説明

フォトマスクの製造方法およびフォトマスクブランク

【課題】 ローディング効果によるCD精度の低下が問題となるフォトマスク(10)の製造に関し、ローディング効果を抑制するための手法を提供する。
【解決手段】 透光性基板(1)上に、透光性基板(1)上の面内において大域的な開口率差を有する半透光性位相シフトパターン(51)が形成されたハーフトーン型位相フォトマスク(10)の製造方法において、クロム膜(2)のエッチングマスクとして、このクロム膜(2)のエッチングに対して耐性を有する無機系材料からなるエッチングマスクパターン(31)を用いる。エッチングマスクパターン(31)をマスクとして、クロム膜(2)にドライエッチングを施してクロムパターン(21)を形成し、クロムパターン(21)をマスクとして半透光性位相シフト膜(5)にドライエッチングを施して半透光性位相シフトパターン(51)を形成し、クロムパターン(21)の所望の一部又は全部を除去する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体集積回路や液晶表示装置等の製造において使用されるフォトマスクの製造方法、及びこれに用いられるフォトマスクブランクに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体集積回路や液晶表示装置等の高集積化等により、その製造工程中の微細加工プロセスにおいて使用されるフォトマスクに対して、高いパターン精度が要求されてきている。
【0003】
現在用いられているフォトマスクは、透明基板上に遮光膜からなるパターンを有するものであり、高精度なパターンの加工性の点から、遮光膜として一般にクロム系材料が使用されている。
【0004】
しかしながら、半導体集積回路の高集積化等によるフォトマスクのパターンの高精度化の要求に対して、現行のレジストパターンをエッチングマスクとして用いるクロム系遮光膜のパターン作成方法では、マスク面内において大域的な開口率差を有するパターン領域が混在するフォトマスクについて、ローディング効果によるCD(critical dimension)精度のばらつきの問題が生じることが明らかとなった。このマスク面内において大域的な開口率差を有するパターン領域が混在するフォトマスクとしては、具体的には、マスク面内で複数種の機能デバイスを配置しているフォトマスクが挙げられる。そのようなフォトマスクとしては、例えば、メモリとロジック回路等を混在して搭載するシステムLSIや、メモリセル又は画素領域とその周囲に形成した周辺回路等を混在して搭載するD−RAM又は液晶表示装置などの製造に用いられる、疎密差を有するパターンを有するフォトマスクが挙げられる。このフォトマスクでは、例えば、メモリ領域とロジック回路領域では遮光パターンの開口率(遮光膜が形成されていない部分の割合)が異なる。このようなフォトマスクを作成するために現行では、まずクロム系遮光膜上に所望のレジストパターンを作成し、このレジストパターンをマスクとして、塩素系と酸素系の混合ガス等を使用したラジカル主体のドライエッチングによりクロム系遮光膜をパターニングしている。そして、例えば、遮光パターンの開口率差を有する各領域にそれぞれ同一寸法を有するレジストパターンを形成しそれぞれ同一寸法のクロム系遮光膜パターンを形成しようとした場合、同一寸法のレジストパターンをマスクとしてドライエッチングにより形成された各遮光パターンは、所謂ローディング効果により、各領域の開口率の違いによって異なる寸法を示し、CD精度にばらつきを生じるという問題が生じる。
【0005】
ここで、ローディング効果とは、被エッチング膜のエッチング面積の大小により、エッチング特性(エッチング速度、選択比など)が変化し、その結果マスク面内のCDシフト量が変化する現象である(例えば、超LSI総合事典(サイエンスフォーラム)865頁(非特許文献1)参照)。より具体的には、エッチング面積が増加すると、エッチャントの利用効率が低下するため、エッチング速度が低下する現象である(例えば、サブミクロン・リソグラフィ「総合技術資料集」353頁(非特許文献2)参照)。
【0006】
一般的に、クロムを含む材料からなる薄膜のドライエッチングには、ドライエッチングガスとして塩素と酸素が用いられ、塩化クロミルを生成させることによってクロムをエッチングする。このエッチング反応においては、ラジカルの寄与が大きいため、エッチング進行の方向性の制御が特に難しいという問題がある。
【0007】
上述したローディング効果によるCD精度の低下が問題となるフォトマスクに関する問題を解決する手段として、パターン周辺領域とパターン中央部との開口率の不均衡を改善することで、エッチング時のパターン精度を低下させない方法がある(例えば、特開2001−183809号公報(特許文献1)参照)。すなわち、この方法は、フォトマスクを使用した露光工程において光源からの光が照射されない非照射領域に、周辺開口率調整パターンを設ける方法である。
【0008】
また、位相シフトフォトマスクを製造する際、パターン露光領域内あるいはパターン露光領域外に、ドライエッチング速度補正用のダミーエッチングパターンを配置する方法もある(例えば、特開平8−234410号公報(特許文献2)参照)。この方法では、パターン露光領域内のダミーエッチングパターンには、転写による解像限界以下のサイズのパターンが用いられている。
【0009】
しかしながら、特開2001−183809号公報(特許文献1)及び特開平8−234410号公報(特許文献2)に記載の従来方法では、パターンの開口率に局所的な不均衡がある場合(すなわち異なる疎密度のパターン領域が混在する場合)、それに対応した調整パターンを設けるのは複雑であり、また、半導体集積回路の高集積化への対応は困難であるという問題点がある。また、本来必要の無いパターンを形成する必要があるため、フォトマスクの作成に使用されるパターンデータ量の増加は避けられない。このことは、近年の膨大な集積度の半導体装置を作成する上で、大きな問題となってしまう。
【0010】
他のローディング効果を抑制する方法が記載された文献としては、米国特許第6,472,107号明細書(特許文献3)に記載された方法がある。この文献には、遮光膜のエッチングをTi、TiW、W、Si、SiO、TiN、スピンオングラス等からなるハードマスク層を用いてエッチングすることによって、ローディング効果が抑制できるということが記載されている。この方法は、上記のようなフォトマスクを製造する際に、特開2001−183809号公報(特許文献1)及び特開平8−234410号公報(特許文献2)のように本来必要の無いパターンを形成する必要はない。尚、米国特許第6,472,107号明細書(特許文献3)に記載されたような、ハードマスク層を用いて遮光膜をエッチングする方法自体は、ドライエッチング耐性の小さいレジストを用いたときのCD精度低下の問題を解決する技術としても、古くから提案されている(例えば、特公昭63−39892号公報(特許文献4)等参照)。CD精度を向上させるという観点から見ると、他のクロム膜パターンのCD精度を向上させる技術として、例えば、クロム膜及びその約3倍の厚さを必要とされているレジスト膜を薄くすることによりCD精度が向上することが、特開平10−69055号公報(特許文献5)に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2001−183809号公報参照
【特許文献2】特開平8−234410号公報
【特許文献3】米国特許第6,472,107号明細書
【特許文献4】特公昭63−39892号公報
【特許文献5】特開平10−69055号公報
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】超LSI総合事典(サイエンスフォーラム)865頁
【非特許文献2】サブミクロン・リソグラフィ「総合技術資料集」353頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
ところで、フォトマスクとしては、古くから用いられているバイナリマスクと称される透明基板上に遮光膜パターンを形成したもの以外に、位相シフトマスクがある。位相シフトマスクは、マスク上に位相シフター部を設け、位相シフター部とそれに隣接する部分を透過する光の位相を180°ずらすことで、その境界部分において光の相互干渉を起こさせることにより、転写像のコントラスト向上させるものである。位相シフトマスクの種類としては、例えばレベンソン型、ハーフトーン型、クロムレス型等が挙げられる。レベンソン型位相シフトマスクにおける位相シフター層は、通常ガラスを掘りこむことにより形成されたもの、或いは位相をシフトする材料からなる膜からなるものがあり、ハーフトーン型位相シフトマスクにおける位相シフター層は、半透明な位相シフト材料層からなる。これらの位相シフトマスクにおいては、パターン領域の周辺部に露光光が漏れるのを防止するための遮光帯が必要とされる。この遮光帯は通常クロム系の遮光膜が用いられる。このような遮光帯を有する位相シフトマスクの製造には、通常、位相シフト材料層上に遮光膜が形成されたブランクが用いられる。まず、遮光膜をエッチングして所望の遮光膜パターンを形成した後、その遮光膜パターンを位相シフト層のエッチングマスクとして用いて位相シフト材料層をエッチングし、その後、少なくとも遮光帯となる遮光膜を残して遮光膜を除去することにより製造される。このような方法を用いることによって、位相シフト材料層は、レジストパターンをマスクにエッチングするよりも、高いCD精度が得られるようになった。
