説明

フィルム品質評価方法、評価装置及びプログラム

【課題】光学異方性を有する光学フィルムの光学ムラの評価を容易にかつ客観的に精度良く行うことができるフィルム品質評価方法、評価装置及びプログラムを提供する。
【解決手段】フィルムF上の複数の所定領域にそれぞれ光を照射して所定領域に対するレターデーションReと遅相軸角度Axを測定し、測定した各所定領域に対するレターデーションReの平均値AveReと遅相軸角度Axの平均値AveAxとを求め、測定された各所定領域に対するレターデーションReと遅相軸角度Ax、及び各平均値AveRe、AveAxから、各平均値AveRe、AveAxを理想値として望小SN比SN(Re)、SN(Ax)を算出し、レターデーションReと遅相軸角度Axに対する各望小SN比SN(Re)、SN(Ax)の線形和Mを算出し、これを定量評価値とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学異方性を有するフィルムのムラを評価するフィルム品質評価方法、評価装置及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイで視認される輝度ムラの原因として、液晶セルの複屈折を光学補償するために用いられている光学異方性フィルムのムラが少なからず影響しており、光学フィルムのムラを評価する方法が求められている。
従来、光学フィルムのムラを評価するためには、クロスニコルに配置された偏光板の間に光学フィルムを配置し、人間が官能評価を行っていた。官能検査は、基準となるムラサンプルを作成し、このサンプルと検査対象となるムラとを見比べることにより判定を行うものである。ところが、人間の官能に依存する検査においては、検査員によって判定結果にばらつきが生ずることを回避することができない。
【特許文献1】特開2004−198511号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記の官能評価に代わるムラ判定方法として光学フィルムの光学特性値(レターデーション、遅相軸)を計測し、各特性を2次元にマッピングし、そのマッピング画像を人間が官能評価する方法がある。しかしながら、この場合は、レターデーションのムラ画像と遅相軸のムラ画像とをどのように評価したらよいかという指標がなく、結果としてマッピング画像からムラを総合的に判断することは困難であった。
【0004】
本発明は、上記状況に鑑みてなされたもので、光学異方性を有する光学フィルムの光学ムラの評価を容易にかつ客観的に精度良く行うことができるフィルム品質評価方法、評価装置及びプログラムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明のフィルム品質評価方法は、フィルムの光学特性値であるレターデーションRe、遅相軸角度Ax、厚さ方向レターデーションRth、光透過率、色味、ヘイズのうち、少なくとも2つ以上の特性値に関して、各特性値の平均値に対するSN比をそれぞれ求め、これらSN比の線形和を前記フィルムの光学ムラの定量評価値とする。
このように、レターデーションRe、遅相軸角度Ax、厚さ方向レターデーションRth、光透過率、色味、ヘイズのうちの2つ以上の光学特性値からSN比の線形和を算出することにより、この線形和を評価値として、フィルムの光学ムラを客観的に判定することができる。ここで、SN比を使用するので、異なる光学特性からなるパラメータによる信号の劣化を線形和として表して評価値とすることができる。
【0006】
上記フィルム品質評価方法としては、具体的には、フィルム上の複数の所定領域にそれぞれ光を照射して該所定領域に対するレターデーションと遅相軸角度を測定するステップと、前記測定された各所定領域に対するレターデーションの平均値と遅相軸角度の平均値とを求めるステップと、前記測定された各所定領域に対するレターデーションと遅相軸角度、及び各平均値から、前記各平均値を理想値として望小SN比を算出するステップと、前記レターデーションと遅相軸角度に対する各望小SN比の線形和を算出し、これを定量評価値とするステップとを含むことが好ましい。
このように、フィルム上の複数の所定領域におけるレターデーションと遅相軸角度を求め、これらレターデーションと遅相軸角度とからSN比の線形和を算出することにより、フィルムの光学ムラを客観的に評価することができる評価値を容易に求めることができる。
【0007】
また、前記フィルムへ法線方向から垂直に光を入射して前記定量評価値を求めることが望ましい。
このように、フィルムに対して、このフィルムの面の法線方向から垂直に光を入射することにより、レターデーションと遅相軸角度を精度良く求めることができ、信頼性の高い評価値を得ることができる。
【0008】
さらに、前記フィルムの法線方向からの傾斜角度である極角を異ならせた、複数の極角方向から前記フィルムに光を入射して前記定量評価値を求めることが好ましく、この極角は、0゜から40゜までの角度範囲で複数角度を設定することが好ましい。
このように、極角の異なる方向からフィルムに光を入射することにより、検査員の目視による官能評価により近い評価値を得ることができる。
