説明

フェニル尿素、カルバメート、および有機ホスフェートを加水分解するための酵素および方法

本発明は、フェニル尿素、カルバメート、および/または有機ホスフェートを加水分解することができる酵素、ならびにこれらの酵素をコードするポリヌクレオチドに関する。本発明は、フェニル尿素、カルバメート、および/または有機ホスフェートを加水分解する方法にも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フェニル尿素、カルバメート、および/または有機ホスフェートを加水分解することができる酵素、ならびにこれらの酵素をコードするポリヌクレオチドに関する。本発明は、フェニル尿素、カルバメート、および/または有機ホスフェートを加水分解する方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
フェニル尿素除草剤のジウロン(N’−3,4−ジクロロフェニルN−ジメチル尿素)は、栽培地域および非栽培地域の両方において広く使用される広い標的範囲を有する浸透性光合成阻害剤である。作用機序は、光合成におけるヒル反応の阻害を介するものであり(WesselsおよびVan der Veen、1956)、光化学系IIの反応中心で結合し、電子移動を遮断することによって酵素産生を妨げる(Steinら、1984;およびSinning、1992)。
【0003】
ジウロンは、敷地外での除草効果、ならびにその毒性、およびその主要な代謝産物の3,4−ジクロロアニリン(DCA)の毒性の両方のために、環境的な懸念事項である。ジウロンおよびDCAは、遺伝毒性であると疑われている(Osanoら、2002;およびCanna-Michaelidouら、1996)。通常の散布を行うと(Gooddyら、2002)、地面(SpliidおよびKoppen、1998;ならびにFieldら、2003)、表面(Thurmanら、2000;およびGereckeら、2001a)、および最終的に海水(Gereckeら、2001b)へとジウロンが浸出する場合がある。ジウロンの化学的加水分解および光分解の速度が遅いために(Salvestriniら、2002;およびOkamura、2002)、これは、環境的に長く存在し続ける。ジウロンは、ジルロン(diruron)の使用は、2020年までに段階的に廃止すべきであると推奨した欧州委員会のWater Framework Directive (2000/60/EC)に準じた決定第2455/2001/EC号による審査の下で重要な危険物質として列挙された。引き続いて、欧州委員会の指示的提唱(COM(2006)397)により、ジウロンは、欧州の水における主要な懸念事項の重要物質であり、欧州の水のために、放出、排出、および喪失は低減されるべきであることが明らかにされた。
【0004】
微生物分解は、ジウロンの分解についての主要な経路であると考えられており、土壌中の半減期は1年未満であると推定されている(Okamura、2002;およびWauchopeら、1992)。微生物コンソーシアムおよび真菌分離株に加えて、いくつかの菌株は、ジウロンを含めた様々なフェニル尿素除草剤を異化することが示された(Sorensenら、2003;ならびにGiacomazziおよびCochet、2004)。例えば、アルスロバクター・グロビフォルミス(Arthrobacter globiformis)D47は、速度でリニュロン>ジウロン>モノリニュロン>メトキスロン>イソプロツロンの順序でいくつかのフェニル尿素を分解する(CullingtonおよびWalker、1999;Turnbullら、2001a)。引き続いて、アルスロバクター属種のN2菌株は、ジウロン、クロロトルロン、およびイソプロツロンを分解することが見出された(Widehemら、2002;およびTixierら、2002)。いずれのアルスロバクター属種もジウオルン(diuorn)を完全には無機化せず、ジウロンの加水分解の結果としてDCAを蓄積する。対照的に、シュードモナス(Pseudomonas)属種の菌株Bk8およびバリオボラックス(Variovorax)属種のSRS16の両方は、ジウロンを完全に無機化する(El-Deebら、2000;Sorensenら、2008)。
【0005】
最初に精製されたフェニル尿素加水分解酵素は、バチルス・スファエリクス(Bacillus sphaericus)に由来する75kDaの酵素であることが見出され、これは、リニュロン、モノリニュロン、メトブロムロン、およびクロルブロムロンを含めたいくつかのN−メトキシ−N−メチルフェニル尿素の分解を触媒することが報告された(Engelhardtら、1971;Engelhardtら、1973;およびWallnofer、1969)。しかし、ジウロンを含めたN−ジメチルフェニル尿素基質の代謝回転(turnover)はまったく観察されなかった。これまでの加水分解性ジウロン分解遺伝子の唯一の遺伝学的特徴づけは、Turnbullら(2001b)のものであり、彼らは、A.グロビフォルミスD47に由来するpuhAと呼ばれるフェニル尿素加水分解酵素をクローニングし、配列決定した。配列分析により、PuhAは、アミドヒドロラーゼスーパーファミリーのメンバーに対して低レベルの類似性を有することが示された(Turnbullら、2001b)。
【0006】
アミドヒドロラーゼスーパーファミリーにおける酵素は、(β/α)バレル構造の折り畳み内で単核または二核金属中心を含有し、炭素またはリン中心でアミドまたはエステル官能基の加水分解を触媒する。金属中心は、バレルを構成する8本のβ鎖のC末端に位置し、ループを突出させ、基質特異性に影響を及ぼしている。アミドヒドロラーゼのいくつかのサブタイプが存在し、これらは、直接の金属リガンドとして機能するアミノ酸の変化によって定義される(概説については、SeibertおよびRaushel、2005を参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ジウロンなどのフェニル尿素を加水分解するのに使用することができるさらなる酵素の必要性がある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、フェニル尿素、カルバメート、および/または有機ホスフェートを加水分解することができる菌株を同定した。さらに、本発明者らは、フェニル尿素、カルバメート、および/または有機ホスフェートを加水分解するのに使用することができる酵素を同定した。
【0009】
したがって本発明は、
i)配列番号1に提供されるアミノ酸配列
ii)i)と少なくとも83%同一であるアミノ酸配列および/または
iii)i)またはii)の生物学的活性断片
を含む実質的に精製された、かつ/または組換えポリペプチドであって、フェニル尿素、カルバメート、および/または有機ホスフェートを加水分解することができるポリペプチドを提供する。
【0010】
本発明の一実施形態では、フェニル尿素は、N−ジメチルまたはN−メトキシ−N−メチル置換フェニル尿素である。N−ジメチル置換フェニル尿素は、例えば、ジウロン、クロルトルロン、フルオメツロン(fluomethuron)、メトキスロン、イソプロツロン、またはフェヌロンとすることができる。N−メトキシ−N−メチル置換フェニル尿素は、例えば、リニュロン、クロルブロムロン、メトブロムロン、またはモノリニュロンとすることができる。
【0011】
本発明のさらなる実施形態では、このポリペプチドは、ジウロン、クロルトルロン、フルオメツロン、メトキスロン、および/またはフェヌロンに対して、配列番号3に提供されるアミノ酸配列を含むポリペプチドよりも低いKを有する。
【0012】
本発明の一実施形態では、このポリペプチドは、ジウロンに対して、配列番号3に提供されるアミノ酸配列を含むポリペプチドの少なくとも2分の1、より好ましくは少なくとも4分の1の低いKを有する。
【0013】
本発明の一実施形態では、このポリペプチドは、クロルトルロンに対して、配列番号3に提供されるアミノ酸配列を含むポリペプチドの少なくとも4分の1、より好ましくは少なくとも8分の1、より好ましくは少なくとも10分の1の低いKを有する。
【0014】
本発明の一実施形態では、このポリペプチドは、フルオメツロンに対して、配列番号3に提供されるアミノ酸配列を含むポリペプチドの少なくとも2分の1、より好ましくは少なくとも5分の1の低いKを有する。
【0015】
本発明の一実施形態では、このポリペプチドは、メトキスロンに対して、配列番号3に提供されるアミノ酸配列を含むポリペプチドの少なくとも2分の1、より好ましくは少なくとも3分の1の低いKを有する。
【0016】
本発明の一実施形態では、このポリペプチドは、フェヌロンに対して、配列番号3に提供されるアミノ酸配列を含むポリペプチドの少なくとも8分の1、より好ましくは少なくとも12分の1、より好ましくは少なくとも16分の1の低いKを有する。
【0017】
一実施形態では、このポリペプチドは、フェニル尿素、カルバメート、および/または有機ホスフェートのアミド結合を加水分解する。
【0018】
本発明の好適な実施形態では、このポリペプチドは、配列番号1と少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を含む。
【0019】
本発明のさらに好適な実施形態では、ポリペプチドは、マイコバクテリウム(Mycobacterium)属種から精製することができる。マイコバクテリウム属種は、オーストラリアのNational Measurement Instituteにおいて2008年5月16日にアクセション番号V08/013277として寄託されたマイコバクテリウム・ブリスバネンス(Mycobacterium brisbanense)JK1であることが好ましい。
【0020】
本発明の一実施形態では、このポリペプチドは、少なくとも1つの他のポリペプチドに融合されている。この少なくとも1つの他のポリペプチドは、例えば、本発明のポリペプチドの安定性を増強するポリペプチド、または融合タンパク質の精製の助けとなるポリペプチドとすることができる。
【0021】
さらなる態様では、本発明は、
i)配列番号2に提供されるヌクレオチド配列、
ii)本発明のポリペプチドをコードするヌクレオチド配列、
iii)i)と少なくとも80%同一であるヌクレオチド配列、
iv)ストリンジェントな条件下でi)とハイブリダイズするヌクレオチド配列および/または
v)i)〜iv)のいずれか1つと相補的であるヌクレオチド配列
を含む単離されたおよび/または外因性ポリヌクレオチドを提供する。
【0022】
このポリヌクレオチドは、フェニル尿素、カルバメート、および/または有機ホスフェートを加水分解するポリペプチドをコードすることが好ましい。
【0023】
さらなる態様では、本発明は、本発明のポリヌクレオチドを含むベクターを提供する。
【0024】
このポリヌクレオチドは、プロモーターに作動可能に連結されていることが好ましい。
【0025】
なおさらなる態様では、本発明は、本発明の少なくとも1つのポリヌクレオチドおよび/または本発明の少なくとも1つのベクターを含む宿主細胞を提供する。
【0026】
宿主細胞は、任意のタイプの細胞とすることができる。本発明の一実施形態では、宿主細胞は植物細胞である。本発明の別の実施形態では、宿主細胞は細菌性細胞である。
【0027】
本発明のポリペプチドは、本発明のポリヌクレオチドを発現することにより、細胞によって産生されることが好ましい。
【0028】
別の態様では、本発明は、本発明のポリペプチドを生成するための方法であって、ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの発現を可能にする条件下で、前記ポリペプチドをコードする本発明の宿主細胞、または前記ポリペプチドをコードする本発明のベクターを培養するステップと、発現されたポリペプチドを回収するステップとを含む方法を提供する。
【0029】
本発明の方法を使用して生成されるポリペプチドも提供される。
【0030】
さらなる態様では、本発明は、本発明のポリペプチドに特異的に結合する単離抗体を提供する。
【0031】
さらに別の態様では、本発明は、本発明の少なくとも1つのポリペプチド、本発明の少なくとも1つのポリヌクレオチド、本発明のベクター、本発明の宿主細胞、および/または本発明の抗体を含む組成物を提供する。
【0032】
さらなる態様では、本発明は、フェニル尿素、カルバメート、および/または有機ホスフェートを加水分解するための組成物であって、本発明のポリペプチド、および/または本発明の宿主細胞を含む組成物を提供する。
【0033】
本発明の組成物は、1つまたは複数の許容可能な担体をさらに含むことが好ましい。
【0034】
本発明の組成物は、金属イオンをさらに含むことが好ましい。本発明の好適な実施形態では、金属イオンは二価の金属イオンである。金属イオンは、Mg2+、Co2+、Ca2+、Zn2+、Mn2+、およびこれらの組合せから選択されることがより好ましい。金属イオンは、Mg2+、Zn2+、Co2+、およびこれらの組合せから選択されることがより好ましい。本発明の特に好適な実施形態では、金属イオンはZn2+である。
【0035】
本発明のポリペプチドは、宿主細胞を検出するための選択マーカーとして使用することができる。したがって、宿主細胞を検出および/または選択するための選択マーカーとしての、本発明のポリペプチドまたは前記ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの使用も提供される。
【0036】
別の態様では、本発明は、宿主細胞を検出するための方法であって、
i)細胞(複数可)によるポリヌクレオチドの取込みを可能にする条件下で、細胞または細胞の集団を、本発明のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドと接触させるステップと、
ii)ステップi)からの細胞、またはその子孫細胞を、フェニル尿素、カルバメート、および/または有機ホスフェートに曝すことによって宿主細胞を選択するステップと
を含む方法を提供する。
【0037】
ポリヌクレオチドは、本発明のポリペプチドをコードする第1のオープンリーディングフレーム、および本発明のポリペプチドをコードしない第2のオープンリーディングフレームを含むことが好ましい。
【0038】
一実施形態では、第2のオープンリーディングフレームは、ポリペプチドをコードする。第2の実施形態では、第2のオープンリーディングフレームは、翻訳されていないポリヌクレオチドをコードする。両方の場合において、第2のオープンリーディングフレームは、適当なプロモーターに作動可能に連結されていることが好適である。
【0039】
翻訳されていないポリヌクレオチドは、例えば、触媒核酸、dsRNA分子、またはアンチセンス分子をコードすることができる。
【0040】
適当な細胞の例として、限定されるものではないが、植物細胞、細菌性細胞、真菌細胞、または動物細胞が含まれる。好ましくは、細胞は植物細胞である。
【0041】
さらなる態様では、本発明は、フェニル尿素、カルバメート、および/または有機ホスフェートを加水分解するための方法であって、フェニル尿素、カルバメート、および/または有機ホスフェートを、本発明のポリペプチドと接触させるステップを含む方法を提供する。
【0042】
本発明の一実施形態では、ポリペプチドは、本発明の宿主細胞によって産生される。
【0043】
本明細書に提供されるポリペプチドは、植物中で産生されることによって、フェニル尿素、カルバメート、および/または有機ホスフェートに曝されたとき成長する、宿主植物の能力を増強することができる。
【0044】
したがって、なおさらなる態様では、本発明は、少なくとも1つの本発明のポリペプチドをコードする外因性ポリヌクレオチドを含むトランスジェニック植物を提供する。
【0045】
このポリヌクレオチドは、植物のゲノム中に安定に組み込まれていることが好ましい。
【0046】
さらなる態様では、本発明は、本発明のトランスジェニック植物の一部を提供する。トランスジェニック植物の一部は種子であることが好ましい。
【0047】
別の態様では、本発明は、試料中でフェニル尿素、カルバメート、および/または有機ホスフェートを加水分解するための方法であって、試料を、本発明のトランスジェニック植物と接触させるステップを含む方法を提供する。
【0048】
試料は土壌であることが好ましい。そのような土壌は、田畑内とすることができる。
【0049】
別の態様では、本発明は、少なくとも1つの本発明のポリペプチドをコードする外因性ポリヌクレオチドを含むトランスジェニック非ヒト動物を提供する。
【0050】
さらなる態様では、本発明は、オーストラリアのNational Measurement Instituteにおいて2008年5月16日にアクセション番号V08/013277として寄託されたマイコバクテリウム属の単離菌株を提供する。
【0051】
菌株は生きていても、死んでいても(殺されていても)よい。
【0052】
さらに別の態様では、本発明は、フェニル尿素、カルバメート、および/または有機ホスフェートを加水分解するための組成物であって、本発明の菌株、および場合により、1つまたは複数の許容可能な担体を含む組成物を提供する。
【0053】
さらなる態様では、本発明は、本発明の宿主細胞、本発明のトランスジェニック植物、本発明のトランスジェニック非ヒト動物、または本発明の菌株の抽出物であって、本発明のポリペプチドを含む抽出物を提供する。
【0054】
さらに別の態様では、本発明は、フェニル尿素、カルバメート、および/または有機ホスフェートを加水分解するための組成物であって、本発明の抽出物、および場合により、1つまたは複数の許容可能な担体を含む組成物を提供する。
【0055】
さらなる態様では、本発明は、フェニル尿素、カルバメート、および/または有機ホスフェートを加水分解する方法であって、フェニル尿素、カルバメート、および/または有機ホスフェートを、本発明の菌株、本発明の組成物、および/または本発明の抽出物と接触させるステップを含む方法を提供する。
【0056】
別の態様では、本発明は、フェニル尿素、カルバメート、および/または有機ホスフェートを加水分解するためのポリマースポンジまたはポリマーフォームであって、ポリマー多孔質支持体上に固定化された本発明のポリペプチドを含むフォームまたはスポンジを提供する。
【0057】
多孔質支持体は、ポリウレタンを含むことが好ましい。
【0058】
好適な実施形態では、スポンジまたはフォームは、多孔質支持体上または多孔質支持体中に埋め込まれ、または組み込まれた炭素をさらに含む。
【0059】
さらなる態様では、本発明は、フェニル尿素、カルバメート、および/または有機ホスフェートを加水分解するための方法であって、フェニル尿素、カルバメート、および/または有機ホスフェートを、本発明のスポンジまたはフォームと接触させるステップを含む方法を提供する。
【0060】
本発明のポリペプチドは、突然変異させることができ、得られる突然変異体は、酵素活性の増強などの活性の変化についてスクリーニングすることができる。そのような突然変異は、限定されるものではないが、インビトロ突然変異誘発およびDNAシャッフリングを含めた当技術分野で既知の任意の技法を使用して実施することができる。
【0061】
したがって、さらなる態様では、本発明は、フェニル尿素、カルバメート、および/または有機ホスフェートを加水分解する能力が増強された、または様々な型のフェニル尿素、カルバメート、および/または有機ホスフェートに対して基質特異性が変化したポリペプチドを生成する方法であって、
i)本発明の第1のポリペプチドの1つまたは複数のアミノ酸を変更するステップと、
ii)ステップi)から得られた変更したポリペプチドの、フェニル尿素、カルバメート、および/または有機ホスフェートを加水分解する能力を判定するステップと、
iii)ステップi)で使用したポリペプチドと比較したとき、フェニル尿素、カルバメート、および/または有機ホスフェートを加水分解する能力が増強された、または様々な型のフェニル尿素、カルバメート、および/または有機ホスフェートに対して基質特異性が変化した、変更されたポリペプチドを選択するステップと
を含む方法を提供する。
【0062】
ステップi)は、当技術分野で既知の任意の適当な技法、例えば、限定されるものではないが、コード核酸に対する部位特異的突然変異誘発、化学的突然変異誘発、およびDNAシャッフリングなどを使用して実施することができる。
【0063】
本発明の方法によって生成されるポリペプチドも提供される。
【0064】
さらに別の態様では、本発明は、フェニル尿素、カルバメート、および/または有機ホスフェートを加水分解することができる微生物についてスクリーニングするための方法であって、
i)唯一の窒素源として、フェニル尿素、カルバメート、および/または有機ホスフェートの存在下で候補微生物を培養するステップと、
ii)微生物が、成長および/または分裂することができるかどうかを判定するステップと
を含む方法を提供する。
【0065】
さらなる態様では、本発明は、少なくとも1つの本発明のポリペプチド、少なくとも1つの本発明のポリヌクレオチド、本発明のベクター、本発明の宿主細胞、本発明の抗体、本発明の組成物、少なくとも1つの本発明の植物の一部、少なくとも1つの本発明の菌株、少なくとも1つの本発明の抽出物、および/または少なくとも1つの本発明のポリマースポンジもしくはポリマーフォームを含むキットを提供する。
【0066】
なおさらなる態様では、本発明は、カルバメートおよび/または有機ホスフェートを加水分解するための方法であって、カルバメートおよび/または有機ホスフェートを、
i)配列番号1または配列番号3に提供されるアミノ酸配列、
ii)i)と少なくとも40%同一であるアミノ酸配列および/または
iii)i)もしくはii)の生物学的活性断片
を含む実質的に精製された、かつ/または組換えポリペプチドであって、カルバメートおよび/または有機ホスフェートを加水分解するポリペプチドと接触させるステップを含む方法を提供する。
【0067】
この方法は、カルバメートおよび/または有機ホスフェートを、ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含むベクターおよび/もしくは宿主細胞、ベクターを含む宿主細胞、ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含むトランスジェニック植物もしくはその一部、ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含むトランスジェニック非ヒト動物、National Institute Australiaにおいて2008年5月16日にアクセション番号V08/013277として寄託されたマイコバクテリウム属の単離菌株、宿主細胞、トランスジェニック植物、トランスジェニック非ヒト動物、もしくは菌株の抽出物であって、ポリペプチドを含む抽出物、および/またはポリペプチドを含むポリマースポンジもしくはポリマーフォームと接触させることによって実施することができることが当業者によって理解されるであろう。
【0068】
本明細書全体にわたって、単語「含む(comprise)」、または「含む(comprises)」もしくは「含む(comprising)」などの変形は、述べられた要素、整数もしくはステップ、または要素、整数もしくはステップの群を含むが、任意の他の要素、整数もしくはステップ、または要素、整数もしくはステップの群を排除しないことを示すことが理解されよう。
【0069】
本明細書全体にわたって、他に特に述べられていない、または脈絡により他に要求されない限り、1つのステップ、物質の組成、ステップの群、または物質の組成の群への言及は、これらのステップ、物質の組成、ステップの群、または物質の組成の群の1つおよび複数(すなわち、1つまたは複数)を包含すると解釈されるものとする。
【0070】
本明細書に記載される各実施形態は、他に特に述べられていない限り、それぞれかつあらゆる他の実施形態に、変更すべきところは変更して適用されるべきである。
【0071】
本発明を、以下の非限定的実施例によって、かつ添付の図面を参照して以下に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】マイコバクテリウム・ブリスバネンス菌株JK1によるジウロンの加水分解およびDCAの蓄積を示す図である。3つの複製フラスコ中のジウロンの濃度をプロットし(△、□、○)、黒抜きの記号(▲、■、●)で同じ3つのフラスコ中のDCA濃度を表した。培地のみの対照においてジウロンの減少はまったく観察されなかった(×)。
【図2】puhAおよびpuhBと、推定調節遺伝子tetRとの間のシンテニーを示す図である。puhAおよびpuhB遺伝子は、保存推定tetRファミリー転写制御因子に対して、転写の方向を示す矢印によって表されている。puhAおよびpuhB遺伝子の上流の予測されるプロモーター領域(-10、-35)およびリボソーム結合部位(RBS)が示されている。puhAの上流の14bpのパリンドローム配列(反転した矢印で示されている)は、puhB上流の不完全なパリンドローム配列と類似している。
【図3】加水分解酵素群A(CD01299)の32の最も多様なメンバーの中のPuhAおよびBの近隣結合系統樹を示す図である。ノードにおける数値は、1000の複製からのブートストラップ再サンプリング頻度である。
【図4】相同性モデリングのための2QS8およびPuhBの配列アライメントを示す図である。金属リガンドは太字で示され、第2シェル触媒残基(second shell catalytic residue)は太字と下線で示されている。
【図5】2QS8に基づくPuhBの相同性モデルを示す図である。PuhBモデルは、2GOKの活性部位と一緒に示されている(左)。モデルは、図4に示したアライメントに基づく。
【図6】M.スメグマチス(smegmatis)において発現されるPuhAおよびPuhBの精製を示す図である。精製の各ステップ、すなわち、無細胞抽出物(CFE)、疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)、陰イオン交換クロマトグラフィー(AEX)、およびサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)からのおおよそ等量の標的タンパク質を含有する試料を、10%のSDS-PAGEゲルに装填した。
【図7】PuhA(■)およびB(▲)の活性に対する反応温度の効果を示す図である。アッセイは、指定した温度で1時間実施した。エラーバーは、3通りのアッセイの標準偏差である。
【図8】PuhA(■)およびB(▲)の安定性を示す図である。(A)様々な温度で10分間、および(B)25℃で1時間のアッセイにおいて、溶媒であるアセトニトリル[PuhA(■)およびB(▲)]ならびにメタノール[PuhA(□)およびB(△)]に曝して得られる残効性。エラーバーは、3通りのアッセイの標準偏差である。
【図9−1】フェニル尿素加水分解酵素についての速度論的データを示す図である。
【図9−2】フェニル尿素加水分解酵素についての速度論的データを示す図である。
【図10】PuhA(■)およびPuhB(▲)のpH依存性を示す図である。pH依存性は、一定のイオン強度の緩衝液中で、基質のジウロンを用いて測定し、LCMSによって分析した。pH対log(kcat)(A)、pH対log(kcat/Km)(B)、およびpH対Km(C)のプロットは、これらの酵素の広いpH最適条件を実証する。
【図11】フェニル尿素加水分解酵素の提案した触媒機構を示す図である。活性部位の第2シェル中のH273は、フェニル尿素基質を配位する。活性部位の金属によって活性化された水酸化物による、基質の尿素部分の中心炭素での攻撃は、K206によるアニリン脱離基の安定化に呼応して起こる。
【図12】PuhA(□)およびPuhB(△)のブレンステッドプロットを示す図である。図7中のN−ジメチルフェニル尿素のkcatと脱離基のpKaは、依存性を示す。
【発明を実施するための形態】
【0073】
一般的な技法
他に特に定義されない限り、本明細書で使用されるすべての技術的および科学的用語は、当業者(例えば、細胞培養、分子遺伝学、植物生物学および/または化学、トランスジェニック植物を含む組換え細胞生物学、バイオレメディエーション、免疫学、免疫組織化学、タンパク質化学、および生化学における)によって一般に理解されるのと同じ意味を有すると解釈されるものとする。
【0074】
他に指定されない限り、本発明において利用される組換えタンパク質、細胞培養、および免疫学的技法は、当業者に周知の標準的な手順である。そのような技法は、出典における文献、例えば、J.Perbal、A Practical Guide to Molecular Cloning、John Wiley and Sons(1984);J.Sambrookら、Molecular Cloning:A Laboratory Manual、Cold Spring Harbour Laboratory Press(1989);T.A.Brown(編)、Essential Molecular Biology:A Practical Approach、1巻および2巻、IRL Press(1991);D.M.GloverおよびB.D.Hames(編)、DNA Cloning:A Practical Approach、1〜4巻、IRL Press(1995および1996);F.M.Ausubelら(編)、Current Protocols in Molecular Biology、Greene Pub.Associates and Wiley-Interscience(1988、現在までのすべての最新版を含む);Ed HarlowおよびDavid Lane(編)Antibodies:A Laboratory Manual、Cold Spring Harbour Laboratory、(1988);ならびにJ.E.Coliganら(編)、Current Protocols in Immunology、John Wiley&Sons(現在までのすべての最新版を含む)などにわたって記載および説明されている。
【0075】
本明細書で使用する場合、用語「加水分解酵素」は、フェニル尿素、カルバメート、および/または有機ホスフェートの加水分解を触媒する本発明のポリペプチドを指す。本明細書で使用する場合、用語「加水分解」は、結合の分裂、ならびに水の水素陽イオンおよび水酸化物陰イオンの付加を伴う分解の化学過程を指す。「加水分解する」ことは、本明細書で使用する場合、加水分解にかける、または加水分解を受けることである。
【0076】
フェニル尿素
フェニル尿素除草剤は一般に、一般構造:
【0077】
【化1】

