説明

フッ素化ポリマーを含有する埋め込み型用具用の生体有益性コーティング及びその製造方法

埋め込み型医療用具のためのコーティング及び該コーティングの製造方法が開示される。コーティングはフッ素化ポリマー及び生体有益性のポリマーを含み、生体有益性のポリマーの一例には、ポリ(エチレングリコール)−ブロック−ポリ(ブチレンテレフタレート)−ブロック−ポリ(エチレングリコール)が挙げられる。さらに、生物活性剤が、生体有益性のポリマーに抱合される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬剤溶出用の血管ステントのような薬剤送達用具のためのコーティング及びその製造方法を対象とする。
【背景技術】
【0002】
経皮経管冠動脈形成術(PTCA)は、心臓疾患を治療する手段である。上腕動脈又は大腿動脈を介して、バルーン部分を有するカテーテル部品を患者の循環器系に経皮的に導入する。バルーン部分が閉塞性病変を横切って位置するまで、冠状動脈の脈管構造を通ってカテーテル部品を進める。いったん病変部を横切って位置したら、バルーンを所定の大きさに膨らませて病変部のアテローム硬化性プラークに対して放射状に圧迫し、血管内腔壁を再構築する。次いで、バルーンをさらに小さな外形にしぼませて患者の脈管構造から引き出せるようにする。
【0003】
上記の処置に関連する問題には、内膜弁の形成又は動脈内層の引き裂きが挙げられ、それらは、バルーンをしぼませた後の導管を破壊し、閉塞させうる。さらに、処置の数ヵ月後にわたって、血栓症及び動脈の再狭窄が発生する可能性があり、それらは、別の血管形成処置又は外科的バイパス手術を必要とさせる可能性がある。動脈内層の崩壊による動脈の閉塞の一部又は全部を軽減するために、及び血栓症及び再狭窄の発生の機会を減らすために、ステントを内腔に埋め込んで血管の開放性を維持する。
【0004】
ステントは、機械的介入だけでなく、生物学的治療を提供する媒体としても使用される。機械的介入として、ステントは、物理的に開放を保ち、所望であれば、通路の壁を拡張するように機能する足場として作用する。通常、ステントは、カテーテルにより小さな血管を介して挿入でき、次いでいったん所望の位置にあれば、さらに大きな直径に拡張できるように圧縮可能である。PTCA法で適用されているステントを開示している特許文献の例には、Palmazに発行された米国特許第4,733,665号、Gianturcoに発行された同第4,800,882号及びWiktorに発行された同第4,886,062号で説明されているステントが挙げられる。
【0005】
生物学的治療は、ステントに薬物を適用することによって達成することができる。薬物を適用されたステントは、病変部位において治療物質の局所投与を提供する。治療部位に有効な濃度を提供するために、そのような薬剤の全身投与は、患者にとって有害な又は有毒の副作用を生じることが多い。局所送達は、全身投与に比べて全体として低いレベルの薬剤が投与されるが、特定の部位で濃縮される好ましい治療法である。従って、局所送達は少ない副作用で、さらに好都合な成績を達成する。ステントに薬物を適用する、提案されている方法の1つには、ステントの表面にコートされるポリマーのキャリアの使用が関与する。溶媒、溶媒に溶解されたポリマー、及び混合物に分散された治療物質を含む溶液がステントに塗布される。溶媒を蒸発させ、ポリマーのコーティング及びポリマーに含浸された治療物質をステント表面に残す。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ステントを介した治療剤の局所投与は、再狭窄の軽減においていくつかの好都合な成績を示している。しかしながら、再狭窄の効果的な管理のためにさらに良好なコーティングに対する大きなニーズがある。本発明の実施態様は、物理的及び生物学的双方の改善された特性を有するステントコーティングを開示する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
医療用物品が提供され、当該物品は、埋め込み型医療用具の少なくとも一部に配置されたコーティングを含み、コーティングは、フッ素化ポリマー及び生体有益性のポリマーを含む。使用することができるフッ素化ポリマーには、フッ素化オレフィン又はそれらの混合物の重合生成物、フッ素化環状エステルの重合生成物、不斉環状構造を持つ主鎖を有するフッ素含有環状ポリマー、及びパーフルオロ−2,2−ジメチル−1,3−ジオキソールのパーフルオロオレフィン又はパーフルオロ(アルキルビニル)エーテルとのコポリマーが挙げられる。使用することができるフッ素化ポリマーの一例は、商標名ソレフ(SOLEF)のもとで入手可能なポリ(フッ化ビニリデン−co−ヘキサフルオロプロペン)である。使用することができる生体有益性のポリマーの例には、ポリ(エチレングリコール)、ポリ(エチレングリコール)−ブロック−ポリ(ブチレンテレフタレート)−ブロック−(エチレングリコール)(商標名ポリアクティブ(ポリアクティブ)のもとで入手可能)、ポリ(ブチレンテレフタレート)−ブロック−ポリ(エチレングリコール)−ブロック−ポリ(ブチレンテレフタレート)、ヒアルロン酸又はその誘導体、ホスホリルコリン、ポリアスピリン及びポリ(エステルアミド)が挙げられる。生体活性剤、たとえば、ペプチド、アンチセンス剤、ラパマイシン及びその構造的誘導体又は機能的類縁体、並びに酸化窒素源である分子を用いて、生体有益性のポリマーを適宜改変することができる。
【0008】
医療物品を製造する方法が提供され、当該方法は、埋め込み型医療用具の少なくとも一部にフッ素化ポリマーを溶着して第1のポリマー層を形成すること、及び第1のポリマー層の少なくとも一部に生体有益性のポリマーを溶着して第2のポリマー層を形成することを含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
1.用語及び定義
以下の用語が適用される:
用語「生体有益性」は、治療効果及び予防効果を含む生体有益性を患者にもたらす生成物を言う。
【0010】
用語「生体分解性」又は「生分解性」は、血液のような体液にさらした場合、分解される、溶解される及び/又は徐々に破壊されることが可能である、及び生体によって徐々に再吸収される、吸収される及び/又は排除されるコーティング及び/又はポリマーを言う。たとえば、加水分解、代謝過程、全体的な又は表面の緩やかな破壊などによって、コーティング及び/又はポリマーは分解及び最終的な吸収及び排除の過程を生じることができる。分解、溶解及び/又は緩やかな破壊の過程が完了した後、極めて少量〜ゼロ量のコーティング又はポリマーがステント上に残ることが理解される。用語「分解可能」、「生分解性」、又は「生体分解性」が本出願で使用される場合はいつも、それらは、生体分解性、生体破壊性、生吸収性及び生再吸収性のコーティング及び/又はポリマーを広く含むように意図される。
【0011】
用語「ブロックコポリマー」は、国際純正応用化学連合(IUPAC)により使用される専門用語に従って定義される。IUPACによれば、「ブロックコポリマー」は、ブロックの線形配置を有するコポリマーを言う。ブロックは、モノマー単位が、隣接部分を欠いて少なくとも1つの構成的の又は立体配置的な特長を有するポリマー分子の一部として定義される。
【0012】
用語「フッ素化ポリマー」は、ポリマーの少なくとも1つの構成単位において少なくともフッ素原子を1個有するポリマーとして定義される。
【0013】
用語「高度にフッ素化されたポリマー」は、高分子における一価の原子の少なくとも50%がフッ素原子であるホモポリマー、コポリマー、ターポリマー又はそれらの混合物として定義される。
【0014】
用語「フッ素化オレフィンに基づくポリマー」は、たとえば、フッ素化エチレンのような完全に又は部分的にフッ素化されたオレフィンに由来する単位を含むポリマーを言う。
【0015】
用語「非付着性」は、ステント表面又はステントコーティングの上へのタンパク質の変性層の積層を遅らせる、防ぐ又は少なくとも減らす、ポリマーなどの化合物の能力として定義される。
【0016】
用語「抱合された」は、「連結された」、たとえば、「共有結合で連結された」として定義される。用語「抱合している」は、連結、たとえば、共有結合による連結の形成過程として定義される。
【0017】
用語「ポリマー−類似変換」は、別の官能基を持つ元来のポリマーの高分子において官能基を置き換えるので新しい特性を有する新しいポリマーを作製する合成過程として定義される。しかしながら、新しいポリマーは、ポリマー−類似変換が完了した後、たとえば、元来の重合度及び元来のポリマーの主鎖の構造(直鎖又は分枝鎖の性質を含む)のような元来のポリマーの多数の特長を保持する。
【0018】
用語「ポリ(エステルアミド)」は、少なくとも1つのエステル断片(I)及び少なくとも1つのアミド断片(II)を有するポリマーとして定義される。
【化1】

