説明

フォトリソグラフィのための組成物および方法

【課題】フォトレジスト組成物上に適用される液浸リソグラフィ用トップコート層組成物の提供。
【解決手段】水性アルカリ可溶性であるマトリックスポリマーと、水性アルカリ可溶性であって、かつ、側鎖にフルオロアルキルスルホンアミド構造を有するα位に置換基を有してもよいアクリル酸エステルモノマーの重合単位を含む第1の追加のポリマーとを含み、第1の追加のポリマーがマトリックスポリマーよりも少ない量で組成物中に存在し、第1の追加のポリマーがマトリックスポリマーの表面エネルギーよりも低い表面エネルギーを有し、乾燥状態でのトップコート組成物の層が75〜85°の水後退接触角を有する、組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はフォトレジスト組成物上に適用されうるトップコート層組成物に関する。本発明には半導体デバイスの形成のための液浸リソグラフィプロセスにおけるトップコート層としての特別な適用性が見いだされる。
【背景技術】
【0002】
フォトレジストは基体に像を転写するために使用される感光膜である。フォトレジストの塗膜層は基体上に形成され、次いでフォトレジスト層がフォトマスクを通して活性化放射線源に露光される。フォトマスクは活性化放射線に対して不透明な領域および活性化放射線に対して透明な他の領域を有する。活性化放射線への露光はフォトレジスト塗膜の光誘起化学変化をもたらし、それによりフォトマスクのパターンをフォトレジストでコーティングされた基体に転写する。露光の後で、フォトレジストは現像剤溶液との接触によって現像されて、基体の選択的な処理を可能にするレリーフ像を提供する。
【0003】
半導体デバイスにおいてナノメートル(nm)スケールのフィーチャサイズを達成するための1つの手法は、より短い波長の光を使用することである。しかし、193nm未満で透明な材料を見いだすことの困難さは、より多くの光が膜に焦点を合わせるように液体の使用によってレンズの開口数を増大させる液浸リソグラフィ方法を導いていた。液浸リソグラフィは比較的高い屈折率の流体を、像形成装置の最終面(例えば、KrFまたはArF光源)と基体、例えば、半導体ウェハの一番上の表面との間に使用する。
【0004】
液浸リソグラフィにおいては、液浸流体とフォトレジスト層との間の直接接触が、液浸流体中へのフォトレジストの成分の漏出を生じさせる場合がある。この漏出は光学レンズの汚染を引き起こす場合があり、かつ液浸流体の透過性および有効屈折率の変化をもたらす場合がある。この問題を改善する努力において、液浸流体と下地フォトレジスト層との間のバリアとして、フォトレジスト層上のトップコート層の使用が提案されてきた。しかし、液浸リソグラフィにおけるトップコート層の使用は、様々な課題を提示している。トップコート層は、トップコート屈折率、厚さ、酸性度、レジストとの化学的相互作用および浸漬時間などの特性に応じて、例えば、プロセスウィンドウ、限界寸法(critical dimension;CD)変動およびレジストプロファイルに影響を及ぼしうる。さらに、トップコート層の使用は、例えば、適切なレジストパターン形成を妨げるマイクロ架橋欠陥のせいでデバイス収率に悪影響を及ぼしうる。
【0005】
トップコート材料の性能を向上させるために、段階化トップコート層を形成するための自己分離トップコート組成物の使用が、例えば、Self−segregating Materials for Immersion Lithography(液浸リソグラフィのための自己分離材料)、Daniel P.Sanders(ダニエルP.サンダース)ら、Advances in Resist Materials and Processing Technology XXV、SPIEの議事録、第6923巻、692309−1から692309−12ページ(2008)において提案されてきた。自己分離したトップコートは、理論的には、液浸流体とフォトレジスト界面との双方での所望の特性、例えば、液浸流体界面での高い水後退接触角およびフォトレジスト界面での良好な現像剤溶解性を有する調節された材料を可能にするであろう。
【0006】
所定のスキャン速度で低い後退接触角を示すトップコートはウォーターマーク欠陥をもたらしうる。露光ヘッドがウェハを横切って動くにつれて水滴が後に残る場合に、この欠陥が発生する。結果的に、水滴へのレジスト成分の漏出のせいでレジスト感度が変わり、そして水が下地レジストに浸透しうる。よって、より速いスキャン速度での液浸スキャナの操作を可能にし、それにより向上したプロセススループットを可能にする高い後退接触角を有するトップコートが望まれる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Self−segregating Materials for Immersion Lithography(液浸リソグラフィのための自己分離材料)、Daniel P.Sanders(ダニエルP.サンダース)ら、Advances in Resist Materials and Processing Technology XXV、SPIEの議事録、第6923巻、692309−1から692309−12ページ(2008)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
液浸リソグラフィに使用するための向上した自己分離トップコート組成物について、およびその使用方法についての継続した必要性が当該技術分野において存在している。
【課題を解決するための手段】
【0009】
新規トップコート組成物および液浸フォトリソグラフィのための方法が提供される。また、提供されるのは、非液浸像形成プロセスにおける使用のためのフォトレジスト層上のオーバーコート層として使用されうる新規組成物である。本発明の第1の形態に従って、フォトレジストの層上のトップコート層の形成における使用に適した組成物が提供される。この組成物は水性アルカリ可溶性であるマトリックスポリマー;水性アルカリ可溶性であって、かつ下記一般式(I):
【化1】

