説明

フェノール化合物含有導電性高分子

【課題】本発明の導電性高分子組成物を用いることにより、得られる導電性高分子層の強度(耐久性)を向上させることができるため、伸縮動作が要求されるアクチュエータに利用することができ、有用である。また、導電性高分子層と集電体とを積層または接着により一体化した導電性高分子電極等を容易に作製することができ、蓄電デバイスなどへの応用が可能であり、有用である。
【解決手段】導電性高分子単量体、フェノール性水酸基含有化合物、及び、電解質アニオンを含有することを特徴とする導電性高分子組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性高分子組成物、導電性高分子層、導電性高分子電極、及び、導電性高分子電極の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリピロールやポリチオフェンなどの導電性高分子は、電気化学的な酸化還元によって伸縮する現象である電解伸縮を発現することが知られている。この導電性高分子の電解伸縮は、人工筋肉、ロボットアーム、義手やアクチュエータ等の用途へ適用が注目されている。
【0003】
また、導電性高分子から形成される膜を、マイクロマシン等の小型のアクチュエータに使用するだけでなく、一次電池用電極、二次電池用電極、キャパシタ用電極、太陽電池用電極、及び、エレクトロルミネッセンス素子等に使用されている。特に、二次電池の分野においては、高容量密度化の要求が強く、軽量な導電性高分子を活物質として用いる試みがなされている。
【0004】
導電性高分子の製造方法には、化学重合法と電解重合法があり、通常、化学重合法で得られる導電性高分子は粉末状であるため、これを電極として使用する場合には、導電性高分子に導電剤や結着剤などを加えたスラリーを調製し、このスラリーを集電体に塗布する工程が必要となる(特許文献1)。このため、作業工程が増え、取り扱い性(作業性)が悪くなり、また、導電性高分子以外の成分を含有するため、十分な導電率の向上を図ることが困難となっている。特に、ポリチオフェンは、電解重合法を用いて膜を製造した場合、非常に脆い膜が形成されるため、通常、化学重合法により得られた粉末から、膜を製造することしかできないのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−123825
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このような中で、電解重合法を用いて導電性高分子を製造した場合であっても、耐久性や作業性に優れた導電性高分子層(膜)、前記導電性高分子層を有する導電性高分子電極を得ることができる導電性高分子組成物の開発が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そこで、本発明者らは、鋭意検討した結果、下記の導電性高分子組成物を用いることにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明の導電性高分子組成物は、導電性高分子、フェノール性水酸基化合物、及び、電解質アニオンを含有することを特徴とする。
【0009】
本発明の導電性高分子組成物は、前記フェノール性水酸基含有化合物が、2個以上の水酸基を有することが好ましい。
【0010】
本発明の導電性高分子組成物は、前記フェノール性水酸基含有化合物が、ヒンダードフェノール系化合物、ビスフェノール系化合物、及び、フェノール樹脂系化合物からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0011】
本発明の導電性高分子組成物は、前記導電性高分子を構成する単量体が、ピロール、チオフェン、アニリン、フェニレン、及びこれらの誘導体からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0012】
本発明の導電性高分子組成物は、前記電解質アニオンが、フッ素原子を含有することが好ましい。
【0013】
本発明の導電性高分子層は、前記導電性高分子を構成する単量体を、電解重合して得られることが好ましい。
【0014】
本発明の導電性高分子電極は、前記導電性高分子層を、集電体上に有することが好ましい。
【0015】
本発明の導電性高分子電極の製造方法は、導電性高分子層を、集電体上に有する導電性高分子電極の製造法であって、前記導電性高分子を構成する単量体を電解重合して、集電体上に直接導電性高分子層を形成することが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明の導電性高分子組成物を用いた導電性高分子層は、導電性高分子と共に、フェノール性水酸基含有化合物を含有していることにより、前記導電性高分子層の強度(耐久性)が増大し、作業性に優れているため、非常に有用である。特に、これまで、電解重合法では十分な強度が得られていないかったポリチオフェン膜等に関して、実使用において問題のないレベルの強度(耐久性)を有する層(膜)を得ることができ、有用である。また、高強度の導電性高分子層が得られるため、伸縮動作が要求されるアクチュエータ素子に利用することができ、また、作用電極に、集電体を用いることにより、集電体上で直接、導電性高分子を構成する単量体を電解重合することができ、導電性高分子と集電体が一体化した高強度の導電性高分子電極を容易に得ることができ、蓄電デバイスにも応用でき、有用である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(導電性高分子)
