説明

フィルタエレメント、油水分離装置、及びコンプレッサドレン水排出方法

【課題】 吸着材の交換等のメンテナンスが容易であり、保守作業を減らすことのできる油水分離装置を提供する。また、ドレン発生量・水質に応じた処理能力及び吸着能力を有する油水分離装置を容易に配置できるドレン水排出方法を提供する。
【解決手段】 円筒状の本体と、中央にドレン出口を有する略円形の上部仕切板と、中央にドレン入口を有し周辺部に下側へ延出する脚部を有する下部仕切板とを有し、前記上部及び下部仕切板の間に吸着材を充填すると共に、前記脚部に異物補集手段を設けてなる着脱可能なフィルタエレメントを収容した油水分離装置を、ドレン発生源とドレントラップの間に単独・直列又は並列に接続する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧縮空気除湿装置から排出されるドレンの油水分離装置に関し、特に圧縮空気を利用してドレン水に吸着材等を通過させ、浄化された水を排出するコンパクトタイプの油水分離装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一つの圧縮空気配管に複数のドレン発生源がある場合に、従来はそれらを個別のドレントラップで一旦排出させ、大型の油水分離装置に集めて処理する場合が多かった。しかし噴出したドレン水が直接ドレントラップを通過することによりドレン水に含まれる油分やゴミ、スラッジ等による動作不良の発生が問題であった。また複数の発生源からのドレンを一つの装置に集めるには配管が複雑となって工事コストがかかり、設置スペースの点からも問題があった。
【0003】
特開2001−17961号記載の発明は、内部に吸着材を充填し、下部にドレン量判定用のドレン溜りを設けた油水分離装置をドレントラップの前段に配設し、ドレン溜りにおいて一定のドレン量が判定された場合にドレントラップを動作させる機構により、各発生箇所におけるドレン処理が可能となるようにした圧縮空気排出ドレンの油水分離装置を提案している。
【特許文献1】特開2001−17961号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1記載の発明ではドレントラップの前段に油水分離装置を配することにより、ドレントラップの動作不良を減らすことができ、スペース効率にも優れていたが、反面、吸着材を充填した油水分離装置をドレン発生源毎に設ける方式であるために、吸着材の交換の手間や異物混入による油水分離装置の不具合の問題が生じた。またドレンの発生量や圧力が発生源によって異なるため各所に能力の異なる油水分離装置を配置する必要があり、製品の種類が増えてコストアップの原因となっていた。
【0005】
そこで本発明は、吸着材の交換等のメンテナンスが容易であり、保守作業を減らすことのできる油水分離装置を提供することを第一の目的とする。また、ドレン発生量・水質に応じた処理能力及び吸着能力を有する油水分離装置を容易に配置できるドレン水排出方法を提供することを第二の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
すなわち本出願の請求項1及び2記載の発明は、円筒状の本体と、中央にドレン出口を有する略円形の上部仕切板と、中央にドレン入口を有し周辺部に下側へ延出する脚部を有する下部仕切板とを有し、前記上部及び下部仕切板の間に吸着材を充填すると共に、前記脚部に異物補集手段を設けてなる着脱可能なフィルタエレメント、及び該エレメントを収容した油水分離装置によって、上記の第一の課題を解決する。油水分離装置の内部に、吸着材を充填するとともに異物補集手段を備えたフィルタエレメントを収容したエレメント方式を採用し、劣化した吸着材の交換と、異物の補集及び除去を容易にできるようにした。
【0007】
圧力容器が加圧されたドレンと大気圧を区切り、フィルタエレメントが内部のドレン水の流れを仕切る二重構造としたので、エレメント自体は軽量で安価な構造とすることができる。またエレメント自体が異物除去機能をも有しているため、その交換により油水分離装置の全機能を回復する。この交換はユーザ自身が簡単に行うことができる。加えてドレン排出手段としてディスク式のドレントラップを使用すれば、装置全体を無電源で運用することができ、ランニングコストを削減でき環境負荷も少ない。
【0008】
フィルタエレメント脚部に設ける異物補集手段としては、円筒形の脚部に適当な数の小孔を穿ち、ドレン水が外から内へ通過できるようにしたものが考えられる。脚部を柔軟な薄いPET(Polyethylene terephthalate)部材やゴム等で形成すれば、鉄くずを含むスラッジ等の異物が周囲に沈殿した場合に必要に応じて脚部を変形させて沈殿物を容器中央部へ移し、ドレン口から容易に排出できる効果がある。