(式中、Rは水素、またはC1−C6アルキルもしくはフルオロアルキル基であり;RはC3〜C8分岐アルキレン基であり;並びに、RはC1〜C4フルオロアルキル基である)
のモノマーの重合単位を含む第1の追加の(additive)ポリマーを含み;前記第1の追加のポリマーはマトリックスポリマーよりも少ない量で組成物中に存在し、前記第1の追加のポリマーはマトリックスポリマーの表面エネルギーよりも低い表面エネルギーを有し、乾燥状態での当該トップコート組成物の層は、75〜85°の水後退接触角を有する。
【0010】
本発明のさらなる形態に従って、コーティングされた基体が提供される。このコーティングされた基体は、基体上のフォトレジスト層;および本明細書に記載されるトップコート組成物をフォトレジスト層上に含むトップコート層;を含む。
【0011】
本発明のさらなる形態に従って、フォトレジスト組成物を処理する方法が提供される。この方法は(a)フォトレジスト組成物を基体上に適用してフォトレジスト層を形成し、(b)請求項1〜6のいずれかの組成物を前記フォトレジスト層上に適用してトップコート層を形成し、並びに(c)前記トップコート層およびフォトレジスト層を化学線に露光することを含む。
【発明の効果】
【0012】
フォトレジスト組成物層上に適用される本発明のトップコート層組成物は自己分離性であり、これは液浸リソグラフィプロセスにおいて使用される液浸流体中にフォトレジスト層の成分が移動するのを少なくとも抑制し、そして好ましくは最小限にするかまたは妨げるのを助けることができる。さらに、液浸流体界面での動的水接触角特性、例えば、水後退角が向上されうる。さらには、このトップコート層組成物は、層の露光領域および未露光領域の双方について、例えば、水性塩基現像剤中での優れた現像剤溶解性を有するトップコート層を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本明細書において使用される場合、用語「液浸流体」とは、液浸リソグラフィを行うために、露光ツールのレンズと、基体を覆うフォトレジストとの間に挿入される流体(例えば、水)を意味する。
【0014】
また、本明細書において使用される場合、トップコート組成物の使用の際に、このトップコート層が存在しないが同じ方法で処理される同じフォトレジストシステムと比較して、低減された量の酸もしくは有機物質が液浸流体中で検出される場合には、トップコート層は液浸流体へのフォトレジスト材料の移動を抑制すると見なされる。液浸流体中でのフォトレジスト材料の検出は、フォトレジストの露光前の(上塗りトップコート組成物層の有無にかかわらず)および、次いで液浸流体を通した露光でのフォトレジスト層のリソグラフィ処理後の(上塗りトップコート組成物層の有無にかかわらず)液浸流体の質量分析によって行われうる。好ましくは、トップコート組成物は、トップコート層を使用しない同じフォトレジスト(すなわち、液浸流体がフォトレジスト層に直接接触する)と比較して、液浸流体中に存在するフォトレジスト材料(例えば、質量分析によって検出される酸もしくは有機物)を少なくとも10パーセント低減し、より好ましくは、トップコート層を使用しない同じフォトレジストと比較して、液浸流体中に存在するフォトレジスト材料を、そのトップコート組成物は少なくとも20、50または100パーセント低減する。
【0015】
ある形態においては、トップコート組成物の1種以上のポリマーは2種類の異なる繰り返し単位(コポリマー)、3種類の異なる繰り返し単位(ターポリマー)、4種類の異なる繰り返し単位(テトラポリマー)、5種類の異なる繰り返し単位(ペンタポリマー)またはさらに高次のポリマーを有することができる。
【0016】
本発明のトップコート組成物の典型的なポリマーは様々な繰り返し単位、例えば、疎水性基;弱酸基;強酸基;分岐した場合によって置換されたアルキルもしくはシクロアルキル基;フルオロアルキル基;または極性基、例えば、エステル、エーテル、カルボキシもしくはスルホニル基など;の1種以上を含む繰り返し単位を含むことができる。
【0017】
ある形態においては、コーティング組成物の1種以上のポリマーは、リソグラフィ処理の際に反応性である1種以上の基、例えば、酸および熱の存在下で開裂反応を受けうる1種以上の光酸不安定(photoacid labile)基、例えば、酸不安定エステル基(例えば、t−ブチルアクリラートもしくはt−ブチルメタクリラートの重合により提供されるようなt−ブチルエステル基、アダマンチルアクリラート)および/またはビニルエーテル化合物の重合により提供される様なアセタール基を含むことができる。
【0018】
本発明のトップコート組成物は様々な材料を含むことができ、この組成物の典型的なポリマーは高分子量材料、例えば、約3000、4000または4500ダルトンを超える分子量を有する材料である。この組成物の1種以上のポリマーは6000、7000、8000または9000を超える分子量を有することができる。
【0019】
本発明のトップコート組成物は、ポリマー成分に加えて、1種以上の任意成分、例えば、1種以上の酸発生剤化合物、例えば、1種以上の熱酸発生剤(TAG)化合物および/または1種以上の光酸発生剤(PAG)化合物、並びに1種以上の界面活性剤化合物を含むことができる。
【0020】
本発明の方法および組成物は様々な像形成波長、例えば、300nm未満、例えば、248nm、または200未満、例えば、193nmの波長を有する放射線を用いて使用されうる。
【0021】
トップコート組成物
本発明のトップコート組成物は有利な静的および動的水接触角を示しうる。本発明のトップコート組成物は2種以上の、好ましくは3種以上の異なるポリマーを含む。本発明において有用なポリマーはホモポリマーであってよいが、より典型的には、複数種の異なる繰り返し単位を含み、2種もしくは3種の異なる単位、すなわち、コポリマーもしくはターポリマーが典型的である。このポリマーは、この組成物から形成されるトップコート層が、水性アルカリ現像剤、例えば、第四級アンモニウムヒドロキシド溶液、例えば、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)を使用するレジスト現像工程において除去されうるように水性アルカリ可溶性である。
【0022】
重合されたアクリラート基、ポリエステルおよび他の繰り返し単位、並びに/または、ポリマー骨格構造、例えば、ポリ(アルキレンオキシド)、ポリ(メタ)アクリル酸、ポリ(メタ)アクリルアミド、重合された芳香族(メタ)アクリラート、および重合されたビニル芳香族モノマーによって提供されるようなポリマー骨格構造を含むポリマーをはじめとする様々なポリマーが本発明のトップコート組成物において使用されうる。典型的には、ポリマーはそれぞれ少なくとも2種類の異なる繰り返し単位を含み、より好ましくは、第1の、第2のおよび第3のポリマーのうちの少なくとも2種類は少なくとも3種類の異なる繰り返し単位を含む。異なるポリマーは様々な相対量で適切に存在することができる。
【0023】
本発明のトップコート組成物のポリマーは様々な繰り返し単位を含むことができ、例えば、繰り返し単位は、疎水性基;弱酸基;強酸基;分岐した場合によって置換されたアルキルもしくはシクロアルキル基;フルオロアルキル基;または極性基、例えば、エステル、エーテル、カルボキシもしくはスルホニル基;の1種以上を含む。ポリマーの繰り返し単位上での特定の官能基の存在は、例えば、ポリマーの目的とされる官能性に依存するであろう。
【0024】
ある好ましい形態においては、コーティング組成物の1種以上のポリマーはリソグラフィ処理中に反応性である1種以上の基、例えば、酸および熱の存在下で開裂反応を受けうる1種以上の光酸酸不安定基、例えば、酸不安定エステル基(例えば、t−ブチルアクリラートもしくはt−ブチルメタクリラートの重合により提供されるようなt−ブチルエステル基、アダマンチルアクリラート)および/またはビニルエーテル化合物の重合により提供されるようなアセタール基を含むことができる。このような基の存在は、関連するポリマーを現像液中により可溶性にすることができ、それにより現像性および現像プロセスの際のトップコート層の除去を助けることができる。
【0025】
トップコート組成物のポリマーは典型的には比較的大きな分子量、例えば、約3000、4000または4500ダルトンを超える分子量を有する。この組成物の1種以上のポリマーは6000、7000、8000または9000ダルトンを超える分子量を有することができる。
【0026】
本発明のトップコート組成物のポリマーシステムは3種以上の異なるポリマーを含む。これらポリマーはトップコート層の特性を調節するように有利に選択されることができ、それぞれは概して特定の目的もしくは機能を果たす。この機能には、例えば、フォトレジストプロファイル調節、トップコート表面調節、欠陥の低減、およびトップコート層とフォトレジスト層との間の界面混合の低減の1種以上が挙げられる。本発明の好ましいポリマーシステムは、個別基準で概して組成物中に最大の割合で存在しそしてトップコート膜の主要部分を典型的に形成するマトリックスポリマーと、2種以上の追加のポリマーとを含む。少なくとも1種の追加のポリマーは表面調節目的のために、例えば、液浸流体接触角特性を向上させるために存在する。第2の追加のポリマーはレジストフィーチャプロファイルの調節およびレジストトップロス(top loss)の制御のために存在する。
【0027】
本発明に有用な典型的なこれらポリマーがここで説明される。マトリックスポリマーは、例えば、1種以上の繰り返し単位を含むことができ、2種類の繰り返し単位が典型的である。マトリックスポリマーは、例えば、マイクロ架橋に起因する全体的な欠陥を低減させるのに充分に高い現像剤溶解速度を提供すべきである。マトリックスポリマーは、ポリマーの現像剤溶解速度を増大させるために、例えば、スルホンアミド含有モノマーを含むことができる。マトリックスポリマーについての典型的な現像剤溶解速度は500nm/秒より大きい。トップコート層と下地フォトレジストとの間の界面混合を低減するかまたは最小限にするために、マトリックスポリマーは典型的にはフッ素化される。マトリックスポリマーの1種以上の繰り返し単位は、フルオロアルキル基、例えば、C1〜C4フルオロアルキル基、典型的にはフルオロメチルでフッ素化されることができる。
【0028】
本発明に従う典型的なマトリックスポリマーには、以下のものが挙げられる:
【化2】

