説明

フォトマスクブランクスの製造方法、フォトマスクブランクス、及びフォトマスク

【課題】ガラス基材上に良好な面状の塗布層を短時間で塗設できるフォトマスクブランクスの製造方法、及びそれにより得られたフォトマスクブランクス、並びに、ガラス基材との密着性に優れた遮光層を有するフォトマスクの提供。
【解決手段】透明ガラス基材を洗浄するガラス洗浄工程、及び、洗浄後の透明ガラス基材上に、遮光材料を少なくとも含有する感光性組成物層、及び酸素遮断性層を含む各塗布層を塗設するための塗布液を、塗布層毎に、順次、塗布し、乾燥する塗布乾燥工程を有し、該塗布乾燥工程における各塗布液の乾燥が、3μm〜7μmに極大波長を有する赤外線を放射する赤外線ヒーターを用いた加熱により行われるフォトマスクブランクスの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はフォトマスクブランクスの製造方法、それにより得られたフォトマスクブランクス、及び該フォトマスクブランクを用いて得られたフォトマスクに関する。より詳細には、PDP、FED、LCD等のフラットパネルディスプレイ、CRT用シャドーマスク、印刷配線板、半導体等の分野におけるフォトリソ工程において用いうるフォトマスクの製造に用いられるフォトマスクブランクスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
フラットパネルディスプレイ、CRT用シャドーマスク、印刷配線板、半導体等の分野におけるフォトリソ工程において用いられるフォトマスクとしては、金属クロム層(Cr層)を設けたCrマスク、ハロゲン化銀乳剤層を設けたEmマスク(エマルションマスク)が知られている(例えば、非特許文献1参照。)。
【0003】
Crマスクは、石英やガラス等の透明基材上にクロム層をスパッタリング法により形成後、この上にエッチングレジストを塗布などにより設け、HeCdレーザー(442nm)などによる露光、アルカリ水溶液などでの現像によるエッチングレジストのパターニング、クロムのエッチング、及びエッチングレジストの剥離を行って作製される。Crマスクは、ピンホール等の欠陥修正可能で、高解像度、高耐久性(耐傷性)、高洗浄性にも優れるというメリットを有する。その一方、Crマスクは、作製工程が煩雑なため高価であり、また、製造プロセスにおいてクロムエッチングが行われることに起因する廃液処理等の環境面の問題も有している。
【0004】
Emマスクは、ハロゲン化銀乳剤層(感光性層)を石英やガラス等の透明基材上に設け、YAGレーザーなどにより露光、現像、定着処理で作製されるものである。Emマスクの作製に用いられるハロゲン化銀乳剤は、光に対する感度が高いため、露光エネルギーが小さくてもよく(〜0.1mJ/cm)、また、環境にも優しく、安価なフォトマスクブランクスである。この反面、Emマスクは、感光性材料としてハロゲン化銀を用いるため、解像度が余り高くなく(3μm程度)、極微細なパターンを作製するには不向きであり、また感光性層がゼラチン膜であるため耐久性に乏しい。また、Emマスクは、欠陥修正が実質的に困難であるという欠点を有している。
【0005】
また、他のタイプのフォトマスクとして、黒色顔料等の遮光材料を含有し、かつ近紫外光ないし可視光で画像形成が可能な感光性層を有するフォトマスクブランクスを用いて作製されるものが知られている(特許文献1、2参照。)。該フォトマスクブランクスが有する感光性層は、フォトマスク作製時に照射される近紫外ないし可視領域における吸光度が小さいため高感度であり、一方、フォトマスク使用時に照射される紫外領域の光の吸収特性が良好なため、感光性層を露光・現像することにより、解像度に優れたフォトマスクを得ることができる。また、このフォトマスクは、金属膜を必要とせず、レリーフ画像であるため欠陥修正を簡便に行うことができ、感度や解像度等のバランスがよく、安価で環境への負荷も小さいという特徴も有する。
【0006】
ところで、フォトマスクブランクスを製造する際には、ガラス基材上に、密着性下塗り層塗布液、遮光材料を含有する感光性組成物層塗布液、及び酸素透過性層塗布液などの塗布層を順次塗設するが、その際の塗布液の乾燥には、ホットプレートを用いた乾燥が一般的であった。しかし、厚みのあるガラス基板(例えば、5mm以上のもの)を用いた場合、塗布液の乾燥にホットプレートを用いると、ガラスは熱伝導に時間を要するため、乾燥に長い時間が必要となり、生産スピードが上げられないという問題がある。また、塗布液の乾燥方法としては温風による乾燥も可能ではあるが、温風による乾燥では乾燥後の面状が不均一になる風ムラが発生し易く、さらには、塗布面の表面部から乾固していくため、塗布層内部の溶剤が十分に揮発しないままで残留しやすいという問題がある。塗布層内部における溶剤の残存は、フォトマスクブランクスから得られたフォトマスクにおいて、遮光層とガラス基材との密着性の低下を招来する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−283914号公報
【特許文献2】特開2001−343734号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】教育文科会編、「フォトファブリケーション」、日本フォトファブリケーション協会発行、67〜80ページ、1992年6月
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、前記の事情に鑑みてなされたものであり、以下の目的を達成することを課題とする。
即ち、本発明は、ガラス基材上に良好な面状の塗布層を短時間で塗設できるフォトマスクブランクスの製造方法、及びそれにより得られたフォトマスクブランクスを提供することを目的とする。
また、本発明は、ガラス基材との密着性に優れた遮光層を有するフォトマスクを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は鋭意検討の結果、フォトマスクブランクスの製造において、透明ガラス基材上にその上層として塗設される各塗布層を形成するための塗布液の乾燥を、3μm〜7μmに極大吸収を有する赤外線ヒーターを用いた加熱により行うことにより、前記課題を解決しうることを見出し、本発明を完成するに至った。即ち、前記課題を解決するための手段は、以下の通りである。
【0011】
<1> 透明ガラス基材を洗浄するガラス洗浄工程、及び、
洗浄後の透明ガラス基材上に、遮光材料を少なくとも含有する感光性組成物層、及び酸素遮断性層を含む各塗布層を塗設するための塗布液を、塗布層毎に、順次、塗布し、乾燥する塗布乾燥工程を有し、
該塗布乾燥工程における各塗布液の乾燥が、3μm〜7μmに極大波長を有する赤外線を放射する赤外線ヒーターを用いた加熱により行われるフォトマスクブランクスの製造方法。
<2> 前記感光性組成物層が、さらに、重合開始剤、エチレン性不飽和化合物、及びバインダーポリマーを含む<1>に記載のフォトマスクブランクスの製造方法。
<3> 前記感光性組成物層が、さらに、増感色素を含む<2>に記載のフォトマスクブランクスの製造方法。
<4> 前記遮光材料が、カーボンブラックである<1>から<3>に記載のフォトマスクブランクスの製造方法。
<5> 前記感光性組成物層の乾燥後の膜厚が、0.5μm〜2μmである<1>から<4>に記載のフォトマスクブランクスの製造方法。
<6> 前記塗布乾燥工程において、赤外線ヒーターを用いて加熱する際の各塗布液毎の加熱時間が、10秒から120秒である<1>から<5>のいずれか1項に記載のフォトマスクブランクスの製造方法。
<7> 前記塗布乾燥工程において塗設された酸素遮断性層の25℃における酸素透過率が、1.0ml/m・day・atm以上2000ml/m・day・atm以下である<1>から<6>のいずれか1項に記載のフォトマスクブランクスの製造方法。
<8> 前記透明ガラス基材が、厚み0.1mm以上20mm以下である<1>から<<7>のいずれか1項に記載のフォトマスクブランクスの製造方法。
<9> 前記重合開始剤が、ヘキサアリールビイミダゾール化合物である<1>から<8>のいずれか1項に記載のフォトマスクブランクスの製造方法。
【0012】
<10> <1>〜<9>のいずれか1項に記載のフォトマスクブランクスの製造方法により得られたフォトマスクブランクス。
<11> <10>に記載のフォトマスクブランクスが有する感光性組成物層を、画像様に露光した後、現像することで形成された遮光層を有するフォトマスク。
<12> 前記露光が、350nm以上450nm以下の光により行われる<11>に記載のフォトマスク。
<13> 前記遮光層におけるラインアンドスペース(L/S)の線幅が、0.1μm以上20μm以下である<11>又は<12>に記載のフォトマスク。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ガラス基材上に良好な面状の塗布層を短時間で塗設できるフォトマスクブランクスの製造方法、及びそれにより得られたフォトマスクブランクスを提供することができる。
また、本発明によれば、ガラス基材との密着性に優れた遮光層を有するフォトマスクを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明のフォトマスクブランクスの製造方法、及び該製造方法により得られたフォトマスクブランクス、並びに、該フォトマスクブランクスを用いて得られたフォトマスクについて説明する。
【0015】
<<フォトマスクブランクス製造方法>>
本発明のフォトマスクブランクスの製造方法は、透明ガラス基材を洗浄するガラス洗浄工程、及び、洗浄後の透明ガラス基材上に、遮光材料を少なくとも含有する感光性組成物層、及び酸素遮断性層を含む各塗布層を塗設するための塗布液を、塗布層毎に、順次、塗布し、乾燥する塗布乾燥工程を有し、該塗布乾燥工程における各塗布液の乾燥が、それぞれ3μm〜7μmに極大波長を有する赤外線を放射する赤外線ヒーターを用いた加熱により行われるものである。
