説明

フェタタイプチーズの添加およびオリーブ油の混和による挽肉製品の製造方法

A)挽肉製品全体に分散されるフェタの添加およびオリーブ油の混和による挽肉製品の製造方法であって、次の:(a)食肉を水、塩、パン粉および植物繊維と混合する段階、(b)オリーブ油の添加および混合段階、(c)フェタの添加段階、(d)混合およびCOによる冷凍適用段階、(e)上記混合物の成形段階、(f)熱処理段階および(g)製品の深冷凍結段階を含む上記の方法。
B)段階(c)および(e)を、押出機タイプの機械で食肉パルプを成形し、かつフェタで充填する段階(e’)で置き換えることによって、フェタ充填物で充填され、かつオリーブ油が混和されている挽肉製品を方法(A)と一致して製造する方法。
上記の方法と一致して製造された製品は、構造に関しては非常に優れた固さを有し、そして製品中に含まれるフェタの官能特性およびオリーブ油の物理的−化学的特性を保持している。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
この発明は、フェタタイプのチーズで充填された挽肉製品、またはフェタタイプのチーズと混合された挽肉製品の製造に関し、そして次の主な特徴を有する:
1.フェタタイプチーズの添加
2.脂肪を含まない骨格筋(食肉)の使用
3.動物脂肪(脂肪組織)の一部を取り換える目的でのオリーブ油の使用
4.特別の補助物質の添加
5.次の:
・(a)フェタを筋蛋白質、水、オリーブ油より成るエマルジョンの基礎系中に、そのフェタの固形組成物を蛋白質の凝固後も保持させながら混和させるために適切な熱処理を受けることができ、かつ(b)熱処理後に固形蛋白質の網目組織を生成させ、かくしてフェタ充填物が滲出しないようにすることができるだろう、安定な構造を持つフェタタイプのチーズを有しまたは有しない固形食肉パルプ(solid meat pulp)を達成する、
・フェタタイプチーズの物理的−化学的特性、官能特性(organoleptic)および栄養特性の最大可能な保存を達成する、
・動物脂肪(脂肪組織)の通常の添加に一部代えてオリーブ油を用いること、
・区別因子(differentiating factor)であるオリーブ油の官能特性、物理的−化学的特性および栄養特性の最大可能な保存を達成する
目的で開発された適切な技術的手順および機構の適用。
【0002】
名称「フェタ」は、ギリシャで伝統的に製造されている、特にマケドニア、トラキア、Sterea Ellada(中央ギリシャ)、ペロポンネソスおよびレスボス県の各地域を専ら生産地とする乳を用いて作られる塩味付きの白いチーズを指すために、保護された原産地表示(protected designation of origin:PDO)として登録されている。フェタの製造に用いられる乳は羊の乳または羊の乳とヤギの乳との混合物でなければならない。この乳の原生産地(origin)は、その原生産地がチーズに官能上の特長−風味、香り、色、そして構造およびきめ−を与えるので、製造されるチーズの基本的特徴を構成する。
【0003】
動物および植物脂肪(脂肪小球)の、および追加材料(フェタ片)の食肉パルプへの、または製品の充填物への固体混和がこの発明の技術的な目的を構成し、そしてそれは、上記のことに有利であり、かつ食肉の特別な選択と準備、食肉パルプのpH調整、添加塩量、補助物質の使用、オリーブ油の添加、食肉パルプの処理−準備条件、熱処理および完成製品の冷凍等々のようなパラメーターの調整に関係する周知の連携技術(hyphenated techniques)を用いて取り扱われる。
【0004】
消費者の大多数の人によって受け入れてきた国際市場に出ている多くの製品は、食肉系製品に対する酪農製品の添加に基づく。このような製品には主として(熟成時間が短いまたは長い)堅いチーズが用いられる。
【0005】
研究によれば、脂肪酸含有量は各種類のチーズで異なり、そして加えられる乳の最初の質、乳の種類(羊の乳、牛乳、ヤギの乳等々、または乳混合物に添加される各種類の乳の割合)、熟成時間および製造方法に依存することが見いだされている。さらに、それはまた乳の地理的原生産地にも依存する;食料品、そしてそれをもたらす動物飼料のタイプにおける地域変化が、チーズを製造するために加えられる乳の脂肪酸含有量に影響を及ぼすからである。
【0006】
ある特定の種類のチーズを特徴づける風味と香りは、その熟成度、即ちチーズの乳糖、脂肪および蛋白質の一次分解とその生成物の二次転化であって、それらがチーズの熟成プロセス中に受ける色々な発酵手順によるそれら一次分解と二次転化により生じる。
