説明

フィルタ付きシリンダ内噴射エンジン及びシリンダ内噴射エンジン用フィルタの使用方法

【課題】 フィルタの目詰まりの進行を遅くし、フィルタを再生又は交換するまでのエンジン運転時間を延ばし、又はフィルタの再生もしくは交換を不要にする。
【解決手段】 排気通路110に、排気に含まれる粒子状物質を捕集するフィルタ200を設けたシリンダ内噴射エンジン100において、フィルタよりも排気上流側の排気通路に、カリウム、カリウム化合物、ナトリウム及びナトリウム化合物のうち少なくとも一つを溶解した溶液を供給するように構成したフィルタ付きシリンダ内噴射エンジン。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンの排気に含まれる粒子状物質をフィルタで捕集する排気浄化の技術分野に属し、特にフィルタで捕集した粒子状物質を除去する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の排気浄化を行う装置として、エンジンの排気通路に、排気に含まれる粒子状物質を捕集するフィルタを設けたものが知られている(例えば、特許文献1、特許文献2を参照)。このようなエンジンでは、フィルタが目詰まりすると、バーナや電気ヒータにより捕集された粒子状物質を燃焼させてフィルタを再生することが行われる。その場合、フィルタを2個並列に設け、片方のフィルタが目詰まりしたら排気を他方のフィルタに切り換え、その間に目詰まりしたフィルタを再生させる切り換え再生方式の排気浄化装置がある。これとは別に、フィルタが目詰まりしたらエンジンを停止してフィルタを再生させる停止再生方式の排気浄化装置とがある。停止再生方式の排気浄化装置には、フィルタを排気通路に脱着可能に設け、目詰まりしたフィルタを新品又は再生済みのフィルタに交換する脱着方式の排気浄化装置がある(例えば、特許文献3を参照)。また、フィルタの近傍に設けたヒータに外部電源から電流を流して再生する方法もある。
【0003】
フィルタを再生するにはバーナや電気ヒータを用いるので、エネルギが必要である。また、停止再生方式の排気浄化装置は、フィルタの交換、再生のためにエンジンを停止させなければならないので、エンジン運転の自由度が制限されてしまう。
【0004】
このようにバーナや電気ヒータでエネルギを用いることを行わずにディーゼルエンジンの排気の粒子状物質を除去する技術として、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の酸化物よりなる触媒粒子と、この触媒粒子を支持する酸化物系セラミック粒子とからなる燃焼触媒により、排気の粒子状物質を燃焼させる技術が知られている(例えば、特許文献4を参照)。また、ディーゼルエンジンに白金で触媒化した粒子トラップを設け、このエンジンをディーゼル燃料と燃料可溶性セリウム組成物で作動させ、トラップのバランス点(定常状態の燃焼温度)を低下させる技術が知られている(例えば、特許文献5を参照)。
【特許文献1】特開平2−185611号公報
【特許文献2】特開平10−131740号公報
【特許文献3】特開平8−35417号公報
【特許文献4】特開2001−170483号公報
【特許文献5】特表2002−511911号公報
【非特許文献1】エンジンテクノロジー、山海堂発行2001年5月号(2001年6月26日発行)、p41〜44、岩井邦夫「植物油のエステル化技術の動向」
【特許文献6】特開2004−137918号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献4で開示された技術は、触媒を設ける必要があるし、特許文献5で開示された技術は、セリウム又はその化合物を大気に放出する可能性があり、環境汚染のおそれがある。
【0006】
本発明者は、このようなフィルタを設けたディーゼルエンジンをバイオディーゼル燃料により運転したときに、一般的な軽油を用いて運転したときよりもフィルタにおける目詰まりの進行が遅くなることを知見し、またフィルタの再生時間が短縮されることを知見し、先に、浮遊粒子状物質捕集フィルタ付きエンジンの使用方法(特許文献6)を完成した。その後、実験を続けるなかで、燃料を通常の燃料としながら、フィルタの排気上流側にカリウム化合物等を供給することで同様の効果が得られることを知見し、本発明を完成するに至ったものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、請求項1のフィルタ付きシリンダ内噴射エンジンは、排気通路に、排気に含まれる粒子状物質を捕集するフィルタを設けたシリンダ内噴射エンジンにおいて、フィルタよりも排気上流側の排気通路に、カリウム、カリウム化合物、ナトリウム及びナトリウム化合物のうち少なくとも一つを溶解した溶液を供給するように構成した。
【0008】
このフィルタ付きシリンダ内噴射エンジンによれば、フィルタのなかで間欠的に温度上昇が起こり、このような溶液を供給せずに運転する通常運転を行う場合に較べて、フィルタにおける目詰まりの進行が遅くなる。これはフィルタのなかで当該フィルタに捕集された粒子状物質が間欠的に燃焼して除去されるためと推定される。また、通常運転を行う場合に較べて、フィルタの再生時間が短縮される。これはフィルタのなかに残留する物質が燃焼を促進するためと推定される。
