説明

フェンタニルまたはその塩を含有する経皮吸収型貼付剤およびその製造方法

【課題】
皮膚刺激性が低く、フェンタニルの皮膚透過性が極めて良好で、しかも経時的な薬物安定性を有するフェンタニル経皮吸収型貼付剤を提供することを課題とする。
【解決手段】
膏体層中に有効成分としてフェンタニルまたはその塩、粘着基剤としてゴム成分、および粘着付与剤としてロジン系樹脂を含有する経皮吸収型貼付剤の製造方法であって、あらかじめ抗酸化剤により処理したロジン系樹脂を、ゴム成分およびフェンタニルまたはその塩と混合して膏体組成物を得る工程を含むことを特徴とする経皮吸収型貼付剤の製造方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フェンタニル(化学名:N−(1−フェネチルピペリジン−4−イル)−N−フェニルプロピオンアミド)を含有し、当該フェンタニル由来分解生成物の生成を抑制した経皮吸収型貼付剤に関し、より詳細には、皮膚刺激性が低く、フェンタニルの皮膚透過性に優れ、さらに経時的な薬物安定性や効果持続性にも優れる経皮吸収型貼付剤に関する。
【背景技術】
【0002】
フェンタニルまたはその塩は、合成オピオイド系鎮痛薬であり、主に注射剤として急性の術後疼痛や慢性のがん性疼痛の治療などに使用されている。さらに、注射剤に加え、フェンタニルを含有する貼付剤が開発され(特許文献1参照)、すでに日本国内においても市販されており、臨床の場において高い効果を得ている。この貼付剤は、リザーバー型を有しており、フェンタニルの持続的な放出性に優れ、注射剤に対して作用時間が長く、がん性疼痛コントロールの治療に適している。その一方で、製剤の構成は、支持体、薬物貯蔵層、放出制御層、粘着層、ライナーからなり、その製剤の製造は工程数が多く複雑であり、また、精度の高い技術が必要である。そのため、一般の貼付剤よりも高い製造コストとなり、改善が必要とされた。さらに、この製剤は1枚を連続で3日間貼付して使用する用法にもかかわらず、粘着不足による貼付中の剥がれ・めくれが問題となっていた。また、国内外において、薬物貯蔵層からの薬液の漏出、製剤の誤用例、乱用が報告されており、万が一、患者または患者以外の健康人の皮膚に前記薬液が直接接触した場合、呼吸抑制など重篤・致死的な健康障害が発生する可能性が懸念されている。
【0003】
近年では、マトリックス型のフェンタニル含有貼付剤が開発されている。マトリックス型の貼付剤はリザーバー型の貼付剤と比較して構成がシンプルで製造方法が簡便であるため、低コストで製造することができる。しかしながら、マトリックス型の貼付剤は放出制御層を有していないため、リザーバー型の貼付剤と比較して、一般的に薬物の皮膚への移行は速やかに行われるものの、薬物吸収の持続性が低く、その改善が必要とされていた。
【0004】
上記の問題を改善したマトリックス型のフェンタニル貼付剤が開示されている。例えば、フェンタニル、アクリル系粘着基剤を含有する貼付剤(特許文献2参照)、フェンタニル、シリコーン系粘着基剤を含有する貼付剤(特許文献3参照)、フェンタニル、ポリイソブチレン、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体および粘着付与樹脂として脂環族飽和炭化水素樹脂を単独で含有する貼付剤(特許文献4参照)、フェンタニル、ポリイソブチレン、鉱油および吸収促進剤を含有する貼付剤(特許文献5参照)、分子量の異なる2種のポリイソブチレン、タッキファイヤー(粘着付与剤)、有機液剤(吸収促進剤)を含有する貼付剤(特許文献6参照)などが開示されている。
【0005】
しかしながら、特許文献2に用いられているアクリル系粘着基剤は、一般的に皮膚への粘着性が良好な製剤であるが、貼付剤剥離時の物理的な皮膚損傷(角層剥離量)の発現が多くみられ、がん患者に対する安全性およびコンプライアンスの低下が問題となる可能性がある。特許文献3に用いられているシリコーン粘着基剤は、一般的に皮膚への粘着性に乏しく、貼付時にはがれ・めくれが生じ、がん患者に対する薬物の安定した投与、つまり、薬物の有効血中濃度の維持ができない可能性がある。特許文献4の発明品は、皮膚への粘着性に優れた製剤であるが、粘着付与樹脂に用いられる脂環族飽和炭化水素樹脂は、他の粘着付与樹脂に比べフェンタニルとの相溶性が低く、膏体層中のフェンタニルが経時的に再結晶化し析出する可能性がある。また、特許文献5および6の発明品は、製剤安定性が高く、皮膚透過性に優れた貼付剤であるが、発汗や入浴時における皮膚への粘着性の低下や皮膚刺激の発現等が問題となる可能性がある。
【0006】
【特許文献1】特開昭61−37725号公報
【特許文献2】公表2004−524336号公報
【特許文献3】特表2006−513160号公報
【特許文献4】WO2004/024155号公報
【特許文献5】WO2004/035054号公報
【特許文献6】特開2006−76994号公報
【特許文献7】特開平10−45570号公報
【0007】