【0007】
各種類のチーズに特有の風味と香りは特定の物質からはなく、多数の物質から生じるもので、各々の物質が異なる味を有するが、全てが一緒になって、かつ相対的に比例してチーズに風味を、つまりどの種類のチーズであるかを決める最終風味を与える。さらに、それは、脂肪酸類からは、酸味風味を与える酢酸;そして臭みのあるバター(rancid butter)、およびぴりっとした風味を与えるカプロン酸、カプリル酸およびカプリン酸である。
【0008】
フェタは高酸度を持つ半塩味付きのチーズである。この製品中に含まれる脂肪酸の中では酢酸が支配的であるが、羊およびヤギの胃から造られる配合物が乳を凝固させるのに用いられる揮発性酵素中に含められると、C6−C10の脂肪酸はぴりっとした風味を加えることによってチーズの風味に強く寄与する。羊の乳を用いて造られる典型的なチーズは、高いエタノール、プロパノールおよびブタノール含有量を有する。
【0009】
チーズの構造は、異なって架橋された蛋白繊維の緻密な網目組織である。その網目組織の中に脂肪小球およびホエー、即ちチーズの湿分および水溶性成分が含まれている。時間の推移中に、多くの蛋白繊維結合はチーズの熟成プロセス中に切れ、このことがカルシウムを放出させ、そして軟らかいモノカルシウムパラカゼイネートおよびパラカゼイネートを形成する。このチーズは内部転化を受けて、軟らかく、脆い、ざらざらした等々と特徴づけることができるその最終構造ときめを獲得する。
【0010】
どの種類のチーズも、蛋白質網目組織のプロテオリシスから生じるアミノ酸、硫化物化合物、酸エステルおよび脂肪酸の割合によって特徴づけられる。
欧州連合理事会によって保護され、そしてチーズとして大多数の消費者によって栄養に富む味のよい製品として受け入れられてきたフェタタイプチーズ製品のユニークさが、本発明者がこの研究を行った理由であった。
【0011】
それにもかかわらず、豚脂肪の通常の添加に比較して油の混和は、伝統的な技術を用いて試みるならば、安定性に関して困難を生じさせるか、または食肉パルプエマルジョンだけでなく最終製品にも影響を及ぼす不安定化張力の発生(development of destabilizing tensions)(この発生は油の滲出現象を示す)を起こす。
【0012】
さらに、オリーブ油は、ヒトの栄養におけるその役割が種子油および他の植物油の中でも見分けられるので、またそれはその天然成分の有益な特性について国際的にも認められているので(オメガ脂肪酸類及びそれらの保護的役割、低コレステロールレベル、ポリフェノール類及びそれらの役割を参照されたい)、より特殊なケースである。
【0013】
かくして、次のことが適切であると考えられる:
一方では、動物脂肪に代わる成分としてのオリーブ油は、調理済み/燻製済み食肉調製品に、オリーブ油の性質を製品に可能な最大限で確実に移すために、特に保護できる条件下で加えられるべきである。
【0014】
他方では、オリーブ油の混和法およびフェタの添加により調理済みおよび燻製済み食肉の在来技術による製造は、蛋白質、脂肪、油およびフェタの性質、およびそれら間の結合の性質に基づく科学的なデータを規則的に考察することによって保証されるべきである。
【0015】
また、「食肉エマルジョン(meat emulsions)」の固さ(solidness)は:
・混和されるべき脂肪の起源および組成
・次の
−脂肪酸のプロフィール(種類および飽和度)
−SFI(固体脂肪指数:solid fat index)
−色々な製造段階における適用可能な温度に対するPUFA、MUFA/SUFA間の関係
のような物理的−化学的性質
によって強く影響されることを心に留めなければならない。
【0016】
技術的には豚脂肪とオリーブ油との相違は、固体エマルジョンの製造においては厳しく考究されなければならないことは明白である。
この発明の研究中に、本発明者はまた次の点も考慮した:
・フェタを食肉パルプに加えるとき、その栄養成分、その構造およびその官能特性を保存するように、熱処理中にその初期構造、風味、香りおよび組成(湿分および塩含有量)を保存するために、フェタの詳細。
【0017】
・熱処理が安全な製品を保証するのに十分には有効でない場合に、病原微生物の可能な発生、および食肉中における総中温フローラ(total mesophilic flora)の許容できないレベルまでの増加を避けるために、食肉の微生物増殖とは異なるフェタの微生物増殖。
【0018】
