説明

フッ素化ビニルエーテルを調製する方法

フッ素化ビニルエーテル化合物を調製する方法であって、(i)エーテル性酸素のα位にある炭素原子上に水素原子と、(ii)エーテル性酸素のβ位にある炭素原子上にフッ素原子とを有するフッ素化エーテル基質を、有機リチウム塩基と反応させてフッ素化ビニルエーテル化合物を含む反応生成物を提供することを含む方法。本開示は、全般的にフッ素化ビニルエーテルを調製する方法に関し、より詳細にはフルオロメチル−1,1,3,3,3−ペンタフルオロ−2−プロペニルエーテル(セボフルラン化合物A)、およびフッ素化エーテル麻酔化合物に対応する他のビニルエーテルを調製する方法に関する

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、全般的にフッ素化ビニルエーテルを調製する方法に関し、より詳細にはフルオロメチル−1,1,3,3,3−ペンタフルオロ−2−プロペニルエーテル(セボフルラン化合物A)、およびフッ素化エーテル麻酔化合物に対応する他のビニルエーテルを調製する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ある種のフッ素化エーテルは、吸入により投与することができる有用な揮発性麻酔化合物である。時間が経つと、こうしたフッ素化エーテル麻酔化合物は分解し、対応するビニルエーテル分解生成物/不純物を形成することがある。たとえば、広く用いられている揮発性麻酔化合物セボフルランは、多くの場合、一定量のフルオロメチル−1,1,3,3,3−ペンタフルオロ−2−プロペニルエーテル(「化合物A」)を含んでいる。化合物Aは、ラットでは腎障害を誘発し、ヒトでは一過性の腎障害を起こすことが明らかになっている(非特許文献1)。このため、このビニルエーテルの量は、麻酔薬物製品の品質を確保するために十分に少なくなるようにすることが望ましい。同様に、ビニルエーテル分解生成物の含有量は、以下に限定されるものではないが、セボメチルエーテル、クロロセボメチルエーテル、イソフルラン、デスフルランおよびジフルオロメチル2,2,2−トリフルオロエチルエーテルなど他のフッ素化エーテル含有麻酔化合物における所定の上限未満であるようにすることが望ましい。通常、フッ素化エーテル含有麻酔化合物のサンプル中の不純物の量は、ガスクロマトグラフィー(GC:gas chromatography)、または純粋な標準物質を用いた他の類似の分光学的手法により判定される。化合物Aは、市販されてはいるものの、高価である。加えて、他のフッ素化エーテル含有麻酔薬に対応するビニルエーテル化合物は市販されていない。したがって、フッ素化ビニルエーテル化合物を調製する効率的な合成方法が望まれる。
【0003】
しかしながら、フッ素化エーテルは非常に反応性が高く、したがって、その効率的な合成方法は多くない。非特許文献2には、様々な塩基を用いたセボフルランの脱フッ化水素化による化合物Aの合成について記載されている。トリエチルアミン−ホウ素錯体と共に水素化ナトリウムを塩基として使用すると、反応は起こらなかった。水酸化カリウム、カリウムtert−ブトキシド、sec−ブチルリチウム、tert−ブチルリチウム、フェニルリチウムおよびリチウムジイソプロピルアミドなど他の塩基の場合、−78℃〜80℃で行うと、不完全な反応となり、収率が低かった。−78℃で塩基としてメチルリチウムを用いると完全な反応が達成されたが、Huangは、この反応が適していないことを見出した。所望のビニルエーテル生成物を単離しにくいうえ、この反応は非常に発熱性があり、したがって−78℃という非常に低温でもスケールアップできないためであった。これらの研究の結果、Huangはリチウムビス−(トリメチルシリル)アミドを塩基として使用した(分取GCを用いてこの材料を要求される純度に単離すると、生成物収率は50〜60%であることが観察された)。しかしながら、多量の生成物を単離するために分取GCを使用することは実用的でないため、開示された方法は、セボフルラン化合物Aの大量合成および単離に好適なものではない。
【0004】
リチウムビス−(トリメチルシリル)アミドを使用して前述のビニルエーテルを調製し、分別蒸留を使用して所望のビニルエーテル生成物を単離する場合、化学変換が十分ではなく、所望の純度を達成するには面倒な蒸留プロセスを繰り返す必要があった。この粗生成物は反応媒体中に存在する他の成分とさらに反応を起こして除去しにくい副生成物を生成するため、長くて厄介な精製プロセスが必要であった。たとえば、比較実施例1に記載されているように、リチウムビス−(トリメチルシリル)アミドのTHF中1.0M溶液を塩基として使用する化合物Aの調製は、多く場合、わずか10〜20%の収率で所望の純度99%の材料を得るのに5カ月超を要した。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Goldberg,et al.,Anesth. Analg.,88:437−45(1999)
【非特許文献2】Huang,et al.,J. Fluorine Chem.,45:239−253(1989)
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
一態様では、フッ素化ビニルエーテル化合物を調製する方法は、(i)エーテル性酸素のα位にある炭素原子上に水素原子と、(ii)エーテル性酸素のβ位にある炭素原子上にフッ素原子とを有するフッ素化エーテル基質を、有機リチウム塩基と反応させてフッ素化ビニルエーテル化合物を含む反応生成物を提供することを含む。
【0007】
さらなる態様では、フッ素化ビニルエーテル化合物を調製する方法は、エーテル性酸素のα位にある炭素原子上に水素原子と、エーテル性酸素のβ位にある炭素原子上にフッ素原子とを有するフッ素化エーテル基質を提供し、フッ素化エーテル基質を5℃以下に冷却し、フッ素化エーテル基質に、ジエトキシメタンに溶解させたメチルリチウムを加えて反応混合物を提供し、反応混合物からフッ素化ビニルエーテル化合物を取り出すことを含む。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本開示は、フッ素化ビニルエーテルを調製する方法を対象とする。有利には、本開示の方法は、(少なくとも、たとえば、リチウムビス(トリメチルシリル)アミドを塩基として使用し、および/またはTHFを溶媒として使用する確認済みの合成方法と比べて)比較的高い純度および収率でのフッ素化ビニルエーテルの合成を提供する。さらに、本開示の方法は、揮発性麻酔薬として有用であるフッ素化エーテル化合物の品質/純度の分析および確保に好適な標準物質の生成を容易にする。
【0009】
本開示による方法は、(i)エーテル性酸素のα位にある炭素原子上に水素原子と、(ii)エーテル性酸素のβ位にある炭素原子上にフッ素原子とを有するフッ素化エーテル基質を、有機リチウム塩基と反応させることを含む。有機リチウム塩基は、フッ素化エーテル基質に導入されると、対応するフッ素化ビニルエーテルを形成しやすい反応を促進する。フッ素化エーテルの脱フッ化水素化に有機リチウム塩基を使用すると、(少なくとも、たとえば、リチウムビス(トリメチルシリル)アミドを塩基として使用し、および/またはTHFを溶媒として使用する確認済みの合成方法と比べて)反応が迅速に進行し、生成される副生成物が少なくなるうえ、ワークアップのための量が少なくなるため、特に有利である。さらに、結果得られたフッ素化ビニルエーテルは、(少なくとも、たとえば、リチウムビス(トリメチルシリル)アミドを塩基として使用し、および/またはTHFを溶媒として使用する確認済みの合成方法と比べて)比較的精製しやすい。
【0010】
