説明

フィルター装置

【課題】フィルター交換時のフィルタの脱落を防止したフィルター装置を提供する。
【解決手段】フィルター2を保持するためのフィルターケース10と、フィルターケース10を筐体パネル104に取り付けるためのフィルターケース取付手段50と、を有するフィルター装置1において、フィルターケース取付手段50は、フィルター2を取り出すためにフィルターケース10から上蓋30を取り外した時には、フィルターケース10を傾斜状態に維持し、フィルター設置面18がフィルター2を重力方向下方向より担持するようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば環境分析計において、空気を吸引することによって大気中の種々の物質をフィルターにて捕集するためのフィルター装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば大気中のオゾン測定装置などの環境分析計においては、吸引によって空気を通過させ、空気中に含まれるオゾン、その他の物質をフィルターにて捕集するためのフィルター装置が設けられている。
【0003】
通常、フィルター装置は、計器の内部に取り付けられている。従って、フィルター装置に取り付けられているフィルターを交換するためには、先ず、計器の扉を開け、その後にフィルター装置にアクセスする操作が必要となる。フィルターの交換頻度が多い場合には、扉の開閉は煩雑である。
【0004】
そこで、フィルターの交換頻度が多い場合や、計器の使用環境によっては、フィルター装置は、計器本体の外部に設ける場合もある。
【0005】
しかしながら、上記いずれの場合においても、フィルター装置にてフィルターを保持しているフィルター設置面が垂直状態とされている場合には、フィルター交換時に、フィルターがフィルターケースから脱落する虞がある。
【0006】
従来、フィルターをフィルターケースに着脱するに際しては、フィルターケースからフィルターが脱落しないようにするために、多くの注意を払う必要があり、作業に手間がかかったり、多くの時間を費やすことがあった。
【0007】
特許文献1は、集塵器本体に対して垂直状態から40〜80°傾斜して全開状態となる扉を設け、この扉にバネを介して可動ブロックを取り付け、この可動ブロックに対して着脱自在とされる濾紙ホルダを備えた集塵器を記載している。この集塵器では、濾紙を交換する時は、押しボタンを操作し、且つ手動により扉を可動ブロックと共に40〜80°傾斜して全開状態とした後、濾紙ホルダーを取り出して、濾紙の交換を行う。
【0008】
この特許文献1に記載の集塵器によれば、濾紙の交換時に濾紙を脱落することはないと思われるが、濾紙を交換するためには、押しボタンを操作し、且つ手動により扉を可動ブロックと共に40〜80°傾斜して全開状態とし、更に、濾紙ホルダーを可動ブロックから取り出す操作が必要である。又、集塵器の構成は極めて複雑である。
【特許文献1】特許第3514921号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで、本発明の目的は、フィルター交換時のフィルタの脱落を防止したフィルター装置を提供することである。
【0010】
本発明の他の目的は、構成が簡単で、且つ、フィルター交換のための操作が容易であるフィルター装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的は本発明に係るフィルター装置にて達成される。要約すれば、本発明は、フィルターを保持するためのフィルターケースと、前記フィルターケースを筐体に取り付けるためのフィルターケース取付手段と、を有するフィルター装置において、
前記フィルターケースは、内部にフィルターを着脱自在に保持するために前記フィルターを所定設置面に保持する中蓋と、前記中蓋を押圧して、前記フィルターを前記フィルターケース内に保持する上蓋と、を備え、
前記フィルターケース取付手段は、前記フィルターを取り出すために前記フィルターケースから上蓋を取り外した時には、前記フィルターケースを傾斜状態に維持し、前記フィルター設置面が前記フィルターを重力方向下方向より担持するようにしたことを特徴とするフィルター装置である。
【0012】
本発明は、一実施態様によると、前記フィルターケースは、少なくとも前記フィルターの着脱のための開口端部が筐体に形成した取付穴より外方へと突出しており、
前記フィルターケースの前記開口端部の外周部にはネジ部が形成され、該ネジ部に前記上蓋が螺合可能とされ、
前記開口端部に螺合された前記上蓋は、前記取付穴より前記筐体内へと嵌入できない外形状とされ、
前記フィルターケース取付手段は、前記フィルターケースの前記開口端部とは反対側の端部に取り付けられたフィルターケース取付板を備えており、