を有し、Rは例えば、CHとすることができ、Rは例えば、CHまたはOCHとすることができ、Rは例えば、H、Cl、またはCFとすることができ、Rは例えば、H、CH、OCH、CH(CH、ClまたはBrとすることができる。
【0078】
現在入手可能なフェニル尿素除草剤の大多数は、N−ジメチル−置換(例えば、ジウロン、クロロトルロン、フルメツロン(flumethuron)、メトキスロン、イソプロツロン、およびフェヌロン)、またはN−メトキシ−N−メチル−(例えば、リニュロン、クロロブロムロン(chlorobromuron)、メトブロムロン、およびモノリニュロン)化合物である。フェニル尿素除草剤は一般に、水中で比較的溶解度が高く、土壌に吸着される傾向が低く、これらを土壌中で移動可能にしている。
【0079】
好適な実施形態では、本発明のポリペプチドおよび方法は、N−ジメチル尿素および/またはN−メトキシ−N−メチル尿素を加水分解するのに使用することができる。本発明の特に好適な実施形態では、本発明のポリペプチドおよび方法は、ジウロン(N’−3,4−ジクロロフェニルN−ジメチル尿素)を加水分解するのに使用される。
【0080】
一般に、本発明のポリペプチドは、フェニル尿素を、尿素カルボニル基の加水分解を介して、アニリンおよびカルバミン酸、または置換フェニル尿素の場合、対応する置換アニリン(例えば、ジウロンは、3,4−ジクロロアニリン(DCA)に加水分解され、一方イソプロツロンは、4−イソプロピルアニリンに加水分解される)およびN−ジメチルもしくはN−メトキシ、N−メチルカルバミン酸(これらは、COおよびジメチル、もしくはメトキシメチルアミンにさらに分解され得る(Engelhardt、1971))に変換する。
【0081】
カルバメート
カルバメートは、アミド結合を有し、カルボニル基は、カルボキシルエステル連結も形成する。カルバメート農薬は、カルバミン酸(HOOCNH2)に由来し、一般構造:
【0082】
【化2】

を有する。化学的な側鎖が、農薬の生物活性を主に支配する。Xで表される原子はOまたはSであり、一方RおよびRは、いくつかの様々な有機側鎖とすることができるが、頻繁にはCH基またはHである。Rは通常、かさ高い芳香族基またはオキシム部分である。
【0083】
アミン基またはカルボキシルエステル基に由来する様々な成分により、これらの化合物の標的生物が決定される。アミンおよびカルボキシルエステルの両方に由来する芳香族基を有するカルバメート(例えば、フェンメディファム)は、除草性である。カルボキシルエステル基に由来する芳香族基、およびアミンに由来するCH基などの小さい基を有するカルバメート(カルバリルなど)は、殺虫性である。
【0084】
アミンに由来するベンゾイミダゾール基、およびカルボキシルエステル連結に由来する小さいCH基を有するカルバメートは、殺真菌性である。そのようなカルバメートは、ベンゾイミダゾールカルバメート殺真菌薬と本明細書で呼ばれ、限定されるものではないが、ベノミル、カルベンダジム、シペンダゾール、デバカルブ、およびメカルビンジドを含む。
【0085】
本発明の特に好適な実施形態では、本発明の方法によって加水分解することができるカルバメートには、リニュロンエステルおよびDMNPCが含まれる。
【0086】
有機ホスフェート
有機ホスフェートは、合成有機リンエステル、およびホスホルアミデートなどの関連化合物である。これらは一般式(RR’X)P=Oまたは(RR’X)P=Sを有し、RおよびR’は短鎖基である。殺虫性有機ホスフェートについて、Xは良好な脱離基であり、これは、アセチルコリンエステラーゼの非可逆性阻害にとって必要条件である。
【0087】
本発明のポリペプチドおよび方法は、有機ホスフェートのホスホトリエステル結合を加水分解することができる。
【0088】
本発明のポリペプチドおよび方法によって加水分解することができる有機ホスフェートには、例えば、パラオキソンエチルが含まれる。
【0089】
農薬としてのその使用が周知であるが、有機ホスフェートは、哺乳動物に対する神経ガスとしても使用されている。したがって、本発明のポリペプチドおよび方法は、農薬でない有機ホスフェートの加水分解にも有用となることが想定される。
【0090】
ポリペプチド
「実質的に精製されたポリペプチド」または「精製ポリペプチド」とは、1つまたは複数の脂質、核酸、他のポリペプチド、またはポリペプチドがその天然状態で伴っている他の混入分子から分離されたポリペプチドを意味する。実質的に精製されたポリペプチドは、ポリペプチドが天然に伴っている他の成分を、少なくとも60%、より好ましくは少なくとも75%、より好ましくは少なくとも90%含まないことが好適である。
【0091】
ポリペプチドとの関連において用語「組換え体」は、ポリペプチドの天然状態と比較して変化した量、または変化した速度で細胞によって、または無細胞発現系において産生されるときのポリペプチドを指す。本発明の好適な実施形態では、細胞は、ポリペプチドを天然に産生しない細胞である。代替の実施形態では、細胞は、産生されるポリペプチドの量の変化、好ましくは増加を引き起こす外因性ポリヌクレオチドを含む細胞である。本発明の組換えポリペプチドには、これが産生される細胞または無細胞発現系の他の成分から分離されていないポリペプチド、および少なくともいくつかの他の成分から引き続いて精製される、そのような細胞または無細胞系で産生されるポリペプチドが含まれる。
【0092】
用語「ポリペプチド」および「タンパク質」は一般に、互換的に使用され、非アミノ酸基の付加によって修飾されていても、されていなくてもよい1本のポリペプチド鎖を指す。そのようなポリペプチド鎖は、他のポリペプチドもしくはタンパク質、または補助因子などの他の分子と付随することができることが理解される。用語「タンパク質」および「ポリペプチド」は、本明細書で使用する場合、本明細書に記載されるような本発明のポリペプチドの変異体、突然変異体、修飾体、類似体、生物学的活性断片および/または誘導体も含む。
【0093】
ポリペプチドの%同一性は、ギャップ生成ペナルティー=5、およびギャップ伸長ペナルティー=0.3を用いてGAP(NeedlemanおよびWunsch、1970)分析(GCGプログラム)によって決定される。クエリー配列は、長さが少なくとも25アミノ酸であり、ギャップ分析は、少なくとも25アミノ酸の領域にわたって2つの配列を整列させる。より好ましくは、クエリー配列は、長さが少なくとも50アミノ酸であり、ギャップ分析は、少なくとも50アミノ酸の領域にわたって2つの配列を整列させる。より好ましくは、クエリー配列は、長さが少なくとも100アミノ酸であり、ギャップ分析は、少なくとも100アミノ酸の領域にわたって2つの配列を整列させる。さらにより好ましくは、クエリー配列は、長さが少なくとも250アミノ酸であり、ギャップ分析は、少なくとも250アミノ酸の領域にわたって2つの配列を整列させる。さらにより好ましくは、ギャップ分析は、2つの配列の全長にわたって2つの配列を整列させる。
【0094】
本明細書で使用する場合、「生物学的活性断片」は、全長ポリペプチドの規定された活性を維持する、すなわち、フェニル尿素、カルバメート、および/または有機ホスフェートを加水分解することができる本発明のポリペプチドの部分である。生物学的活性断片は、これらが規定された活性を維持する限り任意のサイズとすることができる。好ましくは、生物学的活性断片は、長さが少なくとも100、より好ましくは少なくとも200、さらにより好ましくは少なくとも350のアミノ酸である。
【0095】
定義されたポリペプチドに関して、上記に提供したものより高い%同一性の数値は、好適な実施形態を包含することが理解されよう。したがって適用可能な場合、最低%同一性の数値を踏まえると、ポリペプチドは、該当する指定された配列番号と少なくとも40%、より好ましくは少なくとも45%、より好ましくは少なくとも50%、より好ましくは少なくとも55%、より好ましくは少なくとも60%、より好ましくは少なくとも65%、より好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも75%、より好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも91%、より好ましくは少なくとも92%、より好ましくは少なくとも93%、より好ましくは少なくとも94%、より好ましくは少なくとも95%、より好ましくは少なくとも96%、より好ましくは少なくとも97%、より好ましくは少なくとも98%、より好ましくは少なくとも99%、より好ましくは少なくとも99.1%、より好ましくは少なくとも99.2%、より好ましくは少なくとも99.3%、より好ましくは少なくとも99.4%、より好ましくは少なくとも99.5%、より好ましくは少なくとも99.6%、より好ましくは少なくとも99.7%、より好ましくは少なくとも99.8%、さらにより好ましくは少なくとも99.9%同一であるアミノ酸配列を含むことが好適である。
【0096】
本発明のポリペプチドのアミノ酸配列突然変異体は、本発明の核酸中に適当なヌクレオチドの変化を導入することによって、または所望のポリペプチドのインビトロ合成によって調製することができる。そのような突然変異体は、例えば、アミノ酸配列内の1つまたは複数の残基の欠失、挿入、または置換を含む。最終的なコンストラクトに到達するために、1つまたは複数の欠失、挿入および/または置換の組合せを行うことができ、ただし最終的なポリペプチド生成物は、所望の特徴を有するという条件がある。
【0097】
突然変異体(変化した)ポリペプチドは、当技術分野で既知の任意の技法を使用して調製することができる。例えば、本発明のポリヌクレオチドは、インビトロ突然変異誘発に付すことができる。そのようなインビトロ突然変異誘発技法は、適当なベクターにポリヌクレオチドをサブクローニングするステップ、大腸菌(E. coli)XL−1赤色(Stratagene)などの「ミューテーター」菌株にベクターを形質転換するステップ、および適当な数を生成するために形質転換細菌を増殖させるステップを含む。別の例では、本発明のポリヌクレオチドは、Harayama(1998)によって広く記載されたDNAシャッフリング技法に付される。これらのDNAシャッフリング技法は、細菌由来の他の加水分解酵素などの本発明のものに関連する遺伝子を含むことができ、例えば、PuhAおよびPuhBをコードする遺伝子は、シャッフリングに付すことができるであろう。突然変異/変化したDNAに由来する生成物は、これらが、活性の増強および/または基質特異性の変化などの所望の表現型を付与することができるかどうかを判定するために、本明細書に記載される技法を使用して容易にスクリーニングすることができる。
【0098】
アミノ酸配列突然変異体の設計において、突然変異部位の位置および突然変異の性質は、改変される特性(複数可)に依存する。突然変異の部位は、例えば、(1)実現される結果に応じて、最初に保存的なアミノ酸選択物で、次いでより急進的な選択物で置換し、(2)標的残基を欠失させ、または(3)位置づけられた部位に隣接して他の残基を挿入することによって個々に、または連続的に改変することができる。
【0099】
アミノ酸配列の欠失は一般に、約1〜15個の残基、より好ましくは約1〜10個の残基、および典型的には約1〜5個の連続した残基の範囲である。
【0100】
置換突然変異体は、取り出されるポリペプチド中の少なくとも1つのアミノ酸残基、およびその場所に挿入される異なる残基を有する。置換突然変異誘発にとって最も対象となる部位は、機能に対して重要であると同定された部位を含む。対象とする他の部位は、様々な菌株または種から得られる特定の残基が同一であるものである。これらの位置は、生物活性とって重要となり得る。これらの部位、特に、3つの他のまったく同様に保存された部位の配列内に入るものは、相対的に保存された様式で置換されることが好ましい。そのような同類置換を表1に示す。
【0101】
【表1】