フッ素化エーテル基質および/または有機リチウム塩基は通常、反応を開始する前に冷却する。好ましくは、有機リチウム塩基をアセタール溶媒に溶解させ、予め冷却したフッ素化エーテル基質に滴下して加える。本開示の方法は任意に、以下にさらに詳述されるように、結果得られたフッ素化ビニルエーテル生成物を低温での減圧により取り出すこと、および/またはフッ素化ビニルエーテル生成物を分別蒸留により単離することをさらに含む。
【0011】
本開示による方法に使用するのに好適なフッ素化エーテル基質は通常、エーテル性酸素原子のアルファ(すなわちα)位にある炭素上に水素原子と、エーテル性酸素原子のベータ(すなわちβ)位にある炭素上にフッ素原子とを含む。代表的なフッ素化エーテルは、たとえば、下記式I(αおよびβ炭素を表示してある)に示すような構造を有する:
【0012】
【化1】

式中、Rはアルキルおよびハロアルキル、たとえば、C1〜2アルキルまたはC1〜2ハロアルキルからなる群から選択され;
はH、F、Cl、アルキル(たとえば、C1〜2アルキル)およびハロアルキル(たとえば、C1〜2ハロアルキル)からなる群から選択され;
およびRは独立にHおよびFからなる群から選択される。エーテル性酸素のα位の炭素上に2個の水素原子を有する基質は、反応性が低いことが明らかになっているため、好ましくは、α炭素は水素を1個しか持たない(したがってRは水素原子ではない)。たとえば、一態様では、Rは、F、Cl、アルキルまたはハロアルキルを含む。
【0013】
本明細書で使用する場合、「アルキル」という用語は、表記の数の炭素原子を含む直鎖および分枝の炭化水素基、典型的にはメチル基、エチル基、ならびに直鎖および分枝のプロピル基およびブチル基と定義される。炭化水素基は、たとえば最大8個の炭素原子を含んでもよい。「アルキル」という用語は、「シクロアルキル」、すなわち、環状C〜C炭化水素基、たとえば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロヘキシルおよびシクロペンチルをさらに含む。
【0014】
本明細書では、「ハロ」という用語は、フッ素、臭素、塩素およびヨウ素を含むものと定義される。したがって、「ハロアルキル」という用語は、フッ素、臭素、塩素およびヨウ素の少なくとも1個(通常フッ素および塩素から選択される)をさらに含むアルキル(上記で定義した)と定義される。
【0015】
別の態様では、本開示による方法に使用するのに好適なフッ素化エーテル基質は、下記式IIに示す構造を有する:
【0016】
【化2】

式中、Rはアルキルおよびハロアルキルからなる群から選択される(たとえば、RはCH、CHCH、CHF、CHCl、CHF、CFClおよびCHFCFからなる群から選択される)。
【0017】
本開示による方法に使用するのに好適な具体的に代表的なフッ素化エーテル基質として、セボフルラン(2,2,2−トリフルオロ−1−[トリフルオロメチル]エチルフルオロメチルエーテル)、セボメチルエーテル(2,2,2−トリフルオロ−1−[トリフルオロメチル]エチルメチルエーテル)、クロロセボメチルエーテル(2,2,2−トリフルオロ−1−[トリフルオロメチル]エチルクロロメチルエーテル)、イソフルラン(1−クロロ−2,2,2−トリフルオロエチルジフルオロメチルエーテル)、デスフルラン(2,2,2−トリフルオロ−1−フルオロエチル−ジフルオロメチルエーテル)、ジフルオロメチル2,2,2−トリフルオロエチルエーテルなどの麻酔化合物、およびクロロジフルオロメチル2,2,2−トリフルオロエチルエーテルおよびビス−(1,2,2,2−テトラフルオロエチル)エーテルなど他のフッ素化エーテル基質があるが、これに限定されるものではない。好適なフッ素化エーテル麻酔化合物基質は、市販品として入手し、および/または、たとえば、その内容を参照によって本明細書に援用する米国特許第5,886,239号および同第6,054,626号に開示されている合成方法に従い調製してもよい。
【0018】
本開示に使用される塩基は通常、炭素原子とリチウム原子との間に結合を有する有機リチウム塩基である。有機リチウム塩基は慎重に使用しなければならないため、化学合成においては敬遠されるのが一般的である。たとえば、有機リチウム塩基は一般に、冷却した反応混合物にゆっくりと加えなければならない。驚いたことに、大過剰量の有機リチウム塩基(フッ素化エーテル基質の量に対して)は、フッ素化ビニルエーテル生成物を破壊し、したがって収率を低下させる可能性があることが確認された。一方、有機リチウム塩基のモル百分率が低すぎる(フッ素化エーテル基質の量に対して)場合、好ましくない副生成物の形成される量が減少する反面、未反応のフッ素化エーテル基質の除去により最終生成物の単離が難しくなることがある。本開示による方法に使用される有機リチウム塩基の量は、フッ素化エーテル基質の量の約15モルパーセント(「mol%」)〜約175mol%(慣習では、フッ素化エーテル基質の量は100mol%である)、たとえば、フッ素化エーテル基質の約25mol%〜約150mol%、約50mol%〜約125mol%、および/または75mol%〜125mol%であってもよい。典型的には、やや過剰量の有機リチウム塩基をフッ素化エーテル基質と反応させる(たとえば、塩基は、フッ素化エーテル基質の量に対して約105mol%〜約125mol%の間の量で存在する)。
【0019】
好適な有機リチウム塩基として、メチルリチウム、イソ−プロピルリチウム、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、t−ブチルリチウムおよびヘキシルリチウムなどのアルキルリチウム化合物、ならびにフェニルリチウム、4−クロロフェニルリチウム、4−フルオロフェニルリチウム、4−トリフルオロメチルフェニルリチウム、4−メトキシフェニルリチウムおよびナプチル(napthyl)リチウムなどのアリールリチウム化合物があるが、これに限定されるものではない。典型的には、反応混合物からこうした塩基の共生成物(たとえば、メチルリチウムはメタンガスを発生する)を除去しやすく、したがってワークアップが簡素化されるため、4個以下の炭素原子を持つアルキルリチウム塩基を使用する。さらにメチルリチウムは一般に、他のアルキルリチウム塩基と比べて塩基度(それ故、本明細書に記載の脱フッ化水素反応の反応性)が比較的高いため、好ましい。
【0020】
本開示による方法に使用される溶媒は通常アセタールである。こうした溶媒は、有利には、本明細書に記載の有機リチウム塩基など強塩基の存在下で安定である。こうした溶媒は、有利には、比較的高濃度の有機リチウム塩基(たとえば、少なくとも約2.0M、少なくとも約3.0Mなど)を溶媒和させることもできる。加えて、前述の溶媒は、化合物Aなど所望のフッ素化ビニルエーテル生成物と比べて沸点が比較的高く、したがって精製中に所望のフッ素化ビニルエーテル生成物と共蒸留しない。しかしながら、選択した溶媒の沸点はあまり高くすることができないため、本発明による反応を行うのに通常使用される比較的低温では、高沸点の溶媒はほとんどが凝固し、それにより反応混合物が固形化する(危険になる)。このため、優れた収率および所望の生成物純度レベルを達成するには、溶媒の選択がかなり重要である。通常、アセタール溶媒の沸点は、約65℃〜約100℃の間、約70℃〜約95℃の間、および/または約75℃〜約90℃の間である。ただしアセタール溶媒は一般に、選択した溶媒と所望のフッ素化エーテル生成物との間の沸点の差が少なくとも約10℃になるように選択するものとする。
【0021】