式中、ポリマーの重量を基準にして、xは0〜90重量%(重量パーセント)であり、yは10〜100重量%である。典型的な第1のマトリックスポリマーにおいては、x/yは90/10重量%である;
【0029】
【化3】

式中、ポリマーの重量を基準にして、xは0〜85重量%であり、yは10〜80重量%であり、zは5〜20重量%である。典型的なマトリックスポリマーにおいては、x/y/zは40/45/15重量%である;
【0030】
【化4】

式中、ポリマーの重量を基準にして、xは0〜85重量%であり、yは10〜80重量%であり、zは5〜20重量%である。典型的なマトリックスポリマーにおいては、x/y/zは40/45/15重量%である。
【0031】
第1の追加のポリマーはトップコート/液浸流体界面での表面特性を向上させるためにトップコート組成物に提供される。特に、第1の追加のポリマーは、有利なことには、トップコート/液浸流体界面での液浸流体後退接触角の増大を提供し、それによりより速いスキャン速度を可能にする。乾燥状態でのトップコート組成物の層は75〜85°の水後退接触角を有する。「乾燥状態」の語句は、組成物全体を基準にして8重量%以下しか溶媒を含んでいないことを意味する。
【0032】
第1の追加のポリマーは、このシステム中に存在するマトリックスポリマーおよび他の追加のポリマーよりも有意に低い表面エネルギーを有するべきであり、かつこれらと実質的に非混和性であるべきである。このようにして、トップコート層は自己分離性であることができ、第1の追加のポリマーはコーティングの際に他のポリマーから離れてトップコート層の表面に移動する。それにより、得られるトップコート層は、トップコート/液浸流体界面において第1の追加のポリマーに富んでいる。このポリマーは典型的には、フォトリソグラフィ前および後の双方で優れた現像性を有し、かつ典型的には、例えば、1Å/秒以上のダークフィールド(dark field)現像剤溶解速度を示す。
【0033】
第1の追加のポリマーは水性アルカリ可溶性であり、かつ下記一般式(I)のモノマーの重合単位を含む:
【化5】

式中、Rは水素、またはC1〜C6アルキル、好ましくはメチル、もしくはフルオロアルキル基であり;RはC3〜C8分岐アルキレン基であって、好ましくは2以上の分岐炭素原子を有し;並びに、RはC1〜C4フルオロアルキル基、例えば、フルオロメチルもしくはフルオロエチルである。
【0034】
一般式(I)のモノマーは、高い後退接触角を維持しつつ、向上したダークフィールド現像剤溶解速度を提供することができると考えられる。一般式(I)の適切なモノマーには、例えば、以下のものが挙げられる:
【化6】

【0035】
第1の追加のポリマーはさらに1種以上の追加の単位、例えば、現像剤溶解性を増大させる目的のためのフルオロアルコール基含有単位を、および/または、フォトレジストを処理した後で、例えば、活性化放射線への露光および露光後ベーク後に、現像剤溶液中での溶解性を増大させるための1以上の酸不安定官能基を有する単位を含むことができる。本発明に従って第1の追加のポリマーにおいて使用するのに典型的な追加の単位には、以下の一般式(II)のモノマーおよび/または以下の一般式(III)のモノマーの重合単位が挙げられる:
【化7】

式中、RおよびRは独立して水素、またはC1〜C6アルキルもしくはフルオロアルキルであり;Rは場合によって置換されたC3〜C10シクロアルキル、例えば、シクロヘキシル、またはC3〜C10分岐アルキル基、例えば、イソアルキル基、例えば、イソプロピルもしくはイソブチルであり;Rは場合によって置換されたC1〜C6アルキレン基、好ましくはメチレンもしくはエチレンであり;RおよびRはそれぞれ独立してC1〜C4フルオロアルキル基、好ましくはトリフルオロメチルであり;並びに、R10は酸不安定脱離基であり、好ましくは低い活性化エネルギーを有し、例えば、分岐アルキル構造を有するものである。好ましくは、第1の追加のポリマーは一般式(II)および(III)の双方のモノマーの重合単位を含む。
【0036】
一般式(II)のモノマーは増大した動的接触角、例えば、増大した後退角および低下した滑落角(sliding angle)、並びに現像剤親和性および溶解性の向上を可能にすると考えられる。一般式(II)の適切なモノマーには、例えば、以下のものが挙げられる:
【化8】

【0037】
一般式(III)のモノマーは、酸不安定基に起因する露光領域における増大した現像剤溶解、並びに向上した動的接触角を提供すると考えられる。一般式(III)の適切なモノマーには、例えば、以下のものが挙げられる:
【化9】

式中、Rは一般式(I)のモノマーに関して上で定義された通りである。
【0038】
第1の追加のポリマーとして本発明において有用な典型的なポリマーには以下のものが挙げられる:
【化10】

