説明

フォーカス調整装置、検査装置、フォーカス調整方法、フォーカス調整プログラムおよびコンピュータ読み取り可能な記録媒体

【課題】被検査パネルの検査に適したフォーカス調整を行う。
【解決手段】検査装置1は、少なくとも1つの欠陥絵素と、欠陥絵素の近傍に位置する複数の良品絵素とを点灯した液晶パネル50を、撮像装置2のフォーカス位置を変更しながら複数回撮像した撮像画像と、当該複数の撮像画像のそれぞれを撮像した時のフォーカス位置を示すフォーカス位置情報とを互いに関連付けて取得するとともに、撮像画像ごとに人工欠陥絵素コントラスト値および良品絵素コントラスト値を算出し、算出した人工欠陥絵素コントラスト値と良品絵素コントラスト値とがどれだけ離れているかを示す欠陥分離度を算出する画像解析部61と、画像解析部61が算出した分離度に基づいて、撮像装置2のフォーカス位置を決定するフォーカス位置決定部64とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検査パネルを撮像した撮像画像を解析することにより、当該被検査パネルの検査を行う検査装置、および当該検査装置が備える撮像装置のフォーカス調整を行うフォーカス調整装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、撮像装置の最適なフォーカス位置を調整するための指標として、撮像画像の輝度統計量(輝度ヒストグラムにおける輝度ばらつき度合いなど)が使用されてきた。例えば特許文献1には、カラー撮像装置のフォーカス調整方法として、白黒縞模様のパターンを撮像し、その撮像画像の色成分毎の輝度ヒストグラムにおける白領域に対応するピークと、黒領域に対応するピークとを求め、両ピーク間の距離をフォーカス指標として使用する方法が記載されている。
【0003】
液晶パネルに代表されるフラットパネルを対象とした欠陥検査では、フラットパネル上の注目絵素とその周辺絵素のコントラスト値(輝度差または輝度比)を算出し、一定の閾値以上のコントラスト値を有する絵素を欠陥絵素として検出する。一般に前記閾値は、欠陥が無い絵素(以下、良品絵素と称する)を極力誤検出せず、かつ低輝度レベルの欠陥絵素を検出できるような値に設定されることが望ましい。
【0004】
従って、検査を実施する撮像装置の撮像条件として、フラットパネルの全絵素のコントラスト分布を考えた時、パネルの良品絵素が成すコントラスト分布と、検出すべき欠陥絵素が成すコントラスト分布とがより分離するような撮像条件で検査ができれば、誤検出が少なく高精度な検査が実現されることになる。
【0005】
逆に、前記2つの分布の分離度合いが少ない撮像条件であれば、誤検出は増加し、検査精度が悪くなる。
【0006】
このことを撮像条件の1つであるフォーカスの合致状態という点から考えると、フラットパネルの欠陥検査においては、良品絵素が成すコントラスト分布と欠陥絵素が成すコントラスト分布とが最も分離される状態が最適なフォーカス状態であるといえる。以下、この分離の程度を欠陥分離度と称する。
【特許文献1】特開平2003−255217号公報(2003年9月10日公開)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載されているように、輝度ヒストグラムの輝度ばらつき度合いやエッジ強度等の画像統計量を指標として使用した場合、それらは必ずしも欠陥分離度を最大とする指標とはならない。
【0008】
例えば、最小レベルの点欠陥が検出可能となる程度の撮像分解能(一般にパネル絵素1つにCCD(Charge Coupled Devices)を3個以上割り当てる分解能)で液晶パネルを撮像すれば、前記欠陥分離度が最大にならないフォーカス位置において、画像の輝度ばらつき度合いやエッジ強度が最大になる場合がある。
【0009】
この要因の1つとして、液晶パネルでは、撮像分解能の合致状態の微妙な差異(例えば、CCD1つに対しBM(Black Matrix)部がより多い割合で割り当てられるか、CF(Color Filter)部により多い割合で割り当てられるかの差異)によって、輝度のばらつき度合いやエッジ強度が最大になるフォーカス位置が変わるからである。
【0010】
このような理由により、上述した画像統計量をフォーカス調整の指標にしても、欠陥検出のための最適なフォーカス位置を定量的に調整することは困難である。
【0011】
また、近年増加している超大型フラットパネルの検査においては、撮像画角が大きくなるため、歪曲収差に代表されるレンズ収差の影響が大きくなる。それゆえ、同一レンズ位置もしくは同一レンズ繰り出し量において、フラットパネルの領域毎にフォーカスの合致状態が異なってくると同時に、各絵素のコントラストや欠陥分離度も領域毎に変わってくる。
【0012】
さらに、液晶パネルのように、視野角特性を持つ超大型パネルであれば、その視野角特性によっても各絵素のコントラストや欠陥分離度が領域毎(視野角毎)に変わってくる。
【0013】
従って単一の情報に基づいて、検査のためのフォーカス位置を定めても、それがパネル領域内全体の欠陥を検出するのに必ずしも最適なフォーカス合致状態とはならない。例えば、フラットパネル全体の画像統計量からフォーカス位置を決めた場合、収差や視野角特性に起因するパネル領域内での欠陥分離度のばらつきは考慮されていないため、同一強度の欠陥であってもパネル面内で検出感度がばらつくという問題が発生し、高精度な欠陥検査ができなくなる。
【0014】
本発明は、上記の問題点を解決するためになされたもので、その目的は、被検査パネルの検査に適したフォーカス調整を行うことができるフォーカス調整装置および検査装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明に係るフォーカス調整装置は、上記の課題を解決するために、所定の範囲から外れた互いに同一の輝度を有する少なくとも1つの欠陥絵素と、当該欠陥絵素の近傍に位置する、所定の範囲内の輝度を有する複数の良品絵素とを、点灯した被検査パネルを、撮像手段のフォーカス位置を変更しながら複数回、撮像手段によって撮像した撮像画像と、当該複数の撮像画像のそれぞれを撮像した時の上記フォーカス位置を示すフォーカス位置情報とを互いに関連付けて取得する取得手段と、上記取得手段が取得した撮像画像ごとに、上記欠陥絵素に対応する画素の輝度値と当該欠陥絵素の近傍に位置する、当該欠陥絵素と同色の良品絵素に対応する画素の輝度値との違いを示す値である第1対照値、および上記良品絵素に対応する画素の輝度値と当該良品絵素の近傍に位置する、当該良品絵素と同色の良品絵素に対応する画素の輝度値との違いを示す値である第2対照値を算出し、算出した第1対照値と第2対照値とがどれだけ離れているかを示す分離度を算出する分離度算出手段と、上記分離度算出手段が算出した分離度に基づいて、上記撮像手段のフォーカス位置を決定するフォーカス位置決定手段とを備えることを特徴としている。
