説明

フィルム及び包装体

【課題】キャリアテープ等の被着体表面状態の影響を受けにくく、剥離強度のふれが小さいフィルムを提供する。
【解決手段】フィルムは、表面層230を備える。表面層は、ポリマーブレンド物を主成分として形成される。ポリマーブレンド物は、少なくとも2種の単セグメントポリマーからなるか、少なくとも2種の複セグメントポリマーからなるか、少なくとも1種の単セグメントポリマーと少なくとも1種の複セグメントポリマーとからなる。そして、係るフィルムにおいて、ポリマーブレンド物中の全セグメント間の溶解度パラメータ値の差の絶対値の最大値は、0.40以上1.40以下である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、食品包装や電子部品包装に用いることができるフィルムに関する。また、本発明は、そのフィルムを備える包装体に関する。
【背景技術】
【0002】
過去に「キャリアテープから界面剥離するカバーテープ」が提案されている(例えば、特開2010−173673号公報参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−173673号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述のようなカバーテープは、キャリアテープの表面状態の影響を受けやすく、剥離強度のふれが大きい。したがって、このような界面剥離型のカバーテープがキャリアテープから剥離されるとき、キャリアテープが振動することが多い。このようにキャリアテープが振動すると、電子部品がキャリアテープから飛び出す等の不具合が生じやすくなる。
【0005】
本発明の課題は、キャリアテープ等の被着体表面状態の影響を受けにくく、剥離強度のふれが小さいフィルムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本発明に係るフィルムは、表面層(接着層)を備える。なお、本フィルムは、表面層のみから形成されてもよいし(つまり単層フィルム)、表面層と他の層から形成されてもよい(つまり多層フィルム)。表面層は、ポリマーブレンド物を主成分として形成される。ポリマーブレンド物は、少なくとも2種の単セグメントポリマーからなるか、少なくとも2種の複セグメントポリマーからなるか、少なくとも1種の単セグメントポリマーと少なくとも1種の複セグメントポリマーとからなる。なお、本願において、「単セグメントポリマー」とは、セグメントが1つしかないポリマーであって、ホモポリマー、ランダム共重合ポリマーおよび交互共重合ポリマーのいずれかである。また、本願において、「複セグメントポリマー」とは、セグメントを2つ以上有するポリマーであって、ブロック共重合ポリマーおよびグラフト共重合ポリマーのいずれかである。また、本願において、セグメントとは、構成単位が10以上繰り返されている部分を意味する。そして、本発明に係るフィルムにおいて、ポリマーブレンド物中の全セグメント間の溶解度パラメータ値の差の絶対値の最大値は、0.40以上1.40以下である。なお、本願において、溶解度パラメータとはヒルデブランド溶解度パラメータを意味する。また、溶解度パラメータ値の差の絶対値の最大値は、0.90以上1.30以下であるのが好ましく、1.00以上1.20以下であるのがより好ましい。
【0007】
上記条件を満たすフィルムが熱融着または接着剤により表面層を介して被着体に接着されると、そのフィルムを被着体から剥離するとき、表面層を凝集破壊させながらフィルムを剥離させることが可能となる。一般に、凝集破壊剥離は、界面剥離に比べて、被着体の表面状態の影響を受けにくく、剥離強度のふれが小さい。このため、このフィルムは、被着体の表面状態の影響を受けにくく、被着体に接着された後にその被着体から剥離される場合において剥離強度のふれを小さくすることができる。
【0008】
(2)上述(1)に係るフィルムにおいて、最大値を算出する元になる溶解度パラメータ値を有する2つのセグメント(以下「特定セグメント」という)は、ポリマーブレンド物を100重量部としたとき、15重量部以上60重量部以下含有されるのが好ましい。また、一方の特定セグメントと他方の特定セグメントとの重量比は、30:70から70:30の範囲内であるのが好ましい。
【0009】
上記条件を満たすフィルムが熱融着または接着剤により表面層を介して被着体に接着されると、そのフィルムを被着体から剥離するとき、表面層を凝集破壊させながらフィルムを剥離させることが可能となる。一般に、凝集破壊剥離は、界面剥離に比べて、被着体の表面状態の影響を受けにくく、剥離強度のふれが小さい。このため、このフィルムは、被着体の表面状態の影響を受けにくく、被着体に接着された後にその被着体から剥離される場合において剥離強度のふれを小さくすることができる。
【0010】
(3)上述(1)または(2)に係るフィルムにおいて、少なくとも1種のセグメントには、熱融着性がある。そして、表面層は、熱融着層として機能する。
【0011】
このため、このフィルムは、熱融着により被着体に接着することができる。
【0012】
(4)本発明に係る包装体は、上述の(3)に係るフィルムおよび包装容器を備える。包装容器は、開口が上記フィルムで覆われる。そして、熱融着性を有するセグメントの溶解度パラメータ値と、包装容器の開口の周辺部の表面を形成する樹脂組成物の主成分との溶解度パラメータ値との差の絶対値が1.90以下である。なお、ここにいう主成分とは、樹脂組成物において50重量%以上を占めるものを意味する。
【0013】
上記条件を満たす包装体では、開封前においてフィルムが良好に包装容器に密着されており、開封時にフィルムの剥離強度のふれを小さくすることができる。
【0014】
(5)上述(4)に係る包装体では、包装容器に対するフィルムの剥離強度が0.1N以上1.0N以下であるのが好ましい。なお、上記剥離強度は、JIS C−0806−3に記載の8mm幅キャリアテープ使用時の規格に準じて測定される。
【0015】
上記条件を満たす包装体では、開封前においてフィルムが良好に包装容器に密着されており、開封時にフィルムを容易に剥離させることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係るフィルムは、被着体の表面状態の影響を受けにくく、被着体に接着された後にその被着体から剥離される場合において剥離強度のふれを小さくすることができる。
【0017】
また、このフィルムは、上述の通り、熱融着または接着剤により表面層を介して被着体に接着された後に被着体から剥離されるとき、表面層が凝集破壊されながら剥離される。このため、このフィルムは、従前の界面剥離型フィルムよりも剥離強度の経時変化が少ないだけでなく、剥離強度に対する被着体の素材の影響が小さく、また、被着体に接着された状態で輸送される場合において自然剥離しにくい。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施形態に係る包装体の斜視図である。