本発明に用いられる導電性高分子を構成する単量体(導電性高分子単量体)としては、電解重合法に用いられる電解液に含まれるものであり、電解重合法による酸化により、高分子化して導電性を示す化合物であれば、特に限定されるものではない。例えば、前記単量体としては、ピロール、チオフェン、アニリン、フェニレン等の環式化合物、及びそのアルキル基、オキシアルキル基等の誘導体が挙げられる。その中でもピロール、チオフェン等の複素五員環式化合物及びその誘導体が好ましく、特にピロールやその誘導体を含む導電性高分子の場合、製造が容易であり、導電性高分子として化学的に安定であるため好ましい。また、これまで化学重合法により、製造されていたポリチオフェンに関しては、電解重合法を用いた場合であっても、十分な強度等を有する膜を得られるため、好ましい。上記モノマーは2種以上併用することができる。
【0018】
(フェノール性水酸基含有化合物)
本発明に用いられるフェノール性水酸基含有化合物としては、特に限定されないが、2個以上の水酸基を有するフェノール性水酸基含有化合物であることが好ましく、ヒンダードフェノール系化合物、ビスフェノール系化合物、及び、フェノール樹脂系化合物からなる群より選択される少なくとも1種であることがより好ましく、ヒンダードフェノール系化合物、及び/又は、フェノール樹脂系化合物が、特に好ましい。前記フェノール性水酸基含有化合物を、前記導電性高分子と共に配合することにより、詳細な理由は明らかではないが、水酸基やベンゼン環が存在することにより、複素五員環化合物等と相互作用することにより、強度(耐久性)が増大し、更に作業性(取り扱い性)の向上を図ることができるものと推測される。また、ポリチオフェン等は、通常、化学重合法により製造されるが、化学重合法により得られるポリチオフェンは、粉末状であるため、通常、結着剤等を使用して固着する必要がある。また、電解重合法によりポリチオフェン膜を製造した場合には、膜の強度が弱く、非常に脆いものとなる。しかし、前記フェノール性水酸基含有化合物と共に、電解重合法によりポリチオフェン膜を製造した場合、強度が大幅に増大し、結着剤等を使用することなく、耐久性に優れたポリチオフェン膜等を得ることができ、非常に有用である。
【0019】
具体的なフェノール性水酸基化合物として、例えば、フェノール、クレゾール、メトキシフェノール、t−ブチルフェノール、4,4'-イソプロピリデンジフェノール、テルペンビスフェノール、ビニルフェノール、2,6−ジ−t−ブチルフェノール等が挙げられ、2個以上のフェノール性水酸基含有化合物がより好ましい。また、その中でも高分子量のフェノール性水酸基含有化合物は、導電性高分子中での安定性において優れているため好ましい。また、更に好ましくは、ヒンダードフェノール系化合物、ビスフェノール系化合物、及び、フェノール樹脂系化合物からなる群より選択される少なくとも1種を使用する事ができ、具体的には、フェノール樹脂系化合物として、下記式(1)のポリパラビニルフェノール、ヒンダードフェノール系化合物として、下記式(2)のペンタエリスリチルテトラキス(3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート(分子量1177.7)や、下記式(3)の2,2−チオジエチレン−ビス(3-(3,5-ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)(分子量642.9)、下記式(4)の1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン(分子量775.2)、下記式(5)のオクタデシル-3-(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート(分子量530.9)、ビスフェノール系化合物として、下記式(6)の4,4'−イソプロピリデンジフェノール(分子量228.29)等が挙げられる。

【化1】

【0020】
前記フェノール性水酸基含有化合物は、電解液中の含有量が特に限定されるものではないが、電解液中に0.01〜3.0重量%含まれるのが好ましく、0.05〜1.5重量%含まれるのがより好ましく、0.1〜1.0重量%が特に好ましい。前記範囲内であると、最終的得られる導電性高分子層(膜)の強度が向上し、アクチュエータ等に使用できる実使用レベルを維持でき、有用である。
【0021】
(電解質アニオン(ドーパント))
