説明

フィルムを製造するためのポリエチレンを含む成形組成物、並びに混合触媒の存在下で成形組成物を製造する方法

ポリエチレンを含み、0.915〜0.955g/cm3の範囲の密度、0〜3.5g/10分の範囲のMI、5〜50の範囲のMFR、5〜20の範囲の多分散度Mw/Mn、及び100万g/モル未満のz平均モル質量Mzを有する成形組成物、かかる組成物の製造方法、その製造に好適な触媒、ならびにこの成形組成物を含むフィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリエチレンを含む成形組成物、並びに、予備重合したクロム化合物及びメタロセン化合物を含む混合触媒の存在下で成形組成物を製造する方法に関する。かかるポリエチレンを含む成形組成物から出発して、良好な機械特性を同時に有しながら驚くほど高い透明度を有するフィルムを製造することができる。
【背景技術】
【0002】
最近においては、全てのタイプのフィルムを製造するためにポリエチレンブレンドが用いられている。多くの用途、特に食品部門においては、例えば引張り強さの点で良好な機械特性を有するフィルムの強い必要性のみならず、光学的品質を有するフィルムの必要性もある。光沢度及び透明度は、通常、密度が増加するにつれて低下するので、特に中程度の密度及び良好な光学特性を有するフィルムを得るのは困難である。
【0003】
チーグラータイプ又はメタロセンタイプの2以上の異なるオレフィン重合触媒を含む触媒組成物を用いることが知られている。例えば、幅広い分子量分布を有する反応器ブレンドを製造するために、一方のものが、他方によって製造されるものとは異なる平均モル質量を有するポリエチレンを生成する二つの触媒の組み合わせを用いることができる(WO95/11264)。チタンをベースとする古典的なチーグラー・ナッタ触媒を用いて形成される、LLDPE(線状低密度ポリエチレン)として知られている、エチレンとより高級なα−オレフィン、例えばプロペン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、又は1−オクテンとのコポリマーは、メタロセンを用いて製造されるLLDPEとは異なる。コモノマーを含ませることによって形成される側鎖の数、及び短鎖分岐分布(SCBD)として知られているその分布は、種々の触媒系を用いた場合に大きく異なる。側鎖の数及び分布は、エチレンコポリマーの結晶化挙動に強く影響する。これらのエチレンコポリマーの流動特性、及びしたがって加工特性は、主としてそのモル質量及びモル質量分布に依存するが、機械特性は、特に、短鎖分岐分布に依存する。しかしながら、短鎖分岐分布は、また、特定の加工プロセス、例えばフィルム押出においても役割を果たす。フィルム押出においては、押出されたフィルムの冷却中のエチレンコポリマーの結晶化挙動が、フィルムを如何に速く押出すことができ且つどのような品質のフィルムを押出すことができるかを決定する重要なファクターである。多くの可能な組み合わせを考慮して、良好な機械特性及び良好な加工性のバランスのとれた組み合わせのための触媒の的確な組み合わせを見出すことは困難である。
【0004】
EP−A−339571においては、クロム含有触媒及びメタロセン化合物を含む混合触媒が記載されている。得られるポリエチレン成形組成物は、極めて幅広いモル質量分布を有し、ブロー成形体を製造するのに好適である。
【0005】
WO97/08213においては、両方とも種々の担体に施されたクロム含有触媒及びメタロセン化合物を含む混合触媒が記載されている。得られるポリエチレン成形組成物は、極めて幅広いモル質量分布を有し、ブロー成形体を製造するのに特に好適である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、本発明の主たる目的は、単一のプロセス工程のみで得ることができるポリエチレンを含む成形組成物を提供することである。この方法で得られる成形組成物は、加工して、ブローフィルムを製造するのに好ましい良好な機械特性を同時に有しながら極めて高い透明度及び光沢度を有するフィルムを与えることができなければならない。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的は、ポリエチレンを含み、0.915〜0.955g/cm3の範囲の密度、0〜3.5g/10分の範囲のMI、5〜50の範囲のMFR、5〜20の範囲の多分散度Mw/Mn、及び100万g/モル未満のz平均モル質量Mzを有する成形組成物によって達成される。
【0008】
本発明の成形組成物の密度は、0.915〜0.955g/cm3、好ましくは0.925〜0.95g/cm3の範囲、特に好ましくは0.93〜0.945g/cm3の範囲である。本発明の成形組成物のMIは、0〜3.5g/10分の範囲、好ましくは0〜3g/10分、より好ましくは0.1〜2.5g/10分の範囲である。本発明の目的のために、「MI」という表現は、公知の方法で、「メルトインデックス」を指し、ISO1133にしたがって2.16kgの負荷下、190℃で測定する(190℃/2.16kg)。本発明の成形組成物のMFRは、5〜50の範囲、好ましくは10〜30、より好ましくは14〜25の範囲である。本発明の目的のために、「MFR」という表現は、公知の方法で、「メルトフロー比」を指し、HLMI:MIの比(ここで、「HLMI」という表現は、本発明の目的のために、「高負荷メルトインデックス」を指し、ISO1133にしたがって21.6kgの負荷下、190℃で測定する(190℃/21.6kg))に対応する。本発明の成形組成物は、5〜20、好ましくは5.01〜10、特に好ましくは5.1〜8の範囲の多分散度Mw/Mnを有する。
【0009】
本発明の成形組成物のz平均モル質量Mzは、100万g/モル未満、好ましくは150,000g/モル〜800,000g/モル、特に好ましくは200,000g/モル〜600,000g/モルの範囲である。z平均モル質量の定義は、例えば、High Polymers,vol.XX,Raff及びDoak、Interscience Publishers,John Wiley & Sons,1965,p.443において見ることができる。
【0010】
本発明の成形組成物は、好ましくは、成形組成物の全重量を基準として0.5重量%未満、好ましくは0〜0.3重量%、特に0.1重量%未満の量の、100万g/モルより大きく、好ましくは900,000g/モルより大きいモル質量を有するポリエチレンを含む。100万g/モルより大きなモル質量を有するポリエチレンの割合は、ここでは、モル質量の測定に基づく方法を用いてゲル透過クロマトグラフィーによって測定する。
【0011】
本発明の目的のために、ポリエチレンという用語は、エチレンホモポリマー及び/又はエチレンコポリマーのようなエチレンのポリマーを包含する。本発明の成形組成物のエチレンコポリマー部分中においてエチレンに加えて単独か又は互いに混合して存在することのできる可能なコモノマーは、3〜10個の炭素原子を有する全ての1−アルケン、例えばプロペン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘプテン、1−オクテン、及び1−デセンである。エチレンコポリマーは、好ましくは、コモノマー単位として、4〜8個の炭素原子を有する1−アルケン、例えば、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチルペンテン、又は1−オクテンを、共重合された形態で含む。1−ブテン、1−ヘキセン、及び1−オクテンからなる群から選択される1−アルケンが特に好ましい。エチレンコポリマーは、好ましくは、0.01〜5重量%のコモノマー、特に好ましくは0.1〜2重量%のコモノマーを含む。
【0012】
本発明の成形組成物の重量平均モル質量Mwは、好ましくは、5,000g/モル〜700,000g/モル、好ましくは30,000g/モル〜5500,000g/モル、特に好ましくは70,000g/モル〜450,000g/モルの範囲である。
【0013】
本発明の成形組成物のモル質量分布は、単峰性、二峰性、又は多峰性であることができる。本特許出願の目的のために、単峰モル質量分布とは、モル質量分布が単一の最大値を有することを意味する。本特許出願の目的のために、二峰モル質量分布とは、モル質量分布が、最大値から出発して一つの稜線上に少なくとも二つの屈曲点を有することを意味する。モル質量分布は、好ましくは単峰性である。
【0014】
本発明の成形組成物は、好ましくは、1000炭素原子あたり0.01〜20の分岐数、好ましくは1000炭素原子あたり1〜15の分岐数、特に好ましくは1000炭素原子あたり3〜10の分岐数を有する。1000炭素原子あたりの分岐数は、James C. Randall,JMS−REV,Macromol.Chem.Phys.,C29(2&3),201−317(1989)によって記載されているように、13C−NMRによって測定し、1000炭素原子あたりの全CH3基含量に基づく。
【0015】
本発明の成形組成物は、好ましくは、1000炭素原子あたり少なくとも0.05のビニル基、好ましくは1000炭素原子あたり0.1〜5のビニル基、特に好ましくは1000炭素原子あたり0.15〜3のビニル基を有する。1000炭素原子あたりのビニル基の含量は、IRによって測定する(ASTM D6248−98)。本発明の目的のために、ビニル基という表現は、−CH=CH2基を指す。この表現は、ビニリデン基及び内部オレフィン基を含まない。ビニル基は、通常、エチレン挿入の後のポリマー停止反応に帰因し、一方、ビニリデン末端基は、通常、コモノマー挿入の後のポリマー停止反応によって形成される。ビニリデン及びビニル基は、その後に官能化又は架橋することができ、ビニル基は、通常、これらの引き続く反応により好適である。
【0016】
本発明の成形組成物は、好ましくは、1000炭素原子あたり少なくとも0.05のビニリデン基、特に1000炭素原子あたり0.1〜1のビニリデン基、特に好ましくは1000炭素原子あたり0.12〜0.5のビニリデン基を有する。測定は、ASTM D6248−98にしたがって行う。
【0017】
本発明の成形組成物は、好ましくは、ISO 13949にしたがって測定して、3未満、特に0〜2.5の混合特性を有する。この値は、押出器内で予め溶融を行わないで、反応器から直接回収されるポリエチレン、即ちポリエチレン粉末を指す。このポリエチレン粉末は、好ましくは単一の反応器内での重合によって得ることができる。
【0018】
本発明の成形組成物は、好ましくは、1000炭素原子あたり0〜2の長鎖分岐数、特に好ましくは1000炭素原子あたり0.1〜1.5の長鎖分岐数の、長鎖分岐度λを有する。長鎖分岐度λは、例えばACS Series 521,1993,ポリエチレンにおける長鎖分岐頻度のサイズ排除クロマトグラフィーによる評価(Chromatography of Polymers,Ed.Theodore Provder;Simon Pang及びAlfred Rudin;Size−Exclusion Chromatographic Assessment of Long−Chain Branch Frequency in Polyethylenes),p.254−269に記載されているような光散乱法によって測定した。
【0019】
更に、本発明の成形組成物は、更に、エチレンポリマーの質量を基準として、0〜6重量%、好ましくは0.1〜1重量%の少なくとも一つの添加剤、例えば熱可塑性材料用の従来の添加剤、例えば加工安定剤、光及び熱の影響に対する安定剤、潤滑剤、酸化防止剤、抗ブロッキング剤、及び静電防止剤のような従来の添加剤、並びに適当な場合には染料も含むことができる。とりわけ、潤滑剤(Caステアレート);従来の安定剤、例えば、フェノール、ホスファイト、ベンゾフェノン、ベンゾトリアゾール、又はチオエーテル;充填剤、例えばTiO2、チョーク、又はカーボンブラック;従来の顔料、例えばTiO2、ウルトラマリンブルーが好ましい。添加剤は、通常、プラスチック技術の従来法、例えば、溶融押出、圧延、圧縮又は溶解混合を用いて成形組成物と混合することによって導入される。例えば二軸押出機中での溶融押出が好ましい。押出温度は、概して、140〜250℃の範囲である。
【0020】
更に、フィルムを製造するための本発明の成形組成物の使用が見出された。また、本発明及びその好ましい態様の成形組成物が必須成分として存在するフィルムも見出された。
また、本発明は、本発明の成形組成物が必須成分として存在するフィルム、例えば、上記に定義した成形組成物を含み、成形組成物が、好ましくは全ポリマー材料を基準として50〜100重量%、より好ましくは60〜90重量%の量で存在しているポリマー材料を含むフィルムにも関する。特に、本発明は、また、50〜100重量%の本発明の成形組成物を含む少なくとも一つの層を有するフィルムにも関する。
【0021】
フィルムは、通常、成形組成物を190〜230℃の範囲の溶融温度で可塑化し、可塑化した成形組成物を、例えばスリットダイを通して冷却ローラー上に押出し、かくして押出された成形組成物を冷却することによって製造する。フィルムは、必要な場合には、0〜30重量%の量の、少なくとも一つの添加剤、例えば安定剤、酸化防止剤、静電防止剤、潤滑剤、抗ブロッキング剤、又は顔料のような従来の添加剤を更に含むことができる。
【0022】
本発明のフィルムは、5μm〜2.5mmの厚さを有するフィルムを製造するのに好適である。フィルムは、例えば、ブローフィルム押出法によって5〜250μmの厚さで、或いはフラットフィルム押出法によって10μm〜2.5mmの厚さで製造することができる。ブローフィルム押出法においては、成形組成物を溶融体として環状ダイを通して押出す。次に、溶融した管状物を空気によって膨らませて、ダイから押出される速度よりも大きな速度で引取る。激しい空気冷却によって、溶融体はフロストラインにおいて結晶融点以下になる。ここで、所望のフィルムバブルの寸法が決定する。フィルムバブルは、次に、折りたたみ、必要な場合には切断し、好適な巻き取り装置によって巻き取る。本発明の成形組成物は、運転モードによって、短いか又は長いネック部を有して製造することができる。フラットフィルム押出法においては、フィルムを、例えば冷却ロールプラント又は熱形成フィルムプラントで製造する。更に、被覆又はカレンダリングプラントで複合フィルムを得ることができる。この方法は、紙、アルミニウム、又は布帛支持ウエブを複合体構造中に含ませる複合フィルムに特に適用される。本発明のフィルムは、少なくとも一つの層、好ましくは少なくとも複数の層を有することができ、好ましくは一つの層を有する。
【0023】
本発明の成形組成物は、特に、ブローフィルム及びキャストフィルムプラントにおいて高い生産量でフィルムを製造するのに非常に好適である。本発明の成形組成物を含むフィルムは、極めて良好な機械特性、高い耐衝撃性、及び高い引裂強度を、極めて良好な光学特性、特に透明度及び光沢度と共に示す。これらの性質は、例えば、重袋用及び食品部門用の両方のヒートシールフィルムのような包装部門に特に好適である。更に、フィルムは、低いブロッキング性しか示さず、したがって潤滑剤及び抗ブロッキング剤を加えることなく、或いはこれらを少量しか加えずに、機械によって取り扱うことができる。
【0024】
本発明のフィルムは、特に、表面保護フィルム、伸縮フィルム、衛生用フィルム、オフィス用フィルム、ヘビーデューティー包装フィルム、複合フィルム、及び光沢加工フィルムとして好適である。特に良好な光学特性の結果、本発明のフィルムは、それに高品質の印刷が可能であるのでキャリアバッグを製造するのに、またこのフィルムは低いレベルの臭気及び味質も有しているので食品包装におけるヒートシール層のための光沢加工フィルムとして、並びに、このフィルムは高速運転プラントで加工することができるので自動包装フィルム、即ち自動機械で加工するのに好適なフィルムとして、特に好適である。
【0025】
50μmの厚さを有する本発明のフィルムは、好ましくは、40%未満、特に5〜35%、特に好ましくは10〜33%の範囲の曇り度を有する。曇り度は、ASTM D1003−00にしたがって、BYK Gardener Haze Guard Plus Deviceで、10×10cmの寸法を有する少なくとも5枚のフィルムについて測定する。50μmの厚さを有する本発明のフィルムについてのダートドロップ衝撃試験は、好ましくは、130gより大きく、特に150〜500g、特に好ましくは170〜400gの範囲の値を与える。DDIは、ASTM D1709の方法Aにしたがって測定する。50μmの厚さを有する本発明のフィルムは、好ましくは、90%より大きく、好ましくは91〜100%の範囲、特に好ましくは93〜99%の範囲の透明度を有する。透明度は、ASTM D1746−03にしたがって、較正セル77.5を用いて較正したBYK Gardener Haze Guard Plus Deviceで測定した。50μmの厚さを有する本発明のフィルムの60°における光沢度は、好ましくは、50より大きく、好ましくは52〜90、特に55〜80の範囲である。光沢度は、ASTM D2457−03にしたがって、フィルムを固定するための真空板を有する光沢度計60°で測定した。
【0026】
フィルムの製造において得られるスクラップは、再使用して本発明の新しい成形組成物と混合することができる。スクラップは、通常、粉砕し、副押出機を通して主押出機中に粉砕再生材料として供給する。
【0027】
本発明の成形組成物は、例えば、ブローフィルムプラントにおいて高い生産量でフィルムを製造するのに非常に好適である。本発明の成形組成物を含むフィルムは、良好な機械特性及び光学特性を示す。これから得られるフィルムの高い穿刺強度も、また顕著である。
【0028】
本発明者らは、また、本発明の成形組成物を製造するための触媒系、エチレンの重合又はエチレンと3〜10個の炭素原子を有する1−アルケンとの共重合のための該触媒系の使用、並びに該触媒系の存在下でエチレンを重合するか又はエチレンと3〜10個の炭素原子を有する1−アルケンとを共重合することによって本発明の成形組成物を製造する方法も見出した。
【0029】
本発明の成形組成物は、本発明、及び特にその好ましい態様の触媒系を用いて得ることができる。
本発明はまた、エチレンを、場合によっては式:R1CH=CH2(式中、R1は、水素又は1〜10個の炭素原子を有するアルキル基である)の1−アルケンの存在下、20〜200℃の温度及び0.5〜100bar(0.05〜1MPaに相当する)の圧力下で、予備重合したクロム化合物及びメタロセン化合物を含む混合触媒の存在下で共重合することによって本発明の成形組成物を製造する方法も提供する。好適な1−オレフィンは、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、又は1−オクテンである。
【0030】
エチレンを単独で、或いは少なくとも50重量%のエチレンと50重量%以下の上記式の他の1−アルケンとの混合物で重合することが好ましい。特に、エチレンを単独で、或いは少なくとも80重量%のエチレンと20重量%以下の上記式の他の1−アルケンとの混合物を重合する。
【0031】
用いる混合触媒の高い活性の結果として、本発明方法は、極めて低い遷移金属及びハロゲンの含量を有し、したがって色安定性及び腐食試験、特に透明度において極めて良好な値を有するポリマーを与える。
【0032】
混合触媒は、予備重合したクロム化合物及びメタロセン化合物を含む。クロム化合物は、好ましくは、工程(a)において固体担体上に固定化し、固定化したクロム化合物を次に工程(b)において熱処理によって活性化し、活性化したクロム化合物を次に工程(c)において予備重合し、予備重合したクロム化合物を次に工程(d)においてメタロセン化合物を固定化するための担持材料として用いる。
【0033】
本発明は、更に、この方法によって得られる混合触媒も提供する。