【0102】
好適な実施形態では、本発明のポリペプチドは、単核金属中心を有する(β/α)構造の折り畳みを含む。金属中心は、ポリペプチドの触媒部位(本明細書中「単核活性部位」という)内にあることが好ましい。ポリペプチドの単核活性部位は、β鎖1からのN×Hモチーフ、β鎖5からのH,およびβ鎖8からのDによって配位されたZn金属イオンを含むことが好ましい。単核活性部位は、活性部位の第2シェル内に位置したβ鎖6上のHも含むことが好ましい。単核活性部位は、金属イオンによって配位されていないK残基も含むことができる。一実施形態では、ポリペプチドは、配列番号1と比較したとき、アミノ酸番号253に対応する位置にH、アミノ酸番号334に対応する位置にD、および/またはアミノ酸番号273に対応する位置にHを含む。別の例では、ポリペプチドは、配列番号1と比較したとき、アミノ酸番号206に対応する位置にKをさらに含む。さらに、配列番号1として提供されるポリペプチドの変異体/突然変異体を設計する際、関連分子からの配列情報を使用することができる。例えば、一実施形態では、ポリペプチドは、PuhBとPuhAの間に保存されたアミノ酸の少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、またはすべてを含む。
【0103】
さらに、必要に応じて、非天然アミノ酸または化学的アミノ酸類似体を、本発明のポリペプチド中への置換または付加として導入することができる。そのようなアミノ酸として、一般に、限定されるものではないが、一般的なアミノ酸のD異性体、2,4−ジアミノ酪酸、α−アミノイソ酪酸、4−アミノ酪酸、2−アミノ酪酸、6−アミノヘキサン酸、2−アミノイソ酪酸、3−アミノプロピオン酸、オルニチン、ノルロイシン、ノルバリン、ヒドロキシプロリン、サルコシン、シトルリン、ホモシトルリン、システイン酸、t−ブチルグリシン、t−ブチルアラニン、フェニルグリシン、シクロヘキシルアラニン、β−アラニン、フルオロ−アミノ酸、デザイナーアミノ酸、例えば、β−メチルアミノ酸、Cα−メチルアミノ酸、Nα−メチルアミノ酸など、およびアミノ酸類似体が挙げられる。
【0104】
やはり本発明の範囲内に含まれるのは、例えば、ビオチン化、ベンジル化、グリコシル化、アセチル化、リン酸化、アミド化、既知の保護基/ブロッキング基による誘導体化、タンパク質分解切断、抗体分子または他の細胞リガンドへの連結などによって、合成中、または合成後に差次的に改変されるポリペプチドである。これらの改変は、本発明のポリペプチドの安定性および/または生物活性を増大させるのに機能を果たすことができる。
【0105】
本発明のポリペプチドは、天然ポリペプチドの生成および回収、組換えポリペプチドの生成および回収、ならびにポリペプチドの化学合成を含めた様々な方法で生成することができる。一実施形態では、本発明の単離ポリペプチドは、ポリペプチドを生成するのに有効な条件下で、ポリペプチドを発現することができる細胞を培養し、ポリペプチドを回収することによって生成される。培養するのに好適な細胞は、本発明の宿主細胞である。有効な培養条件は、限定されるものではないが、ポリペプチド生成を可能にする有効培地、バイオリアクター、温度、pH、および酸素条件を含む。有効培地は、本発明のポリペプチドを生成するために細胞が培養される任意の培地を指す。そのような培地は一般に、同化できる炭素、窒素、およびリン酸源を有する水媒質、ならびに適切な塩、ミネラル、金属、およびビタミンなどの他の栄養分を含む。本発明の細胞は、従来の発酵バイオリアクター、振盪フラスコ、試験管、マイクロタイター皿、およびペトリ皿において培養することができる。培養は、宿主細胞にとって適切な温度、pH、および酸素含量で実施することができる。そのような培養条件は、当業者の専門知識内である。
【0106】
ポリヌクレオチドおよびオリゴヌクレオチド
一本鎖または二本鎖の、センスもしくはアンチセンス配向または両方の組合せ、またはその他でのDNA、RNA、またはこれらの組合せを含めた「単離ポリヌクレオチド」とは、これが、その天然状態で付随または連結されているポリヌクレオチド配列から少なくとも部分的に分離されたポリヌクレオチドを意味する。好ましくは、単離ポリヌクレオチドは、これが天然に付随している他の成分を、少なくとも60%、好ましくは少なくとも75%、最も好ましくは少なくとも90%含まない。さらに、用語「ポリヌクレオチド」は、用語「核酸」と本明細書で互換的に使用される。
【0107】
ポリヌクレオチドとの関連で、用語「外因性の」は、ポリヌクレオチドの天然状態と比較して変化した量で、細胞内または無細胞発現系内に存在するときのポリヌクレオチドを指す。細胞は、ポリヌクレオチドを天然に含まない細胞であることが好ましい。代替の実施形態では、細胞は、産生されるポリペプチドの変化した、好ましくは増加した量をもたらしている外因性ポリヌクレオチドを含む細胞である。本発明の外因性ポリヌクレオチドは、これが存在する細胞または無細胞発現系の他の成分から分離されていないポリヌクレオチド、および少なくともいくつかの他の成分から引き続いて精製される、そのような細胞または無細胞系で産生されるポリヌクレオチドが含まれる。外因性ポリヌクレオチドは、自然において存在するヌクレオチドの連続したストレッチとすることができ、または単一のポリヌクレオチドを形成するように結合された異なる源(天然に存在する、および/または合成)からのヌクレオチドの2つ以上の連続したストレッチを含むことができる。一般に、そのようなキメラポリヌクレオチドは、対象とする細胞内でオープンリーディングフレームの転写を促進することに適したプロモーターに作動可能に連結した、本発明のポリペプチドをコードする少なくとも1つのオープンリーディングフレームを含む。
【0108】
ポリヌクレオチドの%同一性は、ギャップ生成ペナルティー=5、およびギャップ伸長ペナルティー=0.3を用いてGAP(NeedlemanおよびWunsch、1970)分析(GCGプログラム)によって決定される。他に述べられていない限り、クエリー配列は、長さが少なくとも45ヌクレオチドであり、ギャップ分析は、少なくとも45ヌクレオチドの領域にわたって2つの配列を整列させる。好ましくは、クエリー配列は、長さが少なくとも150ヌクレオチドであり、ギャップ分析は、少なくとも150ヌクレオチドの領域にわたって2つの配列を整列させる。より好ましくは、クエリー配列は、長さが少なくとも300ヌクレオチドであり、ギャップ分析は、少なくとも300ヌクレオチドの領域にわたって2つの配列を整列させる。さらにより好ましくは、ギャップ分析は、2つの配列の全長にわたって2つの配列を整列させる。
【0109】
定義されたポリヌクレオチドに関して、上記に提供したものより高い%同一性の数値は、好適な実施形態を包含することが理解されよう。したがって適用可能な場合、最低%同一性の数値を踏まえると、本発明のポリヌクレオチドは、該当する指定された配列番号と少なくとも40%、より好ましくは少なくとも45%、より好ましくは少なくとも50%、より好ましくは少なくとも55%、より好ましくは少なくとも60%、より好ましくは少なくとも65%、より好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも75%、より好ましくは80%で、より好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも91%、より好ましくは少なくとも92%、より好ましくは少なくとも93%、より好ましくは少なくとも94%、より好ましくは少なくとも95%、より好ましくは少なくとも96%、より好ましくは少なくとも97%、より好ましくは少なくとも98%、より好ましくは少なくとも99%、より好ましくは少なくとも99.1%、より好ましくは少なくとも99.2%、より好ましくは少なくとも99.3%、より好ましくは少なくとも99.4%、より好ましくは少なくとも99.5%、より好ましくは少なくとも99.6%、より好ましくは少なくとも99.7%、より好ましくは少なくとも99.8%、さらにより好ましくは少なくとも99.9%同一である配列を含むことが好適である。
【0110】
本発明のポリヌクレオチドは、配列番号1をコードする核酸と、ストリンジェントな条件下でハイブリダイズするものが含まれる。
【0111】
本明細書で使用する場合、用語「ハイブリダイズする」は、水素結合を介して少なくとも部分的に二本鎖の核酸を形成することができる2つの一本鎖の核酸分子の能力を指す。
【0112】
本明細書で使用する場合、語句「ストリンジェントな条件」は、ポリヌクレオチド、プローブ、プライマーおよび/またはオリゴヌクレオチドが、その標的配列とハイブリダイズする条件を指す。ストリンジェントな条件は、配列に依存し、様々な状況において異なる。より長い配列は特に、より短い配列より高い温度でハイブリダイズする。一般に、ストリンジェントな条件は、規定されたイオン強度およびpHで、特定の配列についての熱融点(Tm)より約5℃低いように選択される。Tmは、標的配列と相補性であるプローブの50%が、平衡状態で標的配列とハイブリダイズする温度(規定されたイオン強度、pH、および核酸濃度)である。標的配列は一般に、Tmで過剰に存在するので、プローブの50%が平衡状態で占められる。一般に、ストリンジェントな条件は、塩濃度が、pH7.0〜8.3で約1.0M未満のナトリウムイオン、一般に約0.01〜1.0Mのナトリウムイオン(または他の塩)であり、温度が、短いプローブ、プライマー、またはオリゴヌクレオチド(例えば、10〜50ヌクレオチド)について少なくとも約30℃、より長いプローブ、プライマー、およびオリゴヌクレオチドについて少なくとも約60℃であるものである。ストリンジェントな条件は、ホルムアミドなどの不安定化剤を付加して実現することもできる。
【0113】
ストリンジェントな条件は、当業者に知られており、Ausubelら(上記を参照)、Current Protocols In Molecular Biology、John Wiley&Sons、N.Y.(1989)、6.3.1〜6.3.6に見出すことができる。条件は、互いに少なくとも約65%、70%、75%、85%、90%、95%、98%、または99%相同である配列が、一般に互いにハイブリダイズしたままであるようであることが好ましい。ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件の非限定例は、65℃で、6×SSC、50mMのTris-HCl(pH7.5)、1mMのEDTA、0.02%のPVP、0.02%のフィコール、0.02%のBSA、および500mg/mlの変性サケ精子DNAを含む高塩緩衝液中でのハイブリダイゼーション、その後、50℃で0.2×SSC、0.01%のBSA中で1回または複数回の洗浄である。
【0114】
本発明のポリヌクレオチドは、天然に存在するポリヌクレオチドと比較したとき、1つまたは複数の突然変異を有することができ、この突然変異は、ヌクレオチド残基の欠失、挿入、および/または置換である。突然変異体は、天然に存在しても(すなわち、天然源から単離された)、合成であってもよい(例えば、核酸への部位特異的な突然変異誘発を実施することによる)。
【0115】
本発明は、例えば、核酸分子を同定するためのプローブ、または核酸分子を生成するためのプライマーとして使用することができるオリゴヌクレオチドを含む。プローブとして使用される本発明のオリゴヌクレオチドは一般に、検出可能標識、例えば、放射性同位体、酵素、ビオチン、蛍光性分子、または化学発光分子などとコンジュゲートされる。プローブおよび/またはプライマーは、他の種または菌株から本発明のポリヌクレオチドの相同体をクローニングするのに使用することができる。さらに、当技術分野で既知のハイブリダイゼーション技法も、そのような相同体についてのゲノムライブラリーまたはcDNAライブラリーをスクリーニングするのに使用することができる。
【0116】
本発明のオリゴヌクレオチドは、RNA、DNA、またはいずれかの誘導体とすることができる。用語ポリヌクレオチドおよびオリゴヌクレオチドは、重複する意味を有するが、オリゴヌクレオチドは一般に、相対的に短い一本鎖の分子である。そのようなオリゴヌクレオチドの最低サイズは、標的核酸分子上でオリゴヌクレオチドと相補性配列との間で安定なハイブリッドを形成するのに必要とされるサイズである。好ましくは、オリゴヌクレオチドは、長さが、少なくとも15ヌクレオチド、より好ましくは少なくとも18ヌクレオチド、より好ましくは少なくとも19ヌクレオチド、より好ましくは少なくとも20ヌクレオチド、さらにより好ましくは少なくとも25ヌクレオチドである。
【0117】
通常、ポリヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチドの単量体は、ホスホジエステル結合またはその類似体によって連結される。ホスホジエステル結合の類似体として、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、ホスホロセレノエート、ホスホロジセレノエート、ホスホロアニロチオエート、ホスホラニリデート、ホスホラミデートが挙げられる。
【0118】
組換えベクター
本発明の一実施形態には、組換えベクターが含まれ、これは、宿主細胞内にポリヌクレオチドを送達することができる任意のベクター中に挿入された、少なくとも1つの本発明の単離ポリヌクレオチドを含む。そのようなベクターは、異種のポリヌクレオチド配列、すなわち、本発明のポリヌクレオチドに隣接して天然に見出されず、好ましくは本発明のポリヌクレオチドが由来した種以外の種に由来するポリヌクレオチド配列を含有する。ベクターは、RNAであってもDNAであってもよく、原核生物であっても真核生物であってもよく、一般にトランスポゾン(US5,792,294に記載されているような)、ウイルス、またはプラスミドである。
【0119】
ある型の組換えベクターは、発現ベクターに作動可能に連結した本発明のポリヌクレオチドを含む。語句「作動可能に連結された」は、ポリヌクレオチドが、宿主細胞内に形質転換されたとき発現され得るような様式での、発現ベクター内へのポリヌクレオチドの挿入を指す。本明細書で使用する場合、「発現ベクター」は、宿主細胞を形質転換し、指定されたポリヌクレオチドの発現を生じさせることができるDNAまたはRNAベクターである。発現ベクターは、宿主細胞内で複製することもできることが好ましい。発現ベクターは、原核生物であっても真核生物であってもよく、一般にウイルスまたはプラスミドである。本発明の発現ベクターには、細菌、真菌、内部寄生虫、節足動物、動物、および植物の細胞を含めた本発明の宿主細胞内で機能する(すなわち、直接遺伝子発現)任意のベクターが含まれる。本発明のベクターは、無細胞発現系においてポリペプチドを産生させるために使用することもでき、そのような系は当技術分野で周知である。
【0120】
「作動可能に連結された」は、本明細書で使用する場合、2つ以上の核酸(例えば、DNA)セグメントの間の機能的関係を指す。一般にこれは、転写される配列に対する転写調節エレメントの機能的関係を指す。例えば、プロモーターは、これが、適切な宿主細胞および/または無細胞発現系において、本明細書に定義されるポリヌクレオチドなどのコード配列の転写を刺激または調節する場合、このコード配列に作動可能に連結されている。一般に、転写される配列に作動可能に連結されているプロモーターの転写調節エレメントは、転写される配列に物理的に連続している、すなわち、これらはシス作用である。しかし、エンハンサーなどのいくつかの転写調節エレメントは、これらが転写を増強するコード配列に物理的に連続している、またはごく接近して位置している必要はない。
【0121】
特に、本発明の組換えベクターは、宿主細胞と適合性であり、本発明のポリヌクレオチドの発現を制御する制御配列、例えば、転写制御配列、翻訳制御配列、複製起点、および他の制御配列などを含有する。特に、本発明の組換えベクターは、転写制御配列を含む。転写制御配列は、転写の開始、伸長、および終止を制御する配列である。特に重要な転写制御配列は、転写開始を制御するもの、例えば、プロモーター、エンハンサー、オペレーター、および抑制因子配列などである。適当な転写制御配列には、本発明の組換え細胞のうちの少なくとも1つにおいて機能することができる任意の転写制御配列が含まれる。様々なそのような転写制御配列は、当業者に既知である。好適な転写制御配列として、細菌、酵母、節足動物、線虫、植物、または哺乳動物細胞において機能するもの、例えば、限定されるものではないが、tac、lac、trp、trc、oxy−pro、omp/lpp、rrnB、バクテリオファージλ、バクテリオファージT7、T71ac、バクテリオファージT3、バクテリオファージSP6、バクテリオファージSP01、メタロチオネイン、α−接合因子、ピキア(Pichia)アルコールオキシダーゼ、アルファウイルスサブゲノムプロモーター(シンドビスウイルスサブゲノムプロモーターなど)、抗生物質耐性遺伝子、バキュロウイルス、ヘリオチス・ゼア(Heliothis zea)昆虫ウイルス、ワクシニアウイルス、ヘルペスウイルス、アライグマポックスウイルス、他のポックスウイルス、アデノウイルス、サイトメガロウイルス(中間初期プロモーターなど)、シミアンウイルス40、レトロウイルス、アクチン、レトロウイルスロングターミナルリピート、ラウス肉腫ウイルス、熱ショック、リン酸および硝酸転写制御配列、ならびに原核生物細胞または真核細胞において遺伝子発現を制御することができる他の配列などが挙げられる。
【0122】
本発明のポリペプチドのコード配列は、既知の技法を使用して、特定の宿主細胞内で発現を最大にするように最適化することができる。
【0123】
宿主および組換え細胞
本明細書で使用する場合、用語「宿主細胞」は、本発明の外因性ポリヌクレオチドで形質転換され得る細胞を指す。形質転換されると、宿主細胞は、「組換え細胞」と呼ぶことができる。用語「組換え細胞」は、ポリヌクレオチドを含むその直接または間接子孫細胞を含む。宿主細胞内へのポリヌクレオチドの形質転換は、細胞内にポリヌクレオチドを挿入することができる任意の方法によって実現することができる。形質転換技法には、限定されるものではないが、トランスフェクション、電気穿孔、微量注入、リポフェクション、吸着、およびプロトプラスト融合が含まれる。組換え細胞は、単細胞のままであることができ、または成長して組織、臓器、もしくは多細胞生物になることができる。形質転換された本発明のポリヌクレオチドは、染色体外に残ることができ、または一体化して、発現されるその能力が保持される様式で、形質転換された(すなわち、組換え)細胞の染色体内の1つもしくは複数の部位になることができる。
【0124】
形質転換するのに適した宿主細胞には、本発明のポリヌクレオチドで形質転換され得る任意の細胞が含まれる。本発明の宿主細胞は、本発明のポリペプチドを内因的に(すなわち、天然に)産生することができ、または本発明の少なくとも1つのポリヌクレオチドで形質転換された後そのようなポリペプチドを産生することができる。本発明の宿主細胞は、本発明の少なくとも1つのタンパク質を産生することができる任意の細胞とすることができ、細菌、真菌(酵母を含む)、寄生虫、線虫、節足動物、動物、および植物の細胞を含む。宿主細胞の例として、サルモネラ(Salmonella)、エシェリキア(Escherichia)、バチルス(Bacillus)、リステリア(Listeria)、サッカロミセス(Saccharomyces)、スポドプテラ(Spodoptera)、マイコバクテリア(Mycobacteria)、トリコプルシア(Trichoplusia)、BHK(仔ハムスター腎臓)細胞、MDCK細胞、CRFK細胞、CV−1細胞、COS(例えば、COS−7)細胞、およびVero細胞が挙げられる。宿主細胞のさらなる例は、大腸菌K−12誘導体を含めた大腸菌;チフス菌(Salmonella typhi);弱毒菌株を含めたネズミチフス菌(Salmonella typhimurium);スポドプテラ・フルギペルダ(Spodoptera frugiperda);イラクサギンウワバ(Trichoplusia ni);および非腫瘍形成性マウス筋原細胞G8細胞(例えば、ATCC CRL 1246)である。特に好適な宿主細胞は、植物細胞である。
【0125】
組換えDNA技術は、例えば、宿主細胞内でのポリヌクレオチド分子のコピー数、これらのポリヌクレオチド分子が転写される効率、得られる転写物が翻訳される効率、および翻訳後修飾の効率を操作することによって、外因性ポリヌクレオチドの発現を改善するのに使用することができる。本発明のポリヌクレオチドの発現を増大させるのに有用な組換え技法として、限定されるものではないが、高コピー数プラスミドへのポリヌクレオチドの作動可能な連結、1つまたは複数の宿主細胞染色体中へのポリヌクレオチドの組込み、プラスミドへのベクター安定性配列の付加、転写制御シグナル(例えば、プロモーター、オペレーター、エンハンサー)の置換または修飾、翻訳制御シグナル(例えば、リボソーム結合部位、シャイン−ダルガノ配列)の置換または修飾、宿主細胞のコドン使用に対応するための本発明のポリヌクレオチドの修飾、および転写物を不安定化する配列の削除が挙げられる。
【0126】
トランスジェニック植物
用語「植物」は、本明細書で使用する場合、植物全体、例えば、田畑で成長する植物など、植物中に存在し、植物から得られ、植物に由来し、または植物に関連する任意の物質、例えば、植物構造(例えば、葉、幹)、根、花の器官/構造、種子(胚、胚乳、および種皮を含む)、植物組織(例えば、脈管、組織、基本組織など)、細胞(例えば、花粉)、およびこれらの子孫などを指す。
【0127】
本発明を実行する際に使用するのに企図されている植物には、単子葉植物および双子葉植物の両方が含まれる。標的植物には、限定されるものではないが、以下のものが含まれる:シリアル(コムギ、オオムギ、ライムギ、カラスムギ、米、モロコシ、ライコムギ、および関連作物);ビート(サトウダイコンおよび飼料用ビート);ナシ状果(リンゴ、セイヨウナシ)、核果(セイヨウスモモ、モモ、アーモンド、サクランボ)、熱帯果実(バナナ、パイナップル、パパイヤ)、および柔らかい果物(サクランボ、イチゴ、ラズベリー、およびブラックベリー);マメ科植物(マメ、レンズマメ、エンドウマメ、ダイズ、ルーサン、ルピナス);油脂植物(セイヨウアブラナ、カラシナ、ケシ、オリーブ、ヒマワリ、ココナツ、ヒマシ油植物、カカオ豆、アメリカホドイモ);キュウリ植物(マロー、キュウリ、メロン);繊維植物(綿、綿落葉剤(cotton defoliant)、アマ、麻、ジュート);柑橘果実(オレンジ、レモン、グレープフルーツ、マンダリン);野菜(ホウレンソウ、レタス、アスパラガス、キャベツ、ニンジン、タマネギ、トマト、ジャガイモ、パプリカ);クスノキ科(lauraceae)(アボカド、シナモン、樟脳);またはトウモロコシ、タバコ、木の実、コーヒー、サトウキビ、茶、つる植物、ホップ、多年生牧草を含めた芝生、ならびにファラルシス(phalarsis)栽培品種のシロラン(sirolan)およびシロネなどの植物、ならびに天然のゴム植物、ならびに装飾物(ラッパズイセン、グラジオリ(gladioli)、およびチューリップなどの花、ズボイシア(Duboisia)などの低木、広葉樹、および針葉樹などの常緑樹)。好ましくは、植物は被子植物である。
【0128】
本発明に照らして定義されるトランスジェニック植物には、所望の植物または植物器官において本発明の少なくとも1つのポリペプチドを産生させるように、組換え技法を使用して遺伝的に改変された植物(ならびに前記植物の部分および細胞)およびその子孫が含まれる。トランスジェニック植物は、A.Slaterら、Plant Biotechnology-The Genetic Manipulation of Plants、Oxford University Press(2003);ならびにP.ChristouおよびH.Klee、Handbook of Plant Biotechnology、John Wiley and Sons(2004)において一般に記載されているものなどの、当技術分野で既知の技法を使用して作製することができる。
【0129】
「トランスジェニック植物」は、同じ種、種類、または栽培品種の野生型植物において見出されない遺伝子コンストラクト(「導入遺伝子」)を含有する。本明細書で呼ばれる「導入遺伝子」は、バイオテクノロジーの技術分野における通常の意味を有し、組換えDNAまたはRNA技術によって生成または変更され、植物細胞内に導入された外因性ポリヌクレオチド配列を含む。導入遺伝子は、植物細胞に由来するポリヌセロチド(polynucelotide)配列を含むことができる。一般に、導入遺伝子は、人間の操作、例えば、形質転換などによって植物中に導入されているが、当業者が認識する任意の方法を使用することができる。
【0130】
本発明の好ましい実施形態では、トランスジェニック植物は、その子孫が、所望の表現型を分離しないように導入された各遺伝子およびあらゆる遺伝子(導入遺伝子)についてホモ接合である。トランスジェニック植物は、例えば、ハイブリッド種子から成長したF1子孫内などに導入された導入遺伝子(複数可)についてヘテロ接合とすることもできる。そのような植物は、当技術分野で周知であるハイブリッドの活力(hybrid vigour)などの利点をもたらすことができる。
【0131】
本発明のポリヌクレオチドは、発生のすべての段階の間に、トランスジェニック植物内で構成的に発現され得る。植物または植物器官の使用に応じて、ポリペプチドは、段階特異的な様式で発現され得る。さらに、ポリヌクレオチドは、組織特異的に発現され得る。
【0132】
植物内で対象とするポリペプチドをコードする遺伝子の発現を引き起こすことが知られているか、または見出されている制御配列を、本発明において使用することができる。使用される制御配列の選択は、対象とする標的植物および/または標的器官に依存する。そのような制御配列は、植物または植物ウイルスから得ることができ、または化学的に合成することができる。そのような制御配列は、当業者に周知である。
【0133】
植物細胞の安定なトランスフェクション、またはトランスジェニック植物の確立に適したいくつかのベクターは、例えば、Pouwelsら、Cloning Vectors:A Laboratory Manual(1985、補遺1987);WeissbachおよびWeissbach、Methods for Plant Molecular Biology、Academic Press(1989);ならびにGelvinら、Plant Molecular Biology Manual、Kluwer Academic Publishers(1990)において記載されている。一般に、植物発現ベクターは、5’および3’制御配列の転写制御下の1つまたは複数のクローン化植物遺伝子、および優性選択マーカーを含む。そのような植物発現ベクターは、プロモーター調節領域(例えば、誘導性もしくは構成的な、環境的もしくは発生的に制御された、または細胞もしくは組織特異的発現を制御する調節領域)、転写開始部位、リボソーム結合部位、RNA処理シグナル、転写終止部位、および/またはポリアデニル化シグナルも含有することができる。
【0134】
植物細胞内で活性であるいくつかの構成的プロモーターが記載されている。植物内の構成的発現に適したプロモーターとして、限定されるものではないが、カリフラワーモザイクウイルス(CaMV)35Sプロモーター、ゴマノハグサモザイクウイルス(FMV)35S、サトウキビ桿菌状ウイルスプロモーター、ツユクサ(commelina)黄斑ウイルスプロモーター、リブロース−1,5−ビス−リン酸カルボキシラーゼの小サブユニットに由来する光誘導プロモーター、イネサイトゾルトリオースリン酸イソメラーゼプロモーター、シロイヌナズナ(Arabidopsis)のアデニンホスホリボシルトランスフェラーゼプロモーター、イネアクチン1遺伝子プロモーター、マンノピン合成酵素およびオクトピン合成酵素プロモーター、Adhプロモーター、スクロース合成酵素プロモーター、R遺伝子複合体プロモーター、およびクロロフィルα/β結合タンパク質遺伝子プロモーターが挙げられる。これらのプロモーターは、植物内で発現されたDNAベクターを作り出すのに使用されている;例えば、PCT公開WO84/02913を参照。これらのプロモーターのすべては、様々な型の植物で発現可能な組換えDNAベクターを作り出すのに使用されている。
【0135】
植物の起源組織、例えば、葉、種子、根、または茎などにおける発現の目的のために、本発明において利用されるプロモーターは、これらの特定の組織において相対的に高い発現を有することが好適である。この目的のために、組織もしくは細胞特異的または組織もしくは細胞で増強される発現を伴う遺伝子についてのいくつかのプロモーターから1つを選択することができる。文献で報告されたそのようなプロモーターの例として、エンドウマメに由来する葉緑体グルタミン合成酵素GS2プロモーター、コムギに由来する葉緑体フルクトース−1,6−ビホスファターゼ(biphosphatase)プロモーター、ジャガイモに由来する核光合成ST−LS1プロモーター、シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)に由来するセリン/トレオニンキナーゼプロモーター、およびグルコアミラーゼ(CHS)プロモーターが挙げられる。イースタンラーチ(アメリカカラマツ(Larix laricina))に由来するリブロース−1,5−二リン酸カルボキシラーゼプロモーター、マツに由来するCab遺伝子、Cab6についてのプロモーター、コムギに由来するCab−1遺伝子についてのプロモーター、ホウレンソウに由来するCab−1遺伝子についてのプロモーター、イネに由来するCab1R遺伝子についてのプロモーター、トウモロコシ(Zea mays)に由来するピルビン酸オルトリン酸ジキナーゼ(PPDK)プロモーター、タバコLhcb12遺伝子についてのプロモーター、シロイヌナズナSuc2スクロース−H30共輸送体プロモーター、ホウレンソウに由来するチラコイド膜タンパク質についてのプロモーター(PsaD、PsaF、PsaE、PC、FNR、AtpC、AtpD、Cab、RbcS)も光合成的に活性な組織において活性であると報告されている。
【0136】
クロロフィルα/β結合タンパク質についての他のプロモーター、例えば、白ガラシ(シナピス・アルバ(Sinapis alba))に由来するLhcB遺伝子およびPsbP遺伝子についてのプロモーターなども本発明において利用することができる。(1)熱、(2)光(例えば、エンドウマメRbcS−3Aプロモーター、トウモロコシRbcSプロモーター);(3)アブシシン酸などのホルモン(4)創傷(例えば、WunI);もしくは(5)化学物質、例えば、メチルジャスミネート(jasminate)、サリチル酸、ステロイドホルモン、アルコール、セーフナー(WO97/06269を参照)などによって調節されるプロモーターを含めた、環境、ホルモン、化学および/または発生シグナルに対する応答において調節される様々な植物遺伝子プロモーターも植物細胞内のRNA結合タンパク質遺伝子の発現のために使用することができ、または(6)器官特異的なプロモーターを使用することも有利となり得る。
【0137】
植物のシンク組織、例えば、ジャガイモ植物の塊茎、トマトの果実、またはダイズ、アブラナ、綿、トウモロコシ、コムギ、イネ、およびオオムギの種子などにおける発現の目的のために、本発明において利用されるプロモーターは、これらの特定の組織において相対的に高い発現を有することが好適である。クラスIパタチンプロモーター、大小サブユニットの両方のジャガイモ塊茎ADPGPP遺伝子についてのプロモーター、スクロース合成酵素プロモーター、22kDのタンパク質複合体およびプロテイナーゼ阻害剤を含めた主要な塊茎タンパク質についてのプロモーター、顆粒結合型デンプン合成酵素遺伝子(GBSS)についてのプロモーター、ならびに他のクラスIおよびIIパタチンプロモーターを含めて、塊茎特異的または塊茎で増強される発現を伴う遺伝子についてのいくつかのプロモーターが知られている。他のプロモーターも、種子または果実などの特定の組織内でタンパク質を発現させるのに使用することができる。β−コングリシニンについてのプロモーター、または他の種子特異的なプロモーター、例えば、ナピンおよびファセオリンプロモーターなどを使用することができる。トウモロコシ胚乳発現について特に好適なプロモーターは、イネに由来するグルテリン遺伝子についてのプロモーター、より具体的には、Osgt−1プロモーターである。コムギにおける発現に適したプロモーターの例には、ADPグルコースピロシンターゼ(pyrosynthase)(ADPGPP)サブユニット、顆粒結合型および他のデンプン合成酵素、分岐酵素および脱分枝酵素、胚形成主要タンパク質、グリアジン、ならびにグルテニンについてのプロモーターが含まれる。オオムギについてのそのようなプロモーターの例には、ADPGPPサブユニット、顆粒結合型および他のデンプン合成酵素、分岐酵素、脱分枝酵素、スクロース合成酵素、ホルデイン、胚グロブリン、ならびにアリューロン特異的なタンパク質についてのプロモーターが含まれる。
【0138】
