フラゲリン関連ポリペプチドおよびその使用
アポトーシスの影響から哺乳動物を防護するためのフラゲリンおよびフラゲリン関連ポリペプチドの使用を記載する。薬学的有効量のフラゲリンを含む組成物を患者に投与する工程を含む、アポトーシスを誘発する1つまたは複数の治療または状態から哺乳動物を防護する方法が提供される。フラゲリンは、配列番号1、または配列番号1のフラグメント、改変体、アナログ、ホモログ、誘導体、またはその組み合わせを含み得る。フラゲリンは、TLR−5媒介活性を誘導し得る。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本願は、2004年12月22日に出願された米国仮特許出願第60/639,826号の利益を主張する。米国仮特許出願第60/639,826号は、本明細書中に参考として援用される。
【0002】
発明の分野
本発明は、アポトーシスの影響から哺乳動物を防護するためのフラゲリン関連ポリペプチドの使用に関する。より詳細には、本発明は、放射線および癌治療などのストレスへの曝露から哺乳動物を防護するためのフラゲリン関連ポリペプチドの使用に関する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
正常細胞から腫瘍細胞への進行は、負の成長調節機構の喪失(成長阻害刺激に対する耐性が含まれる)ならびに成長因子およびホルモンへの依存の欠如を伴う。放射線または細胞障害薬に基づく従来の癌治療は、正常細胞および悪生細胞の成長調節の相違に依存する。従来の癌治療は、細胞を重篤な遺伝動性ストレスに供する。これらの状態下で、大部分の正常細胞は成長が停止するようになり、それにより、生き残る一方で、腫瘍細胞は分裂し続け、死滅する。
【0004】
しかし、従来の癌治療ストラテジーは、正常な急速に分割する組織またはアポトーシス性組織を危険にさらす性質がある。これらの正常な急速に分割する細胞への損傷により、癌治療の周知の副作用(感受性組織:造血、小腸、毛包)が生じる。このような組織の天然の感受性は、癌細胞が頻繁に自殺(アポトーシス)機構を欠損し、治療手順が正常な感受性組織を死滅させるが癌細胞に損傷を与えなくなることがあるという事実によって複雑になる。癌療法の副作用を最小にするという従来の試みは、(a)腫瘍細胞の治療に対する感受性をより高めること、(b)腫瘍細胞に対する癌療法の特異性をより高めること、または(c)治療後(例えば、エリスロポイエチン、GM−CSF、およびKGF)の正常細胞の再生を促進することに基づく。
【0005】
癌治療における化学療法および放射線療法に関連する副作用を緩和するための治療薬が依然として必要とされている。本発明は、これらのニーズを満たし、他の関連する利点を提供する。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0006】
発明の概要
薬学的有効量のフラゲリンを含む組成物を患者に投与する工程を含む、アポトーシスを誘発する1つまたは複数の治療または状態から哺乳動物を防護する方法。フラゲリンは、配列番号1、または配列番号1のフラグメント、改変体、アナログ、ホモログ、誘導体、またはその組み合わせを含み得る。フラゲリンは、TLR−5媒介活性を誘導し得る。
【0007】
フラゲリンは、配列番号1のアミノ酸1〜174および418〜505と少なくとも30%同一であり得る。フラゲリンは、89位、90位、91位、95位、98位、101位、115位、422位、423位、426位、431位、436位、および452位からなる群から選択される少なくとも10個の保存アミノ酸を含み得る。フラゲリンは、配列番号1、8、10、12、30、32、34、36、38、40、42、44、46、48、50、および52からなる群から選択される配列を含み得る。
【0008】
フラゲリンを使用して、癌治療(化学療法または放射線療法であり得る)を受けている哺乳動物を治療することができる。フラゲリンを使用して、放射線を被爆した哺乳動物を治療することができる。フラゲリンを、放射線防護剤と組み合わせて投与することができる。フラゲリンを使用して、哺乳動物の創傷、中毒、細菌感染、ウイルス感染、および温度衝撃を治療することができる。フラゲリンを使用して、組織(胃腸管、肺、腎臓、肝臓、心血管系、血管内皮、中枢神経系、末梢神経系、造血前駆細胞、免疫系、および毛包が含まれる)のアポトーシスを防護することができる。フラゲリンを使用して、哺乳動物の敗血症を予防することもできる。
【0009】
本発明は、薬学的に許容可能な量のNF−κBを誘導する薬剤を含む組成物を哺乳動物に投与する工程を含む、構成性に活性なNF−κB癌を罹患した哺乳動物の治療方法に関する。薬剤は、フラゲリンであり得る。薬剤を、癌治療前、同時、または癌治療後に投与することができる。治療は、化学療法または放射線療法であり得る。
【0010】
本発明はまた、哺乳動物に薬学的に許容可能な量のNF−κBを誘導する薬剤を含む組成物を投与する工程を含む、癌治療に起因する正常組織に損傷を受けた哺乳動物の治療方法に関する。薬剤は、フラゲリンであり得る。薬剤を、癌治療前、同時、または癌治療後に投与することができる。治療は、化学療法または放射線療法であり得る。
【0011】
本発明はまた、哺乳動物に薬学的に許容可能な量のNF−κBを誘導する薬剤を含む組成物を投与する工程を含む、ストレスに起因する正常組織に損傷を受けた哺乳動物の治療方法に関する。薬剤は、フラゲリンであり得る。薬剤を、哺乳動物が罹患した疾患の治療前、同時、または治療後に投与することができる。
【0012】
本発明はまた、哺乳動物に薬学的に許容可能な量のNF−κBを誘導する薬剤を含む組成物を投与する工程を含む、哺乳動物の細胞老化の調整方法に関する。薬剤は、フラゲリンであり得る。薬剤を、哺乳動物が罹患した疾患の治療前、同時、または治療後に投与することができる。
【0013】
本発明はまた、NF−κB活性を誘導する薬剤、化学療法薬、および任意選択的に薬学的に許容可能なアジュバント、希釈剤、またはキャリアを含む薬学的組成物に関する。薬剤は、フラゲリンであり得る。
【0014】
本発明はまた、疑われる誘導因子をNF−κB活性化発現系に添加する工程と、コントロールをNF−κB活性化発現系に別で添加する工程と、それによりNF−κB活性化発現系レベルを増加させる能力によってNF−κBの誘導因子を同定することとを含む、NF−κBの誘導因子のスクリーニング方法に関する。
【0015】
本発明はまた、哺乳動物に薬学的有効量のNF−κBを誘導する薬剤を含む組成物を投与する工程を含む、哺乳動物を放射線の影響から防護する方法に関する。薬剤は、フラゲリンであってよく、これは、Salmonella属に由来し得る。組成物を、放射線防護剤と組み合わせて投与することができる。放射線防護剤は、抗酸化剤であってよく、これは、アミホスチン(amifostine)またはビタミンEであり得る。放射線防護剤はまた、サイトカインであってよく、これは、幹細胞刺激因子であり得る。
【0016】
本発明は、患者に薬学的有効量のNF−κBを誘導する薬剤を含む組成物を投与する工程を含む、アポトーシスを誘発する1つまたは複数の治療または状態から患者を防護する方法に関する。薬剤は、フラゲリンであってよく、これは、Salmonella属に由来し得る。治療は癌治療であってよく、これは、化学療法または放射線療法であり得る。状態はストレスであってよく、これは、放射線、創傷、中毒、感染、および温度衝撃であり得る。
【0017】
本発明はまた、疑われるモジュレーターを細胞ベースのアポトーシス系に添加する工程と、コントロールを細胞ベースのアポトーシス系に別で添加する工程と、それによりアポトーシス率を変化させる能力によってアポトーシスのモジュレーターを同定することと、疑われるモジュレーターが哺乳動物の寄生虫または共生生物に由来することとを含む、アポトーシスのモジュレーターのスクリーニング方法に関する。
【0018】
本発明はまた、疑われるモジュレーターをNF−κB活性化発現系に添加する工程と、コントロールをNF−κB活性化発現系に別で添加する工程と、それによりNF−κB活性化発現率を変化させる能力によってNF−κBのモジュレーターを同定することと、前記疑われるモジュレーターが、哺乳動物の寄生虫に由来することとを含む、NF−κBのモジュレーターのスクリーニング方法に関する。寄生虫は、Salmonella属、マイコプラズマ属、およびクラミジア属に由来し得るが、これらに限定されない。
【0019】
本発明はまた、本明細書中に記載の任意のスクリーニング方法によって同定されるモジュレーターに関する。本発明はまた、本明細書中に記載のモジュレーターを含む組成物に関する。組成物は、薬学的に許容可能な量の本明細書中に記載のモジュレーターを含む薬学的組成物であり得る。
【0020】
本発明はまた、アポトーシスを増強するモジュレーターを含む薬学的組成物をこのような治療を必要とする被験体に投与する工程を含む、癌の治療方法に関する。
【0021】
本発明はまた、患者にアポトーシスを阻害するモジュレーターを含む薬学的組成物を投与する工程を含む、アポトーシスを誘発する1つまたは複数の治療から患者を防護する方法を提供する。1つまたは複数の治療は、癌治療であり得る。癌治療は、化学療法または
放射線療法であり得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
(詳細な説明)
本発明は、ストレス(化学療法、放射線療法、および照射が含まれるが、これらに限定されない)によって生じたアポトーシスからの正常な細胞および組織の防護に関する。細胞におけるアポトーシスの調節には以下の2つの主な機構が存在する:p53経路(アポトーシス促進性)およびNF−κB経路(抗アポトーシス性)。両経路は、腫瘍で頻繁に無秩序化する:通常p53が喪失する一方で、NF−κBが構成性に活性になる。したがって、正常細胞におけるp53の阻害およびNF−κBの活性化により、癌治療などのストレスによって生じる死滅から正常細胞を防護することができるが、腫瘍細胞はこれらの調節機構が無秩序化されているので、腫瘍細胞により高い治療耐性を持たせられないであろう。これは、p53およびNF−κBがそれぞれ活性化および抑制の標的と考えられているp53およびNF−κBにおける従来の見解に矛盾する。
【0023】
本発明は、アポトーシスから正常細胞を防護するためのNF−κB活性の誘導に関する。哺乳動物におけるNF−κB活性の誘導により、正常細胞を、癌治療および高熱、有害線量の放射線被爆(例えば、原子力発電所、防衛産業または放射性医薬品生産の労働者、および軍人)、および細胞の老化で生じる細胞ストレスに帰するアポトーシスから防護することができる。NF−κBが多数の腫瘍細胞で構成性に活性であるので、NF−κB活性の誘導により、腫瘍細胞に有利な効果を与えることなく正常な細胞をアポトーシスから防護することができる。一旦正常な細胞が修復されると、NF−κB活性を正常レベルに修復することができる。造血系(免疫系が含まれる)、腸上皮、および毛包などの照射および化学療法感受性組織を防護するためにNF−κB活性を誘導することができる。
【0024】
NF−κB活性の誘導因子を、いくつかの他の適用に使用することもできる。種々の重篤な状態(照射、創傷、中毒、感染、老化、および温度ショックが含まれるが、これらに限定されない)への哺乳動物の被爆によって生じる病的結果および死は、ストレス応答の正常な生理学的機構の活性(プログラム細胞死(アポトーシス)の誘導または生体活性タンパク質(サイトカイン)の放出など)に起因し得る。
【0025】
アポトーシスは、通常、創傷細胞および遺伝子損傷細胞由来の組織を「浄化する」ように機能する一方で、サイトカインは、病原体に対する生物の防護系を動員するように機能を果たす。しかし、重篤な損傷の条件下では、両ストレス応答機構自体が自滅の原因として作用し得る。例えば、照射による死亡は、造血系、免疫系、および消化系で起こる大規模なp53媒介性アポトーシスに起因し得る。NF−κBの妥当な薬理学的調節により、重篤なストレス条件下での生存率が増加し得る。これらの要因の調節により、損傷器官由来の細胞の炎症応答および生死の決断の両方を調節することが可能である。NF−κB誘導因子の投与によってアポトーシスから防護することができる組織には、胃腸管、肺、腎臓、肝臓、心血管系、血管内皮、中枢神経系、末梢神経系、造血前駆細胞、免疫系、および毛包が含まれるが、これらに限定されない。
【0026】
NF−κBの防護的役割は、以下をコードする複数の遺伝子の転写活性化によって媒介される:a)両方の主なアポトーシス経路を遮断する抗アポトーシスタンパク質、b)HPおよび他の幹細胞の増殖および生存を誘導するサイトカインおよび成長因子、およびc)強力なROS除去抗酸化タンパク質(MnSOD(SOD−2)など)。したがって、放射線防護のためのNF−κBの一過性活性化により、Toll様受容体の活性化を介してNF−κBの活性化が到達する場合に達成することができる同時免疫刺激効果によって癌患者のアポトーシスの抑制だけでなく、二次癌の発生率を減少させる能力を達成することが可能である。
【0027】
標的としてのNF−κB経路の別の魅力的な特性は、候補放射線防護剤と見なすことができる多数の天然因子によるその活性化である。これらのうちでは、複数の病原体関連分子パターン(PAMP)である。PAMPは、宿主生物で見出されない分子であり、巨大な病原体群を特徴とし、容易に変異することができない。これらは、Toll様受容体(TLR)(自然免疫の重要なセンサーエレメント)によって認識される。TLRは、直接またはサイトカイン放出を介した免疫細胞の移動および活性化の誘導による免疫系の第1の警告機構として作用する。TLRは、ホモ二量体およびヘテロ二量体として作用することが公知のI型膜タンパク質である。リガンド結合の際、TLRは、MyD88タンパク質(ほとんどのTLRの不可欠なシグナル伝達アダプター)を補充する。次に起こるシグナル伝達カスケードにより、(i)NF−κB経路の活性化、および(ii)MAPK(JunN末端キナーゼ(JNK)が含まれる)の活性化が含まれる効果が導かれる。Toll様受容体リガンドによるNF−κB経路の活性化により、リガンドが潜在的な放射線防護剤として魅力的になる。サイトカインと異なり、多数のPAMPはTLRの活性化以外はほとんど効果がないので、副作用を生じる可能性が低い。さらに、多数のPAMPは、ヒトに存在する。
【0028】
その免疫細胞活性化機能と一致して、全てのTLRは、脾臓および末梢血白血球で発現し、他のリンパ器官およびリンパ球の一部でより多数のTLR特異的発現パターンが存在する。しかし、TLRは、体内の他の組織および器官でも発現する(例えば、TLR1は遍在的に発現し、TLR5は胃腸管上皮および内皮でも見出される一方で、TLR2、6、7、および8は、肺で発現することが公知である)。
【0029】
1.定義
本明細書中で使用される専門用語は特定の実施形態を説明することのみを目的とし、本発明を制限しないと理解すべきである。明細書および添付の特許請求の範囲で使用する場合、文脈上で明確に別の記載を行わない限り、単数形「a」、「an」、および「the」には複数形が含まれることに留意しなければならない。
【0030】
本明細書中で使用される、用語「投与」は、NF−κB活性を誘導する薬剤の投薬量を説明するために使用される場合、薬物の単回用量または複数回用量を意味する。
【0031】
本明細書中で使用される、用語「アナログ」は、ペプチドまたはポリペプチドの文脈で使用される場合、従来のアミノ酸組由来の1つまたは複数の非標準アミノ酸または他の構造変形形態を意味する。
【0032】
本明細書中で使用される、用語「抗体」は、IgG、IgM、IgA、IgD、もしくはIgEの抗体クラス、またはそのフラグメントもしくは誘導体(Fab、F(ab’)2、Fd、および単鎖抗体が含まれる)、ダイアボディ(diabody)、二重特異性抗体、二機能性抗体、およびその誘導体を意味する。抗体は、所望のエピトープまたはこれに由来する配列に対して十分な結合特異性を示すモノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、親和性精製抗体、またはその混合物であり得る。抗体はまた、キメラ抗体であり得る。抗体を、当該分野で公知の1つまたは複数の化学的部分、ペプチド部分、またはポリペプチド部分の結合によって誘導体化することができる。抗体を、化学部分と抱合することができる。
【0033】
本明細書中で使用される、用語「アポトーシス」は、細胞小器官の完全性が保護される細胞容積の進行性の収縮、光学顕微鏡または電子顕微鏡によって認められるクロマチンの凝縮(すなわち、核凝縮)、および/または遠心分離沈殿アッセイによって決定されるヌクレオソームサイズのフラグメントへのDNAの切断を含む細胞死の形態をいう。食細胞によるインタクトな細胞フラグメント(「アポトーシス小体」)の貪食によって細胞膜の完全性が失われた(例えば、膜小胞形成)場合に細胞死が起こる。
【0034】
本明細書中で使用される、用語「癌」は、異常な無制御の細胞分裂に起因する任意の悪性の成長または腫瘍を意味し、リンパ系または血流を介して身体の他の部分に拡大し得る。
【0035】
本明細書中で使用される、用語「癌治療」は、当該分野で公知の任意の癌治療(化学療法および放射線療法が含まれるが、これらに限定されない)を意味する。
【0036】
本明細書中で使用される、用語「〜との組み合わせ」は、NF−κB活性を誘導する薬剤の投与およびさらなる治療を説明するために使用する場合、薬剤を、さらなる治療前、同時、治療後、または規則正しく(metronomically)投与することができることを意味する。本明細書中で使用される、用語「〜共に」、「同時の」、または「同時に」は、本発明のさらなる治療および薬剤を、48時間以内、好ましくは24時間以内、より好ましくは12時間以内、さらにより好ましくは6時間以内、最も好ましくは3時間以内またはそれ未満で施すことを意味する。本明細書中で使用される、用語「規則正しく」は、さらなる治療と異なる時点且つ反復投与および/またはさらなる治療と比較して一定の頻度での薬剤の投与を意味する。
【0037】
薬剤を、さらなる治療前の任意の時点(さらなる治療の約48時間前、46時間前、44時間前、42時間前、40時間前、38時間前、36時間前、34時間前、32時間前、30時間前、28時間前、26時間前、24時間前、22時間前、20時間前、18時間前、16時間前、14時間前、12時間前、10時間前、8時間前、6時間前、4時間前、3時間前、2時間前、または1時間前が含まれるが、これらに限定されない)で投与することができる。薬剤を、さらなる治療後の一定の時点(被爆から約1時間後、2時間後、3時間後、4時間後、6時間後、8時間後、10時間後、12時間後、14時間後、16時間後、18時間後、20時間後、22時間後、24時間後、26時間後、28時間後、30時間後、32時間後、34時間後、36時間後、38時間後、40時間後、42時間後、44時間後、46時間後、または48時間後が含まれるが、これらに限定されない)で投与することができる。
【0038】
本明細書中で使用される、用語「誘導体」は、ペプチドまたはポリペプチドの文脈で使用される場合、一次構造以外が異なるペプチドまたはポリペプチド(アミノ酸およびアミノ酸アナログ)を意味する。例として、誘導体は、グリコシル化(翻訳後修飾の一形態)が異なり得る。例えば、ペプチドまたはポリペプチドは、異種系における発現に起因するグリコシル化パターンを示し得る。少なくとも1つの生物活性が保持される場合、これらのペプチドまたはポリペプチドは、本発明の誘導体である。他の誘導体には、共有結合的に修飾されたN末端またはC末端を有するペプチドまたは融合ポリペプチド、PEG化ペプチドまたはポリペプチド、脂質部分に会合したペプチドまたはポリペプチド、アルキル化ペプチドまたはポリペプチド、アミノ酸側鎖の官能基を介して他のペプチドに結合したペプチドまたはポリペプチド、ポリペプチドまたはキメラ、および当該分野で理解されているさらなる修飾物が含まれるが、これらに限定されない。
【0039】
本明細書中で使用される、用語「フラグメント」は、ペプチドまたはポリペプチドの文脈で使用される場合、基準ペプチドまたはポリペプチドの一部を意味する。
【0040】
本明細書中で使用される、用語「ホモログ」は、ペプチドまたはポリペプチドの文脈で使用される場合、共通の進化上の祖先を有するペプチドまたはポリペプチドを意味する。
【0041】
本明細書中で使用される、用語「処置する」または「処置」は、状態からの哺乳動物の防護をいう場合、状態の予防、抑制、防止、または消失を意味する。状態の予防は、状態の発症前に本発明の組成物を哺乳動物に投与する工程を含む。状態の抑制は、状態の誘導後であるがその臨床的外観前に哺乳動物に本発明の組成物を投与する工程を含む。状態の防止は、状態が軽減または維持されるように状態の臨床的外観後に哺乳動物に本発明の組成物を投与する工程を含む。溶媒の消失は、哺乳動物がもはや状態を罹患しないように状態の臨床的外観後に哺乳動物に本発明の組成物を投与する工程を含む。
【0042】
本明細書中で使用される、用語「腫瘍細胞」は、癌に関連する任意の細胞を意味する。
【0043】
本明細書中で使用される、用語「改変体」は、ペプチドまたはポリペプチドの文脈で使用される場合、アミノ酸の挿入、欠失、または保存的置換によってアミノ酸配列が異なるが、少なくとも1つの生物活性を保持するペプチドまたはポリペプチドを意味する。「生物活性」の代表例には、TLR5に結合する能力および特異的抗体によって結合される能力が含まれるが、これらに限定されない。アミノ酸の保存的置換(すなわち、アミノ酸の類似の性質(例えば、親水性、荷電領域の程度および分布)を有する異なるアミノ酸への置換)は、当該分野で典型的には小さな変化と認識されている。これらの小さな変化を、当該分野で理解されているように、アミノ酸のヒドロパシー指標を考慮することによって一部を同定することができる。Kyte et al,J.MoI.Biol.157:105−132(1982)。アミノ酸のヒドロパシー指標は、その疎水性および電荷の考慮に基づく。類似のヒドロパシー指標のアミノ酸を置換することができ、且つタンパク質機能を保持することができることが当該分野で公知である。1つの態様では、ヒドロパシー指標が±2のアミノ酸を置換する。アミノ酸の親水性を使用して置換することができ、これにより、生物機能が保持されたタンパク質が得られるであろう。ペプチドにおけるアミノ酸の親水性の考慮により、このペプチドの最も高い局所平均疎水性(抗原性および免疫原性と十分に相関すると報告されている有用な基準)を計算することが可能である(米国特許第4,554,101号(本明細書中で参考として援用される))。当該分野で理解されているように、類似の親水性値を有するアミノ酸の置換により、生物活性(例えば、免疫原性)が保持されたペプチドを得ることができる。1つの態様では、互いに親水性値が±2以内のアミノ酸と置換することができる。アミノ酸の疎水性指標および親水性値は共に、そのアミノ酸の特定の側鎖に影響を受ける。その所見と一致して、生物機能と適合するアミノ酸置換は、疎水性、親水性、電荷、サイズ、および他の性質によって明らかとなるアミノ酸の相対的類似性、特に、そのアミノ酸の側鎖に依存すると理解されている。
【0044】
2.治療方法
a.構成性に活性なNF−κB腫瘍
本発明は、治療有効量のNF−κB活性を誘導する薬剤を含む組成物を哺乳動物に投与する工程を含む、構成性に活性なNF−κB癌を罹患した哺乳動物を治療する方法に関する。NF−κB活性を誘導する薬剤を、癌治療(化学療法および放射線療法など)と組み合わせて投与することができる。
【0045】
癌治療は、細胞傷害薬、細胞増殖抑制薬、またはその組み合わせの投与を含み得る。細胞傷害薬は、(1)細胞のDNA複製能力の妨害、および(2)癌細胞の細胞死および/またはアポトーシスの誘導によって癌細胞の増殖を予防する。細胞傷害薬は、細胞シグナル伝達過程の調整、妨害、または阻害を介して作用し、細胞増殖をしばしば低継続レベルで調節する。
【0046】
細胞傷害薬として使用することができる化合物クラスには、以下が含まれるが、これらに限定されない:アルキル化薬(ナイトロジェンマスタード、エチレンイミン誘導体、アルキルスルホン酸、ニトロソ尿素、およびトリアゼンが含まれるが、これらに限定されない):ウラシルマスタード、クロルメチン、シクロホスファミド(Cytoxan(登録商標))、イホスファミド、メルファラン、クロラムブシル、ピポブロマン、トリエチレン−メラミン、トリエチレンチオホスホラミン(triethylenethiophosphoramine)、ブスルファン、カルムスチン、ロムスチン、ストレプトゾシン、ダカルバジン、およびテモゾロミド;代謝拮抗薬(葉酸アンタゴニスト、ピロリジンアナログ、プリンアナログ、およびアデノシンデアミナーゼインヒビターが含まれるが、これらに限定されない):メトトレキサート、5−フルオロウラシル、フロクスウリジン、シタラビン、6メルカプトプリン、6−チオグアニン、リン酸フルダラビン、ペントスタチン、およびゲムシタビン;天然物およびその誘導体(例えば、ビンカアルカロイド、抗腫瘍性抗生物質、酵素、リンホカイン、およびエピポドフィロトキシン(epipodophyllotoxins)):ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン、ブレオマイシン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、エピルビシン、イダルビシン、ara−c、パクリタキセル(パクリタキセルは、タキソール(登録商標)として市販されている)、ミトラマイシン、デオキシコホルマイシン、マイトマイシン−c、1−アスパラギナーゼ、インターフェロン(好ましくは、インターフェロン−α)、エトポシド、およびテニポシド。他の増殖性細胞傷害薬は、ナベルベン(navelbene)、CPT−11、アナストラゾール(anastrazole)、レトラゾール(letrazole)、カペシタビン、レオキサフィン(reloxafine)、シクロホスファミド、イフォスファミド、およびドロロキサフィン(droloxafine)である。