【0016】
本発明に係るフォーカス調整装置は、上記の課題を解決するために、フォーカス調整装置におけるフォーカス調整方法であって、所定の範囲から外れた互いに同一の輝度を有する少なくとも1つの欠陥絵素と、当該欠陥絵素の近傍に位置する、所定の範囲内の輝度を有する複数の良品絵素とを点灯した被検査パネルを、撮像手段のフォーカス位置を変更しながら、当該撮像手段によって複数回撮像した撮像画像と、当該複数の撮像画像のそれぞれを撮像した時の上記フォーカス位置を示すフォーカス位置情報とを互いに関連付けて取得する取得工程と、上記取得工程において取得した撮像画像ごとに、上記欠陥絵素に対応する画素の輝度値と当該欠陥絵素の近傍に位置する、当該欠陥絵素と同色の良品絵素に対応する画素の輝度値との違いを示す値である第1対照値、および上記良品絵素に対応する画素の輝度値と当該良品絵素の近傍に位置する、当該良品絵素と同色の良品絵素に対応する画素の輝度値との違いを示す値である第2対照値を算出し、算出した第1対照値と第2対照値とがどれだけ離れているかを示す分離度を算出する分離度算出工程と、上記分離度算出工程において算出した分離度に基づいて上記撮像手段のフォーカス位置を決定するフォーカス位置決定工程とを含むことを特徴としている。
【0017】
上記の構成によれば、分離度算出手段は、互いに同一の輝度を有する少なくとも1つの欠陥絵素と複数の良品絵素とを点灯した被検査パネルを、フォーカス位置を変更しながら複数回撮像した各撮像画像について分離度を算出する。この分離度は、欠陥絵素を、どれだけ高感度に検出できるかを示す値であり、この分離度の値が高くなるほど、当該欠陥絵素の検出は容易になる。フォーカス位置決定手段は、この分離度に基づいて、上記撮像手段のフォーカス位置を決定する。例えば、フォーカス位置決定手段は、フォーカス位置情報が示すフォーカス位置のうち、分離度が最も高いフォーカス位置を採用する。
【0018】
それゆえ、被検査パネルに含まれる欠陥絵素の検出に適した、撮像手段のフォーカス位置を決定することができる。
【0019】
上記欠陥絵素と上記良品絵素とは、被検査パネルの検査対象領域を分割することによって生じる複数の分割領域から選ばれた少なくとも2つの分割領域のそれぞれに点灯されており、上記分離度算出手段は、上記撮像画像における上記少なくとも2つの分割領域のそれぞれについて上記分離度を算出し、上記フォーカス位置決定手段は、上記少なくとも2つの領域のそれぞれについて上記分離度算出手段が算出した分離度の合計を、上記フォーカス位置情報が示すフォーカス位置ごとに算出し、当該分離度の合計が最大となるフォーカス位置を、上記撮像手段のフォーカス位置として採用することが好ましい。
【0020】
上記の構成によれば、分離度算出手段は、欠陥絵素と良品絵素とを、被検査パネルの少なくとも2つの分割領域のそれぞれに点灯した被検査パネルを撮像した撮像画像における少なくとも2つの分割領域のそれぞれについて上記分離度を算出する。そして、フォーカス位置決定手段は、分離度算出手段が算出した分離度の合計を、フォーカス位置情報が示すフォーカス位置ごとに算出し、当該分離度の合計が最大となるフォーカス位置を、撮像手段のフォーカス位置として採用する。
【0021】
それゆえ、被検査パネル全体で平均的に最も欠陥絵素の検出感度が良くなるフォーカス位置を、検査のためのフォーカス位置として採用できる。
【0022】
上記欠陥絵素と上記良品絵素とは、被検査パネルの検査対象領域を分割することによって生じる複数の分割領域から選ばれた少なくとも2つの分割領域のそれぞれに点灯されており、上記分離度算出手段は、上記撮像画像における上記少なくとも2つの分割領域のそれぞれについて上記分離度を算出し、上記フォーカス位置決定手段は、上記少なくとも2つの分割領域のそれぞれについて上記分離度算出手段が算出した分離度の差が最も小さくなるフォーカス位置を上記撮像手段のフォーカス位置として採用することが好ましい。
【0023】
上記の構成によれば、分離度算出手段は、欠陥絵素と良品絵素とを、被検査パネルの少なくとも2つの分割領域のそれぞれに点灯した被検査パネルを撮像した撮像画像における少なくとも2つの分割領域のそれぞれについて上記分離度を算出する。そして、フォーカス位置決定手段は、少なくとも2つの分割領域のそれぞれについて分離度算出手段が算出した分離度の差が最も小さくなるフォーカス位置を撮像手段のフォーカス位置として採用する。
【0024】
それゆえ、各分割領域の分離度の差が最小になるため、欠陥検出の閾値等の補正を容易に行うことができるようになる。例えば、閾値の補正であれば、オフセット補正もしくは定数倍の補正を行うのみで、全ての分割領域において全く同一の感度で検査できることになり、高精度な検査が実現できる。
【0025】
本発明に係る検査装置は、被検査パネルを撮像した撮像画像を解析することにより、当該被検査パネルの検査を行う検査装置であって、所定の範囲から外れた互いに同一の輝度を有する少なくとも1つの欠陥絵素と、当該欠陥絵素の近傍に位置する、所定の範囲内の輝度を有する複数の良品絵素とを被検査パネルに点灯させる表示制御手段と、上記欠陥絵素と上記良品絵素とを点灯した被検査パネルを、当該被検査パネルに対するフォーカス位置を変更しながら複数回撮像する撮像手段と、上記フォーカス調整装置とを備えることを特徴としている。
【0026】
