説明

フェライト系ステンレス鋼材の製造方法およびフェライト系ステンレス鋼管の製造方法

【課題】熱間加工後の靭性が優れるフェライト系ステンレス鋼材の製造方法を提供する。
【解決手段】質量%で、C:0.03〜0.08%、Si:1.0%以下、Mn:1.0%以下、Cr:11.5〜14.5%、Ni:0.14〜0.49%、Al:0.10%を超えて0.30%以下、N:0.030%以下を含み、残部がFeおよび不純物からなる化学組成を有する素材に、下記の(1)〜(3)を満足する条件で、加熱、熱間加工および冷却を行う。
(1)加熱温度を850〜1150℃とすること、
(2)熱間加工を加工比(加工前の断面積/加工後の断面積)8以上で行うこと、
(3)熱間加工後、冷却開始温度から800℃までの温度域における冷却速度を150〜600℃/分とすること。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フェライト系ステンレス鋼からなる鋼材および鋼管を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
Crを13質量%程度含有するフェライト系ステンレス鋼としては、例えば、JIS規格のSUS405、ASME/ASTM規格のTP405などが知られている。これらのフェライト系ステンレス鋼は、耐食性および溶接性に優れるとともに、経済性に優れることから、幅広い分野で利用されている。しかし、これらのステンレス鋼は、一般に脆く、冷間加工性が劣ることが知られている。例えば、熱間加工した素管をピルガーミルで冷間圧延したときに、主として加工開始側管端において割れが発生する場合がある。よって、素管での靭性を高める必要があり、種々の検討がなされている。
【0003】
特許文献1には、0.0100質量%以下という極低のCを含有するフェライト系ステンレス鋼を低温圧延して、フェライト粒を細粒化した後、冷間加工し、再加熱し、焼きなましすることにより、靭性および異方性に優れたフェライト系ステンレス鋼を得る発明が開示されている。
【0004】
特許文献2には、Cr、CおよびNの含有量を特定範囲とすることで、熱延加熱時にの15%以上のγ相を生成させることにより、深絞り性およびリジング性に優れたフェライト系ステンレス冷延鋼板を得る発明が開示されている。
【0005】
特許文献3には、熱間加工するときの最終加工温度を低温域とし、さらに低温焼きならしを施すことにより、Crを8.0〜12.0%含有する高クロムフェライト鋼の靭性を改善する発明が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平7−150244
【特許文献2】特開平1−201445
【特許文献3】特開平1−172515
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
フェライト系ステンレス鋼を構造部材に用いる場合には、Cを0.03%以上含有させることにより強度を確保する必要がある。従って、特許文献1に開示の発明のように、C含有量を0.0100%以下に制限することにより靭性等を改善できても、配管または熱交換器用鋼管として要求される強度を確保できない。
【0008】
特許文献2に開示の発明は、深絞り性およびリジング性を改善するものであり、靭性の改善を目的とするものではなく、しかも、冷間加工前に熱延板焼鈍を行っていることから、熱間加工ままで靭性を改善するものでもない。
【0009】
特許文献3に開示の発明は、熱間加工後に熱延板焼鈍を行っており、特許文献2に開示の発明と同様、熱間加工ままで靭性を改善するものではない。
【0010】
0.03%以上のCを含んだフェライト系ステンレス鋼は、熱間加工ままでは靭性が悪い。このため、冷間加工する際に素材の熱処理が必要となることから、工数が増加し、コストアップに繋がる。
【0011】
本発明は、このような従来技術の問題点を解決するためになされたものであり、熱間加工後に、特別な処理を施さなくても、その後の冷間加工において割れが発生しない、フェライト系ステンレス鋼材の製造方法およびフェライト系ステンレス鋼管の製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、上記の目的を達成するために鋭意検討を行った。例えば、Cを0.03%以上含有するフェライト系ステンレス鋼を熱間押出しして得た素管をそのまま、冷間圧延した場合に加工割れが発生する。その原因は、熱間加工ままの素管の靭性が低いことによるものである。本発明者らは、素材の結晶粒を微細化して靭性を改善するべく種々の検討を行った。その結果、素材の化学組成と熱間加工条件との関係が適切な場合に靭性が著しく改善することを見出した。
