説明

フッ素化エーテルの製造方法、フッ素化エーテル、及びその使用

フッ素化エーテルの製造方法は、極性非プロトン性溶媒中で、
式X−RCHOHにより表されるフッ素化アルコールと、式RCHOS(=O)により表されるフッ素化スルホネートエステルと、塩基と、を組み合わせる工程と;式Y−RCFOCF−Yにより表されるフッ素化エーテルを得る工程と、を含む。Rは、1〜10個の炭素原子を有するペルフルオロ化C〜C10アルキレン基、及び部分フッ素化C〜C10アルキレン基、及び鎖状ヘテロ原子を有する上記アルキレン基の誘導体から選択される。Xは、H、F、又はHOCH−基を表す。Rは、ペルフルオロ化C〜C10アルキル基、及び部分フッ素化C〜C10アルキル基、及び鎖状ヘテロ原子を有する上記アルキル基の誘導体から選択される。Rは、C〜Cアルキル基である。Yは、H、F、又はRCHOCH−基を表す。対称フッ素化エーテルを調製するために有用な変法も開示する。また、本開示は、この方法に従って調製可能なフッ素化エーテルを提供する。種々の用途におけるフッ素化エーテルの使用も開示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、広く、フッ素化エーテル、フッ素化エーテルの製造方法、及びその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
種々のフッ素化エーテルが既知である。当該技術分野において用いられるとき、ハイドロフルオロエーテルという用語は、一般に、フッ素原子により部分的に置換された水素原子を有するエーテルを指す。幾つかのハイドロフルオロエーテルが市販されている。例としては、Saint Paul,Minnesotaの3M Companyから商品名3M NOVEC ENGINEERED FLUID 7000、7100、7200、7300、7500、及び7600として入手可能なハイドロフルオロエーテルが挙げられる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
1つの態様では、本開示は、フッ素化エーテルの製造方法であって、
極性非プロトン性溶媒中で、
以下の式により表されるフッ素化アルコール
X−R−CHOH
(式中、
は、1〜10個の炭素原子を有するペルフルオロ化アルキレン基、1〜10個の炭素原子を有する部分フッ素化アルキレン基、及び1個以上の炭素原子が鎖状ヘテロ原子により置換された上記アルキレン基の誘導体からなる群から選択され、Rが少なくとも2個の炭素原子を含む場合、Rは、最大2個の水素原子を含み;
Xは、H、F、又はHOCH−基を表す);
以下の式により表されるフッ素化スルホネートエステル、
CHOS(=O)
(式中、
は、1〜10個の炭素原子を有するペルフルオロ化アルキル基、1〜10個の炭素原子を有する部分フッ素化アルキル基、及び1個以上の炭素原子が鎖状ヘテロ原子により置換された上記アルキル基の誘導体からなる群から選択され、Rが少なくとも2個の炭素原子を含む場合、Rは、最大3個の水素原子を含み;Rは、1〜4個の炭素原子を有するペルフルオロ化アルキル基からなる群から選択される);及び
塩基;を組み合わせる工程と、
以下の式により表される少なくとも1つのフッ素化エーテルを得る工程と、
Y−R−CHOCH
(式中、Yは、H、F、又はRCHOCH−基を表す)を含む、方法を提供する。
【0004】
別の態様では、本開示は、以下の式:
Y−R−CHOCH
(式中、
は、1〜10個の炭素原子を有するペルフルオロ化アルキレン基、1〜10個の炭素原子を有する部分フッ素化アルキレン基、及び1個以上の炭素原子が鎖状ヘテロ原子により置換された上記アルキレン基の誘導体からなる群から選択され、Rが少なくとも2個の炭素原子を含む場合、Rは、最大2個の水素原子を含み;
Yは、H、F、又はRCHOCH−基を表し、式中、
は、1〜10個の炭素原子を有するペルフルオロ化アルキル基、1〜10個の炭素原子を有する部分フッ素化アルキル基、及び1個以上の炭素原子が鎖状ヘテロ原子により置換された上記アルキル基の誘導体からなる群から選択され、Rが少なくとも2個の炭素原子を含む場合、Rは、最大3個の水素原子を含み;
YがFであり、かつR及びRが両方ペルフルオロ化基である場合、R又はRのうち少なくとも1個が少なくとも3個の炭素原子を有し、
Y−R−がHCF−基を含む場合、Rは、−CFH基を含まない)により表されるフッ素化エーテルを提供する。
【0005】
更に別の態様では、本開示は、フッ素化エーテルを製造する方法であって、
極性非プロトン性溶媒中で、
以下の式により表されるフッ素化アルコール
Z−R−CHOH
(式中、
Zは、H又はFを表し;
は、1〜10個の炭素原子を有するペルフルオロ化アルキレン基、1〜10個の炭素原子を有する部分フッ素化アルキレン基、及び1個以上の炭素原子が鎖状ヘテロ原子により置換された上記アルキレン基の誘導体からなる群から選択され、Rが少なくとも2個の炭素原子を含む場合、Rは、最大2個の水素原子を含む);
以下の式により表されるフッ化スルホニル、
S(=O)
(式中、Rは、1〜4個の炭素原子を有するペルフルオロ化アルキル基からなる群から選択される);及び
塩基;を組み合わせる工程と、
以下の式により表されるフッ素化エーテルを得る工程と、
Z−R−CHOCH−R−Z
を含む、方法を提供する。
【0006】
幾つかの実施形態では、R又はRのうち少なくとも1個は、1個の水素原子と、この水素に結合する1個のフッ素原子とを有する第2級炭素原子を含む。幾つかの実施形態では、R又はRのうち少なくとも1個は、3〜8個の炭素原子を有する。幾つかの実施形態では、R又はRのうち少なくとも1個は、3〜5個の炭素原子を有する。
【0007】
本開示に係る化合物は、例えば、洗浄溶媒において、消火組成物において、発泡プラスチックの製造で用いられる発泡剤において、コーティング溶媒として、重合媒体として、基材を乾燥させるために、及び切削又は研磨プロセス用作動流体において有用である。
【0008】
したがって、更に別の態様では、本開示は、フッ素化エーテルを使用する方法であって、以下の式:
Y−R−CHOCH
(式中、
は、1〜10個の炭素原子を有するペルフルオロ化アルキレン基、1〜10個の炭素原子を有する部分フッ素化アルキレン基、及び1個以上の炭素原子が鎖状ヘテロ原子により置換された上記アルキレン基の誘導体からなる群から選択され、Rが少なくとも2個の炭素原子を含む場合、Rは、最大2個の水素原子を含み;
