説明

フォトルミネッセンスカラー液晶ディスプレイ

フォトルミネッセンス液晶(LCD)ディスプレイは、ディスプレイパネルと、ディスプレイを動作させる励起放射を生成するための放射源とを含む。ディスプレイパネルは、透明な前面および背面プレートと、前面および背面プレートの間に配設される液晶と、ディスプレイの赤色、緑色および青色ピクセル区域を画定し、光のピクセル区域透過を制御するため、液晶にわたって電界を選択的に誘起するようにピクセル区域で動作可能な電極のマトリクス(薄膜トランジスタTFTのアレイ)とを含む。励起放射に反応して赤色(R)光を放出する赤色蛍光体材料は、赤色ピクセル区域に対応する背面プレートに提供され、励起放射に反応して緑色光を放出する緑色蛍光体材料は、緑色ピクセル区域に対応する背面プレートに提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2006年7月6日に出願された米国仮出願第60/819,420号の優先権の利益を主張し、その明細書および図面は参照により本明細書に組み入れられる。
【0002】
発明の背景
発明の分野
本発明は、電気信号をカラー画像に変換するカラーディスプレイ、例えばフラットパネルディスプレイおよびカラー液晶ディスプレイ(LCD)の分野に関するものである。とりわけ、本発明は、蛍光体フォトルミネッセント材料を使用し、バックライトからの励起放射に反応して色光を生成し、フォトルミネッセンスカラーLCDまたはフォトルミネッセントカラーLCDと称される、カラー透過型LCDに関連する。
【0003】
関連する技術の説明
私たちの世界を照らし、私たちに見させている光は、太陽光の電磁スペクトルの可視領域として公知の太陽光エネルギーに由来する。この領域は、スペクトル全体のうち非常に狭幅なセグメントであり、可視領域は、人間の眼に可視の部分である。それは、青色端または近紫外のおよそ440nmから、赤色または近赤外のおよそ690nmの波長範囲にある。可視領域の中央はおよそ555nmで緑色である。人間の視覚に白色光として見えるものは、実は、重み付けした量の一続きのいわゆる黒体放射からなる。人間の観察者にとって「白色」に見える光を産生するには、光は、赤色(R)およそ30パーセント、緑色(G)59パーセント、青色(B)11パーセントの成分重みを有する必要がある。
【0004】
白色である光の知覚は、RGB成分色のうち一つの量が変化したときでさえ、他の二つの量を調整し補える限り、維持できる。例として、赤色光源がより長い波長に移る場合、白色光は、他の二つの色が不変のままであれば、よりシアン色に見える。白色バランスは、しかしながら、緑色および青色の重みを当初の値である11および59パーセント以外のレベルにそれぞれ変化させることにより復元できる。人間の眼は、密な間隔の色を白色光の個別の赤色、緑色および青色(RGB)原成分に分解する能力を有しないが、それは人間の視覚システムがこれら三つの成分を混合し中間色を形成するからである。読者は、恐らく、人間の視覚が三原色のみを残し(および/または検知し)、他の色をすべてこれら原色の組み合わせとして知覚することを思い起こす。
【0005】
今日使用されるカラー液晶ディスプレイ(LCD)は、液晶(LC)セルのマトリクス/アレイが形成する画素、または「ピクセル」に基づいている。公知のように、LCを通過する光の強度は、LCにわたって印加される電界、電圧に反応して光の偏光角を変化させることにより制御できる。カラーLCDにおいては、各ピクセルは、実際は、三つの「サブピクセル」:一つの赤色、一つの緑色および一つの青色からなる。まとめられて、このサブピクセルトリプレットは、単一ピクセルと呼ばれるものを編成する。人間の眼が単一白色ピクセルとして知覚するものは、実際には、重み付けした強度を持つRGBサブピクセルトリプレットであり、三つのサブピクセルの各々は、同じ明るさを有するように見える。同様に、人間の眼が隙間のない白色の線を見るとき、実際に表示されているのは、一連または一列のRGBトリプレットである。マルチサブピクセルの配置は、光源の測光出力を所望の色座標一式に調節して操作することができ、それにより、優れた演色評価数(CRI)および豊富な色パレットのための動的な色選択を供する。
【0006】