【0016】
本発明のフォトマスクブランクスの製造方法(以下、適宜、「本発明の製造方法」と称する。)は、前記ガラス洗浄工程及び前記塗布乾燥工程を有してなり、該塗布乾燥工程は、感光性組成物層を塗設する「感光性組成物層塗布乾燥工程」、及び酸素遮断性層を塗設する「酸素遮断性層塗布乾燥工程」の各工程により構成される。本発明の製造方法は、さらに、密着性下塗り層を塗設する「下塗り層塗布乾燥工程」を有することが好ましい。
【0017】
以下、本発明の製造方法を工程順に説明する。なお、本発明の製造方法において用いる透明ガラス基材、各塗布層の塗設に用いる塗布液が好適に含有する各種成分等の詳細に関しては、本発明の製造方法により得られるフォトマスクブランクスの好適な一例の説明において後述する。
【0018】
〔ガラス洗浄工程〕
ガラス洗浄工程では、本発明の製造方法に用いられる透明ガラス基材を洗浄する。
本工程において、透明ガラス基材の洗浄は、透明ガラス基材を純水で洗浄した後、50℃〜100℃の雰囲気下で乾燥させることにより行う。
乾燥は、透明ガラス基材の表面に残存する水分を蒸発させる目的で行うものであり、乾燥手段としては、ホットプレートを用いる他、温風による乾燥でもよい。
【0019】
〔塗布乾燥工程〕
塗布乾燥工程では、ガラス洗浄工程後の透明ガラス基材上に、密着性下塗り層、感光性組成物層、及び酸素遮断性層を含む各塗布層を塗設するための塗布液を、塗布層毎に順次、塗布し、乾燥することで、透明ガラス基材上にこれらの各塗布層を順次塗設する。本発明の製造方法は、塗布乾燥工程における各塗布液の乾燥が、3μm〜7μmに極大波長を有する赤外線を放射する赤外線ヒーターを用いた加熱により行われることを特徴とするものである。
【0020】
ここで、本発明に用いる3μm〜7μmに極大波長を有する赤外線(以下、適宜「遠赤外線」とも称する。)を放射する赤外線ヒーターは、少なくとも、遠赤外線を放射する放射部材を備えて構成されるものである。また、赤外線ヒーターとしては市販品を用いることもでき、例えば、大東製機(株)製の「アステックパワーヒータ」、ノリタケエンジニアリング(株)製PLC等を、本発明の製造方法に好適に用いることができる。
【0021】
以下、塗布乾燥工程における必須工程である感光性組成物層塗布乾燥工程、及び酸素遮断性層塗布乾燥工程、並びに好適な任意工程である下塗り層塗布乾燥工程の各工程について、詳細に説明する。
【0022】
<下塗り層塗布乾燥工程>
本工程では、ガラス洗浄工程において洗浄した透明ガラス基材上に、密着性下塗り層塗布液(以下、適宜「下塗り液」とも称する。)を、塗布し、乾燥して、密着性下塗り層を塗設する。本発明の製造方法では、本工程により、透明ガラス基材上に密着性下塗り層を設けることが好ましい。
【0023】
下塗り液は、透明ガラス基材上にスピンコーター又はスリットコーターを用いて塗布する。下塗り液の塗布量としては、5cm/m〜20cm/mが好ましい。
【0024】
塗布された下塗り液は、塗布後速やかに、本発明における遠赤外線を放射する赤外線ヒーターを用いて加熱することで、乾燥される。
【0025】
加熱は、塗布された下塗り液(被加熱部)の全面に対して、赤外線ヒーターが有する遠赤外線を放射する放射部材から、遠赤外線を照射することにより行う。
【0026】
本工程における加熱条件は、密着性下塗り層の構成等を考慮して設定され、好ましい条件は以下通りである。
加熱温度としては、被加熱部の表面温度が、好ましくは60℃以上300℃以下となるように、より好ましくは80℃以上200℃以下となるように加熱する。この距離において、より短い乾燥速度が達成されると共に、被加熱部内における温度分布をより均一にできる。
赤外線ヒーターにおける遠赤外線を放射する放射部材の表面と、被加熱部の表面との距離は、その最短距離が、好ましくは2cm以上30cm以下の範囲であり、より好ましくは3cm以上20cm以下の範囲である。
加熱時間(乾燥時間)としては、10秒以上120秒分以下の範囲であることが好ましく、20秒以上100秒以下であることがより好ましい。
【0027】
以上のようにして、密着性下塗り層が塗設される。
乾燥後の密着性下塗り層の膜厚としては、10nm以上100nm以下であることが好ましい。
【0028】
<感光性組成物層塗布乾燥工程>
感光性組成物層塗布乾燥工程では、下塗り層塗布乾燥工程において塗設された密着性下塗り層上、又は、ガラス洗浄工程において洗浄した透明ガラス基材上に、感光性組成物層塗布液を、塗布し、乾燥して、感光性組成物層を塗設する。
【0029】
感光性組成物層塗布液は、密着性下塗り層上に、スピンコーター又はスリットコーターを用いて塗布する。感光性組成物層塗布液の塗布量としては、5cm/m〜20cm/mが好ましい。
【0030】
塗布された感光性組成物層塗布液は、塗布後速やかに、本発明における遠赤外線を放射する赤外線ヒーターを用いて加熱することで、乾燥される。
【0031】
加熱は、塗布された感光性組成物層塗布液(被加熱部)の全面に対して、赤外線ヒーターが有する遠赤外線を放射する放射部材から、遠赤外線を照射することにより行う。
【0032】
本工程における加熱条件は、感光性組成物層の構成等を考慮して設定され、好ましい条件は以下通りである。
加熱温度としては、被加熱部の表面温度が、好ましくは60℃以上300℃以下となるように、より好ましくは80℃以上200℃以下となるように加熱する。この距離において、より短い乾燥速度が達成されると共に、被加熱部内における温度分布をより均一にできる。
赤外線ヒーターにおける遠赤外線を放射する放射部材の表面と、被加熱部の表面との距離は、その最短距離が、好ましくは2cm以上30cm以下の範囲であり、より好ましくは3cm以上20cm以下の範囲である。
加熱時間(乾燥時間)としては、10秒以上120秒分以下の範囲であることが好ましく、20秒以上100秒以下であることがより好ましい。
【0033】
以上のようにして、感光性組成物層が塗設される。
乾燥後の感光性組成物層の膜厚としては、0.7μm以上1.8μm以下であることが好ましい。
【0034】
<酸素遮断性層塗布乾燥工程>
本工程では、感光性組成物層上に、酸素遮断性層塗布液を、塗布し、乾燥して、酸素遮断性層を塗設する。
【0035】
酸素遮断性層塗布液は、感光性組成物層に、スピンコーター又はスリットコーターを用いて塗布する。感光性組成物層塗布液の塗布量としては、5cm/m〜20cm/mが好ましい。
【0036】
塗布された酸素遮断性層塗布液は、塗布後速やかに、本発明における遠赤外線を放射する赤外線ヒーターを用いて加熱することで、乾燥される。
【0037】
加熱は、塗布された酸素遮断性層塗布液(被加熱部)の全面に対して、赤外線ヒーターが有する遠赤外線を放射する放射部材から、遠赤外線を照射することにより行う。
【0038】
本工程における加熱条件は、酸素遮断性層の構成等を考慮して設定され、好ましい条件は以下通りである。
加熱温度としては、被加熱部の表面温度が、好ましくは60℃以上300℃以下となるように、より好ましくは80℃以上200℃以下となるように加熱する。この距離において、より短い乾燥速度が達成されると共に、被加熱部内における温度分布をより均一にできる。
赤外線ヒーターにおける遠赤外線を放射する放射部材の表面と、被加熱部の表面との距離は、その最短距離が、好ましくは2cm以上30cm以下の範囲であり、より好ましくは3cm以上20cm以下の範囲である。
加熱時間(乾燥時間)としては、10秒以上120秒分以下の範囲であることが好ましく、20秒以上100秒以下であることがより好ましい。
【0039】
以上のようにして、酸素遮断性層が塗設される。
乾燥後の酸素遮断性層の膜厚としては、0.2μm以上1.5μm以下であることが好ましい。
【0040】
本発明の製造方法は、上述したガラス洗浄工程及び塗布乾燥工程を有するが、必要に応じて他の工程を有してもよい。
また、塗布乾燥工程は、少なくとも、感光性組成物層塗布乾燥工程、及び酸素遮断性層塗布乾燥工程を有し、好ましくは更に密着性下塗り層塗布乾燥工程を有するが、必要に応じて、これら以外の他の層を塗設する工程を有してもよい。その場合、他の層を塗設するための塗布液の乾燥は、本発明における赤外線ヒーターを用いて行われることが好ましい。
【0041】
<<フォトマスクブランクス>>
以下、本発明の製造方法により製造されるフォトマスクブランクスの好適な態様について、これを構成する各構成要素を挙げて順次説明する。
【0042】
本発明の製造方法により製造されるフォトマスクブランクスの好適な態様の一つは、透明ガラス基材上に、密着性下塗り層と、遮光材料、重合開始剤、エチレン性不飽和化合物、及びバインダーポリマーを含有する感光性組成物層と、酸素遮断性層とを有してなるものであり、必要に応じて、更に他の層を有してもよい。
【0043】
(透明ガラス基材)
フォトマスクブランクスは、基材として透明ガラス基材が用いられる。ここで、「透明」とは、350〜750nmの波長領域に極大吸収を有さないことを意味する。
【0044】
−透明ガラス基板−
フォトマスクブランクスにおける透明ガラス基材としては、ガラス板(例えば、石英ガラス、ソーダガラス、無アルカリガラスなど)のごとき透明ガラス基板を適用することができる。透明ガラス基板の厚さは、フォトマスクブランクスによって適宜設定することができるが、0.1mm〜20mmの範囲であることが好ましく、より好ましくは1mm〜7mmの範囲であり、更に好ましくは1mm〜5mmの範囲である。
【0045】
(密着性下塗り層)
フォトマスクブランクスにおいては、透明ガラス基材上に密着性下塗り層を設けることが好ましい。密着性下塗り層が設けられるときは、感光性組成物層は密着性下塗り層の上に設けられる。密着性下塗り層は、フォトマスクを作製する際に、露光部においては透明ガラス基材と感光性組成物層との密着性を強化し、また、未露光部においては、感光性組成物層の透明ガラス基材からの剥離を生じやすくさせるため、現像性が向上する。