前記フィルターケース取付板は、前記フィルターケースの水平方向両側に位置した両支持側板と、前記フィルターケースの上側に位置した支持上板とを備えており、
前記フィルターケースは、前記フィルターケース取付板の前記両支持側板と前記支持上板に形成された取付穴に遊嵌された保持軸部材により前記筐体に対して可動に取り付けられ、
前記フィルターケース取付板は、付勢手段により前記筐体に対して離間する方向に付勢されており、前記付勢手段による移動距離は、前記支持上板が前記両支持側板より大とされ、
前記上蓋を前記フィルターケースに取り付けることにより、前記フィルターケースを前記付勢手段の付勢力に抗して前記筐体側へと移動させて固定し、
前記上蓋を前記フィルターケースから取り外すことにより、前記フィルターケース取付板は、前記付勢手段により、前記両支持側板を支点として前記フィルターケース取付板が前記筐体から離間する方向へと揺動し、前記フィルターケースを傾斜状態に移動させる。
【0013】
本発明は、他の実施態様によると、前記付勢手段は、前記フィルターケース取付板の前記両支持側板及び前記支持上板と、前記筐体との間に設けられたバネ部材であり、前記保持軸部材を囲包して配置されている。
【0014】
本発明は、他の実施態様によると、前記フィルターケースは、概略円筒形状とされ、前記フィルターケースに前記上蓋が取り付けられた状態では、前記中心軸線は、水平状態に維持され、前記フィルター設置面は、略垂直状態とされ、
前記フィルターケースから前記上蓋が取り外された状態では、前記中心軸線は、水平状態から傾斜した状態へと移動し、前記フィルター設置面は、前記フィルターを重力方向下方向より担持するように傾斜した状態に移動される。
【0015】
本発明は、他の実施態様によると、前記フィルター設置面は、フィルターケースに形成される。
【0016】
本発明は、更に他の実施態様によると、前記中蓋は、前記フィルターケースに着脱自在に取り付けられる第1及び第2の中蓋にて構成され、前記フィルター設置面は、前記第1の中蓋に形成され、前記フィルターは、前記第2の中蓋を前記第1の中蓋の方へと押圧することにより保持される。
【発明の効果】
【0017】
本発明のフィルター装置によれば、フィルター交換時のフィルタの脱落を防止することができる。又、本発明のフィルター装置は、構成が簡単で、且つ、フィルター交換のための操作が容易である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明に係るフィルター装置を図面に則して更に詳しく説明する。
【0019】
実施例1
図1に本発明に係るフィルター装置1が装着された環境分析計、例えば、大気中オゾン測定装置100を示す。
【0020】
大気中オゾン測定装置100は、分析部101及び記録計102を備えており、本発明に係るフィルター装置1は、分析部101に取り付けられている。また、詳しくは後述するが、本実施例によると、フィルター装置1の上蓋30が、フィルター装置1を取り付けるための筐体103より、即ち、計器100の前面に設けた筐体パネル104より外面に露出している。従って、作業者は、従来のように、筐体103に設けられた扉の開閉動作を必要とせず、直接、筐体パネル104から露出している上蓋30にアクセスし、この上蓋30をフィルター装置1から取り外すことにより、フィルター装置1に設けられたフィルターの交換が可能とされる。
【0021】
図2〜図7に、本発明に係るフィルター装置1の一実施例を示す。図2〜図7にて、説明の便宜上、図面にて右側を、装置の右側又は外側(外方)といい、図面にて左側を、装置の左側又は内側(内方)という。また、図面にて上側を、装置の上側又は上方といい、図面にて下側を、装置の下側又は下方という。
【0022】
本実施例にて、フィルター装置1は、フィルター2を保持するためのフィルターケース10と、フィルターケース10の上蓋30と、フィルターケース10を計器の筐体103に取り付けるためのフィルターケース取付手段50と、を有する。
【0023】
(フィルターケース)
フィルターケース10について説明する。
【0024】
本実施例によると、筐体103の前面に設けられた筐体パネル104に内径(D0)とされるフィルターケース取付穴105が形成され、所定の軸線方向長さ(L)及び外径(D)とされる概略円筒形状のフィルターケース10が、この取付穴105を軸線方向に貫通して配置されている。つまり、フィルターケース10は、稼働時には、その中心軸線11が略々水平となるような態様で取付穴105内に設置されており、フィルターケースの外径(D)と取付穴の内径(D0)との間には、間隙が形成されている。
【0025】