臨界製造温度(0−4℃および71℃まで)、ブラスト凍結温度(blast freezing temperatures)(熱処理後)、および次いでそれが貯蔵される温度(0−4℃)においてそのSFIは重要な役割を果たす。
【0019】
オリーブ油の場合、その特性は、次のとおりのある特定の条件下におけるその混和を必要条件とする:
−機械的方法(関与している成分の混合、均質化)によるオリーブ油の最大可能な混和の創生、
−オリーブ油のエマルジョン中への最大可能な吸収と保存、並びに追加の水の最大可能な吸収度(脂肪と蛋白質との、蛋白質と水との関係)を保証するためのこれら成分間における理想的な量的関係の計算、
−混合および均質化中における、蛋白質を変性させる高温を適用することなしでの、機械的方法による、真空適用と温度の選択された条件下での脂肪小球の周囲への固体の不浸透性蛋白質網目組織の創生−脂肪小球の最大可能な分散と最大の大きさを伴う。
【0020】
フェタの場合、その特性は、次のとおりのある特定の条件下におけるその添加を必要条件とする:
−食肉パルプ中での、フェタ片を食肉パルプ中に保持し、または熱処理中にフェタ充填物が製品から滲出しないようにすることができる固体蛋白質網目組織の創生を達成するために、食肉/水/オリーブ油/フェタ間における理想的な量的関係の計算、
−(2つの製品、即ち食肉とフェタの異なる微生物フローラに因る)望ましくない微生物の発生を防ぐために、製造、熱処理、冷凍(熱処理後)および貯蔵の各段階中での、適切な温度の適用との組み合わせにおける、製品に適用される適切な物理的−化学的条件(pH、水の活性、塩含有量等々)の創生、
−機械的方法の適用−混合および均質化での真空適用および温度の選択された条件下−後に、並びに製品の熱処理および冷凍後に、フェタの初期構造、きめおよび風味を最大の程度まで、および挽肉製品に特有の外観になるまで維持することができる食肉およびフェタの固体蛋白質網目組織の創生。
【0021】
この発明は:
・フェタタイプのチーズを加えることによって、
・組み合わせ補助物質を加えることによって、
・特別の技術的方法を適用することによって、および
・オリーブ油を直接低温において混和することによって、および動物脂肪の最大可能な量を置き換えることによって
食肉に基づく製品を製造することを目的とする。
【0022】
これは、脂肪を含まない食肉を、乳化用添加剤、水、オリーブ油、植物繊維、パン粉、塩の使用およびフェタの添加と組み合わせて混合することによって達成された。
さらに、上記の製品に加えられるフェタの固さは、熱処理(時間、温度)と製品の大きさとの組み合わせ使用によって達成される。緩和な熱処理中の熱伝達速度は、それが加えられるフェタの空間格子を保全するほどの速度である。
【0023】
かくして、この発明は、フェタを有する挽肉製品、および食肉パルプに対するフェタの直接添加またはフェタによる食肉パルプの充填という2つの製造方法に関する。
・細かく裁断した−2℃の温度の食肉を混合機中で2℃の水と混合し、同時に塩を加える。次いで、そのブレンドを5分間混合し、そして植物繊維を加える。混合物の温度が0℃まで上昇したら、オリーブ油、パン粉および他の調味料を加える。混合は960ミリバールの真空を5分間同時適用しながら継続するもので、それは第一に酸化を防ぐために混合物中に取り込まれた酸素を取り除き、第二に混合物の温度が4℃に上昇するまでエマルジョン(オリーブ油、水、食肉)の固さを達成することを目的とする。総混合時間は15分で、吸収電力は20KWである。この混合物を挽肉製品に所望とされる形状を得るために挽肉機へと運ぶ。次に、それを混合機へと運び、そこで1x1cmの立方体に切られたフェタが加えられ、同時に真空混合とCOによる冷凍適用が起こり、その結果混合物の温度は、混合された後に、0℃を超えない。COは製品の微生物フローラの発達に対する抑制因子としても作用する。上記混合物を成形機に送り、そこでその混合物は適切な集成装置により最終製品の所望形状と一致して成形される。食肉パルプ−フェタの温度(−2℃以下)と組み合わせての成形機の運転条件は、フェタ片が粉砕されないようにするための決定的に重要な調節因子を構成する。この製品の熱処理は、それらの成形後に、ボイラー中で96−99℃の室温度および相対湿度95−96%において直接起こる。製品がボイラー中に留まっている時間の長さは製品の幾何学的特徴に依存するが、5〜15分の間で変わる。コンベヤーが、熱処理後に、製品を−28℃の周囲温度にある噴射冷凍トンネルに完全に移し、その結果製品のコアの温度は0℃まで下がる。