Yは、H、F、又はRCHOCH−基を表し、式中、
は、1〜10個の炭素原子を有するペルフルオロ化アルキル基、1〜10個の炭素原子を有する部分フッ素化アルキル基、及び1個以上の炭素原子が鎖状ヘテロ原子により置換された上記アルキル基の誘導体からなる群から選択され、Rが少なくとも2個の炭素原子を含む場合、Rは、最大3個の水素原子を含む)により表されるフッ素化エーテルを含む組成物で工作物を洗浄する工程を含む方法を提供する。
【0009】
本明細書で使用されるとき、
「アルキル基」は、直鎖、分岐鎖、環状、又はこれらの任意の組み合わせであり得る一価非芳香族ヒドロカルビル基を指し;
「鎖状ヘテロ原子」とは、炭素−ヘテロ原子−炭素鎖を形成するように、炭素鎖で炭素原子に結合している窒素原子、又は酸素原子を指し;
「F」は、フッ素原子を表し;
「フッ素化アルキル」は、アルキル基の少なくとも1個のH原子がフッ素により置換されていることを意味し;
「H」は、水素原子を表し;
「ノナフレート」は、ペルフルオロ−n−ブタンスルホネートを指し;
「ペルフルオロ化」は、炭素に結合している全てのH原子がF原子により置換されていることを意味し;
「トリフラート」は、トリフルオロメタンスルホネートを指し;
「極性非プロトン性溶媒」は、実質的に−OH及び−NH−基を含まない溶媒(即ち、偶発的な量を超える−OH及び−NH−基を含まない)を指し;
「X」、「Y」、及び「Z」は、可変化学基を表す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本開示に係るフッ素化エーテルの製造方法は、極性非プロトン性溶媒中で実施される。多くのかかる溶媒が既知であり、化学分野で用いられている。例としては、テトラヒドロフラン(THF)、アセトン、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ヘキサメチルホスホラミド(HMPA)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMA)、ジエチレングリコールジメチルエーテル、及びN,N−ジメチルホルムアミドが挙げられる。極性非プロトン性溶媒は、混合溶媒の十分な極性が保持される限り、少量の非極性非プロトン性化合物を含有してもよい。幾つかの実施形態では、アセトンが特に望ましい。
【0011】
第1の方法は、フッ素化エーテルが形成されるような条件下で、極性非プロトン性溶媒中にて、フッ素化アルコールと、フッ素化スルホネートエステル、及び塩基とを混合することを含む。
【0012】
フッ素化アルコールは、以下の式により表され得る:
X−R−CHOH
(式中、
は、1〜10個の炭素原子を有するペルフルオロ化アルキレン基、1〜10個の炭素原子を有する部分フッ素化アルキレン基、及び1個以上の炭素原子が鎖状ヘテロ原子により置換された上記アルキレン基の誘導体からなる群から選択され、Rが少なくとも2個の炭素原子を含む場合、Rは、最大2個の水素原子を含む)。
【0013】
代表的な二価基Rとしては、例えば、ペルフルオロメチレン、ペルフルオロエチレン(即ち、ペルフルオロエタン−1,2−ジイル)、ペルフルオロプロパン−1,3−ジイル、ペルフルオロプロパン−1,2−ジイル、ペルフルオロ(2−メチルプロパン−1,3−ジイル)、ペルフルオロペンタン−1,5−ジイル、ペルフルオロヘキサン−1,6−ジイル、ペルフルオロシクロヘキサン−1,4−ジイル、及びペルフルオロオクタン−1,8−ジイル等のペルフルオロ化アルキレン基;並びに、例えば、フルオロメチレン、1,1,2,2−テトラフルオロエチレン、1,1,2,3,3−ペンタフルオロプロパン−1,3−ジイル、及び1,1,2,2,3,3,4,4−オクタフルオロブタン−1,4−ジイル等の部分フッ素化アルキル基が挙げられる。ペルフルオロ化及び部分フッ素化アルキル基の代表的な誘導体としては、以下のようなフッ素化アルコキシアルキル基が挙げられる:
−CFCFOCFCF−、−CFCFCFOCFCF−、−CFOCFCF−;−CFCFCFOCF(CF)−;
−CFCFCFOCF(CF)CFOCF(CF)−;−CFOCOCF(CF)−;
−CFCFCFCFOCF(CF)−、−CHOC−、−CFOC−、−CFCFCFOCFHCF−、
−CFCFCFOCF(CF)CFOCFHCF−、−CFOCOCFHCF−、−CFO(CFCFO)CF−(式中、xは1以上の整数である)、−CFCFN(CFCF)CFCF−、
−CF(CF)NC−、−C(C)NC−、及び−CFCFCFN(CF)CF−。
【0014】
Xは、H、F、又はHOCH−基である。幾つかの実施形態では、フッ素化アルコールは、多官能性であってもよく、これから対応するポリエーテルが生じる。多官能性フッ素化アルコールの例としては、HOCHCHOH、HOCHCHOH、HOCHCHOH、HOCH(CFCFO)CHOH(式中、nは正の整数である)、及び
HOCHCFO(CO)(CFO)CFCHOH(式中、j及びkは、1〜50の範囲の整数を表す)が挙げられる。かかる場合、Xは、HOCH−を表す。
【0015】
フッ素化スルホネートエステルは、式RCHOS(=O)(式中、Rは、1〜10個の炭素原子を有するペルフルオロ化アルキル基、1〜10個の炭素原子を有する部分フッ素化アルキル基、及び1個以上の炭素原子が鎖状ヘテロ原子により置換された上記アルキル基の誘導体からなる群から選択される)により表される。Rが少なくとも2個の炭素原子を含む場合、Rは、最大3個の水素原子を含む。Rは、1〜4個の炭素原子を有するペルフルオロ化アルキル基からなる群から選択される。
【0016】
代表的な基Rとしては、ペルフルオロメチル、ペルフルオロエチル、ペルフルオロプロピル、ペルフルオロイソプロピル、ペルフルオロブチル、ペルフルオロイソブチル、ペルフルオロペンチル、ペルフルオロヘキシル、ペルフルオロシクロへキシル、及びペルフルオロオクチル;並びに、例えば、1,1,2,2−テトラフルオロエチル、1,1,2,3,3,3−ヘキサフルオロプロピル、及び1,1,2,2,3,3,4,4−オクタフルオロブチル等の部分フッ素化アルキル基;並びに、HCFCFOCFCF−、CFCFOCFCF−、HCFCFCFOCFCF−、CFCFCFOCF−、CFOCFCF−;COCF(CF)−;COCF(CF)CFOCF(CF)−;CFOCOCF(CF)−;COCF(CF)−、CHOC−、COCFHCF−、COCF(CF)CFOCFHCF−、CFOCOCFHCF−、CFO(CFCFO)CF−(式中、yは1以上の整数である)、CFCFN(CFCF)CFCF−、(CFNC−、(CNC−、及びCFCFCFN(CF)CF−等のペルフルオロ化及び部分フッ素化アルキル基の誘導体が挙げられる。