上記の構成によれば、表示制御手段は、少なくとも1つの欠陥絵素と、当該欠陥絵素の近傍に位置する複数の良品絵素とを被検査パネルに点灯させる。撮像手段は、この被検査パネルに対するフォーカス位置を変更しながら当該被検査パネルを複数回撮像する。そして、フォーカス調整装置の分離度算出手段は、撮像手段が撮像した各撮像画像について分離度を算出する。この分離度は、欠陥絵素が、どれだけ高感度に検出できるかを示す値であり、この分離度の値が高くなるほど、当該欠陥絵素の検出は容易になる。フォーカス位置決定手段は、この分離度に基づいて、撮像手段のフォーカス位置を決定する。
【0027】
それゆえ、被検査パネルに含まれる欠陥絵素の検出に適したフォーカス位置を決定することができる。
【0028】
また、上記フォーカス調整装置を動作させるフォーカス調整プログラムであって、コンピュータを上記各手段として機能させるためのフォーカス調整プログラムおよび当該フォーカス調整プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体も本発明の技術的範囲に含まれる。
【発明の効果】
【0029】
本発明に係るフォーカス調整装置は、以上のように、所定の範囲から外れた互いに同一の輝度を有する少なくとも1つの欠陥絵素と、当該欠陥絵素の近傍に位置する、所定の範囲内の輝度を有する複数の良品絵素とを、点灯した被検査パネルを、撮像手段のフォーカス位置を変更しながら複数回、撮像手段によって撮像した撮像画像と、当該複数の撮像画像のそれぞれを撮像した時の上記フォーカス位置を示すフォーカス位置情報とを互いに関連付けて取得する取得手段と、上記取得手段が取得した撮像画像ごとに、上記欠陥絵素に対応する画素の輝度値と当該欠陥絵素の近傍に位置する、当該欠陥絵素と同色の良品絵素に対応する画素の輝度値との違いを示す値である第1対照値、および上記良品絵素に対応する画素の輝度値と当該良品絵素の近傍に位置する、当該良品絵素と同色の良品絵素に対応する画素の輝度値との違いを示す値である第2対照値を算出し、算出した第1対照値と第2対照値とがどれだけ離れているかを示す分離度を算出する分離度算出手段と、上記分離度算出手段が算出した分離度に基づいて、上記撮像手段のフォーカス位置を決定するフォーカス位置決定手段とを備える構成である。
【0030】
本発明に係るフォーカス調整方法は、以上のように、所定の範囲から外れた互いに同一の輝度を有する少なくとも1つの欠陥絵素と、当該欠陥絵素の近傍に位置する、所定の範囲内の輝度を有する複数の良品絵素とを点灯した被検査パネルを、撮像手段のフォーカス位置を変更しながら、当該撮像手段によって複数回撮像した撮像画像と、当該複数の撮像画像のそれぞれを撮像した時の上記フォーカス位置を示すフォーカス位置情報とを互いに関連付けて取得する取得工程と、上記取得工程において取得した撮像画像ごとに、上記欠陥絵素に対応する画素の輝度値と当該欠陥絵素の近傍に位置する、当該欠陥絵素と同色の良品絵素に対応する画素の輝度値との違いを示す値である第1対照値、および上記良品絵素に対応する画素の輝度値と当該良品絵素の近傍に位置する、当該良品絵素と同色の良品絵素に対応する画素の輝度値との違いを示す値である第2対照値を算出し、算出した第1対照値と第2対照値とがどれだけ離れているかを示す分離度を算出する分離度算出工程と、上記分離度算出工程において算出した分離度に基づいて上記撮像手段のフォーカス位置を決定するフォーカス位置決定工程とを含む構成である。
【0031】
被検査パネルに含まれる欠陥絵素の検出に適した、撮像手段のフォーカス位置を決定することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
本発明の実施の一形態について図1〜図5に基づいて説明すれば、以下のとおりである。ここでは、液晶パネルを撮像装置によって撮像し、得られた撮像画像を解析することにより当該液晶パネルの良否を判定する検査装置1を例に挙げて説明する。ただし、検査装置1の検査対象は、液晶パネルに限定されず、プラズマディスプレイの表示パネル等のフラットパネルであってもよい。
【0033】
(検査装置1の構成)
検査装置1は、人工欠陥絵素(模擬欠陥絵素)を点灯した液晶パネル50を撮像し、その撮像画像を解析することにより、液晶パネル50の検査に最適な、撮像装置2のフォーカス状態を決定する。人工欠陥絵素とは、所定の範囲(基準閾値)から外れた輝度を有する絵素である。実際には、ある絵素の周囲に位置する、当該絵素と同色の絵素との比較により、当該絵素が欠陥絵素であるかどうかが判定される。なお、所定の範囲内の輝度を有する絵素を良品絵素と称する。
【0034】
図1は、検査装置1の構成を示す概略図である。同図に示すように、検査装置1は、撮像装置(撮像手段)2、制御装置3および表示パターン発生装置9を備えている。
【0035】
撮像装置2は、液晶パネル50を撮像するためのものであり、マトリクス状に配置された複数の撮像素子を有している。撮像装置2の例として、CCD(Charge Coupled Devices)カメラ、CMOS(Complementary Metal-Oxide-Semiconductor)カメラを挙げることができる。
【0036】
撮像装置2は、レンズ21と当該レンズ21の位置を調整するレンズ駆動機構22とを備えており、後述する撮像制御部4の制御下でフォーカス位置を変更しながら複数回液晶パネル50を撮像する。撮像装置2は、当該複数の撮像画像と、当該複数の撮像画像のそれぞれを撮像した時のフォーカス位置の情報(フォーカス位置情報)とを対応付けて、両者を撮像制御部4へ出力する。
【0037】
なお、本実施形態では、上記フォーカス位置とは、レンズ21の位置(レンズ21の繰り出し量)であるが、撮像装置2の液晶パネル50に対するフォーカス状態を示すことができる情報であれば、レンズ21の位置以外の情報をフォーカス位置情報として用いてもよい。
【0038】
表示パターン発生装置9は、後述する表示パターン制御部8からの命令に従って、フォーカス位置調整用点灯パターンを液晶パネル50に点灯させるための制御信号を当該液晶パネル50へ出力する。フォーカス位置調整用点灯パターンとは、所定の範囲内の輝度を有する複数の良品絵素に加えて、所定の範囲から外れた同一の輝度を有する少なくとも1つの人工欠陥絵素(模擬欠陥絵素)を点灯させたパターンである。フォーカス位置調整用点灯パターンの具体例については、後述する。