【0014】
ところで、近年においては、半導体装置のさらなる高集積化が進んでおり、その線幅も、130nmまでの線幅から、90nm、65nm、さらには45nmの線幅が検討され、パターンの高密度化も進んでいる。そのため、フォトマスクのパターンも、さらに微細化され、そのCD精度についてもますます厳しい要求値が求められている傾向にある。また、パターンの多様化が進んでいることから、パターンの疎密差も大きくなるような傾向にある。
【0015】
上述のように、上記米国特許第6,472,107号明細書(特許文献3)には、ハードマスクを用いることでローディング効果が抑制されることが記載され、特公昭63−39892号公報(特許文献4)には、ハードマスクを用いることで、CD精度を向上させることが記載されている。しかしながら、上記のようなパターンの微細化及び疎密差が進む状況下において、ローディング効果を抑制し、かつ高いCD精度を得るには、単にハードマスクを用いたということでは不十分であり、さらなる技術的向上が必要である。
【0016】
一方で、上述した状況の下、CD精度の向上を考えた場合、特開平10−69055号公報(特許文献5)に記載の方法においては、クロム系遮光膜は、所定の遮光性(例えばOD(光学濃度)が3.0以上)が必要であるため、遮光膜の薄膜化には限界があり、その結果レジストの薄膜化にも限界があることから、CD精度の向上に限界がある。
【0017】
さらに、位相シフトマスクを製造する場合においては、エッチングマスクとなる遮光膜のパターン形状が、位相シフト材料層のパターン形状にそのまま反映されてしまうため、遮光膜パターンの寸法制御が非常に重要な役割を果たす。特に、位相シフトマスクは、バイナリマスクに比べ、半導体装置におけるパターンの微細化に効果的なマスクである。そして、近年において、さらにパターンの微細化が進んでいることから、位相シフト材料層のさらに厳しい寸法精度が要求されている。一方、位相シフト材料層のエッチング条件によっては、クロム系遮光膜が位相シフト材料層のエッチングの際に表面にダメージを受け、それにより発生したパーティクルが位相シフト材料層のエッチングに影響し、パターン欠陥として残存してしまうという問題もあり、エッチング条件の選定の幅を狭めていた。
【0018】
本発明は、上記のような問題点を解消するためになされたものである。
【0019】
すなわち、本発明の第1の目的は、大域的な開口率差を有する(ローディング効果によるCD精度のばらつきが問題となる)フォトマスクにおいて、高精度なパターンをドライエッチングによりエッチングする際に、ローディング効果を抑制し、高いCD精度を得ることができる方法を提供することにある。
【0020】
また本発明の第2の目的は、マスク面内において大域的な開口率差を有する(ローディング効果によるCD精度のばらつきが問題となる)、前記領域によらず(マスク全面で)高いCD精度を有するパターンを形成することができるフォトマスクの製造方法、及びこれに用いられるフォトマスクブランクを提供することにある。
【0021】
さらに、本発明の第3の目的は、大域的な開口率差を有する(ローディング効果によるCD精度のばらつきが問題となる)位相シフト層を有するハーフトーン型位相シフトマスク及びクロムレス型位相シフトマスクを製造するにあたり、エッチングマスク層としての遮光膜のエッチングに際し、ローディング効果を抑制し、高いCD精度を得ることができる方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明の第1の側面によれば、透光性基板上に、透光性基板上の面内において大域的な開口率差を有するクロムパターンが形成されたフォトマスクの製造方法において、透光性基板上に、前記クロムパターンを形成するためのクロム膜、該クロム膜のエッチングに対して耐性を有する無機系材料からなるエッチングマスク用膜、及びレジスト膜を少なくとも有するフォトマスクブランクを準備する工程と、前記レジスト膜に所望のパターンを露光、現像することによりレジストパターンを形成する工程と、前記レジストパターンをマスクとして前記エッチングマスク用膜にドライエッチング処理を施してエッチングマスクパターンを形成する工程と、前記エッチングマスクパターンをマスクとして、ドライエッチングを用いて前記クロム膜にドライエッチングを施して前記クロムパターンを形成する工程と、を含み、前記クロム膜のドライエッチングは、レジストパターンをマスクにクロム膜をエッチングする場合に許容できない程度のレジストパターンへのダメージが発生するような条件から選定された条件で行うことを特徴とするフォトマスクの製造方法が得られる。
【0023】
上記本発明の第1の側面によるフォトマスクの製造方法において、前記レジストパターンをマスクにクロム膜をエッチングする場合にレジストパターンへのダメージが許容できないような条件は、ドライエッチングの異方性を高める条件及び/又はエッチングのエッチャント密度を高める条件であることが好ましい。また、前記フォトマスクが、透光性基板上に前記クロムパターンを有するバイナリマスクであって良い。前記エッチングマスクパターンを、クロムパターン形成後に剥離する工程を更に含んでも良い。さらに、前記エッチングマスクパターンを、反射防止機能を有する膜として前記クロムパターン上に残存させても良い。前記フォトマスクが位相シフトマスクであって、前記フォトマスクブランクの前記透光性基板と前記クロム膜との間に位相シフト膜を有し、かつ、前記クロムパターンを形成する工程以降に、前記クロムパターンをマスクとして前記位相シフトパターンを形成する工程を含んでも良い。前記フォトマスクが位相シフトマスクであって、前記クロムパターンを形成する工程以降に、前記クロムパターンをマスクとして、前記透光性基板をパターニングして位相シフト用溝を形成する工程を含んで良い。
【0024】
本発明の第2の側面によれば、透光性基板上に、透光性基板上の面内において大域的な開口率差を有する半透光性位相シフト膜パターンが形成されたハーフトーン型位相シフトマスクを製造するフォトマスクの製造方法において、透光性基板上に、前記半透光性位相シフト膜パターンを形成するための半透光性位相シフト膜、前記クロムパターンを形成するためのクロム膜、該クロム膜のエッチングに対して耐性を有する無機系材料からなるエッチングマスク用膜、及びレジスト膜を少なくとも有するフォトマスクブランクを準備する工程と、前記レジスト膜に所望のパターンを露光、現像することによりレジストパターンを形成する工程と、前記レジストパターンをマスクとして前記エッチングマスク用膜にドライエッチング処理を施してエッチングマスクパターンを形成する工程と、前記エッチングマスクパターンをマスクとして、前記クロム膜のドライエッチングを施して前記クロムパターンを形成する工程と、前記クロムパターンをマスクとして前記半透光性位相シフト膜にドライエッチングを施して半透光性位相シフト膜パターンを形成する工程と、クロム膜パターンの所望の一部又は全部を除去する工程とを含むことを特徴とするフォトマスクの製造方法が得られる。
【0025】
上記本発明の第2の側面によるフォトマスクの製造方法において、前記エッチングマスクパターンを、前記半透光性位相シフト膜のドライエッチングと共に剥離しても良い。前記エッチングマスクパターンを、反射防止機能を有する膜として前記クロムパターン上に残存させても良い。半透光性位相シフト膜が、シリコンと窒素及び/又は酸素を含む材料からなる最上層を含んでも良い。半透光性位相シフト膜が、金属、シリコンと窒素及び/又は酸素を含む材料からなる単層構造の膜であって良い。
【0026】
本発明の第3の側面によれば、透光性基板上に、透光性基板上の面内において大域的な開口率差を有する透光性位相シフトパターンが形成されたクロムレス型位相シフトマスクを製造するフォトマスクの製造方法において、透光性基板上に、前記クロムパターンを形成するためのクロム膜、該クロム膜のエッチングに対して耐性を有する無機系材料からなるエッチングマスク用膜、及びレジスト膜を少なくとも有するフォトマスクブランクを準備する工程と、前記レジスト膜に所望のパターンを露光、現像することによりレジストパターンを形成する工程と、前記レジストパターンをマスクとして前記エッチングマスク用膜にドライエッチング処理を施してエッチングマスクパターンを形成する工程と、前記エッチングマスクパターンをマスクとして、前記クロム膜にドライエッチングを施して前記クロムパターンを形成する工程と、前記クロムパターンをマスクとして前記透光性基板にドライエッチングを施して前記透光性位相シフトパターンを形成する工程と、前記クロムパターンの所望の一部又は全部を除去する工程とを含むことを特徴とするフォトマスクの製造方法が得られる。
【0027】
上記本発明の第3の側面によるフォトマスクの製造方法において、前記エッチングマスクパターンを、前記透光性基板のドライエッチングと共に剥離しても良い。また、前記エッチングマスクパターンを、反射防止機能を有する膜として前記クロムパターン上に残存させても良い。
【0028】
上記本発明の第1〜第3の側面によるフォトマスクの製造方法において、前記エッチングマスクパターンを形成する工程において残存したレジストパターンを、前記クロムパターンを形成する工程の前に剥離する工程を有しても良い。前記無機系材料からなるエッチングマスク用膜は、モリブデン、シリコン、タンタル、タングステンのうち何れか一つを少なくとも含む材料からなることが望ましい。前記クロムパターンを形成する工程において、前記クロム膜のエッチング速度が前記エッチングマスクパターンのエッチング速度の10倍以上であることが好ましい。