【0009】
また、前記極角は、遅相軸に対して直交する方向に傾斜する角度が好ましい。
このように、極角を遅相軸に対して直交する方向に傾斜する角度とすることにより、フィルムの厚さ方向のレターデーションを求めることができる。
【0010】
また、本発明のフィルム品質評価装置は、フィルムの光学ムラの定量するフィルム品質評価装置であって、前記フィルムに単一波長光束を照射する光源と、前記フィルムを所望の方向へ移動自在に載置するステージと、前記フィルムで変調された単一波長光束を受光する受光器と、上記のフィルム品質評価方法に基づいて前記光源、ステージ、受光器を駆動して前記フィルムを移動させる制御部とを備えている。
そして、この評価装置によれば、ステージに支持されたフィルムを透過した光あるいは反射した光を検出することにより、フィルムの光学ムラの評価値を算出する際に用いる光学特性値を容易に求めることができる。
【0011】
また、本発明のプログラムは、電子計算機において、フィルム上の複数の所定領域にそれぞれ光を照射して得られた前記所定領域に対するレターデーションと遅相軸角度の平均値とを求めるステップと、前記測定された各所定領域に対するレターデーションと遅相軸角度、及び各平均値から、前記各平均値を理想値として望小SN比を算出するステップと、前記レターデーションと遅相軸角度に対する各望小SN比の線形和を算出し、これを定量評価値とするステップとを実行させる。
このように、電子計算機によって、フィルム上の複数の所定領域におけるレターデーションと遅相軸角度を算出させ、これらレターデーションと遅相軸角度とからSN比の線形和を算出させることにより、フィルムの光学ムラを客観的に評価することができる評価値を自動的に求めることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、検査員の目視による官能評価を行わなくとも光学異方性を有する光学フィルムの光学ムラの評価を容易にかつ客観的に精度良く行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明のフィルム品質評価方法、評価装置及びプログラムの好適な実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
(第1実施形態)
まず、本発明の第1実施形態について説明する。
図1は本発明のフィルム品質評価方法に用いる評価装置の構成を示す図である。
図1に示すように、評価装置100は、平面方向のx、y方向へ移動可能なステージ11を備えており、このステージ11に、被評価物であるフィルムFが支持されて測定部13に配置されている。このステージ11に支持されるフィルムFの表裏側には、偏光板15a、15bが配設されており、これら偏光板15a、15bは、互いにクロスニコルに配置されている。測定部13の上方には、ハロゲンランプ等からなる単一波長光束を照射する光源17が設けられ、この光源17からの光が測定部13へ向かって照射される。
【0014】
また、測定部13の下方には、受光器19が設けられ、この受光器19は、測定部13のフィルムFを透過した光を受光する。
この評価装置100は、制御部21を備えており、この制御部21には、ステージ11、光源17及び受光器19が接続されている。
そして、この評価装置100では、制御部21がステージ11、光源17及び受光器19を制御することにより、フィルムFの上下の偏光板15a、15bを、そのクロスニコルを保持しながら光源17からの光軸回りに1回転させ、そのときの受光器19からの検出信号に基づいて、フィルムFの光学特性値であるレターデーションRe及び遅相軸角度Ax等の光学パラメータを求める。
【0015】
また、評価装置100では、制御部21がステージ11を制御してフィルムFを面方向であるx、y方向へ2次元に移動させることにより、図2に示すように、フィルムFを、x、y方向へマトリックス状に複数分割(x方向へl分割し、y方向へm分割)した各領域Aにおいて、それぞれのレターデーションRe及び遅相軸角度Axを求めることができるようになっている。なお、本実施形態では利用しないが、光源17と受光器19を後述する極角θ、方位角φ方向に回転させる機構も有している。
【0016】
そして、上記評価装置100では、制御部21に設けられた図示しない記憶部に、フィルムFの光学ムラの評価値を算出するプログラムが格納されており、制御部21は、このプログラムを実行することにより、求めたレターデーションRe及び遅相軸角度AxからフィルムFの評価値を算出する。
【0017】
次に、上記評価装置100の制御部21によって行われるフィルムFの評価値の算出の仕方について、図3のフローチャートに沿って説明する。
まず、測定部13に設置したフィルムFの各領域AにおけるレターデーションRe(x、y)及び遅相軸角度Ax(x、y)を求める(ステップ1:S1)。
次いで、各領域AのレターデーションRe(x、y)及び遅相軸角度Ax(x、y)から、(1)、(2)式に基づいてレターデーションRe及び遅相軸角度Axの平均値AveRe、AveAxを求める(S2)。
【0018】
【数1】