【図2】図1に示した包装体のA−A線断面図である。
【図3】図2のP部分の拡大断面図である。
【図4】キャリアテープからカバーテープを剥離させている状態を示す斜視図である。
【図5】キャリアテープからカバーテープを剥離させた状態を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の一実施形態に係る包装体100は、図1および図2に示されるように、主に、カバーテープ200およびキャリアテープ(包装容器)300から構成される。以下、カバーテープ200およびキャリアテープ300それぞれについて詳述する。
【0020】
<カバーテープ>
カバーテープ200は、図3に示されるように、積層フィルムであって、基材層210、中間層220及び接着層(表面層)230から構成されている。
【0021】
基材層210は、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)・ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル樹脂、ポリエチレン・ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂、ナイロン(登録商標)等のポリアミド樹脂等の透明で剛性の高い二軸延伸フィルムであることが好ましい。基材層210の厚みは6μm以上100μm以下であることが好ましい。また、基材層210には、片面に帯電防止処理が施されてもよい。また、基材層210には、中間層220または接着層230が形成される面に、必要に応じて予めコロナ処理、プラズマ処理、サンドブラスト処理等の表面処理が施されてもよい。また、カバーテープ200の機械強度を高める目的で、先の延伸フィルムを積層してもよい。
【0022】
中間層220は、例えば、ポリエチレン、ポリエチレン−ビニルアセテート共重合体、エチレン−アクリル共重合体、ポリウレタンから形成される。なお、ポリエチレンとしては、低密度ポリエチレンが好ましい。また、中間層220の厚みは10μm以上50μm以下であることが好ましい。なお、中間層220は、省略されてもかまわない。
【0023】
基材層210、すなわち、基材フィルム上に中間層220を形成する方法としては、例えば、ドライラミネート法、押し出しラミネート法が挙げられる。なお、基材層210の柔軟性を考慮すると、押し出しラミネート法が好ましい。
【0024】
接着層(表面層)230は、ポリマーブレンド物から形成されている。そして、このポリマーブレンド物は、複数の単セグメントポリマーから構成されていてもよいし、複数の複セグメントポリマーから構成されていてもよいし、少なくとも1種の単セグメントポリマーと少なくとも1種の複セグメントポリマーとから構成されていてもよい。なお、本実施の形態において、「単セグメントポリマー」とは、セグメントが1つしかないポリマーであって、ホモポリマー、ランダム共重合ポリマーおよび交互共重合ポリマーのいずれかである。また、「複セグメントポリマー」とは、セグメントを2つ以上有するポリマーであって、ブロック共重合ポリマーおよびグラフト共重合ポリマーのいずれかである。そして、本実施の形態において、ポリマーブレンド物中の全セグメント間の溶解度パラメータ値の差の絶対値の最大値は、0.40以上1.40以下である。なお、この接着層には、導電性物質が分散されていてもよい。ポリマーブレンド物中の全セグメント間の溶解度パラメータ値の差の絶対値の最大値が0.4よりも小さい場合には 凝集力が大きくなるために界面剥離となり、被着体の表面状態の影響を受けにやすく剥離強度のふれが大きくなり、1.40より大きい場合には凝集力が小さくなるために十分な剥離強度が得られず、製膜性が悪化するという不具合が生じるため好ましくない。
【0025】
なお、ポリマーブレンド物中に含有される単セグメントポリマー及び複セグメントポリマーの少なくとも1種が、熱融着性樹脂、熱融着性樹脂に対して不溶な非相溶樹脂、又は帯電防止樹脂であることが好ましい。また、ポリマーブレンド物中に熱融着性樹脂、熱融着性樹脂に対して不溶な非相溶樹脂、及び帯電防止樹脂を全て含むことがさらに好ましい。なお、かかる場合、ポリマーブレンド物は、相分離構造を有する。
【0026】
熱融着性樹脂としては、例えば、ポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂が挙げられる。
酢酸ビニル系樹脂及びアクリル樹脂としては、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−メチルアクリレートランダム共重合体、エチレン−メチルメタクリレートランダム共重合体、エチレン−エチルアクリレートランダム共重合体、エチレン−エチルメタクリレートランダム共重合体、エチレン−ブチルアクリレートランダム共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体等が挙げられる。
【0027】
ポリオレフィン系樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレンαオレフィン共重合体等が挙げられる。
【0028】
ポリスチレン系樹脂としては、例えば、ポリスチレン、スチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体(SBS)、スチレン・エチレン・ブチレン・スチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体(SIS)、スチレン・エチレン・プロピレン・スチレンブロック共重合体(SEPS)、水素添加型スチレン・ブタジエンランダム共重合体(HSBR)等が挙げられる。
【0029】
ポリエステル系樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等が挙げられる。
【0030】
熱融着性樹脂がエチレン−メチルアクリレートランダム共重合体またはエチレン−メチルメタクリレートランダム共重合体である場合、非相溶樹脂としては、例えば、メチルメタクリレート−スチレンランダム共重合体、ポリスチレン樹脂が挙げられる。
【0031】
上記熱融着性樹脂の中でも、アクリル樹脂、ポリオレフィン系樹脂、酢酸ビニル系樹脂が好ましく、これらの中でも、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−メチルメタクリレートランダム共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体が特に好ましい。
【0032】