現在のカラー透過型LCD技術では、この色調節は、カラーフィルターを使用して実施される。従来のカラー透過型LCDの動作の原理は、液晶(LC)マトリクスの背後に置かれる輝度を持つ白色光バックライティング源および液晶マトリクスの逆側に位置するカラーフィルターのパネルに基づく。液晶マトリクスは、デジタル的にスイッチングされ、各ピクセルの各カラーフィルターに到達するバックライティング源からの白色光の強度を調整し、それにより、RGBサブピクセルによって透過された着色光の量を制御する。カラーフィルターを出る光は、カラー画像を生成する。
【0007】
通常のLCD構造は、サンドイッチ状で、液晶が二つのガラスパネル間に提供されており、一つのガラスパネルは、それぞれのサブピクセルに対応するLCの電極にわたって印加される電圧を制御するスイッチング要素を含有し、他のガラスパネルは、カラーフィルターを含有する。構造の背面に置かれる、換言すれば、バックライティング源に対面するLCマトリクスを制御するスイッチング要素は、通常、薄膜トランジスタ(TFT)のアレイを含み、それぞれのTFTは、各サブピクセルに対して提供される。カラーフィルターガラスパネルは、まとめてグループ化された原色(赤色、緑色および青色)カラーフィルター一式を持つガラスプレートである。光は、カラーフィルターガラスパネルを出て画像を形成する。
【0008】
公知のように、LCは、印加される電界、電圧に応じて光の偏光平面を回転させる特性を有する。偏光フィルターの使用およびLCにわたって印加される電圧に応じて光の偏光の回転角度を制御することにより、バックライティング源がフィルターへ供給する白色光の量は、赤色、緑色および青色の各サブピクセルに対して制御される。フィルターを透過した光は、多様な色を生成し、視聴者がTVスクリーンまたはコンピュータモニタで見る画像を産生する。
【0009】
通常、バックライティングに使用する白色光源は、水銀を充填した冷陰極蛍光ランプ(CCFL)を含む。CCFL管は、通常、ガラスで、不活性ガスが充填されている。ガスは、管内に位置する電極にわたって電圧が印加されるとき、イオン化し、イオン化ガスは、紫外(UV)光を産生する。順々に、UV光は、ガラス管の内側に塗布された一つ以上の蛍光体を励起し、可視光を生成する。反射体は、可視光をモニタへ方向転換させて可能な限り均一に広げ、薄いフラットなLCDをバックライトする。バックライト自体は、常に利用できる色温度および色空間を画定し、それは、通常、NTSC(National Television Standards Committee)要件の約75パーセントである。
【0010】
公知のLCDシステムでは、カラーフィルターは、LCDの色を鮮明にするための主要成分である。薄膜トランジスタ液晶ディスプレイ(TFT LCD)のカラーフィルターは、カラーフィルタープレートに包含される三原色(RGB)からなる。カラーフィルタープレートの構造は、ブラック(不透明)マトリクスおよび樹脂膜を含み、樹脂膜は、三原色の染料または顔料を含有する。カラーフィルターの要素は、TFTがアレイ配列したガラスプレート上の単位ピクセルと一対一で対応して並ぶ。単位ピクセルのサブピクセルが小さ過ぎて単独では識別できないため、RGB要素は、人間の眼には三色の混合のように見える。結果として、これら三原色を混合することにより、一部の制限付きではあるが、任意の色を産生できる。
【0011】
近年の高輝度光放出ダイオード(LED)の開発は、向上したカラースペクトルを持つLEDバックライティングを可能にし、より広い範囲のスペクトルカラーをディスプレイに提供するために使用されてきた。加えて、LEDバックライティングは、フィードバックセンサと組ませたとき、白色点の調節を可能にし、確実にディスプレイが一貫して既定の性能まで動作するようになった。
【0012】
これらのLEDに基づくバックライティングシステムでは、赤色、緑色および青色(RGB)LEDから出力される光は、等しい割合で混合され、白色光をもたらす。この手法は、残念ながら、各LEDが異なる駆動条件を要求することから異なる回路が必須なので、三つの異なるカラーLEDの強度を適切に制御するための複雑な駆動回路を要する。
【0013】