【0039】
制御装置3は、撮像制御部4、記憶部5、フォーカス位置算出部(フォーカス位置調整装置)6、検査部7および表示パターン制御部(表示パターン制御手段)8を備えている。
【0040】
表示パターン制御部8は、表示パターン発生装置9を制御することにより、フォーカス位置調整用点灯パターンを液晶パネル50に点灯させる。
【0041】
撮像制御部4は、撮像装置2を制御することにより、フォーカス位置調整用点灯パターンを点灯した液晶パネル50を撮像した撮像画像および当該撮像画像を撮像した時のフォーカス位置情報を取得し、取得した撮像画像とフォーカス位置情報とを対応付けてフォーカス位置算出部6へ出力する。
【0042】
撮像制御部4は、レンズ駆動制御部41を備えている。このレンズ駆動制御部41は、撮像装置2のレンズ駆動機構22を介してレンズ21の位置を調整することにより撮像装置2のフォーカス状態を調整する。すなわち、撮像制御部4は、レンズ駆動制御部41を介して撮像装置2のフォーカス位置を変更しながら、撮像装置2に液晶パネル50を複数回撮像させる。
【0043】
撮像制御部4は、撮像装置2が撮像した撮像画像と、当該撮像画像を撮像した時のフォーカス位置を示すフォーカス位置情報とを対応づけて記憶部5へ格納する。
【0044】
フォーカス位置算出部6は、コントラスト値算出部62および分離度算出部63を備える画像解析部(取得手段、分離度算出手段)61、およびフォーカス位置決定部(フォーカス位置決定手段)64を備えている。
【0045】
画像解析部61は、記憶部5から液晶パネル50の撮像画像およびフォーカス位置情報を取得し、当該撮像画像における、人工欠陥絵素コントラスト値(第1対照値)および良品絵素コントラスト値(第2対照値)を算出し、これら人工欠陥絵素コントラスト値と良品絵素コントラスト値とがどれだけ離れているかを示す欠陥分離度を算出する。
【0046】
画像解析部61において、コントラスト値算出部62は、人工欠陥絵素コントラスト値および良品絵素コントラスト値を算出する。
【0047】
人工欠陥絵素コントラスト値とは、人工欠陥絵素に対応する、撮像画像の画素の輝度値と当該欠陥絵素の近傍に位置する、当該欠陥絵素と同色の良品絵素に対応する、撮像画像の画素の輝度値との違いを示す値である。より具体的には、人工欠陥絵素コントラスト値とは、人工欠陥絵素に対応する画素の輝度値と当該人工欠陥絵素の近傍に位置する、当該人工欠陥絵素と同色の少なくとも1つの良品絵素に対応する画素の輝度値との差の絶対値または比である。
【0048】
良品絵素コントラスト値とは、良品絵素に対応する、撮像画像の画素の輝度値と当該良品絵素の近傍に位置する、当該良品絵素と同色の良品絵素に対応する、撮像画像の画素の輝度値との違いを示す値である。より具体的には、良品絵素コントラスト値とは、人工欠陥絵素の近傍に位置する良品絵素に対応する画素の輝度値と当該良品絵素の近傍に位置する、当該良品絵素と同色の少なくとも1つの良品絵素に対応する画素の輝度値との差の絶対値または比、もしくは、これら比、または差の絶対値のばらつきを示す値である。換言すれば、良品絵素コントラスト値は、人工欠陥絵素の近傍(または周囲)に位置する複数の良品絵素に対応する、撮像画像の複数の画素間の、輝度値の差の絶対値、輝度値の比、または、輝度値のばらつきを示す値である。コントラスト値の算出方法については後述する。
【0049】
なお、良品絵素コントラスト値の算出に用いる良品絵素は、人工欠陥絵素と同色の絵素であることが好ましいが、人工欠陥絵素の色と異なっていてもかまわない。
【0050】
画像解析部61において、分離度算出部63は、人工欠陥絵素コントラスト値と良品絵素コントラスト値とがどれだけ離れているかを示す欠陥分離度を算出する。例えば、分離度算出部63は、人工欠陥絵素コントラスト値と良品絵素コントラスト値との差分値の絶対値を算出し、この差分値の絶対値を欠陥分離度とする。すなわち、この場合、欠陥分離度とは、人工欠陥絵素コントラスト値と良品絵素コントラスト値との差の絶対値である。
【0051】
また、欠陥分離度は、人工欠陥絵素コントラスト値と良品絵素コントラスト値との比であってもよい。すなわち、分離度算出部63は、欠陥分離度として、人工欠陥絵素コントラスト値と良品絵素コントラスト値との比を算出してもよい。
【0052】
分離度算出部63は、算出した欠陥分離度をフォーカス位置情報と対応付けて記憶部5に格納する。
【0053】
フォーカス位置決定部64は、記憶部5から、複数の撮像画像を解析することによって得られた欠陥分離度およびフォーカス位置情報を互いに対応付けて取得し、これらの欠陥分離度をフォーカス指標として撮像装置2のフォーカス位置を決定する。フォーカス位置決定部64におけるフォーカス位置決定方法については後述する。
【0054】
検査部7は、フォーカス位置決定部64が決定したフォーカス位置で液晶パネル50を撮像した撮像画像を解析することにより、当該液晶パネル50における欠陥絵素の有無を判定する。検査部7における検査方法(撮像画像の解析方法)は、特に限定されない。
【0055】
(フォーカス位置調整用点灯パターンの例)
図2は、フォーカス位置調整用点灯パターンの例を示す図である。図2(a)〜図2(d)に示す例では、液晶パネル50の検査対象領域は、液晶パネル50の表示部全面である。この検査対象領域が、図2(a)に示す例では、上下方向に3分割されており、図2(b)に示す例では、左右方向に3分割されており、図2(c)および図2(d)に示す例では、上下および左右方向に9分割されている。換言すれば、図2(c)および図2(d)に示す例では、検査対象領域がマトリクス状に9分割されている。このような分割された液晶パネル50の領域を分割領域と称する。
【0056】
また、図2(a)および図2(b)に示す例では、3分割された領域のそれぞれに、同一の輝度を有するR(赤)、G(緑)、B(青)の人工欠陥絵素の組が、3組ずつ点灯されており、それ以外の絵素は、良品絵素として点灯されている。
【0057】
また、図2(c)に示す例では、9分割された領域のそれぞれに、同一の輝度を有するR、G、Bの人工欠陥絵素の組が、1組ずつ点灯されており、それ以外の絵素は、良品絵素として点灯されている。
【0058】