前記電解重合法の際に前記単量体と共に電解液に配合される電解質アニオン(ドーパント)としては、電解重合に用いられる溶媒中で溶解する化合物であれば特に限定されるものではない。前記電解質アニオンを構成するものとしては、例えば、ハロゲン、ハロゲン酸、硝酸、硫酸、ヒ酸、アンチモン酸、ホウ酸、リン酸、カルボン酸、スルホン酸、スルホイミド、スルホメチド等の誘導体や色素化合物が挙げられる。また、前記電解質アニオンを構成するものとしては、具体的には、過塩素酸、テトラフルオロホウ酸、ヘキサフルオロリン酸、ヘキサフルオロヒ酸、ヘキサフルオロアンチモン酸、トリフルオロ酢酸、トリフルオロメタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、トリス(トリフルオロメタンスルホニル)メチド、ベンジルエチル-[4'-(4''-(ベンジルエチルアミノ)-ジフェニルメチレン)-2',5-シクロヘキサジエニリデン]アンモニウム-2'''、3、3'''-トリスルホン酸、3-ヒドロキシ-4-[2-スルホ-4-(4-スルホフェニルアゾ)フェニルアゾ]-2,7-ナフタレンジスルホン酸を例示することができる。これらと共に、対イオンを伴う塩としては、アルカリ金属塩、アンモニウム塩、ホスホニウム塩、イミダゾリウム塩、ヨードニウム塩等の誘導体が挙げられる。更に詳しくは、前記塩としては、リチウム塩、ナトリウム塩、テトラブチルアンモニウム塩、テトラブチルホスホニウム塩、1,3-ジメチルイミダゾリウム塩、4-イソプロピル4’-メチルジフェニルヨードニウム塩を例示することができる。前記電解質アニオンを構成するものの中でも、フッ素原子を含有するもの(支持電解質)を使用することが好ましく、アルキル化されたスルホニル基を有する化合物及びその誘導体がより好ましく、トリフルオロメタンスルホン酸イオン(もしくはビス(トリフルオメタンスルホニル)イミドイオン)や、中心原子に対してフッ素原子を複数含むアニオンを含む支持電解質を用いることが更に好ましい。また、上記支持電解質は2種以上併用することができる。なお、前記支持電解質が電離することにより、前記電解質アニオンを生成することができ、前記電解質アニオンが、本発明で使用される導電性高分子層中に、ドーパントとして、作用することになる。また、前記電解質に加えて、イオン性液体等も配合することができる。
【0022】
前記トリフルオロメタンスルホン酸イオンは、化学式CFSOで表される化合物である。また、中心原子に対してフッ素原子を複数含むアニオンは、ホウ素、リン、アンチモン及びヒ素等の中心原子に複数のフッ素原子が結合をした構造を有している。中心原子に対してフッ素原子を複数含むアニオンとしては、特に限定されるものではないが、テトラフルオロホウ酸イオン(BF)、ヘキサフルオロリン酸イオン(PF)、ヘキサフルオロアンチモン酸イオン(SbF)、及びヘキサフルオロヒ酸イオン(AsF)を例示することができる。前記中心原子に対してフッ素原子を複数含むアニオンは、1種類のアニオンを用いても良く、複数種のアニオンを同時に用いても良く、さらには、トリフルオロメタンスルホン酸イオンと複数種の中心原子に対しフッ素原子を複数含むアニオンとを同時に用いても良い。
【0023】
前記電解質アニオンは、電解液中の含有量が特に限定されるものではないが、電解液中に0.1〜35重量%含まれるのが好ましく、1〜20重量%含まれるのがより好ましい。前記範囲内において、前記支持電解質を用いて電解重合を行うことにより、アクチュエータにおける電解伸縮において、1酸化還元サイクル当たりの伸縮率が優れ、更に、蓄電デバイスにおいて、容量密度に優れた導電性高分子(層)を得ることができる。
【0024】
(その他の添加剤)
前記電解重合法に用いられる電解液には、前記単量体や電解質アニオン(ドーパント)(もしくは支持電解質)のほかに、さらにポリエチレングリコールやポリアクリルアミドなどの公知のその他の添加剤を配合することができる。
【0025】
(電解液の溶媒)
前記電解重合時の電解液に含まれる溶媒としては、特に限定されるものではないが、例えば、前記電解重合により得られる導電性高分子をアクチュエータ素子に使用する場合、1酸化還元サイクル当たりの伸縮率が3%以上の導電性高分子を容易に得ることができ、また、前記導電性高分子を蓄電デバイスに使用する場合、その容量密度を30Ah/kg以上に容易に調整するため、前記電解質アニオン(ドーパント)(もしくは支持電解質)以外に、エーテル結合、エステル結合、カーボネート結合、ヒドロキシル基、ニトロ基、スルホン基及びニトリル基のうち少なくとも1つ以上の結合あるいは官能基を含む有機化合物及び/またはハロゲン化炭化水素を電解液の溶媒として含むことが好ましく、更に好ましくは、エステル結合をもつ溶媒を1種類以上含むことが、有効である。これらの溶媒を2種以上併用することもできる。
【0026】
前記有機化合物としては、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン(以上、エーテル結合を含む有機化合物)、γ−ブチロラクトン、酢酸エチル、酢酸nブチル、酢酸-t-ブチル、1,2−ジアセトキシエタン、3−メチル−2−オキサゾリジノン、安息香酸メチル、安息香酸エチル、安息香酸ブチル、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジオクチル、フタル酸ベンジル-2-エチルへキシル(以上、エステル結合を含む有機化合物)、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、メチルエチルカーボネート(以上、カーボネート結合を含む有機化合物)、エチレングリコール、1−ブタノール、1−ヘキサノール、シクロヘキサノール、1−オクタノール、1−デカノール、1−ドデカノール、1−オクタデカノール(以上、ヒドロキシル基を含む有機化合物)、ニトロメタン、ニトロベンゼン(以上、ニトロ基を含む有機化合物)、スルホラン、ジメチルスルホン(以上、スルホン基を含む有機化合物)、及びアセトニトリル、ブチロニトリル、ベンゾニトリル(以上、ニトリル基を含む有機化合物)、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンを例示することができる。なお、前記有機化合物は、前記の例示以外にも、分子中にエーテル結合、エステル結合、カーボネート結合、ヒドロキシル基、ニトロ基、スルホン基及びニトリル基のうち、2つ以上の結合あるいは官能基を任意の組み合わせで含む有機化合物であってもよい。それらは、例えば、3−メトキシプロピオン酸メチル、2−フェノキシエタノールなどである。