【化2】

【0019】
2.本発明の実施態様
本発明の実施態様に係る、ステントのような埋め込み型医療用具のためのコーティングは、以下の層:
(a)薬剤ポリマー層(「リザーバ」又は「リザーバ層」とも言う)又は、代わりにはポリマーを含まない薬剤層
(b)下塗り層
(c)上塗り層、及び/又は
(d)仕上げ塗り層
の少なくとも1つを含むことができる多層構造であることができる。
【0020】
ポリマー又はポリマーの混合物を溶媒又は溶媒の混合物に溶解し、得られたポリマー溶液をスプレーによってステント上に塗布する或いは溶液にステントを浸漬することによってステントコーティングの各層をステント上に形成することができる。ステント上に溶液を塗布した後、溶媒を蒸発させることによってコーティングを乾燥する。乾燥が高い温度で実施されれば、乾燥の過程を加速することができる。たとえば、55℃〜80℃のような温度でコーティングを焼くことができる。
【0021】
薬剤をリザーバ層に組み入れるには、溶液の形態における薬剤を、ステントに塗布するポリマー溶液と混ぜ合わせる。或いは、ポリマーを含まない薬剤層を製造するには、好適な溶液又は溶液の混合物に薬剤を溶解し、スプレーすることによって又は薬剤溶液にステントを浸漬することによって、得られた薬剤溶液をステント上に塗布することができる。
【0022】
薬剤を溶液に導入する代わりに、たとえば、適当な溶媒相における懸濁のようなコロイド系として薬剤を導入することができる。懸濁液を作製するには、コロイド化学で使用される従来の技法を用いて、溶媒相に薬剤を分散することができる。たとえば、薬剤の性質のような種々の因子によって、当業者は、懸濁液の溶媒相を形成するのに好適な溶媒並びに溶媒相に分散される薬剤の量を選択することができる。懸濁液をポリマー溶液と混合することができ、混合物を上述のようにステント上に塗布することができる。或いは、ポリマー溶液と混合しないで、薬剤懸濁液をステントに塗布することができる。
【0023】
薬剤−ポリマー層はステントの少なくとも一部に直接塗布することができ、それは、リザーバ層に組み入れられる少なくとも1つの活性剤又は薬剤のためのリザーバとして役立つ。任意の下塗り層をステントとリザーバの間に塗布することで、薬剤−ポリマー層のステントへの接着性を改善することができる。リザーバ層の少なくとも一部には上塗り層を塗布することができ、それは、薬剤の放出率を制御するのを助ける律速膜として役立つ。上塗り層は本質的に活性剤又は薬剤を含まない。上塗り層の少なくとも一部には任意の仕上げ塗り層を塗布することができ、それは、薬剤の放出率をさらに制御するステントコーティングの最外層を形成する。仕上げ塗り層を使用しなければ、上塗り層がステントコーティングの最外層である。
【0024】
ステントコーティングの最外層によって、ステントコーティングに生体有益性特性及び/又は非付着性特性を付与することができる。生体有益性特性及び/又は非付着性特性を有する最外層を形成するには、以下でさらに詳細に議論するように生体有益性のポリマーを最外層に含めることができる。ステントコーティングの残りの層の一部又はすべては、適宜、生体有益性のポリマーを含むこともできる。本発明の一部の実施態様では、ステントコーティングの最外層に追加の生体有益性を付与することができる。追加の生体有益性を提供するには、たとえば、最外層に存在する生体有益性のポリマーに生物活性剤を抱合させることによってステントコーティングの最外層に少なくとも1つの生物活性剤を組み入れることができる。
【0025】
さらに詳細に説明すると、たとえば、上述の4つの層すべて(たとえば、下塗り層、リザーバ層、上塗り層及び仕上げ塗り層)を有するステントコーティングでは、最外層は仕上げ塗り層であり、それは、生体有益性のポリマーを含むことができ、適宜、生体有益性のポリマーに抱合された追加の生物活性剤を含むことができる。この場合、適宜、残りの層(たとえば、下塗り層、リザーバ層及び上塗り層)も、4つの各層で同一であっても異なってもよい生体有益性のポリマーを含むことができる。
【0026】
仕上げ塗り層が使用されなければ、ステントコーティングは、たとえば、3層(たとえば、下塗り層、リザーバ層及び上塗り層)のみを有することができる。この場合、上塗り層がステントコーティングの最外層であり、それは、生体有益性のポリマーを含むことができ、適宜、生体有益性のポリマーに抱合された追加の生物活性剤を含むことができる。適宜、下塗り層及びリザーバ層も、3つの各層で同一であっても異なってもよい生体有益性のポリマーを含むことができる。
【0027】
ステントコーティングのリザーバ層、上塗り層及び/又は仕上げ塗り層に包含させることができるポリマーは以下のとおりである。
【0028】
A.ステントコーティングのフッ素化層
ステントコーティング、たとえば、リザーバ層は、フッ素化ポリマー、たとえば、上記で定義したような高度にフッ素化されたポリマーを包含することができる。使用することができる高度にフッ素化されたポリマーの一例には、一般式(III)を有するポリ(フッ化ビニリデン−co−ヘキサフルオロプロパン)(PVDF−HFP)が挙げられる。
【化3】

【0029】
テキサス州、ヒューストンのソルベイ・フルオロポリマーズ社から入手可能な製品のソレフ(SOLEF)ファミリーとして知られるPVDF−HFPの種々の銘柄を使用することができ、たとえば、ソレフ21508は、約85質量%のフッ化ビニリデン由来の単位及び約15質量%のヘキサフルオロプロパン由来の単位を有する。PVDF−HFPは、商標名カイナー(KYNAR)のもと、ペンシルベニア州、フィラデルフィアのアトフィナ・ケミカルズからも入手可能である。
【0030】
使用することができるそのほかの高度にフッ素化されたポリマーには、フッ素化オレフィン又はその混合物に基づくポリマーが挙げられる。この群に属するポリマーの一部の例を表1に提供する。
【0031】
【表1】

