説明

フォトレジスト用化合物、フォトレジスト膜、フォトレジスト材料、フォトレジスト液、およびこれらを用いるエッチング方法

【課題】フォトリソグラフィを利用した微細加工を行うために使用される、新規なフォトレジスト用化合物、上記フォトレジスト用化合物を用いたフォトレジスト材料、フォトレジスト液、およびフォトレジスト膜、ならびに上記フォトレジスト膜を使用して、所望の表面をエッチングするエッチング方法の提供。
【解決手段】オキソノール色素骨格を有するフォトレジスト用化合物。前記フォトレジスト用化合物を含むフォトレジスト材料、フォトレジスト液、およびフォトレジスト膜、およびポジ型耐エッチングレジスト材料。前記フォトレジスト膜を使用する被加工表面のエッチング方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微細なパターンを形成可能なフォトレジスト用化合物、フォトレジスト膜、フォトレジスト材料およびフォトレジスト液に関する。更に本発明は、上記フォトレジスト膜を用いる被加工表面のエッチング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体素子、磁気バブルメモリ、集積回路等の電子部品を製造工程において、微細パターンを形成し、これをエッチングマスクとして、その下層にある表面をエッチングする技術が広く用いられている。
更に近年、LEDのような発光素子が種々の用途に活用されている。このLEDは、基板上に発光層を含む半導体多層膜を積層した半導体素子(以下、これを「チップ」とも言う。)を樹脂等でパッケージしたものであるが、当該チップの光取出し口の最上層(または最外層)とパッケージの樹脂との屈折率が相違するので、これら両者の界面で反射が起こり発光効率が低下してしまう。そのため、このような界面での反射を防止して、その発光効率を改善する目的で、上記チップの光取出し口の表面に微細な凹凸構造を設けることが提案されている(例えば特許文献1および2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−174191号公報
【特許文献2】特開2003−209283号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、その第5の実施態様において、上記発光ダイオードの光取出し口を構成する最上層として反射防止膜を設け、その反射防止膜の表面に微細な凹凸形状を形成するために、予め微細な凹凸形状を形成した金型を製造しておき、この金型で上記反射防止膜の表面をプレス成形して、光取出し口の表面に凹凸形状を形成する方法、またはその変形例として、金型を使用したプレス成形に代えて反射防止膜の表面をグラインダーでランダム方向に荒らす方法が開示されている。しかし、前者の方法は金型を作成するという面倒なプロセスを必要とする上に、金型作成のコストがかかる欠点があり、後者の方法では、常に均一な粗面とすることが困難で、製品に性能上のバラつきが生じるという問題があった。
他方、特許文献2では、ブレード加工で半導体素子の光取出し口の最上層を構成する電流拡散層に断面三角形状のラインアンドスペースパターンを形成し、さらに高温の塩酸処理をして電流拡散層の表面にサブミクロンの凹凸を形成する方法と、電流拡散層上にフォトレジストを使ってラインアンドスペースパターンを形成し、さらにリアクティブ・イオン・エッチング(RIE)により上記と同様の微小な凹凸を電流拡散層の表面に形成する方法が開示されている。しかしながら、これらの方法でも煩雑なプロセスを必要とするという問題があった。
【0005】
微細な凹凸構造の作製、半導体装置の作製等に使用される技術として、従来からフォトリソグラフィが知られている。フォトリソグラフィでは、感光性化合物を含有するレジスト組成物を基板等の表面に塗布した後、フォトマスクを介してパターン露光し、次いで現像することにより露光部または非露光部のいずれか一方を選択的に除去してレジストパターンを形成する。その後、このレジストパターンをエッチングマスクとして使用することにより、基板等の表面に微細な凹凸パターンまたは半導体素子を形成することができる。
【0006】
しかし、従来の感光性化合物を含有するフォトレジスト液を使用したフォトリソグラフィーでは、パターン露光後に現像する工程が必須であり、その分だけ工程が増えてしまう。
【0007】
そこで本発明の目的は、フォトリソグラフィを利用した微細加工を行うために使用される、新規なフォトレジスト用化合物、より詳しくは、パターン露光後の現像工程を省略することができる、新規なフォトレジスト用化合物を提供することにある。
本発明のもう一つの別の目的は、上記のフォトレジスト用化合物を用いたフォトレジスト材料、フォトレジスト液およびフォトレジスト膜を提供することにある。
本発明の更に別の目的は、上記のフォトレジスト膜を使用して、所望の表面をエッチングするエッチング方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討を重ねた結果、オキソノール色素を含有する色素膜へパターン露光すると、色素の発熱により光照射部分に化学的および/または物理的な物性変化が生じ、このパターン露光後の色素膜がエッチング用マスクとして使用することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
即ち、上記目的は、下記手段によって達成された。
[1]オキソノール色素骨格を有することを特徴とするフォトレジスト用化合物。
[2]下記一般式(I)で表される化合物である[1]に記載のフォトレジスト用化合物。
【化1】

[一般式(I)中、A、B、CおよびDは、それぞれ独立に電子求引性基を表し、ただし、Aで表される電子求引性基とBで表される電子求引性基のハメットのσp値の合計は0.6以上であり、Cで表される電子求引性基とDで表される電子求引性基のハメットのσp値の合計は0.6以上であり、AとBとは互いに連結して環を形成してもよく、CとDとは互いに連結して環を形成してもよく、Rはメチン炭素上の置換基を表し、mは0以上3以下の整数を表し、nは0以上(2m+1)以下の整数を表し、nが2以上の整数のとき、複数存在するRはそれぞれ同一でも異なっていてもよく、互いに連結して環を形成してもよく、Xは一般式(I)で表される化合物の電荷を中和する対イオンを表す。]
[3]熱分解温度が100℃以上500℃以下である[1]または[2]に記載のフォトレジスト用化合物。
[4]ポジ型フォトレジスト用化合物である[1]〜[3]のいずれかに記載のフォトレジスト用化合物。
[5][1]〜[3]のいずれかに記載のフォトレジスト用化合物を含むフォトレジスト材料。
[6]前記フォトレジスト用化合物を主成分として含む[5]に記載のフォトレジスト材料。
[7]ポジ型フォトレジスト材料である[5]または[6]に記載のフォトレジスト材料。
[8][1]〜[3]のいずれかに記載のフォトレジスト用化合物を含むフォトレジスト液。
[9]前記フォトレジスト用化合物を、前記フォトレジスト液に含まれる全固形分を基準として50質量%以上含有する[8]に記載のフォトレジスト液。
[10]ポジ型フォトレジスト液である[8]または[9]に記載のフォトレジスト液。
[11][1]〜[3]のいずれかに記載のフォトレジスト用化合物を含むフォトレジスト膜。
[12]前記フォトレジスト用化合物を主成分として含む[11]に記載のフォトレジスト膜。
[13]ポジ型フォトレジスト膜である[11]または[12]に記載のフォトレジスト膜。
[14][11]〜[13]のいずれかに記載のフォトレジスト膜を被加工表面上に配置すること、
上記フォトレジスト膜にパターン露光すること、および、
上記パターン露光後のフォトレジスト膜を有する被加工表面の少なくとも一部にエッチング処理を施し、上記パターン露光において露光された部分に対応する領域における被加工表面の少なくとも一部をエッチングすること
を含む被加工表面のエッチング方法。
[15]前記パターン露光に使用される光は、λnmの波長を有するレーザー光であり、前記フォトレジスト膜に含まれる前記フォトレジスト用化合物の最大吸収波長λmaxはλ±150nmの範囲にある[14]に記載の被加工表面のエッチング方法。
[16]前記フォトレジスト膜を、[8]〜[10]のいずれかに記載のフォトレジスト液を被加工表面に塗布することにより形成する請求項14または15に記載の被加工表面のエッチング方法。
[17][1]〜[3]のいずれかに記載のフォトレジスト用化合物を含むポジ型耐エッチングレジスト材料。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、パターン露光するだけで、換言すれば現像液による現像工程を経ることなく、エッチング用マスクを形成することができるので、各種の半導体装置を作製するプロセスで複数回行われるフォトリソグラフィ工程の各現像工程を除くことができ、これにより大幅な簡便化を達成できる。更に本発明によれば、微細な凹凸を被加工表面に形成することができ。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[フォトレジスト用化合物]
本発明のフォトレジスト用化合物は、オキソノール色素骨格を有する。
本発明者らは、オキソノール色素骨格を有する化合物(以下、「オキソノール色素」ともいう)を含有する色素膜は、部分的に光照射されると光照射部分が局所的に物性変化し、光照射前の色素膜に比べて耐エッチング性が低下することを見出し、更に、この色素膜がエッチング用マスクとして機能し得ることを新たに見出した。この現象について、本発明者らは以下のように推定している。
オキソノール色素を含有する色素膜へ、例えばレーザービームでスポット状に光を照射すると、光照射部分においてオキソノール色素が発熱する。この発熱によってオキソノール色素が熱分解などの物性変化を起こす結果、色素膜では光照射部分が局所的に物理的および/または化学的に変化し、ピット(開口)や局所的に耐久性が低下した部分(低耐久性部)が形成されるものと考えられる。ピットが形成された色素膜は、エッチング用マスクとして機能することはもちろんのこと、低耐久性部はエッチング工程でより容易に食刻されるため、パターン露光で低耐久性部を形成した色素膜もエッチング用マスクとして機能し得る。また、オキソノール色素を含む色素膜それ自体は耐エッチング性に優れ、エッチングに対する耐久性膜として良好に機能し得ることも判明した。ここで、エッチングの方法は、ドライエッチングでもウェットエッチングでもかまわない。特にドライエッチングに適用すると、ウェットエッチング液の洗浄工程が不要なため好ましい。
特に、本発明者らがオキソノール色素を含有する色素膜のレーザー光による照射中の挙動を観察したところ、レーザービームの光照射部分の中心部での温度上昇とともに周辺部分で温度低下する現象が確認された。この周辺部分の温度低下の理由は定かではないが、この周辺部の温度低下によって、レーザー光照射部の中心部では熱分解によるピット形成や低耐久性部形成が起こるものの周辺部への物性変化の広がりが抑えられるため、レーザー光でパターン露光するとレーザービームのビーム径よりも小径のパターンが色素膜に形成できるものと考えられる。従って、色素膜へのレーザー光によるパターン露光により、そのレーザービーム径が照射した領域よりも一段と狭い小径の露光領域のみが低耐久性部となり、結果的にレーザー光のビーム径よりも細いビームでパターン露光した場合と同様の微細なパターン露光が達成できる。
更に、オキソノール色素を含む色素膜は、パターン露光によりその照射部にピットまたは低耐久性部が形成されるので、パターン露光後の現像処理が不要であり、パターン露光の次にエッチング工程を行うことができる。
本発明における「フォトレジスト」とは、このようなパターン露光によって生ずる熱によってレジストパターンを形成する態様も含むものである。
以下に、本発明のフォトレジスト用化合物について更に詳細に説明する。
【0012】
本発明のフォトレジスト用化合物は、オキソノール色素骨格を有する。本発明において、「オキソノール色素骨格を有する化合物」とは、発色団を構成する交互共役系が、負電荷を有するヘテロ原子または炭素原子で終端されることによって、負電荷が共役系全体に非局在化されることを特徴とするメチン色素を意味する。
【0013】
オキソノール色素骨格を有する化合物の中でも、吸光特性、熱分解特性等の観点から好ましいオキソノール色素としては、下記一般式(I)で表されるオキソノール色素を挙げることができる。
【0014】
【化2】