【0009】
請求項2のフィルタ付きシリンダ内噴射エンジンは、請求項1のフィルタ付きシリンダ内噴射エンジンにおいて、カリウム、カリウム化合物、ナトリウム及びナトリウム化合物のうち少なくとも一つを溶解した溶液が、酢酸カリウム、酢酸ナトリウムその他の酢酸塩のうち少なくとも一つをメタノールに溶解した溶液、又は蟻酸カリウム、蟻酸ナトリウムその他の蟻酸塩のうち少なくとも一つをメタノールに溶解した溶液である。
【0010】
請求項3のフィルタ付きシリンダ内噴射エンジンは、請求項1又は請求項2のフィルタ付きシリンダ内噴射エンジンにおいて、さらにフィルタの周辺に熱源が設けられている。
【0011】
このようにすれば、熱源が、フィルタに捕集された粒子状物質が燃焼するきっかけ、火種となり、この粒子状物質が確実に燃焼しはじめるので、フィルタにおける目詰まりの進行が更に遅くなる。
【0012】
請求項4のシリンダ内噴射エンジン用フィルタの使用方法は、シリンダ内噴射エンジンの排気通路に着脱可能に設けられ、排気に含まれる粒子状物質を捕集するフィルタを使用する方法であって、排気通路から取り外したフィルタの排気入口側の端面に、カリウム、カリウム化合物、ナトリウム及びナトリウム化合物のうち少なくとも一つを溶解した溶液を噴霧、塗布等により付着し、このフィルタを排気通路に装着する方法である。
【0013】
この使用方法によれば、フィルタのなかで間欠的に温度上昇が起こり、このような溶液を付着せずに運転する通常運転を行う場合に較べて、フィルタにおける目詰まりの進行が遅くなる。これはフィルタのなかで当該フィルタに捕集された粒子状物質が間欠的に燃焼して除去されるためと推定される。また、通常運転を行う場合に較べて、フィルタの再生時間が短縮される。これはフィルタのなかに残留する物質が燃焼を促進するためと推定される。
【0014】
請求項5のシリンダ内噴射エンジン用フィルタの使用方法は、請求項4のシリンダ内噴射エンジン用フィルタの使用方法において、カリウム、カリウム化合物、ナトリウム及びナトリウム化合物のうち少なくとも一つを溶解した溶液が、酢酸カリウム、酢酸ナトリウムその他の酢酸塩のうち少なくとも一つをメタノールに溶解した溶液、又は蟻酸カリウム、蟻酸ナトリウムその他の蟻酸塩のうち少なくとも一つをメタノールに溶解した溶液である。
【0015】
請求項6のシリンダ内噴射エンジン用フィルタの使用方法は、請求項4又は請求項5のシリンダ内噴射エンジン用フィルタの使用方法において、さらにフィルタの周辺に熱源が設けられている。
【0016】
このようにすれば、熱源が、フィルタに捕集された粒子状物質が燃焼するきっかけ、火種となり、この粒子状物質が確実に燃焼しはじめるので、フィルタにおける目詰まりの進行が更に遅くなる。
【発明の効果】
【0017】
請求項1及び請求項2のフィルタ付きシリンダ内噴射エンジンによれば、フィルタで捕集された粒子状物質が自然に燃焼すると考えられるので、通常運転を行う場合に較べてフィルタの目詰まりの進行が遅くなり、高速道路の走行では勿論のこと一般道の走行においてもフィルタを再生又は交換するまでのエンジン運転時間を延ばし、又はフィルタの再生もしくは交換を不要にすることができる。また、触媒のように低硫黄燃料を使用する必要がなく、フィルタ再生用のバーナ、電気ヒータ等は用いないので、省エネルギが促進され、装置のトラブルが低減し、コスト低減に寄与する。また、フィルタの交換又は再生のためにエンジンを停止させる頻度を少なくし又は無くすことができるので、エンジン運転の自由度を拡大することができる。さらに、通常燃料に較べて排出物質に加わるのはカリウムもしくはカリウム化合物又はナトリウムもしくはナトリウム化合物であるから、環境汚染のおそれがない。また、通常燃料を用いて運転した場合に較べてフィルタの再生時間が短縮されるので、エンジン運転の自由度を拡大することができる。
【0018】
請求項3のようにすれば、熱源が、フィルタに捕集された粒子状物質が燃焼するきっかけ、火種となり、この粒子状物質が確実に燃焼しはじめるので、フィルタにおける目詰まりの進行を更に遅くすることができる。
【0019】
請求項4及び請求項5のシリンダ内噴射エンジン用フィルタの使用方法によれば、フィルタで捕集された粒子状物質が自然に燃焼すると考えられるので、通常運転を行う場合に較べてフィルタの目詰まりの進行が遅くなり、高速道路の走行では勿論のこと一般道の走行においてもフィルタを再生又は交換するまでのエンジン運転時間を延ばし、又はフィルタの再生もしくは交換を不要にすることができる。また、触媒のように低硫黄燃料を使用する必要がなく、フィルタ再生用のバーナ、電気ヒータ等は用いないので、省エネルギが促進され、装置のトラブルが低減し、コスト低減に寄与する。また、フィルタの交換又は再生のためにエンジンを停止させる頻度を少なくし又は無くすことができるので、エンジン運転の自由度を拡大することができる。さらに、通常燃料に較べて排出物質に加わるのはカリウムもしくはカリウム化合物又はナトリウムもしくはナトリウム化合物であるから、環境汚染のおそれがない。また、通常燃料を用いて運転した場合に較べてフィルタの再生時間が短縮されるので、エンジン運転の自由度を拡大することができる。