帯電防止樹脂としては、例えば、ポリエチレンオキサイド・ポリエチレンオキサイド架橋体・ポリエチレンオキサイド共重合体・ポリエチレングリコール・ポリエチレングリコール共重合体(ポリプロピレン−ポリエチレングリコールブロック共重合体等)、ポリエチレングリコール・ポリオレフィン共重合体等のノ二オン系のポリエーテル、第四級アンモニウム塩基含有メタクリレート共重合体・第四級アンモニウム塩基含有マレイミド共重合体・第四級アンモニウム塩基含有メタクリル共重合体等の第四級アンモニウム系樹脂、ポリスチレンスルホン酸ソーダ等のスルホン酸系樹脂、カリウム等一価のイオンを含有するアイオノマー、Liイオン含有のポリエーテル・ポリオレフィン共重合体等のLiイオンを含有するポリエーテル、ポリエーテルエステルアミド系樹脂、エチレンオキシド・エピクロルヒドリン系樹脂、ポリエーテルエステル系樹脂等が挙げられる。
上記帯電防止樹脂の中でも、ノニオン系のポリエーテル及びLiイオンを含有するポリエーテルが好ましく、中でも、ポリエチレングリコール・ポリオレフィン共重合体、Liイオンを含有するポリエーテル・ポリオレフィン共重合体が特に好ましい。
【0033】
上述の最大値を算出する元になる溶解度パラメータ値を有する2つのセグメント(以下「特定セグメント」という)は、ポリマーブレンド物を100重量部としたとき、15重量部以上60重量部以下含有されるのが好ましく、20重量部以上50重量部以下含有されるのがより好ましい。15重量部より小さい場合にはシール性と帯電防止性が両立できず、60重量部より大きい場合には、シール性もしくは帯電防止性が低下してしまうため好ましくない。
【0034】
一方の特定セグメントと他方の特定セグメントとの重量比は30:70から70:30の範囲内であるのが好ましい。一方の特定セグメントの他方の特定セグメントに対する重量比が30よりも小さい、または70より大きい場合にはシール性もしくは帯電防止性が低下してしまうため好ましくない。
【0035】
カバーテープ200の厚みは、特に限定されるものではないが、500μm以下が好ましく、200μm以下がより好ましく、100μm以下がさらに好ましい。また、10μm以上が好ましく、20μm以上がより好ましく、30μm以上がさらに好ましい。
【0036】
基材フィルム上または中間層220に接着層230を形成する方法としては、例えば、ドライラミネート法、押し出しラミネート法が挙げられる。なお、基材層210の柔軟性を考慮すると、押し出しラミネート法が好ましい。
【0037】
<キャリアテープ(包装容器)>
キャリアテープ300には、図1および図2に示されるように、ポケット310及びスプロケットホール320が形成されている。
【0038】
キャリアテープ300の材料としては、特に限定されないが、例えば、ポリスチレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリエステル系樹脂(例えば、ポリエチレンテレフタレート樹脂など)、ポリカーボネート系樹脂などの各種樹脂が挙げられる。
【0039】
なお、本実施の形態において、「キャリアテープ300の主成分の溶解度パラメータ値」と「カバーテープ200の接着性樹脂の溶解度パラメータ値」との差の絶対値は小さい方が好ましいが、少なくとも1.90以下であり、1.85以下であることが好ましい。なお、ここにいう主成分とは、キャリアテープ300を構成する材料中で50重量%以上を占めるものを意味する。
【0040】
キャリアテープ300の材料には、カーボンブラック、グラファイト、カーボン繊維などの導電性フィラーが分散されることが好ましい。この導電性フィラーは、キャリアテープ300に導電性を付与し、キャリアテープ300が帯電することを抑制する。そのため、包装体100で包装された電子部品400は、キャリアテープ300の静電気によって破壊されにくくなる。
【0041】
ポケット310は、電子部品400の収容部分であって、図1に示されるように、キャリアテープ300の長手方向に沿って等間隔で複数個形成されている。このポケット310は、例えば、キャリアテープ300の材料シートを加熱プレス成形、加熱真空成形、または加熱圧空成形することによって形成される。
【0042】
スプロケットホール320は、図1に示されるように、キャリアテープ300の長手方向に沿って等間隔で複数個形成される穴である。このスプロケットホール320は、キャリアテープ300にカバーテープ200が接着されたとき、カバーテープ200で覆われない位置に形成される。スプロケットホール320は、スプロケットホイール(図示せず)の歯と嵌合する。スプロケットホール320にスプロケットホイールが嵌合した状態でスプロケットホイールが回転すると、キャリアテープ300が搬送される。
【0043】
<カバーテープとキャリアテープとの接着>
カバーテープ200は、キャリアテープ300にヒートシールされる。このヒートシールは、例えば、シール機を用いて行われる。ヒートシールは、通常、ポケット310の幅方向の両際部分を通るように、カバーテープ200の長手方向に沿って標準的には0.3mm以上1.0mm以下の幅で行われる。
【0044】
<カバーテープの剥離>
図4および図5に示されるように、本実施の形態に係るカバーテープ200がキャリアテープ300から剥離されると、接着層230が凝集破壊される。その結果、カバーテープ側では接着層230の一部が剥ぎ取られた状態となり(図4の符号RC参照)、キャリアテープ側では接着層230の残部RSがキャリアテープ300に残存する状態となる。
キャリアテープ(包装容器)に対するフィルムの剥離強度(JIS C−0806−3に記載の8mm幅キャリアテープ使用時の規格に準じる)は、0.1N以上1.0N以下であることが好ましく、0.2N以上0.7N以下であることがさらに好ましい。
剥離強度が0.1Nより小さい場合には、自然剥離されやすくなり、1.0Nより大きい場合には、キャリアテープの振動により電子部品がキャリアテープから飛び出す等の不具合が生じやすくなり、好ましくない。
【0045】
<本実施の形態に係るカバーテープの特徴>
(1)本実施の形態に係るカバーテープ200は、キャリアテープ300から剥離されるとき、凝集破壊剥離される。このため、このフィルムは、被着体の表面状態の影響を受けにくく、被着体に接着された後にその被着体から剥離される場合において剥離強度のふれを小さくすることができる。
【0046】
(2)本実施の形態において「キャリアテープ300の主成分の溶解度パラメータ値」と「カバーテープ200の接着性樹脂の溶解度パラメータ値」との差の絶対値は1.90以下である。一般に、2つの材料の溶解度パラメータ値が近ければ近い程、それらの材料は良好に接着する。したがって、本実施の形態に係るキャリアテープ300とカバーテープ200とは、良好に接着する。
【0047】
<変形例>
(A)先の実施形態に係るカバーテープ200は接着層230を介してキャリアテープ300にヒートシールされたが、カバーテープ200は接着剤を介してキャリアテープ300に接着されてもよい。なお、かかる場合、接着層には熱融着性樹脂が含有されていなくてもよい。ただし、かかる場合であっても、接着層は凝集破壊剥離することが必須である。