【0017】
Yは、H、F、又はRCHOCH−基(式中、Rは上記の通りである)を表す。
【0018】
典型的には、フッ素化アルコール及びフッ素化スルホネートエステルは、略同量(1:1当量比)で組み合わせられるが、例えば、0.8〜1.2の範囲のモル比等、他の比で用いてもよい。
【0019】
有用な塩基としては、有機及び無機塩基が挙げられる。代表的な塩基としては、アルカリ金属炭酸塩(所望により、テトラアルキルアンモニウムハロゲン化物と組み合わせて)、三級アミン、水素化ナトリウム、及びこれらの組み合わせが挙げられる。
【0020】
組み合わせられた成分は、成分の反応及び対応するフッ素化エーテルの形成を生じさせる条件下で圧力容器に入れられるが、場合によっては、周囲気圧でガラス容器内で反応を実施してもよい。典型的な条件は、撹拌及び加熱を含むが、場合によっては、一方又はどちらも行わないことが望ましい場合もある。十分な時間が経過した後、典型的には、混合物を周囲温度に戻し(加熱した場合)、次いで、例えば例に記載のように、ワークアップ及び精製を行うことによりフッ素化エーテルが得られる。
【0021】
本開示に係る対称フッ素化エーテルの調製に有用な第2の方法では、上記のようなフッ素化アルコール(即ち、部分フッ素化アルコール)を、極性非プロトン性溶媒中で、1〜4個の炭素原子を有するペルフルオロアルカンスルホニルフッ化物と組み合わせる。典型的には、穏やかに加熱して、タイムリーに反応を促進する。
【0022】
また、本開示に係るフッ素化エーテルの調製方法は、例えば、以下の式により表されるフッ素化エーテルの調製に有用である:
Z−R−CHOCH−R−Z
(式中、Rは、既に定義した通りであり、Zは、H又はFを表す(即ち、両方のZ基がHである、又は両方のZ基がFを表す)。
【0023】
本開示に係るフッ素化エーテル及びそれを含む組成物(典型的には、液体)を、クロロフルオロカーボン(CFC)が用いられている種々の用途で用いることができる。例えば、フッ素化エーテルは、ディスク又は回路基板等の電子物品の精密又は金属洗浄用溶媒組成物において;発泡断熱材(例えば、ポリウレタン、フェノール、又は熱可塑性発泡体)の製造における気泡サイズ調整剤として;流動用途における化学消火組成物において;文書保存材料用キャリア流体又は溶媒において;潤滑剤として;重合反応を実施するための不活性組成物において;例えば、宝石又は金属部品等から水を除去するための置換乾燥組成物において;塩素型現像剤を含む従来の回路製造技術におけるレジスト現像液組成物において;及び、例えば、シス若しくはトランスジクロロエテン又はトリクロロエチレン等の塩化炭化水素と共に用いるとき、フォトレジスト用ストリッパー組成物において用いることができる。かかる用途では、これらのフッ素化エーテルのジアステレオマーの混合物は、典型的には、更にエナンチオマー形に分割することなく用いることができるが、幾つかの実施形態では単一のエナンチオマーを用いてもよい。
【0024】
フッ素化エーテルは、単独又は互いに若しくは通常用いられる溶媒(例えば、アルコール、エーテル、アルカン、アルケン、ペルフルオロカーボン、ペルフルオロ化三級アミン、ペルフルオロ化エーテル、シクロアルカン、エステル、ケトン、芳香族化合物、シロキサン、塩化炭化水素、ヒドロフルオロカーボン及びこれらの混合物)と混合して用いられ得る。このような共溶媒は、典型的には、特定の用途のために、組成物の特性を改質し又は高めるように選択することができ、得られた組成物が本質的に引火点を持たないような(共溶媒対フッ素化エーテルの)比にて、利用することができる。必要に応じて、フッ素化エーテルは、特定の用途に対して非常に特性の類似している他の化合物(例えば、他のフッ素化エーテル)と組み合わせて用いてもよい。
【0025】
特定用途のために特別に所望される特性を付与するために、フッ素化エーテルに微量の任意成分を添加することができる。有用な組成物は、例えば、界面活性剤、染色剤、安定剤、酸化防止剤、難燃剤及びこれらの混合物等の従来の添加剤を含むことができる。
【0026】
本開示に係るフッ素化エーテルは、単独であろうとそれを含有する組成物であろうと、典型的には、例えば、米国特許第5,125,089号(Flynnら)、同第3,903,012号(Brandreth)、同第4,169,807号(Zuber)、及び同第5,925,611号(Flynnら)に記載されているもの等、洗浄及び乾燥用途のための溶媒として用いることができる。少なくとも1つの本開示に係るフッ素化エーテルを含む組成物と接触させることにより、有機及び無機基材の両方を洗浄することができる。炭化水素汚染物、フルオロカーボン汚染物、微粒子、及び水を含む殆どの汚染物を除去できる。
【0027】
物品(例えば、回路基板等)の表面を乾燥させるか又はこの表面から水を置換するための本開示に係るフッ素化エーテルの使用においては、一般に、米国特許第5,125,978号(Flynnら)に記載されている乾燥又は水置換プロセスを用いることができる。プロセスは、典型的には非イオン性のフルオロ脂肪族界面活性剤と混合されている、少なくとも1つの本開示に係るフッ素化エーテルを含む液体組成物を、物品の表面と接触させることを含む。湿った物品を液体組成物に浸漬し及びその中で撹拌し、置換された水を液体組成物から分離して、得られる、水が取り除かれた物品を液体組成物から取り出す。
【0028】
本開示に係るフッ素化エーテルをプラスチック発泡体(発泡ポリウレタン等)の製造における気泡サイズ調整剤として用いる場合、例えば、米国特許第5,210,106号(Damsら)及び同第5,539,008号(Damsら)に記載のプロセス反応物質及び反応条件を用いることができる。かかるプロセスの1つは、少なくとも1つの発泡性ポリマー又は少なくとも1つの発泡性ポリマー前駆体の存在下で、少なくとも1つの本開示に係るフッ素化エーテルを含む発泡剤混合物を蒸発させることを含む。
【0029】
