フィルム加飾成形品のフィルム端末トリミング方法及び装置
【課題】 真空成形によって製造されるフィルム加飾成形品において、その下端からはみ出しているフィルム端末を正確且つ能率よく切除し得るトリミング加工を提供する。
【解決手段】 真空成形装置の受治具1を支持台3とこの支持台3上に隙間4を介して成形品Aを上載させる受台2とから構成して、成形品Aの表面から外周面に亘って加飾フィルムBを貼着したのち、上記隙間4にカッタ5を挿入して成形品Aの外周面下端からはみ出している加飾フィルムBの中間部を全周に亘って切除する一次トリミング加工を施し、次いで、上記受台2を装置外の刃物台6上に移載させたのち、受台2を刃物台6に設けているコイルスプリング8に抗して押し下げることにより、加飾フィルムBの下端を刃物
6の上面外周部に突設したトムソン刃7により切除する二次トリミング加工を施す。
【解決手段】 真空成形装置の受治具1を支持台3とこの支持台3上に隙間4を介して成形品Aを上載させる受台2とから構成して、成形品Aの表面から外周面に亘って加飾フィルムBを貼着したのち、上記隙間4にカッタ5を挿入して成形品Aの外周面下端からはみ出している加飾フィルムBの中間部を全周に亘って切除する一次トリミング加工を施し、次いで、上記受台2を装置外の刃物台6上に移載させたのち、受台2を刃物台6に設けているコイルスプリング8に抗して押し下げることにより、加飾フィルムBの下端を刃物
6の上面外周部に突設したトムソン刃7により切除する二次トリミング加工を施す。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真空成形によって製造されるフィルム加飾成形品において、その下端からはみ出ているフィルム端末を切除するトリミング方法とその方法を実施するための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
フィルム加飾成形品を製造する方法としては、例えば、特許文献1に記載されているように、内部に受治具載置台を昇降自在に配設している上端が開口した固定下部チャンバーと、上部内にヒータを配設している下端が開口した可動上部チャンバーとを開閉自在に対向させてなる真空成形装置を使用して、受治具上に成形品を載置すると共に下部チャンバーの開口端に下面に粘着剤を塗布している加飾フィルムを張設したのち、上下チャンバーを閉止し、これらのチャンバー内を真空にした状態で上記ヒータにより加飾フィルムを加熱軟化させると共に受治具載置台を上昇させて受治具上の成形品の表面に加飾フィルムの下面を押接させ、この状態にして上部チャンバー内に空気を流入させて加飾フィルムの表面を加圧し、加飾フィルムを成形品の表面から受治具載置台上に亘って密着させることによって製造している。
【0003】
こうして製造されたフィルム加飾成形品Aは、図12(イ)に示すように、加飾フィルムBの端末部が成形品Aの外周端からはみ出していて、受治具31の外周面から載置台32の上面にかけて被覆しているので、この端末部をカッタにより切除する、所謂、トリミング加工を施して製品化を図る必要があり、そのため、従来から、まず、受治具31の下端から外方に延び出している加飾フィルムBの端末部の中間部分B1を切断して載置台32から分離させたのち受治具31を真空成形装置から取り出し、次いで、図12(ロ)に示すように、受治具31を被覆している端末部B2を切除し、しかるのち、加飾フィルムBを貼着している成形品Aを受治具31から取り外して、図12(ハ)(ニ)に示すように、成形品Aから僅かにはみ出している残余の端末部B3を成形品Aの下端面に密着させる作業を行っている。なお、上記受治具31の外周面や載置台32の上面には、加飾フィルムBの端末部が接着しないようにするための剥離処理が施されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−35540号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記のようなフィルム加飾成形品のフィルム端末トリミング方法では、載置台32から加飾フィルム端末部B1を切断分離させるためのトリミング加工工程と、受治具31を被覆している加飾フィルム端末部B2を切除するためのトリミング加工工程、さらには、受治具31からフィルム加飾成形品Aを取り外したのち、残余の端末部B3を成形品Aの下端面に密着させる処理工程との煩雑な多数の工程を必要として作業能率が著しく低下するばかりでなく、コスト高になるといった問題点があり、さらに、載置台32や受治具31から加飾フィルム端末部をカッタによって切除する位置が不定であるため、きれいに切断することが困難となって見栄えのよい製品が得られなくなり、また、カッタによる切断時に載置台32や受治具31を損傷する虞れがあるといった問題点があった。
【0006】
本発明はこのような問題点に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、成形品からはみ出している加飾フィルムの端末部を受治具等を損傷させることなく正確に且つ能率よくトリミング加工を施すことができ、優れた外観を呈する製品を得ることができるフィルム加飾成形品のフィルム端末トリミング方法とその方法を実施するための装置を提供するにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明のフィルム加飾成形品のフィルム端末トリミング方法は、請求項1に記載したように、真空成形装置の受治具を、外周縁が下方に向かって屈曲している成形品を上載させる受台とこの受台を隙間を介して支持する支持台とから構成して、真空成形により上記成形品に加飾フィルムを成形品の表面から下端面に亘って貼着したのち、成形品の下端面から上記受治具の下端部と支持台との外周面に亘ってはみ出している加飾フィルムの端末部を受台と支持台間に設けている上記隙間にカッタを挿入することにより切除し、しかるのち、受台を支持台から取り外して真空成形装置外に設置している刃物台上に移載し、この刃物台の上面に突設しているトムソン刃に受台上のフィルム加飾成形品の外周縁下端面を押し付けることにより、該下端面からはみ出している加飾フィルムの端末部を切除することを特徴とする。
【0008】