また、これらマトリックス型のフェンタニル経皮吸収型貼付剤において、抗酸化剤としてトコフェロールおよびそのエステル誘導体、アスコルビン酸、ステアリン酸エステル、ノルジヒトログアレチン酸、ジブチルヒドロキシトルエン(BHT)、ブチルヒドロキシアニソール(BHA)を配合することができることは記載されているが(特許文献7)、これらのフェンタニルまたはその塩に対する安定化効果はこれまで全く知られていなかった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、本発明は、上記のような従来技術の問題点を解決し、皮膚刺激性が低く、フェンタニルの皮膚透過性が極めて良好で、しかも経時的な薬物安定性を有するフェンタニル経皮吸収型貼付剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記の目的を達成するために、鋭意検討を行う過程において、フェンタニルまたはその塩を含有する経皮吸収型貼付剤の製造にあたり、フェンタニル分子中のピペリジン環の窒素原子への酸化体(以下、フェンタニル−N−オキサイド体ともいう)が分解生成物として生成し、貼付剤製造過程においてさらに熱分解して、少なからぬ量の二次分解生成物が製剤中に生成、残存することを知った。そして、粘着付与剤であるロジン系樹脂をあらかじめ抗酸化剤で処理してから、フェンタニルまたはその塩と混合することによって、フェンタニル−N−オキサイド体およびこれに由来する二次分解生成物の生成が抑制されることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
即ち本発明は、膏体層中に有効成分としてフェンタニルまたはその塩、粘着基剤としてゴム成分、および粘着付与剤としてロジン系樹脂を含有する経皮吸収型貼付剤の製造方法であって、あらかじめ抗酸化剤により処理したロジン系樹脂を、ゴム成分およびフェンタニルまたはその塩と混合して膏体組成物を得る工程を含むことを特徴とする経皮吸収型貼付剤の製造方法である。
【0011】
また本発明は、抗酸化剤より処理したロジン系樹脂を含有することを特徴とするフェンタニルまたはその塩を含有する経皮吸収型貼付剤である。
【0012】
さらに本発明は、抗酸化剤により処理してなるロジン系樹脂である。
【0013】
またさらに本発明は、膏体層中に有効成分としてフェンタニルまたはその塩、粘着基剤としてゴム成分、および粘着付与剤としてロジン系樹脂を含有する経皮吸収型貼付剤の製造において、あらかじめ抗酸化剤により処理したロジン系樹脂を、ゴム成分およびフェンタニルまたはその塩と混合することを特徴とするフェンタニルまたはその塩の安定化方法である。
【0014】
さらに、本発明は膏体層中に有効成分としてフェンタニルまたはその塩、粘着基剤としてゴム成分、および粘着付与剤としてロジン系樹脂を含有する経皮吸収型貼付剤の製造において、あらかじめ抗酸化剤により処理したロジン系樹脂を、ゴム成分およびフェンタニルまたはその塩と混合することを特徴とするフェンタニルN−オキサイド体の生成抑制方法である。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、有効成分としてフェンタニルまたはその塩を用いた経皮吸収型貼付剤の製造において、フェンタニル−N−オキサイド体およびこれに由来する二次分解生成物の生成を抑制することができる。したがって、本発明の経皮吸収型貼付剤は、低刺激性、かつ優れた皮膚透過性を発揮することに加えて、経時的な薬物安定性に優れたものである。すなわち、長時間にわたって保存可能であり、フェンタニルまたはその塩の分解を引き起こさない製剤が得られ、これにより、フェンタニルまたはその塩の薬理効果を有効に、しかも持続的に利用することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明の経皮吸収型貼付剤は、膏体層中に有効成分としてフェンタニルまたはその塩を用いる。フェンタニルの塩としては、医薬上許容される塩であれば、特に限定されず、無機塩であっても有機塩であってもよく、代表的なフェンタニル塩としてクエン酸塩、塩酸塩、フマル酸塩等を挙げることができる。これらの中でも、クエン酸フェンタニルが特に好ましい。なお、フェンタニルまたはその塩は、2種以上を混合して用いてもよいが、通常は単独で用いるのがよい。フェンタニルの配合量は、膏体層全体に対して1〜6質量%(以下、単に「%」で示す)であることが好ましい。
【0017】
また膏体層には、粘着付与剤としてのロジン系樹脂が配合される。ロジン系樹脂の中でも水素添加ロジングリセリンエステルが、粘着基剤および薬物との相溶性に優れ、製剤設計が容易であるなどの点で好ましい。ロジン系樹脂の市販品としては、KE−311、KE−100(荒川化学工業社製)、スーパーエステルS−100(荒川化学工業社製)等が例示できる。ロジン系樹脂の配合量は、膏体層全体に対して、1〜8%であることが好ましい。本発明においては、このロジン系樹脂をあらかじめ抗酸化剤により処理して用いる。
【0018】
この抗酸化剤としては、トコフェロールおよびそのエステル誘導体、アスコルビン酸、アスコルビン酸エステル、ノルジヒトログアレチン酸、フェノール系抗酸化剤等が挙げられ、これらは単独または2種以上組み合わせて配合することもできる。これらの中でも、アスコルビン酸またはそのエステルおよびフェノール系抗酸化剤が好ましく用いられ、特にこれらを併用することが好ましい。
【0019】
アスコルビン酸としては、L−アスコルビン酸、L−アスコルビン酸2−グルコシド、L−アスコルビン酸ナトリウム、L−アスコルビン酸カルシウムなどが挙げられ、中でも、L−アスコルビン酸がよく、また、そのエステルとしては、L−アスコルビン酸パルミチン酸エステル、L−アスコルビン酸ステアリン酸エステル、L−アスコルビン酸リン酸エステルマグネシウムが挙げられ、中でも脂溶性基剤との相溶性に優れるためL−アスコルビン酸パルミチン酸エステルがよい。
