説明

フィルタ回路

【課題】フィルタ特性の可変幅が細かく且つ範囲が広い場合であっても、回路の増大を抑制できると共に、コストを抑制し得るフィルタ回路を提供する。
【解決手段】フィルタ回路2のフィルタ特性を決定する少なくとも1種の素子3の素子値を、動作クロックCLKに基づきデジタルコード入力Codeをシグマデルタ変調するΣΔ変調器1の出力、或いは該ΣΔ変調器1の出力をコード変換するデコーダ4を介した信号に基づき変化させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はフィルタ特性を切り替え可能なフィルタ回路に係り、特に、フィルタ特性の可変幅が細かく且つ範囲が広い場合であっても、回路の増大を抑制できると共に、コストを抑制し得るフィルタ回路に関する。
【背景技術】
【0002】
フィルタ回路の適用として、例えば無線通信機器を考える。この無線通信機器において、高速のデータ通信と、多端末での接続の両立が必要である。そのため、接続端末数が少ない状況では1つの端末で広帯域を使用して高速データ通信を行い、接続端末数が多い状況では1つの端末で狭帯域を使用してデータ通信を行う場合がある。
【0003】
例えば図23に示すような一般的な無線通信受信回路の構成の場合には、ミキサ203,204で変換されたベースバンド信号についてチャネル選択を行うローパスフィルタ(LPF)207,208において、カットオフ周波数を可変にする必要がある。つまり、接続端末数が少ない状況では1つの端末で広帯域を使用することから、図26(a)に示すように、カットオフ周波数を相対的に高くして広帯域にする。また逆に、接続端末数が多い状況では1つの端末で狭帯域を使用することから、図26(b)に示すように、カットオフ周波数を相対的に低くして狭帯域にする。
【0004】
ここで、LPF207,208を演算増幅器、抵抗およびキャパシタで構成されるアクティブフィルタで実現し、LSIに内蔵する場合を考える。フィルタ回路のカットオフ周波数を可変する方法としては、該フィルタ回路内の時定数を決定している素子、即ち抵抗またはキャパシタを可変にすることが考えられる。
【0005】
例えば、図27(a)に示すRC−LPFの回路構成では、カットオフ周波数は1/(RF1・CF1)に比例することから、抵抗RF1の値を可変にすることでカットオフ周波数を可変することができる。なお、図27(a)では、抵抗RF1の値を可変とした場合に、フィルタ回路の利得も変化するので、利得を一定とするために抵抗RG1の値も可変とする構成としている。
【0006】
抵抗RF1を可変抵抗とする構成としては、例えば図27(b)に示すように、それぞれ抵抗値R〜抵抗値Rnを持つ抵抗311〜31nを並列接続し、個々の抵抗311〜31nにスイッチS1〜Snを直列接続した構成がある。LSIでは、例えば図27(c)のレイアウト概念図に示すように、ユニット抵抗を多数並べて、各スイッチS1〜Snのオン/オフにより接続するか否かを選択して、抵抗可変を実現することとなる。
【0007】
また、図28(a)に示すRC−LPFの回路構成では、カットオフ周波数は1/(RF2・CF2)に比例することから、キャパシタCF2の値を可変にすることでカットオフ周波数を可変することができる。
【0008】
キャパシタCF2を可変容量とする構成としては、例えば図28(b)に示すように、ユニットキャパシタ321〜32nを並列接続し、個々のユニットキャパシタ321〜32nにスイッチS1〜Snを直列接続した構成がある。LSIでは、例えば図28(c)のレイアウト概念図に示すように、ユニットキャパシタを多数並べて、各スイッチS1〜Snのオン/オフにより接続するか否かを選択して、抵抗容量を実現することとなる。
【0009】
また、フィルタ回路は、無線通信機器に限らず他の種々の装置へ適用されるが、本発明に間接的に関連するものとして、ΔΣ変調方式を用いたDAC(D/A変換器)に適用されるフィルタ回路において(非特許文献1参照。)、該フィルタ特性を切り換える従来技術について例示しておく。
【0010】
まず、特許文献1に開示の「D/A変換装置」では、入力信号がゼロの時を検出し、それに応じてLPFの利得を切り換えることで、入力ゼロ時にもリミットサイクルによるノイズを低減させる技術が提案されている。
【0011】
また、特許文献2に開示の「可変抵抗回路及びD/A変換器」では、ゼロデータ検出ソフトミュート機能を備えたD/A変換器において、出力部にあるLPFの帰還抵抗を段階的に小さくしていく技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2003−273740号公報
【特許文献2】特開2001−77649号公報
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】M.コザック(Kozak)及びI.ケイル(Kale), ”分数分周方式PPL周波数合成のためのΔΣ変調器の厳密な解析(Rigorous Analysis of Delta-Sigma Modulators for Fractional-N PLL Frequency Synthesis)”,米国電子・電気学会(IEEE)トランザクションズ・オン・サーキッツ・アンド・システムズ(Transactions on Circuits and Systems), vol.51, pp1148-1162, 2004年6月.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
上述したように、従来技術においては、フィルタ回路のフィルタ特性を切り換えるために、フィルタ特性を決定している素子(抵抗またはキャパシタ等)を可変にしている。可変とするためには、多数のユニット素子を並べる必要があるため、特に可変幅が細かく且つ範囲が広い場合には、大きな面積につながりコスト増につながるという問題があった。
【0015】
例えば、受信器や送信器等の無線通信機器において、特にフィルタ回路のカットオフ周波数を広い範囲で細かく切り替える必要がある場合には、LSIにおける回路面積が増大し、コスト増につながるという問題があった。
【0016】
本発明は、上記従来の事情に鑑みてなされたものであって、フィルタ特性の可変幅が細かく且つ範囲が広い場合であっても、回路の増大を抑制できると共に、コストを抑制し得るフィルタ回路を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記目的を達成するために、本発明の一態様によれば、デジタルコード入力をシグマデルタ変調するシグマデルタ(ΣΔ)変調器を備え、当該フィルタ回路のフィルタ特性を決定する少なくとも1種の素子の素子値を、ΣΔ変調器の出力、或いは該ΣΔ変調器出力をコード変換する変換器を介した信号に基づき変化させるフィルタ回路であることを要旨とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、フィルタ特性の可変幅が細かく且つ範囲が広い場合であっても、より少ないユニット素子でフィルタ特性を決定している素子を可変とすることができ、LSIにおける回路面積の増大を抑制できると共に、コストを抑制することができるフィルタ回路を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明のフィルタ回路の図である。
【図2】本発明のフィルタ回路の基本動作を説明する説明図であり、図2(a)はフィルタ回路の図、図2(b)はΣΔ変調器1の出力の時間的推移を例示する説明図である。
【図3】本発明をRC−LPF回路に適用した図であり、図3(a)は利得一定でカットオフ周波数を可変とするRC−LPF回路の図、図3(b)はカットオフ周波数を可変とするRC−LPF回路の図である。
【図4】本発明をRC−ハイパスフィルタ(HPF)回路に適用した図であり、図4(a)は利得一定でカットオフ周波数を可変とするRC−HPF回路の図、図4(b)はカットオフ周波数を可変とするRC−HPF回路の図である。
【図5】本発明を全差動RC−LPF回路に適用した図(実施例1)であり、利得一定でカットオフ周波数を可変とする全差動RC−LPF回路の図である。
【図6】図6(a)〜図6(c)は、本発明の全差動RCアクティブフィルタ回路に使用する可変抵抗モジュールの回路図である。
【図7】本発明の実施例1に係るカットオフ周波数および利得を可変とする全差動RC−LPF回路の回路図である。
【図8】図8(a)及び図8(b)は、実施例1におけるΣΔ変調器出力に応じた可変抵抗モジュールの抵抗値設定を例示する説明図である。
【図9】本発明を全差動RC−LPF回路に適用した図(実施例2)であり、利得一定でカットオフ周波数を可変とする全差動RC−LPF回路の図である。
【図10】本発明の実施例2に係るカットオフ周波数および利得を可変とする全差動RC−LPF回路の回路図である。
【図11】図11(a)及び図11(b)は、実施例2におけるΣΔ変調器出力に応じた可変抵抗モジュールの抵抗値設定を例示する説明図である。
【図12】本発明をRCバイククワッドLPF回路に適用した図(実施例3)であり、カットオフ周波数を可変とする全差動RCバイククワッドLPF回路の図である。
【図13】本発明の実施例3に係るカットオフ周波数を可変とする全差動RCバイククワッドLPF回路の回路図である。
【図14】本発明を全差動RC−LPF回路に適用した図(実施例4)であり、カットオフ周波数を可変とする全差動RC−LPF回路の図である。
【図15】本発明の実施例4に係るカットオフ周波数を可変とする全差動RC−LPF回路の回路図である。
【図16】本発明をRCバイククワッドLPF回路に適用した図(実施例5)であり、カットオフ周波数を可変とする全差動RCバイククワッドLPF回路の図である。
【図17】本発明の実施例5に係るカットオフ周波数を可変とする全差動RCバイククワッドLPF回路の回路図である。
【図18】本発明を全差動RC−LPF回路に適用した図(実施例6)であり、カットオフ周波数を可変とする全差動RC−LPF回路の図である。
【図19】図19(a)及び図19(b)は、全差動フィルタ回路に使用する可変容量モジュールの回路図である。
【図20】本発明のフィルタ回路の周波数特性(シミュレーション結果)を例示する説明図である。
【図21】本発明をパッシブフィルタ回路に適用した図(実施例7)であり、図21(a)は抵抗を可変とする回路図、図21(b)は容量を可変とする回路図である。
【図22】ミキサ機能を追加したカットオフ周波数可変のフィルタ回路の図である。
【図23】一般的な無線通信受信回路の構成を例示する図である。
【図24】無線受信回路への適用例を例示する図である。
【図25】無線送信回路への適用例を例示する図である。
【図26】無線通信機器におけるチャネル選択を説明する説明図である。
【図27】従来のRC−LPFの説明図(その1)であり、図27(a)はフィルタ回路の回路図、図27(b)は可変抵抗の回路図、図27(c)は可変抵抗のレイアウト概念図である。