【0032】
使用することができる高度にフッ素化されたそのほかのポリマーには、主鎖に複素環断片を有する又は酸素原子を有するポリマーも挙げられる。この部類のポリマーは、フッ素化オレフィンに基づかない。そのようなポリマーの例には、以下が挙げられる。
【0033】
(1)たとえば、ポリ(パーハロ−2,2−ジ−低級アルキル−1,3−ジオキソール−co−パーフルオロ−2−メチレン−メチル−1,3−ジオキソラン)(本発明の目的では、「ポリフルオロオキサレン」と表す)、たとえば、ポリ(パーハロ−2,2−ジメチル−1,3−ジオキソール−co−パーフルオロ−2−メチレン−メチル−1,3−ジオキソラン)。
【0034】
(2)不斉環状構造を持ち、環状重合されたパーフルオロアリルビニルエーテル及び/又はパーフルオロブテニルビニルエーテルの繰り返し単位を持つ主鎖を有する熱可塑性樹脂様のフッ素含有環状ポリマー、たとえば、ポリ(パーフルオロブテニルビニルエーテル)(PPBVE)。
【0035】
(3)テフロンAF製品を含む、パーフルオロ2,2−ジメチル−1,3−ジオキソール(PDD)の、パーフルオロオレフィン及びパーフルオロ(アルキルビニル)エーテルのようなモノマーとのコポリマー(本発明の目的では、「ポリフルオロオキソール」と表す)。テフロンAFは、ポリ(テトラフルオロエチレン−co−パーフルオロ2,2−ジメチル−1,3−ジオキソール)を含み、デュポン社から入手可能である製品の商標名である。
【0036】
ポリフルオロオキソールは、約1〜99.5%の間のPDDに由来する単位及びパーフルオロ(ブテニルビニルエーテル)に由来する、残りの部分の単位を含有することができ、適宜、塩素化又はフッ素化オレフィン、たとえば、テトラフルオロエチレン又はクロロトリフルオロエチレンのような、又たとえば、パーフルオロプロピルビニルエーテル、パーフルオロ−3,6−ジオキサ−4−メチル−7−オクテンスルホニルフルオリド及びメチルパーフルオロ−4,7−ジオキサ−5−メチル−8−ノネノエートのようなパーフルオロビニルエーテルのような少量の追加のモノマーを含有することができる。ノースカロライナ州、シャーロットの旭硝子社から入手可能な商標名サイトップ(CYTOP)のもとでのPPVBEの銘柄を使用することができる。
【0037】
本発明の実施態様の1つでは、使用することができるフッ素化ポリマーは、上述のフッ素化ポリマーのいかなるものも含まない。
【0038】
本発明で使用されるフッ素化ポリマーはすべて、少なくとも1種の有機溶媒又は種々の有機溶媒の混合物に溶解性である。好適な溶媒には、フッ素化された溶媒、たとえば、約60℃〜約140℃の沸点を有するフッ化炭素系、たとえば、フルオリネートFC75及び種々のフレオン、並びにそのほかのフッ素化溶媒、たとえば、フルックスリムーバAMS及びノベックヒドロフルオロエーテル溶媒が挙げられる。
【0039】
フルオリネートFC75は、ミネソタ州、セントポールのミネソタ・マイニング&マニュファクチャー社から入手可能な溶媒、パーフルオロ(2−ブチルテトラヒドロフラン)の商標名である。フレオンは、デュポン社から入手可能な種々の塩素化フッ化炭素の商標名である。
【0040】
フルックスリムーバAMSは、テキサス州、アマリロのテック・スプレー社のより製造された溶媒の商標名であり、93.7%の3,3−ジクロロ−1,1,1,2,2−ペンタフルオロプロパンと1,3−ジクロロ−1,1,2,2,3−ペンタフルオロプロパンの混合物を含み、残りはメタノールであり、微量のニトロメタンを含む。ノベックは、ミネソタ州、セントポールの3M社から入手可能なヒドロフルオロエーテルに基づいた溶媒群の商標名である。
【0041】
そのほかの溶媒を代替的に使用して上述のフッ素化ポリマーを溶解することができる。代表的な例には、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAC)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、アセトン、シクロヘキサノン、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトン、N−メチルピロリドン及び1,4−ジオキサンが挙げられる。
【0042】
ステントコーティングのリザーバ層は、0より多く〜100質量%の間の上述のフッ素化ポリマー又はそのようなフッ素化ポリマーの1より多くの混合物を含有することができる。層の100%未満がフッ素化ポリマーでできていれば、そのほかの代替のポリマーが残りを構成することができる。使用することができる代替ポリマーの例には、ポリ(ブチルメタクリレート)、ポリ(エチルメタクリレート)及びポリ(エチルメタクリレート−co−ブチルメタクリレート)のようなポリアクリレート類、ポリ(ビニルピロリドン)、ポリ(ヒドロキシバレレート)、ポリ(L−乳酸)、ポリカプロラクトン、ポリ(ラクチド−co−グリコリド)、ポリ(ヒドロキシブチレート)、ポリ(ヒドロキシブチレート−co−バレレート)、ポリジオキサノン、ポリオルソエステル、ポリ無水物、ポリ(グリコール酸)、ポリ(D,L−乳酸)、ポリ(グリコール酸−co−炭酸トリメチレン)、ポリホスホエステル、ポリホスホエステルウレタン、ポリ(アミノ酸)、シアノアクリレート、ポリ(炭酸トリメチレン)、ポリ(イミノカーボネート)、コポリ(エーテル−エステル)、ポリアルキレンオキサレート、ポリホスファゼン、生体分子(たとえば、フィブリン、フィブリノーゲン、セルロース、デンプン、コラーゲン及びヒアルロン酸又はその誘導体)、ポリウレタン類、シリコーン類、ポリエステル類、ポリオレフィン類、ポリイソブチレンとエチレン−αオレフィンのコポリマー、ビニルハロゲン化物ポリマー及びコポリマー(たとえば、ポリ塩化ビニル)、ポリビニルエーテル類(たとえば、ポリビニルメチルエーテル)、ポリ塩化ビニリデン、ポリアクリロニトリル、ポリビニルケトン、ポリビニル芳香族(たとえば、ポリスチレン)、ポリビニルエステル類(たとえば、ポリ酢酸ビニル)、ビニルモノマー同士のコポリマー及びオレフィンとのコポリマー、たとえば、ポリ(エチレン−co−ビニルアルコール)(EVAL)、エチレン−メチルメタクリレートコポリマー、アクリロニトリル−スチレンコポリマー、ABS樹脂及びエチレン−酢酸ビニルコポリマー;ポリアミド(たとえば、ナイロン66及びポリカプロラクタム)、アルキド樹脂、ポリカーボネート、ポリオキシメチレン、ポリイミド、ポリエーテル、エポキシ樹脂、ポリウレタン、レーヨン、レーヨン−トリアセテート、セルロース、酢酸セルロース、酪酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、セロファン、硝酸セルロース、プロピオン酸セルロース、セルロースエーテル及びカルボキシメチルセルロースが挙げられる。実施態様の1つでは、混合物は、前述の代替ポリマーのいかなるものも含まなくてもよい。
【0043】
B.ステントコーティングの最外層
上述のように、ステントコーティングの最外層は生体有益性のポリマーを包含することができる。使用することができる生体有益性のポリマーの一例は、ポリ(エチレングリコール)(PEG)である。PEGは、病変部位での平滑筋細胞の増殖を軽減するので再狭窄を抑制することが可能である生体有益性のポリマーである。使用することができる生体有益性のポリマーの別の例は、PEGとポリ(ブチレンテレフタレート)(PBT)とのブロックコポリマー、たとえば、ポリ(エチレングリコール)−ブロック−ポリ(ブチレンテレフタレート)−ブロック−ポリ(エチレングリコール)(PEG−PBT−PEG)である。たとえば、PEGによるジブチレンテレフタレートのトランスエステル化によってこのブロックコポリマーを得ることができる。
【0044】
PEG−PBT−PEGブロックコポリマーは、商標名ポリアクティブのもとで知られ、オランダのイソティス社から入手可能である。PEG−PBT−PEGでは、エチレングリコールに由来する単位とブチレンテレフタレートに由来する単位の間の比は、約0.67:1〜約9:1の間であることができる。エチレングリコールに由来する単位の分子量は、約300〜約4,000ダルトンの間であることができる。或いは、所望であれば、PEG−PBT−PEGブロックコポリマーにおける部分の位置を入れ替えて、BABブロックコポリマー、ポリ(ブチレンテレフタレート)−ブロック−ポリ(エチレングリコール)−ブロック−ポリ(ブチレンテレフタレート)(PBT−PEG−PBT)を得ることができる。
【0045】
PEG−PBT−PEGブロックコポリマー及びPBT−PEG−PBTブロックコポリマーは双方とも、エステル結合を持つ断片を含有する。エステル結合は水に不安定な結合であることが知られている。ややアルカリ性の血液に接触すると、エステル結合は、触媒された加水分解の対象となるので、ブロックコポリマーの生体分解性を裏付けることになる。PEG−PBT−PEG又はPBT−PEG−PBTいずれかの分解生成物の1つは、PEGであると予想され、それは上述のように生体有益性である。その結果、ステントコーティングの最外層にPEG−PBT−PEG又はPBT−PEG−PBTいずれかを含むことはコーティングに生体有益性特性を提供することが期待される。
【0046】
PEG及びポリアクティブポリマーに加えて、ステントの最外層にはそのほかの生体有益性のポリマーを包含することができる。そのような代替の生体有益性のポリマーの例には、ヒアルロン酸又はその誘導体、ポリ(エチレンオキシド−co−プロピレンオキシド)、ホスホリルコリン、及びポリ(エステルアミド)の部類のポリマーが挙げられる。使用することができるポリ(エチレンオキシド−co−プロピレンオキシド)の銘柄の1つは、商標名プロニックのもとで、ニュージャージー州、パーシッパニーのBASF社から入手可能である。
【0047】
ポリ(エステルアミド)は、一般式(IV)を有するポリマーであり:
【化4】