請求項2に係る発明は、フィルム加飾成形品のフィルム端末を切除するためのトリミング装置であって、真空成形装置の下部チャンバー内に配設される受治具と、真空成形装置外に設置される刃物台とからなり、上記受治具は外周縁部が下方に向かって湾曲している成形品を載置する受台とこの受台を隙間を介して支持する支持台とから構成していると共に上記隙間に成形品の外周縁部の下端から下方にはみ出している加飾フィルムの端末部の中間部を切除するカッタを挿入可能に構成してなり、さらに、上記刃物台は支持台から取り外した受台をスプリングを介して上下動自在に支持すると共にその上面外周部にフィルム加飾成形品の外周縁下端面からはみ出している加飾フィルムの端末部を切除するトムソン刃を突設してなることを特徴とする。
【0009】
このような構成したトリミング装置において、請求項3に係る発明は、受治具を構成している受台と支持台との対向面の一方に截頭円錐形状の突部を、他方にこの突部を嵌脱可能に嵌合させる截頭円錐形状の凹部を設けていると共に、これらの突部と凹部との嵌合によって受台の下面外周部と支持台の上面外周部との間にカッタが挿入可能な一定幅を有する隙間を設けていることを特徴とする。
【0010】
さらに、請求項4に係る発明は、刃物台の上面中央部に受台の下端部を上下摺動自在に嵌合させる凹部を設けていると共にこの凹部を囲繞するようにして上面外周部にトムソン刃を突設してあり、さらに、刃物台に受台の下面を押圧するスプリングを配設していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明の請求項1又は請求項2に係る発明によれば、真空成形装置の受治具を、外周縁が下方に向かって屈曲している成形品を上載させる受台とこの受台を隙間を介して支持する支持台とから構成しているので、真空成形により上記成形品に加飾フィルムを成形品の表面から下端面に亘って貼着したのちに、成形品の下端面から上記受治具の下端部と支持台との外周面に亘ってはみ出している加飾フィルムの端末部を切除するトリミング加工を行う際に、受台の下面と支持台の上面間に設けている上記隙間に切除すべき加飾フィルムの端末部を位置させた状態にして該隙間にカッタの刃先を挿入することにより、隙間に沿って加飾フィルムの端末部を周方向に正確に且つ円滑に切除することができると共に、受台や支持台がカッタ刃によって何ら損傷を受けることなくトリミング加工を施すことができる。
【0012】
さらに、上記トリミング加工後に受台を支持台から取り外して真空成形装置外に設置している刃物台上に移載し、この刃物台の上面に突設しているトムソン刃に受台上のフィルム加飾成形品の外周縁下端面を押し付けることにより、該下端面からはみ出している残余の加飾フィルムの端末部を切除するためのトリミング加工を行うので、加飾フィルムの端末を成形品の下端面に沿って正確に且つ瞬時に切断処理することができ、優れた外観を呈するフィルム加飾成形品を能率よく製造することができる。
【0013】
また、請求項3に係る発明によれば、受治具を構成している上記受台と支持台との対向面の一方に截頭円錐形状の突部を、他方にこの突部を嵌脱可能に嵌合させる截頭円錐形状の凹部を設けているので、これらの截頭円錐形状の突部と凹部とを嵌合させるだけで、支持台上に受台を簡単且つ正確に重ね合わせることができるばかりでなく、突部の基端部の径を凹部の開口端の径よりも大径に形成しておくことによって、突部と凹部とを嵌合させた際に、受台の下面と第1支持台の上面との間に外方に向かって水平に開口した一定幅を有するカッタが挿入可能な隙間を何らの操作を行うことなく、自動的に形成することができる。
【0014】
請求項4に係る発明によれば、上記刃物台の上面中央部に受台の下端部を上下摺動自在に嵌合させる凹部を設けているので、この凹部に受台の下端部を嵌合させる作業を行うだけで、刃物台の上面外周部に突設しているトムソン刃を受台上に配設しているフィルム加飾成形品の下端面の下方に簡単且つ正確に対向させることができると共に、刃物台に受台の下面を押圧するスプリングを配設しているので、受台の下端部を刃物台の凹部に嵌め込んだ際に、受台上の成形品の下端面が刃物台から突設しているトムソン刃に突き当たることなく、該トムソン刃から上方に小間隔を存した状態で重ね合わせることができ、この状態にして受台をスプリング力に抗して押し下げることにより、成形品の下端面を被覆している加飾フィルムの端末を成形品の下端面の全周に亘ってトムソン刃により同時に切除することができ、トリミング加工が瞬時に且つ正確に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】受台と支持台とからなる受治具を備えた真空成形装置の簡略縦断正面図。
【図2】一次トリミング加工を施している状態の受治具部分の縦断正面図。
【図3】二次トリミング加工を施している状態の縦断正面図。
【図4】加飾フィルムを張設した状態の簡略縦断正面図。
【図5】加飾フィルムを加熱している状態の簡略縦断正面図。
【図6】加飾フィルムを軟化させた状態の簡略縦断正面図。
【図7】加飾フィルムを成形品上に密着させた状態の簡略縦断正面図。
【図8】加飾フィルムを成形品から受治具の外周面に亘って密着させた状態の簡略縦断正面図。
【図9】一次トリミング加工を施す状態の簡略縦断正面図。
【図10】成形品を装置外に取り出している状態の簡略縦断正面図。
【図11】フィルム加飾成形品の簡略縦断正面図。
【図12】(イ)〜(ニ)従来例を示す成形工程図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
次に、本発明の具体的な実施の形態を図面について説明すると、図1は真空成形装置10の簡略縦断正面図であって、公知のように、内部に受治具セット台13を昇降自在に配設している上端が全面的に開口したボックス形状の下部チャンバー11と、上部内に赤外線ヒータからなる複数個のヒータ14を配設している下端が全面的に開口したボックス形状の上部チャンバー12とを対向させ、且つ、下部チャンバー11は固定されている一方、上部チャンバー12はその上面に連結した油圧シリンダ15によって上下動可能にして、これらの上下チャンバー11、12の開口端を互いに密接、離間させることにより開閉自在に構成している。
【0017】