又、概略円筒形状とされるフィルターケース10の一端は、即ち、図2にて右側端12は、筐体パネル104の外面104aより外方へと、即ち、図2にて筐体パネル表面104aより右側方向へと突出している。また、フィルターケース10の他端は、即ち、図2にて左側端13は、筐体パネル104の内面104bより内方へと、即ち、図2にて筐体パネル内面104bより左側方向へと突出している。フィルターケース10は、限定されるものではないが、例えば樹脂などで作製される。
【0026】
フィルターケース10の外方へと突出した開口端部12の外周部には、ネジ部(ネジ山)14が形成され、上蓋30が螺合可能とされる。開口端部12に螺合された上蓋30の外径(D1)は、取付穴105の内径(D0)より大とされ、取付穴105に嵌入することはできない。
【0027】
上蓋30がフィルターケース10から取り外された状態を示す図7を参照すると分かり易いように、フィルターケース10の開口端部12の内周部には、開口端面12aから軸線方向内方へと、即ち、図7にて左側へと、順に、所定の軸線方向距離(L1)にわたって形成された中蓋案内穴15と、中蓋案内穴15より小径とされ、所定の軸線方向距離(L2)にわたって形成されたフィルター設置穴16と、が設けられる。従って、中蓋案内穴15とフィルター設置穴16との間には環状の壁部17が形成される。
【0028】
また、フィルター設置穴16から半径方向内方へと中心軸線11に対して垂直方向に所定距離だけ延在して環状とされるフィルター設置面18が形成される。
【0029】
フィルター設置面18の内径部からフィルターケース10の他端13へと、即ち、図7にて左側方向へと漏斗状に形成された壁部19が設けられる。また、この漏斗状壁部19の中心部には、中心に空気導出穴20が形成された空気導出管状部21が設けられる。
【0030】
一方、本実施例では、フィルターケース10の他端側13の上部外周部には、フィルターケース10の他端側13から前記環状壁部17へと延在して一体に空気導入管状部22が形成される。この管状部22には、中心に空気導入穴23が形成され、又、環状壁部17には、この空気導入穴23に連通する連通孔24が形成されている。
【0031】
(上蓋及び中蓋)
図5〜図7を参照して上蓋30及び中蓋40について説明する。例えば、上蓋30及び中蓋40は、樹脂などにて作製することができる。
【0032】
上蓋30は、左側端31が開口端とされ、右側端32には壁33が形成される。開口端31の内周部には、上述したように、フィルターケース10の開口端部ネジ部14に螺合するためのネジ部(ネジ溝)34が形成されている。
【0033】
上蓋30の右側端32に形成される壁33は閉鎖壁とすることもできるが、フィルターケース10に取り付けられた時、フィルターケース内部のフィルター2の状態を観察するための観察窓を形成するのが好適である。従って、本実施例では、右側端32に形成した壁33の中央部に開口部35を形成し、その内部に透明のガラス板36が、例えば両面テープ37にて接着固定される。
【0034】
中蓋40は、概略円筒形状とされ、フィルターケース10の開口端部内周部に形成された中蓋案内穴15に装着可能とされる。
【0035】
中蓋40の、左側端41の環状端面41aは、中蓋40をフィルターケース10に装着した際には、フィルター2の外周部に当接し、フィルター2をフィルタ設置面18に押し付け保持する押圧部として機能する。
【0036】
一方、中蓋40の右側端42の外周部には、Oリング保持溝43が形成される。本実施例にてOリング溝43は、中蓋40の右側端面41bから半径方向外方へと僅かに突出した第1の環状突起部43aと、この環状突起部43aから内方へと所定の距離離間した位置にて半径方向外方へと突出した第2の環状突起部43bとにて形成される。このOリング保持溝43にOリング44が設けられる。
【0037】
中蓋40のOリング保持溝43と左側端面41aとの間に位置する円筒状壁部41cには、半径方向に貫通した空気流通孔45が円周方向に複数個、本実施例では直径方向に対向して2個形成される。
【0038】
上記Oリング44は、図5に図示するように、中蓋40をフィルターケース10に装着した際には、フィルターケース10に上蓋30を螺着することにより、上蓋30のガラス板36がOリング44に衝接し、中蓋40を左側へと押圧する。これにより、中蓋40の端面41aがフィルター2を設置面18に押圧して保持すると共に、Oリング44の外周囲がフィルターケース10の開放端部内周部15に弾性的に嵌合し、気密が保持される。
【0039】
上述のようにして、中蓋40が上蓋30により押圧されて所定位置にセットされると、図5に示すように、中蓋40の円筒状壁部41cと、Oリング44と、中蓋案内穴15と、空気連通孔24が形成された環状の壁部17と、の間に環状の空間部25が形成されることとなる。
【0040】
従って、フィルター装置10の空気導入穴23に導入された空気は、環状壁部17の連通孔24を介して、環状空間部25に導入され、次いで、中蓋40の空気導入開口45を通って、中蓋40とフィルター2により形成される内部空間46に流入する。