【0029】
本発明の第4の側面によれば、透光性基板上に、所望の開口を有する半透光性位相シフト膜パターンが形成されたハーフトーン型位相シフトマスクを製造するための素材となるフォトマスクブランクにおいて、透明基板上に、半透光性位相シフト膜と、クロム膜と、クロム膜のドライエッチングに対して耐性を有する無機系材料からなるエッチングマスク用膜とが順次積層されていることを特徴とするフォトマスクブランクが得られる。
【0030】
上記本発明の第4の側面によるフォトマスクブランクにおいて、半透光性位相シフト膜が、シリコンと窒素及び/又は酸素を含む材料からなる最上層を含んでも良い。半透光性位相シフト膜が、金属、シリコンと窒素及び/又は酸素を含む材料からなる単層構造の膜であっても良い。前記エッチングマスク用膜が、前記半透光性位相シフト膜のドライエッチングにおいて共に剥離可能な材料であって良い。前記エッチングマスク用膜が、反射防止機能を有する膜であって良い。
【0031】
本発明においては、クロム膜のエッチングマスクとして、クロム膜のエッチングに対して耐性を有する無機系材料からなるエッチングマスクパターンを用いる。
【0032】
通常ドライエッチングは、イオンとラジカルを発生させ、これらのエッチャントをエッチング対象物と反応させることによって行われるが、一般的に塩素系ガス(例えばCl)と酸素系ガス(例えばO)の混合ガスをドライエッチングガスとして用いたクロム膜のドライエッチングにおいては、ラジカルが主体となって反応すると考えられている。ラジカル主体のドライエッチングとは、エッチャントとしてイオンよりもラジカルが多く生成するように制御し、これらをエッチング対象物と反応させる方法を言う。クロム膜のドライエッチングにおいては、ラジカルによる等方性エッチング成分や、酸素ラジカル等によるレジストの等方性エッチングによる酸素ラジカルの消費等が原因で、マスク面内の大域的な開口率差を有するマスクを製造する際に、クロム膜のエッチング面積差及びレジストパターンの被覆率差によってローディング効果が生じると考えられる。一方、クロム膜のエッチングを、この無機系材料からなるエッチングマスクパターンをマスクに行う場合、エッチングマスクパターンとして、最適条件でドライエッチングして形成したクロム膜パターンに比べて、ローディング効果の影響が少なくCD精度のばらつきが少ないパターンとすることによって、そのパターン形状が転写されたクロム膜パターンは、従来よりもローディング効果の影響が少なくCD精度のばらつきが少ないパターンを得ることができる。このようなエッチングマスクパターンを得るためには、例えば、次のような3つの方法が挙げられる。
【0033】
第1の方法としては、無機系エッチングマスクパターン(無機系エッチングマスク層)の材料とドライエッチングガスの種類及び条件の選定において、イオンが主体となって反応するドライエッチングすることが可能な組み合わせとする方法が挙げられる。イオンが主体のドライエッチングとは、エッチャントとしてラジカルよりもイオンが多く生成するように制御し、これをエッチング対象物と反応させる方法を言う。イオン主体のドライエッチングは、ラジカル主体のドライエッチングと比較して、異方性のエッチングが行われる傾向があるため、エッチングにおけるパターンのCDシフト量を低減することが可能となる。さらに、イオン主体のドライエッチングは、異方性エッチング成分が高く優れた断面形状のパターンが形成され易いエッチングである。このような、イオン主体のドライエッチングに用いるガスとしては、例えば、SF6、CF4、C26、CHF3等の弗素系ガス、これらとHe、H2、N2、Ar、C24、O2等の混合ガス、或いはCl2、CH2Cl2等の塩素系のガス又は、これらとHe、H2、N2、Ar、C24等の混合ガスを用いることができる。
【0034】
第2の方法として、無機系エッチングマスクパターン(無機系エッチングマスク用膜)の材料とドライエッチングガスの種類及び条件の選定において、前記レジスト膜とのエッチング選択比(無機系エッチングマスクパターン材料のエッチング速度/レジストのエッチング速度)が、クロム膜の最適なエッチング条件におけるクロム膜パターン(クロム膜)とレジスト膜のエッチング選択比よりも大きくする方法が挙げられる。上記選択比を大きくすることによって、エッチングにおけるパターンのCDシフト量を低減することが可能となる。この場合、(無機系エッチングマスクパターン材料のエッチング速度/レジストのエッチング速度)が2以上であることが好ましい。
【0035】
第3の方法としては、エッチングマスクパターンの膜厚を、クロム膜の膜厚よりも薄くする方法が挙げられる。クロム膜は、基本的には、エッチンマスクパターンをマスクにエッチングを行うため、クロム膜のエッチングに必要なレジストパターンの厚さを考慮する必要がない。その結果、エッチングマスクパターンをより薄い膜とすることにより、そのエッチングに必要なレジストの膜厚を薄くすることが可能となり、解像性の高いエッチングマスクパターンが得られる。即ち、レジストパターンが薄いと、より優れたパターン断面形状のレジストパターンを形成することができ、そのレジストパターンを用いて形成したエッチングマスクパターンのCD精度も向上する。また、上述のように、クロムパターンのドライエッチングは、基本的にはエッチングマスクパターンのみを用いて行うことができるため、クロム膜のエッチングの際に、薄いレジストの残存パターンのみの少ないレジストの存在下、或いはレジスト剥離工程を行うことによりレジストが無い状態とすることができることから、レジストパターンによる酸素ラジカルの消費が原因と考えられるローディング効果がされに低減することができる。この場合、エッチングマスク層の膜厚は、5〜30nmとすることが好ましい。
【0036】
尚、上述の第1〜第3の方法は、それぞれの方法を採用するのみに限らず、複数の方法を同時に採用してもよい。
【0037】
このように、本発明においては、このようなローディング効果の影響が少なくCD精度ばらつきが良好なパターンを有するエッチングマスクパターンをマスクとしてクロム膜にドライエッチング処理を施すことによって、従来クロム膜のドライエッチング中にパターン形状が悪化してしまうレジストパターンをマスクとして行うよりも、クロムパターンのパターン精度(CD精度及びそのばらつき)が格段に向上する。
【0038】
さらに、本発明においては、クロム膜のドライエッチングにおいて、レジストパターンをマスクにクロム膜をエッチングする場合に許容できない程度のレジストパターンへのダメージが発生するような条件から選定された条件で行う。レジストパターンへのダメージが大きくなるような条件としては、エッチングの異方性の高い条件が挙げられる。即ち、上述のように、クロムは等方性エッチング成分と考えられるラジカルが主体のエッチングであるが、ドライエッチング条件を制御することによって、イオン性を高めることが可能であり、その結果、異方性を高めることが可能である。このように、異方性を高めることは、レジストパターンにダメージを与え易くする条件であるため、従来のレジストパターンをマスクとしたクロム膜のエッチングにおいては採用することができなかった。しかしながら、本発明においては、エッチングマスクパターンがマスクとなるため、レジストパターンへのダメージを考慮する必要がなくなり、このような条件を採用することが可能となった。異方性を高めることによって、パターン断面形状の垂直性が増すばかりか、多少のローディング効果によりマスク面内においてエッチング速度にばらつきが生じた場合であっても、パターンのサイドエッチングが進み難いことから、面内にCDシフト量のばらつきが低減される。さらに、クロム膜パターンの断面形状を垂直にするために行うオーバーエッチングに対しても、パターンのサイドエッチング量が少ないため、オーバーエッチングによるパターンのCDシフト量を、従来に比べて著しく抑制することが可能となる。
【0039】
さらにまた、レジストパターンへのダメージが大きくなるような条件としては、エッチャントの密度を増やすような条件が挙げられる。ローディング効果を低減する方法として、エッチャントの密度を増やすようなドライエッチング条件を採用することでエッチャントの利用効率を面内で一定に保つ方法が考えられるが、この条件についても、レジストパターンにダメージを与え易くする条件であるため、従来のレジストパターンをマスクとしたクロム膜のエッチングにおいては採用することができなかった。特に、異方性を高めた条件において、エッチャントの密度を増やすようなドライエッチング条件は、レジストパターンへのダメージが著しく発生するため、絶対に採用されなかった。本発明においては、エッチングマスクパターンがマスクとなるため、レジストパターンへのダメージを考慮する必要がなくなり、このような条件を採用することが可能となった。
【0040】
このように、本発明においては、従来採用することができなかった、ローディング効果を抑制し、CD精度を向上させるクロム膜のドライエッチング条件を採用することが可能となり、クロム膜のドライエッチング条件の制御性の幅を広げることが可能となった。
【0041】