担体成分としては、任意の有機又は無機固体であってよい微粉砕担体が好ましい。特に、担体成分は、タルクのような多孔質担体、モンモリロナイト、マイカのような層状ケイ酸塩、無機酸化物、又は微粉砕ポリマー粉末(例えば、ポリオレフィン、又は極性官能基を有するポリマー)のような多孔質担体であってよい。
【0034】
微粉砕ポリオレフィン粉末(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、又はポリスチレン)のような有機担体材料もまた用いることができ、好ましくは、同様に、使用前に適当な精製及び乾燥操作によって、吸着湿分、残留溶媒又は他の不純物を除去する。また、官能化ポリマー担体、例えば、その官能基、例えばアンモニウム又はヒドロキシ基を介して少なくとも一つの触媒成分を固定化することができるポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、又はポリブチレンをベースとする担体を用いることもできる。また、ポリマーブレンドを用いることもできる。
【0035】
担体成分として好適な無機酸化物は、元素周期律表の第2、3、4、5、13、14、15及び16族の元素の酸化物の中から見出すことができる。担体として好ましい酸化物の例は、二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、及び、カルシウム、アルミニウム、ケイ素、マグネシウム、又はチタン元素の混合酸化物、並びに対応する酸化物混合物を含む。単独で、又は上記記載の好ましい酸化物担体と組み合わせて用いることができる他の無機酸化物は、例えば、MgO、CaO、ZrO2、TiO2、B23、又はこれらの混合物である。
【0036】
更に好ましい無機担体材料は、MgCl2のような無機ハロゲン化物、或いはNa2CO3、K2CO3、CaCO3、MgCO3のような炭酸塩、Na2SO4、Al2(SO43、BaSO4のような硫酸塩、KNO3、Mg(NO32、又はAl(NO33のような硝酸塩、或いはAlPO4のようなリン酸塩である。
【0037】
更に好ましい無機担体は、ハイドロタルサイト及びか焼ハイドロタルサイトである。鉱物学的には、ハイドロタルサイトは理想式:
Mg6Al2(OH)16CO3・4H2
を有する天然鉱物であり、その構造は水滑石Mg(OH)2のものから誘導される。水滑石は、8面体孔中の金属イオンが最密のヒドロキシルイオンの二つの層の間に存在し、8面体孔の各第2層のみが占有されている層状構造の結晶構造を有する。ハイドロタルサイトにおいては、層のパケットが正の電荷を得る結果として、一部のマグネシウムイオンがアルミニウムイオンによって置換されている。これは、中間の層中の結晶水と共に配置されるアニオンによって補償される。
【0038】
かかる層状構造は、マグネシウム−アルミニウム水酸化物においてのみならず、一般式:
M(II)2x2+M(III)23+(OH)4x+4・A2/nn-・zH2
(式中、M(II)は、Mg、Zn、Cu、Ni、Co、Mn、Ca、及び/又はFeのような二価の金属であり、M(III)は、Al、Fe、Co、Mn、La、Ce、及び/又はCrのような三価の金属であり、xは0.5刻みで0.5〜10であり、Aは格子間アニオンであり、nは格子間アニオンの電荷で、1〜8、通常は1〜4であることができ、zは1〜6、特に2〜4の整数である)
の層状構造を有する混合金属水酸化物においても一般的に見られる。可能な格子間アニオンは、アルコキシドアニオン、アルキルエーテルスルフェート、アリールエーテルスルフェート、又はグリコールエーテルスルフェートのような有機アニオン、或いは、特に炭酸塩、炭酸水素塩、硝酸塩、塩化物、硫酸塩、又はB(OH)4-、或いはMo7246-又はV10286-のようなポリオキソ金属アニオンのような無機アニオンである。しかしながら、複数のかかるアニオンの混合物が存在していてもよい。
【0039】
したがって、層状構造を有するかかる混合金属酸化物は、全て本発明の目的のためのハイドロタルサイトとみなすべきである。
か焼ハイドロタルサイトは、か焼、即ち、とりわけ所望のヒドロキシル基含量を設定することができる手段による加熱によってハイドロタルサイトから調製することができる。更に、結晶構造も変化する。本発明にしたがって用いるか焼ハイドロタルサイトの調製は、通常、180℃より高い温度において行う。250℃〜1000℃、特に400℃〜700℃の温度で3〜24時間か焼を行うことが好ましい。この工程中に、固体上に空気又は不活性ガスを通したり、或いは減圧を加えることができる。
【0040】
加熱によって、天然又は合成ハイドロタルサイトは、まず水を放出する。即ち、乾燥が起こる。更に加熱すると、実際のか焼が起こり、ヒドロキシル基及び格子間アニオンが脱離することによって金属水酸化物が金属酸化物に転化する。OH基或いは炭酸塩のような格子間アニオンも、か焼ハイドロタルサイトにおいて未だ存在する可能性がある。この尺度は、燃焼による損失である。これは、まず乾燥オーブン中で200℃で30分、次にマッフル炉中で950℃で1時間の2段階で加熱した試料によって観察される重量損失である。
【0041】
而して、担体として用いるか焼ハイドロタルサイトは、M(II):M(III)のモル比が、概して、0.5〜10、好ましくは0.75〜8、特に1〜4の範囲である二価金属及び三価金属:M(II)及びM(III)の混合酸化物である。更に、通常の量の不純物、例えばSi、Fe、Na、Ca、又はTi、並びに塩化物及び硫酸塩も、存在していてもよい。
【0042】
好ましいか焼ハイドロタルサイトは、M(II)がマグネシウムであり、M(III)がアルミニウムである混合酸化物である。かかるアルミニウム−マグネシウム混合酸化物は、Condea Chemie GmbH(現在はSasol Chemie),HamburgからPuralox Mgの商品名で入手することができる。
【0043】
構造変化が完全か又は実質的に完全であるか焼ハイドロタルサイトも好ましい。か焼、即ち構造の変化は、例えばX線回折パターンによって確認することができる。
また、担体材料として微粉砕シリカキセロゲルも好ましく、これらは、例えばDE−A−2540279に記載されているようにして調製することができる。微粉砕シリカキセロゲルは、好ましくは、
(α)10〜25重量%の固形分(SiO2として計算)を含み、概して球状で、1〜8mmの粒径を有し、
(α1)ナトリウム又はカリウムの水ガラス溶液を、鉱酸水溶液の回転する流れの中に、流れに対して縦方向及び接線方向の両方で導入し、
(α2)得られたシリカヒドロゾルを気体媒体中に噴霧して液滴を形成し、
(α3)噴霧したヒドロゾルを気体媒体中で固化させ、
(α4)得られた概して球状のヒドロゲルの粒子を、予め熟成することなしに洗浄することによってそれから塩を除去する、
ことによって得られる粒子状シリカヒドロゲルを用い;
(β)有機液体によってヒドロゲル中に存在する水の少なくとも60%を抽出し;
(χ)得られたゲルを、180℃及び30mbarの減圧下で30分かけて、重量損失が起こらなくなるまで乾燥し(キセロゲル形成);そして、
(δ)得られたキセロゲルの粒径を20〜2000μmに調節する;
ことによって得られる。
【0044】
担体材料の調製の第1工程(α)においては、10〜25重量%、好ましくは12〜20重量%、特に好ましくは14〜20重量%の比較的高い固形分含量(SiO2として計算)を有し、概して球状のシリカヒドロゲルを用いることが重要である。このシリカヒドロゲルは、工程(α1)〜(α4)において記載したような特定の方法で調製された。工程(α1)〜(α3)は、DE−A−2103243においてより詳細に記載されている。工程(α4)、即ちヒドロゲルの洗浄は、任意の方法で、例えば、80℃以下の温度で、アンモニアによって僅かにアルカリ性(pH約10以下)にされた水を用いて対向流方式によって行うことができる。
【0045】
ヒドロゲルからの水の抽出(工程(β))は、好ましくは、C1〜C4アルコール及び/又はC3〜C5ケトンからなる群から選択され、特に好ましくは水と混和性の有機液体を用いて行う。特に好ましいアルコールは、tert−ブタノール、i−プロパノール、エタノール、及びメタノールである。ケトンの中ではアセトンが好ましい。また、有機液体は、上記記載の有機液体の混合物からなっていてもよく、いずれの場合においても、有機液体は、抽出前に、5重量%未満、好ましくは3重量%未満の水を含む。抽出は、従来の抽出装置、例えばカラム抽出器内で行うことができる。
【0046】
乾燥(工程(χ))は、好ましくは、30〜140℃、特に好ましくは80〜110℃の温度、及び好ましくは1.3mbar〜大気圧の圧力で行う。ここで、蒸気圧の理由のために、温度の上昇は、圧力の上昇と同時に起こり、逆もまた同様である。
【0047】
得られたキセロゲルの粒径の決定(工程(δ))は、任意の方法で、例えば粉砕及び篩別によって行うことができる。
更に好ましい担体材料は、とりわけ、粉砕され、適当に篩別され、この目的のために水又は脂肪族アルコールと混合されたヒドロゲルを噴霧乾燥することによって調製される。一次粒子は、適当に粉砕され篩別された、1〜20μm、好ましくは1〜5μmの平均粒径を有するヒドロゲルの多孔質の顆粒状粒子である。粉砕され篩別されたSiO2ヒドロゲルが好ましい。
【0048】
シリカゲルは、その寸法及び構造のためにオレフィン重合のための担体として特に好適な粒子をこの材料から製造することができるので、本発明の混合触媒のための固体担体として好ましい。球状又は顆粒状のシリカゲルが好ましい。より小さい顆粒状粒子、即ち一次粒子の球状凝集物である噴霧乾燥シリカゲルが、特に有用であることが見出された。シリカゲルは、それらを使用する前に乾燥及び/又はか焼することができる。
【0049】
用いる担体は、好ましくは、10〜1000m2/gの範囲の比表面積、0.1〜5mL/gの範囲の孔容積、及び1〜500μmの平均粒径D50を有する。50〜700m2/gの範囲の比表面積、0.4〜3.5mL/gの範囲の孔容積、及び5〜350μmの範囲の平均粒径D50を有する担体が好ましい。200〜550m2/gの範囲の比表面積、0.5〜3.0mL/gの範囲の孔容積、及び10〜150μmの範囲の平均粒径D50を有する担体が特に好ましい。
【0050】
無機担体は、例えば吸着水を除去するために熱処理にかけることができる。かかる乾燥処理は、概して、50〜1000℃、好ましくは100〜600℃の範囲の温度で行われ、100〜200℃における乾燥を減圧下及び/又は不活性ガス(例えば窒素)の雰囲気下で行うことが好ましく、或いは、無機担体は、200〜1000℃の温度でか焼して、固体の所望の構造を生成するか及び/又は表面上に所望のOH濃度を与えることができる。また、担体は、金属アルキル、好ましくはアルミニウムアルキルのような従来のデシカント、クロロシラン又はSiCl4、或いはメチルアルミノキサンを用いて化学的に処理することもできる。適当な処理法は、例えばWO 00/31090に記載されている。
【0051】
また、無機担体材料は、化学的に変性することもできる。例えば、シリカゲルをNH4SiF6或いは他のフッ素化剤で処理することによりシリカゲルの表面をフッ素化することができ、或いは、シリカゲルを、窒素、フッ素、又はイオウ含有基を有するシランで処理することによって、相応して変性されたシリカゲル表面を形成することができる。更に好適な担体材料は、例えば、元素状のホウ素(BE−A−861,275)、アルミニウム(米国特許4,284,527)、ケイ素(EP−A−0166157)、又はリン(DE−A−3635710)を用いて、孔表面を変性することによって得ることができる。
【0052】
クロム化合物は、無機又は有機基を有することができる。無機クロム化合物が好ましい。好適なクロム化合物の例は、三酸化クロム及び水酸化クロムはさておき、四価クロムと有機及び無機酸との塩、例えば、クロムの酢酸塩、シュウ酸塩、硫酸塩、及び硝酸塩、並びに四価クロムのキレート、例えばクロムアセチルアセトネートである。これらの中で、硝酸クロム(III)9水和物、及びクロムアセチルアセトネートが極めて特に好ましい。
【0053】
担体材料は、通常、溶媒中に懸濁し、それにクロム化合物を溶液として加える。しかしながら、例えばクロム化合物を懸濁媒体中に溶解し、次にこれを担体材料に加えることも可能である。担体材料は、好ましくは、クロム化合物を加える前に、懸濁媒体、及び所望の場合には酸、好ましくはギ酸又は酢酸、特に好ましくはギ酸のようなC1〜C6カルボン酸を用いて、10〜120分間スラリー化する。
【0054】
担体への適用は、一般に、100:0.1〜100:10、特に100:0.3〜100:3の担体:クロム化合物の重量比を用いて行う。
反応工程(a)は、0〜100℃の温度で行うことができる。コストの理由のために、室温が好ましい。溶媒及び/又は酸は、引き続く工程(b)の前に、部分的か又は完全に留去することができる。工程(a)からのクロム含有担体は、好ましくは、更に反応させる前に単離して、懸濁媒体及び酸を大部分除去する。
【0055】
溶媒としては、クロム化合物のタイプに応じて極性及び非極性の溶媒を用いることができる。工程(a)においては、水又はメタノール中で担体をクロム化合物と接触させることが好ましい。ここで、クロム成分は、好ましくは、水又はメタノール中に溶解し、次に懸濁した担体と混合する。反応時間は、通常、10分〜5時間である。
【0056】
次に好ましくは、溶媒を、好ましくは20〜150℃の温度及び10mbar〜1mbarの圧力下で除去する。この方法で得られるプレ触媒は、完全に乾燥状態であるか、或いは多少の残留湿分含量を有していてよい。しかしながら、揮発性成分は、未活性化クロム含有プレ触媒を基準として20重量%以下、特に10重量%以下の量を構成していなければならない。
【0057】
反応工程(a)から得られるプレ触媒は、速やかに工程(b)にかけるか、或いは工程(a’)において前もって、280℃より高い温度の水を含まない不活性ガス雰囲気中でか焼することができる。か焼は、好ましくは、280〜800℃の温度で、流動床内において10〜1000分間行う。
【0058】
この方法で工程(a)又は(a’)から得られた中間体は、次に、工程(b)において、酸化条件下、例えば酸素含有雰囲気中、400〜1000℃の温度で活性化する。工程(a)又は(a’)から得られた中間体は、好ましくは、不活性ガスを酸素含有ガスに置き換え、温度を活性化温度に上昇させることによって流動床内で直接活性化する。この場合においては、有利には、10容量%より大きな濃度で酸素を含む水を含まない気体流中で、400〜1000℃、特に500〜800℃で、10〜1000分間、特に150〜750分間加熱し、次に室温に冷却する。活性化の最高温度は、工程(a)又は(a’)からの中間体の焼結温度よりも低く、好ましくは少なくとも20〜100℃低い。また、この酸素は、好適なフッ素化剤、例えばアンモニウムヘキサフルオロシリケートの存在下で行うこともできる。
【0059】
この方法で得られるクロム含有プレ触媒は、有利には、0.1〜5重量%、特に0.3〜2重量%のクロム含量を有する。
この方法で得られるクロム含有プレ触媒は、1−アルケンの重合において短い誘導時間を示す。
【0060】
得られた本発明によって用いるクロム含有プレ触媒は、また、工程(c)において用いる前に、例えばエチレン及び/又はα−オレフィン、一酸化炭素又はトリエチルボランによって懸濁液中又は気相中で還元することもでき、或いはシリル化によって変性することもできる。還元剤:クロムのモル比は、通常、0.05:1〜500:1、好ましくは0.1:1〜50:1、特に0.5:1〜5.0:1の範囲である。
【0061】
懸濁液中においては、還元温度は、概して、10〜200℃の範囲、好ましくは10〜100℃の範囲であり、圧力は、0.1〜500barの範囲、好ましくは1〜20barの範囲である。
【0062】
流動床プロセスでの還元温度は、通常、10〜1000℃、好ましくは10〜800℃、特に10〜600℃の範囲である。概して、気相還元は、0.1〜500barの圧力範囲、好ましくは1〜100barの範囲、特に5〜20barの範囲で行う。
【0063】
気相還元においては、還元するクロム触媒を、一般に、不活性キャリアガス流、例えば窒素又はアルゴンによって流動床反応器内で流動化する。通常、キャリアガス流に、還元剤、好ましくは少なくとも1mbarのSTPにおける蒸気圧を有する液体還元剤を装填する。
【0064】
工程(c)においては、クロム含有プレ触媒を、まず、α−オレフィン、好ましくは線状のC2〜C10−1−アルケン、特にエチレン、又はエチレンとC2〜C10−1−アルケンとの混合物で予備重合する。その上に重合するモノマーに対する予備重合において用いるクロム含有プレ触媒の質量比は、1:0.1〜1:1000、好ましくは1:1〜1:200の範囲である。予備重合は、懸濁液中、溶液中、或いは気相中において、20〜200℃の温度及び0.5〜50bar(0.05〜0.5MPaに相当する)の圧力下で行うことができる。
【0065】
クロム含有プレ触媒による予備重合は、元素周期律表の1主族、2主族、3主族、又は4主族、或いは第2遷移族の有機金属化合物の存在下で行うことができる。このタイプの適した化合物は、リチウム、ホウ素、アルミニウム、又は亜鉛のホモレプティックC1〜C10アルキル、例えばn−ブチルリチウム、トリエチルホウ素、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリブチルアルミニウム、トリヘキシルアルミニウム、トリオクチルアルミニウム、及びジエチル亜鉛である。更に、ジエチルアルミニウムエトキシドのようなC1〜C10ジアルキルアルミニウムアルコキシドもまた適している。また、ジメチルアルミニウムクロリド、メチルアルミニウムジクロリド、メチルアルミニウムセスキクロリド、又はジエチルアルミニウムクロリドを用いることもできる。有機金属化合物としては、n−ブチルリチウム又はトリヘキシルアルミニウムが特に好ましい。一般に、上記記載の有機金属化合物の混合物もまた適している。有機金属化合物:クロムのモル比は、通常、0.1:1〜50:1の範囲、好ましくは1:1〜50:1の範囲である。しかしながら、多くの活性化剤、例えばアルミニウムアルキルは、同時に触媒毒を除去するために用いられる(スキャベンジャーと称される)ので、用いる量は、他の出発物質の汚染の度合いに依存する。しかしながら、当業者であれば、簡単な実験によって最適の量を決定することができる。予備重合は、特に好ましくは、更なる有機金属化合物を用いずに行う。
【0066】
予備重合が完了した後、この方法で得られた予備重合したクロム含有プレ触媒は、好ましくは、単離して、残存するモノマー及び溶媒を完全か又は部分的に除去する。
この方法で得られる予備重合プレ触媒は、完全に乾燥状態であるか、或いは多少の残留湿分含量を有してよい。しかしながら、揮発性成分は、予備重合クロム含有プレ触媒を基準として、20重量%以下、特に10重量%以下を構成していなければならない。この方法で得られる予備重合クロム含有プレ触媒は、予備重合クロム含有プレ触媒を基準として、5〜50重量%、特に10〜30重量%、特に好ましくは15〜25重量%のポリマー含量を有する。
【0067】
予備重合クロム含有プレ触媒は、好ましくは、エチレン、又はエチレンとC2〜C10−1−アルケンとの重合において、幅広いモル質量分布(7〜50、好ましくは8〜30の範囲のMw/Mn)を有し、ポリエチレンのモル質量が、水素の添加によって影響を受けないか又は小さな程度しか影響を受けないポリエチレンを与えるか焼CrO3/SiO2触媒である。少量、好ましくはこの方法で得られるポリエチレンを基準として2重量%未満、特に1重量%未満のC2〜C10−1−アルケンしか含まれていないことが好ましい。
【0068】
次に、予備重合したクロム化合物を、メタロセン化合物のための担体材料として用いる。
特に好適なメタロセン化合物は、一般式(I):
【0069】
【化1】