根に特異的なプロモーターも使用することができる。そのようなプロモーターの例は、酸性キチナーゼ遺伝子についてのプロモーターである。根組織における発現は、同定されたCaMV35Sプロモーターの根に特異的なサブドメインを利用することによっても実現することができる。
【0139】
5’非翻訳リーダー配列は、本発明のポリヌクレオチドの異種遺伝子配列を発現するように選択されたプロモーターから得ることができ、必要に応じてmRNAの翻訳を増大するように特異的に改変することができる。導入遺伝子の発現を最適化することの概説については、Kozielら(1996)を参照。5’非翻訳領域は、適当な真核生物遺伝子、植物遺伝子(コムギおよびトウモロコシクロロフィルa/b結合タンパク質遺伝子リーダー)に由来する植物ウイルスRNA(とりわけ、タバコモザイクウイルス、タバコエッチウイルス、トウモロコシ萎縮モザイクウイルス、アルファルファモザイクウイルス)、または合成遺伝子配列から得ることもできる。本発明は、非翻訳領域が、プロモーター配列を伴う5’非翻訳配列に由来するコンストラクトに限定されない。リーダー配列は、無関係のプロモーターまたはコード配列に由来する場合もある。本発明の脈絡において有用なリーダー配列は、トウモロコシHsp70リーダー(US5,362,865およびUS5,859,347を参照)、およびTMVΩ要素を含む。
【0140】
転写の終止は、対象とするポリヌクレオチドにキメラベクター中で作動可能に連結された3’非翻訳DNA配列によって実現される。組換えDNA分子の3’非翻訳領域は、RNAの3’末端にアデニル酸ヌクレオチドの付加を引き起こすように植物内で機能するポリアデニル化シグナルを含有する。3’非翻訳領域は、植物細胞内で発現される様々な遺伝子から得ることができる。ノパリン合成酵素3’非翻訳領域、エンドウマメ小サブユニットRubisco遺伝子に由来する3’非翻訳領域、ダイズ7S種子貯蔵タンパク質遺伝子に由来する3’非翻訳領域は一般に、この能力において使用される。アグロバクテリウム(Agrobacterium)腫瘍誘導(Ti)プラスミド遺伝子のポリアデニル酸シグナルを含有する3’転写非翻訳領域も適している。
【0141】
細胞内に遺伝子を直接送達するための4つの一般的な方法、すなわち、(1)化学的方法(Grahamら、1973);(2)微量注入などの物理的方法(Capecchi、1980);電気穿孔(WO87/06614、US5,472,869、5,384,253、WO92/09696、およびWO93/21335を参照);および遺伝子銃(US4,945,050およびUS5,141,131を参照);(3)ウイルスベクター(Clapp、1993;Luら、1993;Eglitisら、1988);ならびに(4)受容体媒介機構(Curielら、1992;Wagnerら、1992)が記載されている。
【0142】
使用することができる加速方法には、例えば、微粒子銃などが含まれる。植物細胞に形質転換核酸を送達するための方法の一例は、微粒子銃である。この方法は、Yangら、Particle Bombardment Technology for Gene Transfer、Oxford Press、Oxford、England(1994)によって概説されている。非生物学的粒子(マイクロプロジェクタイル)は、核酸をコーティングし、推進力によって細胞内に送達することができる。例示的な粒子には、タングステン、金、白金などからなるものが含まれる。微粒子銃が単子葉植物を再現性よく形質転換する有効な手段であることに加えて、微粒子銃の特定の利点は、プロトプラストの分離もアグロバクテリウム感染の感受性も必要とされないことである。加速によってトウモロコシ細胞内にDNAを送達するための方法の例示的な実施形態は、微粒子銃α粒子送達システムであり、これは、DNAでコーティングされた粒子を、ステンレス鋼またはNytexスクリーンなどのスクリーンを通して、懸濁液中で培養されたトウモロコシ細胞で覆われたフィルター表面上に推進するのに使用することができる。本発明とともに使用するのに適した粒子送達システムは、ヘリウム加速PDS-1000/He銃であり、これは、Bio-Rad Laboratoriesから入手可能である。
【0143】
照射のために、懸濁液中の細胞をフィルター上で濃縮することができる。照射される細胞を含有するフィルターは、マイクロプロジェクタイル停止プレートの下に適切な距離をおいて配置される。必要に応じて、1つまたは複数のスクリーンも、銃と照射される細胞との間に配置される。
【0144】
あるいは、未成熟胚または他の標的細胞を、固体培地上に配置することができる。照射される細胞は、マイクロプロジェクタイル停止プレートの下に適切な距離をおいて配置される。必要に応じて、1つまたは複数のスクリーンも、加速デバイスと照射される細胞との間に配置される。本明細書に示した方法を使用することによって、1000またはそれ以上の焦点の、マーカー遺伝子を一過性に発現する細胞を得ることができる。照射して48時間後に外来遺伝子産物を発現する焦点内の細胞数は、1〜10個、平均で1〜3個の範囲であることが多い。
【0145】
照射形質転換において、照射前の培養条件および照射パラメータを最適化することによって、最大数の安定な形質転換体を得ることができる。照射についての物理的および生物学的パラメータの両方が、この技術において重要である。物理的要因は、DNA/マイクロプロジェクタイル沈殿物の操作を伴うもの、またはマクロもしくはマイクロプロジェクタイルの飛行および速度に影響するものである。生物学的要因には、照射前および照射直後の細胞の操作に関与するすべてのステップ、照射に伴う外傷の軽減に役立てるための標的細胞の浸透圧調整、ならびに直線化DNAまたは無傷のスーパーコイルプラスミドなどの形質転換DNAの性質が含まれる。照射前の操作は、未成熟胚の形質転換の成功に特に重要であると考えられている。
【0146】
別の代替の実施形態では、プラスチドを安定に形質転換することができる。高等植物におけるプラスチド形質転換について開示された方法には、選択マーカーを含有するDNAの粒子銃送達、および相同的組換えを通じたプラスチドゲノムへのDNAの標的化が含まれる(US5,451,513、US5,545,818、US5,877,402、US5,932479、およびWO99/05265を参照)。
【0147】
したがって、条件を完全に最適化するための小規模研究において、照射パラメータの様々な態様を調整することが望まれる場合があることが企図されている。物理的パラメータ、例えば、ギャップ距離、飛行距離、組織距離、およびヘリウム圧力などを調整することが特に望まれる場合がある。レシピエント細胞の生理的状態に影響し、したがって形質転換および組込み効率に影響し得る条件を修正することによって外傷悪化要因を最小限にすることもできる。例えば、レシピエント細胞の浸透圧状態、組織水和、および継代培養段階または細胞周期を、最適な形質転換のために調整することができる。他の通常の調整を実施することも、本開示を踏まえると当業者に分かるであろう。
【0148】
アグロバクテリウム媒介トランスファーは、植物細胞内に遺伝子を導入するために広く適用可能なシステムであり、その理由は、DNAを全植物組織内に導入し、それによってプロトプラストから無傷の植物を再生する必要を回避することができるためである。植物細胞内にDNAを導入するために、ベクターを組み込んでいるアグロバクテリウム媒介植物を使用することは、当技術分野で周知である(US5,177,010、US5,104,310、US5,004,863、US5,159,135を参照)。さらに、T−DNAの組込みは、比較的正確なプロセスであり、ほとんど再配列をもたらさない。トランスファーされるDNAの領域は、ボーダー配列によって画定され、介在DNAは、植物ゲノム内に通常挿入される。
【0149】
最新のアグロバクテリウム形質転換ベクターは、Kleeら、Plant DNA Infectious Agents、HohnおよびSchell(編)、Springer-Verlag、New York(1985)、179〜203頁に記載されているように、大腸菌ならびにアグロバクテリウム内で複製することができ、好都合な操作を可能にしている。さらに、アグロバクテリウム媒介遺伝子トランスファーのためのベクターにおける技術的進歩は、ベクター中の遺伝子および制御部位の配置を改善することによって、様々なポリペプチドをコードする遺伝子を発現することができるベクターの構築を促進している。記載されたベクターは、挿入されたポリペプチドコード遺伝子を直接発現させるために、プロモーターおよびポリアデニル化部位に隣接して、好都合なマルチリンカー領域を有し、本目的に適している。さらに、アームドおよびディスアームドTi遺伝子(armed and disarmed Ti gene)を含有するアグロバクテリウムを、形質転換のために使用することができる。アグロバクテリウム媒介形質転換が効率的である植物の種類において、遺伝子トランスファーの容易で明確な性質のために、これが最適の方法である。
【0150】
アグロバクテリウム形質転換法を使用して形成されたトランスジェニック植物は一般に、1つの染色体上に1つの遺伝子座を含有する。そのようなトランスジェニック植物は、付加された遺伝子についてヘミ接合であると呼ぶことができる。より好適なのは、付加された構造遺伝子についてホモ接合であるトランスジェニック植物、すなわち、染色体対の各染色体上の同じ座位に1つの遺伝子という、2つの付加された遺伝子を含有するトランスジェニック植物である。ホモ接合トランスジェニック植物は、1つの付加された遺伝子を含有する独立した分離個体のトランスジェニック植物を有性交配(自家受粉)し、産生された種子のいくつかを発芽させ、対象とする遺伝子について得られた植物を分析することによって得ることができる。
【0151】
2つの異なるトランスジェニック植物を交配することによって、2つの独立して分離している外来遺伝子を含有する子孫を産生させることもできることも理解されるべきである。適切な子孫を自家受粉することにより、両方の外来遺伝子についてホモ接合である植物を産生させることができる。親植物への戻し交配、および非トランスジェニック植物との外交配も、栄養繁殖のように企図されている。様々な形質および作物に一般に使用される他の育種法の記述は、Fehr、Breeding Methods for Cultivar Development、J.Wilcox(編)、American Society of Agronomy、Madison WI(1987)に見出すことができる。
【0152】
植物プロトプラストの形質転換は、リン酸カルシウム沈殿、ポリエチレングリコール処理、電気穿孔、およびこれらの処理の組合せに基づく方法を使用して実現することができる。様々な植物の種類にこれらのシステムを適用することは、プロトプラストからその特定の植物系統を再生する能力に依存する。プロトプラストから穀類を再生するための例示的方法が記載されている(Fujimuraら、1985;Toriyamaら、1986;Abdullahら、1986)。
【0153】
細胞形質転換の他の方法も使用することができ、これには、限定されるものではないが、花粉中にDNAを直接トランスファーすること、植物の生殖器中にDNAを直接注射すること、または未成熟胚の細胞内にDNAを直接注射し、その後乾燥された胚を再水和することによる植物中へのDNAの導入が含まれる。
【0154】
1つの植物プロトプラスト形質転換体、または様々な形質転換された外植片から植物を再生し、発生させ、培養することは、当技術分野で周知である(Weissbachら、Methods for Plant Molecular Biology、Academic Press、San Diego、CA.(1988))。この再生および成長プロセスは一般に、形質転換細胞を選択するステップ、胚発生の通常の段階を介し、根付いた小植物段階を介して個別化した細胞を培養するステップを含む。トランスジェニック胚および種子も同様に再生される。得られたトランスジェニックの根付いた苗条は、土壌などの適切な植物成長培地にその後植えられる。
【0155】
異種の、外来遺伝子を含有する植物の発生または再生は、当技術分野で周知である。再生された植物は、自家受粉することによって、ホモ接合トランスジェニック植物をもたらすことが好ましい。さもなければ、再生された植物から得られる花粉は、農学的に重要な系統の種子から成長した植物と交雑される。反対に、これらの重要な系統の植物からの花粉は、再生された植物に授粉するのに使用される。所望の外因性核酸を含有する本発明のトランスジェニック植物は、当業者に周知の方法を使用して栽培される。
【0156】
主にアグロバクテリウム・ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)を使用することによって双子葉植物を形質転換し、トランスジェニック植物を得るための方法は、綿(US5,004,863、US5,159,135、US5,518,908);ダイズ(US5,569,834、US5,416,011);アブラナ属(Brassica)(US5,463,174);ピーナッツ(Chengら、1996);およびエンドウマメ(Grantら、1995)について公開されている。
【0157】
外因性核酸を導入することによって植物中に遺伝的変異を導入するため、およびプロトプラストまたは未成熟植物胚から植物を再生するために、コムギおよびオオムギなどの穀類植物を形質転換するための方法は、当技術分野で周知である。例えば、CA2,092,588、AU61781/94、AU667939、US6,100,447、PCT/US97/10621、US5,589,617、US6,541,257を参照。他の方法は、WO99/14314に提示されている。トランスジェニックコムギまたはオオムギ植物は、アグロバクテリウム・ツメファシエンス媒介形質転換手順によって産生されることが好ましい。所望の核酸コンストラクトを担持するベクターは、組織培養された植物もしくは外植片の再生可能なコムギ細胞、またはプロトプラストなどの適当な植物系内に導入することができる。
【0158】
再生可能なコムギ細胞は好ましくは、未成熟胚、成熟胚の胚盤、これらの組織または分裂組織から得られるカルスに由来する。
【0159】
トランスジェニック細胞および植物内に導入遺伝子が存在することを確認するために、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)増幅またはサザンブロット分析を、当業者に既知の方法を使用して実施することができる。導入遺伝子の発現産物は、産物の性質に応じて様々な方法のうちのいずれでも検出することができ、ウエスタンブロットおよび酵素アッセイを含む。タンパク質発現を定量化し、様々な植物組織における複製を検出するための1つの特に有用な方法は、GUSなどのレポーター遺伝子を使用することである。トランスジェニック植物が得られたら、これらを成長させることによって、所望の表現型を有する植物組織または植物部分を生成することができる。植物組織または植物部分を回収することができ、かつ/または種子を収集することができる。種子は、所望の特徴を有する組織または部分を伴った追加の植物を成長させるための供給源として機能を果たすことができる。
【0160】
本発明のトランスジェニック植物は、フェニル尿素、カルバメート、および/または有機ホスフェートに対する植物のトレランス/耐性を増強する、本発明の導入遺伝子以外のさらなる導入遺伝子を含むことができる。
【0161】
トランスジェニック非ヒト動物
「トランスジェニック非ヒト動物」は、同じ種または品種の野生型動物において見出されない遺伝子コンストラクト(「導入遺伝子」)を含有する、ヒト以外の動物を指す。本明細書で呼ばれる「導入遺伝子」は、バイオテクノロジーの技術分野における通常の意味を有し、組換えDNAまたはRNA技術によって生成または変更され、動物細胞内に導入された外因性ポリヌクレオチド配列を含む。導入遺伝子は、動物細胞に由来するポリヌクレオチド配列を含むことができる。一般に、導入遺伝子は、人間の操作、例えば、形質転換などによって動物中に導入されているが、当業者が認識する任意の方法を使用することができる。
【0162】
トランスジェニック動物を作製するための技法は、当技術分野で周知である。この課題に対する有用な一般的な教科書は、Houdebine、Transgenic animals-Generation and Use、Harwood Academic(1997)である。
【0163】
異種のDNAを、例えば、哺乳動物の受精卵子中に導入することができる。例えば、全能性または多能性幹細胞を、微量注入、リン酸カルシウム媒介沈殿、リポソーム融合、レトロウイルス感染または他の手段によって形質転換することができる。次いで形質転換細胞は、胚内に導入され、次いで胚は、発達してトランスジェニック動物になる。非常に好適な方法では、発達中の胚に、所望のDNAを含有するレトロウイルスを感染させ、感染した胚からトランスジェニック動物が生じる。しかし、最も好適な方法では、適切なDNAが、好ましくは単細胞段階で胚の前核または細胞質中に同時注入され、胚を発達させて成熟したトランスジェニック動物にする。
【0164】
トランスジェニック動物を作製するのに使用される別の方法は、標準的な方法によって前核段階の卵子中に核酸を微量注入することを伴う。次いで注入された卵子は、培養された後、偽妊娠のレシピエントの輸卵管に移される。
【0165】
トランスジェニック動物は、核トランスファー技術によっても作製することができる。この方法を使用して、ドナー動物に由来する線維芽細胞は、制御配列の制御下で、対象とする結合ドメインまたは結合パートナーについてのコード配列を組み込んでいるプラスミドで安定にトランスフェクトされる。次いで安定なトランスフェクタントは、除核された卵母細胞に融合され、培養され、メスのレシピエントに移される。
【0166】
組成物
本発明の組成物は、「許容可能な担体」とも本明細書で呼ばれる、賦形剤を含むことができる。賦形剤は、処置される動物、植物、植物もしくは動物物質、または環境(土壌および水試料を含む)が耐容性を示すことができる任意の物質とすることができる。そのような賦形剤の例として、水、食塩水、リンガー液、デキストロース溶液、ハンクス液、および他の水性生理学的平衡塩溶液が挙げられる。非水ビヒクル、例えば、固定油、ゴマ油、オレイン酸エチル、または中性脂肪なども使用することができる。他の有用な製剤は、粘度増強剤、例えば、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、ソルビトール、またはデキストランなどを含有する懸濁液を含む。賦形剤は、等張性および化学的安定性を増強する物質などの軽微な量の添加剤も含有することができる。緩衝液の例には、リン酸緩衝液、炭酸水素塩緩衝液、およびTris緩衝液が含まれ、一方、保存剤の例には、チメロサール、またはo−クレゾール、ホルマリン、およびベンジルアルコールが含まれる。賦形剤は、組成物、例えば、限定されるものではないが、ポリマー制御放出ビヒクル、生分解性インプラント、リポソーム、細菌、ウイルス、他の細胞、油、エステル、およびグリコールの半減期を増大させるのにも使用することができる。
【0167】
さらに、本明細書に記載されるポリペプチドは、フェニル尿素、カルバメート、および/もしくは有機ホスフェートの加水分解の速度および/もしくは程度を増強し、またはポリペプチドの安定性を増大させる組成物で提供することができる。例えば、ポリペプチドは、ポリウレタン基質上に固定化し(Gordonら、1999)、または適切なリポソーム中にカプセル化することができる(Petrikovicsら、2000aおよびb)。ポリペプチドは、消火において日常的に使用されるものなどのフォームを含む組成物中に組み込むこともできる(LeJeuneら、1998)。
【0168】
本発明の一実施形態は、本発明の組成物を、動物、植物、動物もしくは植物物質、または環境(土壌および水試料を含む)中に徐々に放出することができる制御放出製剤である。本明細書で使用する場合、「制御放出製剤」は、制御放出ビヒクル中に本発明の組成物を含む。適当な制御放出ビヒクルとして、限定されるものではないが、生体適合性ポリマー、他のポリマー基質、カプセル、マイクロカプセル、微粒子、大量瞬時投与製剤、浸透圧ポンプ、拡散デバイス、リポソーム、リポスフェア、および経皮送達システムが挙げられる。好適な制御放出製剤は、生分解性(すなわち、生体内分解性)である。
【0169】
本発明の好適な制御放出製剤は、フェニル尿素、カルバメート、および/または有機ホスフェート、特にジウロンを含む範囲内にある土壌または水中に本発明の組成物を放出することができる。この製剤は好ましくは、約1〜約12カ月の範囲の時間にわたって放出される。本発明の好適な制御放出製剤は、好ましくは少なくとも約1カ月間、より好ましくは少なくとも約3カ月間、さらにより好ましくは少なくとも約6カ月間、さらにより好ましくは少なくとも約9カ月間、さらにより好ましくは少なくとも約12カ月間処理を行うことができる。
【0170】
フェニル尿素、カルバメート、および/または有機ホスフェートを加水分解するための有効な組成物を生成するのに必要とされる本発明のポリペプチド、ベクター、細菌、抽出物、または宿主細胞などの濃度は、除染される試料の性質、試料中のフェニル尿素、カルバメート、および/または有機ホスフェートの濃度、ならびに組成物の製剤に依存する。組成物内のポリペプチド、ベクター、細菌、抽出物、または宿主細胞などの有効濃度は、当業者によって理解されるように、実験的に容易に求めることができる。
【0171】
本発明の酵素および/またはそれをコードする微生物は、WO2004/112482およびWO2005/26269に一般に記載されているように、コーティング組成物で使用することができる。
【0172】
抗体
本発明で使用する用語「抗体」には、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、二重特異性抗体、ダイアボディ(diabody)、トリアボディ(triabody)、ヘテロコンジュゲート抗体、無傷の分子を含むキメラ抗体、ならびにこれらの断片、例えば、エピトープ決定基に結合することができるFab、F(ab’)、およびFvなど、ならびに他の抗体様分子が含まれる。
【0173】
抗体断片は、その抗原または受容体と選択的に結合するいくらかの能力を保持し、以下のように定義される:
(1)Fab、無傷の軽鎖、および1本の重鎖の一部を得るために、酵素パパインを用いて全抗体を消化することによって生成することができる、抗体分子の一価の抗原結合フラグメントを含有する断片;
(2)Fab’、無傷の軽鎖、および重鎖の一部を得るために、ペプシンを用いて全抗体を処理し、その後還元することによって得ることができる抗体分子の断片;1抗体分子当たり2つのFab’断片が得られる;
(3)(Fab’)、酵素ペプシンを用いて全抗体を処理し、引き続いて還元することなく得ることができる抗体の断片;F(ab)2は、2つのジスルフィド結合によってまとまった2つのFab’断片の二量体である;
(4)Fv、2本の鎖として発現される、軽鎖の可変領域および重鎖の可変領域を含有する遺伝子操作された断片として定義される;ならびに
(5)単鎖抗体(「SCA」)、遺伝的に融合された単鎖分子として、適当なポリペプチドリンカーによって連結された、軽鎖の可変領域、重鎖の可変領域を含有する遺伝子操作された分子として定義される。
【0174】
これらの断片を作製する方法は、当技術分野で知られている(例えば、HarlowおよびLane、Antibodies:A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratory、New York(1988)を参照)。
【0175】
(6)単一ドメイン抗体、一般に軽鎖を欠いた可変重ドメイン(heavy domain)。
【0176】
用語「特異的に結合する」は、本発明の少なくとも1つのポリペプチドに結合するが、他の既知のタンパク質、特に、配列番号3として提供されるPuhAには結合しない抗体の能力を指す。
【0177】
本明細書で使用する場合、用語「エピトープ」は、抗体によって結合される本発明のポリペプチドの領域を指す。エピトープを動物に投与することによって、このエピトープに対する抗体を生成することができるが、本発明の抗体は、好ましくは、全ポリペプチドとの関連でエピトープ領域に特異的に結合する。
【0178】
ポリクローナル抗体が望ましい場合、選択された哺乳動物(例えば、マウス、ウサギ、ヤギ、ウマなど)は、免疫原性の本発明のポリペプチドで免疫される。免疫動物からの血清が収集され、既知の手順に従って処理される。ポリクローナル抗体を含有する血清が、他の抗原に対する抗体を含有する場合、このポリクローナル抗体を、免疫親和性クロマトグラフィーによって精製することができる。ポリクローナル抗血清を生成および処理するための技法は、当技術分野で知られている。そのような抗体を作製する目的で、本発明は、動物における免疫原として使用するために、別のポリペプチドに対してハプテン化された(haptenised)本発明のポリペプチドまたはその断片も提供する。
【0179】
本発明のポリペプチドに対するモノクローナル抗体は、当業者によっても容易に生成することができる。ハイブリドーマによってモノクローナル抗体を作製するための一般的な方法は周知である。不死抗体産生細胞株は、細胞融合によって、また発癌性DNAを用いたBリンパ球の直接形質転換、またはエプスタイン−バーウイルスを用いたトランスフェクションなどの他の技法によって作り出すことができる。産生されるモノクローナル抗体のパネルは、様々な特性;すなわち、アイソタイプおよびエピトープ親和性についてスクリーニングすることができる。
【0180】
代替の技法は、ファージディスプレイライブラリーのスクリーニングを伴い、この場合、例えば、ファージは、多種多様の相補性決定領域(CDR)を有するそのコート(coat)の表面上でscFv断片を発現する。この技法は、当技術分野で周知である。
【0181】
本発明の抗体を生成するための他の技法も、当技術分野で知られている。
【0182】
本発明の抗体は、固体支持体に結合させかつ/または適当な試薬、対照、指示書などとともに梱包して適当な容器中のキットにすることができる。
【0183】
一実施形態では、本発明の抗体は、検出可能な程度に標識される。抗体結合の直接測定を可能にする例示的な検出可能標識として、放射標識、フルオロフォア、染料、磁気ビーズ、化学発光物質、コロイド粒子などが挙げられる。結合の間接的な測定を可能にする標識の例には酵素が含まれ、この場合基質は、有色または蛍光性生成物をもたらすことができる。追加の例示的な検出可能標識には、適当な基質を付加した後に検出可能な生成物シグナルをもたらすことができる共有結合した酵素が含まれる。コンジュゲートにおいて使用するのに適した酵素の例には、西洋わさびペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、リンゴ酸脱水素酵素などが含まれる。市販されていない場合、そのような抗体−酵素コンジュゲートは、当業者に既知の技法によって容易に作製される。さらに、例示的な検出可能標識として、アビジンまたはストレプトアビジンに高親和性で結合するビオチン;蛍光活性化細胞選別装置とともに使用することができる蛍光色素(例えば、フィコビリタンパク質、フィコエリトリン、およびアロフィコシアニン;フルオレセイン、およびテキサスレッド);ハプテンなどが挙げられる。検出可能標識は、プレートルミノメーターで直接測定を可能にすることが好ましく、例えば、ビオチンである。そのような標識抗体は、当技術分野で既知の技法において使用することによって、本発明のポリペプチドを検出することができる。
【0184】
微生物寄託の詳細
マイコバクテリウム・ブリスバネンスJK1は、2008年5月16日にアクセション番号V08/013277としてNational Measurement Institute、51-65 Clarke Street、South Melbourne、Victoria 3205、オーストラリアに寄託した。
【0185】
この寄託は、特許手続上の微生物の寄託の国際承認に関するブダペスト条約の条項およびその規定の下で行った。これにより、寄託日から30年間、成育可能な培養の維持が保証される。生物は、関係する特許が発行されると、公共に対して培養物の子孫の永続的かつ非制限的な利用可能性を保証するブダペスト条約の約定下で、National Measurement Instituteによって入手可能となる。
【0186】
本願の譲受人は、培養寄託物が、適当な条件下で培養された場合に、死ぬ、または失われ、もしくは破壊された場合、通知されると即座に同じ培養物の生育可能な試料と交換されることに同意した。寄託した系統の利用可能性は、任意の政府の権限下でその特許法に従って与えられた権利に違反した、本発明を実施するためのライセンスとして解釈されるべきではない。
実施例
【実施例1】
【0187】
物質および方法
菌株および培地
Difco(商標)ニュートリエントブロス、シュードモナス寒天、およびニュートリエント寒天は、Becton,Dickinson and Co.から購入した。Luriaブロス(LB)、LB寒天、tris-酢酸-EDTA(TAE)、tris-EDTA(TE)、および抗生物質(ハイグロマイシン、アンピシリン、カナマイシン、およびクロラムフェニコール)は、Sambrookら(1989)に記載されているように調製した。最少培地(MM)は、SorensenおよびAamand(2003)によって記載されているように調製した。すべての農薬およびその代謝産物は、入手可能な最高純度(>97%)であった。カルバリルおよびパラチオンは、Chem Serviceから入手し、他の農薬は、Sigmaから購入した。N,N−ジメチル,O−4−ニトロフェニルカルバメートは、University of Warwick、EnglandのTimothy Bugg博士から贈られたものであった。リニュロンエステルおよび2−ジメチルアミノ−5,6−ジメチル−4−ヒドロキシピリミジン(DDHP)合成の詳細を以下に示す。
【0188】
土壌試料は、ジウロンが適用されていたQueenslandのサトウキビ栽培地域から、John Reghenzani(BSES Ltd.)によって提供された。必要に応じて炭素源としてグルコース、グリセロール、およびスクシネート(それぞれ10mM)の混合物の存在下で、10〜50ppmのジウロンを補充した250mLのエルレンマイヤーフラスコ中のMM50mL中に土壌試料(1g)を懸濁した。すべての強化培養物は、暗所で、28℃で成長させた。継代培養では、培養量の0.2〜4%を、適切に補充された新鮮なMM中に移した。高速液体クロマトグラフィー(HPLC)によって分析する前に、アセトニトリル500μLを使用して、培養物500μLから代謝産物を抽出することによって、分解が観察された。安定なジウロン分解培養を確立した後、個々の菌株は、LB寒天、ニュートリエント寒天(Difco(商標))、およびシュードモナス寒天(Difco(商標))上に希釈平板法(dilution plating)によって隔離した。個々のコロニーを採取し、適切に補充されたMMのさらなるフラスコに接種した。
【0189】
大腸菌LE392MP(Epicentre)、JM109(Promega)、またはElectro-10 blue(Stratagene)、およびマイコバクテリウム・スメグマチスmc2クローンを、適切な抗生物質を使用して、LB寒天上、または液体培地中で、37℃で通常どおりに成長させた。エレクトロコンピタント(electrocompetant)M.スメグマチスmc2細胞は、他で記載されているように(Jacobsら、1991)調製した。大腸菌およびM.スメグマチスの形質転換は、使い捨ての電気穿孔キュベットとともに200Ω、2500V、および2.5μFでBiorad genepulser II(BTX-Harvard apparatus)を使用して、DNA0.1〜1μgを用いて電気穿孔によって実施した。電気穿孔した後、細胞を、LB 500μL中で、倍加時間直前の期間、37℃で成長させ、その後、適切な抗生物質を含有する固体培地上に蒔いた。Tween80(0.05%v/v)をM.スメグマチス形質転換物に添加することによって、細胞が凝集しないことを保証した。ジウロン分解表現型を付与する、プラスミドpHRIM620を含有するアルスロバクター・グロビフォルミス(Arthrobacter globiformis)D47を、0.05mg.mL-1のスルファメトキサゾールおよび0.001mg.mL-1のトリメトプリムを補充したLBを含む1Lのフラスコ中で、28℃で23時間培養した。M.ブリスバネンスJK1は、0.05%のtween80を含有するLB 3×1L中で、28℃で2日間培養した。
【0190】
3,4−ジクロロフェニルN−メトキシ−N−メチルカルバメート(リニュロンエステル)の合成
採り入れた方法は、Wustnerら(1978)において3−ジメチルアミノフェニルN−メトキシ−N−メチルカルバメート(化合物XIV)について使用されたものであった:
【0191】
【化3】