【図28】従来のRC−LPFの説明図(その2)であり、図28(a)はフィルタ回路の回路図、図28(b)は可変容量の回路図、図28(c)は可変容量のレイアウト概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
まず、図1〜図6を参照して、本発明に係るフィルタ回路の基本的構成、並びに、本発明をRCアクティブフィルタに適用したときの種々の基本的形態について説明する。
【0021】
まず図1に示す本発明のフィルタ回路は、ΣΔ変調器1と、デコーダ(変換器)4と、フィルタ回路2を備える。ここで、ΣΔ変調器1は、動作クロックCLKに基づきデジタルコード入力Codeをシグマデルタ変調する変調器である。
【0022】
また、フィルタ回路2は、低周波帯域の信号を炉波するローパスフィルタ(LPF)、高周波帯域の信号を炉波するハイパスフィルタ(HPF)、或いは、中間周波数帯域の信号を炉波するバンドパスフィルタ(BPF)の何れであっても良い。またフィルタ回路2の種別もパッシブフィルタまたはアクティブフィルタ等、デジタルフィルタを除く方式の何れであっても良い。
【0023】
本発明のフィルタ回路は、フィルタ回路2のフィルタ特性を決定する少なくとも1種の素子(可変素子)3の素子値を、ΣΔ変調器1の出力、或いは該ΣΔ変調器1の出力をコード変換するデコーダ4を介した信号に基づき変化させる点に特徴がある。
【0024】
ここでいうフィルタ特性は、時定数(カットオフ周波数の逆数)または利得である。また、フィルタ特性を決定する素子3は、フィルタ回路の種別に応じて異なり、例えば、抵抗、キャパシタ、相互コンダクタンスであり、該素子3を可変素子(可変抵抗、可変容量、可変相互コンダクンス)として構成する。
【0025】
可変素子3は、例えばユニット素子を並列接続して個々のユニット素子に直列接続されているスイッチのオン/オフ制御により素子値を可変とする。そのオン/オフ制御を行う制御信号に、ΣΔ変調器1の出力、或いは該ΣΔ変調器1の出力をコード変換するデコーダ4を介した信号を用いる。なお、ΣΔ変調器1の出力、或いは該ΣΔ変調器1の出力をコード変換するデコーダ4を介した信号の何れであっても良いが、以下の実施例の説明では、デコーダ4を用いた構成を例示して説明する。
【0026】
例えば、RCアクティブ−LPF回路に本発明を適用した場合、図2(a)に示す回路構成となる。図2(a)の回路例は、RCアクティブ−LPF回路のカットオフ周波数を切り換えるために、オペアンプAMの帰還抵抗RFおよび入力抵抗RGを可変にする。
【0027】
ΣΔ変調器1では、動作クロックCLKに基づきnビット(nは正整数)のデジタルコード入力Code(値H)をシグマデルタ変調して、例えば図2(b)に示すような時間的推移を持つ信号を出力する。このように、ΣΔ変調器1の出力は瞬間的には低ビット(低分解能;図2(b)では{2,1,0,−1,−2}の5値)であるが、相対的に長周期(=2×n)の平均値(図2(b)では0.625)はデジタルコード入力Codeに応じた値(=H/2)をとる。つまり、デジタルコード入力Codeの値Hの設定により、長周期の平均値は0から1までの間を2段階変化させることができ、ΣΔ変調器1の出力は瞬間的には低ビット(低分解能)だが、長周期の平均値は高分解能(高ビット)であると言える。
【0028】
なお、ΣΔ変調器1の出力は、動作クロックCLKの周波数で図2(b)に示すような変化を刻むことから、発生するノイズのフィルタ回路への影響が問題となる。しかしながら、ΣΔ変調方式の特徴として、ノイズを周波数的に高域に移動させる、いわゆるノイズ・シェーピング効果を有することから、相対的に低周波域ではノイズが少なく、相対的に高周波域でノイズが大きくなる。したがって、動作クロックCLKの周波数を、フィルタ回路のカットオフ周波数のオーダーよりも高いオーダーに設定することにより、LPFやBPFの場合は、ノイズの影響を低減することができる。
【0029】
このΣΔ変調器1出力をコード変換したデコーダ4の出力信号に基づき、可変抵抗RFおよびRGを構成するユニット素子のオン/オフ制御が行われ、nビットのデジタルコード入力Codeで2段階のカットオフ周波数を切り換えることが可能となる。
【0030】
なお、帰還抵抗RFおよび入力抵抗RGを同一のオン/オフ制御信号で変化させる場合には、利得は(RF/RG)に比例することから一定となる。また、同時にカットオフ周波数および利得を切り換えるためには、それぞれ独立したΣΔ変調器1出力をコード変換したデコーダ4の出力信号に基づき、可変抵抗RFおよびRGを構成するユニット素子のオン/オフ制御を行う必要がある。
【0031】
以上のように、本発明では、フィルタ特性(カットオフ周波数)の可変幅が細かく且つ範囲が広い場合であっても、より少ないユニット素子でフィルタ特性を決定している素子を可変とすることができ、LSIにおける回路のレイアウト面積の増大を抑制できると共に、コストを抑制することができる。
【0032】
次に、より具体的に、本発明をRCアクティブフィルタ(RCアクティブ−LPF回路)に適用したときの基本的形態について説明する。図3(a),(b)には、本発明を適用したRCアクティブ−LPF回路を示す。
【0033】
図3(a)に示すフィルタ回路は、ΣΔ変調器1、デコーダ4およびRCアクティブ−LPF回路11を備える。RCアクティブ−LPF回路11は、オペアンプAM1、入力抵抗RG1、帰還抵抗RF1および帰還キャパシタCF1を含む。このフィルタ回路の構成では、カットオフ周波数は1/(RF1・CF1)に比例し、また利得は(RF1/RG1)となる。ここで、入力抵抗RG1および帰還抵抗RF1を可変抵抗とし、ΣΔ変調器1出力をコード変換したデコーダ4の出力信号に基づき、該可変抵抗を構成するユニット抵抗のオン/オフ制御を行う。これにより、低ビットのデジタルコードで多段階のカットオフ周波数を切り換えると共に、利得を一定に保つことが可能となる。
【0034】
また、図3(b)に示すフィルタ回路は、ΣΔ変調器1、デコーダ4およびRCアクティブ−LPF回路12を備える。RCアクティブ−LPF回路12は、オペアンプAM2、入力抵抗RG2、帰還抵抗RF2および帰還キャパシタCF2を備える。ここで、帰還キャパシタCF2を可変容量とし、デコーダ4の出力信号に基づき、該可変容量を構成するユニットキャパシタのオン/オフ制御を行う。これにより、低ビットのデジタルコードで多段階のカットオフ周波数を切り換えることが可能となる。
【0035】
次に、本発明をRCアクティブフィルタ(RCアクティブ−HPF回路)に適用したときの基本的形態について説明する。図4(a),(b)には、本発明を適用したRCアクティブ−HPF回路を示す。
【0036】
図4(a)に示すフィルタ回路は、ΣΔ変調器1、デコーダ4およびRCアクティブ−HPF回路13を備える。RCアクティブ−HPF回路13は、オペアンプAM3、入力抵抗RG3、帰還抵抗RF3および入力キャパシタCG3を含む。このフィルタ回路の構成では、カットオフ周波数は1/(RF3・CG3)に比例し、また利得は(RF3/RG3)となる。ここで、入力抵抗RG3および帰還抵抗RF3を可変抵抗とし、ΣΔ変調器1出力をコード変換したデコーダ4の出力信号に基づき、該可変抵抗を構成するユニット抵抗のオン/オフ制御を行う。これにより、低ビットのデジタルコードで多段階のカットオフ周波数を切り換えると共に、利得を一定に保つことが可能となる。
【0037】
また、図4(b)に示すフィルタ回路は、ΣΔ変調器1、デコーダ4およびRCアクティブ−HPF回路14を備える。RCアクティブ−HPF回路14は、オペアンプAM4、入力抵抗RG4、帰還抵抗RF4および入力キャパシタCG4を備える。ここで、入力キャパシタCG4を可変容量とし、デコーダ4の出力信号に基づき、該可変容量を構成するユニットキャパシタのオン/オフ制御を行う。これにより、低ビットのデジタルコードで多段階のカットオフ周波数を切り換えることが可能となる。
【0038】
次に、以上説明したフィルタ回路の基本的構成、並びに、本発明をRCアクティブフィルタに適用したときの種々の基本的形態を踏まえて実施例の説明を行う。以下では、RCアクティブフィルタに適用したときの様々な展開的形態への適用について、実施例1から実施例6まで順に図面を参照して詳細に説明する。また、本発明のパッシブフィルタへの適用を実施例7で説明する。さらに、本発明の受信器および送信器への適用について、実施例8から実施例10まで順に図面を参照して詳細に説明する。
【実施例1】
【0039】
まず、図5および図6を参照して、本発明を全差動RCアクティブフィルタ(全差動RCアクティブ−LPF回路)に適用したときの基本的形態について説明する。図5には、本発明を適用した全差動RCアクティブ−LPF回路の図を示し、図6(a),(b),(c)には可変抵抗モジュールの回路図をそれぞれ示す。
【0040】
図5に示すフィルタ回路は、ΣΔ変調器1、デコーダ4および全差動RCアクティブ−LPF回路を備える。全差動RCアクティブ−LPF回路は、全差動オペアンプAM10、入力抵抗RG10pおよびRG10n、帰還抵抗RF10pおよびRF10n、並びに帰還キャパシタCF10pおよびCF10nを含む。なお、入力抵抗RG10pおよびRG10n、並びに帰還抵抗RF10pおよびRF10nは可変抵抗である。また、それぞれのペア、即ち入力抵抗RG10pおよびRG10n、並びに帰還抵抗RF10pおよびRF10nは同一の回路構成を持つ。
【0041】
また、帰還キャパシタCF10pは全差動オペアンプAM10の正極入力端子および負極出力端子間に接続され、帰還キャパシタCF10nは全差動オペアンプAM10の負極入力端子および正極出力端子間に接続される。
【0042】
また、入力抵抗RG10pの第1端子および同極第2端子間は全差動オペアンプAM10の正極入力端子およびフィルタ回路の正極入力端子INp間に接続される。また、入力抵抗RG11pの第1端子および逆極第2端子間は全差動オペアンプAM10の正極入力端子およびフィルタ回路の負極入力端子INn間に接続される。また、入力抵抗RG10nの第1端子および同極第2端子間は全差動オペアンプAM10の負極入力端子およびフィルタ回路の負極入力端子INpに接続される。またさらに、入力抵抗RG10nの第1端子および逆極第2端子間は全差動オペアンプAM10の負極入力端子およびフィルタ回路の正極入力端子INnに接続される。
【0043】
また、帰還抵抗RF10pの第1端子および同極第2端子間は全差動オペアンプAM10の正極入力端子および負極出力端子間に接続される。また、帰還抵抗RF10pの第1端子および逆極第2端子間は全差動オペアンプAM10の正極入力端子および正極出力端子間に接続される。また、帰還抵抗RF10nの第1端子および同極第2端子間は全差動オペアンプAM10の負極入力端子および正極出力端子に接続される。またさらに、帰還抵抗RF10nの第1端子および逆極第2端子間は全差動オペアンプAM10の負極入力端子および負極出力端子間に接続される。
【0044】
