説明

フィルムの間欠搬送装置及びフィルムの間欠搬送方法

【課題】間欠搬送するフィルムにキズ等を生じさせることなく、そのフィルムの搬送速度を高める。
【解決手段】フィルムの間欠搬送装置は、フィルム繰出し機構22と、そのフィルムを蓄えて短時間の内に排出する繰出しアキュームレート機構23と、排出された量のフィルムを排出と同時に短時間の内に蓄える巻取りアキュームレート機構43と、そのフィルムを常時一定量で巻取るフィルム巻取り機構42とを備える。繰出しアキュームレート機構は、第一及び第二固定ローラ24,25と、その中間を通過して移動する上流側可動ローラ26と、フィルムと上流側可動ローラとの間に摩擦を生じさせない上流側摩擦防止手段27とを備え、巻取りアキュームレート機構43は、第三及び第四固定ローラ44,45と、その中間を通過して移動する下流側可動ローラ46と、フィルムと下流側可動ローラ46との間に摩擦を生じさせない下流側摩擦防止手段27とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、長尺状のフィルムを間欠的に搬送するフィルムの間欠搬送装置及びフィルムの間欠搬送方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
印刷業界等にあっては、印刷の対象物であるフィルムを搬送した後に一旦静止させ、その静止したフィルムに所定の印刷をした後に再び搬送し、再び静止させたフィルムに再び印刷するようなことが行われている。このような印刷は、太陽電池やフラットパネルディスプレイ(FPD)やMLCC(Monolithic Ceramic Chip Capacitors)等の製造においても用いられるようになっており、フィルムに印刷等の所定の処理を繰り返して行う場合には、そのフィルムを一定の間隔で間欠的に搬送することが知られている。そして、このようにフィルムを間欠的に搬送する装置として、従来、所定量のフィルムを繰出す繰出し側と、その繰出し側から離間して設けられその繰出し側から繰出されて印刷等の所定の処理がなされた所定量のフィルムを巻取る巻取り側とを備えたフィルムの間欠搬送装置が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
このフィルムの間欠搬送装置では、その繰出し側に印刷の対象物であるフィルムが巻回された繰出しフィルムロールと、その繰出しフィルムロールからフィルムを引き出して繰出す巻出ローラが設けられ、その巻取り側には、巻出ローラから繰出されたフィルムを巻取る巻取ローラと、実際に巻取られたフィルムから成る巻取りフィルムロールとを備える。このようなフィルムの間欠搬送装置では、繰出し側における繰出しフィルムロールから引き出されたフィルムは巻出ローラにより繰出され、所定の印刷等が成された後に巻取り側における巻取ローラを経て、実際に巻取られて巻取りフィルムロールとなる。そして、巻出ローラ及び巻取ローラはモータによって間欠駆動され、これとともに、その繰出し側における繰出しフィルムロールや、巻取り側における巻取りフィルムロールも同時に回転させている。このようにして、従来のフィルムの間欠搬送装置では、フィルムを間欠的に搬送するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−3039号公報(段落番号「0003」、図1、図7)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記フィルムの間欠搬送装置では、巻出ローラ及び巻取ローラとともに、繰出しフィルムロールや、巻取りフィルムロールもモータにより間欠的に回転させているので、その繰出しフィルムロールや巻取りフィルムロールの間欠的な回転を速やかに行うことができずに、間欠搬送するフィルムの搬送速度を高めるには限界があるという未だ解決すべき課題が残存していた。
【0006】
即ち、予めフィルムはロール状に巻回されて繰出し側において準備されるけれども、その繰出しフィルムロールの大きさが、例えば、幅が1m〜1.6mのフィルムであって、その外径が40〜60cmのものであるような場合には、その繰出しフィルムロールの重量は100kgを越えるようなものとなる。また、このような繰出しフィルムロールから繰出されるフィルムからなる巻取り側における巻取りフィルムロールにあっても、最終的には100kgを越えるようなものとなる。そして、フィルムの搬送速度を高めるためには、モータによるそれらの回転と停止を速やかに繰り返して行うことが必要となるけれども、繰出しフィルムロールや巻取りフィルムロールの重量からして大きな慣性が生じるため、例え、駆動力が著しく大きな巨大なモータを用いていたとしても、それらの回転における急加速及び急減速には所定の限界があり、間欠搬送するフィルムの搬送速度を高めるには限界があった。
【0007】
また、繰出しフィルムロールからフィルムを引き出して繰出す巻出ローラや、巻取りフィルムロールにそのフィルムを導く巻取ローラにあっても、それぞれ慣性を有する。このため、巻出ローラや巻取ローラにあっても、停止した状態から急に回転させることや、回転している状態から直ちに停止させることは困難となる。よって、巻出ローラや巻取ローラの外周に掛け回された状態で間欠搬送されるフィルムの搬送速度が高まると、急加速や急減速が困難なローラの外周における速度とそこに掛け回されて急加速と急減速が成されるフィルムの搬送速度との間に差が生じ、ローラの外周にそのフィルムが摺れて搬送されるような摩擦が生じて、その摩擦によりフィルムにキズが生じることもある。
【0008】
本発明の目的は、間欠搬送するフィルムにキズ等を生じさせることなく、そのフィルムの搬送速度を十分に高め得るフィルムの間欠搬送装置及びフィルムの間欠搬送方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のフィルムの間欠搬送装置は、フィルムを常時一定量で繰出すフィルム繰出し機構と、フィルム繰出し機構から繰出されるフィルムを徐々に蓄えて短時間の内に排出する繰出しアキュームレート機構と、繰出しアキュームレート機構により短時間の内に排出された量のフィルムを繰出しアキュームレート機構におけるフィルムの排出と同時に短時間の内に蓄える巻取りアキュームレート機構と、巻取りアキュームレート機構から徐々に排出されるフィルムを常時一定量で巻取るフィルム巻取り機構とを備えたものである。
【0010】
そして、繰出しアキュームレート機構は、フィルムの搬送経路に沿って設けられた第一及び第二固定ローラと、第一及び第二固定ローラの中間を通過してフィルムの搬送経路に直交する方向に移動可能な上流側可動ローラと、上流側可動ローラに掛け回されたフィルムと上流側可動ローラとの間に摩擦を生じさせない上流側摩擦防止手段とを備え、巻取りアキュームレート機構は、フィルムの搬送経路に沿って設けられた第三及び第四固定ローラと、第三及び第四固定ローラの中間を通過してフィルムの搬送経路に直交する方向に移動可能な下流側可動ローラと、下流側可動ローラに掛け回されたフィルムと下流側可動ローラとの間に摩擦を生じさせない下流側摩擦防止手段とを備えたことを特徴とする。
【0011】
この場合、第二及び第三固定ローラのいずれか一方又は双方が掛け回されたフィルムを吸着して回転可能に構成され、第二及び第三固定ローラのフィルムを吸着するいずれか一方又は双方を回転させる巻取り用サーボモータを備えるようにしても良い。そして、第二及び第三固定ローラのいずれか一方がフィルムを吸着して回転可能に構成された場合、第二及び第三固定ローラのいずれか他方に掛け回されたフィルムと第二及び第三固定ローラのいずれか他方との間に摩擦を生じさせない搬送側摩擦防止手段とを更に備えることが好ましい。その一方、第二及び第三固定ローラに掛け回されたフィルムと第二及び第三固定ローラとの間に摩擦を生じさせない搬送側摩擦防止手段を更に備えることもできる。
【0012】
また、摩擦防止手段は、圧縮エアをローラに供給してローラに掛け回されたフィルムをローラの外周から浮上させる圧縮エア供給ポンプであることが好ましく、擦防止手段は、回転するローラの外周における速度がローラに掛け回されたフィルムの搬送速度に一致するようにローラを回転させるサーボモータであっても良い。
【0013】
本発明のフィルムの間欠搬送方法は、フィルム繰出し機構により常時一定量で繰出されるフィルムを徐々に蓄えて短時間の内に排出することを繰出しアキュームレート機構により繰り返し、繰出しアキュームレート機構により短時間の内に排出された量のフィルムを繰出しアキュームレート機構の排出と同時に短時間の内に巻取りアキュームレート機構により蓄え、巻取りアキュームレート機構が蓄えたフィルムを繰出しアキュームレート機構の次回の排出時までに常時一定量で排出してフィルム巻取り機構により巻取るフィルムの間欠搬送方法である。
【0014】
その繰出しアキュームレート機構におけるフィルムの蓄えは、フィルムの搬送経路に沿って設けられた第一及び第二固定ローラから、第一及び第二固定ローラの中間におけるフィルムを上流側可動ローラの外周との間に摩擦を生じさせることなく上流側可動ローラの外周に掛け回して第一及び第二固定ローラの中間を通過してフィルムの搬送経路に直交する方向に上流側可動ローラを離間させることにより行われ、繰出しアキュームレート機構におけるフィルムの排出は、フィルムが掛け回された上流側可動ローラをフィルムと上流側可動ローラの外周との間に摩擦を生じさせることなく第一及び第二固定ローラに接近させることにより行われる。