本開示に係るフッ素化エーテルをコーティング用途又は文書保存用途において沈着溶媒として用いる場合、一般に、米国特許第5,925,611号(Flynnら)及び同第6,080,448号(Leinerら)に記載のプロセスを用いることができる。基材(例えば、磁気記録媒体又はセルロース系材料)上にコーティングを沈着させるための、かかるプロセスは、基材の少なくとも1つの表面の少なくとも一部に、(a)少なくとも1つの本開示に係るフッ素化エーテルを含む溶媒組成物;及び(b)溶媒組成物に可溶性又は分散性である少なくとも1つのコーティング材料を含む組成物を塗布することを含む。このプロセスによって沈着し得る代表的なコーティング材料としては、顔料、潤滑剤、安定剤、接着剤、酸化防止剤、染料、ポリマー、医薬品、離型剤、無機酸化物、文書保存材料(例えば、紙の脱酸に使用されるアルカリ性材料)及びこれらの組み合わせが挙げられる。
【0030】
本開示に係るフッ素化エーテルを消火剤及び防火剤として用いる場合、一般に、米国特許第5,718,293号(Flynnら)に記載のプロセスを用いることができる。消火のためのかかるプロセスは、少なくとも1つの本開示に係るフッ素化エーテルを含む組成物を火に適用又は導入することを含む。本開示に係るフッ素化エーテルは、単独で、又は他の消火剤若しくは防火剤と組み合わせて用いてもよい。
【0031】
本開示に係るフッ素化エーテルを切削又は研磨工作作業で用いる場合、一般に米国特許第6,759,374号(Milbrathら)に記載のプロセスを用いることができる。かかる金属、サーメット、又は複合材料の工作プロセスは、金属、サーメット、又は複合材料の工作物及び用具に、少なくとも1つの本開示に係るフッ素化エーテル及び少なくとも1つの潤滑性添加物を含む作動流体を塗布することを含む。作動流体は、1種以上の添加剤(例えば、腐食防止剤、酸化防止剤、消泡剤、染料、殺菌剤、凝固点降下剤、金属不活性化剤、共溶媒等、及びこれらの混合物)を更に含むことができる。
【0032】
本開示に係るフッ素化エーテルを重合媒体又は連鎖移動剤として用いる場合、一般に、Research Disclosure(January 1998,Number 405),40576,ページ81、並びに、米国特許第5,182,342号(Feiringら)、及び同第6,399,729号(Farnhamら)に記載のプロセスを用いることができる。かかるプロセスは少なくとも1つの単量体(好適には、少なくとも1つのフッ素含有単量体)を、少なくとも1つの重合開始剤及び少なくとも1つの本開示に係るフッ素化エーテルの存在下で重合させることを含む。
【0033】
以降の非限定的な実施例によって本開示の目的及び利点を更に例示するが、これら実施例で引用される特定の材料及びそれらの量、並びに他の条件及び詳細は、本開示を不当に制限するものと解釈されるべきではない。
【実施例】
【0034】
別途注記のない限り、実施例及び本明細書の残りの部分におけるすべての部、割合、比率等は、重量による。以下の実施例では、略称「GC」は、炎イオン化検出器(応答係数に対して補正されていない)を用いるガスクロマトグラフィーを指し;「IR」は、赤外分光法を指し;「GC/MS」は、ガスクロマトグラフィー−質量分析法を指し;「NMR」(例えば、H、19F、13C)は、核磁気共鳴分光法を指し;「mL」は、ミリリットルを指し、「mol」は、モルを指し;及び「g」は、グラムを指す。
【0035】
2,2,3,4,4,4−ヘキサフルオロブチル1,1,2,2,3,3,4,4,4−ノナフルオロブタン−1−スルホネートの調製
2,2,3,4,4,4−ヘキサフルオロブタン−1−オール(202g、1.1mol、Sinochem Corp.,Beijing,Chinaから入手)、1,1,2,2,3,3,4,4,4−ノナフルオロブタン−1−スルホニルフッ化物(332g、1.1mol、Saint Paul,Minnesotaの3M Companyから入手)、及び水(300g)を、3Lの3つ口丸底フラスコ内で組み合わせた。フラスコには電磁攪拌機、冷水凝縮器、熱電対及び250mLの添加漏斗が備えられていた。水酸化カリウム水溶液(149.3g、45重量%、1.22当量)を、温度が35℃を超えないような速度で、添加漏斗を介して滴加した。塩基の添加が完了し次第、混合物を室温で16時間攪拌した。次いで、沈殿した塩を混合物から濾過し、下相の液体フルオロケミカル生成物相を上相の水相から分離した。未反応の2,2,3,4,4,4−ヘキサフルオロブタン−1−オール、及び1,1,2,2,3,3,4,4,4−ノナフルオロブタン−1−スルホニルフッ化物を、常圧蒸留で除去した。
【0036】
2,2,3,3−テトラフルオロプロピル1,1,2,2,3,3,4,4,4−ノナフルオロブタン−1−スルホネートの調製
2,2,3,3−テトラフルオロプロパン−1−オール(202g、1.52mol、Sinochem Corp.から入手)、1,1,2,2,3,3,4,4,4−ノナフルオロブタン−1−スルホニルフッ化物(465g、1.52mol、3M Companyから入手)、及び水(500g)を、3Lの3つ口丸底フラスコ内で組み合わせた。フラスコには電磁攪拌機、冷水凝縮器、熱電対及び添加漏斗が備えられていた。水酸化カリウム水溶液(45重量%、211.5g、1.7mol、Aldrich Chemical Co.,Milwaukee,Wisconsinから入手)を、温度が35℃を超えないような速度で、添加漏斗を介して滴加した。水酸化カリウムの添加が完了し次第、混合物を室温で16時間攪拌した。次いで、沈殿した塩を混合物から濾過し、下相の液体フルオロケミカル生成物相を上相の水相から分離した。未反応の2,2,3,3−テトラフルオロプロパン−1−オール、及び1,1,2,2,3,3,4,4,4−ノナフルオロブタン−1−スルホニルフッ化物を、常圧蒸留により液状フルオロケミカル生成物相から分離した。
【0037】
2,2,3,3,4,4,4−ヘプタフルオロブチル1,1,2,2,3,3,4,4,4−ノナフルオロブタン−1−スルホネートの調製
