説明

フェンダープロテクタ

【課題】エアタイトが生じてなく、軽量で且つ所要部位の剛性及び強度が高められており、更に車両への取付作業性に優れたフェンダープロテクタを提供する。
【解決手段】本発明のフェンダープロテクタ(1,1',1'')は、フロント起立部(5)からリア起立部(6)まで頂部(7)を介して略逆U字状に連続して湾曲した薄肉のプロテクタ本体(15)の周面に、同プロテクタ本体(15)の長手方向に延在する第1リブ(21)と、前記第1リブ(21)から前記プロテクタ本体(15)の一側縁又は左右両側縁に向けて延在する少なくとも1つの第2リブ(22a, 22a', 22a'')とを有している。また、前記第2リブ(22a, 22a', 22a'')は、前記フロント起立部(5)及び前記リア起立部(6)のうちの少なくとも一方において、同第2リブ(22a, 22a', 22a'')の前記フロント起立部(5)の前記前端側の側縁部又は前記リア起立部(6)の前記後端側の側縁部(24,24'')を、前記第1リブ(21)に対して分岐する角度θが鋭角となるように前記頂部(7)に向けて傾斜又は湾曲させて配されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車等の車両に取り付けて車体を保護するフェンダープロテクタに関し、特に、軽量で且つ剛性に優れ、また、車両への取り付け作業時に適度に撓ませて容易に取り付けることが可能であり、更に、射出成形時に生じるエアタイト等の成形不良を有していないフェンダープロテクタに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、自動車には、走行時に泥水の飛散や小石の跳ね上げ等から車体を保護するために、例えば車体のホイールハウスの内側に、タイヤの上部を覆うフェンダープロテクタが取り付けられている。このフェンダープロテクタは、合成樹脂材料を所定の形状に射出成形することによって作製されており、一般にタイヤの一部を上方から覆うために、略逆U字状又はアーチ状に湾曲した形状を有し、更に、フェンダープロテクタ自体の軽量化を図るために0.8〜1.5mm程度の薄肉板状に形成されている。
【0003】
このようなフェンダープロテクタは、所定の形状を維持してフェンダーパネル等の車体を保護するという機能上、ある程度の剛性や強度を確保することが必要とされる。しかし、フェンダープロテクタが、前述のように軽量化のために薄肉に形成されている場合、その剛性が低くなるという問題があった。また、薄肉のフェンダープロテクタを成形する場合、射出成形時に金型のキャビティ内で樹脂流路の断面が必然的に狭くなるため、キャビティ内を流れる合成樹脂材料の流動抵抗が大きくなる。このため、合成樹脂材料がキャビティ内に完全に充填されずに冷却固化してしまい、ショートショット(充填不良)と呼ばれる成形不良が生じることがあった。
【0004】
そこで、従来では、上述のような問題を解消するため、フェンダープロテクタの一方の面上にリブを所定の方向に配置している。このようなリブを形成することにより、フェンダープロテクタを補強して剛性を向上させることができる。それとともに、射出成形時には、リブが形成される部位が流路(空間)となって合成樹脂材料の流動が支援されるため、合成樹脂材料の充填が安定して行われ、ショートショットの発生を効果的に防ぐことができる。
【0005】
このようなリブが形成されているフェンダープロテクタの一例が、特開2001−260944号公報(特許文献1)に開示されている。例えば図8及び図9に示すように、この特許文献1に開示されているフェンダープロテクタ31は、0.8〜1.3mmの薄肉板状でアーチ型の形状を有しており、その表面側には長手方向に沿ってリブ36が形成されている。また、このリブ36は、フェンダープロテクタ31を射出成形する際に合成樹脂材料を注入する注入ゲート35上を通るように設けられている。
【0006】
この特許文献1のフェンダープロテクタ31は、リブ36がフェンダープロテクタ31の表面側に形成されているため、例えばリブが裏面側に形成されている場合に比べて、射出成形時に金型内で合成樹脂材料を流動させる流路の容量が大きくなり、合成樹脂材料の流動を支援する性能を向上させている。また、リブ36がフェンダープロテクタ31の表面側に配されていることにより、フェンダープロテクタ31を車両に取り付けた場合に、車両走行時にタイヤが高くバウンドしても、タイヤとリブ36とが干渉しづらいとしている。
【0007】
なお、フェンダープロテクタ31には、図9に示したように、車両への取り付けを安定して行うために、その端縁の所定位置にプロテクタ本体よりも厚肉の取付部38,38aが形成されており、車両への取付剛性を確保している。更に、3つの取付部38aには、合成樹脂材料の流動を支援するリブ36が直接接続されている。これにより、プロテクタ本体の端縁に配設される厚肉の取付部38aにも射出成形時に合成樹脂材料を確実に流し込むことが可能となる。
【0008】
ところで、前記特許文献1のフェンダープロテクタ31は、図8に示したように、アーチ状の湾曲部32と、湾曲部32の前端に屈曲して延設される平板状の前端側延設部33とを備えている。前記湾曲部32は、車両の走行時にその湾曲面(特に、車体後方側の湾曲面)がタイヤからの風圧を受け易く、更にタイヤによって跳ね上げられた小石等が衝突する。また、前記前端側延設部33は、車両に取り付けた際に取付部としての荷重がかかるだけでなく、車両走行時に地面付近を流れる空気の作用によって車両から剥離する方向に力が働くため、変形が生じ易くなる。
【0009】
従って、これらの湾曲部32や前端側延設部33では、その剛性や強度を十分に高めることが必要とされる。このため、前記特許文献1においては、湾曲部32や前端側延設部33にエンボス部34を設けることや、リブ36の配置を複雑にしたり、密集させたりすること等の工夫がなされている。しかしながら、フェンダープロテクタ31の剛性や強度を高めるために、エンボス部34やリブ36を多く配設し過ぎると、却ってフェンダープロテクタ31の可撓性の低下を招き、フェンダープロテクタ31を車両へ取り付けるときの取付作業性が悪くなる等の弊害が生じていた。
