説明

フライアッシュの処理方法

【課題】モルタルおよびコンクリートの製造用の改良されたフライアッシュの処理方法を提供する。
【解決手段】本発明は、第一工程において、ポルトランドセメントを微小充填材および多分減水剤と混合し該混合物を粉砕することにより得られた高度に反応性の乾燥したセメント混合物にフライアッシュを激しく混合し、第二工程において、そのようにして得られた混合物を振動微粉砕装置中で相互に粉砕して45μmふるい上の保持率が15重量パーセント未満であるという最終製品の粉末度を達成することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート、モルタルおよびセメントとフライアッシュを含む他の混合物の製造に有用なフライアッシュの処理方法に関する。本方法により製造されたフライアッシュはコンクリートの性能を著しく改良し標準ポルトランドセメントを高水準で置換えるので、それにより著しい経済的および環境的利点がもたらされる。
【背景技術】
【0002】
フライアッシュは石炭だき発電所の副産物であり毎年世界中で大量に製造されている。
【0003】
フライアッシュは通常約85%のガラス質無定形成分を含有する。ASTM C 618によれば、フライアッシュは2つのクラス、クラスCおよびクラスFに分類される。クラスFのフライアッシュは典型的にシリカ、アルミナ、および酸化鉄を70重量%より多く含有するが、一方クラスCは典型的に70%〜50%を含有する。クラスFは瀝青炭の燃焼副産物として製造されるが、クラスCのフライアッシュはより高いカルシウム含量を有し亜瀝青炭の燃焼副産物として製造される。
【0004】
1988年には、米国で約8400万トンの石炭灰がフライアッシュ(約60.7%)、ボトムアッシュ(約16.7%)、ボイラースラグ(5.9%)、および排煙脱硫物(16.7%)の形で製造された:例えば、1990年、PittsburghにおけるTysonのセミナー、「石炭燃焼副産物の利用」15頁を参照されたい。毎年発生する約5000万トンのフライアッシュの中から、約10パーセントだけがコンクリートに利用されている(例えば、1987年におけるアメリカ・コンクリート協会委員会226の「フライアッシュのコンクリートにおける利用」ACI 226. 3R-87, ACI J. Proceedings 84:381-409を参照されたい)が、一方残りの部分は大部分埋立地における廃棄物として堆積させられている。
【0005】
総合的な研究により、フライアッシュが高体積のコンクリートは、フライアッシュなしのポルトランドセメントと比較して、より高い長期間強度増加、より低い水およびガス透過性、高い塩化物イオン抵抗性、等を示すことが実証された。
【0006】
同時に、フライアッシュが高体積のコンクリートは、0〜28日の期間にわたる非常に長い硬化時間および非常に遅い強度増加という著しい欠点を有するので、ポルトランドセメントの置換に使用されるフライアッシュの割合は平均15〜20%に減少している。
【0007】
フライアッシュが高体積のコンクリートの性能改良に向けて沢山の努力がなされている:例えば、MalhotraのConcrete International J.,21巻、5号、1999年5月号、61〜66頁を参照されたい。Malhotraによれば、結合材率(セメントおよび微小充填材)を著しく増加させ混合水の量を著しく減少させることによりかかるコンクリートの強度増加を改良することが出来たが、かかるやり方はコンクリート混合物の容認できる軟度を維持するため減水剤の用量増加を必要とし、それはコンクリートの価格を激しく増加させる。
【0008】
約11ミクロンの大きさのフライアッシュ粒子の量を増加させるフライアッシュの粉砕、および酸化カルシウムの同時導入によりポゾラン活性を改良するための、フライアッシュの粉砕に関連する多数の方法が開発されている:米国特許第6,038,987号、5,714,002号、5,714,003号、5,383,521号、および5,121,795号を参照されたい。上述のすべての公知方法は、コンクリート成分としてのフライアッシュ性能を著しく改良することが出来なかったし、又ポゾラン添加剤の価格を大幅に増加させる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、モルタルおよびコンクリートの製造用フライアッシュの処理方法に関し、第一工程において、ポルトランドセメントを微小充填材および多分減水剤と混合し該混合物を粉砕することにより得られた高度に反応性の乾燥したセメント混合物にフライアッシュを激しく混合し、第二工程において、そのようにして得られた混合物を振動微粉砕装置中で相互に粉砕して45μmふるい上の保持率が15重量パーセント未満であるという最終製品の粉末度を達成することを特徴とする。