3,4−ジクロロフェノール(10mmol、Aldrich)1.63gを秤量して100mlの丸底セプタムシール付きフラスコ中に入れ、窒素を流し、ベンゼン(AR)15ml中に溶解させた。蒸留トリエチルアミン1.53ml(11mmol)を添加し、得られた溶液を氷浴中で冷却した。N−メトキシ−N−メチルカルバモイルクロリド1.36g(11mmol、Acros Organics)を秤量して10mlの丸底セプタムシール付きフラスコ中に入れ、窒素を流し、ベンゼン5ml中に溶解させた。この溶液を、氷冷したジクロロフェノール/トリエチルアミン溶液に10分かけて添加した。添加する間に白色沈殿物(トリエチルアミン塩酸塩)が分離するのを観察した。1時間後に氷浴を取り除き、反応混合物を室温でさらに5時間撹拌した。次いで氷水20mlを添加することによって反応をクエンチし、有機相を分離し、0.5Mの塩酸水溶液5mlで洗浄し、その後飽和ブライン水溶液5ml部で3回洗浄した。ベンゼン溶液を無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、ベンゼン5部で乾燥剤を洗浄した。濾液および洗液を合わせ、回転蒸発させることによって、わずかな黄色の色合いを伴った流動性の油2.53gを得た。
【0192】
粗生成物を、直径5cm、230-400メッシュシリカの10cmのベッド(Carlo Erba SDS)上でフラッシュクロマトグラフィーにかけ、蒸留クロロホルムで溶出し、20の50mlの画分を収集した。画分5〜14をプールし、回転蒸発させた。残留油を蒸留クロロホルム中に溶解させ、直径25mm、孔0.45μmのPVDF膜シリンジフィルターを通して、秤量した100mlの丸底フラスコ中に濾過した。溶媒を回転蒸発によって除去して無色の油を得、これを高真空下で一晩置いた。
収量2.36 g 94%.
1H NMR (CDCl3 300MHz): 3.28ppm, s, 3H, CH3N; 3.59ppm, s, 3H, CH3O; 7.04ppm, dd J8.8, 2.8Hz, 1H, H-6; 7.31ppm, d, J2.8Hz, 1H, H-2; 7.44ppm, d, J8.8Hz, 1H, H-5.
13CNMR (CDCl3, 75MHz): 35.4ppm CH3N; 61.7ppm, CH3O; 121.2, 123.8, 129.3, 130.5, 132.6, 149.4ppm, 芳香族C; 154.0ppm, C=O.
EIMS: m/z, 強度: 253, 5, M+ (37Cl2); 251, 28 M+ (37Cl35Cl); 249, 42 M+ (35Cl2); 162, 6 M+ - C3H5NO2; 145, 9, M+ - C3H6NO3; 133, 13; 88, 100, C3H6NO2; 60, 56.
微量分析: 計算値C9H9NO3Cl2, C 43.2%, H 3.6%, N 5.6%, Cl 28.4%; 実測値C 43.3%, H 3.8%, N 5.4%, Cl 28.8%.
【0193】
DDHP(ピリミカーブ代謝産物)の調製
メタノール3mLおよび2Mの水酸化ナトリウム水溶液2.5mL中のピリミカーブ(Sigma-Aldrich)119mg(0.5mmol)の溶液を、油浴中で、120℃で1.5時間加熱還流した。反応混合物を氷中で冷却し、2Mの塩酸水溶液を添加してpHを14から6に調整し、溶液を凍結乾燥した。得られた固体を酢酸エチル10mLで3回抽出した。合わせた抽出物を蒸発させることによって、白色結晶物質97mgを得、これをシリカの120mm×20mmのカラム上でフラッシュクロマトグラフィーによって精製し、3:2の酢酸エチル:イソプロパノールで抽出し、68%の収率でDDHP57mgを得た。
1H NMR (CDCl3): 1.88, s, 3H; 2.15, s, 3H, 3.12, s, 6H, 11.95, br, 1H.
13C NMR (CDCl3): 10.0, 22.3, 37.3, 105.7, 152.0, 162.7, 165.7.
EIMS, m/z: 168, (M+ + 1), 167, M+, 166, (M+ - 1), 152, 138 (ベースピーク), 124, 123, 110, 97, 83, 71, 69, 55, 53.
【0194】
M.ブリスバネンスJKIの特徴づけおよび同定
10mMのグルコース、0.13mMのジウロン、および18.7mMの塩化アンモニウム(必要に応じて)を補充したMM(50mL)に、新たに成長させたM.ブリスバネンス菌株JK1細胞(OD600=約10)の0.2%の均一な懸濁液を接種した。培養物を、暗所で、200rpmで振盪しながら、28℃でインキュベートした。約24時間間隔で試料を採取し、代謝産物を50%のアセトニトリル中で抽出し、濾過し、HPLCによって分析した。
【0195】
通常のグラム染色および光学顕微鏡観察を実施することによって、細菌の形態を検査した。M.ブリスバネンス菌株JK1の16S rDNA遺伝子を、高忠実度ポリメラーゼPwo(Roche、Mannheim、ドイツ)およびEppindorf Mastercycler(登録商標)とともにコロニーPCRを使用して、55℃のアニーリング温度および72℃の伸長温度を使用して、ユニバーサルプライマー27fおよび1492r(Lane、1999)を用いて増幅した。単位複製配列を、QIApickキット(Qiagen)を使用して精製し、配列決定した。
【0196】
pYUB415コスミドライブラリーの構築およびスクリーニング
ゲノムDNAを、M.ブリスバネンス菌株JK1からフェノール:クロロホルム抽出法(MooreおよびDowhan、2002)を使用して抽出し、Sau3AIを用いて部分消化することによって、約40kbの断片を得た。この断片を0.8%の低融点アガロース(Scientifix)TAEゲル中で電気泳動した後精製し、アガロースを希釈および融解することによってDNAを抽出し、これを、遠心分離、その後のエタノール−塩沈殿によって、凍結後に取り出した。BamHIを用いて消化し、SAP(Promega)を用いて脱リン酸化した大腸菌−マイコバクテリウムシャトルベクター(BardarovおよびJacobs Jr、未発表)であるpYUB415にこの断片クローニングした。pYUB415ライブラリーは、製造者の指示書に従って、MaxPlax Lambdaパッケージング抽出物(Epicentre)を使用して、大腸菌LE392MP細胞に感染させるのに使用されるファージ粒子にパッケージした。
【0197】
コスミドDNAは、QIAquick(Qiagen)を使用して、プールした(10クローン/プール)大腸菌コスミドクローンの培養物から抽出した。プールしたコスミドDNAを、電気穿孔によってM.スメグマチス中に形質転換し、細胞を固体培地上で成長させた。プレート上のすべての成長物を洗浄して、86μMのジウロンで修正した(amended)MMを含有するMcCartney瓶に入れ、ジウロンの分解をモニターしながら、37℃で2〜10日間インキュベートした。挿入断片を含まないpYUB415を含有するM.スメグマチスを、陰性対照として使用した。コスミド158をBamHIおよびBglII(Fermentas、NEB)を使用して消化し、断片をpYUB415にクローニングし、M.スメグマチス中に形質転換し、ジウロン加水分解酵素活性についてスクリーニングした。
【0198】
通常のDNA配列決定は、Micromon DNA Sequencing Facility、Monash University、Melbourneが実施し、大きいDNA断片(20〜40kb)は、Australian Genome Research Facility(AGRF、University of Queensland、Brisbane)が、8倍の配列包括度を有するショットガン配列決定によって配列決定した。DNAは、臭化エチジウム(Amresco)を使用して、TAE緩衝液中の0.5〜1.5%のアガロース(Promega)ゲル中で電気泳動することによって、通常どおりに視覚化した。
【0199】
発現コンストラクトおよび条件
PuhAおよびPuhBは、大腸菌rosetta II細胞(Novagen)中のpET14b(Novagen)、およびM.スメグマチスmc2中のpMV261(Stoverら、1991)からN−ヘキサ−ヒスチジンタグ融合物として増幅した。ヘキサ−ヒスチジンタグを含まないタンパク質は、M.スメグマチスmc2中で後に発現させた。これらのクローニング手順で使用したPCRプライマーを、表2(配列番号5〜13)に記述する。
【0200】
【表2】