2,2,3,3,4,4,4−ヘプタフルオロブタン−1−オール(200g、1.0mol、3M Companyから入手)、及び1,1,2,2,3,3,4,4,4−ノナフルオロブタン−1−スルホニルフッ化物(300g、1.0mol、3M Companyから入手)を、1Lの3つ口丸底フラスコ内で組み合わせた。フラスコにはオーバーヘッド機械的攪拌機、冷水凝縮器、熱電対及び添加漏斗が備えられていた。水酸化カリウム水溶液(水中で45重量%、154g、1.05mol)を、温度が35℃を超えないような速度で、添加漏斗を介して滴加した。水酸化カリウムの添加が完了し次第、混合物を室温で16時間攪拌した。次いで、沈殿した塩を混合物から濾過し、下相の液体フルオロケミカル生成物相を上相の水相から分離し、水で1回洗浄して、350gの粗生成物を得た。生成物を大気圧で蒸留し、140〜150℃から沸騰する留分を更に精製することなく用いた(GCによる純度96.3%)。
【0038】
2,2,3,3−テトラフルオロプロピルトリフルオロメタンスルホネートの調製
2,2,3,3−テトラフルオロプロパン−1−オール(244.3g、1.85mol、Sinochem Corp.から入手)、トリエチルアミン(187.2g、1.85mol、Aldrich Chemical Co.から入手)、及び500mLのクロロホルムを、2LのParr圧力反応器内で組み合わせ、密閉した。反応器の温度は、−10℃に設定した。トリフルオロメタンスルホニルフッ化物(281.33g、1.85mol、3M Companyから入手)を、温度が−5℃を超えないような速度で添加した。添加が完了し次第、混合物を−10℃で45分間保持した。次いで、反応混合物を空にし、500mLの水で2回、250mLの1N HClで1回洗浄した。反応混合物のGC分析は、97%が生成物に変換されたことを示した。回転蒸発により、クロロホルム溶媒を除去した。生成物を無水硫酸マグネシウム上で乾燥させ、次いで無水硫酸マグネシウムを生成物から濾過した。
【0039】
(実施例1)
4−(2’,2’,3’,4’,4’,4’−ヘキサフルオロブトキシ)−1,1,1,2,3,3−ヘキサフルオロブタンの調製、CFCFHCFCHOCHCFCFHCF
2,2,3,4,4,4−ヘキサフルオロブタン−1−オール(61.3g、0.337mol、Sinochem Corp.から入手)、2,2,3,4,4,4−ヘキサフルオロブチル1,1,2,2,3,3,4,4,4−ノナフルオロブタン−1−スルホネート(156.4g、0.337mol)、炭酸カリウム(46.5g、0.337mol)、トリ−n−ブチルアミン(0.75g、0.004mol)、及び150mLのアセトンを、600mLのParr圧力反応器内で組み合わせた。18時間激しく撹拌しながら混合物を75℃に加熱した。次いで、混合物を空にし、固体を生成物から濾過した。液体生成物を100mLの水で2回洗浄した。GC分析(応答係数に対して補正されていない)に基づくアルキル化率は、60%であった。透明な相が得られ、次いでそれを同心円管塔を用いて分留し、4−(2,2,3,4,4,4−ヘキサフルオロブトキシ)−1,1,1,2,3,3−ヘキサフルオロブタン(沸点=150℃)が得られた。この蒸留された画分の純度は、GC分析(応答係数に対して補正されていない)に基づいて98%であった。GC/MS分析は、指定の構造と一致していた。
【0040】
(実施例2)
5−(2’,2’,3’,4’,4’,4’−ヘキサフルオロブトキシ)−1,1,2,2,3,3,4,4−オクタフルオロペンタンの調製、H(CFCFCHOCHCFCFHCF
2,2,3,3,4,4,5,5−オクタフルオロペンタン−1−オール(78.2g、0.337mol、Sinochem Corp.から入手)、2,2,3,4,4,4−ヘキサフルオロブチル1,1,2,2,3,3,4,4,4−ノナフルオロブタン−1−スルホネート(156.4g、0.337mol)、炭酸カリウム(46.5g、0.337mol)、トリ−n−ブチルアミン(0.75g、0.004mol)、及び150mLのアセトンを、600mLのParr圧力反応器内で組み合わせた。18時間撹拌しながら混合物を75℃に加熱した。塩を生成物から濾過した。生成物を100mLの水で2回洗浄して、余分な塩を除去した。得られたフルオロケミカル生成物相を分離し、無水硫酸マグネシウム上で乾燥させた。次いで、同心円管塔を用いて分留することにより、5−(2,2,3,4,4,4−ヘキサフルオロブトキシ)−1,1,2,2,3,3,4,4−オクタフルオロペンタンを得た。主な画分は、176〜178℃で沸騰し、GC/MS分析は指定の構造と一致していた。
【0041】
(実施例3)
5−(2’,2’,3’,3’−テトラフルオロプロポキシ)−1,1,2,2,3,3,4,4−オクタフルオロペンタンの調製、H(CFCFCHOCHCFCF
2,2,3,3,4,4,5,5−オクタフルオロペンタン−1−オール(424g、1.83mol、Sinochem Corp.から入手)、2,2,3,3−テトラフルオロプロピル1,1,2,2,3,3,4,4,4−ノナフルオロブタン−1−スルホネート(760g、1.83mol)、炭酸カリウム(252g、1.83mol)、テトラ−n−ブチルアンモニウム臭化物(20g、0.06mol)、及び400gのアセトンを、2LのParr圧力反応器内で組み合わせた。温度を75℃に設定し、混合物を72時間撹拌した。次いで、混合物を空にし、塩を生成物溶液から濾過した。生成物溶液を200mLの水で2回洗浄して、更に塩を除去した。次いで、下相のフルオロケミカル相を無水硫酸マグネシウム上で乾燥させ、濾過し、次いで20プレートOldershaw蒸留塔を用いて分画することにより精製した。主な画分(GCにより測定したときの純度約98%、応答係数に対して補正されていない)は、大気圧で170℃の温度で沸騰した。構造は、GC/MS、19F NMR、及びH NMRによる分析と一致していた。
【0042】
(実施例4)
1,1,2,2,3,3,4,4−オクタフルオロ−5−(2’,2’,3’,3’,4’,4’,5’,5’−オクタフルオロペンチルオキシ)ペンタン、HCFCFCFCFCHOCHCFCFCFCFHの調製