【0048】
(B)先の実施形態に係るカバーテープ200には中間層220が設けられたが、上述の通り、中間層220は省略されてもよい。
【0049】
(C)先の実施形態では特に言及しなかったが、カバーテープ200には、別途、帯電防止層が設けられてもよい。なお、帯電防止層は、基材層210と中間層220との間(3層構成の場合)、または、基材層210と接着層230との間(2層構成の場合)に設けられるのが好ましい。なお、帯電防止層としては、例えば、ウレタン−イソシアネートにアルキル四級アンモニウムエトサルフェート及び炭酸プロピレンが分散されたものが挙げられる。
【0050】
(D)先の実施形態に係るカバーテープ200の接着層230では接着性樹脂が単セグメントポリマーであったが、接着性樹脂は複セグメントポリマー、すなわち、ブロック共重合体、グラフト共重合体であってもよい。かかる場合、「接着性に寄与するセグメントの溶解度パラメータ値」と「キャリアテープ300の主成分との溶解度パラメータ値」との差の絶対値が1.90以下であればよい。
【0051】
以下、実施例および比較例を示して本発明に係るカバーテープ及び包装体をより詳細に説明する。なお、これらの実施例および比較例は、本発明を限定するものではない。
【実施例1】
【0052】
1.ポリマーブレンドの調整
接着性樹脂としてエチレン−メチルアクリレートランダム共重合体(以下「EMAセグメント」と略する)(三井・デュポンポリケミカル株式会社製エルバロイAC 1820)を用意し、非相溶樹脂としてメチルメタクリレート−スチレンランダム共重合体(以下「MSセグメント」と略する)(日本エイアンドエル株式会社製アトレーテMM70)を用意し、帯電防止樹脂としてポリプロピレン−ポリエチレングリコールブロック共重合体(以下「PP−PEG樹脂」と略する)(三洋化成工業株式会社製ペレスタット212)を用意した。
【0053】
なお、PP−PEG樹脂は、ポリプロピレンセグメント(以下「PPセグメント」と略する)とポリエチレングリコールセグメント(以下「PEGセグメント」と略する)とから構成される。PP−PEG樹脂の共重合比(重量比)は、PPセグメント:PEGセグメント=50:50である。
【0054】
そして、60重量部のEMAセグメント、10重量部のMSセグメント及び30重量部のPP−PEG樹脂を混合し、二軸スクリュー押出機を用いてシリンダー温度180度Cの条件下でこれらの混合物を溶融ブレンドして、ペレットを調製した。なお、配合比をセグメント単位で考える場合、EMAセグメント、MSセグメント、PPセグメント及びPEGセグメントの重量配合比は、60:10:15:15である。
【0055】
(1)各セグメントの詳細
各セグメントの詳細は以下の通りである。
a)EMAセグメント
共重合比(重量比)/エチレン:メチルアクリレート=80:20
溶解度パラメータ値/8.34〜8.51
b)MSセグメント
共重合比(重量比)/メチルメタクリレート:スチレン=70:30
溶解度パラメータ値/8.95〜9.38
c)PPセグメント
溶解度パラメータ値/8.10
d)PEGセグメント
溶解度パラメータ値/8.63
【0056】
(2)各セグメント間の溶解パラメータ値の差の絶対値
上記ポリマーブレンド中の全セグメント間の溶解度パラメータ値の差の絶対値は以下の通りである。
EMAセグメント−MSセグメント:0.44(最小値),1.04(最大値)
EMAセグメント−PPセグメント:0.24(最小値),0.41(最大値)
EMAセグメント−PEGセグメント:0.12(最小値),0.29(最大値)
MSセグメント−PPセグメント:0.85(最小値),1.28(最大値)
MSセグメント−PEGセグメント:0.32(最小値),0.75(最大値)
PPセグメント−PEGセグメント:0.53(最小値)
【0057】
(3)セグメント間の溶解度パラメータ値の差の絶対値の最大値
セグメント間の溶解度パラメータ値の差の絶対値の最大値は、上記の通り、0.85(最小値),1.28(最大値)であり、0.40〜1.40の範囲内であった。なお、この最大値を算出する元になる溶解度パラメータ値を有するセグメントは、MSセグメント及びPPセグメントであった。ポリマーブレンドを100重量部としたとき、MSセグメント及びPPセグメントは、ポリマーブレンド中に25重量部含有されることになる。
【0058】
2.カバーテープの作製
押し出しラミネート法により上述のペレットの加熱融解物をポリエチレンテレフタレート二軸延伸フィルム(東洋紡績株式会社製)上に押出して、二層構造のカバーテープを作製した。
【0059】
3.剥離試験
(1)キャリアテープ
キャリアテープとして、(A)80重量部の耐衝撃性ポリスチレン(A&Mスチレン株式会社製HT516)、5重量部のエチレン−ビニルアルコール共重合体(三井・デュポンポリケミカル株式会社製エバフレックスP2505)および15重量部のカーボンブラック(電気化学工業株式会社製デンカブラック粒状体)の混合物から成るキャリアテープ(以下「PSキャリアテープ」という)と、(B)67重量部のポリカーボネート、22重量部のPCTG(SKケミカル株式会社製SKYGREEN J2003)および11重量部のカーボンブラック(ケッチェンブラックインターナショナル製ケッチェンブラックEC)の混合物から成るキャリアテープ(以下「PCキャリアテープ」という)とを用意した。
【0060】
なお、PSキャリアテープの主成分は耐衝撃性ポリスチレンであり、その溶解度パラメータ値は8.60〜9.10である。また、PCキャリアテープの主成分はポリカーボネートであり、その溶解度パラメータ値は9.80〜10.00である。
【0061】
したがって、「PSキャリアテープの主成分の溶解度パラメータ値」と「カバーテープの接着性樹脂であるEMAセグメントの溶解度パラメータ値」との差の絶対値は、0.09(最小値),0.76(最大値)であり、いずれも1.90以下であった。
【0062】
また、「PCキャリアテープの主成分の溶解度パラメータ値」と「カバーテープの接着性樹脂であるEMAセグメントの溶解度パラメータ値」との差の絶対値は、1.29(最小値),1.66(最大値)であり、いずれも1.90以下であった。
【0063】
(2)キャリアテープに対するカバーテープの接着
PSキャリアテープ及びPCキャリアテープそれぞれに対して上述のカバーテープをヒートシールした。なお、ヒートシールは、シール機(ISMECA社製、品名:MBM−4000)を用いて、シール温度180℃、シール時間0.3秒、シール圧力9.8Nの条件下で行われた。
【0064】
(3)剥離試験
JIS C−0806−3の記載の8mm幅キャリアテープ使用時の規格に準拠して、165°から180°の剥離角度にてカバーテープをPCキャリアテープから剥離したときの平均荷重値を剥離強度とした。なお、本実施例に係るPCキャリアテープに対するカバーテープの剥離強度は、0.55Nであった(表1参照)。
