編まれる長尺状部材14を有するステント構造体12を備える。別例において、管状構造体は1つの長尺状部材14から編み込まれる。ステント構造体12は、1つのオーバー編み組パターンおよび1つのアンダー編み組パターンの長尺状部材、即ちフィラメント14を含む。しかしながら、本発明は、1つ以上の長尺状部材が交差する少なくとも1つの交差点を含む、任意のタイプのステント構造体に応用可能である。例えば、少なくとも1つの交差点を有するステントは、編み組したステント、巻かれたステント、螺旋状に巻かれたステント、編み込まれたステント、織られたステント等を含むが、これらに限定されるものではない。更に、本発明はステントに限定されるものではなく、長尺状部材、および1つ以上の長尺状部材が交差する交差点を含む任意の内部人工器官に関する。
【0009】
ステント構造体12は、長尺状部材14の長手方向部分によって形成されるループ構造体16を含む。図2に示すように、ループ構造体16を形成する長尺状部材14の部分は、長尺状部材14の隣接した部分に溶接される。別例において、ループ構造体16は、連続した1つの長尺状部材14の長手方向部分によって形成されてもよい。
【0010】
ステント構造体12は、ループ構造体16の区域によって形成される端面20を含む端部18を有する。端部18は、ステント構造体12の長手方向軸に沿って略一定の横断面を有する。端部18の横断面は、ステント構造体12の管状形状の径に相当する。
【0011】
ステント構造体12は、横断面、即ち径を有する中間部22を含み、これは、ステント構造体12の長手方向軸に沿って略一定である。中間部22の横断面は、ステント構造体12の管状形状の径に相当する。中間部22の径は、端部18の径より小さい。中間部22と端部18との間のステント構造体12の部分は、端部18および中間部22の異なる径を収容すべく広げられる。
【0012】
ステント構造体12は、端面20と中間部22との間に、ステント構造体に対して長手方向に位置される交差構造体24を含む。交差構造体24は、相互に部分的に重なり且つ直接に接触する長尺状部材14の長手方向部分を含む。長尺状部材14の部分的に重なる部分は、相互に異なる方向に延び、これにより、図2の斜視図に示すように部分的に重なる部分を交差させる。
【0013】
交差構造体24の長尺状部材14の部分的に重なる関係により、長尺状部材間の相対運動が可能となる。長尺状部材14の相対運動および可撓性により、ステント構造体12は横断方向に伸縮自在である。ステント構造体12の横断方向の伸縮は、ステント構造体12の管状形状の径方向の伸縮に相当する。
【0014】
長尺状部材が、十分に大きく且つそれぞれの長尺状部材14に対して好適に反対方向に配向される圧力にさらされると、長尺状部材14の可撓性および弾性により、長尺状部材14は交差構造体24において径方向に分離する。
【0015】
ステント構造体12は、ニチノール、ステンレス鋼、登録商標Elgiloyのようなコバルトベースの合金、白金、金、チタン、チタン合金、タンタル、ニオブ、高分子材料およびこれらの組み合わせを含む任意の好適な移植可能な材料から形成されるが、これらに限定されるものではない。好適な高分子材料は、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)ポリエステルを含むポリエステル、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリウレタン、ポリオレフィン、ポリビニル、ポリメチルアセテート(polymethylacetates)、ポリアミド、ナフタレンジカルボキシルエン誘導体(naphthalane dicarboxylene derivatives)、天然絹、ポリ塩化ビニル、拡張ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)を含むポリテトラフルオロエチレン、フッ化エチレンプロピレン共重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタラート、ポリエチレンナフタレートとポリブチレンナフタレートとポリトリメチレンナフタレートとトリメチレンジオールナフタレートのようなナフタリンジカルボン酸誘導体、ポリウレタン、ポリ尿素、シリコンゴム、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリアルデヒド、天然ゴム、ポリエステル共重合体、スチレンブタジエン共重合体、完全にあるいは部分的にハロゲン化されたポリエーテルのようなポリエーテル、およびこれらの共重合体および組み合わせを含む。更に、重合体のステント材料の好適且つ非制限的例は、ポリ(L−乳酸)(PLLA)、ポリ(DL−乳酸)(PLA)、ポリ(グリコリド)(PGA)、ポリ(L−乳酸/DL−乳酸共重合体)(PLLA/PLA)、ポリ(L−乳酸/グリコリド共重合体)(PLLA/PGA)、ポリ(DL−乳酸/グリコリド共重合体)(PLA/PGA)、ポリ(グリコリド/炭酸トリメチレン共重合体)(PGA/PTMC)、ポリジオキサノン(PDS)、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリヒドロキシ酪酸(PHBT)、ポリ(ホスファゼン)、ポリ(DL−乳酸/カプロラクトン共重合体)(PLA/PCL)、ポリ(グリコリド/カプロラクトン共重合体)(PGA/PCL)、ポリ(リン酸エステル)等を含む。高分子材料から形成されるワイヤは、高分子材料に組みこまれる金属ベースの粉末、微粒子や、ペーストのような放射線不透過性の材料を更に含んでもよい。