【0013】
すなわち、Ni含有量を変更したフェライト系ステンレス鋼を用いて、熱間押出し後の素管の靭性(シャルピー衝撃試験により求まるvTrs値)を測定し、これらを比較した。その結果、Ni含有量が高いほどvTrsが低くなり、特に、Ni含有量が0.14%以上ではvTrsが20℃以下になることが判明した。一方、熱間加工の条件によっても靭性に差があることが分かった。これは下記理由によると考えられる。
【0014】
(a)Ni含有量が低いフェライト系ステンレス鋼では、加熱時に粗大化したδフェライト相が析出する。一方、Ni含有量が高いフェライト系ステンレス鋼は、加熱中にオーステナイト相の析出が増加してδフェライト相の粒成長が抑制されるので、Ni含有量が低いフェライト系ステンレス鋼と比べて細粒となり、結晶粒界が増加する。
【0015】
(b)熱間加工のための加熱温度が高すぎるとフェライト相の析出が増加し、オーステナイト相が減少するが、熱間加工のための加熱温度が低すぎてもオーステナイト相の析出が減少する。従って、適正な量のオーステナイト相を析出させるのに適正な加熱温度の範囲がある。
【0016】
(c)加熱後の熱間加工時の加工比を高めるほど、オーステナイト相のフェライト変態のための核生成サイトが増加するため、ある値以上の加工比が必要である。
【0017】
(d)熱間加工後の冷却で、細粒化されたオーステナイト相の結晶粒界3重点がフェライト相の核生成サイトとなり、そこからフェライト相が優先的に析出するため、冷却後に細粒のフェライト組織を得ることができる。
【0018】
(e)冷却速度が遅いと、冷却中に結晶が成長し粗粒のフェライト組織となる。一方、冷却速度が速いとマルテンサイト相が生成するため靭性が低下する。そのため、細粒のフェライト相を得るには適正な冷却速度で冷却する必要がある。
【0019】
上記(a)〜(e)の知見に基づいて、化学組成および熱間加工条件を適正な範囲とすることで、熱間加工ままの素材をvTrs値が20℃以下という、優れた靭性を有するものとすることができる。そして、この熱間加工ままの素材を冷間加工しても割れが発生することはない。
【0020】
本発明は、このような知見に基づいてなされたものであり、下記の(A)および(B)に示すフェライト系ステンレス鋼材の製造方法および下記の(C)および(D)に示すフェライト系ステンレス鋼管の製造方法を要旨とする。
【0021】
(A)質量%で、C:0.03〜0.08%、Si:1.0%以下、Mn:1.0%以下、Cr:11.5〜14.5%、Ni:0.14〜0.49%、Al:0.10%を超えて0.30%以下、N:0.030%以下を含み、残部がFeおよび不純物からなる化学組成を有する素材に、下記の(1)〜(3)を満足する条件で、加熱、熱間加工および冷却を行う、フェライト系ステンレス鋼材の製造方法。
(1)加熱温度を850〜1150℃とすること、
(2)熱間加工を加工比(加工前の断面積/加工後の断面積)8以上で行うこと、
(3)熱間加工後、冷却開始温度から800℃までの温度域における冷却速度を150〜600℃/分とすること。
【0022】
(B)上記冷却後のフェライト系ステンレス鋼材に、さらに、断面減少率28%以上の冷間加工を行った後、650℃以上の温度で焼きなましする、上記(A)のフェライト系ステンレス鋼材の製造方法。
【0023】
(C)質量%で、C:0.03〜0.08%、Si:1.0%以下、Mn:1.0%以下、Cr:11.5〜14.5%、Ni:0.14〜0.49%、Al:0.10%を超えて0.30%以下、N:0.030%以下を含み、残部がFeおよび不純物からなる化学組成を有する素管に、下記の(1)〜(3)を満足する条件で、加熱、熱間押出加工および冷却を行う、フェライト系ステンレス鋼管の製造方法。
(1)加熱温度を850〜1150℃とすること、
(2)熱間押出加工を加工比(加工前の断面積/加工後の断面積)8以上で行うこと、
(3)熱間押出加工後、冷却開始温度から800℃までの温度域における冷却速度を150〜600℃/分とすること。
【0024】