尚、クロム膜のドライエッチングにおいて、異方性の高い条件とは、ラジカル主体のドライエッチングにおいて、イオン性を高める条件を用いることによって得ることができる。イオン性を高める条件としては、好ましくは、イオンとラジカルがほぼ同等となる程度までイオン性を高めた条件とすることが好ましい。
【0042】
本発明のドライエッチングにおいて、イオン性を高めたラジカル主体のドライエッチングを行う際のエッチャントの制御方法として、種々のドライエッチング条件(例えば、チャンバー内の圧力、ガス流量、RFパワーなど)を制御する方法が挙げられる。すなわち、ガス種によってイオン主体或いはラジカル主体のドライエッチングが決定されるわけでは無く、同一種のガスを用いても、ドライエッチング条件の制御により、イオン主体、及びラジカル主体の両方のドライエッチングを行うことが可能である。また、エッチャントの密度を高める方法としても、種々のドライエッチング条件(例えば、チャンバー内の圧力、ガス流量、RFパワーなど)を制御する方法により行うことができる。
【0043】
尚、本発明において、レジスト膜の膜厚は、ドライエッチングにおける前記無機系エッチングマスク層との関係に依存するが、前記無機系エッチングマスク層および前記遮光膜の膜組成及び膜厚を考慮してもよい。前記レジスト膜は、少なくとも前記無機系エッチングマスク層のエッチング完了(オーバーエッチング含む)と同時あるいはそれ以後までレジスト膜が残る程度の膜厚が必要とされ、前記遮光膜のエッチング完了(オーバーエッチング含む)時までレジスト膜が残る程度の膜厚としても良い。具体的には、50nm〜500nmであることが好ましい。
【0044】
前記レジストパターンは、前記クロム膜パターンの形成前に除去しても構わない。その場合、前記クロム膜パターンは、前記無機系エッチングマスクパターンのみをマスクとして形成する。
【0045】
前記クロム膜は、前記ラジカル主体のドライエッチングにおいて、前記無機系エッチングマスクパターン材料とのエッチング選択比が10以上(遮光膜のエッチング速度が、無機系エッチングマスクパターン材料のエッチング速度と比較して10倍以上)であることが好ましい。前記クロム膜とのドライエッチングの関係から、前記無機系エッチングマスクパターンの膜厚は、前記クロム膜の膜厚に依存するが、前記クロム膜のエッチング終了(オーバーエッチング含む)と同時あるいはそれ以降まで前記無機系エッチングマスクパターンが残る程度の膜厚が必要とされ、具体的には、5nm〜100nmであることが好ましいが、エッチングマスクの薄膜化を考慮した場合は、5〜30nmとすることが好ましい。
【0046】
前記無機系エッチングマスクパターンは、クロム膜パターンを形成後、ドライエッチング又はウェットエッチング等の方法により除去してもよい。また、反射防止効果を発揮するような膜組成及び膜厚で前記無機系エッチングマスク層を構成した場合には、前記無機系エッチングマスクパターンは、除去せずに反射防止膜として用いることも可能である。この構成により、露光の際に生じる投影系での多重反射の影響を、効果的に抑制することが可能となる。
【0047】
また、前記透光性基板と前記遮光膜との間に、反射防止膜を形成しても良い。この構成により、露光の際に生じる照明系での多重反射の影響を、効果的に抑制することが可能となる。この場合、無機系エッチングマスクパターンを除去する工程が不要となるという点で好ましい。
【0048】
本発明において、前記遮光膜は、露光光例えば、KrFエキシマレーザ、ArFエキシマレーザ、又はF2エキシマレーザなどにより得られる露光光に対して、所定の遮光効果を発揮するように、膜組成および膜厚が構成されてなる。ここで、KrFエキシマレーザの波長は約248nm、ArFエキシマレーザの波長は約193nm、F2エキシマレーザの波長は約157nmである。
【0049】
本発明において、前記遮光膜は、それぞれ均一な組成の膜、膜厚方向で順次組成変調する傾斜組成膜、のいずれでも良い。
【0050】
尚、前記クロム膜とは、クロムが主体となって構成された膜であることを意味し、Cr単体の膜に限らず、CrO(クロム、酸素を含むことを意味し、それらの含有率を規定するものではない。以下、同様。)、CrN、CrC、CrCO、CrCN、CrON、CrCONなどの単層、複数層、組成傾斜膜等も含むものである。
【0051】
クロム膜のエッチングにおいて用いられるドライエッチングガスは、通常、ハロゲン含有ガスと酸素含有ガスが用いられる。ハロゲン含有ガスとしては、Clが最も一般的であるが、SiCl、HCl、CCl、CHCl等が挙げられる。この他、臭素、ヨウ素を含むガスも用いることができる。また、酸素含有ガスとしては、Oが最も一般的であるが、CO、CO等でもよい。
【0052】
上記各構成の方法によるフォトマスクの製造方法において、各種膜の形成方法は限定されない。インライン型、枚葉式、バッチ式などのスパッタ装置を用いて形成可能であり、膜の形成を透光性基板上の全ての膜を同一の装置で、あるいは複数の装置を組み合わせて形成することができるのは勿論である。
【0053】
また、前記無機系エッチングマスクパターン(無機系エッチングマスク層)の材料は、モリブデン、シリコン、タンタル及びタングステンのうちいずれか1つを少なくとも含む材料からなるフォトマスクの製造方法が提供される。
【0054】
前記無機系エッチングマスクパターンの材料として、例えばMo単体、MoSi、MoSiO、MoSiN、MoSiON、Si単体、SiO、SiN、SiON、Ta単体、TaB、W、WSi、TaSi、或いはアモルファスカーボンなどが挙げられる。
【0055】
本発明においては、透光性基板上に、遮光性クロムパターンが形成されたバイナリマスクに限らず、クロムパターンをマスクとしてエッチングされる位相シフトパターンを有する位相シフトマスクの製造方法にも適用可能である。
【0056】
位相シフトマスクとしては、位相シフト層を半透光性としたハーフトーン型位相シフトマスクがある。ハーフトーン型位相シフトマスクとしては、単層型と多層型が挙げられる。
【0057】
単層型ハーフトーン型位相シフトは、透光性基板上に、半透明性位相シフトパターンが形成されたものであり、半透明性位相シフトパターンを形成する際にマスク層として用いられるクロム膜パターンのパターン形成に、無機系エッチングマスクパターンを用いることができる(態様A)。
【0058】
また、多層型ハーフトーン型位相シフトマスクの製造方法としては、例えば、前記無機系エッチングマスクパターンを位相シフト効果を発揮するような膜組成及び膜厚で構成し、かつ、前記クロム膜パターンを光半透過効果を発揮するような膜組成及び膜厚で構成することで、二層型位相シフトマスクを製造することができる(態様B)。
【0059】
また、二層型ハーフトーン型位相シフトマスクの他の例として、透明基板上に位相シフト層と薄いクロム膜とからなる半透明位相シフトパターンを有するものがある。この例の場合、下層の位相シフト膜のパターン形成に用いられる薄いクロムパターンのパターン形成の際に、無機系エッチングマスクパターンを用いることができる。この場合、無機系エッチングマスクパターンを、遮光機能を有するように選定し、遮光機能を必要とする部分について無機系エッチングマスクパターンが残るように部分除去することが可能である(態様C)。
【0060】
また、多層型ハーフトーン型位相シフトマスクは、半透明位相シフトパターンが多層構造であり、多層合わせて所望の透過率と位相差を有するものであり、二層型の例としては、透光性基板上に、透過率調整層と位相シフト層からなる半透明位相シフトパターンを有するものがある。この例の場合は、最上層の位相シフト層のパターン形成に用いられるクロムパターンのパターン形成の際に、無機系エッチングマスクパターンを用いることができる(態様D)。
【0061】
また、本発明においては、所謂基板掘り込み型の位相シフトマスクを製造することも可能である。
【0062】
例えば、前記クロム膜パターンを光半透過効果を発揮するような膜組成及び膜厚で構成し、表出している透光性基板の一部あるいは全部を、クロムパターンの透過光と所定の位相差を有するようにエッチングすることにより、所謂掘り込み型の位相シフトマスクを製造することができる(態様E)。
【0063】
また、所謂基板掘り込み型の位相シフトマスクの他の例として、ライン&スペース状のクロム膜パターンの表出しかつ隣接している透光性基板の一側を他側と所定の位相差を有するようにエッチングして形成された、所謂掘り込み型の位相シフトマスク(レベンソンマスク)があり、基板を掘り込む際のマスクとして使用するクロムパターンのパターン形成において、無機系エッチングマスクパターンを用いることができる(態様F)。
【0064】
また、位相シフトマスクの他の例として、例えば、透明基板上に、位相差がほぼゼロの半透光性クロム膜パターンにより開口パターンとその周辺の補助パターンとが形成され、該開口パターンとの位相差がほぼ180°となるように該補助パターンの基板が掘り込まれたマスクである。このマスクにおいては、基板のエッチングにおいてマスクとして使用されるクロムパターンのパターン形成に無機系エッチングマスクパターンを用いることができる。この場合、無機系エッチングマスクパターンを、遮光機能を有するように選定し、遮光機能を必要とする部分について無機系エッチングマスクパターンが残るように部分除去することが可能である(態様G)。
【0065】