本開示による方法に使用するのに好適なアセタール溶媒として、ジエトキシメタン、1,1−ジエトキシエタン、1,1−ジメトキシエタン(ジグリム)、1,3−ジオキソランおよび2,2−ジメトキシプロパンがあるが、これに限定されるものではない。ジエトキシメタンなどの比較的低水溶性のアセタール溶媒が一般に好ましい(残留水は有機リチウム塩基と反応する)。こうした溶媒は本開示による方法に使用する前に乾燥させる必要がないためである。メチルリチウムのジエトキシメタン中3.0M溶液は、Sigma−Aldrich Chemicalsから市販されており、本開示による方法に使用するのに特に都合がよい、アセタール溶媒と有機リチウム塩基との組み合わせである。言うまでもなく、以下に限定されるものではないが、約0.1M〜約4.0M、約0.5M〜約3.75M、および/または約1.0M〜約3.5Mなど、他の濃度の有機リチウム塩基を使用してもよい(たとえば、約3.0M)。前述のように、他の有機リチウム溶媒および他のアセタール溶媒も好適なものである。
【0022】
本開示による方法は通常、有機リチウム塩基を加えて反応を開始させる前に、フッ素化エーテル基質を室温未満の温度、たとえば、5℃以下、約−78℃〜約+5℃、約−60℃〜約0℃、および/または約−40℃〜約0℃の温度まで冷却する必要がある。基質の冷却後、反応混合物に、有機リチウム塩基のアセタール溶媒中溶液を滴下して加えてもよい。
【0023】
有機リチウム塩基の添加が終了したら、反応混合物を、その後一定時間、たとえば、最大5時間、最大3時間、および/または最大1時間撹拌してもよい。通常、撹拌は、約−78℃〜約+5℃の間(上記のフッ素化エーテル基質の冷却に好適な温度範囲など)の温度で行う。
【0024】
この反応は、不活性雰囲気下、たとえば、窒素雰囲気下またはアルゴン雰囲気下で行ってもよい。
【0025】
結果得られたフッ素化ビニルエーテル生成物は、減圧により反応混合物から分離し、次いで蒸留、たとえば、分別蒸留によりさらに精製することができる。フッ素化ビニルエーテル生成物は、有利には、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、および/または少なくとも55%という比較的高い収率、さらに純度は少なくとも95%、少なくとも98%、および/または少なくとも99%で単離することができる。
【0026】
以下の実施例は本開示を説明するために提供するものであるが、その範囲を限定することを意図するものではない。
【実施例】
【0027】
比較実施例1
セボフルラン化合物Aの大量調製
リチウムビス(トリメチルシリル)アミド、LiN[Si(CHのTHF中1.0M溶液約1.0Lを、無水THF約100mL中のセボフルラン約181.0グラム(0.9mol)を含む1Lの三つ口フラスコに徐々に加えた。添加は約1.5時間後に終了し、窒素雰囲気下、約−40℃〜約−20℃の間の温度で行った。反応混合物を同じ温度で約15分間撹拌した。反応混合物の温度を約−40℃〜約−20℃の間に保ちながら、反応容器に約5.5時間減圧(2.5mmHg)を適用して、2つのドライアイストラップ(直列に連結)に約771グラムの液体の粗生成物を得た。粗生成物は、約6%の化合物Aを含んでいた。
【0028】
同じ反応をさらに12回繰り返して全体で約7,100グラムの重量の粗生成物を得た。この液体を2つのバッチに分け、突起型ハステロイ金属充填剤が充填され、約0℃まで冷却した冷却器に連結された自動スプリッターを上部に備えた1インチ×8フィート長の真空ジャケット付き銀メッキガラスカラムを用い、別々に蒸留した。約1331グラムの粗化合物Aを捕集した。
【0029】
本実施例では、この1331グラムの粗生成物を、1090グラムの液体の粗生成物(上述と同じ規模の別の4回の反応から捕集)から蒸留した別の74グラムの粗化合物Aと合わせた。合わせた液体(1405グラム)は約60%の化合物Aを含んでおり、上述のものと同様の1インチ×4フィート長の蒸留器具でさらに濃縮して低沸点成分を除去した。約1155グラムの液体が残り、3つのバッチに分けて、3mmのガラス製ヘリックスが充填され、冷却器に連結された自動スプリッターを上部に備えた1/2インチ×12インチ長の真空ジャケット付きガラスカラムを用いて別々に蒸留した。化合物Aの純度が97%を超える、捕集した留分を合わせて、同じ器具を用いて再び蒸留して純度99.2%の化合物Aを約291.4グラム得た。
【0030】
>99%の純粋な化合物Aの収率はわずか11.3%であり、複数回のゆっくりとした蒸留のため所望の純度レベルのセボフルラン化合物Aを得るには5カ月超を要した。
【0031】
実施例1a
フルオロメチル1,1,1,3,3−ペンタフルオロ−2−プロペニルエーテル(CFC(=CF)OCHF、すなわち「セボ化合物A」)の調製
約140.5グラムのセボフルラン(0.703mol)を、熱電対、添加ロート、磁気撹拌子および窒素入口を備えた1Lの三つ口フラスコに入れ、ドライアイス−アセトン浴中で約−31℃まで冷却した。このセボフルランに、約−30℃〜約−20℃の間の反応温度を維持しながら、メチルリチウムのジエトキシメタン中3.0M溶液約275mL(CHLi/CH(OC、0.825molの塩基)を約2.5時間にわたって加えた。メチルリチウムの添加の終了後、添加ロートを数mLのジエトキシメタンで洗浄した。次いで反応混合物の液体を−25℃未満で約30分間撹拌した。反応混合物の温度を約−24℃〜約−20℃の間の温度で維持しながら、反応混合物に減圧(0.3mmHg)を約2.5時間適用し、直列に連結した2つのドライアイストラップ(他に記載がない限り、各実施例を通じて生成物の捕集に使用)に約122.8グラムの粗液体生成物を得た。RTX−200(トリフルオロプロピルメチルポリシロキサン固定相)キャピラリーカラム(他に記載がない限り、各実施例を通じてGC解析に使用)を用いて、得られた液体についてGC解析を行うことにより、粗生成物は化合物A38.0%、およびジエトキシメタン58.5%であると判定された。3mmのガラス製ヘリックスが充填され、約5℃まで冷却した冷却器を有する自動スプリッターヘッドを上部に備えた3/4インチ×12インチ真空ジャケット付きガラスカラムを用い、得られた液体を分別蒸留したところ、沸点が約45℃の以下の各留分が得られた(所望のビニルエーテルの純度を括弧内に報告する):留分1:2.8グラム(99.78%);留分2:55.3グラム(99.96%);および留分3:6.0グラム(99.93%)。
【0032】
これら3つの留分に基づく>99%の純粋なセボフルラン化合物Aの生成物収率は、約50%であり、所望の純度レベルのセボフルラン化合物Aを得るのに要したのはわずか4日(反応に1日、および蒸留に3日)であった。こうした方法を使用すると、比較実施例1で達成されたセボフルラン化合物A(所望の純度レベル)の量を得るのに要するのは、15日未満になるであろうことが予想される。
【0033】
留分2および3の混合物についてNMRを行ったところ、結果得られたスペクトルは文献データと整合しており、したがって、予想されたフッ素化ビニルエーテル生成物の形成が確認された。
H(CDCl):δ5.41(d,J=54.0Hz,CHF)。
19F(プロトンデカップリング):δ−66.39(dd,J=22.6Hz,J=2.8Hz,J=8.5Hz,CF),δ−85.24(m)、δ−92.68(m)、=CFの非等価なFに対する、δ−152.76(md,J=14.1Hz,CHF)。
13C(プロトンデカップリング):δ103.33(td,J=229.4Hz,J=3.0Hz,CHF),δ〜109(m,C),δ120.39(tq,J=272.4Hz,J=6.8Hz,CF),δ157.16(mt,J=298.9Hz,=CF)。
【0034】
実施例1b