【0046】
密着性下塗り層は、感光性組成物層との密着性を上げるために、重合性化合物を有していることが好ましい。重合性化合物としては、特にエチレン性不飽和結合を有する化合物が好ましく、具体的には後述する「エチレン性不飽和化合物(エチレン性不飽和結合を有する化合物)」に記載の化合物が好ましく用いられる。エチレン性不飽和基としては、(メタ)アクリロイル基、スチリル基、アリルエーテル基が好ましく用いられる。
また、密着性下塗り層は、透明ガラス基材との密着性を向上させるために、シリル基を有する化合物を含むことが好ましい。シリル基を有する化合物としては、特に、前記エチレン性不飽和化合物とシリル基を有する化合物が好ましく用いられる。
【0047】
密着性下塗り層に含まれる化合物としては、具体的には、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、3−シアノプロピルトリエトキシシラン、[2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル]トリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、ビニルメトキシシラン、3−(N,N−ジエチルアミノ)プロピルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、p−スチリルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシランを好適な化合物として挙げることができる。
【0048】
密着性下塗り層の塗設量は、乾燥質量として、2mg/m〜200mg/mが好ましく、5mg/m〜100mg/mがさらに好ましい。
【0049】
(感光性組成物層)
フォトマスクブランクスが有する感光性組成物層は、少なくとも、遮光材料、重合開始剤、エチレン性不飽和化合物、及びバインダーポリマーを含有してなり、近紫外光ないし可視光による画像様の露光後、現像液を用いて現像処理することにより、遮光層を可能な層である。
【0050】
感光性組成物層は、環境問題上アルカリ現像型が好ましく、本発明においては、露光部分が硬化してアルカリ現像液に不溶化するネガ型の層を用いている。
【0051】
<遮光材料>
感光性組成物層は遮光材料を含有する。
遮光材料とは、250nm〜400nmの光を吸収し、好ましくは塗膜形成時のオプティカルデンシティー(O.D.)が2.5以上になる光吸収剤を指す。
本発明における遮光材料とは、フォトマスクが適用される活性光線の波長の光を反射、吸収することにより透過させない機能を有する材料であり、具体的には、マスクとして使用する際の露光光源(水銀灯、メタルハライド灯キセノン灯等)が発する波長域200〜450nm、好ましくは250〜400nm程度、の光を実質遮光できるものであり、塗膜形成時のオプティカルデンシティー(O.D.)が2.5以上であることを要し、好ましくは、3.0以上であるものを指す。
【0052】
本発明における遮光材料は、フォトマスクブランクスにより作製されたフォトマスクの使用目的等に応じて適宜選択すればよい。
遮光材料として具体的には、特開2001−343734号公報の段落番号〔0015〕〜〔0016〕、特開2003−107697号公報の段落番号〔0035〕〜〔0036〕、特開2003−186176号公報の段落番号〔0041〕〜〔0043〕、特開2004−302012号公報の段落番号〔0038〕〜〔0040〕に記載の金属粒子(金属化合物粒子、複合粒子、コア・シェル粒子などを含む)、顔料その他の粒子、フラーレンなどが好適に用いられる。
【0053】
顔料は一般に有機顔料と無機顔料とに大別されるが、有機顔料が好ましい。好適に使用される顔料の例としては、アゾ系顔料、フタロシアニン系顔料、アントラキノン系顔料、ジオキサジン系顔料、キナクリドン系顔料、イソインドリノン系顔料、ニトロ系顔料を挙げることができる。そのような有機顔料の色相は、例えば、黄色顔料、オレンジ顔料、赤色顔料、バイオレット顔料、青色顔料、緑色顔料、ブラウン顔料、黒色顔料等が挙げられる。
また、「顔料便覧、日本顔料技術協会編、誠文堂新光社、1989」、「COLOUR
INDEX、THE SOCIETY OF DYES & COLOURIST、THIRD EDITION、1987」に記載の顔料を参照して、適宜用いることもできる。
【0054】
本発明に用いうる遮光材料としては、黒色材料であることが好ましく、該黒色材料としては、黒色顔料及び金属微粒子の少なくとも1種であることが好ましい。
【0055】
本発明における遮光材料として特に好ましくは、カーボンブラックである。
遮光材料としてカーボンブラックを用いる場合、感光性組成物層は、カーボンブラックのみを含有してもよいし、カーボンブラックと、他の色材(例えば、他の着色剤)を併用してもよい。カーボンブラックと他の色材を併用する場合には、感光性組成物層に含有される全着色剤中50質量%以上がカーボンブラックであると、感光性組成物層の色濃度を高濃度にする点で好ましい。
【0056】
顔料を遮光材料として用いる場合、100nm以下の平均粒径を有する顔料が好ましく、1nm以上60nm以下のものがより好ましい。なお、顔料は、感光性組成物層の形成に用いる感光性組成物中において、分散剤により分散されていることが好ましい。
【0057】
感光性組成物層固形分中の遮光材料の含有量は、フォトマスクブランクスにより作製されるフォトマスクの濃度や、膜厚、フォトマスクを作製する際の感度、解像性等を考慮して決められ、その種類によっても異なるが、10質量%〜50質量%が好ましく、より好ましくは15質量%〜35質量%である。
【0058】
<重合開始剤>
本発明における重合開始剤としては、特許、文献等で公知である種々の光重合開始剤、あるいは2種以上の光重合開始剤の併用系(光重合開始系)を適宜選択して使用することができる。本発明においては、単独で用いる光重合開始剤、2種以上の光重合開始剤を併用した系を総括して単に光重合開始剤という。
【0059】
本発明における重合開始剤には特に制限はなく、露光波長に応じて適宜選択され、例えば400nm付近の光を光源として用いる場合には、光重合開始剤として、ベンジル、ベンゾイルエーテル、ミヒラーズケトン、アントラキノン、チオキサントン、アクリジン、フェナジン、ベンゾフェノン、ヘキサアリールビスイミダゾール化合物等の公知の光重合開始剤から広く選択して使用される。
【0060】
なかでも、重合開始剤としては、後述する増感色素との共存下で光照射されたときに、増感色素の光励起エネルギーを受け取って活性ラジカルを発生し、(C)エチレン性不飽和化合物を重合に到らしめるラジカル発生剤である、ヘキサアリールビイミダゾール系化合物、チタノセン系化合物、メタロセン化合物、トリアジン化合物、オキシムエステル化合物、ハロゲン化炭化水素誘導体、ジアリールヨードニウム塩、有機硼素酸塩、及び有機過酸化物等が好ましく挙げられ、さらに、露光感度、基板に対する感光性組成物層の密着性、及び保存安定性等の面から、ヘキサアリールビイミダゾール系化合物、メタロセン化合物、トリアジン化合物、オキシムエステル化合物、及び有機硼素酸塩が好ましく、ヘキサアリールビイミダゾール系化合物が特に好ましい。
【0061】
本発明における好ましい光重合開始剤であるヘキサアリールビイミダゾール化合物について説明する。
ヘキサアリールビイミダゾール化合物としては、欧州特許第24629号、欧州特許第107792号、米国特許第4410621号、欧州特許第215453号及びドイツ特許公開3211312号等の各明細書に記載の種々の化合物を使用することが可能である。好ましいものとしては、例えば、2,4,5,2’,4’,5’−ヘキサフェニルビスイミダゾール、2,2’−ビス(2−クロロフェニル)−4,5,4’,5’−テトラフェニルビスイミダゾール、2,2’−ビス(2−ブロモフェニル)−4,5,4’,5’−テトラフェニルビスイミダゾール、2,2’−ビス(2,4−ジクロロフェニル)−4,5,4’,5’−テトラフェニルビスイミダゾール、2,2’−ビス(2−クロロフェニル)−4,5,4’,5’−テトラキス(3−メトキシフェニル)−ビスイミダゾール、2,5,2’,5’−テトラキス(2−クロロフェニル)−4,4’−ビス(3,4−ジメトキシフェニル)ビスイミダゾール、2,2’−ビス(2,6−ジクロロフェニル)−4,5,4’,5’−テトラフェニルビスイミダゾール、2,2’−ビス(2−ニトロフェニル)−4,5,4’,5’−テトラフェニルビスイミダゾール、2,2’−ジ−o−トリル−4,5,4’,5’−テトラフェニルビスイミダゾール、2,2’−ビス(2−エトキシフェニル)−4,5,4’,5’−テトラフェニルビスイミダゾール、及び2,2’−ビス(2,6−ジフルオロフェニル)−4,5,4’,5’−テトラフェニルビスイミダゾール等を挙げることができる。
ヘキサアリールビイミダゾール化合物は2種以上併用してもよい。
【0062】
光重合開始剤としてヘキサアリールビイミダゾール化合物を用いる場合、該ヘキサアリールビスイミダゾール化合物の使用量は、後述するエチレン性不飽和化合物の総量100質量部に対し、0.05〜50質量部が好ましく、より好ましくは0.2〜30質量部である。ヘキサアリールビイミダゾール化合物とともに、他の光重合開始剤を併用してもよい。
【0063】
光重合開始剤は、必要に応じ、2−メルカプトベンズチアゾール、2−メルカプトベンズイミダゾール、2−メルカプトベンズオキサゾール等のチオール化合物、N−フェニルグリシン、N,N−ジアルキルアミノ芳香族アルキルエステル等のアミン化合物等の水素供与性化合物と併用することにより更に光開始能力が高められることが知られている。
特に、光開始能力が高く本発明に好適な水素供与性化合物としては、メルカプト基含有化合物が上げられる。
【0064】
<増感色素>