【0010】
そこで、近年では、フェンダープロテクタの変形や破損が生じやすい部位の剛性や強度を効果的に向上させるとともに、良好な取付作業性を確保するために、例えば図10に示すようなフェンダープロテクタ41の構造が提案されている。この図10に示したフェンダープロテクタ41では、略逆U字状に湾曲した湾曲部42と、略扇形状の前端側延設部43と、湾曲部42の前方内側において前端側延設部43に対して直角に配される側壁部44とによりプロテクタ本体が構成されている。なお、図10では、フェンダープロテクタ41を自動車に取り付けた際に、自動車の進行方向を前方方向とし、後退方向を後方方向としている。また、フェンダープロテクタ41のエンジンルームを向く側を内側とし、外部を向く側を外側としている。
【0011】
このフェンダープロテクタ41において、湾曲部42と前端側延設部43の外側端縁には段差を有する段差端縁部46が設けられており、また、湾曲部42における段差端縁部46の一部と前端側延設部43の段差端縁部46とが、プロテクタ本体よりも厚い厚肉端縁部45として形成されている。この場合、プロテクタ本体の薄肉板状部の厚さは、例えば0.8mm以上1.5mm以下程度であるのに対し、厚肉端縁部45の厚さは2.5mm程度に設定されている。なお、湾曲部42の頂部54の内側部分には、車両のサスペンションを挿入するための切欠き53が形成されている。また、湾曲部42の内側には、切欠き53が形成されている部位からプロテクタ本体の後端に渡ってフランジ47が配設され、更にプロテクタ本体の後端には後端側延設部56が設けられている。
【0012】
更に、湾曲部42と前端側延設部43とには、フェンダープロテクタ41の長手方向に形成されるリブ48と、この長手方向のリブ48からプロテクタ本体の内側端縁及び外側端縁に向けて枝状に延設される複数の幅方向のリブ49とが配されており、フェンダープロテクタ41の剛性を高めるとともに、射出成形時に合成樹脂材料の流動を支援する。
【0013】
このフェンダープロテクタ41において、長手方向のリブ48は、プロテクタ本体の表面からの高さが3.5mm、幅が2.5mmの寸法で形成されている。また、幅方向のリブ49については、フェンダープロテクタ41の頂部54付近に配されるリブ49aが、長手方向のリブ48と同様に、高さが3.5mm、幅が2.5mmの寸法で形成されている。
【0014】
一方、フェンダープロテクタ41の後端側から湾曲状に立設したリア側起立部55に配されるリブ49bは、頂部54付近に配される前記リブ49aよりも幅広に形成されており、リブ49bの頂部側の側縁部の突設高さを3.5mmに設定されている。また、その側縁部からフェンダープロテクタ41の後端側に向けて高さ(肉厚)を漸減させるとともに、リブ49bの表面(突設上面)をフェンダープロテクタ41の上下方向(垂直方向)に対して1/4°〜2°程度の角度で傾斜させたテーパ状の形状に形成されている。
【0015】
即ち、リア側起立部55に配されるリブ49bを、上述のような形状で形成することによって、例えばフェンダープロテクタ41を射出成形する際の金型の分割面(パーティングライン)を前端側延設部43と後端側延設部56に同一な面上に設定し、金型の型開きをフェンダープロテクタ41の上下方向に沿って行う場合に、リア側起立部55上にリブの形成に伴うアンダーカット部を無くすことができ、更に、成形品(フェンダープロテクタ41)を金型から容易に取り出すための抜き勾配を確保することができる。
【0016】
また、前記フェンダープロテクタ41には、射出成形時に合成樹脂材料をキャビティ内に射出する注入ゲートが長手方向のリブ48上に配されていたため、その注入ゲートの跡50が残存している。更に、プロテクタ本体の周囲には、クリップ等の固着具によりフェンダープロテクタ41を車体に取り付けるための複数の固定部51,51aが形成されている。なお、これらの固定部51,51aのうち、段差端縁部46に形成されている固定部51aは何れも厚肉に形成されており、フェンダープロテクタ41の車体への取付状態を安定化させている。
【0017】
上述のような構成を有するフェンダープロテクタ41は、前記厚肉端縁部45が形成されていることにより、エンボス部やリブを多く配設しなくても前端側延設部43や湾曲部42の湾曲面で所要の性能を十分に満たすような剛性や強度を安定して得ることができるとともに、適度な可撓性が得られるため、良好な取付作業性を確保することが可能である。更に、図10に示したフェンダープロテクタ41は、例えば前記特許文献1のフェンダープロテクタ31に比べて、フェンダープロテクタに形成するリブの配置を簡略化することができることから、フェンダープロテクタの射出成形工程において、金型設計の簡素化、作業工程の効率化等を図ることも可能となる。
【特許文献1】特開2001−260944号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
近年、車両に取り付けられるフェンダープロテクタは、前述のように、変形や破損が生じやすい部位で剛性や強度を向上させることや、車体への良好な取付作業性を確保することだけでなく、フェンダープロテクタ自体の軽量化を図ることも求められてきている。
【0019】
しかしながら、図10に示したようなフェンダープロテクタ41において、リア側起立部55に配したリブ49bは、前述のようにアンダーカット部を形成しないとともに射出成形時の抜き勾配を確保しなければならないという射出成形上の理由から、頂部54付近に配される前記リブ49aよりも突設幅を大幅に拡大しているため、その形成面積は大きくされている。
【0020】
このため、前記フェンダープロテクタ41では、面積が大きなリブ49bを形成するために合成樹脂材料の使用量が増加し、フェンダープロテクタの軽量化を図ることが難しいという問題があった。また、フェンダープロテクタ41では、幅広に形成されたリブ49bによってフェンダープロテクタ41の剛性が必要以上に高くなってしまうため、適度な可撓性が得られない。このため、フェンダープロテクタ41を車両へ取り付ける際の取付作業性が低下するという問題もあった。