フルオロメチル1,1,1,3,3−ペンタフルオロ−2−プロペニルエーテル(CFC(=CF)OCHF)の調製
実施例1aと同様の反応において、約30.0グラムのセボフルラン(0.15mol)を窒素下で250mLの三つ口フラスコに入れ、ドライアイス−アセトン浴中で約−0.1℃まで冷却した。このセボフルランに、約−8℃〜約+9℃の間の反応温度を維持しながら、CHLi/CH(OCの3.0M溶液約50mL(0.15molの塩基)を約2時間38分にわたって加えた。激しい発熱反応が観察された。次いでこの反応混合物を約−2℃〜約+6℃でさらに30分間撹拌した。反応混合物を約−30℃〜約−17℃の間の温度に保ちながら、反応混合物に減圧(3.3mmHg)を約2時間17分適用し、約17.9グラムの粗液体生成物を得た。この粗液体は、セボフルラン化合物A17.9%、CH(OC70.6%、および他の副生成物を含んでいた。
【0035】
本例に従い所望の純度のセボフルラン化合物Aを単離することができたが、本例から、生成物の収率にとって一般に、比較的高い反応温度は好ましくないことが明らかになった。
【0036】
実施例1c
フルオロメチル1,1,1,3,3−ペンタフルオロ−2−プロペニルエーテル(CFC(=CF)OCHF)の調製
約20グラムのセボフルラン(0.10mol)を反応槽に入れ、窒素雰囲気下で約−31.5℃まで冷却した。約−25℃〜約−41℃の間の温度を維持しながら、CHLi/CH(OCの3.0M溶液約10mL(0.03molの塩基)を48分にわたって加えた。白色沈殿物の形成およびガス発生(メタン)などの速い反応が観察された。次いで反応混合物を約−51.5℃まで冷却し、約−51.5℃〜約−40℃の間の温度を維持しながら、残りの40mLのCHLi/CH(OC(0.12molの塩基)を1時間17分にわたって加えた。CHLi/CH(OCの2回目の添加により、反応がかなり遅くなった。次いで反応混合物を約−43℃〜約−29℃の間の温度で30分間撹拌した。反応混合物を約−33℃〜約−14℃の間の温度に保ちながら、反応混合物に減圧(4.2mmHg)を約2時間8分適用し、約2.1グラムの粗液体生成物を得た。この粗生成物は、化合物A約5.6%、ジエトキシメタン81.1%を含み、残りは未知の化合物を含んでいた。反応混合物の残渣にアセトン、次いで水を加えた。反応が観察されないことから、CHLi試薬はすべて消費されていたことが示された。
【0037】
本例に従い所望の純度のセボフルラン化合物Aを単離することができたが、本実施例から、生成物収率にとって一般に、フッ素化エーテル基質の量に対して比較的に大過剰量の有機リチウム塩基は好ましくないことが明らかになった。
【0038】
実施例1d
フルオロメチル1,1,1,3,3−ペンタフルオロ−2−プロペニルエーテル(CFC(=CF)OCHF)の調製
30グラムのセボフルラン(0.15mol)を窒素下で約−36.2℃まで冷却した。約−37.5℃〜約−30.5℃の間の温度を維持しながら、CHLi/CH(OCの3.0M溶液約10mL(0.03molの塩基)を29分にわたって加えた。メチルリチウムの添加の終了後、添加ロートを数mLのジエトキシメタンで洗浄した。次いで反応混合物を約−39℃〜約−35℃の間の温度で約20分間撹拌した。この反応混合物を約−38.5℃〜約10.7℃の間の温度に保ちながら、反応混合物に減圧(0.3mmHg)を約1時間46分適用し、約30.0グラムの粗液体生成物を得た。この液体のGC解析により、この液体が化合物A22.8%、未反応セボフルラン47.1%、およびジエトキシメタン29.7%を含むことが示された。
【0039】
しかしながら、粗反応生成物中にかなりの量の未反応セボフルランが存在するため、高純度レベルで所望の化合物A生成物を単離することは難しいと考えられる。
【0040】
(実施例2)
メチル1,1,1,3,3−ペンタフルオロ−2−プロペニルエーテル(CFC(=CF)OCHすなわち「SMEオレフィン」)の調製
116.4グラムのメチル1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロピルエーテル(SME、0.64mol)を窒素雰囲気下で250mLの三つ口フラスコに入れ、ドライアイス−アセトン浴中で約−35℃まで冷却した。この溶液に、3.0MのCHLiのジエトキシメタン中溶液250mL(0.75molの塩基)を約2時間54分にわたって徐々に加えた。次いで反応混合物を約−35℃〜約−30℃の間の温度で約30分間撹拌した。反応混合物を−35℃〜約−30℃の間の温度に保ちながら、反応混合物に減圧(0.3mmHg)を約3.5時間適用し、約119.2gグラムの粗液体生成物を得た。粗液体生成物のGC解析により、粗生成物は所望のビニルエーテル生成物(すなわち、メチル1,1,1,3,3−ペンタフルオロ−2−プロペニルエーテル)36.1%、未反応出発材料(すなわち、メチル1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロピルエーテルすなわちSME)0.4%、CH(OC57.7%、および他の不純物を含むことが明らかになった。
【0041】
以下の量のSMEと、メチルリチウムのジエトキシメタン中3.0M溶液とを用いて、上述の反応をさらに2回繰り返した:
(i)SME(50.1グラム、0.27mol)およびCHLi/CH(OC(105mL、0.32molの塩基)ならびに
(ii)SME(118.1グラム、0.65mol)およびCHLi/CH(OC(255mL、0.77molの塩基)。
これらの反応から得られた粗生成物は、GC解析により、同等の組成を有することが示された。3回の反応による粗生成物を合わせて(275.0グラム)、GC解析を行ったところ、合わせた粗生成物の組成は、所望のビニルエーテル生成物36.4%、SME0.5%、CH(OC57.2%、および他の不純物であることが明らかになった。合わせた粗生成物を、実施例1に記載されているように蒸留して以下の留分を得た:留分1:33℃、8.7グラム、所望のビニルエーテル生成物99.7%;留分2:33〜34℃、116.4グラム、所望のビニルエーテル生成物99.8%;留分3:33〜38℃、14.9グラム、所望のビニルエーテル生成物99.7%;留分4:38〜54℃、2.8グラム、所望のビニルエーテル生成物61.3%、SME36.5%、および他の不純物;留分5:54〜76℃、5.5グラム、所望のビニルエーテル生成物4.0%、SME14.2%、および他の不純物。単離した所望のビニルエーテル生成物の収率(これらの留分に基づく)は、約55.9%(または>99.7%純度の場合、約55.2%)であった。
【0042】
これらの5つの留分に基づく>99%の純粋なメチル1,1,1,3,3−ペンタフルオロ−2−プロペニルエーテルの生成物収率は約55.2%であり、所望の純度レベルで所望のビニルエーテル生成物を得るのに要したのはわずか8日(反応に3日、および蒸留に5日)であった。
【0043】
留分2についてNMRを行ったところ、結果得られたスペクトルから、所望のビニルエーテル生成物の存在が確認された。
H(CDCl):δ3.75(s,OCH)。
19F(プロトンデカップリング):δ−66.78(d,J=22.6Hz,CF),δ−90.02(dq,J=42.4Hz,J=8.5Hz)、δ−96.84(dq,J=42.4Hz,J=22.6Hz)、=CFの不等価な2つのFに属する。
13C(プロトンデカップリング):δ62.21(t,J=3.0Hz,OCH),δ112.16(m,第四級C),δ120.95(ddq,J=272.4Hz,J=7.2Hz,J=9.8Hz,CF),δ156.52(qt,J=301.9Hz,J=3.8Hz,=CF)。