感光性組成物層は、増感色素を含有することが好ましい。増感色素とは、吸収した光のエネルギーを光重合開始剤へとエネルギー移動又は電子移動により伝達することが可能な色素を言う。本発明に用いる増感色素は、この機能を有する増感色素であれば特に吸収波長は限定されず、露光に用いるレーザーの波長により適宜選択される。本発明では、特に、360nmから450nmの波長域に吸収極大を持つ増感色素が好ましく用いられる。
【0065】
本発明に用いることができる増感色素としては、特に制限はなく、公知の増感色素を用いることができる。例えば、ローズベンガル、エオシン、エリスロシン、メロシアニン系化合物、ケトクマリン系化合物、ローダニン環を有する色素、等が挙げられる。
【0066】
また、本発明における増感色素としては、下記一般式(I)で表される増感色素(以下、適宜「特定増感色素」と称する。)が好ましい。
【0067】
【化1】

【0068】
一般式(I)中、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子又は一価の非金属原子団を表す。Xは−N(R)を表す。R、R、R、R、及びRはそれぞれ独立に水素原子又は一価の非金属原子団を表し、Rは、R、R、R、又はRと脂肪族性又は芳香族性の環を形成するために結合することができる。Zは隣接する原子と共同して、酸性核を形成するのに必要な2価の非金属原子団を表す。
【0069】
特定増感色素の特徴の1つは、350nmから450nm波長領域に特に優れた吸収特性を有することにある。更に、特定増感色素は、感光性組成物層中に含有される種々の開始剤化合物の分解を効率良く引き起こし、非常に高い感光性を示す。
【0070】
一般式(I)中、Zは、酸性核を形成するのに必要な2価の非金属原子団を表し、好ましくはヘテロ原子を含む5員又は6員環構造を表す。
【0071】
ここで「酸性核」とは、ジェイムス(James)編「ザ・セオリー・オブ・ザ・フォトグラフィック・プロセス」(The Theory of the Photographic Process)第4版、マクミラン出版社、1977年、198頁により定義されるものである。
【0072】
一般式(I)における酸性核の具体例としては、特開2007−47742号公報の段落番号〔0233〕〜〔0234〕及び段落番号〔0251〕〜〔0256〕、特開2007−86165号公報の段落番号〔0098〕〜〔0099〕及び段落番号〔0111〕〜〔0121〕に記載の酸性核が挙げられる。
これらの酸性核は更に置換基を有してもよい。酸性核に導入しうる好ましい置換基としては、アルケニル基、芳香族基、芳香族複素環残基等の不飽和結合を有する置換基が挙げられる。
【0073】
一般式(I)における好ましい酸性核としては、2−チオ−2,4−オキサゾリジンジオン核、1,3−オキサゾリジン2,4−ジオン核、2−イミノ−2,4−オキサゾリジンジオン核が挙げられ、更に好ましくは、1,3−オキサゾリジン−2,4−ジオン核、2−イミノ−2,4−オキサゾリジンジオン核である。
【0074】
一般式(I)中、R、R、R、R、R、R、又はRで表される一価の非金属原子団としては、置換若しくは非置換のアルキル基、置換若しくは非置換のアリール基、及び置換若しくは無置換のアルコキシ基が好ましい。具体的には、特開2006−259558号公報の段落番号〔0036〕〜〔0041〕、特開2007−47742号公報の段落番号〔0235〕〜〔0243〕、特開2007−86165号公報の段落番号〔0100〕〜〔0108〕に記載の各種の一価の非金属原子団(一価の置換基)が挙げられる。
【0075】
、R、R、R及びRで表される一価の非金属原子団のより好ましい例としては、置換若しくは無置換のアルキル基、及び置換若しくは無置換のアルコキシ基が挙げられる。R及びRの更に好ましい例としては、置換基を有してもよい炭素数1〜15のアルキル基又は置換基を有してもよい炭素数1〜15のアルコキシ基が挙げられ、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、メトキシ基、エトキシ基が挙げられる。R及びRの両方が、置換若しくは無置換のアルキル基、又は置換若しくは無置換のアルコキシ基である場合が、特に好ましい。
及びRで表される一価の非金属原子団のより好ましい例は、置換若しくは無置換のアルキル基であること、即ち、一般式(I)におけるXがジアルキルアミノ基であることである。R及びRのさらに好ましい例としては、置換基を有してもよい炭素数2〜15のアルキル基であり、具体的にはエチル基、ブチル基が挙げられる。
【0076】
また、Rのより好ましい例としては、置換基を有してもよい炭素数1〜15のアルキル基、及び炭素数1〜15のアルコキシ基が挙げられる。
【0077】
特定増感色素の内でも、下記一般式(II)で表される構造を有する増感色素は、高い増感能を有する上、保存安定性にも非常に優れた感光性組成物を与えるため、特に好ましい。
【0078】
【化2】

【0079】
一般式(II)中、X及びYは、それぞれ独立に、酸素原子、硫黄原子、又はNR21を表し、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子又は一価の非金属原子団を表す。Xは−N(R)を表す。R、R〜Rは、それぞれ独立に、水素原子又は一価の非金属原子団を表し、Rは、R、R、R又はRと脂肪族性又は芳香族性の環を形成するために結合することができる。
ここで、一般式(II)中、R〜Rで表される一価の非金属原子団は、前記一般式(I)における一価の非金属原子団と同義であり、また、好ましい範囲も同様である。Rで表される一価の非金属原子団は、特に、水素原子、又は炭素数1〜10の炭化水素基が好ましい。
更に、一般式(II)において、Xとしては酸素原子が好ましい。また、YとしてはNR21が好ましく、R21は水素原子又は1価の非金属原子団を表し、特に、水素原子、又は炭素数1〜10の炭化水素基が好ましい。
【0080】
増感色素は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0081】
特定増感色素の具体例としては、特開2006−259558号公報の段落番号〔0047〕,〔0212〕の化合物(H−4)、特開2007−47742号公報の段落番号〔0258〕〜〔0265〕、特開2007−86165号公報の段落番号〔0123〕〜〔0130〕、〔0291〕に記載の化合物(D−1)〜(D−3)が挙げられる。
【0082】
増感色素の添加量は、感光性組成物層を構成する全固形成分100質量部に対し、0.05質量部〜30質量部が好ましく、より好ましくは0.1質量部〜20質量部、更に好ましくは0.2質量部〜10質量部の範囲である。
【0083】
<エチレン性不飽和化合物(エチレン性不飽和結合を有する化合物)>
感光性組成物層は、エチレン性不飽和化合物を含有する。
エチレン性不飽和化合物とは、エチレン性不飽和結合を分子内に少なくとも一つ有する化合物であり、感光性組成物層が活性光線の照射を受けた時、光重合開始剤の作用により付加重合し、架橋、硬化に寄与する。
【0084】
エチレン性不飽和化合物は、例えば、末端エチレン性不飽和結合を少なくとも1個、好ましくは2個以上、より好ましくは2〜6個有する化合物の中から任意に選択することができる。モノマー、プレポリマー、すなわち2量体、3量体及びオリゴマー、又はそれらの混合物ならびにそれらの共重合体などの化学的形態をもつものである。
【0085】
エチレン性不飽和化合物の例としては、不飽和カルボン酸(例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸など)や、そのエステル類、アミド類が挙げられ、好ましくは、不飽和カルボン酸とアルコール化合物とのエステル、不飽和カルボン酸とアミン化合物とのアミド類が用いられ、具体的には、特開2001−343734号公報の段落番号〔0012〕、特開2003−107697号公報の段落番号〔0020〕〜〔0025〕、特開2003−186176号公報の段落番号〔0029〕〜〔0038〕、特開2006−259558号公報の段落番号〔0126〕〜〔0140〕、特開2007−47742号公報の段落番号〔0173〕〜〔0187〕、特開2007−86165号公報の段落番号〔0140〕〜〔0149〕に記載の化合物が使用される。
【0086】
また、特開昭51−37193号、特公平2−32293号の各公報に記載されているようなウレタンアクリレート類、特開昭48−64183号、特公昭49−43191号、特公昭52−30490号各公報に記載されているようなポリエステルアクリレート類、エポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸を反応させたエポキシアクリレート類等の多官能のアクリレートやメタクリレートを挙げることができる。さらに日本接着協会誌Vo1.20,No.7,300〜308頁(1984年)に光硬化性モノマー及びオリゴマーとして紹介されているものも使用することができる。
【0087】
本発明において好ましく用いられるエチレン性不飽和化合物としては、イソシアネート基を複数有する化合物と水酸基を有するアクリレートまたはメタクリレートとの付加反応によって得られるウレタン結合を複数有する重合性化合物が好ましく用いられ、例えば、特公昭56−17654号公報に記載されている。
【0088】
なお、これらエチレン性不飽和化合物の含有量は、感光性組成物層の全質量に対し、5〜80質量%が好ましく、より好ましくは30〜70質量%の範囲である。
【0089】
<バインダーポリマー>
感光性組成物層は、バインダーポリマーを含有する。
バインダーポリマーとしては、皮膜形成に寄与する高分子化合物であれば特に限定されず利用することができるが、現像性の観点から、アルカリ可溶性であることが好ましい。そのようなバインダーポリマーとしては、側鎖にアルカリ可溶性基を有する高分子化合物が好ましい。アルカリ可溶性基としては、酸基又はその塩が挙げられる。バインダーポリマーとしては、特に、カルボン酸基を有する高分子化合物が好ましく用いられる。