【0047】
微小管作用薬は細胞の有糸分裂を妨害し、その細胞傷害活性が当該分野で周知である。本発明で有用な微小管作用薬には、アロコルヒチン(allocolchicine)(NSC 406042)、ハリコンドリンB(NSC 609395)、コルヒチン(NSC 757)、コルヒチン誘導体(例えば、NSC 33410)、ドラスタチン10(dolastatin 10)(NSC 376128)、マイタンシン(maytansine)(NSC 153858)、リゾキシン(NSC 332598)、パクリタキセル(Taxol(登録商標)、NSC 125973)、タキソール(登録商標)誘導体(例えば、誘導体(例えば、NSC 608832)、チオコルヒチン(thiocolchicine)(NSC 361792)、トリチルシステイン(NSC 83265)、硫酸ビンブラスチン(NSC 49842)、硫酸ビンクリスチン(NSC 67574)、天然および合成エポシロン(エポシロンA、エポシロンB、およびディスコデルモリド(Service,(1996)Science,274:2009を参照のこと)が含まれるが、これらに限定されない)、エストラムスチン、ノコダゾール、およびMAP4などが含まれるが、これらに限定されない。このような薬剤の例は、Bulinski(1997)J.Cell Sci.110:3055 3064;Panda(1997)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 94:10560−10564;Muhlradt(1997)Cancer Res.57:3344−3346;Nicolaou(1997)Nature 387:268−272;Vasquez(1997)MoI.Biol.Cell.8:973−985;およびPanda(1996)J.Biol.Chem 271:29807−29812にも記載されている。
【0048】
エピドフィロトキシン(epidophyllotoxin)などの細胞傷害薬;抗新生物酵素;トポイソメラーゼインヒビター;プロカルバジン;ミトキサントロン;シスプラチンおよびカルボプラチンなどの白金配位複合体;生物学的応答調節物質;成長抑制物質;抗ホルモン治療薬;ロイコボリン(leucovorin);テガフール;および造血成長因子などの細胞傷害薬も適切である。
【0049】
使用することができる細胞増殖抑制薬には、ホルモンおよびステロイド(合成アナログが含まれる):17α−エチニルエストラジオール、ジエチルスチルベストロール、テストステロン、プレドニゾン、フルオキシメステロン、プロピオン酸ドロモスタノロン、テストラクトン、メゲストロラセテート(megestrolacetate)、メチルプレドニゾロン、メチルテストステロン、プレドニゾロン、トリアムシノロン、クロロトリアニセン(hlorotrianisene)、ヒドロキシプロゲステロン、アミノグルテチミド、エストラムスチン、酢酸メドロキシプロゲストロン(medroxyprogesterone acetate)、リュープロリド、フルタミド、トレミフェン、ゾラデックス(zoladex)が含まれるが、これらに限定されない。
【0050】
他の細胞増殖抑制薬は、マトリックスメタロプロテイナーゼインヒビターなどの抗血管新生薬、抗VEGF抗体などの他のVEGFインヒビター、ZD6474およびSU6668などの小分子である。Genetechの抗Her2抗体も使用することができる。適切なEGFRインヒビターは、EKB−569(不可逆性インヒビター)である。EGFRに免疫特異的なImclone抗体C225およびsrcインヒビターも含まれる。
【0051】
アンドロゲン依存性癌腫を非増殖性にするカソデックス(登録商標)(bicalutamide,Astra Zeneca)も細胞増殖抑制薬としての使用に適切である。細胞増殖抑制薬のさらに別の例は、エストロゲン依存性乳癌の増殖または成長を阻害する抗エストロゲンであるタモキシフェン(登録商標)である。細胞増殖シグナル伝達のインヒビターは、細胞増殖抑制薬である。代表例には、上皮細胞成長因子インヒビター、Her−2インヒビター、MEK−I キナーゼインヒビター、MAPKキナーゼインヒビター、PI3インヒビター、Srcキナーゼインヒビター、およびPDGFインヒビターが含まれる。
【0052】
種々の癌を本発明にしたがって治療することができ、癌には、以下が含まれるが、これらに限定されない:膀胱(進行性および転移性膀胱癌が含まれる)、乳房、結腸(直腸結腸癌が含まれる)、腎臓、肝臓、肺(小細胞肺癌および非小細胞肺癌)、卵巣、前立腺、精巣、尿生殖路、リンパ系、直腸、喉頭、膵臓(外分泌膵癌が含まれる)、食道、胃、胆嚢、頚部、甲状腺、皮膚(扁平上皮癌が含まれる)の癌腫;リンパ系の造血器腫瘍(白血病、急性リンパ性白血病、急性リンパ性白血病、B細胞リンパ腫、T細胞リンパ腫、ホジキンリンパ腫、非−ホジキンリンパ腫、毛様細胞リンパ腫、組織球性リンパ腫、バーキットリンパ腫が含まれる);骨髄細胞系列の造血器腫瘍(急性および慢性骨髄性白血病、骨髄異形成症候群、骨髄性白血病、および前骨髄球性白血病が含まれる);中枢神経系および末梢神経系の腫瘍(星細胞腫、神経芽細胞腫、神経膠腫、シュワン腫が含まれる);間葉系起源の腫瘍(線維肉腫、横紋筋肉縮、および骨肉腫が含まれる);ならびに他の腫瘍(メラノーマ、色素性乾皮症(xenoderma pigmentosum)、ケラトアクタンソーマ(keratoactanthoma)、精上皮腫、甲状腺濾胞癌、奇形癌腫、および胃腸管または腹骨盤腔の癌。
【0053】
b.癌治療由来の副作用の治療
本発明はまた、哺乳動物に治療有効量のNF−κB活性を誘導する薬剤を含む組成物を投与する工程を含む、構成性に活性なNF−κB癌の治療に起因する正常組織に対する損傷を被った哺乳動物の治療方法に関する。NF−κB活性を誘導する薬剤を、上記の癌治療と組み合わせて投与することができる。
【0054】
c.細胞老化の調節
本発明はまた、哺乳動物に治療有効量のNF−κB活性を誘導する薬剤を投与する工程を含む、哺乳動物の細胞老化を調整する方法に関する。NF−κB活性を誘導する薬剤を、他の治療と組み合わせて投与することができる。
【0055】
d.ストレスの治療
本発明はまた、哺乳動物に薬学的に治療有効量のNF−κB活性を誘導する薬剤を含む組成物を投与する工程を含む、ストレスに起因する正常組織に損傷を受けた哺乳動物の治療方法に関する。NF−κB活性を誘導する薬剤を、他の治療と組み合わせて投与することができる。ストレスは、任意の起源(照射、創傷、中毒、感染、および温度ショックが含まれるが、これらに限定されない)に起因し得る。
【0056】
e.照射
本発明はまた、放射線の被爆効果からの細胞の防護に関する。電離放射線由来の正常細胞の損傷および死滅は、被爆細胞の直接的な照射誘導性損傷と自殺による死滅またはアポトーシスを引き起こす照射誘導性ストレスに対する活性な遺伝的プログラム細胞反応との組み合わせである。アポトーシスは、いくつかの放射線感受性器官(すなわち、造血系および免疫系、消化管の上皮など)で生じる大規模な細胞喪失で重要な役割を果たし、その不全が器官の一般的な放射線感受性を決定づける。
【0057】
電離放射線(IR)への被爆は短期間でも長期間でもよく、単回または複数回の線量として、全身または局所に適用することができる。したがって、原発事故または軍事攻撃は、単回の高線量の全身被爆(時折、その後の放射性同位体での長期中毒)を含み得る。造血器官を宿主血液前駆体から「浄化する」ことによってドナー骨髄のために造血器官を調製することが必要である場合の骨髄移植患者の前処置(適用線量を厳格に調節した)についても同様である。癌治療は、全身照射として適用する場合致死線量を非常に超える局所照射の複数回線量を含み得る。放射性同位体での中毒または治療は、標的化器官(例えば、125I吸入の場合の甲状腺)の照射によって長期間局所被爆させる。最後に、生物学的影響の重症度が有意に異なる電離放射線の物理的形態が多数存在する。
【0058】
分子レベルおよび細胞レベルで、放射粒子(radiation particle)は、DNA、タンパク質、細胞膜、および他の高分子構造中の破損および架橋を精製することができる。電離放射線はまた、フリーラジカルおよび活性酸素種(ROS)の生成によって細胞成分に対する二次的損傷を誘導する。複数の修復系(DNAの完全性および忠実性を修復するいくつかのDNA修復経路ならびにフリーラジカルおよびROSを除去して酸化タンパク質および脂質を還元する抗酸化化学物質および酵素など)によってこの損傷を無効にする。細胞チェックポイント系(checkpoint system)は、DNAの欠損を検出し、損傷が修復されるか、細胞に成長停止またはプログラム細胞死(アポトーシス)を実行させる決定に到達するまで細胞周期の進行を遅延させる。
【0059】
照射により、哺乳動物の器官が低線量での軽度の変異誘発および発癌効果から高線量によるほとんど即時の死滅までの範囲の損傷を受け得る。成分の全放射線感受性を、いくつかの感受性組織(造血系、生殖系、および細胞代謝回転率が高い異なる上皮が含まれる)で生じた病理学的変化によって決定する。
【0060】
死亡を誘導するγ線照射の急性の病理学的結果は、線量によって異なり、特定の各線量に対する生物の感受性の閾値を規定する一定の器官の不全によって決定される。したがって、低線量での死亡は骨髄形成不全から生じる一方で、中程度の線量では胃腸管(GI)症候群の誘導によってより早く死亡する。非常に高い線量の照射により、神経変性の誘発によってほぼ即死し得る。
【0061】
照射による一定の急性毒性期間を生存する生物は、長期遠隔性の結果(照射から数ヵ月後および数年後の被爆器官(例えば、腎臓、肝臓、または肺)における照射誘導性発癌および線維症が含まれる)を罹患し得る。
【0062】
細胞DNAは、直接および間接的(フリーラジカルベースの)機構による種々のDNA損傷型(遺伝毒性ストレス)を生じるIRの主な標的である。全生物は、照射損傷DNAの有効な回復が可能なDNA修復系を維持するが、DNA修復過程のエラーによって変異し得る。
【0063】
腫瘍は、一般に、γ線照射により感受性が高く、正常組織に対する損傷が比較的低い低線量で複数回処置することができる。それにもかかわらず、いくつかの例では、正常組織の損傷は、癌治療のためのγ線照射の適用を制限する因子である。従来の三次元原体照射またはさらにより集束したBeamCath送達による癌療法におけるγ線照射の使用はまた、照射の蓄積作用および急速に新生される正常組織(骨髄および胃腸(GI)管など)の幹細胞の損傷の誘導に起因する毒性のために線量が制限される。
【0064】
高線量では、照射誘導性死亡は、いわゆる造血器および胃腸管の放射線症候群に関連する。造血器症候群は、血液およびリンパ系の再生を不可能にする造血細胞およびその前駆細胞の喪失によって特徴づけられる。通常、感染(免疫抑制の結果)、出血、および/または貧血の結果として死亡する。GI症候群は、主に小腸の腸上皮の大規模な細胞死およびその後の腸壁の崩壊ならびに菌血症および敗血症由来の死滅に起因する。造血器症候群は、通常、低線量の照射で発症し、GI症候群よりも遅れて死滅する。
【0065】
以前は、放射線防護剤は、典型的には、抗酸化剤(合成および天然の両方)であった。最近になって、サイトカインおよび成長因子が放射線防護剤のリストに加わっている。その放射線防護剤の機構は、感受性組織の再生効果の促進の結果であるとみなされている。両放射線防護剤群の間に明確な機能の差は存在しないが、いくつかのサイトカインは、細胞抗酸化タンパク質(マンガンスーパーオキシドジスムターゼ(MnSOD)およびメタロチオネインなど)の発現を誘導する。
【0066】
特定の薬剤の防護基準を、線量修飾係数(DMFまたはDRF)によって示す。DMFは、放射線防護剤処置被験体および未処置コントロール被験体への一定範囲の放射線量での照射およびその後の生存またはいくつかの他の評価項目の比較によって決定される。DMFは、一般に、30日生存(LD50/30薬物処置からLD50/30賦形剤処置を割る)を計算し、造血系の防護を定量する。胃腸系防護を評価するために、6日生存または7日生存についてLD50およびDMFを計算する。他で示さない限り、本明細書中に提供したDMF値は30日である。
【0067】
以下に示すように、NF−κBの誘導因子は、細胞レベルおよび生物全体として強い生存促進(pro−survival)活性を有する。超致死線量の照射に応答して、NF−κBの誘導因子は、胃腸系および造血系症候群の両方を阻害するが、これが急性放射線被爆による死亡の主な原因である。これらの特性の結果として、NF−κBの誘導因子を使用して、天然の照射事象および原発事故の影響を治療することができる。さらに、NF−κBの誘導因子が現在公知の全ての放射線防護剤と異なる機構を介して作用するので、これらを、他の放射線防護剤と組み合わせて使用し、それにより、電離放射線からの防護規模を劇的に増大させることができる。
【0068】
従来の放射線防護剤(例えば、フリーラジカルの捕捉剤)と対照的に、NF−κB活性の誘導因子は、一次照射媒介性損傷を軽減することができないが、二次事象(一次損傷に対する活性細胞反応を含む)に対して作用することができるので、既存の一連の防護を補足することができる。ピフィスリンα(p53の薬理学的インヒビター)(哺乳動物細胞における照射反応の重要なメディエーター)は、この新規の放射線防護剤クラスの例である。しかし、p53インヒビターの活性は、造血系の防護に限定され、消化管(胃腸管症候群)に防護効果を示さないので、これらの化合物の治療価値が減少する。広範な活性を示す抗アポトーシス性医薬品が非常に必要とされている。
【0069】
NF−κBの誘導因子を放射線防護剤として使用して、現在利用可能な手段(遮蔽および既存の生物防護剤(bioprotective agent)の適用)によって達成可能なレベルを超える放射線耐性に増加させることによって許容照射範囲を拡大し、例えば、発電所内の原発事故または宇宙飛行中の大規模態様粒子現象における生存機会を増大させることができる。1.5を超えるほぼDMF(30日生存)では、NF−κB誘導因子であるフラゲリンは、任意の現在報告されている天然化合物よりも有効である。
【0070】
NF−κBの誘導因子はまた、例えば、中枢神経系および生殖器官における低線量照射に起因する代替不可能な細胞の喪失の治療に有用であり得る。NF−κBの誘導因子を、癌化学療法時に使用して、化学療法に関連する副作用(脱毛症が含まれる)を治療することもできる。
【0071】
1つの実施形態では、治療有効量のNF−κBの誘導因子を含む組成物を哺乳動物に投与して被爆した哺乳動物を治療する。NF−κBの誘導因子を含む組成物を、1つまたは複数の放射線防護剤と組み合わせて投与することができる。1つまたは複数の放射線防護剤は、被爆の影響を処置する任意の薬剤(抗酸化剤、フリーラジカル捕捉剤、およびサイトカイン)であり得る。
【0072】
NF−κBの誘導因子は、DNAおよび他の細胞構造の損傷に応答した照射誘導性プログラム細胞死を阻害することができるが、NF−κBの誘導因子は、細胞レベルでの損傷に対応することができず、変異を防止することができない。フリーラジカルおよび活性酸素種(ROS)は、変異および他の細胞内損傷の主な原因である。抗酸化剤およびフリーラジカル捕捉剤は、フリーラジカルによる損傷の防止で有効である。NF−κBの誘導因子と抗酸化剤またはフリーラジカル捕捉剤との組み合わせにより、被爆による損傷の拡大を減少させ、生存率を高め、健康を改善することができる。本発明の実施で使用することができる抗酸化剤およびフリーラジカル捕捉剤には、チオール(システイン、システアミン、グルタチオン、およびビリルビンなど);アミフォスチン(WR−2721);ビタミンA;ビタミンC;ビタミンE;およびフラボノイド(インディアンホリーバジル(オシマム・サンクタム(Ocimum sanctum))由来のオリエンチン(orientin)およびビセニン(vicenin)など)が含まれるが、これらに限定されない。
【0073】
NF−κBの誘導因子を、放射線感受性幹細胞集団の補充および/または防護によって放射線防護性を付与する多数のサイトカインおよび成長因子と組み合わせて投与することもできる。幹細胞因子(SCF、c−kitリガンド)、Flt−3リガンド、およびインターロイキン1フラグメントであるIL−1b−rdの使用によって副作用を最小にした放射線防護を達成することができる。幹細胞(記載の全サイトカイン)の増殖の誘導およびそのアポトーシス(SCF)の防止によって防護を達成することができる。処置により、照射前に白血球およびその前駆体を蓄積することが可能であり、それにより、照射後に免疫系をより迅速に再構成することが可能である。SCFは、1.3〜1.35の範囲のDMFの致死線量照射マウスを有効に救出し、且つ胃腸管症候群にも有効である。Flt−3リガンドもまた、マウス(LD100/30で70〜80%の30日生存、DMF>1.2に相当)およびウサギで強い防護を示す。
【0074】
さらに、以下などのサイトカインの組み合わせによって放射線防護を増強することができる:インターロイキン4(IL−4)および/またはインターロイキン11(IL−11)と組み合わせたTPO;IL−3と組み合わせたGM−CSF;Flt−3リガンドと組み合わせたG−CSF;4F組み合わせ:SCF、Flt−3リガンド、TPO、およびIL−3;ならびに5F組み合わせ:SDF−1を加えた4F。
【0075】
さらに、胃腸管放射線防護剤(形質転換成長因子β3(TGFb3)、インターロイキン11(IL−11)、および記載のケラチノサイト成長因子(KGF)が含まれる)を使用することができる。これらの放射線防護剤も腸を防護するが、これらは、フラゲリンまたはフラゲリン関連ポリペプチドと相乗効果を示す可能性が高い。なぜなら、下記の結果がフラゲリンおよびフラゲリン関連ポリペプチドが内皮を防護する一方で、これらの胃腸管放射線防護剤がGI管の上皮を防護することを示すからである。
【0076】
いくつかの因子(本来はサイトカインではないが)は、免疫細胞の増殖を刺激し、NF−κBの誘導因子と組み合わせて使用することができる。例えば、5−AED(5−アンドロステンジオール)は、サイトカインの発現を刺激して細菌感染およびウイルス感染への耐性を増加させるステロイドである。照射24時間前のマウスへの5−AEDの皮下注射により、生存がDMF=1.26に改善された。合成化合物(アンモニウムトリクロロ(ジオキソエチレン−O,O’−)テルレート(AS−101)など)を使用して、多数のサイトカインの分泌を誘導し、NF−κBの誘導因子と組み合わせることもできる。さらなる放射線防護剤には、成長ホルモン(GH)、トロンボポイエチン(TPO)、インターロイキン3(IL−3)、顆粒球−マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)、顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)、および間質由来因子1(stromal derived factor−1)(SDF−1)が含まれる。
【0077】
成長因子およびサイトカインを使用して、胃腸管症候群から防護することもできる。ケラチノサイト成長因子(KGF)は、腸粘膜の増殖および分化を促進し、腸陰窩中の照射後細胞生存を増加させる。造血サイトカインおよび放射線防護性SCFは、腸幹細胞の生存および関連する短期生物生存も増加させることができる。
【0078】
NF−κBの誘導因子は、胃腸(GI)症候群および造血器症候群からの防護を付与することができる。15Gyの全身致死線量照射を受けたマウスのほとんどがGI症候群によって死亡するので、NF−κBの誘導因子および1つまたは複数のGI症候群のインヒビターを含む組成物はより有効であり得る。本発明の実施で使用することができるGI症候群のインヒビターには、SCFおよびKGFなどのサイトカインが含まれるが、これらに限定されない。
【0079】
NF−κBの誘導因子を含む組成物を、被爆前の任意の時点(被爆の約48時間前、46時間前、44時間前、42時間前、40時間前、38時間前、36時間前、34時間前、32時間前、30時間前、28時間前、26時間前、24時間前、22時間前、20時間前、18時間前、16時間前、14時間前、12時間前、10時間前、8時間前、6時間前、4時間前、3時間前、2時間前、または1時間前が含まれるが、これらに限定されない)で投与することができる。NF−κBの誘導因子を含む組成物を、被爆後の任意の時点(被爆から約1時間後、2時間後、3時間後、4時間後、6時間後、8時間後、10時間後、12時間後、14時間後、16時間後、18時間後、20時間後、22時間後、24時間後、26時間後、28時間後、30時間後、32時間後、34時間後、36時間後、38時間後、40時間後、42時間後、44時間後、46時間後、または48時間後が含まれるが、これらに限定されない)で投与することができる。
【0080】
f.敗血症
本発明はまた、治療有効量のNF−κB活性を誘導する薬剤を含む組成物を哺乳動物に投与する工程を含む、哺乳動物の敗血症の予防方法に関する。NF−κB活性を誘導する薬剤を、他の治療と組み合わせて投与することができる。
【0081】
ウイルス感染または細菌感染は、Toll様受容体(TLR)リガンドを介した自然免疫系を刺激し得る。マクロファージを、その表面上のTLR5の存在によるフラゲリンおよびフラゲリン関連ポリペプチドによって防護および/または刺激することができる。例えば、炭疽菌感染症の発症における重要段階は、炭疽菌内でのマクロファージの死滅である。フラゲリンおよびフラゲリン関連ポリペプチドを使用した種々のストレスからの腸内皮の防護により、GI細胞死を予防し、病原菌のGI壁の透過を予防することもでき、それにより、エボラなどの感染によって生じるGI出血を予防することができる。他の出血性ウイルス感染症を、内皮および胃腸管上皮の救出によって予防することもできる。
【0082】
3.薬剤
本発明はまた、NF−κB活性を誘導する薬剤に関する。薬剤は、人工的に合成された化合物または天然に存在する化合物であり得る。薬剤は、低分子量の化合物、ポリペプチド、ペプチド、そのフラグメント、アナログ、ホモログ、改変体、または誘導体であり得る。
【0083】
薬剤はまた、NF−κB誘導サイトカイン(IL12、IL6、TNF、およびTGFβが含まれるが、これらに限定されない)であり得る。薬剤はまた、プロスタグランジンであり得る。薬剤はまた、成長因子(KGFおよびPDGFが含まれるが、これらに限定されない)であり得る。薬剤はまた、NF−κB活性を誘導する抗体であり得る。
【0084】
a.フラゲリン
1つの実施形態では、NF−κB活性を誘導する薬剤はフラゲリンである。以下の実施例に示すように、フラゲリンおよびフラゲリン関連ポリペプチドは、細胞レベルおよび生物全体として強い生存促進活性を有する。興味深いことに、フラゲリンはまた、抗腫瘍免疫の主成分であるナチュラルキラー(NK)細胞およびTリンパ球を刺激する(Tsujimoto H,et.al.,J Leukoc Biol.2005 Oct;78(4):888−97;Caron G.,et.al.,J Immunol.2005 Aug l;175(3):1551−7;Honko AN & Mizel SB,Immunol Res.2005;33(l):83−101)。結果として、フラゲリンを、癌治療で放射線防護剤として使用することができる。
【0085】
本発明はまた、フラゲリン関連ポリペプチド(本明細書中に記載のポリペプチドなど)に関する。本明細書中で使用される、用語「フラゲリン」は、任意の供給源(グラム陽性細菌種およびグラム陰性細菌種が含まれる)由来のフラゲリンまたはフラゲリン関連ポリペプチドを意味することを意図する。23種の細菌由来のフラゲリンのアミノ酸配列は、米国特許出願番号2003/0044429号(その内容が本明細書中で参考として援用される)の図7に示されている。米国特許出願番号2003/0044429号の図7に列挙したフラゲリンポリペプチドをコードするヌクレオチド配列は、供給源(NCBI Genbankデータベースが含まれる)から公的に利用可能である。
【0086】
