説明

フライヤー装置

【課題】 フライ製品の製造時間を短くすること、フライ製品に含まれる揚げ油を少なくして食感及び味を良好にすること、更に、均質なフライ製品を製造できるようにすること。
【解決手段】 保持容器17がフライ製品13の原料12を保持している状態で、保持容器17をフライ槽14内に供給し、その原料12をフライ槽14内の揚げ油7に浸漬してフライ製品13を製造し、フライ製品13を保持する保持容器17をフライ槽14から順次排出することができるフライヤー装置11であって、フライ槽14内の保持容器17を下段位置に下降させることによって、保持容器17に保持されている原料12をフライ槽14内の揚げ油7に浸漬できる昇降機構19と、原料12又はフライ製品13を保持している保持容器17をフライ槽14の供給口14b側から排出口14c側に移送することができる移送機構18とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばスライスしたバナナ、パパイヤ、ポテトや、天ぷら、コロッケ、即席麺、スナック菓子等の食品を含む原料を、連続して揚げ油で揚げてフライ製品を製造することができるフライヤー装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のフライヤー装置の一例として図12に示すものがある(例えば、特許文献1参照。)。このフライヤー装置1は、スライスされたポテト等の食品原料2を移送するための移送機構3と、この移送機構3の右側端部に設けられている食品原料2の供給機構4と、移送機構3の左側端部に設けられているフライ製品5の排出機構6とを備えている。
【0003】
この移送機構3は、金網で形成された短円筒状の移送籠3aを有し、この移送籠3aは、揚げ油7に浸漬された状態で固定してフライ槽8内に設けられている。そして、この移送籠3a内には、モータ3bで回転駆動される移送スクリュー3cが設けられ、この移送スクリュー3cは、回転駆動されることによって、移送籠3a内に収容されている食品原料2やフライ製品5を供給機構4側から排出機構6側に移送することができる。
【0004】
図12に示すフライヤー装置1を使用して食品原料2からフライ製品5を製造するときは、まず、食品原料2を供給機構4によって移送機構3の供給口3dに順次供給する。この供給口3dに順次供給される食品原料2は、移送スクリュー3cの回転によって移送機構3の排出口3e側に順次移送される。このように、食品原料2は、移送機構3の供給口3dから排出口3eまで移送される間に揚げ油7で揚げられて、フライ製品5が製造される。このようにして製造されたフライ製品5は、順次排出機構6によって排出される。
【特許文献1】特開昭62−262954号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、図12に示す従来のフライヤー装置1では、移送機構3の移送籠3aがフライ槽8に貯留されている揚げ油7中に浸漬された状態で固定されているので、この移送籠3a内で移送される食品原料2は、揚げ油7に浸漬された状態で、移送籠3aの供給口3dから排出口3eまで移動することとなり、食品原料2がフライ製品5に出来上がるまでの時間が比較的長く掛かるという問題がある。
【0006】
なぜなら、食品原料2がフライ製品5に出来上がるまで継続して食品原料2を揚げ油7中に浸漬することとすると、食品原料2が揚げ油7によって包囲されているので、食品原料2に含まれる水分の蒸発が揚げ油7によって妨げられ、水分を効率的に蒸発させることができないからである。
【0007】
そして、食品原料2がフライ製品5に出来上がるまで継続して食品原料2を揚げ油7中に浸漬することとすると、食品原料2から蒸発した水分と入れ替わりに、同量の揚げ油7が食品原料2に吸い込まれることとなる。その結果、フライ製品5が揚げ油7によって湿気たようになり、食感及び味が低下する。
【0008】
また、図12に示す従来のフライヤー装置1では、移送籠3a内に収容されている食品原料2やフライ製品5が、移送籠3aの内面や、移送スクリュー3cに付着することがあり、そのような食品原料2やフライ製品5は、必ずしも設定された時間で、供給口3dから排出口3eまで移送されて排出されないことがある。その結果、原料2のフライ時間にムラが生じることがあり、均質なフライ製品5を製造することができないことがある。
【0009】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、原料がフライ製品に出来上がるまでの時間を比較的短くすることができると共に、フライ製品に含まれる揚げ油を比較的少なくして食感及び味を良好にすることができ、更に、均質なフライ製品を製造することができるフライヤー装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係るフライヤー装置は、油切り孔を有する保持容器がフライ製品の原料を保持している状態で、その保持容器をフライ槽の供給口からそのフライ槽内に供給し、その原料を前記フライ槽内に貯留されている揚げ油に浸漬してフライ製品を製造し、このフライ製品を保持する前記保持容器を前記フライ槽の排出口から順次排出することができるフライヤー装置であって、前記フライ槽内の前記保持容器を昇降させることができ、前記保持容器を下段位置に下降させることによって、当該保持容器に保持されている原料を前記フライ槽内の揚げ油に浸漬することができる昇降手段と、原料又はフライ製品を保持している前記保持容器を前記フライ槽の前記供給口側から前記排出口側に移送することができる移送手段とを備えることを特徴とするものである。
【0011】
この発明に係るフライヤー装置を使用して原料からフライ製品を製造するときは、まず、例えばスライスされたバナナ等の原料を保持容器に入れる。そして、この原料が入っている保持容器をフライ槽の供給口からそのフライ槽内に供給する。次に、昇降手段が保持容器を下段位置に下降させて、保持容器に保持されている原料を、フライ槽内に貯留されている揚げ油に浸漬する。そして、昇降手段が保持容器を上段位置に上昇させて、保持容器に保持されている原料を揚げ油から引き上げることによって、原料又はフライ製品に付着する揚げ油を、原料等から除去することができ、この除去した揚げ油を保持容器の油切り孔から流下させることができる。このようにしてフライ製品を連続して製造することができる。そして、移送手段が、原料又はフライ製品を保持する保持容器をフライ槽の供給口側から排出口側に移送することができ、そのフライ製品を保持する保持容器は、排出口から順次排出される。
【0012】
このように、このフライヤー装置によると、原料を保持容器に入れた状態で、その原料を例えば所定時間だけ揚げ油に浸漬して、その揚げ油から引き上げることができるので、この保持容器に収容されている全ての原料を正確に所定時間だけ加熱してフライ製品を製造することができる。
【0013】
この発明に係るフライヤー装置において、前記移送手段は、前記保持容器を揚げ油から引き上げることができる上段位置にある状態で、前記保持容器を前記排出口側に移送して当該保持容器が前記排出口から排出されるようにすることができる。
【0014】