【0090】
バインダーポリマーの骨格としては、アクリル樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂、メタクリル樹脂、スチレン系樹脂、ポリエステル樹脂から選ばれる高分子骨格が好ましく、これらの中でも、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、スチレン系樹脂等のビニル共重合体、ポリウレタン樹脂が特に好ましい。具体的には、特開2001−343734号公報の段落番号〔0011〕、特開2003−107697号公報の段落番号〔0017〕〜〔0019〕、特開2003−186176号公報の段落番号〔0022〕〜〔0027〕、特開2006−259558号公報の段落番号〔0143〕〜〔0147〕、特開2007−86165号公報の段落番号〔0152〕〜〔0154〕等に記載のバインダーポリマーが好ましく用いられる。
【0091】
上記の中でも、感光性組成物層が含有するバインダーポリマーとしては、側鎖に架橋性基を有するポリウレタン樹脂、及び、側鎖に架橋性基を有する(メタ)アクリル樹脂がより好ましい。
【0092】
本発明で特に好ましく用いられる側鎖に架橋性基を有するポリウレタン樹脂は、例えば、(i)ジイソシアネート化合物、(ii)少なくとも1つのカルボキシル基を有するジオール化合物、(iii)架橋性基を有するジイソシアネート化合物及び必要であれば(iv)カルボキシル基を有さないジオール化合物、を重付加反応させることにより得ることができる。これらの具体例は、特開2007−57597号公報の段落番号〔0050〕〜〔0137〕に挙げられ、本発明において好ましく用いられる。
【0093】
バインダーポリマーとしては、ポリウレタン合成時に側鎖に架橋性基を導入して得られる上記のポリウレタン樹脂のほかに、特開2003−270775号公報に記載されるようなカルボキシル基を有するポリウレタンに高分子反応で架橋性基を導入して得られるポリウレタン樹脂を用いることもできる。
本発明において、特公平7−12004号、特公平7−120041号、特公平7−120042号、特公平8−12424号、特開昭63−287944号、特開昭63−287947号、特開平1−271741号、特開2001−109139号、特開2001−117217号、特開2001−312062号、特開2003−131397号の各公報に記載のポリウレタン樹脂が好ましく用いられる。
【0094】
本発明に用いることができるバインダーポリマーとして好適な材料の一例は、(a)カルボン酸(その塩を含む)を含有する繰り返し単位(以下、適宜、繰り返し単位(a)と称する。)、及び(b)ラジカル架橋性を付与する繰り返し単位(以下、適宜、繰り返し単位(b)と称する。)を有する共重合体である。
【0095】
(a)カルボン酸を含有する繰り返し単位(繰り返し単位(a))としては特に限定されないが、下記一般式(i)で表される繰り返し単位が好ましく用いられる。
【0096】
【化3】

【0097】
一般式(i)中、R1は水素原子又はメチル基を表し、R2は単結合又は、炭素原子、水素原子、酸素原子、窒素原子、及び硫黄原子よりなる群から選択される2以上の原子を含んで構成され、その原子数が2〜82である連結基を表す。Aは酸素原子又は−NR3−を表し、R3は水素原子又は炭素数1〜10の1価の炭化水素基を表す。nは1〜5の整数を表す。
【0098】
一般式(i)においてR2で表される連結基は、炭素原子、水素原子、酸素原子、窒素原子、及び硫黄原子からなる群より選択される2以上の原子を含んで構成され、その総原子数は、2〜82であることが好ましく、2〜50であることがより好ましく、2〜30であることがさらに好ましい。R2で表される連結基は置換基を有していてもよい。ここで示す
総原子数とは、当該連結基が置換基を有する場合には、その置換基を含めた原子数を指す。より具体的には、R2で表される連結基の主骨格を構成する原子数が、1〜30である
ことが好ましく、3〜25であることがより好ましく、4〜20であることがさらに好ましく、5〜10であることが最も好ましい。
なお、本発明における「連結基の主骨格」とは、一般式(i)におけるAと末端COOHとを連結するためのみに使用される原子又は原子団を指し、特に、連結経路が複数ある場合には、使用される原子数が最も少ない経路を構成する原子又は原子団を指す。したがって、連結基内に環構造を有する場合、その連結部位(例えば、o−、m−、p−など)により算入されるべき原子数が異なる。
【0099】
一般式(i)においてR2で表される連結基として、より具体的には、アルキレン、置換アルキレン、アリーレン、置換アリーレン、あるいはこれらの基を構成する任意の炭素原子上の水素原子を除き(n+1)価の基としたものなどが挙げられ、これらの基がアミド結合やエステル結合で複数連結された構造を有するものが好ましい。特に、連結基の主骨格を構成する原子数が5〜10のものが好ましく、構造的には、鎖状構造であって、その構造中にエステル結合を有するものや、前記の如き環状構造を有するものが好ましい。
2で表される連結基に導入可能な置換基としては、水素を除く1価の非金属原子団を
挙げることができ、ハロゲン原子(−F、−Br、−Cl、−I)、炭化水素基(アルキル基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基)、アルコキシ基、アリーロキシ基が挙げられる。
一般式(i)におけるAは、合成が容易であることから、酸素原子又は−NH−であることが好ましい。
【0100】
共重合体における繰り返し単位(a)の含有量は、総繰り返し単位数を100とした場合、そのうちの5〜50、好ましくは5〜25、より好ましくは5〜15である。
【0101】
(b)ラジカル架橋性を付与する繰り返し単位(繰り返し単位(b))は、特に限定されないが、ラジカル架橋性基としてエチレン性不飽和基が好ましく用いられる。
【0102】
ラジカル架橋性基は、具体的には、置換基を有してもよいアルケニル基(例えば、ビニル基、アリル基、イソプロペニル基など)、アクリロイル基、メタクリロイル基、スチリル基、アルキニル基(エチニル基、プロパギル基など)、プロピオロイル基などが挙げられる。
【0103】
共重合体における繰り返し単位(b)の含有量は、総繰り返し単位数を100とした場合、そのうちの5〜90、好ましくは20〜85、より好ましくは40〜80である。
【0104】
また、本発明におけるバインダーポリマーは、特に限定されないが、下記一般式(1)で表される繰り返し単位(以下、適宜、「繰り返し単位(1)」と称する。)を有してもよい。
【0105】
【化4】

【0106】
一般式(1)中、Xは、酸素原子、硫黄原子、又は−NH−基を表し、Yは、水素原子、炭素数1から12のアルキル基、炭素数5から12の脂環式アルキル基、炭素数6から20の芳香環を有する基を表す。Zは、酸素原子、硫黄原子、又は−NH−基を表し、R1は、炭素数1から18のアルキル基、炭素数5から20の脂環構造を有するアルキル基
又は炭素数6から20の芳香環を有する基を表す。
【0107】
繰り返し単位(1)の含有量は、総繰り返し単位数を100とした場合、そのうちの1〜40、好ましくは3〜25、より好ましくは、5〜15である。
【0108】
一般式(1)の他にも、繰り返し単位として、側鎖に、エステル基、アミド基を有するアクリル樹脂、メタクリル樹脂、又はウレタン樹脂が好ましく用いられる。
【0109】
一般式(1)の含有量は、総繰り返し単位数を100とした場合、そのうちの1〜40、好ましくは3〜25、より好ましくは、5〜15である。
【0110】
前掲したバインダーポリマーの中でも、本発明においては、分子構造中にエチレン性不飽和結合を有するバインダーポリマーが、特に好適に用いられる。
【0111】
感光性組成物層の現像性を維持する観点からは、バインダーポリマー分子量としては、重量平均分子量で、5000〜300000の範囲であることが好ましく、より好ましい範囲は20000〜150000である。
【0112】
バインダーポリマーは、感光性組成物層中に任意の量で含有させることができるが、画像強度等の観点からは、感光性組成物層の全固形分中、好ましくは10〜90質量%、より好ましくは30〜80質量%である。
【0113】
<その他の成分>
本発明における感光性組成物層には、前記した各必須成分及び任意成分に加えて、目的に応じて種々の化合物を併用することができる。例えば、特開平9−25360号公報に記載のUV吸収剤や特開2004−302012号公報の段落番号〔0047〕に記載の熱重合禁止剤を添加することができる。さらに、感光性組成物層には、必要に応じて公知の添加剤、例えば可塑剤、界面活性剤等を添加することができる。
【0114】
(酸素遮断性層)
フォトマスクブランクスが有する酸素遮断性層は、感光性組成物層上に、酸素の透過性を適切に制御するために設けられる層である。
【0115】
酸素遮断性層は、25℃、1気圧下における酸素透過率が、1.0ml/m・day・atm以上2000ml/m・day・atm以下であることが好ましく、2.0ml/m・day・atm以上1500ml/m・day・atm以下がより好ましく、5.0ml/m・day・atm以上1000ml/m・day・atm以下がさらに好ましく、10ml/m・day・atm以上800ml/m・day・atm以下が最も好ましい。
【0116】
酸素遮断性層が有する酸素透過性が、上記範囲内であることで、フォトマスクブランクスの製造時及び生保存時に、不要な重合反応が生じることがなく、また、フォトマクスを作製する際の画像露光時に、不要なカブリ、画線の太りが生ずるという問題もない。したがって、かかる特徴を有する本発明のフォトマスクブランクスにより、高い解像性と良好な画像エッジ部の直線性とを有するフォトマスクを得ることができる。