【0041】
中蓋40の右側端部42とフィルターケース10との間は、Oリング44にて封止されている。そのために、内部空間46に流入した空気は、フィルター設置面18に設置されたフィルター2へと差し向けられる。フィルター2にてオゾン、その他の物質が濾過された空気は、漏斗状壁部19にて空気導出穴20へと案内され、フィルター装置10から導出される。
【0042】
上述したように、フィルター2の状態は、透明のガラス板36が設けられた上蓋30の観察窓35から観察することができる。
【0043】
(フィルターケースの取付手段)
次に、フィルターケース10を筐体パネル104に対して傾動自在に取り付けるためのフィルターケース取付手段について説明する。
【0044】
図2〜図4にて、フィルターケース10の他端部13は、本実施例では、筐体パネル104よりより内方へと、即ち、図2にて左側方向へと突出している。この突出した左側端13は、フィルターケース10の左側端13に一体に形成した取付座部13b(図4)などを利用して止めネジ60により、傾動取付手段50を構成する、例えば金属製のフィルターケース取付板51に一体に取り付けられている。
【0045】
フィルターケース取付板51は、本実施例では、図2〜図5に示すように、平板状の基板52と、基板52の両側に一体に形成され、且つ、基板52の平面からは筐体パネル104より離れる方向へと段状に持ち上げられた支持側板53と、更に、基板52の上側に一体に形成され、基板52の平面からは筐体パネル104より離れる方向へと段状に持ち上げられた支持上板54とを有する。
【0046】
基板51は、フィルターケース10の空気導出穴20が形成された管状部21、及び、空気導入穴23が形成された管状部22が貫通する穴55、56がそれぞれ形成されており、本実施例では、フィルターケース10が基板51に取り付けられた状態にて、両管状部21、22はそれぞれ、穴55、56から突出している。
【0047】
一方、フィルターケース取付板51の両支持側板53には、貫通した穴57が形成され、また、支持上板54には、U字状の切り欠き部58が形成されている。前記穴57及び切り欠き部58には、より小径の保持軸部材、例えば、ネジ軸61aを有した取付板保持用のネジ61が挿入され、ネジ軸61aは、筐体パネル104に螺着される。
【0048】
また、本実施例によると、フィルターケース取付板51の両支持側板53及び支持上板54と、筐体パネル104との間には、前記ネジ軸61aを囲包して圧縮ばね70が配置される。従って、フィルターケース取付板51は、筐体パネル104から離れる方向に、即ち、図2にて左側方向へと付勢される。従って、フィルターケース10も又、取付穴105内を、軸線方向左側方向へと付勢される。勿論、フィルターケース取付板51を筐体パネル104から離れる方向に付勢し得るものであれば、圧縮バネ70の代わりに、他の弾性体、例えば、ゴム、スポンジなどを使用することもできる。
【0049】
一方、本実施例では、フィルターケース10の開口端部12に上蓋30が螺着された状態では、図2に示すように、上蓋30の内側端面31aが筐体パネル104の外面104aに衝接するので、それ以上の左側方向への移動は阻止される。即ち、フィルターケース10は、その中心軸線11が略水平状態に維持されている。
【0050】
この状態にて、両支持側板53と保持用ネジ61のネジ頭61bとの間、及び支持上板54と保持ネジ61のネジ頭61bとの間には、それぞれ空隙G1及びG2(但し、G1>G2)、が形成されるようにする。通常、G1は0.1〜30mm、G2は0.1〜5mmとされ、本実施例では、G1は4mm、G2は1mmとした。
【0051】
図6は、上蓋30をフィルターケース10から取り外した状態を示し、図7は、更に中蓋30をフィルターケース10から取り外した状態を示す。
【0052】
図5〜図7を参照して、フィルター2のフィルターケース10に対する着脱操作について説明する。
【0053】
フィルター2を交換するためには、図5に示すように、上蓋30がフィルターケース10に取り付けられた状態において、フィルターケース10から上蓋30を取り外すことが必要となる。
【0054】
そのために、先ず、上蓋30は、フィルターケース10に対して、取り外す方向へと回転し、上蓋30をフィルターケース10から取り外す。これにより、図6及び図7に示すように、フィルターケース取付板51は、フィルターケース取付板51と筐体パネル104との間に配置した取付板付勢手段であるバネ70の付勢力により、筐体パネル104の裏面104bより離れる方向へと移動される。
【0055】