【0020】
請求項6のようにすれば、熱源が、フィルタに捕集された粒子状物質が燃焼するきっかけ、火種となり、この粒子状物質が確実に燃焼しはじめるので、フィルタにおける目詰まりの進行を更に遅くすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。図1は本発明の実施形態にかかるフィルタ付きシリンダ内噴射エンジンを示す。同図において、100はシリンダ内噴射エンジンである。このシリンダ内噴射エンジンは、シリンダ内に直接に燃料を噴射するエンジンに限定されるものではなく、シリンダに連通する副室、渦流室等に燃料を噴射するエンジンも含んでいる。また、このシリンダ内噴射エンジンは、燃料として軽油、灯油もしくは重油等を用いるディーゼルエンジンも含むし、燃料としてガソリン等を用いるガソリンエンジンも含む。この実施形態ではシリンダ内噴射エンジン100はディーゼルエンジンである。この実施形態では車両に搭載されたシリンダ内噴射エンジン100で例示しているが、本発明は、例えば発電装置駆動用のエンジンのように敷地に定着したシリンダ内噴射エンジンにも適用することができる。このシリンダ内噴射エンジン100の排気通路110には、排気に含まれる粒子状物質を捕集するフィルタ200が設けられている。排気通路110は、一端がシリンダ内噴射エンジン100のシリンダの排気ポートに接続され、他端が大気に開放されている。一般的に排気通路110は、排気マニフォールド、マフラ、排気パイプ等により構成されるが、これによって排気通路110の構成が限定されるものではない。本発明は、排気通路110は、排気マニフォールド、マフラ、排気パイプ等により構成され、先に説明した切り換え再生方式の排気浄化装置、停止再生方式の排気浄化装置又は脱着方式の排気浄化装置を設けたシリンダ内噴射エンジン、排気通路にヒータ、逆洗装置等を設けたシリンダ内噴射エンジン等に広く適用できる。また、排気通路に酸化触媒その他の各種触媒を設けること、フィルタよりも排気上流側の排気通路に排気を大気開放するための分岐通路を設けること等を妨げるものではない。
【0022】
フィルタ200は、一方の端面から入った排気を他方の端面から出し、この間に排気から粒子状物質を捕集する機能を発揮する。この粒子状物質には、炭素微粒子、炭化水素、硫黄酸化物などが含まれている。このフィルタには、例えば目封じタイプ、多孔体タイプ、繊維タイプがあり、本発明のフィルタ200には、少なくともこれらが含まれる。目封じタイプは、例えばセラミック等の材料で構成され、隔壁で区画された複数のセルを有する、いわゆるハニカム体であって、ハニカムを1セルずつ交互にその端を塞いだものであり、排気が壁を通過するときに粒子状物質を捕集する。例えば、一方の端面で各セルの端面がシール材によって交互に市松模様状に塞がれており、他方の端面では、上記一方の端面で塞がれたセルは開口し、上記一方の端面で開口していたセルはシール材によって塞がれた構造をしている。多孔体タイプ、繊維タイプは、例えば金属等の材料で構成され、排気が多孔体又は繊維の構成体に衝突することで粒子状物質を捕集する。しかし、本発明はフィルタの構造をこれに限定するものではない。
【0023】
このシリンダ内噴射エンジン100では、フィルタ200よりも排気上流側の排気通路110に、カリウム、カリウム化合物、ナトリウム及びナトリウム化合物のうち少なくとも一つを溶解した溶液(以下、この溶液を本発明の溶液ということがある)を供給するように構成している。本発明の溶液は、カリウム、カリウム化合物、ナトリウム及びナトリウム化合物のうち少なくとも一つを溶解した溶液であり、したがって、これらの溶質を組み合わせて溶解した溶液であってもよいし、溶液にさらに他の溶質が溶解していてもよい。上記構成を実現するため、このシリンダ内噴射エンジン100は本発明の溶液の供給装置を備えている。すなわち、図2に示すように、実施形態のフィルタ付きシリンダ内噴射エンジンは、噴口が排気通路110の内部に臨むように設けられたノズル310と、溶液の入口、エアの入口及び噴流の出口を有し、噴流の出口が第1管路371を介してノズルの入口に接続された噴射弁320と、本発明の溶液を溜め且つ第2管路372を介して噴射弁320の溶液の入口に接続された溶液タンク330と、この第2管路372の途中に設けられたポンプ340と、コンプレッサ390で生成された圧力エアを溜め且つ第3管路373を介して噴射弁320のエアの入口に接続されたエアタンク350と、この第3管路373の途中に設けられた遮断弁360と、噴射弁320、ポンプ340及び遮断弁360の作動を制御するコントローラ380とを備えており、コントローラ380の制御により、溶液タンク330のなかの本発明の溶液をポンプ340により噴射弁320に送り、エアタンク350の圧力エアを噴射弁320に送り、本発明の溶液と圧力エアとによる噴流をノズル310の噴口から排気通路110の内部へ噴射し、供給するように構成している。