また、位相シフトマスクの他の例として、例えば、透明基板上に、位相差がほぼ180°の半透光性位相シフト膜により、開口パターンとその周辺の補助パターンとが形成され、該補助パターンとの位相差がほぼ180°となるように該開口パターンの基板が掘り込まれたマスクである。このマスクにおいては、半透光性位相シフト膜及び/又は基板のエッチングにおいてマスクとして使用されるクロムパターンのパターン形成に無機系エッチングマスクパターンを用いることができる(態様H)。
【0066】
また、位相シフトマスクの他の例として、例えば、透光性基板が、所定のパターン状に所定の位相差を有するようにエッチングされた所謂クロムレスタイプの位相シフトマスクがあり、基板のエッチングの際にマスクとして用いられるクロム膜のパターン形成に、無機系エッチングマスクパターンを用いることができる(態様I)。
【0067】
なお、上記態様A,D,E,F,H,Iにおいては、無機系エッチングマスクパターンは、反射防止膜として残しても良い。
【0068】
特に、ハーフトーン型位相シフトマスクとクロムレス型位相シフトマスクにおいては、無機系エッチングマスクを用いることで、ローディング効果の低減が図れるばかりでなく、位相シフト層又は基板のエッチングの際に、無機系エッチングマスクがクロム膜の保護層として機能するため、クロム膜の表面に受けるダメージを低減し、それにより発生したパーティクルが位相シフト材料層のエッチングにより転写されて、パターン欠陥として残存してしまうという問題を著しく低減することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】本発明の第1および第2実施例に係るフォトマスクの製造方法を説明するための図である。
【図2】実施例で作成したレジストパターンの模式図である。
【図3】本発明の第3および第4実施例に係るフォトマスクの製造方法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0070】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0071】
〔第1実施例〕
図1を参照して、本発明の第1実施例によるフォトマスクの製造方法について説明する。
【0072】
まず、石英からなる基板を鏡面研磨し所定の洗浄を施すことにより、6インチ×6インチ×0.25インチの透光性基板1を得た。
【0073】
次いで、同一のチャンバ内に複数のクロム(Cr)ターゲットが配置されたインラインスパッタ装置を用いて、透光性基板1の上に遮光性クロム膜2を成膜した(図1(a)参照)。
【0074】
具体的には、まず、アルゴン(Ar)と窒素(N2)の混合ガス雰囲気(Ar:N2=72:28[体積%]、圧力0.3[Pa])中で、反応性スパッタリングを行うことにより、膜厚20[nm]のCrN膜を成膜した。
【0075】
続けて、アルゴン(Ar)とメタン(CH4)の混合ガス雰囲気(Ar:CH4=96.5:3.5[体積%]、圧力0.3[Pa])中で、反応性スパッタリングを行うことにより、CrN膜の上に、膜厚37[nm]のCrC膜を成膜した。
【0076】
続けて、アルゴン(Ar)と一酸化窒素(NO)の混合ガス雰囲気(Ar:NO=87.5:12.5[体積%]、圧力0.3[Pa])中で、反応性スパッタリングを行うことにより、CrN膜の上に、膜厚が15[nm]のCrON膜を成膜した。
【0077】
以上のCrN膜、CrC膜、及びCrON膜は、インラインスパッタ装置を用いて連続的に成膜されたものであり、これらCrN、CrC、及びCrONを含んでなる遮光性クロム膜2は、その厚み方向に向かって当該成分が連続的に変化して構成されている。
【0078】
次いで、遮光性クロム膜2の上に、モリブデン(Mo)とシリコン(Si)の混合ターゲット(Mo:Si=20:80[mol%])を用いて、アルゴン(Ar)と窒素(N2)の混合ガス雰囲気(Ar:N2=10:90[体積%]、圧力0.3[Pa])中で、反応性スパッタリングを行うことにより、膜厚が92[nm]のMoSiN系の無機系エッチングマスク用膜3を成膜した(図1(b)参照)。
【0079】
次いで、無機系エッチングマスク用膜3の上に、ポジ型電子線レジスト4(ZEP7000:日本ゼオン社製)をスピンコート法により膜厚が400[nm]となるように塗布した(図1(c)参照)。
【0080】
以上により、透光性基板1上に、遮光性クロム膜2と、MoSiN系の無機系エッチングマスク用膜3と、レジスト4が順次形成されたフォトマスクブランク11を準備した。
【0081】
次いで、レジスト4に対し、日本電子社製のJBX9000によって電子線描画し、現像して、図2に示すようなレジストパターン41(0.4μmのライン&スペース)を形成した(図1(d)参照)。
【0082】
作成したレジストパターン41は、面内に同一パターンからなるA部とB部を有し、A部を含む所定面積の領域は周囲のレジストが除去されずに表面に残っており、B部を含む同じ所定面積の領域(図上白色の部分)は周囲のレジストが除去されて表面に無機系エッチングマスク用膜3が現れている。つまり、A部とB部のパターンを比較することで、マスク面内において大域的な開口率差を有するパターン領域が混在する場合のCD特性を評価することができる。
【0083】
そして、得られたレジストパターン41の寸法を、ホロン社製CD−SEM(EMU−220)を用いてA部およびB部においてそれぞれ測定した。
【0084】
次いで、レジストパターン41をマスクにして、無機系エッチングマスク用膜3を、SFとHeの混合ガスを用い、圧力:5[mmTorr]の条件にてイオン性主体のドライエッチングを行い、無機系エッチングマスクパターン31を形成した(図1(e)参照)。
【0085】
次いで、レジストパターン41及び無機系エッチングマスクパターン31をマスクにして、遮光性クロム膜2を、Cl2とO2の混合ガスを用い、圧力:3mmTorrの条件にて、イオン性を限りなく高めた(=イオンとラジカルがほぼ同等となる程度までイオン性を高めた)ラジカル主体のドライエッチングを行い、遮光性クロムパターン21を形成した(図1(f)参照)。
【0086】
次いで、レジストパターン41及び無機系エッチングマスクパターン31を剥離し、しかる後、所定の洗浄を施してフォトマスク10を得た(図1(g)参照)。
【0087】
そして、得られた遮光性クロムパターン21の寸法を、レジストパターン41と同様にCD−SEMを用いてA部およびB部においてそれぞれ測定した。その結果、A部とB部における寸法変換差(レジストパターン41と遮光性クロムパターン21の寸法差)の差は、驚くべきことに5nmであり、極めて良好なCD特性でフォトマスク10を製造することができた。
【0088】
〔第2実施例〕
図1を参照して、本発明の第2実施例によるフォトマスクの製造方法について説明する。第2実施例は、第1実施例において、レジストパターン41を除去後に、無機系エッチングマスクパターン31のみをマスクにして、遮光性クロム膜2のエッチングを行ったこと以外は、第1実施例と同じ条件でフォトマスクを製造した。
【0089】
詳しくは、まず、石英からなる基板を鏡面研磨し所定の洗浄を施すことにより、6インチ×6インチ×0.25インチの透光性基板1を得た。
【0090】
次いで、同一のチャンバ内に複数のクロム(Cr)ターゲットが配置されたインラインスパッタ装置を用いて、透光性基板1の上に遮光性クロム膜2を成膜した(図1(a)参照)。
【0091】
具体的には、まず、アルゴン(Ar)と窒素(N2)の混合ガス雰囲気(Ar:N2=72:28[体積%]、圧力0.3[Pa])中で、反応性スパッタリングを行うことにより、膜厚20[nm]のCrN膜を成膜した。
【0092】
続けて、アルゴン(Ar)とメタン(CH4)の混合ガス雰囲気(Ar:CH4=96.5:3.5[体積%]、圧力0.3[Pa])中で、反応性スパッタリングを行うことにより、CrN膜の上に、膜厚37[nm]のCrC膜を成膜した。
【0093】
続けて、アルゴン(Ar)と一酸化窒素(NO)の混合ガス雰囲気(Ar:NO=87.5:12.5[体積%]、圧力0.3[Pa])中で、反応性スパッタリングを行うことにより、CrN膜の上に、膜厚15[nm]のCrON膜を成膜した。
【0094】
以上のCrN膜、CrC膜、及びCrON膜は、インラインスパッタ装置を用いて連続的に成膜されたものであり、これらCrN、CrC、及びCrONを含んでなる遮光性クロム膜2は、その厚み方向に向かって当該成分が連続的に変化して構成されている。
【0095】
次いで、遮光性クロム膜2の上に、モリブデン(Mo)とシリコン(Si)の混合ターゲット(Mo:Si=20:80[mol%])を用いて、アルゴン(Ar)と窒素(N2)の混合ガス雰囲気(Ar:N2=10:90[体積%]、圧力0.3[Pa])中で、反応性スパッタリングを行うことにより、膜厚92[nm]のMoSiN系の無機系エッチングマスク用膜3を成膜した(図1(b)参照)。
【0096】
次いで、無機系エッチングマスク用膜3の上に、ポジ型電子線レジスト4(ZEP7000:日本ゼオン社製)をスピンコート法により膜厚が400[nm]となるように塗布した(図1(c)参照)。
【0097】
以上により、透光性基板1上に、遮光性クロム膜2と、MoSiN系の無機系エッチングマスク用膜3と、レジスト4が順次形成されたフォトマスクブランク11を準備した。
【0098】
次いで、レジスト4に対し、日本電子社製のJBX9000によって電子線描画し、現像して、図2に示すようなレジストパターン41(0.4μmのライン&スペース)を形成した(図1(d)参照)。
【0099】