また、本実施例に係るカバーテープは、PCキャリアテープおよびPSキャリアテープから剥離させたとき、接着層が凝集破壊していた(表1参照)。
【実施例2】
【0065】
EMAセグメントを65重量部とし、MSセグメントを5重量部とし、PP−PEG樹脂を30重量部とした以外は、実施例1と同様にして、カバーテープを調製し、剥離試験を行った。なお、ポリマーブレンドを100重量部としたとき、MSセグメント及びPPセグメントは、ポリマーブレンド中に20重量部含有されることになる。
【0066】
(4)剥離試験の結果
本実施例に係るPCキャリアテープに対するカバーテープの剥離強度は、0.53Nであった。また、本実施例に係るカバーテープは、PCキャリアテープおよびPSキャリアテープから剥離させたとき、接着層が凝集破壊していた(表1参照)。
【0067】
なお、「PSキャリアテープの主成分の溶解度パラメータ値」と「カバーテープの接着性樹脂であるEMAセグメントの溶解度パラメータ値」との差の絶対値は、0.09(最小値),0.76(最大値)であり、いずれも1.90以下であった。
【0068】
また、「PCキャリアテープの主成分の溶解度パラメータ値」と「カバーテープの接着性樹脂であるEMAセグメントの溶解度パラメータ値」との差の絶対値は、1.29(最小値),1.66(最大値)であり、いずれも1.90以下であった。
【実施例3】
【0069】
メチルメタクリレート−スチレンランダム共重合体(日本エイアンドエル株式会社製アトレーテMM70)の代りにメチルメタクリレート−スチレンランダム共重合体(以下「MSセグメント」と略する)(新日鐡化学株式会社製エスチレンMS600NT)を用意したこと以外は、実施例1と同様にして、カバーテープを調製し、剥離試験を行った。なお、本実施例に係るMSセグメントの共重合比および溶解度パラメータ値は以下の通りであった。
【0070】
(1)MSセグメントの詳細
共重合比(重量比):メチルメタクリレート:スチレン=60:40
溶解度パラメータ値:8.90〜9.34
【0071】
(2)各セグメント間の溶解パラメータ値の差の絶対値
上記ポリマーブレンド中の全セグメント間の溶解度パラメータ値の差の絶対値は以下の通りである。
EMAセグメント−MSセグメント:0.39(最小値),1.00(最大値)
EMAセグメント−PPセグメント:0.24(最小値),0.41(最大値)
EMAセグメント−PEGセグメント:0.12(最小値),0.29(最大値)
MSセグメント−PPセグメント:0.80(最小値),1.24(最大値)
MSセグメント−PEGセグメント:0.27(最小値),0.71(最大値)
PPセグメント−PEGセグメント:0.53(最小値)
【0072】
(3)セグメント間の溶解度パラメータ値の差の絶対値の最大値
セグメント間の溶解度パラメータ値の差の絶対値の最大値は、上記の通り、0.80(最小値),1.24(最大値)であり、0.40〜1.40の範囲内であった。なお、この最大値を算出する元になる溶解度パラメータ値を有するセグメントは、MSセグメント及びPPセグメントであった。ポリマーブレンドを100重量部としたとき、MSセグメント及びPPセグメントは、ポリマーブレンド中に25重量部含有されることになる。
【0073】
(4)剥離試験の結果
本実施例に係るPCキャリアテープに対するカバーテープの剥離強度は、0.28Nであった。また、本実施例に係るカバーテープは、PCキャリアテープおよびPSキャリアテープから剥離させたとき、接着層が凝集破壊していた(表1参照)。
【0074】
なお、「PSキャリアテープの主成分の溶解度パラメータ値」と「カバーテープの接着性樹脂であるEMAセグメントの溶解度パラメータ値」との差の絶対値は、0.09(最小値),0.76(最大値)であり、いずれも1.90以下であった。
【0075】
また、「PCキャリアテープの主成分の溶解度パラメータ値」と「カバーテープの接着性樹脂であるEMAセグメントの溶解度パラメータ値」との差の絶対値は、1.29(最小値),1.66(最大値)であり、いずれも1.90以下であった。
【実施例4】
【0076】
メチルメタクリレート−スチレンランダム共重合体(日本エイアンドエル株式会社製アトレーテMM70)の代りにメチルメタクリレート−スチレンランダム共重合体(以下「MSセグメント」と略する)(新日鐵化学株式会社製エスチレンMS300)を用意したこと以外は、実施例1と同様にして、カバーテープを調製し、剥離試験を行った。なお、本実施例に係るMSセグメントの共重合比および溶解度パラメータ値は以下の通りであった。
【0077】
(1)MSセグメントの詳細
共重合比(重量比):メチルメタクリレート:スチレン=30:70
溶解度パラメータ値:8.75〜9.22
【0078】
(2)各セグメント間の溶解パラメータ値の差の絶対値
上記ポリマーブレンド中の全セグメント間の溶解度パラメータ値の差の絶対値は以下の通りである。
EMAセグメント−MSセグメント:0.24(最小値),0.88(最大値)
EMAセグメント−PPセグメント:0.24(最小値),0.41(最大値)
EMAセグメント−PEGセグメント:0.12(最小値),0.29(最大値)
MSセグメント−PPセグメント:0.65(最小値),1.12(最大値)
MSセグメント−PEGセグメント:0.12(最小値),0.59(最大値)
PPセグメント−PEGセグメント:0.53(最小値)
【0079】
(3)セグメント間の溶解度パラメータ値の差の絶対値の最大値
セグメント間の溶解度パラメータ値の差の絶対値の最大値は、上記の通り、0.65(最小値),1.12(最大値)であり、0.40〜1.40の範囲内であった。なお、この最大値を算出する元になる溶解度パラメータ値を有するセグメントは、MSセグメント及びPPセグメントであった。ポリマーブレンドを100重量部としたとき、MSセグメント及びPPセグメントは、ポリマーブレンド中に25重量部含有されることになる。
【0080】
(4)剥離試験の結果
本実施例に係るPCキャリアテープに対するカバーテープの剥離強度は、0.59Nであった。また、本実施例に係るカバーテープは、PCキャリアテープおよびPSキャリアテープから剥離させたとき、接着層が凝集破壊していた(表1参照)。
【0081】
なお、「PSキャリアテープの主成分の溶解度パラメータ値」と「カバーテープの接着性樹脂であるEMAセグメントの溶解度パラメータ値」との差の絶対値は、0.09(最小値),0.76(最大値)であり、いずれも1.90以下であった。
【0082】
また、「PCキャリアテープの主成分の溶解度パラメータ値」と「カバーテープの接着性樹脂であるEMAセグメントの溶解度パラメータ値」との差の絶対値は、1.29(最小値),1.66(最大値)であり、いずれも1.90以下であった。
【実施例5】
【0083】