コントローラ380による噴射弁320、ポンプ340及び遮断弁360の作動の制御には種々のバリエーションがあり、例えばコントローラ380にタイマーを設け、所定時間間隔により又は予め記憶した時間スケジュールにより、本発明の溶液と圧力エアとによる噴流をノズル310の噴口から排気通路110の内部へ噴射し、供給するようにしてもよい。また、実施形態のフィルタ付きシリンダ内噴射エンジンが車載されているときには、例えば、走行距離に応じたデータをセンサ等からコントローラ380に送り、このデータに基づいて、走行距離が所定距離になったときに又は予め記憶した走行距離のスケジュールに応じて、本発明の溶液と圧力エアとによる噴流をノズル310の噴口から排気通路110の内部へ噴射し、供給するようにしてもよい。
【0024】
この実施形態では、本発明の溶液として、酢酸カリウム、酢酸ナトリウムその他の酢酸塩のうち少なくとも一つをメタノールに溶解した溶液、又は蟻酸カリウム、蟻酸ナトリウムその他の蟻酸塩のうち少なくとも一つをメタノールに溶解した溶液を用いている。
【0025】
さらに、図3に示すように、フィルタ200の周辺には熱源400が設けられている。この熱源400はエネルギを受けて高熱を発する手段であり、例えばディーゼルエンジンで用いられるグロープラグ、ガソリンエンジンで用いられるスパークプラグなどが使用され、これに通電して電気エネルギから熱エネルギを得てこれを熱源としている。焼き玉エンジンの焼き玉で例示されるような蓄熱体を用いてもよい。この熱源400は、フィルタ200の周辺に設ければよい。しかし、熱源400は、フィルタ200に捕集された粒子状物質が燃焼するきっかけ、火種として設けるのであるから、フィルタ200の周辺であって粒子状物質が溜まりやすい部位に設けることが好ましい。これは例えばフィルタ200排気上流側の端面である。
【0026】
この実施形態のフィルタ付きシリンダ内噴射エンジンによれば、フィルタ200のなかで間欠的に温度上昇が起こり、このような溶液を供給せずに運転する通常運転を行う場合に較べて、フィルタ200における目詰まりの進行が遅くなる。これはフィルタ200のなかで当該フィルタ200に捕集された粒子状物質が間欠的に燃焼して除去されるためと推定される。また、通常運転を行う場合に較べて、フィルタ200の再生時間が短縮される。これはフィルタ200のなかに残留する物質が燃焼を促進するためと推定される。
【0027】
本発明においてフィルタよりも排気上流側の排気通路に供給する溶液は、カリウム、カリウム化合物、ナトリウム及びナトリウム化合物のうち少なくとも一つを溶解した溶液であるが、この実施形態では、そのなかでも酢酸カリウム、酢酸ナトリウムその他の酢酸塩のうち少なくとも一つをメタノールに溶解した溶液、又は蟻酸カリウム、蟻酸ナトリウムその他の蟻酸塩のうち少なくとも一つをメタノールに溶解した溶液とした。このような溶液を用いると、酢酸塩又は蟻酸塩をフィルタ200に捕集された粒子状物質に均一に分散でき、また粒子状物質と溶液との親和性、浸透性の向上により、フィルタ200で捕集した粒子状物質をフィルタ200の広い面積でゆっくり燃焼させ、燃焼温度を低く保つことでフィルタ200への熱衝撃を緩和でき、これによってNOx(窒素酸化物)の発生が殆ど無くなり、好ましい。
【0028】
本発明のフィルタ付きシリンダ内噴射エンジンには、熱源を設けない実施形態が含まれるが、上記実施形態の場合、フィルタ200の周辺に熱源400を設けた。このようにすれば、熱源400が、フィルタ200に捕集された粒子状物質が燃焼するきっかけ、火種となり、この粒子状物質が確実に燃焼しはじめるので、フィルタ200における目詰まりの進行が更に遅くなる。
【実施例1】
【0029】
以下、上記実施形態にかかる溶液の供給装置を備えたフィルタ付きシリンダ内噴射エンジンの実施例1を説明する。この実施例1で用いたシリンダ内噴射エンジン100は三菱自動車工業株式会社製4D33型ディーゼルエンジン(99年排気ガス規制適合、排気量4210cc、直接噴射式、自然吸気)で、三菱自動車工業株式会社製KK−FE50CBT、キャンター(2トン積トラック、平成11年10月28日登録)に搭載されている。車両重量は2090kgである。実施例1で用いたフィルタ200は、イビデン株式会社製の目封じタイプで、材料はSiCセラミックである。フィルタ200の軸方向の一端から排気を導入し、他端から排出する。図1に示すように、排気通路110は、排気マニフォールド111、第1の排気パイプ112、マフラ113、第2の排気パイプ114、ハウジングにフィルタ200を収納してなるフィルタ装置115、及び第3の排気パイプ116を順に直列に連結して構成されている。フィルタ装置115のハウジングは、ほぼ円筒形をしており、一端に第2の排気パイプ114が接続され、他端に第3の排気パイプ116が接続され、第2の排気パイプ114からの排気を内部のフィルタ200の一端に導入し、フィルタ200の他端から出た排気を第3の排気パイプ116に導出するようにしている。