式中、ポリマーの重量を基準にして、xは0〜89重量%であり、yは10〜80重量%であり、zは5〜30重量%である。典型的なポリマーにおいては、x/y/zは50/25/25、55/25/20、および65/25/10重量%である。
【0039】
マトリックスポリマーおよび第1の追加のポリマーに加えて、典型的には、レジストフィーチャプロファイルの調節の目的のためにおよびレジストトップロスを制御するために、好ましくは、第2の追加のポリマーが提供される。第2の追加のポリマーは、典型的には、1種以上の強酸官能基、例えば、スルホン酸基を含む。第2の追加のポリマーはマトリックスポリマーと混和性であるべきであるが、上述のように、第1の追加のポリマーとは一般的に非混和性であるべきである。
【0040】
本発明において、第2の追加のポリマーとして有用な典型的なポリマーには以下のものが挙げられる:
【化11】

式中、ポリマーの重量を基準にして、xは0〜89重量%であり、yは10〜99重量%であり、zは1〜5重量%である。典型的なポリマーにおいては、x/y/zは10/85/5重量%である;
【0041】
【化12】

式中、ポリマーの重量を基準にして、xは5〜20重量%であり、yは75〜94重量%であり、zは1〜5重量%である。典型的なポリマーにおいては、x/y/zは15/80/5重量%である;
【0042】
【化13】

式中、ポリマーの重量を基準にして、xは5〜20重量%であり、yは75〜94重量%であり、zは1〜5重量%である;
【0043】
【化14】

式中、ポリマーの重量を基準にして、xは0〜89重量%であり、yは10〜99重量%であり、zは1〜5重量%である。典型的なポリマーにおいては、x/y/zは10/87/3重量%である;
【0044】
【化15】

式中、ポリマーの重量を基準にして、xは5〜20重量%であり、yは75〜94重量%であり、zは1〜5重量%である。典型的なポリマーにおいては、x/y/zは15/82/3重量%である;並びに
【0045】
【化16】

式中、ポリマーの重量を基準にして、xは5〜20重量%であり、yは75〜94重量%であり、zは1〜5重量%である。典型的なポリマーにおいては、x/y/zは10/87/3重量%である。
【0046】
上述のように、トップコート組成物は1種以上の酸発生剤化合物、例えば、1種以上の熱酸発生剤化合物および/または1種以上の光酸発生剤化合物を含むことができる。場合によっては、トップコート組成物はこのような酸発生剤化合物を含まなくてもよい。これに関しては、処理中に、下地フォトレジストからトップコート層への移動によって酸発生剤化合物が提供されることができ、トップコート組成物の成分としてそれを別途添加する必要をなくする。適切な熱酸発生剤には、イオン性もしくは実質的に中性の熱酸発生剤、例えば、アレーンスルホン酸アンモニウム塩が挙げられる。適切なPAGは化学増幅型フォトレジストの技術分野において知られており、例えば、オニウム塩、例えば、トリフェニルスルホニウム塩、ニトロベンジル誘導体、スルホン酸エステル、ジアゾメタン誘導体、グリオキシム誘導体、N−ヒドロキシイミド化合物のスルホン酸エステル誘導体、およびハロゲン含有トリアジン化合物が挙げられる。使用される場合には、1種以上の酸発生剤が比較的少量で、例えば、組成物の乾燥成分の合計(溶媒キャリアを除く全ての成分)の0.1〜8重量%、例えば、全乾燥成分の約2重量%でトップコート組成物中に使用されることができる。1種以上の酸発生剤化合物のこのような使用は、下地レジスト層にパターン形成される現像された像のリソグラフィ性能、特に解像度に有利な影響を及ぼしうる。
【0047】
好ましいトップコート組成物層は193nmで約1.4以上、例えば、193nmで1.47以上の屈折率を有しうる。さらに、具体的なシステムのためには、トップコート組成物の1種以上のポリマーの組成を変えることにより、例えば、トップコート組成物のポリマーブレンドの成分の比率を変えることにより、またはポリマーのいずれかの組成を変えることにより、屈折率は調節されうる。例えば、トップコート層組成物中の有機物含有量を増大させることが、この層の屈折率の増大を提供できる。
【0048】
好ましいトップコート層組成物は、ターゲット露光波長、例えば、193nmもしくは248nmでフォトレジストの屈折率と液浸流体との間の屈折率を有しうる。
【0049】
トップコート組成物を配合しキャストするための典型的な溶媒材料はトップコート層組成物の成分を溶解もしくは分散させるが、下地フォトレジスト層を認めうるほどに溶解しないものである。より具体的には、トップコート組成物を配合するのに適切な溶媒には、これに限定されないが、n−ブタノールのようなアルコール、プロピレングリコールのようなアルキレングリコールの1種以上が挙げられる。あるいは、非極性溶媒、例えば、脂肪族炭化水素および芳香族炭化水素、並びにアルキルエーテル、例えばドデカン、イソオクタンおよびイソペンチルエーテルが使用されうる。溶媒系中の1種以上の溶媒は、個々に、実質的に純粋な形態であることができ、実質的に純粋な形態とは、溶媒分子の異性体がその溶媒中に5重量%未満、例えば、2重量%未満、または1重量%未満の量しか存在しないことを意味する。場合によっては、溶媒は溶媒分子の異性体の混合物を含むことができ、その異性体は5重量%を超える、例えば、10重量%を超える、20重量%を超える、40重量%を超える、60重量%を超える、80重量%を超える、または90重量%を超える量で存在する。好ましくは、組成物中の第1の追加のポリマーを他のポリマーから分離することの有効な相分離を達成するために、並びに分配体積の低減を可能にする配合物の粘度を低下させるために、異なる溶媒、例えば、2種、3種もしくはそれより多い種類の溶媒の混合物が使用される。
【0050】
典型的な形態においては、3種溶媒系が本発明のトップコート組成物において使用されうる。この溶媒系は、例えば、主溶媒、シンナー溶媒および添加剤溶媒を含むことができる。主溶媒は典型的にはトップコート組成物の非溶媒成分に対する優れた溶解特性を示す。主溶媒の所望の沸点はその溶媒系の他の成分に応じて変動しうるが、沸点は典型的には添加剤溶媒のよりも低く、120〜140℃、例えば、約130℃の沸点が典型的である。適切な主溶媒には、例えば、C4〜C8n−アルコール、例えば、n−ブタノール、イソブタノール、2−メチル−1−ブタノール、イソペンタノール、2,3−ジメチル−1−ブタノール、4−メチル−2−ペンタノール、イソヘキサノールおよびイソヘプタノール、これらの異性体並びにこれらの混合物が挙げられる。主溶媒は典型的には、溶媒系を基準にして30〜80重量%の量で存在する。
【0051】
シンナー溶媒は、粘度を低下させ、かつより少ない分配体積でコーティングカバレッジを向上させるために存在する。シンナー溶媒は典型的には、組成物の非溶媒成分に対して主溶媒よりも貧溶媒である。シンナー溶媒の所望の沸点は、この溶媒系の他の成分に応じて変化しうるが、140〜180℃、例えば、約170℃の沸点が典型的である。適切なシンナー溶媒には、例えば、アルカン、例えば、C8〜C12n−アルカン、例えば、n−オクタン、n−デカン、およびドデカン、これらの異性体並びにこれらの異性体の混合物;並びに/またはアルキルエーテル、例えば、式R−O−Rのもの(式中、RおよびRは独立して、C〜Cアルキル、C〜CアルキルおよびC〜Cアルキルから選択される)が挙げられる。このアルキルエーテル群は線状または分岐、かつ対称または非対称であることができる。特に適切なアルキルエーテルには、たとえば、イソブチルエーテル、イソペンチルおよびイソブチル イソヘキシル、これらの異性体およびこれらの混合物が挙げられる。シンナー溶媒は、典型的には、溶媒系を基準にして10〜70重量%の量で存在する。
【0052】
添加剤溶媒は、自己分離トップコート構造を促進するために、トップコート組成物二おける相分離ポリマーと他のポリマーとの間の相分離を促進するために存在する。さらに、より高い沸点の添加剤溶媒はコーティングの際のチップ乾燥効果を低減させうる。添加剤溶媒は、溶媒系の他の成分よりも高い沸点を有することが典型的である。添加剤溶媒の望まれる沸点は溶媒系の他の成分に応じて変化しうるが、170〜200℃、例えば、約190℃の沸点が典型的である。適切な添加剤溶媒には、例えば、ヒドロキシアルキルエーテル、例えば、式:
【化17】