【0015】
また、巻取りアキュームレート機構におけるフィルムの蓄えは、フィルムの搬送経路に沿って設けられた第三及び第四固定ローラから、第三及び第四固定ローラの中間におけるフィルムを下流側可動ローラの外周との間に摩擦を生じさせることなく下流側可動ローラの外周に掛け回して第三及び第四固定ローラの中間を通過してフィルムの搬送経路に直交する方向に下流側可動ローラを離間させることにより行われ、巻取りアキュームレート機構におけるフィルムの排出は、フィルムが掛け回された下流側可動ローラをフィルムと下流側可動ローラの外周との間に摩擦を生じさせることなく第三及び第四固定ローラに接近させることにより行われることを特徴とする。
【0016】
ここで、繰出しアキュームレート機構によるフィルムの排出時に、排出されるフィルムを第二及び第三固定ローラのいずれか一方又は双方の外周に吸着させ、フィルムを吸着した外周における速度がフィルムの排出速度と同一になるように第二及び第三固定ローラのいずれか一方又は双方を回転させることが好ましい。そして、第二及び第三固定ローラのいずれか一方にフィルムを吸着させて繰出しアキュームレート機構によるフィルムの排出時に回転させる場合、第二及び第三固定ローラのいずれか他方の外周に掛け回されたフィルムとその第二及び第三固定ローラのいずれか他方の外周との間に摩擦を生じさせないことが好ましい。
【0017】
一方、第二及び第三固定ローラの外周に掛け回されたフィルムと第二及び第三固定ローラの外周との間に摩擦を生じさせないようにしても良い。
【0018】
そして、ローラの外周からそれぞれ吹き出すエアにより掛け回されたフィルムをそのローラの外周から浮上させて、フィルムとローラの外周との間に摩擦を生じさせないことが好ましい。一方、ローラの外周における速度がローラの外周に掛け回されたフィルムの搬送速度に一致するようにそのローラを回転させて、フィルムとローラの外周との間に摩擦を生じさせないこともできる。
【発明の効果】
【0019】
本発明のフィルムの間欠搬送装置及びフィルムの間欠搬送方法では、所定量のフィルムを蓄えた繰出しアキュームレート機構がその蓄えたフィルムを短時間の内に排出すると同時に、その繰出しアキュームレート機構により排出された量のフィルムを巻取りアキュームレート機構が短時間の内に蓄えることにより、繰出し装置と巻取り装置の間にフィルムを搬送する。このため、フィルムを搬送する際に、比較的重量のある繰出し装置における繰出しフィルムロール及び巻取り装置における巻取りフィルムロールの回転を急加速及び急減速させることはない。そして、一対の固定ローラに対して可動ローラを離間又は接近させることによりフィルムの蓄えと排出を行うので、フィルムが掛け回された可動ローラ等において、その可動ローラ等に対してその掛け回されたフィルムは急加速及び急減速することになるけれども、掛け回されたフィルムと可動ローラとの間に摩擦を生じさせないようにしたので、その摩擦に起因するキズがフィルムに生じるような事態を回避しつつ、間欠搬送するフィルムの搬送速度を著しく高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明実施形態のフィルムの間欠搬送装置を示す正面図である。
【図2】その間欠搬送装置の繰出し装置と巻取り装置の間にフィルムが搬送される直前の状態を示す正面図である。
【図3】その間欠搬送装置の繰出し装置と巻取り装置の間にフィルムが搬送された直後の状態を示す正面図である。
【図4】その可動ローラの断面構成図である。
【図5】図4のA−A線断面図である。
【図6】その第二固定ローラと第三固定ローラの図5に対応する断面図である。
【図7】その第四固定ローラの断面構成図である。
【図8】別の可動ローラの構成を示す図4に対応する断面図である。
【図9】図8のC−C線断面図である。
【図10】サーボモータにより回転させる可動ローラを示す図4に対応する図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
次に、本発明を実施するための最良の形態を図面に基づいて説明する。
【0022】
図1に本発明のフィルムの間欠搬送装置10を示す。図1において、互いに直交するX、Y及びZの3軸を設定し、X軸が略水平前後方向、Y軸が略水平横方向、Z軸が鉛直方向に延びるものとし、この間欠搬送装置10の構成について説明する。本発明のフィルムの間欠搬送装置10は、Y軸方向に伸びて細長い水平な基台11の一端側に設けられて所定量のフィルム12を繰出す繰出し装置20と、その繰出し装置20とY軸方向に離間して基台11の他端側に設けられその繰出し装置20から繰出された所定量のフィルム12を巻取る巻取り装置40と、それらを制御するコントローラ18とを備える。基台11は複数の取付け脚11aを介して水平に設置され、繰出し装置20と巻取り装置40の間には印刷機等の所定の処理機14が設けられる。
【0023】
基台11の一端側と他端側にはガイドレール13がX軸方向に伸びて設けられ、それらのガイドレール13を介して繰出し装置20と巻取り装置40がX軸方向に移動可能にそれぞれ設けられる。繰出し装置20には、その繰出し装置20をX軸方向に移動させて位置決めし、かつ位置決めされた繰出し装置20の移動を禁止する繰出し位置決め装置16が設けられ、巻取り装置40には、その巻取り装置40をX軸方向に移動させて位置決めし、かつ位置決めされた巻取り装置40の移動を禁止する巻取り位置決め装置17が設けられる。一方、繰出し装置20と処理機14の間にはその繰出し装置20が繰出すフィルム12の処理機14に対するX軸方向のズレを検出する繰出しエッジセンサ15aが設けられ、処理機14と巻取り装置40の間にはその巻取り装置40が巻取るフィルム12の巻取り装置40に対するX軸方向のズレを検出する巻取りエッジセンサ15bが設けられる。
【0024】
繰出しエッジセンサ15a及び巻取りエッジセンサ15bの検出出力はコントローラ18の制御入力に接続され、繰出し位置決め装置16及び巻取り位置決め装置17にはコントローラ18からの制御出力が接続される。この実施の形態における各位置決め装置16,17は、X軸方向に伸びて繰出し装置20及び巻取り装置40に螺合するボールねじ16a,17aを回転させるサーボモータ16,17であって、これらのサーボモータ16,17は基台11に固定される。コントローラ18は、各エッジセンサ15a,15bの検出出力によりフィルム12のX軸方向における位置を常時確認し、繰出し装置20と巻取り装置40のX軸方向の位置を常に調整し、X軸方向におけるフィルム12の位置が常に同じ位置になるように各位置決め装置16,17を制御するように構成される。
【0025】
繰出し装置20から説明すると、この繰出し装置20は繰出し側鉛直板21を備える。そして、この繰出し装置20は、フィルム12を常時一定量で繰出すフィルム繰出し機構22と、フィルム繰出し機構22から繰出されるフィルム12を蓄えて短時間の内に排出する繰出しアキュームレート機構23とを備える。フィルム繰出し機構22は、繰出し側鉛直板21に枢支された供給用リール22bと、繰出し側鉛直板21の裏面側に設けられその供給用リール22bを回転させる巻出しモータ22cとを備える。供給用リール22bには、フィルム12が巻回されてなる繰出しフィルムロール22aが取付けられ、巻出しモータ22cはその繰出しフィルムロール22aを供給用リール22bとともに回転させるように構成される。この実施の形態における巻出しモータ22cは、供給用リール22bの回転速度を変更可能なサーボモータであり、この巻出しモータ22cにはコントローラ18の制御出力が接続される。そして、このフィルム繰出し機構22は、コントローラ18からの指令に基づいて巻出しモータ22cが供給用リール22bを所定の速度で回転させることにより、繰出しフィルムロール22aからフィルム12を常時一定量で繰出すように構成される。
【0026】
また、繰出し装置20における繰出しアキュームレート機構23は、フィルム12の搬送経路に沿って設けられた第一及び第二固定ローラ24,25と、この第一及び第二固定ローラ24,25の中間を通過してフィルム12の搬送経路に直交する方向に移動可能な上流側可動ローラ26と、上流側可動ローラ26を移動させる繰出しアキューム用サーボモータ23dとを備える。この実施の形態では、繰出しフィルムロール22aから引き出されたフィルム12は上方に向かいその後水平に転向するような繰出し側転向ローラ20aが繰出し側鉛直板21に設けられ、繰出し側転向ローラ20aにより水平に転向されたフィルム12に沿って第一及び第二固定ローラ24,25が設けられる。繰出し側鉛直板21にはその第一及び第二固定ローラ24,25の中央を貫通するように鉛直方向に伸びるボールねじ23eが設けられ、このボールねじ23eを回転可能に繰出しアキューム用サーボモータ23dの回転軸がそのボールねじ23eに連結される。ボールねじ23eには繰出し側可動台23fが螺合され、この繰出し側可動台23fに上流側可動ローラ26が設けられる。そして、この繰出しアキューム用サーボモータ23dにはコントローラ18の制御出力が接続される。
【0027】