【0009】
本出願の請求項3記載の発明は、ドレン配管内に請求項2記載の油水分離装置を単独、直列又は並列に設けることを特徴とするコンプレッサドレン水排出方法により、上記の第二の課題を解決する。請求項2記載の油水分離装置を最小単位として、ドレン発生源の性質に応じて必要な処理能力及び吸着能力に応じた装置を適宜に配置することが可能となる。例えばドレン発生量が多い時は複数の油水分離装置を並列に配列することにより、処理量を2倍にすることができる。またドレン中の油量が多い時は、複数の油水分離装置を直列に配列することにより、処理水質を高め、また吸着材の寿命を延ばすことができる。さらに長さの異なるフィルタエレメントを備えた2種以上の油水分離装置を用いることもできる。各装置の保守作業は簡単であるから、複数の装置を容易に管理することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下に本発明を図示された実施例に従って詳細に説明する。図1は本発明のドレン水排出方法を利用したドレン処理装置の系統図であり、1はドレン発生源たとえば圧縮空気処理装置のエアーコンプレッサ、圧縮空気除湿装置、又はエアータンク等であり、排出口1aから噴出するドレン水が、油水分離装置2と、ディスク式の開閉弁を備えたドレントラップ3とを経て、左端の処理水出口より排出される。
【0011】
図2は本発明の油水分離装置の一例を示す断面図である。油水分離装置2はステンレス製のボディ4、ハウジング5及びそれらの結合部6で構成される略円筒形の圧力容器と、容器内部の上下部分にそれぞれに装着されるステンレス製のフィルタヘッド7及びプラスチック等からなるフィルタエレメント8とで構成され、全体が二重構造をなしている。圧力容器の外部は大気圧であるため内外の圧力差は大きいが、フィルタエレメントはドレン水の流れを仕切るのみであるから内外の圧力差は小さい。
【0012】
図においてボディ4の右と左には、それぞれ上流のドレン発生源1に連通するドレン水入口管の接続口4aと、下流のドレントラップ3に連通するドレン水出口管の接続口4bが設けられている。ドレン水入口管は接続口4aの内側のねじ部と結合され、ドレン水出口管は接続口4bを貫通すると共に内部のフィルタヘッド7とも結合される。ボディ4の下端の縁とハウジング5の上端の縁には、対応する環状の凹凸がそれぞれ設けられて結合部を形成している。ボディ4の下端内側の谷部にゴム製のOリング6aを装着し、これにフィルタハウジング5の上端外側の山部を嵌合させ、さらにボディ4の外側からステンレス製のフェルールリング6bを巻き回して該リングの開環部(非図示)を結合することにより、結合部6の全体を外側から締め付け、内圧に耐える丈夫な圧力容器を形成する。ハウジング5の底部は、周囲に比べて中央部が深くなっており、中央には運転停止時にドレン水及び圧力容器下部に集積した異物を取り除くためのドレン口5aが設けられている。
【0013】
フィルタヘッド7は有底円筒形状の本体を有し、側部にドレン水出口配管の端部が接続される接続口7aが設けられ、底部中央にフィルタエレメント8の上端部が接続される接続部7bが設けられている。フィルタヘッド7の上部をボディ4の内側最上部に当接させた状態で、ボディ4の接続口4bからドレン水出口管を挿入し、フィルタヘッド7の接続口7aと結合させることにより、ボディ4、フィルタヘッド7及びドレン水出口管が一体となるように組み立てられる。
【0014】
フィルタエレメント8は、ハウジング5よりも径の小さい円筒状の本体8aと、中央にドレン出口を有する上部仕切板8bと、中央にドレン入口を有する下部仕切板8cとを有し、前記上部及び下部仕切板8b、8cの間の空間に短い円筒形の吸着材8dが積層充填されている。下部仕切板8cの縁からは本体8aの側面に沿って下側へ円筒形に延出する脚部8eが形成され、その下端がハウジング5の底部に当接して、エレメント8の下側の空間を中央部と周辺部に区切るようになっている。脚部8eにはドレン水の流入口であり異物補集手段でもある複数の小孔8fが設けられている。組立時には、あらかじめ上部仕切板8bのドレン出口の内周部にOリング8gを装着した状態で、ドレン出口をフィルタヘッド7の接続部7bに嵌合して固定し、外側からさらにハウジング5を重ねてボディ4に結合させると、フィルタエレメント8はハウジング5の内部に直立した状態で固定される。
【0015】