このような特性を有する酸素遮断性層については、以前より種々検討がなされており、例えば、米国特許第3,458,311号明細書及び特公昭55−49729号公報に保護層として詳細に記載されている。
【0117】
本明細書において、酸素遮断性層が有する酸素透過性は、以下の測定方法(モコン法)により測定した酸素透過率である。
−酸素透過性の測定方法−
酸素透過性の高いポリエチレンフィルム(富士フイルム(株)製「エバービュティーペーパー」の表面ゼラチン層を溶解除去することで作製したポリエチレンラミネート紙)に、感光性組成物層上に形成する酸素遮断性層と同様の組成の塗膜を塗布乾燥し、測定用のサンプルを作製する。JIS−K7126B及びASTM−D3985に記載の気体透過度試験方法に則り、モコン社製OX−TRAN2/21を用い、25℃60%RHの環境下で酸素透過率(ml/m・day・atm)を測定する。
【0118】
酸素遮断性層が有する酸素透過性の制御は、例えば、酸素遮断性層が含有する各成分の種類及び含有量の調整(具体的には、例えば、ポリビニルアルコールのケン化度の調整、可塑剤を添加、等)、酸素遮断性層の膜厚の調整、好ましい酸素透過性を示す樹脂の採用等の各手段、或いは、これらの各手段を適宜組み合わせることにより実施することができる。
【0119】
<水溶性高分子化合物>
酸素遮断性層は、酸素遮断性及び現像性の観点から、水溶性高分子化合物を含有することが好ましい。
【0120】
水溶性高分子としては、比較的結晶性に優れた化合物を用いることが好ましく、具体的には、例えば、ポリビニルアルコール、ビニルアルコール/フタル酸ビニル共重合体、酢酸ビニル/ビニルアルコール/フタル酸ビニル共重合体、酢酸ビニル/クロトン酸共重合体、ポリビニルピロリドン、ポリアルキレングリコール(ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなど)、酸性セルロース類、ゼラチン、アラビアゴム、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミドポリエステル、ポリウレタンなどのような水溶性ポリマーが挙げられ、これらは単独又は混合して使用できる。これらのうち、ポリビニルアルコールを主成分として用いることが、酸素遮断性、現像除去性といった基本特性的にもっとも良好な結果を与える。
【0121】
酸素遮断性層に使用するポリビニルアルコールは、必要な酸素遮断性と水溶性を有するための、未置換ビニルアルコール単位を含有する限り、一部がエステル、エーテル、及びアセタールで置換されていてもよい。また、酸変性ポリビニルアルコールなど、ポリビニルアルコール誘導体を用いてもよい。
また、同様に、ビニルアルコール単位以外の重合単位を有する共重合体であってもよく、そのような共重合体としては、例えば、ビニルアルコール/ビニルピロリドン共重合体等が挙げられる。
【0122】
25℃、1気圧下において、50ml/m・day・atm以上2000ml/m・day・atm以下の酸素透過性を有する酸素遮断層を形成するにために好適に用いられる水溶性高分子化合物としては、ポリビニルアルコール、ポリビニルコール誘導体(ビニルアルコール/フタル酸ビニル共重合体等)、ポリエチレングリコール誘導体(ポリエチレングリコール、エチレングリコール/プロピレングリコール共重合体等)、ポリアクリル酸誘導体(ポリアクリル酸、及びそのナトリウム塩)、ポリビニルピロリドン化合物等が挙げられる。ポリビニルアルコールのとしては、具体的には、(株)クラレ製のPVA−105、PVA−110、PVA−117、PVA−117H、PVA−120、PVA−124、PVA−124H、PVA−CS、PVA−CST、PVA−HC、PVA−203、PVA−204、PVA−205、PVA−210、PVA−217、PVA−220、PVA−224、PVA−217EE、PVA−217E、PVA−220E、PVA−224E、PVA−405、PVA−420、PVA−613、L−8、KL−506、KL−318、KL−118、KM−618、KM−118、C−506、R−2105、R−1130、R−2130、M−205、MP−203、LM15,LM20、LM25等が挙げられる。ポリエチレングリコール誘導体としては、分子量5000〜100000のポリエチレングリコールが挙げられる。エチレングリコール/プロピレングリコール共重合体であれば、その重合比が90:10〜70:30、かつ、分子量2000〜20000の共重合体が好ましく、具体的には、ADEKA(株)製のプルロニックL44、プルロニックL62、プルロニックL64、プルロニックF68、プルロニックP84、プルロニックF9が挙げられる。ポリアクリル酸誘導体としては、(株)東亞合成製のアロンA−93、アロンA−1015、アロンA−1017等が挙げられる。
【0123】
また、水溶性高分子化合物としては、未置換のビニルアルコールに由来する繰り返し単位と、側鎖にポリオキシアルキレン基を有する繰り返し単位と、を含む共重合体も好ましく用いられる。この共重合体に含まれるポリオキシアルキレン基は、ポリオキシエチレン基、ポリオキシプロピレン基、及びオキシエチレン−オキシプロピレン混合基よりなる群から選択される1種以上の基であることが好ましい。
なお、オキシエチレン−オキシプロピレン混合基とは、オキシエチレン基及びオキシプロピレン基の1つ以上が組み合わさってなる基であればよく、ポリオキシエチレン基とポリオキシプロピレン基との混合基、ポリオキシエチレン基とオキシプロピレン基との混合基、オキシエチレン基とポリオキシプロピレン基との混合基、オキシエチレン基とオキシプロピレン基との混合基などがある。
【0124】
酸素遮断性層における水溶性高分子化合物の含有量は、酸素遮断性層の全固形分中、好ましくは20〜95質量%、より好ましくは30〜90質量%である。
【0125】
<界面活性剤>
酸素遮断性層には、界面活性剤を添加することができる。
界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンヒマシ油エーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル類、ポリオキシエチレンステアレート等のポリオキシエチレンアルキルエステル類、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンジステアレート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタンセスキオレエート、ソルビタントリオレエート等のソルビタンアルキルエステル類、グリセロールモノステアレート、グリセロールモノオレート等のモノグリセリドアルキルエステル類等のノニオン界面活性剤;ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等のアルキルベンゼンスルホン酸塩類、ブチルナフタレンスルホン酸ナトリウム、ペンチルナフタレンスルホン酸ナトリウム、ヘキシルナフタレンスルホン酸ナトリウム、オクチルナフタレンスルホン酸ナトリウム等のアルキルナフタレンスルホン酸塩類、ラウリル硫酸ナトリウム等のアルキル硫酸塩類、ドデシルスルホン酸ソーダ等のアルキルスルホン酸塩類、ジラウリルスルホコハク酸ナトリウム等のスルホコハク酸エステル塩類等のアニオン界面活性剤;ラウリルベタイン、ステアリルベタイン等のアルキルベタイン類、アミノ酸類等の両性界面活性剤が使用可能である。
【0126】
また、酸素遮断性層における界面活性剤の含有量としては、酸素遮断性層の全固形分中、0.1質量%〜10質量%であることが好ましい。
【0127】
なお、酸素遮断層の具体的な態様としては、上述した事項の他、特開2006−259558号公報の段落番号〔0177〕〜〔0182〕、特開2007−47742号公報の段落番号〔0346〕〜〔0348〕、特開2007−86165号公報の段落番号〔0253〕〜〔0257〕、特開2008−139813号公報の段落番号〔0211〕〜〔0259〕に記載の保護層に関する事項も好適に適用することができる。
【0128】
上記にて詳述した構成を有するフォトマスクブランクスの製造に、本発明のフォトマスクブランクスの製造方法を適用することで、その効果が著しいといえる。
なお、本発明の製造方法を適用しうるフォトマスクブランクスは、上記にて詳述したものに限定されず、感光性組成物層、及び酸素遮断性層を有する構成のものであれば、いずれにのフォトマスクブランクスの製造に適用しても、本発明の優れた効果を奏しうるのはいうまでもない。
【0129】
<<フォトマスク及びその製造方法>>
本発明の製造方法により得られたフォトマスクブランクスを用い、フォトマスクブランクスが有する感光性組成物層を、画像様に露光した後、現像することで形成した遮光層を有することを特徴とする。
具体的には、本発明の製造方法により得られたフォトマスクブランクスを、近紫外光ないし可視光で画像様露光した後(露光工程)、露光後のフォトマスクブランクスを、現像液を用いて現像することにより感光性組成物層の未露光部を除去する(現像工程)により、画像様の遮光層(露光部)を有するフォトマスクを得ることができる。
【0130】
本発明のフォトマスクブランクスを用いて作製されるフォトマスク(本発明のフォトマスク)としては、該フォトマスクブランクスを、350nm以上450nm以下の光を放射するレーザー(より好ましくは、390nm以上450nm以下の光を放射するレーザー)を用いて画像様露光した後、現像することにより作製されたものが好適な態様である。
以下、本発明のフォトマスクを製造するための各工程について説明する。
【0131】
〔露光工程〕
露光工程は、フォトマスクブランクスを、線画像、網点画像、等を有する透明原画を通して画像様に露光するか、デジタルデータによるレーザー光走査等で画像様に露光することにより行うことが好ましい。
本発明のフォトマスクブランクスの画像形成には、レーザーによる露光が好適に用いられる。
【0132】