【0201】
Pwoポリメラーゼ(Roche)、ならびに制限酵素NdeI、BamHI、およびHindIII(Fermentas)は、製造者のプロトコールに従って使用した。エレクトロコンピテント大腸菌菌株JM109(Promega)を、連結反応物の形質転換(Promegaリガーゼを使用して)のために利用した。大腸菌内のタンパク質発現物を、LB中の一晩種培養物に接種し(1%v/v)、次いで振盪しながら20℃で11時間インキュベートし、0.1mMのイソプロピル−β−D−チオガラクトピラノシド(IPTG)を用いて3時間誘導した。M.スメグマチスの発現を、0.05%のtween80で修正し、誘導することなく、LB中で、28℃で2〜4日間成長させた。清澄無細胞抽出物は、25mMのTris(pH8)中で細菌を再懸濁し、その後フレンチ圧力セル(Thermo)に3回通過させ、27,000gで遠心分離(Beckman Avanti)することによって得た。
【0202】
タンパク質の定量化、精製、および視覚化
タンパク質濃度は、ウシ血清アルブミンを標準物質として使用し、Bio-radタンパク質アッセイ(Bradford)を使用して推定した。タンパク質純度は、クーマシーブリリアントブルーで染色したドデシル硫酸ナトリウム−ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)を使用してモニターした。PuhAおよびBの濃度を半精製抽出物において推定した場合、Labscan v5(Amersham Biosciences)を使用してSDS-PAGEゲルをスキャンし、Total lab TL100(Nonlinear dynamics)を用いてバンド濃度測定を実施した。ヘキサヒスチジンタグタンパク質を精製するために、Talonコバルト樹脂(BD Biosciences)を使用した。タグなしタンパク質は、硫酸アンモニウム(AS)沈殿(precipitiation)、その後の疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC;フェニルセファロース)、陰イオン交換クロマトグラフィー(AEX;Macro Q)、およびサイズ排除クロマトグラフィー(SEC;Superose6またはSephadex200)によって精製した。すべてのカラムは、GE Healthcareから購入した。疎水性相互作用カラムは、Tris(pH8)/1Mの硫酸アンモニウムを用いて平衡化し、次いで結合タンパク質を、400mLを超えるTris(pH8)を用いて溶出した。タンパク質を、Tris(pH8)を含む陰イオン交換カラムに結合させ、500mLを超えるTris(pH8)/1MのNaClの勾配を用いて溶出した。SECの間に緩衝液を25mMのHEPES/50mMのKCl(pH8)に交換した。タンパク質は、4℃で数週間、この緩衝液中で安定であった。オリゴマー構造は、以下のタンパク質標準物質(kDa)、すなわちサイログロブリン(669)、フェリチン(440)、カタラーゼ(232)、およびアルドラーゼ(158)を用いて較正したSuperose 6サイズ排除カラムを用いて推定した。Campbellら(2008)の方法に従って、標準的なトリプシンペプチド質量フィンガープリント法を使用することによって、液体クロマトグラフィーエレクトロスプレーイオン化質量分析/質量分析(LC ESI MS/MS)イオントラップにより、ポリアクリルアミドゲルから切り取ったタンパク質の同一性を確認した。
【0203】
酵素アッセイの開発
成長培養物および酵素アッセイからの代謝産物を、HPLCまたは液体クロマトグラフィー質量分析法(LCMS)を使用して分析した。データを分析するためのGold Noveauソフトウェアバージョンとともに、Beckman Goldを使用してHPLCを実施した。Phenomenex Aqua C18(5μ、125Å、250×4.60mm)逆相カラム、または同じ仕様を有するPhenomenex Synergi逆相カラムも使用した。ガードカラムは、Alltech Adsorbosil C18(5μ、7.5×4.6mm)またはPhenomenex C18 Octadecyl(4mmL×3mmID)であった。一般に、分析は、アセトニトリルと0.1%のリン酸で改変した水との1:1混合物を用いたアイソクラチック法を使用して実施した。流速は、1〜1.5mL.min-1の範囲であり、UV検出器は、250nmに設定した。LCMSシステムには、エレクトロスプレーイオン化注入器を備えた飛行時間検出器を伴ったAgilent 1100シリーズLCシステムが実装されていた。LCMSの調節剤としてギ酸(0.1%)を使用した。質量分析は一般に、デフォルトの設定値を用い、120Vと225Vの2つのフラグメンター電圧をスキャンして、陽イオンモードで行った。3,4−ジクロロフェノール(dichorophenol)およびDDHPの分析には、陰イオンモードを必要とした。
【0204】
タンパク質の速度論的特徴づけを助けるために、ハイスループットアッセイを開発した。この方法は、試薬o−ジアニシジンビス(ジアゾ化)亜鉛複塩(Fast Blue B Salt;FBBS;Sigma)を用いた着色生成物の形成に依存した。この方法は、α−ナプトール(napthol)の検出(Amax=600nm)について、Van Asperen(1962)によって報告された方法に基づく。今回の場合では、ジアゾ生成物が、フェニル尿素のアニリン代謝産物とともに形成することによって、約450nmのAbsmaxを有する黄色を生じたが、吸光度の規模、したがってアッセイの感受性は、アニリン同士の間で変化した。FBBS(9mg)をMilliQ(MQ)水(9.75mL)に溶解させ、その後、10%のSDS 5.25mLを添加した。酵素アッセイに対して1/6の添加を行い、試薬を添加して反応を停止した。ブタノールに浸漬したピペットチップを使用してあらゆる気泡を除去した後、Spectra MAX190分光光度計(Molecular Devices)でA450nmを読み取った。すべての酵素アッセイは、別段の指定のない限り、25℃で、0.4%のアセトニトリルを含有する25mMのMOPS、50mMのKCl(pH6.9)中で実施し、非酵素加水分解またはバックグラウンド吸光度について補正した。パラオキソンおよびN−ジメチル,O−4−ニトロフェニルカルバメート(DMNPC)の加水分解によって生じるp−ニトロフェノールは、A400nmで測定し、一方リニュロンエステルおよびピリミカーブを用いた速度論的アッセイは、LCMSによって分析した。
【0205】
酵素の特徴づけ
溶媒(アセトニトリルおよびメタノール)の影響は、77μMのジウロンを用いた1時間の2通りの(duplicate)アッセイにわたって、0.4〜18.2%の7つの濃度を使用することによって検査し、LCMSによってモニターした。酵素活性に対する温度効果は、2つの方法で求めた。第1に、反応が触媒された温度を、154μMのジウロンを用いて、2〜60℃の範囲の12の温度で制御した。第2に、酵素を、30〜55℃の6つの温度で10分間プレインキュベートした後、25℃で1時間アッセイした。残効性データをLCMSによって得、ボルツマン関数(式1)にフィッティングした。
【0206】
【数1】

