説明

フィルム延伸装置およびフィルム延伸方法

【課題】長尺状のフィルムを延伸する際に、得られるフィルムの配向角を高精度で制御できるフィルム延伸装置を提供すること。
【解決手段】フィルムを送るための送り出し部分と、フィルムを加熱するための加熱炉と、前記送り出し部分から送り出されたフィルムを、前記加熱炉の内部を通過させるためのフィルム搬送手段と、を有するフィルム延伸装置であって、前記加熱炉は、独立に温度制御可能な2以上のゾーンに分離されており、隣り合うゾーンの間にはフィルム上下にある隔壁を有し、前記隔壁には、前記フィルムが通過可能な隙間が形成されており、前記隙間の間隔は、フィルム上下方向において、5〜100mmの範囲で変更できるようになっており、かつ、前記隔壁の幅方向と、フィルムの搬送方向とのなす角度を変更できるようになっているフィルム延伸装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルム延伸装置およびフィルム延伸方法に係り、さらに詳しくは、光学フィルムを高精度で延伸するための延伸装置および延伸方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイなどの液晶表示装置には、着色防止、視野角拡大などのために、種々の位相差フィルムが用いられている。このような液晶表示装置に用いられる位相差フィルムは、一般に方形状であり、その辺に対して傾斜した方向に配向軸(遅相軸)を有する構成となっている。そして、液晶表示装置においては、このような位相差フィルムと偏光板とを積層し、位相差フィルムの遅相軸と偏光板の透過軸とが所望の角度となるように配置されている。
【0003】
このような位相差フィルムを製造する方法としては、たとえば、透明な樹脂フィルムを縦延伸または横延伸することにより、縦方向または横方向に配向軸を有する長尺状の延伸フィルムを得て、得られた延伸フィルムを方形状に裁断する方法が知られている。この方法においては、裁断により得られる方形状のフィルムの端辺とフィルム面内の配向軸とが所定の角度となるように裁断する必要がある。そのため、この方法では、最大面積が得られるように裁断しても、裁断ロスが必ず生じてしまうため、生産効率が悪いという問題があった。
【0004】
これに対して、たとえば特許文献1では、長尺の熱可塑性樹脂フィルムを加熱延伸ゾーンと熱固定ゾーン(冷却ゾーン)を通過させて、長尺状のフィルムの長手方向に対して所望の角度を有するように、フィルムを斜め方向に延伸する方法が開示されている。また、この特許文献1では、加熱延伸ゾーンと熱固定ゾーン(冷却ゾーン)との境界をフィルムの配向軸と略平行にすることも開示されている。
【0005】
この特許文献1の方法によると、得られる長尺状のフィルムが長手方向に対して所望の角度を有することとなる。そのため、上記した構成を有する方形状の位相差フィルムを得るためには、この長尺状のフィルムを縦方向および横方向に裁断すれば良いため、裁断ロスが実質的に存在せず、その結果、生産効率の向上を図ることができる。一方で、この特許文献1では、フィルムの延伸方向をフィルムの搬送方向に対して斜めの方向としているが、このように斜めの方向に延伸した場合においては、得られるフィルムの配向軸の精度が低下してしまうという問題がある。
【0006】
そのため、特許文献1では、加熱延伸ゾーンと熱固定ゾーン(冷却ゾーン)との境界をフィルムの配向軸と略平行にする方法を採用している。しかしながら、この特許文献1では、加熱延伸ゾーンと熱固定ゾーン(冷却ゾーン)との境界部分に関し、境界部分とフィルムの配向軸とを略平行にすること以外については何ら開示されておらず、たとえば、この境界部分における、フィルムが通過する部分の隙間については何ら規定されていない。特に、特許文献1のような方法でフィルムを延伸する場合には、上記したフィルムが通過する部分の隙間が原因となり、加熱延伸ゾーンや熱固定ゾーン(冷却ゾーン)内の圧力が低下してしまい、フィルム随伴流により、各ゾーン内に温度むらが生じてしまい、その結果、得られるフィルムの配向角が不安定になってしまうという問題が起こっていた。
【0007】
【特許文献1】特開2003−311823号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、このような実状に鑑みてなされ、長尺状のフィルムを延伸する際に、得られるフィルムの配向角を高精度で制御できるフィルム延伸装置、およびフィルム延伸方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者等は、独立に温度制御可能な2以上のゾーンに分離された加熱炉内にフィルムを通過させ、加熱炉内にてフィルムを延伸することにより、フィルムの延伸を行うフィルム延伸装置において、加熱炉内を2以上のゾーンに分離する隔壁として、搬送されるフィルムの配向軸に応じて、フィルムに対する角度を変更でき、しかも、搬送されるフィルムとの距離を所定範囲で変更できるような構成を有する隔壁を採用することにより、上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0010】
すなわち、本発明に係るフィルム延伸装置は、フィルムを送るための送り出し部分と、