このフィルタ回路の構成では、カットオフ周波数は1/(RF10x・CF10x)(x=pまたはn)に比例し、また利得は(RF10x/RG10x)となる。ここで、入力抵抗RG10pおよびRG10n並びに帰還抵抗RF10pおよびRF10nを可変抵抗とし、ΣΔ変調器1出力をコード変換したデコーダ4の出力信号に基づき、該可変抵抗を構成するユニット抵抗のオン/オフ制御を行う。これにより、低ビットのデジタルコードで多段階のカットオフ周波数を切り換えると共に、利得を一定に保つことが可能となる。
【0045】
また、本発明の可変抵抗に用いる可変抵抗モジュールの回路構成を図6に例示する。なお、以下の第1、第2および第3の可変抵抗モジュールの回路構成は、単なる例示であり、本発明がこれらに限定されるものではない。また、本実施例では第1の可変抵抗モジュール(図6(a))および第2の可変抵抗モジュール(図6(b))が適用可能であり、第3の可変抵抗モジュール(図6(c))については後述する。
【0046】
まず、第1の可変抵抗モジュールは、図6(a)に示すように、第1端子IA、第1端子IAと同極性の同極第2端子OAおよび逆極性の逆極第2端子OBを備えて2個の内部抵抗103,104を有する。それぞれの内部抵抗103,104の一方の端子はスイッチ101,102を介して第1端子IAに接続され、一方の内部抵抗103の他方の端子は同極第2端子OAに接続され、他方の内部抵抗104の他方の端子は逆極第2端子OBに接続される。また、一方の内部抵抗103に接続されるスイッチ101のオンオフ制御信号は、他方の内部抵抗104に接続されるスイッチ102のオンオフ制御信号の反転信号である。
【0047】
また、第2の可変抵抗モジュールは、図6(b)に示すように、第1端子IA、第1端子IAと同極性の同極第2端子OAおよび逆極性の逆極第2端子OBを備えて、それぞれ同数個(4個)の内部抵抗121〜124及び内部抵抗125〜128をそれぞれ持つ2個の内部可変抵抗群を有する。各内部可変抵抗群において、それぞれの内部抵抗121〜128の一方の端子はスイッチ111〜118を介して第1端子IAに接続される。また、一方の内部可変抵抗群においてそれぞれの内部抵抗125〜128の他の端子は同極第2端子OAに接続され、他方の内部可変抵抗群においてそれぞれの内部抵抗121〜124の他方の端子は逆極第2端子OBに接続される。また、一方の内部可変抵抗群に接続されるスイッチ115〜118のオンオフ制御信号は、他方の内部可変抵抗群に接続されるスイッチ111〜114のオンオフ制御信号の反転信号である。
【0048】
次に、図7および図8を参照して、本発明を全差動RCアクティブフィルタ(全差動RCアクティブ−LPF回路)に適用したときの展開的形態について説明する。図7には、本発明を適用した全差動RCアクティブ−LPF回路の具体的な回路図を示す。また、図8(a)には使用した第2の可変抵抗モジュールの回路図を、図8(b)には可変抵抗モジュールにおけるΣΔ変調器1に応じた抵抗値設定を説明する説明図をそれぞれ示す。
【0049】
図7に示すフィルタ回路は、ΣΔ変調器1、デコーダ5および全差動RCアクティブ−LPF回路を備える。全差動RCアクティブ−LPF回路は、全差動オペアンプAM10、入力抵抗RG10pおよびRG10n、帰還抵抗RF10pおよびRF10n、並びに帰還キャパシタCF10pおよびCF10nを備え、図5と同一の回路構成である。
【0050】
本実施例では、ΣΔ変調器1として3段MASHΣΔ変調器を使用する。3段MASHΣΔ変調器1は、加算器SG1およびディレイD1を備えてnビットのデジタルコード入力Codeを累積加算する第1段積分器と、加算器SG2およびディレイD2を備えて第1段積分器の出力を累積加算する第2段積分器と、加算器SG3およびディレイD3を備えて第2段積分器の出力を累積加算する第3段積分器と、を備えている。これら第1段積分器、第2段積分器および第3段積分器がシグマデルタ変調のシグマ(Σ)機能を司る。
【0051】
また、3段MASHΣΔ変調器1は、ディレイD4〜D8および加算器AD1〜AD4を備えて、第1段積分器、第2段積分器および第3段積分器のそれぞれのオーバーフロー信号を微分(差分)する差分器を備えている。この差分器がシグマデルタ変調のデルタ(Δ)機能を司る。なお、加算器AD1〜AD4において、マイナス入力として扱う部分にのみ符号「−」を附しており、その他の入力についてはプラス入力として扱う。
【0052】
また、図7で例示する3段MASHΣΔ変調器1の構成は、非特許文献1のFig.9(p1156)に示された構成(Digital Implementation)と同等のものであり、Fig.3(p1150)に示されているモデル(Discrete-time model)から導かれるものである。より詳しくは非特許文献1を参照されたい。
【0053】
本実施例では、全差動RCアクティブ−LPF回路において、入力抵抗RG10pおよびRG10n並びに帰還抵抗RF10pおよびRF10nを可変抵抗とし、3段MASHΣΔ変調器1出力をコード変換したデコーダ5の出力信号に基づき、該可変抵抗を構成するユニット抵抗のオン/オフ制御を行う。なお、可変抵抗としては、図8(a)に示すように第2の可変抵抗モジュールを用いる。
【0054】
3段MASHΣΔ変調器1は動作クロックCLKに基づき動作し、nビットのデジタルコード入力Codeをシグマデルタ変調して、図2(b)と同様の時間的推移を持つ信号を出力する。但し、3段MASHΣΔ変調器1の出力は−3〜+4の離散値をとる。
【0055】
デコーダ5では、3段MASHΣΔ変調器1の出力(−3〜+4)に応じて、第2の可変抵抗モジュールの8個の内部抵抗121〜128にそれぞれ直列接続されるスイッチ111〜118のオン/オフ制御信号を生成する。
【0056】
3段MASHΣΔ変調器1の出力が+4のときには、抵抗値Rの抵抗128が選択されて、可変抵抗モジュールの第1端子および同極第2端子間に抵抗値Rの抵抗を持ち、第1端子および逆極第2端子間は開放となる。また、出力が+3のときには、抵抗値4/3×Rの抵抗127が選択されて、第1端子および同極第2端子間に抵抗値4/3×Rの抵抗を持ち、第1端子および逆極第2端子間は開放となる。また、出力が+2のときには、抵抗値2Rの抵抗126が選択されて、第1端子および同極第2端子間に抵抗値2Rの抵抗を持ち、第1端子および逆極第2端子間は開放となる。また、出力が+1のときには、抵抗値4Rの抵抗125が選択されて、第1端子および同極第2端子間に抵抗値4Rの抵抗を持ち、第1端子および逆極第2端子間は開放となる。
【0057】
また、3段MASHΣΔ変調器1の出力が−1のときには、抵抗値−4Rの抵抗124が選択されて、可変抵抗モジュールの第1端子および逆極第2端子間に抵抗値−4Rの抵抗を持ち、第1端子および同極第2端子間は開放となる。また、出力が−2のときには、抵抗値−2Rの抵抗123が選択されて、可変抵抗モジュールの第1端子および逆極第2端子間に抵抗値−2Rの抵抗を持ち、第1端子および同極第2端子間は開放となる。さらに、出力が−3のときには、抵抗値−4/3×Rの抵抗122が選択されて、可変抵抗モジュールの第1端子および逆極第2端子間に抵抗値−4/3×Rの抵抗を持ち、第1端子および同極第2端子間は開放となる。なお、3段MASHΣΔ変調器1の出力が0のときには内部抵抗は選択されず、何れの帰還路も開放となる。
【0058】
なお、内部抵抗122〜124の抵抗値をマイナス、内部抵抗125〜128の抵抗値をプラスとしているのは、内部抵抗122〜124選択時に選択された内部抵抗に流れる電流の向きが、内部抵抗125〜128選択時に選択された内部抵抗に流れる電流の向きとは逆向きに流れ、見かけ上で負値の抵抗値を持つからである。
【0059】
また、内部抵抗121が選択されることはなく、実質的には7個の内部抵抗122〜128で可変抵抗モジュールを構成可能である。本実施例でこのような構成を採るのは、全差動方式の回路をLSI上で実現する際の対称性の観点からの理由である。
【0060】
このような内部抵抗121〜128の選択により、当該フィルタ回路のカットオフ周波数は、抵抗値Rの抵抗128を選択したときを1として、次のようになる。つまり、抵抗値4/3×Rの抵抗127を選択したときには3/4に、抵抗値2Rの抵抗126を選択したときには1/2に、抵抗値4Rの抵抗125を選択したときには1/4に、それぞれ切り替わる。また、抵抗値−4/3×Rの抵抗122を選択したときには−3/4に、抵抗値−2Rの抵抗123を選択したときには−1/2に、抵抗値−4Rの抵抗124を選択したときには−1/4に、それぞれ切り替わることとなる。
【0061】
また、3段MASHΣΔ変調器1は、動作クロックCLKに基づき動作して、図2(b)と同様の時間的推移を持つ信号を出力するが、長周期の平均値はnビットのデジタルコード入力Codeの値Hに応じて変化する。すなわち、長周期の平均値=H/2である。例えば、n=10の場合、デジタルコード入力Codeの値H=160D(10進数表記)=0A0H(16進数表記)=01010000B(2進数表記)のとき、長周期の平均値=H/2=160/1024=0.625となる。つまり、デジタルコード入力Codeの値Hの設定により、長周期の平均値は0から1までの間を2=1024段階変化させることができる。
【0062】
以上説明したように、本発明を全差動RCアクティブフィルタ(全差動RCアクティブ−LPF回路)に適用したフィルタ回路では、3段MASHΣΔ変調器1出力をコード変換したデコーダ5の出力信号に基づき、可変抵抗の可変制御が行われる。すなわち、入力抵抗RG10pおよびRG10n並びに帰還抵抗RF10pおよびRF10nを構成するユニット抵抗のオン/オフ制御が行われる。これにより、nビットのデジタルコード入力Codeで2段階のカットオフ周波数を切り換えると共に、利得を一定に保つことが可能となる。
【0063】
なお、本実施例では、入力抵抗RG10pおよびRG10nに、帰還抵抗RF10pおよびRF10nと同一構造の可変抵抗モジュールを使用して、同一のオン/オフ制御信号で両者を同じく変化させ、(RF10x/RG10x)に比例する利得を一定に保っている。同時にカットオフ周波数および利得を切り換えるためには、それぞれ独立したΣΔ変調器1出力をコード変換したデコーダの出力信号に基づき、可変抵抗を構成するユニット抵抗のオン/オフ制御を行うようにすれば良い。
【0064】
このように、本実施例では、フィルタ特性(カットオフ周波数)の可変幅が細かく且つ範囲が広い場合であっても、より少ないユニット抵抗(1つの可変抵抗モジュールにつき8個、但し実質的には7個あれば良い。)でフィルタ特性(カットオフ周波数)を決定している素子(帰還抵抗RF10pおよびRF10n)を可変とすることができ、LSIにおける回路のレイアウト面積の増大を抑制できると共に、コストを抑制することができる。
【実施例2】
【0065】
次に、図9および図6(c)を参照して、本発明を全差動RCアクティブフィルタ(全差動RCアクティブ−LPF回路)に適用したときの他の基本的形態について説明する。図9には、本発明を適用した全差動RCアクティブ−LPF回路を示す。