【0027】
また、前記ハロゲン化炭化水素としては、炭化水素中の水素が少なくとも1つ以上ハロゲン原子に置換されたもので、電解重合条件で液体として安定に存在することができるものであれば、特に限定されるものではない。前記ハロゲン化炭化水素としては、例えば、ジクロロメタン、ジクロロエタンを挙げることができる。前記ハロゲン化炭化水素は、1種類のみを前記電解液中の溶媒として用いることもできるが、2種以上併用することもできる。また、前記ハロゲン化炭化水素は、上記有機化合物と混合して用いてもよく、有機溶媒との混合溶媒を前記電解液中の溶媒として用いることもできる。
【0028】
(作用電極(集電体))
前記導電性高分子層を得るためには、重合作用電極として、金属を用いた金属電極や、非金属電極などを用いることができる。前記重合作用電極は、形状としては特に制限されないが、平面状や棒状の電極であれば、容易に導電性高分子層を形成でき、更に、重合作用電極上から導電性高分子層を剥離することができるため、好ましい形状である。前記重合作用電極としては、例えば、Au、Pt、Al、Ti、Ni、Pd、Ta、Mo、Cr及びWからなる群より選択される金属元素の単体、もしくは合金の電極(SUSなど)や、カーボン電極やITOガラス電極といった非金属電極、これら異種金属またはカーボンなどの非金属をメッキやスパッタリング等の処理で組み合わせた電極を好適に用いることができる。前記得られる導電性高分子の伸縮率及び発生力が大きく、且つ、電極を容易に入手できることから、Al、NiやTiなどの金属元素を含む金属電極を用いることが特に好ましい。また、蓄電デバイスとして使用する場合には、AlやAl合金等のように、比重の小さいものは、重合用作用電極としてだけではなく、直接、集電体(集電極)に適用することができ、好ましい態様である。
【0029】
(導電性高分子電極)
本発明の導電性高分子電極は、前記導電性高分子層を、集電体上に形成することにより、得ることができる。たとえば、導電性高分子層(膜)を公知の接着剤等を用いて、集電体上に貼付し、導電性高分子電極とすることも可能である。また、本発明の導電性高分子電極の製造方法としては、集電体上で、前記導電性高分子単量体を直接、電解重合して、導電性高分子層を形成することが好ましい態様である。この方法により、導電性高分子(層)と集電体が一体化した高強度の導電性高分子電極を容易に得ることができ、蓄電デバイスにも応用でき、有用である。なお、前記作用電極上に形成された導電性高分子層は、前記重合作用電極の形状が、平面状や棒状など、単純な形状の場合には、電極から剥離して、導電性高分子層単独で、駆動作用電極として、使用することができる。
【0030】
(電解重合条件)
本発明で使用する導電性高分子(層)は、導電性高分子単量体を公知の電解重合法を用いることにより得ることができ、例えば、定電位法、定電流法及び電気掃引法のいずれをも用いることができる。例えば、前記電解重合法は、電流密度0.01〜20mA/cm2、重合時間0.4〜100時間、反応温度−70〜80℃で行うことができ、良好な膜質の導電性高分子を得るために、電流密度0.1〜2mA/cm、重合時間4〜20時間、反応温度−40〜40℃の条件下で行うことが好ましく、反応温度が−30〜30℃の条件であることがより好ましい。
【0031】
(基体)
また、本発明で使用される導電性高分子を構成する単量体(導電性高分子単量体)を、電解重合して得られる導電性高分子層(膜)は、作用電極として基体(導電性基体や、非導電性基体、前記集電体そのものであってもよい。)を用いて、直接、基体上に電解重合することにより、導電性高分子複合体(導電性高分子電極)を得ることができる。前記基体の形状は、特に制限されないが、アクチュエータ素子として用いる場合は、例えば、平面状、棒状、ロット状、平面ジグザグ状、蛇腹状、チェーン状、コイル状、バネ状、繊維状、チューブ状、袋状、ベローズ状、網目状、及び、ニット状、更には、アコーディオン状などの伸縮性を有する構造体を用いることが好ましく、特にコイル状の構造体を用いることが、作製の容易さ等から好ましい。前記基体と導電性高分子層を複合化した導電性高分子複合体(導電性高分子電極)は、アクチュエータ素子として実用可能な伸縮性や、屈曲性、ねじれ性(ツイスト性)に優れた変位を得ることができる。また、前記導電性高分子複合体は、前記基体が前記複合化したものの芯材としても機能し得ることから、機械的強度も向上できる。更に前記基体上に導電性高分子層を形成して、駆動対向電極として使用できるだけでなく、駆動対向電極と対をなす駆動作用電極としても使用することができる。
【0032】