この繰出しアキュームレート機構23には、上流側可動ローラ26に掛け回されたフィルム12とその上流側可動ローラ26との間に摩擦を生じさせない上流側摩擦防止手段27が備えられる。この実施にの形態における摩擦防止手段27は、コントローラ18の制御出力が接続されて、そのコントローラ18により制御される圧縮エア供給ポンプ27である。そして、この圧縮エア供給ポンプ27は、圧縮エアを上流側可動ローラ26に供給してその上流側可動ローラ26に掛け回されたフィルム12を上流側可動ローラ26の外周から浮上させるものである。このため、この上流側可動ローラ26は、圧縮エア供給ポンプ27から供給された圧縮エアをその外周から吹き出して、その外周に掛け回されたフィルム12を浮上可能に構成される。
【0028】
図4及び図5に、この実施の形態における上流側可動ローラ26の構造を示す。この上流側可動ローラ26は、外周から吹き出すエアにより掛け回されたフィルム12を浮上可能に構成された筒部26aと、その筒部26aの両側に設けられて筒部26aに掛け回されて浮上するフィルム12の幅方向の移動を制限する壁部材26b,26cとを備える。図における上流側可動ローラ26は、金属又は樹脂等からなる固形物を切削加工することにより筒部26aと壁部材26b,26cがそれぞれ一体となって形成されたものを例示し、筒部26aは、中心軸に沿って貫通孔26dが形成された円筒状をなし、その軸方向の両端を封止するように壁部材26b,26cが設けられる。
【0029】
壁部材26b,26cは筒部26aの外径より大きな外径を有し、その筒部26aの両側にフィルム12の幅より僅かに広い間隔を空けてその筒部26aと同軸に設けられる。筒部26aの一端側における壁部材26bには、筒部26aと同軸の雄ねじ26eが形成され、繰出し側可動台23fにはこの雄ねじ26eを取付ける雌ねじ23gが形成される。そして、繰出し側可動台23fに形成された雌ねじ23gにこの雄ねじ26eを螺合することにより、この上流側可動ローラ26は、この繰出し側可動台23fに固定される。
【0030】
また、この一端側の壁部材26bには、貫通孔26dに連通する連通孔26fが中心軸に交差して形成され、その連通孔26fの一端側にはエア供給用の第一エアチューブ28を固定可能な第一カプラ29が設けられる。なお、筒部26aの他端側における壁部材26cには、筒部26aにおける貫通孔26dの他端側を封止する蓋板26hが雄ねじ26jにより取付けられる。壁部材26b,26c間における筒部26aには貫通孔26dに一端が連通する複数のエア孔26kが、その他端を外周面に開口させるようにその中心軸から放射状に形成される。
【0031】
図5に示すように、この複数のエア孔26kはフィルム12が掛け回される部分に形成され、摩擦防止手段である圧縮エア供給ポンプ27(図1)から第一エアチューブ28により供給された圧縮エアは、図4に示す第一カプラ29及び連通孔26fを介して貫通孔26dの内部に供給されるように構成される。そして、そのエアは、その後に一点鎖線矢印で示すように、貫通孔26dを通過し、その後に複数のエア孔26kから上流側可動ローラ26の筒部26aにおける外表面に吹き出すように構成される。このように吹き出されたエアにより、この上流側可動ローラ26に掛け回されたフィルム12を図5に示すように浮上させ、フィルム12とその上流側可動ローラ26との間に摩擦を生じさせないように構成される。そして、筒部26aの両側に設けられた壁部材26b,26cは筒部26aに掛け回されて浮上するフィルム12の幅方向の両側に位置し、そのフィルム12の幅方向の移動を制限した状態で搬送するものとして作用する。
【0032】
図1に戻って、このような上流側可動ローラ26を有する繰出しアキュームレート機構23では、コントローラ18からの指令に基づいて繰出しアキューム用サーボモータ23dが駆動してボールねじ23eを回転させると、それに螺合されている繰出し側可動台23fが上流側可動ローラ26とともに鉛直方向に移動することになる。繰出し側転向ローラ20aにより転向して水平方向に向かうフィルム12は第一及び第二固定ローラ24,25の上側に掛け渡され、第一及び第二固定ローラ24,25の間のフィルム12がそれより下方に存在する上流側可動ローラ26に下方から掛け回される。このため、繰出しアキューム用サーボモータ23dが駆動して上流側可動ローラ26が下降すると第一及び第二固定ローラ24,25と上流側可動ローラ26の鉛直距離は拡大し、第一及び第二固定ローラ24,25と上流側可動ローラ26の鉛直距離の倍の長さのフィルム12が第一及び第二固定ローラ24,25の間に蓄えられることになる。逆に、上流側可動ローラ26が上昇するように繰出しアキューム用サーボモータ23dが駆動すると、第一及び第二固定ローラ24,25と上流側可動ローラ26の鉛直距離は縮まり、その蓄えたフィルム12を排出するように構成される。
【0033】
ここで、繰出し側転向ローラ20a及び第一固定ローラ24は、その外周にフィルム12が接触した状態で掛け回され、それ自体が回転することにより掛け回されたフィルム12を転向しつつ搬送する自己回転型のローラが用いられる。この点において、この繰出し側転向ローラ20a及び第一固定ローラ24は、フィルム12が浮上させた状態で掛け回され、それ自体は回転しない上流側可動ローラ26と異なるものとする。
【0034】
一方、第二固定ローラ25は、掛け回されたフィルム12とこの第二固定ローラ25との間に摩擦を生じさせない搬送側摩擦防止手段を備える。この搬送側摩擦防止手段は、圧縮エアを第二固定ローラ25に供給して、この第二固定ローラ25に掛け回されたフィルム12をこの第二固定ローラ25の外周から浮上させる圧縮エア供給ポンプ27であって、上流側可動ローラ26に掛け回されたフィルム12をその上流側可動ローラ26の外周から浮上させる前述した圧縮エア供給ポンプ27が兼ねるものとする。図6(a)に示すように、第二固定ローラ25は、フィルム12が掛け回される筒部25aの中心から90度の範囲にエア孔25kが形成され、フィルム12を90度方向に転向させるものである点で、フィルムをU字状に180度転向させる上流側可動ローラ26と異なる。けれども、この第二固定ローラ25は、このようなフィルム12の転向角度の相違点を除いて、上流側可動ローラ26と同一の構造であるので、その構造に関して繰り返しての説明は省略する。
【0035】
図1に示すように、この繰出し装置20は、フィルム繰出し機構22から繰出されて繰出しアキュームレート機構23に蓄えられるフィルム12に張力を加える繰出しテンション付与装置31が設けられる。このテンション付与装置31は、繰出しフィルムロール22aから繰出し側転向ローラ20aに向かって上方に伸びるフィルム12に沿って設けられた一対のガイドローラ31a,31bと、その一対のガイドローラ31a,31bの間に設けられレバー31cによりY軸方向に移動可能なダンサローラ31dとを備え、そのダンサローラ31dを一対のガイドローラ31a,31bから遠ざけるスプリング31eが設けられる。このスプリング31eにより付与されるダンサローラ31dの付勢力によって、この繰出しテンション付与装置31ではフィルム繰出し機構22から繰出されるフィルム12に所定の張力を与えるように構成される。ここで、一対のガイドローラ31a,31b及びダンサローラ31dは、その外周にフィルム12が接触した状態で掛け回され、それ自体が回転することにより掛け回されたフィルム12を転向しつつ搬送する自己回転型のローラである。
【0036】
ダンサローラ31dが一端に枢支されたレバー31cの他端、即ちレバー31cの繰出し側鉛直板21における枢支点には、そのレバー31cの揺動角度からダンサローラ31dの位置を検出する位置検出用角度センサ31fが設けられ、この角度センサ31fの検出出力はコントローラ18の制御入力に接続される。フィルム繰出し機構22における繰出しフィルムロール22aは、その回転によりフィルム12を繰出すものであるので、フィルム12を繰出すとその外径は徐々に減少し、回転速度が同一である場合には単位時間に繰出されるフィルム12の量は徐々に減少することになる。繰出されるフィルム12の量が減少すると、そのフィルム12に張力を付与するダンサローラ31dは一対のガイドローラ31a,31bに近づくことになる。このダンサローラ31dの移動は位置検出用角度センサ31fにより検出され、この検出出力に基づいてコントローラ18は巻出しモータ22cを制御し、繰出しフィルムロール22aの外径の変化に伴って繰出しフィルムロール22aの回転速度を変更し、単位時間に繰出されるフィルム12の量を常に一定にするように構成される。
【0037】
次に、上記繰出し装置20と離間して基台11の他端側に設けられた巻取り装置40の説明を行う。この巻取り装置40は、上記繰出し装置20から繰出されて処理機14により印刷等の処理が成された所定量のフィルム12を巻取るものである。この巻取り装置40は、上記繰出し装置20と対称構造をなし、繰出し装置20の繰出しアキュームレート機構23により短時間の内に排出された量のフィルム12をその排出と同時に短時間の内に蓄える巻取りアキュームレート機構43と、その巻取りアキュームレート機構43から排出されるフィルム12を常時一定量で巻取るフィルム巻取り機構42とを備える。
【0038】