【0070】
(式中、置換基及び指数は以下の意味を有する:
1Aは、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、バナジウム、ニオブ、タンタル、クロム、モリブデン、又はタングステン、或いは周期律表第3族及びランタニド族の元素であり;
Aは、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、水素、C1〜C10アルキル、5〜7員のシクロアルキル又はシクロアルケニル、C2〜C10アルケニル、C6〜C22アリール、アルキル基中に1〜10個の炭素原子及びアリール基中に6〜20個の炭素原子を有するアルキルアリール、−OR6A又は−NR6A7Aであるか、或いは二つの基XAは置換又は非置換ジエンリガンド、特に1,3−ジエンリガンドを形成し、基XAは同一か又は異なり、互いに結合してもよく、或いはXAは、次式:
【0071】
【化2】

【0072】
のリガンドであり;
ここで、Q1A〜Q2Aは、それぞれ、O、NR6A、CR6A7A、又はSであり、Q1A及びQ2AはM1Aに結合しており;
Aは、C又はSであり;
Aは、OR6A、SR6A、NR6A7A、PR6A7A、水素、C1〜C10アルキル、5〜7員のシクロアルキル又はシクロアルケニル、C2〜C10アルケニル、C6〜C22アリール、アルキル基中に1〜10個の炭素原子及びアリール基中に6〜20個の炭素原子を有するアルキルアリール、或いはSiR8A3であり;
1A〜E5Aは、それぞれ、炭素であるか、或いはE1A〜E5Aの1つ以下はリン又は窒素であり、好ましくは炭素であり;
tは、1、2、又は3であり、tは、M1Aの価数に応じて、一般式(I)のコンプレックスが非荷電となるような数であり;
ここで、R1A〜R5Aは、それぞれ、互いに独立して、水素、C1〜C22アルキル、置換基としてC1〜C10アルキル基を有していてもよい5〜7員のシクロアルキル又はシクロアルケニル、C2〜C22アルケニル、C6〜C22アリール、アルキル基中に1〜16個の炭素原子及びアリール基中に6〜21個の炭素原子を有するアリールアルキル、NR8A2、N(SiR8A32、OR8A、OSiR8A3、SiR8A3であり、ここで、有機基R1A〜R5Aは、また、ハロゲンによって置換されていてもよく、及び/又は、二つの基R1A〜R5A、特に隣接する基は、また、結合して5、6、又は7員環を形成してもよく、及び/又は、二つの隣接する基R1A〜R5Aは、結合して、N、P、O、及びSからなる群からの少なくとも一つの原子を有する5、6、又は7員の複素環を形成してもよく;
6A及びR7Aは、それぞれ、互いに独立して、C1〜C10アルキル、5〜7員のシクロアルキル又はシクロアルケニル、C2〜C22アルケニル、C6〜C22アリール、アルキル基中に1〜10個の炭素原子及びアリール基中に6〜20個の炭素原子を有するアルキルアリールであり、ここで、有機基R6A及びR7Aは、また、ハロゲンによって置換されていてもよく、及び/又は、二つの基R6A及びR7Aは、また、結合して、5、6、又は7員環を形成してもよく、或いはSiR8Aであり;
8Aは、同一であっても異なっていてもよく、それぞれ、C1〜C10アルキル、5〜7員のシクロアルキル又はシクロアルケニル、C2〜C22アルケニル、C6〜C22アリール、アルキル基中に1〜10個の炭素原子及びアリール基中に6〜20個の炭素原子を有するアルキルアリール、C1〜C10アルコキシ、又はC6〜C10アリールオキシであってよく、ここで、有機基R8Aは、また、ハロゲンによって置換されていてもよく、及び/又は、二つの基R8Aは、また、結合して、5、6、又は7員環を形成してもよく;
1Aは、XA、又は式:
【0073】
【化3】

【0074】
であり;
ここで、基R9A〜R13Aは、それぞれ、互いに独立して、水素、C1〜C22アルキル、置換基としてC1〜C10アルキル基を有していてもよい5〜7員のシクロアルキル又はシクロアルケニル、C2〜C22アルケニル、C6〜C22アリール、アルキル基中に1〜16個の炭素原子及びアリール基中に6〜21個の炭素原子を有するアリールアルキル、R14A−C(O)O、R14A−C(O)NR14A、NR14A2、N(SiR14A32、OR14A、OSiR14A3、SiR14A3であり、ここで、有機基R9A〜R13Aは、また、ハロゲンによって置換されていてもよく、及び/又は、二つの基R9A〜R13A、特に隣接する基は、また、結合して、5、6、又は7員環を形成してもよく、及び/又は、二つの隣接する基R9A〜R13Aは、結合して、N、P、O、及びSからなる群からの少なくとも一つの原子を有する5、6、又は7員の複素環を形成してもよく;
14Aは、同一か又異なり、それぞれ、C1〜C10アルキル、5〜7員のシクロアルキル又はシクロアルケニル、C2〜C22アルケニル、C6〜C22アリール、アルキル基中に1〜10個の炭素原子及びアリール基中に6〜20個の炭素原子を有するアルキルアリール、C1〜C10アルコキシ、又はC6〜C10アリールオキシであり、ここで、有機基R14Aは、また、ハロゲンによって置換されていてもよく、及び/又は、二つの基R14Aは、また、結合して、5、6、又は7員環を形成してもよく;
6A〜E10Aは、それぞれ、炭素であるか、或いはE6A〜E10Aの1つ以下はリン又は窒素であり、好ましくは炭素であり;
或いは基R4A及びZ1Aは、一緒になって−R15Av−A1A−基を形成し;
ここで、R15Aは、
【0075】
【化4】