また、上記受治具セット台13の昇降手段としては、公知のように、下部チャンバー11の下方に油圧シリンダ16を配設してそのピストンロッド16a を下部チャンバー11の下面中央部にシール材を介して気密的に上下摺動自在に挿通し、このピストンロッド16a の上端にテーブル17を固定して、該テーブル17上の中央部に受治具セット台13を設置した構造としている。
【0018】
さらに、上下チャンバー11、12の外部に真空タンク18と圧空タンク19とを配設し、真空タンク18を上下チャンバー11、12に配管20、21を通じてそれぞれ連結、連通させていると共に、上部チャンバー12側に連通した配管20に切替弁22を設けて、上記圧空タンク19とこの切替弁22間を圧気供給管23によって連結、連通させている。
【0019】
このように構成した真空成形装置において、上記受治具セット台13上に設置する受治具1を、外周縁部が下方に向かって湾曲している成形品Aを載置する受台2と、この受台2を隙間4を介して支持する支持台3とから構成している。
【0020】
この受治具1における上側に配設される受台2は、その上半部2aを上面から外周面に亘って成形品Aの下面から内周面上部を全面的に密接させる受止面に形成していると共に、この上半部2aの厚み(高さ)は成形品Aの下方に向かって湾曲している外周縁部A1の高さ(垂下長さ)よりも短く形成している一方、下半部2bは上半部2aよりも平面からみて小断面形状(小径)に形成して、この下半部2bの上部外周面に上半部2aの外周面下端から垂下した成形品Aの外周縁部A1の内周面を小間隔を存して対向させるように構成している。また、この下半部2bの高さは上半部2aの外周面下端から垂下した成形品Aの外周縁部A1の垂下長さよりも高く形成されていると共に下半部2bの下面中央部に下端に行くに従って徐々に小径となった截頭円錐形状の突部2b1 を突設している。
【0021】
一方、受治具1における下側に配設される上記支持台3は、横断面形状、即ち、平面からみた形状を上記受台2の下半部2bと同大、同形に形成されていると共に、その上面中央部に受台2の下面中央部に突設している截頭円錐形状の突部2b1 を嵌脱自在に嵌合させる截頭円錐形状の凹部3aを設けている。これらの突部2b1 と凹部3aとの截頭円錐形状の周面は同一傾斜角度に形成されていると共に、截頭円錐形状の突部2b1 の基端部の径を凹部3aの開口端の径よりも小径に形成してこの凹部3a内に突部2b1 を完全に挿嵌させた状態においては、受台2の下面外周部と支持台3の上面外周部との間に上記突部2b1 の基端部の高さに相当する一定の上下幅を有する外方に向かって水平に開口した上記隙間4が形成されるように構成している。
【0022】
そして、上記真空成形装置によって、受台2上の上記成形品Aに、その表面から外周縁部A1の下端面に亘って加飾フィルムBを貼着したのち、図2に示すように、上記受台2と支持台3との間の隙間4にカッタ5の刃先を挿入して該カッタ5を隙間4に沿って周方向に移動させることにより、成形品Aの外周縁部A1の下端面から下方にはみ出している加飾フィルムBの端末部B1の中間部を全周に亘って切除するトリミング加工を施すように構成している。さらに、この加飾フィルムBの端末中間部の切除処理を一次トリミング加工として、真空成形装置外で、成形品Aの外周縁部A1の下端面からはみ出している残余の端末部B2を切除する二次トリミング加工を施すように構成している。
【0023】
この二次トリミング加工を行う装置としては、図3に示すように、上記受台2とこの受台2を上載させる刃物台6とから構成されてあり、刃物台6は、受台2よりも横断面形状を大きく形成されていると共にその上面中央部に受台2の下半部2bの下部を上下摺動自在に挿嵌させる浅底の凹部6aを形成してあり、さらに、この凹部6aの中央部に受台2の下面に突設している上記截頭円錐形状の突部2b1 を挿嵌させる截頭円錐形状の孔6bを設けていると共に、上記凹部6aを中央にして該刃物台6の平坦な上面外周部に受台2に載置した成形品Aの外周縁部A1の下端面に全周に亘って対向するように、周方向に無端状に先端が尖鋭端に形成された一定高さのトムソン刃7を突設している。
【0024】
さらに、上記截頭円錐形状の孔6bの下端から刃物台6の下面に貫通した円形断面の孔6cを設けて、該孔6c内にコイルスプリング8を配設し、このコイルスプリング8の上下端を上記受台2の截頭円錐形状の突部2b1 の下面と刃物台6を据え付けている設置台9の上面間に圧着させてその弾発力により受台2を、常態においてはこの受台2上に載置している成形品Aの外周縁部A1の下端面が上記トムソン刃7から上方に小間隔を存して対向する高さ位置に保持するように構成している。
【0025】
次に、上記のように構成した真空成形装置10によって成形品Aの表面に加飾フィルムBを貼着したのち、成形品Aの外周縁部A1の下端からはみ出している加飾フィルムBの端末部B1をトリミング加工によって切除する方法について述べる。なお、成形品Aは自動車の内外装部品等のABS樹脂やポリカーボネート樹脂などの合成樹脂材よりなる成形品であって、外周縁部A1が内側、或いは外側(図においては下方)に向かって湾曲してなる立体成形品であり、この成形品Aの表面に貼着する加飾フィルムBとしては、例えば、アクリルフィルムに適宜な印刷や塗装あるいは金属蒸着を施しているフィルムが使用されている。
【0026】
まず、上記真空成形装置10によって成形品Aの表面に加飾フィルムBを貼着する方法を簡単に説明すると、図1に示すように、上部チャンバー12を上動させて下部チャンバー11の上端開口部を開放させると共に受治具セット台13を下部チャンバー11の上端開口部にまで上昇させたのち、上面に成形品Aを載置した受台2を上記セット台13上に固定している支持台3上に積載して受治具1を構成した状態にする。この際、受台2の下面中央部に突設してい截頭円錐形状の突部2b1 を支持台3の上面中央部に設けている截頭円錐形状の凹部3aに挿嵌させることによって、受台2を支持台3上に一定の上下幅を有する隙間4を形成した状態で正確に配置させることができる。
【0027】