例えば、放射線不透過性の材料は、高分子組成と混合され、これから重合体のワイヤが形成され、続いて、ここに開示されるようなステントが形成される。これに代えて、放射線不透過性の材料および放射線不透過性のマーカのうち少なくともいずれか一方が、金属又は高分子材ステントの表面に塗布されてもよい。いずれの実施例においても、いくつか例示するビスマス、バリウムおよび硫酸バリウムのようなその塩、タンタル、タングステン、金、白金、およびチタンを含む様々な放射線不透過性の材料並びにそれらの塩類および誘導体が使用可能であるが、これらに限定されるものではない。付加的な好適な放射線不透過性の材料は、米国特許第6,626,936号明細書に開示され、その全体がここに開示されたものとする。放射線不透過性の材料として有用な金属の複合体も考えられる。ステントは、所望の最終製品および応用に応じて、ワイヤに沿った所望の領域にて放射線不透過性を備えるように、あるいは完全に放射線不透過性を備えるように選択的に形成される。更に、ステントフィラメントは、放射線不透過性や視認性が改善された合成ワイヤを得るべく、タンタル、金、白金、イリジウム、あるいはこれらの組み合わせからなる内側コア、およびニチノールからなる外側部材又は層を有する。好適に、内側コアは白金であり、外側層はニチノールである。より好適に、白金からなる内側コアは、横断面全体のパーセンテージに基づく少なくとも約10%のワイヤを示す。更に、マルテンサイト相およびオーステナイト相においてニチノールを加熱、形状形成、冷却すること等により形状記憶として処理されていないニチノールが、外側層として好適である。そのような合成ワイヤの更なる詳細は米国特許出願公開第2002/0035396号明細書に開示され、その全体がここに開示されたものとする。好ましくは、ステントフィラメントは、ニチノールから、あるいは白金からなる内側コアおよびニチノールからなる外側層を有する合成ワイヤから形成される。
【0016】
ステント12は、径方向に膨張又は変形することによって径方向に拡張可能である。ステント12は、所定の構造体となるようにステントに含まれる材料の記憶特性により1つ以上の所定の温度にて自己拡張する。ニチノールは、1つ以上の所定の温度に基づくニチノールの記憶特性、あるいはニチノールの超弾性によって、径方向に拡張すべくステント12に含まれる材料である。
【0017】
内部人工器官は、カバー、即ちライナ38を含む。カバー、即ちライナ38は、ステント12の部分を覆うように位置される。図1に示すように、カバー、即ちライナ38は、ステント12の中間部22に沿って、あるいは中間部22の一部か複数の部分に沿って位置される。カバー、即ちライナ38は、高分子材料のコーティングである。例えば、ステントのワイヤは、高分子材料と共に溶出可能に設けられる生体活性剤により、部分的に、あるいは完全に覆われる。更に、重合体のコーティングは、ステントの内側又は外表面を覆う中空の管状ライナ、即ちカバーを設けるべくステントのワイヤ間の間隙を覆うように、あるいは間隙を通して延び、これによりステント移植具を設ける。高分子材料は、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリウレタン、ポリナフタレン、ポリテトラフルオロエチレン、拡張ポリテトラフルオロエチレン、シリコンおよびこれらの組み合わせからなる群から選択されてもよい。カバーは、管状構造体の形態にある。シリコンカバーは、ステントをディップコーティングすることにより好適に形成される。そのようなディップコーティングの詳細は米国特許第5,875,448号明細書に開示され、その全体がここに開示されたものとする。本発明はディップコーティングによりシリコン膜を形成することに限定されるものではなく、スプレー等の他の技術が好適に使用されてもよい。ステントにシリコンコーティング、即ち膜を塗布した後に、シリコンは硬化される。好適に、硬化は低温硬化であり、例えば約10分乃至約16時間までの短時間にわたっておおよそ室温乃至約90℃までの温度による。硬化したシリコンカバーは、更に、電子ビームの放射、ガンマ線放射エチレンオキシド処理等によって殺菌される。硬化および殺菌技術のうち少なくともいずれか一方の更なる詳細は、米国特許出願第6,099,562号明細書に開示され、その全体がここに開示されたものとする。硬化したシリコンのアルゴンプラズマ処理も使用可能である。硬化したシリコンのアルゴンプラズマ処理により、硬化したシリコンの表面を変更し、特に、表面の粘着性を低減する。しかしながら、本発明は、重合体のコーティングを有するステント移植具に限定されるものではない。移植部分は、重合体の膜、重合体のテープ、重合体のチューブ、重合体のシート、および繊維材料から好適に形成される。繊維材料は、織られ、編まれ、編み込まれ、且つ/又はフィラメントが巻かれ、好適な移植物を形成する。特にポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレートとポリブチレンナフタレートとポリトリメチレンナフタレートとトリメチレンジオールナフタレートのようなナフタリンジカルボン酸誘導体、ePTFE、天然絹、ポリエチレン、およびポリプロピレンを含む様々な生体適合性を備えた高分子材料が、織物構造体を形成すべく繊維材料として使用される。更に、繊維材料およびステント材料は、例えば一体的に編み込まれる等して一体形成され、ステント移植具を形成する。
【0018】