【0020】
フェノール系抗酸化剤としては、3,5−ジ第3級ブチル−4−ヒドロキシトルエン(BHT)、2−第3級ブチル−4−メトキシフェノール(BHA)、3−(3,5−ジ第3級ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸オクタデシルエステル、テトラキス〔メチレン−3−(3,5−ジ第3級ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕メタン、トリス3,5−ジ第3級ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、4,4´−ブチリデンビス(3−メチル−6−第3級ブチルフェノール)、トリエチレングリコールビス〔3−(3−第3級ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオネート〕、3,9−ビス{2−〔3−(3−第3級ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ〕−1,1−ジメチルエチル}−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン等が挙げられ、なかでも3,5−ジ第3級ブチル−4−ヒドロキシトルエンが、粘着基剤との相溶性が良好であるため好ましい。
【0021】
これら抗酸化剤は、膏体層全体に対して0.02〜8%の量で配合することが好ましい。配合量が0.02%未満であると、充分な安定化効果が得られない場合があり、8%を超えても、安定化効果に差がなく、増量する意義が見出せない場合がある。また、ロジン系樹脂に対して、質量比(抗酸化剤/ロジン系樹脂)で0.00125〜1の範囲で配合することが好ましい。
【0022】
また、抗酸化剤を併用する場合、組み合わせる抗酸化剤の種類等に応じて適宜その配合量を設定することができるが、たとえば、アスコルビン酸またはそのエステルとフェノール系抗酸化剤とを併用する場合を例にとって説明すると、これらの配合割合は質量比で1:5〜1:250が好ましい。
【0023】
本発明の経皮吸収型貼付剤の膏体層には、粘着基剤としてゴム成分が用いられる。このゴム成分としては、特に限定されないが、好ましい例として、ポリイソブチレン(PIB)、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(SIS)[例えば、JSRクレイトンエラストマー;クレイトンD−KX401CS、クレイトンD−1107CP、シェル化学社製;カリフレックスD−1111、カリフレックスTR−1107、日本合成ゴム社製;JSR5000、JSR−5002、SR5100、日本ゼオン社製;クインタック3421等]、イソプレンゴム[例えば、日本ゼオン;NIPOL IR2200]、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SBS)[例えば、シェル化学社製;カリフレックスTR−1101等]、アクリル系ポリマー(2−エチルヘキシルアクリレート、酢酸ビニル、エチルアクリレート、メタクリレート、メトキシエチルアクリレート、アクリル酸の少なくとも2種の共重合体、例えばPE−300等(日本カーバイト社製)等を挙げることができ、これらを単独または2種以上を混合して用いることができる。これらの中でも、SISを用いることが好ましい。
【0024】
ゴム成分は、膏体層全体の質量に基づいて、0.1〜98%、さらに0.1〜70%、特に0.1〜50%配合することが好ましい。ゴム成分の配合量が0.1%未満であると、製剤自体の物性が悪くなる場合があり、98%を越えると、人体皮膚に対する良好な粘着力が得られない場合がある。
【0025】
なお、ゴム成分の粘着性が低い場合には、製剤に粘着性を付与するために、膏体層にさらに、ロジン系樹脂以外の粘着付与剤を配合することができる。粘着付与剤としては、ポリテルペン樹脂系、石油樹脂系、油溶性フェノール樹脂系の粘着付与剤等を好ましい例として挙げることができる。これらの市販品の例としては、クリアロンP−105(ヤスハラケミカル社製)、アルコンP−100(荒川化学工業社製)、YSレジン75、YSレジン PX1150N(ヤスハラケミカル社製)を挙げることができる。粘着付与剤は、膏体層全体の質量に基づいて、10〜70%、特に20〜60%の量で配合されることが好ましい。
【0026】
また、本発明の経皮吸収型貼付剤の加工性の向上や粘着性の調整のために、膏体層には油脂を軟化剤として配合することもできる。油脂としては、例えば、流動パラフィン、スクワラン、オリーブ油、ツバキ油、パーシック油、ラッカセイ油等が好ましく、特に流動パラフィンが好ましい。油脂は、膏体層全体の質量に基づいて、1〜60%、特に10〜50%の量で配合されることが好ましい。
【0027】