代替手法は、黄色蛍光蛍光体を塗布した単一青色LEDチップを含む白色放出LEDを使用するものであり、黄色蛍光体は、青色LEDによって放出される青色光の分を吸収し、次に、その光を(下方変換として公知であるプロセスにおいて)黄色光として再放出する。黄色蛍光体によって生成された黄色光と青色LEDからの青色光を混合することにより、全可視スペクトルに及ぶ白色光を産生することができる。あるいはまた、紫外LEDは、白色光を産生するために、赤色−緑色−青色蛍光体を塗布でき、このケースでは、紫外LEDからのエネルギーは、実質的に不可視で、結果として得られる白色光に成分を与えられないため、蛍光体の励起源としてのみ機能する。残念ながら、そのようなLEDの白色光産生物は、現在のLCDに使用されるカラーフィルターとはあまり適合せず、有意な量のバックライト強度が消耗される。
【0014】
米国特許第4,830,469号は、UV光を使用し、赤色、緑色および青色光放出蛍光体ピクセルを励起し、それにより、RGBカラーフィルターを必要としない、LCDを提案している。そのようなLCDを、フォトルミネッセンスカラーLCDと呼ぶ。360〜370nmの波長のUV光を放出する水銀ランプをバックライトとして使用し、赤色、緑色および青色放出蛍光体を前面基板プレートに提供する。液晶マトリクスによって変調された後のUV光は、次に、反応して赤色、緑色および青色光を放出する、前面プレートの蛍光体サブピクセルに入射する。
【0015】
米国特許第6,844,903号は、波長460nmの均一な青色光を液晶層の背面に供給する、カラー透過型LCDを教示している。液晶層によって変調された後の青色光は、次に、液晶層の上方に置かれる蛍光体材料の背面表面に入射する。第一蛍光体材料は、青色光で照射されるとき、ディスプレイの赤色ピクセル区域のために赤色光を生成し、第二蛍光体材料は、青色光で照射されるとき、ディスプレイの緑色ピクセル区域のために緑色光を生成する。青色光がバックライトから提供されるため、青色ピクセル区域には蛍光体材料を蒸着しない。好適な拡散材(例を挙げれば、散乱パウダー)を青色サブピクセル区域に置くことができ、青色ピクセルは、赤色および緑色ピクセルの視野角特性に適合する。
【0016】
米国特許第2006/0238103号および米国特許第2006/0244367号は、それぞれが波長360〜460nmのUV光および波長390〜410nmの近青色UV光を使用し、赤色、緑色および青色光放出蛍光体ピクセルを励起する、フォトルミネッセンスカラーLCDを教示している。近青色UVバックライティングの使用は、UV光によって引き起こされる液晶の劣化を低減する。
【0017】
フォトルミネッセンスカラーLCDのさらなる例は、日本国特許公開公報第2004094039号に開示されている。
【0018】
本発明は、蛍光体材料を利用し、異なる色のサブピクセルの光を生成する、フォトルミネッセンスカラーLCDに関連する。当技術分野において要望されるのは、RGB蛍光体に基づく演色スキームを使用し、色を鮮明にして画像の輝度を向上させる、LCDディスプレイである。
【発明の概要】
【0019】
本発明の態様は、向上した演色を有する低コストで高エネルギー変換効率のカラーLCDに関係する。本発明に従ったLCDは、高輝度および鮮烈で鮮やかな範囲の色を持つ画像を実現させる。そのような向上したLCDは、テレビ、モニタおよびコンピュータモニタ、衛星ナビゲーションシステムのビュースクリーン、ならびに手のひらサイズの装置、例えば携帯電話およびパーソナルビデオ/音楽システムを非限定的に包含する、様々な電子装置における用途を有する。
【0020】
最も一般的な機器構成では、本態様のディスプレイシステムは、表示する画像を生成するための赤色−緑色(RG)または赤色−緑色−青色(RGB)蛍光体パネルと、蛍光体パネルの蛍光体を励起するための単色または準単色の短波長光源とを含む。
【0021】
本発明によると、ディスプレイパネルと、ディスプレイを動作させる励起放射を生成するための放射源とを含む、フォトルミネッセンス液晶ディスプレイであって、ディスプレイパネルが、透明な前面および背面プレートと、前面および背面プレートの間に配設される液晶と、ディスプレイの赤色、緑色および青色ピクセル区域を画定し、光のピクセル区域透過を制御するため、液晶にわたって電界を選択的に誘起するようにピクセル区域で動作可能な電極のマトリクスと、赤色ピクセル区域に対応する背面プレートに提供される、励起放射に反応して赤色光を放出する赤色蛍光体材料と、緑色ピクセル区域に対応する背面プレートに提供される、励起放射に反応して緑色光を放出する緑色蛍光体材料とを含む、フォトルミネッセンス液晶ディスプレイが提供される。,
【0022】
