説明

フットスイッチ

【課題】 接続ケーブルの引出し口を、設置位置の状況に対応させて簡便に変更できるフットスイッチを提供すること。
【解決手段】置かれる床面に対向するフットスイッチの内部の面に設けたストッパ凸体と、前記接続ケーブルを保持するケーブルクランプ部と、このケーブルクランプ部が取り付けられたケーブル固定部を有し、前記ストッパ凸体が嵌り込む複数の固定凹部を周縁に設けたホルダ回転台座が、バネにより前記内部の面に押し付け或いは引っ張られて、回転可能に取り付けられたケーブルホルダと、前記固定凹部の1つに前記ストッパ凸体が嵌り込んだ前記ケーブルホルダの回転位置毎に、フットスイッチの側面に設けた前記接続ケーブルの引出し口とを具備してなり、前記ケーブルホルダを一旦引出して前記ストッパ凸体が嵌り込む固定凹部の位置を変更し、接続ケーブルの引出し口の変更を可能にすることを特徴とするフットスイッチ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医用機器操作に使用される足踏みスイッチに関し、特に患者を載せる寝台に近づいて配置されるフットスイッチに関する。
【背景技術】
【0002】
医用機器の操作において、足で踏んで、正面方向のX線透視ONスイッチ、側面方向のX線透視ONスイッチ、X線撮影(画像収集)ONスイッチの各スイッチ操作をする床置きのフットスイッチがよく使用される。例えば、患者を横たえてX線撮影をする場合、機器の操作者である医師や技師が、患者の体位を間近で整えたり、患者に処置を施したりしながら、フットスイッチを操作してX線撮影を行う。
【0003】
このように使用されるフットスイッチは、機器本体或いは制御部から引き出された接続ケーブルの他端に接続されて、フットスイッチのボックスの固定部(ケーブル出口)は、国際規格にて規定される確実な固定が要求されるため(非特許文献1)、ケーブル出口の方向(位置、向き)は、操作者が向かう操作側以外の3面の何れかに固定している。
【0004】
フットスイッチの使用状況、例えば、図5の医療現場の模式図で示すように、撮影寝台51の患者52の足もと付近にメイン操作卓を担当する技師53aが位置して、この技師53aが使用するフットスイッチ54aが置かれる。一般的には2系統分のスイッチケーブル55a、55bが、撮影寝台の天板を載せる架台(支柱)部56から出力配線されて、備えられる。このフットスイッチ54aにはその1系統が接続されて、図示するようにその設置位置の状況から、フットスイッチ54aでの接続部分は操作側から裏側面となる場所に接続されるのが一般的である。残りの1系統のスイッチケーブル55bには、フットスイッチ54bが接続されて、患者への処置する医師53bがこれを操作する。
【0005】
患者に対応する医師が立つ位置は、患者の状況や患部により、例えば同図にA〜Cで示す位置などになり、フットスイッチ54b、54b’、54b’’はその時々に位置を移し変えて置かれる。したがって、このように立った医師53b、53b’、53b’’或いは操作者の足元も患者の寝る寝台近くに位置し、当然、足で操作されるフットスイッチ54b、54b’、54b’’もさらに寝台近くに位置することになり、寝台の架台56に密着させて置かれることが多くなる。フットスイッチ54b、54b’、54b’’のケーブル引出しは、撮影寝台の足もとにおけるケーブル捌きの点から例えば、Aでは左側面から、Bでは右側面から、Cでは裏側面からと、ケーブル出口の方向が少なくとも3種類が要求されることになる。また、ケーブル捌きを考慮する必要が一切無い方式として無線式も考えられるが、ON信号の誤認識によるX線曝射などの誤動作が考えられるため、有線式によるものが信頼性が高く、かつ安定性も高いとされる。
【非特許文献1】国際規格:IEC60601−1(1988年)、57.4(a)試験
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上に述べたように、足踏みにより操作するスイッチを収めて床置きされるフットスイッチは、操作者の直ぐ脇に置いて使用するので、操作引出し口の位置が、不適切な方向になることが多く、ケーブル捌きの煩雑さが、スイッチの操作性を低下させる問題があった。
【0007】