GC/MS:m/z:162(M),69(CF,ベースピーク)。
【0044】
(実施例3)
クロロメチル1,1,1,3,3−ペンタフルオロ−2−プロペニルエーテル(CFC(=CF)OCHClすなわち「ClSevoオレフィン」)の調製
ジエトキシエタン(10mL)に溶解させた57.5グラムのクロロセボメチルエーテル(ClSevo、0.27mol)を反応容器に入れ、ドライアイス−アセトン浴を用いて窒素下で約−40℃まで予め冷却した。この溶液に、3.0MのCHLiのジエトキシメタン中溶液105mL(0.32molの塩基)を徐々に加えた。最初にガス発生がゆっくりと起きたため、反応槽の温度を約−31℃に上昇させた。約10mLのCHLi/CH(OC溶液を加えた後、反応がより速い速度で起き、メチルリチウム塩基の添加は約2時間36分で終了した。次いで反応混合物を約−40℃〜約−33℃の間の温度で約35分間撹拌した。反応混合物を約−30℃〜約−3℃の間の温度に保ちながら、反応混合物に減圧(5mmHg)を約4時間適用し、約69.2グラムの粗液体生成物を得た。GC解析により、粗生成物は所望のビニルエーテル生成物12.9%、ClSevo0.01%、CH(OC83.0%、および他の不純物を含むことが明らかになった。3mmのガラス製ヘリックスが充填され、約5℃まで冷却した冷却器に連結された自動制御スプリッターを上部に備えた3/4インチ×12インチ真空ジャケット付きガラスカラムを用い、粗生成物の分別蒸留を行い、以下の各留分を得た:留分1:70〜72℃、6.5グラム、所望のビニルエーテル生成物(クロロメチル1,1,1,3,3−ペンタフルオロ−2−プロペニルエーテル)96.8%、CH(OC0.7%;留分2:72〜73℃、8.9グラム、所望のビニルエーテル生成物97.3%、CH(OC1.5%;留分3:73〜75℃、2.2グラム、所望のビニルエーテル生成物88.2%、CH(OC10.1%;留分4:75〜80℃、1.3グラム、所望のビニルエーテル生成物60.3%、CH(OC37.7%。単離した収率は33.8%(純度約97%で29%)であった。
【0045】
これらの4つの留分に基づく>97%の純粋なクロロメチル1,1,1,3,3−ペンタフルオロ−2−プロペニルエーテルの生成物収率は、約29%であり、所望の純度レベルで所望のビニルエーテル生成物を得るのに要したのはわずか8日(反応に3日、および蒸留に5日)であった。
【0046】
留分2についてNMRを行ったところ、スペクトルから、予想されたビニルエーテル化合物の存在が確認された。
H(CDCl):δ5.58(s,OCHCl)。
19F(プロトンデカップリング):δ−64.74(dd,J=22.6Hz,J=8.5Hz,CF),δ−83.25(dq,J=28.2Hz,J=8.5Hz)、δ−91.84(dq,J=28.2Hz,J=22.6Hz)、=CFの不等価な2つのFに属する。
13C(プロトンデカップリング):δ80.16(t,J=3.8Hz,OCHCl),δ107.80(m,第四級C),δ120.43(ddq,J=273.2Hz,J=9.1Hz,J=6.8Hz,CF),δ157.16(qdd,J=299.6Hz,J=299.6,J=3.0Hz,=CF)。
GC/MS:m/z:196(M),198(M+2),69(CF,ベースピーク)。
【0047】
(実施例4)
ジフルオロメチル1−クロロ−2,2−ジフルオロエテニルエーテル(CF=CClOCHFすなわち「クロロオレフィン」)の調製
約133.2グラムのイソフルラン(0.72mol)を、熱電対、添加ロート、磁気撹拌子および窒素入口を備えた1Lの三つ口フラスコに入れた。この溶液をドライアイス−アセトン浴中で約−31℃まで冷却した。約−25℃〜約−20℃の間の反応温度を維持しながら、このフラスコに、メチルリチウムのジエトキシメタン中3.0M溶液約270mL(0.81molの塩基)を約1時間50分にわたって加えた。メチルリチウムの添加の終了後、添加ロートを数mLのジエトキシメタンで洗浄し、長い金属棒を用いてガラス壁上の固体を取り除いた。次いで反応混合物を約−25℃〜約−18℃の間の温度で約1時間撹拌した。反応混合物を約−32℃〜約−15℃の間の温度に保ちながら、反応混合物に減圧(0.9mmHg)を約4時間45分適用し、約109.6グラムの粗液体生成物を得た。1%SP−1000の固定相(メチルシリコンベースの固定相)を有する充填カラムを用いたGC解析により、得られた液体はクロロ−オレフィン33.1%、およびCH(OC66.3%を含むことが明らかになった。
【0048】
133.8グラムのイソフルラン(0.73mol)と、CHLi/CH(OCの3.0M溶液275mL(0.83molの塩基)とを用いて2回目の反応を同様に行った。塩基の添加は約2時間20分にわたって行い、温度は約−19℃〜約−26℃の間に保った。次いで反応混合物を約−19℃〜約−24℃で約1時間撹拌した。反応混合物を約−16℃〜約−22℃の間の温度に保ちながら、反応混合物に減圧(1.2mmHg)を約2時間適用し、約139.5グラムの粗液体生成物を得た。1%SP−1000充填カラムを用いたGC解析により、この液体はクロロ−オレフィン32.7%、およびCH(OC66.8%を含むことが明らかになった。
【0049】
粗生成物(2回の反応による)を合わせて、RTX−200キャピラリーカラムを用いてGC解析を行ったところ、粗生成物は所望のクロロオレフィン生成物22.9%、および保持時間の近い未知の不純物3.7%を含むことが明らかになった。1%SP−1000充填カラムを使用した場合、未知の不純物のピークは、オレフィンのピークと重なっていた。
【0050】
133.7グラムのイソフルラン(0.73mol)と、CHLi/CH(OCの3.0M溶液260mL(0.78molの塩基)とを用いて、3回目の反応を同様に行った。1%SP−1000充填カラムを用いたGC解析により、捕集した液体生成物(169.3g)は未反応イソフルラン1.2%を含むことが明らかになった。この液体生成物を冷蔵庫に一晩保存した。翌日、この粗生成物液体にさらに50.3グラムのイソフルラン(0.27mol)を加え、次いでさらに155mLのメチルリチウム試薬(0.46mol)を加えて、追加のイソフルランと反応させた。最終の粗生成物(135.9 g)を得た。RTX−200キャピラリーカラムを用いたGC解析により、粗生成物はクロロ−オレフィン22.1%、未知の不純物5.5%、およびCH(OC68.9%を含むことが明らかになった。
【0051】
3つのバッチの粗生成物液体を合わせて(合計約391.5グラム)、3mmのガラス製ヘリックスが充填され、約4℃まで冷却した冷却器に連結された自動還流制御ヘッドを上部に備えた3/4インチ×31インチ銀メッキ真空ジャケット付きガラスカラムで、分別蒸留した。以下の各留分を捕集し、GC(RTX−200キャピラリーカラム)により解析した:留分1:38.5℃で7.5グラム、クロロ−オレフィン93.4%、未知の不純物3.3%;留分2:39.5℃で11.7グラム、クロロ−オレフィン94.2%、未知の不純物3.4%;留分3:41℃で30.7グラム、クロロ−オレフィン89.4%、未知の不純物9.8%;留分4:39.5℃で106.6グラム、クロロ−オレフィン86.2%、未知の不純物12.9%;留分5:40〜39℃で18.6グラム、クロロ−オレフィン81.0%、未知の不純物17.6%。
【0052】