【0010】
好ましい態様によれば、前記微粉砕装置は、振幅が2〜30mmであり振動数が800〜2000rpmである振動サイクルを有する。
【0011】
かくして本発明は、第一に、ポルトランドセメントを微小充填材および多分減水剤と充分混合することにより得られた高度に反応性の乾燥したセメント混合物にフライアッシュを激しく混合し、第二に、該混合物を振動微粉砕装置中で相互に粉砕する、モルタルおよびコンクリートの製造に有用なフライアッシュの処理方法に関する。
【発明の効果】
【0012】
振幅が2〜30mmであり振動数が800〜2000rpmである振動サイクルを有する微粉砕装置中でフライアッシュを高度に反応性のセメント混合物と相互に粉砕することにより、いくつかの効果がもたらされる。
【0013】
該効果は第一に、最終製品の粉末度が増加し、フライアッシュの平均粒径が減少し、従って45μmふるい上に保持されるフライアッシュの量が15重量パーセント未満になるということであり、第二に、フライアッシュ粒子表面の無定形化が更に起こるということであり、そして第三に、高度に反応性のセメント混合物からの珪酸三および二カルシウムがフライアッシュ粒子の表面上に均質的に分配されるということである。これらの現象は、水酸化カルシウムとの反応に対するポゾラン活性を改良し、更に、処理されたフライアッシュ特有の水硬性活性をも創り出す。
【0014】
本方法の他の利点は、該粉砕処理が窒素酸化物の放出を減少させるのに使用される尿素処理石炭から生成するフライアッシュの表面に捕えられているアンモニアを放出すると思われることである。フライアッシュにアンモニアが存在すると、コンクリート又はモルタルに使用するのに適さなくなる。
【0015】
本発明のこの利点は、フライアッシュの提案された処理がボイラー条件および石炭粉砕度と関連するフライアッシュ性能に及ぼすボイラー条件の影響を最小にするということである。
【0016】
〔発明の詳細な説明〕
前述の高度に反応性の乾燥したセメント混合物とは、欧州特許明細書EP 0696262号および米国特許5,804,175に説明された方法により得られる種類のセメント混合物、またはEP 0696262および米国特許第5,804,175号に列挙された圧縮強さに相当する圧縮強さを得るように対応する方法に従って処理されたセメント混合物を意味する。
【0017】
好ましい一態様によれば、前記相互粉砕中、減水剤を約0.1〜0.3重量パーセントの量粉末形状で導入する。
【0018】
他の好ましい態様によれば、該フライアッシュ・セメント混合物中該混合物の全重量の約20〜約70重量パーセントのセメントを前記フライアッシュで置換える。
【0019】
欧州特許明細書EP 0696262号および米国特許第5,804,175号は、支圧強度が高く、含水量が減少して、機械的強度および密度が高く、そして強度増加の速い、ペースト、モルタル、コンクリートおよび他のセメントに基く物質を製造するのに使用することが出来るセメントの製造方法を説明している。この方法は、第一成分が二酸化珪素を含む微小充填材であり、第二成分が減水剤の形のポリマーである二つの成分の少なくとも一つの成分とセメントとの混合物の機械的・化学的処理を含んでいる。該セメントおよび第一および(または)第二成分は、第一段階において乾燥状態で混合され、それにより第一および(または)第二成分の粒子がセメント粒子上に吸着される。第一段階で得られた混合物は第二段階において振動粉砕媒体を有する粉砕機中で処理され、そこで前記混合物の粒子は多数の衝撃インパルスを受け、それらが次々と急速に方向を変え、それにより表面エネルギーおよび化学反応性におけるかなりの増加という形でセメント粒子表面性能の改良がもたらされる。第二段階における処理の継続時間は、一辺の長さが20mmのセメントペースト立方体が振動下に充分圧縮され密閉条件下+20度Cで硬化されて少なくとも60MPaに等しい一日圧縮強さを得るのに充分である。
【0020】
ここに欧州特許第0696262号を本出願に挿入する。
【0021】