【0066】
図9に示すフィルタ回路は、ΣΔ変調器1、デコーダ4および全差動RCアクティブ−LPF回路を備える。全差動RCアクティブ−LPF回路は、全差動オペアンプAM11、入力抵抗RG11pおよびRG11n、帰還抵抗RF11pおよびRF11n、並びに帰還キャパシタCF11pおよびCF11nを備える。なお、入力抵抗RG11pおよびRG11n、並びに帰還抵抗RF11pおよびRF11nは可変抵抗である。また、それぞれのペア、即ち入力抵抗RG11pおよびRG11n、並びに帰還抵抗RF11pおよびRF11nは同一の回路構成を持つ。
【0067】
また、帰還キャパシタCF11pは全差動オペアンプAM11の正極入力端子および負極出力端子間に接続され、帰還キャパシタCF11nは全差動オペアンプAM11の負極入力端子および正極出力端子間に接続される。
【0068】
また、入力抵抗RG11pの第1端子および同極第2端子間は全差動オペアンプAM11の正極入力端子およびフィルタ回路の正極入力端子INp間に接続される。また、入力抵抗RG11pの第1端子および逆極第2端子間は全差動オペアンプAM11の負極入力端子およびフィルタ回路の正極入力端子INp間に接続される。また、入力抵抗RG11nの第1端子および同極第2端子間は全差動オペアンプAM11の負極入力端子およびフィルタ回路の負極入力端子INnに接続される。またさらに、入力抵抗RG11nの第1端子および逆極第2端子間は全差動オペアンプAM11の正極入力端子およびフィルタ回路の負極入力端子INnに接続される。
【0069】
また、帰還抵抗RF11pの第1端子および同極第2端子間は全差動オペアンプAM11の負極入力端子および正極出力端子間に接続される。また、帰還抵抗RF11pの第1端子および逆極第2端子間は全差動オペアンプAM11の正極入力端子および正極出力端子間に接続される。また、帰還抵抗RF11nの第1端子および同極第2端子間は全差動オペアンプAM11の正極入力端子および負極出力端子に接続される。またさらに、帰還抵抗RF11nの第1端子および逆極第2端子間は全差動オペアンプAM11の負極入力端子および負極出力端子間に接続される。
【0070】
このフィルタ回路の構成では、カットオフ周波数は1/(RF11x・CF11x)(x=pまたはn)に比例し、また利得は(RF11x/RG11x)となる。ここで、入力抵抗RG11pおよびRG11n並びに帰還抵抗RF11pおよびRF11nを可変抵抗とし、ΣΔ変調器1出力をコード変換したデコーダ4の出力信号に基づき、該可変抵抗を構成するユニット抵抗のオン/オフ制御を行う。これにより、低ビットのデジタルコードで多段階のカットオフ周波数を切り換えると共に、利得を一定に保つことが可能となる。
【0071】
また、本実施例の可変抵抗に用いる第3の可変抵抗モジュールの回路構成を図6(c)に例示する。第3の可変抵抗モジュールは、同図に示すように、第1端子OA、第1端子OAと同極性の同極第2端子IAおよび逆極性の逆極第2端子IBを備えて2×n+1個(n=3で7個)の内部抵抗152〜158を有する。7個の内部抵抗152〜158は、抵抗値がR(Rは任意の値)であり、一方の端子は第1端子OAに接続される。また、他方の端子は、内部抵抗152〜158毎に独立の第1制御信号でオンオフ制御される第1スイッチ134,136,138,140,142,144,146を介して同極第2端子IAに、また第1制御信号の反転信号である第2制御信号でオンオフ制御される第2スイッチ133,135,137、139,141,143,145を介して逆極第2端子IBにそれぞれ接続される。
【0072】
次に、図10および図11を参照して、本発明を全差動RCアクティブフィルタ(全差動RCアクティブ−LPF回路)に適用したときの展開的形態について説明する。図10には、本発明を適用した全差動RCアクティブ−LPF回路の具体的な回路図を示す。また、図11(a)には使用した第3の可変抵抗モジュールの回路図を、図11(b)には可変抵抗モジュールにおけるΣΔ変調器1に応じた抵抗値設定を説明する説明図をそれぞれ示す。
【0073】
図10に示すフィルタ回路は、ΣΔ変調器1、デコーダ6および全差動RCアクティブ−LPF回路を備える。全差動RCアクティブ−LPF回路は、全差動オペアンプAM11、入力抵抗RG11pおよびRG11n、帰還抵抗RF11pおよびRF11n、並びに帰還キャパシタCF11pおよびCF11nを備え、図9と同一の回路構成である。また、ΣΔ変調器1として実施例1と同等の3段MASHΣΔ変調器を使用する。
【0074】
本実施例では、全差動RCアクティブ−LPF回路において、入力抵抗RG11pおよびRG11n並びに帰還抵抗RF11pおよびRF11nを可変抵抗とし、3段MASHΣΔ変調器1出力をコード変換したデコーダ6の出力信号に基づき、該可変抵抗を構成するユニット抵抗のオン/オフ制御を行う。なお、可変抵抗として図11(a)に示す第3の可変抵抗モジュールを用いる。
【0075】
3段MASHΣΔ変調器1は動作クロックCLKに基づき動作し、nビットのデジタルコード入力Codeをシグマデルタ変調して、図2(b)と同様の時間的推移を持つ信号を出力する。但し、3段MASHΣΔ変調器1の出力は−3〜+4の離散値をとる。
【0076】
デコーダ6では、3段MASHΣΔ変調器1の出力(−3〜+4)に応じて、第3の可変抵抗モジュールに供給されるオン/オフ制御信号S0〜S6を生成する。
【0077】
3段MASHΣΔ変調器1の出力が+4のときには、第1端子および同極第2端子間で7個の抵抗152〜158が選択されて、第1端子および逆極第2端子間では選択されない。この時、可変抵抗モジュールの第1端子および同極第2端子間に抵抗値1/7×Rの抵抗を持つこととなる。また、出力が+3のときには、第1端子および同極第2端子間で6個の抵抗152〜157が選択されると共に、第1端子および逆極第2端子間では1個の抵抗158が選択される。この時、可変抵抗モジュールの第1端子および同極第2端子間に抵抗値1/6×Rの抵抗を持ち、第1端子および逆極第2端子間に抵抗値Rの抵抗を持つこととなる。
【0078】
また、3段MASHΣΔ変調器1の出力が+2のときには、第1端子および同極第2端子間で5個の抵抗152〜156が選択されると共に、第1端子および逆極第2端子間では2個の抵抗157,158が選択される。この時、可変抵抗モジュールの第1端子および同極第2端子間に抵抗値1/5×Rの抵抗を持ち、第1端子および逆極第2端子間に抵抗値−1/2×Rの抵抗を持つこととなる。また、出力が+1のときには、第1端子および同極第2端子間で4個の抵抗152〜155が選択されると共に、第1端子および逆極第2端子間では3個の抵抗156〜158が選択される。この時、可変抵抗モジュールの第1端子および同極第2端子間に抵抗値1/4×Rの抵抗を持ち、第1端子および逆極第2端子間に抵抗値1/3×Rの抵抗を持つこととなる。
【0079】
また、3段MASHΣΔ変調器1の出力が0のときには、第1端子および同極第2端子間で3個の抵抗152〜154が選択されると共に、第1端子および逆極第2端子間では4個の抵抗155〜158が選択される。この時、可変抵抗モジュールの第1端子および同極第2端子間に抵抗値1/3×Rの抵抗を持ち、第1端子および逆極第2端子間に抵抗値−1/4×Rの抵抗を持つこととなる。また、出力が−1のときには、第1端子および同極第2端子間で2個の抵抗152,153が選択されると共に、第1端子および逆極第2端子間では5個の抵抗154〜158が選択される。この時、可変抵抗モジュールの第1端子および同極第2端子間に抵抗値1/2×Rの抵抗を持ち、第1端子および逆極第2端子間に抵抗値−1/5×Rの抵抗を持つこととなる。
【0080】
また、3段MASHΣΔ変調器1の出力が−2のときには、第1端子および同極第2端子間で1個の抵抗152が選択されると共に、第1端子および逆極第2端子間では6個の抵抗153〜158が選択される。この時、可変抵抗モジュールの第1端子および同極第2端子間に抵抗値Rの抵抗を持ち、第1端子および逆極第2端子間に抵抗値1/6×Rの抵抗を持つこととなる。さらに、出力が−3のときには、第1端子および同極第2端子間では抵抗が選択されず、第1端子および逆極第2端子間では7個の抵抗152〜158が選択される。この時、第1端子および逆極第2端子間に抵抗値1/7×Rの抵抗を持つこととなる。
【0081】
なお、第1端子および逆極第2端子間の抵抗値をマイナスとしているのは、第1端子および逆極第2端子間に流れる電流の向きが、第1端子および同極第2端子間に流れる電流の向きとは逆向きに流れ、見かけ上で負値の抵抗値を持つからである。
【0082】
このようなオン/オフ制御信号S0〜S6のスイッチ制御により、当該フィルタ回路のカットオフ周波数は、例えば第1端子および同極第2端子間でみたとき、次のようになる。つまり、3段MASHΣΔ変調器1の出力が+4のときを7として、出力が+3のときには5に、出力が+2のときには3に、出力が+1のときには1に、それぞれ切り替わる。また、出力が0のときには−1に、出力が−1のときには−3に、出力が−2のときには−5に、出力が−3のときには−7に、それぞれ切り替わることとなる。
【0083】
また、3段MASHΣΔ変調器1は、動作クロックCLKに基づき動作して、図2(b)と同様の時間的推移を持つ信号を出力するが、長周期の平均値はnビットのデジタルコード入力Codeの値Hに応じて変化する。すなわち、長周期の平均値=H/2である。例えば、n=10の場合、デジタルコード入力Codeの値H=160D(10進数表記)=0A0H(16進数表記)=01010000B(2進数表記)のとき、長周期の平均値=H/2=160/1024=0.625となる。つまり、デジタルコード入力Codeの値Hの設定により、長周期の平均値は0から1までの間を2=1024段階変化させることができる。
【0084】
以上説明したように、本発明を全差動RCアクティブフィルタ(全差動RCアクティブ−LPF回路)に適用したフィルタ回路では、3段MASHΣΔ変調器1出力をコード変換したデコーダ5の出力信号に基づき、可変抵抗の可変制御が行われる。すなわち、入力抵抗RG11pおよびRG11n並びに帰還抵抗RF11pおよびRF11nを構成するユニット抵抗のオン/オフ制御が行われる。これにより、nビットのデジタルコード入力Codeで2段階のカットオフ周波数を切り換えると共に、利得を一定に保つことが可能となる。
【0085】
なお、本実施例では、入力抵抗RG11pおよびRG11nに、帰還抵抗RF11pおよびRF11nと同一構造の可変抵抗モジュールを使用して、同一のオン/オフ制御信号で両者を同じく変化させて(RF11x/RG11x)に比例する利得を一定に保っている。同時にカットオフ周波数および利得を切り換えるためには、それぞれ独立したΣΔ変調器1出力をコード変換したデコーダの出力信号に基づき、可変抵抗を構成するユニット抵抗のオン/オフ制御を行うようにすれば良い。
【0086】