こうして、成形品Aを上載させている受台2を受治具セット台13上の支持台3にセットしたのち、セット台13を固定させているテーブル17を下動させて図4に示すように、受治具1を下部チャンバー11内に収納した状態にすると共に下部チャンバー11の開口端に下面に粘着剤層を設けている加飾フィルムBを張設してその周縁端を下部チャンバー11の口縁に設けているクランプ24によって挟持、固定する。ついで、上部チャンバー12を下動させて図5に示すように、上下チャンバー11、12上記開口端を接合させることにより密閉したのち、真空タンク18により配管20、21を通じて上下チャンバー11、12内を真空にし、ヒータ14を発熱させて上下チャンバー11、12間を仕切った状態で張設している加飾フィルムBを加熱することにより図6に示すように軟化させる。
【0028】
しかるのち、図7に示すように、油圧シリンダ16を作動させて受治具セット台13を上昇させることにより、このセット台13上に設置している受治具1の受台2上の成形品Aの上面を加飾フィルムBの下面中央部に押し付けて加飾フィルムBを成形品Aの上面に密着させる。この状態にして切替弁22を切り替えて上部チャンバー12側の配管20を圧気供給管23側に連通させることより、圧空タンク19から空気を上部チャンバー12内に流入させると、加飾フィルムBの下方側は真空状態を保持しているので、成形品Aの外周端から外方に張設されている加飾フィルムBの端末部(外周部)が上記空気圧によって図2、図8に示すように、成形品Aの外周縁部A1の表面から下端面に密着すると共にさらに受台2の下半部2bの下端部外周面から受台2と支持台3間の隙間を覆って該支持台3の外周面を被覆した状態となる。
【0029】
このように加飾フィルムBを成形品Aから支持台3の下端に亘って被着させたのち、上下チャンバー11、12内を大気に開放させ、しかるのち、図9に示すように、上部チャンバー12を上動させて上下チャンバー11、12間を開放させ、この状態にして成形品Aの外周縁部A1の下端面から支持台3側に向かって下方にはみ出している加飾フィルムBの端末部B1の中間部を全周に亘って切除する一次トリミング加工を行う。
【0030】
この一次トリミング加工は、加熱カッタ刃からなる上記カッタ5を作業員が把持して図2に示すように、上記受台2と支持台3との対向面間で形成している隙間4にその刃先を挿入すると共に該刃先を隙間4に沿って周方向に移動させることにより行われ、この一次トリミング加工によって上記隙間4を被覆している加飾フィルムBの端末部B1の中間部を全周に亘って切除される。これによって支持台3の外周面を被覆している加飾フィルムBの端末部B1が分離され、加飾フィルムBを密着させている成形品Aを上載したまま、図10に示すように受台2を支持台3から離脱させる一方、支持台3の外周面を被覆している切断された加飾フィルムBの端末部B1は支持台3から剥離、除去して次の真空形成に備える。
【0031】
受台3から離脱させた受台2は、図3に示すように、真空形成装置外の適所に設置した刃物台6上に重ね合わせ状態に配設して成形品Aの外周縁部A1の下端面から下方にはみ出している残余の端末部B2を切除する二次トリミング加工を施す。
【0032】
この二次トリミング加工を施すに際して、上記のように刃物台6上への受台2の配設はこの受台2の下端部を刃物台6の上面に設けている凹部6aに上下摺動自在に嵌合させるので、刃物台6の所定位置に受台2を正確に配設することができると共に、その嵌合によって受台2上に載置している成形品Aの外周縁部A1の下端面を刃物台6の上面外周部に突設しているトムソン刃7上に正確に対向させることができる。
【0033】
この状態にして受台2をコイルスプリング8の弾発力にこうして下方に押圧移動させると、成形品Aの外周縁部A1の下端面に密着している加飾フィルムBの端末部がトムソン刃7に圧着して該トムソン刃7の尖鋭な刃先により全周に亘って切断され、成形品Aの外周縁部A1の下端面から下方にはみ出している上記残余の残余の端末部B2が切除される。こうして得られたフィルム加飾成形品Aは、図11に示すように、成形品Aの表面(上面)から外周縁部A1の下端面に亘って加飾フィルムBをきれいに貼着してなり、見栄えのよい外観を呈するものであった。
【符号の説明】
【0034】
1 受治具
2 受台
3 支持台
4 隙間
5 カッタ
6 刃物台
7 トムソン刃
8 コイルスプリング
10 真空成形装置
A 成形品
B 加飾フィルム
【技術分野】
【0001】
本発明は、真空成形によって製造されるフィルム加飾成形品において、その下端からはみ出ているフィルム端末を切除するトリミング方法とその方法を実施するための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
フィルム加飾成形品を製造する方法としては、例えば、特許文献1に記載されているように、内部に受治具載置台を昇降自在に配設している上端が開口した固定下部チャンバーと、上部内にヒータを配設している下端が開口した可動上部チャンバーとを開閉自在に対向させてなる真空成形装置を使用して、受治具上に成形品を載置すると共に下部チャンバーの開口端に下面に粘着剤を塗布している加飾フィルムを張設したのち、上下チャンバーを閉止し、これらのチャンバー内を真空にした状態で上記ヒータにより加飾フィルムを加熱軟化させると共に受治具載置台を上昇させて受治具上の成形品の表面に加飾フィルムの下面を押接させ、この状態にして上部チャンバー内に空気を流入させて加飾フィルムの表面を加圧し、加飾フィルムを成形品の表面から受治具載置台上に亘って密着させることによって製造している。
【0003】