放射源は、およそ400〜およそ480nmの範囲にある励起波長を持つ青色放出LEDか、およそ360〜400nmの範囲にある励起波長を持つUV LEDのいずれかであることができる。放射源は、バックライティング源として水銀(Hg)プラズマ放電(プラズマは不活性ガス、例えばXeまたはNeに由来することもできる)によって生成されるUV放出線を含むこともでき、UV放出線はおよそ254nmに中心があることができる。あるいはまた、単色または準単色励起源は、147〜190nmの範囲を持つ波長を有することができる。
【0023】
概して、単色または準単色励起源は、二つの群:1)およそ200〜およそ430nmの範囲にある波長を有するもの、および2)およそ430〜480nmの範囲にある波長を有するもののうち一つに類別することができる。いずれにしても、これらは短波長バックライティング源と名付けることができる。
【0024】
励起源がUV励起放射を放出するように動作可能なとき、LCDは、さらに、励起放射に反応して青色光を放出する青色蛍光体材料を含み、青色蛍光体材料は青色ピクセル区域に対応する背面プレートに提供される。
【0025】
電極のマトリクスは、薄膜トランジスタ(TFT)のアレイを含むことができ、一つの薄膜トランジスタは、各ピクセルに対応する。TFTは、ディスプレイの前面プレートまたは背面プレートに提供できる。
【0026】
蛍光体材料は、背面プレートの下面または上面に提供できる。
【0027】
LCDは、さらに、前面プレートに第一偏光フィルター層と、背面プレートに第二偏光フィルター層とを含むことができ、第一偏光フィルター層の偏光方向の向きは、第二偏光フィルター層の偏光方向に対して垂直である。
【0028】
放射源が400〜480nmの範囲の波長を有する青色光を放出するLEDであるとき、赤色蛍光体は、式(Sr,Ba,Mg,Al)SiO:Eu2+,Fを有することができ、緑色蛍光体は、式(Sr,Ba,Mg)SiO:Eu2+,Fを有することができる。
【0029】
あるいはまた、放射源が360〜400nmの範囲の波長を有する光を放出するUV放出LEDであるとき、赤色蛍光体は、式(Sr,Ba,Mg,Al)SiO:Eu2+,F、CaNaMg12:Eu3+またはYVO:Euを有することができ、緑色蛍光体は、式(Sr,Ba,Mg)SiO:Eu2+,Fまたは(Ba,Eu)(Mg,Mn)Al1017を有することができ、青色蛍光体は、式BaMgAl1017:Eu、(Sr,Ca,Ba,Mg)10(POCl:Eu、(Ba,Sr,Eu)(Mg,Mn)Al1017、Sr10(POCl:Euまたは(Ba,Eu)MgAl1017を有することができる。
【0030】
さらなる配置では、励起放射が254nmオーダーの波長を有するUV光を含むとき、赤色蛍光体は、式Y:EuまたはYVO:Euを有することができ、緑色蛍光体は、式LaPO4:Ce,Tb、(Ce,Tb)(Mg)Al1119または(Ba,Eu)(Mg,Mn)Al1017を有することができ、青色蛍光体は、式(SrCaBaMg)(POCl:Eu、(Ba,Eu)MgAl1627、(Ba,Sr,Eu)(Mg,Mn)Al1017またはSr10(POCl:Eu、(Ba,Eu)MgAl1017を有することができる。
【0031】
なおもさらなる態様では、放射源が147〜190nmの範囲の波長を有するプラズマ放出光であるとき、赤色蛍光体は、式(Y,Gd)BO:Euを有することができ、緑色蛍光体は、式ZnSiO:Mnを有することができる。
【0032】
カラーフィルターを採用する現在のLCD技術は、およそ10〜20パーセントのみの光出力効率を有し、それは液晶ディスプレイの前面で達成可能である。対照的に、赤色−緑色蛍光体要素に追加して青色LED照明の使用を包含する、蛍光体に基づく演色スキームを使用する本態様は、最大90パーセントの光出力効率を有することができる。より広範な範囲の色によって、蛍光体とLEDバックライトは、より真実に近い肌の色合い、ならびに鮮やかな赤色および緑色をレンダリングし、より良いコントラスト比、純度および写実を供し、新たな消費者の期待に応える。
【図面の簡単な説明】
【0033】
本発明がより良好に理解されるため、ここで、添付図面を参照し、本発明の態様を例の方途としてのみ、添付の図面を参照しつつ記載する。
【図1】本発明によるフォトルミネッセンスカラーLCDの概略断面模式図である。
【図2a】図1のディスプレイの蛍光体色要素プレートの単位ピクセルの概略図である。
【図2b】図3のディスプレイの蛍光体色要素プレートの単位ピクセルの概略図である。
