説明

フィラメントワインディング装置

【課題】ガイドの清掃を効率よく、短時間で行うことのできるフィラメントワインディング装置を提供する。
【解決手段】繊維束Fを案内する複数のガイド53と、ガイド53を清掃するための清掃部61と、を備え、ガイド53を清掃する場合に、ガイド53を清掃部61に移動させて清掃する。ガイド53の清掃をガイド53が配置された位置で行うのではなく、清掃部61が配置される特定の位置にガイド53を移動させ、その位置でガイド53の清掃を行うため、ガイド53の清掃を効率よく、短時間で行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィラメントワインディング装置の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、フープ巻装置とヘリカル巻装置とを具備し、フープ巻きとヘリカル巻きとをライナーの外周面に対して交互に繰り返し行うことにより、ライナーの周囲に繊維束を巻き付けて複数の繊維層を形成するフィラメントワインディング装置は公知である(例えば特許文献1参照。)。
【0003】
フィラメントワインディング装置には、繊維束が巻かれたボビンが多数配置されている。各ボビンからライナーに向かう経路上には、繊維束を案内するガイドが多数設けられている。ガイドには繊維束が接触するため、繊維束に含まれている繊維くずや樹脂等がガイドに付着することがある。このため、定期的にガイドを清掃する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−119732号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、ガイドは非常に数が多い上、繊維束の経路上に点在している。このため、ガイドの清掃を効率良く行うことができず、清掃に長時間を要するという問題があった。
【0006】
本発明は、このような問題を解決すべくなされたものである。本発明の目的は、ガイドの清掃を効率よく、短時間で行うことのできるフィラメントワインディング装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0008】
即ち、第1の発明は、繊維束をライナーに巻き付けるフィラメントワインディング装置であって、繊維束を案内する複数のガイドと、前記ガイドを清掃するための清掃部と、を備える。前記ガイドを清掃する場合に、前記ガイドを前記清掃部に移動させて清掃する。
【0009】
第2の発明は、第1の発明であって、前記ガイドを清掃する場合に、前記複数のガイドが集められて、前記清掃部で清掃される。
【0010】
第3の発明は、第1の発明であって、前記ガイドを清掃する場合に、前記複数のガイドは、前記清掃部を通過しながら清掃される。
【0011】
第4の発明は、第1から第3の発明であって、前記ガイドを清掃する場合に、前記複数のガイドを前記清掃部に案内するレールと、前記複数のガイドを連結するとともに、前記ガイドを清掃する場合に、前記ガイドを前記レールに沿って移動させる連結部と、を備える。
【発明の効果】
【0012】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0013】
第1の発明によれば、ガイドの清掃をガイドが配置された位置で行うのではなく、清掃部が配置される特定の位置にガイドを移動させ、その位置でガイドの清掃を行う。このため、ガイドの清掃を効率よく、短時間で行うことができる。
【0014】
第2の発明によれば、複数のガイドをまとめて清掃部で清掃するため、ガイドの清掃を効率よく、短時間で行うことができる。
【0015】
第3の発明によれば、複数のガイドは、清掃部を通過しながら清掃されるため、ガイドの清掃を効率よく、短時間で行うことができる。
【0016】
第4の発明によれば、連結部とレールによって複数のガイドが清掃部に案内されて清掃されるため、ガイドの清掃を効率よく、短時間で行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】第1の実施形態に係るフィラメントワインディング装置100の全体構成を示す側面図。
【図2】クリールスタンド50の側面図。
【図3】クリールスタンド50のガイド53を清掃するための構成を示す簡略図。
【図4】第2の実施形態に係るフィラメントワインディング装置100における、クリールスタンド50のガイド53を清掃するための構成を示す簡略図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の第1の実施形態に係るフィラメントワインディング装置100(以降「FW装置100」)について説明する。