こうして製造されたフィルム加飾成形品Aは、図12(イ)に示すように、加飾フィルムBの端末部が成形品Aの外周端からはみ出していて、受治具31の外周面から載置台32の上面にかけて被覆しているので、この端末部をカッタにより切除する、所謂、トリミング加工を施して製品化を図る必要があり、そのため、従来から、まず、受治具31の下端から外方に延び出している加飾フィルムBの端末部の中間部分B1を切断して載置台32から分離させたのち受治具31を真空成形装置から取り出し、次いで、図12(ロ)に示すように、受治具31を被覆している端末部B2を切除し、しかるのち、加飾フィルムBを貼着している成形品Aを受治具31から取り外して、図12(ハ)(ニ)に示すように、成形品Aから僅かにはみ出している残余の端末部B3を成形品Aの下端面に密着させる作業を行っている。なお、上記受治具31の外周面や載置台32の上面には、加飾フィルムBの端末部が接着しないようにするための剥離処理が施されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−35540号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記のようなフィルム加飾成形品のフィルム端末トリミング方法では、載置台32から加飾フィルム端末部B1を切断分離させるためのトリミング加工工程と、受治具31を被覆している加飾フィルム端末部B2を切除するためのトリミング加工工程、さらには、受治具31からフィルム加飾成形品Aを取り外したのち、残余の端末部B3を成形品Aの下端面に密着させる処理工程との煩雑な多数の工程を必要として作業能率が著しく低下するばかりでなく、コスト高になるといった問題点があり、さらに、載置台32や受治具31から加飾フィルム端末部をカッタによって切除する位置が不定であるため、きれいに切断することが困難となって見栄えのよい製品が得られなくなり、また、カッタによる切断時に載置台32や受治具31を損傷する虞れがあるといった問題点があった。
【0006】
本発明はこのような問題点に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、成形品からはみ出している加飾フィルムの端末部を受治具等を損傷させることなく正確に且つ能率よくトリミング加工を施すことができ、優れた外観を呈する製品を得ることができるフィルム加飾成形品のフィルム端末トリミング方法とその方法を実施するための装置を提供するにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明のフィルム加飾成形品のフィルム端末トリミング方法は、請求項1に記載したように、真空成形装置の受治具を、外周縁が下方に向かって屈曲している成形品を上載させる受台とこの受台を隙間を介して支持する支持台とから構成して、真空成形により上記成形品に加飾フィルムを成形品の表面から下端面に亘って貼着したのち、成形品の下端面から上記受治具の下端部と支持台との外周面に亘ってはみ出している加飾フィルムの端末部を受台と支持台間に設けている上記隙間にカッタを挿入することにより切除し、しかるのち、受台を支持台から取り外して真空成形装置外に設置している刃物台上に移載し、この刃物台の上面に突設しているトムソン刃に受台上のフィルム加飾成形品の外周縁下端面を押し付けることにより、該下端面からはみ出している加飾フィルムの端末部を切除することを特徴とする。
【0008】
請求項2に係る発明は、フィルム加飾成形品のフィルム端末を切除するためのトリミング装置であって、真空成形装置の下部チャンバー内に配設される受治具と、真空成形装置外に設置される刃物台とからなり、上記受治具は外周縁部が下方に向かって湾曲している成形品を載置する受台とこの受台を隙間を介して支持する支持台とから構成していると共に上記隙間に成形品の外周縁部の下端から下方にはみ出している加飾フィルムの端末部の中間部を切除するカッタを挿入可能に構成してなり、さらに、上記刃物台は支持台から取り外した受台をスプリングを介して上下動自在に支持すると共にその上面外周部にフィルム加飾成形品の外周縁下端面からはみ出している加飾フィルムの端末部を切除するトムソン刃を突設してなることを特徴とする。
【0009】
このような構成したトリミング装置において、請求項3に係る発明は、受治具を構成している受台と支持台との対向面の一方に截頭円錐形状の突部を、他方にこの突部を嵌脱可能に嵌合させる截頭円錐形状の凹部を設けていると共に、これらの突部と凹部との嵌合によって受台の下面外周部と支持台の上面外周部との間にカッタが挿入可能な一定幅を有する隙間を設けていることを特徴とする。
【0010】
さらに、請求項4に係る発明は、刃物台の上面中央部に受台の下端部を上下摺動自在に嵌合させる凹部を設けていると共にこの凹部を囲繞するようにして上面外周部にトムソン刃を突設してあり、さらに、刃物台に受台の下面を押圧するスプリングを配設していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明の請求項1又は請求項2に係る発明によれば、真空成形装置の受治具を、外周縁が下方に向かって屈曲している成形品を上載させる受台とこの受台を隙間を介して支持する支持台とから構成しているので、真空成形により上記成形品に加飾フィルムを成形品の表面から下端面に亘って貼着したのちに、成形品の下端面から上記受治具の下端部と支持台との外周面に亘ってはみ出している加飾フィルムの端末部を切除するトリミング加工を行う際に、受台の下面と支持台の上面間に設けている上記隙間に切除すべき加飾フィルムの端末部を位置させた状態にして該隙間にカッタの刃先を挿入することにより、隙間に沿って加飾フィルムの端末部を周方向に正確に且つ円滑に切除することができると共に、受台や支持台がカッタ刃によって何ら損傷を受けることなくトリミング加工を施すことができる。
【0012】
さらに、上記トリミング加工後に受台を支持台から取り外して真空成形装置外に設置している刃物台上に移載し、この刃物台の上面に突設しているトムソン刃に受台上のフィルム加飾成形品の外周縁下端面を押し付けることにより、該下端面からはみ出している残余の加飾フィルムの端末部を切除するためのトリミング加工を行うので、加飾フィルムの端末を成形品の下端面に沿って正確に且つ瞬時に切断処理することができ、優れた外観を呈するフィルム加飾成形品を能率よく製造することができる。
【0013】
また、請求項3に係る発明によれば、受治具を構成している上記受台と支持台との対向面の一方に截頭円錐形状の突部を、他方にこの突部を嵌脱可能に嵌合させる截頭円錐形状の凹部を設けているので、これらの截頭円錐形状の突部と凹部とを嵌合させるだけで、支持台上に受台を簡単且つ正確に重ね合わせることができるばかりでなく、突部の基端部の径を凹部の開口端の径よりも大径に形成しておくことによって、突部と凹部とを嵌合させた際に、受台の下面と第1支持台の上面との間に外方に向かって水平に開口した一定幅を有するカッタが挿入可能な隙間を何らの操作を行うことなく、自動的に形成することができる。
【0014】