フィルムを加熱するための加熱炉と、
前記送り出し部分から送り出されたフィルムを、前記加熱炉の内部を通過させるためのフィルム搬送手段と、を有するフィルム延伸装置であって、
前記加熱炉は、独立に温度制御可能な2以上のゾーンに分離されており、隣り合うゾーンの間にはフィルム上下にある隔壁を有し、前記隔壁には、前記フィルムが通過可能な隙間が形成されており、
前記隙間の間隔は、フィルム上下方向において、5〜100mmの範囲で変更できるようになっており、かつ、前記隔壁の幅方向と、フィルムの搬送方向とのなす角度を変更できるようになっている。
【0011】
本発明のフィルム延伸装置において、好ましくは、前記隔壁に形成された前記隙間は、フィルムの幅方向に沿って、異なる間隔とすることができる。フィルムの幅方向に沿って、異なる間隔に設定できるような構成とすることにより、フィルムの幅方向の厚みに応じて、前記隔壁に形成された隙間の間隔を適宜調整することができる。
【0012】
本発明のフィルム延伸装置において、好ましくは、前記隔壁の厚みが、1〜500mmである。2以上のゾーン間に配置される前記隔壁は、断熱性を有する構成とすることが好ましい。断熱性を有する構成とすることにより、隣り合うゾーン間の温度を異なる温度とする際に、高い精度での制御が可能となる。
【0013】
本発明のフィルム延伸装置において、前記加熱炉内の圧力が、大気圧よりも5〜200Pa高くなっていることが好ましい。前記加熱炉内の圧力が低すぎると、外気が入りやすくなってしまい、前記加熱炉内を所定の温度に保つことが困難になる場合がある。一方、前記加熱炉内の圧力が高すぎると、圧力の影響によりフィルムの厚みが不均一となる場合がある。なお、加熱炉内の圧力は、加熱炉内に熱風を供給する際における、熱風の供給量および供給圧力を調整することにより、制御することができる。
【0014】
なお、本発明のフィルム延伸装置は、少なくとも2以上のゾーンに分かれていれば良く、たとえば、必要に応じて3つのゾーンに分かれている構成としても良い。なお、この際においては、3つのゾーンのうち、少なくとも2つのゾーン間を分離している1枚の隔壁のみを上記構成としても良いし、あるいは、3つのゾーン間を分離している全ての隔壁を上記構成としても良い。
【0015】
また、前記隔壁で分離される隣り合うゾーン同士は、互いに異なる温度および/または圧力に設定しても良いし、あるいは、同じ温度、圧力に設定しても良いが、互いに異なる温度および/または同じ圧力に設定することが好ましい。互いに異なる温度および/または同じ圧力に設定するゾーン間に上記構成を有する隔壁を設けることにより、特に本発明の効果が大きくなる。
【0016】
本発明に係るフィルムの延伸方法は、フィルムを連続的に送り出す工程と、
送り出した前記フィルムを、加熱炉の内部を通過させることにより加熱し、加熱した状態の前記フィルムを幅方向に延伸する工程と、を有するフィルムの延伸方法であって、
前記加熱炉は、独立に温度制御可能な2以上のゾーンに分離されており、隣り合うゾーンの間にはフィルム上下にある隔壁を有し、前記隔壁には、前記フィルムが通過可能な隙間が形成されており、
前記隔壁に形成されている隙間の、前記フィルム上下方向における間隔を5〜100mmの範囲とするとともに、
前記隔壁の幅方向と、前記フィルムの配向軸の方向とを略平行にすることを特徴とする。
【0017】
本発明の方法において、前記隔壁の隙間を、前記フィルムの幅方向に沿って、異なる間隔とすることが好ましく、特に、前記フィルムの幅方向における端部のうち、フィルム厚みが厚い方の端部側に向かって、前記隔壁の隙間を広くすることが、より好ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明のフィルム延伸装置は、隣り合うゾーン間を分離している隔壁を、上記所定の構成とする。すなわち、搬送されるフィルムの配向軸に応じて、フィルムに対する角度を変更でき、しかも、搬送されるフィルムとの距離を所定範囲で変更できるような構成とする。そのため、たとえば、延伸後のフィルムの配向軸がフィルムの幅方向に対して一定の傾斜(たとえば、15°や45°など)を有する構成となるように、斜め延伸した場合においても、延伸後のフィルムの配向軸を高精度に配向させることができ、そのため、配向軸が高精度に配向した光学フィルムなどの各種フィルムを製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明を、図面に示す実施形態に基づき説明する。
図1は本発明の一実施形態に係るフィルム延伸装置の概略断面図、
図2は本発明の一実施形態に係るフィルム延伸装置を用いたフィルムの延伸方法を説明するための図、
図3は図1に示すIII−III線に沿う断面図、
図4、図5は図3に示すIV部(V部)の拡大図、
図6(A)、図6(B)は図3に示すVI−VI線に沿う要部断面図である。
【0020】
図1に示すように本発明のフィルム延伸装置は、オーブン2と、オーブン2内を通過するように配置されている一対のレール4,6と、を有している。そして、供給ロール10(送り出し部分)からフィルム8が送り出され、送り出されたフィルム8は、一対のレール4,6上に配置されている複数のクリップ(図示省略)により把持された状態でオーブン2内を移動し、オーブン2内で加熱・延伸され、その後、加熱・延伸されたフィルム8は、必要に応じてフィルム8の両端をトリミングした後、巻取りロール12により巻き取られるようになっている。