また、本発明の経皮吸収型貼付剤の膏体層には、必要に応じて吸収促進剤を配合することもできる。吸収促進剤としては、皮膚での吸収促進作用が認められている化合物であればいずれのものでもよく、例えば炭素鎖数6〜20の脂肪酸、脂肪族アルコール、脂肪酸エステルまたはエーテル、芳香族系有機酸、芳香族系アルコール、芳香族系有機酸エステルまたはエーテルを挙げることができる。さらに、乳酸エステル類、酢酸エステル類、モノテルペン系化合物、セスキテルペン系化合物、N−ドデシルアザシクロペンタン−2−オン(商品名:Azone)またはその誘導体、グリセリン脂肪酸エステル類、ソルビタン脂肪酸エステル類、ポリソルベート系、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油系、ショ糖脂肪酸エステル類等を挙げることができる。具体的には、カプリル酸、カプリン酸、カプロン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、オレイルアルコール、セチルアルコール、ラウリン酸メチル、ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸ミリスチル、ミリスチン酸オクチルドデシル、パルミチン酸セチル、サリチル酸、サリチル酸メチル、サリチル酸エチレングリコール、ケイ皮酸、ケイ皮酸メチル、クレゾール、乳酸セチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、ゲラニオール、チモール、オイゲノール、テルピネオール、l−メントール、ボルネオール、d−リモネン、イソオイゲノール、イソボルネオール、ネロール、dl−カンフル、グリセリンモノラウレート、グリセリンモノオレエート、ソルビタンモノラウレート、ショ糖モノラウレート、ポリソルベート20、ポリエチレングリコールモノラウレート、ポリエチレングリコールモノステアレート、硬化ヒマシ油、1−[2−(デシルチオ)エチル]アザシクロペンタン−2−オンが好ましい。このような吸収促進剤は、膏体層全体の質量に基づいて、0.01〜20%、さらに0.1〜10%、特に0.5〜5%の量で配合されることが好ましい。吸収促進剤の配合量が20%を越えると、発赤、浮腫等の皮膚への刺激性が認められる場合があり、0.01%未満であると吸収促進剤の配合の効果が得られない場合がある。
【0028】
さらに、本発明の経皮吸収型貼付剤の膏体層には、皮膚から発生した汗等の水性成分を吸収させるために、必要に応じて親水性ポリマーを配合することもできる。親水性ポリマーとしては、例えば、軽質無水ケイ酸、セルロース誘導体(カルボキシメチルセルロース(CMC)、カルボキシメチルセルロースナトリウム(CMCNa)、メチルセルロース(MC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロール(HPMC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC))、デンプン誘導体(プルラン)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルピロリドン(PVP)、酢酸ビニル(VA)、カルボキシビニルポリマー(CVP)、エチル酢酸ビニル(EVA)、アクリルポリマー(商品名:オイドラギット)、ゼラチン、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸ソーダ、ポリイソブチレン無水マレイン酸共重合体、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、カラギーナン、アラビアゴム、トラガント、カラヤゴム、ポリビニルメタクリレートが好ましく、特に軽質無水ケイ酸、セルロース誘導体(CMCNa、HPMC、HPC、MC)、アクリルポリマー(商品名:オイドラギット)が好ましい。親水性ポリマーは、本発明の経皮吸収型貼付剤の膏体層全体の質量に基づいて、0.1〜20%、特に0.5〜10%配合することが好ましい。
【0029】
また、膏体層には、所望により架橋剤、防腐剤、紫外線吸収剤等のその他の成分を配合することができる。架橋剤としては、アミノ樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、アルキド樹脂、不飽和ポリエステル等の熱硬化性樹脂、イソシアネート化合物、ブロックイソシアネート化合物、有機系架橋剤、金属または金属化合物等の無機系架橋剤が好ましい。防腐剤としては、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸プロピル、パラオキシ安息香酸ブチル等が好ましい。紫外線吸収剤としては、4−第3級ブチル−4´−メトキシベンゾイルメタン、2−(4−ジエチルアミノ−2−ヒドロキシベンゾイル)安息香酸n−ヘキシルエステル、4−ヒドロキシ−3−メトキシケイ皮酸、4−ヒドロキシ−3−メトキシケイ皮酸の分枝鎖状アルキルエステル、テレフタリリデン−3,3´−ジカンファー−10,10´−ジスルホン酸、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−メチル−6−〔2−メチル−3−[1,3,3,3−テトラメチル−1−[(トリメチルシリル)オキシジシロキサニール]プロピル〕ジオキソイミダゾリジンプロピオン酸2−エチルヘキシルエステル、1−(3,4−ジメトキシフェニル)−4,4−ジメチル−1,3−ペンタンジオン、2−(2−ヒドロキシ−5−メトキシフェニル)ベンゾトリアゾール、オキシベンゾン、4−アミノ安息香酸エチルエステルまたは4−メトキシケイ皮酸2−エチルヘキシルエステル等が挙げられる。なお、本発明の経皮吸収型貼付剤の膏体層は、非水系の基剤からなることが好ましく、非水系の基剤とすることにより本発明の効果を有効に得ることができる。
