説明

フィルム及び被膜の製造方法

【課題】生分解性で、したがって環境に優しいポリマーのフィルムを、ポリマーの溶融配合物から製造する方法と、このようなフィルムを製造するためのポリマー組成物を提供する。
【解決手段】ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)をPHAの最適結晶化温度よりも20℃高い温度から20℃低い温度までの範囲内の温度である表面に供給して、押出しフィルムまたは押出し被膜を製造する。この場合高いメルトフローインデックスのPHAが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリマーフィルム及び基板上のポリマー被膜の製造方法と、このようなフィルム及び被覆基板を製造するためのある一定のポリマー組成物の使用と、ある一定のポリマー組成物とに関する。特に、本発明はこのような方法におけるポリヒドロキシ−アルカノエートポリエステルの使用と、そのある一定の組成物とに関する。
【0002】
ポリマーフィルムは多くの用途を有する。プラスチック材料の自立性(free standing)フィルムは無数の工業的利用及び消費者向け応用を有する。裏付きフィルム(例えば、塗被紙(coated paper))も、特に耐湿性及びヒートシール可能性という特性を被覆サポートに与えるために、広範囲に有用である。
【0003】
原則として、フィルムは溶融ポリマーの調製を用いて、又は適当な溶剤中のポリマーの溶液を用いてポリマーから製造することができる。後者の場合に、ポリマーとそのための溶剤とが適合することが明らかに必要である;生分解性であると言う利点を有するポリヒドロキシアルカノエートポリマーに関しては、適当な溶剤が一般に塩素化溶剤であり、そのため、環境的に不利であると言う点で問題が存在する。それ故、これらの生分解性で、したがって環境に優しいポリマーのフィルムを、このようなポリマーの溶融配合物(molton preparation)から製造しようとする試みが注目されており;本発明が目的とするのは、この分野である。
【0004】
溶融ポリマーからのポリマーフィルムの押出しコーティング(extrusion coating)が数種類のプラスチック(特に、低密度ポリエチレン)に関して開発されている。標準方法は溶融ポリエチレンを、チルロール(chill-roll)として当該技術分野において周知の、チルドローラー(chilled roller)上に押出しコーティングすることである。低密度ポリエチレンは非常に迅速に、妥当な低温において結晶化するので、ロールを非常に高いライン速度(例えば、700m/分)においてロールを操作する場合にも、これはチルロールから引き離される前に適切に結晶化する。ポリヒドロキシアルカノエートは典型的なチルロール温度において低密度ポリエチレンよりも非常に緩慢に結晶化する。
【0005】
溶融状態からのポリヒドロキシアルカノエート結晶化方法は、核の周囲の結晶化物質の球状部分である球晶(spherulite)の成長を含む。このような核形成部位は純粋なポリマー中で生ずるか、又は成核剤を用いて人為的に導入することができる。核形成部位を作成するための最適温度は球晶の成長のための最適温度よりもかなり低い。しかし、結晶化の最適温度は2パラメータの組合せであり、2パラメータの間に入る。
【0006】
フィルム形成が通常の押出しコーティング方法に比べて比較的高い温度のロール上で行われるならば、ポリヒドロキシアルカノエートフィルムの製造にチルロール方法を適用して、結晶化を改良又は最適化することが可能であると、今回判明した。高温チルロールの使用は比較的高いライン速度を可能にし、高いメルトフローインデックス(MFI)を有するポリヒドロキシアルカノエートポリマーを用いて、特に高いライン速度を得ることができる。
【0007】
したがって、本発明の第1態様によると、ポリヒドロキシアルカノエートポリマーの押出しフィルム又は押出し被膜の製造方法であって、溶融ポリヒドロキシアルカノエートの層を、ポリマーの最適結晶化温度よりも20℃高い温度から20℃低い温度までの範囲内の温度にある表面に供給して、フィルム又は被膜を形成することを含む方法を提供する。
【0008】
結晶化温度範囲はコポリマー含量と種々な添加剤(主として、成核剤)とに依存する。