作成したレジストパターン41は、面内に同一パターンからなるA部とB部を有し、A部を含む所定面積の領域は周囲のレジストが除去されずに表面に残っており、B部を含む同じ所定面積の領域(図上白色の部分)は周囲のレジストが除去されて表面に無機系エッチングマスク用膜3が現れている。つまり、A部とB部のパターンを比較することで、マスク面内において大域的な開口率差を有するパターン領域が混在する場合のCD特性を評価することができる。
【0100】
そして、得られたレジストパターン41の寸法を、ホロン社製CD−SEM(EMU−220)を用いてA部およびB部においてそれぞれ測定した。
【0101】
次いで、レジストパターン41をマスクにして、無機系エッチングマスク用膜3を、SF6とHeの混合ガスを用い、圧力:5[mmTorr]の条件にてイオン性主体のドライエッチングを行い、無機系エッチングマスクパターン31を形成した(図1(e)参照)。
【0102】
次いで、レジストパターン41を除去した後、無機系エッチングマスクパターン31のみをマスクにして、遮光性クロム膜2を、Cl2とO2の混合ガスを用い、圧力:3mmTorrの条件にて、イオン性を限りなく高めた(=イオンとラジカルがほぼ同等となる程度までイオン性を高めた)ラジカル主体のドライエッチングを行い、遮光性クロムパターン21を形成した(図1(f)参照)。
【0103】
次いで、無機系エッチングマスクパターン31を剥離し、しかる後、所定の洗浄を施してフォトマスク10を得た(図1(g)参照)。
【0104】
そして、得られた遮光性クロムパターン21の寸法を、レジストパターン41と同様にCD−SEMを用いてA部およびB部においてそれぞれ測定した。その結果、A部とB部における寸法変換差(レジストパターン41と遮光性クロムパターン21の寸法差)の差は、極めて驚くべきことに1nmであり、極めて良好なCD特性でフォトマスク10を製造することができた。
【0105】
〔第1比較例〕
第1比較例は、第1実施例によるフォトマスクの製造方法において、無機系エッチングマスク用膜3を形成せずにフォトマスクを製造する方法である。
【0106】
まず、石英からなる基板を鏡面研磨し所定の洗浄を施すことにより、6インチ×6インチ×0.25インチの透光性基板1を得た。
【0107】
次いで、第1実施例と同様の方法で、同一のチャンバ内に複数のクロム(Cr)ターゲットが配置されたインラインスパッタ装置を用いて、透光性基板1の上にCrN膜、CrC膜、及びCrON膜からなる遮光性クロム膜2を成膜した。
【0108】
次いで、遮光性クロム膜2の上に、第1実施例と同様に、レジスト4をスピンコート法により膜厚が400[nm]となるように塗布した。
【0109】
次いで、レジスト4に対し、第1実施例と同様に電子線描画し、現像して、第1実施例と同様に図2に示すようなレジストパターン41(0.4μmのライン&スペース)を形成し、得られたレジストパターン41の寸法を、CD−SEMを用いてA部およびB部においてそれぞれ測定した。
【0110】
次いで、レジストパターン41をマスクにして、遮光性クロム膜2を、Cl2とO2の混合ガスを用い、圧力:8mmTorrの条件にて、従来のイオン性の低いドライエッチングを行い、遮光性クロムパターン21を形成した。
【0111】
次いで、第1実施例と同様に、レジストパターン41を剥離し、しかる後、所定の洗浄を施してフォトマスク10を得た。
【0112】
そして、得られた遮光性クロムパターン21の寸法を、レジストパターン41と同様にCD−SEMを用いてA部およびB部においてそれぞれ測定した。その結果、A部とB部における寸法変換差(レジストパターン41と遮光性クロムパターン21の寸法差)の差は30nmであり、無機系エッチングマスク用膜3を形成してフォトマスクを製造した第1実施例と比較して、著しくCD特性が劣るのもであった。
【0113】
本発明の第2実施例では、比較例1(従来例)と比較して、ローディング効果の抑制を顕著に達成でき、1nmという従来では想像し得ない極めて良好なCD特性でフォトマスク10を製造することができた。
【0114】
〔第3実施例〕
図3を参照して、本発明の第3実施例によるフォトマスクの製造方法について説明する。
【0115】
まず、石英からなる基板を鏡面研磨し所定の洗浄を施すことにより、6インチ×6インチ×0.25インチの透光性基板1を得た。
【0116】
次いで、透光性基板1の上に、モリブデン(Mo)とシリコン(Si)の混合ターゲット(Mo:Si=20:80[mol%])を用いて、アルゴン(Ar)と窒素(N2)の混合ガス雰囲気(Ar:N2=10:90[体積%]、圧力0.3[Pa])中で、反応性スパッタリングを行うことにより、膜厚100[nm]のMoSiN系の半透光性の位相シフト膜5を成膜した(図3(a))。
【0117】
次いで、第1実施例と同様の方法で、同一のチャンバ内に複数のクロム(Cr)ターゲットが配置されたインラインスパッタ装置を用いて、位相シフト膜5の上にCrN膜、CrC膜、及びCrON膜からなる遮光性クロム膜2を成膜した(図3(b))。
【0118】
次いで、遮光性クロム膜2の上に、第1実施例と同様の方法で、膜厚92[nm]のMoSiN系の無機系エッチングマスク用膜3を成膜した(図3(c))。
【0119】
次いで、無機系エッチングマスク用膜3の上に、第1実施例と同様に、レジスト4をスピンコート法により膜厚が400[nm]となるように塗布した(図3(d))。
【0120】
以上により、透光性基板1上に、MoSiN系材料からなる半透光性の位相シフト膜5と、Cr系材料からなる遮光性クロム膜2と、MoSiN系材料からなる無機系エッチングマスク用膜3と、レジスト4が順次形成されたハーフトーン位相シフト型のマスクブランク11(ハーフトーン位相シフトマスクブランク)を準備した(図3(d))。
【0121】
次いで、レジスト4に対し、第1実施例と同様に電子線描画し、現像して、図2に示すようなレジストパターン41(0.4μmのライン&スペース)を形成し、得られたレジストパターン41の寸法を、CD−SEMを用いてA部およびB部においてそれぞれ測定した(図3(e))。
【0122】
次いで、第1実施例と同様の方法で、レジストパターン41をマスクにして、無機系エッチングマスク用膜3のドライエッチングを行い、無機系エッチングマスクパターン31を形成した(図3(f))。
【0123】
次いで、第1実施例と同様の方法で、レジストパターン41及び無機系エッチングマスクパターン31をマスクにして、遮光性クロム膜2のドライエッチングを行い、遮光性クロムパターン21を形成した(図3(g))。
【0124】
次いで、レジストパターン41、無機系エッチングマスクパターン31、及び遮光性クロムパターン21をマスクにして、位相シフト膜5を、SF6とHeの混合ガスを用い、圧力:5mmTorrの条件にてドライエッチングを行い、位相シフトパターン51を形成した(図3(h))。このとき、MoSiN系の無機系エッチングマスクパターン31は、位相シフト膜5のドライエッチングによりレジストが後退した部分においてエッチングされるが、完全にエッチングされるまでは、位相シフト膜5のドライエッチングから遮光性クロムパターンを保護するため、位相シフト膜5のドライエッチングによる遮光性クロムパターンのダメージから発生する発塵を、影響のないレベルまで低減することができる。
【0125】
次いで、レジストパターン41及び無機系エッチングマスクパターン31を剥離し、続いて転写パターン領域付近の遮光性クロムパターン21を剥離し(転写パターン領域上であってフォトマスクを使用した露光工程を考慮した際、残した方が良い部分の遮光性クロムパターンは残しても良い)、しかる後、所定の洗浄を施して、ハーフトーン位相シフト型のフォトマスク10(ハーフトーン位相シフトマスク)を得た(図3(i))。
【0126】
そして、得られた位相シフトパターン51の寸法を、レジストパターン41と同様にCD−SEMを用いてA部およびB部においてそれぞれ測定した。その結果、A部とB部における寸法変換差(レジストパターン41と位相シフトパターン51の寸法差)の差は、驚くべきことに4nmであり、極めて良好なCD特性のハーフトーン位相シフトマスクを製造することができた。
【0127】
〔第4実施例〕
図3を参照して、本発明の第4実施例によるフォトマスクの製造方法について説明する。第4実施例は、第3実施例において、レジストパターン41を除去後に、無機系エッチングマスクパターン31のみをマスクにして、遮光性クロム膜2のエッチングを行ったこと以外は、第3実施例と同じ条件でフォトマスクを製造した。
【0128】
詳しくは、まず、石英からなる基板を鏡面研磨し所定の洗浄を施すことにより、6インチ×6インチ×0.25インチの透光性基板1を得た。
【0129】
次いで、透光性基板1の上に、モリブデン(Mo)とシリコン(Si)の混合ターゲット(Mo:Si=20:80[mol%])を用いて、アルゴン(Ar)と窒素(N2)の混合ガス雰囲気(Ar:N2=10:90[体積%]、圧力0.3[Pa])中で、反応性スパッタリングを行うことにより、膜厚100[nm]のMoSiN系の半透光性の位相シフト膜5を成膜した(図3(a))。
【0130】
次いで、第1実施例と同様の方法で、同一のチャンバ内に複数のクロム(Cr)ターゲットが配置されたインラインスパッタ装置を用いて、位相シフト膜5の上にCrN膜、CrC膜、及びCrON膜からなる遮光性クロム膜2を成膜した(図3(b))。
【0131】