【0021】
オーブン2は、熱風によりフィルム8を加熱するための装置である。このオーブン2は、隔壁16a,16bにより、フィルム供給ロール10側(すなわち、フィルム8の供給側)から順に、予熱ゾーン、延伸ゾーンおよび熱固定ゾーンの3つのゾーンに区切られており、各ゾーンは、それぞれ異なった温度および圧力に制御できるようになっている。具体的には、各ゾーンには、それぞれ熱風供給手段が設けられており、供給する熱風の温度や、供給量を制御することにより、各ゾーン内の温度、圧力を制御できるようになっている。なお、隔壁16a,16bは、フィルム8が各ゾーン間を通過できるように、後述するように隙間が形成されている。また、図1に示すように、予熱ゾーンはオーブン壁16cで、熱固定ゾーンはオーブン壁16dで、それぞれオーブン外部と区切られている。
【0022】
オーブン2内には、複数の駆動軸18が、外壁14と略垂直に配置されており、これら複数の駆動軸18上には、一対のレール4,6が隔壁16の幅方向に移動可能に形成されている。そして、一対のレール4,6は、この複数の駆動軸18上を、隔壁16の幅方向に別々に移動させることにより、様々なレールパターンを形成できるような構成となっている。
【0023】
次いで、図1、図2を使用して、本実施形態のフィルム延伸装置を使用したフィルムの延伸方法について説明する。図2は、一対のレール4,6と、これらレール上に配置された複数のクリップのうちの一部(レール4上に配置された40a,40b,40cおよびレール6上に配置された60a,60b,60c)と、これら複数のクリップにより把持され、図1に示すオーブン2内を通過するフィルム8と、を示した概略図である。
【0024】
まず、図1に示す供給ロール10から送られてきたフィルム8が、一対のレール4,6上に配置されたクリップに把持された状態で、オーブン2内の予熱ゾーンにおいて、延伸されるのに十分な温度に加熱される。予熱ゾーンにおけるフィルム8の加熱温度は、フィルム8の材質や延伸する目的などに応じて適宜調整すればよいが、たとえば、フィルム8を構成する熱可塑性樹脂のガラス転移温度(Tg)以上とすることが好ましい。
【0025】
次いで、予熱ゾーンで加熱されたフィルム8は、延伸ゾーンにて延伸される。延伸ゾーンにおいては、一対のレール4,6の間隔を、フィルムの搬送方向に向かって、徐々に広げていくことにより、フィルム8が延伸されることとなる。なお、延伸ゾーンにおけるフィルム8の加熱温度は、特に限定されないが、たとえば上記した予熱ゾーンと同じ温度とすれば良い。
【0026】
そして、延伸ゾーンで延伸されたフィルム8は、熱固定ゾーンにて、所定の形状に固定される。熱固定ゾーンにおけるフィルム8の加熱温度は、特に限定されないが、フィルム8のガラス転移温度(Tg)に対して、(Tg−20)〜(Tg+10)℃とすることが好ましい。延伸ゾーンの温度が高すぎると、延伸後のフィルム8の配向軸の固定が不均一となるため、得られるフィルムの配向角の精度が悪化してしまうおそれがある。また、延伸ゾーンの温度が低すぎると、フィルム8の冷却が不均一となるため、同様に得られるフィルムの配向角の精度が悪化してしまうおそれがある。
【0027】
オーブン2内(予熱ゾーン、延伸ゾーンおよび熱固定ゾーン内)における圧力は、好ましくは大気圧よりも5〜200Pa高い範囲、より好ましくは大気圧よりも5〜50Pa高い範囲とする。オーブン2内の圧力が低すぎると、外気が入りやすくなってしまい、オーブン2内を所定の温度に均一に保つことが困難になる場合があり、延伸により得られるフィルムの配向角精度が悪化してしまうおそれがある。一方、オーブン2内の圧力が高すぎると、供給風量の増大に起因して、フィルムの温度むらが生じ、配向角精度が悪化するおそれがある。なお、予熱ゾーン、延伸ゾーンおよび熱固定ゾーンの圧力は、同じ圧力としても良いし、あるいは異なる圧力としても良いが、同じ圧力とすることが好ましい。各ゾーン間の圧力を異なる圧力とする場合には、予熱ゾーンの圧力、延伸ゾーンの圧力、熱固定ゾーンの圧力の順で低くしていくことが好ましい。
【0028】
本実施形態では、一対のレール4,6を図1、図2に示すような所定のパターンとし、フィルム8の予熱ゾーンにおける搬送方向と、熱固定ゾーンにおける搬送方向とを異なる方向としている(図2中に、フィルムの搬送方向を白抜き矢印で示した。)。このような構成を採用することにより、延伸後のフィルム8の配向軸を、フィルム8の長手方向に対し所定の角度を有するような構成とすることができる。すなわち、図2に示すように、予熱ゾーン(クリップ40a,60a付近)においては、フィルム8の幅方向と略平行になっているフィルムの配向軸(図2中に破線で示した。)が、延伸ゾーン(クリップ40b,60b付近)において延伸され、熱固定ゾーン(クリップ40c,60c付近)においては、フィルム8の配向軸が、フィルム8の幅方向に対して、所定の角度を有するような構成となる。
【0029】