【0019】
その後、レターデーションRe、遅相軸角度Ax及びこれらの平均値AveRe、AveAxから、(3)、(4)式に基づいてレターデーションRe及び遅相軸角度Axに関する中間値S(Re)、S(Ax)を求め、さらに、これら中間値S(Re)、S(Ax)から、(5)、(6)式に基づいてレターデーションRe及び遅相軸角度Axに関する望小のSN比であるSN(Re)、SN(Ax)を求める(S3)。
【0020】
【数2】

【0021】
次に、求めたレターデーションRe及び遅相軸角度Axに関するSN比であるSN(Re)、SN(Ax)から、(7)式に基づいて、フィルムFに関する評価値である線形和Mを求める(S4)。
【0022】
【数3】

【0023】
ここで、式(7)におけるα、βは、それぞれ予め実験等によって求められた任意の係数である。そして、上記のようにして求めた線形和Mからなる評価値の大きさから、フィルムFの光学ムラを客観的に評価することができる。
【0024】
このように、本実施形態のフィルム品質評価方法によれば、フィルムF上の複数の所定領域Aにそれぞれ光を照射して所定領域Aに対するレターデーションReと遅相軸角度Axを測定し、測定した各所定領域Aに対するレターデーションReの平均値AveReと遅相軸角度Axの平均値AveAxとを求め、測定された各所定領域Aに対するレターデーションReと遅相軸角度Ax、及び各平均値AveRe、AveAxから、各平均値AveRe、AveAxを理想値として望小SN比SN(Re)、SN(Ax)を算出し、レターデーションReと遅相軸角度Axに対する各望小SN比SN(Re)、SN(Ax)の線形和Mを算出し、これを定量評価値とすることにより、この評価値に基づいてフィルムFの光学ムラを客観的に評価することができる。ここで、SN比を使用するので、異なる光学特性からなるパラメータによる信号の劣化を線形和として表して、これを評価値とすることができる。
つまり、検査員の目視による官能評価を行わなくとも光学異方性を有する光学フィルムの光学ムラの評価を容易にかつ客観的に精度良く行うことができる。
【0025】
(第2実施形態)
次に、本発明に係るフィルム品質評価方法の第2実施形態について説明する。
上記第1実施形態のように、SN比の線形和Mを求めることにより、フィルムFのムラを客観的に評価することができるが、このフィルムFにおけるムラの評価値となる線形和Mは、フィルムFの面に対して垂直な法線方向だけでなく、フィルムFの面に対して傾斜した方向から測定した方がより検査員の目視による官能評価に近い評価となる場合がある。
【0026】
本実施形態においては、図4に示すように、フィルムFの法線方向Nに対する傾斜角である極角θ、及び、フィルムFの面内における回転角である方位角φを設定し、その傾斜方向(回転方向)からのムラの評価値を求める。
なお、この場合、評価装置100としては、そのステージ11は、前述したように、支持したフィルムFを平面方向のx、y方向への移動が可能で、光源17と受光器19はフィルムFを法線方向に対して極角θ、方位角φを設定することが可能となっている。
【0027】
次に、上記評価装置100の制御部21によって行われるフィルムFの評価方法について、図5のフローチャートに沿って説明する。
まず、ステージ11によってフィルムFを移動させると同時に、光源17と受光器19を所定の極角θ及び方位角φとなる位置に配置する(S11)。
この状態にて、フィルムFの各領域AにおけるレターデーションRe(θ、φ)(x、y)及び遅相軸角度Ax(θ、φ、x、y)を求める(S12)。
次いで、各領域AのレターデーションRe(θ、φ、x、y)及び遅相軸角度Ax(θ、φ、x、y)から、(8)、(9)式に基づいてレターデーションRe(θ、φ)及び遅相軸角度Ax(θ、φ)の平均値AveRe(θ、φ)、AveAx(θ、φ)を求める(S13)。
【0028】
【数4】