2,2,3,3,4,4,5,5−オクタフルオロペンタン−1−オール(22.1g、0.097mol)を、2時間にわたって、水素化ナトリウム(2.5g、純度95%、0.097mol)の無水ジエチレングリコールジメチルエーテル(200g)懸濁液に、50℃で滴加した。この時間の終わりに、溶液は均質であった。次いで、この溶液に、0℃におけるHCFCFCFCFCHOHと、CFCFCFCFSOFと、トリエチルアミンとの反応により調製されるHCFCFCFCFCHOS(=O)CHCFCFCFCF(50g、0.097mol)を添加した。次いで、反応混合物を95℃で16時間加熱し、105℃で更に6時間加熱した。反応が完了した後、水(100ミリリットル)を添加し、Dean−Starkトラップを用いて混合物を蒸留して、水及び有機溶媒を蒸留容器に戻し、同時にトラップ内に下相のフルオロケミカル相を分離させた。同心円管蒸留塔を通して得られた30.1gの蒸留により予備精製を実施した。留出物(204〜207℃)は、75/21混合物中の2つの主成分から成ることが見出され(応答係数に対して補正されていないガスクロマトグラフィー(GC)により測定したとき)、これらは、HCFCFCFCFCHOS(=O)CFCFCFCF3、及びHCFCFCFCFCHOCHCFCFCFCFHであった。
【0043】
エーテルの精製は、50℃にて、塩化リチウム(25g)のジメチルホルムアミド(200mL)溶液でノナフレート混入混合物を処理することにより影響を受けた。これら特定の条件下では、ノナフレートは、塩化リチウムと速やかに反応して、HCFCFCFCFCHCl及びリチウムノナフレートが得られることが見出された。反応混合物を水に注ぎ、下相のフルオロケミカル相を分離し、水で更に2回洗浄し、得られた混合物を蒸留(沸点:205℃、70℃/2mmHg)して、応答係数に対して補正されていないGCにより測定したとき、91.5%の純度が得られた。指定の構造は、GC/MS分析、赤外分光法、19F NMR、H NMR、及び13C NMRと一致していた。
【0044】
(実施例5)
1−(3’−(2”,2”,3”,3”−テトラフルオロプロポキシ)−1’,2’,2’−トリフルオロプロポキシ)−1,1,2,2,3,3,3−ヘプタフルオロプロパンCFCFCFOCFHCFCHOCHCFCFHの調製
2,2,3−トリフルオロ−3−(ペルフルオロプロポキシ)プロパノール(71.6g、0.24mol、米国特許出願公開第2007/0051916 A1号(Flynnら)、実施例1に記載の通り調製)、2,2,3,3−テトラフルオロプロピル1,1,2,2,3,3,4,4,4−ノナフルオロブタン−1−スルホネート(119.23g、0.288mol)、炭酸カリウム(39.7g、0.288mol)、トリ−n−ブチルアミン(0.75g、0.004mol)、及び150mLのアセトンを、600mLのParr圧力反応器内で組み合わせた。反応器の温度を75℃に設定し、混合物を24時間撹拌した。次いで、混合物を空にし、塩を生成物溶液から濾過した。生成物溶液を100mLの水で2回洗浄して、更に塩を除去した。次いで、下相を無水硫酸マグネシウム上で乾燥させ、濾過し、次いで同心円管塔を用いて分留により精製した。主な画分(GCにより測定したときの純度94%、応答係数に対して補正されていない)は、大気圧で161〜162℃の温度で沸騰した。指定の構造は、GC/MS分析と一致していた。
【0045】
(実施例6)
4−(2’,2’,3’,4’,4’,4’−ヘキサフルオロブトキシ)−1,1,1,2,3,3−ヘキサフルオロブタン、CFCFHCFCHOCHCFCFHCFの調製
2,2,3,4,4,4−ヘキサフルオロブタン−1−オール(50g、0.27mol)、2,2,3,3,4,4,5,5,5−ノナフルオロブタンスルホニルフッ化物(41.5g、0.14mol、Sinochem International Corp.から入手)、炭酸カリウム(38.2g、0.27mol)、テトラブチルアンモニウム臭化物(1.2g、0.004mol)、及び153gのアセトン(溶媒)を、600mLのParr圧力反応器内で組み合わせた。16時間激しく撹拌しながら混合物を75℃に加熱した。冷却後、反応器を開け、内容物を水に添加し、下相を分離し、この下相のフルオロケミカル相を約5倍過剰の塩化ナトリウム水溶液(約5%)でもう1回洗浄した。応答係数に対して補正されていないGC分析で、16%のGC収率で実施例1(上記)において調製されたサンプルと比較することにより、CFCFHCFCHOCHCFCFHCFの存在が確認された。
【0046】
(実施例7)
3−(2,2,3,3−テトラフルオロプロポキシ)−1,1,2,2−テトラフルオロプロパン、HCFCFCHOCHCFCFHの調製
2,2,3,3−テトラフルオロプロパン−1−オール(50g、0.38mol)、2,2,3,3−テトラフルオロプロピル1,1,2,2,3,3,4,4,4−ノナフルオロブタン−1−スルホネート(157g、0.38mol)、炭酸カリウム(52.3g、0.38mol、及び197gのアセトン(溶媒)を、600mLのParr圧力反応器内で組み合わせた。脱気後、反応器を密閉し、混合物を18時間激しく撹拌しながら75℃に加熱した。冷却後、反応器を開け、内容物を濾過して、不溶性塩を除去した。アセトンを回転蒸発により除去した。次いで、この残留物に過剰の水を添加し、Dean Starkトラップを用いて生成物を共沸蒸留して、相分離後、52.7gの粗生成物を水洗浄した。回転蒸発中、溶媒を用いて生成物のエーテルの一部を蒸留し、留出物を水に注ぎ、下相のフルオロケミカル相を分離し、水で1回洗浄した(17.8g)。GC分析により、組み合わせられたフルオロケミカル相に基づくこの段階における収率は、52%であった。生成物を大気圧で蒸留し、次いで112〜152℃の留分を、実施例4に記載のように50℃でN,N−ジメチルホルムアミド(150mL)中LiCl(20g)で処理して、残留2,2,3,3−テトラフルオロプロピル1,1,2,2,3,3,4,4,4−ノナフルオロブタン−1−スルホネートを除去した。次いで、同心円管塔を通して生成物を蒸留して、純度98.6%の生成物のエーテル(沸点=134〜135℃)を得た。構造は、GC/MS、IR、19F NMR、H NMR、及び13C NMRと一致していた。
【0047】
(実施例8)
5−(2,2,2−トリフルオロエトキシ)−1,1,2,2,3,3,4,4−オクタフルオロペンタン;H(CFCFCHOCHCFの調製