また、また、図2(d)に示す例では、9分割された領域のうち、5つの分割領域において、同一の輝度を有するR、G、Bの人工欠陥絵素の組が、1組ずつ点灯されており、それ以外の絵素は、良品絵素として点灯されている。
【0059】
すなわち、表示パターン制御部8は、液晶パネル50の検査対象領域を分割することによって生じる複数の領域から選ばれた少なくとも2つの領域のそれぞれにおいて、同一の輝度を有する少なくとも1つの人工欠陥絵素と、当該人工欠陥絵素の周囲に位置する複数の良品絵素とを点灯させる。
【0060】
なお、点灯される人工欠陥絵素の輝度は、少なくとも同色の人工欠陥絵素に関して同一である。例えば、R系の人工欠陥絵素の輝度は、すべて同じである。
【0061】
人工欠陥絵素の輝度は、良品絵素として判定される所定の範囲よりも高いものであってもよいし、低いものであってもよい。換言すれば、人工欠陥絵素は、輝点欠陥絵素であってもよいし、黒点欠陥絵素であってもよい。
【0062】
以下の説明では、説明を簡略化するために、パネルを上下方向に3分割し、それぞれの領域に、同一の輝度値を有する人工欠陥(例えば、白点灯状態における黒点欠陥)を1組づつ点灯させる例をもとに説明を行う。
【0063】
(コントラスト値算出部62におけるコントラスト値算出方法)
図3は、コントラスト値算出部62におけるコントラスト値の算出方法を説明するための図である。同図には、R、G、Bの同色絵素の配列が、R、G、Bの順に繰返し配列した液晶パネル50の例が示されている。
【0064】
コントラスト値算出部62は、複数の撮像素子を有する撮像装置2が撮像した撮像画像を構成する画素のうち、人工欠陥絵素(図3にて注目絵素51aに相当)を撮像した撮像素子から出力された輝度値と、当該人工欠陥絵素の近傍に位置する、当該人工欠陥絵素と同色の2つの良品絵素(図3にて周辺絵素51bおよび51cに相当)をそれぞれ撮像した撮像素子から出力された輝度値の平均値と、の差の絶対値を算出する。この差の絶対値が人工欠陥絵素コントラスト値である。
【0065】
液晶パネル50を撮像した撮像画像を構成する画素のうち、どの画素が人工欠陥絵素に対応したのであるかを示す情報(換言すれば、撮像装置2が有する複数の撮像素子のうち、どの撮像素子が人工欠陥絵素を撮像したものであるかを示す情報)は、予めコントラスト値算出部62が利用可能なメモリ(例えば、記憶部5)に格納されている。
【0066】
同様に、コントラスト値算出部62は、複数の撮像素子を有する撮像装置2が撮像した撮像画像を構成する画素のうち、良品絵素(図3にて注目絵素51aに相当)を撮像した撮像素子から出力された輝度値と、当該良品絵素の近傍に位置する、当該良品絵素と同色の2つの良品絵素(図3にて周辺絵素51bおよび51cに相当)をそれぞれ撮像した撮像素子から出力された輝度値の平均値と、の差の絶対値を算出する。この差の絶対値が良品絵素コントラスト値である。
【0067】
液晶パネル50を撮像した撮像画像を構成する画素のうち、どの画素が良品絵素に対応したのであるかを示す情報(換言すれば、撮像装置2が有する複数の撮像素子のうち、どの撮像素子が良品絵素を撮像したものであるかを示す情報)は、予めコントラスト値算出部62が利用可能なメモリに格納されている。
【0068】
コントラスト値算出部62は、人工欠陥絵素コントラスト値および良品絵素コントラスト値を、液晶パネル50の分割領域ごとに算出する。ひとつの分割領域に複数の人工欠陥絵素が存在している場合には、各人工欠陥絵素から算出された複数の人工欠陥絵素コントラスト値の統計値(例えば、平均値)を用いればよい。また、良品絵素コントラスト値として、注目する人工欠陥絵素が属する分割領域領域におけるすべて(または一部)の良品絵素に関して算出された良品絵素コントラスト値の統計値(例えば、平均値、代表値、中間値、最大値または最小値)を求めてもよいし、注目する人工欠陥絵素が属する分割領域におけるすべて(または一部)の良品絵素の輝度値の標準偏差(すなわち、輝度値のばらつき)を求めてもよいし、当該標準偏差の6倍の値を求めてもよい。
【0069】
なお、コントラスト値算出部62におけるコントラスト値算出方法は、上述ものに限定されない。例えば、人工欠陥絵素コントラスト値として、欠陥絵素を撮像した撮像素子から出力された輝度値と、当該欠陥絵素の近傍に位置する、当該欠陥絵素と同色の1つの良品絵素を撮像した撮像素子から出力された輝度値との差分値の絶対値を求めてもよいし、欠陥絵素を撮像した撮像素子から出力された輝度値と、当該欠陥絵素の近傍に位置する、当該欠陥絵素と同色の1つの良品絵素を撮像した撮像素子から出力された輝度値との比を求めてもよい。
【0070】
注目絵素に対する周辺絵素(背景絵素)は、注目絵素が属する同色絵素の配列における、当該注目絵素の近傍に位置する絵素でもよい。すなわち、図3にて、注目絵素51aの上下方向に位置する絵素を周辺絵素としてもよい。この場合、注目絵素51aに2番目に近い絵素(絵素51d)を周辺絵素としてもよい。
【0071】
また、注目絵素51aと、注目絵素51aを取り囲むように位置している複数の絵素(例えば、図3にて、絵素51b〜51iの8つの絵素)とのコントラスト値をそれぞれ算出し、得られた複数のコントラスト値(上記の例では、8つのコントラスト値)の平均値、代表値、中間値、最大値または最小値などの統計値を算出し、この統計値を欠陥分離度を算出するためのコントラスト値として用いてもよい。
【0072】
また、コントラスト値算出部62におけるコントラスト値算出方法は、検査部7における、欠陥検出のためのコントラスト値算出方法(欠陥絵素検出方法)と同様のものであることが望ましい。
【0073】
(フォーカス位置決定部64におけるフォーカス位置決定方法)
図4は、フォーカス位置決定部64におけるフォーカス位置決定方法を説明するための図である。同図の上段には、人工欠陥絵素コントラスト値および良品絵素コントラスト値の算出結果の一例が示されている。具体的には、レンズ21の位置(フォーカス位置)を横軸にとり、各フォーカス位置において撮像された撮像画像における上部、中央部、下部の分割領域からそれぞれ得られた人工欠陥絵素コントラスト値および良品絵素コントラスト値がプロットされている。すなわち、1つのフォーカス位置に対して、人工欠陥絵素コントラスト値および良品絵素コントラスト値がそれぞれ3点ずつプロットされている。