このようにすると、保持容器が上段位置にある状態で、すなわち、フライ製品を、揚げ油から引き上げて油が切られた状態で、移送手段が、フライ製品を収容している保持容器を排出口側に移送することができる。この排出口に移送されたフライ製品を収容する保持容器は、排出口から順次排出される。これによって、原料を揚げ油に浸漬して揚げるための時間と、原料を移送するための時間とを別々に調整することができ、適切な程度に乾燥したフライ製品を製造することができる。その結果、食感及び味が良好なフライ製品を製造することができる。
【0015】
この発明に係るフライヤー装置において、前記昇降手段は、前記保持容器に保持されている前記原料を、前記フライ槽内に貯留されている揚げ油に2回以上繰り返して浸漬して前記フライ製品を製造するものとすることができる。
【0016】
このように、原料をフライ槽内に貯留されている揚げ油に2回以上浸漬することを繰り返してフライ製品を製造することによって、原料に含まれる水分を効率よく比較的短時間で蒸発させることができる。その結果、フライ製品を比較的短時間で製造することができる。
【0017】
この発明に係るフライヤー装置において、前記保持容器が密封して収容される前記フライ槽内を減圧又は真空にするための排気手段を備えるものとすることができる。
【0018】
このようにすると、フライ槽内を減圧又は真空にして、この減圧又は真空状態で原料を揚げることができ、比較的低温で原料に含まれる水分を蒸発させて取り出すことができる。これによって、例えば原料に含まれる栄養成分が失われることを抑制できると共に、揚げ油の空気との接触による酸化を防止でき、更に、フライ製品の製造に必要とされるエネルギの消費量を低減することができる。また、フライ槽内を減圧又は真空にすることによって、揚げ油で加熱された保持容器内の原料を揚げ油から引き上げたときに、原料内に含まれる水分を効果的に取り出して乾燥させることができる。
【0019】
この発明に係るフライヤー装置において、原料を保持する前記保持容器を前記フライ槽の外側から前記供給口に通してその内側に供給するための原料供給機構と、フライ製品を保持する前記保持容器を前記フライ槽の内側から前記排出口に通してその外側に排出するための製品排出機構とを備え、前記原料供給機構は、前記供給口に接続される供給室と、この供給室に設けられ原料を保持する前記保持容器を前記供給室内に供給するための入口を開閉する第1供給ゲートと、前記供給口を開閉するための第2供給ゲートとを有し、前記製品排出機構は、前記排出口に接続される排出室と、前記排出口を開閉するための第1排出ゲートと、前記排出室に設けられフライ製品を保持する前記保持容器を前記排出室から排出するための出口を開閉する第2排出ゲートとを有するものとすることができる。
【0020】
この原料供給機構によると、原料を保持する保持容器をフライ槽の外側の供給室から供給口に通してその内側に供給することができる。この際、供給室の入口に設けられている第1供給ゲートが閉じているときに、供給口の第2供給ゲートを開放して、原料を保持する保持容器をフライ槽内に供給することによって、外気が供給室の入口を通ってフライ槽内に流入することを防止することができる。
【0021】
また、製品排出機構によると、フライ製品を保持する保持容器をフライ槽の内側から排出口に通してフライ槽の外側の排出室に排出することができる。この際、出口に設けられている第2排出ゲートが閉じているときに、排出口の第1排出ゲートを開放して、フライ槽内のフライ製品を保持する保持容器を、排出口に通して排出室に排出することができる。これによって、外気が排出口を通ってフライ槽内に流入することを防止することができる。
【0022】
この発明に係るフライヤー装置において、前記供給室及び前記排出室に対して気体を供給及び排出するための気体給排手段を備えるものとすることができる。
【0023】
このようにすると、例えば原料を保持する保持容器を、入口に通して減圧又は真空状態の供給室内に供給するときは、第1供給ゲートが作動できるように、気体給排手段によって、供給室内を外気圧と等しくすることができる。そして、外気圧の供給室内にある原料を保持する保持容器を、供給口に通してフライ槽内に供給するときは、減圧又は真空状態のフライ槽内に外気が進入しないようにすると共に、第2供給ゲートが作動できるようにするために、気体給排手段によって、供給室内を減圧又は真空状態することができる。
【0024】
また、フライ槽内にあるフライ製品を保持する保持容器を排出口から排出室内に排出するときは、減圧又は真空状態のフライ槽内に外気が進入しないようにすると共に、第1排出ゲートが作動できるようにするために、気体給排手段によって、排出室内を減圧又は真空状態することができる。そして、減圧又は真空状態の排出室内にあるフライ製品を保持する保持容器を出口から排出するときは、第2排出ゲートが作動できるように、気体給排手段によって、排出室内を外気圧と等しくすることができる。
【0025】
この発明に係るフライヤー装置において、前記排出室内に収容されている前記保持容器が保持しているフライ製品から油を除去するための脱油装置を備えるものとすることができる。
【0026】
この脱油装置によると、保持容器に保持されているフライ製品に付着している揚げ油を強制的に除去することができる。そして、フライ製品を保持容器に保持されている状態で脱油することができ、脱油するためにフライ製品を別の容器に移し替える必要が無く、脱油作業を簡単に行うことができる。また、脱油が行われる排出室は、排出口を介してフライ槽と接続しているので、フライ槽及び排出室の両方を減圧又は真空にしておけば、フライ製品に付着している揚げ油がフライ製品の内部に吸着されない状態で脱油することができ、効果的に脱油することができる。これによって、フライ製品が揚げ油によって湿気たようにならず、食感及び味が良好となる。
【0027】
つまり、フライ槽内を減圧又は真空にしてフライ製品を製造することによって、揚げ油がフライ製品の内部に吸着されないようにすることができるが、脱油する際に、外気圧に戻した後で脱油すると、揚げ油がフライ製品の内部に吸い込まれて吸着されてしまい、効果的に脱油することができない。そこで、上記のようにすると、揚げ油がフライ製品の内部に吸着されない状態で効果的に脱油することができる。
【0028】
この発明に係るフライヤー装置において、前記第1供給ゲート、前記第2供給ゲート、前記第1排出ゲート、及び前記第2排出ゲートのうちのいずれかに設けられているゲート開閉機構は、前記ゲートに設けられている凸部と、前記ゲートによって閉じられる開口部の開口縁部側に設けられ前記凸部を案内するための案内部とを有し、前記ゲートが、そのゲートによって閉じられる前記開口部の開口縁部と間隔を隔てた状態、又は接触した状態で閉じる方向に移動して、前記ゲートが閉位置に移動するときに、前記案内部が前記ゲートに設けた前記凸部に当接して、前記ゲートを前記開口縁部側に押圧するように案内して、前記開口部を密封して閉じるものとすることができる。
【0029】
このゲート開閉機構によると、ゲートが閉位置に移動したときに、開口縁部側に設けた案内部が、ゲートに設けた凸部に当接してゲートを開口縁部側に押圧するように案内することができ、これによって、開口部を密封して閉じることができる。このように、ゲートが閉位置に移動したときに、ゲートを開口縁部側に押圧しているので、ゲートが閉位置に到達するまでのゲートの開閉移動においては、ゲートと開口縁部との間で生じる摩擦抵抗を低く抑えることができ、ゲートの開閉を確実に行うことができる。
【0030】