【図3】図1に示す機器構成の代替態様の概略断面模式図である。
【図4】UVおよび青色光に励起された蛍光体によって生成された、赤色、緑色および青色光の概略正規化放出スペクトルを示す。
【図5】青色光によってバックライト点灯した、本発明に従ったさらなるフォトルミネッセンスカラーLCDの概略断面模式図である。
【図6】UVプラズマ放電によってバックライト点灯した、本発明に従ったもう一つのフォトルミネッセントカラーLCDの概略断面模式図である。
【0034】
発明の詳細な記載
本明細書で開示するのは、電子ディスプレイ、例えば液晶ディスプレイ(LCD)の輝度および鮮明さを改善し向上させるために設計された、新規の演色スキームである。本発明の態様は、二つの主要成分:1)赤色−緑色(RG)または赤色−緑色−青色(RGB)蛍光体パネル、および2)RG蛍光体パネルのRGB蛍光体を励起するための単色または準単色短波長光源を組み入れる。これらの成分は、先行技術のLCDに以前から使用されてきた、カラーフィルターパネルや広帯域白色光源にそれぞれ取って代わる。
【0035】
図1を参照して、本発明の第一態様による、フォトルミネッセンスカラーLCD100の概略断面模式図を示す。LCD100は、ディスプレイパネル102と、バックライティングユニット104とを含む。
【0036】
バックライティングユニット104は、単一の励起放射源または複数の源106のいずれか、および光拡散平面108を含む。各放射源106は、単色または準単色であることができ、狭幅な波長範囲/色の励起放射を放出するように動作可能である。図1の配置では、その、または各励起源106は、UV放出LED(波長範囲360〜400nm)、UV放出ランプ(254nm)、プラズマ放電(147〜190nm)または光源、例えば不活性ガスを充填したアークランプのUV放電を含む。光拡散平面108は、ディスプレイパネル104がその全表面に及ぶ励起放射で実質的に均等に照射されることを確実にする。
【0037】
ディスプレイパネル104は、透明な前面(光/画像放出)プレート110、透明な背面プレート112、および前面プレートと背面プレートとの間の容量を充填する液晶(LC)114を含む。前面プレート110は、ガラスプレート116を含み、その下側、換言すれば、LC114に対面するプレートの面に第一偏光フィルター層118、次に、薄膜トランジスタ(TFT)層120を有する。背面プレート112は、第二偏光フィルター層124および透明な共通電極平面126(例として透明な酸化インジウムスズ、ITO)をLCに対面する上表面に、蛍光体色要素プレート128をバックライティングユニット102に対面する下側に有するガラスプレート122を含む。記載するように、蛍光体色要素プレート103は、バックライティングユニット102からのUV励起放射に反応して赤色(R)、緑色(G)および青色(B)光をそれぞれ放出する、異なる蛍光体130、132、134のアレイを含む。TFT層120は、蛍光体色要素プレート128の各ピクセルユニット200の各個別色蛍光体サブピクセル130、132、134に対応するトランジスタがある、TFTのアレイを含む。公知のように、二つの偏光フィルター118、124の偏光方向は、互いに垂直に位置合わせされている。
【0038】
RGB蛍光体130、132、134は、その結果が先行技術のLCD装置のカラーフィルターが達成する結果に類似するような形で機能し、各RGBピクセルは、多様な色を産生することができる。先行技術のカラーフィルターと本発明で開示するRGB蛍光体との相違は、カラーフィルターが一定の波長の光のみの通過させるのに対して、蛍光体は、バックライティングユニットからのUV放射による励起に反応して選択された波長(色)の光を生成することにある。別の言い方をすれば、カラーフィルターが一定の波長範囲内の光のみの透過させるのに対して、RBG蛍光体は、ピーク波長に中心がある一定のスペクトル幅を持つ、異なる色の光を放出する。
【0039】