【0021】
更に、前記フェンダープロテクタ41では、実際に射出成形を行なった場合に、以下のような成形不良が生じるという問題があった。即ち、前記フェンダープロテクタ41を射出成形する際に、プロテクタ本体の薄肉部分(薄肉領域)では合成樹脂材料の流動抵抗が大きくなるため合成樹脂材料が流れにくく、注入ゲートから射出された溶融樹脂材料は、長手方向及び幅方向に配されるリブ48,49や厚肉端縁部45の形成部分のような流路断面が大きな空間(通路)に向けて優先的に流れていく。特に、幅広に形成される前記リブ49bは流路断面がその他のリブ48やリブ49aに比べて大きいため、樹脂材料をより速やかに流動させる。
【0022】
このため、注入ゲートから射出された樹脂材料は、例えば図4(b)に示したように、長手方向のリブ48から幅広に形成されたリブ49bに流動し、更にこれらのリブ48,49bから薄肉領域に流れる。このとき、合成樹脂材料は、仮想線で樹脂材料の流れ57を示したように、プロテクタ本体の薄肉領域にはゆっくりと流れ込んでいくものの、幅広のリブ49bには合成樹脂材料が速やかに流れるため、合成樹脂材料は薄肉領域内が満たされる前に、リブ49bから流動抵抗の小さい厚肉端縁部45に流れ込んで充填される。
【0023】
このように合成樹脂材料が薄肉領域に満たされる前に厚肉端縁部45に充填されてしまうと、薄肉領域内の空気が合成樹脂材料に包囲されてしまい、ガス抜きを行うことができなくなる。このため、リブ48,49b及び厚肉端縁部45に囲まれている薄肉領域では空気が内部に残存して空気溜まり58が発生し易くなり、その結果、図10に示したような成形品の外観を損ねるエアタイトと呼ばれる成形不良52が生じるといった問題があった。
【0024】
本発明は上記従来の課題に鑑みてなされたものであって、その具体的な目的は、射出成形時に生じるエアタイト等の成形不良を有してなく、軽量で且つ所要部位の剛性及び強度が高められており、更に、適度な可撓性を有して車両への取付作業性に優れたフェンダープロテクタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0025】
上記目的を達成するために、本発明により提供されるフェンダープロテクタは、基本的な構成として、前端側に立設されたフロント起立部から後端側に立設されたリア起立部まで頂部を介して略逆U字状に連続して湾曲した薄肉のプロテクタ本体の周面に、同プロテクタ本体の長手方向に延在する第1リブと、前記第1リブから前記プロテクタ本体の一側縁又は左右両側縁に向けて延在する少なくとも1つの第2リブとを有する、車両のホイールハウス内に取り付けられて車体を保護するフェンダープロテクタであって、前記第2リブは、前記フロント起立部及び前記リア起立部のうちの少なくとも一方の起立部に、同第2リブの前記フロント起立部の前記前端側の側縁部又は前記リア起立部の前記後端側の側縁部を、前記第1リブに対して分岐する角度θが鋭角となるように前記頂部に向けて傾斜又は湾曲させて配されてなることを最も主要な特徴とするものである。
【0026】
本発明に係るフェンダープロテクタは、前記第2リブの前記頂部側の側縁部を、前記第1リブに対して分岐する角度θ’が鋭角となるように前記頂部に向けて傾斜又は湾曲させていることが好ましく、またこの場合、前記第2リブは、前記角度θの大きさを前記角度θ’よりも小さくして形成されていることが好ましい。
【0027】
更に、本発明のフェンダープロテクタは、前記第2リブは、同第2リブの先端部側の断面積が基端部側の断面積よりも小さくなるように配されており、特に、前記第2リブは、同第2リブの突設高さが先端部に向けて漸減するようにテーパ状に形成されていることが好ましい。
【0028】
更にまた、本発明のフェンダープロテクタにおいては、前記プロテクタ本体の一方の前記側縁の一部に、前記プロテクタ本体よりも厚肉に形成された厚肉端縁部が形成され、前記第2リブは、前記第1リブから前記厚肉端縁部に向けて配されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0029】
本発明に係るフェンダープロテクタにおいて、フロント起立部及びリア起立部のうちの少なくとも一方の起立部に配した第2リブは、例えばフロント起立部に配した第2リブであれば、フロント起立部の前端側の側縁部を第1リブに対して分岐する角度θが鋭角となるように頂部に向けて傾斜又は湾曲させ、また、リア起立部に配した第2リブであれば、リア起立部の後端側の側縁部を第1リブに対して分岐する角度θが鋭角となるように頂部に向けて傾斜又は湾曲させて形成されている。
【0030】
即ち、本発明に係るフェンダープロテクタは、フロント起立部やリア起立部に配した第2リブにおけるフェンダープロテクタの前端側又は後端側の側縁部(即ち、プロテクタ本体の頂部側の側縁部とは反対側の側縁部)を、第1リブに対して鋭角に分岐するように頂部に向けて傾斜又は湾曲させている。これにより、フェンダープロテクタの射出成形を行う際に、例えば図10に示した従来の前記フェンダープロテクタ41のように、リア側起立部55に配したリブ49bの突設幅を広くしなくても、成形品(フェンダープロテクタ)を金型から取り出す際に、傾斜又は湾曲させて設けた第2リブの側縁部に沿って金型(上型)を移動させることによって、金型をフェンダープロテクタの第2リブに引っ掛けることなく円滑に型開きして、フェンダープロテクタを容易に取り出すことが可能となる。
【0031】
また、本発明では、フロント起立部やリア起立部に配した第2リブ自体の形状を従来の前記フェンダープロテクタ41よりも小さくすることができるため、合成樹脂材料の使用量を減少させて、フェンダープロテクタの軽量化やコストダウンを図ることができる。
【0032】