溶融PHAは好ましくは12またはそれ以上(特に、18〜35)のMFIを有する。
それ故、本発明の他の実施態様では、ポリヒドロキシアルカノエートポリマーの押出しフィルム又は押出し被膜の製造方法であって、12またはそれ以上のメルトフローインデックスを有する溶融ポリヒドロキシアルカノエートの層を、ポリマーの最適結晶化温度よりも20℃高い温度から20℃低い温度までの範囲内の温度である表面に供給して、フィルム又は被膜を形成することを含む方法を提供する。メルトフローインデックスは規格ASTM−D1238−906によって測定することができる。
【0009】
本発明はフィルム又は被膜の形成を単一工程プロセスで実施することを可能にし、今までに単一工程プロセスによって可能であったよりも非常に高いライン速度の達成を可能にする。
【0010】
本発明は立体規則性PHAについても実施可能であり、そのPHAは生物学的プロセスによって製造することができる。
ポリマーは特に、例えば30%を越える、特に50〜90%の比較的高いレベルの結晶化度を有することができるポリマーである。適切には、ポリマーは式I:
−O−Cmn−CO− I
[式中、mは1〜13の範囲内であり、nは2m又は(mが少なくとも2である場合には)2m−2である]
で示される単位を有する、少なくとも1種の生物学的に産生されるポリヒドロキシアルカノエート(PHA)であるか、またはこれを一部として含む。典型的には、Cmnはポリマー鎖に炭素原子2〜5個を含み、残りの炭素原子(存在する場合には)を側鎖に有する。非常に適切なポリエステルでは、mは3又は4であり、nは2mであり、特に、酸素に隣接する炭素上のそれぞれC1側鎖及びC2側鎖と共に共重合した、m=3及びm=4である単位が存在する。特定のポリエステルは優勢なm=3単位を含み、特に、このような単位を少なくとも70モル%含み、残部はm=4である単位である。ポリマーの分子量は例えば50000より大きく、特に100000より大きく、特に300000より大きく、例えば2×106までである。
【0011】
m=3単位のみを含むポリエステルはPHBであり、m=3単位とm=4単位とを含むポリエステルはポリヒドロキシ−ブチレート−コ−バレレート(PHBV)である。ポリエステルはmの値が異なる2種以上のPHAのブレンドであることもできる。特定の例を次に挙げる:
(a)2〜5モル%の単位がm=4を有し、残部がm=3である、式I単位から本質的になるポリマー、及び
(b)5〜30モル%の単位がm=4を有し、残部がm=3である、式I単位から本質的になるポリマー。
このようなブレンドにおけるポリマーの割合は4〜18モル%の範囲内の平均m=4含量を与えるような割合であることが好ましい。
【0012】
ポリヒドロキシアルカノエートは、特に微生物学的プロセスの発酵生成物であることができ、この微生物学的プロセスでは、微生物がその正常成長中にポリヒドロキシアルカノエートを貯蔵するか、または細胞増殖に必要な、1種またはそれ以上の栄養素の不存在下での培養によってこのようにさせられる。微生物は野生株若しくは突然変異体のいずれでもよく、またはそれに導入された必要な遺伝物質(genetic material)を有していることができる。或いは、必要な遺伝物質は真核生物によって収容されて、微生物学的プロセスを実施することができる。
【0013】
適当な微生物学的プロセスの例を次に挙げる:
m=3またはm=一部は3、一部は4である式I物質に関しては:ヨーロッパ特許出願公開第69497号公報(Alcaligeneseutrophus);
m=3である式I物質に関しては:米国特許第4101533号明細書(eutrophus)、ヨーロッパ特許出願第144017号(latus);
m=7〜13である式I物質に関しては:ヨーロッパ特許出願公開第0392687号公報(種々なPseudomonas)。
【0014】
このようなプロセスでは、有機溶剤を用いて、発酵生成物細胞からポリマーを抽出することができる、または細胞タンパク質物質を水性ルート(aqueous route)を用いて分解して、ポリマーの顕微鏡的粒子を残すことができる。特殊な末端用途のために、細胞タンパク質を一部または全体的にポリマーと共に留まらせるが、好ましくは細胞破壊にさらさせる。
【0015】