【0076】
=BR16A、=BNR16A17A、=AlR16A、−Ge−、−Sn−、−O−、−S−、=SO、=SO2、=NR16A、=CO、=PR16A、又は=P(O)R16Aであり;
ここで、R16A〜R21Aは、同一か又は異なり、それぞれ、水素原子、ハロゲン原子、トリメチルシリル基、C1〜C10アルキル、5〜7員のシクロアルキル又はシクロアルケニル、C2〜C22アルケニル、C6〜C22アリール、アルキル基中に1〜10個の炭素原子及びアリール基中に6〜20個の炭素原子を有するアルキルアリール、C1〜C10アルコキシ、又はC6〜C10アリールオキシであり、ここで、有機基R16A〜R21Aは、また、ハロゲンによって置換されていてもよく、及び/又は、二つの基R16A〜R21Aは、また、結合して、5、6、又は7員環を形成してもよく;
2A〜M4Aは、それぞれ、ケイ素、ゲルマニウム、又はスズ、好ましくはケイ素であり;
1Aは、−O−、−S−、>NR22A、>PR22A、=O、=S、=NR22A、−O−R22A、−NR22A2、−PR22A2、或いは、非置換、置換、又は縮合複素環系であり;
ここで、R22Aは、それぞれ、互いに独立して、C1〜C10アルキル、5〜7員のシクロアルキル又はシクロアルケニル、C2〜C22アルケニル、C6〜C22アリール、アルキル基中に1〜10個の炭素原子及びアリール基中に6〜20個の炭素原子を有するアルキルアリール、又はSi(R23A3であり、ここで、有機基R22Aは、また、ハロゲンによって置換されていてもよく、及び/又は、二つの基R22Aは、また、結合して、5、6、又は7員環を形成してもよく;
23Aは、水素、C1〜C10アルキル、5〜7員のシクロアルキル又はシクロアルケニル、C2〜C22アルケニル、C6〜C22アリール、アルキル基中に1〜10個の炭素原子及びアリール基中に6〜20個の炭素原子を有するアルキルアリールであり、ここで、有機基R23Aは、また、ハロゲンによって置換されていてもよく、及び/又は、二つの基R23Aは、また、結合して、5、6、又は7員環を形成してもよく;
vは、1であるか、又はA1Aが、非置換、置換又は縮合複素環系である場合には0であってもよく;
或いは、基R4A及びR12Aは、一緒になって−R15A−基を形成する)
のコンプレックスである。
【0077】
かかる金属コンプレックスの合成は、それ自体公知の方法によって行うことができ、適当に置換された環式炭化水素アニオンを、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、又はクロムのハロゲン化物と反応させることが好ましい。
【0078】
本発明の目的のために、アルキルという用語は、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチル、n−ノニル、又はn−デシルのような線状又は分岐鎖のアルキルを指す。アルケニルという用語は、二重結合が内部か又は末端であってよい線状又は分岐鎖のアルケニル、例えば、ビニル、1−アリル、2−アリル、3−アリル、1−ブテニル、2−ブテニル、1−ペンテニル、又は1−ヘキセニルを指す。C6〜C22アリールという用語は、非置換、置換、又は縮合アリール系を指し、アリール基は更なるアルキル基によって置換されていてもよく、例えばフェニル、ナフチル、ビフェニル、アントラニル、o−、m−、p−メチルフェニル、2,3−、2,4−、2,5−、又は2,6−ジメチルフェニル、2,3,4−、2,3,5−、2,3,6−、2,4,5−、2,4,6−、又は3,4,5−トリメチルフェニルである。アリールアルキルという用語は、アリール置換アルキルを指し、アリールアルキルは更なるアルキル基によって置換されていてもよく、例えばベンジル、o−、m−、p−メチルベンジル、1−又は2−エチルフェニルである。
【0079】
1Aは、橋架基R15Aと一緒になって、例えば、アミン、エーテル、チオエーテル、又はホスフィンを形成してもよい。しかしながら、A1Aは、また、炭素環原子に加えて、酸素、イオウ、窒素、及びリンからなる群からのヘテロ原子を有してもよい、非置換、置換、又は縮合複素環式芳香環系であってもよい。炭素原子に加えて環原子として1〜4個の窒素原子及び/又はイオウ若しくは酸素原子を含んでいてもよい5員のヘテロアリール基の例は、2−フリル、2−チエニル、2−ピロリル、3−イソオキサゾリル、5−イソオキサゾリル、3−イソチアゾリル、5−イソチアゾリル、1−ピラゾリル、3−ピラゾリル、5−ピラゾリル、2−オキサゾリル、4−オキサゾリル、5−オキサゾリル、2−チアゾリル、4−チアゾリル、5−チアゾリル、2−イミダゾリル、4−イミダゾリル、5−イミダゾリル、1,2,4−オキサジアゾル−3−イル、1,2,4−オキサジアゾル−5−イル、1,3,4−オキサジアゾル−2−イル、及び1,2,4−トリアゾル−3−イルである。1〜4個の窒素原子及び/又はリン原子を含んでいてもよい6員のヘテロアリール基の例は、2−ピリジル、2−ホスファベンゾイル、3−ピリダジニル、2−ピリミジニル、4−ピリミジニル、2−ピラジニル、1,3,5−トリアジン−2−イル及び1,2,4−トリアジン−3−イル、1,2,4−トリアジン−5−イル及び1,2,4−トリアジン−6−イルである。5員及び6員のヘテロアリール基は、また、C1〜C10アルキル、C6〜C10アリール、アルキル基中に1〜10個の炭素原子及びアリール基中に6〜10個の炭素原子を有するアルキルアリール、トリアルキルシリル、又はハロゲン、例えばフッ素、塩素、又は臭素によって置換されていてもよく、或いは、1以上の芳香族又は複素芳香族基と縮合してもよい。ベンゾ縮合5員ヘテロアリール基の例は、2−インドリル、7−インドリル、2−クマロニル、7−クマロニル、2−チアナフテニル、7−チアナフテニル、3−インダゾリル、7−インダゾリル、2−ベンズイミダゾリル、及び7−ベンズイミダゾリルである。ベンゾ縮合6員ヘテロアリール基の例は、2−キノリル、8−キノリル、3−シンノリル、8−シンノリル、1−フタラジル、2−キナゾリル、4−キナゾリル、8−キナゾリル、5−キノキサリル、4−アクリジル、1−フェナントリジル、及び1−フェナジルである。複素環の命名及び付番は、L.Fieser及びM.Fieser,Lehrbuch der organischen Chemie,第3改訂版,Verlag Chemie,Weinheim 1957からとった。
【0080】
一般式(I)における基XAは、好ましくは同一であり、好ましくは、フッ素、塩素、臭素、C1〜C7アルキル又はアラルキル、特に塩素、メチル、又はベンジルである。
本発明の目的のために、式(I)のこのタイプのコンプレックスは、また、シクロペンタジエニル又はヘテロシクロペンタジエニルと縮合複素環によって形成される少なくとも一つのリガンドを有する化合物も包含し、複素環は、好ましくは、芳香族であり、窒素及び/又はイオウを含む。かかる化合物は、例えばWO 98/22486に記載されている。これらは、特に、ジメチルシランジイル(2−メチル−4−フェニルインデニル)(2,5−ジメチル−N−フェニル−4−アザペンタレン)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシランジイルビス(2−メチル−4−フェニル−4−ヒドロアズレニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシランジイルビス(2−エチル−4−フェニル−4−ヒドロアズレニル)ジルコニウムジクロリド、ビス(2,5−ジメチル−N−フェニル−4−アザペンタレン)ジルコニウムジクロリド、又は(インデニル)(2,5−ジメチル−N−フェニル−4−アザペンタレン)ジルコニウムジクロリドである。
【0081】
一般式(I)のコンプレックスの中で、
【0082】
【化5】

【0083】
【化6】

【0084】
(式中、置換基及び指数は以下の意味を有する:
1Aは、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、バナジウム、ニオブ、タンタル、クロム、モリブデン、又はタングステン、或いは周期律表第3族及びランタニド族の元素であり;
Aは、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、水素、C1〜C10アルキル、5〜7員のシクロアルキル又はシクロアルケニル、C2〜C10アルケニル、C6〜C22アリール、アルキル基中に1〜10個の炭素原子及びアリール基中に6〜20個の炭素原子を有するアルキルアリール、−OR6A又は−NR6A7Aであるか、或いは二つの基XAは置換又は非置換ジエンリガンド、特に1,3−ジエンリガンドを形成し、基XAは同一か又は異なり、互いに結合してもよく、或いはXAは、次式:
【0085】
【化7】

【0086】
のリガンドであり;
ここで、Q1A〜Q2Aは、それぞれ、O、NR6A、CR6A7A、又はSであり、Q1A及びQ2AはM1Aに結合しており;
Aは、C又はSであり;
Aは、OR6A、SR6A、NR6A7A、PR6A7A、水素、C1〜C10アルキル、5〜7員のシクロアルキル又はシクロアルケニル、C2〜C10アルケニル、C6〜C22アリール、アルキル基中に1〜10個の炭素原子及びアリール基中に6〜20個の炭素原子を有するアルキルアリール、或いはSiR8A3であり;
1A〜E5Aは、それぞれ、炭素であるか、或いはE1A〜E5Aの1つ以下はリン又は窒素であり、好ましくは炭素であり;
tは、1、2、又は3であり、tは、M1Aの価数に応じて、式(Ia〜d)のコンプレックスが非荷電となるような数であり;
ここで、R1A〜R5Aは、それぞれ、互いに独立して、水素、C1〜C22アルキル、置換基としてC1〜C10アルキル基を有していてもよい5〜7員のシクロアルキル又はシクロアルケニル、C2〜C22アルケニル、C6〜C22アリール、アルキル基中に1〜16個の炭素原子及びアリール基中に6〜21個の炭素原子を有するアリールアルキル、NR8A2、N(SiR8A32、OR8A、OSiR8A3、SiR8A3であり、ここで、有機基R1A〜R5Aは、また、ハロゲンによって置換されていてもよく、及び/又は、二つの基R1A〜R5A、特に隣接する基は、また、結合して5、6、又は7員環を形成してもよく、及び/又は、二つの隣接する基R1A〜R5Aは、結合して、N、P、O、及びSからなる群からの少なくとも一つの原子を有する5、6、又は7員の複素環を形成してもよく;
6A及びR7Aは、それぞれ、互いに独立して、C1〜C10アルキル、5〜7員のシクロアルキル又はシクロアルケニル、C2〜C22アルケニル、C6〜C22アリール、アルキル基中に1〜10個の炭素原子及びアリール基中に6〜20個の炭素原子を有するアルキルアリールであり、ここで、有機基R6A及びR7Aは、また、ハロゲンによって置換されていてもよく、及び/又は、二つの基R6A及びR7Aは、また、結合して、5、6、又は7員環を形成してもよく、或いはSiR8Aであり;
8Aは、同一であっても異なっていてもよく、それぞれ、C1〜C10アルキル、5〜7員のシクロアルキル又はシクロアルケニル、C2〜C22アルケニル、C6〜C22アリール、アルキル基中に1〜10個の炭素原子及びアリール基中に6〜20個の炭素原子を有するアルキルアリール、C1〜C10アルコキシ、又はC6〜C10アリールオキシであってよく、ここで、有機基R8Aは、また、ハロゲンによって置換されていてもよく、及び/又は、二つの基R8Aは、また、結合して、5、6、又は7員環を形成してもよく;
9A〜R13Aは、それぞれ、互いに独立して、水素、C1〜C22アルキル、置換基としてC1〜C10アルキル基を有していてもよい5〜7員のシクロアルキル又はシクロアルケニル、C2〜C22アルケニル、C6〜C22アリール、アルキル基中に1〜16個の炭素原子及びアリール基中に6〜21個の炭素原子を有するアリールアルキル、R14A−C(O)O、R14A−C(O)NR14A、NR14A2、N(SiR14A32、OR14A、OSiR14A3、SiR14A3であり、ここで、有機基R9A〜R13Aは、また、ハロゲンによって置換されていてもよく、及び/又は、二つの基R9A〜R13A、特に隣接する基は、また、結合して、5、6、又は7員環を形成してもよく、及び/又は、二つの隣接する基R9A〜R13Aは、結合して、N、P、O、及びSからなる群からの少なくとも一つの原子を有する5、6、又は7員の複素環を形成してもよく;
ここで、R14Aは、同一か又は異なり、それぞれ、C1〜C10アルキル、5〜7員のシクロアルキル又はシクロアルケニル、C2〜C22アルケニル、C6〜C22アリール、アルキル基中に1〜10個の炭素原子及びアリール基中に6〜20個の炭素原子を有するアルキルアリール、C1〜C10アルコキシ、又はC6〜C10アリールオキシであり、ここで、有機基R14Aは、また、ハロゲンによって置換されていてもよく、及び/又は、二つの基R14Aは、また、結合して、5、6、又は7員環を形成してもよく;
6A〜E10Aは、それぞれ、炭素であるか、或いはE6A〜E10Aの1つ以下はリン又は窒素であり、好ましくは炭素であり;
15Aは、
【0087】
【化8】

【0088】
=BR16A、=BNR16A17A、=AlR16A、−Ge−、−Sn−、−O−、−S−、=SO、=SO2、=NR16A、=CO、=PR16A、又は=P(O)R16Aであり;
ここで、R16A〜R21Aは、同一か又は異なり、それぞれ、水素原子、ハロゲン原子、トリメチルシリル基、C1〜C10アルキル、5〜7員のシクロアルキル又はシクロアルケニル、C2〜C22アルケニル、C6〜C22アリール、アルキル基中に1〜10個の炭素原子及びアリール基中に6〜20個の炭素原子を有するアルキルアリール、C1〜C10アルコキシ、又はC6〜C10アリールオキシであり、ここで、有機基R16A〜R21Aは、また、ハロゲンによって置換されていてもよく、及び/又は、二つの基R16A〜R21Aは、また、結合して、5、6、又は7員環を形成してもよく;
2A〜M4Aは、それぞれ、ケイ素、ゲルマニウム、又はスズ、好ましくはケイ素であり;
1Aは、−O−、−S−、>NR22A、>PR22A、=O、=S、=NR22A、−O−R22A、−NR22A2、−PR22A2、或いは、非置換、置換、又は縮合複素環系であり;
ここで、R22Aは、それぞれ、互いに独立して、C1〜C10アルキル、5〜7員のシクロアルキル又はシクロアルケニル、C2〜C22アルケニル、C6〜C22アリール、アルキル基中に1〜10個の炭素原子及びアリール基中に6〜20個の炭素原子を有するアルキルアリール、又はSi(R23A3であり、ここで、有機基R22Aは、また、ハロゲンによって置換されていてもよく、及び/又は、二つの基R22Aは、また、結合して、5、6、又は7員環を形成してもよく;
23Aは、水素、C1〜C10アルキル、5〜7員のシクロアルキル又はシクロアルケニル、C2〜C22アルケニル、C6〜C22アリール、アルキル基中に1〜10個の炭素原子及びアリール基中に6〜20個の炭素原子を有するアルキルアリールであり、ここで、有機基R23Aは、また、ハロゲンによって置換されていてもよく、及び/又は、二つの基R23Aは、また、結合して、5、6、又は7員環を形成してもよく;
vは、1であるか、又はA1Aが、非置換、置換又は縮合複素環系である場合には0であってもよい)
が好ましい。
【0089】
特に好適なコンプレックスは、一般式(II):
【0090】
【化9】