このように、本実施例では、フィルタ特性(カットオフ周波数)の可変幅が細かく且つ範囲が広い場合であっても、より少ないユニット抵抗(1つの可変抵抗モジュールにつき8個、但し実質的には7個あれば良い。)でフィルタ特性(カットオフ周波数)を決定している素子(帰還抵抗RF11pおよびRF11n)を可変とすることができ、LSIにおける回路のレイアウト面積の増大を抑制できると共に、コストを抑制することができる。
【実施例3】
【0087】
次に、図12を参照して、本発明を全差動RCバイククワッドLPF回路に適用したときの基本的形態について説明する。図12には、本発明を適用した全差動RCバイククワッドLPF回路を示す。
【0088】
図12に示すフィルタ回路は、ΣΔ変調器1、デコーダ4および全差動RCバイククワッドLPF回路を備える。全差動RCバイククワッドLPF回路は、実施例2の全差動RC−LPF回路と同等の第1段フィルタ回路および第2段フィルタ回路と、第2段フィルタ回路の出力を第1段フィルタ回路の入力側へ帰還させる段間帰還抵抗RF14pおよびRF14nと、を備える。
【0089】
フィルタ回路の第1段は、全差動オペアンプAM12、入力抵抗RG12pおよびRG12n、帰還抵抗RF12pおよびRF12n、並びに帰還キャパシタCF12pおよびCF12nを備える。また、フィルタ回路の第2段は、全差動オペアンプAM13、入力抵抗RG13pおよびRG13n、帰還抵抗RF14pおよびRF14n、並びに帰還キャパシタCF13pおよびCF13nを備える。
【0090】
なお、入力抵抗RG12p、RG12n、RG13pおよびRG13n、帰還抵抗RF12pおよびRF12n、並びに、段間帰還抵抗RF14pおよびRF14nは可変抵抗である。また、それぞれのペア、即ち入力抵抗RG12pおよびRG12n、入力抵抗RG13pおよびRG13n、並びに帰還抵抗RF12pおよびRF12nは同一の回路構成を持つ。
【0091】
また、段間帰還抵抗RF14pの第1端子および同極第2端子間は、フィルタ回路の負極端子出力OUTnと全差動オペアンプAM12の負極端子入力に接続される。また、段間帰還抵抗RF14pの第1端子および逆極第2端子間は、フィルタ回路の負極端子出力OUTnと全差動オペアンプAM12の正極入力端子に接続される。また、段間帰還抵抗RF14nの第1端子および同極第2端子間は、フィルタ回路の正極出力端子OUTpと全差動オペアンプAM12の負極入力端子に接続される。また、段間帰還抵抗RF14nの第1端子および逆極第2端子間はフィルタ回路の正極出力端子OUTpと全差動オペアンプAM12の負極出力端子に接続される。
【0092】
なお、フィルタ回路の第1段内の接続関係は、実施例2のRCアクティブ−LPF回路における接続関係と同等であり、フィルタ回路の第2段内の接続関係は、実施例2のRCアクティブ−LPF回路におけるフィードバック抵抗RF11pおよびRF11nを削除したものと同等である。
【0093】
次に、図13を参照して、本発明を全差動RCバイククワッドLPF回路に適用したときの展開的形態について説明する。図13には、本発明を適用した全差動RCバイククワッドLPF回路の具体的な回路図を示す。
【0094】
図13に示すフィルタ回路は、ΣΔ変調器1、デコーダ6および全差動RCバイククワッドLPF回路を備える。全差動RCバイククワッドLPF回路は、フィルタ回路の第1段目および第2段目と、第2段目の出力を第1段目の入力側へ帰還させる段間帰還抵抗RF14pおよびRF14nと、を備え、図12と同一の回路構成である。また、ΣΔ変調器1として実施例1および実施例2と同等の3段MASHΣΔ変調器を使用する。
【0095】
本実施例では、全差動RCアクティブ−LPF回路において、入力抵抗RG12p、RG12n、RG13pおよびRG13n、帰還抵抗RF12pおよびRF12n、並びに、段間帰還抵抗RF14pおよびRF14nを可変抵抗とする。また、3段MASHΣΔ変調器1出力をコード変換したデコーダ6の出力信号に基づき、可変抵抗を構成するユニット抵抗のオン/オフ制御を行う。なお、可変抵抗として実施例2で説明した第3の可変抵抗モジュールを用いる。
【0096】
また、3段MASHΣΔ変調器1は、動作クロックCLKに基づき実施例2と同様に動作して、長周期の平均値はnビットのデジタルコード入力Codeの値Hに応じて変化する。すなわち、長周期の平均値=H/2であり、例えばn=10の場合、デジタルコード入力Codeの値Hの設定により、長周期の平均値は0から1までの間を2=1024段階変化させることができる。
【0097】
ここで、本実施例のフィルタ回路の構成では、カットオフ周波数は(RG13x・RF14x・CF12x・CF13x)−1/2(x=pまたはn)に比例し、また利得は(RF14x/RG12x)(x=pまたはn)に比例すると考えられる。したがって、3段MASHΣΔ変調器1の変調出力に基づき可変抵抗の可変制御を行うことで、カットオフ周波数を切り換えると共に、利得を一定に保つことが可能となる。
【0098】
以上説明したように、本実施例では、3段MASHΣΔ変調器1出力をコード変換したデコーダ6の出力信号に基づき、可変抵抗の可変制御を行う。すなわち、入力抵抗RG12p、RG12n、RG13pおよびRG13n、帰還抵抗RF12pおよびRF12n、並びに、段間帰還抵抗RF14pおよびRF14nを構成するユニット抵抗のオン/オフ制御を行う。これにより、nビットのデジタルコード入力Codeで2段階のカットオフ周波数を切り換えると共に、利得を一定に保つことが可能となる。
【0099】
また、本実施例では、フィルタ特性(カットオフ周波数)の可変幅が細かく且つ範囲が広い場合であっても、より少ないユニット抵抗(1つの可変抵抗モジュールにつき7個)でフィルタ特性(カットオフ周波数)を決定している素子を可変とすることができ、LSIにおける回路のレイアウト面積の増大を抑制できると共に、コストを抑制することができる。
【実施例4】
【0100】
次に、本発明を全差動RCアクティブフィルタ(全差動RCアクティブ−LPF回路)に適用したときの基本的形態(その3)について説明する。図14には、本発明を適用した全差動RCアクティブ−LPF回路の回路図を示す。
【0101】
図14に示すフィルタ回路は、ΣΔ変調器1、デコーダ4および全差動RCアクティブ−LPF回路を備える。全差動RC−LPF回路は、全差動オペアンプAM15、入力抵抗RG15pおよびRG15n、帰還抵抗RF15pおよびRF15n、並びに帰還キャパシタCF15pおよびCF15nを備える。
【0102】
なお、入力抵抗RG15pおよびRG15n、並びに帰還抵抗RF15pおよびRF15nは可変抵抗である。但し、帰還抵抗RF15pおよびRF15nは、実施例2の構成(図9参照)と同様にΣΔ変調器1の出力に基づき抵抗値の可変制御を行うが、入力抵抗RG15pおよびRG15nの抵抗値の可変制御は、実施例2とは異なりΣΔ変調器1の出力に基づかない。また、帰還抵抗RF15pおよびRF15nは同一の回路構成を持つ。
【0103】
また、帰還キャパシタCF15pは全差動オペアンプAM15の正極入力端子および負極出力端子間に接続され、帰還キャパシタCF15nは全差動オペアンプAM11の負極入力端子および正極出力端子間に接続される。
【0104】
また、帰還抵抗RF15pの第1端子および同極第2端子間は全差動オペアンプAM15の正極入力端子および負極出力端子間に接続される。また、帰還抵抗RF15pの第1端子および逆極第2端子間は全差動オペアンプAM15の負極入力端子および負極出力端子間に接続される。また、帰還抵抗RF15nの第1端子および同極第2端子間は全差動オペアンプAM15の負極入力端子および正極出力端子に接続される。またさらに、帰還抵抗RF15nの第1端子および逆極第2端子間は全差動オペアンプAM15の正極入力端子および正極出力端子間に接続される。
【0105】
このフィルタ回路の構成では、カットオフ周波数は1/(RF15x・CF15x)(x=pまたはn)に比例する。ここで、帰還抵抗RF15pおよびRF15nを可変抵抗とし、ΣΔ変調器1出力をコード変換したデコーダ4の出力信号に基づき、該可変抵抗を構成するユニット抵抗のオン/オフ制御を行う。これにより、低ビットのデジタルコードで多段階のカットオフ周波数を切り換えることが可能となる。
【0106】
また、(RF15x/RG15x)(x=pまたはn)に比例する利得については、入力抵抗RG15pおよびRG15nを可変抵抗とし、ΣΔ変調器1の出力を用いずに他のコード生成手段を用いて該可変抵抗を構成するユニット抵抗のオン/オフ制御を行う。これにより、実施例2の(ΣΔ変調器1の出力を用いた)構成と比較して、利得特性についてΣΔ変調器1による高周波ノイズの影響を抑制することができる。
【0107】
次に、図15を参照して、本発明を全差動RCアクティブフィルタ(全差動RCアクティブ−LPF回路)に適用したときの展開的形態(その3)について説明する。図15には、本発明を適用した全差動RCアクティブ−LPF回路の具体的な回路図を示す。
【0108】
図15に示すフィルタ回路は、ΣΔ変調器1、デコーダ6および全差動RCアクティブ−LPF回路を備える。全差動RCアクティブ−LPF回路は、全差動オペアンプAM15、入力抵抗RG15pおよびRG15n、帰還抵抗RF15pおよびRF15n、並びに帰還キャパシタCF15pおよびCF15nを備え、図12と同一の回路構成である。また、ΣΔ変調器1として実施例2と同等の3段MASHΣΔ変調器を使用する。
【0109】
本実施例では、全差動RCアクティブ−LPF回路において、入力抵抗RG15pおよびRG15n並びに帰還抵抗RF15pおよびRF15nを可変抵抗とする。帰還抵抗RF15pおよびRF15nについては、3段MASHΣΔ変調器1出力をコード変換したデコーダ6の出力信号に基づき、該可変抵抗を構成するユニット抵抗のオン/オフ制御を行う。また、入力抵抗RG15pおよびRG15nについては、ΣΔ変調器1以外の他のコード生成手段を用いて該可変抵抗を構成するユニット抵抗のオン/オフ制御を行う。なお、帰還抵抗RF15pおよびRF15nには、実施例2と同様に第3の可変抵抗モジュールを用いる。
【0110】
以上説明したように、本発明を全差動RCアクティブ−LPF回路に適用したフィルタ回路では、3段MASHΣΔ変調器1出力をコード変換したデコーダ6の出力信号に基づき、帰還抵抗RF11pおよびRF11nを構成するユニット抵抗のオン/オフ制御が行われる。これにより、nビットのデジタルコード入力Codeで2段階のカットオフ周波数を切り換えることが可能となり、結果として、LSIにおける回路のレイアウト面積の増大を抑制できると共に、コストを抑制することができる。
【0111】
また、入力抵抗RG15pおよびRG15nを可変抵抗とし、ΣΔ変調器1の出力を用いずに他のコード生成手段を用いて該可変抵抗を構成するユニット抵抗のオン/オフ制御については、他のコード生成手段を用いて行う。これにより、実施例2の(ΣΔ変調器1の出力を用いた)構成と比較して、利得特性についてΣΔ変調器1による高周波ノイズの影響を抑制することができる。
