説明

フィルムプローブの製造方法

【課題】 特に微細なピッチの半導体や表示装置の検査に好適なフィルムプローブの製造方法を提供する。
【解決手段】 表面に支持基板めっき層を形成した支持基板と一面に導電性金属層を有する絶縁樹脂層とを、該支持基板めっき層が内層側に、また、該導電性金属層が表層側になるように積層した積層体の、該導電性金属層及び該絶縁樹脂層に設けられた金属層開孔及び電極体形成用開孔内に電極体をめっき形成し、その後、該積層体から該支持基板を、ついで該支持基板めっき層を除去した後に、該絶縁樹脂層をハーフエッチングして該絶縁樹脂層の表面に該電極体の一部を突出せしめて、それを接触子となすフィルムプローブの製造方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、狭小なピッチの端子を有する半導体や表示装置等の検査に用いるのに好適なフィルムプローブの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来周知のように、半導体等の検査に際し、半導体等(被検査体側)と検査装置側とを導通させる為の手段として、二ードル型プローブもしくはL字ピン型プローブが使用されている。これらのプローブは、ニードルもしくはピンを精度良く組み立てなければならなく、高度な熟練度と多大な作業工数を必要とする。その為、被検査体の端子ピッチが、およそ100μm以下の狭小ピッチである場合や、同時に検査すべき端子数が数百以上といったように多い場合においては非常に高価になり、更に、数十μm以下の狭小ピッチの場合においては、それの製造が非常に難しいといった欠点を有している。
【0003】
そこで、それらに代えて、可撓性の絶縁樹脂層に接触子を設けた一般にフィルムプローブと呼ばれているものが既に提案されており、かかるフィルムプローブの製造方法の一例が下記特許文献1に記載されている。この公知の製造方法は、一面に導電性金属層を積層した可撓性の絶縁樹脂層を用意し、該導電性金属層を配線回路および/もしくはランドにパターン加工する。
【0004】
次いで、該絶縁樹脂層、配線回路および/もしくはランドの必要箇所に保護絶縁樹脂層を積層し、次いで、該保護絶縁樹脂層に開孔を形成した後、該配線回路を陰極として該開孔内に導電性金属をめっき形成し、よって、めっき形成された導電性金属が該保護絶縁樹脂層の一面に達して等方的に拡がって半球状の接触子を形成するものである。
【0005】
なお、保護絶縁層に開孔を設けることに代えて、絶縁樹脂層に開孔を設け、該開孔内に導電性金属をめっき成長させて絶縁樹脂層表面に接触子を形成することもできるが、この方法によればフォトリソグラフィ技術やレーザー加工技術を利用することができ、接触子のピッチが100μm以下と狭小であっても、また、数百又は数千を超える接触子数であっても容易に製造することができる。
【0006】
しかし、この方法で製造したフィルムプローブは、接触子や配線回路等をめっきおよび/もしくはエッチングによって絶縁樹脂層や保護絶縁樹脂層に形成する工程中に、温度や吸湿の程度によって絶縁樹脂層や保護絶縁樹脂層自体が伸縮を繰り返すため、形成される接触子や配線回路等の位置が、用いたガラスマスクやレーザー加工時のそれに対しておよそ±0.05%程度ずれるという欠点があった。
【0007】
また、この製造法においては、接触子の高さはめっき成長速度に左右されるから、かかる速度を一定に制御しなければならないが、実際上、めっき槽内の場所による電流密度のむら等によってめっき速度のむらが避けられないために接触子高さのむらが生じやすいといった欠点もあった。
【0008】
また、他のフィルムプローブの製造方法として、ベース基板上に絶縁樹脂層を積層形成し、該絶縁樹脂層に開口部を形成し、該開口部内に導体電極(接触子)を形成し、該導体電極および該絶縁樹脂層上に第2絶縁樹脂層を形成し、該第2絶縁樹脂層上に導体薄膜層を形成し、該導体薄膜層上に配線パターン状の第2開口部を形成し、該第2開口部内に配線回路を形成し、該配線回路および該第2絶縁樹脂層上に第3絶縁樹脂層を形成し、続いて、該ベース基板および該絶縁樹脂層および導体薄膜層の不要部分を除去してフィルムプローブを得る方法が提案されている(特許文献2参照)。
【0009】