【0015】
一般式(I)中、A、B、CおよびDは、それぞれ独立に電子求引性基を表し、ただし、Aで表される電子求引性基とBで表される電子求引性基のハメットのσp値の合計は0.6以上であり、Cで表される電子求引性基とDで表される電子求引性基のハメットのσp値の合計は0.6以上であり、AとBとは互いに連結して環を形成してもよく、CとDとは互いに連結して環を形成してもよく、Rはメチン炭素上の置換基を表し、mは0以上3以下の整数を表し、nは0以上(2m+1)以下の整数を表し、nが2以上の整数のとき、複数存在するRはそれぞれ同一でも異なっていてもよく、互いに連結して環を形成してもよく、Xは一般式(I)で表される化合物の電荷を中和する対イオンを表す。
以下に、一般式(I)で表されるオキソノール色素について説明する。
【0016】
一般式(I)中、A、B、CおよびDは、それぞれ独立に電子求引性基を表す。ただし、Aで表される電子求引性基とBで表される電子求引性基のハメットの置換基定数σp値(以下、σp値という)の合計は0.6以上であり、Cで表される電子求引性基とDで表される電子求引性基のハメットのσp値の合計は0.6以上である。上記ハメットのσp値の合計が0.6以上であれば、フォトレジスト用化合物として好適な吸収特性および熱分解性を達成できる。A、B、CおよびDはそれぞれ同一でもよく、また異なっていてもよい。また、AとBまたはCとDは、連結して環を形成していてもよい。
【0017】
Aで表される電子求引性基とBで表される電子求引性基のハメットのσp値の合計およびCで表される電子求引性基とDで表される電子求引性基のハメットのσp値の合計は、それぞれ好ましくは0.6〜1.7であり、より好ましくは0.7〜1.6である。また、A、B、CおよびDで表される電子求引性基のハメットのσp値は、それぞれ独立に0.30〜0.85の範囲にあることが好ましく、0.35〜0.80の範囲であることが更に好ましい。
【0018】
ハメットのσp値は、例えばChem.Rev.91,165(1991)およびこれに引用されている参考文献に記載されており、記載されていないものについても同文献記載の方法によって求めることが可能である。AとB(またはCとD)が連結して環を形成している場合、A(またはC)のσp値は、−A−B−H(または−C−D−H)基のσp値を意味し、B(またはD)のσp値は、−B−A−H(または−D−C−H)基のσp値を意味する。この場合、両者は結合の方向が異なるためσp値は異なる。これらの値については、厳密に実験値を求めることが困難な場合、Chem.Rev.91,165(1991)に記載されている類似の置換基の値からの推測値を適用することも可能である。
【0019】
A、B、CおよびDで表される電子求引性基の好ましい具体例としては、シアノ基、ニトロ基、炭素数1〜10のアシル基(例、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、ピバロイル基、ベンゾイル基)、炭素数2〜12のアルコキシカルボニル基(例、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、イソプロポキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基、デシルオキシカルボニル基)、炭素数7〜11のアリールオキシカルボニル基(例、フェノキシカルボニル基)、炭素数1〜10のカルバモイル基(例、メチルカルバモイル基、エチルカルバモイル基、フェニルカルバモイル基)、炭素数1〜10のアルキルスルホニル基(例、メタンスルホニル基)、炭素数6〜10のアリールスルホニル基(例、ベンゼンスルホニル基)、炭素数1〜10のアルコキシスルホニル基(例、メトキシスルホニル基)、炭素数1〜10のスルファモイル基(例、エチルスルファモイル基、フェニルスルファモイル基)、炭素数1〜10のアルキルスルフィニル基(例、メタンスルフィニル基、エタンスルフィニル基)、炭素数6〜10のアリールスルフィニル基(例、ベンゼンスルフィニル基)、炭素数1〜10のアルキルスルフェニル基(例、メタンスルフェニル基、エタンスルフェニル基)、炭素数6〜10のアリールスルフェニル基(例、ベンゼンスルフェニル基)、ハロゲン原子、炭素数2〜10のアルキニル基(例、エチニル基)、炭素数2〜10のジアシルアミノ基(例、ジアセチルアミノ基)、ホスホリル基、カルボキシル基、5員もしくは6員のヘテロ環基(例えば、2−ベンゾチアゾリル基、2−ベンゾオキサゾリル基、3−ピリジル基、5−(1H)−テトラゾリル基、4−ピリミジル基)を挙げることができる。
【0020】
一般式(I)において、Rで表されるメチン炭素上の置換基としては、例えば以下に記載のものを挙げることができる。炭素数1〜20の鎖状または環状のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基)、炭素数6〜18の置換または無置換のアリール基(例えば、フェニル基、クロロフェニル基、アニシル基、トルイル基、2,4−ジ−t−アミル基、1−ナフチル基)、アルケニル基(例えば、ビニル基、2−メチルビニル基)、アルキニル基(例えば、エチニル基、2−メチルエチニル基、2−フェニルエチニル基)、ハロゲン原子(例えば、F、Cl、Br、I)、シアノ基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、アシル基(例えば、アセチル基、ベンゾイル基、サリチロイル基、ピバロイル基)、アルコキシ基(例えば、メトキシ基、ブトキシ基、シクロヘキシルオキシ基)、アリールオキシ基(例えば、フェノキシ基、1−ナフトキシ基)、アルキルチオ基(例えば、メチルチオ基、ブチルチオ基、ベンジルチオ基、3−メトキシプロピルチオ基)、アリールチオ基(例えば、フェニルチオ基、4−クロロフェニルチオ基)、アルキルスルホニル基(例えば、メタンスルホニル基、ブタンスルホニル基)、アリールスルホニル基(例えば、ベンゼンスルホニル基、パラトルエンスルホニル基)、炭素数1〜10のカルバモイル基、炭素数1〜10のアミド基、炭素数2〜12のイミド基、炭素数2〜10のアシルオキシ基、炭素数2〜10のアルコキシカルボニル基、ヘテロ環基(例えば、ピリジル基、チエニル基、フリル基、チアゾリル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基などの芳香族ヘテロ環、ピロリジン環、ピペリジン環、モルホリン環、ピラン環、チオピラン環、ジオキサン環、ジチオラン環などの脂肪族ヘテロ環)である。
【0021】
Rとしては、ハロゲン原子、炭素数1〜8の鎖状または環状のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基、炭素数1〜8のアルコキシ基、炭素数6〜10のアリールオキシ基、炭素数3〜10のヘテロ環基であり、特に塩素原子、炭素数1〜4のアルキル基(例:メチル基、エチル基、イソプロピル基)、フェニル、炭素数1〜4のアルコキシ基(例:メトキシ基、エトキシ基)、フェノキシ基、炭素数4〜8の含窒素ヘテロ環基(例:4−ピリジル基、ベンゾオキサゾール−2−イル基、ベンゾチアゾール−2−イル基)が好ましい。
【0022】
nは0以上(2m+1)以下の整数を表す。なお、mの詳細は後述する。nが2以上の整数のとき、複数存在するRはそれぞれ同一でも異なっていてもよく、互いに連結して環を形成してもよい。このとき環員数は4〜8が好ましく、特に5または6が好ましく、環の構成原子は炭素原子、酸素原子および/または窒素原子が好ましく、特に炭素原子が好ましい。
【0023】
A、B、C、DおよびRは更に置換基を有していてもよく、置換基の例としては、一般式(I)におけるRで表される一価の置換基の例として先に挙げたものと同様のものを挙げることができる。なお、本発明において、ある基について「炭素数」とは、置換基を有する基については、該置換基を含まない部分の炭素数をいうものとする。
【0024】
一般式(I)で表されるオキソノール色素としては、熱分解性の観点からAとB、および/またはCとDが連結して環を形成することが好ましく、そのような環の例として以下のようなものが挙げられる。なお、例示中、Ra、RbおよびRcは、各々独立に、水素原子または置換基を表す。Ra、RbおよびRcで表される置換基の詳細は、それぞれRについて先に記載した通りである。またRa、RbおよびRcは、それぞれ互いに連結して炭素環または複素環を形成してもよい。炭素環としては、例えば、シクロヘキシル環、シクロペンチル環、シクロヘキセン環、およびベンゼン環などの飽和または不飽和の4〜7員の炭素環を挙げることができる。また複素環としては、例えば、ピペリジン環、ピペラジン環、モルホリン環、テトラヒドロフラン環、フラン環、チオフェン環、ピリジン環、およびピラジン環などの飽和または不飽和の4〜7員の複素環を挙げることができる。これらの炭素環または複素環は更に置換されていてもよい。更に置換し得る基としては、前記Rで表される置換基として挙げたものを挙げることができる。
【0025】
【化3】