2,2,3,3,4,4,5,5−オクタフルオロペンタン−1−オール(50g、0.215mol)、2,2,2−トリフルオロエチルトリフルオロメタンスルホネート(50g、0.215mol、Synquest Labs,Inc.,Alachua,Floridaから入手)、炭酸カリウム(29.7g、0.215mol)、及び175gのアセトン(溶媒)を、600mLのParr圧力反応器内で組み合わせた。脱気後、反応器を密閉し、混合物を16時間激しく撹拌しながら75℃に加熱した。冷却後、反応器を開け、内容物を濾過して、不溶性塩を除去した。アセトンを回転蒸発により除去した。次いで、この残留物に過剰の水を添加し、Dean Starkトラップを用いて生成物を共沸蒸留して、相分離後、60.4gの粗生成物を水洗浄した。GC分析によるこの段階における収率は、50%であった。生成物を大気圧で蒸留し、138℃超の留分をポットに入れ、次いで実施例4に記載のように50℃でN,N−ジメチルホルムアミド(250mL)中LiCl(15g)で処理して、残留2,2,2−トリフルオロエチルトリフルオロメタンスルホネートを除去した。次いで、同心円管塔を通して生成物を蒸留して、純度95.9%の生成物のエーテル(沸点=138〜143℃)を得た。構造は、GC/MS及びH NMR分析と一致していた。
【0048】
(実施例9)
4−(2,2,3,3,4,4,4−ヘプタフルオロブトキシ)−1,1,1,2,2,3,3−ヘプタフルオロブタン;CCHOCHの調製
2,2,3,3,4,4,4−ヘプタフルオロブタン−1−オール(50g、0.25mol、3M Companyから入手)、2,2,3,3,4,4,4−ヘプタフルオロブチル1,1,2,2,3,3,4,4,4−ノナフルオロブタン−1−スルホネート(120.5g、0.25mol、上記のように調製)、炭酸カリウム(34.5g、0.25mol)、及び175gのアセトン(溶媒)を、600mLのParr圧力反応器内で組み合わせた。脱気後、反応器を密閉し、混合物を112時間激しく撹拌しながら75℃に加熱した。冷却後、反応器を開け、内容物を濾過して、不溶性塩を除去した。アセトンを回転蒸発により除去した。回転蒸発中、溶媒を用いて生成物のエーテルの一部を蒸留し、留出物を水に注ぎ、下相のフルオロケミカル相を分離し、回転蒸発残留物に添加した。次いで、この残留物に約250mLの水を添加し、Dean Starkトラップを用いて生成物を共沸蒸留して、相分離後、62gの粗生成物を水洗浄した。GC分析によるこの段階における収率は、11%であった。生成物を、実施例4に記載のように50℃でN,N−ジメチルホルムアミド(250mL)中LiCl(15g)で処理して、残留ノナフルオロブタン−1−スルホネートを除去した。次いで、生成物を純度78%に蒸留した。GC/MS及びH NMRは、指定の構造と一致していた。
【0049】
(実施例10)
2,2,3,3−テトラフルオロプロピルトリフルオロメタンスルホネートを用いる3−(2,2,3,3−テトラフルオロプロポキシ)−1,1,2,2−テトラフルオロプロパン、HCFCFCHOCHCFCFHの調製
2,2,3,3−テトラフルオロプロピルトリフルオロメタンスルホネート(44g、0.166mol)、2,2,3,3−テトラフルオロプロパン−1−オール(22g、0.166mol、から入手)、炭酸カリウム(23g、0.166mol)、テトラブチルアンモニウム臭化物(0.53g 0.00166mol)、及びアセトン(200mL)を、600mLのParr反応器内で組み合わせた。反応器を密閉し、75℃で24時間加熱した。次いで、反応器から反応混合物を取り出して空にし、液体から塩を濾過した。GC分析は、実施例7に記載の通り調製された既知の参照サンプルに基づいて、フルオロアルコールの66%が対称エーテル生成物に変換されたことを示した。
【0050】
(実施例11)
CHOCHCHOCHの調製
2,2,3,3−テトラフルオロブタン−1,4−ジオール(HOCHCHOH、20g、0.123mol、3M Companyから入手)、2,2,3,3,4,4,4−ヘプタフルオロブチル−1,1,2,2,3,3,4,4,4−ノナフルオロブタン−1−スルホネート(CCHOSO、119g、0.247mol、上記のように調製)、炭酸カリウム(34.1g、0.247mol)、及び245gのアセトン(溶媒)を、600mLのParr圧力反応器内で組み合わせた。脱気後、反応器を密閉し、混合物を112時間激しく撹拌しながら75℃に加熱した。冷却後、反応器を開け、内容物を濾過して、不溶性塩を除去した。アセトンを回転蒸発により除去した。次いで、この残留物に過剰の水を添加し、Dean Starkトラップを用いて生成物を共沸蒸留して、相分離後、57.2gの粗生成物を水洗浄した。GC/MS分析は、より複雑な混合物中の成分(GCによる収率約8.4%)として、予測される生成物CCHOCHCHOCHの存在と一致していた。
【0051】
(実施例12)
(CFNCCHOCHHの調製
3−[ビス(トリフルオロメチル)アミノ]−2,2,3,3−テトラフルオロ−プロパン−1−オール((CFNCCHOH、25g、0.088mol、3M Company,Saint Paul,MN)、実施例4に記載のように調製されたHCFCFCFCFCHOS(=O)CFCFCFCF(45.4g、0.088mol)、炭酸カリウム(12.2g、0.088mol)、及び175gのアセトン(溶媒)を、600mLのParr圧力反応器内で組み合わせた。脱気後、反応器を密閉し、混合物を64時間激しく撹拌しながら75℃に加熱した。冷却後、反応器を開け、内容物を濾過して、不溶性塩を除去した。アセトンを回転蒸発により除去した。次いで、この残留物に過剰の水を添加し、Dean Starkトラップを用いて生成物を共沸蒸留して、相分離後、30.3gの粗生成物を水洗浄した。GC/MS分析は、より複雑な混合物中の成分(GCによる収率約6%)として、予測される生成物(CFNCCHOCHHの存在と一致していた。混合物を蒸留して、純度約35%のエーテルを得、H−NMRはその構造と一致していた。
【0052】
本明細書に引用した全ての特許及び刊行物は、その全文を参照することにより本明細書に組み込むこととする。当業者は、本開示の様々な修正及び変更を、本開示の範囲及び趣旨から逸脱することなく行うことができ、また、本開示は、上記で説明した例示的な実施形態に過度に限定して理解すべきではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フッ素化エーテルの製造方法であって、
極性非プロトン性溶媒中で、
以下の式により表されるフッ素化アルコール、
X−R−CHOH
(式中、
は、1〜10個の炭素原子を有するペルフルオロ化アルキレン基、1〜10個の炭素原子を有する部分フッ素化アルキレン基、及び1個以上の炭素原子が鎖状ヘテロ原子により置換された上記アルキレン基の誘導体からなる群から選択され、Rが少なくとも2個の炭素原子を含む場合、Rは、最大2個の水素原子を含み;