請求項4に係る発明によれば、上記刃物台の上面中央部に受台の下端部を上下摺動自在に嵌合させる凹部を設けているので、この凹部に受台の下端部を嵌合させる作業を行うだけで、刃物台の上面外周部に突設しているトムソン刃を受台上に配設しているフィルム加飾成形品の下端面の下方に簡単且つ正確に対向させることができると共に、刃物台に受台の下面を押圧するスプリングを配設しているので、受台の下端部を刃物台の凹部に嵌め込んだ際に、受台上の成形品の下端面が刃物台から突設しているトムソン刃に突き当たることなく、該トムソン刃から上方に小間隔を存した状態で重ね合わせることができ、この状態にして受台をスプリング力に抗して押し下げることにより、成形品の下端面を被覆している加飾フィルムの端末を成形品の下端面の全周に亘ってトムソン刃により同時に切除することができ、トリミング加工が瞬時に且つ正確に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】受台と支持台とからなる受治具を備えた真空成形装置の簡略縦断正面図。
【図2】一次トリミング加工を施している状態の受治具部分の縦断正面図。
【図3】二次トリミング加工を施している状態の縦断正面図。
【図4】加飾フィルムを張設した状態の簡略縦断正面図。
【図5】加飾フィルムを加熱している状態の簡略縦断正面図。
【図6】加飾フィルムを軟化させた状態の簡略縦断正面図。
【図7】加飾フィルムを成形品上に密着させた状態の簡略縦断正面図。
【図8】加飾フィルムを成形品から受治具の外周面に亘って密着させた状態の簡略縦断正面図。
【図9】一次トリミング加工を施す状態の簡略縦断正面図。
【図10】成形品を装置外に取り出している状態の簡略縦断正面図。
【図11】フィルム加飾成形品の簡略縦断正面図。
【図12】(イ)〜(ニ)従来例を示す成形工程図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
次に、本発明の具体的な実施の形態を図面について説明すると、図1は真空成形装置10の簡略縦断正面図であって、公知のように、内部に受治具セット台13を昇降自在に配設している上端が全面的に開口したボックス形状の下部チャンバー11と、上部内に赤外線ヒータからなる複数個のヒータ14を配設している下端が全面的に開口したボックス形状の上部チャンバー12とを対向させ、且つ、下部チャンバー11は固定されている一方、上部チャンバー12はその上面に連結した油圧シリンダ15によって上下動可能にして、これらの上下チャンバー11、12の開口端を互いに密接、離間させることにより開閉自在に構成している。
【0017】
また、上記受治具セット台13の昇降手段としては、公知のように、下部チャンバー11の下方に油圧シリンダ16を配設してそのピストンロッド16a を下部チャンバー11の下面中央部にシール材を介して気密的に上下摺動自在に挿通し、このピストンロッド16a の上端にテーブル17を固定して、該テーブル17上の中央部に受治具セット台13を設置した構造としている。
【0018】
さらに、上下チャンバー11、12の外部に真空タンク18と圧空タンク19とを配設し、真空タンク18を上下チャンバー11、12に配管20、21を通じてそれぞれ連結、連通させていると共に、上部チャンバー12側に連通した配管20に切替弁22を設けて、上記圧空タンク19とこの切替弁22間を圧気供給管23によって連結、連通させている。
【0019】
このように構成した真空成形装置において、上記受治具セット台13上に設置する受治具1を、外周縁部が下方に向かって湾曲している成形品Aを載置する受台2と、この受台2を隙間4を介して支持する支持台3とから構成している。
【0020】
この受治具1における上側に配設される受台2は、その上半部2aを上面から外周面に亘って成形品Aの下面から内周面上部を全面的に密接させる受止面に形成していると共に、この上半部2aの厚み(高さ)は成形品Aの下方に向かって湾曲している外周縁部A1の高さ(垂下長さ)よりも短く形成している一方、下半部2bは上半部2aよりも平面からみて小断面形状(小径)に形成して、この下半部2bの上部外周面に上半部2aの外周面下端から垂下した成形品Aの外周縁部A1の内周面を小間隔を存して対向させるように構成している。また、この下半部2bの高さは上半部2aの外周面下端から垂下した成形品Aの外周縁部A1の垂下長さよりも高く形成されていると共に下半部2bの下面中央部に下端に行くに従って徐々に小径となった截頭円錐形状の突部2b1 を突設している。
【0021】
一方、受治具1における下側に配設される上記支持台3は、横断面形状、即ち、平面からみた形状を上記受台2の下半部2bと同大、同形に形成されていると共に、その上面中央部に受台2の下面中央部に突設している截頭円錐形状の突部2b1 を嵌脱自在に嵌合させる截頭円錐形状の凹部3aを設けている。これらの突部2b1 と凹部3aとの截頭円錐形状の周面は同一傾斜角度に形成されていると共に、截頭円錐形状の突部2b1 の基端部の径を凹部3aの開口端の径よりも小径に形成してこの凹部3a内に突部2b1 を完全に挿嵌させた状態においては、受台2の下面外周部と支持台3の上面外周部との間に上記突部2b1 の基端部の高さに相当する一定の上下幅を有する外方に向かって水平に開口した上記隙間4が形成されるように構成している。
【0022】
そして、上記真空成形装置によって、受台2上の上記成形品Aに、その表面から外周縁部A1の下端面に亘って加飾フィルムBを貼着したのち、図2に示すように、上記受台2と支持台3との間の隙間4にカッタ5の刃先を挿入して該カッタ5を隙間4に沿って周方向に移動させることにより、成形品Aの外周縁部A1の下端面から下方にはみ出している加飾フィルムBの端末部B1の中間部を全周に亘って切除するトリミング加工を施すように構成している。さらに、この加飾フィルムBの端末中間部の切除処理を一次トリミング加工として、真空成形装置外で、成形品Aの外周縁部A1の下端面からはみ出している残余の端末部B2を切除する二次トリミング加工を施すように構成している。
【0023】