フィルタ装置115は脱着方式であり、フィルタ200を交換できるようになっている。各部の寸法は図1に示したとおりである。第1の排気パイプ112は長さが1100mmであり、マフラ113は直径が200mmで長さが540mmのほぼ円筒形であり、マフラ113の排気導入口から第3の排気パイプ116の末端までが直線距離で3020mmであった。排気パイプはいずれも直径が51mmであった。ノズル310の位置は第2の排気パイプ114においてフィルタ装置115のハウジングから約900mm程度の部位である。実施例1のシリンダ内噴射エンジン100には熱源400を設けていない。実施例1ではフィルタ200の前後の排気圧力差を測定した。
【0030】
まず、実施例1のシリンダ内噴射エンジン100を備えた車両を、実施形態で説明した本発明の溶液の供給装置を用いることなく走行させた。そうするとフィルタ200は走行距離約400kmごとに目詰まりし、その時点で再生したフィルタ200又は新品フィルタ200に交換しなければならなかった。具体的には、フィルタ200直前の圧力を検出し、フィルタ200での圧力損失が30kPa以下のときは運転席に緑のランプが点灯し、30kPaから40kPaまでの間にあるときは運転席に黄色のランプが点灯し、40kPaを超えたときは運転席に赤色のランプが点灯するようにしており、赤色のランプが点灯したときにフィルタ200が目詰まりしたと判断してフィルタ200を交換するようにしていた。
【0031】
次いで、実施例1のシリンダ内噴射エンジン100を備えた車両において、実施形態で説明した溶液の供給装置を用いてフィルタ200よりも排気上流側の排気通路110に、カリウム又はカリウム化合物を溶解した溶液としてカリウムメタオキサイドを供給して走行させた。このカリウムメタオキサイドは、水酸化カリウム約10gに対してメタノールを約100mLの比率で混合して得たものである。コントローラ380の制御は、車両の走行距離が約1000kmになるごとにカリウムメタオキサイドを噴流としてノズル310の噴口から排気通路110の内部へ噴射し、供給した。1回の噴射量は水酸化カリウム約10g及びメタノール約100mLよりなる量である。ポンプ340の吐出圧は約70kPa、圧力エアの圧力は約800kPaである。車両の全重量は、上記車両重量に加えて積荷1トン、乗員2名及び装備を合算して約3200kgであった。フィルタ200は走行前に外部燃焼装置により、内部に捕集した粒子状物質を燃焼して完全に再生しておいた。総走行距離は約7000kmであり、戸田市内を交通の流れに従って走行し、幹線道(298号線)を交通の流れに従って走行し、高速道路(外環道)は走行しなかった。この間、運転席では緑のランプが点灯し続け、黄色のランプが点灯することはなかった。このことから、フィルタ200の目詰まりが生じていないことが分かる。そして、走行距離が約1500kmを越えると、運転席では黄色のランプが点灯することがあったので、走行距離が約500kmになるごとにカリウムメタオキサイドを同量の噴射量でノズル310の噴口から排気通路110の内部へ噴射し、供給したところ、運転席では緑のランプが点灯し続け、黄色のランプが点灯することはなかった。このことから、フィルタ200の目詰まりが生じていないことが分かる。この場合、カリウムメタオキサイドの濃度は、メタノール1Lあたりの水酸化カリウムの重量グラム数でいえば、好ましくは40g/L以上で150g/L以下、より好ましくは100g/L以上で130g/L以下である。溶質が少なくてカリウムメタオキサイドの濃度が薄いと粒子状物質が燃焼しにくくなる可能性があり、逆に溶質が多すぎて濃いと水酸化カリウムが溶解しにくくなる可能性があり、いずれも充分な目詰まり防止効果を期待しにくいからである。また、カリウムメタオキサイドは、水酸化カリウムをメタノールに溶かしたものであるので、水に溶かしたものに較べると粒子状物質を燃焼させる機能が強化され、好ましい。
【0032】
さらに、実施例1のシリンダ内噴射エンジン100を備えた車両において、実施形態で説明した溶液の供給装置を用いてフィルタ200よりも排気上流側の排気通路110に、カリウム又はカリウム化合物を溶解した溶液として酢酸カリウム約7gに対してメタノールを約100mLの比率で混合して得た溶液を供給して走行させた。コントローラ380の制御は、車両の走行距離が約1000kmになるごとに溶液を噴流としてノズル310の噴口から排気通路110の内部へ噴射し、供給した。1回の噴射量は酢酸カリウム約7g及びメタノール約100mLよりなる溶液である。ポンプ340の吐出圧は約70kPa、圧力エアの圧力は約800kPaである。車両の全重量は、上記車両重量に加えて積荷1トン、乗員2名及び装備を合算して約3200kgであった。フィルタ200は走行前に外部燃焼装置により、内部に捕集した粒子状物質を燃焼して完全に再生しておいた。総走行距離は約5000kmであり、戸田市内を交通の流れに従って走行し、幹線道(298号線)を交通の流れに従って走行し、高速道路(外環道)は走行しなかった。