EMAセグメントを45重量部とし、MSセグメントを25重量部とし、PP−PEG樹脂を30重量部とした以外は、実施例4と同様にしてカバーテープを調製し、実施例1と同様にして剥離試験を行った。なお、ポリマーブレンドを100重量部としたとき、MSセグメント及びPPセグメントは、ポリマーブレンド中に40重量部含有されることになる。
【0084】
(4)剥離試験の結果
本実施例に係るPCキャリアテープに対するカバーテープの剥離強度は、0.28Nであった。また、本実施例に係るカバーテープは、PCキャリアテープおよびPSキャリアテープから剥離させたとき、接着層が凝集破壊していた(表1参照)。
【0085】
なお、「PSキャリアテープの主成分の溶解度パラメータ値」と「カバーテープの接着性樹脂であるEMAセグメントの溶解度パラメータ値」との差の絶対値は、0.09(最小値),0.76(最大値)であり、いずれも1.90以下であった。
【0086】
また、「PCキャリアテープの主成分の溶解度パラメータ値」と「カバーテープの接着性樹脂であるEMAセグメントの溶解度パラメータ値」との差の絶対値は、1.29(最小値),1.66(最大値)であり、いずれも1.90以下であった。
【実施例6】
【0087】
EMAセグメントを35重量部とし、MSセグメントを35重量部とし、PP−PEG樹脂を30重量部とした以外は、実施例4と同様にしてカバーテープを調製し、実施例1と同様にして剥離試験を行った。なお、ポリマーブレンドを100重量部としたとき、MSセグメント及びPPセグメントは、ポリマーブレンド中に50重量部含有されることになる。
【0088】
(4)剥離試験の結果
本実施例に係るPCキャリアテープに対するカバーテープの剥離強度は、0.14Nであった。また、本実施例に係るカバーテープは、PCキャリアテープおよびPSキャリアテープから剥離させたとき、接着層が凝集破壊していた(表1参照)。
【0089】
なお、「PSキャリアテープの主成分の溶解度パラメータ値」と「カバーテープの接着性樹脂であるEMAセグメントの溶解度パラメータ値」との差の絶対値は、0.09(最小値),0.76(最大値)であり、いずれも1.90以下であった。
【0090】
また、「PCキャリアテープの主成分の溶解度パラメータ値」と「カバーテープの接着性樹脂であるEMAセグメントの溶解度パラメータ値」との差の絶対値は、1.29(最小値),1.66(最大値)であり、いずれも1.90以下であった。
【実施例7】
【0091】
メチルメタクリレート−スチレンランダム共重合体(日本エイアンドエル株式会社製アトレーテMM70)の代りにメチルメタクリレート−スチレンランダム共重合体(以下「MSセグメント」と略する)(新日鐵化学株式会社製エスチレン MS200NT)を用意したこと以外は、実施例1と同様にして、カバーテープを調製し、剥離試験を行った。なお、本実施例に係るMSセグメントの共重合比および溶解度パラメータ値は以下の通りであった。
【0092】
(1)MSセグメントの詳細
共重合比(重量比):メチルメタクリレート:スチレン=20:80
溶解度パラメータ値:8.70〜9.18
【0093】
(2)各セグメント間の溶解パラメータ値の差の絶対値
上記ポリマーブレンド中の全セグメント間の溶解度パラメータ値の差の絶対値は以下の通りである。
EMAセグメント−MSセグメント:0.19(最小値),0.84(最大値)
EMAセグメント−PPセグメント:0.24(最小値),0.41(最大値)
EMAセグメント−PEGセグメント:0.12(最小値),0.29(最大値)
MSセグメント−PPセグメント:0.60(最小値),1.08(最大値)
MSセグメント−PEGセグメント:0.07(最小値),0.55(最大値)
PPセグメント−PEGセグメント:0.53(最小値)
【0094】
(3)セグメント間の溶解度パラメータ値の差の絶対値の最大値
セグメント間の溶解度パラメータ値の差の絶対値の最大値は、上記の通り、0.60(最小値),1.08(最大値)であり、0.40〜1.40の範囲内であった。なお、この最大値を算出する元になる溶解度パラメータ値を有するセグメントは、MSセグメント及びPPセグメントであった。ポリマーブレンドを100重量部としたとき、MSセグメント及びPPセグメントは、ポリマーブレンド中に25重量部含有されることになる。
【0095】
(4)剥離試験の結果
本実施例に係るPCキャリアテープに対するカバーテープの剥離強度は、0.52Nであった。また、本実施例に係るカバーテープは、PCキャリアテープおよびPSキャリアテープから剥離させたとき、接着層が凝集破壊していた(表1参照)。
【0096】
なお、「PSキャリアテープの主成分の溶解度パラメータ値」と「カバーテープの接着性樹脂であるEMAセグメントの溶解度パラメータ値」との差の絶対値は、0.09(最小値),0.76(最大値)であり、いずれも1.90以下であった。
【0097】
また、「PCキャリアテープの主成分の溶解度パラメータ値」と「カバーテープの接着性樹脂であるEMAセグメントの溶解度パラメータ値」との差の絶対値は、1.29(最小値),1.66(最大値)であり、いずれも1.90以下であった。
【実施例8】
【0098】
EMAセグメントを35重量部とし、MSセグメントを35重量部とし、PP−PEG樹脂を30重量部とした以外は、実施例7と同様にしてカバーテープを調製し、実施例1と同様にして剥離試験を行った。なお、ポリマーブレンドを100重量部としたとき、MSセグメント及びPPセグメントは、ポリマーブレンド中に50重量部含有されることになる。
【0099】
(4)剥離試験の結果
本実施例に係るPCキャリアテープに対するカバーテープの剥離強度は、0.34Nであった。また、本実施例に係るカバーテープは、PCキャリアテープおよびPSキャリアテープから剥離させたとき、接着層が凝集破壊していた(表1参照)。
【0100】
なお、「PSキャリアテープの主成分の溶解度パラメータ値」と「カバーテープの接着性樹脂であるEMAセグメントの溶解度パラメータ値」との差の絶対値は、0.09(最小値),0.76(最大値)であり、いずれも1.90以下であった。
【0101】
また、「PCキャリアテープの主成分の溶解度パラメータ値」と「カバーテープの接着性樹脂であるEMAセグメントの溶解度パラメータ値」との差の絶対値は、1.29(最小値),1.66(最大値)であり、いずれも1.90以下であった。
【実施例9】
【0102】
メチルメタクリレート−スチレンランダム共重合体(日本エイアンドエル株式会社製アトレーテMM70)の代りにポリスチレン(以下「PSセグメント」と略する)(東洋スチレン株式会社製トーヨースチロールG210C)を用意したこと以外は、実施例1と同様にして、カバーテープを調製し、剥離試験を行った。なお、本実施例に係るPSセグメントの溶解度パラメータ値は以下の通りであった。
【0103】
(1)PSセグメントの溶解度パラメータ値
溶解度パラメータ値:8.60〜9.10
【0104】
(2)各セグメント間の溶解パラメータ値の差の絶対値
上記ポリマーブレンド中の全セグメント間の溶解度パラメータ値の差の絶対値は以下の通りである。