露光光源としては、350nm以上450nm以下の範囲の光を放射するレーザーが好ましい。例えば、以下のものが挙げられる。
ガスレーザーとしては、Arイオンレーザー(364nm、351nm)、Krイオンレーザー(356nm、351nm)、He−Cdレーザー(441nm、325nm)などが挙げられ、固体レーザーとしては、Nd:YAG(YVO)とSHG結晶×2回の組み合わせ(355nm)、Cr:LiSAFとSHG結晶の組み合わせ(430nm)などが挙げられ、半導体レーザー系では、KNbOリング共振器(430nm)、導波型波長変換素子とAlGaAs、InGaAs半導体の組み合わせ(380nm〜450nm)、導波型波長変換素子とAlGaInP、AlGaAs半導体の組み合わせ(300nm〜350nm)、AlGaInN(350nm〜450nm)などが挙げられ、その他のレーザーとして、Nレーザー(337nm)、XeF(351nm)などが挙げられる。
【0133】
これらの中でも、特に、AlGaInN半導体レーザー(InGaN系半導体レーザー400nm〜410nm)が、波長特性、コストの面で好適である。
【0134】
〔現像工程〕
現像工程は、前記露光工程における未露光領域、即ち、透明ガラス基材上に存在する未硬化の密着性下塗り層及び感光性組成物層、酸素遮断性層等を、現像液を用いて除去して、透明ガラス基材上に画像様の遮光層を形成する工程である。
【0135】
現像液としては、特に制限はなく、公知の現像液などが例示できるが、特公昭57−7427号公報に記載されているような現像液が挙げられ、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、第三リン酸ナトリウム、第二リン酸ナトリウム、第三リン酸アンモニウム、第二リン酸アンモニウム、メタケイ酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸リチウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素リチウム、アンモニア水などのような無機アルカリ剤やモノエタノールアミン又はジエタノールアミンなどのような有機アルカリ剤の水溶液が適当である。このようなアルカリ剤は、単独でも、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
このようなアルカリ剤は、これを含有するアルカリ性水溶液の濃度が0.1質量%〜20質量%、好ましくは0.5質量%〜15質量%、最も好ましくは1質量%〜12重量%になるように添加される。
【0136】
また、現像液として用いられるアルカリ性水溶液には、必要に応じて界面活性剤やベンジルアルコール、2−フェノキシエタノール、2−ブトキシエタノールのような有機溶媒を少量含むことができる。例えば、米国特許第3375171号及び同第3615480号に記載されているものを挙げることができる。さらに、特開昭50−26601号、同58−54341号、特公昭56−39464号、同56−42860号の各公報に記載されている現像液も優れている。
【0137】
特に好ましい現像液としては、特開2002−202616号公報に記載の非イオン性化合物を含有し、pHが11.5〜12.8であり、かつ3〜30mS/cmの電導度を有する現像液が挙げられる。
【0138】
また、炭酸イオン及び炭酸水素イオンを含む現像液におけるpHとしては、8.5〜10.8の範囲であることが好ましく、pH9.0〜10.5であることがより好ましく、pH9.5〜10.3であることが特に好ましい。このpH範囲内であると、非画像部の現像性が低下せず、また、空気中の炭酸ガスの影響により処理能力が変動しないので好ましい。
【0139】
現像工程において、露光後のフォトマスクブランクスに、現像液を接触させる態様としては、手処理、浸漬処理、及び機械による処理などが挙げられる。
【0140】
手処理としては、例えば、スポンジや脱脂綿に充分現像液を含ませ、全体を擦りながら処理し、処理終了後は充分に水洗する態様が挙げられる。
【0141】
浸漬処理としては、例えば、露光後のフォトマスクブランクスを、現像液の入ったバットや深タンクに浸して撹拌した後、脱脂綿やスポンジなどで擦りながら充分に水洗する方法が挙げられる。浸漬時間は、約60秒であることが好ましい。
【0142】
機械処理には、自動現像機を用いることができる。自動現像機を用いる場合としては、例えば、現像槽に仕込んだ現像液をポンプで汲み上げて、露光後のフォトマスクブランクスにスプレーノズルから吹き付けて処理する方式、現像液が満たされた槽中に液中ガイドロールなどによって、露光後のフォトマスクブランクスを浸漬搬送させて処理する方式、実質的に未使用の現像液を、一枚毎の露光後のフォトマスクブランクスに必要な分だけ供給して処理するいわゆる使い捨て処理方式のいずれの方式も適用できる。どの方式においても、高圧洗浄、ブラシやモルトンなどの機構があるものがより好ましい。また、レーザー露光部と自動現像機部分とが一体に組み込まれた装置を利用することもできる。
【0143】
また、現像する際における現像液の温度としては、20℃〜35℃の範囲が好ましく、25℃〜30℃の範囲がより好ましい。
【0144】
〔その他の工程〕
また、フォトマスクブランクスに対しては、必要に応じて、露光前、露光中、露光から現像までの間に、全面に加熱処理を施してもよい。加熱処理を施すことにより、感光性組成物層中の画像形成反応が促進され、感度の向上、感度の安定化といった利点が生じ得る。さらに、画像強度の向上を目的として、現像後の画像に対し、全面後加熱若しくは、全面露光を行うことも有効である。
【0145】
通常、現像前の加熱は150℃以下の穏和な条件で行うことが好ましい。一方、現像後の加熱には非常に強い条件を利用することができる。通常は150℃〜500℃の範囲加熱処理を行う。
【0146】
また、フォトマスクブランクスに対する画像形成後においては、画像上に熱硬化型のエポキシ樹脂等の保護膜を設けてもよい。画像上に保護膜を設けることにより、更に膜強度を向上させることもできる。
【0147】
以上のようにして、本発明の製造方法により得られるフォトマスクブランクスを用いてフォトマスクが得られる。
【0148】
フォトマスクにおける遮光層の膜厚は、0.8μm以上2.0μm以下であることが好ましく、0.8μm以上1.8μm以下がより好ましい。
また、フォトマスクにおける遮光層は、365nmにおけるオプティカルデンシティー(O.D.)が3.5以上であることが好ましく、4.0以上がより好ましい。
フォトマスクにおける遮光層の最も好適な態様は、遮光層の膜厚及び365nmにおけるO.D.の双方が、上記の範囲を満たす態様である。
【0149】
また、本発明の製造方法により得られるフォトマスクブランクスは、高解像度の画像形成が可能であるために、微細な線幅の画像をエッジ直線性が良好な状態で形成することができる。このようなフォトマスクブランクスを用いて形成されるフォトマスクの好適な態様の一つは、遮光層におけるラインアンドスペース(L/S)の線幅が、好ましくは0.1μm以上30μm以下である態様である。形成されるL/Sは、より好ましくは0.1μm以上25μm以下、さらに好ましくは0.1μm以上20μm以下のものである。
【0150】
本発明の製造方法により得られるフォトマスクブランクスを用いて得られたフォトマスクは、PDP、FED、LCD等のフラットパネルディスプレイ、CRT用シャドーマスク、印刷配線板、半導体等の分野におけるフォトリソ工程において好適に用いることができる。
フォトマスクを、紫外感光性のレジストのパターニング用に用いる際には、超高圧水銀灯などの紫外線露光機にバンドパスフィルターを組み入れて、露光波長を選択することも可能である。
【実施例】
【0151】
以下に実施例を示し、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0152】
[実施例1〜9、比較例1〜13]
1.フォトマスクブランクスの製造
(ガラス洗浄工程)
カラス基板(550mm×650mm×5mm)を純水にて洗浄した後、ホットプレートにて80℃1分間乾燥させた。
【0153】
(密着性下塗り層塗布乾燥工程)
上記により洗浄したガラス基板上に、スリットコーター(平田機工(株)製)で、下記の密着性下塗り組成物S−1(密着性下塗り層塗布液)を2cm/m塗布した。密着性下塗り層塗布液を塗布した後、赤外線ヒーター(大東製機(株)製「アステックパワーヒーター」)にて、100℃に設定し30秒間該塗布液を乾燥し、密着性下塗り層を塗設した。
【0154】
<密着性下塗り層塗布液S−1>
・プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 99質量部
・3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン 1質量部
【0155】
(感光性組成物層塗布乾燥工程)
実施例1〜9については、上記により塗設された下塗り層上に、スリットコーター(平田機工(株)製)で、下記の光重合性組成物P−1(感光性組成物層塗布液)を8cm/m塗布した。感光性組成物層塗布液を塗布した後、赤外線ヒーター(大東製機(株)製「アステックパワーヒーター」)にて、表1に記載の条件にて加熱することで該塗布液を乾燥し、感光性組成物層を塗設した。
また、比較例1〜7については、実施例1と同様にして、感光性組成物層塗布液を塗布した塗布後に、ホットプレート(平田機工(株)製)にて、表2に記載の条件にて加熱することで該塗布液を乾燥し、感光性組成物層を塗設した。
また、比較例8〜13については、実施例1と同様にして、感光性組成物層塗布液を塗布した塗布後に、加熱オーブン(ESPEC(株)製、「PH300」)にて、表3記載の条件にて加熱すること該塗布液を乾燥し、感光性組成物層を塗設した。
【0156】
各実施例及び比較例における乾燥後の感光性組成物層の膜厚は、各々、1.5μmであった。