フラゲリンは、細菌鞭毛の主成分である。フラゲリンは、3つのドメインから構成される(図9)。ドメイン1(D1)およびドメイン(D2)は、不連続であり、アミノ末端およびカルボキシ末端中の残基がヘアピン構造の形成によって並列した場合に形成される。D1ドメインおよびD2ドメインを含むアミノ末端およびカルボキシ末端が最も保存されるのに対して、中間の超可変ドメイン(D3)は、可変性が非常に高い。Escherichia coliヒンジによって分離されたアミノD1およびD2ならびにカルボキシD1およびD2を含む組換えタンパク質(ND1−2/ECH/CD2)を使用した研究は、ECHエレメントと結合した場合にD1およびD2が生物活性を示すことを示す。このキメラ(ヒンジのみではない)は、2つの腸上皮細胞株においてIκBαの分解、NF−κB活性化、ならびにNOおよびIL−8の産生を誘導した。非保存D3ドメインは、鞭毛フィラメントの表面上に存在し、主な抗原エピトープを含む。フラゲリンの強力な炎症促進活性は、高度に保存されたNおよびCのD1およびD2領域に存在し得る。
【0087】
フラゲリンは、Toll様受容体5(TLR5)への結合によってNF−κB活性を誘導する。TLRファミリーは、少なくとも10メンバーから構成され、病原体に対する自然免疫防護で不可欠である。自然免疫系は、細菌病原体上で保存された病原体関連分子パターン(PAMP)を認識する。TLRは、細菌フラゲリンに特別な保存構造を認識し得る。保存構造は、アミノ酸含有量の変動がいくらか許容される巨大な残基群から構成され得る。Smith et al.,Nat Immunol.4:1247−53(2003)は、TLR5によって認識される保存構造の一部であるフラゲリン中の13個の保存アミノ酸を同定した。TLR5活性に重要なフラゲリンの13個の保存アミノ酸を、図24に示す。
【0088】
好ましい実施形態では、フラゲリンは、Salmonella属に由来し、その代表例は、S.dublin(GenBankアクセッション番号M84972によってコードされる)(配列番号1)である。別の好ましい実施形態では、フラゲリン関連ポリペプチドは、TLR5に結合してTLR5媒介活性(NF−κB活性の活性化など)を誘導する配列番号1のフラグメント、改変体、アナログ、ホモログ、誘導体、またはその組み合わせである。フラゲリンのフラグメント、改変体、アナログ、ホモログ、または誘導体を、フラゲリンのドメイン構造およびTLR5によって認識される保存構造に基づいた理論ベースのデザインによって得ることができる。
【0089】
より好ましい実施形態では、配列番号1のフラグメント、改変体、アナログ、ホモログ、誘導体、またはその組み合わせは、図24に示す少なくとも10、11、12、または13個の保存アミノ酸(89位、90位、91位、95位、98位、101位、115位、422位、423位、426位、431位、436位、および452位)を含む。別のより好ましい実施形態では、配列番号1のフラグメント、改変体、アナログ、ホモログ、誘導体、またはその組み合わせのアミノ末端およびカルボキシ末端は、配列番号1のアミノ酸1〜174および418〜505と少なくとも30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%、98%、または99%同一である。図26は、配列番号1と比較した既知のTLR−5刺激活性を有するフラゲリンのアミノ末端およびカルボキシ末端の同一率を列挙する。
【0090】
フラゲリンホモログは、任意のグラム陽性細菌種およびグラム陰性細菌種由来のフラゲリンポリペプチド(米国特許出願番号2003/000044429号(その内容が本明細書中で参考として援用される)に開示のフラゲリンポリペプチドおよび図25に示すBLASTの結果に列挙したアクセッション番号に対応するフラゲリンペプチドが含まれるが、これらに限定されない)であり得る。フラゲリンホモログのフラグメント、改変体、アナログ、ホモログ、および誘導体も意図される。
【0091】
フラゲリンフラグメントは、TLR5活性を刺激するフラゲリンポリペプチドの一部であり得る。少なくともいくらかのTLR5刺激活性を保持する多数のフラゲリンの欠失変異体が作製されている。本明細書中の実施例に開示の欠失変異体に加えて、代表的な欠失変異体には、アミノ酸185〜306または444〜492を欠くGenBankアクセッション番号D13689の翻訳物およびアミノ酸179〜415を欠くGenBankアクセッション番号M84973の翻訳物が含まれる。フラゲリンフラグメントのホモログ、改変体、アナログ、および誘導体も意図される。
【0092】
フラゲリン改変体には、トランスポゾンが挿入され、可変D3ドメインに変化したフラゲリンポリペプチドが含まれる。改変体がTLR5活性を刺激するようにD3ドメインの一部または全部をD1およびD2ドメインを適切に折り畳むことが可能なヒンジまたはリンカーポリペプチドに置換することができる。変異ヒンジエレメントの代表例は、Escherichia coliMukBタンパク質ならびに配列番号3および4に見出すことができる。フラゲリン改変体のフラグメント、ホモログ、アナログ、および誘導体も意図される。
【0093】
4.組成物
本発明はまた、治療有効量のNF−κBの誘導因子を含む組成物に関する。組成物は、当該分野で周知の方法を使用して生成することができる薬学的組成物であり得る。上記のように、NF−κBの誘導因子を含む組成物を、アポトーシスに関連する状態(被爆、癌治療の副作用、ストレス、および細胞老化が含まれるが、これらに限定されない)の治療のために哺乳動物に投与することができる。組成物はまた、さらなる薬剤(放射線防護剤または化学療法薬が含まれるが、これらに限定されない)を含み得る。
【0094】
a.投与
本発明の組成物を、任意の様式で(経口、非経口、舌下、経皮、直腸、経粘膜、局所、吸入、口腔投与、胸腔内、またはその組み合わせが含まれるが、これらに限定されない)投与することができる。非経口投与には、静脈内、動脈内、腹腔内、皮下、筋肉内、鞘内、および関節内が含まれるが、これらに限定されない。経粘膜投与には、鼻腔内投与が含まれるが、これらに限定されない。動物のために、組成物を、通常の獣医学診療に関する適切に許容可能な処方物として投与することができる。獣医は、特定の動物に最も適切な投与計画および投与経路を容易に決定することができる。
【0095】
組成物を、アポトーシスを誘発するストレスまたはその組み合わせの前、後、または同時に投与することができる。組成物を、アポトーシスを誘発するストレスへの曝露の約1
〜約48時間前または後に投与することができる。
【0096】
b.処方物
本発明の組成物は、従来の様式で処方された錠剤またはロゼンジの形態であり得る。例えば、経口投与のための錠剤およびカプセルは、従来の賦形剤(結合剤、充填剤、潤滑剤、崩壊剤、および湿潤剤が含まれるが、これらに限定されない)を含み得る。結合剤には、シロップ、アカシア、ゼラチン、ソルビトール、トラガカント、デンプンの粘液、およびポリビニルピロリドンが含まれるが、これらに限定されない。充填剤には、ラクトース、糖、微結晶性セルロース、トウモロコシデンプン、リン酸カルシウム、およびソルビトールが含まれるが、これらに限定されない。潤滑剤には、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、タルク、ポリエチレングリコール、およびシリカが含まれるが、これらに限定されない。崩壊剤には、ジャガイモデンプンおよびデンプングリコール酸ナトリウムが含まれるが、これらに限定されない。湿潤剤には、ラウリル硫酸ナトリウムが含まれるが、これらに限定されない。錠剤を、当該分野で周知の方法によってコーティングすることができる。
【0097】
本発明の組成物はまた、液体処方物(水性または油性懸濁液、溶液、乳濁液、シロップ、およびエリキシルが含まれるが、これらに限定されない)であり得る。組成物を、使用前に水または他の適切な賦形剤を使用して構成するための乾燥生成物として処方することもできる。このような液体調製物は、添加剤(懸濁剤、乳化剤、非水性賦形剤、および防腐剤が含まれるが、これらに限定されない)を含み得る。懸濁剤には、ソルビトールシロップ、メチルセルロース、グルコース/糖シロップ、ゼラチン、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ステアリン酸アルミニウムゲル、および食用硬化脂肪が含まれるが、これらに限定されない。乳化剤には、レシチン、モノオレイン酸ソルビタン、およびアカシアが含まれるが、これらに限定されない。非水性賦形剤には、食用油、アーモンド油、分留ヤシ油、油性エステル、プロピレングリコール、およびエチルアルコールが含まれるが、これらに限定されない。防腐剤には、p−ヒドロキシ安息香酸メチルまたはプロピル、およびソルビン酸が含まれるが、これらに限定されない。
【0098】
本発明の組成物を座剤として処方することもでき、この組成物は、座剤基剤(カカオバターまたはグリセリドが含まれるが、これらに限定されない)を含み得る。本発明の組成物を吸入のために処方することもでき、この組成物は、乾燥粉末として投与することができるか、ジクロロジフルオロメタンまたはトリクロロフルオロメタンなどの噴射剤を使用したエアゾールの形態であり得る溶液、懸濁液、または乳濁液の形態(これらに限定されない)であり得る。本発明の組成物を、水性または非水性賦形剤(クリーム、軟膏、ローション、ペースト、薬用プラスター、パッチ、または膜が含まれるが、これらに限定されない)を含む経皮処方物として処方することができる。
【0099】
本発明の組成物を、非経口投与(注射または持続注入が含まれるが、これらに限定されない)のために処方することもできる。注射用処方物は、懸濁液、溶液、または油性もしくは水性賦形剤の乳濁液の形態であってよく、処方剤(formulation agent)(懸濁剤、安定剤、および分散剤が含まれるが、これらに限定されない)を含み得る。組成物を、適切な賦形剤(滅菌無発熱物質水が含まれるが、これらに限定されない)で再構成するための粉末形態で提供することもできる。
【0100】
本発明の組成物を、移植または筋肉内注射によって投与することができるデポー調製物として処方することもできる。組成物を、適切な高分子または疎水性材料(例えば、許容可能なオイルの乳濁液として)、イオン交換樹脂、またはやや溶けにくい誘導体(例えば、やや溶けにくい塩として)を使用して処方することができる。
【0101】
c.投薬量
治療に必要な薬剤の治療有効量は、治療条件、NF−κB活性の誘導に望ましい期間、ならびに患者の年齢および状態によって変化し、最終的に、担当医によって決定される。しかし、一般に、成人のヒトに使用される用量は、典型的には、0.001mg/kg/日〜約200mg/kg/日の範囲である。用量は、約1μg/kg/日〜約100μg/kg/日であり得る。望ましい用量を、単回用量で都合よく投与するか、適切な間隔で(例えば、1日に2回、3回、4回、またはそれ以上の分割用量)複数回用量として投与することができる。一旦薬剤を投与しなくなると正常細胞におけるNF−κB活性が減少し得るので、しばしば、複数の用量が望ましいか必要である。
【0102】
NF−κBの誘導因子の投薬量は、任意の投薬量(1μg/kg、25μg/kg、50μg/kg、75μg/kg、100μg/kg、125μg/kg、150μg/kg、175μg/kg、200μg/kg、225μg/kg、250μg/kg、275μg/kg、300μg/kg、325μg/kg、350μg/kg、375μg/kg、400μg/kg、425μg/kg、450μg/kg、475μg/kg、500μg/kg、525μg/kg、550μg/kg、575μg/kg、600μg/kg、625μg/kg、650μg/kg、675μg/kg、700μg/kg、725μg/kg、750μg/kg、775μg/kg、800μg/kg、825μg/kg、850μg/kg、875μg/kg、900μg/kg、925μg/kg、950μg/kg、975μg/kg、または1mg/kgが含まれるが、これらに限定されない)であり得る。
【0103】
本発明は、以下の非限定的な実施例によって示される複数の態様を有する。
【実施例】
【0104】
(実施例1 マウスにおけるGI症候群のp53欠損促進性の発症)
哺乳動物の電離放射線(IR)に起因する主な死亡原因は、放射線量に依存する。9〜10Gyまでの線量で、マウスは、主に致死性骨髄減少造血器(HP)症候群(lethal bone marrow depletion−hematopoietic(HP) syndrome)のために12〜20日後に死亡する。この線量では、照射マウスを、骨髄移植によって死亡から救出することができる。15Gy超を被爆した動物は、処置から7〜12日後に(造血器症候群によって死亡し得る前に)、小腸−胃腸(GI)症候群に対する損傷による合併症によって死亡する。HPおよびGI症候群の両方では、組織の致死的損傷は、大規模なp53依存性アポトーシスから開始される。この所見により、p53が照射誘導死の決定要因であり得るとより早く示唆することが可能である。常に、p53欠損マウスは、HP症候群によって死亡する放射線量に耐性を示し、6〜11Gyのγ線照射を受けた野生型動物の死亡を、小分子p53インヒビターであるピフィスリン(pifithrin)−α(PFT)によるp53の一過性の薬理学的阻害によって減少させることができる(Komarov et al 1999)。遺伝毒性ストレスに対して組織を感作する因子としてのp53の同定を、実験的化学療法または照射の結果として生じる抜け毛(脱毛症)のp53依存性の証明によってさらに強化した。したがって、前の所見に基づいて、p53がより高い線量のIR後の致死的GI症候群の発症に重要な役割を果たし続けると予想されるであろう。驚いたことに、p53欠損は、より高い線量のIRに対してマウスを感作し、致死的胃腸症候群を発症する(図1)。IR後のp53欠損上皮の陰窩における連続的細胞増殖は、損傷陰窩細胞死の加速および絨毛の急速な破壊と相関する。p53は、小腸陰窩における成長停止を誘導し、それによって腸の完全性を保存することによって延命する(図2)。したがって、p53のアポトーシス促進機能が造血器症候群を促進する一方で、その成長停止機能が胃腸症候群の発症を遅延させる。
【0105】
小腸における細胞集団の動力学を、非常に詳細に分析した。腸上皮中の細胞増殖は、幹細胞および初期増殖前駆細胞が存在する陰窩に限定される。2回の細胞分裂後、既に分化した陰窩幹細胞の子孫は、絨毛に移動し、絨毛先端から吹き出す。マウスの小腸では、細胞の全「航海(trip)」(増殖性区画から絨毛先端への)は、通常、3〜5日を要する。γ線照射に対する小腸の反応が病理形態学的レベルで十分に試験されているにもかかわらず、GI死亡の正確な原因(一次事象が含まれる)が何であるかは不明確なままである。上皮陰窩細胞損傷およびその後の絨毛の露出を直接的結果とし、流動物と電解質との不均衡、菌血症、および内毒素血症を発症して死亡し得る。炎症および間質応答に加えて、内皮機能不全は死亡に寄与する重要な要因のようである。まとめると、IR誘導性HP症候群からの防護方法として非常に有効であることが示されたp53の薬理学的抑制は、GI症候群に(有害ではないが)役立たない。したがって、別の機構(例えば、NF−κBの活性化およびその後の細胞死の阻害など)に依存する小腸上皮の放射線防護に対する別のアプローチを開発する必要がある。
【0106】
(実施例2 フラゲリンはIR誘導性GI症候群に起因するマウスの死亡を遅延する)
GI管損傷を誘導した従来の照射モデルの場合、15Gyのγ線照射を使用したマウスの全身照射により、GI症候群のために8日以内に死亡した。フラゲリンがIRからGI上皮を防護することができるかどうかを試験するために、本発明者らは、15Gyの照射後のマウスの致死性の動力学に対するi.v.注射したフラゲリンの効果を試験した。本発明者らは、一定範囲のフラゲリン用量を使用し、その全ては文献から公知の最も高い許容用量(300μg/マウス)よりも有意に低かった。処置から4時間後に照射した。代表例の結果を、図4に示す。予想通り、コントロール照射マウス(PBSをi.v.投与した)は、処置から5日後と8日後との間に死亡した。フラゲリンを投与した動物は、有意により長く生存し、動物生存の延長はフラゲリンの用量と相関した。照射7日後の小腸の病理形態学的分析により、フラゲリン処置群とコントロール群との間の劇的な相違が明らかとなった(図5)。0.2mg/kgのフラゲリンの静脈内、腹腔内、および皮下送達ならびにその後の13Gyの照射によって同程度に防護され、85〜90%のマウスが30日間生存した(データ示さず)。理論に拘束されないが、フラゲリンは、NF−κBの活性化による放射線防護剤であり得、恐らくアポトーシス死のインヒビターとして作用する。
【0107】
(実施例3 致死性IR誘導性造血器症候群からのマウスのフラゲリン救出)
本発明者らは、次に、フラゲリンが、致死性GI毒性を生じることができないより低い放射線量(通常、11Gyまで)によって実験的に誘導されたHP症候群由来のマウスのIR誘導死に効果があるかどうかを試験した。上記実験と同様に実験を行ったが(図14および15)、15Gyの代わりに、マウスに10Gy(13日目までにコントロール群が100%死亡する線量)を照射した(図6)。フラゲリン処置群(5μg/マウス)は、この線量のIRから完全に防護され、驚いたことに、フラゲリン媒介性放射線防護はGIだけでなくHP IR誘導性症候群に対しても作用することを示す。
【0108】
( 実施例4 フラゲリンの防護効果への時間の依存)
マウスに、次に、13Gyのγ線照射前の異なる時間にフラゲリンを投与した。このような実験の1つの結果を、図7に示す。得られた結果は、処置の1〜4時間前に注射した場合、フラゲリンが13Gyからの放射線防護剤として有効であることを示す。
【0109】
処置時間に対するフラゲリンの放射線防護活性の依存をさらに評価するために、γ線照射時に対していくつかの時点でマウスに注射した。5μg/マウス(0.2mg/kg)の全長フラゲリン、またはコントロールマウスには5μg/マウス(0.2mg/kg)の細菌RNAポリメラーゼの腹腔内注射を使用して、本質的に上記説明のように実験を行った。NIH−Swissマウス系統を使用して実験を行った。結果は、処置の1〜2時間前にフラゲリンを注射した場合、13Gyの照射後にフラゲリンによって約90%が生存することを示す(図7)。明確にするために−1時間のグラフのみを示すが、両時点(−1時間および−2時間)は、類似の程度および動力学の生存を示す。4時間で、いくらかより低い防護を示す。照射の24時間前に注射したフラゲリンは、13Gyで誘導される死に防護効果を示さなかった。
【0110】
興味深いことに、10Gyのγ線照射の24時間前のフラゲリンの投与は100%の防護を示した。マウスへの13Gyの照射によって主にGI症候群に起因する死亡を誘導する一方で、10Gyで誘導される死は、ほとんど造血器症候群によって媒介される。したがって、このような10Gy照射からの長期防護を、フラゲリンおよび/または長寿命二次サイトカインによって誘導される造血幹細胞の増殖または生存の増強によって媒介し得る。
【0111】
(実施例5 フラゲリンのLD50/30、LD50/7、およびDMFの決定)
本発明者らは、次に、フラゲリンの放射線量依存性防護を評価した。上に示すように(図7)、フラゲリンでの処置は、10Gyのγ線照射に対する100%防護に十分であり(この線量によって造血器症候群で死亡する)、13Gyで90%が30日間生存した(造血器症候群およびGI症候群の両方)。照射の1時間前に腹腔内注射したフラゲリン5μg/マウス(0.2mg/kg)を使用して、上記のように実験を行った。
【0112】
しかし、15Gyでは、100%が7日間生存し、13日後に死亡が遅延する一方で(30日生存は0%)、コントロール群は7日目までにGI症候群によって完全に死亡した(図8)。15Gy照射後のフラゲリン処置群死亡率の動態は、10Gyのコントロール群に類似しており、造血器症候群に起因する死亡が示唆される。この結果により、フラゲリンのLD50/30が13.5〜14Gyであり、DMF30が約1.75〜1.8であると評価される。この程度の放射線防護は、天然化合物についての任意の報告よりも有意に高かった。
【0113】
(実施例6 フラゲリンフラグメントの合理的デザインおよびクローニング)
FliC遺伝子によってコードされるSalmonellaフラゲリン(配列番号2)は、生存促進NF−κB経路の強いアクチベーターである。これは、その放射線防護作用の最も可能性が高い機構である。以前の研究では、細胞表面上のToll様受容体5(TLR5)へのフラゲリンの結合がNF−κBの活性化に必要な工程であることが示されている。Salmonellaフラゲリンのドメイン構造は、文献に十分に詳細に記載されている(図9)。さらに、フラゲリン−TLR5複合体の以前の構造研究(図10)により、結合(すなわち、NF−κB活性化)に不可欠であるか重要でないドメインを区別することができる。タンパク質最小化により、フラゲリン関連ポリペプチドの反復投与後の免疫応答を減少させることができる。低分子量のタンパク質および少数の利用可能な免疫原性エピトープによる免疫原性の低下に一部起因して、これを達成することができる。
【0114】
TLR5結合に必要なドメインを、進化的に保存された細菌フラゲリンのN末端ドメインおよびC末端ドメイン中に排他的に配置することができる。超可変ドメイン(アミノ酸178〜402)は、TLR5と密接に接触しなくなる。前に証明したように、このドメインの可動性リンカーペプチドへの置換は、TLR5への結合を破壊しなかった。さらに、N末端およびC末端のコイルドコイル重合ドメイン(アミノ酸1〜55、456〜505)は、TLR5に結合せず、重要でない可能性が高い(それぞれ本明細書中に示す、修飾N末端およびC末端BおよびB’参照)。また、実質的にTLR5に結合する主なN末端のαヘリックス以外の全ドメインを欠く別のフラグメント末端(アミノ酸56〜100)は、結合に十分であり得る。
【0115】
したがって、pGEX−KGクローニングベクター(配列番号5および6)から採取した可動性リンカー(配列番号3および4)と連結した3つのN末端型(A、B、C)および2つのC末端型(A’、B’)を発現構築物に組み合わせて、いくつかの可能なフラゲリンフラグメントを産生した(表1)。さらに、個別のN末端(A、B、C)およびC末端のグルタチオン−S−トランスフェラーゼ(GST)融合物(GST−A’、GST−B’)を示す構築物を調製した。全構築物を、pRSETb細菌発現ベクター中にクローン化し、6xHisタグ化タンパク質を産生し、さらなる実験のために精製した(図11)。
【0116】
表1
【0117】
【表1】
(実施例7 生物活性フラゲリンフラグメントの選択)
フラゲリンの放射線防護活性がNF−κB依存性であるようであるので、本発明者らは、フラゲリンフラグメントが核にNF−κBを転位置し、DNA中のその標的部位への結合を誘導する能力を試験した。フラゲリンおよびフラグメント処置A549肺癌細胞由来の核抽出物および標識した合成NF−κB結合kBオリゴヌクレオチドを使用した電気泳動移動度シフトアッセイ(EMSA)によってこれを試験した。
【0118】
フラゲリン自体ならびにフラグメントAA’、AB’、およびBA’のみでNF−κB転位置を誘導することができた(図12)。転位置レベルは、フラゲリンならびにフラグメントAA’、AB’、およびBA’で類似している。超可変ドメインは、NF−κB転位置に必要でないようである一方で、少なくとも1つの重合ドメイン、N末端、またはC末端が存在する必要がある。N末端およびC末端フラグメントの混合物(A+A’、A+B’)は不活性であった。
【0119】
NF−κBの核への転位置がアポトーシスのNF−κB調節インヒビターの誘導における重要な工程である一方で、それ自体では十分でない。選択されたフラグメントがNF−κB調節遺伝子の発現を誘導する能力を直接試験するために、本発明者らは、レポーターアッセイ実験を行った。フラゲリンならびにAA’、BB’、A’、およびB’フラグメントを、NF−κB応答性プロモーター下でのルシフェラーゼ遺伝子を保有するH116ヒト結腸癌細胞の処置のために使用した。レポーター構築物は、細胞のNF−κB状態の検出のために日常的に使用されているHsp70最小プロモーターを組み合わせたE選択プロモーター由来の3つのNF−κB結合部位を含んでいた。フラゲリンまたはその短縮フラグメントの培地への添加から6時間後の細胞溶解物中のルシフェラーゼ活性を測定した。正のコントロールとしてTNFを使用した。各実験結果を図13に示し、フラゲリンおよびフラグメントAA’がNF−κBを活性化することができるのに対して、フラグメントBB’、GST−A’、およびGST−B’はできないことを示す。
【0120】
(実施例8 フラゲリンフラグメントのさらなる最適化)