【0091】
(式中、置換基及び指数は以下の意味を有する:
1Bは、元素周期律表の第4族の金属、特にZrであり;
1Bは、
【0092】
【化10】

【0093】
であり、
2Bは、
【0094】
【化11】

【0095】
であり、
1B、E4Bは、それぞれ、互いに独立して、窒素、リン、酸素、又はイオウであり;
mは、E1B又はE4Bが酸素又はイオウである場合には0であり、E1B又はE4Bが窒素又はリンである場合には1であり;
2B、E3B、E5B、E6Bは、それぞれ、互いに独立して、炭素、窒素、又はリンであり;
nは、E2B、E3B、E5B、又はE6Bが窒素又はリンである場合には0であり、E1B又はE4Bが炭素である場合には1であり;
1B〜R14Bは、それぞれ、互いに独立して、水素、C1〜C22アルキル、C2〜C22アルケニル、C6〜C22アリール、アルキル基中に1〜16個の炭素原子及びアリール基中に6〜21個の炭素原子を有するアリールアルキル、NR15B2、N(SiR15B32、OR15B、OSiR15B3、SiR15B3であり、ここで、有機基R1B〜R14Bは、また、ハロゲンによって置換されていてもよく、及び/又は、二つの隣接する基R1B〜R14Bは、また、結合して5、6、又は7員環を形成してもよく、及び/又は、二つの隣接する基R1B〜R14Bは、結合して、N、P、O、及びSからなる群からの少なくとも一つの原子を有する5、6、又は7員の複素環を形成してもよく;
15Bは、同一か又は異なり、それぞれ、C1〜C20アルキル、C6〜C15アリール、アルキル基中に1〜16個の炭素原子及びアリール基中に6〜21個の炭素原子を有するアリールアルキルであり;
Bは、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、水素、C1〜C10アルキル、C2〜C10アルケニル、C6〜C15アリール、アルキル基中に1〜10個の炭素原子及びアリール基中に6〜20個の炭素原子を有するアリールアルキル、−OR16B又は−NR16B17B、−OC(O)R16A、−O3SR16B、R16BC(O)−CH−CO−R17B、COであるか、或いは二つの基XBは、置換又は非置換のジエンリガンド、特に1,3−ジエンリガンドを形成し、基XBは、同一か又は異なり、互いに結合してもよく;
sは、1又は2であり、sは、M1Bの価数に応じて、一般式(II)のメタロセンコンプレックスが非荷電となるような数であり;
ここで、R16B及びR17Bは、それぞれ、C1〜C10アルキル、C6〜C15アリール、それぞれアルキル基中に1〜10個の炭素原子及びアリール基中に6〜20個の炭素原子を有する、アリールアルキル、フルオロアルキル又はフルオロアリールである)
の非橋架メタロセンコンプレックス(B)である。
【0096】
置換基R1B〜R14Bの化学構造は、広範囲に変化することができる。可能な炭素有機置換基は、例えば、水素、線状、環式又は分岐鎖であってよいC1〜C22アルキル、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチル、n−ノニル、n−デシル、又はn−ドデシル、置換基としてC1〜C10アルキル基を有していてもよい3〜12員のシクロアルキル、例えば、シクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、シクロノナン、又はシクロドデカン、線状、環式、又は分岐鎖であってよく、二重結合が内部であっても末端であってもよいC2〜C22アルケニル、例えば、ビニル、1−アリル、2−アリル、3−アリル、ブテニル、ペンテニル、ヘキセニル、シクロペンテニル、シクロヘキセニル、シクロオクテニル、又はシクロオクタジエニル、更なるアルキル基によって置換されていてもよいC6〜C22アリール、例えば、フェニル、ナフチル、ビフェニル、アントラニル、o−、m−、p−メチルフェニル、2,3−、2,4−、2,5−、又は2,6−ジメチルフェニル、2,3,4−、2,3,5−、2,3,6−、2,4,5−、2,4,6−、又は3,4,5−トリメチルフェニル、或いは更なるアルキル基によって置換されていてもよいアリール置換アルキル基(アリールアルキル)、例えば、ベンジル、o−、m−、p−メチルベンジル、1−又は2−エチルフェニルであり、ここで二つの隣接する基R1B〜R14Bノは、また、結合して、5、6、又は7員環を形成してもよく、及び/又は、隣接する基R1B〜R14Bの二つは、結合して、N、P、O、及びSからなる群からの少なくとも一つの原子を有する5、6、又は7員の複素環を形成してもよく、及び/又は、有機基R1B〜R14Bは、また、フッ素、塩素、又は臭素のようなハロゲンによって置換されていてもよい。更に、R1B〜R14Bは、アミノNR15B2又はN(SiR15B32、アルコキシ又はアリールオキシOR15B、例えば、ジメチルアミノ、N−エチルメチルアミノ、ジエチルアミノ、N−メチルプロピルアミノ、N−メチルイソプロピルアミノ、N−エチルイソプロピルアミノ、ジプロピルアミノ、ジイソプロピルアミノ、N−メチルブチルアミノ、N−エチルブチルアミノ、N−メチルtert−ブチルアミノ、ジブチルアミノ、ジ−sec−ブチルアミノ、ジイソブチルアミノ、N−メチルヘキシルアミノ、ジヘキシルアミノ、N−メチルシクロヘキシルアミノ、N−エチルシクロヘキシルアミノ、N−イソプロピルシクロヘキシルアミノ、ジシクロヘキシルアミノ、N−ピロリジニル、ピペリジニル、デカヒドロキノリノ、ジフェニルアミノ、N−メチルアニリン、又はN−エチルアニリン、メトキシ、エトキシ、又はイソプロポキシであってよい。有機ケイ素置換基SiR15B3における可能な基R15Bは、R1B〜R14Bに関して上述したものと同様の炭素有機基であり、基R15Bは、また、結合して5又は6員環を形成してもよく、例えば、トリメチルシリル、トリエチルシリル、ブチルジメチルシリル、トリブチルシリル、トリ−tert−ブチルシリル、トリアリルシリル、トリフェニルシリル、又はジメチルフェニルシリルである。基SiR15B3は、また、結合して、酸素又は窒素原子を介してシクロペンタジエニル骨格に結合してもよく、例えばトリメチルシリルオキシ、トリエチルシリルオキシ、ブチルジメチルシリルオキシ、トリブチルシリルオキシ、又はトリ−tert−ブチルシリルオキシである。
【0097】
二つの隣接する基R1B〜R14Bは、それぞれの場合においてそれと結合している炭素原子と一緒になって、窒素、リン、酸素、及びイオウからなる群からの少なくとも一つの原子、特に好ましくは窒素及び/又はイオウを有する複素環、好ましくは複素芳香族基を形成してもよい。5又は6個の環原子の環の大きさを有する複素環及び複素芳香族基が好ましい。炭素原子に加えて環原子として1〜4個の窒素原子及び/又はイオウ若しくは酸素原子を有していてもよい5員の複素環の例は、1,2−ジヒドロフラン、フラン、チオフェン、ピロール、イソオキサゾール、3−イソチアゾール、ピラゾール、オキサゾール、チアゾール、イミダゾール、1,2,4−オキサジアゾール、1,2,5−オキサジアゾール、1,3,4−オキサジアゾール、1,2,3−トリアゾール、及び1,2,4−トリアゾールである。1〜4個の窒素原子及び/又はリン原子を有していてもよい6員のヘテロアリール基の例は、ピリジン、ホスファベンゼン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、1,3,5−トリアジン、1,2,4−トリアジン、及び1,2,3−トリアジンである。5員又は6員の複素環は、また、C1〜C10アルキル、C6〜C10アリール、アルキル基中に1〜10個の炭素原子及びアリール基中に6〜10個の炭素原子を有するアリールアルキル、トリアルキルシリル、又はハロゲン、例えばフッ素、塩素、又は臭素、ジアルキルアミド、アルキルアリールアミド、ジアリールアミド、アルコキシ、又はアリールオキシによって置換されていてもよく、或いは、1以上の芳香族基又は複素芳香族基と縮合してもよい。ベンゾ縮合5員ヘテロアリール基の例は、インドール、インダゾール、ベンゾフラン、ベンゾチオフェン、ベンゾチアゾール、ベンゾオキサゾール、及びベンズイミダゾールである。ベンゾ縮合6員ヘテロアリール基の例は、クロマン、ベンゾピラン、キノリン、イソキノリン、シンノリン、フタルアジン、キナゾリン、キノキサリン、1,10−フェナントロリン、及びキノリジンである。複素環の命名及び付番は、Lettau,Chemie der Heterocyclen,第1版,VEB,Weinheim 1979からとった。複素環/複素芳香族基は、好ましくは、複素環/複素芳香族基のC−C二重結合を介してシクロペンタジエニル骨格に縮合する。ヘテロ原子を有する複素環/複素芳香族基は、好ましくは、2,3−又はb−縮合である。
【0098】
1B及びT2Bは、それぞれ、シクロペンタジエニル系と一緒になって、縮合複素芳香族5員環又は縮合芳香族6員環を形成する。E1Bは、R3B又はR1Bと結合している炭素原子に隣接する炭素原子上に配置することができる。E4Bは、R8B又はR10Bと結合している炭素原子に隣接する炭素原子上に配置することができる。E1B及びE4Bは、好ましくは、イオウ又は窒素である。E2B、E3B、E5B、及びE6Bは、好ましくは炭素である。好ましい系(シクロペンタジエニル系と一緒になって)は、例えば、チアペンタレン、2−メチルチアペンタレン、2−エチルチアペンタレン、2−イソプロピルチアペンタレン、2−n−ブチルチアペンタレン、2−tert−ブチルチアペンタレン、2−トリメチルシリルチアペンタレン、2−フェニルチアペンタレン、2−ナフチルチアペンタレン、3−メチルチアペンタレン、4−フェニル−2,6−ジメチル−1−チオペンタレン、4−フェニル−2,6−ジエチル−1−チアペンタレン、4−フェニル−2,6−ジイソプロピル−1−チアペンタレン、4−フェニル−2,6−ジ−n−ブチル−1−チアペンタレン、4−フェニル−2,6−ジ−トリメチルシリル−1−チアペンタレン、アザペンタレン、1−メチルアザペンタレン、1−エチルアザペンタレン、1−イソプロピルアザペンタレン、1−n−ブチルアザペンタレン、1−トリメチルシリルアザペンタレン、1−フェニルアザペンタレン、1−ナフチルアザペンタレン、1−フェニル−2,5−ジメチル−1−アザペンタレン、1−フェニル−2,5−ジエチル−1−アザペンタレン、1−フェニル−2,5−ジ−n−ブチル−1−アザペンタレン、1−フェニル−2,5−ジ−tert−ブチル−1−アザペンタレン、1−フェニル−2,5−ジ−トリメチルシリル−1−アザペンタレン、1−tert−ブチル−2,5−ジメチル−1−アザペンタレン、オキサペンタレン、ホスファペンタレン、1−フェニル−2,5−ジメチル−1−ホスファペンタレン、1−フェニル−2,5−ジエチル−1−ホスファペンタレン、1−フェニル−2,5−ジ−n−ブチル−1−ホスファペンタレン、1−フェニル−2,5−ジ−tert−ブチル−1−ホスファペンタレン、1−フェニル−2,5−ジ−トリメチルシリル−1−ホスファペンタレン、1−メチル−2,5−ジメチル−1−ホスファペンタレン、1−tert−ブチル−2,5−ジメチル−1−ホスファペンタレン、7−シクロペンタ[1,2]チオフェノ[3,4]シクロペンタジエン、又は7−シクロペンタ[1,2]ピロロ[3,4]シクロペンタジエンである。縮合複素環を有するかかるシクロペンタジエニル系の合成は、例えば、WO 98/22486に記載されている。「合成及び重合のための金属有機触媒(Metalorganic catalysts for synthesis and polymerization)」,Springer Verlag 1999,p.150ff,Ewenらにおいては、これらのシクロペンタジエニル系の更なる合成が記載されている。
【0099】
1B及びT2Bは、好ましくは、上記に記載したジエン構造であり、好ましくは、それと結合しているシクロペンタジエニル骨格と一緒になって、置換又は非置換インデニル系、例えば、インデニル、2−メチルインデニル、2−エチルインデニル、2−イソプロピルインデニル、3−メチルインデニル、ベンズインデニル、又は2−メチルベンズインデニルを形成する。縮合環系は、更に、C1〜C20アルキル、C2〜C20アルケニル、C6〜C20アリール、アルキル基中に1〜10個の炭素原子及びアリール基中に6〜20個の炭素原子を有するアリールアルキル、NR15B2、N(SiR15B32、OR15B、OSiR15B3、又はSiR15B3基、例えば4−メチルインデニル、4−エチルインデニル、4−イソプロピルインデニル、5−メチルインデニル、4−フェニルインデニル、5−メチル−4−フェニルインデニル、2−メチル−4−フェニルインデニル、又は4−ナフチルインデニルを有していてもよい。
【0100】
リガンドXBは、例えば、メタロセンコンプレックス(B)の合成のために用いる対応する金属出発化合物の選択によって決定されるが、その後に変化させることもできる。可能なリガンドXBは、特に、フッ素、塩素、臭素、又はヨウ素、特に塩素のようなハロゲンである。メチル、エチル、プロピル、ブチル、ビニル、アリルのようなアルキル基、フェノール、又はベンジルも、また、有利なリガンドXBである。更なるリガンドXBとしては、純粋に例示の目的で且つ排他的な意図を有さずに、トリフルオロアセテート、BF4-、PF6-、及び弱く配位しているか又は非配位のアニオン(例えば、S.StraussのChem.Rev.1993,93,927−942を参照)、例えばB(C654-に言及することができる。
【0101】
アミド、アルコキシド、スルホネート、カルボキシレート、及びβ−ジケトネートもまた、特に有用なリガンドXBである。基R16B及びR17Bを変性することによって、例えば、溶解度のような物理特性における微細な調節を行うことができる。可能な炭素有機置換基R16B及びR17Bは、例えば、線状又は分岐鎖であってよいC1〜C20アルキル、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチル、n−ノニル、n−デシル、又はn−ドデシル、置換基としてC6〜C10アリール基を有していてもよい3〜12員のシクロアルキル、例えば、シクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、シクロノナン、又はシクロドデカン、線状、環式、又は分岐鎖であってよく、二重結合が内部であっても末端であってもよいC2〜C20アルケニル、例えば、ビニル、1−アリル、2−アリル、3−アリル、ブテニル、ペンテニル、ヘキセニル、シクロペンテニル、シクロヘキセニル、シクロオクテニル、又はシクロオクタジエニル、更なるアルキル基及び/又はN−若しくはO−含有基によって置換されていてもよいC6〜C20アリール、例えば、フェニル、ナフチル、ビフェニル、アントラニル、o−、m−、p−メチルフェニル、2,3−、2,4−、2,5−、又は2,6−ジメチルフェニル、2,3,4−、2,3,5−、2,3,6−、2,4,5−、2,4,6−、又は3,4,5−トリメチルフェニル、2−メトキシフェニル、2−N,N−ジメチルアミノフェニル、或いは更なるアルキル基によって置換されていてもよいアリールアルキル、例えば、ベンジル、o−、m−、p−メチルベンジル、1−又は2−エチルフェニルであり、ここでR16Bは、また、R17Bと結合して、5又は6員環を形成してもよく、有機基R16B及びR17Bは、また、フッ素、塩素、又は臭素のようなハロゲンによって置換されていてもよい。置換リガンドXBの幾つかは、安価で容易に入手できる出発物質から得ることができるので、特に好ましく用いられる。而して、特に好ましい態様は、XBが、ジメチルアミド、メトキシド、エトキシド、イソプロポキシド、フェノキシド、ナフトキシド、トリフレート、p−トルエンスルホネート、アセテート、又はアセチルアセトネートである場合である。
【0102】
リガンドXBの数は、遷移金属MBの酸化状態に依存する。而して、指数sは、総括的な表現では与えられない。触媒的に活性なコンプレックスにおける遷移金属MBの酸化状態は、通常、当業者に公知である。ジルコニウム及びハフニウムは、極めて高い確率で+4の酸化状態で存在する。しかしながら、その酸化状態が活性触媒のものに対応しないコンプレックスを用いることもできる。かかるコンプレックスは、次に、好適な活性化剤によって適当に酸化することができる。+4の酸化状態のジルコニウムコンプレックスが好ましい。
【0103】
基XBは、好ましくは、フッ素、塩素、臭素、C1〜C7アルキル、又はベンジル、特に塩素である。
メタロセンコンプレックスは、また、キラルであってよい。而して、メソ又はラセミ形態、或いは二つの形態の混合物を用いることができる(シクロペンタジエニル化合物におけるキラリティに関する慣習については、R.Halterman,Chem.Rev.92,(1992),965−994を参照)。ラセミ形態か、又はラセミ体に富む形態のメタロセンが好ましい。
【0104】
かかるコンプレックスの合成は、それ自体公知の方法によって行うことができ、適当に置換された環式炭化水素アニオンとジルコニウムのハロゲン化物との反応が特に好ましい。適当な調製法の例は、とりわけ、Journal of Organometallic Chemistry,369(1989),359−370に記載されている。
【0105】
シクロペンタジエニル基が同一である式(II)のジルコノセンが特に有用である。
特に好適な触媒(B)の更なる例は、とりわけ、ビス(インデニル)チタンジクロリド、ビス(フルオレニル)チタンジクロリド、ビス(インデニル)ジルコニウムジクロリド、ビス(2−メチルインデニル)ジルコニウムジクロリド、ビス(2−エチルインデニル)ジルコニウムジクロリド、ビス(2−イソプロピルインデニル)ジルコニウムジクロリド、ビス(2−tert−ブチルインデニル)ジルコニウムジクロリド、ビス(2−メチルインデニル)ジルコニウムジブロミド、ビス(2−メチル−4,5−ベンズインデニル)ジルコニウムジクロリド、ビス(2−メチル−4−フェニルインデニル)ジルコニウムジクロリド、ビス(2−メチル−4−(1−ナフチル)インデニル)ジルコニウムジクロリド、ビス(2−エチル−4−(1−ナフチル)インデニル)ジルコニウムジクロリド、ビス(2−プロピル−4−(1−ナフチル)インデニル)ジルコニウムジクロリド、ビス(2−イソブチル−4−(1−ナフチル)インデニル)ジルコニウムジクロリド、ビス(2−プロピル−4−(9−フェナントリル)インデニル)ジルコニウムジクロリド、ビス(2−メチル−4−イソプロピルインデニル)ジルコニウムジクロリド、ビス(2,7−ジメチル−4−イソプロピルインデニル)ジルコニウムジクロリド、ビス(2−メチル−4,6−ジイソプロピルインデニル)ジルコニウムジクロリド、ビス(2−メチル−4−[p−トリフルオロメチルフェニル]インデニル)ジルコニウムジクロリド、ビス(2−メチル−4−[3’,5’−ジメチルフェニル]インデニル)ジルコニウムジクロリド、ビス(2−メチル−4−[4’−tert−ブチルフェニル]インデニル)ジルコニウムジクロリド、ビス(2−エチル−4−[4’−tert−ブチルフェニル]インデニル)ジルコニウムジクロリド、ビス(2−プロピル−4−[4’−tert−ブチルフェニル]インデニル)ジルコニウムジクロリド、ビス(2−イソプロピル−4−[4’−tert−ブチルフェニル]インデニル)ジルコニウムジクロリド、ビス(2−n−ブチル−4−[4’−tert−ブチルフェニル]インデニル)ジルコニウムジクロリド、ビス(2−ヘキシル−4−[4’−tert−ブチルフェニル]インデニル)ジルコニウムジクロリド、(2−イソプロピル−4−フェニルインデニル)(2−メチル−4−フェニルインデニル)ジルコニウムジクロリド、(2−イソプロピル−4−(1−ナフチル)インデニル)(2−メチル−4−(1−ナフチル)インデニル)ジルコニウムジクロリド、(2−イソプロピル−4−[4’−tert−ブチルフェニル]インデニル)(2−メチル−4−[1’−ナフチル]インデニル)ジルコニウムジクロリド、並びに対応するジメチルジルコニウム、モノクロロモノ(アルキルアリールオキシ)ジルコニウム、及びジ(アルキルアリールオキシ)ジルコニウム化合物である。更なる例は、塩化物リガンドの一方又は両方が臭素又はヨウ素によって置換されている対応するジルコノセン化合物である。
【0106】
混合触媒中における、予備重合プレ触媒のクロム化合物からのクロムに対するメタロセン化合物からの遷移金属の重量比は、1:1〜1:10、好ましくは1:1.1〜1:5、特に好ましくは1:1.2〜1:2の範囲である。
【0107】
混合触媒は、完全に乾燥状態であるか、或いは多少の残留湿分含量を有していてよい。しかしながら、揮発成分は、混合触媒を基準として、30重量%以下、特に10重量%以下を構成していなければならない。予備重合されたクロム含有プレ触媒は、好ましくは、混合触媒を基準として、5〜50重量%、特に10〜30重量%、特に好ましくは15〜25重量%のポリマー含量を有する。
【0108】
エチレンの単独重合において同じ反応条件下で単独の触媒として用いると、メタロセン化合物は、好ましくは、予備重合したプレ触媒を同じ反応条件下で単独の触媒として用いた場合よりも高いMwを生成する。
【0109】
メタロセン化合物の幾つかは、単独では小さな重合活性しか有しておらず、次に良好な重合活性を示すことができるように1以上の活性化剤、即ち成分(C)と接触させる。したがって、混合触媒系は、場合によっては、成分(C)として1以上の活性化化合物、好ましくは一つ又は二つの活性化化合物(C)を含む。触媒の組み合わせに依存して、1以上の活性化化合物(C)が有利である。本発明の混合触媒は、好ましくは、一つの活性化化合物(C)を含む。
【0110】
一つ又は複数の活性化剤(C)は、それぞれの場合において、本発明の混合触媒組成物のメタロセン化合物を基準として任意の量で用いることができるが、好ましくは、それぞれの場合においてそれらが活性化するメタロセン化合物を基準として、過剰量か又は化学量論量で用いる。用いる活性化化合物の量は、活性化剤(C)のタイプに依存する。概して、メタロセン化合物:活性化化合物(C)のモル比は、1:0.1〜1:10,000、好ましくは1:1〜1:2000であってよい。
【0111】
メタロセン化合物と反応してそれを触媒的に活性か又は更に活性の高い化合物に転化させることのできる好適な化合物(C)は、例えば、アルミノキサン、非荷電の強Lewis酸、Lewis酸カチオンを有するイオン性化合物、或いはカチオンとしてBronsted酸を有するイオン性化合物のような化合物である。
【0112】
アルミノキサンとしては、例えば、WO 00/31090に記載されている化合物を用いることができる。特に有用なアルミノキサンは、一般式(X)又は(XI):
【0113】
【化12】