この二次トリミング加工を行う装置としては、図3に示すように、上記受台2とこの受台2を上載させる刃物台6とから構成されてあり、刃物台6は、受台2よりも横断面形状を大きく形成されていると共にその上面中央部に受台2の下半部2bの下部を上下摺動自在に挿嵌させる浅底の凹部6aを形成してあり、さらに、この凹部6aの中央部に受台2の下面に突設している上記截頭円錐形状の突部2b1 を挿嵌させる截頭円錐形状の孔6bを設けていると共に、上記凹部6aを中央にして該刃物台6の平坦な上面外周部に受台2に載置した成形品Aの外周縁部A1の下端面に全周に亘って対向するように、周方向に無端状に先端が尖鋭端に形成された一定高さのトムソン刃7を突設している。
【0024】
さらに、上記截頭円錐形状の孔6bの下端から刃物台6の下面に貫通した円形断面の孔6cを設けて、該孔6c内にコイルスプリング8を配設し、このコイルスプリング8の上下端を上記受台2の截頭円錐形状の突部2b1 の下面と刃物台6を据え付けている設置台9の上面間に圧着させてその弾発力により受台2を、常態においてはこの受台2上に載置している成形品Aの外周縁部A1の下端面が上記トムソン刃7から上方に小間隔を存して対向する高さ位置に保持するように構成している。
【0025】
次に、上記のように構成した真空成形装置10によって成形品Aの表面に加飾フィルムBを貼着したのち、成形品Aの外周縁部A1の下端からはみ出している加飾フィルムBの端末部B1をトリミング加工によって切除する方法について述べる。なお、成形品Aは自動車の内外装部品等のABS樹脂やポリカーボネート樹脂などの合成樹脂材よりなる成形品であって、外周縁部A1が内側、或いは外側(図においては下方)に向かって湾曲してなる立体成形品であり、この成形品Aの表面に貼着する加飾フィルムBとしては、例えば、アクリルフィルムに適宜な印刷や塗装あるいは金属蒸着を施しているフィルムが使用されている。
【0026】
まず、上記真空成形装置10によって成形品Aの表面に加飾フィルムBを貼着する方法を簡単に説明すると、図1に示すように、上部チャンバー12を上動させて下部チャンバー11の上端開口部を開放させると共に受治具セット台13を下部チャンバー11の上端開口部にまで上昇させたのち、上面に成形品Aを載置した受台2を上記セット台13上に固定している支持台3上に積載して受治具1を構成した状態にする。この際、受台2の下面中央部に突設してい截頭円錐形状の突部2b1 を支持台3の上面中央部に設けている截頭円錐形状の凹部3aに挿嵌させることによって、受台2を支持台3上に一定の上下幅を有する隙間4を形成した状態で正確に配置させることができる。
【0027】
こうして、成形品Aを上載させている受台2を受治具セット台13上の支持台3にセットしたのち、セット台13を固定させているテーブル17を下動させて図4に示すように、受治具1を下部チャンバー11内に収納した状態にすると共に下部チャンバー11の開口端に下面に粘着剤層を設けている加飾フィルムBを張設してその周縁端を下部チャンバー11の口縁に設けているクランプ24によって挟持、固定する。ついで、上部チャンバー12を下動させて図5に示すように、上下チャンバー11、12上記開口端を接合させることにより密閉したのち、真空タンク18により配管20、21を通じて上下チャンバー11、12内を真空にし、ヒータ14を発熱させて上下チャンバー11、12間を仕切った状態で張設している加飾フィルムBを加熱することにより図6に示すように軟化させる。
【0028】
しかるのち、図7に示すように、油圧シリンダ16を作動させて受治具セット台13を上昇させることにより、このセット台13上に設置している受治具1の受台2上の成形品Aの上面を加飾フィルムBの下面中央部に押し付けて加飾フィルムBを成形品Aの上面に密着させる。この状態にして切替弁22を切り替えて上部チャンバー12側の配管20を圧気供給管23側に連通させることより、圧空タンク19から空気を上部チャンバー12内に流入させると、加飾フィルムBの下方側は真空状態を保持しているので、成形品Aの外周端から外方に張設されている加飾フィルムBの端末部(外周部)が上記空気圧によって図2、図8に示すように、成形品Aの外周縁部A1の表面から下端面に密着すると共にさらに受台2の下半部2bの下端部外周面から受台2と支持台3間の隙間を覆って該支持台3の外周面を被覆した状態となる。
【0029】
このように加飾フィルムBを成形品Aから支持台3の下端に亘って被着させたのち、上下チャンバー11、12内を大気に開放させ、しかるのち、図9に示すように、上部チャンバー12を上動させて上下チャンバー11、12間を開放させ、この状態にして成形品Aの外周縁部A1の下端面から支持台3側に向かって下方にはみ出している加飾フィルムBの端末部B1の中間部を全周に亘って切除する一次トリミング加工を行う。
【0030】
この一次トリミング加工は、加熱カッタ刃からなる上記カッタ5を作業員が把持して図2に示すように、上記受台2と支持台3との対向面間で形成している隙間4にその刃先を挿入すると共に該刃先を隙間4に沿って周方向に移動させることにより行われ、この一次トリミング加工によって上記隙間4を被覆している加飾フィルムBの端末部B1の中間部を全周に亘って切除される。これによって支持台3の外周面を被覆している加飾フィルムBの端末部B1が分離され、加飾フィルムBを密着させている成形品Aを上載したまま、図10に示すように受台2を支持台3から離脱させる一方、支持台3の外周面を被覆している切断された加飾フィルムBの端末部B1は支持台3から剥離、除去して次の真空形成に備える。
【0031】
受台3から離脱させた受台2は、図3に示すように、真空形成装置外の適所に設置した刃物台6上に重ね合わせ状態に配設して成形品Aの外周縁部A1の下端面から下方にはみ出している残余の端末部B2を切除する二次トリミング加工を施す。
【0032】
この二次トリミング加工を施すに際して、上記のように刃物台6上への受台2の配設はこの受台2の下端部を刃物台6の上面に設けている凹部6aに上下摺動自在に嵌合させるので、刃物台6の所定位置に受台2を正確に配設することができると共に、その嵌合によって受台2上に載置している成形品Aの外周縁部A1の下端面を刃物台6の上面外周部に突設しているトムソン刃7上に正確に対向させることができる。
【0033】