EMAセグメント−PSセグメント:0.09(最小値),0.76(最大値)
EMAセグメント−PPセグメント:0.24(最小値),0.41(最大値)
EMAセグメント−PEGセグメント:0.12(最小値),0.29(最大値)
PSセグメント−PPセグメント:0.50(最小値),1.00(最大値)
PSセグメント−PEGセグメント:0.03(最小値),0.47(最大値)
PPセグメント−PEGセグメント:0.53(最小値)
【0105】
(3)セグメント間の溶解度パラメータ値の差の絶対値の最大値
セグメント間の溶解度パラメータ値の差の絶対値の最大値は、上記の通り、0.50(最小値),1.00(最大値)であり、0.40〜1.40の範囲内であった。なお、この最大値を算出する元になる溶解度パラメータ値を有するセグメントは、PSセグメント及びPPセグメントであった。ポリマーブレンドを100重量部としたとき、PSセグメント及びPPセグメントは、ポリマーブレンド中に25重量部含有されることになる。
【0106】
(4)剥離試験の結果
本実施例に係るPCキャリアテープに対するカバーテープの剥離強度は、0.57Nであった。また、本実施例に係るカバーテープは、PCキャリアテープおよびPSキャリアテープから剥離させたとき、接着層が凝集破壊していた(表1参照)。
【0107】
なお、「PSキャリアテープの主成分の溶解度パラメータ値」と「カバーテープの接着性樹脂であるEMAセグメントの溶解度パラメータ値」との差の絶対値は、0.09(最小値),0.76(最大値)であり、いずれも1.90以下であった。
【0108】
また、「PCキャリアテープの主成分の溶解度パラメータ値」と「カバーテープの接着性樹脂であるEMAセグメントの溶解度パラメータ値」との差の絶対値は、1.29(最小値),1.66(最大値)であり、いずれも1.90以下であった。
【実施例10】
【0109】
エチレン−メチルアクリレートランダム共重合体(三井・デュポンポリケミカル株式会社製エルバロイAC 1820)の代りにエチレン−メチルアクリレートランダム共重合体(以下「EMAセグメント」と略する)(三井・デュポンポリケミカル株式会社製エルバロイAC 1913)を用意したこと以外は、実施例1と同様にして、カバーテープを調製し、剥離試験を行った。なお、本実施例に係るEMAセグメントの共重合比および溶解度パラメータ値は以下の通りであった。
【0110】
(1)EMAセグメントの詳細
共重合比(重量比):エチレン:メチルアクリレート=87:13
溶解度パラメータ値:8.19〜8.37
【0111】
(2)各セグメント間の溶解パラメータ値の差の絶対値
上記ポリマーブレンド中の全セグメント間の溶解度パラメータ値の差の絶対値は以下の通りである。
EMAセグメント−MSセグメント:0.58(最小値),1.19(最大値)
EMAセグメント−PPセグメント:0.09(最小値),0.27(最大値)
EMAセグメント−PEGセグメント:0.26(最小値),0.44(最大値)
MSセグメント−PPセグメント:0.85(最小値),1.28(最大値)
MSセグメント−PEGセグメント:0.32(最小値),0.75(最大値)
PPセグメント−PEGセグメント:0.53(最小値)
【0112】
(3)セグメント間の溶解度パラメータ値の差の絶対値の最大値
セグメント間の溶解度パラメータ値の差の絶対値の最大値は、上記の通り、0.85(最小値),1.28(最大値)であり、0.40〜1.40の範囲内であった。なお、この最大値を算出する元になる溶解度パラメータ値を有するセグメントは、MSセグメント及びPPセグメントであった。ポリマーブレンドを100重量部としたとき、MSセグメント及びPPセグメントは、ポリマーブレンド中に25重量部含有されることになる。
【0113】
(4)剥離試験の結果
本実施例に係るPCキャリアテープに対するカバーテープの剥離強度は、0.26Nであった。また、本実施例に係るカバーテープは、PCキャリアテープおよびPSキャリアテープから剥離させたとき、接着層が凝集破壊していた(表1参照)。
【0114】
なお、「PSキャリアテープの主成分の溶解度パラメータ値」と「カバーテープの接着性樹脂であるEMAセグメントの溶解度パラメータ値」との差の絶対値は、0.23(最小値),0.91(最大値)であり、いずれも1.90以下であった。
【0115】
また、「PCキャリアテープの主成分の溶解度パラメータ値」と「カバーテープの接着性樹脂であるEMAセグメントの溶解度パラメータ値」との差の絶対値は、1.43(最小値),1.81(最大値)であり、いずれも1.90以下であった。
【実施例11】
【0116】
エチレン−メチルアクリレートランダム共重合体(三井・デュポンポリケミカル株式会社製エルバロイAC 1820)の代りにエチレン−メチルメタクリレートランダム共重合体(以下「EMMAセグメント」と略する)(住友化学株式会社製アクリフト WH303F)を用意したこと以外は、実施例1と同様にして、カバーテープを調製し、剥離試験を行った。なお、本実施例に係るEMMAセグメントの共重合比および溶解度パラメータ値は以下の通りであった。
【0117】
(1)EMMAセグメントの詳細
共重合比(重量比):エチレン:メチルメタクリレート=82:18
溶解度パラメータ値:8.12〜8.35
【0118】
(2)各セグメント間の溶解パラメータ値の差の絶対値
上記ポリマーブレンド中の全セグメント間の溶解度パラメータ値の差の絶対値は以下の通りである。
EMMAセグメント−MSセグメント:0.60(最小値),1.26(最大値)
EMMAセグメント−PPセグメント:0.02(最小値),0.25(最大値)
EMMAセグメント−PEGセグメント:0.28(最小値),0.51(最大値)
MSセグメント−PPセグメント:0.85(最小値),1.28(最大値)
MSセグメント−PEGセグメント:0.32(最小値),0.75(最大値)
PPセグメント−PEGセグメント:0.53(最小値)
【0119】
(3)セグメント間の溶解度パラメータ値の差の絶対値の最大値
セグメント間の溶解度パラメータ値の差の絶対値の最大値は、上記の通り、0.85(最小値),1.28(最大値)であり、0.40〜1.40の範囲内であった。なお、この最大値を算出する元になる溶解度パラメータ値を有するセグメントは、MSセグメント及びPPセグメントであった。ポリマーブレンドを100重量部としたとき、MSセグメント及びPPセグメントは、ポリマーブレンド中に25重量部含有されることになる。
【0120】
(4)剥離試験の結果
本実施例に係るPCキャリアテープに対するカバーテープの剥離強度は、0.21Nであった。また、本実施例に係るカバーテープは、PCキャリアテープおよびPSキャリアテープから剥離させたとき、接着層が凝集破壊していた(表1参照)。
【0121】
なお、「PSキャリアテープの主成分の溶解度パラメータ値」と「カバーテープの接着性樹脂であるEMAセグメントの溶解度パラメータ値」との差の絶対値は、0.25(最小値),0.98(最大値)であり、いずれも1.90以下であった。