【実施例5】
【0112】
次に、図16を参照して、本発明を全差動RCバイククワッドLPF回路に適用したときの基本的形態(その2)について説明する。図16には、本発明を適用した全差動RCバイククワッドLPF回路を示す。
【0113】
図16に示すフィルタ回路は、ΣΔ変調器1、デコーダ4および全差動RCバイククワッドLPF回路を備える。全差動RCバイククワッドLPF回路は、実施例3と同様に、第1段フィルタ回路および第2段フィルタ回路と、第2段フィルタ回路の出力を第1段フィルタ回路の入力側へ帰還させる段間帰還抵抗RF18pおよびRF18nと、を備える。但し、フィルタ回路の第2段については実施例3と同様であるが、フィルタ回路の第1段については、実施例4の全差動RC−LPF回路と同等の構成である点が実施例3の構成とは異なる。
【0114】
フィルタ回路の第1段は、全差動オペアンプAM16、入力抵抗RG16pおよびRG16n、帰還抵抗RF16pおよびRF16n、並びに帰還キャパシタCF16pおよびCF16nを備える。また、フィルタ回路の第2段は、全差動オペアンプAM17、入力抵抗RG17pおよびRG17n、並びに帰還キャパシタCF17pおよびCF17nを備える。
【0115】
なお、入力抵抗RG16p、RG16n、RG17pおよびRG17n、帰還抵抗RF16p、RF16n、並びに、段間帰還抵抗RF18pおよびRF18nは可変抵抗である。ここで、入力抵抗RG17pおよびRG17n、帰還抵抗RF16pおよびRF16n、並びに、段間帰還抵抗RF18pおよびRF18nは、実施例3の構成(図12参照)と同様にΣΔ変調器1の出力に基づき抵抗値の可変制御を行う。但し、入力抵抗RG16pおよびRG16nの抵抗値の可変制御は、実施例3とは異なりΣΔ変調器1の出力に基づかない。また、それぞれのペアは同一の回路構成を持つ。
【0116】
また、段間帰還抵抗RF18pおよびRF18nの接続関係、並びにフィルタ回路の第2段内の接続関係は、実施例のRCバイククワッドLPF回路における接続関係と同等であるので、説明を省略する。また、フィルタ回路の第1段内の接続関係は、実施例4のRCアクティブ−LPF回路における接続関係と同等であるので、説明を省略する。
【0117】
次に、図17を参照して、本発明を全差動RCバイククワッドLPF回路に適用したときの展開的形態(その2)について説明する。図17には、本発明を適用した全差動RCバイククワッドLPF回路の具体的な回路図を示す。
【0118】
図17に示すフィルタ回路は、ΣΔ変調器1、デコーダ6および全差動RCバイククワッドLPF回路を備える。全差動RCバイククワッドLPF回路は、フィルタ回路の第1段目および第2段目と、第2段目の出力を第1段目の入力側へ帰還させる段間帰還抵抗RF18pおよびRF18nと、を備え、図16と同一の回路構成である。また、ΣΔ変調器1として実施例1および実施例2と同等の3段MASHΣΔ変調器を使用する。
【0119】
本実施例では、全差動RCアクティブ−LPF回路において、入力抵抗RG17pおよびRG17n、帰還抵抗RF16pおよびRF16n、並びに、段間帰還抵抗RF18pおよびRF18nを可変抵抗とする。また、3段MASHΣΔ変調器1出力をコード変換したデコーダ6の出力信号に基づき、可変抵抗を構成するユニット抵抗のオン/オフ制御を行う。また、入力抵抗RG16pおよびRG16nについては、ΣΔ変調器1以外の他のコード生成手段を用いて該可変抵抗を構成するユニット抵抗のオン/オフ制御を行う。なお、可変抵抗としては、RG17p、RG17n、RF16p、RF16n、RF18p、RF18nは、実施例2と同様の第3の可変抵抗モジュールを用いれば良い。
【0120】
以上説明したように、本実施例では、3段MASHΣΔ変調器1出力をコード変換したデコーダ6の出力信号に基づき、可変抵抗の可変制御が行われる。すなわち、入力抵抗RG17pおよびRG17n、帰還抵抗RF16pおよびRF16n、並びに、段間帰還抵抗RF18pおよびRF18nを構成するユニット抵抗のオン/オフ制御である。これにより、nビットのデジタルコード入力Codeで2段階のカットオフ周波数を切り換えることが可能となり、結果として、LSIにおける回路のレイアウト面積の増大を抑制できると共に、コストを抑制することができる。
【0121】
また、入力抵抗RG16pおよびRG16nを可変抵抗とし、ΣΔ変調器1の出力を用いずに他のコード生成手段を用いて該可変抵抗を構成するユニット抵抗のオン/オフ制御を行う。これにより、実施例3の(ΣΔ変調器1の出力を用いた)構成と比較して、ΣΔ変調器1による高周波ノイズの影響を抑制することができる。
【実施例6】
【0122】
次に、図18および図19を参照して、本発明を全差動RCアクティブフィルタ(全差動RC−LPF回路)に適用したときの基本的形態(その4)について説明する。図18には、本発明を適用した全差動RC−LPF回路を示し、図19(a),(b)には可変容量モジュールの回路図をそれぞれ示す。
【0123】
図18に示すフィルタ回路は、ΣΔ変調器1、デコーダ4および全差動RCアクティブ−LPF回路を備える。全差動RCアクティブ−LPF回路は、全差動オペアンプAM19、入力抵抗RG19pおよびRG19n、帰還抵抗RF19pおよびRF19n、並びに帰還キャパシタCF19pおよびCF19nを備える。なお、帰還キャパシタCF19pおよびCF19nは可変容量であり、両者は同一の回路構成を持つ。
【0124】
また、帰還抵抗RF19pは全差動オペアンプAM19の正極入力端子および負極出力端子間に接続され、帰還抵抗RF19nは全差動オペアンプAM19の負極入力端子および正極出力端子間に接続される。また、入力抵抗RG19pは正極入力端子INpおよび全差動オペアンプAM19の正極入力端子間に接続され、入力抵抗RG19nは負極入力端子INnおよび全差動オペアンプAM19の負極入力端子間に接続される。
【0125】
また、帰還キャパシタCF19pの第1端子および同極第2端子間は全差動オペアンプAM19の正極入力端子および負極出力端子間に接続される。また、帰還キャパシタCF19pの第1端子および逆極第2端子間は全差動オペアンプAM19の正極入力端子および正極出力端子間に接続される。また、帰還キャパシタCF19nの第1端子および同極第2端子間は全差動オペアンプAM19の負極入力端子および正極出力端子に接続される。またさらに、帰還キャパシタCF19nの第1端子および逆極第2端子間は全差動オペアンプAM19の負極入力端子および負極出力端子間に接続される。
【0126】
このフィルタ回路の構成では、カットオフ周波数は1/(RF19x・CF19x)(x=pまたはn)に比例する。ここで、帰還キャパシタCF19pおよびCF19nを可変容量とし、ΣΔ変調器1出力をコード変換したデコーダ4の出力信号に基づき、該可変容量を構成するユニットキャパシタのオン/オフ制御を行う。これにより、低ビットのデジタルコードで多段階のカットオフ周波数を切り換えることが可能となる。
【0127】
また、可変容量に用いる可変容量モジュールの回路構成を図19に例示する。なお、以下の第1および第2の可変容量モジュールの回路構成は、単なる例示であり、本発明がこれらに限定されるものではない。
【0128】
まず、第1の可変抵抗モジュールは、図19(a)に示すように、第1端子IA、第1端子IAと同極性の同極第2端子OAおよび逆極性の逆極第2端子OBを備えて2個の内部キャパシタ163,164を有する。それぞれの内部キャパシタ163,164の一方の端子は第1端子IAに接続され、一方の内部キャパシタ163の他方の端子は同極第2端子OAに接続され、他方の内部キャパシタ164の他方の端子は逆極第2端子OBに接続される。また、一方の内部キャパシタ163に並列接続されるスイッチ161のオンオフ制御信号は、他方の内部キャパシタ164に並列接続されるスイッチ162のオンオフ制御信号の反転信号である。
【0129】
また、第2の可変抵抗モジュールは、図19(b)に示すように、第1端子IA、第1端子IAと同極性の同極第2端子OAおよび逆極性の逆極第2端子OBを備えて、それぞれ同数個(4個)の内部キャパシタ181〜184及び内部キャパシタ185〜188をそれぞれ持つ2個の内部可変キャパシタ群を有する。各内部可変キャパシタ群において、該内部可変キャパシタ群を構成する内部キャパシタ181〜184及び内部キャパシタ185〜188はそれぞれ直列接続され、それぞれの内部キャパシタ181〜188に固有のスイッチ171〜178が並列接続される。また、一方の内部可変キャパシタ群において一方の端子は第1端子IAに接続され、他の端子は同極第2端子OAに接続される。また、他方の内部可変キャパシタ群において一方の端子は第1端子IAに接続され、他の端子は逆極第2端子OBに接続される。なお、一方の内部可変キャパシタ群に並列接続されるスイッチ175〜178のオンオフ制御信号は、他方の内部可変キャパシタ群に並列接続されるスイッチ171〜174のオンオフ制御信号の反転信号である。
【0130】
図18に示した本発明を全差動RCアクティブフィルタ(全差動RCアクティブ−LPF回路)に適用したときの基本的形態(その4)は、実施例1と同様の展開的形態が可能である。即ち、ΣΔ変調器1として3段MASHΣΔ変調器を使用し、可変容量に第2の可変容量モジュールを用いる構成である。
【0131】
この場合、3段MASHΣΔ変調器1出力をコード変換したデコーダ5の出力信号に基づき、可変容量、即ち帰還キャパシタCF19pおよびCF19nを構成するユニットキャパシタのオン/オフ制御が行われる。これにより、nビットのデジタルコード入力Codeで2段階のカットオフ周波数を切り換えることが可能となる。またその結果として、LSIにおける回路のレイアウト面積の増大を抑制できると共に、コストを抑制することができる。
【0132】
次に、本発明を全差動RCアクティブフィルタに適用した場合(実施例1〜実施例6)の効果を確認するため、シミュレーション実験を行った。シミュレーション実験は、実施例2の全差動RCバイククワッドLPF回路、即ち本発明を全差動RCバイククワッドLPF回路に適用したときの展開的形態(図13を参照)で行った。また全差動オペアンプは理想モデルを適用した。
【0133】
3段MASHΣΔ変調器1を使用して、nビット(n=9)のデジタルコード入力Codeの値Hを16,32,64,128,256と変化させ、図20に示す周波数特性を得た。デジタルコード入力Codeの値H=16,32,64,128,256に対するそれぞれの周波数特性は、図20中の特性A,特性B,特性C,特性D,特性Eとなった。
【0134】
この適用例では、nビットのデジタルコード入力Codeで2=512段階のカットオフ周波数を切り換えることが可能である。実験結果からは、デジタルコード入力Codeの値Hを16から256まで約250段階変化させることで、カットオフ周波数を第1桁以上の範囲(図20では10[Hz]のオーダーおよびその近傍の範囲)で切り替え可能であることが確認できた。