次いで、遮光性クロム膜2の上に、第1実施例と同様の方法で、膜厚が92[nm]のMoSiN系の無機系エッチングマスク用膜3を成膜した(図3(c))。
【0132】
次いで、無機系エッチングマスク用膜3の上に、第1実施例と同様に、レジスト4をスピンコート法により膜厚が400[nm]となるように塗布した(図3(d))。
【0133】
以上により、透光性基板1上に、MoSiN系材料からなる半透光性の位相シフト膜5と、Cr系材料からなる遮光性クロム膜2と、MoSiN系材料からなる無機系エッチングマスク用膜3と、レジスト4が順次形成されたハーフトーン位相シフト型のフォトマスクブランク11(ハーフトーン位相シフトマスクブランク)を準備した(図3(d))。
【0134】
次いで、レジスト4に対し、第1実施例と同様に電子線描画し、現像して、図2に示すようなレジストパターン41(0.4μmのライン&スペース)を形成し、得られたレジストパターン41の寸法を、CD−SEMを用いてA部およびB部においてそれぞれ測定した(図3(e))。
【0135】
次いで、第1実施例と同様の方法で、レジストパターン41をマスクにして、無機系エッチングマスク用膜3のドライエッチングを行い、無機系エッチングマスクパターン31を形成した(図3(f))。
【0136】
次いで、第2実施例と同様の方法で、レジストパターン41を除去した後、無機系エッチングマスクパターン31のみをマスクにして、遮光性クロム膜2のドライエッチングを行い、遮光性クロムパターン21を形成した(図3(g))。
【0137】
次いで、レジストパターン41、無機系エッチングマスクパターン31、及び遮光性クロムパターン21をマスクにして、位相シフト膜5を、SF6とHeの混合ガスを用い、圧力:5mmTorrの条件にてドライエッチングを行い、位相シフトパターン51を形成した(図3(h))。
【0138】
次いで、レジストパターン41、無機系エッチングマスクパターン31、及び遮光性クロムパターン21をマスクにして、位相シフト膜5を、SF6とHeの混合ガスを用い、圧力:5mmTorrの条件にてドライエッチングを行い、位相シフトパターン51を形成した(図3(h))。このとき、MoSiN系の無機系エッチングマスクパターン31は、位相シフト膜5のドライエッチングによりエッチングされるが、完全にエッチングされるまでは、位相シフト膜5のドライエッチングから遮光性クロムパターンを保護するため、位相シフト膜5のドライエッチングによる遮光性クロムパターンのダメージから発生する発塵を、影響のないレベルまで低減することができる。
【0139】
次いで、レジストパターン41及び無機系エッチングマスクパターン31を剥離し、続いて転写パターン領域付近の遮光性クロムパターン21を剥離し(転写パターン領域上であってフォトマスクを使用した露光工程を考慮した際、残した方が良い部分の遮光性クロムパターンは残しても良い)、しかる後、所定の洗浄を施して、ハーフトーン位相シフト型のフォトマスク10(ハーフトーン位相シフトマスク)を得た(図3(i))。
【0140】
そして、得られた位相シフトパターン51の寸法を、レジストパターン41と同様にCD−SEMを用いてA部およびB部においてそれぞれ測定した。その結果、A部とB部における寸法変換差(レジストパターン41と位相シフトパターン51の寸法差)の差は、極めて驚くべきことに2nmであり、極めて良好なCD特性でハーフトーン位相シフトマスクを製造することができた。
【0141】
〔第2比較例〕
第2比較例は、第3実施例によるフォトマスクの製造方法において、無機系エッチングマスク用膜3を形成せずにフォトマスクを製造する方法である。
【0142】
まず、石英からなる基板を鏡面研磨し所定の洗浄を施すことにより、6インチ×6インチ×0.25インチの透光性基板1を得た。
【0143】
次いで、透光性基板1の上に、第2実施例と同様に、膜厚100[nm]のMoSiN系の半透光性の位相シフト膜5を成膜した。
【0144】
次いで、第2実施例と同様の方法で、同一のチャンバ内に複数のクロム(Cr)ターゲットが配置されたインラインスパッタ装置を用いて、位相シフト膜5の上にCrN膜、CrC膜、及びCrON膜からなる遮光性クロム膜2を成膜した。
【0145】
次いで、遮光性クロム膜3の上に、第2実施例と同様に、レジスト4をスピンコート法により膜厚が400[nm]となるように塗布した。
【0146】
次いで、レジスト4に対し、第2実施例と同様に電子線描画し、現像して、図2に示すようなレジストパターン41(0.4μmのライン&スペース)を形成し、得られたレジストパターン41の寸法を、CD−SEMを用いてA部およびB部においてそれぞれ測定した。
【0147】
次いで、比較例1と同様の方法で、レジストパターン41をマスクにして、遮光性クロム膜2のドライエッチングを行い、遮光性クロムパターン21を形成した。
【0148】
次いで、レジストパターン41及び遮光性クロムパターン21をマスクにして、第2実施例と同様にドライエッチングを行い、位相シフトパターン51を形成した。
【0149】
次いで、レジストパターン41を剥離し、続いて転写パターン領域付近の遮光性クロムパターン21を剥離し、しかる後、所定の洗浄を施してハーフトーン位相シフト型のフォトマスク10を得た。
【0150】
そして、得られた位相シフトパターン51の寸法を、レジストパターン41と同様にCD−SEMを用いてA部およびB部においてそれぞれ測定した。その結果、A部とB部における寸法変換差の差は35nmであり、無機系エッチングマスク用膜3を形成してフォトマスクを製造した第2実施例と比較して、著しくCD特性が劣るものであった。
【0151】
〔第5実施例〕
次に、本発明の第5実施例によるクロムレス型位相シフトマスクの製造方法について説明する。
【0152】
第5実施例は、第2実施例における無機系エッチングマスクの剥離前の状態から、さらに遮光性クロム膜パターンをマスクに基板を掘り込んで、クロムレス型位相シフトマスクを製造した例である。
【0153】
まず、第2実施例と同様の方法で無機系エッチングマスクの剥離前のフォトマスクを製造した。
【0154】
次いで、フォトマスク10における無機系エッチングマスクパターン31付き遮光性クロムパターン21をマスクとして、位相差が略180°となる180nmの深さに基板をエッチングした。このエッチングは、ドライエッチングガスとして、ClとOとHeの混合ガスを用い、圧力0.3Paの条件にて行った。このとき、MoSiN系の無機系エッチングマスクパターン31は、基板のドライエッチングによりエッチングされるが、完全にエッチングされるまでは、基板のドライエッチングから遮光性クロムパターンを保護するため、基板のドライエッチングによる遮光性クロムパターンのダメージから発生する発塵を、影響のないレベルまで低減することができる。
【0155】
次いで、少なくとも転写領域周辺の遮光性クロム膜が残るように遮光性クロムパターンを剥離し(転写パターン領域上であってフォトマスクを使用した露光工程を考慮した際、残した方が良い部分の遮光性クロムパターンは残してもよい)、しかる後、所定の洗浄を施して、クロムレス型位相シフトマスクを得た。
【0156】
得られたクロムレス型位相シフトマスクによれば、フォトマスク10の遮光性クロムパターン21のCD特性が転写され、極めて良好なCD特性のクロムレス型位相シフトマスクを製造することができる。
【0157】
また、本実施例によれば、基板のエッチングにおいて無機系エッチングマスクも同時にエッチングされるため、無機系エッチングマスクを剥離する工程を必要としない。
【0158】
尚、本実施例において、基板のエッチングと無機系エッチングマスクパターンのエッチングが、同じエッチング時間で終了するように、無機系エッチングマスクパターンの材料及び膜厚を選択した場合は、無機系エッチングマスクパターンのエッチング終点検出によって、基板のエッチングの終点検出が可能となるという点で好ましい。
【0159】
〔第3比較例〕
第3比較例は、第1比較例における無機系エッチングマスクの剥離前の状態から、さらに遮光性クロム膜パターンをマスクに基板を掘り込んで、クロムレス型位相シフトマスクを製造した例である。
【0160】
まず、第2比較例と同様の方法で無機系エッチングマスクの剥離前のフォトマスクを製造した。
【0161】
次いで、このフォトマスクにおける遮光性クロムパターン21をマスクとして、位相差が略180°となる180nmの深さに基板をエッチングした。このエッチングは、ドライエッチングガスとして、CFとOの混合ガスを用い、圧力0.68Paの条件にて行った。このとき、基板のドライエッチングによる遮光性クロムパターンのダメージから発生する発塵の影響により、基板の掘り込み部表面に粗れが確認された。
【0162】
次いで、少なくとも転写領域周辺の遮光性クロム膜が残るように遮光性クロムパターンを剥離(転写パターン領域上であってフォトマスクを使用した露光工程を考慮した際、残した方が良い部分の遮光性クロムパターンは残してもよい)、しかる後、所定の洗浄を施して、クロムレス型位相シフトマスクを得た。
【0163】
得られたクロムレス型位相シフトマスクによれば、第5実施例に比べて、CD特性が著しく劣るものであった。
【0164】
本発明の第1〜第5実施例では、イオン主体のドライエッチングにおいてSF6とHeの混合ガスを用いたが、適切なドライエッチング条件を設定することで、CF4、C26、CHF3等のガス、又は、これらとHe、H2、N2、Ar、C24、O2等の混合ガスを用いても、同様の効果が得られる。