【0019】
図1は、FW装置100の側面図である。図2は、FW装置100を構成するクリールスタンド50の側面図である。図1中に示す矢印Xは、ライナー1の移送方向を示している。ライナー1の移送方向と平行な方向をFW装置100の前後方向とし、ライナー1が移送される方向を前側(本図左側)、前側の反対側を後側(本図右側)と定義する。FW装置100は、ライナー1を前後方向に往復動させるため、ライナー1の移送方向に応じて前側及び後側が定まるものとする。
【0020】
FW装置100は、ライナー1の外周面1Sに繊維束Fを巻き付けて複数の繊維層を形成する装置である。FW装置100は、主に主基台10と、ライナー移送装置20と、フープ巻き装置30と、ヘリカル巻き装置40と、クリールスタンド50で構成される。
【0021】
主基台10は、FW装置100の基礎を構成する主たる構造体である。主基台10の上部には、ライナー移送装置用レール11が設けられている。ライナー移送装置用レール11には、ライナー移送装置20が載置されている。主基台10の上部には、ライナー移送装置用レール11に対して平行にフープ巻き装置用レール12が設けられている。フープ巻き装置用レール12には、フープ巻き装置30が載置されている。
【0022】
ライナー移送装置20は、ライナー1を回転させながら移送する装置である。ライナー移送装置20は、FW装置100の前後方向を中心軸としてライナー1を回転させるとともに、FW装置100の前後方向にライナー1を移送する。ライナー移送装置20は、主に基台21と、ライナー支持部22とで構成される。
【0023】
基台21の上部には、一対のライナー支持部22が設けられている。ライナー支持部22は、ライナー支持フレーム23と回転軸24で構成される。ライナー支持フレーム23は、基台21から上方に向けて延設される。回転軸24は、ライナー支持フレーム23から前後方向に向けて延設される。ライナー1は、回転軸24に取り付けられ、図示しない動力機構によって一方向に回転される。
【0024】
このような構成により、ライナー移送装置20は、FW装置100の前後方向を中心軸としてライナー1を回転させるとともに、FW装置100の前後方向にライナー1を移送することを可能としている。
【0025】
フープ巻き装置30は、ライナー1の外周面1Sに繊維束Fを巻き付けて繊維層を形成する装置である。フープ巻き装置30は、繊維束Fの巻き付け角度がFW装置100の前後方向に対して略垂直となる、いわゆるフープ巻きを行なう。フープ巻き装置30は、主に基台31と、動力機構32と、フープ巻き掛け装置33と、で構成される。
【0026】
基台31には、動力機構32によって回転されるフープ巻き掛け装置33が設けられている。フープ巻き掛け装置33は、主に巻き掛けテーブル34と複数のボビン35で構成される。繊維束Fは、巻き掛けテーブル34に設けられた各ボビン35から複数のガイド(図示せず)を介してライナー1の外周面1Sに導かれ、巻き掛けテーブル34が回転することでフープ巻きが行なわれる。
【0027】
このような構成により、フープ巻き装置30は、繊維束Fの巻き付け角度がFW装置100の前後方向に対して略垂直となるフープ巻きをライナー1の外周面1Sに対して行なう。
【0028】
ヘリカル巻き装置40は、ライナー1の外周面1Sに繊維束Fを巻き付けて繊維層を形成する装置である。ヘリカル巻き装置40は、繊維束Fの巻き付け角度がFW装置100の前後方向に対して所定の値となる、いわゆるヘリカル巻きを行なう。ヘリカル巻き装置40は、主に基台41と、ヘリカル巻き掛け装置42と、で構成される。
【0029】
基台41には、ヘリカル巻き掛け装置42が設けられている。ヘリカル巻き掛け装置42は、複数のノズル(図示せず)を備えている。複数のノズルによって、ライナー1の外周面1Sに繊維束Fが導かれ、ライナー1が回転しながら通過することでヘリカル巻きが行なわれる。
【0030】
このような構成により、ヘリカル巻き装置40は、繊維束Fの巻き付け角度がFW装置100の前後方向に対して所定の値となるヘリカル巻きをライナー1の外周面1Sに対して行なう。
【0031】
クリールスタンド50は、ヘリカル巻き装置40に繊維束Fを供給するものである。詳細には、クリールスタンド50は、ヘリカル巻き装置40を構成する複数のノズルに対して繊維束Fを供給する。図2に示すように、クリールスタンド50は、主にラック51と、ボビンホルダ軸52と、ガイド53と、で構成される。
【0032】