図2に示すように、内部人工器官10は、ループ構造体16を通して延びるフィラメントによって形成される縫合糸構造体26を含む。ループ構造体16を通して縫合糸構造体、即ちフィラメント26を延伸させることにより、縫合糸構造体、即ちフィラメント26に沿ってループ構造体16を相対移動させることによって端部18を締める。締めることにより、端部18の径が低減され、これによりそのプロフィールが低減される。端部18は、長尺状部材14の弾性によって締められる。更に、長尺状部材14の弾性は締めることによって生じる収縮に抵抗する。従って、締めから解放されると、長尺状部材14は、端部18を、締める前の端部18の径に拡張する。端部18が締められる前の径に復帰することは、端部の拡張を妨害するものが何もない状態にて可能である。
【0019】
端部18のプロフィールを低減することにより、患者の体内の血管内に横断面20を容易に挿入することができ、且つ続いて血管を通してステント構造体12を容易に移動させることができる。血管内の所望の位置にステント構造体12を位置決めした後に、端部18は締めから解放され、これにより端部18は長尺状部材14によって締められる前の径に拡張される。血管に位置される障害物により、端部18が締められる前の径に拡張することが防止される。端部18が締められる前の径に完全に復帰することは、血管内に端部の拡張を妨害するものが何もない状態にて可能である。
【0020】
血管内および血管を通したステント構造体12の挿入および移動は、ステント構造体12を血管内に挿入するに先だって血管内に縫合糸構造体、即ちフィラメント26を挿入することにより行われる。血管内に、およびその血管を通して端面20を張引すべく、縫合糸構造体、即ちフィラメント26は、血管を通して十分に移動される。血管を通した縫合糸構造体、即ちフィラメント26の移動により、血管内の所望の位置にステント構造体12が連続して引きつけられる。
【0021】
特にポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレートとポリブチレンナフタレートとポリトリメチレンナフタレートとトリメチレンジオールナフタレートのようなナフタリンジカルボン酸誘導体、ePTFE、天然絹、ポリエチレン、およびポリプロピレンを含む様々な生体適合性を備えた高分子材料が、縫合糸構造体、即ちフィラメント26に使用される。更に、フィラメント26は、1つ以上の金属のストランドであっても、1つ以上の金属のストランドを含んでもよい。金属のストランドは、ニチノール、ステンレス鋼、登録商標Elgiloyのようなコバルトベースの合金、白金、金、チタン、チタン合金、タンタル、ニオブ、高分子材料およびこれらの組み合わせやこれらの合金を含む任意の好適な移植可能な金属材料を含むが、これらに限定されるものではない。縫合糸構造体、即ちフィラメント26は、モノフィラメントであっても、マルチフィラメントであっても、あるいはこれらの組み合わせであってもよい。更に、縫合糸構造体、即ちフィラメント26は、ねじられたフィラメントを含んでも、ねじられていないフィラメントを含んでもよい。
【0022】
図2に示すように、内部人工器官10は、外側端部30、および内側端部32を有する防護構造体28を含む。図2に示すように、防護構造体28は、リング状、即ち円形のバンドの形態にある。防護、即ちリング構造体28は、ステント構造体12の内側表面に固定され、これにより、防護、即ちリング構造体は、ステント構造体に対して直交する配向を有する。防護、即ちリング構造体28は、中間部22と外側端部30との間に内側端部32が位置されるように、ステント構造体12に対して配向される。更に、図2の斜視図に示すように、ステント構造体12に対する防護、即ちリング構造体28の配向により、外側端部30は、交差構造体24と交差する。
【0023】
交差構造体24に隣接して防護構造体、即ちリング構造体28が位置されることにより、交差構造体24にて長尺状部材14の部分的に重なる長手方向部分に縫合糸構造体26が移動することが妨害される。移動は、ループ構造体16に位置される縫合糸構造体26を起点として、交差構造体24および中間部22に向かう方向に移動される。中間部22に向かう方向に縫合糸構造体が移動することにより長尺状部材14の部分的に重なる部分間に縫合糸構造体が保持されることが、防護、即ちリング構造体28によって防止される。更に、交差構造体24における長尺状部材14の部分的に重なる部分間の領域と縫合糸構造体26が絡み合うことや、領域を通して縫合糸構造体26が移動することが、防護、即ちリング構造体28によって防止される。交差構造体24における長尺状部材14の部分的に重なる部分間における縫合糸構造体26の移動は、部分的に重なる部分の弾性、および縫合糸構造体26をステント構造体12に対して軸方向に移動させることにより生じる径方向の分離力によって生じる部分的に重なる部分の径方向の分離を原因とする。
【0024】
防護、即ちリング構造体28は、横断方向の圧縮に抵抗するために十分に制限された弾性を有する。従って、防護、即ちリング構造体28は、縫合糸構造体26による端部18の締めに対して抵抗する。防護、即ちリング構造体28の弾性は、端部18を締めさせるために十分である。従って、締めにより端部18、および防護、即ちリング構造体28は、元の横断方向の径から圧縮された横断方向の径に、横断方向に圧縮される。端部18が締めから解放されると、防護、即ちリング構造体28は端部18を元の横断方向の径に復帰させる。
【0025】