(D)上記冷却後のフェライト系ステンレス鋼管に、さらに、断面減少率28%以上の冷間圧延を行った後、650℃以上の温度で焼きなましする、上記(C)のフェライト系ステンレス鋼管の製造方法。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、熱間加工ままの素材をvTrs値が20℃以下という、優れた靭性を有するものとすることができる。よって、熱間加工後に、特別な処理を施さなくても、その後の冷間加工(特に、鋼管の冷間圧延)において割れが発生しない、フェライト系ステンレス鋼材(特に、フェライト系ステンレス鋼管)を製造することができる。本発明によって得られるフェライト系ステンレス鋼材は、特に、ピルガーミルによる冷間圧延に用いるのに適している。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明に供する鋼材の化学組成および製造条件について説明する。下記の説明において、元素の含有量についての「%」は「質量%」を意味する。また、「熱間加工」には、鋼管を製造する際の熱間押出加工が含まれ、「冷間加工」には、鋼管を製造する際の冷間圧延が含まれる。
【0027】
1.鋼材の化学組成
C:0.03〜0.08%
Cは、熱間加工前の加熱中に十分なオーステナイト相を生成させる効果を有する。この効果を得るためには、その含有量を0.03%以上とする必要がある。しかし、熱間加工後の冷却中のマルテンサイト変態を抑制するためには、その含有量を0.08%以下に制御することが不可欠である。従って、Cの含有量は0.03〜0.08%とした。この効果をより有効に発揮するためには、その下限を0.04%とするのが好ましい。また、その上限は0.06%とするのが好ましい。
【0028】
Si:1.0%以下
Siは、鋼の脱酸に必要な元素であり、また鋼の所定の強度を付与するのにも必要な元素である。しかし、その含有量が1.0%を超えると、耐食性および溶接性の低下、ならびに粗粒化を誘発して冷間加工性を劣化させる。従って、Siの含有量は1.0%以下とした。効果をより有効とするために、Si含有量の上限は0.65%とするのが好ましい。より好ましい上限は0.55%である。なお、上記の効果は、Siが微量でも含まれておれば発揮されるが、Siを0.05%以上含有させた場合に顕著となる。
【0029】
Mn:1.0%以下
Mnは、Si同様、鋼の脱酸に必要な元素である。しかし、熱間加工後の冷却中に微細なフェライト相を析出させるためには、その含有量は1.0%以下にする必要がある。効果をより有効とするために、Mn含有量の上限は0.65%とするのが好ましい。なお、上記の効果は、Mnが微量でも含まれておれば発揮されるが、Mnを0.55%以上含有させた場合に顕著となる。
【0030】
Cr:11.5〜14.5%
Crは、熱間加工後の冷却中に析出するフェライト相を安定化させるとともに、耐食性を付与するのに必要な元素である。これらの効果を得るためには、その含有量を11.5%以上とすることが不可欠である。しかし、熱間加工前の加熱中のオーステナイト相を増加させるためには14.5%以下とすることが必要である。従って、Cr含有量を11.5〜14.5%とした。効果をより有効とするために、Crの下限は12.1%とするのが好ましい。好ましい上限は14.0%である。
【0031】
Ni:0.14〜0.49%
Niは、オーステナイト安定化元素であるため、一般には、フェライト相中にオーステナイト相が混入し、冷間加工性を損なう元素であると考えられている。しかし、本発明では、熱間加工前の加熱中にオーステナイト相を微細に析出させ、熱間加工後の冷却中にオーステナイト相の結晶粒界3重点を核生成サイトとして、フェライト相を微細に析出させることとしている。Niは、上記加熱中にδフェライト相の粒成長を抑制して、オーステナイト相を細粒化するのに有効である。そのためには、Ni含有量を0.14%以上とすることが必要である。一方、熱間加工後の冷却中に微細なフェライト相を析出させるためには、Ni含有量は0.49%以下とすることが不可欠である。従って、Ni含有量は0.14〜0.49%とした。効果をより有効とするために、Ni含有量の下限は0.15%とするのが好ましく、より好ましい下限は0.21%である。また、Ni含有量の好ましい上限は0.40%であり、より好ましいのは0.30%である。
【0032】
Al:0.10%を超えて0.30%以下