ラック51には、複数のボビンホルダ軸52が互いに平行に取り付けられている。各ボビンホルダ軸52にはボビンBが回転自在に支持される。ボビンBは、繊維束Fが引っ張られることによって回転し、繊維束Fを解舒する。各ボビンBからライナー1に向かう繊維束Fの経路上には、繊維束Fを案内するガイド53が複数設けられている。各ボビンBから解舒された繊維束Fは、複数のガイド53を介して対応するヘリカル巻き装置40の各ノズルに供給される。
【0033】
このような構成により、クリールスタンド50は、ヘリカル巻き装置40を構成する各ノズルに対して繊維束Fを供給することを可能としている。尚、本実施形態のFW装置100は、図2に示すクリールスタンド50と同様のクリールスタンド50を複数備えている。本実施形態のFW装置100は、4台のクリールスタンド50を備えており、各クリールスタンド50からヘリカル巻き装置40に向けて繊維束Fを供給するように構成されている。
【0034】
次に、FW装置100に設けられるガイドを清掃するための構成について説明する。FW装置100のガイドは、フープ巻き装置30、ヘリカル巻き装置40、クリールスタンド50にそれぞれ複数設けられているが、本実施形態のFW装置100では、クリールスタンド50のガイド53を清掃するための構成を備えている。
【0035】
図3は、クリールスタンド50のガイド53を清掃するための構成を示している。図3Aに示すように、クリールスタンド50上の各ボビンBからヘリカル巻き装置40の対応するノズルまでの経路上には、複数のガイド53が設けられている。各ボビンBからヘリカル巻き装置40の対応するノズルまでの経路上にある一群の複数のガイド53をガイド群54とする。ガイド群54は、各ボビンB毎(各ボビンBに対応するノズル毎)に構成されることとなる。
【0036】
各ボビンBからヘリカル巻き装置40の対応するノズルまでの経路上には、ガイド群54を構成する各ガイド53を清掃する清掃部61が設けられている。清掃部61では、ガイド53に付着した繊維くずや樹脂等が除去される。繊維くずや樹脂等を除去する手段としては種々の公知の手段を用いることができる。例えば、ブラシ等で繊維くずや樹脂等を物理的に除去する手段や、洗浄剤等で繊維くずや樹脂等を化学的に除去する手段、あるいはこれらを組み合わせた手段を採用することができる。また、清掃部61は、自動又は半自動でガイド53の清掃を行う装置でもよく、あるいは作業者による手作業でガイド53の清掃を行う場所であってもよい。
【0037】
ガイド群54を構成する各ガイド53は、レール62に移動自在に支持されており、レール62により清掃部61に案内される。また、ガイド群54を構成する各ガイド53は、連結部63により連結されている。
【0038】
続いて、上記説明した構成により、クリールスタンド50のガイド53を清掃する手順について説明する。図3Aでは、ボビンBからヘリカル巻き装置40の対応するノズルまで、繊維束Fは、ガイド群54を構成する各ガイド53によって案内されている。
【0039】
図3Bに示すように、ガイド群54を構成する各ガイド53を清掃する場合、まずボビンBからの繊維束Fの供給を停止する。次に連結部63を清掃部61側に移動させ、ガイド群54を構成する各ガイド53を清掃部61に集める。そして、ガイド群54を構成する各ガイド53を清掃部61に集めた状態で各ガイド53の清掃を行う。清掃が終了すると、逆の手順で連結部63を清掃部61の反対側に移動させ、ガイド群54を構成する各ガイド53を元の位置に戻す。
【0040】
以上説明した本実施形態に係るFW装置100によれば、次のような効果を有する。
【0041】
ガイド群54を構成する各ガイド53の清掃をガイド53が配置された位置で行うのではなく、清掃部61が配置される特定の位置にガイド53を移動させ、その位置で複数のガイド53の清掃をまとめて行う。このため、ガイド53の清掃を効率よく、短時間で行うことができる。
【0042】
また、レール62と連結部63によって複数のガイド53が清掃部61に案内されて清掃されるため、ガイド53の清掃を効率よく、短時間で行うことができる。
【0043】
次に、本発明の第2の実施形態に係るFW装置100について、図4を用いて説明する。本実施形態に係るFW装置100では、複数のガイド53は、清掃部61を通過しながら清掃される点が第1の実施形態に係るFW装置100と大きく異なっている。第1の実施形態に係るFW装置100と共通する部分については説明を省略する。
【0044】
図4は、クリールスタンド50のガイド53を清掃するための構成を示している。図4Aに示すように、クリールスタンド50上の各ボビンBからヘリカル巻き装置40の対応するノズルまでの経路上には、複数のガイド53が設けられている。
【0045】