【0026】
【化4】

【0027】
【化5】

【0028】
【化6】

【0029】
【化7】

【0030】
【化8】

【0031】
【化9】

【0032】
【化10】

【0033】
【化11】

【0034】
上記中、好ましい環は、A−8、A−9、A−10、A−11、A−12、A−13、A−14、A−16、A−17,A−36、A−39、A−41、A−54、およびA−57で示されるものである。更に好ましい環は、A−8、A−9、A−10、A−13、A−14、A−16、A−17およびA−57で示されるものである。最も好ましい環状は、A−9、A−10、A−13、A−17およびA−57で示されるものである。
【0035】
一般式(I)において、mは0以上3以下の整数である。このmの値によって一般式(I)で表されるオキソノール色素の吸収波長は大きく変化する。レジスト加工に用いるレーザーの発振波長に応じて最適な吸収波長を有するようにmの値を選択することが好ましい。詳細は後述するが、本発明のフォトレジスト用化合物を用いてレジスト加工を行う場合、レジスト加工に用いる光としては、光記録に使用されるレーザー光を使用することができる。例えば、レジスト加工に用いるレーザーの中心発振波長が780nmの場合(CD−R記録用の半導体レーザー)、一般式(I)においてmは2または3であることが好ましく、中心発振波長が635nmまたは650nmの場合(DVD−R記録用の半導体レーザー)、mは1または2であることが好ましく、中心発振波長が550nm以下の場合(例えば、中心発振波長405nmの青紫色半導体レーザー)、mは0または1であることが好ましく、0であることが特に好ましい。
【0036】
一般式(I)において、Xで表される対イオンは、一般式(I)で表される化合物の電荷を中和するものであり、アニオンでもカチオンでもよく、また単独のイオン性種であっても複数のイオン性種の組み合わせであってもよい。通常はカチオンであり、無機カチオンであっても有機カチオンであってもよい。無機のカチオンとしては、例えば、水素イオン、金属イオン、アンモニウムイオン(NH4+)を挙げることができ、好ましくは金属イオンであり、特にアルカリ金属イオン(例:Li+、Na+、K+)または遷移金属イオン(例:Cu2+、Co2+)が好ましい。また、遷移金属イオンには、有機リガンドが配位していてもよい。
【0037】
Xで表される有機のカチオンとしては、オニウムイオンが好ましく、下記一般式(III)で表されるものが特に好ましい。これらの化合物は、対応するジピリジルと目的の置換基を持つハロゲン化物とのメンシュトキン反応(例えば、特開昭61−148162号公報参照)、または特開昭51−16675号公報および特開平1−96171号公報に記載の方法に準ずるアリール化反応により容易に得ることができる。
【0038】
【化12】