この間、運転席では緑のランプが点灯し続け、黄色のランプが点灯することはなかった。このことから、フィルタ200の目詰まりが生じていないことが分かる。この場合、酢酸カリウム及びメタノールよりなる溶液の濃度は、メタノール1Lあたりの酢酸カリウムの重量グラム数でいえば、好ましくは30g/L以上で150g/L以下、より好ましくは50g/L以上で100g/L以下である。溶質が少なくて溶液の濃度が薄いと粒子状物質が燃焼しにくくなる可能性があり、逆に溶質が多すぎて濃いと酢酸カリウムが溶解しにくくなる可能性があり、いずれも充分な目詰まり防止効果を期待しにくいからである。また、この溶液は酢酸カリウムをメタノールに溶かしたものであるので、酢酸カリウムを水に溶かしたものに較べると粒子状物質を燃焼させる機能が強化され、好ましい。さらに、酢酸カリウムは中性であるので、排気通路構成部材などの金属腐食が少なくなり、好ましい。
【0033】
また、実施例1のシリンダ内噴射エンジン100を備えた車両において、実施形態で説明した溶液の供給装置を用いてフィルタ200よりも排気上流側の排気通路110に、カリウム又はカリウム化合物を溶解した溶液として酢酸カリウム約3.5gに対してメタノールを約50mLの比率で混合して得た溶液を供給して走行させた。コントローラ380の制御は、車両の走行距離が約300〜400kmになるごとに溶液を噴流としてノズル310の噴口から排気通路110の内部へ噴射し、供給した。1回の噴射量は溶液50mLである。ポンプ340の吐出圧は約70kPa、圧力エアの圧力は約800kPaである。車両の全重量は、上記車両重量に加えて積荷1トン、乗員2名及び装備を合算して約3200kgであった。フィルタ200は走行前に外部燃焼装置により、内部に捕集した粒子状物質を燃焼して完全に再生しておいた。総走行距離は約5000kmであり、戸田市内を交通の流れに従って走行し、幹線道(298号線)を交通の流れに従って走行し、高速道路(外環道)は走行しなかった。この間、運転席では緑のランプが点灯し続け、黄色のランプが点灯することはなかった。このことから、フィルタ200の目詰まりが生じていないことが分かる。粒子状物質を捕集すると目詰まりが進行してフィルタ200での圧力損失が高まっていくが、この圧力損失が約30kPaを越えるに至ることを一つの目安とすると、溶液の供給装置を用いないときは、走行可能な距離が約300〜400kmであったが、溶液の供給装置を用いて酢酸カリウム約3.5gに対してメタノールを約50mLの比率で混合して得た溶液を供給すると、走行可能な距離が約2000kmと飛躍的に延びた。
【0034】
次に、図4は本発明の実施形態にかかるシリンダ内噴射エンジン用フィルタの使用方法を示す。同図に示すように、この実施形態で用いるシリンダ内噴射エンジン100及びフィルタ200の構成は、先のフィルタ付きシリンダ内噴射エンジンの実施形態と同様であり、その説明をそのまま引用し、同一の部材には同一の符号を付してその説明を省略する。ただし、このシリンダ内噴射エンジン100は、ノズル310、噴射弁320、溶液タンク330、ポンプ340、エアタンク350、遮断弁360、管路371〜373及びコントローラ380を有する溶液の供給装置を備えていない。
【0035】
この実施形態の場合、排気に含まれる粒子状物質を捕集するフィルタ200はシリンダ内噴射エンジン100の排気通路110に着脱可能に設けられている。すなわち、フィルタ装置115は脱着方式であり、フィルタ200を交換できるようになっている。シリンダ内噴射エンジン用フィルタの使用方法は、排気通路110から取り外したフィルタ200の排気入口側の端面に、本発明の溶液であるカリウム、カリウム化合物、ナトリウム及びナトリウム化合物のうち少なくとも一つを溶解した溶液を噴霧、塗布等により付着し、このフィルタを排気通路に装着する方法である。本発明の溶液は、カリウム、カリウム化合物、ナトリウム及びナトリウム化合物のうち少なくとも一つを溶解した溶液であり、したがって、これらの溶質を組み合わせて溶解した溶液であってもよいし、溶液にさらに他の溶質が溶解していてもよい。
【0036】
この実施形態では、本発明の溶液として、酢酸カリウム、酢酸ナトリウムその他の酢酸塩のうち少なくとも一つをメタノールに溶解した溶液、又は蟻酸カリウム、蟻酸ナトリウムその他の蟻酸塩のうち少なくとも一つをメタノールに溶解した溶液を用いている。
【0037】
さらに、フィルタ200の周辺には熱源400が設けられている。この熱源は先に図3で説明したフィルタ付きシリンダ内噴射エンジンの場合と同様の構成であるので、その説明をそのまま引用する。
【0038】
この使用方法によれば、フィルタのなかで間欠的に温度上昇が起こり、このような溶液を付着せずに運転する通常運転を行う場合に較べて、フィルタにおける目詰まりの進行が遅くなる。これはフィルタのなかで当該フィルタに捕集された粒子状物質が間欠的に燃焼して除去されるためと推定される。また、通常運転を行う場合に較べて、フィルタの再生時間が短縮される。これはフィルタのなかに残留する物質が燃焼を促進するためと推定される。
