説明

フェノ−ル樹脂発泡体及びその製造方法

【課題】 フェノ−ル樹脂発泡体に関して、製造が容易でありい、保存安定性に問題がなく、得られた発泡体に撥水性を付与し、発泡体自身の吸水性を低減させたフェノ−ル樹脂発泡体を提供する。
【解決手段】 フェノ−ル樹脂に、整泡剤、発泡剤、酸性硬化剤、改質剤を配合し、発泡硬化するフェノ−ル樹脂発泡体の製造方法において、改質剤として下記一般式式[1]で表されるポリアルキル水素シロキサンをフェノ−ル樹脂100重量部に対して、0.2〜7重量部配合することを特徴とするフェノ−ル樹脂発泡体の製造方法及びフェノ−ル樹脂発泡体。

R R R
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R−Si−O(−Si−O)n−Si−O−R・・・・[1]
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R H R
(但し、RはC1〜C18のアルキル基を示す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建材分野の断熱材、防炎材等の用途に有用なフェノ−ル樹脂発泡体に関し、さらに詳しくはフェノール樹脂発泡体であって撥水性を有すると共に低吸水性であるフェノ−ル樹脂発泡体の製造方法並びに撥水性フェノール樹脂発泡体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
フェノール樹脂発泡体は、熱可塑性樹脂発泡体に比して断熱性、難燃性、耐熱性、防火性に優れる断熱材として知られ、耐熱性を必要とされる建築用発泡材、その他各種産業分野において使用されている。フェノ−ル樹脂発泡体は、一般にフェノ−ル樹脂、整泡剤、発泡剤、及び酸性硬化剤を混合し、常温〜120℃で発泡硬化させて製造される。
これらのフェノ−ル樹脂発泡体は、通常、フェノール樹脂構造中に親水性の水酸基が含まれること、また硬化剤として酸成分を用いることで発泡体中に未反応の遊離酸が含まれていることの為、得られたフェノ−ル樹脂発泡体には親水性があり発泡体表面から吸水し易い性質があり、吸水を避けられない使用条件では断熱性能の低下、機械的強度の低下を起こす懸念があった。
【0003】
フェノール樹脂発泡体に吸水性を低下させる試みとして、例えばレゾール型フェノール樹脂が炭素数2〜6であるアルキレングリコール又はアルキレンエーテルグリコールのジ、及び又はトリグリシジルエーテル化合物の少なくとも一種以上で変性されたものを用い、硬化促進剤としてレゾルシノール類をを含む酸性触媒を用いることで耐吸湿性の改良されたフェノール樹脂発泡体を提案している[特許文献1参照]。
【0004】
この場合、グリシジルエーテル化合物として、ネオペンチルグリコール、1、6ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル等を用いている。これらの化合物はフェノール樹脂との相溶性の点では良好であるが、ほとんどが液状であるため、保存性が低く径日的に液分離し易いこと、未反応のグリシジルエーテルがフェノール樹脂発泡体から溶出し易く製品の品質が不安定となり易いこと、グリシジルエーテルが発泡硬化反応に影響を与え易いことがある。又、酸性触媒中にレゾルシノール類を配合して用いた場合、レゾルシノールの高い反応活性から生じる発熱より、発泡硬化反応のタイミングを調整することは難しく、安定したフェノール樹脂発泡体を供給することは難しいと考えられる。経日的に安定した低吸水性を有するフェノール樹脂発泡体の開発が要求されていた。
【0005】
【特許文献1】特開昭59−124940号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、フェノ−ル樹脂発泡体に関して、製造が容易でありい、保存安定性に問題がなく、得られた発泡体に撥水性を付与し、発泡体自身の吸水性を低減させたフェノ−ル樹脂発泡体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、
[1] フェノ−ル樹脂に、整泡剤、発泡剤、酸性硬化剤、改質剤を配合し、発泡硬化するフェノ−ル樹脂発泡体の製造方法において、改質剤として下記一般式式[1]で表されるポリアルキル水素シロキサンをフェノ−ル樹脂100重量部に対して、0.2〜7重量部配合することを特徴とするフェノ−ル樹脂発泡体の製造方法、及び