【0039】
一般式(III)中、R31およびR32は、それぞれ独立にアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基またはヘテロ環基を表し、R33は置換基を表し、sは0〜8の範囲の整数を表す。sが2以上の整数のとき、複数存在するR33は、それぞれ同一でも異なっていてもよく、また互いに連結して環を形成していてもよい。
【0040】
一般式(III)において、R31またはR32で表されるアルキル基は、直鎖、分岐または環状のいずれであってもよい。炭素数1〜18であることが好ましく、炭素数1〜8であることが更に好ましい。上記アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、s−ブチル基、イソアミル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、2−エチルヘキシル基、n−オクチル基を挙げることができる。
【0041】
一般式(III)において、R31またはR32で表されるアルケニル基は、炭素数2〜18であることが好ましく、炭素数2〜8であることが更に好ましい。具体例としては、例えばビニル基、2−プロペニル基、2−メチル基、プロペニル基、1,3−ブタジエニル基を挙げることができる。
【0042】
一般式(III)において、R31またはR32で表されるアルキニル基は、炭素数2〜18であることが好ましく、炭素数2〜8であることが好ましい。具体例としては、例えばエチニル基、プロピニル基、3,3−ジメチルブチニル基を挙げることができる。
【0043】
一般式(III)において、R31またはR32で表されるアリール基は、炭素数6〜18であることが好ましく、炭素数6〜10であることが更に好ましい。具体例としては、例えばフェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基を挙げることができる。
【0044】
一般式(III)において、R31またはR32で表されるヘテロ環基は、炭素数4〜7の飽和または不飽和のヘテロ環基が好ましく、含有されるヘテロ原子としては窒素原子、酸素原子、硫黄原子が好ましい。具体例としては、例えば4−ピリジル基、2−ピリジル基、2−ピラジル基、2−ピリミジル基、4−ピリミジル基、2−イミダゾリル基、2−フリル基、2−チオフェニル基、2−ベンゾオキサゾリル基、2−ベンゾチオキサゾリル基を挙げることができる。
【0045】
一般式(III)中、R31またはR32で表されるアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基またはヘテロ環基は、更に置換基を有していてもよく、置換基としては一般式(I)中のRで表される置換基として例示したものと同様のものを挙げることができる。
【0046】
一般式(III)中、R33は置換基を表す。R33で表される置換基の詳細は、一般式(I)中のRで表される置換基について述べた通りであり、好ましくは炭素数1〜18の置換または無置換のアルキル基であり、より好ましくは炭素数1〜8の無置換アルキル基である。
【0047】
一般式(III)中、sは0〜8の範囲の整数を表し、0〜4の範囲の整数であることが好ましく、0〜2の範囲の整数であることが更に好ましく、特に0が好ましい。sが2以上の整数のとき、複数存在するR33は、それぞれ同一でも異なっていてもよく、また互いに連結して環を形成していてもよい。また、一般式(III)において二つのピリジン環は、何れの位置で連結していてもよいが、ピリジン環の2位または4位で連結することが好ましく、特に両ピリジン環の4位同士で連結することが好ましい。
【0048】
一般式(I)で表されるオキソノール色素は、任意の位置で結合して多量体を形成していてもよく、この場合の各単位は互いに同一でも異なっていてもよく、またポリスチレン、ポリメタクリレート、ポリビニルアルコール、セルロース等のポリマー鎖に結合していてもよい。
【0049】
一般式(I)は、アニオンの局在位置の表記の違いによる複数の互変異性体を含むものであるが、特にA、B、C、Dのいずれかが−CO−E(Eは置換基)である場合、酸素原子上に負電荷を局在させて表記することが一般的である。例えばDが−CO−Eである場合、表記としては、下記一般式(II)が一般的であり、このような表記のものも一般式(I)に含まれる。
【0050】
【化13】

【0051】
一般式(II)におけるA、B、C、R、m、n、Xの定義は、一般式(I)と同一である。
【0052】
一般式(I)で表されるオキソノール色素の具体例としては、特開昭63−209995号公報、特開平10−297103号公報、同11−348420公報、特開2000−52658公報、特開2000−272241号公報に記載されたオキソノール色素の具体例を挙げることができる。その一部の化合物を以下に例示する。
【0053】
【化14】