【0039】
本発明においてフィルタに付着する溶液は、カリウム、カリウム化合物、ナトリウム及びナトリウム化合物のうち少なくとも一つを溶解した溶液であるが、この実施形態では、そのなかでも酢酸カリウム、酢酸ナトリウムその他の酢酸塩のうち少なくとも一つをメタノールに溶解した溶液、又は蟻酸カリウム、蟻酸ナトリウムその他の蟻酸塩のうち少なくとも一つをメタノールに溶解した溶液とした。このような溶液を用いると、酢酸塩又は蟻酸塩をフィルタ200に捕集された粒子状物質に均一に分散でき、また粒子状物質と溶液との親和性、浸透性の向上により、フィルタ200で捕集した粒子状物質をフィルタ200の広い面積でゆっくり燃焼させ、燃焼温度を低く保つことでフィルタ200への熱衝撃を緩和でき、これによってNOx(窒素酸化物)の発生が殆ど無くなり、好ましい。
【0040】
本発明のシリンダ内噴射エンジン用フィルタの使用方法には、熱源を設けない実施形態が含まれるが、上記実施形態の場合、フィルタ200の周辺に熱源400を設けた。このようにすれば、熱源400が、フィルタ200に捕集された粒子状物質が燃焼するきっかけ、火種となり、この粒子状物質が確実に燃焼しはじめるので、フィルタ200における目詰まりの進行が更に遅くなる。
【実施例2】
【0041】
以下、上記実施形態にかかるシリンダ内噴射エンジン用フィルタの使用方法の実施例2を説明する。この実施例2で用いたシリンダ内噴射エンジン100は三菱自動車工業株式会社製4D33型ディーゼルエンジン(99年排気ガス規制適合、排気量4210cc、直接噴射式、自然吸気)で、三菱自動車工業株式会社製U−FE317BN改、キャンター(2トン積塵芥車、平成5年7月7日登録)に搭載されている。車両重量は3490kgである。実施例2で用いたフィルタ200は、イビデン株式会社製の目封じタイプで、材料はSiCセラミックである。フィルタ200の軸方向の一端から排気を導入し、他端から排出する。図4に示すように、排気通路110は、排気マニフォールド111、第1の排気パイプ112、マフラ113、第2の排気パイプ114、ハウジングにフィルタ200を収納してなるフィルタ装置115、及び第3の排気パイプ116を順に直列に連結して構成されている。フィルタ装置115のハウジングは、ほぼ円筒形をしており、一端に第2の排気パイプ114が接続され、他端に第3の排気パイプ116が接続され、第2の排気パイプ114からの排気を内部のフィルタ200の一端に導入し、フィルタ200の他端から出た排気を第3の排気パイプ116に導出するようにしている。フィルタ装置115は脱着方式であり、フィルタ200を交換できるようになっている。排気通路各部の寸法は図1に示した寸法と同一である。第1の排気パイプ112は長さが1100mmであり、マフラ113は直径が200mmで長さが540mmのほぼ円筒形であり、マフラ113の排気導入口から第3の排気パイプ116の末端までが直線距離で3020mmであった。排気パイプはいずれも直径が51mmであった。実施例2のシリンダ内噴射エンジン100には熱源400を設けていない。実施例2ではフィルタ200の前後の排気圧力差を測定した。
【0042】
実施例2のシリンダ内噴射エンジン100を備えた車両において、排気通路110から取り外したフィルタ200の排気入口側の端面に、カリウム又はカリウム化合物を溶解した溶液として酢酸カリウム約2gに対してメタノールを約30mLの比率で混合して得た溶液を約30mLだけ噴霧、塗布等により付着し、このフィルタ200を排気通路110に装着し、供給して走行させた。車両の全重量は、上記車両重量に、乗員2名及び装備を合算した110kgが加わり、さらに適宜な重量の塵芥が加わった重さになった。フィルタ200は走行前に外部燃焼装置により、内部に捕集した粒子状物質を燃焼して完全に再生しておいた。総走行距離は約200kmであり、湯河原町の海岸地帯と山の頂上付近のゴミ焼却場との間の標高差約500mに相当する急勾配を往復した。フィルタ200を外部燃焼装置により完全に再生した上で溶液を付着させない場合、約15kmの走行でフィルタ200での排気損失が約30kPaを越えるに至ったのに対し、溶液を付着させた場合には、約15kmの走行でフィルタ200での排気損失が約10kPaに達したにとどまった。この間、運転席では緑のランプが点灯し続け、黄色のランプが点灯することはなかった。このことから、フィルタ200の目詰まりの進行が遅くなっていることが分かる。この場合、酢酸カリウム及びメタノールよりなる溶液の濃度は、メタノール1Lあたりの酢酸カリウムの重量グラム数でいえば、好ましくは30g/L以上で150g/L以下、より好ましくは50g/L以上で100g/L以下である。溶質が少なくて溶液の濃度が薄いと粒子状物質が燃焼しにくくなる可能性があり、逆に溶質が多くて溶液の濃度が濃いと酢酸カリウムが溶解しにくくなる可能性があり、いずれも充分な目詰まり防止効果を期待しにくいからである。
【0043】