【0157】
<光重合性組成物P−1>
・カーボンブラック分散液(30質量%メチルエチルケトン溶液) 16.0質量部
・エチレン性不飽和結合含有化合物(A−1)(下記構造化合物) 4.2質量部
・線状有機高分子重合体(B−1)(下記構造の高分子バインダー) 3.6質量部
(MW:50000)
・増感剤(C−1)(下記構造の化合物) 0.21質量部
・光重合開始剤(D−1)(下記構造の化合物) 0.81質量部
・連鎖移動剤(E−1)(下記構造の化合物) 0.3質量部
・フッ素系ノニオン界面活性剤 0.05質量部
(メガファックF780、大日本インキ化学工業(株)製)
・プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 112質量部
【0158】
【化5】



【0159】
(酸素遮断性層塗布乾燥工程)
上記により塗設された感光性組成物層上に、スリットコーター(平田機工(株)製)で下記の酸素遮断性層塗布液を8cm/mを塗布した。酸素遮断性層塗布液を塗布した後、赤外線ヒーター(大東製機(株)製「アステックパワーヒーター」)にて、表1記載の条件にて該塗布液を乾燥し、酸素遮断性層を塗設し、ネガ型のフォトマスクブランクスを得た。
また、比較例1〜7については、実施例1と同様にして、酸素遮断性層塗布液を塗布した塗布後に、ホットプレート(平田機工(株)製)にて、表2に記載の条件にて加熱することで該塗布液を乾燥し、酸素遮断性層を塗設した。
また、比較例8〜13については、実施例1と同様にして、酸素遮断性層塗布液を塗布した塗布後に、加熱オーブン(ESPEC製、「PH300」)にて、表3記載の条件にて加熱すること該塗布液を乾燥し酸素遮断性層を塗設した。
【0160】
前記した測定方法にて測定した酸素遮断性層の酸素透過性は、170ml/m・day・atmあった。各実施例及び比較例における乾燥後の酸素遮断性層の膜厚は、各々、1.0μmであった。
【0161】
<酸素遮断性層塗布液>
・水 87g
・ポリビニルアルコールPVA205((株)クラレ製) 10g
・ポリビニルピロリドン((株)BASF製) 2g
・EMALEX710(日本エマルジョン(株)製、界面活性剤) 1g
【0162】
2.フォトマスクの製造
得られた実施例及び比較例の各フォトマスクブランクス(550mm×650mm×5mm)を、レーザープロッターとして、VIOLD(大日本スクリーン製造(株)製)(レーザー出力350mW、光源は405nmバイオレットレーザー)30mJ/cmで露光した。次いで、露光後の各フォトマスクブランクスを、下記組成のアルカリ現像液(25℃)に浸漬処理し、その後、25℃の水道水を60秒間シャワーして水洗し、実施例及び比較例の各フォトマスクを得た。
なお、現像、加熱処理後の各フォトマスクの365nmの吸光度は約4.0であった。
【0163】
<アルカリ現像液組成>
下記組成からなるpH9.5の水溶液
・炭酸ナトリウム 1.3g
・炭酸水素ナトリウム 0.7g
・下記化合物 5.0g
【化6】

・エチレンジアミンテトラ酢酸・4Na塩 0.1g
・水 92.9g
【0164】
2.評価
実施例及び比較例にて得られた各フォトマスクブランクス、又は該フォトマスクブランクスを用いて得られた各フォトマスクについて、下記(1)〜(4)の評価を行った。
【0165】
(1)フォトマスクブランクスにおける塗布層の面状評価
塗布層の面状の評価は、感光性組成物及び酸素遮断性層を塗設した際において、各塗布液を、塗布、乾燥した後の塗布層の面状を目視観察し、ムラ、スジ等の故障の有無を観察した。
評価基準は、ムラ、スジ等の無い良好な面状を「○」とし、ムラ、スジ等の故障の発生が認められた面状を「×」とした。
結果を表1〜表3に示す。
【0166】
(2)残留溶剤量の評価
残留溶剤量は、光重合性組成物及び酸素遮断性層の各々について、以下の測定方法により残留溶媒量を測定することにより評価した。
感光性組成物層の残留溶媒量については、(株)日立製作所製の「G−5000A型ガスクロマトグラフィ」を用い、塗布液として用いた光重合性組成物P−1に含有される溶剤成分の検量線を作成し、実測結果を検量線を元に変換し測定した。
酸素遮断性層の残留溶媒量については、平沼産業(株)製の「AQ2100」を用いて測定した。
結果を表1〜表3に示す。
【0167】
(3)フォトマスクにおけるガラス基板と遮光層との密着性評価
各実施例及び比較例で得られたフォトマスクにおけるガラス基板と遮光層との密着性を、JIS K−5600−5−6(2006年度版)に従い測定し、評価した。
測定は、遮光層の膜面上に100マス(一辺1mm)のクロスカットを入れ、セロテープ(登録商標)(ニチバン#405、幅24mm)を遮光層の表面に張り付けた後、これを剥離し、残存したマスの個数を計数することにより行った。結果[剥離後のマス残存数/剥離前のマス数(100マス)]を表1〜表3に示す。
【0168】
(4)マスク露光後の解像度評価
フォトマスクブランクスの描画画像を、4μm、6μm、8μm、10μm、15μm、20μm、25μm、30μmのライン/スペースを同様の条件で描画し、再現できているうちで最も細い線を解像度とした。結果を表1〜表3に示す。
【0169】
【表1】

【0170】
【表2】

【0171】
【表3】

【0172】
なお、表1〜表3中、赤外線ヒーター及び加熱オーブンの設定温度(℃)は、加熱された遮光層が示す表面温度に対応する。
【0173】
表1によれば、フォトマスクブランクスの製造における塗布液の乾燥に、赤外線ヒーターを用いた各実施例では、塗布液を短時間で乾燥することが可能であり、得られたフォトマスクブランクスが有する塗布層の面状も優れていることが判る。また、これらのフォトマスクブランクスにより得られたフォトマスクは、解像度及びガラス基板と遮光層との密着性に優れるものであることが判る。
【0174】
一方、表2によれば、赤外線ヒーターに代えて、ホットプレート用いて塗布液の乾燥を行った比較例1〜7では、塗布液を十分に乾燥するのに時間がかかっており、これはフォトマスクブランクスの生産性を低下させるものであることが判る。ホットプレートを用いた乾燥が時間を要する要因としては、5mm厚のガラス基板では、熱が塗布層表面に伝わり難いことから、塗布層が乾燥され難いためと考える。
【0175】
また、表3によれば、赤外線ヒーターに代えて、加熱オーブンを用いて塗布液の乾燥を行った比較例8〜13では、乾燥風の影響で塗布層の面状が悪くなっており、得られたフォトマスクの解像性も赤外線ヒーターを用いたレベルには至っていないことが判る。これは、加熱オーブンを用いた場合、塗布層の表面から乾燥するために、塗布層表面には皮膜が早期に形成される一方、塗布層の内部には残留溶媒が残存し易くなり、これがフォトマスクブランスクスの性能に影響を与えているためと考える。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明ガラス基材を洗浄するガラス洗浄工程、及び、
洗浄後の透明ガラス基材上に、遮光材料を少なくとも含有する感光性組成物層、及び酸素遮断性層を含む各塗布層を塗設するための塗布液を、塗布層毎に、順次、塗布し、乾燥する塗布乾燥工程を有し、
該塗布乾燥工程における各塗布液の乾燥が、3μm〜7μmに極大波長を有する赤外線を放射する赤外線ヒーターを用いた加熱により行われるフォトマスクブランクスの製造方法。
【請求項2】
前記感光性組成物層が、さらに、重合開始剤、エチレン性不飽和化合物、及びバインダーポリマーを含む請求項1に記載のフォトマスクブランクスの製造方法。
【請求項3】
前記感光性組成物層が、さらに、増感色素を含む請求項2に記載のフォトマスクブランクスの製造方法。
【請求項4】
前記遮光材料が、カーボンブラックである請求項1から請求項3に記載のフォトマスクブランクスの製造方法。
【請求項5】
前記感光性組成物層の乾燥後の膜厚が、0.5μm以上2μm以下である請求項1から請求項4に記載のフォトマスクブランクスの製造方法。
【請求項6】
前記塗布乾燥工程において、赤外線ヒーターを用いて加熱する際の各塗布液毎の加熱時間が、10秒から120秒である請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のフォトマスクブランクスの製造方法。
【請求項7】
前記塗布乾燥工程において形成された酸素遮断性層の25℃における酸素透過性率が、1.0ml/m・day・atm以上2000ml/m・day・atm以下である請求項1から請求項6のいずれか1項に記載のフォトマスクブランクスの製造方法。
【請求項8】
前記透明ガラス基材が、厚み0.1mm以上20mm以下である請求項1から請求項7のいずれか1項に記載のフォトマスクブランクスの製造方法。
【請求項9】
前記重合開始剤が、ヘキサアリールビイミダゾール化合物である請求項2から請求項8のいずれか1項に記載のフォトマスクブランクスの製造方法。
【請求項10】
請求項1から請求項9のいずれか1項に記載のフォトマスクブランクスの製造方法により得られたフォトマスクブランクス。
【請求項11】
請求項10に記載のフォトマスクブランクスが有する感光性組成物層を、画像様に露光した後、現像することで形成された遮光層を有するフォトマスク。
【請求項12】
前記露光が、350nm以上450nm以下の光により行われる請求項11に記載のフォトマスク。
【請求項13】
前記遮光層におけるラインアンドスペース(L/S)の線幅が、0.1μm以上20μm以下である請求項11又は請求項12に記載のフォトマスク。

【公開番号】特開2010−204204(P2010−204204A)
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−47116(P2009−47116)
【出願日】平成21年2月27日(2009.2.27)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】