この発明に係るフライヤー装置において、前記フライ槽に貯留されている揚げ油を、前記フライ槽の前記排出口に近い部分から前記フライ槽の外側に排出して、この排出された揚げ油を加熱してその加熱した揚げ油を、前記フライ槽の前記供給口に近い部分、及び前記供給口と前記排出口との略中間位置にある部分から前記フライ槽内に供給するものとすることができる。
【0031】
このように、加熱した揚げ油を、フライ槽の供給口に近い部分、及び供給口と排出口との略中間位置にある部分からフライ槽内に供給するのは、これらの各部分に存在する揚げ油は、原料に含まれる水分を蒸発させるために消費される潜熱(気化熱)によって温度が低下しているので、この部分に加熱された揚げ油を供給することによって、フライ槽内の揚げ油の温度のばらつきを小さくすることができるからである。そして、フライ槽に貯留されている揚げ油を、このフライ槽の排出口に近い部分から外側に排出するのは、加熱された揚げ油の上記各流入口から比較的離れた位置から揚げ油を流出させることができるようにして、フライ槽内の揚げ油を略均一に加熱できるようにするためである。これによって、品質が良く、しかも品質のばらつきの小さいフライ製品を製造することができる。
ものである。
【発明の効果】
【0032】
この発明に係るフライヤー装置によると、昇降手段を作動させることによって、原料を保持容器に入れた状態で、その原料を例えば所定時間だけ揚げ油に浸漬して、その揚げ油から引き上げてフライ製品を製造することができ、そして、移送手段が、そのフライ製品が保持されている保持容器を供給口側から排出口側に移送して順次排出できるようにする構成であるので、この保持容器に収容されている全ての原料を正確に所定時間だけ加熱してフライ製品を順次製造することができる。これによって、各原料のフライ時間にムラが生じることなく、均質なフライ製品を連続して製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
以下、本発明に係るフライヤー装置の一実施形態を、図1〜図11を参照して説明する。このフライヤー装置11は、例えばスライスしたバナナ、パパイヤ、ポテトや、天ぷら、コロッケ、即席麺、スナック菓子等の食品を含む原料12を、連続して揚げ油7で揚げてフライ製品13を製造することができるものであり、図1に示すように、フライ槽14を備えている。このフライ槽14内には、揚げ油7が貯留されており、この揚げ油7は、このフライ槽14に接続している油加熱装置15によって加熱されるようになっている。そして、フライ槽14には、図3に示すように、真空タンクA(図示せず)を有する排気装置(例えば真空装置)16が接続しており、この排気装置16によってフライ槽14内の圧力が減圧又は真空にされている。
【0034】
このフライヤー装置11は、図2の正面方向から見た拡大縦断面図に示すように、フライ槽14、保持容器17、移送機構18、昇降機構19、及び脱油装置43を備えている。
【0035】
フライ槽14は、図2に示すように、例えば中心軸に直交する縦断面が縦長の長円形の筒状体であり、略水平に配置されている。そして、内部が密封され、油槽部14aを備えている。この油槽部14aに揚げ油7が貯留されている。
【0036】
保持容器17は、図5及び図6に示すものであり、フライ製品13の原料12を入れて保持することができ、そして、出来上がったフライ製品13を取り出すことができるものであり、多数用意されている。
【0037】
この保持容器17は、図3の平面方向から見た縦断面図に示すように、フライヤー装置11の供給室20の入口20aから供給されて、この供給室20、供給口14b、フライ槽14、排出口14c、及び排出室21を通って排出室21の出口21aから外側に順次排出される。そして、これら順次排出される保持容器17には、出来上がったフライ製品13が収容されており、作業者は、保持容器17の蓋部17aを開けて内部に収容されているフライ製品13を取り出すことができ、このようにしてフライ製品13が製造される。
【0038】
保持容器17は、図5及び図6に示すように、円筒状体の側壁17bを有し、底部17cが形成され、上側開口部を開閉できるように一対の蓋部17a、17aが設けられている。この一対の蓋部17aは、それぞれが略半円形の板状体であり、それぞれが蝶番22を介して揺動自在に水平部材23に設けられている。この水平部材23の下側には、仕切り板24が設けられ、この仕切り板24は、この保持容器17の内側空間を2つに分割している。
【0039】
そして、図5に示すように、2つの各蓋部17aには、係合具25が設けられている。これら各係合具25は、水平部材23に対して係脱自在であり、それぞれが取り付けられている蓋部17aを、工具なしで簡単に閉状態に固定することができるし、開けることもできる。
【0040】
また、図5に示すように、保持容器17の側壁17b、底部17c、各蓋部17a、及び仕切り板24には、多数の比較的小さい油切り孔26が形成されている。この油切り孔26は、フライ槽14内の揚げ油7を保持容器17内に流出入させるためのものである。
【0041】
そして、図6に示すように、保持容器17に設けられている仕切り板24は、保持容器17内の空間を2つに仕切ることができ、これによって、スライスされた原料12を保持容器17内で分散させることができる。よって、保持容器17に入れられる多数のスライスされた原料12が塊状とならないようにすることができ、それぞれのスライスされた原料12を略均一に加熱することができる。
【0042】
移送機構18は、図2及び図3に示すように、チェーンコンベアであり、原料12又はフライ製品13を保持している保持容器17を、フライ槽14に設けられている供給口14b側から排出口14c側に順次移送することができるものである。
【0043】
この移送機構18は、図3及び図7(a)に示すように、供給側回転軸27と、排出側回転軸28とを有し、これら供給側回転軸27及び排出側回転軸28は、一対の連結部材29、29を介して互いに連結されている。
【0044】
つまり、一対の連結部材29は、互いに間隔を隔てて平行する状態で略水平に配置されている。そして、一対の連結部材29の供給口14b側の先端部に、供給側回転軸27が軸受を介して回動自在に取り付けられている。また、一対の連結部材29の排出口14c側の後端部に、排出側回転軸28が軸受を介して回動自在に取り付けられている。そして、供給側回転軸27及び排出側回転軸28には、それぞれスプロケット30、・・・が2つずつ取り付けられ、これら供給側スプロケット30、及び排出側スプロケット30を備える2組のスプロケット30には、それぞれ環状チェーン31が掛けられている。
【0045】
そして、この一対の環状チェーン31のそれぞれの上側走行部は、図2に示すように、保持レール32によって保持されている。そして、この一対の保持レール32は、一対の環状チェーン31上に載置される複数の(例えば6つの)保持容器17の重量を受けることができるものである。そして、環状チェーン31は、その上に載置されている複数の保持容器17を、供給口14b側から排出口14c側方向に移送することができるものである。なお、環状チェーン31に保持されている保持容器17には、原料12やフライ製品13が保持(収容)されている。そして、一対の保持レール32は、図3に示す一対の連結部材29に取り付けられている。
【0046】
そして、図7(a)、(b)に示すように、供給側回転軸27の一端部は、連結切換部33を介して駆動部34の回転駆動軸34aと連結している。
【0047】