巻取り装置40は巻取り側鉛直板41を備える。そして、巻取りアキュームレート機構43は、フィルム12の搬送経路に沿って設けられた第三及び第四固定ローラ44,45と、この第三及び第四固定ローラ44,45の中間を通過してフィルム12の搬送経路に直交する方向に移動可能な下流側可動ローラ46と、下流側可動ローラ46を移動させる巻取りアキューム用サーボモータ43dとを備える。この巻取りアキュームレート機構43は先の繰出しアキュームレート機構23と対称構造を成し、繰出しアキュームレート機構23と同様に第三及び第四固定ローラ44,45が水平に巻取り側鉛直板41に設けられ、巻取り側鉛直板41にはその第三及び第四固定ローラ44,45の中央を貫通するように鉛直方向に伸びるボールねじ43eが設けられる。そして、このボールねじ43eを回転可能に巻取りアキューム用サーボモータ43dの回転軸がそのボールねじ43eに連結される。ボールねじ43eには巻取り側可動台43fが螺合され、この巻取り側可動台43fに下流側可動ローラ46が設けられる。そして、この巻取りアキューム用サーボモータ43dにはコントローラ18の制御出力が接続される。
【0039】
この巻取りアキュームレート機構43には、下流側可動ローラ46に掛け回されたフィルム12とその下流側可動ローラ46との間に摩擦を生じさせない下流側摩擦防止手段27が備えられる。この実施にの形態における下流側摩擦防止手段27は、圧縮エアを下流側可動ローラ46に供給して、この下流側可動ローラ46に掛け回されたフィルム12をこの下流側可動ローラ46の外周から浮上させる圧縮エア供給ポンプ27であって、上流側可動ローラ26に掛け回されたフィルム12をその上流側可動ローラ26の外周から浮上させる前述した圧縮エア供給ポンプ27が兼ねるものとする。このため、この下流側可動ローラ46は、圧縮エア供給ポンプ27から供給された圧縮エアをその外周から吹き出して、その外周に掛け回されたフィルム12を浮上可能に構成される。この実施の形態における下流側可動ローラ46は、図4及び図5に示す上流側可動ローラ26と同一の構造のものが用いられ、その同一の構造の下流側可動ローラ46が巻取りアキュームレート機構43における巻取り側可動台43fに設けられる。よって、この下流側可動ローラ46の具体的な構成の繰り返しての説明は省略する。
【0040】
このような下流側可動ローラ46を有する巻取りアキュームレート機構43では、コントローラ18からの指令に基づいて巻取りアキューム用サーボモータ43dが駆動してボールねじ43eを回転させると、それに螺合されている巻取り側可動台43fが下流側可動ローラ46とともに鉛直方向に移動することになる。繰出し装置20から繰出されたフィルム12は印刷機等の処理機14により所定の処理が成され、その後水平状態で第三及び第四固定ローラ44,45の上側に掛け渡される。そして、第三及び第四固定ローラ44,45の間のフィルム12がそれより下方に存在する下流側可動ローラ46に下方から掛け回される。このため、巻取りアキューム用サーボモータ43dが駆動して下流側可動ローラ46が下降すると第三及び第四固定ローラ44,45と下流側可動ローラ46の鉛直距離は拡大し、第三及び第四固定ローラ44,45と下流側可動ローラ46の鉛直距離の倍の長さのフィルム12が第三及び第四固定ローラ44,45の間に蓄えられることになる。一方、下流側可動ローラ46が上昇するように巻取りアキューム用サーボモータ43dが駆動すると、第三及び第四固定ローラ44,45と下流側可動ローラ46の鉛直距離は縮まり、その蓄えたフィルム12を排出するように構成される。
【0041】
また、フィルム巻取り機構42は、巻取りアキュームレート機構43から排出されるフィルム12を常時一定量で巻取るものであって、巻取りアキュームレート機構43から排出されるフィルム12を巻回する巻取り用リール42bを備える。この巻取り用リール42bは巻取り側鉛直板41に枢支され、巻取り側鉛直板41の裏面側にはその巻取り用リール42bを回転させる巻取りモータ42cが設けられる。この実施の形態における巻取りモータ42cは、巻取り用リール42bの回転速度を変更可能なサーボモータであり、この巻取りモータ42cにはコントローラ18の制御出力が接続される。そして、このフィルム巻取り機構42は、コントローラ18からの指令に基づいて巻取りモータ42cが巻取り用リール42bを所定の速度で回転させることにより、巻取りアキュームレート機構43から徐々に排出されるフィルム12を常時一定量で巻取るように構成される。
【0042】
ここで、巻取り側転向ローラ40a及び第四固定ローラ45は、その外周にフィルム12が接触した状態で掛け回され、それ自体が回転することにより掛け回されたフィルム12を転向しつつ搬送する自己回転型のローラが用いられる。この点において、この巻取り側転向ローラ40a及び第四固定ローラ45は、フィルム12が浮上させた状態で掛け回され、それ自体は回転しない下流側可動ローラ46と異なるものとする。
【0043】
一方、第三固定ローラ44は、そこに掛け回されるフィルム12を吸着して回転可能に構成される。図6(b)及び図7に、この実施の形態における第三固定ローラ44の構造を示す。この第三固定ローラ44は、外周から吸引するエアにより掛け回されたフィルム12をその外周に吸着可能に構成された筒部44aと、その筒部44aの両側に設けられて筒部44aに掛け回されて吸着されるフィルム12の幅方向の移動を制限する壁部材44b,44cとを備える。図における第三固定ローラ44は、金属又は樹脂等からなる固形物を切削加工することにより筒部44aと壁部材44b,44cがそれぞれ一体となって形成されたものを例示し、筒部44aは、中心軸に沿って貫通孔44dが形成された円筒状をなし、その軸方向の両端を封止するように壁部材44b,44cが設けられる。
【0044】
図7に示すように、壁部材44b,44cは筒部44aの外径より大きな外径を有し、その筒部44aの両側にフィルム12の幅より僅かに広い間隔を空けてその筒部44aと同軸に設けられる。一端側の壁部材44bには、貫通孔44dに連通する連通孔44fが中心軸に交差して形成される。また、筒部44aの他端側における壁部材44cには、筒部44aにおける貫通孔44dの他端側を封止する蓋板44hが雄ねじ44jにより取付けられる。壁部材44b,44c間における筒部44aには貫通孔44dに一端が連通する複数のエア孔44kが、その他端を外周面に開口させるようにその中心軸から放射状に形成される。
【0045】
このような構成の第三固定ローラ44は、巻取り用サーボモータ53の回転軸53aに同軸に取付けられ、その巻取り用サーボモータ53が巻取り側鉛直板41に取付けられる。そして、その巻取り側鉛直板41には、一端側の壁部材44bを包囲する包囲部材47が取付けられる。その包囲部材47の内周には、一端側の壁部材44bに形成された連通孔44fに臨む周溝47aが形成され、その周溝47aに連通してエアを吸引する第二エアチューブ48を固定可能な第二カプラ49が包囲部材47に設けられる。
【0046】
第二エアチューブ48はエア吸引ポンプ50(図1)に接続され、第二エアチューブ48,第二カプラ49及び連通孔44fを介して貫通孔44dの内部のエアを図7の一点鎖線矢印で示すように吸引し、貫通孔44dに複数のエア孔44kから第三固定ローラ44の筒部44a周囲におけるエアを吸引すると、この吸引されたエアによりこの第三固定ローラ44に掛け回されたフィルム12を図6(b)及び図7に示すようにその外周面に吸着するように構成される。そして、筒部44aの両側に設けられた壁部材44b,44cは筒部44aに掛け回されて吸着されるフィルム12の幅方向の両側に位置し、そのフィルム12の幅方向の移動を制限した状態でそのフィルム12を筒部44aの周囲に吸着するように構成される。
【0047】
図1に戻って、このような構成の第三固定ローラ44が回転軸53a(図7)に同軸に取付けられた巻取り用サーボモータ53にはコントローラ18からの制御出力が接続され、コントローラ18からの指令に基づいて巻取り用サーボモータ53が駆動するとその第三固定ローラ44が回転し、第三固定ローラ44の外周に吸着されたフィルム12を巻取りアキュームレート機構43に向けて引き取るように構成される。そして、巻取り用サーボモータ53によるその第三固定ローラ44の回転が停止すると、そのフィルム12の引き取りを停止するように構成される。また、この巻取り用サーボモータ53には同軸に量検出用エンコーダ54が設けられ、このエンコーダ54により第三固定ローラ44の回転数が検出される。そして、この量検出用エンコーダ54の検出出力はコントローラ18の制御入力に接続され、コントローラ18では、その第三固定ローラ44の回転数とその直径から計算してフィルム12の引き取り量を計算するように構成される。
【0048】
また、この巻取り装置40には、巻取りアキュームレート機構43により排出されてフィルム巻取り機構42に巻取られるフィルム12に所定のテンションを加える巻取りテンション付与装置51が設けられる。このテンション付与装置51は、巻取りアキュームレート機構43から巻取り側転向ローラ40aを介して下方に伸びるフィルム12に沿って設けられた一対のガイドローラ51a,51bと、その一対のガイドローラ51a,51bの間に設けられレバー51cによりY軸方向に移動可能なダンサローラ51dとを備え、そのダンサローラ51dを一対のガイドローラ51a,51bから遠ざけるスプリング51eが設けられる。このスプリング51eにより付与されるダンサローラ51dの付勢力によって、この巻取りテンション付与装置51では、巻取りアキュームレート機構43により排出されてフィルム巻取り機構42に巻取られるフィルム12に所定の張力を与えるように構成される。ここで、一対のガイドローラ51a,51b及びダンサローラ51dは、その外周にフィルム12が接触した状態で掛け回され、それ自体が回転することにより掛け回されたフィルム12を転向しつつ搬送する自己回転型のローラである。