本発明は上記の問題点に鑑みてなされたもので、接続ケーブルの引出し口を、例えばフットスイッチのボックスの背面、左、右の側面の何れかの1側へなどのように、設置位置の状況に対応させて簡便に変更することができるフットスイッチを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、本発明のフットスイッチは、床置きされ、足踏み式の複数のスイッチを備え、このスイッチの接続線を纏めた接続ケーブルを引出したフットスイッチであって、置かれる床面に対向するフットスイッチの内部の面に設けたストッパ凸体と、前記接続ケーブルを保持するケーブルクランプ部と、このケーブルクランプ部が取り付けられたケーブル固定部を有し、前記ストッパ凸体が嵌り込む複数の固定凹部を周縁に設けたホルダ回転台座が、バネにより前記内部の面に押し付け或いは引っ張られて、回転可能に取り付けられたケーブルホルダと、前記固定凹部の1つに前記ストッパ凸体が嵌り込んだ前記ケーブルホルダの回転位置毎に、フットスイッチの側面に設けた前記接続ケーブルの引出し口とを具備してなり、前記ケーブルホルダを一旦引出して前記ストッパ凸体が嵌り込む固定凹部の位置を変更し、接続ケーブルの引出し口の変更を可能にすることを特徴とするものである。
【0009】
さらに、上記本発明のフットスイッチにおいては、前記複数の固定凹部の1つに前記ストッパ凸体が嵌り込んだ前記ケーブルホルダの回転位置毎に、この回転位置に対応する前記引出し口へ向かう前記接続ケーブルを格納するガイド溝を設けたことを特徴とするものである。
【0010】
さらに、上記本発明のフットスイッチにおいては、前記ガイド溝が、弾性変形することを特徴とするものである。
【0011】
さらに、上記本発明のフットスイッチにおいては、ホルダ回転台座の周縁に設けた前記固定凹部が、回転中心を間に前記ケーブル固定部に対向する1個所を含む3箇所であり、その対応する前記引出し口は筐体の3側面それぞれに1つ設けたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によるフットスイッチは、接続ケーブルの引出し口を、設置位置の状況に対応させて簡便に変更することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態を図1〜4により詳細に説明する。
【0014】
図1は、本発明の実施形態のフットスイッチに設ける回転するケーブルホルダの構成と組立を示す模式図である。図2は、このケーブルホルダに接続ケーブルを固定するケーブルクランプ部の構成と組立を示す模式図である。
【0015】
本実施形態のフットスイッチ1は、図4(a)に示すように、保護バー4を含む筐体5の形状、並びにこれに備える複数のスイッチ3a〜3cの配置などは、従来のフットスイッチと同様の外観を呈する。同図(b)のフットスイッチ1の底側から見た模式図に示すように、本実施形態のフットスイッチ1では、固定ネジ18により筐体5の内部の上面方向に取り付けられた回転するケーブルホルダ10と、筐体5の側面方向に固定した2本のカイド溝41a、41b及び裏面方向に固定したガイド溝41cとを備える。
【0016】
さらに、フットスイッチ1に設けた複数のスイッチ3a〜3cの接続線が纏められたケーブル2は、詳細を後述するケーブルホルダ10によりケーブル引出し位置が設定されて、ガイド溝41a〜41cの1つに収められて、例えば図4(a)に例示すように引出し口45aを設けて右側面から引き出す。
【0017】
ケーブル2の引出し方向を設定するケーブルホルダ10の構成の詳細を、図1〜3を用いて説明する。
【0018】
図1に示すように、ケーブルホルダ10は、ケーブル固定部13、及び例えば回転角90度の間隔で周辺部に配された3個の固定凹部16a〜16cを有するホルダ回転台座11、ホルダカバー12、スペーサ15a〜15d(スペーサ15dは図示せず)、ホルダカバー12を押すバネ17を貫通してケーブルホルダ10を回転可能に、筐体5の内部の上面に取り付ける固定ネジ18により構成される。さらに、フットスイッチ1が備える複数の各スイッチ3a〜3cの接続線を纏めたケーブル2の端部に、図2に構成とその組立を模式的に図示した、国際規格に準拠する確実なケーブルの固定を行うケーブルクランプ部20が設けられて、これをケーブル固定部13にクランプ固定ナット24の締め付けにより取り付ける。
【0019】
ケーブルクランプ部20は、図2に図示しているケーブル固定のキャップナット23、テーパーゴムリング22、クランプ本体21、クランプ固定ナット24の順に、ケーブル2のスイッチ接続端側を貫通させ、スイッチ接続に十分な端末長さを確保する。 次に、この端末を確保してケーブル2を、クランプ本体21にテーパーゴムリング22を圧縮しつつケーブル固定のキャップナット23を締め付けて、テーパーゴムリング22の圧縮変形によりクランプ本体21に固定する。なお、キャップナット23の締め付けには、トルクレンチ等により所定のねじ込みをして、国際規格の固定強度を確保する。