一対のレール4,6を図1、図2に示すような所定のレールパターンとすることにより、これらのレール4,6上に配置された複数のクリップの走行距離を、レール4とレール6とで異なる距離とすることができる。そのため、それぞれレール4とレール6とで、これらレール4,6上に配置されたクリップの移動速度を略同じとした場合においても、フィルム8の幅方向の一方の端部と他方の端部との移動距離を異なる距離とすることができ、そのため、延伸後のフィルム8の配向軸を、フィルム8の幅方向に対して一定の傾斜を有する構成となるように、斜め延伸することができる。
【0030】
すなわち、図2に示すように、予熱ゾーンにおいてはクリップ40aとクリップ60aとはフィルム8の搬送方向に対し、略同じ位置まで進む一方で、熱固定ゾーンにおいては、フィルムの搬送方向に対し、クリップ60cがクリップ40cに対して遅れる構成となり、結果として、フィルム8の配向軸が、フィルム8の幅方向に対して所定の角度を有することとなる。
【0031】
なお、レール4,6上に配置されたクリップの移動速度を略同じとすることにより、延伸後のフィルム8を良好に巻き取ることができる。レール4,6上に配置されたクリップの移動速度は、特に限定されないが、通常、5〜200m/分程度である。
【0032】
本実施形態では、一対のレール4,6を図1、図2に示すような所定のレールパターンとしたが、そのパターンは特に限定されず、延伸後のフィルムが所望の構成となるように、適宜、決定すれば良い。なお、レールパターンは、図1に示す駆動軸18により、一対のレール4,6を隔壁16の幅方向に沿って別々に移動させることにより適宜変更することができる。
また、一対のレール4,6および、これらの上に配置された複数のクリップは後に説明するように、実際には、それぞれレールケーシング42,62に覆われているが、図1、図2においては図示を省略した。
【0033】
さらに、図2中においては、レール4,6上に配置される複数のクリップについて、その一部のみを図示したが、レール4,6上には、無端チェーン(図示省略)により連結された複数のクリップが配置されている。そして、無端チェーンにより連結された複数のクリップは、まず、レール4,6上のフィルム8側において、図1に示す供給ロール10付近で、フィルム8を把持し、フィルムの搬送方向に沿って走行し、図1に示す巻取りロール12付近でフィルム8を開放する。そして、その後、レール4,6上の外側を通って、フィルムの搬送方向と逆方向に走行し、図1に示す供給ロール10付近で、再びフィルム8を把持する構成となっている。
【0034】
本実施形態のフィルム延伸装置で延伸するフィルム8としては、特に限定されず、熱可塑性樹脂から構成されているフィルムであれば何でも良いが、たとえば、延伸後のフィルムを光学用途に使用する場合には、所望の波長に対して透明な性質を有する樹脂からなるフィルムが好ましい。このような樹脂としては、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテルスルフォン樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリイミド樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂、ポリスルフォン樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ジアセチルセルロース、トリアセチルセルロース、脂環構造を有するオレフィンポリマーなどが挙げられる。これらのなかでも、脂環構造を有するオレフィンポリマーが好ましい。
【0035】
脂環構造を有するオレフィンポリマーとしては、たとえば、ノルボルネン樹脂、単環の環状オレフィン樹脂、環状共役ジエン樹脂、ビニル脂環式炭化水素樹脂、およびこれらの水素化物などが挙げられるが、これらのなかでも、透明性および成形性が良好であるという理由より、ノルボルネン樹脂が特に好ましい。ノルボルネン樹脂としては、ノルボルネン構造を有する単量体の開環重合体もしくはノルボルネン構造を有する単量体と他の単量体との開環重合体またはそれらの水素化物、ノルボルネン構造を有する単量体の付加重合体もしくはノルボルネン構造を有する単量体と他の単量体との付加重合体またはそれらの水素化物等を挙げることができる。
【0036】
次いで、図1に示す、延伸ゾーンと熱固定ゾーンとを分離している隔壁16aについて図3〜6を使用して説明する。
図3は、図1に示すIII−III線に沿う断面図である。図3に示すように、延伸ゾーンと熱固定ゾーンとを分離している隔壁16aは、搬送方向(紙面と垂直な方向)に向かって搬送されるフィルム8の上側および下側に、対をなして配置されている。
【0037】
この一対の隔壁16aは、外壁14内部に固定された一対の隔壁本体部20と、フィルム8付近に配置された一対の可動部22と、これら隔壁本体部20と可動部22との間に配置された接合部24と、を有している。接合部24としては、可動部22が、後述するように、上下方向に移動できるとともに、フィルム8の搬送方向に対する角度を変更できるように、ある程度、柔軟性を有するような構造あるいは素材で構成されていることが好ましい。具体的には、柔軟性を有するような構造としては、接合部24をジャバラ状の構造とする方法などが挙げられる。
【0038】