【0054】
【化15】

【0055】
【化16】

【0056】
【化17】


【0057】
【化18】

【0058】
【化19】

【0059】
【化20】

【0060】
本発明のフォトレジスト用化合物は、パターン露光に使用される光の波長に応じて最適なものを選択することができる。
例えば、最大吸収波長(λmax)については、一般的な指標としては、使用されるレーザー光の波長がλnmの場合、パターン露光によるフォトレジスト膜が効率よく分解または変性するという理由から、λ±150nmの範囲に、より好ましくはλ±100nmの範囲にλmaxを有するものから選ぶことができる。例えば、波長が650nmの半導体レーザー光を使用する場合には、最大吸収波長が500nm〜800nmの範囲、より好ましくは550nm〜750nmの範囲にあるフォトレジスト用化合物から選択することができる。また、波長が405nmの半導体レーザー光を使用する場合には、最大吸収波長が255nm〜555nmの範囲、より好ましくは305nm〜505nmの範囲にあるフォトレジスト用化合物から選択することができる。
ここで、上記最大吸収波長(λmax)とは、本発明のフォトレジスト用化合物をテトラフルオロプロパノールに溶解した溶液を基板上にスピンコートし、乾燥して得られた膜の最大吸収波長(λmax)をいう。
【0061】
更に、レーザーによるパターン露光時の感度の点から、本発明のフォトレジスト用化合物の熱分解温度は、100℃以上600℃以下であることが好ましく、100℃以上500℃以下であることがより好ましく、120℃以上400℃以下であることが更に好ましく、150℃以上300℃以下であることが最も好ましい。
【0062】
本発明における熱分解温度は、TG/DTA測定によって求められる値をいうものとする。具体的には、例えばSeiko Instruments Inc.製EXSTAR6000を用い、N2気流下(流量200ml/min)、30℃〜550℃の範囲において10℃/minで昇温を行い、質量減少率が10%に達した時点の温度として熱分解温度を求めることができる。
【0063】
本発明のフォトレジスト用化合物は、公知の方法で合成することができ、また市販品として入手可能なものもある。合成方法については、先にオキソノール色素の具体例が記載されている参考文献として例示した文献を参照することができる。
【0064】
本発明のフォトレジスト用化合物はオキソノール色素骨格を有し、先に説明したように、例えばレーザービームでスポット状に光を照射すると、光照射部分において発熱する。この発熱によって熱分解などの物性変化を起こす結果、本発明のフォトレジスト用化合物を含むフォトレジスト膜では、光照射部分が局所的に物理的および/または化学的に変化し、ピット(開口)や局所的に耐久性が低下した部分(低耐久性部)が形成されるものと考えられる。フォトレジストには、パターン露光後に露光部が除去されるタイプ(ポジ型)と未露光部が除去されるタイプ(ネガ型)がある。本発明のフォトレジスト用化合物は、ポジ型フォトレジスト用化合物として使用することができ、より詳しくは、パターン露光後の現像工程が不要なポジ型フォトレジスト用化合物として使用することができる。
【0065】
[フォトレジスト材料、フォトレジスト液]
更に本発明は、本発明のフォトレジスト用化合物を含有するフォトレジスト材料に関する。本発明のフォトレジスト材料の一態様としては、フォトレジスト樹脂組成物を挙げることができ、他の態様としては、フォトレジスト液を挙げることができる。前記フォトレジスト樹脂組成物は、本発明のフォトレジスト用化合物と樹脂成分を含むことができる。好適な樹脂成分としては、フォトレジスト液の結合剤として後述する各種樹脂を挙げることができる。また、前記樹脂組成物には、フォトレジスト液の添加剤として後述する各種成分を使用することもできる。
【0066】
一方、前記フォトレジスト液は、好ましくは溶剤を含む。溶剤としては、本発明のフォトレジスト用化合物の良溶媒を用いることが好ましい。
【0067】
上記いずれの態様においても、本発明のフォトレジスト材料は、本発明のフォトレジスト用化合物を1種含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。本発明のフォトレジスト材料およびフォトレジスト液は、本発明のフォトレジスト用化合物に加えて任意に他成分を含むことができる。加工性に優れたレジスト膜を形成するためには、本発明のフォトレジスト材料は、本発明のフォトレジスト用化合物を主成分として含むことが好ましい。本発明において、フォトレジスト材料について、「主成分」とは、フォトレジスト材料に含まれる全固形分の質量を基準として最も多く含まれる成分であることをいい、例えば、全固形分を基準として50質量%以上、好ましくは70質量%以上、より好ましくは80質量%以上、最も好ましくは90質量%以上を占める成分をいう。その上限値は、例えば100質量%である。
【0068】
本発明のフォトレジスト材料の好ましい態様は、フォトレジスト液である。即ち、本発明は、本発明のフォトレジスト用化合物を含むフォトレジスト液に関する。
【0069】
本発明のフォトレジスト液中の全固形分の濃度は、塗布性(例えば、塗布および溶媒除去後の膜厚が所望の範囲内に収まること、当該膜厚が被加工表面全体に均一性であること、被加工表面に多少の凹凸があっても当該凹凸に追随して均一な厚みの塗膜が形成されること、等)等を考慮すると、0.1質量%以上10質量%以下であることが好ましく、より好ましくは0.4質量%以上5質量%以下であり、更に好ましくは0.7質量%以上2質量%以下である。
【0070】
本発明のフォトレジスト液に使用可能な溶媒は、スピンコート法による塗布性を考慮すると、塗布時に適度な揮発性を有するものであることが好ましく、製造適性上、以下のような物性を有することが更に好ましい。
1.沸点が60℃以上300℃以下であることが好ましく、70℃以上250℃以下であることがより好ましく、80℃以上200℃以下であることが最も好ましい。
2.粘度が0.1cP以上100cP以下であることが好ましく、0.5cP以上50cP以下であることがより好ましく、1cP以上10cP以下であることが最も好ましい。
3.引火点が25℃以上であることが好ましく、30℃以上であることがより好ましく、35℃以上であることが最も好ましい。
【0071】
上記溶媒の具体的な例としては、炭化水素類(シクロヘキサン、1,1−ジメチルシクロヘキサンなど)、アルコール類(ブタノール、ジアセトンアルコール、テトラフルオロプロパノールなど)、グリコールエーテル類(メチルセロソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなど)、エステル類(酢酸ブチル、乳酸メチル、乳酸エチルなど)、ケトン類(メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなど)、ニトリル類(プロピオニトリル、ベンゾニトリルなど)、アミド類(ジメチルホルムアミドなど)、スルホン類(ジメチルスルホキシドなど)カルボン酸類(酢酸など)、アミン類(トリエチルアミンなど)、ハロゲン類(トリクロロメタン、ハイドロフルオロカーボンなど)、芳香属類(トルエン、キシレンなど)などが挙げられる。これらの内、特に好ましいものは、その塗布性から、アルコール類またはグリコールエーテル類である。上記溶媒は、単独で使用してもよく、二種以上を混合して使用してもよい。
【0072】
本発明のフォトレジスト液は、少なくとも固形分としてオキソノール色素を含むものであればよいが、必要に応じてその他の成分を含有させてもよい。但し、その他の成分の総量は、オキソノール色素に対して質量比で1倍量以下とすることが好ましい。
その他の成分の例としては、結合剤、退色防止剤、酸化防止剤、UV吸収剤、可塑剤、潤滑剤等を挙げることができる。結合剤の例としては、ゼラチン、セルロース誘導体、デキストラン、ロジン、ゴム等の天然有機高分子物質;ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリイソブチレン等の炭化水素系樹脂;ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリ塩化ビニル・ポリ酢酸ビニル共重合体等のビニル系樹脂、ポリアクリル酸メチル、ポリメタクリル酸メチル等のアクリル樹脂、ポリビニルアルコール、塩素化ポリエチレン、エポキシ樹脂、ブチラール樹脂、ゴム誘導体、フェノール・ホルムアルデヒド樹脂等の熱硬化性樹脂の初期縮合物等の合成有機高分子、を挙げることができる。本発明のフォトレジスト液に結合剤を添加する場合、結合剤の添加量は、本発明のフォトレジスト用化合物に対して、質量比で、0.01倍〜1倍量とすることが好ましく、0.1倍量〜0.5倍量とすることが更に好ましい。
【0073】
本発明のフォトレジスト用化合物は、一般的に、通常の室内照明環境下では分解または変性しないので、従来のフォトレジストのような安全灯(例えば、紫外線またはそれよりも短波長の光をカットした照明)の下で使用する必要はない。しかし、このような通常の室内環境の照明下で使用する場合には、フォトレジスト液には、耐光性に優れたレジスト膜を形成するために、種々の褪色防止剤を含有させることができる。
褪色防止剤としては、一般的に一重項酸素クエンチャーが用いられる。一重項酸素クエンチャーとしては、既に公知の特許明細書等の刊行物に記載のものを利用することができる。その具体例としては、特開昭58−175693号公報、同59−81194号公報、同60−18387号公報、同60−19586号公報、同60−19587号公報、同60−35054号公報、同60−36190号公報、同60−36191号公報、同60−44554号公報、同60−44555号公報、同60−44389号公報、同60−44390号公報、同60−54892号公報、同60−47069号公報、同63−209995号公報、特開平4−25492号公報、特公平1−38680号公報、および同6−26028号公報等の各公報、ドイツ特許350399号明細書、そして日本化学会誌1992年10月号第1141頁等に記載のものを挙げることができる。前記一重項酸素クエンチャー等の褪色防止剤の使用量は、本発明のフォトレジスト用化合物の量に対して、例えば0.1〜50質量%の範囲とすることができ、好ましくは、0.5〜45質量%の範囲、更に好ましくは、3〜40質量%の範囲、特に好ましくは5〜25質量%の範囲とすることができる。
【0074】
また、後述するように、本発明のフォトレジスト液によれば、現像工程を経ることなくエッチング用マスクを形成することができる。従って、現像工程を要する通常のフォトポリマータイプのレジスト液に必須成分として含まれるo−ナフトキノンジアジトスルホン酸エステルとノボラック樹脂の組合せ成分、光酸発生剤と酸分解性化合物との組合せ成分、光塩基発生剤と塩基分解性化合物との組合せ成分、光ラジカル発生剤と付加重合成不飽和化合物との組合せ成分は、本発明のフォトレジスト液における必須成分ではなく、本発明のフォトレジスト液は、これら成分を含有しないことが好ましい。
【0075】
本発明のフォトレジスト材料および本発明のフォトレジスト液は、本発明のフォトレジスト用化合物を、必要に応じて上記成分と混合することにより得ることができる。
【0076】
前述のように、本発明のフォトレジスト用化合物は、ポジ型フォトレジスト用化合物として使用することができ、好ましくはパターン露光後の現像工程が不要なポジ型フォトレジスト用化合物として使用することができる。したがって、上記化合物を含む本発明のフォトレジスト材料は、ポジ型フォトレジスト材料であることができ、好ましくはパターン露光後の現像工程が不要なポジ型フォトレジスト材料であることができる。同様に、本発明のフォトレジスト液は、ポジ型フォトレジスト液であることができ、好ましくはパターン露光後の現像工程が不要なポジ型フォトレジスト液であることができる。
【0077】
本発明のフォトレジスト液は、その固形分の全量が前記フォトレジスト用化合物から構成される態様が、スピンコーティング工程で被加工表面の設けられた後の余分なフォトレジスト液(例えば、スピンコート時に被加工表面から振り落とされたフォトレジスト液)を回収して再利用することが容易となるという点で、特に好ましい。本発明のフォトレジスト液を塗布することによりフォトレジスト膜を形成する方法の詳細は後述する。
【0078】
本発明のフォトレジスト液は、微細加工が必要とされる用途であれば、どのような用途にも適用することができる。例えば、LSI、LED、CCD、太陽電池などの半導体装置の製造工程、液晶、PDP、ELなどのFPDの製造工程、レンズ、フィルムなどの光学部材の製造工程などの種々の工程において、従来のフォトレジスト液に代えて使用することができる。即ち、従来のフォトレジスト液の塗布および溶媒除去工程、パターン露光工程および現像工程に代えて、本発明のフォトレジスト液の塗布および溶媒除去工程ならびにパターン露光工程を使用することができる。
【0079】
本発明のフォトレジスト液は、ナノインプリント用のマスターの作製する工程においても、使用することができる。
【0080】
更に、本発明のフォトレジスト液は、LED用のチップの表面、裏面(例えば、サファイア基板など)、側面などの面に微細な凹凸を形成して、LEDの光取り出し効率を向上させるために使用することができる。一般に、LED用チップの光取出し口となる最外層(例えば電流拡散層または透明電極など)を構成する材料とパッケージ用の樹脂とは屈折率が相違し、例えば電流拡散層の場合にはその屈折率が3以上あるのに対して、後者のパッケージ用樹脂の屈折率は1.5前後である。このような屈折率の大きな部分から屈折率の小さな部分に光を取り出す場合には、その界面で光が反射してしまい、光の取り出し効率が低下してしまうが、その界面を微細な凹凸とすることにより、光の取り出し効率を向上させることができる。そこで、LED用チップの光取出し口となる層(例えば、電流拡散層)を形成した後に、この層の表面に本発明のフォトレジスト液を塗布し、溶媒を除去してフォトレジスト膜を形成し、このフォトレジスト膜に所望の微細凹凸パターンの凹部に相当する部分のみレーザー光を照射するパターン露光を行い、引き続いてエッチングを行って、上記のレーザー光を照射した部分に対応する取り出し口の表面をエッチングして凹部を形成することにより、取り出し口に微細凹凸を形成することができる。その後、必要なプロセス(例えば電流拡散層の表面に電極を形成するプロセス)を経てLED用チップを完成させることができる。このようして得られたLEDチップの光取出し口は、表面に微細な凹凸を有する。このLED素子をパッケージしてLEDとしたものは、パッケージ用樹脂と光取出し口の界面に微細な凹凸が形成されているので、その界面での反射の少ない、光取り出し効率の良いLEDを作製することができる。このように、屈折率の大きい部分から小さい部分へ取り出す場合、その界面に微細な凹凸を設けることにより光取出し効率を高めることができる。この発光部界面に形成すべき凹部の深さhおよび直径dについては、発光部で発生する光の散乱・回折が生じるサイズであればよく、好ましくは発光波長の4分の1以上であり、散乱理論に基づいて設計することができる。
【0081】
上記のように、被加工表面に微細な凹凸を形成する場合、その表面上に本発明のフォトレジスト液を用いてフォトレジスト膜を形成し、レーザーにより微細パターンの露光を行い、これをマスクにしてRIEなどにより被加工表面に上記微パターンに相当する細凹凸を形成することができる。また、被加工表面の上にマスク層を設け、その上に本発明のフォトレジスト液を用いてフォトレジスト膜を形成し、これをレーザーで微細加工し、その後RIEによりマスク層に微細穴を形成し、更にこの微細穴が形成されたマスク層を介して被加工表面をICP(誘導結合プラズマ)でより深くエッチングすることも可能である。このようなマスク層を利用するエッチング方法は、被加工表面がサファイアーのような硬くエッチングされにくい場合に有利な方法である。マスク層としては、SiO2、TiO2、SiN、SiON、など無機の酸化膜や窒化膜などが好ましい。
【0082】
更に本発明のフォトレジスト液を用いて形成されるフォトレジスト膜の厚さtと、凹部の直径dとは、本発明のフォトレジスト用化合物の種類、被加工表面の材質、選択比等のエッチング工程の条件に応じて設定することができる。レーザー記録時の光学特性もまた考慮して設定されるべきである。好ましい範囲として、レジスト層の厚みtの上限値は、t<100dを満たす値であり、更に好ましくはt<10dを満たす値であり、また下限値はt>d/100を満たす値が好ましく、t>d/10を満たす値が更に好ましい。
【0083】
[フォトレジスト膜]
本発明のフォトレジスト膜は、本発明のフォトレジスト用化合物を含むものである。本発明のフォトレジスト膜は、その機能を本発明のフォトレジスト用化合物が担っているので、前記フォトレジスト用化合物を主成分として含むことが好ましい。本発明において、フォトレジスト膜について「主成分」とは、フォトレジスト膜の総質量中、最も多く含まれる成分をいい、例えば総質量を基準として50質量%以上、好ましくは70質量%以上、より好ましくは80質量%以上、最も好ましくは90質量%以上を占める成分をいう。その上限値は、例えば100質量%である。
【0084】