この製造方法によれば、位置精度が高く、高さむらが小さい導体電極(接触子)を持つフィルムプローブを得ることができる。しかし、この製造方法によるフィルムプローブは導体電極(接触子)および配線回路が絶縁樹脂層表層に、その底面および絶縁樹脂層に埋設された側面を把持されて構成されており、狭小ピッチの場合には、その把持面積が小さくなり、従って、把持力が小さくなるため、検査を繰り返して行う際の押圧力やクリーニングのための拭き拭いによる引き剥がし力等によって導体電極(接触子)や配線回路が破損や浮き上がりを起こしやすいと言う欠点があった。
【0010】
また、その製造工程において、ベース基板と絶縁樹脂層を剥離する際に、絶縁樹脂層に殆ど変形を起こさない程度の十分に小さい力で剥離する必要があり、そのためには、ベース基板と絶縁樹脂層とを好適な接着強度で積層形成することが重要であるが、実際上、接着強度を好適な大きさに制御することが難しく、大き過ぎる場合には、ベース基板と絶縁樹脂層を剥離する際に、絶縁樹脂層が変形し、結果として、導体電極(接触子)の位置精度が悪くなったり、また逆に小さすぎる場合には、製造工程中にベース基板と絶縁樹脂層が剥離するトラブルの原因となったりすると言う欠点があった。
【0011】
【特許文献1】特開7−240443号公報(段落0034〜0040の記載参照)
【特許文献2】特開10−98250号公報(段落0007〜0016の記載参照)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、上述の欠点に鑑みて発明されたものであって、その目的は、狭小なピッチで多数の端子を持つ半導体や表示装置の検査に用いるのに好適なフィルムプローブを製造する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上述の目的を達成するための本発明のフィルムプローブの製造方法は、表面に支持基板めっき層を形成した支持基板と一面に導電性金属層を有する絶縁樹脂層とを、該支持基板めっき層が内層側に、また、該導電性金属層が表層側となるように積層した積層体の、該導電性金属層及び該絶縁樹脂層に設けられた金属層開孔および電極体形成用開孔内に電極体をめっき形成し、その後、該積層体から該支持基板を、続いて該支持基板めっき層を除去し、次に、該絶縁樹脂層をハーフエッチングして該絶縁樹脂層の表面に該電極体の一部を突出せしめて接触子となすことを特徴としている。
【0014】
本発明の方法により得られるフィルムプローブは、温度や吸湿の程度による寸法変化が実質的に殆どない支持基板を巧に利用して、接触子を電解めっき法等によって形成するようにしているために、接触子同士間ピッチ等の寸法精度を一段と高めることがでると共に、接触子の高さが、絶縁樹脂層の厚さによって規制されるために、接触子の高さむらを小さくすることができる。
【0015】
また、本発明の製造方法においては、積層体から支持基板及び支持基板めっき層を取り除くに際し、まず、支持基板と支持基板めっき層の間で剥離し、ついで、支持基板めっき層はエッチング処理によって除くため、支持基板として例えば表面をバフ研磨等で鏡面状に仕上げたステンレス板や表面をクロム酸処理したステンレス板等を用いるか、めっき剥離剤を利用することによって、絶縁樹脂層等に過大な力をかけることなく支持基板と支持基板めっき層の間で剥離することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の製造方法によれば、狭小なピッチであっても、接触子のピッチ精度および高さ精度が高い、かつ、検査を繰り返すことによる押圧力やクリーニングのための吹き払いによる引き剥がし力等により接触子や電極パッドや配線回路に破損や剥がれが起こる恐れが少ないフィルムプローブを容易に製造することが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明による製造方法の一例について図1、図2、図5を用いて説明する。まず、支持基板3の表面に支持基板めっき層31を設けた導電性支持基板11と絶縁樹脂層1の表面に導電性金属層2を設けた回路基材12を、支持基板めっき層31が内層側に、導電性金属層2が外層側となるように積層し、次に、絶縁樹脂層1および導電性金属層2の所定の位置に互いに連なる電極形成用開孔42及び金属層開孔21を設けて、積層体10を準備する(図1(a)参照)。