Xは、H、F、又はHOCH−基を表す);
以下の式により表されるフッ素化スルホネートエステル、
CHOS(=O)
(式中、
は、1〜10個の炭素原子を有するペルフルオロ化アルキル基、1〜10個の炭素原子を有する部分フッ素化アルキル基、及び1個以上の炭素原子が鎖状ヘテロ原子により置換された上記アルキル基の誘導体からなる群から選択され、Rが少なくとも2個の炭素原子を含む場合、Rは、最大3個の水素原子を含み;Rは、1〜4個の炭素原子を有するペルフルオロ化アルキル基からなる群から選択される);及び
塩基;を組み合わせる工程と、
以下の式により表される少なくとも1つのフッ素化エーテルを得る工程と、
Y−R−CHOCH
(式中、Yは、H、F、又はRCHOCH−基を表す)を含む、方法。
【請求項2】
又はRのうち少なくとも1個が、ペルフルオロ化され、かつ1〜10個の炭素原子を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
又はRのうち少なくとも1個が、1個の水素原子と、前記水素に結合する1個のフッ素原子とを有する第2級炭素原子を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
又はRのうち少なくとも1個が、3〜8個の炭素原子を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
以下の式:
Y−R−CHOCH
(式中、
は、1〜10個の炭素原子を有するペルフルオロ化アルキレン基、1〜10個の炭素原子を有する部分フッ素化アルキレン基、及び1個以上の炭素原子が鎖状ヘテロ原子により置換された上記アルキレン基の誘導体からなる群から選択され、Rが少なくとも2個の炭素原子を含む場合、Rは、最大2個の水素原子を含み;
Yは、H、F、又はRCHOCH−基を表し、式中、
は、1〜10個の炭素原子を有するペルフルオロ化アルキル基、1〜10個の炭素原子を有する部分フッ素化アルキル基、及び1個以上の炭素原子が鎖状ヘテロ原子により置換された上記アルキル基の誘導体からなる群から選択され、Rが少なくとも2個の炭素原子を含む場合、Rは、最大3個の水素原子を含み;
YがFであり、かつR及びRが両方ペルフルオロ化基である場合、R又はRのうち少なくとも1個が少なくとも3個の炭素原子を有し、
Y−R−がHCF−基を含む場合、Rは、−CFH基を含まない)により表されるフッ素化エーテル。
【請求項6】
又はRのうち少なくとも1個が、ペルフルオロ化され、かつ1〜10個の炭素原子を有する、請求項5に記載のフッ素化エーテル。
【請求項7】
又はRのうち少なくとも1個が、1個の水素原子と、前記水素に結合する1個のフッ素原子とを有する第2級炭素原子を含む、請求項5に記載のフッ素化エーテル。
【請求項8】
又はRのうち少なくとも1個が、1〜10個の炭素原子を有する部分フッ素化アルキル基である、請求項5に記載のフッ素化エーテル。
【請求項9】
又はRのうち少なくとも1個が、1個の水素原子と、前記水素に結合する1個のフッ素原子とを有する第2級炭素原子を含む、請求項8に記載のフッ素化エーテル。
【請求項10】
又はRのうち少なくとも1個が、3〜8個の炭素原子を有する、請求項5に記載のフッ素化エーテル。
【請求項11】
請求項5に記載のフッ素化エーテルを含む消火組成物で消火する工程を含む、フッ素化エーテルの使用方法。
【請求項12】
発泡プラスチックの製造中に発泡剤として請求項5に記載のフッ素化エーテルを含む組成物を用いる工程を含む、フッ素化エーテルの使用方法。
【請求項13】
工作物の切削又は研磨中に作動流体として請求項5に記載のフッ素化エーテルを含む組成物を用いる工程を含む、フッ素化エーテルの使用方法。
【請求項14】
フッ素化エーテルを使用する方法であって、以下の式:
Y−R−CHOCH
(式中、
は、1〜10個の炭素原子を有するペルフルオロ化アルキレン基、1〜10個の炭素原子を有する部分フッ素化アルキレン基、及び1個以上の炭素原子が鎖状ヘテロ原子により置換された上記アルキレン基の誘導体からなる群から選択され、Rが少なくとも2個の炭素原子を含む場合、Rは、最大2個の水素原子を含み;
Yは、H、F、又はRCHOCH−基を表し、式中、
は、1〜10個の炭素原子を有するペルフルオロ化アルキル基、1〜10個の炭素原子を有する部分フッ素化アルキル基、及び1個以上の炭素原子が鎖状ヘテロ原子により置換された上記アルキル基の誘導体からなる群から選択され、Rが少なくとも2個の炭素原子を含む場合、Rは、最大3個の水素原子を含む)により表されるフッ素化エーテルを含む組成物で工作物を洗浄する工程を含む、方法。
【請求項15】
フッ素化エーテルの製造方法であって、
極性非プロトン性溶媒中で、
以下の式により表されるフッ素化アルコール、
Z−R−CHOH
(式中、
Zは、H又はFを表し;
は、1〜10個の炭素原子を有するペルフルオロ化アルキレン基、1〜10個の炭素原子を有する部分フッ素化アルキレン基、及び1個以上の炭素原子が鎖状ヘテロ原子により置換された上記アルキレン基の誘導体からなる群から選択され、Rが少なくとも2個の炭素原子を含む場合、Rは、最大2個の水素原子を含む);
以下の式により表されるフッ化スルホニル、
S(=O)
(式中、Rは、1〜4個の炭素原子を有するペルフルオロ化アルキル基からなる群から選択される);及び
塩基;を組み合わせる工程と、
以下の式により表されるフッ素化エーテルを得る工程と、
Z−R−CHOCH−R−Z
を含む、方法。

【公表番号】特表2012−507528(P2012−507528A)
【公表日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−534596(P2011−534596)
【出願日】平成21年10月12日(2009.10.12)
【国際出願番号】PCT/US2009/060326
【国際公開番号】WO2010/062486
【国際公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【出願人】(505005049)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (2,080)
【Fターム(参考)】