【0030】
上記のような組成を有する膏体層の調製にあたっては、あらかじめロジン系樹脂を抗酸化剤により処理する必要がある。この抗酸化剤による処理は、アスコルビン酸またはそのエステルと、ロジン系樹脂とを適当な溶媒に溶解し、この溶液を1〜30℃で、24〜120時間、好ましくは36〜72時間放置すればよい。例えば、ロジン系樹脂をベンゼン、トルエン、キシレン、ヘキサン等の有機溶剤に溶解した溶液と、アスコルビン酸またはそのエステルをエタノール、イソプロパノール等の有機溶剤に溶解した溶解とを混合し、この混合した溶液を1〜30℃で24〜120時間放置する方法が例示できる。
【0031】
上記のように予めロジン系樹脂を抗酸化剤で処理すること以外は、公知の方法によって膏体層を調製することができ、抗酸化剤で処理したロジン系樹脂をゴム成分およびフェンタニルまたはその塩と常法に従って混合すればよい。より具体的には、溶剤法により製造する場合には、抗酸化剤で処理したロジン系樹脂を有機溶剤に溶解した溶液と、ゴム成分およびその他の任意成分とを有機溶剤に溶解した溶液とを混合し、この混合した溶液にフェンタニルまたはその塩を添加、攪拌して膏体組成物を調製することができる。かくして得られた膏体組成物を、支持体または剥離シートに伸展し、乾燥させ、任意の面積に裁断することで本発明の経皮吸収型貼付剤を得ることができる。
【0032】
支持体または剥離シートへの伸展は、乾燥時の膏体層の厚さが10〜150μmになるように伸展するのが好ましい。膏体層の厚さが10μm未満では十分な皮膚への粘着力を保てない場合があり、150μmを超えると被服と擦れによる製剤のはがれ・めくれの原因となる場合がある。
【0033】
本発明の経皮吸収型貼付剤の皮膚適用時の面積は2.5〜60cmであることが好ましい。面積が2.5cm未満では、治療上、十分なフェンタニル経皮吸収性が得られず、またハンドリング性も低下する場合がある。面積が60cmを超え貼付中の違和感が生じ、がん患者のコンプライアンスを低下させる場合がある。
【0034】
また、本発明の経皮吸収型貼付剤は、膏体層が上記のような組成から構成されるものであれば、その他の層やそれらを構成する成分は、特に限定されず、いずれの層から構成されるものであってもよい。例えば、本発明の経皮吸収型貼付剤は、膏体層の他、それを支持する支持体層、膏体層上に設けられる剥離ライナー層等から成ることができる。支持体層は、例えば、布、不織布、ポリウレタン、ポリエステル、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、紙、アルミニウムシート等またはそれらの複合素材からなることができる。剥離シートは、例えば、シリコーンオイルを塗布したポリエステル等の高分子材料で作られたフィルムや、紙の上にシリコーンオイル等を塗付したものより選択され、使用される。
【0035】
本発明の経皮吸収型貼付剤によれば、フェンタニルまたはその塩が皮膚を経由し持続的に吸収されるため、麻薬性鎮痛剤の経口投与が困難な患者にとって、疼痛緩和の有力な手段となる。また侵襲的な投与方法である持続皮下投与方法に比して、非侵襲的に投与することができ、患者の負担も軽減することができる。また、投与量についても、製剤を裁断すること等により、患者の症状、年齢、体重、性別等に応じて、容易に調節することができる。
【0036】
なお、フェンタニル−N−オキサイド体は、たとえば経皮吸収型貼付剤の粘着層を製造する場合の通常の温度である60℃にて24時間維持すると、分解し、4種の二次分解産物が生じる。これら二次分解生成物としては、N−フェニルプロピオンアミド、N−(1−ヒドロキシピペリジン−4−イル)−N−フェニルプロピオンアミド、(1−フェネチル−2−オキソピペリジン−4−イル)−N−フェニルプロピオンアミドおよびスチレンの4種であることを本発明者らは分析化学の技量を駆使して初めて解明した。本発明によれば、一次分解生成物であるフェンタニル−N−オキサイド体、さらにはその熱分解物である上記4種の二次分解生成物の生成を抑制することができ、経時的な薬物安定性を有する経皮吸収型貼付剤が得られる。
【実施例】
【0037】
以下、実施例を示し、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではなく、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲での種々の変更が可能である。
実施例1
フェンタニル 4.0%
スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体 18.2%
ポリイソプレン 9.8%
水素添加ロジングリセリンエステル 5.0%
ポリテルペン樹脂 34.98%
ポリブテン 14.0%
流動パラフィン 14.0%
L−アスコルビン酸パルミチン酸エステル 0.02%
合計 100%
【0038】
(製 法)