RGB蛍光体は、先行技術のディスプレイのカラーフィルターが構成される方途と類似の形で、色プレート128にパッケージ化/構成することができる。これを、UV励起された蛍光体に対して赤色(R)、緑色(G)および青色(B)の原色に中心がある放出を持つ三つの蛍光体202、204、206が充填されたサブピクセルトリプレットを含む、蛍光体色要素プレート128の単位ピクセル200を示す図2aに例証する。金属、例えば、例として、クロムのグリッドマスク(ブラックマトリクスとも称される)208は、蛍光体色ブロック202、204、206を画定し、蛍光体サブピクセルおよび単位ピクセルの間に不透明なギャップを提供する。また、ブラックマトリクスは、TFTへの迷光を遮断し、隣接するサブピクセル/単位ピクセル間のクロストークを防ぐ。ブラックマトリクス202からの反射を最小化するために、CrとCrOの二重層を使用することができるが、当然ながら、層は、CrおよびCrO以外の材料を含むことができる。蛍光体材料の下層または上層にスパッタ蒸着できるブラックマトリクス膜は、フォトリソグラフィを包含する方法を使用してパターン化することができる。
【0040】
RGB蛍光体を、ガラスプレート122内/上に組み入れることができる様々な方途がある。通常、大抵の蛍光体材料は硬質な物質であり、個別の粒子は様々な不規則形状を有することができる。それらをプラスチック樹脂に直接組み入れることは困難であることができるが、しかしながら、蛍光体がアクリル樹脂、ポリエステル、エポキシ、ポリマー、例えばポリプロピレンならびに高および低密度ポリエチレン(HDPE、LDPE)ポリマーと相性がよいことは公知である。材料は、鋳造、浸漬、塗布、押出成形または成形することができる。一部の態様では、蛍光体含有材料をクリアプラスチックに組み入れるために、好ましくはマスターバッチを使用することができ、それらは、次に、ガラスプレート122に塗布される。現実には、RGB蛍光体含有ピクセルマトリクスを有するプラズマディスプレイパネルを製作するための任意の方法、スクリーン印刷、フォトリソグラフィおよびインク印刷技法を使用し、本蛍光体色プレート128を製作することもできる。
【0041】
RGB蛍光体色要素プレート128の赤色、緑色および青色蛍光体には、様々な組成を利用できる。母材料は、通常、酸化物であり、アルミン酸塩、ケイ酸塩、リン酸塩またはホウ酸塩を含むことができるが、これらの種類の化合物に限られるものではない。例として、赤色、緑色および青色蛍光体は、付活剤と名付けられた希土類要素がドーピングされた、アルミン酸塩、ケイ酸塩、硫酸塩、酸化物、塩化物、フッ化物および/または窒化物を含むことができる。付活剤は、二価ユーロピウムを非限定的に包含することができる。ドーパント、例えばハロゲンは、置換的にまたは格子間で結晶格子に組み入れることができ、例として、母材料の酸素格子サイトにおよび/または母材料内で格子間に存在することができる。好適な蛍光体組成の例を、それらが励起することができる波長範囲とともに、表1に付与する。
【表1】

【0042】
本発明のLCDの効果は、蛍光体色要素プレートをLCのバックライティングユニット側に提供することでUV活性化光がLCに到達して引き起こす低下を防ぐことによる、LC寿命の延長である。液晶材料のUV吸収が励起強度を著しく弱める場合、蛍光体を塗布した色パネルに近接して励起光源を設置することでディスプレイパネルの量子効率は向上する。
【0043】
青色光(400〜480nm)で活性化した蛍光体を使用する、本発明に従った代替カラーLCD300を図3に例示する。本明細書の至るところで、似た部位を表すために、図番が前に付いた、似た符番を使用する。例として、図1のLC114は、図3では314と表す。LCD100とは対照的に、バックライティングユニット302は、赤色および緑色蛍光体サブピクセル330、332をそれぞれ励起するための青色光放出ダイオード(LED)306を組み入れる。図2bは、蛍光体色要素プレート328の単位ピクセル210である。単位ピクセル210は、赤色(R)および緑色(G)光をそれぞれ放出する二つの青色光励起可能蛍光体202、204を包含し、第三サブピクセル208は、空の状態にしておき、換言すれば、蛍光体を包含せず、青色放出LEDバックライティングユニット302からの青色光を透過させる。このケースでは、単色または準単色のバックライティングユニット307は、二用途の役割を果たし、第一に、赤色および緑色蛍光体を励起する青色励起放射を生成し、第二に、バックライティング光の青色部分を提供する。
【0044】
赤色、緑色および青色蛍光体からの例示的な放出スペクトルを概略的に図4に示す。そのような放出につながる例示的な単色および/または準単色光源(バックライティングユニット)107、307は、紫外(UV)光放出ダイオード(LED)およびUVランプからの単一または複数の鮮明な線放出、例えば、非限定的であるが、水銀ランプからの256nm線である。