【0049】
ダンサローラ51dが一端に枢支されたレバー51cの他端、即ちレバー51cの巻取り側鉛直板41における枢支点には、そのレバー51cの揺動角度からダンサローラ51dの位置を検出する位置検出用角度センサ51fが設けられ、この角度センサ51fの検出出力はコントローラ18の制御入力に接続される。フィルム巻取り機構42において巻取られたフィルム12から成る巻取りフィルムロール42aは、回転により巻取られたフィルム12から成るので、その巻取りフィルムロール42aの外径はフィルム12の巻取りが進行すると徐々に増加し、巻取りフィルムロール42aの回転速度が同一である場合には単位時間に巻取られるフィルム12の量は徐々に増加することになる。巻取られるフィルム12の量が増加すると、そのフィルム12に張力を付与するダンサローラ51dは一対のガイドローラ51a,51bに近づくことになる。このダンサローラ51dの移動は位置検出用角度センサ51fにより検出され、この検出出力に基づいてコントローラ18は巻取りモータ42cを制御し、巻取りフィルムロール42aの外径の変化に伴って巻取りリール42bの回転速度を変更し、単位時間に巻取られるフィルム12の量を常に一定にするように構成される。
【0050】
次に、本発明のフィルムの間欠搬送方法について説明する。
【0051】
本発明のフィルム12の間欠搬送方法は、フィルム繰出し機構22により常時一定量で繰出されたフィルム12を徐々に蓄えて短時間の内に排出することを繰出しアキュームレート機構23により繰り返し、繰出しアキュームレート機構23により短時間の内に排出された量のフィルム12を繰出しアキュームレート機構23の排出と同時に短時間の内に巻取りアキュームレート機構43により蓄え、その巻取りアキュームレート機構43が蓄えたフィルム12を繰出しアキュームレート機構23の次回の排出時までに常時一定量で排出してフィルム巻取り機構42により巻取ることを特徴とする。これにより繰出し装置20と巻取り装置40の間におけるフィルム12は搬送と静止を交互に繰り返し、結果としてフィルム12を間欠的に搬送することになる。図1は、繰出し装置20と巻取り装置40の間におけるフィルム12の搬送が停止されており、その停止の途中においてフィルム繰出し機構22により常時一定量で繰出されたフィルム12を繰出しアキュームレート機構23が徐々に蓄えており、巻取りアキュームレート機構43が常時一定量で排出しているフィルム12をフィルム巻取り機構42が巻取っている状態を示す。これらの各動作を以下に詳説するけれども、以下に示す動作は、コントローラ18により制御されるものとする。
【0052】
繰出し装置20と巻取り装置40の間のフィルム12を静止させる場合、エア吸引ポンプ50を駆動して第三固定ローラ44に掛け回されたフィルム12をその外周面に吸着するとともに、巻取り用サーボモータ53による第三固定ローラ44の回転を停止させる。すると、繰出し装置20におけるフィルム12の繰出しと巻取り装置40におけるフィルム12の引き取りの双方が停止され、これにより繰出し装置20と巻取り装置40の間のフィルム12を静止させることができる。そして、繰出し装置20と巻取り装置40の間に設けられた印刷機等のフィルム12の処理機14において、この静止しているフィルム12に処理を行うことができる。
【0053】
繰出し装置20と巻取り装置40の間のフィルム12を静止させている間に、繰出し装置20にあっては、次の搬送時に繰出すフィルム12をフィルム繰出し機構22により常時一定量で繰出すとともに、その常時一定量で繰出されたフィルム12を繰出しアキュームレート機構23に蓄える。フィルム12の繰出しは、コントローラ18からの指令に基づいて巻出しモータ22cが供給用リール22bを一定の速度で回転させることにより行われ、これにより供給用リール22bに支持された繰出しフィルムロール22aが図1の破線矢印で示すように回転してフィルム12を常時一定量で繰出す。そして、繰出しアキュームレート機構23におけるフィルム12の蓄えは、フィルム12の搬送経路に沿って設けられた第一及び第二固定ローラ24,25から、その第一及び第二固定ローラ24,25の中間におけるフィルム12が掛け回されてフィルム12の搬送経路に直交する方向に移動可能な上流側可動ローラ26を、図1の破線矢印で示すように、第一及び第二固定ローラ24,25から徐々に離間させることにより行われる。
【0054】
このとき、圧縮エア供給ポンプ27を駆動して、圧縮エアを上流側可動ローラ26に供給し、その上流側可動ローラ26に掛け回されたフィルム12を上流側可動ローラ26の外周から浮上させておく。すると、第一及び第二固定ローラ24,25と上流側可動ローラ26の鉛直距離は拡大し、第一及び第二固定ローラ24,25と上流側可動ローラ26の鉛直距離の倍の長さのフィルム12が第一及び第二固定ローラ24,25の間に蓄えられることになる。これと同時に、巻取り装置40にあっては、その下流側可動ローラ46を、図1の破線矢印で示すように、第三及び第四固定ローラ44,45に徐々に近づけることになるけれども、この点に関しては後に説明する。
【0055】
所定量のフィルム12を繰出しアキュームレート機構23が蓄えた状態を図2に示す。そして、その後フィルム12の搬送が行われる。具体的には、所定量のフィルム12を蓄えた図2に示す繰出しアキュームレート機構23は、その後その蓄えたフィルム12を短時間の内に排出する。その繰出しアキュームレート機構23の排出と同時に繰出しアキュームレート機構23により排出された量のフィルム12を巻取りアキュームレート機構43により短時間の内に蓄える。このフィルム12の搬送時にあっては、エア吸引ポンプ50を駆動して第三固定ローラ44に掛け回されたフィルム12をその外周面に吸着するとともに、巻取り装置40における巻取り用サーボモータ53を駆動してその第三固定ローラ44を回転させる。これにより繰出し装置20と巻取り装置40の間にフィルム12を搬送することができる。
【0056】
フィルム12の搬送量は予めコントローラ18により決定され、その搬送量は巻取り装置40における第三固定ローラ44の回転数により調整される。即ち、コントローラ18は予め定められた搬送量を第三固定ローラ44の外周により除した値を求めておき、その値に従って第三固定ローラ44を短時間の内に回転させる。これにより、フィルム12は定められた搬送量だけその短時間の内に搬送され、その第三固定ローラ44の回転数は、それに設けられた量検出用エンコーダ54により検出され、コントローラ18にフィードバックされる。そして、このフィルム12の搬送時には、繰出し装置20と巻取り装置40の間に設けられた印刷機等のフィルム12の処理機14における処理は一旦停止される。
【0057】
フィルム12の搬送時に、繰出しアキュームレート機構23は蓄えたフィルム12を短時間の内に排出するけれども、そのフィルム12の排出は、繰出しアキューム用サーボモータ23dにより上流側可動ローラ26を図2の実線矢印で示すように第一及び第二固定ローラ24,25に短時間の内に急速に接近させることにより行われる。即ち、第三固定ローラ44を回転させることにより搬送するフィルム12の半分の長さに相当する長さ上流側可動ローラ26を第一及び第二固定ローラ24,25に接近させる。この上流側可動ローラ26の接近は第三固定ローラ44の回転と同期して行われ、第三固定ローラ44が回転してフィルム12を搬送する短時間の内にこの上流側可動ローラ26の接近が行われる。すると、上流側可動ローラ26には第一及び第二固定ローラ24,25間におけるフィルム12がU字状に掛け回されており、上流側可動ローラ26の移動量の倍に等しい長さとその短時間の間にフィルム繰出し機構22から繰出されるフィルム12の和に相当する長さのフィルム12が、繰出しアキュームレート機構23からその短時間の間に繰出されることになる。
【0058】
この繰出しアキュームレート機構23にあっては、フィルム12の繰出し時に圧縮エア供給ポンプ27を駆動して、圧縮エアを第二固定ローラ25及び上流側可動ローラ26に供給し、その第二固定ローラ25及び上流側可動ローラ26に掛け回されたフィルム12を第二固定ローラ25及び上流側可動ローラ26の外周からそれぞれ浮上させておく。即ち、第二固定ローラ25及び上流側可動ローラ26の外周面にフィルム12を接触させておくと、このフィルム12の搬送によりそれらのローラ25,26が回転することになるけれども、それらのローラ25,26の慣性力により、フィルム12を比較的速い加速度で繰出した場合に、それらのローラ25,26の外表面に接触するフィルム12がそれらの外表面に対して擦れ、それらの間に摩擦が生じることが考えられる。けれども、フィルム12を第二固定ローラ25及び上流側可動ローラ26の外周から浮上させておくことにより、フィルム12とそれらのローラ25,26の外表面の間に摩擦が生じることを防止し、その摩擦に起因するキズ等がフィルム12に生じることを回避するものである。
【0059】