水素添加ロジングリセリンエステルをトルエンに溶解させ、エタノールに溶解したL−アスコルビン酸パルミチン酸エステルを加え10分間攪拌し、2日間室温に放置した後、別途トルエンに溶解させておいたスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体、ポリイソプレン、ポリテルペン樹脂、ポリブテンおよび流動パラフィンを加え撹拌混合した後、フェンタニルを加えさらに攪拌混合し、均一な溶解物を得た。次にこの溶解物を、ドクターナイフ塗工機を用いて剥離フィルムに塗工後、風乾し、塗工面に支持体を貼り合わせた後、10.5cmのサイズに裁断し、アルミ包材に包装した。
【0039】
実施例2
フェンタニル 4.0%
スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体 18.2%
ポリイソプレン 9.8%
水素添加ロジングリセリンエステル 5.0%
ポリテルペン樹脂 33.0%
ポリブテン 14.0%
流動パラフィン 14.0%
L−アスコルビン酸パルミチン酸エステル 0.02%
3,5−ジ第3級ブチル−4−ヒドロキシトルエン 1.98%
合計 100%
【0040】
(製 法)
水素添加ロジングリセリンエステルをトルエンに溶解させ、エタノールに溶解したL−アスコルビン酸パルミチン酸エステルおよび3,5−ジ第3級ブチル−4−ヒドロキシトルエンを加え10分間攪拌し、2日間室温に放置した後、別途トルエンに溶解させておいたスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体、ポリイソプレン、ポリテルペン樹脂、ポリブテンおよび流動パラフィンを加え撹拌混合した後、フェンタニルを加えさらに攪拌混合し、均一な溶解物を得た。次にこの溶解物を、ドクターナイフ塗工機を用いて剥離フィルムに塗工後、風乾し、塗工面に支持体を貼り合わせた後、10.5cmのサイズに裁断し、アルミ包材に包装した。
【0041】
実施例3
フェンタニル 4.0%
スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体 18.2%
ポリイソプレン 9.8%
水素添加ロジングリセリンエステル 5.0%
ポリテルペン樹脂 34.9%
ポリブテン 14.0%
流動パラフィン 14.0%
L−アスコルビン酸パルミチン酸エステル 0.1%
合計 100%
【0042】
(製 法)
水素添加ロジングリセリンエステルをトルエンに溶解させ、エタノールに溶解したL−アスコルビン酸パルミチン酸エステルを加え10分間攪拌し、2日間室温に放置した後、別途トルエンに溶解させておいたスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体、ポリイソプレン、ポリテルペン樹脂、ポリブテンおよび流動パラフィンを加え撹拌混合した後、フェンタニルを加えさらに攪拌混合し、均一な溶解物を得た。次にこの溶解物を、ドクターナイフ塗工機を用いて剥離フィルムに塗工後、風乾し、塗工面に支持体を貼り合わせた後、10.5cmのサイズに裁断し、アルミ包材に包装した。
【0043】
実施例4
フェンタニル 4.0%
スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体 18.2%
ポリイソプレン 9.8%
水素添加ロジングリセリンエステル 5.0%
ポリテルペン樹脂 33.0%
ポリブテン 14.0%
流動パラフィン 14.0%
L−アスコルビン酸パルミチン酸エステル 0.1%
3,5−ジ第3級ブチル−4−ヒドロキシトルエン 1.9%
合計 100%
【0044】
(製 法)
水素添加ロジングリセリンエステルをトルエンに溶解させ、エタノールに溶解したL−アスコルビン酸パルミチン酸エステルおよび3,5−ジ第3級ブチル−4−ヒドロキシトルエンを加え10分間攪拌し、2日間室温に放置した後、別途トルエンに溶解させておいたスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体、ポリイソプレン、ポリテルペン樹脂、ポリブテンおよび流動パラフィンを加え撹拌混合した後、フェンタニルを加えさらに攪拌混合し、均一な溶解物を得た。次にこの溶解物を、ドクターナイフ塗工機を用いて剥離フィルムに塗工後、風乾し、塗工面に支持体を貼り合わせた後、10.5cmのサイズに裁断し、アルミ包材に包装した。
【0045】
実施例5
フェンタニル 4.0%
スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体 18.2%
ポリイソプレン 9.8%
水素添加ロジングリセリンエステル 5.0%
ポリテルペン樹脂 34.98%
ポリブテン 14.0%
流動パラフィン 14.0%
L−アスコルビン酸ステアリン酸エステル 0.02%
合計 100%
【0046】
(製 法)
水素添加ロジングリセリンエステルをトルエンに溶解させ、エタノールに溶解したアスコルビン酸ステアリン酸エステルを加え10分間攪拌し、2日間室温に放置した後、別途トルエンに溶解させておいたスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体、ポリイソプレン、ポリテルペン樹脂、ポリブテンおよび流動パラフィンを加え撹拌混合した後、フェンタニルを加えさらに攪拌混合し、均一な溶解物を得た。次にこの溶解物を、ドクターナイフ塗工機を用いて剥離フィルムに塗工後、風乾し、塗工面に支持体を貼り合わせた後、10.5cmのサイズに裁断し、アルミ包材に包装した。