R R R
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R−Si−O(−Si−O)n−Si−O−CH ・・・・[1]
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R H R
(但し、RはC1〜C18のアルキル基を示す。)
【0008】
[2] フェノ−ル樹脂に、整泡剤、発泡剤、酸性硬化剤、改質剤を配合し、発泡硬化するフェノ−ル樹脂発泡体の製造方法において、改質剤としてポリアルキル水素シロキサンをフェノ−ル樹脂100重量部に対して、0.2〜7重量部配合したフェノ−ル樹脂発泡体、を開発することにより上記の課題を解決した。
【発明の効果】
【0009】
フェノ−ル樹脂、整泡剤、発泡剤、酸性硬化剤の存在下で発泡硬化するフェノ−ル樹脂フォームの製造方法において、改質剤として、ポリアルキル水素シロキサンを発泡、硬化反応時に配合する簡単な操作により、製造されたフェノール樹脂発泡体に撥水性を付与し、且つ吸水性を低下させることが出来たものであり、この結果、他の撥水剤の使用に比して耐熱性のある樹脂発泡体を安価に且つ安定して提供できることになった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明は、フェノ−ル樹脂発泡体に撥水性を付与して発泡体表面からの吸水を少なくする為に、フェノール樹脂に改質剤としてポリアルキル水素シロキサンを配合してフェノール樹脂発泡体を製造することで、発泡体に撥水性を与え、吸水量が低減することが得られた。
【0011】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明で使用するフェノ−ル樹脂は、ごく一般の発泡用フェノール樹脂[レゾール系]を用いることができる。
フェノ−ル類とアルデヒド類をアルデヒド類過剰でアルカリ性触媒の存在下に反応させ、脱水濃縮させることにより製造される。
フェノ−ル類としては、フェノ−ル、クレゾ−ル、キシレノ−ル等が挙げられるが、これらの中でも反応性、硬化性の面からフェノ−ル、m−クレゾ−ルが好ましい。これらフェノ−ル類は単独で用いても、混合してもよく、さらにはo−クレゾ−ル、p−クレゾ−ル、ビスフェノ−ル等と併用してもよい。アルデヒド類としては、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、ポリオキシメチレン、トリオキサン等が使用できる。これらアルデヒド類は単独で用いても、混合してもよい。
【0012】
フェノール樹脂の製造に使用するアルカリ性触媒としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化バリウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム等が挙げられる。
本発明におけるフェノ−ル樹脂発泡体が有する優れた効果を発揮する理由は下記のように推測される。
【0013】
従来、改質剤としてシロキサン系(ジメチルシロキサン、ジメチルポリシロキサン、ポリアルキル水素シロキサン、メチルケイ酸ソーダ等)、フッ素系、パラフィン系、脂肪酸系、イソシアネート系、油脂系、エチレンオキサイド系等が使用されてきたが、この中で特に下記一般式[1]で示されるシロキサン系のポリアルキル水素シロキサン


R R R
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R−Si−O(−Si−O)n−Si−O−CH ・・・・[1]
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R H R
(但し、RはC1〜C18のアルキル基を示す。)