或いは、技術上周知の化学的方法によってPHAを合成することができる。PHBはBloembergen,S.と、Holden,D.A.,Macromolecules,1989,22巻,1656〜1663頁に従って製造することができる。PHBVはBloembergen、Holden、Bluhm、Hamer及びMarchessault,Macromolecules,1989,22巻,1662〜1669頁に従って製造することができる。
【0016】
本発明は結晶化が可能である合成ポリマー、特に、
a.ポリエステル、例えば頭−尾結合ポリエステルまたは(好ましくは)実質的に化学量論的な頭−頭 尾−尾結合ポリエステル;
b.アルコール若しくはフェノール反応性のみ、またはアシル反応性のみを有するポリエステル;
c.考えられるアシル化可能なまたはエステル化可能な基を有する他のポリマー(例えば、ポリアミド)
にも適用可能である。
【0017】
このようなポリマーは単独でも、または上述したような、1種以上の微生物学的誘導ポリマーと組合せても使用可能である。適当な合成ポリマーの例は、合成ポリヒドロキシアルカノエート、ポリラクチド及びコハク酸とブチレングリコールとのコポリマーである。
【0018】
ポリマー中にまたはポリマーと共に、他の物質が存在することができる。可塑剤対ポリマーの比は組成物の所定の用途に依存する。2〜40phr(w/w)の範囲が可能な用途の大部分を含む。有効に硬質であるが脆性ではない製品を製造するために、5〜20、特に6〜12phr(w/w)の範囲が一般に適切である。
【0019】
これらのポリマーに対して任意の既知可塑剤が適切であり、本発明に従ってこれらのポリマーを可塑化することが判明する任意の可塑剤が本発明に用いるために適切である。適切な可塑剤を次に挙げる:
(a)例えば、フタレート(phthalates)、イソフタレート(isophthalates)、シトレート(citrates)、フマレート(fumarates)、グルタメート(glutamate)、ホスフェート(phosphates)またはホスフィット(phosphites)のような、多塩基酸の高沸点エステル。エステル化ラジカルは例えば、C1〜C12アルキル、アリールまたはアラルキルであることができる。特定の例はジオクチル−(dioctyl-)、ジベプチル−(dibeptyl-)及びジリンデシル−(dirindecyl-)フタレート並びにジアルキルアルキレンオキシドグルタメート(Plasthall 7050)である;
(b)多価アルコール、特にグリコール、ポリグリコール及びグリセロールの高沸点エステル。エステルの酸誘導ラジカルは典型的に炭素原子2〜10個を含む。例はトリアセチン(triacetin)、ジアセチン(diacetin)、及びグリセリルジベンゾエート(glyceryl benzoate)である;
(c)例えばパラトルエンスルホンアミドのような芳香族スルホンアミド。
【0020】
特に好ましい可塑剤は、その分子中に少なくとも3個のエステル基を有する二重エステル化ヒドロキシカルボン酸である。“二重エステル化”とは、ヒドロキシカルボン酸のヒドロキシ基の少なくとも一部がカルボン酸によってエステル化され、そのカルボキシ基の少なくとも一部がアルコールまたはフェノールによってエステル化されることを意味する。好ましくは、エステルが誘導される、少なくともヒドロキシカルボン酸は脂肪族または脂環式化合物である。そのバックボーン構造(すなわち、カルボキシ基を除いて)は好ましくは炭素原子2〜6個を有する。これはカルボキシ基2〜4個とヒドロキシ基1〜3個とを含むことが好ましく、カルボキシ基数がヒドロキシ基数を越えることが好ましい。このような可塑剤の例はEstaflex(アセチルトリ−n−ブチルシトレート)である。
【0021】
本発明の方法では、溶融ポリヒドロキシアルカノエートポリマーの層を表面に供給する(apply)ことによってフィルムが形成される。この供給(application)は適当な形状の溶融押出しダイを通しての溶融押出しによって実施することができる。ダイの形状は特に重要であるとは考えられず、当業者は低密度ポリエチレン溶融押出し方法論に記録された先例に従うか、またはこのような先例を容易に適合させることができる。しかし、高MFIポリエステルを用いる場合には、ダイギャップは好ましくは0.1〜0.5mm、特に0.1〜0.3mmである。