(式中、Rは場合によって置換されているC1〜C2アルキル基であり、RおよびRは独立して、場合によって置換されているC2〜C4アルキル基から選択される)のもの、並びにこのようなヒドロキシアルキルエーテルの混合物、例えば、異性体混合物が挙げられる。典型的なヒドロキシアルキルエーテルには、ジアルキルグリコールモノアルキルエーテルおよびこれらの異性体、例えば、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、これらの異性体並びにこれらの混合物が挙げられる。添加剤溶媒は、典型的には、溶媒系を基準にして、3〜15重量%の量で存在する。
【0053】
特に適切な3種溶媒系には、4−メチル−2−ペンタノール/イソペンチルエーテル/ジプロピレングリコールモノメチルエーテル(重量比49/45/6)が挙げられる。典型的な溶媒系が3成分系に関して記載されたが、追加の溶媒が使用されうることは当然明らかである。例えば、1種以上の追加の主溶媒、シンナー溶媒、添加剤溶媒および/または他の溶媒が使用されうる。
【0054】
トップコート組成物は、1種以上の極性溶媒、例えば、上で特定されたもの、または1種以上の非極性溶媒、例えば、上で特定された脂肪族炭化水素および芳香族炭化水素などにポリマーを混合することにより適切に製造されうる。全体的な組成物の粘度は、典型的には、1.5〜2センチポイズ(cp)である。
後述の実施例は、本発明のトップコート組成物の典型的な製造を提供する。
【0055】
フォトレジスト
様々なフォトレジスト組成物が、本発明のトップコート層組成物および方法と組み合わせて使用されうる。
上述のように、本発明に従って使用するのに典型的なフォトレジストには、ポジ型またはネガ型化学増幅型フォトレジスト、すなわち、1以上の組成物成分の酸不安定基の光酸促進脱保護反応を受け、このレジストの塗膜層の露光領域を、未露光領域よりも水性現像剤中でより可溶性にするポジ型レジスト組成物、並びに、光酸促進架橋反応を受けて、このレジストの塗膜層の露光領域を、未露光領域よりも低い現像剤可溶性にするネガ型レジスト組成物が挙げられる。これらのなかで、ポジ型材料が典型的である。エステルのカルボキシル酸素に共有結合しているターシャリー非環式アルキル炭素(例えば、t−ブチル)またはターシャリー脂環式炭素(例えば、メチルアダマンチル)を含むエステル基は、多くの場合、本発明のリソグラフィーシステムのフォトレジストに使用されるポリマーの好ましい光酸不安定基である。アセタール光酸不安定基も好ましいであろう。
【0056】
本発明に従って有用なフォトレジストは、典型的には、ポリマー成分および光活性成分を含む。典型的には、ポリマーは、レジスト組成物に水性アルカリ現像可能性を付与する官能基を有する。例えば、典型的なものは、ヒドロキシルまたはカルボキシラートのような極性官能基を含む樹脂バインダーである。典型的には、ポリマー成分は、アルカリ水溶液でレジストを現像可能にするのに充分な量でレジスト組成物中で使用される。
【0057】
200nmを超える波長、例えば、248nmでの像形成のために、フェノール系樹脂が典型的である。典型的なフェノール系樹脂はポリ(ビニルフェノール)であり、これは触媒の存在下で対応するモノマーのブロック重合、乳化重合または溶液重合によって形成されうる。ポリビニルフェノール樹脂の製造に有用なビニルフェノール類は、例えば、商業的に入手可能なクマリンまたは置換クマリンの加水分解、その後の、得られたヒドロキシケイヒ酸の脱カルボキシル化によって製造されうる。有用なビニルフェノール類は対応するヒドロキシアルキルフェノールの脱水により、または置換もしくは非置換のヒドロキシベンズアルデヒドとマロン酸との反応から得られるヒドロキシケイヒ酸の脱カルボキシル化によっても製造されうる。このようなビニルフェノール類から製造される好ましいポリビニルフェノール樹脂は約2,000〜約60,000ダルトンの分子量範囲を有する。
【0058】
本発明のポジ型化学増幅型フォトレジストにおいて使用するための酸不安定デブロッキング(deblocking)基を有する他の典型的な樹脂は、欧州特許出願公開第EP0829766A2号(アセタールを有する樹脂およびケタール樹脂)および欧州特許出願公開第EP0783136A2(1)スチレン;2)ヒドロキシスチレン;および3)酸不安定基、特にアルキルアクリラート酸不安定基、例えば、アクリル酸t−ブチル、もしくはメタクリル酸t−ブチルの単位を含むターポリマーおよび他のコポリマー)に開示されている。一般に、様々な酸不安定基、例えば、酸感受性エステル、カルボナート、エーテル、イミドなどを有する樹脂が好適であることができる。光酸不安定基はより典型的には、ポリマー骨格からペンダントであることができるが、ポリマー骨格に組み込まれた酸不安定基を有する樹脂も使用されうる。
【0059】
サブ−200nmの波長、例えば、193nmでの像形成のために、典型的なフォトレジストは、実質的に、本質的にまたは完全にフェニルまたは他の芳香族基を含まない1種以上のポリマーを含む。例えば、サブ−200nmの像形成について、典型的なフォトレジストポリマーは約5モルパーセント(モル%)未満の芳香族基を、より典型的には、約1モル%未満または2モル%未満の芳香族基を、より典型的には、約0.1モル%未満、0.02モル%未満、0.04モル%未満、および0.08モル%未満の芳香族基を、さらにより典型的には約0.01モル%未満の芳香族基を含む。特に有用なポリマーは芳香族基を完全に含まない。芳香族基はサブ−200nm放射線を非常に吸収することができ、よってこのような短い波長の放射線で像形成されるフォトレジストにおいて使用されるポリマーには一般的に望ましくない。
【0060】
実質的にまたは完全に芳香族基を含まず、PAGと配合されてサブ−200nmの像形成のためのフォトレジストを提供することができる適切なポリマーは欧州特許出願公開第EP930542A1号および米国特許第6,692,888号および6,680,159号に開示されている。
【0061】
芳香族基を実質的にもしくは完全に含まない適切なポリマーは、適切に、メチルアダマンチルアクリラート、メチルアダマンチルメタクリラート、エチルフェンキルアクリラート、エチルフェンキルメタクリラートなどの重合により提供されうるような光酸不安定アクリラート単位のようなアクリラート単位;ノルボルネン化合物または環内炭素−炭素二重結合を有する他の脂環式化合物の重合により提供されうるような縮合非芳香族脂環式基;無水マレイン酸および/または無水イタコン酸の重合により提供されうるような無水物;などを含む。
【0062】
本発明において有用なネガ型フォトレジスト組成物は、酸への曝露により硬化し、架橋しまたは固化しうる物質と、本発明の光活性成分との混合物を含む。特に有用なネガ型組成物はフェノール系樹脂のような樹脂バインダー、架橋剤成分および光活性成分を含む。このような組成物およびその使用は欧州特許第0164248B1号および第0232972B1号、並びに米国特許第5,128,232号に開示されている。樹脂バインダー成分として使用するための典型的なフェノール系樹脂には、上述のようなノボラックおよびポリ(ビニルフェノール)が挙げられる。典型的な架橋剤には、アミンベースの物質、例えば、メラミン、グリコールウリル、ベンゾグアナミン−ベースの物質および尿素ベースの物質が挙げられる。メラミン−ホルムアルデヒド樹脂は、一般的に最も典型的である。このような架橋剤は商業的に入手可能であり、例えば、Cymel(サイメル)300、301および303の商品名で、Cytec Industriesに(サイテックインダストリーズ)より販売されているメラミン樹脂;Cymel 1170、1171および1172の商品名で、Cytec Industriesにより販売されているグリコールウリル樹脂;Beetle(ビートル)60、65および80の商品名で、Teknor Apex Companyに(テコノアアペックスカンパニー)より販売されている尿素ベースの樹脂;並びにCymel 1123および1125の商品名で、Cytec Industriesにより販売されているベンゾグアナミン樹脂がある。
【0063】
サブ−200nmの波長、例えば、193nmで像形成するために、典型的なネガ型フォトレジストは国際公開第WO03077029号に開示されている。
【0064】
本発明において有用なレジストの樹脂成分は、典型的には、レジストの露光された塗膜層を、例えば、アルカリ水溶液を用いて現像可能にするのに充分な量で使用される。より具体的には、樹脂バインダーは適切に、レジストの全固形分の50〜約90重量%を構成しうる。光活性成分は、レジストの塗膜層中の潜像の形成を可能にするのに充分な量で存在すべきである。より具体的には、光活性成分は、適切には、レジストの全固形分の約1〜40重量%の量で存在しうる。典型的には、より少ない量の光活性成分が化学増幅型レジストに好適であり得る。
【0065】
本発明に有用なレジスト組成物は、活性化放射線への露光によりレジストの塗膜層中に潜像を生じさせるのに充分な量で使用されるPAGも含む。適切なPAGはトップコート組成物に関して上述されている。
【0066】
レジストの典型的な任意添加剤は、添加塩基、特にテトラブチルアンモニウムヒドロキシド(TBAH)、またはテトラブチルアンモニウムラクタートであり、これは現像されたレジストレリーフ像の解像度を高めることができる。193nmで像形成されるレジストのために、典型的な添加塩基は、ジアザビシクロウンデセンまたはジアザビシクロノネンのようなヒンダードアミンである。添加塩基は比較的少量で、例えば、全固形分に対して約0.03から5重量%で適切に使用される。
【0067】
本発明に従って使用されるフォトレジストは他の任意物質も含むことができる。例えば、他の任意添加剤には、ストリエーション防止(anti−striation)剤、可塑剤および速度向上剤が挙げられる。このような任意添加剤は、典型的には、充填剤および染料(これらは、比較的高濃度で、例えば、レジストの乾燥成分の全重量を基準にして約5〜30重量%の量で存在しうる)を除いてはフォトレジスト組成物中で低濃度で存在するであろう。
【0068】
本発明において有用なフォトレジストは、概して、公知の手順に従って製造される。例えば、本発明のレジストは、適切な溶媒、例えば、グリコールエーテル、例えば、2−メトキシエチルエーテル(ジグリム)、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル;プロピレングリコールモノメチルエーテルアセタート;ラクタート、例えば、乳酸エチルまたは乳酸メチル、乳酸エチルが好ましい;プロピオナート、特にプロピオン酸メチル、プロピオン酸エチルおよびエチルエトキシプロピオナート;セロソルブエステル、例えば、メチルセロソルブアセタート;芳香族炭化水素、例えばトルエンもしくはキシレン;またはケトン、例えば、メチルエチルケトン、シクロヘキサノンおよび2−ヘプタノン中でフォトレジストの成分を溶解することによりコーティング組成物として製造されうる。典型的には、フォトレジストの固形分含有量は、フォトレジスト組成物の全重量を基準にして5〜35重量%で変化する。このような溶媒の混合物も適している。
【0069】
リソグラフィ処理
液体フォトレジスト組成物は、例えば、スピンコーティング、ディッピング、ローラーコーティングまたは他の従来のコーティング技術により基体に適用されることができ、スピンコーティングが典型的である。スピンコーティングの場合、コーティング溶液の固形分含有量は、使用される具体的なスピニング装置、溶液の粘度、スピナーの速度およびスピニングされる時間量に基づいて、所望の膜厚を提供するように調節されうる。
【0070】
本発明に従って使用されるフォトレジスト組成物は、フォトレジストでのコーティングを伴う方法で従来使用されている基体に対して適切に適用される。例えば、組成物は、マイクロプロセッサおよび他の集積回路部品の製造のためのシリコンウェハまたは二酸化ケイ素で覆われたシリコンウェハ上に適用されうる。アルミニウム−酸化アルミニウム、ガリウムヒ素、セラミック、石英、銅、ガラス基体なども適切に使用されうる。フォトレジストは、反射防止層、特に有機反射防止層上にも適切に適用されうる。
【0071】
本発明のトップコート組成物は、フォトレジスト組成物に関して上述したようなあらゆる適切な方法によってフォトレジスト組成物上に適用されることができ、スピンコーティングが典型的である。
【0072】
表面上へのフォトレジストのコーティングの後で、それは、典型的にはフォトレジスト塗膜が粘着性でなくなるまで加熱することにより乾燥させられて、溶媒を除去することができ、または上述のように、フォトレジスト層は、トップコート層組成物が適用された後で乾燥させられることができ、フォトレジスト組成物層およびトップコート組成物層の双方からの溶媒が実質的に単一の熱処理工程で除かれうる。
【0073】
トップコート組成物層を有するフォトレジスト層は、次いで、パターン形成された放射線に露光され、フォトレジストの光活性成分を活性化する。
【0074】
液浸リソグラフィーシステムにおいては、露光ツール(特に投影レンズ)と基体を覆うフォトレジストとの間の空間が、水、または1種以上の添加剤、例えば、高められた屈折率の流体を提供できる硫酸セシウムと混合された水のような液浸流体で占められている。典型的には、液浸流体(例えば、水)は気泡を避けるために、例えば、水を脱ガスしてナノバブルを回避するように処理されている。
【0075】
本明細書において、「液浸露光」または他の類似の用語に関する言及は、露光が露光ツールと塗布されたフォトレジスト組成物層との間に挿入されたこのような流体(例えば、水または添加剤含有水)層を用いて行われることを示す。
【0076】
露光工程中(流体が挿入されている液浸であるか、このような流体が挿入されていない非液浸であるかにかかわらず)、フォトレジスト組成物層は、露光エネルギーが、露光ツールおよびフォトレジスト組成物の成分に依存するが、典型的には約1〜100mJ/cmの範囲であるパターン形成された活性化放射線に露光される。本明細書において、フォトレジスト組成物を、フォトレジストを活性化する放射線に露光するとの言及は、その放射線が、光活性成分の反応を生じさせる、例えば、光酸発生剤化合物から光酸を生じさせることによるなどして、フォトレジスト中に潜像を形成することができることを示す。
【0077】
上述のように、フォトレジスト組成物は短い露光波長、特にサブ−300nmおよびサブ−200nmの露光波長(248nmおよび193nmが特に好ましい露光波長である)、並びにEUVおよび157nmによって光活性化されることができる。露光に続いて、組成物の膜層は典型的には約70℃〜約160℃の温度範囲でベークされる。
【0078】
その後、膜は、典型的には、水酸化第四級アンモニウム溶液、例えば、テトラアルキルアンモニウムヒドロキシド溶液;アミン溶液、典型的には0.26Nテトラメチルアンモニウムヒドロキシド、例えば、エチルアミン、n−プロピルアミン、ジエチルアミン、ジ−n−プロピルアミン、トリエチルアミンもしくはメチルジエチルアミン;アルコールアミン、例えば、ジエタノールアミンもしくはトリエタノールアミン;および環式アミン、例えばピロールもしくはピリジンから選択される水性塩基現像剤を用いる処理によって現像される。一般に、現像は当該技術分野において認識されている手順に従う。
【0079】
基体上のフォトレジスト塗膜の現像の後で、現像された基体は、レジストが除かれた領域上で、例えば、当該技術分野で知られた手順に従って、レジストが除かれた基体領域を化学エッチングまたはめっきすることにより、選択的に処理されうる。マイクロエレクトロニック基体の製造のために、例えば、二酸化ケイ素ウェハの製造のために、適切なエッチング剤には、ガスエッチング剤、例えば、プラズマ流れとして適用されるClまたはCF/CHFエッチング剤のような塩素−もしくはフッ素−ベースのエッチング剤のようなハロゲンプラズマエッチング剤が挙げられる。このような処理後、レジストは、知られている剥離手順を用いて、処理された基体から除かれることができる。
次の非限定的な実施例は本発明の例示である。
【実施例】
【0080】
ポリマー合成
以下のポリマーが以下に記載されるように合成された:
【表1】