一方、繰出し側転向ローラ20a及び第一固定ローラ24は、その外周にフィルム12が接触した状態で掛け回され、それ自体が回転することにより掛け回されたフィルム12を転向しつつ搬送する自己回転型のローラである。また、一対のガイドローラ31a,31b及びダンサローラ31dにあっても、その外周にフィルム12が接触した状態で掛け回され、それ自体が回転することにより掛け回されたフィルム12を転向しつつ搬送する自己回転型のローラである。しかし、フィルム繰出し機構22からは常時一定量のフィルム12が繰出されているので、これらのローラ20a,24,31a,31b,31dに掛け回されたフィルム12は常に一定の速度で移動していることになる。このため、これらのローラ20a,24,31a,31b,31dの回転は常に一定の速度であって、それらの回転速度が急加速及び急減速されることはない。よって、これらのローラ20a,24,31a,31b,31dの外表面に接触するフィルム12が、その外表面に対して擦れることによる摩擦がそれらの間に生じることはない。このため、その摩擦に起因するキズ等がフィルム12に生じることはなく、この繰出し装置20では、フィルム12にキズを生じさせることなく、フィルム12を繰出すことが可能になる。
【0060】
他方、巻取りアキュームレート機構43では、繰出しアキュームレート機構23におけるフィルム12の排出と同時に、その繰出しアキュームレート機構23により排出された量のフィルム12を短時間の内に蓄える。この蓄えは、巻取りアキューム用サーボモータ43dにより下流側可動ローラ46を図2の実線矢印で示すように第三及び第四固定ローラ44,45から短時間の内に急速に遠ざけることにより行われる。即ち、巻取り用サーボモータ53により第三固定ローラ44を回転させて処理機14により印刷等の所定の処理が成されたフィルム12を引き取るとともに、その引き取るフィルム12の半分の長さに相当する長さ下流側可動ローラ46を第三及び第四固定ローラ44,45から離間させる。この下流側可動ローラ46の離間は第三固定ローラ44の回転と同期して行われ、第三固定ローラ44が回転してフィルム12を搬送する短時間の内にこの下流側可動ローラ46の離間が行われる。すると、下流側可動ローラ46には第三及び第四固定ローラ44,45間におけるフィルム12がU字状に掛け回されており、下流側可動ローラ46の移動量の倍に等しい長さと、その短時間の間にフィルム巻取り機構42により巻取られるフィルム12の和に相当する長さのフィルム12が、その短時間の間に引き取られて第三及び第四固定ローラ44,45の間に蓄えられることになる。
【0061】
この巻取りアキュームレート機構43にあっても、フィルム12の巻取り時に圧縮エア供給ポンプ27を駆動して、圧縮エアを下流側可動ローラ46に供給し、その下流側可動ローラ46に掛け回されたフィルム12を下流側可動ローラ46の外周から浮上させておく。即ち、下流側可動ローラ46の外周面にフィルム12を接触させておくと、このフィルム12の搬送によりそのローラ46が回転することになるけれども、そのローラ46の慣性力により、フィルム12を比較的速い加速度で蓄えた場合に、ローラ46の外表面に接触するフィルム12がその外表面に対して擦れ、それらの間に摩擦が生じることが考えられる。けれども、フィルム12を下流側可動ローラ46の外周から浮上させておくことにより、フィルム12とローラ46の外表面の間に摩擦が生じることを防止し、その摩擦に起因するキズ等がフィルム12に生じることを回避することができる。
【0062】
そして、巻取りアキュームレート機構43は繰出しアキュームレート機構23により短時間の内に排出された量のフィルム12を短時間の内に同時に蓄えるので、繰出しアキュームレート機構23と同一構造の巻取りアキュームレート機構43を用いるこの実施の形態では、繰出しアキュームレート機構23における上流側可動ローラ26の移動量と巻取りアキュームレート機構43における下流側可動ローラ46の移動量とは同一となる。そして上流側可動ローラ26及び下流側可動ローラ46の移動量の約2倍の量のフィルム12が繰出され及び巻取られるので、各アキューム用サーボモータ23d,43dにより各可動ローラ26,46を比較的高速度に移動させることにより、その速度の倍の速さで実際にフィルム12を搬送することが可能になる。
【0063】
繰出し装置20と巻取り装置40の間で所定量のフィルム12が搬送された直後の状態を図3に示す。このように所定量のフィルム12が搬送された直後にあっては、繰出し装置20におけるフィルム12の繰出しを禁止するとともに、巻取り用サーボモータ53によりフィルム12を外周面に吸着させた第三固定ローラ44の回転を停止させ、更に巻取り装置40におけるフィルム12の引き取りを停止する。これにより、繰出し装置20と巻取り装置40の間のフィルム12は再び静止状態とされる。そして、繰出し装置20と巻取り装置40の間に設けられた印刷機等の処理機14において、この静止しているフィルム12に再び処理を行う。このフィルム12を静止させている間に、繰出し装置20にあっては、前述したように、次の搬送時に繰出すフィルム12をフィルム繰出し機構22により常時一定量で繰出すとともに、上流側可動ローラ26を、図3の破線矢印で示すように、第一及び第二固定ローラ24,25から徐々に遠ざけることにより、その常時一定量で繰出されたフィルム12を繰出しアキュームレート機構23に徐々に蓄える。
【0064】
一方、繰出し装置20と巻取り装置40の間のフィルム12を静止させている間に、巻取り装置40にあっては、前回の搬送時に巻取りアキュームレート機構43に蓄えたフィルム12を徐々に排出し、その排出されたフィルム12をフィルム巻取り機構42により常時一定量で巻取る。巻取りアキュームレート機構43におけるフィルム12の排出は、フィルム12が掛け回されてそのフィルム12を第三及び第四固定ローラ44,45間に蓄えた下流側可動ローラ46を、図3の破線矢印で示すように、第三及び第四固定ローラ44,45に徐々に近づけることにより行われる。このとき、圧縮エア供給ポンプ27を駆動して、圧縮エアを下流側可動ローラ46に供給し、その下流側可動ローラ46に掛け回されたフィルム12を下流側可動ローラ46の外周から浮上させておく。下流側可動ローラ46の移動は巻取りアキューム用サーボモータ43dを駆動することにより行われる。そして、第三及び第四固定ローラ44,45と下流側可動ローラ46の鉛直距離が減少すると、第三及び第四固定ローラ44,45と下流側可動ローラ46の間の減少した鉛直距離の倍の長さのフィルム12が徐々に排出される。この巻取りアキュームレート機構43におけるフィルム12の排出は次回のフィルム12の搬送時までに完了される。
【0065】
フィルム巻取り機構42によるフィルム12の巻取りは、コントローラ18からの指令に基づいて巻取りモータ42cが巻取り用リール42bを所定の速度で回転させることにより行われ、これにより巻取りアキュームレート機構43から排出されたフィルム12は巻取り用リール42bに常時一定量で巻取られる。
【0066】
ここで、巻取り側転向ローラ40a及び第四固定ローラ45は、その外周にフィルム12が接触した状態で掛け回され、それ自体が回転することにより掛け回されたフィルム12を転向しつつ搬送する自己回転型のローラが用いられる。また、一対のガイドローラ51a,51b及びダンサローラ51dは、その外周にフィルム12が接触した状態で掛け回され、それ自体が回転することにより掛け回されたフィルム12を転向しつつ搬送する自己回転型のローラである。しかし、フィルム巻取り機構42は常時一定量のフィルム12を巻取るものであるので、これらのローラ40a,45,51a,51b,51dに掛け回されたフィルム12は常に一定の速度で移動していることになる。このため、これらのローラ40a,45,51a,51b,51dの回転は常に一定の速度であって、それらの回転速度が急加速及び急減速されることはない。よって、これらのローラ40a,45,51a,51b,51dの外表面に接触するフィルム12が、その外表面に対して擦れることによる摩擦がそれらの間に生じることはない。このため、その摩擦に起因するキズ等がフィルム12に生じることはなく、この巻取り装置40では、フィルム12にキズを生じさせることなく、フィルム12を巻取ることが可能になる。
【0067】
また、このフィルム12の搬送時に、第三固定ローラ44にあっては、そこに掛け回されたフィルム12をその外周面に吸着するとともに、巻取り用サーボモータ53によりその第三固定ローラ44自体を強制的に回転させる。このため、この第三固定ローラ44の外表面に接触するフィルム12が、その外表面に対して擦れることによる摩擦がそれらの間に生じることはない。よって、その摩擦に起因するキズ等がフィルム12に生じることはなく、この間欠搬送装置10では、フィルム12にキズを生じさせることなく、フィルム12を搬送することができる。
【0068】
以上述べたようなフィルム12の搬送と静止を繰り返すことにより、フィルム12を間欠的に搬送する。そして、本発明にあっては、各アキュームレート機構23,43における第一及び第二固定ローラ24,25,43a,43bに対して可動ローラ26,46を離間又は接近させることによりフィルム12の蓄えと排出を行うとともに、フィルム12と各可動ローラ26,46の外周との間に摩擦を生じさせることなくその各可動ローラ26,46を離間又は接近を行うので、そのフィルム12が各可動ローラ26,46に接触して摺れることに起因するキズの発生を回避することができる。よって、比較的高速度にそれらの可動ローラ24,43aを移動させることにより、間欠搬送するフィルム12に傷を生じさせることなくその搬送速度を著しく高めることができる。