この状態にして受台2をコイルスプリング8の弾発力にこうして下方に押圧移動させると、成形品Aの外周縁部A1の下端面に密着している加飾フィルムBの端末部がトムソン刃7に圧着して該トムソン刃7の尖鋭な刃先により全周に亘って切断され、成形品Aの外周縁部A1の下端面から下方にはみ出している上記残余の残余の端末部B2が切除される。こうして得られたフィルム加飾成形品Aは、図11に示すように、成形品Aの表面(上面)から外周縁部A1の下端面に亘って加飾フィルムBをきれいに貼着してなり、見栄えのよい外観を呈するものであった。
【符号の説明】
【0034】
1 受治具
2 受台
3 支持台
4 隙間
5 カッタ
6 刃物台
7 トムソン刃
8 コイルスプリング
10 真空成形装置
A 成形品
B 加飾フィルム
【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空成形装置の受治具を、外周縁が下方に向かって屈曲している成形品を上載させる受台とこの受台を隙間を介して支持する支持台とから構成して、真空成形により上記成形品に加飾フィルムを成形品の表面から下端面に亘って貼着したのち、成形品の下端面から上記受治具の下端部と支持台との外周面に亘ってはみ出している加飾フィルムの端末部を受台と支持台間に設けている上記隙間にカッタを挿入することにより切除し、しかるのち、受台を支持台から取り外して真空成形装置外に設置している刃物台上に移載し、この刃物台の上面に突設しているトムソン刃に受台上のフィルム加飾成形品の外周縁下端面を押し付けることにより、該下端面からはみ出している加飾フィルムの端末部を切除することを特徴とするフィルム加飾成形品のフィルム端末トリミング方法。
【請求項2】
真空成形装置の下部チャンバー内に配設される受治具と、真空成形装置外に設置される刃物台とからなり、上記受治具は外周縁部が下方に向かって湾曲している成形品を載置する受台とこの受台を隙間を介して支持する支持台とから構成していると共に上記隙間に成形品の外周縁部の下端から下方にはみ出している加飾フィルムの端末部の中間部を切除するカッタを挿入可能に構成してなり、さらに、上記刃物台は支持台から取り外した受台をスプリングを介して上下動自在に支持すると共にその上面外周部にフィルム加飾成形品の外周縁下端面からはみ出している加飾フィルムの端末部を切除するトムソン刃を突設してなることを特徴とするフィルム加飾成形品のフィルム端末トリミング装置。
【請求項3】
受治具を構成している受台と支持台との対向面の一方に截頭円錐形状の突部を、他方にこの突部を嵌脱可能に嵌合させる截頭円錐形状の凹部を設けていると共に、これらの突部と凹部との嵌合によって受台の下面外周部と第1支持台の上面外周部との間にカッタが挿入可能な一定幅を有する隙間を設けていることを特徴とする請求項2に記載のフィルム加飾成形品のフィルム端末トリミング装置。
【請求項4】
刃物台の上面中央部に受台の下端部を上下摺動自在に嵌合させる凹部を設けていると共にこの凹部を囲繞するようにして上面外周部にトムソン刃を突設してあり、さらに、刃物台に受台の下面を押圧するスプリングを配設していることを特徴とする請求項2又は請求項3に記載のフィルム加飾成形品のフィルム端末トリミング装置。
【請求項1】
真空成形装置の受治具を、外周縁が下方に向かって屈曲している成形品を上載させる受台とこの受台を隙間を介して支持する支持台とから構成して、真空成形により上記成形品に加飾フィルムを成形品の表面から下端面に亘って貼着したのち、成形品の下端面から上記受治具の下端部と支持台との外周面に亘ってはみ出している加飾フィルムの端末部を受台と支持台間に設けている上記隙間にカッタを挿入することにより切除し、しかるのち、受台を支持台から取り外して真空成形装置外に設置している刃物台上に移載し、この刃物台の上面に突設しているトムソン刃に受台上のフィルム加飾成形品の外周縁下端面を押し付けることにより、該下端面からはみ出している加飾フィルムの端末部を切除することを特徴とするフィルム加飾成形品のフィルム端末トリミング方法。
【請求項2】
真空成形装置の下部チャンバー内に配設される受治具と、真空成形装置外に設置される刃物台とからなり、上記受治具は外周縁部が下方に向かって湾曲している成形品を載置する受台とこの受台を隙間を介して支持する支持台とから構成していると共に上記隙間に成形品の外周縁部の下端から下方にはみ出している加飾フィルムの端末部の中間部を切除するカッタを挿入可能に構成してなり、さらに、上記刃物台は支持台から取り外した受台をスプリングを介して上下動自在に支持すると共にその上面外周部にフィルム加飾成形品の外周縁下端面からはみ出している加飾フィルムの端末部を切除するトムソン刃を突設してなることを特徴とするフィルム加飾成形品のフィルム端末トリミング装置。
【請求項3】
受治具を構成している受台と支持台との対向面の一方に截頭円錐形状の突部を、他方にこの突部を嵌脱可能に嵌合させる截頭円錐形状の凹部を設けていると共に、これらの突部と凹部との嵌合によって受台の下面外周部と第1支持台の上面外周部との間にカッタが挿入可能な一定幅を有する隙間を設けていることを特徴とする請求項2に記載のフィルム加飾成形品のフィルム端末トリミング装置。
【請求項4】
刃物台の上面中央部に受台の下端部を上下摺動自在に嵌合させる凹部を設けていると共にこの凹部を囲繞するようにして上面外周部にトムソン刃を突設してあり、さらに、刃物台に受台の下面を押圧するスプリングを配設していることを特徴とする請求項2又は請求項3に記載のフィルム加飾成形品のフィルム端末トリミング装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2010−228143(P2010−228143A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−75731(P2009−75731)
【出願日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【出願人】(390033112)積水テクノ成型株式会社 (48)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【出願人】(390033112)積水テクノ成型株式会社 (48)
【Fターム(参考)】
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