を用いることでフェノール樹脂発泡体の表面撥水性、発泡体の吸水量低減に効果がみられることが解った。
【0014】
ポリアルキル水素シロキサンの添加量は 、レゾ−ル型フェノ−ル樹脂100重量部に対して、0.1〜7重量部、好ましくは0.2〜6重量部の範囲である。
上記ポリアルキル水素シロキサンは、それ自体をフェノール樹脂に配合することができるし、またポリアルキル水素シロキサンを水系エマルジョンとしてからフェノール樹脂に配合することもできる。
【0015】
ポリアルキル水素シロキサンの添加量は 、フェノ−ル樹脂100重量部に対して、0.1〜7重量部、好ましくは0.2〜5重量部の範囲である。フェノ−ル樹脂100重量部に対してポリアルキル水素シロキサンの添加量が0.1重量部未満だと、発泡体に十分な撥水性が得られず、低吸水性が得られない。一方ポリアルキル水素シロキサンの添加量が7部重量部を越えると硬化が遅くなり、独立気泡率の低下による断熱性能の低下、及びボイドや硬化不良による外観不良を生じ強度低下が避けられない。
【0016】
本発明で使用する整泡剤としては、シリコ−ン系エチレンオキシド−プロピレンオキシシド共重合体、又はソルビタン、アルキルフェノ−ル、ヒマシ油等のポリオキシアルキレン付加物等の界面活性剤が挙げられる。これらは単独で用いても、混合してもよく、その使用量はフェノ−ル樹脂100重量部に対し、通常0.5〜10重量部、好ましくは0.6〜9.5重量部の範囲である。その使用量が0.5重量部未満だと、気泡を安定して形成できず、均質な気泡構造が得られない(セルサイズのばらつき、ボイドを生じる)。また、10重量部を越えると、整泡力過剰となり気泡の膜厚が薄くなったり、破れを生じ独立気泡率の高いものが得られず撥水性や吸水量低減にも効果が出ない。
【0017】
発泡剤としては特に限定されるものではなく、通常発泡フェノール樹脂に使用されている、炭化水素系ではブタン、n−ペンタン、イソ−ペンタン、シクロペンタン、2−メチルペンタン、フルオロ炭化水素系のHFC−365mfc、HFC−245fa等を単独もしくは2種類以上併用して使用する。併用比率は特に限定されるものではない。
発泡剤の使用量は、フェノ−ル樹脂100重量部に対し、通常1〜20重量部、好ましくは1.5〜15重量部の範囲である。発泡剤の使用量が1重量部未満だと、気化が急激となり発泡硬化のバランスがとれず均質なセル構造を得られない。又、20重量部を越えると、セル内の発泡圧力と整泡力のバランスがとれず、セルの壁が破れてしまい、均質なセル構造が得られない。
【0018】
上記以外の添加成分として、フェノ−ル樹脂に難燃性を付与するため、水酸化アルミ、タルク、クレ−、水酸化カルシウム、ホウ酸等の無機フィラ−を添加することも可能である。またシラスバル−ン、ガラスバル−ン、多硬質骨材、金属粉、木粉等の無機系及び有機系充填剤、あるいはガラス繊維、炭素繊維、アラミド繊維等の繊維強化材等を併用してもよい。
【0019】
本発明のフェノ−ル樹脂発泡体は、例えば、フェノ−ル樹脂、整泡剤、発泡剤、改質剤であるポリアルキル水素シロキサンを混合したものと、酸性硬化剤を高速攪拌混合法により混合してフェノ−ル樹脂発泡混合物を得る。この発泡混合物を発泡硬化させて製造することができる。
【0020】
本発明のフェノ−ル樹脂発泡体製造に使用する酸性硬化剤としては、通常使用されているリン酸、亜リン酸、次亜リン酸、ピロリン酸、トリポリリン酸、ポリリン酸、塩酸、硫酸等の無機酸、フェノ−ルスルホン酸、トルエンスルホン酸、キシレンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸等のアリ−ルスルホン酸やメタンスルホン酸等のアルキルスルホン酸等の有機酸が用いることができるが、これらに限定されるものではない。また、これらの酸性硬化剤は単独でまたは2種類以上を併用することも可能である。酸性硬化剤の使用量は特に限定されるものではないが、フェノ−ル樹脂100重量部に対して1〜50重量部、好ましくは5〜30重量部の範囲である。
【実施例】
【0021】
次に実施例により本発明を具体的に示すが本発明は下記の実施例に限定される物ではない。
【0022】
[実施例1]