【0020】
さらに、ケーブル2に固定し、このように組立てたクランプ本体21の他のネジ部分を、図3(a)に示すように、ホルダ回転台座11のケーブル固定部13の切り込みに差し入れ、各スイッチへ接続する端部がホルダ回転台座上に位置するようにして、クランプ固定ナット24を締め込む。このクランプ本体21の両端の締め込みにより、ケーブル2はホルダ回転台座11に強固に取り付けられる。
【0021】
ケーブル2が取り付けられたホルダ回転台座11は、組立て構成を模式的に図示した図1に示すように、ケーブル2及び接続線の保護空間を確保するスペーサ15a〜15d(スペーサ15dは陰となり図示せず)を挟み、ホルダカバー12を置いて適宜ネジ止めをしてケーブルホルダ10を組立てる。
【0022】
次に、ホルダカバー12を押すようにバネ17を差し入れて、このケーブルホルダ10を回転可能にその中心を固定ネジ18により、フットスイッチ1の筐体5の上面部分19に取り付ける。
【0023】
また、上面部分19には、図4(b)に示すように裏面方向に固定したガイド溝41cと対向する内側で、前記固定ネジ18の軸芯から前記ホルダ回転台座11の半径より短い距離の位置に、ホルダ回転台座11の厚さより高いストッパ凸体14を固着して設ける。
【0024】
ケーブルホルダ10は、その3個の固定凹部16a〜16cのいずれか1つにストッパ凸体14が嵌り込むように回転した位置で、バネ17の押し応力によって押し付けられ、ストッパ凸体14に回転を規制されて留まる。なお、バネ17のバネ係数は、工具等を使用しないで一般的な成人の腕力で、前記押し応力に抗して引出すことができるように、設計において決定される。
【0025】
ストッパ凸体14が嵌り込んでケーブルホルダ10が留まっている位置で、制御装置のある架台の方へ延ばされるケーブル2は、ケーブル固定部13の正面に対向するカイド溝41a、41b、41cの1つに収めて、筐体5の側面或いは裏面の引き出し口45a〜45cまで誘導し、筐体5の外部へ引出す。なお、カイド溝41a、41b、41cのそれぞれ内側面には、拡大斜視図の図4(c)或いは断面模式図の同図(d)に示すように、押し込んだケーブル2を保持する帯状凸体42a〜42dを敷設してあり、カイド溝41a、41b、41cは弾性変形をする材質により形成すれば好適となる。
【0026】
次に、医療行為を行う医師や検査技師の位置に対応して、フットスイッチ1のケーブル2の引出し位置を変更する場合の本実施形態の作用、動作を説明する。例として、当初、底側から見た図4(b)に示すようにフットスイッチ1の裏面の引き出し口45cからケーブル2を引出していた状態から、同図(a)に示すように右側面(底から見た同図(b)では、図の左側)の引出し口45aから引出すように変更する場合を、説明する。
【0027】
フットスイッチ1の裏面のカイド溝41cからケーブル2を取り出し、当初のケーブルホルダ10の向きは、図3(a)に図示しているように、ケーブル固定部13の反対側にある固定凹部16aにストッパ凸体14が嵌り込んでいる。これを右側面から引出すには、まず、ホルダカバー12をバネ17の押し応力に抗して筐体5の上面部分19から引離して、ケーブルホルダ10全体をストッパ凸体14より手前に引出す。
【0028】
次に、底側から見た同図(b)に矢印31に示すように、ケーブルホルダ10全体を左に90度回転し、ストッパ凸体14が固定凹部16cに嵌り込む位置にして、バネ17の押し応力により、再び筐体5の上面部分19に密着させる。密着したケーブルホルダ10全体は、ストッパ凸体14に回転を規制されて、架台の方へ延ばされるケーブル2は、フットスイッチ1の右側面の方向に配置される。筐体5内に在るケーブル2の部分は、ガイド溝41aに収めて、誘導、保持する。
【0029】
なお、3面方向への引出し(引出し口45a〜45c)を例示したので、ホルダ回転台座11に設ける固定凹部16を回転角90度毎に3個としたが、引出し方向、位置に対応した複数の固定凹部16を設けて行っても良いことは、言うまでもない。
【0030】
また、上述では、ケーブルホルダ10をホルダカバー12の側に、これを押すバネ17を挿入して、固定凹部16aにストッパ凸体14が嵌り込む場合を例示したが、筐体5の上面部分19の方にホルダ回転台座11を引っ張る(引き上げる)バネを、ケーブルホルダ10と上面部分19の間に挿入して、収縮したバネ長及びホルダ回転台座11の厚さより高いストッパ凸体14を設ける場合も同様の作用が得られることも明らかである