式中、Mは以下の構造で表される部分であり、
【化5】

Pは、以下の部分(P1)〜(P4)のいずれかを包含することができ
【化6】

Qは、以下の部分(Q1)〜(Q4)のいずれかを包含することができる。
【化7】

は、直鎖又は分枝鎖の脂肪族アルキレン基C2nであることができ、nは、2〜12の間の値を有する整数であることができ、たとえば、エチレン、プロピレン、ブチレン、アミレン(ペンチレン)、ヘキシレン、ヘプチレン、オクチレン、ノニレン、デシレン、ウンデシレン、又はドデシレン基、或いは、たとえば、パラ−フェニレンのような芳香族基であることができる。
は、水素、メチル(CH)、イソプロピル(i−C)、sec−ブチル(sec−C)、イソ−ブチル(i−C)又はベンジル(C−CH)であることができる。
は、メチレン(CH)、メチルメチレン(CHCH)、n−プロピレン(CHCHCH)、イソ−プロピレン(CHCHCH)、エチルメチレン(CHCHCH)、直鎖又は分枝鎖のブチレン、たとえば、n−ブチレン(CHCHCHCH)、イソ−ブチレン[CHCH(CH)CH]、及びsec−ブチレン[CH(CHCH)CH]、又はn−アミレン(CHCHCHCHCH)であることができる。
Xは、直鎖又は分枝鎖の脂肪族アルキレン基C2nであることができ、nは、2〜12の間の値を有する整数であることができ、たとえば、エチレン、プロピレン、ブチレン、アミレン(ペンチレン)、ヘキシレン、ヘプチレン、オクチレン、ノニレン、デシレン、ウンデシレン、又はドデシレン基であることができる。
Yは、直鎖又は分枝鎖の脂肪族アルキレン基、C(エチレン)、C(ブチレン)又はC10(アミレン又はペンチレン)であることができる。
Zは、PEG、ポリ(プロピレングリコール)、ヒアルロン酸又はその誘導体、ポリ(2−ヒドロキシエチルメタクリレート)又はセルロシクスに由来する生体有益性部分であることができ、m及びnは整数である。
【0048】
使用することができるポリ(エステルアミド)の一例には、ジオール−ジアミンとジカルボン酸との間の反応の生成物が挙げられ、その一方の単位は一般式(V)によって示され:
【化8】