このように、接合部24を、ある程度、柔軟性を有するような構成とすることにより、隔壁本体部20を外壁14に固定された固定部分とし、かつ、可動部22のみが動くような構成とすることができ、そのため、隔壁16a全体を動かすことなく、後に説明するような構成とすることができる。
【0039】
また、隔壁本体部20および可動部22は、その厚みを好ましくは1〜500mmの範囲、より好ましくは200〜400mmの厚みとし、断熱性を有する構成とすることが好ましい。隔壁本体部20および可動部22を、断熱性を有する構成とすることにより、延伸ゾーンおよび熱固定ゾーン内の温度むらを低減することができ、その結果、得られるフィルムの配向角の精度(特に、長手方向における配向角の精度)を向上させることができる。
【0040】
なお、隔壁本体部20および可動部22を断熱性を有する構成とする方法としては特に限定されないが、たとえば、隔壁本体部20および可動部22の厚みを1〜30mm程度と比較的に薄くする場合には、セラミックなどの断熱性の高い材料や発泡材料などで形成し、断熱性を確保することが好ましい。あるいは、隔壁本体部20および可動部22の厚みを30〜500mm程度と比較的厚くする場合には、隔壁内部を中空にすることにより断熱性を確保することができる。
【0041】
隔壁本体部20および可動部22の厚みが1mm未満であると断熱効果が得難くなり、延伸ゾーンおよび熱固定ゾーン内に温度むらが発生してしまう。一方、隔壁本体部20および可動部22の厚みが500mmよりも厚くなると、延伸ゾーンと熱固定ゾーンとの境界において温度むらが大きくなり、得られるフィルムの配向角の精度が低下してしまう。
【0042】
次いで、可動部22について、詳細に説明する。
図3に示すIV部の拡大図である図4に示すように、可動部22は、レール4側に位置する第1可動部22aと第2可動部22bとからなり、これらの第1および第2可動部22a,22bは、フィルムの搬送方向からみた場合に重なるように配置されている。具体的には、図3に示すVI−VI線に沿う要部断面図である図6(A)に示すように、第1および第2可動部22a,22bは、フィルム8の搬送方向において、互いに略平行となるように配置されている。
【0043】
第1可動部22aは、図4に示すように、結合部材26を介して、上下方向に移動可能な状態でレールケーシング42に結合されている。なお、レールケーシング42内には、レール4とクリップ40とが配置されている。同様に、第2可動部22bは、結合部材26を介して、上下方向に移動可能な状態でレールケーシング62に結合されており、また、レールケーシング62内には、レール6とクリップ60とが配置されている。
【0044】
そして、上下一対の第1可動部22a,22aと、上下一対の第2可動部22b,22bとは、それぞれt1,t2の幅の隙間を形成しており、この隙間をフィルム8が搬送されることにより、フィルム8は延伸ゾーンから熱固定ゾーンへと移動できるようになっている。本実施形態では、これらt1,t2の大きさは5〜100mmの範囲であり、好ましくは5〜30mmの範囲である。t1,t2の大きさを上記範囲とすることにより、長手方向におけるフィルム8の配向角の精度を向上させることができる。t1,t2が小さすぎると、フィルム8がこれら第1および第2可動部22a,22bの影響を受けてしまい、得られるフィルム8の配向角の精度が低下してしまう。一方、t1,t2が大きすぎると、フィルム8の随伴流により、両ゾーン内に温度むらが生じてしまい、その結果、得られるフィルム8の配向角の精度が低下してしまう。
【0045】
本実施形態のフィルム延伸装置は、図5に示すように、上下一対の第1可動部22a,22a間の間隔であるt1と、上下一対の第2可動部22b,22b間の間隔であるt2とを異なる間隔とすることができる。すなわち、図5に示すように、フィルム8の幅方向に沿って除々に広くなっていくような構成(あるいは狭くなっていくような構成)とすることができる。特に、本実施形態では、その隙間を通過するフィルム8のレール4側端部の厚み、およびレール6側端部の厚みのそれぞれに応じてt1,t2のいずれを大きく設定するかを決定することが好ましい。具体的には、これらの端部のうちフィルム8の厚みが厚くなる端部における間隔を大きく設定し、一方で、フィルム8の厚みが薄くなる端部における間隔を小さく設定することが好ましい。フィルム8の厚みに応じて、図5に示すように、t1とt2との間隔を適宜設定することにより、フィルム8の幅方向の配向角精度を良好にすることができる。
【0046】
特に、図2に示すようなレールパターンを採用し、レール4側およびレール6側の一対の端部のうち、レール4側の端部(クリップ40b,40c側の端部)が、レール6側の端部(クリップ60b,60c側の端部)と比較して、フィルム搬送方向において速く進むような構成とした場合においては、フィルム8が、レール4側により引っ張られるような構成となる。そして、フィルム8は、レール4側により引っ張られることにより、レール6側の端部からレール4側の端部に向かってその厚みが薄くなっていく構成となる。そのため、本実施形態においては、レール6側端部における間隔t2を、レール4側端部における間隔t1よりも大きく設定することが好ましい。
【0047】