本発明のフォトレジスト膜は、樹脂組成物としての本発明のフォトレジスト材料を、押出成形等の公知の成形方法でフィルム状に成膜したものであってもよく、本発明のフォトレジスト液を塗布することにより形成された塗布膜であってもよい。本発明のフォトレジスト膜は、好ましくは、本発明のフォトレジスト液を、処理対象となる表面上に塗布し、溶媒を蒸発させて除くことにより形成することができる。塗布方法としては、スプレー法、スピンコート法、ディップ法、ロールコート法、ブレードコート法、ドクターロール法、ドクターブレード法、カーテンコート法、スリットコート法、スクリーン印刷法等を挙げることができる。生産性に優れ膜厚のコントロールが容易であるという点でスピンコート法を用いることが好ましい。塗布されたフォトレジスト液から溶媒を除く方法は、従来より知られている方法を使用することができる。例えば、スピンコート法で塗布した場合には、そのままスピンの回転数を上昇させることにより溶媒を蒸発させることができる。その際、塗布面にノズルから気体を吹き付けて溶媒の蒸発を促進させてもよい。更に従来のフォトレジストの塗布プロセスと同様に、スピンコートされたフォトレジスト液膜を加熱(ベーキング)する、所謂プリベークをしてもよい。溶媒を除去する方法としては、フォトレジスト液をスピンコート法で塗布し、そのままスピンの回転数を上昇させて溶媒を除く方法が特に好ましい。この場合、さらに加熱するアニール処理をすることが好ましい。アニール処理は、フォトレジスト膜としての強度や安定性を増す効果がある。その加熱温度下限は、例えば55℃以上、好ましくは65℃以上、更に好ましくは75℃以上であり、その加熱温度上限は、例えば200℃以下、好ましくは150℃以下、更に好ましくは100℃以下である。時間の下限は、例えば5分以上、好ましくは15分以上、更に好ましくは30分以上であり、上限は、例えば4時間以下、好ましくは2時間以下、更に好ましくは1時間以下である。このような範囲の条件下でアニールすることにより、生産性を低下させることなく、フォトレジスト膜としての強度と安定性を上昇させることができる。
【0085】
本発明のフォトレジスト膜に含まれ得る各種成分については、先に本発明のフォトレジスト材料について述べた通りである。また、本発明のフォトレジスト膜の用途等の詳細は、前述および後述の通りである。本発明のフォトレジスト膜の厚さは、例えば後述する範囲に設定することができるが、用途に応じて最適な厚さに設定すればよく特に限定されるものではない。
【0086】
前述のように、本発明のフォトレジスト用化合物は、ポジ型フォトレジスト用化合物として使用することができ、好ましくはパターン露光後の現像工程が不要なポジ型フォトレジスト用化合物として使用することができる。したがって、上記化合物を含む本発明のフォトレジスト膜は、ポジ型フォトレジスト膜であることができ、好ましくはパターン露光後の現像工程が不要なポジ型フォトレジスト膜であることができる。
【0087】
[被加工表面のエッチング方法]
更に本発明は、被加工表面のエッチング方法に関する。本発明のエッチング方法は、本発明のフォトレジスト膜を被加工表面上に配置すること、上記フォトレジスト膜にパターン露光すること、および、上記パターン露光後のフォトレジスト膜を有する被加工表面の少なくとも一部にエッチング処理を施し、上記パターン露光において露光された部分に対応する領域における被加工表面の少なくとも一部をエッチングすること、を含む。前記フォトレジスト膜は、本発明のフォトレジスト液を被加工表面に塗布することにより形成することが好ましいが、本発明のフォトレジスト材料を用いて成膜したフォトレジスト膜を、被加工表面上に積層することも可能である。
【0088】
パターン露光されたフォトレジスト膜には、パターン露光時の露光部分のフォトレジスト膜にピットが形成されるか、または低耐久性部のような局部的な物性変化を起こした部分が形成される。エッチング処理では、フォトレジスト膜のピットおよび/または低耐久性部に相当する被加工表面が優先的にエッチングされ、更にその下にある被加工表面もエッチングされて凹部となる。こうして、パターン露光において露光された部分に対応する領域における被加工表面の少なくとも一部をエッチングし、被加工表面に微細な凹凸を形成することができる。また、被加工表面が複数の薄層を有する場合には、その薄層の少なくとも一層をパターン状に除去することもできる。これを利用して、種々の半導体装置を製造することができる。
【0089】
パターン露光は、公知のステッパーを使用してフォトマスクを介して露光する方法を採用することもできるが、レーザー光のビームをパルス変調し、その変調されたレーザービームをレンズを介して絞り込み、その焦点がフォトレジスト膜となるようにしてパターン露光することが好ましい。そのような光照射を行うためのパターン露光装置としては、光ディスクへの情報記録に使用される記録装置が好適である。但し、必要な大きさに集光できれば、レーザー光のような単色光でなくても構わない。
【0090】
レーザー光の種類としては、ガスレーザー、固体レーザー、半導体レーザーなど、どのようなレーザーであってもよい。ただし、光学系を簡単にするために、固体レーザーや半導体レーザーを採用することが好ましい。レーザー光は、連続光でもパルス光でもよいが、自在に発光間隔が変更可能なレーザー光を採用することが好ましい。そのようなレーザーとしては、半導体レーザーを挙げることができる。また、レーザーを直接オンオフ変調できない場合は外部変調素子によって変調することが好ましい。
【0091】
レーザーパワーは、加工速度を高めるためには高い方が好ましい。ただし、レーザーパワーを高めるにつれ、スキャン速度(レーザー光で塗布膜を走査する速度;例えば、後述する光ディスクドライブの回転速度)を上げなければならない。そのため、レーザーパワーの上限値は、スキャン速度の上限値を考慮して、100Wが好ましく、10Wがより好ましく、5Wが更に好ましく、1Wが最も好ましい。また、レーザーパワーの下限値は、0.1mWが好ましく、0.5mWがより好ましく、1mWが更に好ましい。
【0092】
さらに、レーザー光は、発信波長幅およびコヒーレンシが優れていて、波長並みのスポットサイズに絞ることができるような光であることが好ましい。また、光パルス照射条件は、一般に光ディスクで使われているようなストラテジを採用することが好ましい。すなわち、光ディスクで使われているような、記録速度や照射するレーザー光の波高値、パルス幅などの条件を採用することが好ましい。
【0093】
レーザー光の波長としては、大きなレーザーパワーを得ることができる波長であればよく、例えば、容易に得られるレーザーの波長である、1064±30nm、800±50nm、670±30nm、532±30nm、405nm±50nm、266±30nm、200±30nmが好ましい。中でも半導体レーザーで大出力が可能な、780±30nm、660±20nm、または405±20nmが好ましい。最も好ましくは、405±10nmである。また、使用するフォトレジスト用化合物の最大吸収波長λaと、レーザー光の波長λwは、λa≦λwでもλa≧λwでもかまわない。フォトレジスト膜の厚み方向の表面から裏面まで均一に光を与え全体的に熱を与え、きれいな形状の穴とするためには、薄膜の吸収量は一定範囲内であることが好ましい。吸収が多すぎると表面しか光が届かず、少なすぎると光が熱に変わらず効率が悪くなる。材料の吸収しやすさを表す消衰係数kの上限は、2以下が適しており、1以下が好ましく、0.5以下が特に好ましい。下限は、0.0005以上、0.005以上、0.05以上が好ましい。上記関係にあれば、フォトレジスト用化合物の光吸収量が適切であり、パターン露光により、良好なピットまたは低耐久性部を形成することができる。
【0094】
前記レジスト膜の厚さは、例えば、1〜10000nmの範囲で適宜設定することができる。厚さの下限は、好ましくは10nm以上であり、より好ましくは30nm以上である。その理由は、厚さが薄すぎるとエッチング効果が得難くなるからである。また、厚さの上限は、好ましくは1000nm以下であり、より好ましくは500nm以下である。その理由は、厚さが厚すぎると、大きなレーザーパワーが必要になるとともに、深い穴を形成することが困難になるからであり、さらには、加工速度が低下するからである。
【0095】
光照射方法としては、例えば、ライトワンス光ディスクや追記型光ディスクなどで公知となっているピットの形成方法を適用することができる。具体的には、例えば、ピットサイズによって変化するレーザーの反射光の強度を検出し、この反射光の強度が一定となるようにレーザーの出力を補正することで、均一なピットを形成するといった、公知のランニングOPC技術(例えば、特許第3096239号公報参照)を適用することができる。なお、本発明のレジスト膜は、光照射によってエッチングにより除去される程度に物性が変化した部分が局所的に存在すれば、その部分がエッチング時に除去されることによりエッチングマスクとして機能し得るため、目視等により認識可能なピット(開口)が形成されていることは必須ではない。また、ピットや物性変化部分のサイズや加工ピッチは、光学系を調整することによって制御することができる。なお、レーザー光は中心付近で光強度が最も強く、外側に向かうにつれて徐々に弱くなるため、レーザー光のスポット径よりも小さな径の微細なピットを塗布膜に形成することができる。また、レーザー光の最小加工形状よりも大きなピットを形成したい場合はレーザースポットを繋げればよい。
【0096】
以下に、加工に使用する光学系の具体的態様について説明する。但し、本発明は以下に示す態様に限定されるものではない。
光照射装置は、一般的な光ディスクドライブと同様の構成のものを用いることができる。光ディスクドライブとしては、例えば特開2003−203348号公報に記載されている構成のものを使用することができる。このような光ディスクドライブを用い、塗布膜を形成した加工対象物がディスク形状のものであればそのまま、形状が異なる場合はダミーの光ディスクに貼り付けるなどしてディスクドライブに装填する。そして、適当な出力でレーザー光を塗布膜上に照射する。さらに、この照射のパターンが加工パターンに合うように、レーザー光源にパルス信号または連続信号を入力すればよい。また、光ディスクドライブと同様のフォーカシング技術、例えば、非点収差法などを用いることにより、塗布膜表面にうねりや反りがあったとしても、塗布膜表面に容易に集光することができる。また、光記録ディスクに情報を記録する場合と同様に、加工対象物を回転させながら、光学系を半径方向に移動させることで、塗布膜の全体に周期的な光照射を行うことができる。
【0097】
光照射条件は、例えば、光学系の開口数NAは、下限が0.4以上が好ましく、より好ましくは0.5以上、さらに好ましくは0.6以上である。また、開口数NAの上限は、2以下であることが好ましく、より好ましくは1以下、さらに好ましくは0.9以下である。開口数を大きくする場合、対物レンズとフォトレジスト膜の間に液体を介在させる、所謂液浸法を使用することで、焦点調整がしやすくなるといった利点が得られる。開口数NAが小さすぎると、細かい加工ができず、大きすぎると、光照射時の角度に対するマージンが減るからである。光学系の波長は、例えば405±30nm、532±30nm、650±30nm、780±30nmである。これらは、大きな出力が得やすい波長だからである。なお、波長は短い程、細かい加工ができるので好ましい。
【0098】
光学系の出力は、下限が例えば0.1mW以上であり、好ましくは1mW以上、より好ましくは5mW以上、さらに好ましくは20mW以上である。光学系の出力の上限は、例えば1000mW以下であり、好ましくは500mW以下、より好ましくは200mW以下である。出力が低すぎると加工に時間が掛かり、高すぎると、光学系を構成する部材の耐久性が低くなるからである。
【0099】
光学系を塗布膜表面に対し相対的に移動させる線速は、下限が例えば0.1m/s以上であり、好ましくは1m/s以上、より好ましくは5m/s以上、さらに好ましくは20m/s以上である。線速の上限は、例えば500m/s以下であり、好ましくは200m/s以下、より好ましくは100m/s以下、さらに好ましくは50m/s以下である。線速が高すぎると、加工精度を高くすることが困難であり、遅すぎると加工に時間が掛かる上、良好な形状に加工することが困難になるからである。光学系を含む具体的な光学加工機の一例としては、例えば、パルステック工業株式会社製NE0500を用いることができる。
【0100】
以上説明したフォトレジスト膜は、パターン露光後に現像工程を経ることなくエッチング用マスクとして使用することができる。なお、パターン露光後かつ下記に説明するエッチングの前の工程として、加熱処理を行うポストベークを挿入してもよい。ポストベークを行うことにより、パターン露光後のフォトレジスト膜を被加工表面に強固に固着させ、かつ後続のエッチングに対するマスクとしての機能を向上させることができる。ポストベークの加熱温度の下限は、例えば55℃以上、好ましくは65℃以上、更に好ましくは75℃以上であり、その温度上限は、例えば200℃以下、好ましくは150℃以下、更に好ましくは100℃以下である。このような範囲で加熱処理することにより、生産性の低下を招くことなく上記の効果を得ることができる。
【0101】
エッチング方法としては、ウェットエッチングやドライエッチング等、種々のエッチング方法を挙げることができ、エッチングする表面の物性に応じた方法を採用すればよい。微細加工を行うためには、エッチングガスの直進性が高く細かなパターニングが可能なRIE(反応性イオンエッチング)を採用することが好ましい。RIEは、被処理体を気密な処理室内に載置し、所定の処理ガスの導入および真空引きにより処理室内を所定の減圧雰囲気にした後、例えば処理室内に形成された電極に対して所定の高周波電力を印加することによりプラズマを励起し、このプラズマ中のエッチャントイオンによって、被処理体に対してエッチング処理を行うものである。このRIEのエッチングガスは、エッチングされる物質に応じて選択することができる。
本発明のフォトレジスト液から形成されるフォトレジスト膜は、通常、エッチング後に除去されるが、用途によっては除去せず残してもよい。フォトレジスト膜の除去は、例えば剥離液(例えばエタノール)を用いた湿式の除去方法によって行うことができる。
【0102】
以上、本発明のフォトレジスト液およびフォトレジスト膜をエッチングに用いる態様について説明したが、本発明のフォトレジスト液およびフォトレジスト膜は、被加工表面の所望の領域に所望の物質を堆積するためにも使用することができる。
例えば、LED用チップには、光取出し口(例えば、電流拡散層)の表面の一部に、AuZnまたはAuGeのような電極が設けられる。この場合、光取出し口の表面(例えば、電流拡散層の表面)に本発明のフォトレジスト液を塗布し、溶媒を除去してフォトレジスト膜を形成した後、電極を形成する領域にレーザー光を照射してフォトレジスト膜を除去する。この場合、フォトレジスト膜に照射するレーザー光はフォトレジスト膜に低耐久性部が形成されるに十分な量であってもよく、その場合には引き続いてエッチングして低耐久性部のフォトレジスト膜を除去することにより、電極を形成する領域のフォトレジスト膜を除去することができる。その後、電極となる物質(例えば、AuZnまたはAuGe)を真空下で堆積し、次いでフォトレジスト膜を除去することにより、光取出し口の表面の所望の領域に電極が形成される。
【0103】
[耐エッチングレジスト材料]
更に本発明は、本発明のフォトレジスト用化合物を含むポジ型耐エッチングレジスト材料に関する。本発明の耐エッチングレジスト材料は、光照射によりピットや低耐久性部の形成が可能なヒートモード型のレジスト材料として使用することができ、現像工程の不要な耐エッチングレジスト材料として使用することが好適である。本発明の耐エッチングレジスト材料の詳細は、前述の通りである。
【0104】
以上説明したように、本発明のフォトレジスト用化合物は、微細な凹凸の形成および半導体装置の作製に使用することができる。具体例としては、半導体素子、磁気バブルメモリ、集積回路等の各種電子部品、LEDや蛍光灯、有機EL素子、プラズマディスプレイ等の発光等を挙げることができるが、これらに限定されない。
【実施例】
【0105】
以下に、実施例により本発明を説明するが、本発明は実施例に示す態様に限定されるものではない。
【0106】
[実施例1]
フォトレジスト膜の形成
オキソノール色素(例示化合物(II)-5、膜のλmax:378nm、熱分解温度:216℃)2gを、テトラフルオロプロパノール(TFP)100mlに溶解し、ディスク状のシリコン基板(厚さ0.6mm、外径120mm、内径15mm)上にスピンコートし塗布膜を形成した。スピンコートは、塗布開始回転数500rpm、塗布終了回転数100rpmとして塗布液を基板の内周部にディスペンスし、徐々に2200rpmまで回転数を上げて塗布膜を乾燥させた。形成された塗布膜の厚さは100nmであった。
塗布膜を形成したシリコン基板をパルステック工業株式会社製NEO500(波長:405nm、NA:0.65)に設置し、塗布膜表面に向かってレーザー光を照射した。レーザー光照射条件は、以下の通りとした。塗布膜には、0.5μmピッチでピットが形成された。
レーザー出力:2mW
線速:5m/s
記録信号:5MHzの矩形波
【0107】
[実施例2]
凹凸形成
実施例1で処理したシリコン基板を、塗布膜形成面側から以下の条件でRIEエッチングした後、エタノールを剥離液として塗布膜を除去した。シリコン基板表面の塗布膜除去面は微細な凹凸が形成されていることを目視により確認した。この結果から、実施例1で処理した塗布膜がエッチングマスクとして機能したことがわかる。
エッチングガス:SF6+CHF3(1:1)
エッチング深さ:50nm
【0108】
[実施例3〜30]
オキソノール色素として、下記の表1に示した例示化合物を使用した以外は実施例1と同様にして塗布膜表面にレーザー光を照射したところ、実施例1と同様に0.5μmピッチで塗布膜にピットが形成された。
【0109】
【表1】