留分1〜4を合わせて(152.6g)、3mmのガラス製ヘリックスが充填され、約5℃まで冷却した冷却器を有する自動還流スプリッターを上部に備えた3/4インチ×12インチ真空ジャケット付きガラスカラムを用い、合わせた留分について2回目の蒸留を行った。以下の各留分を得て、その純度をGC(RTX−200キャピラリーカラム)により解析した:留分1:40℃で1.2グラム(黄色)、クロロ−オレフィン94.6%、未知の不純物2.1%;留分2:40℃で31.0グラム、クロロ−オレフィン96.1%、未知の不純物3.3%;留分3:40〜41℃で39.8グラム、クロロ−オレフィン95.7%、未知の不純物4.0%;留分4:41℃で29.3グラム、クロロ−オレフィン93.4%、未知の不純物6.1%;留分5:41℃で32.9グラム、クロロ−オレフィン85.1%、未知の不純物13.2%。全収率は40.1%であった。
【0053】
これらの5つの留分に基づく>85%の純粋なクロロ−オレフィンの生成物収率は、約34.8.%であり、所望の純度レベルで所望のビニルエーテル生成物を得るのに要したのはわずか9日(反応に3日、および蒸留に6日)であった。
【0054】
留分2についてNMRを行ったところ、スペクトルから、予想された化合物の存在が確認された。
H(CDCl):δ6.37(t,J=72.0Hz,CHF)。
19F(プロトンデカップリング):δ−85.92(d,J=5.6Hz,CHF),δ−94.53(d,J=45.2Hz)、δ−102.71(td,J=5.6Hz,J=45.2Hz)、=CFの非等価なFに由来。
13C(プロトンデカップリング):δ106.42(tdd,J=38.5Hz,J=49.1Hz,J=5.3Hz,C),δ115.51(t,J=269.4Hz,CHF),δ153.35(dd,J=284.5Hz,J=292.1Hz,=CF)。
【0055】
(実施例5)
ジフルオロメチル1,2,2−トリフルオロエテニルエーテル(CF=CFOCHFまたはデス−オレフィン)の調製
46.5グラムのデスフルラン(0.28mol)を250mLの三ツ口フラスコに入れ、窒素雰囲気下で約−47℃まで冷却した。温度を約−50℃〜約−25℃の間に保ちながら、この反応フラスコに、CHLiのCH(OC中3.0M溶液105mL(0.32molの塩基)を約2時間30分にわたって加えた。次いで反応混合物を約−40℃〜約−37℃の間の温度で約30分撹拌した。反応混合物を約−35℃〜約−20℃の間の温度に保ちながら、反応混合物に減圧(0.7mmHg)を約2時間適用し、デス−オレフィン11.0%、未反応デスフルラン9.0%、およびCH(OC61.1%を含む液体26.8グラムを得た(RTX−200キャピラリーカラムを用いたGC解析により明らかになった)。
【0056】
81.0グラムのデスフルラン(0.48mol)と、CHLiのCH(OC中3.0M溶液185mL(0.56mol)とを用いて、同じ手順を繰り返した。オレフィン6.7%、デスフルラン6.0%およびCH(OC72.7%を含む粗生成物液体(101.1g)を捕集した。
【0057】
2回の反応の粗生成物を合わせて、実施例1で使用した器具を用いて分別蒸留し、以下の各留分を得た:留分1:10〜12℃、4.2グラム、デス−オレフィン96.1%、デスフルラン2.4%、および他の不純物;留分2:12〜14℃、1.6グラム、デス−オレフィン91.5%、デスフルラン7.6%、および他の不純物;留分3:11〜13℃、0.5グラム、デス−オレフィン96.4%、デスフルラン3.0%、および他の不純物;留分4:19〜25℃、16.8グラム、デス−オレフィン45.9%、デスフルラン52.6%、および他の不純物。上記の留分に基づく収率は、12.2%であった。
【0058】
これらの4つの留分に基づく96%の純粋なデス−オレフィンの生成物収率は、約10.9%であり、所望の純度で所望のビニルエーテル生成物を得るのに要したのは4日(反応に2日、および蒸留に2日)であった。
【0059】
留分1についてNMR解析を行ったところ、スペクトルから、予想されたフッ素化ビニルエーテル生成物、CF=CFOCHFの存在が確認された:
H(CDCl):δ6.42(dt,J=3.0Hz,J=72.0Hz,CHF)。
19F(プロトンデカップリング):δ−84.39(d,J=5.6Hz)、δ−84.41(d,J=5.6Hz)、CHFの非等価なF;δ−115.98(mdd,J=90.4Hz,J=62.1Hz)、δ−124.18(mdd,J=93.2Hz,J=108.7Hz)、=CFの非等価なF;δ−134.82(mdd,J=63.5Hz,J=113.0Hz,=CFO)。
13C(プロトンデカップリング):δ115.06(t,J=270.9Hz,CHF),δ130.89(dtd,J=264.9Hz,J=46.8Hz,J=4.5Hz,=CF),δ146.95(ddt,J=56.6Hz,J=3.8Hz,J=278.5Hz,=CF)。
【0060】
65.5グラムのデスフルラン(0.39mol)と、CHLiのCH(OC中3.0M溶液160mL(0.48mol)とを用いて、同じ反応を繰り返し、オレフィン14.0%、未知のもの(unknown)14.9%、CH(OC64.9%、および他の不純物を含む粗生成物液体87.5gを得た(RTX−200キャピラリーカラムを用いたGC解析により明らかになった)。分別蒸留により、デス−オレフィンを収率18.4%、および副生成物(CF=C(CH)OCHF)を収率27.6%で得た。副生成物の構造は、99.3%の純粋な留分(bp 46℃)のNMRにより特定された:
H(CDCl):δ1.90(t,J=3.0Hz,CH),δ6.27(t,J=72.0Hz,CHF)。
19F(プロトンデカップリング):δ−82.32(d,J=5.6Hz,CHF);δ−98.26(dd,J=59.3Hz,J=5.6Hz)、δ−110.81(d,J=62.1Hz)、=CFの非等価なF。
13C(プロトンデカップリング):δ12.59(s,CH),δ108.24(mdd,J=48.3Hz,J=15.1Hz,C),δ115.82(mt,J=266.4Hz,CHF),δ154.86(dd,J=280.0Hz,J=289.0Hz,=CF)。
【0061】
(実施例6)
ビス(1,2,2−トリフルオロエテニル)エーテル(CF=CFOCF=CFすなわちビスオレフィン)および1,2,2,2−テトラフルオロエチル1,2,2−トリフルオロエテニルエーテル(CF=CFOCHFCFすなわちモノオレフィン))の調製
65.8グラムのビス−(1,2,2,2−テトラフルオロエチル)エーテル(0.30mol)を窒素雰囲気下で約−30℃まで冷却した。約−15℃〜約−36℃の間の反応温度を維持しながら、この反応液に、CHLiのCH(OC中3.0M溶液100mL(0.30molの塩基)を約2時間36分にわたって加えた。次いで反応混合物を約−28℃〜約−26℃の間の温度で約30分間撹拌した。反応混合物を約−18℃〜約−15℃の間の温度で維持しながら、反応混合物に減圧(0.3mmHg)を約4時間5分適用し、約79.5グラムの粗液体生成物を得た。
【0062】
同じ実験をもう一度繰り返し、さらに約80.1グラムの粗液体生成物を得た。両方の液体を合わせて、GC解析により、粗生成物は、予測されたビス−オレフィン生成物2.6%、予測されたモノオレフィン生成物7.5%、未反応エーテル出発材料8.4%、主な副生成物(1−メチル−2,2−ジフルオロエテニル1,2,2,2−テトラフルオロエチルエーテル、CF=C(CH)OCHFCF)8.1%、およびCH(OC72.1%を含むことが明らかになった。
【0063】
合わせた液体の分別蒸留により、様々な組成を有する15の留分を得た。留分1および2は、それぞれビス−オレフィン95.4%および93.2%を有していた。しかしながら、ビス−オレフィンは単離後すぐに重合した。蒸留した各留分に基づき算出した収率は:ビス−(1,2,2−トリフルオロエテニル)エーテル(CF=CFOCF=CF)4.4%、1,2,2,2−テトラフルオロエチル1,2,2−トリフルオロエテニルエーテル(CF=CFOCHFCF)19.2%、および主な副生成物、1−メチル−2,2−ジフルオロエテニル1,2,2,2−テトラフルオロエチルエーテル(CF=C(CH)OCHFCF)13.4%であった。