なお、間隔t1とt2との差は、その目的に応じて適宜設定すれば良く、特に限定されないが、通常0〜40mm、好ましくは10〜30mmの範囲とする。特に、延伸後のフィルムの配向軸のフィルムの幅方向に対する角度であるフィルムの配向角を、フィルム8の幅方向に対して、大きな角度としていくと、フィルム8の一方の端部と、他方の端部とでその厚みの差が大きくなっていく傾向にある。そのため、延伸後のフィルムの配向角を大きく設定する場合には、間隔t1とt2との差を比較的に大きく設定することが好ましい。間隔t1とt2との差が大きすぎると、得られるフィルムの配向角の精度が低下してしまう場合がある。
【0048】
さらに、本実施形態のフィルム延伸装置においては、第1、第2可動部22a,22bは、上下方向の他に、第1、第2可動部22a,22bと、フィルム8の搬送方向とのなす角度を変更できるようになっている。具体的には、図3に示すVI−VI線に沿う要部断面図である図6(A)に示すように、第1、第2可動部22a,22bは、結合部材26を介して、それぞれ、レールケーシング42,62の特定部分に結合されている。そのため、図6(B)に示すようなレールパターンとした場合には、第2可動部22bは、結合部材を介してレールケーシング62の特定部分に結合されているため、レールケーシング62とともに、フィルム8の搬送方向(図6(A)、図6(B)において白抜き矢印で示した。)と反対側に移動することとなる。また、第1可動部22aと第2可動部22bとは、図4、図5に示す接合部24により互いに接合され、第1可動部22aと第2可動部22bとは略平行になるように保たれている。そのため、図6(B)に示すように、第1可動部22aと第2可動部22bとは略平行のまま、第1、第2可動部22a,22bと、フィルム8の搬送方向とのなす角度を変更できるようになっている。
【0049】
そして、図6(A)、図6(B)に示すように、レールケーシング42,62(レール4,6)のパターンに合わせて、フィルムの配向軸(図中、点線で示した。)も変化するため、このような構成とすることにより、第1、第2可動部22a,22bの幅方向と、フィルム8の配向軸の方向(配向角)とを略平行にすることができる。なお、本実施形態では、延伸後のフィルム8の配向軸の方向(配向角)を求め、得られた結果に基づいて、第1、第2可動部22a,22bの方向を制御する、いわゆるフィードバック制御を採用しても良い。このようなフィードバック制御においては、たとえば、延伸後のフィルム8の幅方向に等間隔で配向角を求め、得られた結果より平均角度を算出し、その後、算出した平均角度に可動部22a,22bの幅方向を合わせるように制御する方法などが挙げられる。
【0050】
このように、フィルム8の配向軸と、第1、第2可動部22a,22bと、を略平行として、フィルム8を延伸ゾーンから熱固定ゾーンへと移動させることにより、延伸ゾーンにおいて形成された配向軸に沿って固定することができ、その結果、フィルム8の幅方向の配向角精度を良好にすることができる。
【0051】
本実施形態においては、フィルム8の配向軸と、第1、第2可動部22a,22bとは略平行とすれば良く、必ずしも厳密に平行となるように制御する必要はない。たとえば、フィルムの配向角が0〜30°程度と比較的に小さい場合には、平行からのずれ角度は±5°の範囲内であれば良く、またフィルムの配向角が30°超、50°以下程度と比較的に大きい場合には、±10°の範囲内で有ればよい。
【0052】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内で種々に改変することができる。
【0053】
たとえば、上述した実施形態では、図1に示す、各ゾーンを分離している隔壁16a,16bおよび各ゾーンとオーブン外部とを分離しているオーブン壁16c,16dのうち、延伸ゾーンと熱固定ゾーンとを分離している隔壁16aについてのみ、上述したような構成とする例を例示したが、隔壁16aに加えて、予熱ゾーンと延伸ゾーンとを分離している隔壁16b、さらには、各ゾーンとオーブン外部とを分離しているオーブン壁16c,16dについても上述したような構成としても良い。
【0054】
なお、上記した構成を有するフィルム延伸装置においては、通常、延伸ゾーンの温度をフィルムが軟化する温度とし、それに続く熱固定ゾーンの温度をフィルムが固定化する温度に設定される。すなわち、このようなフィルム延伸装置を使用してフィルムを延伸する場合には、延伸ゾーンから熱固定ゾーンにおいて、フィルムの物性が特に大きく変化するように設定される。そのため、図1に示す隔壁16a,16b、オーブン壁16c,16dのうち、延伸ゾーンと熱固定ゾーンとを分離している隔壁16aを上記構成とした場合に、特に上記した効果が大きくなる。
【実施例】
【0055】
以下、本発明を、さらに詳細な実施例に基づき説明するが、本発明は、これら実施例に限定されない。
【0056】
実施例1
まず、光学フィルムの原料樹脂として、ガラス転移温度が136℃であるノルボルネン樹脂(日本ゼオン(株)製 ZEONOR1420)を準備した。次いで、このノルボルネン樹脂を、窒素を流通させた熱風乾燥機を用いて温度110℃にて、3時間乾燥し、常法により、Tダイ式溶融押出成形装置により、幅1000mm、厚さ100μmのフィルムとし、ロール状に巻き取ることにより、ノルボルネン樹脂の未延伸フィルムを得た。