【0022】
溶融ポリヒドロキシアルカノエートを、付加的な有用な機能を有することができる(例えば、接着剤またはバリヤー層として機能することによって)1種以上の他のポリマーと同時押出することができる。一般にかつ好ましくは、ポリヒドロキシアルカノエートはチルロールの表面に接触する層になる。
【0023】
本発明を用いると、基板上にフィルムを形成し、基板を押出し被覆することができる。基板は例えば紙、ボード、または布帛(ニット状、織物状若しくは不織状でもよい)のような、任意の適当な物質であることができる。不織布の場合には、溶融物は不織構造中に、布帛の輪郭に従って、浸透することができる。基板は第2ポリマーのフィルムであることもできる。多層状フィルムが必要である場合には、第2ポリマーは相容性ポリマーであるべきである。或いは、第2ポリマーを第1ポリマーから剥離する予定である場合には、第2ポリマーは非相容性であるべきであり;これは同等なキャストフィルムよりも優れた品質を有するポリヒドロキシアルカノエートフィルムを形成することができる。
【0024】
被覆する前に、基板を例えばコロナ処理装置(corona treater)によって前処理することができる。実際に、前処理が必要であるならば、任意の適当な前処理を用いることができる。
【0025】
本発明は、ポリヒドロキシアルカノエートフィルムが基板によって支持されない、キャストフィルムの製造にも適切である。ポリエチレンのキャスティングから知られたある種のチルロールプロセスにおけるように、フィルムをロール上にキャストするか、またはローラーの代わりにエンドレスベルトを用いて、このようなプロセスの適応に本発明を適用することができる。フィルムの加熱の実施前にまたは中に、必要に応じて、キャストフィルムを延伸させることができる。
【0026】
チルロールまたは、ポリマーをキャストする他の表面の温度は適当な手段によって制御することができる。適当な直接手段はガスバーナー及び電気加熱がある。適当に遠隔加熱する場合には、例えば水または油のような、熱媒液を間接的加熱系に用いることができる。
【0027】
本発明に用いる表面の温度は、フィルムを成形する原料のポリマーの最適結晶化温度に依存し、この最適結晶化温度はポリマー組成によって変化する。本発明における使用に適したポリマーのこれらの結晶化温度は当業者によって容易に決定することができる。典型的に、適当なポリマーの最適結晶化温度は35℃〜85℃、特に50℃〜70℃の範囲内である。
【0028】
最適結晶化温度の決定方法は、示差走査熱量法(DSC)による方法である。この方法では、Perkin Elmer DSC−7をプログラム化加熱制御下、20℃/分で、20℃から200℃まで操作して、溶融挙動を測定する。結晶化挙動は200℃から20℃まで20℃/分で冷却することによって、監視する。これらの測定から、溶融ピーク温度(Tmpeek)と、結晶化ピーク温度(Tcryst)と、融解エンタルピーと、結晶化ΔHfus及びΔHcrystとを求める。
【0029】
本発明のフィルム形成に用いるチルロールまたは他の表面の温度において、結晶化はこの用いる温度において生ずる。このことは高いライン速度の使用を可能にする。
結晶化温度はポリマーによって変化する。ポリヒドロキシブチレート/バレレートコポリマーでは、結晶化温度はポリヒドロキシバレレート含量によって変化しうる。
【0030】
本発明では、高いMFI、好ましくは12またはそれ以上、特に18〜35のMFIのポリマーを用いることが好ましい。MFIは技術上周知の標準方法によって測定することができる。本発明に用いる方法はASTM−D1238−90bである。
【0031】
種々な方法によってポリマーのMFIを高めることが可能である。例えば、1種以上の可塑剤を加えることによって、高MFIポリマーを得ることが可能である。本発明では、ポリマーを1回以上熱処理して、平均分子量(Mw)を減成する(degrade)ことが好ましい。最も適切には、この方法によって得られるポリマーは350,000(好ましくは300,000)またはそれ以下の重量平均Mwを有する。ポリマーを減成するための有用な2方法は、押出しコンパウンディング(compounding)、または塩基性溶液(例えば水酸化アンモニウム)によるポリマーの吸収(taking)と減成である。