式中、Rは、水素、メチル、イソプロピル、sec−ブチル、イソブチル又はベンジルから成る群から選択されることができ、xは2〜12の間の値を有する整数であり、yは、1〜12の間の値を有する整数である。
【0049】
ステントコーティングの最外層は、0より多く〜100質量%の間の上述の生体有益性のポリマー又はそのような生体有益性のポリマーの1より多い混合物を含有することができる。本発明の実施態様の1つでは、使用することができる生体有益性のポリマーは、上述の生体有益性のポリマーのいかなるものも含まない。
【0050】
層の100%未満が生体有益性のポリマーでできていれば、そのほかの代替のポリマーが残りを構成することができる。使用することができる代替ポリマーの例には、ポリ(ブチルメタクリレート)、ポリ(エチルメタクリレート)及びポリ(エチルメタクリレート−co−ブチルメタクリレート)のようなポリアクリレート類、たとえば、ポリ(フッ化ビニリデン)及びポリ(フッ化ビニリデン−co−ヘキサフルオロプロペン)のようなフッ素化ポリマー及び/又はコポリマー、ポリ(ビニルピロリドン)、ポリ(ヒドロキシバレレート)、ポリ(L−乳酸)、ポリカプロラクトン、ポリ(ラクチド−co−グリコリド)、ポリ(ヒドロキシブチレート)、ポリ(ヒドロキシブチレート−co−バレレート)、ポリジオキサノン、ポリオルソエステル、ポリ無水物、ポリ(グリコール酸)、ポリ(D,L−乳酸)、ポリ(グリコール酸−co−炭酸トリメチレン)、ポリホスホエステル、ポリホスホエステルウレタン、ポリ(アミノ酸)、シアノアクリレート、ポリ(炭酸トリメチレン)、ポリ(イミノカーボネート)、コポリ(エーテル−エステル)、ポリアルキレンオキサレート、ポリホスファゼン、ポリウレタン類、シリコー類、ポリエステル類、ポリオレフィン類、ポリイソブチレンとエチレン−αオレフィンのコポリマー、ビニルハロゲン化物ポリマー及びコポリマー(たとえば、ポリ塩化ビニル)、ポリビニルエーテル類(たとえば、ポリビニルメチルエーテル)、ポリ塩化ビニリデン、ポリアクリロニトリル、ポリビニルケトン、ポリビニル芳香族(たとえば、ポリスチレン)、ポリビニルエステル(たとえば、ポリ酢酸ビニル)、ビニルモノマー同士のコポリマー及びオレフィンとのコポリマー、たとえば、ポリ(エチレン−co−ビニルアルコール)(EVAL)、エチレン−メチルメタクリレートコポリマー、アクリロニトリル−スチレンコポリマー、ABS樹脂及びエチレン−酢酸ビニルコポリマー;ポリアミド(たとえば、ナイロン66及びポリカプロラクタム)、アルキド樹脂、ポリカーボネート、ポリオキシメチレン、ポリイミド、ポリエーテル、エポキシ樹脂、ポリウレタン、レーヨン、レーヨン−トリアセテート、セルロース、酢酸セルロース、酪酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、セロファン、硝酸セルロース、プロピオン酸セルロース、セルロースエーテル及びカルボキシメチルセルロースが挙げられる。実施態様の1つでは、ステントコーティングは、これら追加のポリマーのいかなるものも含まなくてもよい。
【0051】
リザーバ層で使用することができる治療物質には、患者にとって治療効果又は予防効果を発揮することが可能であるいかなる物質も挙げることができる。治療物質には小分子物質、ペプチド、タンパク質、オリゴヌクレオチドなどが挙げられてもよい。治療物質は、たとえば、血管平滑筋細胞の活性を抑制するように設計すればよい。平滑筋細胞の異常な又は不適当な移動及び/又は増殖を抑制して再狭窄を抑制するように指向することができる。
【0052】
使用することができる治療物質の例には、アクチノマイシンD又はその誘導体及び類縁体(ウィスコンシン州、53233、ミルウォーキー、ウエストセントポール通り1001番地のシグマ−アルドリッチにより製造される;又はメルクから入手可能なコスメゲン)のような増殖抑制物質が挙げられる。アクチノマイシンDの同義語には、ダクチノマイシン、アクチノマイシンIV、アクチノマイシンI、アクチノマイシンX、及びアクチノマイシンCが挙げられる。活性剤は、抗腫瘍物質、抗炎症性物質、抗血小板物質、抗凝固性物質、抗フィブリン性物質、抗血栓性物質、細胞分裂抑制性物質、抗生物質、抗アレルギー性物質、及び抗酸化物質の種類に分類される。そのような抗腫瘍物質及び/又は細胞分裂抑制性物質の例には、パクリタキセル(たとえば、コネチカット州、スタムフォードのブリストル・マイヤーズ・スクイブによるタキソール(登録商標))、ドセタキセル(たとえば、ドイツ、フランクフルトのアベンティスのタキソテレ(登録商標))、メソトレキセート、アザチオプリン、ビンクリスチン、ビンブラスチン、フルオロウラシル、ドキソルビシン塩酸塩(たとえば、ニュージャージー州、ピーパックのファルマシア&アップジョンのアドリアマイシン(登録商標))、及びマイトマイシン(たとえば、コネチカット州、スタムフォードのブリストル・マイヤーズ・スクイブのムタマイシン(登録商標))が挙げられる。そのような抗血小板物質、抗凝固性物質、抗フィブリン性物質、及び抗血栓性物質の例には、ヘパリンナトリウム、低分子量ヘパリン、ヘパリン様物質、ヒルジン、アルガトロバン、フォルスコリン、バピプロスト、プロスタサイクリン及びプロスタサイクリン類縁体、デキストラン、D−phe−pro−arg−クロロメチルケトン(合成抗血栓剤)、ジピリダモール、糖タンパク質IIb/IIIa血小板膜受容体拮抗剤抗体、組換えヒルジン及びアンギオマックス(マサチューセッツ州、ケンブリッジ、バイオゲン社)のようなトロンビン阻害剤が挙げられる。そのような細胞増殖抑制剤又は抗増殖剤の例には、アンギオペプチン、アンギオテンシン変換酵素阻害剤、たとえば、カプトプリル(たとえば、コネチカット州、スタムフォードのブリストル・マイヤーズ・スクイブのカポテン(登録商標)及びカポジド(登録商標))、シラザプリル又はリシノプリル(たとえば、ニュージャージー州、ホワイトハウスステーションのメルク社のプリニビル(登録商標)及びプリンジド(登録商標));カルシウムチャンネル遮断剤(たとえば、ニフェジピン)、コルヒチン、線維芽細胞増殖因子(FGF)拮抗剤、魚油(オメガ3−脂肪酸)、ヒスタミン拮抗剤、ロバスタチン(HMG−CoA還元酵素の阻害剤、コレステロール低下剤、ニュージャージー州、ホワイトハウスステーションのメルク社の商品名、メバコール(登録商標))、モノクローナル抗体(たとえば、血小板由来増殖因子(PDGF)受容体に特異的なもの)、ニトロプルシド、ホスホジエステラーゼ阻害剤、プロスタグランジン阻害剤、スラミン、セロトニン遮断剤、ステロイド、チオプロテアーゼ阻害剤、トリアゾロピリミジン(PDGF拮抗剤)及び酸化窒素が挙げられる。抗アレルギー剤の例には、ペミロラストカリウムである。適当であってもよいそのほかの治療物質又は治療作用剤には、α−インターフェロン、遺伝子操作を施した上皮細胞、タクロリムス、デキサメタゾン、並びに、ラパマイシン、及び40−O−(2−ヒドロキシ)エチル−ラパマイシン(ノバルティス社から入手可能なエベロリムスの商標名によって知られる)や40−O−(3−ヒドロキシ)プロピル−ラパマイシンや40−O−[2−(2−ヒドロキシ)エトキシ]エチル−ラパマイシンや40−O−テトラゾール−ラパマイシンのようなその誘導体又機能的類縁体が挙げられる。
【0053】
さらに生物有益性を提供するために、たとえば、最外層に存在する生体有益性のポリマーに生物活性剤を抱合することによって少なくとも1つの追加の生物活性剤を適宜、ステントコーティングの最外層に組み入れることができる。抱合の結果、生物活性剤と生体有益性のポリマーの付加体を形成することができる。次いで、最外層を作製するのに付加体を使用することができる。たとえば、好適な溶媒又は溶媒の混合物に付加体を溶解し、得られた付加体の溶液を上述のようにステントに塗布することができる。
【0054】
追加の生物活性剤には、本発明の実践において治療効果又は予防効果を発揮することが可能であるいかなる物質も含めることができる。PEG又はポリアクティブブロックコポリマーとの抱合に使用することができる薬剤の一部の例には、ポリアルギニン(たとえば、R7)又はc−RGDのようなペプチド、アンチセンス剤(たとえば、レンステン−NG)、ラパマイシン及びエベロリムス、40−O−(3−ヒドロキシ)プロピル−ラパマイシンや40−O−[2−(2−ヒドロキシ)エトキシ]エチル−ラパマイシンや40−O−テトラゾール−ラパマイシンのようなその構造的誘導体又機能的類縁体、並びにジアゼニウムジオレートのような一酸化窒素(NO)源である分子が挙げられる。
【0055】
PEG又はポリアクティブブロックコポリマーに追加の生物活性剤を抱合させる方法の1つは、PEG又はコポリマーの反応性官能基を利用する,PEG又はポリアクティブブロックコポリマーのポリマー−類似変換の反応による。たとえば、抱合にはPEG又はPEGブロックの遊離のヒドロキシルを用いる。PEG又はポリアクティブブロックコポリマーに抱合することができる追加の生物活性剤の例は、ジアゼニウムジオレート型の一酸化窒素供与体であり、抱合の過程は以下に記載するように実施することができる。
【0056】
ジアゼニウムジオレート型の一酸化窒素供与体は、一酸化窒素の求核性アミンとの付加体である。「NONOエート」としても知られるジアゼニウムジオレートは、生体適合性が高く、自然にNOを放出する,やや酸性の媒体である。使用することができるジアゼニウムジオレートの一例は、スペルミンジアゼニウムジオレート(SDD)である。
【0057】
1,3−プロパンジアミン、N−{4−[1−(3−アミノプロピル)−2−ヒドロキシ−2−ニトロソヒドラジノ]ブチル}−ジアゼン−1−イウム−1,2−ジオレートとしての化学名によっても知られるSDDは、式NH−(CH−N[N(O)−(N−OH)]−(CH−NH−(CH−NHを有する脂肪族NONOエートである。SDDは、オレゴン州、ユージンのモレキュラープローブ社から入手可能である。或いは、そのほかのジアゼニウムジオレート型のNO供与体を使用することができる。PEG−PCL−PEGのPEGブロックに抱合することができる別のジアゼニウムジオレート型のNO供与体の一部の例には、式CH−N−(CH−N(CH)−N(O)=N-O(MAHMA−NO)を有する1−{N−メチル−N−[6−(N−メチルアンモニオ)ヘキシル]アミノ)ジアゼン−1−イウム−1,2−ジオレート、及び式O_[N(CHCHNH)CHCH]=N-O(DETA−NO)MAHMA−NOを有するZ−1−[N−(2−アミノエチル)−N−2−アンモニオエチル)アミノ]ジアゼン−1−イウム−1,2−ジオレートが挙げられ、DETA−NOは、ミシガン州、アナーバーのケイマンケミカル社から入手することができる。
【0058】
SDDをPEGに抱合させるには、トシル化(塩化トシルによる処理)又は別の方法では、トレシル化(塩化トレシルによる処理)によって、事前にPEGを誘導体化することができる。塩化トシルは、トルエンの誘導体、式CH−C−SOCl(TsCl)を有する塩化パラトルエンスルホニルである。トシル化の過程には、PEG分子の末端ヒドロキシルにおける攻撃が含まれ、反応(VI)によって説明することができる:
【化9】