本発明者らは、そのN末端の半分からペプチドフラグメントを段階的に除去することによるさらなるフラグメントの産生によってAA’フラゲリンフラグメントをさらに最小化した(表2)。フラゲリンおよびフラグメント処置HT29ヒト結腸癌細胞由来の核抽出物および標識した合成NF−κB結合κBオリゴヌクレオチドを使用して、上記のように電気泳動移動度シフトアッセイを行った。HT29細胞中のNF−κB結合活性を、TNFa(10ng/ml)またはフラゲリンフラグメント(1mg/ml)で15分間刺激した。図14に示すように、フラグメントAA’nl−170、AA’n54−170、AA’nl−163、およびAA’n54−163はそれぞれNF−κB転位置を誘導し、そのレベルは、AA’nl−170、AA’n54−170、およびAA’nl−163のフラゲリンに匹敵する。
【0121】
表2
【0122】
【表2】
AA’フラグメントをNF−κB調節転写を直接活性化する能力を研究するために、本発明者らは、広範な濃度のフラゲリン、元のAA’、およびAA’誘導フラグメントについて上記のようにレポーターアッセイ実験を行った。上記のように、AA’およびAA’n1−170は、研究した濃度範囲にわたり、フラゲリンに匹敵するレベルでNF−κB調節転写を誘導する(図15の左)。AA’およびAA’n1−170は、非常に低濃度の範囲でフラゲリンよりも高い活性を示し(図15の右)、このことは、おそらくその分子量の減少に起因する。フラグメントAA’n1−170を使用した結果は、有意に活性を喪失することなく除去されたN末端ドメインの一部を使用してAA’誘導性フラゲリンフラグメントを作製することができ、これを有効な放射線防護剤として使用することができることを示す。
【0123】
上記実験(EMSAおよびレポーター活性化アッセイ)を、30分間のボイルおよび細胞への適用前の再生に供したフラゲリンおよびAA’フラグメントを使用して繰り返した。結果は、ボイルしないで得た結果に匹敵した(データ示さず)。これは、認められたフラゲリンフラグメント活性の相違がタンパク質安定性の変化によって生じ得ないことを示す。
【0124】
(実施例9 フラゲリンおよびフラゲリンフラグメントの放射線防護性のin vivoでの比較)
上記のように、全長フラゲリンは造血器症候群および胃腸症候群の両方を防護する。11Gy(マウスの造血器症候群関連死亡を誘導する線量)または14Gy(GI症候群由来の死亡を生じる線量)でのγ線照射後に、フラゲリンフラグメントの放射線防護性を同様に試験した。マウス(10匹/群)に、5.0μg/マウス(0.2mg/kg)のフラゲリンおよびそのフラグメント(AA’またはBB’)を皮下注射し、1時間後にγ線を照射した。
【0125】
AA’フラグメントによって示された放射線防護度は、少なくとも全長フラゲリンに匹敵する(図16)。AA’フラグメントおよび全長フラゲリンの両方は、11Gyおよび14Gyで照射したマウスについて100%の30日生存を示した。一方で、BB’フラグメントを注射したマウスの30日生存は0%であった。BB’フラグメントがin vitroでNF−κBを誘導することができないので、このことは予想される。これらの結果は、放射線防護度を減少させることなくフラゲリンのサイズを有意に減少させることができる(約40%の除去)ことを示す。さらに、in vitroでのNF−κB活性化の結果から放射線防護の可能性を予想することができることが確認される。
【0126】
(実施例10 フラゲリン媒介性放射線防護の細胞標的の同定)
14Gyでの照射から5日後に、フラゲリンで前処置したマウスおよびコントロールマウスから腸粘膜の組織サンプルを採取した。コントロール動物を、5.0μg/マウス(0.2mg/kg)の細菌RNA−ポリメラーゼで処置した。小腸の病理形態学的分析により、コントロールマウスの陰窩および絨毛のサイズの減少ならびに多数の凝縮アポトーシス核を有する細胞ならびに処置マウスにおけるほぼ正常な形態が明らかとなった(データ示さず)。AA’フラグメントで処置したマウスからも組織サンプル(小腸および背中由来の皮膚)を得た。図17に示す結果は、少なくとも3匹のマウス組で認められた典型的な形態の領域である。フラゲリンおよびAA’フラグメントでの処置後、マウスは、絨毛/陰窩構造を保持したほぼ正常な腸形態を示した(図17A)。
【0127】
細胞の死および生存における純粋に組織学的な観察に加えて、本発明者らは、アポトーシス関連DNA断片化を検出するTUNELアッセイを使用した腸組織におけるアポトーシス細胞死のより特殊化した試験を行った。これらの実験により、より高い確率で照射によって枯渇し、フラゲリンフラグメント処置によって救出された細胞集団を定義することができた。IR処置後の小腸で検出可能な最も迅速な照射誘導性変化は、絨毛の血管内皮細胞で生じるアポトーシスであり、これは、処置から5時間の速さで認められる(図17B)。小腸の放射線感受性に重要であると考えられるこのアポトーシスは、AA’フラグメントで前処置したマウスではほとんど完全に遮断された(図17Bの下のパネル)。処置から数日以内に生じ、フラグメントAA’処置動物で非常に抑制される絨毛および陰窩の変性は、血管損傷の結果として起こる。フラゲリンフラグメントによる小腸内皮細胞の有効な防護は、これらの細胞中でのTLR5の発現に起因し得る。
【0128】
著しく、AA’フラグメントおよびフラゲリンも、体毛の毛包の基底に存在する脂腺の照射誘導性消失を予防した(図27C)。これらの結果により、照射誘導性脱毛の放射線防護および予防に対するAA’フラグメントの適切性がさらに確認される。
【0129】
(実施例11 超致死照射からの防護)
AA’フラグメントによって得られた放射線防護限度を調査するために、本発明者らは、マウスに、17Gyおよび20Gyの単回線量の全身γ線照射を行った。負のコントロールとして不活性フラゲリンフラグメント(CB)を使用して、上記のように実験を行った。
【0130】
予想通り、本発明者らは、17Gyおよび20Gyの両群で100%の死亡を認めた(図18)。しかし、AA’フラグメントの投与によってその両方で死亡が有意に遅延された。最も顕著には、コントロールマウスにおける17Gyでの死亡の動態はGI症候群と一致する一方で(6〜7日での死亡)、AA’フラグメントで処置したマウスの死亡は造血器症候群に媒介されるようである(10〜15日で死亡)。これは、フラゲリンおよびフラゲリンフラグメントが17Gyもの線量でのGI症候群から防護することができることを示す。さらに、これは、造血器放射線防護剤と組み合わせたフラゲリンおよびフラゲリンフラグメントによってなおさらなる放射線防護を得ることができることを示す。
【0131】
(実施例12 免疫原性および反復投与の研究)
タンパク質の全免疫原性は、反復使用に対するその適切性によって決定することができる。免疫系によって生成された抗体はタンパク質の治療活性を減少させることができ、タンパク質に対してIgE抗体が産生された場合には第2の曝露時にアナフィラキシー反応も誘導し得る。したがって、全長フラゲリンと比較した抗体の量および多様性の任意の減少によって改善する。したがって、フラゲリンおよびそのフラグメントの反復導入後、本発明者らは、a)第2の暴露後に得られる放射線防護の有効性、b)局所および全身アレルギー反応、およびc)抗体力価をモニタリングした。
【0132】
本発明者らは、AA’がAA’に曝露されたマウスを防護する能力を試験した。20匹のNIH−Swissマウス群に、5μg/マウス(0.2mg/kg)のAA’を皮下注射した。等用量のAA’の第2の注射を、21日後(10匹)および28日後(別の10匹)に行い、抗体形成に十分な時間を置いた。第2のAA’注射後に、13Gyの全身γ照射を行った(注射から1時間後)。以前にAA’に曝露していなかったマウスで認められたように、両群で100%の30日生存が認められた(データ示さず)。これらの結果は、長期にわたる反復投与でもAA’の活性が減少せず、多目的適用の可能性が再確認されることを示す。また、フラゲリンまたはAA’のいずれにおいても局所アレルギー反応またはアナフィラキシーは認められなかった。
【0133】
本発明者らは、AA’が生物の免疫状態に与える影響を定量するための抗体力価のELISAによる決定も行った。96ウェルプレートを、20mg/mlのフラゲリンまたはAA’(50ml/ウェル)でコーティングし、+4℃で一晩インキュベートした。マウスから回収した血清サンプルを、数倍に希釈してウェルに添加し、一晩インキュベートし、その後、二次ヤギ抗マウスIgG HPO−抱合体抗体と6時間反応させた。414nmのフィルターを使用した分光光度計を使用して測定を行った。各マウスについて決定した抗体力価および平均力価を、図19および図20に示す。
【0134】
AA’は、マウスで非常に低いレベルの抗体を誘導し(図19)、21日目に約0.8mg/ml血清および28日目に約10%超である。他方では(図20)、フラゲリンは高力価の抗体を誘導し、21日目および28日目の両方で約20mg/mlである。概して、これは、超可変ドメインの除去が元のタンパク質と比較してAA’の免疫原性を激しく減少させる(約25倍)ことを示す。図19は、大部分のAA’特異的抗体がフラゲリンを認識することができることも示す。これにより、AA’の合理的デザインによって新規の免疫原性エピトープはあまり産生されない一方で、元のタンパク質の95%を超える免疫原性が除去されることが確認される。
【0135】
(実施例13 フラゲリンおよびAA’の急性毒性研究)
Salmonellaフラゲリンの致死用量は、1mg/kg(全身性炎症)と10mg/kg(100%死亡)との間である。本発明者らは、0.5、1、2、4、および8mg/kgの漸増用量のAA’をマウス(4匹/用量群)に皮下投与した。より低い(約60%)分子量により、8mg/kgのAA’は、モル換算で13.3mg/kgのフラゲリンの用量に相当する。全用量の投与から数日後に、目に見える有害な影響(死亡率、罹患率、または活性の減少および熱などの全身性炎症の兆候など)は認められなかった。これは、全長フラゲリンと比較してAA’の炎症促進効果を無視することができることを示し、特に、AA’が0.2mg/kgで有効な放射線防護を示すと見なされる。毒性の減少は、AA’フラグメント中の主要な炎症促進ドメインの不在に起因し得る。
【0136】
(実施例14 AA’による分割照射からの防護)
短期間内の反復照射は、例えば、宇宙照射事象および臨床的放射治療レジメン(regimen)と共通し得る。本発明者らは、AA’フラゲリンフラグメントがマウスを分割γ線照射の亜致死レジメン(3Gyで4回の処置)および100%致死レジメン(4Gyで4回の処置)から防護する能力を試験した。フラグメントAA’または生理食塩水を、各照射前に(1日1回を4日間)NIH−Swiss雌マウスに投与した。単回線量照射について上記のように、AA’を投与した(5μg/マウス、照射1時間前に皮下投与)。
【0137】
図21の結果は、AA’が短い時間枠内の反復被爆量を有意に防護することを示す。AA’処置後の100%30日生存に依然として適合する分割照射の累積線量は、単回線量照射シナリオで得られた累積線量に匹敵する。
【0138】
(実施例15 AA’は、照射の抗腫瘍治療効果を損なうことなく正常組織を防護する)
癌治療における潜在的な放射線防護剤の最終試験は、腫瘍選択性(腫瘍を全くまたはほとんど防護することなく正常組織を防護する能力)である。本発明者らは、10匹のNIH−Swissマウスの両側腹(全部で20腫瘍)に、2×106細胞の同系肉腫細胞株モデル(NIH3T3に由来し、ドミナントネガティブインヒビターGSE56によって不活化されたp53で自発的に形質転換した肉腫)を皮下注射した。腫瘍の直径が5〜7mmのサイズに到達した場合(5日目)、マウスに、0.2mg/kgのAA’または生理食塩水の賦形剤を皮下注射し、1時間後に4Gyの全身γ線照射(3×4.3Gy=12.9Gyの総線量)を行った。5、6、および7日目に注射および照射を行った。
【0139】
結果を図11に示すように、AA’によって腫瘍の照射誘導性収縮が増強された。18日目までに、全ての照射された腫瘍保有マウスが急性照射毒性によって死亡したのに対して、放射線療法およびAA’の両方を受けたマウスの100%が治癒し、治療を生き延びた。別の同系腫瘍モデル(B16黒色腫細胞)を使用しても類似の結果が得られた(図11、右のパネル)。驚いたことに、非照射マウスでさえ、AA’投与によって腫瘍の成長速度が減少した。これは、Toll様受容体の他のリガンドによって生じることが公知のAA’誘導性免疫刺激に起因し得る。これらの結果は、AA’が2つの腫瘍型の放射線感受性に影響を与えずにマウスの照射耐性を増加させ、それにより、放射線療法とAA’との組み合わせが治療結果を改善する可能性を切り開くことを示す。
【0140】
(実施例16 AA’およびLPSの放射線防護機構は異なる)
グラム陰性細菌のリポポリサッカリド(LPS)は、別のToll様受容体(TLR4)のリガンドである。LPSは、NF−κBの強力な誘導因子であり、サイトカインのその後のカスケードである。LPSは、放射線防護化合物として公知であるが、その高い毒性により、その使用が不可能である(放射線防護用量が致死用量と非常に近い)。LPSによる放射線防護の基礎をなす主な機構の1つは、GI防護プロスタグランジンの合成を駆動するシクロオキシゲナーゼ2(COX−2)の活性化である。TLR5による放射線防護もCOX−2活性に依存する可能性を、NIH−Swissマウスの照射の1時間前に、1mg/kgのNS398(合成COX−2インヒビター)または対応する賦形剤のi.p.注射と組み合わせたLPS(2mg/kg)、AA’(0.2mg/kg)、または賦形剤のs.c.投与によって試験した。次いで、マウスを、13Gyの全身γ線照射で処置した。NS398は、LPS媒介性放射線防護を完全に除去したが、AA’の放射線防護は除去しなかった(図12)。この結果は、AA’の活性がCOX−2に有意に依存せず、LPS媒介性防護機構と異なる機構によって放射線防護を誘導することを示す。
【0141】
(実施例17 AA’は複数のマウス系統を防護する)
本発明者らは、AA’がNIH−SwissマウスおよびICRマウスを照射から防護することを確認した。AA’の放射線防護活性が少数のマウス系統に制限されないことを確認するために、異なる起源のいくつかのさらなるマウス系統を、AA’:129/Sv、DBA/2(比較的放射線抵抗性を示す)、Balb/c(比較的放射線感受性を示す)、およびBalb/c×DBA/2 F1ハイブリッドCD2F1によって防護について試験した。実験群に照射の30分前に0.2mg/kgのAA’を注射する一方で、コントロール群に賦形剤(PBS)を注射した。
【0142】
全マウス群(各8〜10匹、8〜12週齢の雌)に、10Gyの単回線量を全身γ線照射した。10日目および30日目のマウスの生存を示す。結果を、円錐グラフとして図27に示す。10日目に、Balb/cマウスのみが死亡し、この死亡はAA’投与によって劇的に減少する(0%生存対100%生存)。30日目に、全試験株は、AA’投与後に生存率が改善された(0〜25%対50〜100%)。
【0143】
(実施例18 AA’の薬物動態)
薬物動態パラメーター(生物中に存在する薬物の有効濃度および持続時間)は、薬物投与の経路、用量、および時間に重要であり得る。したがって、CBLB502(AA’)の薬物動態を、以下の4つの一般的な注射経路について試験した:静脈内(i.v.)、皮下(s.c.)、腹腔内(i.p.)、または筋肉内(i.m.)。CBLB502(AA’)の放射線防護用量(0.2mg/kg)を、12〜15週齢のICRマウスに注射し、注射後の特定の時間に血漿サンプルを回収した(少なくとも3匹/測定点)。血漿中のCBLB502レベルを、較正のためにコントロールICR血漿中で急増させた既知濃度のCBLB502を使用したサンドイッチELISAによって測定した。結果を、図28および図29に示す。
【0144】
結果は、筋肉内または腹腔内注射によって血漿中のCBLB502が最も高いレベルおよび最も長い持続時間で存在することを示す。筋肉内注射後、3時間を超えてマウス血漿中に有意な(5ng/ml超)レベルのCBLB502が認められる。静脈内注射により、血流からCBLB502がより急速に消失する。
【0145】
(実施例19 γ線照射に対するAA’の影響は、A549細胞の細胞死および成長阻害を誘導する)
A549ヒト肺癌細胞株は、NF−κB DNA結合活性の活性化によってフラゲリンに応答すると報告されている(Tallant T.,et.al.,BMC Microbiol.2004 Aug 23;4:33)。本発明者らは、細胞成長阻害アッセイにおいてこの活性化がγ−IRからの細胞の防護に変換されるかどうかをチェックすることを決定した。
【0146】
腫瘍細胞を、3つの異なる密度で(単一の細胞、予備、または半接触層を産生する0.5×104、1×104、および2×104細胞/ウェル)3つの96ウェルプレートのウェルに播種した。細胞をプラスチックに付着させた後、CBLB502(2μg/ml)を非照射細胞または7Gyもしくは10Gyのγ線照射の15分前にウェルに添加した。コントロールウェルに、同体積の賦形剤(PBS)を投与した。全ての時点を四連で行った。照射から72時間後、培地をメチレンブルーを含む50%メタノールに置換し、ウェル中の生細胞の相対数を、分光光度計を使用して650nmで測定した。結果を図30に示す。この実験を、固定用量の1×104A549細胞/ウェルを使用しても繰り返し、5、10、または15Gyのγ線照射の1時間前にCBLB502を添加した(データ示さず)。全ての試験した実験条件で類似のフラゲリン効果が認められた。
【0147】
γ線照射により、3つ全ての密度でプレートしたA549細胞数の線量依存性の減少が誘導された(非照射コントロール群と比較して60%まで)。CBLB502は、γ線照射使用の有無にかかわらず、細胞数に対する効果が無いかわずかであった。これは、腫瘍細胞がCBLB502(AA’)によって照射から有意に防護されないことを示す。この効果は、構成性に活性なNF−κB経路またはいくつかの他の機構を有する腫瘍細胞に起因し得る。
【0148】
(実施例20 γ線照射に対するAA’の影響は、複数の細胞株の細胞死および成長阻害を誘導する)
A549細胞の結果に基づいて、いくつかのさらなる腫瘍細胞株(ヒト黒色腫Mel−7およびMel−29、結腸癌HCT116、肺癌HT1080)、不死化腎臓上皮細胞(NEK)および正常マウス大動脈内皮細胞(MAEC)を、インタクトなコントロールと比較したCBLB502で前処置を行うか行わない10Gyおよび15Gyのγ線照射後の成長阻害アッセイで試験した。処置の前日に、細胞を96ウェルプレートに播種した。照射の4時間前、1時間前、または10分前にCBLB502(2μg/ml)をウェルに添加した(全ての時点を四連で行った)。48時間後、メチレンブルー染色を行い、ウェル中の生細胞の相対量を決定した。3つ全ての時点で同一の結果を示した(照射の1時間前に添加したCBLB502についての結果を図31に示す)。成長阻害率を、コントロール非照射ウェルにおけるOD650を0%阻害として計算した。
【0149】
ヒト黒色腫細胞株およびMAEC細胞の両方は、むしろγ線照射対耐性を示し、インタクトな細胞(0Gy)と比較して、10Gyおよび15Gy後にわずかな(20%未満)成長阻害のみを示した。NKE細胞、HT1080細胞、およびHCT116細胞は、γ線照射後に40%までの成長阻害を示した。顕著には、CBLB502は、照射の有無にかかわらず腫瘍細胞成長に対する阻害効果は無いかわずかにあるのみであった。実験を2回繰り返した。さらに、肺癌H1299細胞および前立腺癌CWR22において類似の結果を得た(データ示さず)。これは、CBLB502によって腫瘍細胞株が照射誘導性細胞死から有意に防護されないことを示す。
【0150】
(実施例21 小腸陰窩へのBrdU組み込みに対する照射およびAA’の影響)
アポトーシスの直接阻害に加え、一過性の増殖の半減(half)およびその後の修復は、放射線防護の別の機構であり得、TGF−β3などの他の放射線防護剤について記載されている(Booth D.,et.al.,Int J Cancer.2000 Apr l;86(l):53−9)。したがって、本発明者らは、最初の投与から数時間の小腸(照射するかしていない)中の細胞の増殖活性にCBLB502(AA’)が影響を与える可能性を試験することを決定した(図32)。CBLB502またはPBSをマウスにi.p.注射し、30分後に15Gyの照射を行った(使用する場合)。注射から2時間後(照射を適用した場合、照射から1.5時間後)、BrdUを腹腔内注射した。さらに1.5時間後に小腸サンプルを得た。
【0151】
照射することなく、BrdUが高レベルで非処置NIH−Swissマウスの腸陰窩中の細胞の核に組み込まれたのに対して(図32の左上)、DNA合成(BrdU組み込みによって測定)はCBLB502処置マウスの陰窩でほぼ検出できなかった(図32の右上)。賦形剤処置照射マウスでは、コントロールマウスよりもBrdU組み込みが低かった。重要には、BrdU組み込みレベルはCBLB502によって非常に減少し、おそらく、より後期の(G2期)照射誘導性成長停止と対照的に、早い(S期)成長停止を示す。したがって、CBLB502またはフラゲリンの細胞増殖抑制活性は、小腸のさらなる放射線防護機構であり得る。
【0152】
(実施例22 AA’媒介性成長停止の持続時間およびBrdU組み込みの減少)
本発明者らは、次に、小腸におけるCBLB502誘導性細胞停止の持続時間を決定した。CBLB502またはPBSをマウスにi.p.注射し、BrdUを1時間後または4時間後に注射し、さらに1.5時間後にいくつかのマウスから小腸サンプルを得た(3匹のマウス由来のサンプルを示す)(図33)。
【0153】
腸内のBrdUの組み込みは、1時間後にBrdUを注射した場合、(2時間後にBrdUを注射した前の実験で示すように)コントロールと比較して減少した。NIH−Swissマウス、ICRマウス、およびBalb/cマウスは、類似の程度のBrdU組み込みのCBLB502媒介性遮断を示した(Balb/cサンプルを、図33に示す)。CBLB502注射から4時間後にBrdUを注射した場合、組み込み/DNA合成レベルは、コントロールで依然として高かった。これは、CBLB502による腸幹細胞増殖の阻害が一過性のもので迅速に(4時間までに)解決することができ、その後増殖し得る(おそらく、細胞の部分的同期化に起因する)ことを示す。
【0154】
(実施例23 結腸陰窩へのBrdU組み込みに対するAA’の影響)
結腸は、小腸よりも放射線感受性がはるかに低い。小腸における増殖の減少と放射線防護との間の関係をさらに試験するために、本発明者らは、結腸へのBrdU組み込みに対するCBLB502の効果を決定した。CBLB502またはPBSをマウスにi.p.注射し、1時間後にBrdUを注射し、さらに1.5時間後に小腸サンプルを得た(図34)。
【0155】
小腸と異なり、CBLB502は結腸へのBrdU組み込み効果がなかった。両器官中にTLR5が豊富であるので、これは驚くべきである。効果の相違は、CBLB502によって誘導されるさらなるTLR5シグナル伝達効果を隠し得る結腸中のより多い共生細菌量に起因し得る。
【0156】
(実施例24 投与経路による放射線防護可能性の比較)
本発明者らは、次に、以下のいくつかの経路を介して投与されたFliCフラゲリンによる放射線防護を試験した:静脈内(i.v.)、腹腔内(i.p.)、筋肉内(i.m.)、皮下(s.c.)、および細管栄養(gavage)。非経口(非細管栄養)経路のために、マウスにPBSまたは賦形剤に溶解した0.2mg/kgのFliCフラゲリンを注射し、1時間後に13Gyの照射を行った。細管栄養送達実験では、13Gyのγ線照射の1時間前に、5匹のマウスに増加した用量(50μg)のFliCを含む50μlのPBSを嚥下させた。8〜10週齢のメスNIH−Swissマウス(5〜10匹/群)で両実験を行った。
【0157】
細管栄養を加えた全ての試験経路は、類似の程度の防護を示し、85〜90%のマウスが30日生存した(データ示さず)。細管栄養送達によって照射に対する防護は認められず、これは、胃腸環境によるタンパク質の消化に起因し得る。さらに、フラゲリン受容体(TLR5)は、腸内容物に曝露された腸上皮の管腔部位に存在しない(Gewirtz AT.,et.al.,J Immunol.2001 Aug 15;167(4):1882−5)。
【0158】
(実施例25 小腸の形態に対するAA’の効果)
フラゲリン(およびCBLB502)は、TLR5への結合を介してNF−κB活性を誘導し得る。したがって、CBLB502媒介性放射線防護は、TLR5の存在および活性に依存し得る。MOLF/Eiマウスは、TLR5欠損の公知の天然モデルである(Sebastiani G.,et.al.,Genomics.2000 Mar 15;64(3):230−40)。CBLB502媒介性放射線防護が実際にTLR5依存性であることを検証するために、本発明者らは、MOLF/EiマウスおよびNIH−SwissマウスにおけるCBLB502による照射からの小腸の防護を試験した(図35)。15Gyのγ線照射の0.5時間前に、両マウス系統に0.2mg/kgのCBLB502(AA’)またはPBSを投与した。照射から4日後に小腸サンプルを得て、ヘマトキシリン−エオシンで染色し、病理形態学的分析に供した。
【0159】