【0018】
絶縁樹脂層1としては、電気的、熱的、機械的特性等を勘案してポリイミド樹脂や液晶ポリエステル樹脂が好適に用いられ、また、導電性金属層2としては銅が好適に用いられるが、それぞれ他の材質であっても良い。
【0019】
絶縁樹脂層1表面に導電性金属層2を設ける方法としては、導電性金属箔上に絶縁樹脂層を流延して成形する方法、絶縁樹脂層表面にスパッタ処理、蒸着処理、無電解めっき処理等によって金属シード層を形成した後に導電性金属層をめっき形成する方法や、接着剤層を介して絶縁樹脂層と導電性金属層を積層する方法等が利用できる。
【0020】
絶縁樹脂層1の厚さは、後に電極体形成用開孔42内に形成される電極体41の高さに対応し、およそ12〜150μmの範囲が好適に用いられる。また、導電性金属層2は、後にエッチング処理され、その一部が電極パッド下層51や配線回路下層61となり、その厚さは1〜10μmが好適に用いられるが、それぞれ、必ずしもこの範囲に限定されるものではない。
【0021】
一方、支持基板3としてはステンレス、銅、アルミニウム、鉄等の金属板が好適に用いられるが、セラミックやガラス等の表面にスパッタや蒸着処理等によって金属薄膜を形成して導電性を付与したものであってもよい。支持基板3の表面にはスルファミン酸ニッケル浴によるニッケルめっきや硫酸銅めっき浴による銅めっき等によって支持基板めっき層31が形成されている。支持基板めっき層31の厚さはおよそ1μmから10μmの厚さが用いられるが、必ずしもその範囲に限定されるものではない。
【0022】
支持基板めっき層31の表面上に、片面に導電性金属層2を積層した絶縁樹脂層1を積層する方法としては、絶縁樹脂層1として液晶ポリエステル樹脂や熱可塑性ポリイミド樹脂等の熱可塑性樹脂を用いる場合には、加熱圧着することによって積層することができる。また、絶縁樹脂層1として熱硬化性ポリイミド樹脂等の非熱可塑性樹脂を用いる場合には、ポリイミド樹脂系やエポキシ樹脂系等の接着剤層9を介して加熱圧着することによって積層することができる(図5参照)。
【0023】
積層体10の絶縁樹脂層1および導電性金属層2にそれぞれ電極形成用開孔42、金属層開孔21を設ける方法の一例について、図2を用いて説明する。まず、上述した方法により得られる積層体10の導電性金属層2表面にドライフィルムレジストをラミネートし、所定のパターンを持つマスクを介して露光し、現像して所定の位置に開孔71を有するレジスト膜70を形成する(図2(a)参照)。続いて、導電性金属層2をエッチング処理することにより導電性金属層2に金属層開孔21を設ける(図2(b)参照)。かかるエッチング液としては、導電性金属層2が銅の場合には、塩化第2鉄やアンモニアの水溶液等が利用できる。ドライフィルムレジストに代えて液体レジストを用いても良い。
【0024】
次に、レジスト膜70を除去した後、金属層開孔21を設けた導電性金属層2をマスクとして利用して、絶縁樹脂層1をエッチング処理して支持基板めっき層31表面に達するブラインドビアホール状の電極形成用開孔42を形成する(図2(c)参照)。かかるエッチング液としては、絶縁樹脂層1がポリイミド樹脂もしくは液晶ポリエステル樹脂の場合には、アルカリ金属とエタノールジアミン等の脂肪族アミノアルコール誘導体を含む水溶液が好適に利用できる。
【0025】
支持基板めっき層31と絶縁樹脂層1との間に接着剤層9が介在する場合には上述したエッチング処理により絶縁樹脂層1に開孔を設けた後、更に、接着剤層9に対してエッチング活性を有する第2のエッチング液を用いてエッチング処理して支持基板めっき層31表面に達する電極形成用開孔42を形成する。接着剤層9がポリイミド系接着剤の場合には脂肪族アミノアルコール誘導体とアンモニウムヒドロキシドを含む水溶液が第2のエッチング液として好適に利用できる。
【0026】
また、上述したエッチング処理に代えて金属層開孔21を有する導電性金属層2を利用してエキシマレーザーやUVレーザー等のレーザー光を照射して絶縁樹脂層1や接着剤層9に電極形成用開孔42を設けることもできる。また、レーザー光を照射して導電性金属層2および絶縁樹脂層1に直接開孔を形成することもできる。