この場合、活性(y)は、下方および上方漸近線yminおよびymax、プレインキュベーション温度T、Δy/2での融解温度T、および漸近線の間の曲線の形状を記述するパラメータλによって予測される。pHの効果をモニターするために、5〜9.5の10のpHで、50mMの酢酸、50mMのMES、および100mMのTris(EllisおよびMorrison、1982)を用いて一定イオン強度の緩衝液を調製した。各pH値で、2通りの速度論的曲線を得た。すべてのアッセイは、陰性対照を使用して起こる任意の非酵素加水分解について補正した。標準物質をそれぞれ3回注入し、3,4−ジクロロアニリン(DCA)の定量化曲線(線形)を構築するのに使用した。両酵素についてのデータを、Michaelis-Menten式、または基質阻害についての以下の式、すなわちν=Vmax/(1+I/Kis+Km/S)にフィッティングした。場合によっては、化合物の溶解限度により、Kを超えるいずれの測定も妨げられた;この場合、回帰により、v/[S]の傾きを遂行することができず、またはkcat/Kmを記録した。ベル型モデル(式2)
【0207】
【数2】

を活性y、log(kcat)およびlog(kcat/Km)のいずれか対pHをフィッティングするのに使用した。(y)maxはプラトー値であり、pKa1およびpKa2は、それぞれ酸性基および塩基性基についての見かけ上のpKa値である。Kaleidagraph v3.6(相乗作用ソフトウェア)を使用して、式をデータにフィッティングした。基質のpKa値は、オンラインデータベースwww.syrres.com/esc/physdemo.htm(Syracuse Research Corporation)より得た。
【0208】
ゲノムおよび系統発生分析
オープンリーディングフレーム(ORF)を視覚化するのにFGENESB(http://www.softberry.com)を使用し、手作業で確認した。ヌクレオチドおよび翻訳されたアミノ酸配列は、Basic Local Alignment Search Tool(BLAST;Altschulら、1997;およびSchafferら、2001)を使用して分析した。プロモーターの同定には、プログラムBPROM(www.softberry.com)を利用した。BioEdit v7.0.5.2(Hall、1999)を使用することによって、制限エンドヌクレアーゼ認識部位を同定し、プロモーター領域を分析し、ヌクレオチドの同一性スコアを計算した。
【0209】
PuhBアミノ酸配列の分析は、NCBI保存ドメイン検索を用いて実施し、この検索は、クエリーと最も異なった33配列(BLASTによって求めた)をディスプレイし、類似ドメイン構造を共有した。ClustalW(gi|28926800)によってよく整列しなかった1つの配列を除いた後、系統樹を構築した。完全欠失オプションをDayhoff(PAM)スコアリングマトリックスに適用し、Molecular Evolutionary Genetics Analysis(MEGA)ソフトウェアv4.0(Tamuraら、2007)を使用して近隣結合樹を構築し、これを1000回ブートストラップした。
【0210】
N×Hモチーフを有する他の配列を見出すために、検索ツールであるBLASTpおよびtBLASTnを、03/01/2008の時点で、NCBIデータベース;nr、特許、Env試料(タンパク質)、nr/nt、GSS、WGSS、HTGS、env試料(DNA)、およびゲノム参照配列に適用した。
【0211】
最も近い構造的な相同体、2QS8を用いたアライメントを使用して、PuhBの活性部位の相同モデルを作った(図4)。プログラムSwiss-PDB Viewer(KaplanおよびLittlejohn、2001)を使用して、保存された金属リガンドおよび第2シェル残基を、2QS8の構造上に挿入し、プログラムCOOT(EmsleyおよびCowtan、2004)を使用して、活性部位における1つの差である、N65によるH65の置換を、手作業で調整した。
【0212】
金属分析
100kDaのAmiconスピンカラム(Millipore)を用いて精製酵素を濃縮し、Nanodrop分光光度計(Nanodrop Technologies)を用いてA280を測定することによって定量化した。値は、理論的なA280吸光係数、すなわち、PuhAについて1A280=1.03mg.mL-1およびPuhBについて1A280=0.98mg.mL-1に対して調整した。National Measurement Instituteによる食物試料についての組織内法(NATA公認)を使用して、これらの試料を分析した。簡単に言えば、ポリプロピレン管内の濃硝酸2mL中で、蒸気浴上で2時間加熱することによって試料0.2mLを消化し、次いで高純度水で希釈して30mLにし、誘導結合プラズマ原子発光分析法(ICP-AES)および誘導結合プラズマ質量分析法(ICP-MS)によって分析した。
【実施例2】
【0213】
ジウロン分解細菌の単離
ジウロンが唯一の窒素源であった強化培養を、4つのジウロンに曝された土壌試料から設定した。HPCLによって検出した場合、ジウロンは、1回の培養で無機化され、この培養物を、活性を失うことなく8回連続的に継代培養した。ジウロン加水分解酵素活性を有するグラム陽性菌の純粋な菌株を、4代目の継代培養物から希釈平板法によって単離した。16S rDNAを配列決定し、高速増殖するマイコバクテリアのM.フォルツイツム(fortuitum)第3バイオバリアント(biovariant)複合体のメンバーである、M.ブリスバネンス ATCC 49938T(AY012577)(Schinskyら、2004)と99.7%の同一性を有することが判明した。この分離株をM.ブリスバネセ(brisbanese)JK1と命名し、そのジウロンの分解は、窒素の代替源の存在下でジウロンを含む液体培養物中のジウロンおよび代謝産物DCAの蓄積の減少をモニターすることによって確認した(図1)。
【実施例3】
【0214】
PuhBのクローニング
コスミドライブラリーは、大腸菌−マイコバクテリウムシャトルベクターpYUB415を使用して、M.ブリスバネンスJK1の全DNAから調製した。ジウロンの加水分解は、大腸菌LE392MP内でスクリーニングされた600のコスミドクローン(データを示していない)のいずれにおいてもまったく検出されず、320のコスミドクローン(10のプール内で発現)を、M.スメグマチスmc2内でスクリーニングした。ジウロン加水分解酵素活性を有する1つのプールを同定した。コスミドをこのプールから個々にスクリーニングしたとき、M.スメグマチスmc2にジウロン加水分解活性を付与した1つのコスミド(158)が見出された。
【0215】
制限消化を使用して、約40kbの挿入断片を縮小して、活性な15kbのBglII断片、次いで、活性な2.5kbのBamHI断片にした。2.5kbのBamHI断片は、プライマーウォーキングにより配列決定することによって、1つの完全なORFを明らかにした。1386bpのORFは、既知のジウロン加水分解酵素をコードする遺伝子puhAと79%のヌクレオチド同一性を有し、コードされたタンパク質は、PuhAと82%同一であることが判明した。新しく同定された遺伝子は、puhBと名付けた。
【0216】
puhA含有プラスミド(pHRIM622;(Turnbullら、2001b))およびpuhB含有コスミドを配列決定し、比較した。-10、-35、でのプロモーター領域における類似性、リボソーム結合部位(RBS)、およびパリンドローム配列を同定した(図2)。両配列においてシンテニーな(syntenous)tetR調節遺伝子を、同定した(78%のアミノ酸同一性)が、さらなる同一性はまったくなかった。プロモーター領域において、保存された調節遺伝子および潜在的な転写結合部位(パリンドローム配列)が存在することは、これらの加水分解酵素遺伝子が、その調節タンパク質についての遺伝子に隣接して位置し得ることを示す。
【実施例4】
【0217】
配列分析
NCBI保存ドメイン検索により、PuhAおよびBは、アミドヒドロラーゼスーパーファミリーに属する金属依存性加水分解酵素A(CD01299)サブファミリー内でクラスター形成することが明らかになった。32の最も多様な配列を使用して近隣接合系統樹を構築した(図3)。PuhAおよびB配列に最も近い分岐(86%のブートストラップ支持)は、アルスロバクター属種の菌株B-5に由来する有機リン酸加水分解酵素を含有していた(Ohshiroら、1999)。一般に、アミドヒドロラーゼタンパク質の鎖1上のH×Hモチーフは保存されており、金属結合に必須であると考えられている(SeibertおよびRaushel、2005)。しかし、フェニル尿素加水分解酵素は、この位置において異なるN×Hモチーフを有する。実際に、BLASTを使用することによって、全非重複データベース(NCBI)に対してPuhBを整列させたとき、N×Hモチーフを共有する4つの短いDNA配列のみが同定され、その珍しさを確認した。
【0218】
SeibertおよびRaushel(2005)による包括的な概説では、アミドヒドロラーゼスーパーファミリーが、その金属結合リガンドに基づいて7つのサブタイプに分類された。既知の構造を有するフェニル尿素加水分解酵素の最も近い類縁体は、2QS8、すわなち、アルテロモナス・マクレオディイ(Alteromonas macleodii)に由来するXaa-Proジペプチダーゼ、2P9B、すなわち、ビフィドバクテリウム・ロングム(Bifidobacterium Longum)に由来する推定上のプロリダーゼ、および2GOK、すなわち、アグロバクテリウム・ツメファシエンスに由来するイミダゾロンプロピオナーゼであり、そのすべてはサブタイプIIIに属する。このサブタイプは、β鎖1からのH×Hモチーフ、β鎖5からのH、およびβ鎖8からのDによって配位されたZnまたはFeを含有する単核活性部位を含有する。β鎖6上の保存されたHは、活性部位の第2シェル内に位置しており、触媒水分子または基質に水素結合していると考えられている。興味深いことに、これらの構造は、活性部位においてリシン残基も有するが、これは金属イオンによって配位されていない。PuhAおよびBにおいて、H×Hモチーフの第1のHは、Nによって置換されており、このアスパラギンは、金属配位に関与していることを示す。アスパラギンは、他の金属酵素における金属イオン配位に関与することが知られている(Jacksonら、2007)。結晶構造は、活性部位構造を確認するのに必要であるが、PUHにおけるヒスチジン金属リガンドをアスパラギンで置換すると、PUHは他のアミドヒドロラーゼ亜群と別のものとなり、したがってこれらは、新規の構造上のサブタイプを形成する(VIII;表3)。
【0219】
2QS8の構造に基づく、フェニル尿素加水分解酵素の活性部位の一部の相同モデルを、図5に示す。フェニル尿素加水分解酵素において保存されていない2QS8活性部位中の唯一の残基は、第1のヒスチジンであり、これは、このモデルにおいてアスパラギンによって置換されている。2GOKの活性部位構造と比較される場合、最大の差は、β鎖5からのヒスチジン金属リガンドの位置である;2QS8において、これは、金属イオンを配位しておらず、水分子によって置換されており、一方2GOKにおいて、これは、活性部位金属イオンに配位している。これが機能的に重要であるか、または結晶化アーチファクトであるかどうかは不明確である。これ以外では、構造はともに、金属リガンドでない活性部位においてヒスチジンおよびリシン残基を含有するが、リシンは、類似の位置にはない。最後に、活性部位金属イオンにしっかりと配位した水分子が存在する。フェニル尿素加水分解酵素における、金属が結合した水、ならびに第2シェルのヒスチジンおよびリシン残基の触媒的役割を以下に論じる。
【0220】
【表3】

【実施例5】
【0221】
発現および精製
最初に、PuhAおよびBを、それぞれ、A.グロビフォルミスD47およびM.ブリスバネンスJK1から自然に発現させ、精製した。構成的に発現した酵素を、30〜50%のAS分画の可溶性画分を最初に得ることによって、その後にHICによって、最後にSECによって精製した。精製係数51をPuhAについて実現した(表4)。PuhAの分子量と一致したSDS-PAGE上の約50kDaのバンドの同一性を、トリプシン消化ペプチドフィンガープリント法によって確認し、これにより、予測されたNおよびC末端を含めて58%の配列包括度を得た。N末端断片は、最初のメチオニンを欠損しており、一般的な細菌のエキソペプチダーゼ処理(Giglioneら、2004)と一致した。残念ながら、天然のPuhBは、精製の間に活性を失った。しかし、DMNPCを使用して活性をモニターすることによって、PuhAおよびPuhBについての天然分子量はともに、SECを使用して、約310kDaであると計算され、6つの約50kDaのサブユニットからなる300kDaの六量体と一致した。予測された単量体の質量(N末端のメチオニンを除く)は、PuhAおよびPuhBについてそれぞれ48.752および49.546kDaである。
【0222】
【表4】

【0223】
組換え発現のために、PuhAおよびBを、pET14b発現ベクターにクローニングし、20℃で11時間、その後0.1mMのIPTGを用いて3時間誘導することによって、大腸菌Rosetta 2 DE3細胞内で発現させた。過剰発現したバンドが、SDS-PAGEによって判断した場合の正しい分子量で観察された。しかし、天然の発現と比較した場合、可溶性画分における比活性は、PuhAについて約10分の1であり、PuhBについては活性がまったく検出されなかった(データは示していない)。次いでタンパク質をマイコバクテリウム発現ベクター(pMV261)にクローニングし、M.スメグマチス内で発現させた。この場合では、PuhAを発現する細胞の可溶性画分中の比活性は、天然の発現において測定された比活性と同等であり、PuhBを発現する細胞の可溶性画分も、ジウロン加水分解酵素活性を示した。次いで両タンパク質を、AS沈殿、HIC、AEX、およびSECによって精製して均質にした(図6;表5)。SDS-PAGEによって判断された場合の予測モノマー分子量の精製組換えタンパク質は、触媒的に活性であり、オリゴマー形成して約300kDaの複合体になり、六量体に最もなり易いことが、SECによって判断された。
【0224】
【表5】

【0225】
トリプシン消化
SDS-PAGEからのバンドを切り取り、さいの目に切って約1mmの立方体にした。これらを、1:1のアセトニトリル/25mMの炭酸水素アンモニウム50μL中で2〜3回洗浄することによってクーマシー染色剤を除去し、その後100%のアセトニトリル中で洗浄した。試料を真空乾燥させ、次いで25mMの炭酸水素アンモニウム(pH7.8)中の1/30希釈のPromega配列決定グレードトリプシン溶液(V5113)中で再水和した。乾燥は、37℃で一晩インキュベートすることによって実現した。試料を0.1%のギ酸中で再水和し、0.22μmの膜(Millipore)に通して濾過し、MS-TRAPによって分析した。分析は、Campbellら、2008に記載されているように、マイクロ噴霧器を有するエレクトロスプレーイオン源を使用して、Agilent XCTイオントラップ質量分析計を組み合わせた、Zorbax SB-C18(5μm、150×0.5mm)カラムを装着したAgilent 1100液体クロマトグラフィーシステムを利用して、P.Campbellが好意で実施した。トリプシン消化物データは、デフォルト設定値を使用して、Spectrum Mill MS Proteomics Workbench Rev A.03.02.060a Agilent Technologiesを使用して分析した。データを、トリプシン、ケラチン、およびアクリルアミドを含む混入物のデータベースに対して最初にオートバリデートし、次いでPuhAに対してスクリーニングし、最後にNCBI真正細菌nrタンパク質データベース(11.06)を使用した。リバースデータベースを含めることによって、断片化がフォワードデータベース、ならびにリバースにマッチするように思われた大きいペプチドの疑わしいマッチを除外した。
【実施例6】
【0226】
金属分析
配列分析は、金属依存性アミドヒドロラーゼスーパーファミリー内にPuhAおよびBを配置する。したがって、本発明者らは、誘導結合プラズマ原子発光分光分析法(ICP-AES)、および誘導結合プラズマ原子(plasma-atomic)質量分析法(ICP-MS)によってこれらのタンパク質中の活性部位金属の同一性を求めた。この分析は、試験した第2列遷移金属(Co、Cu、Fe、Mn、Ni、およびZn)のうちで、Znが最も豊富であり、計算ストキオメトリー(stochiometry)は、PuhAおよびPuhBの両方において、活性部位当たり0.6Znイオンであることを示した。おそらく、より低いレベル(約5〜10%)での他の金属イオンの無差別の取込みに加えて、過剰発現によるアポ酵素の割合が存在した。この結果は、フェニル尿素加水分解酵素が単核亜鉛酵素であることを強く示す。
【実施例7】
【0227】
酵素の安定性
2〜35℃の間の温度で、ジウロンに対するPuhAおよびPuhBの活性を求めることによって、酵素の好熱性(thermophilicity)を試験した(図7)。両酵素についての活性極大は、30℃と35℃の間であった。次いで、いくつかの温度でインキュベートした後の残効性の測定を使用して、両酵素の熱的安定性を試験した。やはり、両酵素は、ほとんどまったく同様に挙動し、40℃で10分インキュベートした後に有意な活性を保持し、これを超えると両酵素は活性を失い始めた。これらの結果をプロットし、減衰のボルツマン方程式をフィッティングし、50%の活性を示すTmは、PuhAについて46.6℃で、およびPuhBについて46.0℃で保持した(図8A)。最後に、溶媒のアセトニトリルおよびメタノール(1〜18%v/vの範囲内)の存在下での安定性を求めた。PuhBは、PuhAと比較して、これらの溶媒の使用に対する弾力性がわずかに増大しているように思われたが、両酵素は、メタノールおよびアセトニトリルの両方の存在下で著しく阻害された(図8B)。
【実施例8】
【0228】
基質範囲および速度論的特性
両酵素による15のフェニル尿素除草剤の代謝回転を、LCMSを使用してモニターした(図9)。他の10の基質より著しくかさ高い5つのフェニル尿素(ジメフロン、ネブロン、シズロン、テブチウロン、およびチジアズロン)の検出可能な加水分解はまったくなく、触媒作用に対するその耐性についての可能な基準を示している。N−ジメチルまたはN−メトキシ−N−メチル化合物としてのその側鎖の同一性によってグループ化することができる10の残りのフェニル尿素基質は、1min-1と526min-1の間の速度(kcat)で代謝回転された。N−メトキシ−N−メチル基質のリニュロンの代謝回転速度(kcat)は、他の点では構造的に同一であるN−ジメチル基質のジウロンの代謝回転速度より約9倍高かった。実際に、ジウロン分解について選択された細菌からPuhAおよびBの両方を単離したにもかかわらず、両酵素は、リニュロンで最大の触媒効率を示した(それぞれ、37.5μM-1.min-1および33.9μM-1.min-1のkcat/Km値)。両酵素は、他のN−メトキシ−N−メチル基質についても同様に、kcat値が有意に高かった。N−メトキシ−N−メチル基質中の酸素置換基のより大きい電子求引性特性が、これらの化合物について観察されたより速い代謝回転速度に寄与する場合がある。
【0229】
PuhAは、N−ジメチルフェニル尿素のジウロンより、低い濃度で効率的にN−メトキシ−N−メチルフェニル尿素のリニュロンの代謝回転を触媒する(Km 6.8μM対55.0μM)。対照的に、PuhBは、触媒作用のリニュロンおよびジウロンの加水分解について同等のKm値を有する(7.6μM対11.0μM)。実際に、PuhBは、イソプロツロンは例外として、PuhAよりN−ジメチル基質について包括的に低いKm値を示す。したがって、PuhAとB配列の配列差の一部が基質結合ポケットにおける構造上の差をもたらし、これがPuhBを、N−ジメチルフェニル尿素加水分解のより効率的な触媒にしているという可能性がある。さらに、フェニル尿素基質のN’−フェニル基の置換も両酵素が反応を効率的に触媒することができる濃度(K)に有意に影響すると思われる。
【0230】
中性緩衝液中のジウロンのknon値は、Salvestriniら(2002)の研究から2.8×10-10sec-1と見積もられた。したがって、0.48sec-1のジウロンについてのkcatを有するPuhBは、1.7×109の速度増強kcat/knonを提供する。関連した単核の亜鉛または鉄サブタイプIII酵素、アデノシンデアミナーゼ(ADA)およびシトシンデアミナーゼ(CDA)と比較したとき。2.1×1012の速度増強を伴った370sec-1のADAのkcat、および1.1×1012の速度増強を伴った300sec-1のCDAのkcatは、はるかに優れている(Frickら、1987;Sniderら、2000)。
【0231】
フェニル尿素の代謝回転に加えて、PuhAおよびPnhBはともに、カルバメートおよび有機ホスフェート化合物の加水分解を触媒するという、著しい無差別な活性を示した(図9)。パラオキソンエチルについての代謝回転速度は、イソプロツロンよりわずかに低かっただけであるが、最も劣ったフェニル尿素基質であるピリミカーブは、両酵素について試験した最も劣った基質であり、触媒効率は、PuhAおよびPnhBについて、それぞれジウロンの104分の1および103分の1であった。リニュロンのカルバメート類似体を合成(脱離基へのアミド結合がエステル結合に置換された)することによって、その他の点で類似の基質中のエステルおよびアミド結合の加水分解を比較した。精製されたPuhAおよびPuhBはともに、フェニル尿素と同じぐらい効率的にこの基質を加水分解することが判明し(図9)、これらの酵素は一般的な加水分解酵素であり、フェニル尿素中のアミド結合の加水分解性についてのその触媒特異性(エステルまたはリン酸エステル結合とは対照的に)は、基質結合ポケットの形状の結果であることを示している。
【0232】
以前に、A.グロビフォルミスD47の天然可溶性抽出物は、カルバメートのDMNPCを加水分解することが示され(Robinson、2003)、これは、本研究における精製酵素を使用して確認された(図9)。DMNPCは、メトキスロンなどの劣ったフェニル尿素基質より高い効率で代謝回転された。カルバメートのピリミカーブも、PuhAおよびBによって徐々に代謝回転されたが、いずれの酵素も、やはり試験された2つの他のカルバメート(カルバリルおよびチオベンカルブ)の加水分解を触媒しなかった。興味深いことに、有機ホスフェートのエチルパラオキソンも両タンパク質によって代謝回転されたが、ホスホチオネート(phosphothionate)のメチルパラチオンは代謝回転されなかった。これは、アルスロバクター属種菌株B-5に由来するフェニル尿素加水分解酵素と有機リン酸加水分解酵素の間の配列相同性を踏まえると興味深い(Ohshiroら、1999)。
【実施例9】
【0233】
触媒機構
pH活性分析を実施することによって、フェニル尿素加水分解酵素による、フェニル尿素加水分解の機構を探索した。図10で分かるように、両酵素は、kcat/Kmについて広いpH最適条件および6.5と8.5の間のkcatを示す。log kcatおよびlog kcat/Kmのプロットは、PuhAおよびBについてのいくつかの興味深い機構の情報を提供する。第1に、両酵素においてpH4と6の間で著しい触媒反応速度の増加があり、これは、D344および場合によりH273(PuhBの番号付け)と協調して、活性部位金属イオンによる求核性水酸化物の生成の結果であると思われる。pH6未満でkm値の大きな増加もある。これは、基質結合/配位に関与する活性部位の第2シェルにおけるヒスチジン残基(H273)と整合性がある。両酵素においてpKeが約10の触媒効率の減少があり(表6)、これは、活性部位の近傍におけるリシン(K206)残基の脱プロトン化に起因し得る。加水分解酵素の活性部位におけるリシンのアミン基についてのもっともらしい役割は、脱離基上で生じている負電荷の安定化にあると思われる。これらのデータに基づいて、触媒機構を図11に提案する。最後に、kcatおよびkcat/KmはともにpHによって影響され、N-C結合の加水分解が律速であることを示す。PuhAは、塩基性pHでKmのわずかな増加を示し、これはPuhBにおいてみられず、これらの酵素の基質結合ポケットは、同一ではない場合があることを示す。
【0234】
【表6】