【0059】
或いは、塩化トレシル(塩化2,2,2−トリフルオロエタンスルホニル)を用いてPEGを誘導体化することができる。トレシル化の過程には、PEG分子の末端ヒドロキシルにおける攻撃が含まれ、反応(VII)によって説明することができる:
【化10】

【0060】
次に、SDDを抱合させることによってトシル化された又はトレシル化されたPEGを修飾することができる。2つの第1級アミノ基及び1つの第2級アミノ基の存在によって、アミノ基のアルキル化を介してトシル化された又はトレシル化されたPEGにSDDは容易に抱合される。抱合の考えられる過程の1つを反応(VIII)としてトシル化されたPEGについて示すことができる。
【化11】

【0061】
ポリアクティブブロックコポリマーは2つの末端PEGブロックを含む(式PEG−PBT−PEGから理解できるように)ので、ポリアクティブブロックコポリマーに存在する一方のPEG又は両方のPEGにSDDを抱合させることによって、反応(VI〜VIII)により説明されたものに類似する過程を用いて、ポリアクティブブロックコポリマーを修飾することもできる。PBT−PEG−PBTコポリマーのPBTに存在する末端カルボキシル基を用いて、SDDをPBT−PEG−PBTブロックコポリマーに抱合することもできる。PBT−PEG−PBTブロックコポリマーの一方又は両方のPBTブロックを用いてSDDを抱合することができる。当業者は、どの条件下で上述のPEG、ポリアクティブ又はPBT−PEG−PBTブロックコポリマーにSDDを抱合させる2段階過程を実施することができるかを決定することができる。
【0062】
得られるポリマー付加体は、以下のように概略的に記載することができる。
(a)Dz−PEG−PBT−PEG(ポリアクティブの一方のPEGブロックを修飾する);
(b)Dz−PEG−PBT−PEG−Dz(ポリアクティブの2つのPEGブロックを修飾する);
(c)PEG−Dz(PEGを修飾する);
(d)Dz−PBT−PEG−PBT(PBT−PEG−PBTコポリマーの一方のPBTブロックを修飾する);及び
(e)Dz−PBT−PEG−PBT−Dz(PBT−PEG−PBTコポリマーの2つのPBTブロックを修飾する)、その際、DzはSDDに由来する。
【0063】
たとえば、バルーン拡張可能な又は自己拡張可能なステントのようなステントを参照して、本発明のコーティング及び方法を説明してきた。コーティングの使用はステントに限定されず、しかしながら、コーティングは種々のそのほかの医療用具と共に使用することができる。本発明の実施態様と併せて使用することができる埋め込み型医療用具の例には、ステント移植片、移植片(たとえば、大動脈移植片)、人工心臓弁、脳脊髄液シャント、ペースメーカーの電極、冠状分路シャント及び心内膜のリード(たとえば、ガイダント社より入手可能なフィネリン及びエンドタック)が挙げられる。用具の下に置く構造は、事実上、いかなる設計のものでもよい。用具は、たとえば、コバルトクロム合金(エルギロイ)、ステンレス鋼(316L)、「MP35N」、「MP20N」、エラスチナイト(ニチノール)、タンタル、タンタル系合金、ニッケルチタン合金、白金イリジウム合金のような白金系合金、イリジウム、金、マグネシウム、チタン、チタン系合金、ジルコニウム系合金又はそれらの組み合わせのような、しかし、これらに限定されない金属材料又は合金から作製することができる。生体吸収性又は生体安定性のポリマーから作製される用具も本発明の実施態様と共に使用することができる。
【0064】
「MP35N」及び「MP20N」は、ペンシルベニア州、ジェンキンタウンのスタンダードプレススチール社から入手可能なコバルト、ニッケル、クロム及びモリブデンの合金の商標名であり、「MP35N」は、35%のコバルト、35%のニッケル、20%のクロム及び10%のモリブデンから成り、「MP20N」は、50%のコバルト、20%のニッケル、20%のクロム及び10%のモリブデンから成る。
【実施例】
【0065】
以下の実施例を提供して本発明の実施態様をさらに説明する。
(実施例1)
以下の成分:
(a)約2.0質量%のポリ(ブチルメタクリレート)(PBMA)及び
(b)残り、質量比約7:3のアセトン及びシクロヘキサノンを含む溶媒混合物
を混合することによって第1の組成物を調製した。
【0066】
スプレーすることにより、未処理の18mmビジョンステント(ガイダント社から入手可能)の表面に第1の組成物を塗布し、乾燥して下塗り層を形成した。0.014のファンノズルを有し、約0.2気圧(約3psi)のフィード圧及び約1.3気圧(約20psi)の噴霧圧のスプレーコーターを用いた。約50℃にて約1時間、下塗り層を加熱乾燥し、約80μgのPBMAを含有する下塗り層を得た。
【0067】
以下の成分:
(a)約2.0質量%のソレフ21508、
(b)約1.0質量%のエベロリムス及び
(c)残り、質量比約7:3のアセトン及びシクロヘキサノンを含む溶媒混合物
を混合することによって第2の組成物を調製した。
【0068】
第2の組成物は、約300μgのソレフ及び約200μgのエベロリムスを含有した。下塗り層を塗布するのに用いたのと同様のスプレー技法及び器具を用いて、乾燥した下塗り層の上に第2の組成物を塗布してリザーバ層を形成し、その後、約50℃にて約2時間、加熱乾燥した。
【0069】
以下の成分:
(a)約45モル%のPBT単位及び約55モル%のPEG単位を含有し、PEG単位の分子量が約300ダルトンである、約2.0質量%のポリアクティブ、
(b)残り、溶媒混合物、質量比約4:1の1,1,2−トリクロロエタン及びクロロホルムを含有する混合物
を混合することによって第3の組成物を調製した。
【0070】
下塗り層及びリザーバ層を塗布するのに用いたのと同様のスプレー技法及び器具を用いて、乾燥したリザーバ層の上に第3の組成物を塗布して上塗り層を形成し、その後、約50℃にて約2時間、加熱乾燥して約250μgのポリアクティブを含有する乾燥上塗り層を得た。
【0071】
以下の手順に従って、コートしたステントをシミュレーション試験に供した。ステントをカテーテル上に装着し、蛇行性の経路を誘導し、次いで、約3x10ミリメータのおよそのサイズを有するポリ(ビニルアルコール)障害に配置した。蛇行性の経路及び障害は約37℃の脱イオン水を含有した。ステントを配置するために、約16気圧の圧力を約1分間バルーンに印加し、次いでバルーンをしぼませ、カテーテルを引き出した。カテーテルを引き出した後、1分当たり約50ミリリットルの割合で約1時間、蛇行性の経路及び障害に脱イオン水をポンプで流した。水は約37℃で維持された。
【0072】
体外のシミュレーション試験を受けた、コートしたステントの全体的な像を図1A、1B、1C、2A、2B及び2Cの顕微鏡写真によって示す。使用シミュレーション試験の後、ステントコーティングの質は良好であった。外部表面領域(図1A、1B及び1C)又は内部表面領域(図2A、2B及び2C)におけるコーティングの損傷は認められなかった。
【0073】
(実施例2)
実施例1で記載したように18mmビジョンステント上に下塗り層を形成することができる。
以下の成分:
(a)約0.5質量%〜約2.5質量%の間の、たとえば、約2.0質量%のエベロリムス、及び
(b)残り、質量比約2:3のアセトン及びキシレンを含む溶媒
を混合することによって第1の組成物を調製することができる。
【0074】
第1の組成物は、約300μgのエベロリムスを含有することができる。下塗り層を塗布するのに用いたのと同様のスプレー技法及び器具を用いて、乾燥した下塗り層の上に組成物を塗布してリザーバ層を形成し、その後、約50℃にて約1時間、加熱乾燥することができる。
【0075】
以下の成分:
(a)約1.0質量%〜約15質量%の間の、たとえば、約2.0質量%のソレフ21508及び
(b)残り、質量比約7:3のアセトン及びシクロヘキサノンを含む溶媒混合物
を混合することによって第2の組成物を調製することができる。
【0076】
下塗り層を塗布するのに用いたのと同様のスプレー技法及び器具を用いて、乾燥したリザーバ層の上に第2の組成物を塗布して上塗り層を形成し、その後、約50℃にて約2時間、加熱乾燥して約300μgのソレフを含有する乾燥上塗り層を得ることができる。
【0077】
以下の成分:
(a)約1.0質量%〜約15質量%の間の、たとえば、約2.0質量%のポリ(エステルアミド)及び
(b)残り、エタノール
を混合することによって第3の組成物を調製することができる。
【0078】
上述の技法を用いて乾燥上塗り層上に第3の組成物を塗布し、その後、約50℃にて約2時間、加熱乾燥して約150μgのポリ(エステルアミド)を含有する乾燥仕上げ塗り層を得ることができる。
【0079】
本発明の特定の実施態様を示し、説明してきたが、さらに広い側面において本発明から逸脱することなく、変更及び修正を行うことができることは当業者に明らかであろう。従って、添付のクレームは、本発明の真の精神及び範囲に入るものとしてそのような変更及び修正すべてをその範囲内に包含するものである。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】図1A、1B及び1Cは、生体外のシミュレーション試験後の、本発明の実施態様に従ってコートされたステントの外側表面の全体的な像を明示する顕微鏡写真を示す。
【図2】図2A、2B及び2Cは、生体外のシミュレーション試験後の、本発明の実施態様に従ってコートされたステントの内側表面の全体的な像を明示する顕微鏡写真を示す。
【図1A】