【0110】
[実施例31〜58]
実施例3〜30で得られたピットを形成した塗布膜を有するシリコン基板を用いて、実施例2と同様にしてRIEエッチングした後、エタノールを剥離液として塗布膜を除去したところ、何れのシリコン基板にも、その表面に実施例2と同様に微細な凹凸が形成されていることを目視により確認した。この結果から、実施例3〜30で使用したオキソノール色素においてもその塗布膜がエッチングマスクとして機能したことがわかる。なお、レーザー光の波長(405nm)±150nmの範囲にλmaxを有する色素を使用した実施例は、上記範囲外のλmaxを有する色素を使用した実施例と比べてピット形状が良好であった。
【0111】
ハメットのσp値の計算値
実施例で使用した例示化合物を一般式(I)の表記で表した場合の置換基A〜Dのσp値について、Chemical Reviews誌91巻165〜195頁記載の置換基よりシミュレーションした計算値をそれぞれa〜dとして、下記表2に示す。表2中、各値に対してシミュレーションに用いた置換基を括弧内に示した。
【0112】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0113】
本発明によれば、微細な表面加工を容易に行うことができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
オキソノール色素骨格を有することを特徴とするフォトレジスト用化合物。
【請求項2】
下記一般式(I)で表される化合物である請求項1に記載のフォトレジスト用化合物。
【化1】