このとき、フィルターケース取付板51の両支持側板53は、支持板53とネジ頭61bとの間の空隙G2が僅かしか設けられておらず、支持板53はネジ頭61bに直ちに当接し、それ以上の移動が阻止される。一方、フィルターケース取付板51の支持上板54は、支持板54とネジ頭61bとの間の空隙G2がより大きくされており、従って、両支持側板53の移動が停止した後も更に筐体パネル104の裏面から離れる方向に移動する。つまり、フィルターケース取付板51は、両支持側板53とネジ頭61bとの当接部を支点として、図6及び図7に示すように、反時計方向へと揺動される。そして、支持板53はネジ頭61bに直ちに当接し、それ以上の移動が阻止される。
【0056】
これによって、図6及び図7に示すように、フィルターケース10自体、その中心軸線11が水平から右側が上方へと傾斜した状態となり、そのために、フィルター2は、図6にて垂直より角度(α)だけ、通常α=0.5以上、例えば0.5〜5°だけ左側方向へと傾斜した状態に、即ち、フィルター2は、重力方向に対して設置面18上に担持された状態で保持される。
【0057】
垂直に対する傾斜角度(α)をα=0.5〜5°とすることによって、中蓋40をフィルターケース10から図7に示すように取り外した場合においても、フィルター2がフィルターケース10の設置面18及び設置穴16から脱落することが防止される。従って、作業者は、フィルター2をフィルターケース10から極めて容易に取り出すことができる。
【0058】
なお、フィルターケース10の傾斜角度(α)は、本実施例においては、上述のように、α=0.5〜5°という範囲とされたが、この範囲に限定されるものではない。フィルター装置1が取り付けられる筐体103の構造、フィルター装置1、フィルターケース10、その他の構成部材の寸法、形状等を変えることによって、傾斜角度(α)を増やすことができ、例えば、α=25°とした場合においても、作業者は、フィルター2の脱落を防止してフィルターケース10から容易に取り出すことができる。ただ、傾斜角度(α)が25°を超えると、フィルターケース10が筐体103から大きく突出するようになり、余分なスペースを取ったり、フィルターケース10自体を破損する虞がある。また、フィルターケース10及びその他の構成部材の加工に余分な工数がかかるようになってしまう。
【0059】
一方、フィルター2をフィルターケース10に取り付ける操作は、上述の逆の手順にて行われる。
【0060】
つまり、フィルター2を、図7に示すように、フィルター設置穴16を利用して、フィルターケース10の設置面18に装着する。フィルター設置面18は、図7に示すように上向きに傾斜した状態に持維持されているために、フィルターを設置面においただけで安定して保持され、この状態でフィルター2が設置面18及び設置穴16から脱落する虞はない。
【0061】
この状態で、図6に示すように、中蓋40をフィルターケース10に装着する。次いで、上蓋30をフィルターケース10の開放端部12のネジ部14に螺合する。これによって、フィルターケース取付板51は、バネ70の付勢力に抗して、筐体パネル104の裏面側104bへと接近するように移動する。上蓋30をフィルターケース10に完全に螺着させると、フィルターケース取付板51は、図2及び図5に示すように、筐体パネル104の裏面104bに対してほぼ平行状態となり、又、フィルターケース10の中心軸線11は、図6及び図7の傾斜状態から水平状態となる。
【0062】
次いで、空気を吸引してフィルター2に空気中のオゾン、及び、その他の物質を付着させる。
【0063】
本実施例のフィルター装置1によると、フィルター交換時のフィルター2の脱落を防止することができる。又、本実施例のフィルター装置1は、上述のように、構成が簡単で、且つ、フィルター交換のための操作が容易である。
【0064】
実施例2
図8及び図9に、本発明のフィルター装置1の他の実施例を示す。
【0065】
本実施例において、フィルター装置1は、実施例1と同様に、フィルター2を保持するためのフィルターケース10と、フィルターケース10の上蓋30と、フィルターケース10を傾動自在に筐体パネル104に取り付けるためのフィルターケース取付手段50と、を有する。
【0066】
(フィルターケース)
フィルターケース10について説明する。
【0067】
実施例1と同様に、筐体パネル104には内径(D0)とされるフィルターケース取付穴105が形成され、所定の軸線方向長さ(L)及び外径(D)とされる概略円筒形状のフィルターケース10が、この取付穴105を貫通して配置されている。つまり、フィルターケース10は、その中心軸線11が略々水平となるような態様で取付穴105内に設置されており、フィルターケース10の外径(D)と取付穴105の内径(D0)との間には、間隙が形成されている。
【0068】