更に、前記第2リブ自体の形状を小さくしたことにより、フェンダープロテクタにエアタイトの成形不良が発生することを効果的に防ぐことが可能となる。即ち、従来のフェンダープロテクタでは起立部に形成される第2リブが幅広に形成されるため、フェンダープロテクタの射出成形時に図4(b)に示したように合成樹脂材料が流れるため、薄肉領域にエアタイト等の成形不良が生じていた。
【0033】
これに対して、本発明のフェンダープロテクタは、起立部に形成される第2リブの形状を従来よりも小さくしたことにより、フェンダープロテクタを射出成形する際に、第2リブの形成空間内に流動する合成樹脂材料の流速を従来よりも低く抑えることができるため、合成樹脂材料を薄肉領域内で第1リブからフェンダープロテクタの側縁部に向けてなだらかに流し込むことが可能となる。これにより、薄肉領域内のガス抜きを円滑に行って空気溜まりを発生させることがないため、フェンダープロテクタにエアタイトが生じることを防ぐことができる。
【0034】
なお、本発明のフェンダープロテクタでは、上述のような第1リブと第2リブとを設けていることにより、フェンダープロテクタを補強して剛性や強度を効果的に向上させるとともに、射出成形時には、第1リブ及び第2リブの形成空間によって合成樹脂材料の流動が支援されるため、ショートショットの発生も防ぐことができる。
【0035】
また、本発明のフェンダープロテクタにおいては、前記第2リブの頂部側の側縁部を、第1リブに対して鋭角に分岐するように頂部に向けて傾斜又は湾曲させており、特に、前端側又は後端側の側縁部を分岐する角度θの大きさを頂部側側縁部を分岐する角度θ’よりも小さくしている。これにより、第2リブをより小さい形状で形成することができ、フェンダープロテクタの更なる軽量化を図ることが可能となる。また、フェンダープロテクタの射出成形時に第2リブの形成空間内に流れる合成樹脂材料の流速を更に低下させることが可能となるため、フェンダープロテクタにエアタイトが生じることを効果的に防ぐことができる。
【0036】
更に、本発明では、前記第2リブの先端部側の断面積を基端部側の断面積よりも小さく形成すること、例えば前述のように前記角度θの大きさを前記角度θ’よりも小さくすることや、第2リブの突設高さを先端部に向けて漸減するようにテーパ状に形成することにより、フェンダープロテクタの射出成形時に、第2リブの形成空間内に流れる合成樹脂材料の流速を先端部に近づくほど更に低下させることができるため、エアタイトの発生を一層効果的に防ぐことができる。
【0037】
更にまた、本発明のフェンダープロテクタは、前記プロテクタ本体の側縁部の一部に、プロテクタ本体よりも厚肉に形成された厚肉端縁部が形成されており、且つ、前記第2リブが第1リブからその厚肉端縁部に向けて配されていることにより、所要部位で十分な剛性や強度を安定して得ることができる。それとともに、適度な可撓性も得られるため、フェンダープロテクタを車体へ取り付ける際の良好な取付作業性を確保することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0038】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本発明は、以下に説明する実施例に限定されるものではなく、本発明と実質的に同一な構成を有し、かつ、同様な作用効果を奏するものであれば、多様な変更が可能である。
【0039】
例えば、以下の各実施例にて説明するフェンダープロテクタは、1回の射出成形によって作製される成形一体品であるが、本発明はこれに限定されず、フェンダープロテクタが複数の成形部品を組み立てることにより構成される分割品であっても良い。また、本発明において、フェンダープロテクタに形成する第1リブ及び第2リブの形状や寸法、また第2リブの配設数等は、以下の各実施例に限定されるものではなく、任意に設定することが可能である。
【実施例1】
【0040】
図1は、本実施例1のフェンダープロテクタの後方側を斜め上方から模式的に示した斜視図であり、図2は、同フェンダープロテクタの前方側を斜め上方から模式的に示した斜視図である。また、図3は、同フェンダープロテクタのリア起立部に形成した第2リブを拡大して示した斜視図である。
【0041】
なお、以下の説明では、フェンダープロテクタを自動車に取り付けた際において自動車の進行方向の向きを前方とし、後退方向を後方とする。また、フェンダープロテクタのエンジンルームを向く側を内側とし、外部を向く側を外側とする。更に、フェンダープロテクタを射出成形するときの型抜き方向に沿って、フェンダープロテクタの頂部側を上方とし、その反対側の向きを下方とする。
【0042】
図1及び図2に示した本実施形態のフェンダープロテクタ1は、ポリプロピレン、ポリエチレン等のオレフィン系熱可塑性樹脂を射出成形して得られる一体成形品であり、自動車のフェンダーパネルのホイールハウス内側に取り付けられて、タイヤの上部を覆う部材である。このフェンダープロテクタ1は、略逆U字状に連続して湾曲した湾曲部2と、湾曲部2の前端で屈曲して延設された略扇形状の前端側延設部3と、湾曲部2の後端から延設された後端側延設部4とを有している。
【0043】
前記湾曲部2は、前端側に立設されたフロント起立部5と、後端側に立設されたリア起立部6と、フロント起立部5とリア起立部6とを連結した頂部7とから構成されている。なお、本実施例1において、フロント起立部5及びリア起立部6とは、フェンダープロテクタ1の上下方向に対する湾曲部2の湾曲面(外面)の傾きが約60°以下となる領域を示している。
【0044】
また、前記湾曲部2は、肉厚が0.8mm以上1.5mm以下、好ましくは約1.0mmとなる薄肉に形成されたプロテクタ本体15を有しており、軽量化が図られている。このプロテクタ本体15の肉厚が0.8mm未満の場合、プロテクタ本体15の肉厚が薄過ぎて、所要の剛性や強度を得ることが難しくなる恐れがあり、また、肉厚が1.5mmを越えると、フェンダープロテクタの重量が大幅に増加してしまい、また樹脂量増加によるコストアップにも繋がる。
【0045】