【0029】
その後、レターデーションRe(θ、φ)及び遅相軸角度Ax(θ、φ)の平均値AveRe(θ、φ)、AveAx(θ、φ)から、(10)、(11)式に基づいてレターデーションRe(θ、φ)及び遅相軸角度Ax(θ、φ)に関する中間値S(Re(θ、φ))、S(Ax(θ、φ))を求め、さらに、これら中間値S(Re(θ、φ))、S(Ax(θ、φ))から、(12)、(13)式に基づいてレターデーションRe(θ、φ)及び遅相軸角度Ax(θ、φ)に関する望小のSN比であるSN(Re(θ、φ))、SN(Ax(θ、φ))を求める(S14)。
【0030】
【数5】

【0031】
その後、他の極角θ、方位角φにてSN比を求める場合は、他の極角θ、方位角φにおけるレターデーションRe(θ、φ)(x、y)及び遅相軸角度Ax(θ、φ)(x、y)を求めてSN比の算出を繰り返す(S11〜S14、S15)。
【0032】
全ての極角θ、方位角φ(例えば、θ1〜θn、φ1〜φn)にてレターデーションRe(θ、φ)及び遅相軸角度Ax(θ、φ)に関するSN比であるSN(Re(θ、φ))、SN(Ax(θ、φ))を求めたら、各SN比を、レターデーションRe(θ、φ)及び遅相軸角度Ax(θ、φ)毎に、(14)、(15)式に基づいて、SN比のレターデーション線形和MRe及び遅相軸角度線形和MAxを算出する。
【0033】
【数6】

【0034】
ここで、(14)、(15)式におけるKRe、KAxは、それぞれ予め実験等によって求められた任意の係数である。
【0035】
その後、求めたレターデーションRe及び遅相軸角度Axに関するレターデーション線形和MRe及び遅相軸角度線形和MAxから、(16)式に基づいて、フィルムFに関する評価値である線形和Mを求める(S16)。
【0036】
【数7】