又、概略円筒形状とされるフィルターケース10の一端は、即ち、図8にて右側端12は、筐体パネル104より外方へと、即ち、図8にて筐体パネル104より右側方向へと突出している。この突出した開口端部12の外周部には、ネジ山14が形成され、上蓋30が螺合可能とされる。開口端部12に螺合された上蓋30の外径(D1)は、取付穴105の内径(D0)より大とされ、取付穴105に嵌入することはできない。
【0069】
又、フィルターケース10は、フィルターケース取付手段50によって、筐体パネル104へと取り付けられる。本実施例におけるフィルターケース取付手段50の構成は、実施例1と同様であるので、実施例1の説明を援用し、再度の説明は省略する。
【0070】
ただ、本実施例では、フィルターケース10、上蓋30及び中蓋80(80A、80B)の構造が実施例1と大きく異なっており、この異なる構成部について次に説明する。
【0071】
つまり、本実施例では、フィルターケース10の開口端部内周部は、開口端面12aから軸線方向に内方へと、即ち、図7にて左側へと所定の軸線方向距離(L1)にわたって形成された中蓋案内穴15とされる。
【0072】
また、この中蓋案内穴15には、フィルター2を挟持する態様で二つの中蓋80、即ち、第1及び第2の中蓋80A、80Bが装着される。本実施例にて、第1及び第2の中蓋80A、80Bは、同じ形状とされ、フィルター2を中心として対称配置されている。
【0073】
(上蓋及び中蓋)
先ず、図8にて、フィルター2の左側に配置された第1の中蓋80Aについて説明する。
【0074】
第1の中蓋80Aは、フィルターケース10の開口端部内周部の中蓋案内穴15に嵌合される、所定の軸線方向距離(L2)にわたって形成された環状外周部81と、この環状外周部81から半径方向内方へと中心軸線11に対して垂直方向に所定距離だけ延在して環状とされる面82aが形成される。この環状面82aは、後述するようにフィルターを担持するフィルター設置面として機能する。
【0075】
フィルター設置面82aの内径部からフィルターケース10の他端側13へと、即ち、図8にて左側方向へと漏斗状に形成された壁部83が設けられる。また、この漏斗状壁部83の中心部には、中心に空気導出穴として機能する貫通穴84Aが形成された管状部85が設けられる。この管状部85は、フィルターケース取付板51の基板52に形成した穴55を貫通して突出している。
【0076】
図8にて右側の第2の中蓋80Bについて説明する。上述のように、第2の中蓋80Bは、上記第1の中蓋80Aと同様の構成とされる。ただ、フィルター2を中心として対称配置されている。
【0077】
つまり、第2の中蓋80Bは、第1の中蓋80Aと協働してフィルター2を挟持するように、第1の中蓋80A及びフィルター2の右側において、フィルターケース10の開口端部内周部である中蓋案内穴15に嵌合される。第2の中蓋80Bも第1の中蓋80Aと同様に、所定の軸線方向距離(L2)にわたって形成された環状外周部81と、この環状外周部81から半径方向内方へと中心軸線11に対して垂直方向に所定距離だけ延在して環状とされる面82bが形成される。この環状面82bは、フィルター2を第1の中蓋80Aの設置面82aへと押圧し、協働してフィルター2を保持する押圧面として機能する。
【0078】
第2の中蓋80Bは、フィルター押圧面82bの内径部から上蓋30の方向へと、即ち、図8にて右側方向へと漏斗状に形成された壁部83が設けられる。また、この漏斗状壁部83の中心部には、中心に空気導入穴として機能する貫通穴84Bが形成された管状部85が設けられる。この管状部85は、上蓋30の壁部開口35を貫いている。本実施例では、実施例1と異なり、上蓋30の壁部開口35には、透明のガラス板36は設けられていない。
【0079】
従って、本実施例にて、フィルター装置1の空気導入穴84Bに導入された空気は、直接、第1及び第2中蓋80A、80Bにて挟持されたフィルター2へと差し向けられ、漏斗状壁部83にて空気導出穴84Aへと案内され、フィルター装置1から導出される。
【0080】
上蓋30は、図8にて左側端が開口端31とされ、内周部には、上述したように、フィルターケースの開口端部外周部に螺合するためのネジ部(ネジ溝)34が形成されている。
【0081】
(フィルターの交換)
フィルター2のフィルターケース10に対する着脱操作について説明する。
【0082】
フィルター2を交換するためには、図8に示すように、上蓋30がフィルターケース10に取り付けられた状態において、フィルターケース10から上蓋30を取り外すことが必要となる。
【0083】
そのために、先ず、上蓋30は、フィルターケース10に対して、取り外す方向へと回転し、上蓋30をフィルターケース10から取り外す。
【0084】