本実施形態によれば、フットスイッチの筐体からの接続ケーブルの引出し位置を、工具を用いることなく、このケーブルを堅固にクランプするケーブル固定部を備えるホルダ回転台座を引出して、容易に回転して引出し口を設定変更できるので、ケーブルの床上の最適な捌きに対応できるように設定できる。また、筐体内の各引出し方向に設け、帯状凸体を内面に施したカイド溝により、筐体内の接続ケーブルが安定に保持できる。
【0031】
上述の実施形態では、大型医療機器に使用されるフットスイッチを例に説明したが、設置の位置が変化する移動型の機器の電源ケーブルの引出しや、手持ち機器における右・左の利き手に対応したケーブルの引出し位置変更にも利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の実施形態のケーブルホルダの構成と組立を示す模式図。
【図2】本実施形態のホルダケーブル固定部の構成と組立を示す模式図。
【図3】本実施形態のホルダ回転台座の回転とストッパ凸体を示す図。
【図4】本実施形態のフットスイッチの外観図と、ケーブルホルダとカイド溝の位置関係を示す図。
【図5】医療現場におけるフットスイッチの使用状況を示す模式図。
【符号の説明】
【0033】
1・・・フットスイッチ、
2・・・ケーブル、
3a〜3c・・・スイッチ、
4・・・保護バー、
5・・・筐体、
10・・・ケーブルホルダ、
11・・・ホルダ回転台座、
12・・・ホルダカバー、
13・・・ケーブル固定部、
14・・・ストッパ凸体、
15a〜15c・・・スペーサ、
16a〜16c・・・固定凹部、
17・・・バネ、
18・・・固定ネジ、
19・・・上面部分、
20・・・ケーブルクランプ部、
21・・・クランプ本体、
22・・・テーパーゴムリング、
23・・・キャップナット、
24・・・クランプ固定ナット、
31・・・矢印、
41、41a〜41c・・・カイド溝、
42a〜42d・・・帯状凸体、
45a〜45c・・・引出し口。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
床置きされ、足踏み式の複数のスイッチを備え、このスイッチの接続線を纏めた接続ケーブルを引出したフットスイッチであって、
置かれる床面に対向するフットスイッチの内部の面に設けたストッパ凸体と、
前記接続ケーブルを保持するケーブルクランプ部と、
このケーブルクランプ部が取り付けられたケーブル固定部を有し、前記ストッパ凸体が嵌り込む複数の固定凹部を周縁に設けたホルダ回転台座が、バネにより前記内部の面に押し付け或いは引っ張られて、回転可能に取り付けられたケーブルホルダと、
前記固定凹部の1つに前記ストッパ凸体が嵌り込んだ前記ケーブルホルダの回転位置毎に、フットスイッチの側面に設けた前記接続ケーブルの引出し口と、
を具備してなり、前記ケーブルホルダを一旦引出して前記ストッパ凸体が嵌り込む固定凹部の位置を変更し、接続ケーブルの引出し口の変更を可能にすることを特徴とするフットスイッチ。
【請求項2】
前記複数の固定凹部の1つに前記ストッパ凸体が嵌り込んだ前記ケーブルホルダの回転位置毎に、この回転位置に対応する前記引出し口へ向かう前記接続ケーブルを格納するガイド溝を設けたことを特徴とする請求項1記載のフットスイッチ。
【請求項3】
前記ガイド溝は、弾性変形するものであることを特徴とする請求項2記載のフットスイッチ。
【請求項4】
ホルダ回転台座の周縁に設けた前記固定凹部は、回転中心を間に前記ケーブル固定部に対向する1個所を含む3箇所であり、その対応する前記引出し口は筐体の3側面それぞれに1つ設けたことを特徴とする請求項1または2記載のフットスイッチ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−18817(P2007−18817A)
【公開日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−197744(P2005−197744)
【出願日】平成17年7月6日(2005.7.6)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【出願人】(594164531)東芝医用システムエンジニアリング株式会社 (892)
【Fターム(参考)】