前記基体の導電率としては、1.0×10S/cm以上が好ましく、より好ましくは、1.0×10S/cm以上であり、特に好ましくは1.0×10S/cm以上である。前記導電率が1.0×10S/cm以上であることにより、さらに、長さ方向または高さ方向にサイズを大きくしたものの場合であっても、伸縮等の変位をするのに十分な電位をアクチュエータ素子全体にかけることができ、有効である。
【0033】
また、前記導電性高分子複合体(導電性高分子電極)は、基体上に直接電解重合により、導電性高分子層を形成したものに限らず、前記基体と導電性高分子チューブとを組み合わせた導電性高分子複合体であっても問題ない。なお、前記導電性高分子チューブを使用して導電性高分子複合体を製造方法としては、まず、はじめに、作用電極を用いて、導電性高分子層(膜)を形成し、前記作用電極から、前記導電性高分子層(膜)を剥離し、これを導電性高分子チューブとする導電性高分子チューブを形成する工程とした。続いて、前記導電性高分子チューブを、溶剤を用いて膨潤させる工程と、前記膨潤させた導電性高分子チューブの内側に前記基体を挿入する工程と、前記基体を挿入した導電性高分子チューブから溶剤を除去して、前記導電性高分子チューブを前記基体に接触させて導電性高分子複合体を形成する工程、更に、前記製造方法により得られる導電性高分子複合体の外側に基体を接触させ、前記基体の外側に導電性高分子チューブを接触させて配置する工程、を含むことにより、複数層(例えば、1層を基体と導電性高分子チューブ1対とすると、2層や3層以上を指す)のものを得ることができる。
【0034】
以下に、具体的な導電性高分子チューブを用いた導電性高分子複合体の製造方法を説明する。なお、本発明は下記製造方法に限定されるものではない。
(1)導電性高分子チューブを棒状の金属電極上で調製後、電極から剥離する。
(2)次いで、前記導電性高分子チューブをアセトン、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)などの前記導電性高分子チューブを膨潤させやすい溶媒A中に、室温で1〜30分間浸漬し、前記導電性高分子チューブを膨潤させる。DMSO、DMF、NMPなどの揮発性の低い溶媒は、アセトンなどの揮発性の高い溶媒に数分から数10分浸漬することで、溶出除去させることが出来る。
(3)前記導電性高分子チューブの内部に、前記膨潤した導電性高分子チューブの内径よりも小さい伸縮性を有する基体であるコイル状構造体(例えば、金属製バネ状部材)を前記溶媒A中で挿入する。
(4)挿入後、乾燥温度−20〜50℃、乾燥時間1〜12時間を乾燥させて導電性高分子複合体を得る。なお、この工程により、大部分の溶媒Aは除去され、導電性高分子チューブ自体が収縮し、基体であるコイル状構造体に密着するように接触(被覆)し、導電性高分子複合体を得ることができる。
(5)また、上記導電性高分子複合体の外径より大きな基体を前記導電性高分子複合体に接触させて、更に前記基体の外径より大きく膨潤した導電性高分子チューブを接触(被覆)することにより、複数層から構成される導電性高分子複合体を得ることができる。
(6)なお、上記高分子複合構造体の外径に略等しい内径のコイル状構造体を作製し、前記高分子複合体表面を被覆するように配置させることで、導電性高分子チューブと、コイル状構造体とが、密着した状態にすることができる。
(7)更に、前記乾燥させた導電性高分子複合体を、アセトニトリル、プロピレンカーボネート(PC)、水などの単独溶媒もしくは混合溶媒(これら溶媒を、溶媒Bとする。溶媒Bは、溶媒Aより、前記導電性高分子チューブの膨潤度を低くするものを使用することが好ましい。)に、室温で0.5〜2時間浸漬し、アクチュエータ素子を得る。この工程時に用いる溶媒Bとしては、後にアクチュエータ素子を駆動させる際の電解液(動作電解液)と同様のものを用いることが好ましい。
【0035】
(アクチュエータ素子)
前記導電性高分子複合体を用いたアクチュエータ素子の大きさとしては、特に限定なく製造することができるが、使用される基体の大きさに合わせて、微小なものから、巨大なものまでを製造することができる。たとえば、基体として金属製コイル状部材を用いる場合には、コイルの外径が、400μm〜10cmのものに導電性高分子層を形成して、アクチュエータ素子を製造することができる。
【0036】
(アクチュエータ素子の電解伸縮)
また、前記導電性高分子複合体を用いたアクチュエータ素子を電解液(動作電解液)中で、電気化学的酸化還元により伸縮させる電解伸縮方法により駆動させることができる。前記導電性高分子複合体を電解伸縮させることにより、1酸化還元サイクル当たりにおいて優れた伸縮率を得ることができ、特定時間あたりにおいて、高い変位量を得ることができる。なお、伸縮率としては、アクチュエータ素子をもちいる用途によって異なるが、好ましくは、3%以上、より好ましくは、5%以上、特に好ましくは、10%以上である。3%未満であると、実用的なアクチュエータ素子の変位量(伸縮量)を得るためには、アクチュエータ素子の大型化が必要となるため、好ましくない。
【0037】
なお、アクチュエータ素子を電解伸縮させる方法として、特に制限されないが、たとえば、駆動作用電極と駆動対向電極を電解液中で、0.1〜10Vの電圧を印加することにより、前記駆動作用電極及び/又は駆動対向電極を電解伸縮させることができ、アクチュエータ素子として、活用することができる。