防護構造体28は、カバー、即ちライナ38と同じ材料から形成される。防護構造体28は、例えば、選択的なコーティング、および/又はコーティングの所定の部分を取り払った後のコーティングによって、カバー、即ちライナ38と組み合わせて形成され、個別に間隔をおいて設けられるライナおよび防護構造体を形成する。本発明の一態様において、防護構造体28は、シリコン材料から形成される重合体のリボンあるいはそのような材料のリングを含む。シリコン材料は、約200ポンド毎平方インチ(psi)(lbsf/in)(約1.38MPa)乃至圧力約400lbsf/in(約2.76MPa)、好適には約250lbsf/in(約1.72MPa)乃至約350lbsf/in(約2.41MPa)の弾性率、即ちヤング率を有する。これらの値に限定されるものではなく、任意の好適な弾性率が使用可能である。更に、シリコン材料は、約500lbsf/in(約3.45MPa)乃至圧力約1200lbsf/in(約8.28MPa)、好適には約650lbsf/in(約4.48MPa)乃至約970lbsf/in(約6.69MPa)の引張強度を有する。これらの値に限定されるものではなく、任意の好適な引張強度が使用可能である。付加的な材料、および弾性係数の逆であるクリープコンプライアンスが、米国特許第6,656,216号明細書に開示され、その全体がここに開示されたものとする。
【0026】
防護構造体28は、横断方向の圧縮に抵抗するために十分に制限された弾性を有する。従って、防護構造体28およびステント構造体12が元の径から縮小された径に横断方向に圧縮される場合に、リング構造体によりステント構造体は元の径に復帰される。図3に、防護構造体28によってステント構造体が元の径に復帰されることを示す。図3は、ステント構造体12に対応するステント構造体、およびステント構造体に固定された防護構造体28に対応するリング構造体がその径を縮小する径方向の圧縮力にさらされた試験結果を示す。リング構造体は、シリコン材料から形成される。ステント構造体12および防護構造体28の両者は、図3の18mmの公称径を有する。径方向の圧縮力が取り払われると、ステント構造体およびリング構造体の径が増加する。試験は、1mm、2mm、3mm、および3.5mmの長手方向部分(即ちリングの幅)を有するリング構造体に対して行なわれる。ステント構造体およびリング構造体の各アセンブリにおいて、リング構造体が固定されたステント構造体の部分の径の測定は、ステント構造体およびリング構造体から径方向の圧縮力を取り払った後に、30秒、2分半、および1時間してなされた。図3は、増加した長手方向部分を有するリング構造体が組み立てられ、増加した径に径方向に拡張されたステント構造体を示す。これは、増加した長手方向部分、即ち増加した径を有するリング構造体が、拡大した径に径方向に拡張されるステント構造体に組み立てられるため、ステント構造体の径方向の拡張が、リング構造体によって促進されることを示す。図3において使用されるように、基端側のフレア径は、ステント12の搬送時に医師の基端側に位置されるステントのフレア端部の径を示す。
【0027】
図4Aおよび4Bは、コーティングとしての防護、即ちリング構造体28の付加的な詳細を示す。図4Aに示すように、長尺状部材、即ちステントフィラメント14は、防護、即ちリング構造体28のコーティング材料により完全に、あるいは略覆われる。防護材料の実質的な部分や要部は、ステント構造体12の内側部分34に向かって位置される。図4Bに示すように、ステント交差構造体24における長尺状部材、即ちステントフィラメント14も、防護、即ちリング構造体28のコーティング材により、完全に、あるいは略覆われる。
【0028】
図5に示すような本発明の一態様において、防護構造体28Aは、ステントワイヤ交差部24やステントワイヤ間隙の間にて織り込まれるか相互に位置される生体適合性を備えた材料のリボンである。例えば、防護構造体、即ちリボン28Aは、ステントワイヤ交差部24aの下方、およびステントワイヤ交差部24bを覆うように位置される。図5にステントワイヤ交差部24aの下方およびステントワイヤ交差部24bを覆う交互のパターンを示すが、本発明はそのように限定されるものではない。例えば、複数のワイヤ交差部24を覆う交差部、および/又は下方の交差部のような任意の好適なパターンや織り合わせが使用されてもよい。防護構造体28Aはコーティングである必要はなく、材料において個別のリボンが使用されてもよい。リボンは任意の好適な方法にてワイヤ交差部およびステントワイヤ間隙のうち少なくともいずれか一方の間に位置される。
【0029】
本発明の別の態様において、防護構造体28は、ステント12の長手方向部分に沿って最小の幅を有する。実際、防護構造体28はワイヤ交差部を相互に固定すべくワイヤ交差部に単に位置され、これにより縫合糸構造体26が絡み合うことが防止される。図6Aおよび6Bに示すように、例えば、防護構造体28Bは、選択されたワイヤ交差部24cに位置される玉等の少量の材料によって示される。図6Cに示すように、防護構造体28Bを欠くワイヤ交差部24dは、そのような防護構造体材料を含まない。
【0030】
図7に示すように、本発明の更なる別の態様において、あるいは更なる別例において、リング構造体28は、交差構造体24に隣接する位置にてステント構造体12に固定されるパッチ構造体28Cを備える。パッチ構造体28Cは、アーチ形か他の形状を有し、即ち端部18の全周面を包囲する必要はない。パッチ構造体28Cが隣接する交差構造体24において部分的に重なる長尺状部材14の重なる部分間における縫合糸構造体26の移動が、パッチ構造体28Cによって防止される。パッチ構造体によって防止されることは、リング構造体28によって防止されることに相当し、これにより、縫合糸構造体26が交差構造体24における長尺状部材14の部分的に重なる部分と絡み合ったり、部分的に重なる部分間を移動する危険性が低減される。パッチ構造体は、カバー、即ちライナ38と同じ材料から形成されても、異なる材料から形成されてもよい。パッチ構造体28Cは、平面図において矩形にて示されるが、本発明はそのように制限されるものではない。パッチ構造体28Cに好適な任意の形状が使用可能である。