NIH−Swiss(TLR5野生型)マウスでは、PBS処置マウスにおける短い絨毛および正常な陰窩構造の消失と比較して、CBLB502の前処置によって腸の形態が保存された(長い絨毛、正常な陰窩)。その一方で、TLR5欠損MOLF/Eiマウスでは、CBLB502の投与によって15Gyのγ線照射後の腸の形態に対する影響は改善されず、CBLB502使用の有無にかかわらず短い絨毛および正常な陰窩構造の破壊が認められた。これは、TLR5の存在が小腸におけるCBLB502媒介性放射線防護に必要であり得ることを示す。
【0160】
(実施例26 フラゲリン誘導体)
図36に示すドメイン構造に基づいて、さらなるフラゲリン改変体を産生した。次いで、フラゲリン改変体を、上記で考察したいくつかの改変体と共に、NF−κB刺激活性について試験した(表3)。A549細胞を、刺激しないままにするか、表示のTNF(10ng/ml)または1μg/mlの精製フラゲリンもしくは種々の表示のフラゲリン誘導体で45分間刺激し、全細胞抽出物を実施例7に記載のように調製した。EMSAアッセイを行い、NF−κB DNA−タンパク質複合体を実施例7に記載のように検出した。
【0161】
表3
【0162】
【表3】
表3の結果は、アミノ末端領域(aa1〜176)およびカルボキシ末端領域(aa402〜505)内に含まれるドメインに結合した少なくとも1つの重合ドメイン(aa1〜50またはaa450〜505)を有するフラゲリン変異形がNF−κBを刺激することができ、それにより、放射線防護剤であると予想されることを示す。トランスで結合していないドメインはNF−κBを活性化できないので、認識ドメインの物理的結合は活性に必要であり得る。1つのポリペプチド中のドメインの結合の代替物として、ドメインを、2つの分子を連結するために使用される分子であるリンカーを使用して結合させることができる。リンカーは、両分子と共有結合または高親和性非共有結合を形成することができる。適切なリンカーは当業者に周知であり、直鎖または分枝鎖の炭素リンカー、複素環式炭素リンカー、またはペプチドリンカーが含まれるが、これらに限定されない。リンカーを、その側鎖基を介して(例えば、システインへのジスルフィド結合を介して)成分アミノ酸に連結することができる。
【0163】
カルボキシル重合ドメイン(aa450〜505)が存在しない場合、活性にアミノ酸163と176との間の領域が必要であり得る。カルボキシル重合ドメインが存在する場合にこの領域は活性に重要でないので、この領域は誘導体の安定性に関与し得る。アミノ酸70と129との間の領域は活性化に重要であり、誘導体の安定化に関与し得る。アミノ酸402と450との間の領域も活性に必要であり得る。上記で同定したドメインは、3つの巨大なα−ヘリックス内に存在し(アミノ酸54〜129および402〜450内に存在する)、活性誘導体を産生するために、環様構造(重合ドメインを含むか含まない)を形成することが必要であり得る。
【図面の簡単な説明】
【0164】
【図1】図1は、p53欠損によってマウスのGI症候群の発症が促進されることを示す。パネルA:PFTα(10mg/kg)のI.P.注射によって、単回の9Gyの線量のγ線および12.5Gyの分割された放射線の蓄積線量(5×2.5Gy)からC57B1/6Jマウス(他で示さない限り、ここおよび以下で6〜8週齢の雄を使用した)が防護される。PFTαは、単回の12.5Gyおよび25Gy線量のIRで処置したマウスの生存に影響を与えない(各実験の結果を示す;4Gy/分の線量率でShepherd 4000Ciセシウム137源を使用した)。パネルB:野生型およびp53−ヌルC57B1/6Jマウスは、その相対感受性が低線量(10Gy)と高線量(15Gy)のγ線で異なる:野生型マウスは、p53−ヌルマウスと比較して10Gyに対してより感受性が高いが、15Gyに対してより耐性が高い。パネルC:12時間後の11Gyの全身γ線照射で処置したマウスに、野生型またはp53−ヌル同系C57B1/6Jマウス由来の1.5×107個の骨髄細胞を注射した。(この線量により、非構成マウスコントロール群は100%死亡した)。2ヶ月後、造血の完全な回収後、動物を、15Gyの全身γ線照射で処置し、その骨髄のp53状態が異なる2群間の死亡率が異ならなかった。パネルD:15Gyのγ線照射後の表示の時点での野生型マウスおよびp53−ヌルマウスの小腸に対する損傷の動力学の比較により、p53−ヌルマウスの損傷が加速される(ヘマトキシリン−エオシン染色パラフィン切片;125倍)。24時間のパネルは、陰窩切片のTUNEL染色の画像を含む。巨大なアポトーシスが野生型では明らかであるが、p53欠損上皮では明らかでない。
【図2】図2は、野生型マウスおよびp53−ヌルマウスの小腸における細胞増殖および生存の動力学を証明する。パネルA:IRでの処置後の野生型マウスおよびp53ヌルマウスの腸における増殖率の比較。(左)15Gyのγ線で処置しているか処置していない14C−チミジン(10μCi/動物)を腹腔内注射した4週齢の野生型マウスおよびp53ヌルマウスの全身切片(1.7倍)のオートラジオグラフ。矢印は腸を示す。(右)15Gyのγ線での処置後の異なる時点での野生型およびp53−ヌルマウスの小腸中のBrdU組み込みの比較。BrdU(50mg/kg)を、マウス屠殺の2時間前に注射し、その後に免疫染色を行った。96時間のパネルの小部分は、高倍率(400倍)を示す。パネルB:15Gyのγ線での処置後の異なる時点での野生型およびp53−ヌルマウスの小腸中のBrdU陽性細胞/陰窩数の比較。各時点で3匹の動物を分析し、各動物由来の5つの回腸の断面を調製し、顕微鏡で分析して陰窩および絨毛の数を評価した。陰窩中のBrdU陽性細胞数を、200倍での5つの無作為な視野(100〜30陰窩)で計数し、平均BrdU用生細胞数をプロットした。パネルC:15Gyのγ線照射後の異なる時点での野生型マウスおよびp53−ヌルマウスの小腸中のBrdU標識細胞の数および位置の軌跡。照射前にBrdUを30分間注射し、マウスを表示の時点で屠殺した。p53−ヌルマウスにおいて標識細胞の陰窩から絨毛までの移動の加速およびその後の急速な消失が認められた。
【図3】図3は、組換えフラゲリンがNF−κB活性化が可能であること証明する。
【図4】図4は、照射からマウスを防護するためのフラゲリンの能力を試験する各実験を示す。C56BL6マウス(6週齢の雄、10匹/群)に、2.0μg(0.1mg/kg)または5μg(0.25mg/kg)のフラゲリンを含むPBSをi.v.注射下。4時間後、マウスに、15Gyを照射し、マウスの生存率を毎日モニタリングした。
【図5】図5は、0.25mg/kgのフラゲリンのi.v.注射を行ったか行っていない15Gyのγ線で処置したマウスの小腸上皮の組織学的切片(HE染色)を示す。コントロールマウスにおける陰窩および絨毛の完全な破壊は、フラゲリン処置マウス由来の組織の通常の形態と非常に対照的である。
【図6】図6は、10Gyの全身γ線照射に対するマウスの感受性に対するフラゲリンの効果を示す。
【図7】図7は、13Gy(左)および10Gy(右)の全身γ線照射に対するマウスの感受性に対する照射前の表示の時点でi.v.注射したフラゲリンの効果を示す。
【図8】図8は、10、13、および15Gyの全身γ線照射に対するマウスの感受性に対するフラゲリンの効果を示す。
【図9】図9は、細菌フラゲリンのドメイン構造を示す。F41のCa骨格の軌跡、疎水性コアの分布、および構造情報。ドメインD1、D2a、D2b、およびD3を規定する4つの異なる疎水性コア。全疎水性側鎖の原子を、Ca骨格と共に示す。側鎖原子を色分けしている:Ala、黄色;Leu、Lle、またはVal、橙色;PheおよびTyr、紫色(炭素原子)および赤色(酸素原子)。c、フラゲリンのアミノ酸配列中の種々の特徴的な構造の位置および領域。以下に示す(上から下):F41フラグメント(青色)、3つのb葉(b−folium)折り畳み(褐色);a−ヘリックスを有する二次構造の分布(黄色)、b構造(緑色)、およびb−ターン(紫色);50番目の残基毎のチック(tic)マーク(青色);ドメインD0、D1、D2、およびD3;プロト−エレメント(proto−element)内の軸サブユニット接触領域(シアン);十分に保存されたアミノ酸配列(赤色)および可変領域(紫色);異なるスーパーコイルのエレメントを産生するF41中の点変異。下の文字は、変異エレメントの形態を示す:L(D107E、R124A、R124S、G426A)、L型直線;R(A449V)、R型直線;C(D313Y、A414V、A427V、N433D)、ねじれた33(curly33)。
【図10】図10は、Salmonella属フラゲリンドメイン、そのフラグメント、およびTLR5との相互作用を示す。暗色のバーは、A、B、C、A’、およびB’を含むフラグメントを構築するために使用したフラゲリン遺伝子の領域を示す。
【図11】図11は、SDS−PAGEによる断片化後の溶性フラゲリン(FliC)および2つのフラグメント(AA’およびBB’)を示し、分子量マーカーを左側に列挙した。
【図12】図12は、Salmonella属フラゲリン(FliC)およびフラゲリンフラグメントによるNF−κB核転位置の誘導を示す。
【図13】図13は、H116細胞におけるフラゲリンおよびフラゲリンフラグメントによるNF−κB調節ルシフェラーゼレポーター構築物の活性化を示す。タンパク質濃度を、μg/mlで示す。
【図14】図14は、フラゲリンおよびフラゲリンフラグメントによって誘導されたHT29ヒト結腸癌細胞におけるNF−κB DNA結合を示す。
【図15】図15は、全長フラゲリンおよびフラゲリンフラグメントによるHCT116レポーター細胞におけるNF−κBレポーターの活性化を示す。
【図16】図16は、フラゲリン(FliC)およびフラグメントAA’およびBB’の放射線防護性の比較を示す。
【図17】図17は、AA’フラグメントが照射によって生じる変性から腸上皮を防護することを示す。A:14Gy照射から5日後のマウスの小腸上皮の組織学的切片(ヘマトキシリンおよびエオシン染色)を示す。B:TUNELアッセイによって決定したところ、AA’フラグメントでの処置により、照射から5時間後に持続している絨毛の内皮細胞中のアポトーシスが防止される(内皮マーカーCD31の免疫染色によって検出し、矢印で示す)。C:14Gyのγ線照射から5日後の皮膚の組織学的切片は、脂腺のAA’フラグメントに対する防護効果を証明する(赤色の矢印)。
【図18】図18は、AA’フラグメントが17Gyおよび20Gyの全身γ線照射での超致死(supralethal)照射後のマウスの死亡を部分的に防護し、遅延することを示す。
【図19】図19は、フラゲリンおよびAA’による21日後および28日後のマウスで誘導された抗フラゲリン抗体力価を示す。各マウスについて、2つの測定値の平均を示す。マウスに、F1:フラゲリンまたはAA’を注射した。21dおよび28ds−マウスに21日目に最初の投与を行い、28日目に第2の投与をそれぞれ行う。PBS:生理食塩水(血清なし)コントロール;ブランク:空のウェル読み取りコントロール。
【図20】図20は、フラゲリンおよびAA’による21日後および28日後のマウスで誘導された抗フラゲリン力価を示す。各マウスについて、2つの測定値の平均を示す。マウスに、F1:フラゲリンまたはAA’を注射した。21dおよび28ds−マウスに21日目に最初の投与を行い、28日目に第2の投与をそれぞれ行う。PBS:生理食塩水(血清なし)コントロール;ブランク:空のウェル読み取りコントロール。
【図21】図21は、フラゲリンフラグメントAA’が複数の連続的γ線照射からマウスが防護されることを示す。矢印は照射処置を示す(1〜4日目)。
【図22】図22は、照射処置に対する腫瘍感受性に対するAA’の効果を示す。左のパネル:NIH−SwissマウスにNIH3T3誘導性肉腫細胞をs.c.注射した。腫瘍の直径が7〜10mmに到達した場合、AA’で前処置するかしないでマウスに3回の4.3Gyの線量の全身照射を行った。照射処置後の腫瘍成長の動力学を示す。U/t:未処置、AA’:照射しないでAA’で処置、3×4Gy:照射のみ、3×4Gy+AA’:AA’および照射。(曲線の形状は、このモデルに特徴的な遅い腫瘍成長を反映する)。最後の照射から7日後に測定した腫瘍体積に対して正規化した相対腫瘍体積として結果を示す。右のパネル:別の同系マウス腫瘍モデルを使用した同一の方法で試験を行った:B16黒色腫(C57BL6バックグラウンド)。腫瘍の直径が4〜5mmに到達した場合に処置を適用し、この処置には、AA’で前処置(照射30分前、5μg/マウス)するかしないその後の3回の4Gyの線量の全身γ線照射が含まれた。
【図23】図23は、13Gyの全身γ線照射後のマウスにおけるLPSおよびAA’の放射線防護に対するNS398の影響を示す。
【図24】図24は、21種の細菌由来の保存アミノ酸末端(図24A)およびカルボキシ末端(図24B)のアミノ酸配列の比較を示す。TLR5活性に重要な13の保存アミノ酸を、影をつけることによって示す。アミノ酸配列を、TrEMBL(最初の文字=Q)またはSwiss−Prot(最初の文字=P)由来のそのアクセッション番号によって識別する。
【図25】図25は、クエリー配列として配列番号1を使用したBLAST検索の結果を示す。全検索で使用したパラメーターは以下であった:期待値カットオフ=10、行列=BLOSUM62、存在のギャップペナルティ=11、および伸長=1、フィルタリング=なし。図25A:NR_細菌(タンパク質−タンパク質);図25B:NR_細菌(タンパク質−DNA);図25C:細菌ゲノム(タンパク質−タンパク質);図25D:細菌ゲノム(タンパク質−DNA)。
【図26】図26は、図25と同一の検索パラメーターを使用してhttp://www.expasy.org/からのBLASTの結果で示すように、配列番号1と比較して図24に示すホモログのアミノ末端およびカルボキシ末端の同一率を示す。
【図27】図27は、AA’が10Gyの全身γIR後の複数のマウス系統の救出(rescue)を媒介することを証明する。
【図28】図28は、静脈内(i.v.)、皮下(s.c.)、腹腔内(i.p.)、または筋肉内(i.m.)注射後のAA’の薬物動態を証明する。
【図29】図29は、筋肉内(i.m.)注射後のAA’の薬物動態の拡大を証明する。
【図30】図30は、A549細胞におけるγ線照射誘導性細胞死および成長阻害に対するAA’の影響を証明する。
【図31】図31は、複数の細胞株におけるγ線照射誘導性細胞死および成長阻害に対するAA’の影響を証明する。
【図32】図32は、NIH−Swissマウスの小腸陰窩におけるBrdU組み込みに対する照射およびAA’の影響を証明する。15Gyのγ線照射を行ったか行っていないコントロールおよびAA’処置NIH−Swissマウスの小腸中のBrdU組み込みの比較を示す。BrdU(50mg/kg)をマウス屠殺の1.5時間前に注射し、以前に記載のように免疫染色を行った(Watson AJ & Pritchard DM.,Am J Physiol Gastrointest Liver Physiol.2000 Jan;278(l):Gl−5)。画像の赤色チャネルを示す(陽性シグナルは暗色バックグラウンド上の明るい白色である)。
【図33】図33は、マウス小腸におけるAA’媒介性成長停止およびBrdU組み込みの減少の持続時間を示す。BrdU(50mg/kg)を、CBLB502(AA’)注射から1時間後または4時間後にBalb/cマウスにi.p.注射した。BrdU注射から1.5時間後に小腸サンプルを得た。以前に記載のように免疫染色を行った(Watson AJ & Pritchard DM.,Am J Physiol Gastrointest Liver Physiol.2000 Jan;278(l):Gl−5)。倒立像を示す(陽性シグナルは明色バックグラウンド上の暗色である)。
【図34】図34は、NIH−Swissマウスの結腸陰窩へのBrdU組み込みに対するAA’の影響を証明する。BrdU(50mg/kg)を、CBLB502(AA’)注射から1時間後にNIH−Swissマウスにi.p.注射した。以前に記載のように免疫染色を行った(Watson AJ & Pritchard DM.,Am J Physiol Gastrointest Liver Physiol.2000 Jan;278(l):Gl−5)。倒立像を示す(陽性シグナルは明色バックグラウンド上の暗色である)。下のパネルは、サンプルのより小さな倍率/大きな領域を示す。
【図35】図35は、AA’での処置後のTLR5欠損MOLF/EiおよびTLR5 wtNIH−Swissマウスの小腸の形態学を証明する。
【図36】図36は、フラゲリン誘導体を示す。選択されたフラゲリン誘導体のドメイン構造およびおおよその境界(アミノ酸座標)(右に列挙する)。Salmonella・dublinのFliCフラゲリンは、505アミノ酸(aa)内にコードされる。
【図37】図37は、NF−κB刺激活性について試験したさらなるフラゲリン誘導体の試験を示す。
【図38−1】図38は、以下のフラゲリン改変体のヌクレオチド配列およびアミノ酸配列を示す:AA’(配列番号7〜8)、AB’(配列番号9〜10)、BA’(配列番号11〜12)、BB’(配列番号13〜14)、CA’(配列番号15〜16)、CB’(配列番号17〜18)、A(配列番号19〜20)、B(配列番号21〜22)、C(配列番号23〜24)、GST−A’(配列番号25〜26)、GST−B’(配列番号27〜28)、AA’n1−170(配列番号29〜30)、AA’n1−163(配列番号33〜34)、AA’n54−170(配列番号31〜32)、AA’n54−163(配列番号335〜36)、AB’n1−170(配列番号37〜38)、AB’n1−163(配列番号39〜40)、AA’n1−129(配列番号41〜42)、AA’n54−129(配列番号43〜44)、AB’n1−129(配列番号45〜46)、AB’n54−129(配列番号47〜48)、AA’n1−100(配列番号49〜50)、AB’n1−100(配列番号51〜52)、AA’n1−70(配列番号53〜54)、およびAB’n1−70(配列番号55〜56)。pRSETbリーダー配列を、斜体で示す(リーダーには、FliCのアミノ酸1であるMetが含まれる)。N末端定常ドメインに下線を引いている。アミノ酸リンカー配列を太字で示す。C末端定常ドメインに下線を引いている。存在する場合、GSTを強調している。
【図38−2】図38は、フラゲリン改変体のヌクレオチド配列およびアミノ酸配列を示す。
【図38−3】図38は、フラゲリン改変体のヌクレオチド配列およびアミノ酸配列を示す。
【図38−4】図38は、フラゲリン改変体のヌクレオチド配列およびアミノ酸配列を示す。
【図38−5】図38は、フラゲリン改変体のヌクレオチド配列およびアミノ酸配列を示す。
【図38−6】図38は、フラゲリン改変体のヌクレオチド配列およびアミノ酸配列を示す。
【図38−7】図38は、フラゲリン改変体のヌクレオチド配列およびアミノ酸配列を示す。
【図38−8】図38は、フラゲリン改変体のヌクレオチド配列およびアミノ酸配列を示す。
【図38−9】図38は、フラゲリン改変体のヌクレオチド配列およびアミノ酸配列を示す。
【図38−10】図38は、フラゲリン改変体のヌクレオチド配列およびアミノ酸配列を示す。
【図38−11】図38は、フラゲリン改変体のヌクレオチド配列およびアミノ酸配列を示す。
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本願は、2004年12月22日に出願された米国仮特許出願第60/639,826号の利益を主張する。米国仮特許出願第60/639,826号は、本明細書中に参考として援用される。
【0002】
発明の分野
本発明は、アポトーシスの影響から哺乳動物を防護するためのフラゲリン関連ポリペプチドの使用に関する。より詳細には、本発明は、放射線および癌治療などのストレスへの曝露から哺乳動物を防護するためのフラゲリン関連ポリペプチドの使用に関する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
正常細胞から腫瘍細胞への進行は、負の成長調節機構の喪失(成長阻害刺激に対する耐性が含まれる)ならびに成長因子およびホルモンへの依存の欠如を伴う。放射線または細胞障害薬に基づく従来の癌治療は、正常細胞および悪生細胞の成長調節の相違に依存する。従来の癌治療は、細胞を重篤な遺伝動性ストレスに供する。これらの状態下で、大部分の正常細胞は成長が停止するようになり、それにより、生き残る一方で、腫瘍細胞は分裂し続け、死滅する。
【0004】
しかし、従来の癌治療ストラテジーは、正常な急速に分割する組織またはアポトーシス性組織を危険にさらす性質がある。これらの正常な急速に分割する細胞への損傷により、癌治療の周知の副作用(感受性組織:造血、小腸、毛包)が生じる。このような組織の天然の感受性は、癌細胞が頻繁に自殺(アポトーシス)機構を欠損し、治療手順が正常な感受性組織を死滅させるが癌細胞に損傷を与えなくなることがあるという事実によって複雑になる。癌療法の副作用を最小にするという従来の試みは、(a)腫瘍細胞の治療に対する感受性をより高めること、(b)腫瘍細胞に対する癌療法の特異性をより高めること、または(c)治療後(例えば、エリスロポイエチン、GM−CSF、およびKGF)の正常細胞の再生を促進することに基づく。
【0005】
癌治療における化学療法および放射線療法に関連する副作用を緩和するための治療薬が依然として必要とされている。本発明は、これらのニーズを満たし、他の関連する利点を提供する。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0006】
発明の概要
薬学的有効量のフラゲリンを含む組成物を患者に投与する工程を含む、アポトーシスを誘発する1つまたは複数の治療または状態から哺乳動物を防護する方法。フラゲリンは、配列番号1、または配列番号1のフラグメント、改変体、アナログ、ホモログ、誘導体、またはその組み合わせを含み得る。フラゲリンは、TLR−5媒介活性を誘導し得る。
【0007】
フラゲリンは、配列番号1のアミノ酸1〜174および418〜505と少なくとも30%同一であり得る。フラゲリンは、89位、90位、91位、95位、98位、101位、115位、422位、423位、426位、431位、436位、および452位からなる群から選択される少なくとも10個の保存アミノ酸を含み得る。フラゲリンは、配列番号1、8、10、12、30、32、34、36、38、40、42、44、46、48、50、および52からなる群から選択される配列を含み得る。
【0008】
フラゲリンを使用して、癌治療(化学療法または放射線療法であり得る)を受けている哺乳動物を治療することができる。フラゲリンを使用して、放射線を被爆した哺乳動物を治療することができる。フラゲリンを、放射線防護剤と組み合わせて投与することができる。フラゲリンを使用して、哺乳動物の創傷、中毒、細菌感染、ウイルス感染、および温度衝撃を治療することができる。フラゲリンを使用して、組織(胃腸管、肺、腎臓、肝臓、心血管系、血管内皮、中枢神経系、末梢神経系、造血前駆細胞、免疫系、および毛包が含まれる)のアポトーシスを防護することができる。フラゲリンを使用して、哺乳動物の敗血症を予防することもできる。
【0009】
本発明は、薬学的に許容可能な量のNF−κBを誘導する薬剤を含む組成物を哺乳動物に投与する工程を含む、構成性に活性なNF−κB癌を罹患した哺乳動物の治療方法に関する。薬剤は、フラゲリンであり得る。薬剤を、癌治療前、同時、または癌治療後に投与することができる。治療は、化学療法または放射線療法であり得る。
【0010】
本発明はまた、哺乳動物に薬学的に許容可能な量のNF−κBを誘導する薬剤を含む組成物を投与する工程を含む、癌治療に起因する正常組織に損傷を受けた哺乳動物の治療方法に関する。薬剤は、フラゲリンであり得る。薬剤を、癌治療前、同時、または癌治療後に投与することができる。治療は、化学療法または放射線療法であり得る。
【0011】
本発明はまた、哺乳動物に薬学的に許容可能な量のNF−κBを誘導する薬剤を含む組成物を投与する工程を含む、ストレスに起因する正常組織に損傷を受けた哺乳動物の治療方法に関する。薬剤は、フラゲリンであり得る。薬剤を、哺乳動物が罹患した疾患の治療前、同時、または治療後に投与することができる。
【0012】
本発明はまた、哺乳動物に薬学的に許容可能な量のNF−κBを誘導する薬剤を含む組成物を投与する工程を含む、哺乳動物の細胞老化の調整方法に関する。薬剤は、フラゲリンであり得る。薬剤を、哺乳動物が罹患した疾患の治療前、同時、または治療後に投与することができる。
【0013】
本発明はまた、NF−κB活性を誘導する薬剤、化学療法薬、および任意選択的に薬学的に許容可能なアジュバント、希釈剤、またはキャリアを含む薬学的組成物に関する。薬剤は、フラゲリンであり得る。
【0014】
本発明はまた、疑われる誘導因子をNF−κB活性化発現系に添加する工程と、コントロールをNF−κB活性化発現系に別で添加する工程と、それによりNF−κB活性化発現系レベルを増加させる能力によってNF−κBの誘導因子を同定することとを含む、NF−κBの誘導因子のスクリーニング方法に関する。
【0015】