【0074】
図4の上段に示す算出結果では、良品絵素コントラスト値として、各分割領域に含まれる良品絵素が有するコントラスト値の標準偏差を6倍した値(6σ)が示されている。
【0075】
また、図4の下段には、欠陥分離度として、上段に示す人工欠陥絵素コントラスト値と良品絵素コントラスト値との差分値が示されている。
【0076】
フォーカス位置決定部64は、図4の下段に示すような、各分割領域に関して算出された欠陥分離度に基づいて、液晶パネル50の検査に適当なフォーカス位置を決定する。すなわち、フォーカス位置決定部64は、各分割領域の欠陥分離度を変数とする評価関数の値が最大となるフォーカス位置を決定する。
【0077】
フォーカス位置の決定方法として、例えば、以下の2つの方法を挙げることができる。
【0078】
(第1の方法)
ひとつ目の方法は、例えば分割領域が3つの場合、上部、中央部、下部の分割領域における欠陥分離度の総和が最大となるフォーカス位置を採用するというものである。図4では、このようなフォーカス位置は、フォーカス位置(a)として表されている。
【0079】
すなわち、この方法は、欠陥分離度の評価関数を、
(中央部の欠陥分離度)+(上部の欠陥分離度)+(下部の欠陥分離度)
として、フォーカス位置決定部64は、その評価関数が最大となる位置をフォーカス位置として採用するものである。
【0080】
この方法を用いることにより、液晶パネル50全体で平均的に最も高い欠陥分離度が高くなるフォーカス位置を決定できる。それゆえ、平均的に最も検査感度が良くなるフォーカス位置を、検査のためのフォーカス位置として採用できる。
【0081】
ただし、分割領域間でコントラスト値の絶対値に差が出るため、液晶パネル50全面で同一の閾値で欠陥検出を行う場合には、誤検出の増加(例えば上部・下部を基準に閾値を決定すれば、パネル中央部では誤検出が増加する)や未検出の増加を招く可能性がある。それゆえ、分割領域ごとに欠陥検出の閾値の補正等を行うことが望ましい。
【0082】
(第2の方法)
フォーカス位置決定部64は、上部・中央部・下部の分離領域における欠陥分離度がほぼ等しくなる(換言すれば、欠陥分離度の差が最も小さくなる)フォーカス位置を採用する。図4では、このようなフォーカス位置は、フォーカス位置(b)として表されている。
【0083】
この方法においても分割領域間でコントラスト値の絶対値に差が出るため、パネル全面で同一の閾値で欠陥検出を行う場合には、前述の問題は発生する。しかし、各分割領域の欠陥分離度が等しくなるため、欠陥検出の閾値等の補正が容易になる。例えば、欠陥検出の閾値の補正であれば、オフセット補正もしくは定数倍の補正を行うのみで、全ての領域において全く同一の欠陥検出感度で検査できることになり、高精度な検査が実現できる。
【0084】
なお、フォーカス位置決定方法は、上述のものに限定されない。上述の例では上部・中央部・下部の分割領域にそれぞれ由来する欠陥分離度を全て使用したが、これらの一部を使用してフォーカス位置を決定してもよい。例えば、上部分割領域に由来する欠陥分離度と下部分割領域に由来する欠陥分離度とを使用してフォーカス位置を決定してもよい。
【0085】
また分割領域の数を増やした場合でも、それぞれの分割領域ごとの分離度を全て使用してフォーカス位置を決定してもよいし、一部の分割領域のみに着目してフォーカス位置を決定してもよい。すなわち、少なくとも2つの分割領域から算出された欠陥分離を用いてフォーカス位置を決定すればよい。
【0086】
また、上述の説明では、1つの分割領域に1つの人工欠陥絵素を点灯させる場合について説明したが、1つの分割領域内に複数個の同一強度(同一輝度)の人工欠陥絵素を点灯させてもよい。この場合、複数の人工欠陥絵素に由来する、複数の人工欠陥絵素コントラスト値の統計値(平均値、最大値、最小値など)を分割領域ごとに算出し、これら分割領域ごとの統計値を用いてフォーカス位置を決定してもよい。
【0087】
また、同一の分割領域内に複数色の、色毎に輝度が同一である人工欠陥絵素を複数個点灯させ、それらの人工欠陥絵素に由来する人工欠陥絵素コントラスト値を色別に算出し、その人工欠陥絵素コントラスト値の統計値(平均値、最大値、最小値など)を色別にかつ分割領域ごとに算出し、これら分割領域ごとの統計値を用いてフォーカス位置を決定してもよい。
【0088】
(検査装置1におけるフォーカス位置調整処理の流れ)
検査装置1におけるフォーカス位置調整処理の流れについて、図5を参照しつつ説明する。図5は、検査装置1におけるフォーカス位置調整処理の流れを示すフローチャートである。
【0089】
まず、表示パターン制御部8が、表示パターン発生装置9を介して液晶パネル50に、図2に例示したフォーカス位置調整用点灯パターンを点灯させる(S1)。
【0090】
そして、撮像制御部4のレンズ駆動制御部41がレンズ駆動機構22を制御することによりレンズ21の繰り出し量を最小にする(S2)。
【0091】
この状態から、撮像制御部4は、微少量Δd(例えば数μm)刻みでレンズ21を繰り出していき(S3)、その都度液晶パネル50を撮像する(S4)。撮像制御部4は、その撮像画像と、当該撮像画像を撮像した時のレンズ繰り出し量(フォーカス位置)を示すフォーカス位置情報とを対応づけて、記憶部5へ保存していく。
【0092】
撮像画像およびフォーカス位置情報の記憶部5への保存が完了すると、コントラスト値算出部62は、記憶部5から当該撮像画像およびフォーカス位置情報を取得し、当該撮像画像の人工欠陥コントラスト値および良品絵素コントラスト値を、上述したように分割領域ごとに算出する(S5、S6)。コントラスト値算出部62は、フォーカス位置情報と、分割領域を特定する情報と、当該分割領域から算出した人工欠陥絵素コントラスト値および良品絵素コントラスト値とを対応付けて分離度算出部63へ出力する。
【0093】
例えば、コントラスト値算出部62は、フォーカス位置情報として10μm、分割領域を特定する情報として上部分割領域の識別子、そして、当該上部分割領域から得られた人工欠陥絵素コントラスト値および良品絵素コントラスト値を互いに関連付けて分離度算出部63へ出力する。