【0027】
また、電極形成用開孔42内の支持基板めっき層31の表面に樹脂等が残存していると、後に電極形成用開孔42内に電極体を4めっき形成する際に、空洞等のめっき形成不良を起こす原因となるため、エッチング処理によって絶縁樹脂層1に電極形成用開孔42を設けた後に、レーザー光を照射して支持基板めっき層31表面の残存樹脂等の残査を取り除くことが有効である。
【0028】
次に、上述した方法によって準備された積層体10の導電性金属層2の表面に、ドライフィルムレジストをラミネートし、所定のパターンを持つマスクを介して露光し、現像して電極形成用開孔42および金属層開孔21に連なる電極パッド上層形成用開孔53と、これに連なる配線回路上層形成用開孔63を有するレジスト膜80を形成する(図2(b)参照)。
【0029】
次に、導電性支持基板11を陰極として、めっき浴中で電解めっきを行う。まず、支持基板めっき層31表面から電極体形成用開孔42内に電極体41がめっき形成され、電極体41が導電性金属層2に達すると導電性金属層2が陰極に導通されて、金属層開孔21内、パッド上層形成用開孔53内および配線回路上層形成用開孔63内にそれぞれ電極体41、電極パッド上層52および配線回路上層62が形成される(図1(c)参照)。電解めっき方法としてはスルファミン酸ニッケルめっき浴によるニッケルめっきや、硫酸銅めっき浴による銅めっき等が好適に用いられる。
【0030】
電極体形成用開孔42内に電極体41をめっき形成する際に、支持基板めっき層31および導電性金属層2の両者を陰極となして通電すると、電極体形成用開孔42及び金属層開孔21内に支持基板めっき層31と導電性金属層2の両方向からめっき形成されるため、電極体41内部に空隙が出来やすく、また導電性金属層2表面上に過剰の厚さの電極パッド上層52および配線回路上層62が形成されるため好ましくない。
【0031】
次に、苛性ソーダ水溶液等のアルカリ水溶液によりレジスト層80を除去した後、電極パッド上層52および配線回路上層62をマスクとして利用して、導電性金属層2の不要部分をエッチング除去し、絶縁樹脂層1上に電極パッド5および配線回路6を形成する(図1(d)参照)。
【0032】
かかるエッチング処理を好適に行うには、電極体41や電極パッド上層52および配線回路上層62を形成するめっき材質として導電性金属層2の材質と異なる材質を選ぶことが好ましい。導電性金属層2の材質が銅もしくは銅合金で、めっき形成する電極パッド上層52および配線回路上層62の材質がニッケルもしくはニッケル合金の場合には、アンモニア水溶液が好適に利用できるが、導電性金属層2の厚さが電極パッド上層52や配線回路上層62の厚さに比較して十分小さい場合には塩化第2銅や塩化第2鉄の水溶液等を用いることもできる。電極体41等の材質は必ずしも一種類に限定されるものではなく、2種類以上の材質を積層して形成しても良い。
【0033】
次に、支持基板3を支持基板めっき層31との間で剥離して取り除き(図1(e)参照)、続いて、支持基板めっき層31をエッチング処理して取り除く(図1(f)参照)。かかるエッチング液としては支持基板めっき層31にはエッチング活性があり、電極体41にはエッチング活性が殆ど無いか、もしくは小さいエッチング液が特に好適に利用でき、例えば、支持基板めっき層31の材質が銅または銅合金で、電極体41の材質がニッケルまたはニッケル合金の場合にはアンモニア水溶液が好適に利用できる。
【0034】
次に、絶縁樹脂層1をエッチング液でハーフエッチング処理して、電極体41の一部を絶縁樹脂層1表面上に突出させて接触子4を形成する(図1(g)参照)。かかるエッチング液としては絶縁樹脂層1の材質がポリイミド樹脂や液晶ポリエステルの場合には前述したアルカリ金属とエタノールジアミン等の脂肪族アミノアルコール誘導体を含む水溶液等が好適に用いられる。
【0035】
可撓性絶縁樹脂層1表面上に突出する接触子4の高さは、被検査体電極周囲の保護層形成の有無や、保護層が形成されている場合にはその保護層の厚さ等によって異なるがおよそ2μmから50μmの範囲で好適に用いられる。
【0036】