【0064】
ビス−オレフィン35.8%およびモノオレフィン61.8%を含む留分1および留分3についてNMRを行ったところ、スペクトルから、CF=CFOCF=CF(bp 20〜21℃)の存在が確認された:
19F(CDCl,プロトンデカップリング):δ−118.50(dd,J=96.0Hz,J=62.1Hz,)、δ−124.72(dd,J=113.0Hz,J=65.0Hz)、CFの非等価なFに属する,δ−138.69(dd,J=110.1Hz,J=65.0Hz,=CF)。
13C(プロトンデカップリング):δ134.6(td,J=270Hz,J=50Hz,=CF),δ145.56(tdd,J=277.7Hz,J=54.3Hz,J=3.0Hz,=CF)。
【0065】
モノオレフィン(CF=CFOCHFCF、bp 29〜30℃)96.5%を含む留分5についてもNMRを行い、スペクトルから、この生成物の存在が確認された:
H(CDCl),5.66(d,J=54.0Hz,OCHF)。
19F(プロトンデカップリング):δ−84.18(d,J=5.6Hz,CF),δ−117.45(dd,J=62.1Hz,J=90.4Hz)、δ−124.63(ddd,J=113.0Hz,J=91.8Hz,J=2.8Hz)、=CFの非等価なFに属する,δ−138.12(dq,J=62.1Hz,J=8.5Hz,CHF),δ−145.32(m,=CFO)。
13C(プロトンデカップリング):δ102.15(dqdd,Jdoublet=243.8Hz,Jquartet=41.5Hz,CHF),δ118.32(qd,J=281.5Hz,J=30.2Hz,CF),δ134.04(ddd,J=268.7Hz,J=44.5Hz,J=48.3Hz,=CF),δ145.99(tdd,J=277.7Hz,J=56.6Hz,J=3.0Hz,=CF)。
【0066】
主な副生成物(CF=C(CH)OCHFCF、bp 68〜70℃)95.6%を含む留分14についてもNMRを行い、スペクトルから、この副生成物の存在が確認された:
H(CDCl):δ1.91(dd,J=3.0Hz,J=6.0Hz,CH),δ5.46(dq,J=57.0Hz,J=3.0Hz,CHF)。
19F(プロトンデカップリング):δ−84.40(dd,J=6.2Hz,J=0.8Hz,CF),δ−99.00(dd,J=65.0Hz,J=5.6Hz)、δ−112.22(d,J=65.0Hz)、=CFの非等価なFに属する),δ−141.31(qd,J=5.6Hz,J=5.6Hz,CHF)。
13C(プロトンデカップリング):δ11.63(d,J=0.8Hz,CH),δ102.96(dqt,J=236.2Hz,J=40.0Hz,J=3.0Hz,CHF),δ112.86(ddd,J=47.5Hz,J=15.8Hz,J=1.5Hz,C),δ118.90(qd,J=281.5Hz,J=32.5Hz,CF),δ154.53(ddd,J=273.2Hz,J=288.3Hz,J=3.0Hz,=CF)。
【0067】
モル比1:2のビス−(1,2,2,2−テトラフルオロエチル)エーテル(32.5グラム、0.15mol)およびCHLi(CHLiのCH(OC中3.0M溶液105mL、0.32molの塩基)を用いた類似条件下で、別の反応を行った。43.1グラムの粗生成物液体を捕集した。GC解析により、液体はビス−オレフィン1.5%、モノオレフィン0.4%、未反応出発エーテル0.1%、未知の副生成物4.3%、CF=C(CH)OCHFCF(上記で論じた主な副生成物)7.3%、およびCH(OC84.5%を含むことが明らかになった。これらの反応条件から、リチウム試薬の量を倍増すると、所望のモノオレフィンが減少して副生成物CF=C(CH)OCHFCFがより多く生成されることが明らかにされる。
【0068】
(実施例7)
ジフルオロメチル2,2−ジフルオロエテニルエーテル(CF=CHOCHFすなわちジフルオロ−オレフィン)の調製
実施例2と同様に、約−17℃〜約−10℃の間の反応温度を維持しながら、40.5グラムのジフルオロメチル2,2,2−トリフルオロエチルエーテル(CFCHOCHF、0.27mol)を、CHLi/CH(OCの3.0M溶液100mL(0.30molの塩基)と約2時間28分反応させた。反応混合物を約−23℃〜約−16℃の間の温度で維持しながら、反応混合物に減圧を約2時間38分適用し、ジフルオロ−オレフィン5.73%、未反応出発材料44.4%、およびCH(OC46.0%を含む59.1gの液体を得た(GC解析により明らかになった)。3mmのガラス製ヘリックスが充填され、4℃まで冷却した冷却器を有する自動スプリッターを上部に備えた1/2インチ×12インチ長の真空ジャケット付きガラスカラムを用い、この液体を分別蒸留し、以下の3つの留分を得、これをGCにより解析した:留分1:20〜21.5℃、1.0グラム、ジフルオロ−オレフィン81.0%、出発材料9.9%、および他の不純物;留分2:30℃、0.4グラム、ジフルオロ−オレフィン36.1%、出発材料60.3%、および他の不純物;留分3、30〜31℃、6.3グラム、ジフルオロ−オレフィン4.1%、出発材料95.5%、および他の不純物。ジフルオロ−オレフィンの全収率は3.5%であった。
【0069】
留分1についてNMRを行ったところ、スペクトルから、予想された生成物の存在が確認された:
H(CDCl):δ6.03(dd,J=3.0Hz,J=15.0Hz,=CHO),δ6.29(dt,J=3.0Hz,J=72.0Hz,CHF)。
19F(プロトンデカップリング):δ−85.69(d,J=2.8Hz,CHF),δ−94.14(d,J=59.3Hz)、δ−112.27(d,J=62.1Hz)=CFの非等価なFに属する)。
(実施例8)
【0070】
クロロジフルオロメチル2,2−ジフルオロエテニルエーテル(CF=CHOCFCl)の調製
上記と同じ手順に従い、約−14℃〜−4℃の間の反応温度を維持しながら、24.5グラムのクロロジフルオロメチル2,2,2−トリフルオロエチルエーテル(0.13mol)を、CHLi/CH(OCの3.0M溶液50mL(0.15molの塩基)と約1時間35分にわたって反応させた。反応混合物を約−27℃〜−16℃の間の温度で維持しながら、反応混合物に減圧を約2.5時間適用し、所望のフッ素化ビニルエーテル生成物(クロロジフルオロメチル2,2−ジフルオロエテニルエーテル)1.4%、未反応エーテル出発材料38.1%、およびCH(OC55.4%を含む液体40.6グラムを得た(GC解析により明らかになった)。ほぼ同じ量の反応物を用いて同じ反応をさらに2回繰り返し、それぞれ液体の粗生成物を29.4グラムおよび37.4グラム得た。3回の反応の液体の粗生成物を合わせた。この混合液体を分別蒸留したが、所望のフッ素化ビニルエーテルの純粋な留分は得られなかった。留分2(4.5g)は24〜39℃で捕集し、クロロジフルオロメチル2,2−ジフルオロエテニルエーテル21.3%、およびエーテル出発材料69.8%を含んでいた。クロロジフルオロメチル2,2−ジフルオロエテニルエーテルの全収率は、1.7%であった。
【0071】
留分2をNMRにより解析し、所望のフッ素化ビニルエーテル生成物の存在が確認された:
H(CDCl):δ6.05(dd,J=3.0Hz,J=15.0Hz,=CH)。