前記湾曲部2と前端側延設部3には、その外側側縁に沿って段差を有する端縁部8が設けられており、また、湾曲部2における端縁部8の一部と前端側延設部3における略円弧状の端縁部8とは、肉厚が2.0mm以上3.0mm以下、好ましくは約2.5mmである厚肉端縁部9として形成されている。このような大きさの肉厚を有する厚肉端縁部9を形成することにより、フェンダープロテクタ1の可撓性を維持して、湾曲部2の所要部位や前端側延設部3における剛性及び強度を効果的に向上させることができる。なお、厚肉端縁部9以外の端縁部8は、プロテクタ本体15と同等の肉厚を有している。
【0046】
また、前記湾曲部2には、その頂部内側の部分に自動車のサスペンションを挿入するための切欠き10が形成されており、湾曲部2の内側端縁には、切欠き10が設けられている部位から後端側延設部4に渡ってフランジ11が形成されている。更に、湾曲部2の外周面には、フェンダープロテクタ1を射出成形する際の注入ゲートの跡13が3箇所形成されている。なお、この注入ゲートの跡13は、フェンダープロテクタ1の外観や機能を損なう場合には、後工程において仕上加工等を行うことにより除去することが可能である。
【0047】
更にまた、湾曲部2の頂部7や厚肉端縁部9、及び前端側延設部3には、フェンダープロテクタ1をクリップ等の固着具により自動車の車体に固定するための複数の固定部12が所定箇所に形成され、フェンダープロテクタ1の安定した取付状態を確保できるようにしている。
【0048】
本実施例1において、湾曲部2のフランジ11、前端側延設部3、及び後端側延設部4は、いずれも車両の内側に配置されており、車両の他部材(フェンダーパネル等)との関係において空間的に余裕がある。従って、フランジ11、前端側延設部3、及び後端側延設部4は、それぞれ湾曲部2の湾曲面と交差する方向に配設することが可能である。
【0049】
一方、車両の外側に配置されるとともに、人目に触れやすい端縁部8は、自動車のフェンダーパネルとの関係において隙間を生じることなく強固に車体に取り付けられなければならない。このため、端縁部8には、前述のような厚さが2.0mm以上3.0mm以下である厚肉端縁部9が形成されており、また、この厚肉端縁部9に車体との固定部12が適宜形成されている。これにより、フェンダープロテクタ1を車体に取り付けた際に、より安定した取付状態が確保される。
【0050】
なお、前記固定部12は、頂部7や厚肉端縁部9等の所定部位に取付孔を直接穿設することにより形成されているが、例えば、厚肉端縁部9の所定部位に小片状の取付部を別途に形成し、同小片状取付部に取付孔を穿設することによって、車体との固定部を形成することも可能である。
【0051】
本実施例1のフェンダープロテクタ1において、湾曲部2の外周面(表面)には、前記切欠き10を迂回するようにしてプロテクタ本体15の長手方向に屈曲部を有しながら延在する突条の第1リブ21と、その第1リブ21から端縁部8に向けて延在する複数の第2リブ22とが形成されている。また、前記第1リブ21は、2箇所の注入ゲートの跡13を通過しており、更に、切欠き10の後方でプロテクタ本体15の内側寄りに形成された注入ゲートの跡13にも樹脂材料の流路が連通するように第1リブ21から分岐した第3リブ23が形成されている。
【0052】
これにより、フェンダープロテクタ1の射出成形時に、樹脂材料の流路となる第1リブ21、第2リブ22、及び第3リブ23によって合成樹脂材料の流動が支援されて、合成樹脂材料のキャビティ内への充填を安定して行うことができるようにしている。更に、第1リブ21は、湾曲部2の前端から前端側延設部3の上面に延設され、射出成形時における前端側延設部3への合成樹脂材料の流動も支援している。なお、本発明では、必要に応じて、前端側延設部3に第2リブを形成したり、また、後端側延設部4に第1リブ21や第2リブ22を形成することも可能である。
【0053】
本実施例1において、第1リブ21及び第3リブ23は、その断面が略矩形状、又は付け根部分が広がっている略山形状となるように形成されている。これらの第1リブ21及び第3リブ23における断面のサイズは、プロテクタ本体表面からの高さが2.5mm以上3.5mm以下、好ましくは約3.0mmに設定されており、また、幅(特に、リブの高さが半分の位置における幅)が4.5mmに設定されている。
【0054】
このように第1リブ21及び第3リブ23の高さが2.5mm以上で、幅が4.5mmであることにより、フェンダープロテクタ1の剛性を確実に向上させることができ、更に、フェンダープロテクタ1を射出成形する際における合成樹脂材料の良好な流動支援性能を得ることができる。また、第1リブ21及び第3リブ23の高さが3.5mm以下であれば、合成樹脂の使用量の増加による大幅なコストアップを招くこともない。
【0055】
前記第2リブ22は、第1リブ21から端縁部8や内側の端縁部(又はフランジ11)に向けて延設されているものの、外側に形成した端縁部8とは接触しておらず、第2リブ22と端縁部8との間には間隔14が設けられている。特に、第2リブ22のうち、厚肉端縁部9に向けて延設されているものは、同厚肉端縁部9との間に20mm以上30mm以下の間隔14が設けられている。このような間隔14が設けられていることにより、後述するようにエアタイトの発生を効果的に防止できるだけでなく、フェンダープロテクタ1の可撓性が適度に得られるため、自動車への取付作業性を向上させることができる。なお、本発明において、このような第2リブ22と端縁部8との間の間隔14は必ずしも設ける必要はなく、例えばリブの幅や高さ等に応じて、剛性や強度を確保するために第2リブ22を端縁部8に直接接続することも可能である。
【0056】
また、前記第2リブ22において、湾曲部2のリア起立部6の後端側に形成されている2つの第2リブ22aは、プロテクタ本体表面からの高さが2.5mm以上3.5mm以下、好ましくは約3.0mmに設定されている。更に、これらの第2リブ22aは、図3に示したように、その後端側の側縁部24が、第1リブ21に対して鋭角である角度θで分岐し、且つ、その頂部側の側縁部25が、第1リブ21に対して鋭角である角度θ’で分岐するように、頂部7に向けて傾斜している。
【0057】