【0047】
実施例6
フェンタニル 4.0%
スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体 18.2%
ポリイソプレン 9.8%
水素添加ロジングリセリンエステル 5.0%
ポリテルペン樹脂 33.0%
ポリブテン 14.0%
流動パラフィン 14.0%
アスコルビン酸 0.02%
3,5−ジ第3級ブチル−4−ヒドロキシトルエン 1.98%
合計 100%
【0048】
(製 法)
水素添加ロジングリセリンエステルをトルエンに溶解させ、エタノールに溶解したアスコルビン酸を加え10分間攪拌し、2日間室温に放置した後、別途トルエンに溶解させておいたスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体、ポリイソプレン、ポリテルペン樹脂、ポリブテンおよび流動パラフィンを加え撹拌混合した後、フェンタニルを加えさらに攪拌混合し、均一な溶解物を得た。次にこの溶解物を、ドクターナイフ塗工機を用いて剥離フィルムに塗工後、風乾し、塗工面に支持体を貼り合わせた後、10.5cmのサイズに裁断し、アルミ包材に包装した。
【0049】
比較例1
フェンタニル 4.0%
スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体 18.2%
ポリイソプレン 9.8%
水素添加ロジングリセリンエステル 5.0%
ポリテルペン樹脂 35.0%
ポリブテン 14.0%
流動パラフィン 14.0%
合計 100%
【0050】
(製 法)
スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体、ポリイソプレン、水素添加ロジングリセリンエステルをトルエン、ポリテルペン樹脂、ポリブテンおよび流動パラフィンをトルエンに加え撹拌混合した後、フェンタニルを加えさらに攪拌混合し、均一な溶解物を得た。次にこの溶解物を、ドクターナイフ塗工機を用いて剥離フィルムに塗工後、風乾し、塗工面に支持体を貼り合わせた後、10.5cmのサイズに裁断し、アルミ包材に包装した。
【0051】
比較例2
フェンタニル 4.0%
スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体 18.2%
ポリイソプレン 9.8%
水素添加ロジングリセリンエステル 5.0%
ポリテルペン樹脂 34.98%
ポリブテン 14.0%
流動パラフィン 14.0%
アスコルビン酸パルミチン酸エステル 0.02%
合計 100%
【0052】
(製 法)
スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体、ポリイソプレン、水素添加ロジングリセリンエステルをトルエン、ポリテルペン樹脂、ポリブテン、流動パラフィン、アスコルビン酸パルミチン酸エステルおよび3,5−ジ第3級ブチル−4−ヒドロキシトルエンを加え撹拌混合した後、フェンタニルを加えさらに攪拌混合し、均一な溶解物を得た。次にこの溶解物を、ドクターナイフ塗工機を用いて剥離フィルムに塗工後、風乾し、塗工面に支持体を貼り合わせた後、10.5cmのサイズに裁断し、アルミ包材に包装した。
【0053】
試験例1 フェンタニル−N−オキサイド生成抑制作用
実施例1、2、3、4および比較例1、2にて得られた各製剤について、フェンタニル、フェンタニル−N−オキサイド体およびスチレンの生成量を経時的に測定した。測定方法は以下の通りである。
10.5cmに裁断した各試験物質を1枚ずつアルミ包材に包装し、室温にて保存し、経時的なフェンタニル、フェンタニル−N−オキサイド体およびスチレンを測定した。
各試験物質の剥離シートを剥がし、50mLの遠心沈殿管に取り、テトラヒドロフラン5mLを加え、20分間振とうし、膏体を完全に溶解させた。この液にメタノール15mLを加え、10分間振とうし、完全に粘着基剤成分を凝集、沈殿させた。
この上澄液を高速液体クロマトグラフィーを用い、下記条件でフェンタニル、フェンタニル−N−オキサイド体およびスチレンを定量した。
高速液体クロマトグラフィーの操作は、カラムが内径4.6mm,長さ10cmのステンレス管に3μmの液体クロマトグラフィー用オクタデシルシリル化シリカゲルを充てんしたもの(カラム温度:40℃付近の一定温度)、検出波長が215nm、移動相がリン酸二水素カリウム2.72gを水1000mLに溶かし,水酸化ナトリウム試液を加えてpH4.7に調整した溶液(移動相A)および液体クロマトグラフィー用アセトニトリル(移動相B)、移動相の送液は移動相A及び移動相Bを任意の条件で混合させ濃度勾配制御させて行った。その結果を表1にまとめた。
【0054】
【表1】

表中、FENはフェンタニル、N−オキサイド体はフェンタニル−N−オキサイド体を意味し、スチレンはフェンタニル分解産物中、最少分子量化合物である。
*1:フェンタニル,N−オキサイド体及びスチレンのそれぞれのピーク面積を足して100%とした値の平均値,n=3
*2:製造後の日数
【0055】