【0024】
・細かく裁断した2℃の温度の食肉を混合機中で2℃の水と混合し、同時に塩を加える。次いで、混合が5分間継続し、そして植物繊維を加える。混合物の温度が0℃まで上昇したら、オリーブ油、パン粉および他の調味料を加える。混合は960ミリバールの真空を5分間同時適用しながら継続するもので、それは第一に酸化を防ぐために混合物中に取り込まれた酸素を取り除き、第二に混合物の温度が4℃に上昇するまでエマルジョン(オリーブ油、水、食肉)の固さを達成することを目的とする。総混合時間は10分で、吸収電力は20KWである。これに続いて、混合物の温度が−2℃に下がるまで、冷媒としてのCOの流路を開けてCOを放出することによって混合物の温度降下を行う。COは製品の微生物フローラの発達に対する抑制因子としても作用する。上記混合物およびフェタを押出機タイプの成形機に運び、そこでその混合物は適切な集成装置により最終製品の所望形状と一致して成形される。食肉パルプ−フェタの温度(−2℃以下)と組み合わせての成形機の運転条件は、食肉パルプ網目組織が製品の成形−充填中に壊されないようにし、かつフェタ充填物が熱処理中に滲出しないようにするための決定的に重要な調節因子を構成する。製品の熱処理は、その成形後に、ボイラー中で96−99℃の周囲温度および相対湿度95−96%において直接起こる。製品がボイラー中に留まっている時間の長さは製品の幾何学的特徴に依存するが、5〜15分の間で変わる。コンベヤーが、熱処理後に、製品を−28℃の周囲温度にある噴射冷凍トンネルに完全に移し、その結果製品のコアの温度は0℃まで下がる。
【0025】
この発明の下で考察されたフェタおよびオリーブ油を有する挽肉製品は、脂肪を含まない食肉の使用、低温および真空で製造を行うことに起因して、それら製品の構造に関しては非常に優れた固さ(凝集力)を有する。オリーブ油の物理的−化学的特性と製品中に含まれるフェタの官能特性は、製造手順中に適用される低温のために不変のまま留まる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
挽肉製品全体に分散されるフェタタイプチーズの添加およびオリーブ油の混和を特徴とする挽肉製品の製造方法であって、次の:
(a)−2℃の温度の食肉を2℃のHO、塩、植物繊維およびパン粉と混合する段階、
(b)オリーブ油の添加段階、
(c)次に、製品温度が4℃に上昇するまで真空を5分間同時に施しながら混合を継続する段階、
(d)フェタの添加段階、
(e)食肉パルプ全体を通じてのフェタの全分配および−2℃の最終温度まで真空混合およびCOによる冷凍を行う段階、
(f)上記混合物を成形機に運び、そこでその混合物が所望とされる形状と一致して成形され、続いて緩和な熱処理が直線状ボイラー中で行われる段階、
(g)熱処理後に、製品をトンネル中で製品コア温度が0℃に達するまで深冷凍結する段階
を含む上記の方法。
【請求項2】
最終製品の幾何学的特徴に依存し、そして5〜15分の間で変わる、請求項1に記載の熱処理の総継続時間。
【請求項3】
請求項1の段階(e)および(f)を、
(f)次に、食肉パルプおよびフェタを別々に押出機タイプの成形機に運び、そこで製品が所望とされる形状と一致して成形および充填され、続いて直線状ボイラー中での緩和な熱処理が行われる段階
で置き換え、請求項1の段階(e)および(f)を除く、請求項1または2に記載の、酪農製品「フェタ」の充填物としての添加およびオリーブ油の混和を特徴とする食肉に基づく製品を製造する方法。
【請求項4】
請求項1または2に記載の方法の下で製造された、製品全体に分散されるフェタタイプチーズの添加およびオリーブ油の混和による挽肉製品。
【請求項5】
請求項2または3に記載の方法の下で製造された、フェタタイプチーズの充填物としての添加およびオリーブ油の混和による挽肉製品。

【公表番号】特表2006−513711(P2006−513711A)
【公表日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−569507(P2004−569507)
【出願日】平成15年10月14日(2003.10.14)
【国際出願番号】PCT/GR2003/000045
【国際公開番号】WO2004/082404
【国際公開日】平成16年9月30日(2004.9.30)
【出願人】(503297213)“クレタ・ファーム・アノニモス・ヴィオミチャニキ・アンド・エンポリキ・エタイレイア” (6)
【Fターム(参考)】