ガイド群54を構成する各ガイド53は、レール62に移動自在に支持されている。レール62は各ガイド53が循環できるように構成されている。また、ガイド群54を構成する各ガイド53は、連結部63により連結されている。連結部63も、各ガイド53がレール62に沿って循環できるよう構成されており、例えば、チェーン、無端ベルト等で構成されている。清掃部61は、レール62上の所定位置に設けられている。連結部63をレール62に沿って循環させると、ガイド群54を構成する各ガイド53も所定間隔を維持しながら、レール62に沿って循環し、途中で各ガイド53は清掃部61を通過する。
【0046】
続いて、上記説明した構成により、クリールスタンド50のガイド53を清掃する手順について説明する。図4Aでは、ボビンBからヘリカル巻き装置40の対応するノズルまで、繊維束Fは、ガイド群54を構成する各ガイド53によって案内されている。
【0047】
図4Bに示すように、ガイド群54を構成する各ガイド53を清掃する場合、まずボビンBからの繊維束Fの供給を停止する。次に連結部63をレール62に沿って循環させる。ガイド群54を構成する各ガイド53は、所定間隔を維持しながら、レール62に沿って循環し、途中で各ガイド53は清掃部61を通過する。清掃部61では、通過していくガイド53に対して順次清掃を行う。レール62に沿ってガイド群54を構成する各ガイド53を1周させることで、全てのガイド53の清掃を完了させ、ガイド群54を構成する各ガイド53を元の位置に戻すことができる。
【0048】
以上説明した本実施形態に係るFW装置100によれば、次のような効果を有する。
【0049】
ガイド群54を構成する各ガイド53は、清掃部61を通過しながら清掃されるため、ガイド53の清掃を効率よく、短時間で行うことができる。
【0050】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、様々な変更が可能である。例えば、上記実施形態では、1つのガイド群54に対して専用の清掃部61を設けることとしたが、複数のガイド群54に対して共通の清掃部61を設けるようにしてもよい。
【0051】
上記実施形態は、クリールスタンド50のガイド53を清掃するための構成であったが、フープ巻き装置30、ヘリカル巻き装置40に設けられる複数のガイドを清掃部で清掃するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0052】
100 フィラメントワインディング装置
10 主基台
20 ライナー移送装置
30 フープ巻き装置
40 ヘリカル巻き装置
50 クリールスタンド
51 ラック
52 ボビンホルダ軸
53 ガイド
54 ガイド群
61 清掃部
62 レール
63 連結部
B ボビン
F 繊維束

【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維束をライナーに巻き付けるフィラメントワインディング装置であって、
繊維束を案内する複数のガイドと、
前記ガイドを清掃するための清掃部と、を備え、
前記ガイドを清掃する場合に、前記ガイドを前記清掃部に移動させて清掃する、フィラメントワインディング装置。
【請求項2】
請求項1に記載のフィラメントワインディング装置であって、
前記ガイドを清掃する場合に、前記複数のガイドが集められて、前記清掃部で清掃される、フィラメントワインディング装置。
【請求項3】
請求項1に記載のフィラメントワインディング装置であって、
前記ガイドを清掃する場合に、前記複数のガイドは、前記清掃部を通過しながら清掃される、フィラメントワインディング装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載のフィラメントワインディング装置であって、
前記ガイドを清掃する場合に、前記複数のガイドを前記清掃部に案内するレールと、
前記複数のガイドを連結するとともに、前記ガイドを清掃する場合に、前記ガイドを前記レールに沿って移動させる連結部と、
を備えるフィラメントワインディング装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−63595(P2013−63595A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−203670(P2011−203670)
【出願日】平成23年9月16日(2011.9.16)
【出願人】(000006297)村田機械株式会社 (4,916)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】