【0114】
(式中、R1D〜R4Dは、それぞれ、互いに独立して、C1〜C6アルキル基、好ましくはメチル、エチル、ブチル、又はイソブチル基であり、Iは、1〜40、好ましくは4〜25の整数である)
の開鎖又は環式アルミノキサン化合物である。
【0115】
特に有用なアルミノキサン化合物は、メチルアルミノキサンである。
これらのオリゴマーアルミノキサン化合物は、通常、トリアルキルアルミニウム、特にトリメチルアルミニウムの溶液と水との制御された反応によって調製される。一般に、この方法で得られるオリゴマーアルミノキサン化合物は、種々の長さの線状及び環式の両方の鎖分子の混合物の形態であるので、Iは平均値とみなすべきである。アルミノキサン化合物は、また、他の金属アルキル、通常はアルミニウムアルキルと混合して存在させることもできる。成分(C)として好適なアルミノキサンの製剤は、商業的に入手することができる。
【0116】
更に、炭化水素基の一部が、水素原子、又はアルコキシ、アリールオキシ、シロキシ、又はアミド基によって置換されている変性アルミノキサンを、一般式(X)及び(XI)のアルミノキサン化合物に代えて成分(C)として用いることもできる。
【0117】
メタロセン化合物及びアルミノキサン化合物を、メタロセンコンプレックスからの遷移金属に対する、残存する全てのアルミニウムアルキルを含むアルミノキサン化合物からのアルミニウムの原子比が、1:1〜2000:1、好ましくは10:1〜500:1の範囲、特に20:1〜400:1の範囲となるような量で用いることが有利であることが分かった。
【0118】
好適な活性化成分(C)の更なる種類は、ヒドロキシアルミノキサンである。これらは、例えば、アルミニウム1当量あたり0.5〜1.2当量の水、好ましくは0.8〜1.2当量の水を、低温、通常は0℃を下回る温度で、アルキルアルミニウム化合物、特にトリイソブチルアルミニウムに加えることによって調製することができる。かかる化合物、及びオレフィン重合におけるこれらの使用は、例えば、WO 00/24787に記載されている。ヒドロキシアルミノキサン化合物からのアルミニウムとメタロセン化合物からの遷移金属との原子比は、通常、1:1〜100:1、好ましくは10:1〜50:1の範囲、特に20:1〜40:1の範囲である。メタロセンジアルキル化合物が好ましい。
【0119】
非荷電の強Lewis酸としては、一般式(XII)
2D1D2D3D (XII)
(式中、M2Dは、元素周期律表第13族の元素、特にB、Al、又はGa、好ましくはBであり;
1D、X2D、及びX3Dは、それぞれ、水素、C1〜C10アルキル、C6〜C15アリール、それぞれアルキル基中に1〜10個の炭素原子及びアリール基中に6〜20個の炭素原子を有する、アルキルアリール、アリールアルキル、ハロアルキル、又はハロアリール、或いは、フッ素、塩素、臭素、又はヨウ素、特にハロアリール、好ましくはペンタフルオロフェニルである)
の化合物が好ましい。
【0120】
非荷電の強Lewis酸の更なる例は、WO 00/31090において与えられている。
成分(C)として特に有用なこのタイプの化合物は、ボラン及びボロキシン、例えば、トリアルキルボラン、トリアリールボラン、又はトリメチルボロキシンである。少なくとも2個のペルフッ素化アリール基を有するボランが特に好ましい。X1D、X2D、及びX3Dが同一である一般式(XII)の化合物、例えば、トリフェニルボラン、トリス(4−フルオロフェニル)ボラン、トリス(3,5−ジフルオロフェニル)ボラン、トリス(4−フルオロメチルフェニル)ボラン、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボラン、トリス(トリル)ボラン、トリス(3,5−ジメチルフェニル)ボラン、トリス(3,5−ジフルオロフェニル)ボラン、又はトリス(3,4,5−トリフルオロフェニル)ボランが特に好ましい。トリス(ペンタフルオロフェニル)ボランが好ましい。
【0121】
好適な化合物(C)は、好ましくは、式(XII)のアルミニウム又はホウ素化合物と、水、アルコール、フェノール誘導体、チオフェノール誘導体、又はアニリン誘導体との反応によって調製され、ハロゲン化、特にペルフッ素化アルコール及びフェノールが特に重要である。特に有用な化合物の例は、ペンタフルオロフェノール、1,1−ビス(ペンタフルオロフェニル)メタノール、及び4−ヒドロキシ−2,2’,3,3’,4’,5,5’,6,6’−ノナフルオロビフェニルである。式(XII)の化合物とBronsted酸との組み合わせの例は、特に、トリメチルアルミニウム/ペンタフルオロフェノール、トリメチルアルミニウム/1−ビス(ペンタフルオロフェニル)メタノール、トリメチルアルミニウム/4−ヒドロキシ−2,2’,3,3’,4’,5,5’,6,6’−ノナフルオロビフェニル、トリエチルアルミニウム/ペンタフルオロフェノール及びトリイソブチルアルミニウム/ペンタフルオロフェノール、及びトリエチルアルミニウム/4,4’−ジヒドロキシ−2,2’,3,3’,5,5’,6,6’−オクタフルオロビフェニル水和物である。
【0122】
式(XII)の更に好適なアルミニウム及びホウ素化合物において、R1Dは、例えばボロン酸及びボリン酸におけるようにOH基であり、ペルフッ素化アリール基を有するボリン酸、例えば(C652BOHが、特に言及するに値する。
【0123】
活性化化合物(C)として好適な非荷電の強Lewis酸は、また、ボロン酸と2当量のトリアルキルアルミニウムとの反応生成物、或いはトリアルキルアルミニウムと2当量の酸性でフッ素化、特にペルフッ素化されている炭素化合物、例えばペンタフルオロフェノール又はビス(ペンタフルオロフェニル)ボリン酸との反応生成物も含む。
【0124】
Lewis酸カチオンを有する好適なイオン性化合物としては、一般式(XIII):
[((M3Da+)Q12・・・Qzd+ (XIII)
(式中、M3Dは、元素周期律表第1〜16族の元素であり、
1〜QZは、マイナス1価の基、例えば、C1〜C28アルキル、C6〜C15アリール、それぞれアリール基中に6〜20個の炭素原子及びアルキル基中に1〜28個の炭素原子を有する、アルキルアリール、アリールアルキル、ハロアルキル、ハロアリール、置換基としてC1〜C10アルキル基を有していてもよいC3〜C10シクロアルキル、ハロゲン、C1〜C28アルコキシ、C6〜C15アリールオキシ、シリル、又はメルカプチル基であり;
aは、1〜6の整数であり;
zは、0〜5の整数であり;
dは、a−zの差に相当するが、dは1以上である)
のカチオンの塩様の化合物が挙げられる。
【0125】
特に有用なカチオンは、カルボニウムカチオン、オキソニウムカチオン、及びスルホニウムカチオン、並びにカチオン性遷移金属コンプレックス、特にトリフェニルメチルカチオン、銀カチオン、及び1,1’−ジメチルフェロセニルカチオンである。これらは、好ましくは、非配位対イオン、特にWO 91/09882においても言及されているようなホウ素化合物、好ましくはテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートを有する。
【0126】
非配位アニオンを有する塩は、また、ホウ素又はアルミニウム化合物、例えばアルミニウムアルキルを、反応して2以上のホウ素又はアルミニウム原子を結合することのできる第2の化合物、例えば水、並びにホウ素又はアルミニウム化合物と共にイオン化イオン性化合物を形成する第3の化合物、例えばトリフェニルクロロメタン、或いは場合によっては塩基、好ましくは有機窒素含有塩基、例えばアミン、アニリン誘導体又は窒素複素環化合物と化合することによって調製することもできる。更に、同様にホウ素又はアルミニウム化合物と反応する第4の化合物、例えばペンタフルオロフェノールを加えることができる。
【0127】
カチオンとしてブレンステッド酸を有するイオン性化合物は、好ましくは同様に、非配位対イオンを有する。ブレンステッド酸としては、プロトン化アミン又はアニリン誘導体が特に好ましい。好ましいカチオンは、N,N−ジメチルアニリニウム、N,N−ジメチルシクロヘキシルアンモニウム、及びN,N−ジメチルベンジルアンモニウム、並びに後者二つの誘導体である。
【0128】
WO 97/36937に記載されているようなアニオン性ホウ素複素環を有する化合物、特にジメチルアニリニウムボラタベンゼン又はトリチルボラタベンゼンもまた、成分(C)として好適である。
【0129】
好ましいイオン性化合物(C)は、少なくとも二つのペルフッ素化アリール基を有するホウ酸塩を含む。N,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、及び特にN,N−ジメチルシクロヘキシルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N,N−ジメチルベンジルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、又はトリチルテトラキスペンタフルオロフェニルボレートが特に好ましい。
【0130】
また、ジアニオン[(C652B−C64−B(C6522-のように2以上のボレートアニオンが互いに結合してもよく、或いはボレートアニオンが橋架基を介して担体表面上の好適な官能基に結合してもよい。
【0131】
更に好適な活性化化合物(C)は、WO 00/31090に列記されている。
非荷電の強Lewis酸、Lewis酸カチオンを有するイオン性化合物、或いはカチオンとしてBronsted酸を有するイオン性化合物の量は、好ましくは、メタロセン化合物を基準として、0.1〜20当量、好ましくは1〜10当量、特に好ましくは1〜2当量である。
【0132】
また、好適な活性化化合物(C)としては、ジ[ビス(ペンタフルオロフェニル)ボロキシ]メチルアランのようなホウ素−アルミニウム化合物も挙げられる。かかるホウ素−アルミニウム化合物の例は、WO 99/06414に開示されている。
【0133】
また、上記記載の活性化化合物(C)の全ての混合物を用いることもできる。好ましい混合物は、アルミノキサン、特にメチルアルミノキサン、及びイオン性化合物、特にテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートアニオンを含むもの、及び/又は非荷電の強Lewis酸、特にトリス(ペンタフルオロフェニル)ボレート又はボロキシンを含む。
【0134】
メタロセン化合物は、好ましくは、溶媒、好ましくは6〜20個の炭素原子を有する芳香族炭化水素、特にキシレン、トルエン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、又はこれらの混合物中で用いる。
【0135】
(C)の好ましい態様と、メタロセン化合物及び予備重合クロム含有プレ触媒の好ましい態様との組み合わせが特に好ましい。
メタロセン化合物のための活性化剤(C)としては、アルミノキサンが好ましい。また、活性化剤(C)として、一般式(XIII)のカチオンの塩様化合物、特にN,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N,N−ジメチルシクロヘキシルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N,N−ジメチルベンジルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、又はトリチルテトラキスペンタフルオロフェニルボレートの組み合わせも好ましい。更に、式(XII)のアルミニウム化合物とペルフッ素化アルコール及びフェノールとの反応生成物は、活性化剤(C)として特に有用である。
【0136】
メタロセン化合物は、通常、0.1〜100モル、好ましくは1〜20モル、特に好ましくは2〜10モルの範囲の量で、予備重合クロム含有プレ触媒に施す。メタロセン化合物を、エチレンの単独重合又は共重合において同じ反応条件下で単独の触媒として用いると、好ましくは、予備重合クロム含有プレ触媒を同じ反応条件下で単独のコンプレックスとして用いた場合よりも高いMwを生成する。
【0137】
少なくとも一つのメタロセン化合物、少なくとも一つの予備重合クロム含有プレ触媒、及び少なくとも一つの活性化化合物(C)を含む混合触媒が好ましい。例えば、二つの異なるメタロセン化合物を、一つ又は二つの異なる予備重合クロム含有プレ触媒に施すことができる。種々の触媒部位の相対的な空間的近接を確保し、それによって形成される異なるポリマーの良好な混合を得るために、少なくとも一つのメタロセン化合物、好ましくは一つのメタロセン化合物を、一つの予備重合クロム含有プレ触媒に施すことが好ましい。
【0138】
本発明の混合触媒を調製するために、メタロセン化合物及び/又は活性化剤(C)を、好ましくは、物理吸着、或いは化学反応、即ち成分と担体表面上の反応性基との共有結合によって、予備重合クロム含有プレ触媒上に固定化する。
【0139】
予備重合クロム含有プレ触媒、メタロセン化合物、及び活性化剤(C)を化合する順番は、原則としては重要でない。個々のプロセス工程の後に、種々の中間体を、脂肪族又は芳香族炭化水素のような好適な不活性溶媒で洗浄することができる。メタロセン化合物及び活性化化合物(C)は、互いに独立して、例えば連続的か又は同時に固定化することができる。而して、予備重合クロム含有プレ触媒は、まず一つ又は複数の活性化化合物(C)と接触させるか、或いはまず一つ又は複数のメタロセン化合物と接触させることができる。また、予備重合クロム含有プレ触媒と混合する前に、1以上の活性化化合物(C)によってメタロセン化合物を予備活性化することもできる。予備活性化は、一般に、10〜100℃、好ましくは20〜80℃の温度で行う。
【0140】
メタロセン化合物及び活性化化合物(C)の担体への適用は、一般に、担体への適用が完了した後に濾過又は蒸発によって除去することができる不活性溶媒中で行う。個々のプロセス工程の後、固体を、脂肪族又は芳香族炭化水素のような好適な不活性溶媒で洗浄し、乾燥することができる。しかしながら、湿分が残留した担持混合触媒を用いることもできる。
【0141】
担持混合触媒系の調製の好ましい態様においては、メタロセン化合物を、活性化化合物(C)と接触させ、続いて予備重合クロム含有プレ触媒と混合する。得られた担持混合触媒系は、好ましくは乾燥して、溶媒の全部又は殆どが担体材料の孔から確実に除去されるようにする。混合触媒は、好ましくは、自由流動粉末として得られる。上記のプロセスの工業的な実施の例は、WO 96/00243、WO 98/40419、又はWO 00/05277に記載されている。
【0142】
混合触媒は、更なる成分(E)として、一般式(XX):
G(R1GrG(R2GsG(R3GtG (XX)
(式中、MGは、Li、Na、K、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、ホウ素、アルミニウム、ガリウム、インジウム、タリウム、亜鉛、特にLi、Na、K、Mg、ホウ素、アルミニウム、又はZnであり;
1Gは、水素、C1〜C10アルキル、C6〜C15アリール、それぞれアルキル基中に1〜10個の炭素原子及びアリール基中に6〜20個の炭素原子を有する、アルキルアリール又はアリールアルキルであり;
2G及びR3Gは、それぞれ、水素、ハロゲン、C1〜C10アルキル、C6〜C15アリール、それぞれアルキル基中に1〜20個の炭素原子及びアリール基中に6〜20個の炭素原子を有する、アルキルアリール、アリールアルキル、又はアルコキシ、或いはC1〜C10アルキル又はC6〜C15アリールを含むアルコキシであり;
Gは、1〜3の整数であり;
G及びtGは、0〜2の整数であり、rG+sG+tGの合計はMGの価数に相当する)
の金属化合物を更に含んでいてもよく、ここで成分(E)は、通常、成分(C)と同一ではない。また、式(XX)の種々の金属化合物の混合物を用いることもできる。
【0143】
式(XX)の金属化合物の中で、
Gが、リチウム、マグネシウム、ホウ素、又はアルミニウムであり、
1Gが、C1〜C20アルキルであるものが好ましい。
【0144】
式(XX)の特に好ましい金属化合物は、メチルリチウム、エチルリチウム、n−ブチルリチウム、メチルマグネシウムクロリド、メチルマグネシウムブロミド、エチルマグネシウムクロリド、エチルマグネシウムブロミド、ブチルマグネシウムクロリド、ジメチルマグネシウム、ジエチルマグネシウム、ジブチルマグネシウム、n−ブチル−n−オクチルマグネシウム、n−ブチル−n−ヘプチルマグネシウム、特にn−ブチル−n−オクチルマグネシウム、トリ−n−ヘキシルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリ−n−ブチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、ジメチルアルミニウムクロリド、ジメチルアルミニウムフルオリド、メチルアルミニウムジクロリド、メチルアルミニウムセスキクロリド、ジエチルアルミニウムクロリド、及びトリメチルアルミニウム、並びにこれらの混合物である。アルミニウムアルキルとアルコールとの部分加水分解生成物もまた用いることができる。
【0145】
金属化合物(E)を用いる場合には、それは、好ましくは、メタロセン化合物からの遷移金属に対する式(XX)からのMGのモル比が3000:1〜0.1:1、好ましくは800:1〜0.2:1、特に好ましくは100:1〜1:1であるような量で触媒系中に存在させる。