【0031】
防護構造体28および縫合糸構造体26のうち少なくともいずれか一方は、公知のものを含む生体適合性を備えたポリマのような生体適合性を備えた材料から形成される。そのようなポリマは、金属、炭素繊維、ガラス繊維や、セラミックスのような充填物を含む。更に、そのような高分子材は、オレフィンポリマー、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、非拡張ポリテトラフルオロエチレン、拡張ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)、フッ化エチレンプロピレン共重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートとポリブチレンナフタレートとポリトリメチレンナフタレート(polytrimethylene naphthalate)とトリメチレンジオールナフタレート(trimethylenediol naphthalate)のようなナフタリンジカルボン酸誘導体、ポリウレタン、ポリ尿素、シリコンゴム、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリアルデヒド、天然ゴム、ポリエステル共重合体、スチレンブタジエン共重合体、完全にあるいは部分的にハロゲン化されたポリエーテルのようなポリエーテル、共重合体およびこれらの組み合わせを含む。更に、ポリエチレンテレフタレート(PET)ポリエステルを含むポリエステル、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリウレタン、ポリオレフィン、ポリビニル、酢酸ポリメチル(polymethylacetates)、ポリアミド、ナフタレンジカルボン酸エステル誘導体および天然絹が、防護構造体28および縫合糸構造体26のうち少なくともいずれか一方に含まれる。
【0032】
ステント構造体12、防護構造体28、および/又は縫合糸構造体26は、治療薬、即ち薬剤により処理される。治療薬は、非遺伝の治療薬、生体分子、小分子、あるいは細胞のような任意の好適な生体適合性を備えた薬剤である。
【0033】
例示的な非遺伝子治療薬は、ヘパリン、ヘパリン誘導体、プロスタグランジン(ミセルのプロスタグランジンElを含む)、ウロキナーゼ、およびPPack(デキストロフェニルアラニン・プロリン・アルギニン・クロロメチル・ケトン)のような抗血栓薬;エノキサパリン、アンジオペプチン、シロリムス(ラパマイシン)、タクロリムス、エベロリムス、ゾタロリムス、バイオリムス、平滑筋細胞の増殖を防止することができるモノクローナル抗体、ヒルジン、およびアセチルサリチル酸等の抗増殖剤;デキサメタゾン、ロシグリタゾン、プレドニゾロン、コルチコステロン、ブデソニド、エストロゲン、エストラジオール、スルファサラジン、アセチルサリチル酸、ミコフェノール酸、およびメサラミン等の抗炎症剤;パクリタキセル、エポチロン、クラドリビン、5−フルオロウラシル、メトトレキサート、ドキソルビシン、ダウノルビシン、シクロスポリン、シスプラチン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、エンドスタチン、トラピジル、ハロフジノン、およびアンギオスタチンのような抗腫瘍薬/抗増殖剤/抗有糸分裂剤;c−myc−癌遺伝子のアンチセンス阻害剤のような抗癌剤;トリクロサン、セファロスポリン、アミノグリコシド、ニトロフラントイン、銀イオン、化合物、あるいは塩類のような抗菌剤;非ステロイド性の抗炎症剤のような生体膜合成阻害剤、並びにエチレンジアミン四酢酸、O,O’−ビス(2−アミノエチル)エチレングリコール−Ν,Ν,Ν’,Ν’−四酢酸(O,O’−bis(2−aminoethyl) ethyleneglycol−Ν,Ν,Ν’,Ν’−tetraacetic acid)、およびこれらの混合物のようなキレート剤;ゲンタマイシン、リファムプシン、ミノサイクリンおよびシプロフロキサシンのような抗生物質;キメラ抗体および抗体断片を含む抗体;リドカイン、ブピバカイン、およびロピバカイン等の麻酔薬;一酸化窒素;リンシドミン(linsidomine)、モルシドミン、L−アルギニンおよびNO−炭水化物付加物、重合体又は低重合体のNO付加物のような一酸化窒素(NO)ドナー;D‐Phe‐Pro‐Arg‐クロロメチルケトン、RGDペプチド含有化合物、ヘパリン、アンチトロンビン抗体を含むアンチトロンビン化合物、血小板受容体拮抗薬、、抗血小板受容体抗体、エノキサパリン、ヒルジン、ワルファリンナトリウム、ジクマロール、アスピリン、プロスタグランジン阻害剤、シロスタゾール抗血小板因子およびチック抗血小板因子等の血小板阻害剤のような抗凝固剤;成長因子、転写活性化因子および翻訳プロモータのような血管細胞成長促進剤;成長因子阻害剤、成長因子受容体拮抗薬、転写リプレッサー、翻訳リプレッサー、複製阻害剤、抑制抗体、成長因子に対する抗体、成長因子および細胞毒素から構成される二官能性分子、抗体および細胞毒素から構成される二官能性分子のような血管細胞成長阻害剤;コレステロール低下剤;血管拡張剤;内因性血管作用機構(endogenous vasoactive mechanisms)阻害剤;ゲルダナマイシンのような熱ショック蛋白質阻害剤;アンギオテンシン転換酵素(ACE)阻害剤;ベータ遮断薬;βARキナーゼ(βARK)阻害剤;ホスホランバン阻害剤;登録商標ABRAXANEのような、タンパク結合粒子剤(protein−bound particle drugs);および上述したものの任意の組み合わせおよびプロドラッグを含む。