本発明はまた、哺乳動物に薬学的有効量のNF−κBを誘導する薬剤を含む組成物を投与する工程を含む、哺乳動物を放射線の影響から防護する方法に関する。薬剤は、フラゲリンであってよく、これは、Salmonella属に由来し得る。組成物を、放射線防護剤と組み合わせて投与することができる。放射線防護剤は、抗酸化剤であってよく、これは、アミホスチン(amifostine)またはビタミンEであり得る。放射線防護剤はまた、サイトカインであってよく、これは、幹細胞刺激因子であり得る。
【0016】
本発明は、患者に薬学的有効量のNF−κBを誘導する薬剤を含む組成物を投与する工程を含む、アポトーシスを誘発する1つまたは複数の治療または状態から患者を防護する方法に関する。薬剤は、フラゲリンであってよく、これは、Salmonella属に由来し得る。治療は癌治療であってよく、これは、化学療法または放射線療法であり得る。状態はストレスであってよく、これは、放射線、創傷、中毒、感染、および温度衝撃であり得る。
【0017】
本発明はまた、疑われるモジュレーターを細胞ベースのアポトーシス系に添加する工程と、コントロールを細胞ベースのアポトーシス系に別で添加する工程と、それによりアポトーシス率を変化させる能力によってアポトーシスのモジュレーターを同定することと、疑われるモジュレーターが哺乳動物の寄生虫または共生生物に由来することとを含む、アポトーシスのモジュレーターのスクリーニング方法に関する。
【0018】
本発明はまた、疑われるモジュレーターをNF−κB活性化発現系に添加する工程と、コントロールをNF−κB活性化発現系に別で添加する工程と、それによりNF−κB活性化発現率を変化させる能力によってNF−κBのモジュレーターを同定することと、前記疑われるモジュレーターが、哺乳動物の寄生虫に由来することとを含む、NF−κBのモジュレーターのスクリーニング方法に関する。寄生虫は、Salmonella属、マイコプラズマ属、およびクラミジア属に由来し得るが、これらに限定されない。
【0019】
本発明はまた、本明細書中に記載の任意のスクリーニング方法によって同定されるモジュレーターに関する。本発明はまた、本明細書中に記載のモジュレーターを含む組成物に関する。組成物は、薬学的に許容可能な量の本明細書中に記載のモジュレーターを含む薬学的組成物であり得る。
【0020】
本発明はまた、アポトーシスを増強するモジュレーターを含む薬学的組成物をこのような治療を必要とする被験体に投与する工程を含む、癌の治療方法に関する。
【0021】
本発明はまた、患者にアポトーシスを阻害するモジュレーターを含む薬学的組成物を投与する工程を含む、アポトーシスを誘発する1つまたは複数の治療から患者を防護する方法を提供する。1つまたは複数の治療は、癌治療であり得る。癌治療は、化学療法または
放射線療法であり得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
(詳細な説明)
本発明は、ストレス(化学療法、放射線療法、および照射が含まれるが、これらに限定されない)によって生じたアポトーシスからの正常な細胞および組織の防護に関する。細胞におけるアポトーシスの調節には以下の2つの主な機構が存在する:p53経路(アポトーシス促進性)およびNF−κB経路(抗アポトーシス性)。両経路は、腫瘍で頻繁に無秩序化する:通常p53が喪失する一方で、NF−κBが構成性に活性になる。したがって、正常細胞におけるp53の阻害およびNF−κBの活性化により、癌治療などのストレスによって生じる死滅から正常細胞を防護することができるが、腫瘍細胞はこれらの調節機構が無秩序化されているので、腫瘍細胞により高い治療耐性を持たせられないであろう。これは、p53およびNF−κBがそれぞれ活性化および抑制の標的と考えられているp53およびNF−κBにおける従来の見解に矛盾する。
【0023】
本発明は、アポトーシスから正常細胞を防護するためのNF−κB活性の誘導に関する。哺乳動物におけるNF−κB活性の誘導により、正常細胞を、癌治療および高熱、有害線量の放射線被爆(例えば、原子力発電所、防衛産業または放射性医薬品生産の労働者、および軍人)、および細胞の老化で生じる細胞ストレスに帰するアポトーシスから防護することができる。NF−κBが多数の腫瘍細胞で構成性に活性であるので、NF−κB活性の誘導により、腫瘍細胞に有利な効果を与えることなく正常な細胞をアポトーシスから防護することができる。一旦正常な細胞が修復されると、NF−κB活性を正常レベルに修復することができる。造血系(免疫系が含まれる)、腸上皮、および毛包などの照射および化学療法感受性組織を防護するためにNF−κB活性を誘導することができる。
【0024】
NF−κB活性の誘導因子を、いくつかの他の適用に使用することもできる。種々の重篤な状態(照射、創傷、中毒、感染、老化、および温度ショックが含まれるが、これらに限定されない)への哺乳動物の被爆によって生じる病的結果および死は、ストレス応答の正常な生理学的機構の活性(プログラム細胞死(アポトーシス)の誘導または生体活性タンパク質(サイトカイン)の放出など)に起因し得る。
【0025】
アポトーシスは、通常、創傷細胞および遺伝子損傷細胞由来の組織を「浄化する」ように機能する一方で、サイトカインは、病原体に対する生物の防護系を動員するように機能を果たす。しかし、重篤な損傷の条件下では、両ストレス応答機構自体が自滅の原因として作用し得る。例えば、照射による死亡は、造血系、免疫系、および消化系で起こる大規模なp53媒介性アポトーシスに起因し得る。NF−κBの妥当な薬理学的調節により、重篤なストレス条件下での生存率が増加し得る。これらの要因の調節により、損傷器官由来の細胞の炎症応答および生死の決断の両方を調節することが可能である。NF−κB誘導因子の投与によってアポトーシスから防護することができる組織には、胃腸管、肺、腎臓、肝臓、心血管系、血管内皮、中枢神経系、末梢神経系、造血前駆細胞、免疫系、および毛包が含まれるが、これらに限定されない。
【0026】
NF−κBの防護的役割は、以下をコードする複数の遺伝子の転写活性化によって媒介される:a)両方の主なアポトーシス経路を遮断する抗アポトーシスタンパク質、b)HPおよび他の幹細胞の増殖および生存を誘導するサイトカインおよび成長因子、およびc)強力なROS除去抗酸化タンパク質(MnSOD(SOD−2)など)。したがって、放射線防護のためのNF−κBの一過性活性化により、Toll様受容体の活性化を介してNF−κBの活性化が到達する場合に達成することができる同時免疫刺激効果によって癌患者のアポトーシスの抑制だけでなく、二次癌の発生率を減少させる能力を達成することが可能である。
【0027】
標的としてのNF−κB経路の別の魅力的な特性は、候補放射線防護剤と見なすことができる多数の天然因子によるその活性化である。これらのうちでは、複数の病原体関連分子パターン(PAMP)である。PAMPは、宿主生物で見出されない分子であり、巨大な病原体群を特徴とし、容易に変異することができない。これらは、Toll様受容体(TLR)(自然免疫の重要なセンサーエレメント)によって認識される。TLRは、直接またはサイトカイン放出を介した免疫細胞の移動および活性化の誘導による免疫系の第1の警告機構として作用する。TLRは、ホモ二量体およびヘテロ二量体として作用することが公知のI型膜タンパク質である。リガンド結合の際、TLRは、MyD88タンパク質(ほとんどのTLRの不可欠なシグナル伝達アダプター)を補充する。次に起こるシグナル伝達カスケードにより、(i)NF−κB経路の活性化、および(ii)MAPK(JunN末端キナーゼ(JNK)が含まれる)の活性化が含まれる効果が導かれる。Toll様受容体リガンドによるNF−κB経路の活性化により、リガンドが潜在的な放射線防護剤として魅力的になる。サイトカインと異なり、多数のPAMPはTLRの活性化以外はほとんど効果がないので、副作用を生じる可能性が低い。さらに、多数のPAMPは、ヒトに存在する。
【0028】
その免疫細胞活性化機能と一致して、全てのTLRは、脾臓および末梢血白血球で発現し、他のリンパ器官およびリンパ球の一部でより多数のTLR特異的発現パターンが存在する。しかし、TLRは、体内の他の組織および器官でも発現する(例えば、TLR1は遍在的に発現し、TLR5は胃腸管上皮および内皮でも見出される一方で、TLR2、6、7、および8は、肺で発現することが公知である)。
【0029】
1.定義
本明細書中で使用される専門用語は特定の実施形態を説明することのみを目的とし、本発明を制限しないと理解すべきである。明細書および添付の特許請求の範囲で使用する場合、文脈上で明確に別の記載を行わない限り、単数形「a」、「an」、および「the」には複数形が含まれることに留意しなければならない。
【0030】
本明細書中で使用される、用語「投与」は、NF−κB活性を誘導する薬剤の投薬量を説明するために使用される場合、薬物の単回用量または複数回用量を意味する。
【0031】
本明細書中で使用される、用語「アナログ」は、ペプチドまたはポリペプチドの文脈で使用される場合、従来のアミノ酸組由来の1つまたは複数の非標準アミノ酸または他の構造変形形態を意味する。
【0032】
本明細書中で使用される、用語「抗体」は、IgG、IgM、IgA、IgD、もしくはIgEの抗体クラス、またはそのフラグメントもしくは誘導体(Fab、F(ab’)2、Fd、および単鎖抗体が含まれる)、ダイアボディ(diabody)、二重特異性抗体、二機能性抗体、およびその誘導体を意味する。抗体は、所望のエピトープまたはこれに由来する配列に対して十分な結合特異性を示すモノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、親和性精製抗体、またはその混合物であり得る。抗体はまた、キメラ抗体であり得る。抗体を、当該分野で公知の1つまたは複数の化学的部分、ペプチド部分、またはポリペプチド部分の結合によって誘導体化することができる。抗体を、化学部分と抱合することができる。
【0033】
本明細書中で使用される、用語「アポトーシス」は、細胞小器官の完全性が保護される細胞容積の進行性の収縮、光学顕微鏡または電子顕微鏡によって認められるクロマチンの凝縮(すなわち、核凝縮)、および/または遠心分離沈殿アッセイによって決定されるヌクレオソームサイズのフラグメントへのDNAの切断を含む細胞死の形態をいう。食細胞によるインタクトな細胞フラグメント(「アポトーシス小体」)の貪食によって細胞膜の完全性が失われた(例えば、膜小胞形成)場合に細胞死が起こる。
【0034】
本明細書中で使用される、用語「癌」は、異常な無制御の細胞分裂に起因する任意の悪性の成長または腫瘍を意味し、リンパ系または血流を介して身体の他の部分に拡大し得る。
【0035】
本明細書中で使用される、用語「癌治療」は、当該分野で公知の任意の癌治療(化学療法および放射線療法が含まれるが、これらに限定されない)を意味する。
【0036】
本明細書中で使用される、用語「〜との組み合わせ」は、NF−κB活性を誘導する薬剤の投与およびさらなる治療を説明するために使用する場合、薬剤を、さらなる治療前、同時、治療後、または規則正しく(metronomically)投与することができることを意味する。本明細書中で使用される、用語「〜共に」、「同時の」、または「同時に」は、本発明のさらなる治療および薬剤を、48時間以内、好ましくは24時間以内、より好ましくは12時間以内、さらにより好ましくは6時間以内、最も好ましくは3時間以内またはそれ未満で施すことを意味する。本明細書中で使用される、用語「規則正しく」は、さらなる治療と異なる時点且つ反復投与および/またはさらなる治療と比較して一定の頻度での薬剤の投与を意味する。
【0037】
薬剤を、さらなる治療前の任意の時点(さらなる治療の約48時間前、46時間前、44時間前、42時間前、40時間前、38時間前、36時間前、34時間前、32時間前、30時間前、28時間前、26時間前、24時間前、22時間前、20時間前、18時間前、16時間前、14時間前、12時間前、10時間前、8時間前、6時間前、4時間前、3時間前、2時間前、または1時間前が含まれるが、これらに限定されない)で投与することができる。薬剤を、さらなる治療後の一定の時点(被爆から約1時間後、2時間後、3時間後、4時間後、6時間後、8時間後、10時間後、12時間後、14時間後、16時間後、18時間後、20時間後、22時間後、24時間後、26時間後、28時間後、30時間後、32時間後、34時間後、36時間後、38時間後、40時間後、42時間後、44時間後、46時間後、または48時間後が含まれるが、これらに限定されない)で投与することができる。
【0038】
本明細書中で使用される、用語「誘導体」は、ペプチドまたはポリペプチドの文脈で使用される場合、一次構造以外が異なるペプチドまたはポリペプチド(アミノ酸およびアミノ酸アナログ)を意味する。例として、誘導体は、グリコシル化(翻訳後修飾の一形態)が異なり得る。例えば、ペプチドまたはポリペプチドは、異種系における発現に起因するグリコシル化パターンを示し得る。少なくとも1つの生物活性が保持される場合、これらのペプチドまたはポリペプチドは、本発明の誘導体である。他の誘導体には、共有結合的に修飾されたN末端またはC末端を有するペプチドまたは融合ポリペプチド、PEG化ペプチドまたはポリペプチド、脂質部分に会合したペプチドまたはポリペプチド、アルキル化ペプチドまたはポリペプチド、アミノ酸側鎖の官能基を介して他のペプチドに結合したペプチドまたはポリペプチド、ポリペプチドまたはキメラ、および当該分野で理解されているさらなる修飾物が含まれるが、これらに限定されない。
【0039】
本明細書中で使用される、用語「フラグメント」は、ペプチドまたはポリペプチドの文脈で使用される場合、基準ペプチドまたはポリペプチドの一部を意味する。
【0040】
本明細書中で使用される、用語「ホモログ」は、ペプチドまたはポリペプチドの文脈で使用される場合、共通の進化上の祖先を有するペプチドまたはポリペプチドを意味する。
【0041】
本明細書中で使用される、用語「処置する」または「処置」は、状態からの哺乳動物の防護をいう場合、状態の予防、抑制、防止、または消失を意味する。状態の予防は、状態の発症前に本発明の組成物を哺乳動物に投与する工程を含む。状態の抑制は、状態の誘導後であるがその臨床的外観前に哺乳動物に本発明の組成物を投与する工程を含む。状態の防止は、状態が軽減または維持されるように状態の臨床的外観後に哺乳動物に本発明の組成物を投与する工程を含む。溶媒の消失は、哺乳動物がもはや状態を罹患しないように状態の臨床的外観後に哺乳動物に本発明の組成物を投与する工程を含む。
【0042】
本明細書中で使用される、用語「腫瘍細胞」は、癌に関連する任意の細胞を意味する。
【0043】
本明細書中で使用される、用語「改変体」は、ペプチドまたはポリペプチドの文脈で使用される場合、アミノ酸の挿入、欠失、または保存的置換によってアミノ酸配列が異なるが、少なくとも1つの生物活性を保持するペプチドまたはポリペプチドを意味する。「生物活性」の代表例には、TLR5に結合する能力および特異的抗体によって結合される能力が含まれるが、これらに限定されない。アミノ酸の保存的置換(すなわち、アミノ酸の類似の性質(例えば、親水性、荷電領域の程度および分布)を有する異なるアミノ酸への置換)は、当該分野で典型的には小さな変化と認識されている。これらの小さな変化を、当該分野で理解されているように、アミノ酸のヒドロパシー指標を考慮することによって一部を同定することができる。Kyte et al,J.MoI.Biol.157:105−132(1982)。アミノ酸のヒドロパシー指標は、その疎水性および電荷の考慮に基づく。類似のヒドロパシー指標のアミノ酸を置換することができ、且つタンパク質機能を保持することができることが当該分野で公知である。1つの態様では、ヒドロパシー指標が±2のアミノ酸を置換する。アミノ酸の親水性を使用して置換することができ、これにより、生物機能が保持されたタンパク質が得られるであろう。ペプチドにおけるアミノ酸の親水性の考慮により、このペプチドの最も高い局所平均疎水性(抗原性および免疫原性と十分に相関すると報告されている有用な基準)を計算することが可能である(米国特許第4,554,101号(本明細書中で参考として援用される))。当該分野で理解されているように、類似の親水性値を有するアミノ酸の置換により、生物活性(例えば、免疫原性)が保持されたペプチドを得ることができる。1つの態様では、互いに親水性値が±2以内のアミノ酸と置換することができる。アミノ酸の疎水性指標および親水性値は共に、そのアミノ酸の特定の側鎖に影響を受ける。その所見と一致して、生物機能と適合するアミノ酸置換は、疎水性、親水性、電荷、サイズ、および他の性質によって明らかとなるアミノ酸の相対的類似性、特に、そのアミノ酸の側鎖に依存すると理解されている。
【0044】
2.治療方法
a.構成性に活性なNF−κB腫瘍
本発明は、治療有効量のNF−κB活性を誘導する薬剤を含む組成物を哺乳動物に投与する工程を含む、構成性に活性なNF−κB癌を罹患した哺乳動物を治療する方法に関する。NF−κB活性を誘導する薬剤を、癌治療(化学療法および放射線療法など)と組み合わせて投与することができる。
【0045】
癌治療は、細胞傷害薬、細胞増殖抑制薬、またはその組み合わせの投与を含み得る。細胞傷害薬は、(1)細胞のDNA複製能力の妨害、および(2)癌細胞の細胞死および/またはアポトーシスの誘導によって癌細胞の増殖を予防する。細胞傷害薬は、細胞シグナル伝達過程の調整、妨害、または阻害を介して作用し、細胞増殖をしばしば低継続レベルで調節する。
【0046】
細胞傷害薬として使用することができる化合物クラスには、以下が含まれるが、これらに限定されない:アルキル化薬(ナイトロジェンマスタード、エチレンイミン誘導体、アルキルスルホン酸、ニトロソ尿素、およびトリアゼンが含まれるが、これらに限定されない):ウラシルマスタード、クロルメチン、シクロホスファミド(Cytoxan(登録商標))、イホスファミド、メルファラン、クロラムブシル、ピポブロマン、トリエチレン−メラミン、トリエチレンチオホスホラミン(triethylenethiophosphoramine)、ブスルファン、カルムスチン、ロムスチン、ストレプトゾシン、ダカルバジン、およびテモゾロミド;代謝拮抗薬(葉酸アンタゴニスト、ピロリジンアナログ、プリンアナログ、およびアデノシンデアミナーゼインヒビターが含まれるが、これらに限定されない):メトトレキサート、5−フルオロウラシル、フロクスウリジン、シタラビン、6メルカプトプリン、6−チオグアニン、リン酸フルダラビン、ペントスタチン、およびゲムシタビン;天然物およびその誘導体(例えば、ビンカアルカロイド、抗腫瘍性抗生物質、酵素、リンホカイン、およびエピポドフィロトキシン(epipodophyllotoxins)):ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン、ブレオマイシン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、エピルビシン、イダルビシン、ara−c、パクリタキセル(パクリタキセルは、タキソール(登録商標)として市販されている)、ミトラマイシン、デオキシコホルマイシン、マイトマイシン−c、1−アスパラギナーゼ、インターフェロン(好ましくは、インターフェロン−α)、エトポシド、およびテニポシド。他の増殖性細胞傷害薬は、ナベルベン(navelbene)、CPT−11、アナストラゾール(anastrazole)、レトラゾール(letrazole)、カペシタビン、レオキサフィン(reloxafine)、シクロホスファミド、イフォスファミド、およびドロロキサフィン(droloxafine)である。
【0047】
微小管作用薬は細胞の有糸分裂を妨害し、その細胞傷害活性が当該分野で周知である。本発明で有用な微小管作用薬には、アロコルヒチン(allocolchicine)(NSC 406042)、ハリコンドリンB(NSC 609395)、コルヒチン(NSC 757)、コルヒチン誘導体(例えば、NSC 33410)、ドラスタチン10(dolastatin 10)(NSC 376128)、マイタンシン(maytansine)(NSC 153858)、リゾキシン(NSC 332598)、パクリタキセル(Taxol(登録商標)、NSC 125973)、タキソール(登録商標)誘導体(例えば、誘導体(例えば、NSC 608832)、チオコルヒチン(thiocolchicine)(NSC 361792)、トリチルシステイン(NSC 83265)、硫酸ビンブラスチン(NSC 49842)、硫酸ビンクリスチン(NSC 67574)、天然および合成エポシロン(エポシロンA、エポシロンB、およびディスコデルモリド(Service,(1996)Science,274:2009を参照のこと)が含まれるが、これらに限定されない)、エストラムスチン、ノコダゾール、およびMAP4などが含まれるが、これらに限定されない。このような薬剤の例は、Bulinski(1997)J.Cell Sci.110:3055 3064;Panda(1997)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 94:10560−10564;Muhlradt(1997)Cancer Res.57:3344−3346;Nicolaou(1997)Nature 387:268−272;Vasquez(1997)MoI.Biol.Cell.8:973−985;およびPanda(1996)J.Biol.Chem 271:29807−29812にも記載されている。
【0048】
エピドフィロトキシン(epidophyllotoxin)などの細胞傷害薬;抗新生物酵素;トポイソメラーゼインヒビター;プロカルバジン;ミトキサントロン;シスプラチンおよびカルボプラチンなどの白金配位複合体;生物学的応答調節物質;成長抑制物質;抗ホルモン治療薬;ロイコボリン(leucovorin);テガフール;および造血成長因子などの細胞傷害薬も適切である。
【0049】
使用することができる細胞増殖抑制薬には、ホルモンおよびステロイド(合成アナログが含まれる):17α−エチニルエストラジオール、ジエチルスチルベストロール、テストステロン、プレドニゾン、フルオキシメステロン、プロピオン酸ドロモスタノロン、テストラクトン、メゲストロラセテート(megestrolacetate)、メチルプレドニゾロン、メチルテストステロン、プレドニゾロン、トリアムシノロン、クロロトリアニセン(hlorotrianisene)、ヒドロキシプロゲステロン、アミノグルテチミド、エストラムスチン、酢酸メドロキシプロゲストロン(medroxyprogesterone acetate)、リュープロリド、フルタミド、トレミフェン、ゾラデックス(zoladex)が含まれるが、これらに限定されない。
【0050】
他の細胞増殖抑制薬は、マトリックスメタロプロテイナーゼインヒビターなどの抗血管新生薬、抗VEGF抗体などの他のVEGFインヒビター、ZD6474およびSU6668などの小分子である。Genetechの抗Her2抗体も使用することができる。適切なEGFRインヒビターは、EKB−569(不可逆性インヒビター)である。EGFRに免疫特異的なImclone抗体C225およびsrcインヒビターも含まれる。
【0051】
アンドロゲン依存性癌腫を非増殖性にするカソデックス(登録商標)(bicalutamide,Astra Zeneca)も細胞増殖抑制薬としての使用に適切である。細胞増殖抑制薬のさらに別の例は、エストロゲン依存性乳癌の増殖または成長を阻害する抗エストロゲンであるタモキシフェン(登録商標)である。細胞増殖シグナル伝達のインヒビターは、細胞増殖抑制薬である。代表例には、上皮細胞成長因子インヒビター、Her−2インヒビター、MEK−I キナーゼインヒビター、MAPKキナーゼインヒビター、PI3インヒビター、Srcキナーゼインヒビター、およびPDGFインヒビターが含まれる。
【0052】
種々の癌を本発明にしたがって治療することができ、癌には、以下が含まれるが、これらに限定されない:膀胱(進行性および転移性膀胱癌が含まれる)、乳房、結腸(直腸結腸癌が含まれる)、腎臓、肝臓、肺(小細胞肺癌および非小細胞肺癌)、卵巣、前立腺、精巣、尿生殖路、リンパ系、直腸、喉頭、膵臓(外分泌膵癌が含まれる)、食道、胃、胆嚢、頚部、甲状腺、皮膚(扁平上皮癌が含まれる)の癌腫;リンパ系の造血器腫瘍(白血病、急性リンパ性白血病、急性リンパ性白血病、B細胞リンパ腫、T細胞リンパ腫、ホジキンリンパ腫、非−ホジキンリンパ腫、毛様細胞リンパ腫、組織球性リンパ腫、バーキットリンパ腫が含まれる);骨髄細胞系列の造血器腫瘍(急性および慢性骨髄性白血病、骨髄異形成症候群、骨髄性白血病、および前骨髄球性白血病が含まれる);中枢神経系および末梢神経系の腫瘍(星細胞腫、神経芽細胞腫、神経膠腫、シュワン腫が含まれる);間葉系起源の腫瘍(線維肉腫、横紋筋肉縮、および骨肉腫が含まれる);ならびに他の腫瘍(メラノーマ、色素性乾皮症(xenoderma pigmentosum)、ケラトアクタンソーマ(keratoactanthoma)、精上皮腫、甲状腺濾胞癌、奇形癌腫、および胃腸管または腹骨盤腔の癌。