【図1B】

【図1C】

【図2A】

【図2B】

【図2C】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
医療用物品であって、埋め込み型医療用具の少なくとも一部に配置されるコーティングを含み、前記コーティングが
(a)フッ素化ポリマー、及び
(b)生体有益性のポリマーを含む医療用物品。
【請求項2】
前記埋め込み型医療用具がステントである、請求項1の医療用物品。
【請求項3】
前記フッ素化ポリマーが
(a)フッ素化オレフィン又はその混合物の重合生成物、
(b)フッ素化環状エステルの重合生成物、
(c)不斉環状構造を持つ主鎖を有するフッ素含有環状ポリマー又は
(d)パーフルオロ−2,2−ジメチル−1,3−ジオキソールのパーフルオロオレフィン又はパーフルオロ(アルキルビニル)エーテルとのコポリマー
を含む、請求項1の医療用物品。
【請求項4】
フッ素化オレフィンの前記重合生成物が、ポリ(フッ化ビニリデン−co−ヘキサフルオロプロペン)、ポリ(テトラフルオロエチレン)、フッ素化ポリ(エチレン−co−プロピレン)、ポリ(ヘキサフルオロプロペン)、ポリ(クロロトリフルオロエチレン)、ポリ(フッ化ビニリデン)、ポリ(フッ化ビニリデン−co−テトラフルオロエチレン)、ポリ(テトラフルオロエチレン−co−ヘキサフルオロプロペン)、ポリ(テトラフルオロエチレン−co−ビニルアルコール)、ポリ(テトラフルオロエチレン−co−酢酸ビニル)、ポリ(テトラフルオロエチレン−co−プロペン)、ポリ(ヘキサフルオロプロペン−co−ビニルアルコール)、ポリ(エチレン−co−テトラフルオロエチレン)、ポリ(エチレン−co−ヘキサフルオロプロペン)及びポリ(フッ化ビニリデン−co−クロロトリフルオロエチレン)から成る群から選択される、請求項3の医療用物品。
【請求項5】
フッ化環状エステルの前記重合生成物が、ポリ(パーハロ−2,2−ジメチル−1,3−ジオキソール−co−パーフルオロ−2−メチレン−メチル−1,3−ジオキソラン)である、請求項3の医療用物品。
【請求項6】
前記フッ素含有環状ポリマーが、環状重合したパーフルオロアリルビニルエーテル及び/又はパーフルオロブテニルビニルエーテルの繰り返し単位を持つポリマーから成る群から選択される、請求項3の医療用物品。
【請求項7】
前記生体有益性のポリマーが、ポリ(エチレングリコール)、ポリ(エチレングリコール)−ブロック−ポリ(ブチレンテレフタレート)−ブロック−ポリ(エチレングリコール)、ポリ(ブチレンテレフタレート)−ブロック−ポリ(エチレングリコール)−ブロック−ポリ(ブチレンテレフタレート)、ヒアルロン酸、ヒアルロン酸の誘導体、ポリ(エチレンオキシド−co−プロピレンオキシド)、ホスホリルコリン、ポリアスピリン及びポリ(エステルアミド)から成る群から選択される、請求項1の医療用物品。
【請求項8】
前記ポリ(エステルアミド)が、少なくとも1つのエステル結合及び少なくとも1つのアミド結合を有するポリマーを含む、請求項7の医療用物品。
【請求項9】
前記ポリ(エステルアミド)が、一般式─[M─P]─[M─Q]─を有するポリマーを含み、式中、Mが以下の構造によって表される部分であり、
【化1】