【実施例7】
【0135】
次に、図21を参照して、本発明をパッシブフィルタ回路に適用したときの基本的形態について説明する。図21(a)には抵抗を可変とする回路図を、図21(b)には容量を可変とする回路図をそれぞれ示す。
【0136】
まず、抵抗を可変として、パッシブフィルタ回路のカットオフ周波数を切り換える回路構成について説明する。図21(a)に示すフィルタ回路は、ΣΔ変調器1、デコーダ4およびパッシブフィルタ回路17を備える。パッシブフィルタ回路17は、1次ローパスフィルタであり、可変抵抗RP1およびキャパシタCP1を備える。
【0137】
このフィルタ回路の構成では、カットオフ周波数は1/(RP1・CP1)に比例するから、可変抵抗RP1を構成するユニット抵抗のオン/オフ制御を、ΣΔ変調器1出力をコード変換したデコーダ4の出力信号に基づき行うことにより、低ビットのデジタルコードで多段階のカットオフ周波数を切り換えることが可能となる。
【0138】
次に、キャパシタを可変として、パッシブフィルタ回路のカットオフ周波数を切り換える回路構成について説明する。図21(b)に示すフィルタ回路は、ΣΔ変調器1、デコーダ4およびパッシブフィルタ回路18を備える。パッシブフィルタ回路18は、1次ローパスフィルタであり、抵抗RP2および可変容量キャパシタCP2を備える。
【0139】
このフィルタ回路の構成では、カットオフ周波数は1/(RP2・CP2)に比例するから、可変容量キャパシタCP2を構成するユニットキャパシタのオン/オフ制御を、ΣΔ変調器1出力をコード変換したデコーダ4の出力信号に基づき行うことにより、低ビットのデジタルコードで多段階のカットオフ周波数を切り換えることが可能となる。
【実施例8】
【0140】
次に、図22および図23を参照して、実施例1のフィルタ回路、即ち本発明を全差動RCアクティブ−LPF回路に適用したときの基本的形態(図5参照)に、ミキサ機能を追加したフィルタ回路について説明する。図22(a)には本実施例の全差動RCアクティブ−LPF回路を示す。また図23には、本実施例の全差動RCアクティブ−LPF回路が適用される一般的な無線通信受信回路を示す。
【0141】
図22(a)に示すフィルタ回路は、ΣΔ変調器1、掛け算器MX1、デコーダ(変換器)7aおよび7b並びに全差動RCアクティブ−LPF回路を備える。全差動RCアクティブ−LPF回路は、全差動オペアンプAM20、入力抵抗RG20pおよびRG20n、帰還抵抗RF20pおよびRF20n、並びに帰還キャパシタCF20pおよびCF20nを備え、図7と同等の回路構成である。なお、図22では、ΣΔ変調器1を特に限定していないが、例えば実施例1と同等の3段MASHΣΔ変調器を使用すれば良い。
【0142】
また、本実施例では、全差動RCアクティブ−LPF回路において、入力抵抗RG20pおよびRE20n並びに帰還抵抗RF20pおよびRF20nを可変抵抗としている。ここで、帰還抵抗RF20pおよびRF20nについては、ΣΔ変調器1出力をコード変換したデコーダ7aの出力信号に基づき、該可変抵抗を構成するユニット抵抗のオン/オフ制御を行う。また、入力抵抗RG20pおよびRG20nについては、ΣΔ変調器1出力を掛け算器MX1で周波数変換した後の信号をデコーダ7bでコード変換し、該デコーダ7aの出力信号に基づき可変抵抗を構成するユニット抵抗のオン/オフ制御を行う。なお、可変抵抗としては、図6に例示した第1または第2の可変抵抗モジュールの何れを用いても良い。
【0143】
ここで、掛け算器MX1による周波数変換機能について説明しておく。非特許文献2「RF MICROELECTRONICS」のFig6.15(p181)にあるように、入力信号に、ある周波数の信号(LO)により反転/非反転を切り替えることで周波数変換(ミキサ)動作をさせることができる。図22(a)では、掛け算器MX1により、ΣΔ変調器1出力に、所定周波数で反転/非反転を繰り返すミキシング信号VLOを掛け合わせている。
【0144】
これにより、図22(c)の信号強度の周波数特性に示すように、周波数F_clkに信号強度を持っていたフィルタ入力を、図22(d)の信号強度の周波数特性に示すように、炉波後のフィルタ出力では信号強度を持つ周波数が変化することとなる。このようにして、カットオフ周波数可変のフィルタ回路に周波数変換機能を追加することができる。
【0145】
このフィルタ回路の構成では、カットオフ周波数は(1/RF20x・CF20x)(x=pまたはn)に比例する。ここで、帰還抵抗RF20pおよびRF20nを可変抵抗とし、ΣΔ変調器1出力をコード変換したデコーダ7aの出力信号に基づき、該可変抵抗を構成するユニット抵抗のオン/オフ制御を行う。これにより、低ビットのデジタルコードで多段階のカットオフ周波数を切り換えることが可能となる。
【0146】
また、(RF20x/RG20x)(x=pまたはn)に比例する利得については、入力抵抗RG20pおよびRG20nを可変抵抗とし、ΣΔ変調器1の出力を用いずに他のコード生成手段を用いて該可変抵抗を構成するユニット抵抗のオン/オフ制御を行う。これにより、実施例1の(ΣΔ変調器1の出力を用いた)構成と比較して、利得特性についてΣΔ変調器1による高周波ノイズの影響を抑制することができる。
【0147】
次に、本実施例の全差動RCアクティブ−LPF回路が適用される一般的な無線通信受信回路の構成について簡単に説明しておく。図23に例示する無線受信回路は、アンテナ201、低雑音アンプ(LNA)202、ミキサ(MIX)203および204、シフタ(SFT)205、局部発振器(VCO)206、ローパスフィルタ(LPF)207および208、並びに可変利得アンプ(VGA)209および210を備える。
【0148】
低雑音アンプ(LNA)202では、アンテナ201で受信したRF信号を微弱な信号でも雑音に埋もれることなく増幅され、大信号も歪み無く増幅される。また、ミキサ(MIX)203および204では、局部発振器206の局部発信周波信号をシフタ205でシフトしたローカル信号に基づき、低雑音アンプ202出力のRF信号を中間周波信号に変換する。また、ローパスフィルタ207および208では、受信すべきチャネルを選択する。さらに、可変利得アンプ209および210では、信号を復調可能なレベルまで増幅する。
【0149】
本実施例の全差動RCアクティブ−LPF回路は、ローパスフィルタ207および208に適用される。この適用により、無線通信受信回路において、ローパスフィルタ207および208のカットオフ周波数を広い範囲で細かく切り替える必要がある場合であっても、より少ないユニット素子でフィルタ特性を決定している素子(帰還抵抗)を可変とすることができ、LSIにおける回路のレイアウト面積の増大を抑制できると共に、コストを抑制することができる。
【実施例9】
【0150】
次に、図24を参照して、本発明のフィルタ回路を無線受信回路に適用したときの形態について説明する。図24には本実施例の無線受信回路を示す。
【0151】
図24に示す無線受信回路は、アンテナ、低雑音アンプ(LNA)222、ミキサ(MIX)223および224、シフタ(SFT)225、局部発振器(VCO)226、ローパスフィルタ(LPF)220、可変利得アンプ(VGA)229および230、並びに分周器(DIV)227を備える。
【0152】
ここで、ローパスフィルタ(LPF)220は、ΣΔ変調器1、デコーダ4並びにフィルタ(LPF)回路2aおよび2bを備える。なお、フィルタ(LPF)回路2aおよび2bは、該フィルタ(LPF)回路2aおよび2bのフィルタ特性(カットオフ周波数)を決定する可変素子3aおよび3bを持つ。フィルタ(LPF)回路2aおよび2bは、上述した実施例1〜実施例7またはその変形の何れの構成であっても良い。可変素子3aおよび3bは抵抗またはキャパシタである。
【0153】
ΣΔ変調器1を動作させる動作クロックCLKとして、局部発振器(VCO)226の出力である局部発信周波信号を用いる。より具体的には、局部発信周波信号を分周器(DIV)227により所定分周比で分周した信号を用いる。なお、局部発振器(VCO)226の出力である局部発信周波信号を(分周器(DIV)227を介さず)そのまま動作クロックCLKとして使用しても良い。
【0154】
またさらに、ΣΔ変調器1を動作させる動作クロックCLKとして、ミキサ(MIX)223または224で用いるローカル信号、即ち局部発振器226の局部発信周波信号をシフタ225で分周したローカル信号を用いる構成とすることも可能である。
【0155】
また、nビットのデジタルコード入力Codeは図示しないフィルタ特性(カットオフ周波数)設定手段等から供給される。
【0156】
このような本発明のフィルタ回路の無線受信回路への適用により、ローパスフィルタ220のカットオフ周波数を広い範囲で細かく切り替える必要がある場合であっても、より少ないユニット素子でフィルタ特性を決定している素子(帰還抵抗)を可変とすることができ、LSIにおける回路のレイアウト面積の増大を抑制できると共に、コストを抑制することができる。
【実施例10】
【0157】
次に、図25を参照して、本発明のフィルタ回路を無線送信回路に適用したときの形態について説明する。図25には本実施例の無線送信回路の図を示す。
【0158】
図25に示す無線送信回路は、アンテナ241、パワーアンプ(PA)242、ミキサ(MIX)243および244、シフタ(SFT)245、局部発振器(VCO)246、ローパスフィルタ(LPF)240、可変利得アンプ(VGA)249および250、並びに分周器(DIV)247を備える。
【0159】
ここで、ローパスフィルタ(LPF)240は、ΣΔ変調器1、デコーダ4並びにフィルタ(LPF)回路2aおよび2bを備える。なお、フィルタ(LPF)回路2aおよび2bは、該フィルタ(LPF)回路2aおよび2bのフィルタ特性(カットオフ周波数)を決定する可変素子3aおよび3bを持つ。フィルタ(LPF)回路2aおよび2bは、上述した実施例1〜実施例7またはその変形の何れの構成であっても良い。可変素子3aおよび3bは抵抗またはキャパシタである。
【0160】
ΣΔ変調器1を動作させる動作クロックCLKとして、局部発振器(VCO)246の出力である局部発信周波信号を用いる。より具体的には、局部発信周波信号を分周器(DIV)247により所定分周比で分周した信号を用いる。なお、局部発振器(VCO)246の出力である局部発信周波信号を(分周器(DIV)247を介さず)そのまま動作クロックCLKとして使用しても良い。
【0161】
またさらに、ΣΔ変調器1を動作させる動作クロックCLKとして、ミキサ(MIX)243または244で用いるローカル信号、即ち局部発振器246の局部発信周波信号をシフタ245で分周したローカル信号を用いる構成とすることも可能である。
【0162】
また、nビットのデジタルコード入力Codeは図示しないフィルタ特性(カットオフ周波数)設定手段等から供給される。
【0163】