【0037】
ここで、(16)式におけるαRe、βAxは、それぞれ予め実験等によって求められた任意の係数である。
そして、上記のようにして求めた線形和Mからなる評価値の大きさから、フィルムFの光学ムラを客観的にかつ高精度に評価することができる。
【0038】
このように、上記第2実施形態の場合も、フィルムF上の複数の所定領域Aにそれぞれ光を極角θ、方位角φ方向から照射して所定領域Aに対するレターデーションRe(θ、φ)と遅相軸角度Ax(θ、φ)を測定し、測定した各所定領域Aに対するレターデーションRe(θ、φ)の平均値AveRe(θ、φ)と遅相軸角度Ax(θ、φ)の平均値AveAx(θ、φ)とを求める。そして、測定された各所定領域Aに対するレターデーションRe(θ、φ)と遅相軸角度Ax(θ、φ)、及び各平均値AveRe(θ、φ)、AveAx(θ、φ)から、各平均値AveRe(θ、φ)、AveAx(θ、φ)を理想値として望小SN比SN(Re(θ、φ))、SN(Ax(θ、φ))を算出する。次いで、レターデーションRe(θ、φ)と遅相軸角度Ax(θ、φ)に対する各望小SN比SN(Re(θ、φ))、SN(Ax(θ、φ))の線形和MRe、MAxを算出し、さらにこれらを合計して線形和Mを求め、これを定量評価値とする。この評価値に基づいてフィルムFの光学ムラを評価することで、精度のよい客観的な評価が実現できる。
【0039】
特に、フィルムFの法線方向Nからの傾斜角度である極角θを異ならせてフィルムFに光を入射させることにより、検査員の目視による官能評価に一層近い評価値を得ることができる。
【0040】
なお、SN比の線形和Mを求めて光学ムラの定量評価値を算出するには、少なくとも2つ以上の光学特性値を用いれば良く、また、この算出に用いる光学特性値としては、上述したレターデーションRe、遅相軸角度Axに限らず、フィルムFの厚さ方向のレターデーションRth、光透過率、色味(例えば、CIEの表色系で、CIELAB(L* a* b*)、CIELUV(L* u* v*)等の色差のパラメータなど)、ヘイズ(ヘイズ値は試験片の散乱光線透過率を全光線透過率で割ったものを百分率で表したもの)などであっても良い。これらのパラメータであっても上記同様の処理により、SN比の線形和Mを求めることで、光学ムラを定量評価することができる。
【0041】
ここで、厚さ方向のレターデーションRthは、極角θを遅相軸に対して直交する方向に傾斜する角度として複数回測定することにより求めることができる。具体的には、例えばフィルムFの法線方向、フィルムFの面内の遅相軸を傾斜軸としてフィルムFの法線方向Nに対して+40°及び−40°傾斜した方向から光を入射して測定した3つの方向のレターデーション値を基に算出する。
【0042】
また、上記実施形態の評価装置100では、フィルムFを透過した光を測定して光学特性値を検出したが、評価装置100としては、フィルムFにて反射した反射光を測定して光学特性値を検出する方式でも良い。
【0043】
また、第2実施形態において傾斜させた極角θとしては、0゜から40゜までの角度範囲の中で複数の角度を設定するのが好ましい。これは、極角θが40゜を超えると、光漏れが大きくムラが見えにくくなるためである。
【実施例1】
【0044】
縦60mm×横60mmの大きさの4枚のフィルムについて、検査員による官能検査を行うとともに、本発明の第1実施形態に係る評価方法を行い、各評価結果を比較した。
評価装置としては、透過光測定型の評価装置(OPTIPRO(シンテック株式会社製)を用いた。本実施例では、フィルムを縦、横4mmピッチとして測定する領域を区分し、評価装置100により、フィルムの各領域に対して垂直方向から光を照射し、2次元複屈折を測定した。なお、評価値の算出では、評価値の計算式である(7)式におけるα及びβをそれぞれ1とした。
評価結果及び計算結果を表1に示す。また、官能評価による評価点と計算した評価値との対応関係を図6に示す。
【0045】
【表1】