【0038】
前記導電性高分子複合体の電解伸縮が行われる電解液である動作電解液としては、前記電解重合時に使用する電解液と同様のものを使用することができるが、例えば、主溶媒としては水やエタノール、アセトニトリル、γ−ブチロラクトン、ジエチルカーボネート、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、スルホラン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、ペンタエチレングリコールジメチルエーテル、ヘキサエチレングリコールジメチルエーテル、ポリエチレングリコール等を単独、又は2種以上の混合溶媒に電解質を含む液体であることが、濃度調製が容易であるため、好ましい。また、前記動作電解液に含まれる電解質としては、前記電解重合時に使用する支持電解質などを使用することができ、特に制限される訳ではないが、例えば、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドテトラブチルアンモニウム、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドリチウム、ヘキサフルオロリン酸テトラブチルアンモニウム、ヘキサフルオロリン酸リチウム、テトラフルオロホウ酸テトラブチルアンモニウム、テトラフルオロホウ酸リチウム、の使用がより好ましい態様である。また、前記電解質に加えて、イオン性液体等も使用することができる。
【0039】
前記電解伸縮方法に用いる電解液の温度は、特に限定されるものではないが、上記の導電性高分子をより速い速度で電解伸縮させるために、20〜100℃であることが好ましく、さらに好ましくは50〜80℃である。
【0040】
(蓄電デバイス)
また、前記導電性高分子電極以外に、本発明の導電性高分子用組成物を用いた導電性高分子層を蓄電デバイスに使用することができる。前記蓄電デバイスには、前記電極を正極または負極のどちらか一方に用いることができ、前記電極を正極に用いることが好ましく、前記電極を負極及び正極に用いることがより好ましい。前記電極を正極に用いた場合には、前記蓄電デバイスは、リチウムイオン電池、リチウム電池、レドックスキャパシタ、電気二重層キャパシタ等となるため、高い容量密度を得ることができる。
【0041】
前記蓄電デバイスは、電解質を含むことになるが、前記電解質は、公知の電解質を使用することができ、前記電解重合時に使用する電解質アニオン(ドーパント)して機能し得るアニオンを含むものであれば、特に限定されるものではなく、前記電解重合時に使用する電解液を用いることができる。前記電解液に含まれる溶媒は、特に限定されるものではなく、水、若しくは極性有機溶媒を用いることができる。前記極性有機溶媒は、化学的に安定であり、電気化学反応の反応場として用いることができるものであれば、特に限定されるものではなく、前記電解重合時に使用する電解液の溶媒や、前記動作電解液で使用される溶媒を例示することができる。前記極性有機溶媒としては、電解液のイオン伝導度が大きいために、プロピレンカーボネート、γ−ブチロラクトンが好ましい。なお、前記集電体に使用する金属種等に合わせて、使用する溶媒を選択する。
【実施例】
【0042】
以下に、本発明の実施例及び比較例を示すが、本発明は以下に限定されるものではない。
【0043】
(実施例1)
(1)フタル酸ジエチルとプロピレンカーボネート(混合体積比80:20)の混合溶媒を用いて、モノマーである3−メチルチオフェン(東京化成工業株式会社製)を0.15mol/L、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドテトラブチルアンモニウム(TBATFSI)を0.15mol/L、及び、フェノール樹脂(ポリp−ビニルフェノール、丸善石油化学株式会社製)を0.8重量%になるように溶解し、重合電解液とした。
(2)続いて、厚さ0.3mmのニッケル板電極(重合作用電極)上に、電流密度0.1mA/cm、20時間、−15℃で、定電流電解重合した。この際に得られたポリ3−メチルチオフェン膜を、前記ニッケル板電極から剥離した。前記膜の膜厚は81μm、導電率は105S/cm、引張破断強度33.2MPa、引張破断ひずみ11.1%であった。容量密度は、−0.5V〜+1.0Vの電圧範囲で測定した結果、42Ah/kgであった。また、アクチュエータ素子として3.0%伸縮を示した。
【0044】
(実施例2)
(1)フタル酸ジエチルと酢酸エチル(混合体積比80:20)の混合溶媒を用いて、モノマーであるピロール(東京化成工業株式会社製)0.1mol/L、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドテトラブチルアンモニウム(TBATFSI)0.2mol/L、及び、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン(東京化成工業株式会社製)0.8重量%になるように溶解し、重合電解液とした。