【0094】
分離度算出部63は、上述したように、人工欠陥コントラスト値と良品絵素コントラスト値とから欠陥分離度を算出する(S7)。例えば、ある分割領域の人工欠陥コントラスト値と、当該分割領域の良品絵素コントラスト値の統計値(例えば、平均値)との差分値の絶対値を欠陥分離度として算出する。分離度算出部63は、算出した欠陥分離度を、対応するフォーカス位置情報および分割領域を特定する情報と対応づけて記憶部5へ保存する。
【0095】
ここで、レンズ駆動制御部41は、レンズ21の繰り出し量が最大であるかどうかをチェックする(S8)。繰り出し量が最大であれば(S8にてYES)、レンズ21の繰り出し処理(すなわち、液晶パネル50の撮像)を終了し、最大でないならば(S8にてNO)、繰り出し量を増加させ、撮像を繰り返す(S3に戻る)。
【0096】
液晶パネル50の撮像が終了すると、フォーカス位置決定部64は、記憶部5に格納された、欠陥分離度、対応するフォーカス位置情報、および分割領域を特定する情報を取得し、これらの情報から、上述したように、最適なフォーカス位置を決定する。例えば、フォーカス位置決定部64は、上部、中央部、下部の分割領域における欠陥分離度の総和をレンズ繰り出し量(フォーカス位置)ごとに算出し(S9)、その総和が最大となるレンズ繰り出し量を採用する(S10)。
【0097】
フォーカス位置決定部64は、採用したレンズ繰り出し量(フォーカス位置)を示すフォーカス位置情報を撮像制御部4へ出力する。
【0098】
このフォーカス位置情報を受け取ると、撮像制御部4は、当該フォーカス位置情報が示すレンズ繰り出し量だけレンズ21を繰り出す(S11)。
【0099】
その後、撮像装置2は、当該フォーカス位置において液晶パネル50の撮像を行い、取得された撮像画像を検査部7が解析し、液晶パネル50の良否を判定する。
【0100】
なお、コントラスト値算出部62は、撮像装置2が液晶パネル50の撮像を全て終えてから、人工欠陥絵素コントラスト値および良品絵素コントラスト値を算出してもよい。
【0101】
(変更例)
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【0102】
例えば、フォーカス位置算出部6を独立した装置(フォーカス位置調整装置)として形成してもよい。
【0103】
また、上述した検査装置1の各ブロック、特に画像解析部61およびフォーカス位置決定部64は、ハードウェアロジックによって構成してもよいし、次のようにCPUを用いてソフトウェアによって実現してもよい。
【0104】
すなわち、検査装置1は、各機能を実現する制御プログラムの命令を実行するCPU(central processing unit)、上記プログラムを格納したROM(read only memory)、上記プログラムを展開するRAM(random access memory)、上記プログラムおよび各種データを格納するメモリ等の記憶装置(記録媒体)などを備えている。そして、本発明の目的は、上述した機能を実現するソフトウェアである検査装置1の制御プログラム(フォーカス位置調整プログラム)のプログラムコード(実行形式プログラム、中間コードプログラム、ソースプログラム)をコンピュータで読み取り可能に記録した記録媒体を、上記検査装置1に供給し、そのコンピュータ(またはCPUやMPU)が記録媒体に記録されているプログラムコードを読み出し実行することによっても、達成可能である。
【0105】
上記記録媒体としては、例えば、磁気テープやカセットテープ等のテープ系、フロッピー(登録商標)ディスク/ハードディスク等の磁気ディスクやCD−ROM/MO/MD/DVD/CD−R等の光ディスクを含むディスク系、ICカード(メモリカードを含む)/光カード等のカード系、あるいはマスクROM/EPROM/EEPROM/フラッシュROM等の半導体メモリ系などを用いることができる。
【0106】
また、検査装置1を通信ネットワークと接続可能に構成し、上記プログラムコードを通信ネットワークを介して供給してもよい。この通信ネットワークとしては、特に限定されず、例えば、インターネット、イントラネット、エキストラネット、LAN、ISDN、VAN、CATV通信網、仮想専用網(virtual private network)、電話回線網、移動体通信網、衛星通信網等が利用可能である。また、通信ネットワークを構成する伝送媒体としては、特に限定されず、例えば、IEEE1394、USB、電力線搬送、ケーブルTV回線、電話線、ADSL回線等の有線でも、IrDAやリモコンのような赤外線、Bluetooth(登録商標)、802.11無線、HDR、携帯電話網、衛星回線、地上波デジタル網等の無線でも利用可能である。なお、本発明は、上記プログラムコードが電子的な伝送で具現化された、搬送波に埋め込まれたコンピュータデータ信号の形態でも実現され得る。
【0107】
また、本発明は、以下のようにも表現できる。
【0108】
すなわち、本発明のフォーカス調整装置は、フラットパネルの欠陥検査において、被検査パネルに、被検査対象領域を少なくとも3分割した分割領域のうちの複数の領域それぞれに、同一強度を持つ人工欠陥が表示されるようなパタ―ンを表示させる手段と、レンズ位置(ズーム機構)を変化させながら撮像する手段と、前記撮像手段によって得られた画像から人工欠陥コントラストと良品部コントラスト、及び人工欠陥コントラストと良品部コントラストの分離度を計算し、その分離度をフォーカス指標としてフォーカス位置を決定する手段とを備えることを特徴としている。
【0109】
また、前記人工欠陥コントラストと良品部コントラストの分離度は,被撮像領域内の所定の領域毎に独立に計算されることが好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0110】
被検査パネルの検査に適したフォーカス位置を決定できるため、被検査パネルの検査装置が備える撮像装置のフォーカス位置を調整するフォーカス位置調整装置として利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0111】
【図1】本発明の一実施形態に係る検査装置の構成を示す概略図である。