図9に、上蓋30がフィルターケース10から取り外された状態を示す。本実施例においても、フィルターケース10は、実施例1と同様の構成及び機能を成す取付手段50により筐体パネル104に対して傾動自在に取り付けられている。従って、上蓋30をフィルターケース10から取り外すと、図9に示すように、実施例1で説明したと同様の態様にて、フィルターケース取付板51は、フィルターケース取付板51と筐体パネル104との間に配置した取付板付勢手段であるバネ70の付勢力により、筐体パネル104の裏面104bより離れる方向へと移動される。
【0085】
つまり、実施例1にて図6及び図7に示したと同様に、本実施例においても、フィルターケース10自体、その中心軸線11が水平から右側が上方へと傾斜した状態となり、そのために、フィルター2は、垂直より角度(α)だけ、通常α=0.5〜5°だけ左側方向へと傾斜した状態に、即ち、フィルター2は、重力方向に対して下方向に位置した第1中蓋80Aのフィルター設置面82a上に担持された状態で保持される。
【0086】
従って、この状態にて、第2の中蓋80Bをフィルターケース10から取り外した場合においても、フィルター2が第1の中蓋80Aに形成された設置面82a及び中蓋案内穴15から脱落することが防止される。作業者は、フィルター2をフィルターケース10から極めて容易に取り出すことができる。
【0087】
なお、本実施例において、フィルターケース10の傾斜角度(α)は、前記実施例1と同様に、α=0.5〜5°という範囲とされているが、この範囲に限定されるものではない。上述したように、フィルター装置1が取り付けられる筐体103の構造、フィルター装置1、フィルターケース10、その他の構成部材の寸法、形状等を変えることによって、傾斜角度(α)を増やすことができ、例えば、α=25°とした場合においても、作業者は、フィルター2の脱落を防止してフィルターケース10から容易に取り出すことができる。ただ、傾斜角度(α)が25°を超えると、フィルターケース10が筐体103から大きく突出するようになり、余分なスペースを取ったり、フィルターケース10自体を破損する虞がある。また、フィルターケース10及びその他の構成部材の加工に余分な工数がかかるようになってしまう。
【0088】
一方、フィルター2をフィルターケース10に取り付ける操作は、上述の逆の手順にて行われる。
【0089】
つまり、上蓋30が取り外され、上向きに傾斜した状態とされるフィルターケース10に第1の中蓋80Aを装着する。その後、この第1の中蓋80Aのフィルター設置面82aに、フィルター2を、中蓋案内穴15を利用して設置する。中蓋80Aの設置面82aは、上向きに傾斜した状態に維持されているために、フィルター2を設置面82aに置いただけで安定して保持され、この状態でフィルター2が設置面82a及び中蓋案内穴15から脱落する虞はない。
【0090】
この状態で、更に、第2の中蓋80Bをフィルターケース10に装着する。これにより、フィルター2は、第2の中蓋80Bの押圧面82bにより第1の中蓋80Aのフィルター設置面82aへと押圧され、第1及び第2の中蓋80A、80Bにより挟持される。
【0091】
次いで、上蓋30をフィルターケース10の開放端部12のネジ部14に螺合する。これによって、フィルターケース取付板51は、バネ70の付勢力に抗して、筐体パネル104の裏面側104bへと接近するように移動する。上蓋30をフィルターケース10に完全に螺着させると、フィルターケース取付板51は、図8に示すように、筐体パネル104の裏面104bに対してほぼ平行状態となり、又、フィルターケース10の中心軸線11は、傾斜状態から、図8に示す水平状態となる。
【0092】
次いで、空気を吸引してフィルター2に空気中のオゾン、及び、その他の物質を付着させる。
【0093】
本実施例のフィルター装置1によると、フィルター交換時のフィルター2の脱落を防止することができる。又、本実施例のフィルター装置1は、上述のように、構成が簡単で、且つ、フィルター交換のための操作が容易である。
【図面の簡単な説明】
【0094】
【図1】本発明のフィルター装置を適用し得る大気中オゾン測定装置の外観図である。
【図2】本発明のフィルター装置の一実施例において、上蓋を閉めた状態を示す側面図である。
【図3】本発明のフィルター装置の一実施例において、上蓋を取り外し、フィルター装置が傾動した状態を示す上面図である。
【図4】本発明のフィルター装置の一実施例において、上蓋を取り外し、フィルター装置が傾動した状態を示す背面図である。
【図5】本発明のフィルター装置の一実施例において、上蓋を閉めた状態を示す断面図である。
【図6】本発明のフィルター装置の一実施例において、上蓋を取り外した状態を示す断面図である。
【図7】本発明のフィルター装置の一実施例において、上蓋及び中蓋を取り外した状態を示す断面図である。
【図8】本発明のフィルター装置の他の実施例において、上蓋を閉めた状態を示す断面図である。
【図9】本発明のフィルター装置の他の実施例において、上蓋を取り外した状態を示す断面図である。
【符号の説明】