(2)続いて、厚さ0.3mmのニッケル板電極(重合作用電極)上に、電流密度0.1mA/cmで、16時間、20℃、定電流電解重合した。この際に得られたポリピロール膜を、前記ニッケル板電極から剥離した。前記膜の膜厚は78μm、導電率は172S/cm、引張破断強度22.6MPa、引張破断ひずみ21.0%であった。また、アクチュエータ素子として、18.8%伸縮を示した。
【0045】
(実施例3)
(1)フタル酸ジエチルと酢酸エチル(混合体積比80:20)の混合溶媒を用いて、モノマーであるピロール(東京化成工業株式会社製)0.1mol/L、ヘキサフルオロリン酸テトラブチルアンモニウム(TBAPF6)(東京化成工業株式会社製)0.2mol/L、及び、ペンタエリスリチルテトラキス(3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート(東京化成工業株式会社製)0.15重量%になるように溶解し、重合電解液とした。
(2)続いて、厚さ0.3mmのニッケル板電極(重合作用電極)上に、電流密度0.1mA/cmで、16時間、20℃、定電流電解重合した。この際に得られたポリピロール膜を、前記ニッケル板電極から剥離した。前記膜の膜厚は49μm、導電率は42S/cm、引張破断強度72.6MPa、引張破断ひずみ30.0%であった。容量密度は、−0.7V〜+0.8Vの電圧範囲で測定した結果、95Ah/kgであった。
【0046】
(比較例1)
(1)モノマーである3−メチルチオフェン(東京化成工業株式会社製)0.15mol/L、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドテトラブチルアンモニウム(TBATFSI)0.15mol/L、及び、前記モノマーである3−メチルチオフェンが重量比5重量%になるように、フタル酸ジエチルとプロピレンカーボネート(混合体積比80:20)の混合溶媒に溶解し、重合電解液とした。
(2)続いて、厚さ0.3mmのニッケル板電極(重合作用電極)上に、電流密度0.1mA/cmで、20時間、−15℃、定電流電解重合した。この際に得られたポリ3−メチルチオフェン膜を、前記ニッケル板電極から剥離した。前記膜の膜厚は101μm、導電率62S/cm、引張破断強度5.7MPa、引張破断ひずみ3.8%であった。また、アクチュエータ素子としては、測定中に破断したため伸縮率を測定できなかった。なお、前記膜は、非常に脆いものであった。
【0047】
(比較例2)
(1)フタル酸ジエチルと酢酸エチル(混合体積比80:20)の混合溶媒を用いて、モノマーであるピロール(東京化成工業株式会社製)0.1mol/L、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドテトラブチルアンモニウム(TBATFSI)0.2mol/Lを溶解し重合電解液とした。
(2)続いて、厚さ0.3mmのニッケル板電極(重合作用電極)上に、電流密度0.1mA/cmで、16時間、20℃、定電流電解重合した。この際に得られたポリピロール膜を、前記ニッケル板電極から剥離した。前記膜の膜厚は91μm、導電率は122S/cm、引張破断強度16.2MPa、引張破断ひずみ12.8%であった。
【0048】
(比較例3)
(1)フタル酸ジエチルと酢酸エチル(混合体積比80:20)の混合溶媒を用いて、モノマーであるピロール(東京化成工業株式会社製)0.1mol/L、ヘキサフルオロリン酸テトラブチルアンモニウム(TBAPF6)(東京化成工業株式会社製)0.2mol/Lを溶解し、重合電解液とした。
(2)続いて、厚さ0.3mmのニッケル板電極(重合作用電極)上に、電流密度0.1mA/cmで、16時間、20℃、定電流電解重合した。この際に得られたポリピロール膜を、前記ニッケル板電極から剥離した。前記膜の膜厚は40μm、導電率は48S/cm、引張破断強度62.6MPa、引張破断ひずみ33.4%であった。
【0049】
(評価方法)
<導電率>
導電性高分子膜を長さ25mm、幅25mmの短冊試験片を作製した。各試験片を使用し、4探針法にて導電率を、JISK7194準拠低抵抗率計「Loresta−GP」を用いて測定した。なお、導電率としては、好ましくは、10S/cm以上であり、より好ましくは、30S/cm以上である。前記範囲内にあると、膜内における電圧降下が少なくなり、有効である。
【0050】
<伸縮性>
実施例1、2、及び比較例1を用いて、アクチュエータ素子として、下記の方法により1酸化還元サイクル当たりの伸縮率(%)を測定した。
【0051】
前記得られたアクチュエータ素子を動作電極とし、動作電極を前記電解液中に保持した。白金プレートを対向電極とし、それぞれ電極の端部に、リードを介して電源と接続して、周波数0.025Hz、電位(1.5〜3.0Vp−pv.s.Ag/Ag)を1サイクル印加して変位量(変位した長さ)を測定した。動作電極が1サイクルの印加(1酸化還元サイクル)で伸長と収縮とをすることにより得られた変位の差とアクチュエータ素子長から伸縮率を算出した。なお、測定温度条件は、20℃であった。
【0052】
<充放電性能>
実施例1及び3を用いて、蓄電デバイスとして、下記の方法により充放電性能(容量密度)を評価した。
【0053】