【0032】
ポリマー組成物中の成核剤の存在がしばしば好ましい。慣用的な成核剤の例(これに本発明が限定される訳ではない)は窒化ホウ素(ヨーロッパ特許出願公開第0291024号公報)、塩化アンモニウム(WO−A−9919759)及びDZB/ZnSt(ヨーロッパ特許出願公開第0400855号公報)を含む。存在する場合の成核剤の量は一般に、過剰な成核剤を加えることの無駄な費用のためだけから、樹脂100部につき(phr)1部以下である。存在する成核剤の下限は0phrであることが可能であり、すなわち、成核剤の存在は任意である。
【0033】
ポリマー組成物の他の任意の成分は離型剤(release agent)である。慣用的な離型剤を用いることができるが、本発明は現在までに知られている離型剤の使用に如何なる意味でも限定されない。
【0034】
このポリマー組成物は通常のポリマー加工添加剤(例えば粒状充填材、強化繊維及び顔料)の任意の添加剤を含むことができる。
しかし、これらを押出し被覆グレード(grade)中に存在させることは、ダイからの引き落とし(draw-down)中に溶融物の安定性に影響を与える可能性があるので、通常行われない。
【0035】
ウェブ上に被覆するかまたは自立性であるか、いずれにしても、種々な厚さのフィルムを本発明によって製造することができる。特に、1〜100μm、典型的には5〜50μmの裏付きフィルム(すなわち、被膜)を製造することができ、5〜150μm、典型的には10〜100μmの自立フィルム(すなわち、被膜)を製造することができる。この方法を150μmよりも厚いフィルムの製造に適用することも可能である。フィルムが厚ければ厚いほど、被膜の結晶化に必要な熱伝達は大きくなることを注意すべきであり、それ故、厚いフィルムはしばしば、加熱されたチルロールと共により緩慢なライン速度を用いることを必要とする。
【0036】
本発明を用いて、今まで1工程プロセスで可能であったよりも高いライン速度でポリヒドロキシアルカノエートフィルムを製造することができる。例えば、300m/分まで、典型的には50〜200m/分のライン速度が押出し被覆に認められる。キャストフィルム製造では、100m/分まで、典型的には10〜50m/分のライン速度が認められる。厚いフィルムの製造では、4〜30m/分のライン速度が認められる。
【0037】
本発明の他の態様によると、本明細書で定義する方法によって得られるフィルムと被覆基板とを提供する。
次に、下記実施例によって、本発明をさらに説明する。
【実施例】
【0038】
実施例1
5モル%のヒドロキシバレレート含量と、1phrの窒化ホウ素成核剤とを有するポリヒドロキシブチレート/バレレートコポリマーの組成物を製造した。顆粒は284,000の分子量と、ASTM方法No.1238−90b,2.16kg荷重によって、180℃において測定して、17のMFIを有した。
【0039】
組成物の顆粒を40m直径スクリュー付き押出機に供給した。スクリューを30〜70rpmの速度で操作した。押出機は20cm幅ダイ中に供給した。溶融物の温度は、アダプター中の熱電対によって測定して170〜197℃であった。溶融ポリマーを第1ニップロールとチルロールとの間のニップ中に押し出した。光沢チルロールを用いた。チルロールを60℃の温度に維持した;ダイギャップは0.2mmに設定した;ダイとニップとの間の空隙は約10cmに設定した。ポリマーを紙(38g/m2または80g/m2)及びボード(200g/m2)上に、55〜100m/分のライン速度でコーティングし、ポリマーは溶融物の引き落とし中に不安定性を示さなかった。
【0040】
紙に対する結果を表1に示す。
【0041】
【表1】

【0042】
ライン速度、ダイギャップ及びライン速度に依存して、種々なコート重量が得られた。被膜はその外観において満足すべきものであり、巻き取りまで滑らかにランした。被覆紙と被覆ボードは困難なく巻き出された(unwound)。
【0043】
実施例2
実施例1を繰り返して、12モル%のヒドロキシバレレート含量と、1phrの窒化ホウ素成核剤とを有するポリヒドロキシブチレート/バレレートコポリマーの組成物を製造した。この組成物を紙(40g/m2)上にコーティングした。ダイギャップは0.3mmであった。ダイ温度は190℃であった。スクリュー速度は20〜80rpmの範囲で変化させた。