このような本発明のフィルタ回路の無線送信回路への適用により、ローパスフィルタ240のカットオフ周波数を広い範囲で細かく切り替える必要がある場合であっても、より少ないユニット素子でフィルタ特性を決定している素子(帰還抵抗)を可変とすることができ、LSIにおける回路のレイアウト面積の増大を抑制できると共に、コストを抑制することができる。
【0164】
(付記1) デジタルコード入力をシグマデルタ変調するΣΔ変調器を有し、
当該フィルタ回路のフィルタ特性を決定する少なくとも1種の素子の素子値を、前記ΣΔ変調器の出力、或いは該ΣΔ変調器出力をコード変換する変換器を介した信号に基づき変化させることを特徴とするフィルタ回路。
【0165】
(付記2) 前記フィルタ特性は時定数または利得であることを特徴とする付記1に記載のフィルタ回路。
【0166】
(付記3) 付記1に記載のフィルタ回路はアクティブフィルタであって、
前記フィルタ特性を時定数として、該時定数を決定する抵抗の抵抗値を変化させることを特徴とする付記1に記載のフィルタ回路。
【0167】
(付記4) 付記1に記載のフィルタ回路はアクティブフィルタであって、
前記フィルタ特性を時定数として、該時定数を決定するキャパシタの容量値を変化させることを特徴とする付記1に記載のフィルタ回路。
【0168】
(付記5) 付記1に記載のフィルタ回路はパッシブフィルタであって、
前記フィルタ特性を時定数として、該時定数を決定する抵抗の抵抗値を変化させることを特徴とする付記1に記載のフィルタ回路。
【0169】
(付記6) 付記1に記載のフィルタ回路はパッシブフィルタであって、
前記フィルタ特性を時定数として、該時定数を決定するキャパシタの容量値を変化させることを特徴とする付記1に記載のフィルタ回路。
【0170】
(付記7) 付記1に記載のフィルタ回路は全差動アクティブフィルタであって、
前記フィルタ特性を時定数として、該時定数を決定する抵抗の抵抗値を変化させることを特徴とする付記1に記載のフィルタ回路。
【0171】
(付記8) 前記フィルタ特性を利得として、該利得のみを決定する抵抗の抵抗値を変化させることを特徴とする付記7に記載のフィルタ回路。
【0172】
(付記9) 前記ΣΔ変調器の出力に、所定周波数で極性が反転する極性反転信号を掛け合わせる掛け算器を有し、
利得のみを決定する抵抗の抵抗値を、前記掛け算器の出力、或いは該掛け算器出力をコード変換する変換器を介した信号に基づき変化させることを特徴とする付記8に記載のフィルタ回路。
【0173】
(付記10) 抵抗値を変化させる抵抗は、第1端子、前記第1端子と同極性の同極第2端子および逆極性の逆極第2端子を備えて2個の内部抵抗を有し、
それぞれの内部抵抗の一方の端子はスイッチを介して前記第1端子に接続され、一方の内部抵抗の他方の端子は同極第2端子に接続され、他方の内部抵抗の他方の端子は逆極第2端子に接続され、一方の内部抵抗に接続されるスイッチのオンオフ制御信号は、他方の内部抵抗に接続されるスイッチのオンオフ制御信号の反転信号であることを特徴とする付記7〜付記9の何れかに記載のフィルタ回路。
【0174】
(付記11) 抵抗値を変化させる抵抗は、第1端子、前記第1端子と同極性の同極第2端子および逆極性の逆極第2端子を備えて、それぞれ同数個の内部抵抗を持つ2個の内部可変抵抗群を有し、
各内部可変抵抗群においてそれぞれの内部抵抗の一方の端子はスイッチを介して前記第1端子に接続され、一方の内部可変抵抗群においてそれぞれの内部抵抗の他方の端子は同極第2端子に接続され、他方の内部可変抵抗群においてそれぞれの内部抵抗の他方の端子は逆極第2端子に接続され、複数のスイッチのうち1つがオンすることを特徴とする付記7〜付記9の何れかに記載のフィルタ回路。
【0175】
(付記12) 抵抗値を変化させる抵抗は、第1端子、前記第1端子と同極性の同極第2端子および逆極性の逆極第2端子を備え、
前記抵抗は2×n+1個(nは正整数)の内部抵抗を有し、
各内部抵抗は、抵抗値がRであり、一方の端子は前記第1端子に接続され、他方の端子は第1制御信号でオンオフ制御される第1スイッチを介して前記同極第2端子に、また前記第1制御信号の反転信号である第2制御信号でオンオフ制御される第2スイッチを介して前記逆極第2端子に接続され、
それぞれの内部抵抗は、該内部抵抗毎に独立した前記第1及び第2の制御信号でオンオフ制御されることを特徴とする付記7〜付記9の何れかに記載のフィルタ回路。
【0176】
(付記13) 少なくともミキサ回路と、付記1〜付記12の何れかに記載のフィルタ回路を備えた送信器であって、
局部発振器の出力、或いは該局部発振器の出力を分周した信号を前記ΣΔ変調器を動作させる基準クロック信号とすること特徴とする送信器。
【0177】
(付記14) 少なくともミキサ回路と、付記1〜付記12の何れかに記載のフィルタ回路を備えた受信器であって、
局部発振器の出力、或いは該局部発振器の出力を分周した信号を前記ΣΔ変調器を動作させる基準クロック信号とすること特徴とする受信器。
【0178】
(付記15) 少なくともミキサ回路と、付記1〜付記12の何れかに記載のフィルタ回路を備えた送信器であって、
前記ミキサ回路のローカル信号、或いは該ミキサ回路のローカル信号を分周した信号を前記ΣΔ変調器を動作させる基準クロック信号とすること特徴とする送信器。
【0179】
(付記16) 少なくともミキサ回路と、付記1〜付記12の何れかに記載のフィルタ回路を備えた受信器であって、
前記ミキサ回路のローカル信号、或いは該ミキサ回路のローカル信号を分周した信号を前記ΣΔ変調器を動作させる基準クロック信号とすること特徴とする受信器。
【符号の説明】
【0180】
1 ΣΔ変調器(3段MASHΣΔ変調器)
2,2a,2b フィルタ回路
3,3a,3b 可変素子
4〜6,7a,7b デコーダ(変換器)
17,18 パッシブフィルタ回路
101,102,111〜118,131〜148,161,162,171〜178 スイッチ
103,104,121〜128,151〜159 内部抵抗
163,164,181〜188 内部キャパシタ
201,241 アンテナ
202,222 低雑音アンプ(LNA)
203,204,223,224,243,244 ミキサ(MIX)
205,225,245 シフタ(SFT)
206,226,246 局部発振器(VCO)
207,208,220,240 ローパスフィルタ(LPF)
209,210,229,230,249,250 可変利得アンプ(VGA)
227,247 分周器(DIV)
242 パワーアンプ(PA)
311〜31n…抵抗
321〜32n…ユニットキャパシタ
AM,AM1〜AM115 オペアンプ
AM10〜AM20 全差動オペアンプ
RG,RG1〜RG4 入力抵抗
RG10p〜RG20p,RG10n〜RG20n 入力抵抗
RF,RF1〜RF4 帰還抵抗
RF10p〜RF20p,RF10n〜RF20n 帰還抵抗
VR1 第1の可変抵抗モジュール
VR2 第2の可変抵抗モジュール
VR3 第3の可変抵抗モジュール
CF,CF1〜CF2 帰還キャパシタ
CF10p〜CF20p,CF10n〜CF20n 帰還キャパシタ
CG3 入力キャパシタ
CP1 キャパシタ
CP2 可変容量キャパシタ
RP2 抵抗
RP1 可変抵抗
MX1 掛け算器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
デジタルコード入力をシグマデルタ変調するΣΔ変調器を有し、
当該フィルタ回路のフィルタ特性を決定する少なくとも1種の素子の素子値を、前記ΣΔ変調器の出力、或いは該ΣΔ変調器出力をコード変換する変換器を介した信号に基づき変化させることを特徴とするフィルタ回路。
【請求項2】
前記フィルタ特性は時定数または利得であることを特徴とする請求項1に記載のフィルタ回路。
【請求項3】
請求項1に記載のフィルタ回路はアクティブフィルタであって、
前記フィルタ特性を時定数として、該時定数を決定する抵抗の抵抗値を変化させることを特徴とする請求項1に記載のフィルタ回路。
【請求項4】
請求項1に記載のフィルタ回路はアクティブフィルタであって、
前記フィルタ特性を時定数として、該時定数を決定するキャパシタの容量値を変化させることを特徴とする請求項1に記載のフィルタ回路。
【請求項5】
前記フィルタ特性を利得として、該利得のみを決定する抵抗の抵抗値を変化させることを特徴とする請求項1に記載のフィルタ回路。
【請求項6】
前記ΣΔ変調器の出力に、所定周波数で極性が反転する極性反転信号を掛け合わせる掛け算器を有し、
利得のみを決定する抵抗の抵抗値を、前記掛け算器の出力、或いは該掛け算器出力をコード変換する変換器を介した信号に基づき変化させることを特徴とする請求項5に記載のフィルタ回路。
【請求項7】
抵抗値を変化させる抵抗は、第1端子、前記第1端子と同極性の同極第2端子および逆極性の逆極第2端子を備えて2個の内部抵抗を有し、
それぞれの内部抵抗の一方の端子はスイッチを介して前記第1端子に接続され、一方の内部抵抗の他方の端子は同極第2端子に接続され、他方の内部抵抗の他方の端子は逆極第2端子に接続され、一方の内部抵抗に接続されるスイッチのオンオフ制御信号は、他方の内部抵抗に接続されるスイッチのオンオフ制御信号の反転信号であることを特徴とする請求項5又は6に記載のフィルタ回路。
【請求項8】
抵抗値を変化させる抵抗は、第1端子、前記第1端子と同極性の同極第2端子および逆極性の逆極第2端子を備えて、それぞれ同数個の内部抵抗を持つ2個の内部可変抵抗群を有し、
各内部可変抵抗群においてそれぞれの内部抵抗の一方の端子はスイッチを介して前記第1端子に接続され、一方の内部可変抵抗群においてそれぞれの内部抵抗の他方の端子は同極第2端子に接続され、他方の内部可変抵抗群においてそれぞれの内部抵抗の他方の端子は逆極第2端子に接続され、複数のスイッチのうち1つがオンすることを特徴とする請求項5又は6に記載のフィルタ回路。
【請求項9】
抵抗値を変化させる抵抗は、第1端子、前記第1端子と同極性の同極第2端子および逆極性の逆極第2端子を備え、
前記抵抗は2×n+1個(nは正整数)の内部抵抗を有し、
各内部抵抗は、抵抗値がRであり、一方の端子は前記第1端子に接続され、他方の端子は第1制御信号でオンオフ制御される第1スイッチを介して前記同極第2端子に、また前記第1制御信号の反転信号である第2制御信号でオンオフ制御される第2スイッチを介して前記逆極第2端子に接続され、
それぞれの内部抵抗は、該内部抵抗毎に独立した前記第1及び第2の制御信号でオンオフ制御されることを特徴とする請求項5又は6に記載のフィルタ回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【公開番号】特開2011−146861(P2011−146861A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−5007(P2010−5007)
【出願日】平成22年1月13日(2010.1.13)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】