[一般式(I)中、A、B、CおよびDは、それぞれ独立に電子求引性基を表し、ただし、Aで表される電子求引性基とBで表される電子求引性基のハメットのσp値の合計は0.6以上であり、Cで表される電子求引性基とDで表される電子求引性基のハメットのσp値の合計は0.6以上であり、AとBとは互いに連結して環を形成してもよく、CとDとは互いに連結して環を形成してもよく、Rはメチン炭素上の置換基を表し、mは0以上3以下の整数を表し、nは0以上(2m+1)以下の整数を表し、nが2以上の整数のとき、複数存在するRはそれぞれ同一でも異なっていてもよく、互いに連結して環を形成してもよく、Xは一般式(I)で表される化合物の電荷を中和する対イオンを表す。]
【請求項3】
熱分解温度が100℃以上500℃以下である請求項1または2に記載のフォトレジスト用化合物。
【請求項4】
ポジ型フォトレジスト用化合物である請求項1〜3のいずれか1項に記載のフォトレジスト用化合物。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれか1項に記載のフォトレジスト用化合物を含むフォトレジスト材料。
【請求項6】
前記フォトレジスト用化合物を主成分として含む請求項5に記載のフォトレジスト材料。
【請求項7】
ポジ型フォトレジスト材料である請求項5または6に記載のフォトレジスト材料。
【請求項8】
請求項1〜3のいずれか1項に記載のフォトレジスト用化合物を含むフォトレジスト液。
【請求項9】
前記フォトレジスト用化合物を、前記フォトレジスト液に含まれる全固形分を基準として50質量%以上含有する請求項8に記載のフォトレジスト液。
【請求項10】
ポジ型フォトレジスト液である請求項8または9に記載のフォトレジスト液。
【請求項11】
請求項1〜3のいずれか1項に記載のフォトレジスト用化合物を含むフォトレジスト膜。
【請求項12】
前記フォトレジスト用化合物を主成分として含む請求項11に記載のフォトレジスト膜。
【請求項13】
ポジ型フォトレジスト膜である請求項11または12に記載のフォトレジスト膜。
【請求項14】
請求項11〜13のいずれか1項に記載のフォトレジスト膜を被加工表面上に配置すること、
上記フォトレジスト膜にパターン露光すること、および、
上記パターン露光後のフォトレジスト膜を有する被加工表面の少なくとも一部にエッチング処理を施し、上記パターン露光において露光された部分に対応する領域における被加工表面の少なくとも一部をエッチングすること
を含む被加工表面のエッチング方法。
【請求項15】
前記パターン露光に使用される光は、λnmの波長を有するレーザー光であり、前記フォトレジスト膜に含まれる前記フォトレジスト用化合物の最大吸収波長λmaxはλ±150nmの範囲にある請求項14に記載の被加工表面のエッチング方法。
【請求項16】
前記フォトレジスト膜を、請求項8〜10のいずれか1項に記載のフォトレジスト液を被加工表面に塗布することにより形成する請求項14または15に記載の被加工表面のエッチング方法。
【請求項17】
請求項1〜3のいずれか1項に記載のフォトレジスト用化合物を含むポジ型耐エッチングレジスト材料。

【公開番号】特開2009−227984(P2009−227984A)
【公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−44183(P2009−44183)
【出願日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】