【0235】
代謝回転速度に対するN’−フェニル基の速度論的効果を調査するために、N−ジメチル基質の代謝回転についてブレンステッドプロット(pKaフェニル基/log kcat)を作成した(図12)。この実験の目的は、触媒反応速度に対する脱離基の電子効果を定量化することであった。範囲は比較的小さいが(3〜5のpKa値)、これが、酵素の活性スペクトルについて可能な最大の範囲である。log kcatとpKaの関係は非線形である:pKa4〜5の間の傾きは負であり、PuhAについて-1.6およびPuhBについて-1.1のβlg値を与え、移行状態における大きな程度の結合切断を示している。線形関数をデータのこの部分にフィッティングし(両酵素についてr2 0.98)、一方曲線は、4未満のpH値で平らになるように思われる。脱離基依存性の傾きの変化は通常、触媒機構または律速段階の変化に起因する(Hong and Raushel、1996;McCainら、2002)。これは、pKa値が4未満の非常に電子求引性脱離基については、N-C結合の切断は、もはや律速段階であり得ないことを示す。
【0236】
広く記載した本発明の精神または範囲から逸脱することなく、特定の実施形態において示した本発明に、多数の変形および/または改変を行うことができることが、当業者によって理解されるであろう。したがって、本実施形態は、あらゆる点で例示的であり、限定的ではないとみなされるべきである。
【0237】
本明細書で論じ、かつ/または参照したすべての刊行物は、その全体が本明細書に組み込まれている。
【0238】
本願は、2008年7月9日に出願されたUS61/134,442からの優先権を主張し、その内容全体は、参照により本明細書に組み込まれている。
【0239】
本明細書に含めた文献、行為、物質、デバイス、物品などの任意の考察は、単に本発明についての背景を提供する目的のためである。任意またはすべてのこれらの事柄は、従来技術の基礎の一部を形成する、またはこれが本願の各請求項の優先日前に存在した場合、本発明に関連した分野における共通の一般的な知見であったことを認めるものと解釈されるべきでない。
【0240】
【表7−1】

【表7−2】

【表7−3】

【0241】
【配列表フリーテキスト】
【0242】
配列番号l−PuhBのアミノ酸配列
配列番号2−PuhBをコードするヌクレオチド配列
配列番号3−PuhAのアミノ酸配列
配列番号4−PuhAをコードするヌクレオチド配列
配列番号5−プライマー(PuhA-petl4b 順方向)
配列番号6−プライマー(PubA-petl4b 逆方向)
配列番号7−プライマー(PuhB-pET14b 順方向)
配列番号8−プライマー(PuhB-pET14b 逆方向)
配列番号9−プライマー(His AB pMV 順方向)
配列番号10−プライマー(PuhA-pMV261 順方向)
配列番号11−プライマー(PuhB-pMV261 順方向)
配列番号12−プライマー(PuhA pMV261 逆方向)
配列番号13−プライマー(PuhB pMV261 逆方向)
配列番号14−2QS8のアミノ酸配列

【特許請求の範囲】
【請求項1】
i)配列番号1に提供されるアミノ酸配列、
ii)i)と少なくとも83%同一であるアミノ酸配列および/または
iii)i)またはii)の生物学的活性断片
を含む、実質的に精製された、および/または組換えポリペプチドであって、フェニル尿素、カルバメート、および/または有機ホスフェートを加水分解することができるポリペプチド。
【請求項2】
フェニル尿素がN−ジメチルまたはN−メトキシ−N−メチル置換フェニル尿素である、請求項1に記載のポリペプチド。
【請求項3】
N−ジメチル置換フェニル尿素が、ジウロン、クロルトルロン、フルオメツロン、メトキスロン、イソプロツロン、またはフェヌロンである、請求項2に記載のポリペプチド。
【請求項4】
N−ジメチル置換フェニル尿素がジウロンである、請求項3に記載のポリペプチド。
【請求項5】
ジウロン、クロルトルロン、フルオメツロン、メトキスロン、および/またはフェヌロンに対して、配列番号3に提供されるアミノ酸配列を含むポリペプチドよりも低いKを有する、請求項3または請求項4に記載のポリペプチド。
【請求項6】
N−メトキシ−N−メチル置換フェニル尿素が、リニュロン、クロルブロムロン、メトブロムロン、またはモノリニュロンである、請求項2に記載のポリペプチド。
【請求項7】
カルバメートが、リニュロンエステル、またはDMNPCである、請求項1に記載のポリペプチド。
【請求項8】
有機ホスフェートがパラオキソンエチルである、請求項1に記載のポリペプチド。
【請求項9】
配列番号1と少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を含む、請求項1から8のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項10】
マイコバクテリウム属種から精製することができる、請求項1から9のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項11】
マイコバクテリウム属種が、オーストラリアのNational Measurement Instituteにおいて2008年5月16日にアクセション番号V08/013277として寄託されたマイコバクテリウム・ブリスバネンスJK1である、請求項10に記載のポリペプチド。
【請求項12】
少なくとも1つの他のポリペプチドに融合されている、請求項1から11のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項13】
i)配列番号2に提供されるヌクレオチド配列、
ii)請求項1から12のいずれか一項に記載のポリペプチドをコードするヌクレオチド配列、
iii)i)と少なくとも80%同一であるヌクレオチド配列、
iv)ストリンジェントな条件下でi)とハイブリダイズするヌクレオチド配列および/または
v)i)〜iv)のいずれか1つと相補的であるヌクレオチド配列
を含む、単離されたおよび/または外因性ポリヌクレオチド。
【請求項14】
フェニル尿素、カルバメート、および/または有機ホスフェートを加水分解するポリペプチドをコードする、請求項13に記載のポリヌクレオチド。
【請求項15】
請求項13または請求項14に記載のポリヌクレオチドを含むベクター。
【請求項16】
ポリヌクレオチドが、プロモーターに作動可能に連結されている、請求項15に記載のベクター。
【請求項17】
請求項13もしくは請求項14に記載の少なくとも1つのポリヌクレオチドおよび/または請求項15もしくは請求項16に記載の少なくとも1つのベクターを含む宿主細胞。
【請求項18】
宿主細胞が植物細胞または細菌性細胞である、請求項17に記載の宿主細胞。
【請求項19】
請求項1から12のいずれか一項に記載のポリペプチドを生成するための方法であって、ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの発現を可能にする条件下で、前記ポリペプチドをコードする請求項17もしくは請求項18に記載の宿主細胞、または前記ポリペプチドをコードする請求項15もしくは請求項16に記載のベクターを培養するステップと、発現されたポリペプチドを回収するステップとを含む方法。
【請求項20】
請求項19に記載の方法を使用して生成されたポリペプチド。
【請求項21】
請求項1から12のいずれか一項に記載のポリペプチドに特異的に結合する単離抗体。
【請求項22】
請求項1から12もしくは請求項20のいずれか一項に記載の少なくとも1つのポリペプチド、請求項13もしくは請求項14に記載の少なくとも1つのポリヌクレオチド、請求項15もしくは請求項16に記載のベクター、請求項17もしくは請求項18に記載の宿主細胞、および/または請求項21に記載の抗体を含む組成物。
【請求項23】
フェニル尿素、カルバメート、および/または有機ホスフェートを加水分解するための組成物であって、請求項1から12もしくは請求項20のいずれか一項に記載のポリペプチド、および/または請求項17もしくは請求項18に記載の宿主細胞を含む組成物。
【請求項24】
1つまたは複数の許容可能な担体を含む、請求項22または請求項23に記載の組成物。
【請求項25】
金属イオンを含む、請求項22から24のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項26】
金属イオンが、Co2+、Zn2+および/またはMg2+である、請求項25に記載の組成物。
【請求項27】
宿主細胞を検出および/または選択するための選択マーカーとしての、請求項1から12のいずれか一項に記載のポリペプチド、または前記ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの使用。
【請求項28】
宿主細胞を検出するための方法であって、
i)細胞(複数可)によるポリヌクレオチドの取込みを可能にする条件下で、細胞または細胞の集団を、請求項1から12のいずれか一項に記載のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドと接触させるステップと、
ii)ステップi)からの細胞、またはその子孫細胞を、フェニル尿素、カルバメート、および/または有機ホスフェートに曝すことによって宿主細胞を選択するステップと
を含む方法。
【請求項29】
ポリヌクレオチドが、請求項1から12のいずれか一項に記載のポリペプチドをコードする第1のオープンリーディングフレーム、および請求項1から12のいずれか一項に記載のポリペプチドをコードしない第2のオープンリーディングフレームを含む、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
第2のオープンリーディングフレームがポリペプチドをコードする、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
第2のオープンリーディングフレームが、翻訳されていないポリヌクレオチドをコードする、請求項29に記載の方法。
【請求項32】
翻訳されていないポリヌクレオチドが、触媒核酸、dsRNA分子、またはアンチセンス分子をコードする、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
細胞が、植物細胞、細菌性細胞、真菌細胞、または動物細胞である、請求項28から32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
細胞が植物細胞である、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
フェニル尿素、カルバメート、および/または有機ホスフェートを加水分解するための方法であって、フェニル尿素、カルバメート、および/または有機ホスフェートを、請求項1から12のいずれか一項に記載のポリペプチドと接触させるステップを含む方法。
【請求項36】
ポリペプチドが、請求項17または請求項18に記載の宿主細胞によって産生される、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
請求項1から12のいずれか一項に記載の少なくとも1つのポリペプチドをコードする外因性ポリヌクレオチドを含むトランスジェニック植物。
【請求項38】
ポリヌクレオチドが、植物のゲノム中に安定に組み込まれている、請求項37に記載のトランスジェニック植物。
【請求項39】
請求項37または請求項38に記載の植物の一部。
【請求項40】
種子である、請求項39に記載の植物の一部。
【請求項41】
試料中でフェニル尿素、カルバメート、および/または有機ホスフェートを加水分解するための方法であって、試料を、請求項37または請求項38に記載のトランスジェニック植物と接触させるステップを含む方法。
【請求項42】
試料が土壌である、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
請求項1から12のいずれか一項に記載の少なくとも1つのポリペプチドをコードする外因性ポリヌクレオチドを含む、トランスジェニック非ヒト動物。
【請求項44】
オーストラリアのNational Measurement Instituteにおいて2008年5月16日にアクセション番号V08/013277として寄託されたマイコバクテリウム属の単離菌株。
【請求項45】
フェニル尿素、カルバメート、および/または有機ホスフェートを加水分解するための組成物であって、請求項44に記載の菌株を含む組成物。
【請求項46】
請求項17もしくは請求項18に記載の宿主細胞、請求項37もしくは請求項38に記載のトランスジェニック植物、請求項43に記載のトランスジェニック非ヒト動物、または請求項44に記載の菌株の抽出物であって、請求項1から12のいずれか一項に記載のポリペプチドを含む抽出物。
【請求項47】
フェニル尿素、カルバメート、および/または有機ホスフェートを加水分解するための組成物であって、請求項46に記載の抽出物を含む組成物。
【請求項48】
フェニル尿素、カルバメート、および/または有機ホスフェートを加水分解する方法であって、フェニル尿素、カルバメート、および/または有機ホスフェートを、請求項44に記載の菌株、請求項45もしくは請求項47に記載の組成物、および/または請求項46に記載の抽出物と接触させるステップを含む方法。
【請求項49】
フェニル尿素、カルバメート、および/または有機ホスフェートを加水分解するためのポリマースポンジまたはポリマーフォームであって、ポリマー多孔質支持体上に固定化された請求項1から12のいずれか一項に記載のポリペプチドを含むフォームまたはスポンジ。
【請求項50】
フェニル尿素、カルバメート、および/または有機ホスフェートを加水分解するための方法であって、フェニル尿素、カルバメート、および/または有機ホスフェートを、請求項49に記載のスポンジまたはフォームと接触させるステップを含む方法。
【請求項51】
フェニル尿素、カルバメート、および/または有機ホスフェートを加水分解する能力が増強された、または様々な型のフェニル尿素、カルバメート、および/または有機ホスフェートに対して基質特異性が変化したポリペプチドを生成する方法であって、
i)請求項1から12のいずれか一項に記載の第1のポリペプチドの1つまたは複数のアミノ酸を変更するステップと、
ii)ステップi)から得られた変更したポリペプチドの、フェニル尿素、カルバメート、および/または有機ホスフェートを加水分解する能力を判定するステップと、
iii)ステップi)で使用したポリペプチドと比較したとき、フェニル尿素、カルバメート、および/または有機ホスフェートを加水分解する能力が増強された、または様々な型のフェニル尿素、カルバメート、および/または有機ホスフェートに対して基質特異性が変化した、変更されたポリペプチドを選択するステップと
を含む方法。
【請求項52】
請求項51に記載の方法によって生成されるポリペプチド。
【請求項53】
フェニル尿素、カルバメート、および/または有機ホスフェートを加水分解することができる微生物をスクリーニングするための方法であって、
i)唯一の窒素源として、フェニル尿素、カルバメート、および/または有機ホスフェートの存在下で候補微生物を培養するステップと、
ii)微生物が、成長および/または分裂することができるかどうかを判定するステップと
を含む方法。
【請求項54】
少なくとも1つの請求項1から12、請求項20、もしくは請求項52のいずれ一項に記載のポリペプチド、少なくとも1つの請求項13もしくは請求項14に記載のポリヌクレオチド、請求項15もしくは請求項16に記載のベクター、請求項17もしくは請求項18に記載の宿主細胞、請求項21に記載の抗体、請求項22から26、請求項45、もしくは請求項47のいずれか一項に記載の組成物、少なくとも1つの請求項39もしくは請求項40に記載の植物の一部、少なくとも1つの請求項44に記載の菌株、少なくとも1つの請求項46に記載の抽出物、および/または少なくとも1つの請求項49に記載のポリマースポンジまたはポリマーフォームを含むキット。
【請求項55】
カルバメートおよび/または有機ホスフェートを加水分解するための方法であって、カルバメートおよび/または有機ホスフェートを、
i)配列番号1または配列番号3に提供されるアミノ酸配列、
ii)i)と少なくとも40%同一であるアミノ酸配列および/または
iii)i)もしくはii)の生物学的活性断片
を含む、実質的に精製されたおよび/または組換えポリペプチドであって、カルバメートおよび/または有機ホスフェートを加水分解することができるポリペプチドと接触させるステップを含む方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9−1】
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【図9−2】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公表番号】特表2011−527179(P2011−527179A)
【公表日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−516927(P2011−516927)
【出願日】平成21年7月8日(2009.7.8)
【国際出願番号】PCT/AU2009/000883
【国際公開番号】WO2010/003184
【国際公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【出願人】(305039998)コモンウェルス サイエンティフィック アンド インダストリアル リサーチ オーガニゼイション (92)
【Fターム(参考)】