図7(a)は、連結切換部33を上方から見た拡大平面図であり、図7(b)は、連結切換部33を正面から見た拡大縦断面図である。同各図に示すように、連結切換部33は、駆動歯車35と、従動歯車36とを備えている。駆動歯車35は、駆動部34の回転駆動軸34aに取り付けられている。そして、従動歯車36は、移送機構18の供給側回転軸27に取り付けられている。
【0048】
この連結切換部33によると、図7(b)及び図2の実線で示すように、移送機構18(保持容器17)が上段位置にある状態で、従動歯車36が駆動歯車35に噛合った状態となり、駆動部34の回転駆動軸34aと、移送機構18の供給側回転軸27とを互いに連結することができる。そして、図7(b)及び図2の二点鎖線で示すように、移送機構18(保持容器17)が下段位置にある状態で、従動歯車36を駆動歯車35から切り離した状態となり、駆動部34の回転駆動軸34aと、移送機構18の供給側回転軸27とを互いに切り離すことができる。
【0049】
そして、図7(b)に示すように、移送機構18を昇降移動させて、連結切換部33の従動歯車36を駆動歯車35に対して、噛み合わせたり切り離すときに、従動歯車36の歯と、駆動歯車35の歯が互いに干渉するが、この干渉は、従動歯車36が取り付けられている供給側スプロケット30及び環状チェーン31の遊びによって許容することができる。
【0050】
また、移送機構18を駆動するための駆動部34は、例えばサーボモータ、ステッピングモータ又は誘導電動機等の電気モータであり、保持容器17を所定寸法ずつ移送するように設定されている。この所定寸法ずつ移送することができる移送ピッチは、保持容器17の1つ分の寸法(1ピッチ)と、互いに隣り合う保持容器17の間に形成される隙間の寸法とを合計した長さである。
【0051】
そして、この駆動部34は、図7(a)に示すように、フライ槽14の外側に固定して設けられている。この駆動部34が駆動することによって移送機構18であるチェーンコンベアを所定方向に回転させることができ、これによって、この移送機構18に載置されている複数の保持容器17を、フライ槽14の供給口14b側から排出口14c側に向かう方向に移送することができる。
【0052】
次に、図3を参照して、フライ槽14に接続されている排気装置16を説明する。この排気装置16は、例えば真空装置であり、フライ槽14内の水蒸気等を吸引して、フライ槽14内を減圧又は真空にするためのものである。この排気装置16は、真空タンクA(図示せず)を有し、この真空タンクAは、排気管53を介してフライ槽14と接続している。
【0053】
この排気装置16によると、フライ槽14内を減圧又は真空にして、この減圧又は真空状態で原料12を揚げるようにすることができ、比較的低温で原料12に含まれる水分を蒸発させて取り出すことができる。これによって、例えば原料12に含まれる栄養成分が失われることを抑制できると共に、揚げ油7の空気との接触による酸化を防止でき、更に、フライ製品13の製造に必要とされるエネルギの消費量を低減することができる。また、フライ槽14内を減圧又は真空にすることによって、揚げ油7で加熱された原料12を揚げ油7から引き上げたときに、原料12内に含まれる水分を効果的に取り出して乾燥させることができる。
【0054】
次に、図2〜図4を参照して原料供給機構37、及び製品排出機構38を説明する。図3に示す平面方向から見た横断面図に示すように、原料供給機構37は、原料12を保持する保持容器17を、フライ槽14の外側から供給口14bに通してフライ槽14の内側に1つずつ供給することができるものである。そして、製品排出機構38は、フライ製品13を保持する保持容器17を、フライ槽14の内側から排出口14cに通してフライ槽14の外側に1つずつ排出することができるものである。
【0055】
原料供給機構37は、図3に示すように、供給口14bに対して密封して接続されている供給室20を有している。この供給室20には、原料12を保持する保持容器17を供給室20内に供給するための入口20aが形成され、この入口20aは、第1供給ゲート39によって開閉されるようになっている。そして、供給口14bは、第2供給ゲート40によって開閉されるようになっている。この第1及び第2供給ゲート39、40は、図2に示す第1及び第2供給ゲート駆動部54、55によって開閉駆動され、これら第1及び第2供給ゲート駆動部54、55は、例えばエアーシリンダ装置である。
【0056】
製品排出機構38は、図3に示すように、排出口14cに対して密封して接続されている排出室21を有している。この排出口14cは、第1排出ゲート56によって開閉されるようになっている。そして、排出室21には、フライ製品13を保持する保持容器17を排出室21から排出するための出口21aが形成され、この出口21aは、第2排出ゲート57によって開閉されるようになっている。この第1及び第2排出ゲート56、57は、図2に示す第1及び第2排出ゲート駆動部58、59によって開閉駆動され、これら第1及び第2排出ゲート駆動部58、59は、例えばエアーシリンダ装置である。
【0057】
また、後述するように、原料供給機構37が原料12を保持する保持容器17を、供給口14bに通してフライ槽14の内側に供給したり、製品排出機構38がフライ製品13を保持する保持容器17を、排出口14cに通してフライ槽14の外側に排出するのは、図2の実線で示すように、移送機構18が上段位置に移動した状態で行われるように、制御部(図示せず)で制御されるようになっている。そして、移送機構18が上段位置に移動した状態でこの移送機構18が駆動するように制御されるようになっている。つまり、フライヤー装置11が備えている各機構等、及びこれに接続している各装置等は、図示しない制御部によって制御されて駆動するようになっている。
【0058】
この図3に示す原料供給機構37によると、原料12を保持する保持容器17をフライ槽14の外側の供給室20から供給口14bに通してフライ槽14の内側に供給することができるが、この際、供給室20の入口20aに設けられている第1供給ゲート39が閉じているときに、供給口14bの第2供給ゲート40を開放して、原料12を保持する保持容器17をフライ槽14内に供給するようになっている。これによって、外気が供給室20の入口20aを通ってフライ槽14内に流入することを防止できる。
【0059】
そして、図3に示す製品排出機構38によると、フライ製品13を保持する保持容器17をフライ槽14の内側から排出口14cに通してフライ槽14の外側の排出室21に排出することができるが、この際、出口21aに設けられている第2排出ゲート57が閉じているときに、排出口14cの第1排出ゲート56を開放して、フライ槽14内のフライ製品13を保持する保持容器17を、排出口14cに通して排出室21に排出することができる。これによって、外気が排出口14cを通ってフライ槽14内に流入することを防止することができる。
【0060】
次に、図3を参照して、供給室20及び排出室21のそれぞれに対して気体(空気)を供給及び排出するための気体給排装置60を説明する。この気体給排装置60は、供給室20及び排出室21のそれぞれに接続する給気管61及び排気管62を備えている。
【0061】
それぞれの給気管61は、供給室20及び排出室21のそれぞれに気体を供給するためのものであり、各給気管61の端部は、例えば外気に開放している。そして、供給室20に接続する給気管61には、第1給気バルブ63が設けられ、排出室21に接続する給気管61には、第2給気バルブ64が設けられている。
【0062】