四つ口フラスコにフェノ−ル2000g、37%ホルマリン2930g(ホルムアルデヒド/フェノ−ルのモル比1.7)及び触媒として20重量%水酸化ナトリウム水溶液60gを仕込み、80℃で2時間反応させた後、15重量%パラトルエンスルホン酸水溶液でpH7.0に中和し、減圧脱水処理して、樹脂中の水分を16重量%としたレゾ−ル型フェノ−ル樹脂を得た。固形分80重量%、粘度5000mPas(25℃)であった。このレゾ−ル型フェノ−ル樹脂100重量部に対し、改質剤としてポリアルキル水素シロキサンを1重量部、整泡剤としてシリコーン系エチレンオキシド−プロピレンオキシド共重合体3.5重量部、発泡剤としてノルマルペンタン9重量部を添加し、攪拌混合した。混合後の液温を0℃に調整した。
【0023】
その後、酸性硬化剤としてパラトルエンスルホン酸(60%水溶液)21重量部を0℃に調整して添加し、ホモディスパ−にて15秒間高速攪拌混合した後、上下面材に離型シートを用いて75℃に加熱した300×300×60mmの金型容器に速やかに流し込んだ。金型容器にセットした後8分後に発泡体を取り出し、重量を測り、フォ−ム密度を測定した。発泡体表面の撥水性は水との接触角度を測定した。発泡体の吸水量の測定は試験片を100×100×25mmに切り出し、20℃の水に24時間浸漬後の吸水量を測定した。以上の結果を表1に示す。
【0024】
[比較例1]
実施例1のポリアルキル水素シロキサン改質剤を配合しない以外は実施1と同様に行った。
【0025】
[比較例2]
実施例1のポリアルキル水素シロキサン改質剤をポリジメチルシロキサン改質剤に変えた以外は実施1と同様に行った。
【0026】
[比較例3]
実施例1のポリアルキル水素シロキサンをパラフィン系改質剤に変えた以外は実施1と同様に行った。
【0027】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明は、フェノール樹脂に対してポリアルキル水素シロキサンを用いることで発泡体表面に撥水性が得られる機構についての推測として、ポリアルキル水素シロキサンのSi−H基同士の結合は発泡時の発熱作用による加熱と樹脂中の水分、発泡硬化時の縮合水の存在で加水分解して重合が起こり新しいSi−O−Si結合を形成し、疎水性のメチル基が配向した場ができているために発泡体を切断した断面に撥水効果が得られると考えられる。ジメチルシロキサン、ポリジメチルシロキサンはSi−CH3基同士の結合は無く、皮膜を形成し撥水性を付与させる皮膜を形成するに至らず撥水効果が得られないと考えられる。
【0029】
本発明により製造されたフェノール樹脂発泡体は、他の撥水剤を使用したものに比して耐熱性、耐焔性、腐食性に優れ、吸水性が少なく、撥水性に優れている上、脆性も少ない高品質の発泡体であるので、主な用途としては、例えばアルミ板、鉄板、クラフト紙、ロックウール紙、塩ビレザー紙、石膏ボード、ベニヤ板、コルゲート紙などとの複合材、とした後天井板、壁材の断熱材(中間材)、ドア等の空間に注入発泡させた耐火ドア、あるいは路肩や坑道等における吹きつけ発泡、さらには焼成した炭化物としての利用など広範囲なものが期待できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フェノ−ル樹脂に、整泡剤、発泡剤、酸性硬化剤、改質剤を配合し、発泡硬化するフェノ−ル樹脂発泡体の製造方法において、改質剤として下記一般式式[1]で表されるポリアルキル水素シロキサンをフェノ−ル樹脂100重量部に対して、0.2〜7重量部配合することを特徴とするフェノ−ル樹脂発泡体の製造方法。

R R R
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R−Si−O(−Si−O)n−Si−O−CH ・・・・[1]
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R H R
(但し、RはC1〜C18のアルキル基を示す。)
【請求項2】
フェノ−ル樹脂に、整泡剤、発泡剤、酸性硬化剤、改質剤を配合し、発泡硬化するフェノ−ル樹脂発泡体の製造方法において、改質剤としてポリアルキル水素シロキサンをフェノ−ル樹脂100重量部に対して、0.2〜7重量部配合したフェノ−ル樹脂発泡体。

【公開番号】特開2006−152094(P2006−152094A)
【公開日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−343374(P2004−343374)
【出願日】平成16年11月29日(2004.11.29)
【出願人】(000187068)昭和高分子株式会社 (224)
【復代理人】
【識別番号】100094178
【弁理士】
【氏名又は名称】寺田 實
【Fターム(参考)】