【0081】
実施例1:マトリックスポリマー合成
モノマーA=4,4,4−トリフルオロ−3−ヒドロキシ−1−メチル−3−(トリフルオロメチル)ブチル2−メタクリラート
モノマーB=2{[(トリフルオロメチル)スルホニル]アミノ}エチル2−メタクリラート
9.0gのモノマーA、1.0gのモノマーBおよび17.0gの4−メチル−2−ペンタノール(MIBC)が容器に入れられた。この容器が振とうされて、これら2種類のモノマーを溶解した。次いで、この容器は氷浴中に配置され、温度をこの浴と同じにした。0.3gのVazo(商標)(バゾ)52開始剤(デュポン)がこの容器に添加され、この容器が振とうされて開始剤を溶解し、そしてこの容器が氷浴に戻された。30gの4−メチル−2−ペンタノールが、磁気攪拌棒および加熱制御熱電対を備えた100mlの3ッ口丸底フラスコに入れられ、攪拌しつつ85℃に加熱された。モノマー/開始剤溶液が反応器に4.17μl/秒の供給速度で供給された(〜90分の供給時間)。供給後、反応器温度はさらに2時間の間85℃に維持され、次いで反応器は室温まで自然に冷却された。ポリマー溶液は10.9重量%の濃度および約10gの生成マトリックスポリマーを有していたことが認められた。
【0082】
実施例2:第1の追加のポリマー合成
モノマーC=1,1,1−トリフルオロ−2−ヒドロキシ−6−メチル−2−(トリフルオロメチル)ヘプタン−4−イルメタクリラート
モノマーD=2−トリフルオロメチルスルホニルアミノ−2−メチルプロピルメタクリラート
モノマーE=2,3,3−トリメチルブチルアクリラート
33.0gのモノマーC、15.0gのモノマーD、12.0gのモノマーEおよび30.0gのプロピレングリコールメチルエーテルアセタート(PGMEA)が容器に入れられた。この容器が振とうされてモノマーを溶解した。次いで、この容器は氷浴中に配置され、温度をこの浴と同じにした。1.80gのVazo(商標)(バゾ)67開始剤(デュポン)がこの容器に添加され、この容器が振とうされて開始剤を溶解し、そしてこの容器が氷浴に戻された。30gのPGMEAが、磁気攪拌棒および加熱制御熱電対を備えた250mlの3ッ口丸底フラスコに入れられ、攪拌しつつ97℃に加熱された。モノマー/開始剤溶液が反応器に19.2μl/秒の供給速度で供給された(〜70分の供給時間)。供給後、反応器温度はさらに2時間の間97℃に維持され、次いで反応器は室温まで自然に冷却された。ポリマー溶液は50.3重量%の濃度および約60gの生成した第1の追加のポリマーを有していたことが認められた。
【0083】
実施例3:第2の追加のポリマー合成
モノマーB=2{[(トリフルオロメチル)スルホニル]アミノ}エチル2−メタクリラート
モノマーF=2−アクリルアミド−2−メチル−1−プロパンスルホン酸
9.5gのモノマーBおよび10.0gのPGMEAが容器に入れられた。この容器が振とうされてモノマーを溶解した。モノマーFの25重量%水溶液の2.0gがこの容器に添加された。この容器が振とうされて、均質な溶液を得て、次いで、この容器は氷浴中に配置され、温度をこの浴と同じにした。0.15gのVazo(商標)(バゾ)67開始剤(デュポン)がこの容器に添加され、この容器が振とうされて開始剤を溶解し、そしてこの容器が氷浴に戻された。20gのPGMEAが、磁気攪拌棒および加熱制御熱電対を備えた100mlの3ッ口丸底フラスコに入れられ、攪拌しつつ97℃に加熱された。モノマー/開始剤溶液が反応器に4.17μl/秒の供給速度で供給された(〜90分の供給時間)。供給後、反応器温度はさらに1.5時間の間85℃に維持され、次いで反応器は攪拌しつつ室温まで自然に冷却された。次いで、ポリマー溶液はローター蒸発によって濃縮され、DI水中で沈殿させられた。沈殿したポリマーが集められ、45℃で真空乾燥された。この乾燥したポリマーは、次いで、MIBCに溶かされた。約10gの第2の追加のポリマーが得られた。
【0084】
トップコート組成物製造
実施例4
本発明のトップコート組成物が以下の成分を以下の量で混合することにより製造された:
【表2】