そして、それぞれの排気管62は、供給室20及び排出室21内の気体を排出して、供給室20及び排出室21内を減圧又は真空状態にするためのものであり、各排気管62の端部は、図示しない真空タンクBに接続している。そして、供給室20に接続する排気管62には、第1排気バルブ65が設けられ、排出室21に接続する排気管62には、第2排気バルブ66が設けられている。
【0063】
次に、図3に示す気体給排装置60の作用を説明する。まず、原料12を保持している保持容器17を供給室20に供給するときについて説明する。今、例えば真空状態の供給室20内の保持容器17が真空状態のフライ槽14内に供給された後の状態であり、第1及び第2供給ゲート39、40が閉、第1給気バルブ63が閉、第1排気バルブ65が開とする。この状態から、原料12を保持する保持容器17を、入口20aに通して供給室20内に供給するときは、第1供給ゲート39が作動できるようにするために、第1排気バルブ65を閉、及び第1給気バルブ63を開にして、供給室20内を外気圧と等しくする。そして、第1供給ゲート39を開いて、原料12を保持する保持容器17を、入口20aに通して供給室20内に供給する。そして、第1供給ゲート39を閉じる。これによって、原料12を保持する保持容器17を供給室20内に供給することができる。
【0064】
次に、外気圧の状態の供給室20内にある原料12を保持する保持容器17を、供給口14bからフライ槽14内に供給するときは、まず、真空状態のフライ槽14内に供給室20内の気体が進入しないようにすると共に、第2供給ゲート40を開けることができるようにするために、第1給気バルブ63を閉、第1排気バルブ65を開にして、供給室20内を真空状態する。次に、第2供給ゲート40を開き第1移送駆動部67を伸張動作させて、供給室20内の保持容器17を、供給口14bに通してフライ槽14内に供給する。しかる後に、第1移送駆動部67を短縮動作させて、第2供給ゲート40を閉じる。このフライ槽14内に供給された保持容器17は、上段位置にある移送機構18の先端部上に移送され、所定の手順を経て移送機構18によって排出口14cまで移送される。
【0065】
次に、フライ製品13を保持している保持容器17を排出室21に排出するときについて説明する。今、例えば外気圧状態の排出室21内の保持容器17が出口21aに通して外側に排出された後の状態であり、第1及び第2排出ゲート56、57が閉、第2給気バルブ64が開、第2排気バルブ66が閉とする。この状態で、移送機構18の後端部に移送され、フライ槽14内に収容されているフライ製品13を保持する保持容器17を、排出口14cに通して排出室21に排出するときは、第1排出ゲート56が作動できるように、第2給気バルブ64を閉、及び第2排気バルブ66を開にして、排出室21内を真空状態にする。そして、第1排出ゲート56を開き第2移送駆動部68を伸張動作させて、フライ槽14内のフライ製品13を保持する保持容器17を、排出口14cに通して排出室21内に排出する。そして、第2移送駆動部68を短縮動作させて、第1排出ゲート56を閉じる。これによって、フライ製品13を保持する保持容器17を排出室21内に排出することができる。
【0066】
次に、真空状態の排出室21内にあるフライ製品13を保持する保持容器17を、出口21aから外側に排出するときは、まず、第2排出ゲート57を開けることができるように、第2排気バルブ66を閉、第2給気バルブ64を開にして、排出室21内を外気圧にする。次に、第2排出ゲート57を開き第3移送駆動部69を伸張動作させることによって、排出室21内の保持容器17を、出口21aに通して外側に排出することができる。そして、この保持容器17内に収容されているフライ製品13を取り出すことによって、これらフライ製品13に対して次の処理を行うことができる。なお、第1〜第3移送駆動部67、68、69は、例えばエアーシリンダ装置である。
【0067】
次に、図2〜図4を参照して昇降機構19を説明する。この昇降機構19は、移送機構18を昇降させることができ、図2の二点鎖線で示すように、移送機構18を下段位置に下降させることによって、移送機構18に載置されている保持容器17内の原料12をフライ槽14内に貯留されている揚げ油7に浸漬することができるものである。図4は、実線で示すように移送機構18が上段位置にあり、移送機構18の後端部上に移送されている保持容器17が排出室21に排出される状態を示している。
【0068】
昇降機構19は、図2に示すように、昇降駆動部70を有し、この昇降駆動部70は、ブラケット71を介してフライ槽14の周壁に取り付けられている。この昇降駆動部70は、サーボモータ、パルスモータ、誘導電動機等の電気モータを有する電動アクチュエータであり、この電動アクチュエータの回転駆動軸に回転軸72が連結されている。
【0069】
この回転軸72は、図2に示すように、両端部が軸受を介して回動自在に支持ロッド73に支持され、この支持ロッド73は、フライ槽14の周壁に取り付けられている。そして、回転軸72の一端部には、ピニオン(歯車)74が取り付けられ、このピニオン74は、ラック75と噛合っている。このラック75は、鉛直方向と平行して配置され、ラック75の下端部に吊下げロッド76が結合している。この吊下げロッド76の下端部は、移送機構18の連結部材29(図3参照)と結合している。同様に、回転軸72の他端部にも、別のピニオン74が取り付けられ、このピニオン74は、ラック75、及び吊下げロッド76を介して移送機構18の連結部材29と連結している。
【0070】
なお、吊下げロッド76がフライ槽14の側壁を貫通させている挿通孔には、シール部77が設けられている。
【0071】
この昇降機構19によると、図2に示す昇降駆動部70が所定の回転方向に駆動すると、回転軸72及びピニオン74が所定方向に回転し、ラック75が上昇移動して移送機構18を上段位置(図2の実線で示す位置)に移動させることができる。そして、昇降駆動部70が上記と逆方向に駆動することによって、移送機構18を下段位置(図2の二点鎖線で示す位置)に移動させることができる。
【0072】
ただし、図には示さないが、昇降機構19は、移送機構18を中段位置(図示せず)に移動させることができる。このように、移送機構18が中段位置にあるときは、移送機構18に保持されている保持容器17内の原料12が、フライ槽14に貯留されている揚げ油7から引き上げられた状態となる。そして、この実施形態では、移送機構18を中段位置と下段位置との間を昇降させることによって、移送機構18に保持されている保持容器17内の原料12を、揚げ油7に浸漬したり、揚げ油7から引き上げるようにしている。
【0073】
また、図1に示すように、このフライヤー装置11には、フライ槽14に貯留されている揚げ油7を加熱するための油加熱装置15、濾過機41、及び貯油タンク42が接続している。そして、この油加熱装置15は、ボイラー44及び熱交換器45を備えている。
【0074】
油加熱装置15は、図1に示すように、フライ槽14に貯留されている揚げ油7を、フライ槽14の排出口14cに近い部分(油出口46)からフライ槽14の外側に油移送ポンプ47で排出して、この排出された揚げ油7を、管48を介して熱交換器45に供給するように構成されている。そして、熱交換器45で加熱した揚げ油7を、管49、50を介してフライ槽14の供給口14bに近い部分(第1油入口51)、及び供給口14bと排出口14cとの略中間位置にある部分(第2油入口52)からフライ槽14内に供給するように構成されている。