【0069】
また、繰出し装置20では、繰出しフィルムロール22aからフィルム12を常時一定量で繰出すけれども、フィルム12が静止されて搬送されるまでの間にフィルム繰出し機構22により繰出されるフィルム12の量を搬送されるフィルム12の量の一致させることにより、フィルム繰出し機構22における供給用リール22bを持続的に回転させることができる。また、巻取り装置40では、巻取りアキュームレート機構43からフィルム12を徐々に排出し、巻取り用リール42bがそのフィルム12を常時一定量で巻取るので、フィルム12が静止されて搬送されるまでの間に巻取るフィルム12の量を搬送されるフィルム12の量に一致させることにより、巻取り用リール42bを持続的に回転させることができる。このため、本発明では各フィルムロール22a,42aの回転を急加速することもなければ急減速することもない。よって、各フィルムロール22a,42aを回転させる巻出しモータ22c及び巻取りモータ42cにあっては、供給用リール22b及び巻取り用リール42bを一定の速度で回転させる程度の出力を有するモータであれば足りる。よって、従来に比較して出力が大きなモータを設けること必要とせず、間欠搬送装置10の大型化を回避するとともに、比較的安価な間欠搬送装置10を得ることができる。
【0070】
一方、フィルム繰出し機構22における繰出しフィルムロール22aは、その回転によりフィルム12を繰出すものであるので、フィルム12を繰出すとその外径は徐々に減少するけれども、その外径の減少は繰出し装置20における位置検出用角度センサ31fにより検出される。また、フィルム巻取り機構42における巻取りフィルムロール42aは、その回転によりフィルム12を巻取るものであるので、フィルム12を巻取るとその外径は徐々に増加するけれども、その外径の増加は巻取り装置40における位置検出用角度センサ51fにより検出される。コントローラ18はこれらの位置検出用角度センサ31f,51fの検出出力に基づいて巻出しモータ22c及び巻取りモータ42cをそれぞれ制御し、繰出しフィルムロール22aの外径の減少に伴ってその繰出しフィルムロール22aの回転速度を早め、巻取りフィルムロール42aの外径の増加に伴ってその巻取りフィルムロール42aの回転速度を遅らせる。これにより繰出しフィルムロール22a及び巻取りフィルムロール42aの外径の変化にかかわらず、繰出されるフィルム12の量と巻取られるフィルム12の量を常時一定量にすることができる。
【0071】
また、巻取り装置40における第三固定ローラ44を予め計算された数だけ回転させることにより引き取られるフィルム12の量と、それと同期して巻取りアキュームレート機構43が蓄えるフィルム12の量と、繰出しアキュームレート機構23により短時間の内に繰出すフィルム12の量は計算上同一であるので、フィルム12の搬送時にそのフィルム12のテンションに影響を与えることはない。また、これらの量の間に誤差が生じたとしても、その誤差は繰出し及び巻取りテンション装置31,51における各ダンサローラ31d,51dが各スプリング31e,51eの付勢力により又はそれらの付勢力に抗して移動することにより吸収される。よって、本発明では、フィルム12のテンションに影響を与えることなく、所定量のフィルムを所定の時間毎に速やかに搬送することができる。
【0072】
なお、上述した実施の形態では、掛け回されたフィルム12をその外周から浮上させ又はそのフィルム12をその外周に吸着するローラ25,26,44,46として、貫通孔25d,26d,44dに一端が連通する複数のエア孔25k,26k,44kが筒部25a,26a,44aに形成されたローラ25,26,44,46を例示したが、掛け回されたフィルム11を浮上させ又は吸引可能である限り、筒部25a,26a,44aにエア孔25k,26k,44kを形成することを要しない。図8及び図9にこの別の上流側可動ローラ126を示し、この別の上流側可動ローラ126を代表して説明すると、貫通孔126dから外周面にエアが通過可能な多孔質材料や不織布等により筒部126aを形成し、その筒部126aの両側に壁部材126b,126cを接着するようにしても良い。
【0073】
この場合、壁部材126b,126cはエアを通過不能な金属又は樹脂により形成し、筒部126aのフィルム12が掛け回されることのない外周部分をシールド部材127により封止することが考えられる。このようなローラ126であっても、貫通孔126dに供給された圧縮エアはその貫通孔126dからシールド部材127により封止されていない筒部126aを一点鎖線矢印で示すように通過して、フィルム12が掛け回された外周から矢印で示すように吹き出し、その筒部126aに掛け回されたフィルム12を浮上させることができる。そして、壁部材126b,126cによりその筒部126aに掛け回されて浮上するフィルム12の幅方向の移動を制限することができる。また、貫通孔126dのエアを吸引すれば、筒部126aの外周からこの貫通孔126dに向かうエアの流れが生じ、筒部126aに掛け回されたフィルム12をその筒部126aの外周に吸着させることもできる。
【0074】
また、上述した実施の形態では、繰出し側転向ローラ20a,第一固定ローラ24,巻取り側転向ローラ40a及び第四固定ローラ45は、その外周にフィルム12が接触した状態で掛け回される自己回転型のローラが用いられる場合を説明したけれども、これらのローラ20a,24,40a,45にあっても、供給されたエアにより掛け回されたフィルム12を外周から浮上させるようなローラであっても良い。
【0075】
また、上述した実施の形態では、繰出しテンション付与装置31における一対のガイドローラ31a,31b及びダンサローラ31dにあっても、それ自体が回転することにより掛け回されたフィルム12を転向しつつ搬送する自己回転型のローラであり、巻取りテンション付与装置51における一対のガイドローラ51a,51b及びダンサローラ51dにあっても、それ自体が回転することにより掛け回されたフィルム12を転向しつつ搬送する自己回転型のローラである場合を説明した。けれども、これらのローラ31a,31b,31d,51a,51b,51dとして、供給されたエアにより掛け回されたフィルム12を外周から浮上させるようなローラを用いても良い。
【0076】
また、上述した実施の形態では、摩擦防止手段が、圧縮エアを第二固定ローラ25,上流側可動ローラ26及び下流側可動ローラ46に供給して、それらのローラ25,26,46に掛け回されたフィルム12をそれらのローラ25,26,46の外周から浮上させる圧縮エア供給ポンプ27である場合を説明したけれども、この摩擦防止手段は、それらのローラ25,26,46を強制的に回転させるサーボモータであっても良い。図10に上流側可動ローラ26を回転させるサーボモータ128を例示する。この上流側可動ローラ26を回転させるサーボモータ128を代表して説明すると、そのサーボモータ128は繰出し側可動台23fに取付けられ、その回転軸128aに上流側可動ローラ26が同軸に取付けられる。そして、このサーボモータ128には、コントローラ18(図1)の制御出力が接続され、そのコントローラ18は、上流側可動ローラ26の回転によりその外周における速度がこの上流側可動ローラ26に掛け回されたフィルム12の搬送速度に一致するようにそのサーボモータ128を制御するように構成される。
【0077】
このようなサーボモータ128から成る摩擦防止手段であっては、ローラ25,26,46の外周における速度がそれらのローラ25,26,46の外周に掛け回されたフィルム12の搬送速度に一致するようにそれらのローラ25,26,46を強制的に回転させることにより、それらローラ25,26,46の外周に対してフィルム12が擦れるようなことを防止することができ、その擦れに起因する摩擦は生じない。
【0078】
ここで、第二固定ローラ25,上流側可動ローラ26及び下流側可動ローラ46の各重量は、フィルム12がロール状巻回された各フィルムロール22a,42aに比較して軽いものであり、それに加わる慣性力はそれらフィルムロール22a,42aの回転を加速させる場合に比較して小さい。このため、摩擦防止手段として、それらのローラ25,26,46を強制的に回転させるサーボモータ128を用いても、そのサーボモータ128は、間欠搬送されるフィルム12の搬送速度に一致するように、それらのローラ25,26,46を回転させることが可能になる。よって、このようなサーボモータ128から成る摩擦防止手段であっても、間欠搬送するフィルム12にキズ等を生じさせることなく、そのフィルム12の搬送速度を十分に高めることができる。また、サーボモータ128から成る摩擦防止手段にあっては、回転させるローラ25,26,46は、図10に示すように、筒部26aの両側にフィルム12の幅方向の移動を制限する壁部材26a,26cが設けられた比較的安価な一般的なローラで足りることになる。
【0079】