【0045】
さらなる態様では、図5に例証するように、背面プレート512は、TFTプレート520および蛍光体色要素プレート528の両方を包含する。この配置では、TFTプレート520は、LCに対面する、ガラスプレート522の上表面上の第二偏光フィルター524上に提供され、蛍光体色プレート528は、ガラスプレートの逆の下面上に提供される。例証された態様では、バックライティングユニット502は、青色光励起源を含み、一つ以上の青色放出LED506を含むことができる。図3の態様と同様に、赤色530および緑色532蛍光体サブピクセルのみが蛍光体色要素プレート528に組み入れられ、青色励起光は演色に不可欠な三原色の第三番目としての役割も果たす。
【0046】
本発明のさらなる態様に従ったLCD600を図6に例証する。図6では、UV励起照射は、ガス、例えばHg、XeまたはNeのプラズマ放電636によって生成され、プラズマ636は、プラズマディスプレイパネル(PDP)で発生する蛍光体放出の方途と類似の様式でRGB蛍光体630、632および634を励起するために使用される。しかしながら、図6に例証した態様とPDPとの相違は、本態様では、蛍光体着色要素すべてに集団励起を提供する、単一プラズマ源のみがあることにある。これは、蛍光体ピクセルと同じ数のプラズマ源が提供され、各個別蛍光体ピクセルが各自のプラズマ源によって励起される、プラズマディスプレイ技術と対照的である。
【0047】
さらなる態様では、例証しないが、蛍光体色プレートを、前面プレートの部位として、換言すれば、バックライティングユニットに対して液晶の逆側に提供できる。そのような配置では、TFTプレートを前面プレートまたは背面プレートに提供できる。
【0048】
本発明が記載される特有の態様に限られず、変形態様を本発明の範囲内で作製できることが認識される。例として、製作の容易さのために、蛍光体色要素プレートを背面プレートの下側に製作できる一方で、他の配置では、背面プレートの上表面および色要素プレートの上部に提供される第一偏光フィルター上に提供できる。
【0049】
本発明に従ったLCDでは、プラズマディスプレイパネル(PDP)技術に匹敵する鮮烈で鮮やかな範囲の色を産生することが期待される。カラーフィルターが色を鮮明にするためのLCDの主要成分であることは公知であるが、それらは、製造コストの20パーセントまで占める。特に、青色LEDのアレイを使用してバックライティングを提供するとき、ピクセル区域の三分の二のみを蛍光体で塗布する必要があることから、本態様による有意なコスト低減が期待される。
【0050】
加えて、LEDは、他の光源よりもより長い寿命時間を有することが期待されることから、バックライティング励起源として好んで選ばれる。LEDは、焼け付いてしまうフィラメント、割れてしまう脆いガラス管、保護すべき可動部位および、より低温の動作温度がないことから、より耐久性がある。事実、LEDの寿命期間は、最良の蛍光電球の二倍の長さと推定される。LEDの数と密度を調整することで、液晶ディスプレイの平均寿命を有意に損なうことなく、高輝度値を達成できる。その上、LEDはより低い電力消費で、より効率的である。
【0051】
より効率的なバックライティングへの要求は、着実に増加してきた。カラーフィルターを採用する現在のLCD技術は、液晶ディスプレイの前面において達成可能なおよそ10〜20パーセントのみの光出力効率を有する。対照的に、赤色−緑色蛍光体要素に追加して青色LED照明の使用を包含する、RGB蛍光体に基づく演色スキームを使用する本態様は、最大で90パーセントの光出力効率を有することができる。その上、蛍光体ピクセルを持つ液晶ディスプレイを有するテレビセットは、非常に広い水平および鉛直の視野角を提供することもできる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ディスプレイパネルと、ディスプレイを動作させる励起放射を生成するための放射源とを含む、フォトルミネッセンス液晶ディスプレイであって、ディスプレイパネルが、透明な前面および背面プレートと、前面および背面プレートの間に配設される液晶と、ディスプレイの赤色、緑色および青色ピクセル区域を画定し、光のピクセル区域透過を制御するため、液晶にわたって電界を選定的に誘起するようにピクセル区域で動作可能な電極のマトリクスと、赤色ピクセル区域に対応する背面プレートに提供される、励起放射に反応して赤色光を放出する赤色蛍光体材料と、緑色ピクセル区域に対応する背面プレートに提供される、励起放射に反応して緑色光を放出する緑色蛍光体材料とを含む、フォトルミネッセンス液晶ディスプレイ。