【0075】
この油加熱装置15において、図1に示すように、加熱した揚げ油7を、フライ槽14の供給口14bに近い部分(第1油入口51)、及び供給口14bと排出口14cとの略中間位置にある部分(第2油入口52)からフライ槽14内に供給するのは、フライ槽14内のこれら第1及び第2油入口51、52の付近に存在する揚げ油7は、原料12に含まれる水分を蒸発させるために消費される潜熱(気化熱)によって温度が低下しているので、この部分に加熱された揚げ油7を供給することによって、フライ槽14内の揚げ油7の温度のばらつきを小さくすることができるからである。
【0076】
そして、フライ槽14に貯留されている揚げ油7を、このフライ槽14の排出口14cに近い油出口46から外側に排出するのは、加熱された揚げ油7の流入口(第1及び第2油入口51、52)から比較的離れた位置から揚げ油7を流出させることができるようにして、フライ槽14内の揚げ油7を略均一に加熱できるようにするためである。これによって、品質が良く、しかも品質のばらつきの小さいフライ製品13を製造することができる。
【0077】
濾過機41は、図1に示すように、管48に接続しており、フライ槽14に貯留されている揚げ油7を濾過してフライ槽14に戻すことができるものである。貯油タンク42は、フライ槽14内に所定量の揚げ油7が貯留されているように、揚げ油7をフライ槽14に補給するためのものである。
【0078】
次に、図2を参照して脱油装置43を説明する。脱油装置43は、例えば遠心分離機であり、排出室21に設けられ、回転台78(図9参照)とこの回転台78を回転させるための回転駆動部79とを備えている。
【0079】
この脱油装置43は、排出室21内に順次排出されてくるフライ製品13を保持する保持容器17が回転台78に載せられると、この回転台78と共にこのフライ製品13を保持する保持容器17を回転させて、フライ製品13に付着している余分な揚げ油7を強制的に除去することができる。そして、これら余分な揚げ油7が除去されたフライ製品13を保持する保持容器17は、順次排出室21から排出されて後段に移送される。
【0080】
この脱油装置43によると、フライ製品13を保持容器17に保持されている状態で強制的に脱油することができ、脱油するためにフライ製品13を別の容器に移し替える必要が無く、脱油作業を簡単に行うことができる。また、脱油が行われる排出室21は、排出口14cを介してフライ槽14と接続しているので、フライ槽14及び排出室21の両方を減圧又は真空にしておけば、フライ製品13に付着している揚げ油7がフライ製品13の内部に吸着されない状態で脱油することができ、効果的に脱油することができる。これによって、フライ製品13が揚げ油7によって湿気たようにならず、食感及び味が良好となる。
【0081】
つまり、フライ槽14内を減圧又は真空にしてフライ製品13を製造することによって、揚げ油7がフライ製品13の内部に吸着されないようにすることができるが、脱油する際に、外気圧に戻した後で脱油すると、揚げ油7がフライ製品13の内部に吸い込まれて吸着されてしまい、効果的に脱油することができない。そこで、上記のようにすると、揚げ油7がフライ製品13の内部に吸着されない状態で効果的に脱油することができる。
【0082】
次に、図3、図9〜図11を参照して、ゲート開閉機構80を説明する。このゲート開閉機構80は、図3に示す第1供給ゲート39、第2供給ゲート40、第1排出ゲート56、及び第2排出ゲート57の全てのゲートに対して設けられ、それぞれ同等のものであるので、第2排出ゲート57に設けられているゲート開閉機構80を説明し、その他のゲート開閉機構80の説明を省略する。
【0083】
この第2排出ゲート57に対して設けられているゲート開閉機構80は、図10に示すように、第2排出ゲート57が閉位置に移動したときに、第2排出ゲート57が排出室21の出口21aを密封して閉じることができるようになっている。
【0084】
ゲート開閉機構80は、図9及び図10に示すように、第2排出ゲート57を上下方向に移動させることによって排出室21の出口21aを開閉することができるものである。この出口21aは、略矩形の開口部であり、第2排出ゲート57は、この出口21aを閉じることができる大きさの略矩形の板状体である。そして、第2排出ゲート57が所定の経路に沿って上下方向に移動できるように、左右一対の直線状の枠部81、81がこの出口21aを形成する開口縁部82に設けられている。
【0085】
また、図9に示すように、第2排出ゲート57は、第2排出ゲート駆動部59(エアーシリンダ装置)のピストンロッドの先端部に連結部83を介して吊り下げられており、この第2排出ゲート駆動部59が短縮動作したときに、開状態となり(図9参照)、伸張動作したときに閉状態となる(図10参照)。そして、この連結部83は、第2排出ゲート57が出口21aの開口縁部82と接触する状態から、開口縁部82に向かう方向及び離れる方向のいずれの方向にも所定の寸法だけ移動自在なようにこの第2排出ゲート57を吊り下げている。
【0086】
また、図9に示すように、第2排出ゲート57の外側表面のそれぞれの角部付近に凸部84が合計4つ設けられている。これらの各凸部84は、それぞれ同等の形状であり、図11の拡大側面図に示すように、それぞれに円弧状に湾曲する傾斜面84aが形成されている。
【0087】
そして、図9に示すように、左右一対の直線状のそれぞれの枠部81には、互いに間隔を隔てて配置された案内部85が2つずつ設けられている。この案内部85は、ローラであり、それぞれの案内部85と対応して設けられている凸部84を案内するものである。
【0088】
このゲート開閉機構80によると、図11に示すように、第2排出ゲート57が、排出室21の出口21aを形成する開口縁部82と間隔を隔てた状態(又は接触した状態)で閉じる方向(下方向)に移動して、第2排出ゲート57が実線で示す閉位置に移動するときに、一対の各枠部81に設けられた4つの案内部85である各ローラが、第2排出ゲート57に設けられた4つの各凸部84に形成された各傾斜面84aに当接して、第2排出ゲート57を開口縁部82側に押圧するように案内して、出口21aを確実に密封して閉じることができる。
【0089】
この図11に実線で示すように、第2排出ゲート57が閉位置に移動したときに、各案内部85が各凸部84と当接することによって、第2排出ゲート57を、シール材86を介して開口縁部82側に押圧しているので、第2排出ゲート57が閉位置に到達するまでの第2排出ゲート57の開閉移動においては、第2排出ゲート57と開口縁部82との間で生じる摩擦抵抗を低く抑えることができ、第2排出ゲート57の開閉を確実に行うことができる。
【0090】
次に、図1〜図4、図8等を参照して、このフライヤー装置11を使用して原料12からフライ製品13を製造するときの手順、及びフライヤー装置11の作用を説明する。まず、フライ槽14に貯留されている揚げ油7の温度、及びフライ槽14内の真空度等が所定の設定温度(例えば90〜110℃)、及び所定の設定真空度(例えば10〜50torr)となっていることを確認する。また、予め例えば1〜3mmにスライスされたバナナやポテト等の原料12を保持容器17に入れておく。そして、この原料12が収容されている保持容器17を、図3に示す原料供給機構37の供給室20に供給する。
【0091】