【0122】
また、「PCキャリアテープの主成分の溶解度パラメータ値」と「カバーテープの接着性樹脂であるEMAセグメントの溶解度パラメータ値」との差の絶対値は、1.45(最小値),1.88(最大値)であり、いずれも1.90以下であった。
【表1】


(比較例1)
【0123】
1.カバーテープの作製
押し出しラミネート法によりエチレン−メチルアクリレートランダム共重合体(三井・デュポンポリケミカル株式会社製エルバロイAC 1820)の加熱融解物をポリエチレンテレフタレート二軸延伸フィルム(東洋紡績株式会社製)上に押出して、カバーテープを作製した。
【0124】
2.剥離試験
剥離試験は、実施例1の剥離試験と同様にして行われた。
本比較例に係るカバーテープは、キャリアテープから剥離させたとき、接着層が界面剥離していた(表2参照)。
(比較例2)
【0125】
エチレン−メチルアクリレートランダム共重合体(三井・デュポンポリケミカル株式会社製エルバロイAC 1820)をエチレン−メチルアクリレートランダム共重合体(三井・デュポンポリケミカル株式会社製エルバロイAC 1913)に代えた以外は、比較例1と同様にして、カバーテープを調製し、剥離試験を行った。
【0126】
本比較例に係るカバーテープは、キャリアテープから剥離させたとき、接着層が界面剥離していた(表2参照)。
(比較例3)
【0127】
エチレン−メチルアクリレートランダム共重合体(三井・デュポンポリケミカル株式会社製エルバロイAC 1820)をエチレン−メチルメタクリレートランダム共重合体(住友化学株式会社製アクリフト WH303F)に代えた以外は、比較例1と同様にして、カバーテープを調製し、剥離試験を行った。
【0128】
本比較例に係るカバーテープは、キャリアテープから剥離させたとき、接着層が界面剥離していた(表2参照)。
(比較例4)
【0129】
エチレン−メチルアクリレートランダム共重合体(三井・デュポンポリケミカル株式会社製エルバロイAC 1820)をエチレン−メチルメタクリレートランダム共重合体(住友化学株式会社製アクリフト WK402)に代えた以外は、比較例1と同様にして、カバーテープを調製し、剥離試験を行った。
【0130】
本比較例に係るカバーテープは、キャリアテープから剥離させたとき、接着層が界面剥離していた(表2参照)。
(比較例5)
【0131】
1.ポリマーブレンドの調整
接着性樹脂としてエチレン−メチルメタクリレートランダム共重合体(以下「EMMAセグメント」と略する)(住友化学株式会社製アクリフト WK402)を用意し、非相溶樹脂としてポリプロピレン(以下「PPセグメント」と略する)(グランドポリマー社製J106)を用意した。
【0132】
そして、70重量部のEMMAセグメント及び30重量部のPPセグメントを混合し、二軸スクリュー押出機を用いてシリンダー温度180度Cの条件下でこれらの混合物を溶融ブレンドし、ペレットを調製した。
【0133】
(1)各セグメントの詳細
各セグメントの詳細は以下の通りである。
a)EMMAセグメント
共重合比(重量比):エチレン:メチルメタクリレート=75:25
溶解度パラメータ値:8.20〜8.45
b)PPセグメント
溶解度パラメータ値:8.10
【0134】
(2)各セグメント間の溶解パラメータ値の差の絶対値
上記ポリマーブレンド中のセグメント間の溶解度パラメータ値の差の絶対値は以下の通りである。
EMMAセグメント−PPセグメント:0.10(最小値),0.35(最大値)
【0135】
(3)セグメント間の溶解度パラメータ値の差の絶対値の最大値
セグメント間の溶解度パラメータ値の差の絶対値の最大値は、上記の通り、0.10(最小値),0.35(最大値)であり、0.40〜1.40の範囲外であった。
【0136】
2.カバーテープの作製
押し出しラミネート法により上述のペレットの加熱融解物をポリエチレンテレフタレート二軸延伸フィルム(東洋紡績株式会社製)上に押出して、カバーテープを作製した。
【0137】
3.剥離試験
剥離試験は、実施例1の剥離試験と同様にして行われた。
本比較例に係るカバーテープは、キャリアテープから剥離させたとき、接着層が界面剥離していた(表2参照)。
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0138】
本発明に係るフィルムは、被着体の表面状態の影響を受けにくく、被着体に接着された後にその被着体から剥離される場合において剥離強度のふれを小さくすることができるという特徴を有しており、例えば、カバーテープ、食品包装用の蓋材等として有用である。
【符号の説明】
【0139】
100 包装体
200 カバーテープ
230 接着層(表面層,熱融着層)
300 キャリアテープ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2種の単セグメントポリマー、少なくとも2種の複セグメントポリマー、または、少なくとも1種の単セグメントポリマーと少なくとも1種の複セグメントポリマーとからなるポリマーブレンド物を主成分とする表面層を備え、
前記ポリマーブレンド物中の全セグメント間の溶解度パラメータ値の差の絶対値の最大値が0.40以上1.40以下であるフィルム。
【請求項2】
前記最大値を算出する元になる溶解度パラメータ値を有する2つの特定セグメントは、前記ポリマーブレンド物を100重量部としたとき、15重量部以上60重量部以下含有され、一方の前記特定セグメントと他方の前記特定セグメントとの重量比は、30:70から70:30の範囲内である請求項1に記載のフィルム。
【請求項3】
少なくとも1種の前記セグメントには、熱融着性があり、前記表面層は、熱融着層として機能する請求項1または2に記載のフィルム。
【請求項4】
請求項3に記載のフィルムと、開口が前記フィルムで覆われる包装容器とを備え、前記熱融着性を有するセグメントの溶解度パラメータ値と、前記包装容器の前記開口の周辺部の表面を形成する樹脂組成物の主成分との溶解度パラメータ値との差の絶対値が1.90以下である包装体。
【請求項5】
前記包装容器に対する前記フィルムの剥離強度(JIS C−0806−3に記載の8mm幅キャリアテープ使用時の規格に準じる)は、0.1N以上1.0N以下である請求項4に記載の包装体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−214783(P2012−214783A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−78312(P2012−78312)
【出願日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【出願人】(000002141)住友ベークライト株式会社 (2,927)
【Fターム(参考)】