Pが(P1)〜(P4)から成る群から選択される部分であり、
【化2】

Qが、(Q1)〜(Q4)から成る群から選択される部分であり、
【化3】

式中、
は、直鎖又は分枝鎖の脂肪族アルキレン基C2r(rは、2〜12の間の値を有する整数である)及び芳香族基から成る群から選択され、
は、水素、メチル、イソプロピル、sec−ブチル、イソブチル及びベンジルから成る群から選択され、
は、メチレン、メチルメチレン、n−プロピレン、イソプロピレン、エチルメチレン、直鎖又は分枝鎖のブチレン及びn−アミレンから成る群から選択され、
Xは、直鎖又は分枝鎖の直鎖又は分枝鎖の脂肪族アルキレン基C2xであり、その際、xは、2〜12の間の整数であり、
Yは、直鎖又は分枝鎖の脂肪族アルキレン基、C2yであり、その際、yは2、4又は5であり、
Zは、PEG、ポリ(プロピレングリコール)、ヒアルロン酸もしくはその誘導体、ポリ(2−ヒドロキシエチルメタクリレート)又はセルロシクスに由来する生体有益性部分であり、
m及びnは整数である、請求項7の医療用物品。
【請求項10】
前記ポリ(エステルアミド)がジオール−ジアミンとジカルボン酸との反応生成物である、請求項7の医療用物品。
【請求項11】
ポリ(エステルアミド)が、以下の式を有する単位を含むポリマーであり、
【化4】

式中、Rは、水素、メチル、イソプロピル、sec−ブチル、イソブチル又はベンジルから成る群から選択され、xは2〜12の間の値を有する整数であり、yは、1〜12の間の値を有する整数である、請求項7の医療用物品。
【請求項12】
前記生体有益性のポリマーが生物活性剤を含むポリマー付加体である、請求項1の医療用物品。
【請求項13】
前記生物活性剤が、ペプチド、アンチセンス剤、ラパマイシン及びその構造的誘導体又は機能的類縁体、並びに一酸化窒素源である分子を含む、請求項12の医療用物品。
【請求項14】
医療用物品の製造方法であって、
(a)埋め込み型医療用具の少なくとも一部の上にフッ素化ポリマーを溶着させて第1のポリマー層を形成すること、及び
(b)前記第1のポリマー層の少なくとも一部の上に生体有益性のポリマーを溶着させて第2のポリマー層を形成すること、
を含む方法。
【請求項15】
前記埋め込み型医療用具はステントである、請求項14の方法。
【請求項16】
前記フッ素化ポリマーが
(a)フッ素化オレフィン又はその混合物の重合生成物、
(b)フッ素化環状エステルの重合生成物、
(c)不斉環状構造を持つ主鎖を有するフッ素含有環状ポリマー又は
(d)パーフルオロ−2,2−ジメチル−1,3−ジオキソールのパーフルオロオレフィン又はパーフルオロ(アルキルビニル)エーテルとのコポリマー
を含む、請求項14の方法。
【請求項17】
フッ素化オレフィンの前記重合生成物が、ポリ(フッ化ビニリデン−co−ヘキサフルオロプロペン)、ポリ(テトラフルオロエチレン)、フッ素化ポリ(エチレン−co−プロピレン)、ポリ(ヘキサフルオロプロペン)、ポリ(クロロトリフルオロエチレン)、ポリ(フッ化ビニリデン)、ポリ(フッ化ビニリデン−co−テトラフルオロエチレン)、ポリ(テトラフルオロエチレン−co−ヘキサフルオロプロペン)、ポリ(テトラフルオロエチレン−co−ビニルアルコール)、ポリ(テトラフルオロエチレン−co−酢酸ビニル)、ポリ(テトラフルオロエチレン−co−プロペン)、ポリ(ヘキサフルオロプロペン−co−ビニルアルコール)、ポリ(エチレン−co−テトラフルオロエチレン)、ポリ(エチレン−co−ヘキサフルオロプロペン)及びポリ(フッ化ビニリデン−co−クロロトリフルオロエチレン)から成る群から選択される、請求項16の方法。
【請求項18】
フッ素化環状エステルの前記重合生成物が、ポリ(パーハロ−2,2−ジメチル−1,3−ジオキソール−co−パーフルオロ−2−メチレン−メチル−1,3−ジオキソラン)である、請求項16の方法。
【請求項19】
前記フッ素含有環状ポリマーが、環状重合したパーフルオロアリルビニルエーテル及び/又はパーフルオロブテニルビニルエーテルの繰り返し単位を持つポリマーから成る群から選択される、請求項16の方法。
【請求項20】
前記生体有益性のポリマーが、ポリ(エチレングリコール)、ポリ(エチレングリコール)−ブロック−ポリ(ブチレンテレフタレート)−ブロック−ポリ(エチレングリコール)、ポリ(ブチレンテレフタレート)−ブロック−ポリ(エチレングリコール)−ブロック−ポリ(ブチレンテレフタレート)、ヒアルロン酸、ヒアルロン酸の誘導体、ポリ(エチレンオキシド−co−プロピレンオキシド)、ホスホリルコリン、ポリアスピリン及びポリ(エステルアミド)から成る群から選択される、請求項14の方法。
【請求項21】
ポリ(エステルアミド)が少なくとも1つのエステル結合及び少なくとも1つのアミド結合の双方を有するポリマーを含む、請求項20の方法。
【請求項22】
前記ポリ(エステルアミド)が一般式─[M─P]─[M─Q]─を有するポリマーを含み、式中、Mが、以下の構造によって表される部分であり、
【化5】

Pが、(P1)〜(P4)から成る群から選択される部分であり、
【化6】

Qが、(Q1)〜(Q4)から成る群から選択される部分であり、
【化7】

式中、
は、直鎖又は分枝鎖の脂肪族アルキレン基C2r及び芳香族基から成る群から選択され、ここでrは、2〜12の間の値を有する整数であり、
は、水素、メチル、イソプロピル、sec−ブチル、イソ−ブチル及びベンジルから成る群から選択され、
は、メチレン、メチルメチレン、n−プロピレン、イソ−プロピレン、エチルメチレン、直鎖又は分枝鎖のブチレン及びn−アミレンから成る群から選択され、
Xは、直鎖又は分枝鎖の直鎖又は分枝鎖の脂肪族アルキレン基C2xであり、その際、xは、2〜12の間の整数であり、
Yは、直鎖又は分枝鎖の脂肪族アルキレン基、C2yであり、その際、yは2、4又は5であり、
Zは、PEG、ポリ(プロピレングリコール)、ヒアルロン酸又はその誘導体、ポリ(2−ヒドロキシエチルメタクリレート)又はセルロシクスに由来する生体有益性部分であり、
m及びnは整数である、請求項20の方法。
【請求項23】
前記ポリ(エステルアミド)が、ジオール−ジアミンとジカルボン酸の反応生成物である、請求項20の方法。
【請求項24】
前記ポリ(エステルアミド)が以下の式であって、
【化8】

式中、Rは、水素、メチル、イソプロピル、sec−ブチル、イソブチル又はベンジルから成る群から選択され、xは2〜12の間の値を有する整数であり、yは、1〜12の間の値を有する整数である)を有する単位を含むポリマーである、請求項20の方法。
【請求項25】
さらに前記生体有益性のポリマーに生物活性剤を抱合させることを含む、請求項14の方法。
【請求項26】
前記生物活性剤が、ペプチド、アンチセンス剤、ラパマイシン及びその構造的誘導体又は機能的類縁体、並びに一酸化窒素源である分子を含む、請求項25の方法。

【公表番号】特表2007−515208(P2007−515208A)
【公表日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−541294(P2006−541294)
【出願日】平成16年11月15日(2004.11.15)
【国際出願番号】PCT/US2004/038135
【国際公開番号】WO2005/051453
【国際公開日】平成17年6月9日(2005.6.9)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(504183388)アドヴァンスド カーディオヴァスキュラー システムズ, インコーポレイテッド (40)
【Fターム(参考)】