PAG=(4−(2−(tert−ブトキシ)−2−オキソエトキシ)フェニル)ジフェニルスルホニウムノナフルオロ−n−ブタン−スルホナート
【0085】
実施例5:コーティングおよび水接触角の評価
実施例4の組成物が、シリコンウェハ基体上に配置された乾燥フォトレジスト層(Epic(商標)(エピック)2096フォトレジスト、ロームアンドハースエレクトロニックマテリアルズ)上にスピンコートされた。静的(θ静的)、後退(θ後退)、前進(θ前進)および滑落(θ滑落)接触角が測定された。後退接触角および前進接触角は、液滴が滑り落ちる最初のフレームにおける液滴の、それぞれ、後退(すなわち、引きずり)側および前進側でのウェハ表面と、タンジェントラインとの間の角度として測定される。この測定は、KRUSS DSA100Goniomer(ゴニオマー)で、50μlの水滴および1単位/秒のテーブル傾き速度を用いて行われた。50μlのDI水が試験ウェハ表面上に分配された後で、ウェハステージが1単位/秒の速度で傾けられた。この傾けの際に、傾き軸に沿って、少なくとも5フレーム/秒の割合でビデオ映像が撮影された。液滴の最初の動きに対応するテーブルを傾けた角度が「滑落(sliding)角」として定義された。これら結果は以下の表1に示される。
【0086】
【表3】