次に、供給室20に供給された保持容器17が、供給口14bを通って上段位置にある移送機構18の先端部上に供給される。そして、移送機構18は、保持容器17が供給されると、昇降機構19によって、中段位置(図示せず)と下段位置(図2の二点鎖線で示す位置)との間で設定回数だけ昇降移動されて、原料12が揚げ油7に所定時間だけ浸漬される。しかる後に、移送機構18が作動して保持容器17を排出口14c側に移送するようになっている。これらの動作を順次行うことによって、図3に示すように、例えば合計6つの保持容器17が移送機構18に保持された状態となる。そして、移送機構18の後端部に位置している保持容器17に保持されている原料12がフライ製品13として出来上がっている。
【0092】
次に、図3に示すように、移送機構18を上段位置に上昇させて、製品排出機構38を作動させる。つまり、移送機構18の後端部上に載置されているフライ製品13が保持されている保持容器17を、排出口14cに通して排出室21内に排出する。次に、移送機構18を作動させて、移送機構18上の5つの保持容器17を1ピッチ分だけ前進させる。更に、原料供給機構37を作動させて、次に準備されている供給室20内の保持容器17を、供給口14bに通して移送機構18の先端部上に供給する。
【0093】
また、排出室21内に排出されたフライ製品13を保持する保持容器17は、脱油装置(遠心分離機)43によって脱油されて、排出室21の出口21aから外側に排出される。この脱油装置43は、フライ製品13に付着している余分な揚げ油7を強制的に除去することができる。このように、上記の動作を順次繰り返して行うことによって、フライ製品13を順次製造することができる。
【0094】
更に、この実施形態に係るフライヤー装置11によると、図2及び図3に示すように、原料12を保持容器17に入れた状態で、その原料12を例えば所定時間だけ揚げ油7に浸漬して、その揚げ油7から引き上げることができるので、この保持容器17に収容されている全ての原料12を正確に所定時間だけ加熱してフライ製品13を製造することができる。これによって、各原料12のフライ時間にムラが生じることなく、均質なフライ製品13を連続して製造することができる。
【0095】
そして、図2に実線で示すように、移送機構18は、保持容器17を揚げ油7から引き上げることができる上段位置にある状態で、すなわち、フライ製品13を、揚げ油7から引き上げて油が切られた状態で、フライ製品13を収容している保持容器17を排出口14c側に移送して、この排出口14cから順次排出する構成となっている。これによって、原料12を揚げ油7に浸漬して揚げている時間と、移送機構18によって保持容器17を移送している時間とを別々に調整することができ、その結果、適切な程度に乾燥しており食感及び味が良好であるフライ製品13を製造することができる。
【0096】
また、図2に示す昇降機構19は、保持容器17に保持されている原料12を、フライ槽14内に貯留されている揚げ油7に2回以上繰り返して浸漬してフライ製品13を製造する構成となっている。
【0097】
このように、原料12が揚げられてフライ製品13が製造されるまでの間に、原料12を揚げ油7に浸漬すること、及び揚げ油7から引き上げることを繰り返して行うことができ、これによって、フライ製品13に出来上がるまでの時間を比較的短くすることができる。
【0098】
なぜなら、原料12が揚げ油7中に浸漬されて温度が上昇したときに、原料12を揚げ油7から引き上げると、原料12が揚げ油7によって包囲されていないので、原料12に含まれる水分の蒸発が揚げ油7によって妨げられることがなく、水分を効率的に比較的短時間で蒸発させることができるからである。
【0099】
そして、原料12がフライ製品13に出来上がるまでの間に、原料12を揚げ油7中に浸漬すること、及び揚げ油7から引き上げることを繰り返して行うと、原料12に含まれる水分が蒸発するときに、原料12から蒸発した水分と入れ替わりに、揚げ油7が原料12に吸い込まれる機会を少なくすることができる。その結果、フライ製品13を適切に乾燥させることができ、食感及び味を良好にすることができる。
【0100】
図8は、昇降機構19が移送機構18(保持容器17)を昇降移動させるタイミング、及び脱油装置43の作動のタイミングを示す図である。この1サイクルT1は、原料12が保持されている保持容器17が、供給室20内から供給口14bを通ってフライ槽14内に供給され始めたときから、その供給された原料12がフライ製品13に加工され、このフライ製品13を保持する保持容器17が、排出口14cを通って排出室21に排出されるまでの時間である。
【0101】
T2は、移送機構18(保持容器17)が上段位置にあり、移送機構18上の保持容器17が排出室21に排出され、そして、移送機構18が作動して移送機構18上の保持容器17を排出口14c側に1ピッチだけ移送し、更に、供給室20内の保持容器17がフライ槽14内の移送機構18上に移送されるのに掛かる時間である。
【0102】
T3は、保持容器17が図2に二点鎖線で示す下段位置で保持されている(揚げ油7に浸漬されている)時間であり、T4は、保持容器17が図2に実線で示す上段位置で保持されている(揚げ油7から引き上げられている)時間である。
【0103】
この実施形態では、例えば1サイクルT1は、約20分であり、中段位置での時間T4が約10秒、下段位置での時間T3が約10秒である。そして、1サイクルT1時間での昇降の回数は、15〜20回である。ただし、原料12の質、大きさ、厚み、揚げ油7の温度、及びフライ槽14の真空度等に応じて、T1、T2、T3、T4を適切な時間に設定することができる。また、1サイクルT1において、原料12を揚げ油7中に浸漬させる回数は、上記以外の回数としてもよい。
【0104】
ただし、上記実施形態では、図2等に示すように、昇降機構19の昇降駆動部70として、電気モータを有する電動アクチュエータを使用したが、これに代えて、例えば流体シリンダ装置を使用してもよく、この流体シリンダ装置のピストンロッドに移送機構18を連結して、この移送機構18を昇降移動させるようにしてもよい。
【0105】
そして、上記実施形態では、フライ槽14内を減圧又は真空にして、減圧又は真空下でフライ処理をしたが、これに代えて、外気圧下でフライ処理をしてもよい。
【0106】
また、上記実施形態では、保持容器17を、中段位置と下段位置との間で昇降移動させてフライ製品13を製造したが、これに代えて、保持容器17を、上段位置と下段位置との間で昇降移動させてフライ製品13を製造してもよい。
【0107】
更に、上記実施形態では、図3に示すように、フライ槽14内に6つの保持容器17を収容できる構成としたが、これ以外の数の例えば3つの保持容器17を収容できる構成としても良い。
【産業上の利用可能性】
【0108】
以上のように、本発明に係るフライヤー装置は、原料がフライ製品に出来上がるまでの時間を比較的短くすることができると共に、フライ製品に含まれる揚げ油を比較的少なくして食感及び味を良好にすることができ、更に、均質なフライ製品を製造することができる優れた効果を有し、このようなフライヤー装置に適用するのに適している。
【図面の簡単な説明】
【0109】
【図1】この発明の一実施形態に係るフライヤー装置及びそれに接続する油加熱装置等の全体の構成を示すブロック図である。
【図2】同実施形態に係るフライヤー装置に供給された保持容器が上段位置にある状態を正面方向から見た拡大縦断面図である。