【0046】
表1及び図6からわかるように、本発明により求めた4枚のフィルムの実施例1〜4では、評価値である線形和Mが、検査員の目視による官能評価点に良好に対応した。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の第1実施形態に係る評価装置の構成を示す図である。
【図2】評価するフィルムを示すフィルムの平面図である。
【図3】フィルム品質評価方法を説明するフローチャート図である。
【図4】第2実施形態を説明するフィルムの対する光軸の傾きを示す斜視図である。
【図5】フィルム品質評価方法を説明するフローチャート図である。
【図6】実施例における試験結果を示すグラフ図である。
【符号の説明】
【0048】
11 ステージ
17 光源
19 受光器
21 制御部
100 フィルム品質評価装置
A 領域
F フィルム
Re、Re(θ、φ) レターデーション
Ax、Ax(θ、φ) 遅相軸角度
AveRe、AveRe(θ、φ) レターデーションの平均値
AveAx、AveAx(θ、φ) 遅相軸角度の平均値
SN(Re)、SN(Re(θ、φ)) レターデーションのSN比
SN(Ax)、SN(Ax(θ、φ)) 遅相軸角度のSN比
M 線形和
θ 極角
φ 方位角

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルムの光学特性値であるレターデーションRe、遅相軸角度Ax、厚さ方向レターデーションRth、光透過率、色味、ヘイズのうち、少なくとも2つ以上の特性値に関して、各特性値の平均値に対するSN比をそれぞれ求め、これらSN比の線形和を前記フィルムの光学ムラの定量評価値とするフィルム品質評価方法。
【請求項2】
請求項1記載のフィルム品質評価方法であって、
(1)フィルム上の複数の所定領域にそれぞれ光を照射して該所定領域に対するレターデーションと遅相軸角度を測定するステップと、
(2)前記測定された各所定領域に対するレターデーションの平均値と遅相軸角度の平均値とを求めるステップと、
(3)前記測定された各所定領域に対するレターデーションと遅相軸角度、及び各平均値から、前記各平均値を理想値として望小SN比を算出するステップと、
(4)前記レターデーションと遅相軸角度に対する各望小SN比の線形和を算出し、これを定量評価値とするステップと、
を含むフィルム品質評価方法。
【請求項3】
請求項2記載のフィルム品質評価方法であって、
前記フィルムへ法線方向から垂直に光を入射して前記定量評価値を求めるフィルム品質評価方法。
【請求項4】
請求項2記載のフィルム品質評価方法であって、
前記フィルムの法線方向からの傾斜角度である極角を異ならせた、複数の極角方向から前記フィルムに光を入射して前記定量評価値を求めるフィルム品質評価方法。
【請求項5】
請求項4記載のフィルム品質評価方法であって、
前記極角は、0゜から40゜までの角度範囲で複数角度を設定するフィルム品質評価方法。
【請求項6】
請求項4又は請求項5記載のフィルム品質評価方法であって、
前記極角は、フィルムの遅相軸に対して直交する方向に傾斜する角度であるフィルム品質評価方法。
【請求項7】
フィルムの光学ムラを定量するフィルム品質評価装置であって、
前記フィルムに単一波長光束を照射する光源と、
前記フィルムを所望の方向へ移動自在に載置するステージと、
前記フィルムで変調された単一波長光束を受光する受光器と、
請求項1〜請求項6のいずれか1項記載のフィルム品質評価方法に基づいて前記光源、ステージ、受光器を駆動して前記フィルムを移動させる制御部と、
を備えたフィルム品質評価装置。
【請求項8】
電子計算機において、
フィルム上の複数の所定領域にそれぞれ光を照射して得られた前記所定領域に対するレターデーションと遅相軸角度の平均値とを求めるステップと、
前記測定された各所定領域に対するレターデーションと遅相軸角度、及び各平均値から、前記各平均値を理想値として望小SN比を算出するステップと、
前記レターデーションと遅相軸角度に対する各望小SN比の線形和を算出し、これを定量評価値とするステップと、
を実行させるプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−240210(P2007−240210A)
【公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−60000(P2006−60000)
【出願日】平成18年3月6日(2006.3.6)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】