【0034】
例示的な生体分子は、ペプチド、ポリペプチドおよびタンパク質;オリゴヌクレオチド;二本鎖DNA又は単鎖DNA(裸の、およびcDNAを含む)、RNA、アンチセンスDNAおよびアンチセンスRNAのようなアンチセンス核酸、小型干渉RNA(siRNA)、およびリボザイムのような核酸;遺伝子;炭水化物;成長因子を含む血管新生因子;細胞周期阻害剤;および再狭窄防止剤を含む。核酸は、例えばベクタ(ウイルスベクタを含む)、プラスミドあるいはリポソームのような搬送システムに組み込まれる。
【0035】
タンパク質の非制限的例は、SERCA2タンパク質、単球走化性タンパク質(「MCP−1」)、および例えば、BMP−2、BMP−3、BMP−4、BMP−5、BMP−6(VGR−1)、BMP−7(OP−1)、BMP−8、BMP−9、BMP−10、BMP−11、BMP−12、BMP−13、BMP−14、BMP−15のような骨形態形成タンパク質(「BMP」)を含む。好適なBMPは、BMP−2、BMP−3、BMP−4、BMP−5、BMP−6、およびBMP−7のうち任意のものである。これらのBMPは、ホモ二量体、ヘテロ二量体、あるいはこれらの組み合わせとして、単独にて、あるいは他の分子とともに得られる。これに代えて、又は付加的に、BMPの上流又は下流の影響を誘発可能な分子が設けられてもよい。そのような分子は、「ハリネズミ」タンパク質のうちの任意のもの、あるいはそれらをコード化するDNAを含む。遺伝子の非制限的例は、抗アポトーシスBcl−2ファミリー因子、およびAktキナーゼのような細胞死に対して保護する生存遺伝子(survival genes);SERCA2遺伝子;およびこれらの組み合わせを含む。血管新生因子の非制限的例は、酸性および塩基性線維芽細胞増殖因子、血管内皮成長因子、上皮成長因子、トランスフォーミング成長因子αおよびβ、血小板由来内皮成長因子、血小板由来増殖因子、腫瘍壊死因子α、肝細胞成長因子およびインスリン様成長因子を含む。細胞周期阻害剤の非制限的例は、カテプシンD(CD)阻害剤である。再狭窄防止剤の非制限的例は、p15、p16、p18、p19、p21、p27、p53、p57、Rb、nFkBおよびE2Fデコイ、チミジンキナーゼ、およびこれらの組み合わせ、並びに細胞増殖を妨害するのに好適な他の薬剤を含む。
【0036】
例示的な小分子は、100kD(約1.66×10−24kg)未満の分子量を有するホルモン、ヌクレオチド、アミノ酸、砂糖、および脂質、並びに化合物を含む。
例示的な細胞は、幹細胞、始原細胞、内皮細胞、成人の心筋細胞および平滑筋細胞を含む。細胞は、ヒト由来(自己由来か同種異型の)ものであっても、動物由来(異種の)であっても、遺伝子的に操作されてもよい。細胞の非制限的な例は、サイドポピュレーション(SP)細胞、LinCD34、LinCD34、Linc Kitを含む分化した血液細胞のマーカを有さない(Lin)細胞、5−azaを備えた間葉系幹細胞を含む間葉系幹細胞、臍帯血細胞、心臓や他の組織由来の幹細胞、全骨髄、骨髄単核球、内皮始原細胞、骨格筋芽細胞や、外とう細胞、筋肉由来細胞、G細胞、内皮細胞、成人の心筋細胞、繊維芽細胞、平滑筋細胞、成人の5−azaを備えた心筋繊維芽細胞(cardiac fibroblasts +5−aza)、遺伝子組み換え細胞、組織再生移植物(tissue engineered grafts)、MyoD痕跡繊維芽細胞(MyoD scar fibroblasts)、ペーシング細胞(pacing cells)、胚性幹細胞クローン、胚性幹細胞、胎児や新生児の細胞、免疫学的にマスクされた細胞、および奇形腫由来細胞を含む。
【0037】
任意の治療薬が、生体適合性を備える程度まで組み合わされてもよい。
上述した任意の治療薬が、医療器具のポリマコーティングや、医療器具の一部に組み込まれてもよく、あるいは医療器具のポリマコーティングや医療器具の一部に塗布されてもよい。ポリマコーティングのポリマは、生物分解性であっても非生物分解性であってもよい。好適な非生物分解性ポリマの非制限的例は、ポリスチレン;ポリスチレン無水マレイン酸;スチレン−イソブチレン−スチレンブロック共重合体(SIBS)、およびスチレン−エチレン/ブチレン−スチレン(SEBS)ブロック共重合体のようなポリイソブチレン共重合体;架橋ポリビニルピロリドンを含むポリビニルピロリドン;ポリビニルアルコール、EVAのようなビニルモノマの共重合体;ポリビニルエーテル;ポリビニル芳香族;ポリエチレンオキシド;ポリエチレンテレフタレートを含むポリエステル;ポリアミド;ポリ(メタクリル酸メチル酢酸ブチルメタクリル酸メチル)ブロック共重合体を含むポリアクリルアミド;ポリエーテルスルホンを含むポリエーテル;ポリプロピレン、ポリエチレンおよび高分子量ポリエチレンを含むポリアルキレン;ポリウレタン;ポリカーボネート、シリコン;シロキサン重合体;酢酸セルロースのようなセルロースポリマ;ポリウレタン分散液(登録商標BAYHYDROL)のようなポリマ分散液;スクワレン乳液;および任意の上述のものの混合物および共重合体を含む。
【0038】