【0053】
b.癌治療由来の副作用の治療
本発明はまた、哺乳動物に治療有効量のNF−κB活性を誘導する薬剤を含む組成物を投与する工程を含む、構成性に活性なNF−κB癌の治療に起因する正常組織に対する損傷を被った哺乳動物の治療方法に関する。NF−κB活性を誘導する薬剤を、上記の癌治療と組み合わせて投与することができる。
【0054】
c.細胞老化の調節
本発明はまた、哺乳動物に治療有効量のNF−κB活性を誘導する薬剤を投与する工程を含む、哺乳動物の細胞老化を調整する方法に関する。NF−κB活性を誘導する薬剤を、他の治療と組み合わせて投与することができる。
【0055】
d.ストレスの治療
本発明はまた、哺乳動物に薬学的に治療有効量のNF−κB活性を誘導する薬剤を含む組成物を投与する工程を含む、ストレスに起因する正常組織に損傷を受けた哺乳動物の治療方法に関する。NF−κB活性を誘導する薬剤を、他の治療と組み合わせて投与することができる。ストレスは、任意の起源(照射、創傷、中毒、感染、および温度ショックが含まれるが、これらに限定されない)に起因し得る。
【0056】
e.照射
本発明はまた、放射線の被爆効果からの細胞の防護に関する。電離放射線由来の正常細胞の損傷および死滅は、被爆細胞の直接的な照射誘導性損傷と自殺による死滅またはアポトーシスを引き起こす照射誘導性ストレスに対する活性な遺伝的プログラム細胞反応との組み合わせである。アポトーシスは、いくつかの放射線感受性器官(すなわち、造血系および免疫系、消化管の上皮など)で生じる大規模な細胞喪失で重要な役割を果たし、その不全が器官の一般的な放射線感受性を決定づける。
【0057】
電離放射線(IR)への被爆は短期間でも長期間でもよく、単回または複数回の線量として、全身または局所に適用することができる。したがって、原発事故または軍事攻撃は、単回の高線量の全身被爆(時折、その後の放射性同位体での長期中毒)を含み得る。造血器官を宿主血液前駆体から「浄化する」ことによってドナー骨髄のために造血器官を調製することが必要である場合の骨髄移植患者の前処置(適用線量を厳格に調節した)についても同様である。癌治療は、全身照射として適用する場合致死線量を非常に超える局所照射の複数回線量を含み得る。放射性同位体での中毒または治療は、標的化器官(例えば、125I吸入の場合の甲状腺)の照射によって長期間局所被爆させる。最後に、生物学的影響の重症度が有意に異なる電離放射線の物理的形態が多数存在する。
【0058】
分子レベルおよび細胞レベルで、放射粒子(radiation particle)は、DNA、タンパク質、細胞膜、および他の高分子構造中の破損および架橋を精製することができる。電離放射線はまた、フリーラジカルおよび活性酸素種(ROS)の生成によって細胞成分に対する二次的損傷を誘導する。複数の修復系(DNAの完全性および忠実性を修復するいくつかのDNA修復経路ならびにフリーラジカルおよびROSを除去して酸化タンパク質および脂質を還元する抗酸化化学物質および酵素など)によってこの損傷を無効にする。細胞チェックポイント系(checkpoint system)は、DNAの欠損を検出し、損傷が修復されるか、細胞に成長停止またはプログラム細胞死(アポトーシス)を実行させる決定に到達するまで細胞周期の進行を遅延させる。
【0059】
照射により、哺乳動物の器官が低線量での軽度の変異誘発および発癌効果から高線量によるほとんど即時の死滅までの範囲の損傷を受け得る。成分の全放射線感受性を、いくつかの感受性組織(造血系、生殖系、および細胞代謝回転率が高い異なる上皮が含まれる)で生じた病理学的変化によって決定する。
【0060】
死亡を誘導するγ線照射の急性の病理学的結果は、線量によって異なり、特定の各線量に対する生物の感受性の閾値を規定する一定の器官の不全によって決定される。したがって、低線量での死亡は骨髄形成不全から生じる一方で、中程度の線量では胃腸管(GI)症候群の誘導によってより早く死亡する。非常に高い線量の照射により、神経変性の誘発によってほぼ即死し得る。
【0061】
照射による一定の急性毒性期間を生存する生物は、長期遠隔性の結果(照射から数ヵ月後および数年後の被爆器官(例えば、腎臓、肝臓、または肺)における照射誘導性発癌および線維症が含まれる)を罹患し得る。
【0062】
細胞DNAは、直接および間接的(フリーラジカルベースの)機構による種々のDNA損傷型(遺伝毒性ストレス)を生じるIRの主な標的である。全生物は、照射損傷DNAの有効な回復が可能なDNA修復系を維持するが、DNA修復過程のエラーによって変異し得る。
【0063】
腫瘍は、一般に、γ線照射により感受性が高く、正常組織に対する損傷が比較的低い低線量で複数回処置することができる。それにもかかわらず、いくつかの例では、正常組織の損傷は、癌治療のためのγ線照射の適用を制限する因子である。従来の三次元原体照射またはさらにより集束したBeamCath送達による癌療法におけるγ線照射の使用はまた、照射の蓄積作用および急速に新生される正常組織(骨髄および胃腸(GI)管など)の幹細胞の損傷の誘導に起因する毒性のために線量が制限される。
【0064】
高線量では、照射誘導性死亡は、いわゆる造血器および胃腸管の放射線症候群に関連する。造血器症候群は、血液およびリンパ系の再生を不可能にする造血細胞およびその前駆細胞の喪失によって特徴づけられる。通常、感染(免疫抑制の結果)、出血、および/または貧血の結果として死亡する。GI症候群は、主に小腸の腸上皮の大規模な細胞死およびその後の腸壁の崩壊ならびに菌血症および敗血症由来の死滅に起因する。造血器症候群は、通常、低線量の照射で発症し、GI症候群よりも遅れて死滅する。
【0065】
以前は、放射線防護剤は、典型的には、抗酸化剤(合成および天然の両方)であった。最近になって、サイトカインおよび成長因子が放射線防護剤のリストに加わっている。その放射線防護剤の機構は、感受性組織の再生効果の促進の結果であるとみなされている。両放射線防護剤群の間に明確な機能の差は存在しないが、いくつかのサイトカインは、細胞抗酸化タンパク質(マンガンスーパーオキシドジスムターゼ(MnSOD)およびメタロチオネインなど)の発現を誘導する。
【0066】
特定の薬剤の防護基準を、線量修飾係数(DMFまたはDRF)によって示す。DMFは、放射線防護剤処置被験体および未処置コントロール被験体への一定範囲の放射線量での照射およびその後の生存またはいくつかの他の評価項目の比較によって決定される。DMFは、一般に、30日生存(LD50/30薬物処置からLD50/30賦形剤処置を割る)を計算し、造血系の防護を定量する。胃腸系防護を評価するために、6日生存または7日生存についてLD50およびDMFを計算する。他で示さない限り、本明細書中に提供したDMF値は30日である。
【0067】
以下に示すように、NF−κBの誘導因子は、細胞レベルおよび生物全体として強い生存促進(pro−survival)活性を有する。超致死線量の照射に応答して、NF−κBの誘導因子は、胃腸系および造血系症候群の両方を阻害するが、これが急性放射線被爆による死亡の主な原因である。これらの特性の結果として、NF−κBの誘導因子を使用して、天然の照射事象および原発事故の影響を治療することができる。さらに、NF−κBの誘導因子が現在公知の全ての放射線防護剤と異なる機構を介して作用するので、これらを、他の放射線防護剤と組み合わせて使用し、それにより、電離放射線からの防護規模を劇的に増大させることができる。
【0068】
従来の放射線防護剤(例えば、フリーラジカルの捕捉剤)と対照的に、NF−κB活性の誘導因子は、一次照射媒介性損傷を軽減することができないが、二次事象(一次損傷に対する活性細胞反応を含む)に対して作用することができるので、既存の一連の防護を補足することができる。ピフィスリンα(p53の薬理学的インヒビター)(哺乳動物細胞における照射反応の重要なメディエーター)は、この新規の放射線防護剤クラスの例である。しかし、p53インヒビターの活性は、造血系の防護に限定され、消化管(胃腸管症候群)に防護効果を示さないので、これらの化合物の治療価値が減少する。広範な活性を示す抗アポトーシス性医薬品が非常に必要とされている。
【0069】
NF−κBの誘導因子を放射線防護剤として使用して、現在利用可能な手段(遮蔽および既存の生物防護剤(bioprotective agent)の適用)によって達成可能なレベルを超える放射線耐性に増加させることによって許容照射範囲を拡大し、例えば、発電所内の原発事故または宇宙飛行中の大規模態様粒子現象における生存機会を増大させることができる。1.5を超えるほぼDMF(30日生存)では、NF−κB誘導因子であるフラゲリンは、任意の現在報告されている天然化合物よりも有効である。
【0070】
NF−κBの誘導因子はまた、例えば、中枢神経系および生殖器官における低線量照射に起因する代替不可能な細胞の喪失の治療に有用であり得る。NF−κBの誘導因子を、癌化学療法時に使用して、化学療法に関連する副作用(脱毛症が含まれる)を治療することもできる。
【0071】
1つの実施形態では、治療有効量のNF−κBの誘導因子を含む組成物を哺乳動物に投与して被爆した哺乳動物を治療する。NF−κBの誘導因子を含む組成物を、1つまたは複数の放射線防護剤と組み合わせて投与することができる。1つまたは複数の放射線防護剤は、被爆の影響を処置する任意の薬剤(抗酸化剤、フリーラジカル捕捉剤、およびサイトカイン)であり得る。
【0072】
NF−κBの誘導因子は、DNAおよび他の細胞構造の損傷に応答した照射誘導性プログラム細胞死を阻害することができるが、NF−κBの誘導因子は、細胞レベルでの損傷に対応することができず、変異を防止することができない。フリーラジカルおよび活性酸素種(ROS)は、変異および他の細胞内損傷の主な原因である。抗酸化剤およびフリーラジカル捕捉剤は、フリーラジカルによる損傷の防止で有効である。NF−κBの誘導因子と抗酸化剤またはフリーラジカル捕捉剤との組み合わせにより、被爆による損傷の拡大を減少させ、生存率を高め、健康を改善することができる。本発明の実施で使用することができる抗酸化剤およびフリーラジカル捕捉剤には、チオール(システイン、システアミン、グルタチオン、およびビリルビンなど);アミフォスチン(WR−2721);ビタミンA;ビタミンC;ビタミンE;およびフラボノイド(インディアンホリーバジル(オシマム・サンクタム(Ocimum sanctum))由来のオリエンチン(orientin)およびビセニン(vicenin)など)が含まれるが、これらに限定されない。
【0073】
NF−κBの誘導因子を、放射線感受性幹細胞集団の補充および/または防護によって放射線防護性を付与する多数のサイトカインおよび成長因子と組み合わせて投与することもできる。幹細胞因子(SCF、c−kitリガンド)、Flt−3リガンド、およびインターロイキン1フラグメントであるIL−1b−rdの使用によって副作用を最小にした放射線防護を達成することができる。幹細胞(記載の全サイトカイン)の増殖の誘導およびそのアポトーシス(SCF)の防止によって防護を達成することができる。処置により、照射前に白血球およびその前駆体を蓄積することが可能であり、それにより、照射後に免疫系をより迅速に再構成することが可能である。SCFは、1.3〜1.35の範囲のDMFの致死線量照射マウスを有効に救出し、且つ胃腸管症候群にも有効である。Flt−3リガンドもまた、マウス(LD100/30で70〜80%の30日生存、DMF>1.2に相当)およびウサギで強い防護を示す。
【0074】
さらに、以下などのサイトカインの組み合わせによって放射線防護を増強することができる:インターロイキン4(IL−4)および/またはインターロイキン11(IL−11)と組み合わせたTPO;IL−3と組み合わせたGM−CSF;Flt−3リガンドと組み合わせたG−CSF;4F組み合わせ:SCF、Flt−3リガンド、TPO、およびIL−3;ならびに5F組み合わせ:SDF−1を加えた4F。
【0075】
さらに、胃腸管放射線防護剤(形質転換成長因子β3(TGFb3)、インターロイキン11(IL−11)、および記載のケラチノサイト成長因子(KGF)が含まれる)を使用することができる。これらの放射線防護剤も腸を防護するが、これらは、フラゲリンまたはフラゲリン関連ポリペプチドと相乗効果を示す可能性が高い。なぜなら、下記の結果がフラゲリンおよびフラゲリン関連ポリペプチドが内皮を防護する一方で、これらの胃腸管放射線防護剤がGI管の上皮を防護することを示すからである。
【0076】
いくつかの因子(本来はサイトカインではないが)は、免疫細胞の増殖を刺激し、NF−κBの誘導因子と組み合わせて使用することができる。例えば、5−AED(5−アンドロステンジオール)は、サイトカインの発現を刺激して細菌感染およびウイルス感染への耐性を増加させるステロイドである。照射24時間前のマウスへの5−AEDの皮下注射により、生存がDMF=1.26に改善された。合成化合物(アンモニウムトリクロロ(ジオキソエチレン−O,O’−)テルレート(AS−101)など)を使用して、多数のサイトカインの分泌を誘導し、NF−κBの誘導因子と組み合わせることもできる。さらなる放射線防護剤には、成長ホルモン(GH)、トロンボポイエチン(TPO)、インターロイキン3(IL−3)、顆粒球−マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)、顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)、および間質由来因子1(stromal derived factor−1)(SDF−1)が含まれる。
【0077】
成長因子およびサイトカインを使用して、胃腸管症候群から防護することもできる。ケラチノサイト成長因子(KGF)は、腸粘膜の増殖および分化を促進し、腸陰窩中の照射後細胞生存を増加させる。造血サイトカインおよび放射線防護性SCFは、腸幹細胞の生存および関連する短期生物生存も増加させることができる。
【0078】
NF−κBの誘導因子は、胃腸(GI)症候群および造血器症候群からの防護を付与することができる。15Gyの全身致死線量照射を受けたマウスのほとんどがGI症候群によって死亡するので、NF−κBの誘導因子および1つまたは複数のGI症候群のインヒビターを含む組成物はより有効であり得る。本発明の実施で使用することができるGI症候群のインヒビターには、SCFおよびKGFなどのサイトカインが含まれるが、これらに限定されない。
【0079】
NF−κBの誘導因子を含む組成物を、被爆前の任意の時点(被爆の約48時間前、46時間前、44時間前、42時間前、40時間前、38時間前、36時間前、34時間前、32時間前、30時間前、28時間前、26時間前、24時間前、22時間前、20時間前、18時間前、16時間前、14時間前、12時間前、10時間前、8時間前、6時間前、4時間前、3時間前、2時間前、または1時間前が含まれるが、これらに限定されない)で投与することができる。NF−κBの誘導因子を含む組成物を、被爆後の任意の時点(被爆から約1時間後、2時間後、3時間後、4時間後、6時間後、8時間後、10時間後、12時間後、14時間後、16時間後、18時間後、20時間後、22時間後、24時間後、26時間後、28時間後、30時間後、32時間後、34時間後、36時間後、38時間後、40時間後、42時間後、44時間後、46時間後、または48時間後が含まれるが、これらに限定されない)で投与することができる。
【0080】
f.敗血症
本発明はまた、治療有効量のNF−κB活性を誘導する薬剤を含む組成物を哺乳動物に投与する工程を含む、哺乳動物の敗血症の予防方法に関する。NF−κB活性を誘導する薬剤を、他の治療と組み合わせて投与することができる。
【0081】
ウイルス感染または細菌感染は、Toll様受容体(TLR)リガンドを介した自然免疫系を刺激し得る。マクロファージを、その表面上のTLR5の存在によるフラゲリンおよびフラゲリン関連ポリペプチドによって防護および/または刺激することができる。例えば、炭疽菌感染症の発症における重要段階は、炭疽菌内でのマクロファージの死滅である。フラゲリンおよびフラゲリン関連ポリペプチドを使用した種々のストレスからの腸内皮の防護により、GI細胞死を予防し、病原菌のGI壁の透過を予防することもでき、それにより、エボラなどの感染によって生じるGI出血を予防することができる。他の出血性ウイルス感染症を、内皮および胃腸管上皮の救出によって予防することもできる。
【0082】
3.薬剤
本発明はまた、NF−κB活性を誘導する薬剤に関する。薬剤は、人工的に合成された化合物または天然に存在する化合物であり得る。薬剤は、低分子量の化合物、ポリペプチド、ペプチド、そのフラグメント、アナログ、ホモログ、改変体、または誘導体であり得る。
【0083】
薬剤はまた、NF−κB誘導サイトカイン(IL12、IL6、TNF、およびTGFβが含まれるが、これらに限定されない)であり得る。薬剤はまた、プロスタグランジンであり得る。薬剤はまた、成長因子(KGFおよびPDGFが含まれるが、これらに限定されない)であり得る。薬剤はまた、NF−κB活性を誘導する抗体であり得る。
【0084】
a.フラゲリン
1つの実施形態では、NF−κB活性を誘導する薬剤はフラゲリンである。以下の実施例に示すように、フラゲリンおよびフラゲリン関連ポリペプチドは、細胞レベルおよび生物全体として強い生存促進活性を有する。興味深いことに、フラゲリンはまた、抗腫瘍免疫の主成分であるナチュラルキラー(NK)細胞およびTリンパ球を刺激する(Tsujimoto H,et.al.,J Leukoc Biol.2005 Oct;78(4):888−97;Caron G.,et.al.,J Immunol.2005 Aug l;175(3):1551−7;Honko AN & Mizel SB,Immunol Res.2005;33(l):83−101)。結果として、フラゲリンを、癌治療で放射線防護剤として使用することができる。
【0085】
本発明はまた、フラゲリン関連ポリペプチド(本明細書中に記載のポリペプチドなど)に関する。本明細書中で使用される、用語「フラゲリン」は、任意の供給源(グラム陽性細菌種およびグラム陰性細菌種が含まれる)由来のフラゲリンまたはフラゲリン関連ポリペプチドを意味することを意図する。23種の細菌由来のフラゲリンのアミノ酸配列は、米国特許出願番号2003/0044429号(その内容が本明細書中で参考として援用される)の図7に示されている。米国特許出願番号2003/0044429号の図7に列挙したフラゲリンポリペプチドをコードするヌクレオチド配列は、供給源(NCBI Genbankデータベースが含まれる)から公的に利用可能である。
【0086】
フラゲリンは、細菌鞭毛の主成分である。フラゲリンは、3つのドメインから構成される(図9)。ドメイン1(D1)およびドメイン(D2)は、不連続であり、アミノ末端およびカルボキシ末端中の残基がヘアピン構造の形成によって並列した場合に形成される。D1ドメインおよびD2ドメインを含むアミノ末端およびカルボキシ末端が最も保存されるのに対して、中間の超可変ドメイン(D3)は、可変性が非常に高い。Escherichia coliヒンジによって分離されたアミノD1およびD2ならびにカルボキシD1およびD2を含む組換えタンパク質(ND1−2/ECH/CD2)を使用した研究は、ECHエレメントと結合した場合にD1およびD2が生物活性を示すことを示す。このキメラ(ヒンジのみではない)は、2つの腸上皮細胞株においてIκBαの分解、NF−κB活性化、ならびにNOおよびIL−8の産生を誘導した。非保存D3ドメインは、鞭毛フィラメントの表面上に存在し、主な抗原エピトープを含む。フラゲリンの強力な炎症促進活性は、高度に保存されたNおよびCのD1およびD2領域に存在し得る。
【0087】
フラゲリンは、Toll様受容体5(TLR5)への結合によってNF−κB活性を誘導する。TLRファミリーは、少なくとも10メンバーから構成され、病原体に対する自然免疫防護で不可欠である。自然免疫系は、細菌病原体上で保存された病原体関連分子パターン(PAMP)を認識する。TLRは、細菌フラゲリンに特別な保存構造を認識し得る。保存構造は、アミノ酸含有量の変動がいくらか許容される巨大な残基群から構成され得る。Smith et al.,Nat Immunol.4:1247−53(2003)は、TLR5によって認識される保存構造の一部であるフラゲリン中の13個の保存アミノ酸を同定した。TLR5活性に重要なフラゲリンの13個の保存アミノ酸を、図24に示す。
【0088】
好ましい実施形態では、フラゲリンは、Salmonella属に由来し、その代表例は、S.dublin(GenBankアクセッション番号M84972によってコードされる)(配列番号1)である。別の好ましい実施形態では、フラゲリン関連ポリペプチドは、TLR5に結合してTLR5媒介活性(NF−κB活性の活性化など)を誘導する配列番号1のフラグメント、改変体、アナログ、ホモログ、誘導体、またはその組み合わせである。フラゲリンのフラグメント、改変体、アナログ、ホモログ、または誘導体を、フラゲリンのドメイン構造およびTLR5によって認識される保存構造に基づいた理論ベースのデザインによって得ることができる。
【0089】
より好ましい実施形態では、配列番号1のフラグメント、改変体、アナログ、ホモログ、誘導体、またはその組み合わせは、図24に示す少なくとも10、11、12、または13個の保存アミノ酸(89位、90位、91位、95位、98位、101位、115位、422位、423位、426位、431位、436位、および452位)を含む。別のより好ましい実施形態では、配列番号1のフラグメント、改変体、アナログ、ホモログ、誘導体、またはその組み合わせのアミノ末端およびカルボキシ末端は、配列番号1のアミノ酸1〜174および418〜505と少なくとも30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%、98%、または99%同一である。図26は、配列番号1と比較した既知のTLR−5刺激活性を有するフラゲリンのアミノ末端およびカルボキシ末端の同一率を列挙する。
【0090】
フラゲリンホモログは、任意のグラム陽性細菌種およびグラム陰性細菌種由来のフラゲリンポリペプチド(米国特許出願番号2003/000044429号(その内容が本明細書中で参考として援用される)に開示のフラゲリンポリペプチドおよび図25に示すBLASTの結果に列挙したアクセッション番号に対応するフラゲリンペプチドが含まれるが、これらに限定されない)であり得る。フラゲリンホモログのフラグメント、改変体、アナログ、ホモログ、および誘導体も意図される。
【0091】
フラゲリンフラグメントは、TLR5活性を刺激するフラゲリンポリペプチドの一部であり得る。少なくともいくらかのTLR5刺激活性を保持する多数のフラゲリンの欠失変異体が作製されている。本明細書中の実施例に開示の欠失変異体に加えて、代表的な欠失変異体には、アミノ酸185〜306または444〜492を欠くGenBankアクセッション番号D13689の翻訳物およびアミノ酸179〜415を欠くGenBankアクセッション番号M84973の翻訳物が含まれる。フラゲリンフラグメントのホモログ、改変体、アナログ、および誘導体も意図される。
【0092】
フラゲリン改変体には、トランスポゾンが挿入され、可変D3ドメインに変化したフラゲリンポリペプチドが含まれる。改変体がTLR5活性を刺激するようにD3ドメインの一部または全部をD1およびD2ドメインを適切に折り畳むことが可能なヒンジまたはリンカーポリペプチドに置換することができる。変異ヒンジエレメントの代表例は、Escherichia coliMukBタンパク質ならびに配列番号3および4に見出すことができる。フラゲリン改変体のフラグメント、ホモログ、アナログ、および誘導体も意図される。
【0093】
4.組成物
本発明はまた、治療有効量のNF−κBの誘導因子を含む組成物に関する。組成物は、当該分野で周知の方法を使用して生成することができる薬学的組成物であり得る。上記のように、NF−κBの誘導因子を含む組成物を、アポトーシスに関連する状態(被爆、癌治療の副作用、ストレス、および細胞老化が含まれるが、これらに限定されない)の治療のために哺乳動物に投与することができる。組成物はまた、さらなる薬剤(放射線防護剤または化学療法薬が含まれるが、これらに限定されない)を含み得る。
【0094】
a.投与
本発明の組成物を、任意の様式で(経口、非経口、舌下、経皮、直腸、経粘膜、局所、吸入、口腔投与、胸腔内、またはその組み合わせが含まれるが、これらに限定されない)投与することができる。非経口投与には、静脈内、動脈内、腹腔内、皮下、筋肉内、鞘内、および関節内が含まれるが、これらに限定されない。経粘膜投与には、鼻腔内投与が含まれるが、これらに限定されない。動物のために、組成物を、通常の獣医学診療に関する適切に許容可能な処方物として投与することができる。獣医は、特定の動物に最も適切な投与計画および投与経路を容易に決定することができる。
【0095】
組成物を、アポトーシスを誘発するストレスまたはその組み合わせの前、後、または同時に投与することができる。組成物を、アポトーシスを誘発するストレスへの曝露の約1
〜約48時間前または後に投与することができる。