好ましい態様によれば、フライアッシュおよび該高度に反応性のセメント混合物の混合物は約99〜約90重量パーセントのフライアッシュを含有する。
【0022】
更に本発明は、第一に上記方法により処理されたフライアッシュを製造し、そして第二に前記の混合されたセメントを砂および(または)それより大きな寸法の骨材および水と混合し、そして第三に造形エレメントまたは構造物を注型し該対象物を硬化する諸工程からなることを特徴とする、造形コンクリートエレメントまたは構造物の製造に有用なコンクリート混合物の製造方法に関する。
【0023】
この点で、該フライアッシュ・セメント混合物中該混合物の全重量の約20〜約70重量パーセントのセメントを前記フライアッシュで置換えることが好ましい。
【0024】
本発明を以下において、部分的に表との関連で、より詳細に説明するが、表1および2は夫々、基準としてポルトランドセメントを用いたモルタル、および20および40重量パーセントのポルトランドセメントを本方法により処理されたクラスFおよびクラスCのフライアッシュで置換したモルタルの強度増加を示している。
【0025】
前記の表は、フライアッシュをモルタルの他の成分と伝統的な方法で混合するだけで導入してポルトランドセメントを同様な割合で置換したモルタルに対するデータを含んでいる。試験はASTM C-109, ASTM C-311およびASTM C-192に従って行った。
【0026】
得られた結果によれば、ポルトランドセメントをクラスFのフライアッシュで20および40%置換して製造したモルタルは、従来の混合物と比較して、初期でも長期でも、著しい強度増加を示した。20%置換したモルタルは、硬化後約3日で純粋なポルトランドセメントの強度水準に到達し、硬化28日後には約11%高い強度を示している。40%置換したモルタルは、硬化28日後には純粋なポルトランドセメントモルタルの強度に殆んど到達した。
【0027】
本方法により処理したクラスCのフライアッシュを用いて製造したモルタルは、同様な強度増加の改良傾向を示した。ポルトランドセメントを20%置換したモルタルの強度は、3日後には既に純粋なポルトランドセメントモルタルと比べて優る強度を、そして硬化28日後には約12%高い強度を示した。
【0028】
処理されたフライアッシュおよび基準ポルトランドセメントペーストを含有する結合材の硬化時間の測定は、Gilmore装置を用いて、ASTM C 266に従って行った。データによれば、処理されたフライアッシュを用いたセメントペーストは基準ポルトランドセメントと一致した硬化時間:初期硬化時間2:20〜2:40時間および最終硬化時間3:40〜3:55時間を示すことが分った。
【0029】
振幅が2〜30mmであり振動数が800〜2000rpmである振動サイクルを有する振動微粉砕装置中で高度に反応性のセメント混合物と相互に粉砕されたクラスFおよびクラスCのフライアッシュは、45μmふるい上の保持率が5重量パーセント未満であるという最終製品の粉末度をもたらすことが発見された。これは前記フライアッシュ表面の著しい改良をもたらし、更なる無定形化および高度に反応性のセメント混合物粒子の吸着を生ずる。この改良は、フライアッシュの化学反応性の改良およびフライアッシュ含有複合材料の性能改良をもたらす。
【0030】
第一の態様によれば、前記フライアッシュはクラスFのフライアッシュから本質的に成る。
【0031】
第二の態様によれば、前記フライアッシュはクラスCのフライアッシュから本質的に成る。
【0032】
第三の態様によれば、前記フライアッシュはクラスFおよびクラスCのフライアッシュの混合物から本質的に成る。
【0033】
第四の態様によれば、前記フライアッシュはクラスFのフライアッシュ、クラスCのフライアッシュおよび(又は)亜炭フライアッシュの混合物から本質的に成る。
【0034】
〔実施例〕
下記に説明する実験で以下の材料を使用した。
標準ポルトランドセメントEN-197によるCEM I 42.5またはASTM C 150によるType I、フライアッシュクラスFおよびクラスC。該フライアッシュクラスFおよびクラスCの粉末度は45μmふるい上の保持率が夫々21および19.5重量パーセントであることを特徴とする。
【0035】
前記フライアッシュを乾燥状態で、欧州特許明細書EP 0696262号により製造した99%のポルトランドセメント(PC)および2%のフライアッシュクラスFを含む高度に反応性の乾燥したセメント混合物と混合した。前記成分の混合は280 rpmの回転速度を有するミキサー「Tonimix」(ドイツ製)を用いて3分間行い均質な混合物を得た。フライアッシュおよび高度に反応性のセメント混合物の含量は夫々95重量パーセントおよび5重量パーセントであった。