運転時における本油水分離装置の作用を説明する。ドレントラップ3が作動すると、ドレン発生源1からの圧力に従って上流側よりドレン水が排出される。ボディ4に流入したドレン水は、まずハウジング5とフィルタエレメント本体8aの間を流下し、ハウジング5の底部でエレメント下部の小孔8fを通過して減圧され、下部仕切板8cのドレン入口からフィルタエレメントに入る。そして吸着材の内部を上昇する間に細かい油粒子を補集され、処理水となって上部仕切板8bのドレン出口より出て、フィルタヘッド7の接続口7b、7aを経て下流側へ排出される。図3に示すように、ドレン水に含まれるスラッジ等の異物は小孔8fを通過できず脚部8eの外側に残るので、これらが吸着材の下部などに付着して効率を落とすことが防止される。下部仕切板8cの脚部8eを水勢に従って内側へたわむ薄いPET材料で形成すれば、外側に沈殿した異物はハウジング底部の形状に従ってしだいに容器中央へ集まるので、底部のドレン口5aを開いて容易に排出することができる。
【0016】
フィルタエレメント8を交換するには、新品のフィルタエレメント8を用意し、ドレン口5aを開いて容器内のドレンを排出した後、フェルールリング6bを開いてボディ4の下部からハウジング5を取り外し、フィルタエレメント8を露出させる。そしてフィルタエレメント8の上部仕切板8bのドレン口をフィルタヘッド7の接続口7bから外して、フィルタエレメント8の全体を新品に取り替えた後、再びハウジング5をボディ4に結合させて交換を完了する。吸着材を取出す必要がないので、交換に要する作業時間は平均5分程度であり、専門技術も要しない。従って機械の扱いに慣れないユーザでも容易に行うことができる。
【0017】
図4は本発明に係る油水分離装置を複数利用する場合の配置方法の一例を示す系統図である。2個のドレン発生源1、1’に対し、油の量に応じてそれぞれ2個及び1個の油水分離装置2が直列に配設され、ドレントラップ3を介して貯溜槽9に接続されている。ドレン発生源1’の水量が多い場合には、点線で示すようにさらに1個の油水分離装置2’を並列に設置してもよい。油水分離装置を適宜に配置することで、ドレン水の質や量が異なっても一定品質の処理水として排出することができる。
【産業上の利用可能性】
【0018】
本発明のドレン水排出方法では、フィルタエレメント自体が油水分離機能を有しておりその交換も容易であるため、油水分離装置の管理が格段に容易になる。また全体として無電源の装置であり環境負荷が少ない、配管設計の自由度が高くなる等多くの特長を有しており、産業上多大な利用可能性がある。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明のドレン水排出方法を利用したドレン処理装置の系統図である。
【図2】本発明の油水分離装置の一例を示す断面図である。
【図3】図3の油水分離装置の底部の拡大断面図である。
【図4】本発明に係る油水分離装置を複数利用する場合の配置方法の一例を示す系統図である。
【符号の説明】
【0020】
1、1’ ドレン発生源
2、2’ 油水分離装置
3 ドレントラップ
4 ボディ
5 ハウジング
5a ドレン口
6 結合部
6a Oリング
6b フェルールリング
7 フィルタヘッド
7a 接続口
7b 接続口
8 フィルタエレメント
8a フィルタエレメント本体
8b 上部仕切板
8c 下部仕切板
8d 吸着材
8e 脚部
8f 小孔
8g Oリング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状の本体と、ドレン出口を有する上部仕切板と、中央部にドレン入口を有し周辺部に下側へ延出する脚部を有する下部仕切板とを有し、前記上部及び下部仕切板の間に吸着材を充填すると共に、前記脚部に異物補集手段を設けてなる、油水分離装置の着脱可能なフィルタエレメント。
【請求項2】
円筒状の本体と、ドレン出口を有する上部仕切板と、中央部にドレン入口を有し周辺部に下側へ延出する脚部を有する下部仕切板とを有し、前記上部及び下部仕切板の間に吸着材を充填すると共に、前記脚部に異物捕集手段を設けてなるフィルタエレメントを着脱可能に内装した油水分離装置。
【請求項3】
ドレン配管内に請求項1記載の油水分離装置を単独、直列又は並列に設けることを特徴とするコンプレッサドレン水排出方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2008−253957(P2008−253957A)
【公開日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−101734(P2007−101734)
【出願日】平成19年4月9日(2007.4.9)
【出願人】(000103921)オリオン機械株式会社 (450)
【Fターム(参考)】