【0057】
上記にて得られたノルボルネン樹脂の未延伸フィルムを、図1〜図6に示すフィルム延伸装置を用いて、以下に示す条件により延伸し、延伸フィルムを得た。
すなわち、フィルムの配向角が0°となるように、レール4,6のレールパターンを設定し、図5に示す隔壁16aにおける間隔t1:20mm、間隔t2:20mm、t2−t1:0mm、隔壁16aの隔壁本体部20および第1、第2可動部22a,22bの厚み:300mm、予熱ゾーン温度:151℃、延伸ゾーン温度:150℃、熱固定ゾーン温度:130℃、フィルム移動速度:10m/分、延伸倍率:1.6倍、オーブン2内の圧力:大気圧よりも70Pa高い圧力の条件とした。
【0058】
なお、第1、第2可動部22a,22bは、図6(A)に示すように、結合部材26を介して、それぞれレールケーシング42,62の特定部分に結合されているため、第1、第2可動部22a,22bの角度は、フィルム配向角である0°と実質的に同じ角度に設定されている。また、隔壁16aの隔壁本体部20および第1、第2可動部22a,22bとしては、内部が空洞となっているステンレス鋼製の板を使用した。
【0059】
次いで、得られた延伸フィルムの両端にトリミング処理を施し、最終的なフィルム幅を1300mmとした。そして、得られた延伸フィルムについて、以下に示す方法により、幅方向および長手方向の配向角の測定を行った。
【0060】
幅方向の配向角
上記にて得られたフィルムについて、偏光顕微鏡(NIKON製、ECLIPSE E600 POL)を用いて、幅方向の配向角を測定した。測定は、得られた1300mm幅のフィルムに対して、左端部から右端部まで、幅方向に沿って50mm間隔で行った。すなわち、左端部(0mm)〜右端部(1300mm)まで、合計27点の測定を行った。そして、各測定点における配向角のデータに基づいて、配向角の幅方向における標準偏差を求めた。結果を表1に示す。
【0061】
長手方向の配向角
配向角の測定を、得られたフィルムの中央部(すなわち、端部から650mmの部分)を、長手方向に沿って1mの間隔で、連続して10点の条件で行った以外は、上記と同様にして、長手方向の配向角の測定を行った。そして、各測定点における配向角のデータに基づいて、配向角の長手方向における標準偏差を求めた。結果を表1に示す。
【0062】
実施例2
フィルムの配向角が15°となるように、レール4,6のレールパターンを設定し、隔壁16aにおける間隔t1:20mm、間隔t2:50mm、t2−t1:30mmの条件に変更した以外は、実施例1と同様にして延伸フィルムを製造した。なお、実施例2においては、図2に示すレール4側(すなわち、クリップの移動距離を短く設定したレール側)を間隔t1とし、図2に示すレール6側(すなわち、クリップの移動距離を長く設定したレール側)を間隔t2とした(以下、実施例3、比較例2,3、参考例1において同じ)。また、実施例2においても、実施例1と同様の理由により、第1、第2可動部22a,22bの角度は、フィルム配向角である15°と実質的に同じ角度に設定されている。そして、得られた延伸フィルムについて、実施例1と同様にして評価を行った。結果を表1に示す。
【0063】
実施例3
フィルムの配向角が45°となるように、レール4,6のレールパターンを設定し、隔壁16aにおける間隔t1:20mm、間隔t2:60mm、t2−t1:40mmに条件を変更した以外は、実施例1と同様にして延伸フィルムを製造した。なお、実施例3においても、実施例1と同様の理由により、第1、第2可動部22a,22bの角度は、フィルム配向角である45°と実質的に同じ角度に設定されている。そして、得られた延伸フィルムについて、実施例1と同様にして評価を行った。結果を表1に示す。
【0064】
比較例1
隔壁16aにおける間隔t1:300mm、間隔t2:300mm、t2−t1:0mmとした以外は、実施例1と同様にして延伸フィルムを製造し、得られた延伸フィルムについて、実施例1と同様にして評価を行った。結果を表1に示す。
【0065】
比較例2
フィルム延伸装置として、第1、第2可動部22a,22bの角度が、フィルム配向角に応じて変化しないようなフィルム延伸装置(すなわち、図6(A)、図6(B)に示すような構成を有しないフィルム延伸装置)を用いた以外は、実施例2と同様にして延伸フィルムを製造した。すなわち、比較例2においては、フィルムの配向角を15°としたのに対し、第1、第2可動部22a,22bの角度を0°とした。そして、得られた延伸フィルムについて、実施例1と同様にして評価を行った。結果を表1に示す。
【0066】
比較例3、参考例1
隔壁16aにおける間隔t1:300mm、間隔t2:330mm、t2−t1:30mm(比較例3)、隔壁16aにおける間隔t1:20mm、間隔t2:20mm、t2−t1:0mm(参考例1)とした以外は、実施例2と同様にして延伸フィルムを製造し、得られた延伸フィルムについて、実施例2と同様にして評価を行った。結果を表1に示す。
【0067】
【表1】

【0068】