上記結果から、水素添加ロジングリセリンエステルをあらかじめ抗酸化剤、特にアスコルビン酸パルミチンエステル、さらにはBHTと併用して添加することにより、フェンタニルの第一次分解生成物であるフェンタニル−N−オキサイド体および最低分子量化合物であるスチレンの生成が有意に抑制されることが明らかとなった。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明の経皮吸収型貼付剤は、長時間にわたって保存可能で、フェンタニルまたはその塩の分解を引き起こさないものであり、これにより、フェンタニルまたはその塩の薬理効果を有効に、しかも持続的に利用することが可能になる。従って、このものは麻薬性鎮痛剤の経口投与が困難な患者の疼痛緩和等を目的とする製剤として極めて有用なものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
膏体層中に有効成分としてフェンタニルまたはその塩、粘着基剤としてゴム成分、および粘着付与剤としてロジン系樹脂を含有する経皮吸収型貼付剤の製造方法であって、あらかじめ抗酸化剤により処理したロジン系樹脂を、ゴム成分およびフェンタニルまたはその塩と混合して膏体組成物を得る工程を含むことを特徴とする経皮吸収型貼付剤の製造方法。
【請求項2】
抗酸化剤による処理が、ロジン系樹脂および抗酸化剤を溶媒に溶解し、この溶液を温度1〜30℃で24〜120時間放置するものである請求項1記載の経皮吸収型貼付剤の製造方法。
【請求項3】
抗酸化剤が、アスコルビン酸またはそのエステル、フェノール系抗酸化剤よりなる群から選ばれた1種または2種以上である請求項1または2記載の経皮吸収型貼付剤の製造方法。
【請求項4】
アスコルビン酸またはそのエステルが、アスコルビン酸パルミチン酸エステルである請求項3記載の経皮吸収型貼付剤の製造方法。
【請求項5】
フェノール系抗酸化剤が、3,5−ジ第3級ブチル−4−ヒドロキシトルエンである請求項3または4記載の経皮吸収型貼付剤の製造方法。
【請求項6】
あらかじめ抗酸化剤により処理したロジン系樹脂とゴム成分とを混合し、次いでこの混合物とフェンタニルまたはその塩とを混合して膏体組成物を得るものである請求項1ないし5のいずれかの項記載の経皮吸収型貼付剤の製造方法。
【請求項7】
さらに、膏体組成物を支持体または剥離シートに塗布し、次いで剥離シートまたは支持体で該膏体組成物を被覆する工程を含むものである請求項1ないし6のいずれかの項記載の経皮吸収型貼付剤の製造方法。
【請求項8】
抗酸化剤により処理したロジン系樹脂を含有することを特徴とするフェンタニルまたはその塩含有経皮吸収型貼付剤。
【請求項9】
ロジン系樹脂が水素添加ロジングリセリンエステルである請求項8の経皮吸収型貼付剤。
【請求項10】
抗酸化剤が、アスコルビン酸またはそのエステルである請求項8または9記載の経皮吸収型貼付剤。
【請求項11】
抗酸化剤が、アスコルビン酸またはそのエステルおよびフェノール系抗酸化剤である請求項8または9記載の経皮吸収型貼付剤。
【請求項12】
アスコルビン酸またはそのエステルが、アスコルビン酸パルミチン酸エステルである請求項10または11記載の経皮吸収型貼付剤。
【請求項13】
フェノール系抗酸化剤が3,5−ジ第3級ブチル−4−ヒドロキシトルエンである請求項11または12記載の経皮吸収型貼付剤。
【請求項14】
抗酸化剤により処理してなるロジン系樹脂。
【請求項15】
抗酸化剤がアスコルビン酸またはそのエステルである請求項14記載のロジン系樹脂。
【請求項16】
抗酸化剤がアスコルビン酸またはそのエステルおよびフェノール系抗酸化剤である請求項14記載のロジン系樹脂。
【請求項17】
アスコルビン酸エステルがアスコルビン酸パルミチン酸エステルである請求項15または16記載のロジン系樹脂。
【請求項18】
フェノール系抗酸化剤が3,5−ジ第3級ブチル−4−ヒドロキシトルエンである請求項16または17記載のロジン系樹脂。
【請求項19】
膏体層中に有効成分としてフェンタニルまたはその塩、粘着基剤としてゴム成分、および粘着付与剤としてロジン系樹脂を含有する経皮吸収型貼付剤の製造において、あらかじめ抗酸化剤により処理したロジン系樹脂を、ゴム成分およびフェンタニルまたはその塩と混合することを特徴とするフェンタニルまたはその塩の安定化方法。
【請求項20】
抗酸化剤がアスコルビン酸またはそのエステルである請求項19記載のフェンタニルまたはその塩の安定化方法。
【請求項21】
抗酸化剤がアスコルビン酸またはそのエステルおよびフェノール系抗酸化剤である請求項19記載のフェンタニルまたはその塩の安定化方法。
【請求項22】
アスコルビン酸エステルがアスコルビン酸パルミチン酸エステルである請求項20または21に記載の方法。
【請求項23】
フェノール系抗酸化剤が3,5−ジ第3級ブチル−4−ヒドロキシトルエンである請求項21または22記載の方法。
【請求項24】
膏体層中に有効成分としてフェンタニルまたはその塩、粘着基剤としてゴム成分、および粘着付与剤としてロジン系樹脂を含有する経皮吸収型貼付剤の製造において、あらかじめ抗酸化剤により処理したロジン系樹脂を、ゴム成分およびフェンタニルまたはその塩と混合することを特徴とするフェンタニルN−オキサイド体の生成抑制方法。


【公開番号】特開2010−6761(P2010−6761A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−169210(P2008−169210)
【出願日】平成20年6月27日(2008.6.27)
【出願人】(390000929)祐徳薬品工業株式会社 (14)
【Fターム(参考)】