更に、上述した実施の形態では、第三固定ローラ44をフィルム12を吸着して回転可能に構成し、第二固定ローラ25がフィルム12との間に摩擦を生じさせないようにしたけれども、第二固定ローラ25をフィルム12を吸着して回転可能に構成し、第三固定ローラ44がフィルム12との間に摩擦を生じさせないようにしても良い。また、フィルム12の所定量の間欠搬送が可能である限り、第二及び第三固定ローラ25,44に掛け回されたフィルム12とそれら第二及び第三固定ローラ25,44との間の双方において、圧縮エア供給ポンプ27又はサーボモータ128を用いて、摩擦を生じさせないようにしても良い。
【符号の説明】
【0080】
10 フィルムの間欠搬送装置
12 フィルム
22 フィルム繰出し機構
23 繰出しアキュームレート機構
24 第一固定ローラ
25 第二固定ローラ
26 上流側可動ローラ
27 圧縮エア供給ポンプ(摩擦防止手段)
42 フィルム巻取り機構
43 巻取りアキュームレート機構
44 第三固定ローラ
45 第四固定ローラ
46 下流側可動ローラ
53 巻取り用サーボモータ
128 サーボモータ(摩擦防止手段)



【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルム(12)を常時一定量で繰出すフィルム繰出し機構(22)と、前記フィルム繰出し機構(22)から繰出される前記フィルム(12)を徐々に蓄えて短時間の内に排出する繰出しアキュームレート機構(23)と、前記繰出しアキュームレート機構(23)により短時間の内に排出された量の前記フィルム(12)を前記繰出しアキュームレート機構(23)における前記フィルム(12)の排出と同時に短時間の内に蓄える巻取りアキュームレート機構(43)と、前記巻取りアキュームレート機構(43)から徐々に排出される前記フィルム(12)を常時一定量で巻取るフィルム巻取り機構(42)とを備えたフィルムの間欠搬送装置であって、
前記繰出しアキュームレート機構(23)は、フィルム(12)の搬送経路に沿って設けられた第一及び第二固定ローラ(24,25)と、前記第一及び第二固定ローラ(24,25)の中間を通過して前記フィルム(12)の搬送経路に直交する方向に移動可能な上流側可動ローラ(26)と、前記上流側可動ローラ(26)に掛け回された前記フィルム(12)と前記上流側可動ローラ(26)との間に摩擦を生じさせない上流側摩擦防止手段(27)とを備え、
前記巻取りアキュームレート機構(43)は、フィルム(12)の搬送経路に沿って設けられた第三及び第四固定ローラ(44,45)と、前記第三及び第四固定ローラ(44,45)の中間を通過して前記フィルム(12)の搬送経路に直交する方向に移動可能な下流側可動ローラ(46)と、前記下流側可動ローラ(46)に掛け回された前記フィルム(12)と前記下流側可動ローラ(46)との間に摩擦を生じさせない下流側摩擦防止手段(27)とを備えた
ことを特徴とするフィルムの間欠搬送装置。
【請求項2】
第二及び第三固定ローラ(25,44)のいずれか一方又は双方が掛け回されたフィルムを吸着して回転可能に構成され、
前記第二及び第三固定ローラ(25,44)の前記フィルムを吸着するいずれか一方又は双方を回転させる巻取り用サーボモータ(53)を備えた請求項1記載のフィルムの間欠搬送装置。
【請求項3】
第二及び第三固定ローラ(25,44)のいずれか一方がフィルム(12)を吸着して回転可能に構成され、
前記第二及び第三固定ローラ(25,44)のいずれか他方に掛け回された前記フィルム(12)と前記第二及び第三固定ローラ(25,44)のいずれか他方との間に摩擦を生じさせない搬送側摩擦防止手段(27)とを更に備えた請求項2記載のフィルムの間欠搬送装置。
【請求項4】
第二及び第三固定ローラ(25,44)に掛け回されたフィルム(12)と前記第二及び第三固定ローラ(25,44)との間に摩擦を生じさせない搬送側摩擦防止手段を更に備えた請求1記載のフィルムの間欠搬送装置。
【請求項5】
摩擦防止手段が圧縮エアをローラ(25,26,46)に供給して前記ローラ(25,26,46)に掛け回されたフィルム(12)を前記ローラ(25,26,46)の外周から浮上させる圧縮エア供給ポンプ(27)である請求項1ないし4いずれか1項に記載のフィルムの間欠搬送装置。
【請求項6】
摩擦防止手段が、回転するローラ(25,26,46)の外周における速度が前記ローラ(25,26,46)に掛け回されたフィルム(12)の搬送速度に一致するように前記ローラ(25,26,46)を回転させるサーボモータ(128)である請求項1ないし4いずれか1項に記載のフィルムの間欠搬送装置。
【請求項7】
フィルム繰出し機構(22)により常時一定量で繰出されるフィルム(12)を徐々に蓄えて短時間の内に排出することを繰出しアキュームレート機構(23)により繰り返し、前記繰出しアキュームレート機構(23)により短時間の内に排出された量の前記フィルム(12)を前記繰出しアキュームレート機構(23)の排出と同時に短時間の内に巻取りアキュームレート機構(43)により蓄え、前記巻取りアキュームレート機構(43)が蓄えた前記フィルム(12)を前記繰出しアキュームレート機構(23)の次回の排出時までに常時一定量で排出してフィルム巻取り機構(42)により巻取るフィルムの間欠搬送方法であって、
前記繰出しアキュームレート機構(23)におけるフィルム(12)の蓄えは、前記フィルム(12)の搬送経路に沿って設けられた第一及び第二固定ローラ(24,25)から、前記第一及び第二固定ローラ(24,25)の中間におけるフィルム(12)を上流側可動ローラ(26)の外周との間に摩擦を生じさせることなく前記上流側可動ローラ(26)の外周に掛け回して前記第一及び第二固定ローラ(24,25)の中間を通過して前記フィルム(12)の搬送経路に直交する方向に前記上流側可動ローラ(26)を離間させることにより行われ、
前記繰出しアキュームレート機構(23)における前記フィルム(12)の排出は、前記フィルム(12)が掛け回された前記上流側可動ローラ(26)を前記フィルム(12)と前記上流側可動ローラ(26)の外周との間に摩擦を生じさせることなく前記第一及び第二固定ローラ(24,25)に接近させることにより行われ、
前記巻取りアキュームレート機構(43)におけるフィルム(12)の蓄えは、前記フィルム(12)の搬送経路に沿って設けられた第三及び第四固定ローラ(44,45)から、前記第三及び第四固定ローラ(44,45)の中間におけるフィルム(12)を下流側可動ローラ(46)の外周との間に摩擦を生じさせることなく前記下流側可動ローラ(46)の外周に掛け回して前記第三及び第四固定ローラ(44,45)の中間を通過して前記フィルム(12)の搬送経路に直交する方向に前記下流側可動ローラ(46)を離間させることにより行われ、
前記巻取りアキュームレート機構(43)における前記フィルム(12)の排出は、前記フィルム(12)が掛け回された前記下流側可動ローラ(46)を前記フィルム(12)と前記下流側可動ローラ(46)の外周との間に摩擦を生じさせることなく前記第三及び第四固定ローラ(44,45)に接近させることにより行われる
ことを特徴とするフィルムの間欠搬送方法。
【請求項8】
繰出しアキュームレート機構(23)によるフィルム(12)の排出時に、排出される前記フィルムを第二及び第三固定ローラ(25,44)のいずれか一方又は双方の外周に吸着させ、前記フィルム(12)を吸着した外周における速度が前記フィルム(12)の排出速度と同一になるように前記第二及び第三固定ローラ(25,44)のいずれか一方又は双方を回転させる請求項7記載のフィルムの間欠搬送方法。
【請求項9】
第二及び第三固定ローラ(25,44)のいずれか一方にフィルムを吸着させて繰出しアキュームレート機構(23)によるフィルム(12)の排出時に回転させ、
前記第二及び第三固定ローラ(25,44)のいずれか他方の外周に掛け回されたフィルム(12)と前記第二及び第三固定ローラ(25,44)のいずれか他方の外周との間に摩擦を生じさせない請求項8記載のフィルムの間欠搬送方法。
【請求項10】
第二及び第三固定ローラ(25,44)の外周に掛け回されたフィルム(12)と前記第二及び第三固定ローラ(25,44)の外周との間に摩擦を生じさせない請求項7記載のフィルムの間欠搬送方法。
【請求項11】
ローラ(25,26,46)の外周からそれぞれ吹き出すエアにより掛け回されたフィルム(12)を前記ローラ(25,26,46)の外周から浮上させて、前記フィルム(12)と前記ローラ(25,26,46)の外周との間に摩擦を生じさせない請求項7ないし10いずれか1項に記載のフィルムの間欠搬送方法。
【請求項12】
ローラ(25,26,46)の外周における速度が前記ローラ(25,26,46)の外周に掛け回されたフィルム(12)の搬送速度に一致するように前記ローラ(25,26,46)を回転させて、前記フィルム(12)と前記ローラ(25,26,46)の外周との間に摩擦を生じさせない請求項7ないし10いずれか1項に記載のフィルムの間欠搬送方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−103806(P2013−103806A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−249209(P2011−249209)
【出願日】平成23年11月15日(2011.11.15)
【出願人】(000227537)日特エンジニアリング株式会社 (106)
【Fターム(参考)】