【図2】フォーカス位置調整用点灯パターンの例を示す図である。
【図3】上記検査装置が備えるコントラスト値算出部におけるコントラスト値の算出方法を説明するための図である。
【図4】上記検査装置が備えるフォーカス位置決定部におけるフォーカス位置決定方法を説明するための図である。
【図5】上記検査装置におけるフォーカス位置調整処理の流れを示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0112】
1 検査装置
2 撮像装置(撮像手段)
6 フォーカス位置算出部(フォーカス位置調整装置)
8 表示パターン制御部(表示パターン制御手段)
50 液晶パネル(被検査パネル)
51a 注目絵素(欠陥絵素、良品絵素)
61 画像解析部(取得手段、分離度算出手段)
62 コントラスト値算出部(分離度算出手段)
63 分離度算出部(分離度算出手段)
64 フォーカス位置決定部(フォーカス位置決定手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の範囲から外れた互いに同一の輝度を有する少なくとも1つの欠陥絵素と、当該欠陥絵素の近傍に位置する、所定の範囲内の輝度を有する複数の良品絵素とを、点灯した被検査パネルを、撮像手段のフォーカス位置を変更しながら複数回、撮像手段によって撮像した撮像画像と、当該複数の撮像画像のそれぞれを撮像した時の上記フォーカス位置を示すフォーカス位置情報とを互いに関連付けて取得する取得手段と、
上記取得手段が取得した撮像画像ごとに、上記欠陥絵素に対応する画素の輝度値と当該欠陥絵素の近傍に位置する、当該欠陥絵素と同色の良品絵素に対応する画素の輝度値との違いを示す値である第1対照値、および上記良品絵素に対応する画素の輝度値と当該良品絵素の近傍に位置する、当該良品絵素と同色の良品絵素に対応する画素の輝度値との違いを示す値である第2対照値を算出し、算出した第1対照値と第2対照値とがどれだけ離れているかを示す分離度を算出する分離度算出手段と、
上記分離度算出手段が算出した分離度に基づいて、上記撮像手段のフォーカス位置を決定するフォーカス位置決定手段とを備えることを特徴とするフォーカス調整装置。
【請求項2】
上記欠陥絵素と上記良品絵素とは、被検査パネルの検査対象領域を分割することによって生じる複数の分割領域から選ばれた少なくとも2つの分割領域のそれぞれに点灯されており、
上記分離度算出手段は、上記撮像画像における上記少なくとも2つの分割領域のそれぞれについて上記分離度を算出し、
上記フォーカス位置決定手段は、上記少なくとも2つの領域のそれぞれについて上記分離度算出手段が算出した分離度の合計を、上記フォーカス位置情報が示すフォーカス位置ごとに算出し、当該分離度の合計が最大となるフォーカス位置を、上記撮像手段のフォーカス位置として採用することを特徴とする請求項1に記載のフォーカス調整装置。
【請求項3】
上記欠陥絵素と上記良品絵素とは、被検査パネルの検査対象領域を分割することによって生じる複数の分割領域から選ばれた少なくとも2つの分割領域のそれぞれに点灯されており、
上記分離度算出手段は、上記撮像画像における上記少なくとも2つの分割領域のそれぞれについて上記分離度を算出し、
上記フォーカス位置決定手段は、上記少なくとも2つの分割領域のそれぞれについて上記分離度算出手段が算出した分離度の差が最も小さくなるフォーカス位置を上記撮像手段のフォーカス位置として採用することを特徴とする請求項1に記載のフォーカス調整装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載のフォーカス調整装置を動作させるフォーカス調整プログラムであって、コンピュータを上記各手段として機能させるためのフォーカス調整プログラム。
【請求項5】
請求項4に記載のフォーカス調整プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
【請求項6】
被検査パネルを撮像した撮像画像を解析することにより、当該被検査パネルの検査を行う検査装置であって、
所定の範囲から外れた互いに同一の輝度を有する少なくとも1つの欠陥絵素と、当該欠陥絵素の近傍に位置する、所定の範囲内の輝度を有する複数の良品絵素とを被検査パネルに点灯させる表示制御手段と、
上記欠陥絵素と上記良品絵素とを点灯した被検査パネルを、当該被検査パネルに対するフォーカス位置を変更しながら複数回撮像する撮像手段と、
請求項1に記載のフォーカス調整装置とを備えることを特徴とする検査装置。
【請求項7】
フォーカス調整装置におけるフォーカス調整方法であって、
所定の範囲から外れた互いに同一の輝度を有する少なくとも1つの欠陥絵素と、当該欠陥絵素の近傍に位置する、所定の範囲内の輝度を有する複数の良品絵素とを点灯した被検査パネルを、撮像手段のフォーカス位置を変更しながら、当該撮像手段によって複数回撮像した撮像画像と、当該複数の撮像画像のそれぞれを撮像した時の上記フォーカス位置を示すフォーカス位置情報とを互いに関連付けて取得する取得工程と、
上記取得工程において取得した撮像画像ごとに、上記欠陥絵素に対応する画素の輝度値と当該欠陥絵素の近傍に位置する、当該欠陥絵素と同色の良品絵素に対応する画素の輝度値との違いを示す値である第1対照値、および上記良品絵素に対応する画素の輝度値と当該良品絵素の近傍に位置する、当該良品絵素と同色の良品絵素に対応する画素の輝度値との違いを示す値である第2対照値を算出し、算出した第1対照値と第2対照値とがどれだけ離れているかを示す分離度を算出する分離度算出工程と、
上記分離度算出工程において算出した分離度に基づいて上記撮像手段のフォーカス位置を決定するフォーカス位置決定工程とを含むことを特徴とするフォーカス調整方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−256990(P2008−256990A)
【公開日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−99911(P2007−99911)
【出願日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】