【0095】
1 フィルター装置
2 フィルター
10 フィルターケース
11 中心軸線
12 開口端部
14 ネジ山
15 中蓋案内穴
16 フィルター設置穴
17 環状壁部
18 フィルター設置面
20、84A 空気導出穴
23、84B 空気導入穴
30 上蓋
34 ネジ溝
35 観察窓
36 透明ガラス板
40 中蓋
44 Oリング
50 フィルターケース取付手段
51 フィルターケース取付板
52 基板
53 支持側板
54 支持上板
61 ネジ(保持軸部材)
70 バネ(付勢手段)
80(80A、80B) 中蓋
82a フィルター設置面
100 環境分析計
103 筐体
104 筐体パネル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルターを保持するためのフィルターケースと、前記フィルターケースを筐体に取り付けるためのフィルターケース取付手段と、を有するフィルター装置において、
前記フィルターケースは、内部にフィルターを着脱自在に保持するために前記フィルターを所定設置面に保持する中蓋と、前記中蓋を押圧して、前記フィルターを前記フィルターケース内に保持する上蓋と、を備え、
前記フィルターケース取付手段は、前記フィルターを取り出すために前記フィルターケースから上蓋を取り外した時には、前記フィルターケースを傾斜状態に維持し、前記フィルター設置面が前記フィルターを重力方向下方向より担持するようにしたことを特徴とするフィルター装置。
【請求項2】
前記フィルターケースは、少なくとも前記フィルターの着脱のための開口端部が筐体に形成した取付穴より外方へと突出しており、
前記フィルターケースの前記開口端部の外周部にはネジ部が形成され、該ネジ部に前記上蓋が螺合可能とされ、
前記開口端部に螺合された前記上蓋は、前記取付穴より前記筐体内へと嵌入できない外形状とされ、
前記フィルターケース取付手段は、前記フィルターケースの前記開口端部とは反対側の端部に取り付けられたフィルターケース取付板を備えており、
前記フィルターケース取付板は、前記フィルターケースの水平方向両側に位置した両支持側板と、前記フィルターケースの上側に位置した支持上板とを備えており、
前記フィルターケースは、前記フィルターケース取付板の前記両支持側板と前記支持上板に形成された取付穴に遊嵌された保持軸部材により前記筐体に対して可動に取り付けられ、
前記フィルターケース取付板は、付勢手段により前記筐体に対して離間する方向に付勢されており、前記付勢手段による移動距離は、前記支持上板が前記両支持側板より大とされ、
前記上蓋を前記フィルターケースに取り付けることにより、前記フィルターケースを前記付勢手段の付勢力に抗して前記筐体側へと移動させて固定し、
前記上蓋を前記フィルターケースから取り外すことにより、前記フィルターケース取付板は、前記付勢手段により、前記両支持側板を支点として前記フィルターケース取付板が前記筐体から離間する方向へと揺動し、前記フィルターケースを傾斜状態に移動させる、
ことを特徴とする請求項1のフィルター装置。
【請求項3】
前記付勢手段は、前記フィルターケース取付板の前記両支持側板及び前記支持上板と、前記筐体との間に設けられたバネ部材であり、前記保持軸部材を囲包して配置されていることを特徴とする請求項2のフィルター装置。
【請求項4】
前記フィルターケースは、概略円筒形状とされ、前記フィルターケースに前記上蓋が取り付けられた状態では、前記中心軸線は、水平状態に維持され、前記フィルター設置面は、略垂直状態とされ、
前記フィルターケースから前記上蓋が取り外された状態では、前記中心軸線は、水平状態から傾斜した状態へと移動し、前記フィルター設置面は、前記フィルターを重力方向下方向より担持するように傾斜した状態に移動されることを特徴とする請求項1〜3のいずれかの項に記載のフィルター装置。
【請求項5】
前記フィルター設置面は、フィルターケースに形成されることを特徴とする請求項1〜4のいずれかの項に記載のフィルター装置。
【請求項6】
前記中蓋は、前記フィルターケースに着脱自在に取り付けられる第1及び第2の中蓋にて構成され、前記フィルター設置面は、前記第1の中蓋に形成され、前記フィルターは、前記第2の中蓋を前記第1の中蓋の方へと押圧することにより保持されることを特徴とする請求項1〜4のいずれかの項に記載のフィルター装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−337209(P2006−337209A)
【公開日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−163104(P2005−163104)
【出願日】平成17年6月2日(2005.6.2)
【出願人】(000219451)東亜ディーケーケー株式会社 (204)
【Fターム(参考)】