なお、この第2リブ22aにおいて、第1リブ21から分岐する部分となる基端部26は、第1リブ21から傾斜又は湾曲するように形成することも、或いは、略直交するように形成することも可能である。このため、例えば図3に示したように、第2リブ22aの基端部26が第1リブ21に対して略直交する方向に向けて形成されている場合では、前記第2リブ22aの第1リブ21に対する角度θ及び角度θ’とは、第2リブ22aの側縁部24,25の延長線が第1リブ21に対して傾斜する角度を指すものとする。また、第2リブ22aが湾曲して形成されている場合において、前記角度θ及び角度θ’とは、同第2リブ22aの側縁部24,25の中間部位における接線が第1リブ21に対して傾斜する角度を指すものとする。
【0058】
本実施例1では、上述のように第2リブ22aが傾斜して形成されていることにより、フェンダープロテクタ1を射出成形して金型から取り出す際に、金型(上型)を第2リブ22の傾斜した後端側側縁部24に沿って移動させながらフェンダープロテクタ1の上方に向けて円滑に押し上げることができるため、金型が第2リブ22aの後端側側縁部24に引っ掛かることなく、所定形状に成形したフェンダープロテクタ1を金型から容易に取り出すことが可能となる。
【0059】
特に、本実施例1では、リア起立部6に設けられる前記第2リブ22aは、後端側の側縁部24における前記角度θの大きさを、20°以上50°以下に設定し、また、頂部側の側縁部25における前記角度θ’の大きさを、40°以上70°以下に設定するとともに、後端側の角度θを頂部側の角度θ’よりも小さくして形成されている。従って、第2リブ22aは、先端部27に向けてリブの突設幅が細くなるように形成されている。なお、本発明では、前記角度θ’の大きさを90°よりも大きくして第2リブ22aを形成することも可能である。
【0060】
このようにリア起立部6の第2リブ22aを先細に形成したことにより、フェンダープロテクタ1の射出成形時にエアタイトの成形不良が生じることを効果的に防ぐことができる。即ち、従来では、図4(b)を参照しながら前述したように、リブ49bの突設幅が広く形成されていることにより、フェンダープロテクタの射出成形時に、リブ49bに合成樹脂材料が厚肉側縁部45側に速やかに流れる。これにより、薄肉領域内の空気が合成樹脂材料に包囲されてしまい、エアタイトが生じるといった問題があった。
【0061】
これに対して、本実施例1のフェンダープロテクタ1では、図4(a)に示したように、第2リブ22aを先細に形成して、第2リブ22aの先端部27側の断面積が基端部26側の断面積よりも小さくしている。これにより、フェンダープロテクタ1の射出成形時に、合成樹脂材料の流動は第2リブ22aにより支援されるものの、第2リブの形成空間内に流れる合成樹脂材料の流速を第2リブ22aの先端部27に向かうほど小さくすることができる。更に、本実施例1では、第2リブ22aと厚肉端縁部9との間に前記間隔14が設けられているため、第2リブ22aの先端から厚肉端縁部9へ流れる合成樹脂材料の流速をより小さくすることができる。その結果、合成樹脂材料の流れ28をなだらかにして、第1リブ側から側縁部に向けて樹脂材料を徐々に充填していくことができる。従って、薄肉領域内の空気が従来のように合成樹脂材料に包囲されてガス溜まりが生じることはなく、フェンダープロテクタにエアタイトが生じることを効果的に防ぐことができる。
【0062】
更に、前記第2リブ22において、湾曲部2の頂部7に形成されている第2リブ22bは、図5に示したように突条に形成されており、第2リブ22bの基端部側における断面のサイズは、前記第1リブ21及び第3リブ23と同様に、プロテクタ本体表面からの高さが2.5mm以上3.5mm以下、好ましくは約3.0mmに設定されており、また、突設幅が4.5mmに設定されている。一方、第2リブ22bの先端部側では、第2リブ22bの突設高さが先端に向けて漸減するようにテーパ状に形成されている。これにより、フェンダープロテクタ1の射出成形時に、第2リブ22bの形成空間内に流れる合成樹脂材料の流速を先端に近づくほど低下させることができるため、薄肉領域内にガス溜まりが生じることを防いで、湾曲部2の頂部7においてもエアタイトの発生を効果的に防止することができる。
【0063】
また本実施例1において、湾曲部2のフロント起立部5に形成されている第2リブ22cは、図2に示すように、従来と同様に、前記第1リブ21からプロテクタ本体15の外側及び内側の側縁(左右両側縁)に向けて延在し、且つ、プロテクタ本体15の長手方向に幅広に形成されており、第2リブ22cの頂部側の側縁部の高さが2.5mm以上3.5mm以下、好ましくは約3.0mmに設定されている。更に、第2リブ22cは、頂部側の側縁部からフェンダープロテクタ1の前端側に向けて高さを漸減させるとともに、リブ表面(突設上面)をフェンダープロテクタ1の上下方向に対して1/4°〜2°程度の角度で傾斜させたテーパ状に形成されている。これにより、フェンダープロテクタ1の前端側に近い第2リブ22cほど、長手方向の幅寸法が大きくなるように形成されている。
【0064】
なお、本発明においては、湾曲部2のフロント起立部5に形成される第2リブ22cも、本実施例1のリア起立部6に形成される第2リブ22aと同様の形状に形成すること、即ち、プロテクタ本体前端側のリブ側縁部が、第1リブ21に対して鋭角で分岐し、且つ、プロテクタ本体頂部側のリブ側縁部も第1リブ21に対して鋭角で分岐するように頂部7に向けて湾曲させた形状に形成することが可能である。それによって、リア起立部6に形成した第2リブ22aと同様に、第2リブ22cを先細に形成して、リブ先端部側の断面積を基端部側の断面積よりも小さくすることができる。このため、フェンダープロテクタの射出成形時に、合成樹脂材料の流速をリブ先端部に向かうほど小さくしてフェンダープロテクタにエアタイトが生じることを効果的に防ぐことが可能となり、しかも、型抜きする際には金型がフロント起立部5に形成された第2リブ22cに引っ掛かることもない。
【0065】