なお、フィルムプローブにおいて、被検査体電極と導通を取るために繰り返し加えられる押圧力等によって接触子4等が破損や剥離することを防ぐために、また、埃が電極パッド5や配線回路6の間に付着して短絡することを防ぐために、絶縁樹脂層1上に電極パッド5および配線回路6を覆うように保護絶縁層8を設けることが有効である(図4参照)。
【0037】
かかる場合には、上述した図1(d)に示す工程の後に、絶縁樹脂層1や電極パッド5や配線回路6上に絶縁保護層8を積層する工程を加え(図3参照)、しかる後、前述した方法と同様の方法により、支持基板3、導電性めっき層31を順次取り除いて、次に絶縁樹脂層1をハーフエッチングして接触子4を形成して、フィルムプローブを製作することが出来る。
【0038】
絶縁保護層8としてはポリイミド樹脂、液晶ポリエステル樹脂、繊維強化エポキシ樹脂等が好適に利用できる。絶縁保護層8が液晶ポリエステル樹脂、熱可塑性ポリイミド樹脂、繊維強化エポキシ樹脂等の場合には加熱圧着することで積層積層することができ、また熱硬化性ポリイミド樹脂の場合には着剤層を介して加熱圧着することによって積層することができる。保護層の厚さは5μmから100μmの範囲が好適に用いられるが、必ずしもこの範囲に限定されものではない。
【0039】
上述した製造方法によるフィルムプローブには配線回路6が設けられているが、本発明に係る製造方法は、そのような配線回路を設けないていないフィルムプローブも製造できる。すなわち、絶縁樹脂層1の表面に突出して形成された接触端子4と、検査装置と導通接続するための電極パッド5を備えたフィルムプローブも上述した製造方法で製造することができる。
【0040】
なお、上述した電解めっきやエッチングを行う際に、適宜マスキングテープ等によるマスキング処理を行うことによって、不必要な個所へめっき析出やエッチングがなされることを防止することができる。
【実施例1】
【0041】
表面を鏡面状にバフ研磨した厚さ0.2mmのステンレス製の支持基板に硫酸銅メッキ浴中で銅メッキを行って、厚さおよそ5μmの支持基板めっき層を形成した。次に、前記支持基板めっき層表面に宇部興産社製ポリイミド樹脂系接着剤「UPA−8517C」をバーコーターで塗布し、熱風乾燥しておよそ5μm厚さの接着剤層を形成し、この上に、厚さ25μmの東レ・デュポン社製ポリイミドフィルム「カプトン」の片面に金属スパッタ薄層を介して電解めっきによって厚さ4μmの銅層を形成した絶縁樹脂層を、銅層が表面となるように積層して、圧力2MPa、最高温度180℃の条件で加熱圧着して積層体を得た。
【0042】
前記積層体の銅層表面上に日合・モートン社製ドライフィルムレジスト「NIT2025」(厚さ25μm)を加熱圧着してラミネートし、ピッチが90μmで、径がφ50μmのパターンをもつガラスマスクを介して、露光し、現像してピッチが90μmで、径がφ50μmの開孔を有するレジスト膜を形成した。次に塩化第2鉄水溶液中でエッチング処理して前記銅層にピッチが90μmで、径φ50μm、の銅層開孔を形成し、レジスト膜はアルカリ水溶液で剥離除去した。
【0043】
次に、前記銅層開孔を形成した銅層をマスクとして利用し、東レエンジニアリング社製ポリイミドエッチング液「TPE−3000」で「カプトン」層を、続いて同「TPE−ER10」で接着剤層をエッチング処理して、前記銅層開孔に連なり、支持基板めっき層表面に達する、その部分の径がおよそφ20μmのブラインドビアホール状の電極体形成用開孔を形成した。
【0044】
次に、前記銅層開孔を形成した銅層の上に前記「NIT2025」を加熱圧着し、ガラスマスクを介して露光し、現像して、前記銅層開孔と同芯状のピッチが90μmで、径がφ55μmの電極パッド形成用開孔およびピッチ90μmで、幅が25μmの配線回路下層形成用開孔を有するレジスト膜を形成した。
【0045】
ついで、前記支持基板を陰極としてスルファミン酸ニッケルめっき浴中で電解めっきを行って、電極体形成用開孔内及び銅層開孔内に電極体をめっき形成し、続いて、電極パッド上層形成用開孔内および配線回路上層形成用開孔内にそれぞれ厚さがおよそ4μmの電極パッド上層および配線回路上層を銅層表面に形成した。その後、レジスト膜はアルカリ水溶液で剥離した。続いて、前記電極パッド上層および配線回路上層が表面上にめっき形成された銅層をアンモニア水溶液中でエッチング処理を行って、絶縁樹脂層表面に電極パッドおよび配線回路を形成した。