【0165】
また、本発明の第1〜第5実施例では、無機系エッチングマスク用膜にMoSiN系の材料を使用したが、Mo単体、MoSi、MoSiO、MoSiN、MoSiON、Si単体、SiO、SiN、SiON、Ta単体、TaB、W、WSi、TaSi等を用いても同様の効果が得られる。
【0166】
また、本発明の第1〜第5実施例では、ラジカル主体のドライエッチングにおいてCl2とO2の混合ガスを用いたが、適切なドライエッチング条件を設定することで、CH2Cl2とO2の混合ガス、又は、これらとHe、H2、N2、Ar、C24等の混合ガスを用いても、同様の効果が得られる。
【0167】
以上のように、本発明によれば、大域的な開口率差を有する(ローディング効果によるCD精度のばらつきが問題となる)フォトマスクにおいて、高精度なパターンをドライエッチングによりエッチングする際に、ローディング効果を抑制し、高いCD精度を得ることができる。
【0168】
マスク面内において大域的な開口率差を有する(ローディング効果によるCD精度のばらつきが問題となる)、前記領域によらず(マスク全面で)高いCD精度を有するパターンを形成することができる。
【0169】
さらに、本発明は、大域的な開口率差を有する(ローディング効果によるCD精度のばらつきが問題となる)位相シフト層を有するハーフトーン型位相シフトマスク及びクロムレス型位相シフトマスクを製造するにあたり、エッチングマスク用膜としての遮光性クロム膜のエッチングに際し、ローディング効果を抑制し、高いCD精度を得ることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透光性基板(1)上に、該透光性基板(1)上の面内において大域的な開口率差を有する半透光性位相シフトパターン(51)が形成されたハーフトーン型位相シフトマスクを製造するフォトマスクの製造方法において、
前記透光性基板(1)上に、前記半透光性位相シフトパターン(51)を形成するための半透光性位相シフト膜(5)、クロムパターン(21)を形成するためのクロム膜(2)、該クロム膜のエッチングに対して耐性を有する無機系材料からなるエッチングマスク用膜(3)、及びレジスト膜(4)を少なくとも有するフォトマスクブランク(11)を準備する工程と、
前記レジスト膜(4)に所望のパターンを露光、現像することによりレジストパターン(41)を形成する工程と、
前記レジストパターン(41)をマスクとして前記エッチングマスク用膜(3)にドライエッチング処理を施してエッチングマスクパターン(31)を形成する工程と、
前記エッチングマスクパターン(31)をマスクとして、前記クロム膜(2)にドライエッチングを施して前記クロムパターン(21)を形成する工程と、
前記クロムパターン(21)をマスクとして前記半透光性位相シフト膜(5)にドライエッチングを施して前記半透光性位相シフトパターン(51)を形成する工程と、
前記クロムパターン(21)の所望の一部又は全部を除去する工程と
を含むことを特徴とするフォトマスクの製造方法。
【請求項2】
前記エッチングマスクパターン(31)を、前記半透光性位相シフト膜(5)のドライエッチングと共に剥離することを特徴とする請求項1に記載のフォトマスクの製造方法。
【請求項3】
前記エッチングマスクパターン(31)を、反射防止機能を有する膜として前記クロムパターン(21)上に残存させることを特徴とする請求項1に記載のフォトマスクの製造方法。
【請求項4】
前記半透光性位相シフト膜(5)が、シリコンと窒素及び/又は酸素を含む材料からなる最上層を含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載のフォトマスクの製造方法。
【請求項5】
前記半透光性位相シフト膜(5)が、金属、シリコンと窒素及び/又は酸素を含む材料からなる単層構造の膜であることを特徴とする請求項4に記載のフォトマスクの製造方法。
【請求項6】
前記エッチングマスクパターン(31)を形成する工程において残存した前記レジストパターン(41)を、前記クロムパターン(21)を形成する工程の前に剥離する工程を有することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1つに記載のフォトマスクの製造方法。
【請求項7】
前記無機系材料からなるエッチングマスク用膜(3)は、モリブデン、シリコン、タンタル、タングステンのうち何れか一つを少なくとも含む材料からなることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1つに記載のフォトマスクの製造方法。
【請求項8】
前記クロムパターン(21)を形成する工程において、前記クロム膜(2)のエッチング速度が前記エッチングマスクパターン(31)のエッチング速度の10倍以上であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1つに記載のフォトマスクの製造方法。
【請求項9】
透光性基板(1)上に、該透光性基板上の面内において大域的な開口率差を有する透光性位相シフトパターンが形成されたクロムレス型位相シフトマスクを製造するフォトマスクの製造方法において、
前記透光性基板(1)上に、クロムパターン(21)を形成するためのクロム膜(2)、該クロム膜のエッチングに対して耐性を有する無機系材料からなるエッチングマスク用膜(3)、及びレジスト膜(4)を少なくとも有するフォトマスクブランク(11)を準備する工程と、
前記レジスト膜(4)に所望のパターンを露光、現像することによりレジストパターン(41)を形成する工程と、
前記レジストパターン(41)をマスクとして前記エッチングマスク用膜(3)にドライエッチング処理を施してエッチングマスクパターン(31)を形成する工程と、
前記エッチングマスクパターン(31)をマスクとして、前記クロム膜(2)にドライエッチングを施して前記クロムパターン(21)を形成する工程と、
前記クロムパターン(21)をマスクとして前記透光性基板(1)にドライエッチングを施して前記透光性位相シフトパターンを形成する工程と、
前記クロムパターン(21)の所望の一部又は全部を除去する工程と
を含むことを特徴とするフォトマスクの製造方法。
【請求項10】
前記エッチングマスクパターン(31)を、前記透光性基板(1)のドライエッチングと共に剥離することを特徴とする請求項9に記載のフォトマスクの製造方法。
【請求項11】
前記エッチングマスクパターン(31)を、反射防止機能を有する膜として前記クロムパターン(21)上に残存させることを特徴とする請求項9に記載のフォトマスクの製造方法。
【請求項12】
前記エッチングマスクパターン(31)を形成する工程において残存した前記レジストパターン(41)を、前記クロムパターン(21)を形成する工程の前に剥離する工程を有することを特徴とする請求項9〜11のいずれか1つに記載のフォトマスクの製造方法。
【請求項13】
前記無機系材料からなるエッチングマスク用膜(3)は、モリブデン、シリコン、タンタル、タングステンのうち何れか一つを少なくとも含む材料からなることを特徴とする請求項9〜12のいずれか1つに記載のフォトマスクの製造方法。
【請求項14】
前記クロム膜パターン(21)を形成する工程において、前記クロム膜(2)のエッチング速度が前記エッチングマスクパターン(31)のエッチング速度の10倍以上であることを特徴とする請求項9〜13のいずれか1つに記載のフォトマスクの製造方法。
【請求項15】
透光性基板(1)上に、所望の開口を有する半透光性位相シフトパターン(51)が形成されたハーフトーン型位相シフトマスク(10)を製造するための素材となるフォトマスクブランク(11)において、
前記透明基板(1)上に、半透光性位相シフト膜(5)と、クロム膜(2)と、該クロム膜のドライエッチングに対して耐性を有する無機系材料からなるエッチングマスク用膜(3)とが順次積層されていることを特徴とするフォトマスクブランク。
【請求項16】
前記半透光性位相シフト膜(5)が、シリコンと窒素及び/又は酸素を含む材料からなる最上層を含むことを特徴とする請求項15に記載のフォトマスクブランク。
【請求項17】
前記半透光性位相シフト膜(5)が、金属、シリコンと窒素及び/又は酸素を含む材料からなる単層構造の膜であることを特徴とする請求項16に記載のフォトマスクブランク。
【請求項18】
前記エッチングマスク用膜(3)が、前記半透光性位相シフト膜(5)のドライエッチングにおいて共に剥離可能な材料であることを特徴とする請求項15〜17のいずれか1つに記載のフォトマスクブランク。
【請求項19】
前記エッチングマスク用膜(3)が、反射防止機能を有する膜であることを特徴とする請求項15〜17のいずれか1つに記載のフォトマスクブランク。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−80510(P2009−80510A)
【公開日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−8429(P2009−8429)
【出願日】平成21年1月19日(2009.1.19)
【分割の表示】特願2005−505328(P2005−505328)の分割
【原出願日】平成16年4月9日(2004.4.9)
【出願人】(000113263)HOYA株式会社 (3,820)
【Fターム(参考)】