本発明所定のフィルム延伸装置を使用した実施例1〜3においては、フィルムの配向角を0°とした場合、さらにはフィルムの配向角を15°、45°とした場合のいずれにおいても、幅方向および長手方向の配向角の標準偏差を低くすることができ(すなわち、配向角のばらつきを小さくすることができ)、配向軸が高精度に配向した延伸フィルムを安定して製造することができた。
【0069】
これに対して、第1、第2可動部22a,22b間の距離であるt1,t2を300mmと大きくしすぎた比較例1においては、フィルムの配向角を同じ0°とした実施例1と比較して、幅方向および長手方向のいずれにおいても、配向角の標準偏差が悪化する結果となった。
【0070】
また、フィルムの配向軸(配向角)と、第1、第2可動部22a,22bの幅方向の角度と、を異なる角度とした比較例2においては、フィルムの配向角を同じ15°とした実施例2と比較して、幅方向および長手方向のいずれにおいても、配向角の標準偏差が悪化する結果となった。
【0071】
さらに、第1、第2可動部22a,22b間の距離であるt1,t2をそれぞれ300mm、330mmと大きくしすぎた比較例3においては、フィルムの配向角を同じ15°とした実施例2と比較して、幅方向および長手方向のいずれにおいても、配向角の標準偏差が悪化する結果となった。なお、比較例3の結果より、間隔t1,t2自体が大きい場合には、これらt1,t2を異なる大きさとしても、効果を得ることができないことが確認できた。
【0072】
なお、実施例2と参考例1とを比較することにより、フィルムの配向軸がフィルムの搬送方向に対して、所定の角度(フィルム配向角:15°)を有するような構成した場合においては、間隔t1,t2とで異なる大きさとすることにより、フィルムの幅方向における、配向精度の向上が可能となることが確認できる。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】図1は本発明の一実施形態に係るフィルム延伸装置の概略断面図である。
【図2】図2は本発明の一実施形態に係るフィルム延伸装置を用いたフィルムの延伸方法を説明するための図である。
【図3】図3は図1に示すIII−III線に沿う断面図である。
【図4】図4は図3に示すIV部の拡大図である。
【図5】図5は図3に示すV部の拡大図である。
【図6】図6(A)、図6(B)は図3に示すVI−VI線に沿う要部断面図である。
【符号の説明】
【0074】
2… オーブン
4,6… レール
8… フィルム
16a,16b …隔壁
16c,16d …オーブン壁
20… 隔壁本体部
22… 可動部
22a… 第1可動部
22b… 第2可動部
24… 接合部
26… 結合部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルムを送るための送り出し部分と、
フィルムを加熱するための加熱炉と、
前記送り出し部分から送り出されたフィルムを、前記加熱炉の内部を通過させるためのフィルム搬送手段と、を有するフィルム延伸装置であって、
前記加熱炉は、独立に温度制御可能な2以上のゾーンに分離されており、隣り合うゾーンの間にはフィルム上下にある隔壁を有し、前記隔壁には、前記フィルムが通過可能な隙間が形成されており、
前記隙間の間隔は、フィルム上下方向において、5〜100mmの範囲で変更できるようになっており、かつ、前記隔壁の幅方向と、フィルムの搬送方向とのなす角度を変更できるようになっているフィルム延伸装置。
【請求項2】
前記隔壁に形成された前記隙間は、フィルムの幅方向に沿って、異なる間隔とすることができる請求項1に記載のフィルム延伸装置。
【請求項3】
前記隔壁の厚みが、1〜500mmである請求項1または2に記載のフィルム延伸装置。
【請求項4】
前記加熱炉内の圧力が、大気圧よりも5〜200Pa高くなっている請求項1〜3のいずれかに記載のフィルム延伸装置。
【請求項5】
フィルムを連続的に送り出す工程と、
送り出した前記フィルムを、加熱炉の内部を通過させることにより加熱し、加熱した状態の前記フィルムを幅方向に延伸する工程と、を有するフィルムの延伸方法であって、
前記加熱炉は、独立に温度制御可能な2以上のゾーンに分離されており、隣り合うゾーンの間にはフィルム上下にある隔壁を有し、前記隔壁には、前記フィルムが通過可能な隙間が形成されており、
前記隔壁に形成されている隙間の、前記フィルム上下方向における間隔を5〜100mmの範囲とするとともに、
前記隔壁の幅方向と、前記フィルムの配向軸の方向とを略平行にすることを特徴とするフィルムの延伸方法。
【請求項6】
前記隔壁の隙間を、前記フィルムの幅方向に沿って、異なる間隔とする請求項5に記載のフィルムの延伸方法。
【請求項7】
前記フィルムの幅方向における端部のうち、フィルム厚みが厚い方の端部側に向かって、前記隔壁の隙間を広くする請求項6に記載のフィルム延伸方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−175974(P2007−175974A)
【公開日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−376063(P2005−376063)
【出願日】平成17年12月27日(2005.12.27)
【出願人】(000229117)日本ゼオン株式会社 (1,870)
【Fターム(参考)】