【0046】
続いて、前記電極パッドおよび配線回路が形成された絶縁樹脂層表面に宇部興産社製ポリイミド樹脂系接着剤「UPA−8517C」を塗布し、乾燥させて厚さ5μmの接着剤層を形成し、その上に片面に厚さ5μmの前記接着剤層を形成した厚さ50μmの東レ・デュポン社製ポリイミド樹脂フィルム「カプトン」をそれぞれの接着剤層を合わせて積層し、圧力2MPa、温度180℃で加熱圧着して、支持基板、支持基板めっき層、接着剤層、その内部に電極体が、また、その表面に電極パッドおよび配線回路が形成された絶縁樹脂層、接着剤層および保護絶縁層からなる積層体を得た。
【0047】
続いて、前記積層体から支持基板を支持基板めっき層との間で剥離し、更に、アンモニア水溶液中でエッチング処理して支持基板めっき層を取り除いた。続いて、前記「TPE−ER10」でエッチング処理して接着剤層を除去し、続いて前記「TPE3000」で絶縁樹脂層をおよそ12μmハーフエッチングして絶縁樹脂層表面に電極体を突出せしめてフィルムプローブを得た。なお、上記のメッキおよびエッチングの各工程は、必要に応じてマスキングテープによるマスキング処理を施して行った。
【0048】
このフィルムプローブを温度20℃、湿度60%の条件で24時間エージングした後ピッチ90μmの接触子数200の間の累積ピッチを測定した結果、ガラスマスクの累積ピッチが17,910μmであるのに対して17913μm、ガラスマスクとの差が+0.017%と良好な結果を得た。なお、めっきやエッチングに際し、それらを行わない面に対して必要に応じてマスキングテープによるマスキングを施して処理した。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明に係る製造方法を説明するための縦断面図である。
【図2】本発明に係る製造法において用いる積層体を準備する方法の一例を説明するための縦断面図である。
【図3】本発明に係る製造方法の他の実施態様を説明するための縦断面図である。
【図4】本発明に係る製造方法の他の実施態様によって得られるフィルムプローブを説明するための縦断面図面である。
【図5】本発明に係る製造方法の他の実施態様を説明するための縦断面図である。
【符号の説明】
【0050】
1 絶縁樹脂層
10 積層体
11 導電性支持基材
12 回路基材
2 導電性金属層
21 金属層開孔
3 支持基板
31 支持基板めっき層
4 接触子
41 電極体
42 電極体形成用開孔
5 電極パッド
51 電極パッド下層
52 電極パッド上層
53 電極パッド上層形成用開孔
6 配線回路
61 配線回路下層
62 配線回路上層
63 配線回路上層形成用開孔
8 保護絶縁層
9 接着剤層




【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁樹脂層の表面に接触子が突出して形成されたフィルムプローブの製造方法において、表面に支持板めっき層を形成した支持基板と一面に導電性金属層を有する絶縁樹脂層とを、該支持基板めっき層が内層側に、また、該導電性金属層が表層側となるように積層した積層体の、該導電性金属層及び該絶縁樹脂層に設けられた金属層開孔及び電極体形成用開孔内に電極体をめっき形成し、その後、該積層体から該支持基板めっき層を残して該支持基板を剥離し、続いて該支持基板めっき層を除去し、次に、該絶縁樹脂層をハーフエッチングして該絶縁樹脂層の表面に該電極体の一部を突出せしめて接触子となすことを特徴とするフィルムプローブの製造方法。
【請求項2】
該支持板めっき層の材質が銅又は銅合金であることを特徴とする請求項1に記載の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−38457(P2006−38457A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−213869(P2004−213869)
【出願日】平成16年7月22日(2004.7.22)
【出願人】(000219314)東レエンジニアリング株式会社 (505)
【出願人】(594066132)レイテック株式会社 (8)
【Fターム(参考)】