19F(プロトンデカップリング):δ−31.72(s,CFCl),δ−91.32(d,J=50.8Hz)、δ−110.14(d,J=56.5Hz)、=CFの非等価なFに属する。
13C(プロトンデカップリング):δ125.66(t,J=290.6Hz,出発材料ピークと重なる),δ157.39(dd,J=302.2Hz,J=295.1Hz,=CF)。=CHのピークは、サンプル濃度の低さおよびピークの多重分裂のためノイズシグナルと区別できなかった。
【0072】
当業者であれば、付随の開示に照らして、本明細書に記載のフッ素化エーテル化合物の調製方法について、多くの修正および変形を想到すると予想される。したがって、本発明は、添付の特許請求の範囲に記載されるような限定によってのみ限定されるものとする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フッ素化ビニルエーテル化合物を調製する方法であって:
(i)エーテル性酸素のα位にある炭素原子上に水素原子と、(ii)該エーテル性酸素のβ位にある炭素原子上にフッ素原子とを有するフッ素化エーテル基質を、有機リチウム塩基と反応させてフッ素化ビニルエーテル化合物を含む反応生成物を提供することを含み、
該反応はアセタール溶媒中で行われる、方法。
【請求項2】
前記フッ素化エーテル基質は下記式(I)を有し:
【化3】

式中、Rはアルキルおよびハロアルキルからなる群から選択され;
はH、F、Cl、アルキルおよびハロアルキルからなる群から選択され;
およびRは独立にHおよびFからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記フッ素化エーテル基質はセボフルラン、セボメチルエーテル、クロロセボメチルエーテル、ジフルオロメチル2,2,2−トリフルオロエチルエーテル、イソフルラン、デスフルラン、クロロジフルオロメチル2,2,2−トリフルオロエチルエーテルおよびビス−(1,2,2,2−テトラフルオロエチル)エーテルからなる群から選択される、先行する請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項4】
前記フッ素化エーテル基質はセボフルラン、セボメチルエーテル、クロロセボメチルエーテル、デスフルラン、ジフルオロメチル2,2,2−トリフルオロエチルエーテルおよびイソフルランからなる群から選択される、先行する請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記フッ素化エーテル基質は下記式(II)を有し:
【化4】

式中、Rはアルキルおよびハロアルキルからなる群から選択される、先行する請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記フッ素化エーテル基質はセボフルラン、セボメチルエーテルおよびクロロセボメチルエーテルからなる群から選択される、先行する請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記有機リチウム塩基はメチルリチウムである、先行する請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
前記アセタール溶媒はジエトキシメタン、1,1−ジエトキシエタン、1,1−ジメトキシエタン、1,3−ジオキソランおよび2,2−ジメトキシプロパンからなる群から選択される、先行する請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
前記有機リチウム塩基はメチルリチウムであり、前記アセタール溶媒はジエトキシメタンである、先行する請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
前記ジエトキシメタン中のメチルリチウムの濃度は約0.10M〜約4.0Mである、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記有機リチウム塩基の濃度は前記フッ素化エーテル基質の量に対して約15モルパーセント(「mol%」)〜175mol%である、先行する請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
前記有機リチウム塩基の濃度は前記フッ素化エーテル基質の量に対して約75mol%〜約125mol%である、先行する請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
前記フッ素化エーテル基質を5℃以下まで冷却し、予め冷却した該フッ素化エーテル基質に前記有機リチウム塩基を加えることをさらに含む、先行する請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
前記反応生成物に減圧を適用することにより該反応生成物から前記フッ素化ビニルエーテル化合物を取り出すことをさらに含む、先行する請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
前記反応生成物の分別蒸留により該反応生成物から前記フッ素化ビニルエーテル化合物を単離することをさらに含む、先行する請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
前記フッ素化ビニルエーテル化合物の純度は少なくとも95%である、先行する請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項17】
前記反応は不活性雰囲気下で行われる、先行する請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項18】
フッ素化ビニルエーテル化合物を調製する方法であって:
エーテル性酸素のα位にある炭素原子上に水素原子と、該エーテル性酸素のβ位にある炭素原子上にフッ素原子とを有するフッ素化エーテル基質を提供すること;
前記フッ素化エーテル基質を5℃以下まで冷却すること;
ジエトキシメタンに溶解させたメチルリチウムを該フッ素化エーテル基質に加えて反応混合物を提供すること;および
該反応混合物からフッ素化ビニルエーテル化合物を取り出すこと
を含む、方法。
【請求項19】
前記フッ素化ビニルエーテル化合物を取り出す前に前記反応混合物を5℃以下の温度で撹拌することをさらに含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記フッ素化ビニルエーテル化合物を取り出すことは、該反応混合物に減圧を適用して該フッ素化ビニルエーテル化合物を含む粗生成物を提供すること、および該フッ素化ビニルエーテル化合物を分別蒸留により精製することを含む、請求項18または19に記載の方法。

【公表番号】特表2012−524082(P2012−524082A)
【公表日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−506003(P2012−506003)
【出願日】平成22年4月20日(2010.4.20)
【国際出願番号】PCT/US2010/031726
【国際公開番号】WO2010/123880
【国際公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【出願人】(591013229)バクスター・インターナショナル・インコーポレイテッド (448)
【氏名又は名称原語表記】BAXTER INTERNATIONAL INCORP0RATED
【出願人】(501453189)バクスター・ヘルスケヤー・ソシエテ・アノニム (289)
【氏名又は名称原語表記】BAXTER HEALTHCARE S.A.
【Fターム(参考)】