なお、本実施例1において、第1リブ21、第2リブ22、及び第3リブ23は何れもプロテクタ本体15の外周面(表面)に形成されているが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、プロテクタ本体15の内周面(裏面)に形成することや、或いは、プロテクタ本体15の外周面と内周面の両面に形成することも可能である。
【0066】
以上のような構成を有する本実施例1のフェンダープロテクタ1は、射出成形方法を用いて、型締めした上型と下型との間に形成されるキャビティ内に注入ゲートからオレフィン系熱可塑性樹脂を射出することにより容易に作製することができる。このとき、注入ゲート(注入ゲートの跡13が形成されている位置)から射出された合成樹脂材料は、第1リブ21〜第3リブ23を形成する空間(流路)によってその流動が支援される。従って、合成樹脂材料は、第1リブ21及び第3リブ23を介して第2リブ22に流れ、更にプロテクタ本体15の薄肉領域に第1リブ21側から側縁部8に向けて安定して充填されていくため、フェンダープロテクタ1にショートショットが発生することを効果的に防ぐことができる。
【0067】
特に、本実施例1のフェンダープロテクタ1では、湾曲部2のリア起立部6に形成される第2リブ22a及び頂部7に形成される第2リブ22bが、前述のようにリブ先端部27側の断面積を基端部26側よりも小さくしている。このため、射出成形時に合成樹脂材料はリブ先端に向かうほどその流動抵抗が高められ、樹脂材料の流速が低下する。その結果、前述のように、薄肉領域では、第1リブ21側から端縁部8側に向けて、成樹脂材料の流れ28をなだらかにして樹脂材料を徐々に充填していくことができるため、フェンダープロテクタ1にエアタイトが生じることを効果的に防ぐことができる。
【0068】
更に、上述のように金型のキャビティ内に合成樹脂材料が充填されて冷却固化した後、金型を型開きして成形品を取り出すときに、フェンダープロテクタ1のリア起立部には前記第2リブ22aが形成されており、また、フロント起立部には前記第2リブ22cが形成されているため、金型が第2リブ22aや第2リブ22cに引っ掛かることなく、成形品を容易に取り出すことが可能となる。
【0069】
そして、以上のような射出成形によって得られた本実施例1のフェンダープロテクタ1は、前記第1リブ21〜前記第3リブ23及び前記厚肉端縁部9によって、好適な可撓性を維持しながら効果的に補強されているため、優れた剛性や優れた強度を備えている。従って、同フェンダープロテクタ1は、自動車への取付作業性に優れているとともに、自動車の走行時に損傷や変形を受け難い高品質のフェンダープロテクタとなる。しかも、本実施例1のフェンダープロテクタ1は、リア起立部6に形成した第2リブ22aの形状が従来のフェンダープロテクタよりも小さいため、フェンダープロテクタの剛性が必要以上に高くなることはなく、また、合成樹脂材料の使用量が減少してフェンダープロテクタの軽量化とコストダウンとを達成することができる。
【実施例2】
【0070】
次に、本発明の実施例2に係るフェンダープロテクタについて説明する。ここで、図6は、本実施例2のフェンダープロテクタのリア起立部に形成した第2リブを拡大して示した斜視図である。
【0071】
本実施例2のフェンダープロテクタ1’は、リア起立部6に形成した第2リブ22a’の形状が、前記実施例1のフェンダープロテクタ1と相違している。即ち、本実施例2の第2リブ22a’は、図6に示したように、突設高さがリブ先端部27に向けて漸減するように先端部27側をテーパ状にして形成されている。本発明において、この第2リブ22a’のテーパ形状は、必要に応じて、例えば図6に示したように第2リブ22a’のリブ長さにおける先端部27側の約1/3の領域に形成しても良いし、また、リブ長さの1/2よりも先端部27側の領域に形成しても良いし、更に、リブ長さの全体に渡って形成しても良い。なお、本実施例2のフェンダープロテクタ1’において、第2リブ22a’の形状以外の構成は、前記実施例1のフェンダープロテクタ1と基本的に同様である。
【0072】
本実施例2のように、第2リブ22a’の先端部27側をテーパ状に形成することにより、第2リブ22a’の先端部側の断面積が、前記実施例1の第2リブ22a(図3を参照)よりも更に小さくすることができる。これにより、フェンダープロテクタ1’の射出成形時に、第2リブ22a’の形成空間内に流れる合成樹脂材料の流速を先端部27に近づくほど更に小さくすることができる。従って、合成樹脂材料を第1リブ21側から側縁部8に向けて、よりなだらかな流れで徐々に充填していくことが可能となるため、フェンダープロテクタ1’にエアタイトが生じることをより確実に防止することができる。
【実施例3】
【0073】
続いて、本発明の実施例3に係るフェンダープロテクタについて説明する。ここで、図7は、本実施例3のフェンダープロテクタのリア起立部に形成した第2リブを拡大して示した斜視図である。
【0074】
本実施例3のフェンダープロテクタ1″も、リア起立部6に形成した第2リブ22a″の形状が、前記実施例1のフェンダープロテクタ1と相違している。即ち、本実施例3の第2リブ22a″は、図7に示したように、リブの突設高さがプロテクタ本体15の後端側に向けて漸減するようにプロテクタ本体後端側の側縁部24″側がテーパ状に形成されている。なお、本実施例3のフェンダープロテクタ1″において、第2リブ22a″の形状以外の構成は、前記実施例1のフェンダープロテクタ1と基本的に同様である。
【0075】
本実施例3のように第2リブ22a″の側縁部24″側をテーパ状に形成することにより、リア起立部6にアンダーカット部を無くすことができるとともに、第2リブ22a″にも好適な抜き勾配を形成することが可能となる。このため、フェンダープロテクタ1″の射出成形工程において合成樹脂材料が固化した後、金型を開いて成形品(フェンダープロテクタ1″)を取り出す際に、金型の上型が第2リブ22a″に引っ掛かることを確実に防止して、フェンダープロテクタ1″をより容易に取り出すことが可能となる。