酢酸カリウムによる粒子状物質の燃焼促進効果を検証するため、本発明の溶液を一切使用しないで運転して目詰まりしたフィルタ200を外部燃焼装置により再生する前に、フィルタ200の排気入口側の端面に、カリウム又はカリウム化合物を溶解した溶液として酢酸カリウム約2gに対してメタノールを約30mLの比率で混合して得た溶液を約30mLだけ噴霧、塗布等により付着し、このフィルタ200を外部燃焼装置により再生してみた。外部燃焼装置は、燃焼用の容器の内部に電気ヒータを備えており、この容器のなかにフィルタ200を、その排気入口側の端面を下にして電気ヒータに臨ませ、排気出口側の端面を上にして置き、電気ヒータに通電して発熱させ、フィルタ200の内部に捕集した粒子状物質を燃焼するものである。まず、図5は溶液を付着しないフィルタ200を外部燃焼装置により再生してみた場合である。温度が急上昇する点が燃焼開始点であるとみることができるが、図5の場合、燃焼は約摂氏550度付近から始まっている。これに対し、図6は溶液を付着したフィルタ200を外部燃焼装置により再生してみた場合であるが、燃焼は約摂氏450度付近から始まっており、約100度低い温度から粒子状物質の燃焼が始まっていることが分かる。なお、図5及び図6において、Aで示す線は、円筒形のフィルタ200の排気入口側の端面から排気出口側の端面に向かって10mm入ったところで且つ外周壁から10mm内方へ入って部位の温度である。また、図5及び図6において、Bで示す線は、円筒形のフィルタ200の排気出口側の端面から排気入口側の端面に向かって10mm入ったところで且つ外周壁から10mm内方へ入って部位の温度である。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】実施形態のフィルタ付きシリンダ内噴射エンジンの主要部を示す概略図である。
【図2】実施形態のフィルタ付きシリンダ内噴射エンジンの溶液供給装置を示す概略図である。
【図3】実施形態のフィルタ付きシリンダ内噴射エンジンのフィルタ装置を示す断面 図である。
【図4】実施形態のシリンダ内噴射エンジン用フィルタの使用方法を用いるシリンダ内噴射エンジンを示す概略図である。
【図5】溶液を付着しないフィルタの温度変化を示す図である。縦軸は温度(摂氏)を、横軸は時間をそれぞれ示す。
【図6】溶液を付着したフィルタの温度変化を示す図である。縦軸は温度(摂氏)を、横軸は時間をそれぞれ示す。
【符号の説明】
【0045】
100 シリンダ内噴射エンジン
110 排気通路
200 フィルタ
310 ノズル
400 熱源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
排気通路に、排気に含まれる粒子状物質を捕集するフィルタを設けたシリンダ内噴射エンジンにおいて、
フィルタよりも排気上流側の排気通路に、カリウム、カリウム化合物、ナトリウム及びナトリウム化合物のうち少なくとも一つを溶解した溶液を供給するように構成したフィルタ付きシリンダ内噴射エンジン。
【請求項2】
カリウム、カリウム化合物、ナトリウム及びナトリウム化合物のうち少なくとも一つを溶解した溶液が、酢酸カリウム、酢酸ナトリウムその他の酢酸塩のうち少なくとも一つをメタノールに溶解した溶液、又は蟻酸カリウム、蟻酸ナトリウムその他の蟻酸塩のうち少なくとも一つをメタノールに溶解した溶液である請求項1のフィルタ付きシリンダ内噴射エンジン。
【請求項3】
請求項1又は請求項2のフィルタ付きシリンダ内噴射エンジンにおいて、さらにフィルタの周辺に熱源が設けられているフィルタ付きシリンダ内噴射エンジン。
【請求項4】
シリンダ内噴射エンジンの排気通路に着脱可能に設けられ、排気に含まれる粒子状物質を捕集するフィルタを使用する方法であって、
排気通路から取り外したフィルタの排気入口側の端面に、カリウム、カリウム化合物、ナトリウム及びナトリウム化合物のうち少なくとも一つを溶解した溶液を噴霧、塗布等により付着し、このフィルタを排気通路に装着するシリンダ内噴射エンジン用フィルタの使用方法。
【請求項5】
カリウム、カリウム化合物、ナトリウム及びナトリウム化合物のうち少なくとも一つを溶解した溶液が、酢酸カリウム、酢酸ナトリウムその他の酢酸塩のうち少なくとも一つをメタノールに溶解した溶液、又は蟻酸カリウム、蟻酸ナトリウムその他の蟻酸塩のうち少なくとも一つをメタノールに溶解した溶液である請求項4のシリンダ内噴射エンジン用フィルタの使用方法。
【請求項6】
請求項4又は請求項5のシリンダ内噴射エンジン用フィルタの使用方法において、さらにフィルタの周辺に熱源が設けられているシリンダ内噴射エンジン用フィルタの使用方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2006−37785(P2006−37785A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−216328(P2004−216328)
【出願日】平成16年7月23日(2004.7.23)
【出願人】(597032594)株式会社コモテック (12)
【Fターム(参考)】