【図3】同実施形態に係るフライヤー装置を平面方向から見た拡大横断面図である。
【図4】同実施形態に係るフライヤー装置を側面方向から見た拡大縦断面図である。
【図5】同実施形態に係るフライヤー装置に使用される保持容器を示す拡大斜視図である。
【図6】同実施形態に係るフライヤー装置に使用される保持容器の開蓋状態を示す拡大斜視図である。
【図7】同実施形態に係るフライヤー装置に設けられている移送機構の連結切換部を示す図であり、(a)は連結切換部を示す拡大平面図、(b)は連結切換部を示す拡大正面図である。
【図8】同実施形態に係るフライヤー装置に設けられている保持容器の昇降のタイミング及び脱油装置の作動のタイミングを示す図である。
【図9】同実施形態に係るフライヤー装置の排出室に設けられているゲート開閉機構によって第2排出ゲートが開いている状態を示す拡大斜視図である。
【図10】図9に示すゲート開閉機構によって第2排出ゲートが閉じている状態を示す拡大斜視図である。
【図11】図9に示すゲート開閉機構によって第2排出ゲートが閉じるまでの動きを示す拡大側面図である。
【図12】従来のフライヤー装置の一例を示す縦断面図である。
【符号の説明】
【0110】
7 揚げ油
11 フライヤー装置
12 原料
13 フライ製品
14 フライ槽
14a 油槽部
14b 供給口
14c 排出口
15 油加熱装置
16 排気装置(フライ槽)
17 保持容器
17a 蓋部
17b 側壁
17c 底部
18 移送機構
19 昇降機構
20 供給室
20a 入口
21 排出室
21a 出口
22 蝶番
23 水平部材
24 仕切り板
25 係合具
26 油切り孔
27 供給側回転軸
28 排出側回転軸
29 連結部材
30 スプロケット
31 環状チェーン
32 保持レール
33 連結切換部
34 移送機構の駆動部
34a 回転駆動軸
35 駆動歯車
36 従動歯車
37 原料供給機構
38 製品排出機構
39、40 第1供給ゲート、第2供給ゲート
41 濾過機
42 貯油タンク
43 脱油装置(遠心分離機)
44 ボイラー
45 熱交換器
46 油出口
47 油移送ポンプ
48、49、50 管
51、52 第1油入口、第2油入口
53 排気管(フライ槽)
54、55 第1供給ゲート駆動部、第2供給ゲート駆動部
56、57 第1排出ゲート、第2排出ゲート
58、59 第1排出ゲート駆動部、第2排出ゲート駆動部
60 気体給排装置(供給室、排出室)
61 給気管
62 排気管
63、64 第1給気バルブ、第2給気バルブ
65、66 第1排気バルブ、第2排気バルブ
67、68、69 第1移送駆動部、第2移送駆動部、第3移送駆動部
70 昇降駆動部
71 ブラケット
72 回転軸
73 支持ロッド
74 ピニオン
75 ラック
76 吊下げラック
77 シール部
78 脱油装置の回転台
79 回転駆動部
80 ゲート開閉機構
81 枠部
82 開口縁部
83 連結部
84 凸部
84a 傾斜面
85 案内部
86 シール材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
油切り孔を有する保持容器がフライ製品の原料を保持している状態で、その保持容器をフライ槽の供給口からそのフライ槽内に供給し、その原料を前記フライ槽内に貯留されている揚げ油に浸漬してフライ製品を製造し、このフライ製品を保持する前記保持容器を前記フライ槽の排出口から順次排出することができるフライヤー装置であって、
前記フライ槽内の前記保持容器を昇降させることができ、前記保持容器を下段位置に下降させることによって、当該保持容器に保持されている原料を前記フライ槽内の揚げ油に浸漬することができる昇降手段と、
原料又はフライ製品を保持している前記保持容器を前記フライ槽の前記供給口側から前記排出口側に移送することができる移送手段とを備えることを特徴とするフライヤー装置。
【請求項2】
前記移送手段は、前記保持容器を揚げ油から引き上げることができる上段位置にある状態で、前記保持容器を前記排出口側に移送して当該保持容器が前記排出口から排出されるようにすることを特徴とする請求項1記載のフライヤー装置。
【請求項3】
前記昇降手段は、前記保持容器に保持されている前記原料を、前記フライ槽内に貯留されている揚げ油に2回以上繰り返して浸漬して前記フライ製品を製造することを特徴とする請求項1記載のフライヤー装置。
【請求項4】
前記保持容器が密封して収容される前記フライ槽内を減圧又は真空にするための排気手段を備えることを特徴とする請求項1記載のフライヤー装置。
【請求項5】
原料を保持する前記保持容器を前記フライ槽の外側から前記供給口に通してその内側に供給するための原料供給機構と、フライ製品を保持する前記保持容器を前記フライ槽の内側から前記排出口に通してその外側に排出するための製品排出機構とを備え、
前記原料供給機構は、前記供給口に接続される供給室と、この供給室に設けられ原料を保持する前記保持容器を前記供給室内に供給するための入口を開閉する第1供給ゲートと、前記供給口を開閉するための第2供給ゲートとを有し、
前記製品排出機構は、前記排出口に接続される排出室と、前記排出口を開閉するための第1排出ゲートと、前記排出室に設けられフライ製品を保持する前記保持容器を前記排出室から排出するための出口を開閉する第2排出ゲートとを有することを特徴とする請求項1又は4記載のフライヤー装置。
【請求項6】
前記供給室及び前記排出室に対して気体を供給及び排出するための気体給排手段を備えることを特徴とする請求項5記載のフライヤー装置。
【請求項7】
前記排出室内に収容されている前記保持容器が保持しているフライ製品から油を除去するための脱油装置を備えることを特徴とする請求項5又は6記載のフライヤー装置。
【請求項8】
前記第1供給ゲート、前記第2供給ゲート、前記第1排出ゲート、及び前記第2排出ゲートのうちのいずれかに設けられているゲート開閉機構は、前記ゲートに設けられている凸部と、前記ゲートによって閉じられる開口部の開口縁部側に設けられ前記凸部を案内するための案内部とを有し、
前記ゲートが、そのゲートによって閉じられる前記開口部の開口縁部と間隔を隔てた状態、又は接触した状態で閉じる方向に移動して、前記ゲートが閉位置に移動するときに、前記案内部が前記ゲートに設けた前記凸部に当接して、前記ゲートを前記開口縁部側に押圧するように案内して、前記開口部を密封して閉じることを特徴とする請求項5又は6記載のフライヤー装置。
【請求項9】
前記フライ槽に貯留されている揚げ油を、前記フライ槽の前記排出口に近い部分から前記フライ槽の外側に排出して、この排出された揚げ油を加熱してその加熱した揚げ油を、前記フライ槽の前記供給口に近い部分、及び前記供給口と前記排出口との略中間位置にある部分から前記フライ槽内に供給することを特徴とする請求項1記載のフライヤー装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−94295(P2010−94295A)
【公開日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−267864(P2008−267864)
【出願日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【出願人】(595076466)株式会社ドール (6)
【出願人】(506200304)株式会社アトラステクノサービス (4)
【Fターム(参考)】