【0146】
一般に、一般式(XX)の金属化合物(E)は、オレフィンの重合又は共重合のための触媒系の構成成分として用いる。ここでは、金属化合物(E)は、例えば、混合触媒を調製するために用いることができ、及び/又は、重合中又は重合の直前に加えることができる。用いる複数の金属化合物(E)は、同一であっても異なっていてもよい。
【0147】
成分(E)は、同様に、任意の順番で反応させることができる。例えば、メタロセン化合物を、重合するオレフィンと接触させる前か又は後のいずれかにおいて、成分(C)及び/又は(E)と接触させることができる。
【0148】
他の好ましい態様においては、混合触媒を、上記に記載のように、メタロセン化合物、活性化化合物(C)、及び予備重合クロム含有プレ触媒から調製し、これを、重合中、重合の開始時、又は重合の直前に、成分(E)と接触させる。まず(E)を重合するα−オレフィンと接触させ、続いて混合触媒を加えることが好ましい。
【0149】
また、混合触媒を、まずα−オレフィン、好ましくは線状C2〜C10−1−アルケン、特にエチレン又はプロピレンによって予備重合し、次に得られた予備重合触媒固形分を実際の重合において用いることもできる。その上に重合するモノマーに対する予備重合において用いる触媒固形分の質量比は、通常1:0.1〜1:1000、好ましくは1:1〜1:200の範囲である。
【0150】
更に、変性された成分として少量のオレフィン、好ましくはα−オレフィン、例えばビニルシクロヘキサン、スチレン、又はフェニルジメチルビニルシラン、静電防止化合物又は好適な不活性化合物、例えばワックス又はオイルを、混合触媒の調製中又は調製後に添加剤として加えることができる。メタロセン化合物に対する添加剤のモル比は、通常、1:1000〜1000:1、好ましくは1:5〜20:1である。
【0151】
本発明の混合触媒は、有利な使用特性及び加工特性を有する本発明のポリエチレンを製造するために好適である。
本発明のポリエチレンを製造するためには、上記に記載のように、エチレンを重合するか、或いはエチレンを3〜10個の炭素原子を有するα−オレフィンと重合する。
【0152】
本発明の重合法においては、エチレンを重合するか、或いはエチレンを3〜10個の炭素原子を有するα−オレフィンと重合する。好ましいα−オレフィンは、線状又は分岐鎖のC2〜C10−1−アルケン、特に線状のC2〜C10−1−アルケン、例えばエテン、プロペン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−デセン、或いは分岐鎖のC2〜C10−1−アルケン、例えば4−メチル−1−ペンテンである。特に好ましいα−オレフィンは、C4〜C10−1−アルケン、特に線状のC6〜C8−1−アルケンである。また、種々のα−オレフィンの混合物を重合することもできる。エテン、プロペン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、及び1−オクテンからなる群から選択される少なくとも一つのα−オレフィンを重合することが好ましい。少なくとも50モル%のエテンを含むモノマー混合物が好ましい。
【0153】
エチレンとα−オレフィンとを重合するための本発明の方法は、工業的に公知の任意の重合法を用いて、−60〜350℃、好ましくは0〜200℃、特に好ましくは25〜150℃の範囲の温度、及び0.5〜4000bar、好ましくは1〜100bar、特に好ましくは3〜40barの圧力下で行うことができる。重合は、公知の方法で、バルク、懸濁液中、気相中、或いは超臨界媒体中で、オレフィンの重合のために用いられる従来の反応器内において行うことができる。これは、1以上の段階で、バッチ式か又は好ましくは連続的に行うことができる。管状反応器又はオートクレーブ内での高圧重合法、溶液法、懸濁法、撹拌気相法、又は気相流動床法が全て可能である。
【0154】
重合は、通常、−60〜350℃の範囲、好ましくは20〜300℃の範囲の温度、及び0.5〜4000barの圧力下で行う。平均滞留時間は、通常、0.5〜5時間、好ましくは0.5〜3時間である。重合を行うために有利な圧力及び温度範囲は、通常、重合法に依存する。通常1000〜4000bar、特に2000〜3500barの圧力で行う高圧重合法の場合においては、一般に高い重合温度が同様に設定される。これらの高圧重合法のために有利な温度範囲は、200〜320℃、特に220〜290℃である。低圧重合法の場合においては、一般にポリマーの軟化温度よりも少なくとも数度低い温度が設定される。特に、これらの重合法においては、50〜180℃、好ましくは70〜120℃の温度が設定される。懸濁重合の場合においては、重合は、通常、懸濁媒体中、好ましくは不活性炭化水素中、例えばブタン、イソブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、イソオクタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンのような脂肪族又は脂環式炭化水素中、或いは炭化水素の混合物中、或いはモノマーそれ自体の中で行う。また、酸素、イオウ化合物、及び湿分を注意深く除去した軽油又は水素化ディーゼル油フラクションを用いることもできる。重合温度は、概して−20〜115℃の範囲であり、圧力は、概して1〜100barの範囲である。懸濁液の固形分含量は、概して10〜80%の範囲である。重合は、バッチ式で、例えば撹拌オートクレーブ内で、或いは連続的に、例えば管状反応器、好ましくはループ反応器内のいずれかで行うことができる。米国特許3,242,150及び米国特許3,248,179に記載されているようなPhillips PF法を用いることが特に好ましい。気相重合は、概して、30〜125℃及び1〜50barの圧力において行う。気相重合は、好ましくは、流動床内において、窒素及び/又はプロパンを含むキャリアガスを用いて、15〜25容量%のエチレン濃度で行う。反応器の温度は、80〜130℃の範囲に設定し、エチレン供給量を適当に減少させることによって一定に保持する。より高い温度を用いると、クロム含有触媒(A)の活性が低下し、而してz平均モル質量が低下する可能性がある。
【0155】
言及した重合法の中で、特に気相流動床反応器内での気相重合、特にループ反応器及び撹拌タンク反応器内での溶液重合及び懸濁重合が特に好ましい。気相重合は、また、循環気体の一部を露点未満に冷却し、二相混合物として反応器に再循環する凝縮又は超凝縮モードで行うこともできる。また、重合領域が互いに接続されており、ポリマーが、これらの二つの領域を多数回交互に通過する多領域反応器を用いることもできる。二つの領域は、また、異なる重合条件を有していてもよい。かかる反応器は、例えば、WO 97/04015に記載されている。また、所望の場合には、例えばHostalenプロセスにおける重合カスケードが形成されるように、異なるか又は同一の重合プロセスを直列に接続することもできる。また、2以上の同一か又は異なるプロセスを用いた平行の反応器配列も可能である。更に、モル質量調整剤、例えば水素、或いは静電防止剤のような従来の添加剤を、重合において用いることもできる。
【0156】
重合は、好ましくは、単一の反応器内、特に気相反応器内で行う。本発明のポリエチレンは、本発明の混合触媒の結果として、エチレンと3〜10個の炭素原子を有するα−オレフィンとの重合において得られる。反応器から直接得られるポリエチレン粉末は、極めて高い均質性を有しているので、カスケード法の場合とは異なり、均質な製品を得るために引き続く押出は必要ない。
【0157】
個々の成分を密に混合することによるか、又は押出機若しくは混練機中での溶融押出によるポリマーブレンドの製造(例えば、”Polyer Blends”,Ullmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry,第6版,1998,電子出版,を参照)は、しばしば、格別の困難性を伴う。二峰性ポリエチレンブレンドの高分子量成分及び低分子量成分の溶融粘度は、非常に異なる。低分子量成分は約190〜210℃のブレンドを製造するための従来の温度において完全に流体状になるのに対して、高分子量成分は軟化しかしない(レンズ豆スープ状)。したがって、二つの成分を均一に混合することは、極めて困難である。更に、高分子量成分は、押出機内の熱応力及び剪断力によって容易に損傷を受け、このためブレンドの特性が劣化することが知られている。したがって、かかるポリエチレンブレンドの混合特性はしばしば満足できないものである。
【0158】
反応器から直接得られるポリエチレン粉末の混合特性は、光学顕微鏡下で試料の薄片(切片)を観察することによって試験することができる。不均一性は、小片又は「白点」の形態で現れる。小片又は「白点」は、主として、低粘度マトリクス中の高分子量で高粘度の粒子である(例えば、U.Burkhardtら,”Aufbereiten von Polymeren mit neuartigen Eigenschaften”,VDI−Verlag,Dusseldorf,1995.p.71を参照)。かかる内包物は、300μm以下の寸法に到達し、応力亀裂の原因となり、成分の脆性破壊をもたらす可能性がある。ポリマーの混合特性が良好であるほど、これらの内包物がより少なく且つより小さくなる。ポリマーの混合特性は、ISO 13949にしたがって定量的に測定される。測定法によって、セットダウン評価スキームにしたがって、ポリマーの試料から製造される切片、これらの内包物の計数値及び測定寸法、及び対象のポリマーの混合特性に関する等級が与えられる。
【0159】
反応器内で直接、本発明のポリエチレンを製造することにより、エネルギー消費量が減少し、引き続く配合プロセスが不要になり、種々のポリマーの分子量分布及び分子量フラクションを簡単に制御することが可能になる。更に、ポリエチレンの良好な混合が達成される。
【実施例】
【0160】
以下の実施例によって、本発明の範囲を制限することなく、本発明を説明する。
記載する測定値は、以下の方法で測定した。
NMR試料は、不活性ガス下、及び適当な場合には炎封下で注入した。溶媒シグナルを1H−及び13C−NMRスペクトルにおける内部標準として取り扱い、次に化学シフトをTMSに対する化学シフトに変換した。
【0161】
ビニル基含量の測定は、ASTM D6248−98にしたがって、IRによって行う。IRスペクトルは、180℃で15分間押圧することによって調製された0.1mm厚のフィルムについて測定した。ポリマー試料の1−ヘキセン含量は、IRスペクトル対NMRスペクトルの化学較正を用いて、IR分光法によって測定した。
【0162】
1000炭素原子あたりの分岐数は、James C.Randall,JMS−REV,Macromol.Chem.Phys.,C29(2&3),201−317(1989)によって記載されているように13C−NMRによって測定し、1000炭素原子あたりの全CH3基含量に基づく。1000炭素原子あたりのCH3よりも大きな側鎖も同様に測定するが、鎖末端はこれには含まれない。
【0163】
ポリマー試料の密度は、IRスペクトル対ISO 1183−1に従う浮力法によって測定された密度の化学較正を用いて、IR分光法によって測定した。
モル質量分布及びそれから誘導される平均Mn、Mw、Mz、及びMw/Mnの測定は、直列に接続した以下のカラム:3×SHODEX AT 806MS、1×SHODEX UT 807、及び1×SHODEX AT−Gを有するWATERS 150C上で、以下の条件:溶媒=1,2,4−トリクロロベンゼン(0.025重量%の2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノールによって安定化);流量=1mL/分;注入容量=500μL、温度=140℃;の下で、DIN 55672に基づく方法を用いて、高温ゲル透過クロマトグラフィーによって行った。カラムの較正は、100〜107g/モルの範囲のモル質量を有するポリエチレン標準試料によって行った。評価は、HS−Entwicklungsgesellschaft fur wissenschaftliche Hard− und Software mbH,Ober−HilbersheimからのソフトウェアWin−GPCを用いて行った。
【0164】
本発明の目的のために、「HLMI」という表現は、公知の方法で、「高負荷メルトフローレート」を表し、常に、ISO 1133にしたがって、21.6kgの負荷下、190℃で測定する(190℃/21.6kg)。
【0165】
ポリマー濃度を0に外挿した際の粘度数の極限値を与える極限粘度ηの測定は、ISO 1628にしたがい、溶媒としてデカリン中0.001g/mLの濃度で、135℃において、自動ウベローデ粘度計(Lauda PVS1)を用いて行った。
【0166】
かさ密度は、DIN 53468にしたがって、ポリマー粉末について測定した。
引張り強さは、ISO 527にしたがって測定した。
元素状クロムの含量は、ペルオキシドコンプレックスを介して測光測定した。元素状ジルコニウム及び塩素の含量は、滴定によって測定した。
【0167】
透明度は、ASTM D1746−03にしたがって、較正セル77.5を用いて較正したBYK Gardener Haze Guard Plus Device上で、50μmの厚さを有するフィルムについて、10×10cmの寸法を有する少なくとも5枚のフィルムに関して測定した。
【0168】
曇り度は、ASTM D1003−00にしたがって、BYK Gardener Haze Plus Device上で、50μmの厚さを有するフィルムについて、10×10cmの寸法を有する少なくとも5枚のフィルムに関して測定した。
【0169】
20°及び60°における光沢度は、ASTM D2457−03にしたがって、フィルムを固定するための真空板を有する光沢度計上で、50μmの厚さを有するフィルムについて測定した。
【0170】
略語は、以下の意味を有する。
cat.:触媒;
T(ポリ):重合温度;
w:重量平均モル質量;
n:数平均モル質量;
z:z平均モル質量;
密度:ポリマー密度;
Prod.:用いた触媒1gあたり得られたポリマーのgでの触媒の生産性。
【0171】
ビスインデニルジルコニウムジクロリド及びメチルアルミノキサンは、Cromptonから商業的に入手できる。
実施例1
工程(a):担体へのクロム成分の適用
クロム含有固体中に1重量%のクロム含量を有する担持クロム成分(硝酸クロム(III)−9−水和物)1550gを、EP−A−0589350の実施例1に記載のようにして(活性化なし)調製した。
【0172】
工程(b):クロム成分の活性化
工程(a)からの触媒前駆体1550gを、流動床活性器内において、520℃の温度の空気によって10時間活性化した。活性化を行うために、触媒前駆体を、350℃に1時間かけて加熱し、この温度において1時間保持し、次にか焼温度に加熱し、この温度において2時間保持した後冷却し、350℃の温度以下への冷却は窒素下で行った。
【0173】
収量は1200gであった。
工程(c):予備重合
工程(b)からの活性化担持クロム成分900gを、撹拌装置内において20Lのヘプタン中に懸濁した。次に、懸濁液をアルゴン下で65℃の温度にし、次にエチレンを80L/時の速度で導入した。
【0174】
60分後、エチレンの導入を停止し、ヘプタン中に溶解したエチレンをアルゴンによって2時間かけてストリッピングした。次に、残留モノマーが除去された懸濁液を、アルゴンでフラッシングしたガラスフリットフィルターに移した。予備重合クロム含有プレ触媒を濾別し、10Lのヘプタンで洗浄し、再び濾過した。この方法で得られた予備重合クロム含有プレ触媒を、減圧下、40℃の温度で乾燥した。これによって、0.8重量%のCr含量、及び0.95重量%の残留溶媒含量を有する予備重合クロム含有プレ触媒1050gが得られた。
【0175】
工程(d):担体へのメタロセン化合物の適用
3.54g(9.02ミリモル)のビスインデニルジルコニウムジクロリドを、450mlのトルエン中に溶解し、189.9mLのメチルアルミノキサン(902ミリモル、トルエン中4.75M溶液)と混合し(Zr:Al=1:100)、この方法で得られた混合物を、室温で更に15分間撹拌した。次に、工程(c)からの予備重合プレ触媒150gを、10分間かけて溶液に加えた。
【0176】
室温で1時間撹拌した後、この方法で得られた懸濁液を濾過し、残渣を、それぞれ400mLのトルエンで2回、及びそれぞれ400mLのヘプタンで2回洗浄した。この方法で得られた固体を、減圧下、室温で乾燥した。これによって、それぞれ混合触媒を基準として、5.5重量%の残留溶媒含量、0.57重量%のクロム含量、及び0.29重量%のジルコニウム含量を有する混合触媒204.5gが得られた。
【0177】
実施例2〜5
実施例1において調製された混合触媒を用い、0.5mの直径を有する流動床反応器内において、流動化ガスとして窒素を用いて、全圧20barでエチレンの重合を行った。反応温度、生産性、及び反応器ガスの組成を、表1に報告する。生産量は5kg/時であった。それぞれの場合において、1時間あたり0.1gのトリイソブチルアルミニウムが計量された。得られたポリマーの特性を、表2に要約する。モル質量を低いMwにシフトし、高分子量ポリエチレンの割合を減少させるためには、反応器内の水素の割合を増加させるか、或いは重合温度を上昇させる。
【0178】
【表1】