導電性高分子複合体(又は導電性高分子層。なお、比較例は、前記導電性高分子複合体を形成していないため、測定していない。)を、面積1.8cmの短冊試験片を作製した。続いて、厚み0.03mmのSUS304集電板、厚さ0.5mm活性炭シート、厚さ0.05mmのセパレータ、前記短冊試験片にカットした導電性高分子複合体(導電性高分子層の場合、厚み0.03mmのSUS304集電板が必要)を積層した後、密閉容器中に封入し、有機電解液を浸透させて測定セルを作製した。前記有機電解液には、リチウムイオン二次電池で、一般に使用されるエチレンカーボネートとジエチレンカーボネートの混合溶媒(混合比1:1)に、1mol/Lのビストリフルオロメタンスルフォニルイミドのリチウム塩(LiTFSI)を溶解したものを使用した。セパレータは、一般的に市販されている多孔質ポリプロピレンフィルムを使用した。電池の組み立て方法は、特に限定されないが、ここでは、乾燥Arガス雰囲気のグローブボックス内で行った。充放電評価は、北斗電工株式会社製「HJ1001SD8」を使用した。
【0054】
また、前記容量密度としては、好ましくは、30Ah/kg以上であり、より好ましくは、40Ah/kg以上である。前記範囲内であれば、蓄電デバイスとして有効である。
【0055】
<引張破断強度および引張破断ひずみ>
実施例1〜3および比較例1〜3で得られた導電性高分子膜(フィルム)にいついて、下記の測定方法を用いて、引張破断強度(MPa)、及び引張破断ひずみ(%)を測定した。
【0056】
(測定方法)
導電性高分子膜を長さ20mm、タブ間隔10mm、幅5mmの短冊試験片を作製した。各試験片を用いて、JIS K7127のフィルムの引張試験に準拠し、引張速度5mm/minにて引張破断強度、及び引張伸び率を、アイコーエンジニアリング株式会社製の試験機「MODEL−1308」を用いて測定した。
【0057】
また、前記引張破断強度としては、好ましくは、18MPa以上であり、より好ましくは、20MPa以上である。また、引張破断ひずみとしては、好ましくは、30%以下であり、より好ましくは、28%以下である。前記範囲内であれば、アクチュエータ素子や蓄電デバイスとして有効である。
【0058】
【表1】


注)表1中の(−)については、測定を実施していないことを意味する。
【0059】
表1の結果より、実施例1〜3においては、フェノール性水酸基化合物を電解重合液に混合して導電性高分子を電解酸化重合させることにより、フェノール性水酸基含有導電性高分子を作製でき、導電特性、及び引張特性に優れることが確認できた。また、実施例1及び3においては、充放電特性に優れることが確認され、更に実施例1及び2においては、伸縮性能を有するものが得られることが確認できた。一方、比較例1においては、膜強度が弱く脆いため、引張破断強度が小さくなり、又伸縮性能に関しては、膜強度が弱いため、測定自体できなかった。また、比較例2においては、引張破断強度が低く、比較例3においては、引張破断ひずみが、劣る結果となった。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明の導電性高分子組成物を用いることにより得られた導電性高分子(導電性高分子層)は、従来の伸縮性を有する導電性高分子の成形品に比べて、優れた強度を有し、耐久性に優れたものとなるため、マイクロマシン、人工筋肉などのアクチュエータ素子等に使用でき、有用である。また、蓄電デバイスであるキャパシタや電池に使用する際に、充放電特性に優れ、その生産工程においても、作業性に優れたものとなり、有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性高分子、フェノール性水酸基化合物、及び、電解質アニオンを含有することを特徴とする導電性高分子組成物。
【請求項2】
前記フェノール性水酸基化合物が、2個以上の水酸基を有することを特徴とする請求項1に記載の導電性高分子組成物。
【請求項3】
前記フェノール性水酸基含有化合物が、ヒンダードフェノール系化合物、ビスフェノール系化合物、及び、フェノール樹脂系化合物からなる群より選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項1又は2に記載の導電性高分子組成物。
【請求項4】
前記導電性高分子を構成する単量体が、ピロール、チオフェン、アニリン、フェニレン、及びこれらの誘導体からなる群より選択される少なくとも1種であることを特徴する請求項1〜3のいずれかに記載の導電性高分子組成物。
【請求項5】
前記電解質アニオンが、フッ素原子を含有することを特徴する請求項1〜4のいずれかに記載の導電性高分子組成物。
【請求項6】
請求項4又は5に記載の導電性高分子を構成する単量体を、電解重合して得られることを特徴とする導電性高分子層。
【請求項7】
請求項6に記載の導電性高分子層を、集電体上に有することを特徴とする導電性高分子電極。
【請求項8】
導電性高分子層を、集電体上に有する導電性高分子電極の製造法であって、
請求項4又は5に記載の導電性高分子を構成する単量体を電解重合して、集電体上に直接導電性高分子層を形成することを特徴とする導電性高分子電極の製造方法。


【公開番号】特開2012−226962(P2012−226962A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−93330(P2011−93330)
【出願日】平成23年4月19日(2011.4.19)
【出願人】(302014860)イーメックス株式会社 (49)
【Fターム(参考)】