Alは、フェライト相を安定させる元素である。熱間加工後の冷却中にフェライト相を析出させるためには0.10%を超えて含有させることが不可欠である。しかし、熱間加工前の加熱中にδフェライト相が析出するのを抑制するためには0.30%以下にする必要がある。従って、Alの含有量は、0.10%を超えて0.30%以下とした。効果をより有効とするために、Al含有量の下限は、0.15%とするのが好ましい。また、Al含有量の好ましい上限は0.25%である。
【0033】
N:0.030%以下
Nは、鋼に所定の強度を付与するのに必要な元素であるが、その含有量が過剰な場合には、鋼材の耐食性、靭性および加工性を劣化させる。また、熱間加工後の冷却中にフェライト相を析出させるためには、N含有量は0.030%以下とする必要がある。N含有量の好ましい上限は0.020%である。Niの上記の効果が顕著となるのは、その含有量が0.005%以上の場合である。
【0034】
本発明に供される鋼の化学組成は、上記の元素を含有し、残部がFeおよび不純物からなる。不純物とは、鉱石、スクラップ等の原料、製造工程の種々の要因によって混入する成分であって、本発明に悪影響を与えない範囲で許容されるものを意味する。
【0035】
2.熱間加工前の加熱条件
加熱温度:850〜1150℃
熱間加工前には、オーステナイト相が十分に析出するように素材を850℃以上に加熱することが必要である。特に、オーステナイトが50体積%以上となる温度とすることが望ましい。一方、熱間加工前の加熱温度が1150℃を超えると、加熱時に析出するオーステナイト相が減少し、鋼材の組織を細粒化できない。また、冷却後のフェライト相が十分に得られない。加熱温度の好ましい下限は970℃である。加熱温度の好ましい上限は1120℃であり、より好ましいのは1020℃である。
【0036】
3.熱間加工条件
加工比(加工前の断面積/加工後の断面積):8以上
熱間加工時の加工比を大きくすることによって加工後に再結晶するオーステナイト相を微細化できるので、フェライト変態のための核生成サイトを増加させることができ、熱間加工後の冷却時に微細なフェライト相を析出させやすくする。しかし、熱間加工時の加工比が8未満では、オーステナイト相が加工後再結晶する際に微細化しない。その結果、フェライト変態の核生成サイトが少なくなり、vTrs≦20℃の高い靭性が得られない。好ましい加工比は10以上である。加工比の上限は、特に設けないが、高すぎると加工時の設備への負荷が高くなりすぎるため、上限は50とするのが好ましい。
【0037】
4.冷却条件
熱間加工完了から冷却までの時間が長すぎると、その間にオーステナイト粒が成長し、組織の微細化が不十分となる。従って、冷却は、熱間加工直後に行うのが好ましい。特に、熱間加工が完了した後、1分以内に冷却を開始するのが好ましい。
【0038】
冷却開始温度から800℃までの温度域における冷却速度は150〜600℃/分とする。冷却速度が150℃/分未満では、冷却中に結晶が成長して粒界が減少するため、冷却後に微細なフェライト相が十分に得られない。一方、冷却速度が600℃/分を超えると、冷却中にマルテンサイトが生成するため、靭性が低下する。そのため、冷却速度は150〜600℃/分とした。効果をより有効とするために好ましい下限は200℃/分であり、好ましい上限は500℃/分である。より好ましい下限は250℃/分である。また、より好ましい上限は400℃/分である。
【0039】
5.冷間加工条件
冷却後に行う冷間加工は、断面減少率を28%以上とすることが好ましい。断面減少率が28%未満の場合は、歪の導入が少なく、次の焼きなまし熱処理で再結晶を起こしにくい。このため、かえって粗粒化または混粒化を招く場合がある。好ましい断面減少率は、45%以上である。より好ましいのは60%以上である。断面減少率の上限は特に設けないが、高すぎると加工時の設備への負荷が高くなりすぎるため、上限は80%とするのが好ましい。
【0040】
6.焼きなまし条件
冷間加工された管は、強度、靭性等の機械的特性を改善するため通常焼きなまし処理が施される。冷間加工後の熱処理により均一な再結晶組織を得るためには650℃以上の焼きなましをすることが好ましい。より好ましい焼きなまし温度は700℃以上である。また、加熱後の冷却は、空冷または徐冷が好ましい。
【実施例1】
【0041】
表1に示す化学組成を有する鋼を電気炉で溶製し、AODおよびVODで精錬し、熱間鍛造して外径175mmφのビレットを得た。そのビレットを種々の条件で熱間加工して素管を得た。