【0179】
【表2】

【0180】
実施例6:造粒及びフィルム加工
8Aのスクリューの組み合わせを用い、Werner&PfleidererからのZSK30上で、ポリマー粉末をホモジナイズ及びペレット化した。処理温度は220℃であり、スクリュー回転速度は、20kg/時の最大処理量において250/分であった。ポリマー粉末を安定化するために、1500ppmのIrganox B215をその中に混合した。
【0181】
折りたたみ板を用い、Weberブローフィルムプラントで材料を加工した。
環状ダイの直径は50mmであり、ギャップ幅は2/50であり、冷却空気衝突角度は45°であった。スクリーンは用いなかった。30mmの直径を有する25Dスクリュー押出機を、50回転/分の回転速度(5.1kg/時の処理量に相当する)で運転した。フィルム製造のために、1:2のブローアップ比及び4.9m/10分の引取速度を選択した。フロストラインの高さは160mmであった。50μmの厚さを有するフィルムが得られた。
【0182】
【表3】

【0183】
本発明の成形組成物を用いて得られたフィルム(実施例2〜5)は、より高い密度においても非常に高い透明度を示す。
比較例1
Exxon m−LLDPE 18TFAは、メタロセンによって製造されたエチレン−1−ヘキセンコポリマーである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエチレンを含み、0.915〜0.955g/cm3の範囲の密度、0〜3.5g/10分の範囲のMI、5〜50の範囲のMFR、5〜20の範囲の多分散度Mw/Mn、及び100万g/モル未満のz平均モル質量Mzを有する成形組成物。
【請求項2】
成形組成物の全重量を基準として0.5重量%未満の量の、100万g/モルより大きなモル質量を有するポリエチレンを含む請求項1に記載の成形組成物。
【請求項3】
モル質量分布が単峰性である請求項1又は2に記載の成形組成物。
【請求項4】
成形組成物が、単一の反応器内において、予備重合したクロム化合物及びメタロセン化合物を含む混合触媒の存在下で得られる請求項1〜3のいずれかに記載の成形組成物。
【請求項5】
エチレンを、場合によっては式:R1CH=CH2(式中、R1は、水素又は1〜10個の炭素原子を有するアルキル基である)の1−アルケンの存在下、20〜200℃の温度及び0.05〜1MPaの圧力下、予備重合したクロム化合物及びメタロセン化合物を含む混合触媒の存在下で共重合する工程を含む、請求項1〜4のいずれかに記載の成形組成物の製造方法。
【請求項6】
予備重合したクロム化合物及びメタロセン化合物を含む混合触媒。
【請求項7】
混合触媒が、
(a)クロム化合物を固体担体上に固定化し;
(b)固定化したクロム化合物を熱処理によって活性化し;
(c)活性化したクロム化合物を予備重合し;そして
(d)予備重合したクロム化合物を、メタロセン化合物を固定化するための担体材料として用いる;
工程によって得られる請求項6に記載の混合触媒。
【請求項8】
メタロセン化合物が、式(II):
【化1】

(式中、置換基及び指数は以下の意味を有する:
1Bは、元素周期律表の第4族の金属、特にZrであり;
1Bは、
【化2】

であり;
2Bは、
【化3】

であり;
1B、E4Bは、それぞれ、互いに独立して、窒素、リン、酸素、又はイオウであり;
mは、E1B又はE4Bが酸素又はイオウである場合には0であり、E1B又はE4Bが窒素又はリンである場合には1であり;
2B、E3B、E5B、E6Bは、それぞれ、互いに独立して、炭素、窒素、又はリンであり;
nは、E2B、E3B、E5B又はE6Bが窒素又はリンである場合には0であり、E1B又はE4Bが炭素である場合には1であり;
1B〜R14Bは、それぞれ、互いに独立して、水素、C1〜C22アルキル、C2〜C22アルケニル、C6〜C22アリール、アルキル基中に1〜16個の炭素原子及びアリール基中に6〜21個の炭素原子を有するアリールアルキル、NR15B2、N(SiR15B32、OR15B、OSiR15B3、SiR15B3であり、ここで、有機基R1B〜R14Bは、また、ハロゲンによって置換されていてもよく、及び/又は、二つの隣接する基R1B〜R14Bは、また、結合して5、6、又は7員環を形成してもよく、及び/又は、二つの隣接する基R1B〜R14Bは、結合して、N、P、O、及びSからなる群から選択される少なくとも一つの原子を有する5、6、又は7員の複素環を形成してもよく;
15Bは、同一か又は異なり、それぞれ、C1〜C20アルキル、C6〜C15アリール、アルキル基中に1〜16個の炭素原子及びアリール基中に6〜21個の炭素原子を有するアリールアルキルであり;
Bは、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、水素、C1〜C10アルキル、C2〜C10アルケニル、C6〜C15アリール、アルキル基中に1〜10個の炭素原子及びアリール基中に6〜20個の炭素原子を有するアリールアルキル、−OR16B又は−NR16B17B、−OC(O)R16A、−O3SR16B、R16BC(O)−CH−CO−R17B、COであるか、或いは二つの基XBは、置換又は非置換のジエンリガンド、特に1,3−ジエンリガンドを形成し、基XBは、同一か又は異なり、互いに結合してもよく;
sは、1又は2であり、sは、M1Bの価数に応じて、一般式(II)のメタロセンコンプレックスが非荷電となるような数であり;
ここで、R16B及びR17Bは、それぞれ、C1〜C10アルキル、C6〜C15アリール、それぞれアルキル基中に1〜10個の炭素原子及びアリール基中に6〜20個の炭素原子を有する、アリールアルキル、フルオロアルキル又はフルオロアリールである)
の非橋架メタロセンコンプレックス(B)である請求項6又は7に記載の混合触媒。
【請求項9】
請求項1〜4のいずれかに記載の成形組成物を、190〜230℃の範囲の溶融温度で可塑化し、可塑化した成形組成物を押出し、押出された成形組成物を冷却する工程を含む、フィルムを製造する方法。
【請求項10】
請求項1〜4のいずれかに記載の成形組成物を含み、該成形組成物が、全ポリマー材料を基準として50〜100重量%の量で存在するフィルム。
【請求項11】
0〜30重量%の少なくとも一つの添加剤を更に含む請求項10に記載のフィルム。
【請求項12】
キャリアバッグを製造するための請求項10又は11に記載のフィルムの使用。
【請求項13】
食品包装におけるヒートシール可能な層を製造するための請求項10又は11に記載のフィルムの使用。

【公表番号】特表2008−538790(P2008−538790A)
【公表日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−508111(P2008−508111)
【出願日】平成18年4月15日(2006.4.15)
【国際出願番号】PCT/EP2006/003474
【国際公開番号】WO2006/114209
【国際公開日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【出願人】(500289758)バーゼル・ポリオレフィン・ゲーエムベーハー (118)
【Fターム(参考)】