【0044】
結果は表2に示す。
【0045】
【表2】

【0046】
これらの結果から、低いMFIでは、スクリュー速度が上昇するにも拘わらず、ライン速度は比較的低く留まることを知ることができる。各スクリュー速度において、高MFI物質は非常に良好なライン速度を生じた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリヒドロキシアルカノエートポリエステルポリマーを別のポリマーと組合せて含む組成物の押出しフィルム又は押出し被膜の製造方法であって、ASTM D1238−906によって測定して、12g/10minまたはそれ以上のメルトフローインデックスを有する組成物の溶融層を、ポリマーの最適結晶化温度よりも20℃高い温度から20℃低い温度までの範囲内の温度にある表面に供給して、フィルム又は被膜を形成し、ここで、前記溶融層が前記表面に、押出し被膜の際は50〜300m/分、フィルム形成の際は4〜100m/分のラインスピードで供給される、前記の方法。
【請求項2】
ポリマーが350,000またはそれ以下の重量平均分子量を有する、請求項1記載の方法。
【請求項3】
ポリマーが30%を超える結晶化度を有することができる、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
ポリマーが式:
−O−C−CO−
[式中、mは1〜13であり、nは2m又は(mが少なくとも2である場合には)2m−2である]
で示される単位を有する、少なくとも1種のポリヒドロキシアルカノエートを含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
ポリマーがポリヒドロキシブチレート、好ましくは、少なくとも70%のヒドロキシブチレート残基を含み、残部がヒドロキシバレレート残基であるポリヒドロキシブチレート−コ−バレレートである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
結晶化温度が50〜70℃である、請求項5記載の方法。
【請求項7】
核形成が成核剤によって誘導される、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
成核剤が窒化ホウ素である、請求項7記載の方法。
【請求項9】
ポリマーが立体規則性である、請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
ポリマーが生物学的に産生されるポリヒドロキシアルカノエートである、請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
溶融ポリヒドロキシアルカノエートの層を、0.1〜0.5mmのダイギャップを有するダイに通して溶融押出しによって表面に供給することを含む、請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
表面がチルロールの表面である、請求項1〜11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
組成物が表面に直接接触する、請求項1〜12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
組成物を紙又はボード上にコーティングする、請求項1〜13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
請求項1〜14のいずれか1項に記載の方法で製造される、押出しフィルム又は押出し被膜。

【公開番号】特開2008−24002(P2008−24002A)
【公開日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−227327(P2007−227327)
【出願日】平成19年9月3日(2007.9.3)
【分割の表示】特願平7−517256の分割
【原出願日】平成6年12月19日(1994.12.19)
【出願人】(502438673)メタボリックス・インコーポレーテッド (2)
【Fターム(参考)】