【0042】
得られた素管から管軸方向のシャルピー衝撃試験片(JIS規定のサブサイズ試験片:10mmw×2.5mmt×55mmL、2mmVノッチ)を切り出し、シャルピー衝撃試験によりvTrsを求めた。その結果も合わせて表1に示す。
【0043】
【表1】

【0044】
表1に示すように、化学組成および製造条件が本発明で規定される条件を満たす本発明例1〜8では、vTrsが低く優れた靭性を有していた。
【0045】
一部の素管については、下記の条件で冷間加工し、管外面からの斜角超音波探傷を行って割れの有無を確認した。
【0046】
本発明例1の鋼管を、ピルガーミルで冷間圧延(断面減少率:45%)して、34.0mmφ×3.36mmtの鋼管を得た。また、本発明例2の鋼管を、ピルガーミルで冷間圧延(断面減少率:74%)して、34.0mmφ×7.2mmtの鋼管を得た。さらに、本発明例3、比較例9および比較例11の鋼管をピルガーミルで冷間圧延(断面減少率:75%)して、30.0mmφ×4.80mmtの鋼管を得た。これらの冷間加工された鋼管には、750℃の焼きなまし後空冷の最終熱処理を施した。
【0047】
それぞれの鋼管の割れを確認したところ、比較例9および比較例11では、割れが発生したのに対し、本発明例1〜3では割れが認められなかった。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明によれば、熱間加工ままの素材をvTrs値が20℃以下という、優れた靭性を有するものとすることができる。よって、熱間加工後に、特別な処理を施さなくても、その後の冷間加工(特に、鋼管の冷間圧延)において割れが発生しない、フェライト系ステンレス鋼材(特に、フェライト系ステンレス鋼管)を製造することができる。本発明によって得られるフェライト系ステンレス鋼材は、特に、ピルガーミルによる冷間圧延に用いるのに適している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
質量%で、C:0.03〜0.08%、Si:1.0%以下、Mn:1.0%以下、Cr:11.5〜14.5%、Ni:0.14〜0.49%、Al:0.10%を超えて0.30%以下、N:0.030%以下を含み、残部がFeおよび不純物からなる化学組成を有する素材に、下記の(1)〜(3)を満足する条件で、加熱、熱間加工および冷却を行うことを特徴とするフェライト系ステンレス鋼材の製造方法。
(1)加熱温度を850〜1150℃とすること、
(2)熱間加工を加工比(加工前の断面積/加工後の断面積)8以上で行うこと、
(3)熱間加工後、冷却開始温度から800℃までの温度域における冷却速度を150〜600℃/分とすること。
【請求項2】
上記冷却後のフェライト系ステンレス鋼材に、さらに、断面減少率28%以上の冷間加工を行った後、650℃以上の温度で焼きなましすることを特徴とする請求項1に記載のフェライト系ステンレス鋼材の製造方法。
【請求項3】
質量%で、C:0.03〜0.08%、Si:1.0%以下、Mn:1.0%以下、Cr:11.5〜14.5%、Ni:0.14〜0.49%、Al:0.10%を超えて0.30%以下、N:0.030%以下を含み、残部がFeおよび不純物からなる化学組成を有する素管に、下記の(1)〜(3)を満足する条件で、加熱、熱間押出加工および冷却を行うことを特徴とするフェライト系ステンレス鋼管の製造方法。
(1)加熱温度を850〜1150℃とすること、
(2)熱間押出加工を加工比(加工前の断面積/加工後の断面積)8以上で行うこと、
(3)熱間加工後、冷却開始温度から800℃までの温度域における冷却速度を150〜600℃/分とすること。
【請求項4】
上記冷却後のフェライト系ステンレス鋼管に、さらに、断面減少率28%以上の冷間圧延を行った後、650℃以上の温度で焼きなましすることを特徴とする請求項1に記載のフェライト系ステンレス鋼管の製造方法。

【公開番号】特開2010−196138(P2010−196138A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−44990(P2009−44990)
【出願日】平成21年2月27日(2009.2.27)
【出願人】(000002118)住友金属工業株式会社 (2,544)
【Fターム(参考)】