【請求項2】
青色ピクセル区域に対応する背面プレートに提供される、励起放射に反応して青色光を放出する青色蛍光体材料をさらに含む、請求項1記載の液晶ディスプレイ。
【請求項3】
電極のマトリクスが薄膜トランジスタのアレイを含み、一つの薄膜トランジスタが各ピクセルに対応する、請求項1記載の液晶ディスプレイ。
【請求項4】
薄膜トランジスタが前面プレートに提供される、請求項3記載の液晶ディスプレイ。
【請求項5】
薄膜トランジスタが背面プレートに提供される、請求項3記載の液晶ディスプレイ。
【請求項6】
放射源が単色励起源および準単色励起源からなる群より選択されるバックライティングユニットを含む、請求項1記載の液晶ディスプレイ。
【請求項7】
蛍光体材料が背面プレートの下面に提供される、請求項1または2記載の液晶ディスプレイ。
【請求項8】
蛍光体材料が背面プレートの上面に提供される、請求項1または2記載の液晶ディスプレイ。
【請求項9】
前面プレートに第一偏光フィルター層および背面プレートに第二偏光フィルター層をさらに含み、第一偏光フィルター層の偏光方向の向きが第二偏光フィルター層の偏光方向に対して垂直である、請求項1記載の液晶ディスプレイ。
【請求項10】
赤色蛍光体が式(Sr,Ba,Mg,Al)SiO:Eu2+,Fを有し、緑色蛍光体が式(Sr,Ba,Mg)SiO:Eu2+,Fを有し、放射源が400〜480nmの範囲の波長を有する青色光を放出する光放出ダイオードである、請求項1記載の液晶ディスプレイ。
【請求項11】
赤色蛍光体が(Sr,Ba,Mg,Al)SiO:Eu2+,F、CaNaMg12:Eu3+およびYVO:Euからなる群より選択され、緑色蛍光体が(Sr,Ba,Mg)SiO:Eu2+,Fおよび(Ba,Eu)(Mg,Mn)Al1017からなる群より選択され、青色蛍光体がBaMgAl1017:Eu、(Sr,Ca,Ba,Mg)10(POCl:Eu、(Ba,Sr,Eu)(Mg,Mn)Al1017、Sr10(POCl:Euおよび(Ba,Eu)MgAl1017からなる群より選択され、放射源が360〜400nmの範囲の波長を有する光を放出するUV放出光放出ダイオードである、請求項2記載の液晶ディスプレイ。
【請求項12】
赤色蛍光体がY:EuおよびYVO:Euからなる群より選択され、緑色蛍光体がLaPO4:Ce,Tb、(Ce,Tb)(Mg)Al1119および(Ba,Eu)(Mg,Mn)Al1017からなる群より選択され、青色蛍光体が(SrCaBaMg)(POCl:Eu、(Ba,Eu)MgAl1627、(Ba,Sr,Eu)(Mg,Mn)Al1017、Sr10(POCl:Eu、(Ba,Eu)MgAl1017からなる群より選択され、励起放射が254nmオーダーの波長を有するUV光を含む、請求項2記載の液晶ディスプレイ。
【請求項13】
赤色蛍光体が式(Y,Gd)BO:Euを有し、緑色蛍光体が式ZnSiO:Mnを有し、青色蛍光体が式BaMgAl1017:Euを有し、放射源が147〜190nmの範囲の波長を有するプラズマ放出光である、請求項2記載の液晶ディスプレイ。

【図1】
image rotate

【図2a】
image rotate

【図2b】
image rotate

【図3】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図4】
image rotate


【公表番号】特表2009−543130(P2009−543130A)
【公表日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−518374(P2009−518374)
【出願日】平成19年7月6日(2007.7.6)
【国際出願番号】PCT/US2007/015515
【国際公開番号】WO2008/005508
【国際公開日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【出願人】(506358764)インテマティックス・コーポレーション (40)
【氏名又は名称原語表記】INTEMATIX CORPORATION
【Fターム(参考)】