【0036】
上述の混合物の相互粉砕は、10 mmの振幅および1500 rpmからの振動数を有するHumboldt Palla 20U(ドイツ、Humboldt)振動微粉砕装置の中で行い、45ミクロン部分が約2.5重量パーセントであるという最終製品の粉末度を達成した。
【0037】
試験結果によれば、表1〜2から分るように、本方法により処理されたフライアッシュクラスCおよびFは性能の著しい改良を実証した。これにより、又コンクリートにおけるポルトランドセメントのフライアッシュによる増加した割合の置換により、コンクリートにおけるフライアッシュの利用増加がもたらされる。これは、セメントおよびコンクリート産業の環境面に著しい効果を有するであろう。
【表1】


【表2】

【0038】
ポルトランドクリンカー含量の著しい減少により、かかる混合セメントの実現は、二酸化炭素や他の「温室」ガス放出の量を著しく減少させ(該減少は50%より多いであろう)、又ポルトランドクリンカー製造に必要なエネルギー量を著しく減少させることが出来るであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一工程において、ポルトランドセメントを微小充填材および多分減水剤と混合し該混合物を粉砕することにより得られた高度に反応性の乾燥したセメント混合物にフライアッシュを激しく混合し、第二工程において、そのようにして得られた混合物を振動微粉砕装置中で相互に粉砕して45μmふるい上の保持率が15重量パーセント未満であるという最終製品の粉末度を達成することを特徴とする、モルタルおよびコンクリートの製造用フライアッシュの処理方法。
【請求項2】
前記微粉砕装置が、振幅が2〜30mmであり振動数が800〜2000rpmである振動サイクルを有することを特徴とする、請求項1による方法。
【請求項3】
フライアッシュおよび該高度に反応性のセメント混合物の混合物が約99〜約90重量パーセントのフライアッシュを含有することを特徴とする、請求項1または2による方法。
【請求項4】
前記フライアッシュがクラスFのフライアッシュから本質的に成ることを特徴とする、請求項1,2または3による方法。
【請求項5】
前記フライアッシュがクラスCのフライアッシュから本質的に成ることを特徴とする、請求項1,2または3による方法。
【請求項6】
前記フライアッシュがクラスFおよびクラスCのフライアッシュの混合物から本質的に成ることを特徴とする、請求項1,2または3による方法。
【請求項7】
前記フライアッシュがクラスFのフライアッシュ、クラスCのフライアッシュおよび(又は)亜炭フライアッシュの混合物から本質的に成ることを特徴とする、請求項1,2または3による方法。
【請求項8】
前記相互粉砕中、減水剤を約0.1〜0.3重量パーセントの量粉末形状で導入することを特徴とする、請求項1,2,3,4,5,6または7による方法。
【請求項9】
該フライアッシュ・セメント混合物中該混合物の全重量の約20〜約70重量パーセントのセメントを前記フライアッシュで置換えることを特徴とする、請求項7による混合物の製造方法。
【請求項10】
前記の高度に反応性のセメントが欧州特許明細書EP0696262号に説明された方法により得られることを特徴とする、前記請求項の任意の1項による方法。
【請求項11】
請求項1〜6の任意の1項の工程を含み、そして第二に前記のフライアッシュとセメントの混合物を砂および(または)それより大きな寸法の骨材および水、および多分AE減水剤と混合することを特徴とする、コンクリート構造物およびエレメントの製造用コンクリート混合物の製造方法。

【公開番号】特開2010−254575(P2010−254575A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−161498(P2010−161498)
【出願日】平成22年7月16日(2010.7.16)
【分割の表示】特願2004−549749(P2004−549749)の分割
【原出願日】平成15年6月16日(2003.6.16)
【出願人】(505165044)プロシード エンタープライズ エタブリスマン (5)
【Fターム(参考)】