【0087】
液浸リソグラフィー
実施例5のコーティング組成物が、Epic(商標)2096フォトレジスト(ロームアンドハースエレクトロニックマテリアルズ)の塗膜層を有するそれぞれのシリコンウェハ上にスピンコートされた。トップコートコーティングされたフォトレジスト層は、193nmの波長を有するパターン化された放射線を用いた液浸リソグラフィーシステムで像形成された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フォトレジストの層上のトップコート層の形成に使用するのに適した組成物であって、
前記組成物が、
水性アルカリ可溶性であるマトリックスポリマーと、
水性アルカリ可溶性であって、かつ下記一般式(I):
【化1】

(式中、Rは水素、またはC1〜C6アルキルもしくはフルオロアルキル基であり;RはC3〜C8分岐アルキレン基であり;並びに、RはC1〜C4フルオロアルキル基である)
のモノマーの重合単位を含む第1の追加のポリマーとを含み、
前記第1の追加のポリマーがマトリックスポリマーよりも少ない量で組成物中に存在し、
前記第1の追加のポリマーがマトリックスポリマーの表面エネルギーよりも低い表面エネルギーを有し、
乾燥状態でのトップコート組成物の層が75〜85°の水後退接触角を有する、
組成物。
【請求項2】
前記第1の追加のポリマーが、下記一般式(II)のモノマーの重合単位および/または下記一般式(III)のモノマーの重合単位をさらに含む請求項1に記載の組成物:
【化2】

式中、RおよびRは独立して水素、またはC1〜C6アルキルもしくはフルオロアルキルであり;Rは場合によって置換されたC3〜C10シクロアルキル、またはC3〜C10分岐アルキル基であり;Rは場合によって置換されたC1〜C6アルキレン基であり;RおよびRはそれぞれ独立してC1〜C4フルオロアルキル基であり;並びに、R10は酸不安定脱離基である。
【請求項3】
前記第1の追加のポリマーが前記一般式(II)および(III)のモノマーの重合単位を含む請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記マトリックスポリマーが1種以上のフッ素化基を含む請求項1〜3のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項5】
1種以上の強酸基を含む第2の追加のポリマーをさらに含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項6】
アルコール;アルキルエーテルおよび/またはアルカン;並びにジアルキルグリコールモノアルキルエーテル;の混合物を含む溶媒系をさらに含む、請求項1〜5のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項7】
基体上のフォトレジスト層、および
前記フォトレジスト層上の、請求項1〜6のいずれか1項に記載の組成物を含むトップコート層、
を含むコーティングされた基体。
【請求項8】
(a)フォトレジスト組成物を基体上に適用してフォトレジスト層を形成し、
(b)請求項1〜6のいずれか1項に記載の組成物を前記フォトレジスト層上に適用してトップコート層を形成し、並びに
(c)前記トップコート層および前記フォトレジスト層を化学線に露光する
ことを含む、フォトレジスト組成物を処理する方法。
【請求項9】
露光が液浸露光であり、かつ基体が半導体ウェハである請求項8に記載の方法。
【請求項10】
トップコート層が自己分離される、請求項8または9に記載の方法。

【公開番号】特開2012−237979(P2012−237979A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−91469(P2012−91469)
【出願日】平成24年4月13日(2012.4.13)
【出願人】(591016862)ローム・アンド・ハース・エレクトロニック・マテリアルズ,エル.エル.シー. (270)
【Fターム(参考)】