好適な生物分解性ポリマの非制限的例は、ポリカルボン酸、無水マレイン酸ポリマを含むポリ無水物;ポリオルトエステル;ポリアミノ酸;ポリエチレンオキシド;ポリホスファゼン(polyphosphazenes);ポリ(L−乳酸)(PLLA)、ポリ(DL−乳酸)、ポリ(乳酸/グリコール酸共重合体)、50/50(DL−乳酸/グリコリド共重合体)のようなポリ乳酸、ポリグリコール酸、およびこれらの共重合体および混合物;ポリディクサノン(polydioxanone);ポリプロピレンフマル酸エステル;ポリデプシペプチド;ポリ(DL−乳酸/カプロラクトン共重合体およびポリカプロラクトン/アクリル酸ブチル共重合体のようなポリカプロラクトン、およびその共重合体および混合物;ポリヒドロキシブチレートバレレート(polyhydroxybutyrate valerate)および混合物;チロシン由来ポリカーボネートおよびアクリル酸塩、ポリイミノカーボネート、およびポリジメチルトリメチルカーボネート(polydimethyltrimethylcarbonates)のようなポリカーボネート;シアノアクリレート;リン酸カルシウム;ポリグリコサミノグリカン(polyglycosaminoglycans);多糖(ヒアルロン酸;セルロースおよびヒドロキシプロピルメチルセルロース;ゼラチン;でんぷん;デキストラン;アルギン酸塩、およびこれらの誘導体)、タンパク質、およびポリペプチドのような高分子;および任意の上述のものの混合物および共重合体を含む。生物分解性ポリマは、更にポリヒドロキシ酪酸およびその共重合体、ポリカプロラクトン、ポリ無水物(結晶質および非晶質の両者)、無水マレイン酸共重合体、および亜鉛リン酸カルシウムのような表面を腐食可能なポリマである。
【0039】
本発明と共に使用されるそのようなコーティングは、当技術分野において公知の任意の方法によって形成される。例えば、最初のポリマおよび溶媒混合物が形成された後に、治療薬がポリマおよび溶媒混合物に付加される。これに代えて、ポリマ、溶媒、および治療薬が、混合物を形成すべく同時に付加されてもよい。ポリマ、溶媒、治療薬の混合物は、分散液、懸濁液、あるいは溶液である。更に、治療薬は、溶媒がない状態のポリマと混合されてもよい。治療薬は、ポリマおよび溶媒の混合物、またはポリマに溶解され、混合物との、あるいはポリマとの真溶液となり、混合物又はポリマの微粒子、即ち微粉にされた粒子に分散され、可溶性に基づき混合物又はポリマに懸濁されるか、界面活性剤のようなミセルを生ずる化合物と結合するか、小さなキャリア粒子に吸収され、混合物又はポリマの懸濁液を形成する。コーティングは、複数のポリマおよび複数の治療薬のうち少なくともいずれか一方を含む。
【0040】
コーティングは、浸漬、スプレー、ローリング、ブラシ、静電塗装あるいは静電スピン(electrostatic spinning)、蒸着、霧化したスプレーコーティングと超音波ノズルを使用したスプレーコーティングとを含む吹きつけを含む当技術分野において公知の任意の方法によって医療器具に塗布することができる。
【0041】
コーティングは、通常約1マイクロメートル乃至約50マイクロメートルの厚みを有する。バルーンカテーテルの場合において、厚みは、約1マイクロメートル乃至約10マイクロメートルであり、好適に約2マイクロメートル乃至約5マイクロメートルである。例えば、約0.2マイクロメートル乃至0.3マイクロメートルの非常に肉薄なポリマコーティング、および例えば10マイクロメートルを超える更なる厚みを有するコーティングも可能である。更に、医療機器に多層のポリマコーティングを塗布することも本発明の範囲内にある。そのような多層は、同じか異なる治療薬、および/又は同じか異なるポリマを含む。異なる解放の仕組みを設けるべく、ポリマおよび治療薬のうちの少なくともいずれか一方のタイプ、厚み、および他の特性を選択する方法は、当技術分野において公知である。
【0042】
任意の実施例において、内部人工器官10およびステント12のうち少なくともいずれか一方は、例えば、冠状動脈や周辺の血管、食道、気管、気管支、結腸、胆道、尿路、前立腺、脳等のような体腔、血管、あるいは導管の開放を保持することを含む多くの目的に使用される。本発明の装置は、更に、弱化した体腔を支持することや、体腔に液密な導管を設けることに使用されてもよい。
【0043】
本発明を所定の好ましい実施例を参照して上述したが、多数の変更が上述した発明の趣旨のおよび範囲内にあるものといえる。従って、本発明は開示される実施例に限定されるものではなく、添付の請求の範囲の記載によって許可される十分な範囲を有することが意図される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィラメントが通過して延びるループ構造体と、同ループ構造体に隣接する交差構造体と、同交差構造体を形成すべく部分的に重なる、長尺状部材の長手方向部分とを有するステント構造体と、
同ステント構造体に固定され、且つ交差構造体に隣接し、交差構造体の長尺状部材の長手方向部分間のフィラメントの移動を妨害する防護構造体とを備えることを特徴とする内部人工器官。
【請求項2】
前記交差構造体の長尺状部材の長手方向部分は、それぞれ異なる方向に延びることを特徴とする請求項1に記載の内部人工器官。
【請求項3】
前記ループ構造体は、長尺状部材の長手方向部分によって形成されることを特徴とする請求項1に記載の内部人工器官。
【請求項4】
前記ステント構造体は、管状構造体からなり、前記防護構造体は、ステント構造体に対して横断して配向されるリボン構造体からなることを特徴とする請求項1に記載の内部人工器官。
【請求項5】
前記防護構造体は、内部人工器官の内側表面および外側表面のうち少なくともいずれか一方の少なくとも一部を制限することを特徴とする請求項1に記載の内部人工器官。
【請求項6】
前記リボン構造体は、前記リボン構造体およびステント構造体が元の横断面から縮小された横断面に横断方向に圧縮されるときに、リボン構造体がステント構造体を元の横断面に復帰させるように、その横断方向の圧縮に抵抗すべく十分に制限された弾性を有することを特徴とする請求項4に記載の内部人工器官。