【0076】
なお、本発明では、フェンダープロテクタのフロント起立部に形成する第2リブや、リア起立部に形成するその他の第2リブに対しても、前述のような実施例1〜実施例3の何れかに形成した本発明の前記第2リブと同様の形状を有するリブを形成することができる。これにより、フェンダープロテクタにエアタイトが発生することをより確実に防止でき、また、型抜きする際には金型からフェンダープロテクタをより容易に取り出すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】実施例1に係るフェンダープロテクタの後方側を斜め上方から模式的に示した斜視図である。
【図2】同フェンダープロテクタの前方側を斜め上方から模式的に示した斜視図である。
【図3】同フェンダープロテクタのリア起立部に形成した第2リブを拡大して示した斜視図である。
【図4】(a)は、本発明のフェンダープロテクタを射出成形する際の合成樹脂材料の流れを模式的に説明する説明図であり、(b)は、従来のフェンダープロテクタを射出成形する際の合成樹脂材料の流れを模式的に説明する説明図である。
【図5】実施例1に係るフェンダープロテクタの頂部に形成した第2リブを拡大して示した斜視図である。
【図6】実施例2に係るフェンダープロテクタのリア起立部に形成した第2リブを拡大して示した斜視図である。
【図7】実施例3に係るフェンダープロテクタのリア起立部に形成した第2リブを拡大して示した斜視図である。
【図8】従来のフェンダープロテクタの一例を示す斜視図である。
【図9】同フェンダープロテクタの上面図である。
【図10】変形や破損が生じやすい部位の剛性を効果的に向上させた従来のフェンダープロテクタの一例を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0078】
1,1’,1″ フェンダープロテクタ
2 湾曲部
3 前端側延設部
4 後端側延設部
5 フロント起立部
6 リア起立部
7 頂部
8 端縁部
9 厚肉端縁部
10 切欠き
11 フランジ
12 固定部
13 注入ゲートの跡
14 間隔
15 プロテクタ本体
21 第1リブ
22 第2リブ
22a リア起立部の第2リブ
22a’,22a″ リア起立部の第2リブ
22b 頂部の第2リブ
22c フロント起立部の第2リブ
23 第3リブ
24,24″ 後端側の側縁部
25 頂部側の側縁部
26 基端部
27 先端部
28 樹脂材料の流れ
31 フェンダープロテクタ
32 湾曲部
33 延設部
34 エンボス部
35 注入ゲート
36 リブ
38,38a 取付部
41 フェンダープロテクタ
42 湾曲部
43 延設部
44 側壁部
45 厚肉端縁部
46 段差端縁部
47 フランジ
48 長手方向のリブ
49 幅方向のリブ
50 注入ゲートの跡
51,51a 固定部
52 エアタイト
53 切欠き
54 頂部
55 リア側起立部
56 後端側延設部
57 樹脂材料の流れ
58 空気溜まり

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前端側に立設されたフロント起立部(5)から後端側に立設されたリア起立部(6)まで頂部(7)を介して略逆U字状に連続して湾曲した薄肉のプロテクタ本体(15)の周面に、同プロテクタ本体(15)の長手方向に延在する第1リブ(21)と、前記第1リブ(21)から前記プロテクタ本体(15)の一側縁又は左右両側縁に向けて延在する少なくとも1つの第2リブ(22a, 22a', 22a'')とを有する、車両のホイールハウス内に取り付けられて車体を保護するフェンダープロテクタ(1,1',1'')であって、
前記第2リブ(22a,22a',22a'')は、前記フロント起立部(5)及び前記リア起立部(6)のうちの少なくとも一方の起立部において、同第2リブ(22a,22a',22a'')の前記フロント起立部(5)の前記前端側の側縁部又は前記リア起立部(6)の前記後端側の側縁部(24,24'')を、前記第1リブ(21)に対して分岐する角度θが鋭角となるように前記頂部(7)に向けて傾斜又は湾曲させて配されてなることを特徴とするフェンダープロテクタ。
【請求項2】
前記第2リブ(22a,22a',22a'')の前記頂部(7)側の側縁部(25)を、前記第1リブ(21)に対して分岐する角度θ’が鋭角となるように前記頂部(7)に向けて傾斜又は湾曲させてなる請求項1記載のフェンダープロテクタ。
【請求項3】
前記第2リブ(22a,22a',22a'')は、前記角度θの大きさを前記角度θ’よりも小さくして形成されてなる請求項2記載のフェンダープロテクタ。
【請求項4】
前記第2リブ(22a,22a',22a'')は、同第2リブ(22a,22a',22a'')の先端部(27)側の断面積が基端部(26)側の断面積よりも小さくなるように配されてなる請求項1〜3のいずれかに記載のフェンダープロテクタ。
【請求項5】
前記第2リブ(22a,22a',22a'')は、同第2リブ(22a,22a',22a'')の突設高さが先端部(27)に向けて漸減するようにテーパ状に形成されてなる請求項1〜4のいずれかに記載のフェンダープロテクタ。
【請求項6】
前記プロテクタ本体(15)の一方の前記側縁の一部に、前記プロテクタ本体(15)よりも厚肉に形成された厚肉端縁部(9)が形成され、
前記第2リブ(22a,22a',22a'')は、前記第1リブ(21)から前記厚肉端縁部(9)に向けて配されてなる、
請求項1〜5のいずれかに記載のフェンダープロテクタ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2008−44458(P2008−44458A)
【公開日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−220132(P2006−220132)
【出願日】平成18年8月11日(2006.8.11)
【出願人】(000229955)日本プラスト株式会社 (740)
【Fターム(参考)】