【請求項7】
前記リボン構造体はシリコン材料からなることを特徴とする請求項6に記載の内部人工器官。
【請求項8】
前記シリコン材料は、約200lbsf/in(約1.38MPa)乃至圧力約400lbsf/in(約2.76MPa)の弾性率を有することを特徴とする請求項7に記載の内部人工器官。
【請求項9】
前記シリコン材料は、約500lbsf/in(約3.45MPa)乃至圧力約1200lbsf/in(約8.28MPa)の引張強度を有することを特徴とする請求項7に記載の内部人工器官。
【請求項10】
前記ステント構造体は横断面を有する端部を含み、該中間部は端部の横断面より小さい横断面を有することを特徴とする請求項4に記載の内部人工器官。
【請求項11】
前記ループ構造体は、ステント構造体に対して長手方向の位置を有することと、
該ステント構造体は、フィラメントが通過して延びる複数の付加的なループ構造体を含むことと、同付加的なループ構造体は、ステント構造体に対してそれぞれ長手方向の位置を有することと、同それぞれの長手方向の位置は、ループ構造体の長手方向位置と略同じであることと、
該ステント構造体は、部分的に重なる長尺状部材のそれぞれの長手方向部分によって形成される複数の付加的な交差構造体を有することと、同付加的な交差構造体は、該付加的なループ構造体に隣接することと、
前記リボン構造体は、付加的な交差構造体の長尺状部材の長手方向部分間のフィラメントの移動を妨害することとを特徴とする請求項4に記載の内部人工器官。
【請求項12】
前記リボン構造体は前記付加的な交差構造体に隣接して位置されることを特徴とする請求項11に記載の内部人工器官。
【請求項13】
前記ステント構造体は、前記横断面、前記ループ構造体、前記付加的なループ構造体、前記交差構造体および前記付加的な交差構造体によって形成された編み込んだステント構造体を含むことを特徴とする請求項11に記載の内部人工器官。
【請求項14】
前記ループ構造体および前記付加的なループ構造体は、連続する長尺状部材の長手方向部分によって形成されることを特徴とする請求項11に記載の内部人工器官。
【請求項15】
前記ループ構造体および前記付加的なループ構造体は、連結される長尺状部材の長手方向部分によって形成されることを特徴とする請求項11に記載の内部人工器官。
【請求項16】
フィラメントが通過して延びる複数のループ構造体を有する管状のステント構造体と、該ループ構造体は、ステント構造体に対してそれぞれ長手方向の位置を有し、同位置は略同じであり、
該ステント構造体は、ループ構造体に隣接する複数の交差構造体、および交差構造体を形成すべく部分的に重なる、長尺状部材の長手方向部分を有し、
ステント構造体に固定され、且つ交差構造体の長尺状部材の長手方向部分間のフィラメントの移動を妨害すべく交差構造体に隣接して位置される防護構造体とを備え、
防護構造体およびステント構造体がそれぞれのプロフィールを有する内部人工器官を操作する方法であって、
ステント構造体および防護構造体のそれぞれのプロフィールを低減すべくフィラメントに対して移動した位置にフィラメントに沿ってループ構造体を相互に移動させる工程と、
ステント構造体および防護構造体のプロフィールを保持すべく該移動した位置にループ構造体を固定する工程とを含むことを特徴とする内部人工器官を操作する方法。
【請求項17】
前記移動した位置からループ構造体を解放する工程を更に含み、これにより、ステント構造体および防護構造体を低減されたプロフィールから横断方向に拡張させることを特徴とする請求項16に記載の方法。
【請求項18】
複数の長尺状部材と、同長尺状部材は、内部人工器官の少なくとも一端にて相互に覆うように交差することと、
1つ以上の長尺状部材によって内部人工器官の一端に位置される少なくとも1つのループ構造体と、
ループ構造体を通過するフィラメントと、
長尺状部材の交差点の基端側に位置される防護構造体とを備え、これによりフィラメントが交差点に進入することが防止されることとを特徴とする内部人工器官。
【請求項19】
前記防護構造体は、リボンであることを特徴とする請求項18に記載の内部人工器官。
【請求項20】
前記防護構造体は、円形のバンドであることを特徴とする請求項18に記載の内部人工器官。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図4A】
image rotate

【図4B】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6A】
image rotate

【図6B】
image rotate

【図6C】
image rotate

【図7】
image rotate

【図3】
image rotate


【公表番号】特表2013−504375(P2013−504375A)
【公表日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−528822(P2012−528822)
【出願日】平成22年8月31日(2010.8.31)
【国際出願番号】PCT/US2010/047292
【国際公開番号】WO2011/031587
【国際公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【出願人】(506192652)ボストン サイエンティフィック サイムド,インコーポレイテッド (172)
【氏名又は名称原語表記】BOSTON SCIENTIFIC SCIMED,INC.
【Fターム(参考)】