【0096】
b.処方物
本発明の組成物は、従来の様式で処方された錠剤またはロゼンジの形態であり得る。例えば、経口投与のための錠剤およびカプセルは、従来の賦形剤(結合剤、充填剤、潤滑剤、崩壊剤、および湿潤剤が含まれるが、これらに限定されない)を含み得る。結合剤には、シロップ、アカシア、ゼラチン、ソルビトール、トラガカント、デンプンの粘液、およびポリビニルピロリドンが含まれるが、これらに限定されない。充填剤には、ラクトース、糖、微結晶性セルロース、トウモロコシデンプン、リン酸カルシウム、およびソルビトールが含まれるが、これらに限定されない。潤滑剤には、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、タルク、ポリエチレングリコール、およびシリカが含まれるが、これらに限定されない。崩壊剤には、ジャガイモデンプンおよびデンプングリコール酸ナトリウムが含まれるが、これらに限定されない。湿潤剤には、ラウリル硫酸ナトリウムが含まれるが、これらに限定されない。錠剤を、当該分野で周知の方法によってコーティングすることができる。
【0097】
本発明の組成物はまた、液体処方物(水性または油性懸濁液、溶液、乳濁液、シロップ、およびエリキシルが含まれるが、これらに限定されない)であり得る。組成物を、使用前に水または他の適切な賦形剤を使用して構成するための乾燥生成物として処方することもできる。このような液体調製物は、添加剤(懸濁剤、乳化剤、非水性賦形剤、および防腐剤が含まれるが、これらに限定されない)を含み得る。懸濁剤には、ソルビトールシロップ、メチルセルロース、グルコース/糖シロップ、ゼラチン、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ステアリン酸アルミニウムゲル、および食用硬化脂肪が含まれるが、これらに限定されない。乳化剤には、レシチン、モノオレイン酸ソルビタン、およびアカシアが含まれるが、これらに限定されない。非水性賦形剤には、食用油、アーモンド油、分留ヤシ油、油性エステル、プロピレングリコール、およびエチルアルコールが含まれるが、これらに限定されない。防腐剤には、p−ヒドロキシ安息香酸メチルまたはプロピル、およびソルビン酸が含まれるが、これらに限定されない。
【0098】
本発明の組成物を座剤として処方することもでき、この組成物は、座剤基剤(カカオバターまたはグリセリドが含まれるが、これらに限定されない)を含み得る。本発明の組成物を吸入のために処方することもでき、この組成物は、乾燥粉末として投与することができるか、ジクロロジフルオロメタンまたはトリクロロフルオロメタンなどの噴射剤を使用したエアゾールの形態であり得る溶液、懸濁液、または乳濁液の形態(これらに限定されない)であり得る。本発明の組成物を、水性または非水性賦形剤(クリーム、軟膏、ローション、ペースト、薬用プラスター、パッチ、または膜が含まれるが、これらに限定されない)を含む経皮処方物として処方することができる。
【0099】
本発明の組成物を、非経口投与(注射または持続注入が含まれるが、これらに限定されない)のために処方することもできる。注射用処方物は、懸濁液、溶液、または油性もしくは水性賦形剤の乳濁液の形態であってよく、処方剤(formulation agent)(懸濁剤、安定剤、および分散剤が含まれるが、これらに限定されない)を含み得る。組成物を、適切な賦形剤(滅菌無発熱物質水が含まれるが、これらに限定されない)で再構成するための粉末形態で提供することもできる。
【0100】
本発明の組成物を、移植または筋肉内注射によって投与することができるデポー調製物として処方することもできる。組成物を、適切な高分子または疎水性材料(例えば、許容可能なオイルの乳濁液として)、イオン交換樹脂、またはやや溶けにくい誘導体(例えば、やや溶けにくい塩として)を使用して処方することができる。
【0101】
c.投薬量
治療に必要な薬剤の治療有効量は、治療条件、NF−κB活性の誘導に望ましい期間、ならびに患者の年齢および状態によって変化し、最終的に、担当医によって決定される。しかし、一般に、成人のヒトに使用される用量は、典型的には、0.001mg/kg/日〜約200mg/kg/日の範囲である。用量は、約1μg/kg/日〜約100μg/kg/日であり得る。望ましい用量を、単回用量で都合よく投与するか、適切な間隔で(例えば、1日に2回、3回、4回、またはそれ以上の分割用量)複数回用量として投与することができる。一旦薬剤を投与しなくなると正常細胞におけるNF−κB活性が減少し得るので、しばしば、複数の用量が望ましいか必要である。
【0102】
NF−κBの誘導因子の投薬量は、任意の投薬量(1μg/kg、25μg/kg、50μg/kg、75μg/kg、100μg/kg、125μg/kg、150μg/kg、175μg/kg、200μg/kg、225μg/kg、250μg/kg、275μg/kg、300μg/kg、325μg/kg、350μg/kg、375μg/kg、400μg/kg、425μg/kg、450μg/kg、475μg/kg、500μg/kg、525μg/kg、550μg/kg、575μg/kg、600μg/kg、625μg/kg、650μg/kg、675μg/kg、700μg/kg、725μg/kg、750μg/kg、775μg/kg、800μg/kg、825μg/kg、850μg/kg、875μg/kg、900μg/kg、925μg/kg、950μg/kg、975μg/kg、または1mg/kgが含まれるが、これらに限定されない)であり得る。
【0103】
本発明は、以下の非限定的な実施例によって示される複数の態様を有する。
【実施例】
【0104】
(実施例1 マウスにおけるGI症候群のp53欠損促進性の発症)
哺乳動物の電離放射線(IR)に起因する主な死亡原因は、放射線量に依存する。9〜10Gyまでの線量で、マウスは、主に致死性骨髄減少造血器(HP)症候群(lethal bone marrow depletion−hematopoietic(HP) syndrome)のために12〜20日後に死亡する。この線量では、照射マウスを、骨髄移植によって死亡から救出することができる。15Gy超を被爆した動物は、処置から7〜12日後に(造血器症候群によって死亡し得る前に)、小腸−胃腸(GI)症候群に対する損傷による合併症によって死亡する。HPおよびGI症候群の両方では、組織の致死的損傷は、大規模なp53依存性アポトーシスから開始される。この所見により、p53が照射誘導死の決定要因であり得るとより早く示唆することが可能である。常に、p53欠損マウスは、HP症候群によって死亡する放射線量に耐性を示し、6〜11Gyのγ線照射を受けた野生型動物の死亡を、小分子p53インヒビターであるピフィスリン(pifithrin)−α(PFT)によるp53の一過性の薬理学的阻害によって減少させることができる(Komarov et al 1999)。遺伝毒性ストレスに対して組織を感作する因子としてのp53の同定を、実験的化学療法または照射の結果として生じる抜け毛(脱毛症)のp53依存性の証明によってさらに強化した。したがって、前の所見に基づいて、p53がより高い線量のIR後の致死的GI症候群の発症に重要な役割を果たし続けると予想されるであろう。驚いたことに、p53欠損は、より高い線量のIRに対してマウスを感作し、致死的胃腸症候群を発症する(図1)。IR後のp53欠損上皮の陰窩における連続的細胞増殖は、損傷陰窩細胞死の加速および絨毛の急速な破壊と相関する。p53は、小腸陰窩における成長停止を誘導し、それによって腸の完全性を保存することによって延命する(図2)。したがって、p53のアポトーシス促進機能が造血器症候群を促進する一方で、その成長停止機能が胃腸症候群の発症を遅延させる。
【0105】
小腸における細胞集団の動力学を、非常に詳細に分析した。腸上皮中の細胞増殖は、幹細胞および初期増殖前駆細胞が存在する陰窩に限定される。2回の細胞分裂後、既に分化した陰窩幹細胞の子孫は、絨毛に移動し、絨毛先端から吹き出す。マウスの小腸では、細胞の全「航海(trip)」(増殖性区画から絨毛先端への)は、通常、3〜5日を要する。γ線照射に対する小腸の反応が病理形態学的レベルで十分に試験されているにもかかわらず、GI死亡の正確な原因(一次事象が含まれる)が何であるかは不明確なままである。上皮陰窩細胞損傷およびその後の絨毛の露出を直接的結果とし、流動物と電解質との不均衡、菌血症、および内毒素血症を発症して死亡し得る。炎症および間質応答に加えて、内皮機能不全は死亡に寄与する重要な要因のようである。まとめると、IR誘導性HP症候群からの防護方法として非常に有効であることが示されたp53の薬理学的抑制は、GI症候群に(有害ではないが)役立たない。したがって、別の機構(例えば、NF−κBの活性化およびその後の細胞死の阻害など)に依存する小腸上皮の放射線防護に対する別のアプローチを開発する必要がある。
【0106】
(実施例2 フラゲリンはIR誘導性GI症候群に起因するマウスの死亡を遅延する)
GI管損傷を誘導した従来の照射モデルの場合、15Gyのγ線照射を使用したマウスの全身照射により、GI症候群のために8日以内に死亡した。フラゲリンがIRからGI上皮を防護することができるかどうかを試験するために、本発明者らは、15Gyの照射後のマウスの致死性の動力学に対するi.v.注射したフラゲリンの効果を試験した。本発明者らは、一定範囲のフラゲリン用量を使用し、その全ては文献から公知の最も高い許容用量(300μg/マウス)よりも有意に低かった。処置から4時間後に照射した。代表例の結果を、図4に示す。予想通り、コントロール照射マウス(PBSをi.v.投与した)は、処置から5日後と8日後との間に死亡した。フラゲリンを投与した動物は、有意により長く生存し、動物生存の延長はフラゲリンの用量と相関した。照射7日後の小腸の病理形態学的分析により、フラゲリン処置群とコントロール群との間の劇的な相違が明らかとなった(図5)。0.2mg/kgのフラゲリンの静脈内、腹腔内、および皮下送達ならびにその後の13Gyの照射によって同程度に防護され、85〜90%のマウスが30日間生存した(データ示さず)。理論に拘束されないが、フラゲリンは、NF−κBの活性化による放射線防護剤であり得、恐らくアポトーシス死のインヒビターとして作用する。
【0107】
(実施例3 致死性IR誘導性造血器症候群からのマウスのフラゲリン救出)
本発明者らは、次に、フラゲリンが、致死性GI毒性を生じることができないより低い放射線量(通常、11Gyまで)によって実験的に誘導されたHP症候群由来のマウスのIR誘導死に効果があるかどうかを試験した。上記実験と同様に実験を行ったが(図14および15)、15Gyの代わりに、マウスに10Gy(13日目までにコントロール群が100%死亡する線量)を照射した(図6)。フラゲリン処置群(5μg/マウス)は、この線量のIRから完全に防護され、驚いたことに、フラゲリン媒介性放射線防護はGIだけでなくHP IR誘導性症候群に対しても作用することを示す。
【0108】
( 実施例4 フラゲリンの防護効果への時間の依存)
マウスに、次に、13Gyのγ線照射前の異なる時間にフラゲリンを投与した。このような実験の1つの結果を、図7に示す。得られた結果は、処置の1〜4時間前に注射した場合、フラゲリンが13Gyからの放射線防護剤として有効であることを示す。
【0109】
処置時間に対するフラゲリンの放射線防護活性の依存をさらに評価するために、γ線照射時に対していくつかの時点でマウスに注射した。5μg/マウス(0.2mg/kg)の全長フラゲリン、またはコントロールマウスには5μg/マウス(0.2mg/kg)の細菌RNAポリメラーゼの腹腔内注射を使用して、本質的に上記説明のように実験を行った。NIH−Swissマウス系統を使用して実験を行った。結果は、処置の1〜2時間前にフラゲリンを注射した場合、13Gyの照射後にフラゲリンによって約90%が生存することを示す(図7)。明確にするために−1時間のグラフのみを示すが、両時点(−1時間および−2時間)は、類似の程度および動力学の生存を示す。4時間で、いくらかより低い防護を示す。照射の24時間前に注射したフラゲリンは、13Gyで誘導される死に防護効果を示さなかった。
【0110】
興味深いことに、10Gyのγ線照射の24時間前のフラゲリンの投与は100%の防護を示した。マウスへの13Gyの照射によって主にGI症候群に起因する死亡を誘導する一方で、10Gyで誘導される死は、ほとんど造血器症候群によって媒介される。したがって、このような10Gy照射からの長期防護を、フラゲリンおよび/または長寿命二次サイトカインによって誘導される造血幹細胞の増殖または生存の増強によって媒介し得る。
【0111】
(実施例5 フラゲリンのLD50/30、LD50/7、およびDMFの決定)
本発明者らは、次に、フラゲリンの放射線量依存性防護を評価した。上に示すように(図7)、フラゲリンでの処置は、10Gyのγ線照射に対する100%防護に十分であり(この線量によって造血器症候群で死亡する)、13Gyで90%が30日間生存した(造血器症候群およびGI症候群の両方)。照射の1時間前に腹腔内注射したフラゲリン5μg/マウス(0.2mg/kg)を使用して、上記のように実験を行った。
【0112】
しかし、15Gyでは、100%が7日間生存し、13日後に死亡が遅延する一方で(30日生存は0%)、コントロール群は7日目までにGI症候群によって完全に死亡した(図8)。15Gy照射後のフラゲリン処置群死亡率の動態は、10Gyのコントロール群に類似しており、造血器症候群に起因する死亡が示唆される。この結果により、フラゲリンのLD50/30が13.5〜14Gyであり、DMF30が約1.75〜1.8であると評価される。この程度の放射線防護は、天然化合物についての任意の報告よりも有意に高かった。
【0113】
(実施例6 フラゲリンフラグメントの合理的デザインおよびクローニング)
FliC遺伝子によってコードされるSalmonellaフラゲリン(配列番号2)は、生存促進NF−κB経路の強いアクチベーターである。これは、その放射線防護作用の最も可能性が高い機構である。以前の研究では、細胞表面上のToll様受容体5(TLR5)へのフラゲリンの結合がNF−κBの活性化に必要な工程であることが示されている。Salmonellaフラゲリンのドメイン構造は、文献に十分に詳細に記載されている(図9)。さらに、フラゲリン−TLR5複合体の以前の構造研究(図10)により、結合(すなわち、NF−κB活性化)に不可欠であるか重要でないドメインを区別することができる。タンパク質最小化により、フラゲリン関連ポリペプチドの反復投与後の免疫応答を減少させることができる。低分子量のタンパク質および少数の利用可能な免疫原性エピトープによる免疫原性の低下に一部起因して、これを達成することができる。
【0114】
TLR5結合に必要なドメインを、進化的に保存された細菌フラゲリンのN末端ドメインおよびC末端ドメイン中に排他的に配置することができる。超可変ドメイン(アミノ酸178〜402)は、TLR5と密接に接触しなくなる。前に証明したように、このドメインの可動性リンカーペプチドへの置換は、TLR5への結合を破壊しなかった。さらに、N末端およびC末端のコイルドコイル重合ドメイン(アミノ酸1〜55、456〜505)は、TLR5に結合せず、重要でない可能性が高い(それぞれ本明細書中に示す、修飾N末端およびC末端BおよびB’参照)。また、実質的にTLR5に結合する主なN末端のαヘリックス以外の全ドメインを欠く別のフラグメント末端(アミノ酸56〜100)は、結合に十分であり得る。
【0115】
したがって、pGEX−KGクローニングベクター(配列番号5および6)から採取した可動性リンカー(配列番号3および4)と連結した3つのN末端型(A、B、C)および2つのC末端型(A’、B’)を発現構築物に組み合わせて、いくつかの可能なフラゲリンフラグメントを産生した(表1)。さらに、個別のN末端(A、B、C)およびC末端のグルタチオン−S−トランスフェラーゼ(GST)融合物(GST−A’、GST−B’)を示す構築物を調製した。全構築物を、pRSETb細菌発現ベクター中にクローン化し、6xHisタグ化タンパク質を産生し、さらなる実験のために精製した(図11)。
【0116】
表1
【0117】
【表1】
(実施例7 生物活性フラゲリンフラグメントの選択)
フラゲリンの放射線防護活性がNF−κB依存性であるようであるので、本発明者らは、フラゲリンフラグメントが核にNF−κBを転位置し、DNA中のその標的部位への結合を誘導する能力を試験した。フラゲリンおよびフラグメント処置A549肺癌細胞由来の核抽出物および標識した合成NF−κB結合kBオリゴヌクレオチドを使用した電気泳動移動度シフトアッセイ(EMSA)によってこれを試験した。
【0118】
フラゲリン自体ならびにフラグメントAA’、AB’、およびBA’のみでNF−κB転位置を誘導することができた(図12)。転位置レベルは、フラゲリンならびにフラグメントAA’、AB’、およびBA’で類似している。超可変ドメインは、NF−κB転位置に必要でないようである一方で、少なくとも1つの重合ドメイン、N末端、またはC末端が存在する必要がある。N末端およびC末端フラグメントの混合物(A+A’、A+B’)は不活性であった。
【0119】
NF−κBの核への転位置がアポトーシスのNF−κB調節インヒビターの誘導における重要な工程である一方で、それ自体では十分でない。選択されたフラグメントがNF−κB調節遺伝子の発現を誘導する能力を直接試験するために、本発明者らは、レポーターアッセイ実験を行った。フラゲリンならびにAA’、BB’、A’、およびB’フラグメントを、NF−κB応答性プロモーター下でのルシフェラーゼ遺伝子を保有するH116ヒト結腸癌細胞の処置のために使用した。レポーター構築物は、細胞のNF−κB状態の検出のために日常的に使用されているHsp70最小プロモーターを組み合わせたE選択プロモーター由来の3つのNF−κB結合部位を含んでいた。フラゲリンまたはその短縮フラグメントの培地への添加から6時間後の細胞溶解物中のルシフェラーゼ活性を測定した。正のコントロールとしてTNFを使用した。各実験結果を図13に示し、フラゲリンおよびフラグメントAA’がNF−κBを活性化することができるのに対して、フラグメントBB’、GST−A’、およびGST−B’はできないことを示す。
【0120】
(実施例8 フラゲリンフラグメントのさらなる最適化)
本発明者らは、そのN末端の半分からペプチドフラグメントを段階的に除去することによるさらなるフラグメントの産生によってAA’フラゲリンフラグメントをさらに最小化した(表2)。フラゲリンおよびフラグメント処置HT29ヒト結腸癌細胞由来の核抽出物および標識した合成NF−κB結合κBオリゴヌクレオチドを使用して、上記のように電気泳動移動度シフトアッセイを行った。HT29細胞中のNF−κB結合活性を、TNFa(10ng/ml)またはフラゲリンフラグメント(1mg/ml)で15分間刺激した。図14に示すように、フラグメントAA’nl−170、AA’n54−170、AA’nl−163、およびAA’n54−163はそれぞれNF−κB転位置を誘導し、そのレベルは、AA’nl−170、AA’n54−170、およびAA’nl−163のフラゲリンに匹敵する。
【0121】
表2
【0122】
【表2】
AA’フラグメントをNF−κB調節転写を直接活性化する能力を研究するために、本発明者らは、広範な濃度のフラゲリン、元のAA’、およびAA’誘導フラグメントについて上記のようにレポーターアッセイ実験を行った。上記のように、AA’およびAA’n1−170は、研究した濃度範囲にわたり、フラゲリンに匹敵するレベルでNF−κB調節転写を誘導する(図15の左)。AA’およびAA’n1−170は、非常に低濃度の範囲でフラゲリンよりも高い活性を示し(図15の右)、このことは、おそらくその分子量の減少に起因する。フラグメントAA’n1−170を使用した結果は、有意に活性を喪失することなく除去されたN末端ドメインの一部を使用してAA’誘導性フラゲリンフラグメントを作製することができ、これを有効な放射線防護剤として使用することができることを示す。
【0123】
上記実験(EMSAおよびレポーター活性化アッセイ)を、30分間のボイルおよび細胞への適用前の再生に供したフラゲリンおよびAA’フラグメントを使用して繰り返した。結果は、ボイルしないで得た結果に匹敵した(データ示さず)。これは、認められたフラゲリンフラグメント活性の相違がタンパク質安定性の変化によって生じ得ないことを示す。
【0124】
(実施例9 フラゲリンおよびフラゲリンフラグメントの放射線防護性のin vivoでの比較)
上記のように、全長フラゲリンは造血器症候群および胃腸症候群の両方を防護する。11Gy(マウスの造血器症候群関連死亡を誘導する線量)または14Gy(GI症候群由来の死亡を生じる線量)でのγ線照射後に、フラゲリンフラグメントの放射線防護性を同様に試験した。マウス(10匹/群)に、5.0μg/マウス(0.2mg/kg)のフラゲリンおよびそのフラグメント(AA’またはBB’)を皮下注射し、1時間後にγ線を照射した。
【0125】
AA’フラグメントによって示された放射線防護度は、少なくとも全長フラゲリンに匹敵する(図16)。AA’フラグメントおよび全長フラゲリンの両方は、11Gyおよび14Gyで照射したマウスについて100%の30日生存を示した。一方で、BB’フラグメントを注射したマウスの30日生存は0%であった。BB’フラグメントがin vitroでNF−κBを誘導することができないので、このことは予想される。これらの結果は、放射線防護度を減少させることなくフラゲリンのサイズを有意に減少させることができる(約40%の除去)ことを示す。さらに、in vitroでのNF−κB活性化の結果から放射線防護の可能性を予想することができることが確認される。
【0126】
(実施例10 フラゲリン媒介性放射線防護の細胞標的の同定)
14Gyでの照射から5日後に、フラゲリンで前処置したマウスおよびコントロールマウスから腸粘膜の組織サンプルを採取した。コントロール動物を、5.0μg/マウス(0.2mg/kg)の細菌RNA−ポリメラーゼで処置した。小腸の病理形態学的分析により、コントロールマウスの陰窩および絨毛のサイズの減少ならびに多数の凝縮アポトーシス核を有する細胞ならびに処置マウスにおけるほぼ正常な形態が明らかとなった(データ示さず)。AA’フラグメントで処置したマウスからも組織サンプル(小腸および背中由来の皮膚)を得た。図17に示す結果は、少なくとも3匹のマウス組で認められた典型的な形態の領域である。フラゲリンおよびAA’フラグメントでの処置後、マウスは、絨毛/陰窩構造を保持したほぼ正常な腸形態を示した(図17A)。
【0127】
細胞の死および生存における純粋に組織学的な観察に加えて、本発明者らは、アポトーシス関連DNA断片化を検出するTUNELアッセイを使用した腸組織におけるアポトーシス細胞死のより特殊化した試験を行った。これらの実験により、より高い確率で照射によって枯渇し、フラゲリンフラグメント処置によって救出された細胞集団を定義することができた。IR処置後の小腸で検出可能な最も迅速な照射誘導性変化は、絨毛の血管内皮細胞で生じるアポトーシスであり、これは、処置から5時間の速さで認められる(図17B)。小腸の放射線感受性に重要であると考えられるこのアポトーシスは、AA’フラグメントで前処置したマウスではほとんど完全に遮断された(図17Bの下のパネル)。処置から数日以内に生じ、フラグメントAA’処置動物で非常に抑制される絨毛および陰窩の変性は、血管損傷の結果として起こる。フラゲリンフラグメントによる小腸内皮細胞の有効な防護は、これらの細胞中でのTLR5の発現に起因し得る。
【0128】
著しく、AA’フラグメントおよびフラゲリンも、体毛の毛包の基底に存在する脂腺の照射誘導性消失を予防した(図27C)。これらの結果により、照射誘導性脱毛の放射線防護および予防に対するAA’フラグメントの適切性がさらに確認される。
【0129】
(実施例11 超致死照射からの防護)
AA’フラグメントによって得られた放射線防護限度を調査するために、本発明者らは、マウスに、17Gyおよび20Gyの単回線量の全身γ線照射を行った。負のコントロールとして不活性フラゲリンフラグメント(CB)を使用して、上記のように実験を行った。
【0130】
予想通り、本発明者らは、17Gyおよび20Gyの両群で100%の死亡を認めた(図18)。しかし、AA’フラグメントの投与によってその両方で死亡が有意に遅延された。最も顕著には、コントロールマウスにおける17Gyでの死亡の動態はGI症候群と一致する一方で(6〜7日での死亡)、AA’フラグメントで処置したマウスの死亡は造血器症候群に媒介されるようである(10〜15日で死亡)。これは、フラゲリンおよびフラゲリンフラグメントが17Gyもの線量でのGI症候群から防護することができることを示す。さらに、これは、造血器放射線防護剤と組み合わせたフラゲリンおよびフラゲリンフラグメントによってなおさらなる放射線防護を得ることができることを示す。
【0131】
(実施例12 免疫原性および反復投与の研究)
タンパク質の全免疫原性は、反復使用に対するその適切性によって決定することができる。免疫系によって生成された抗体はタンパク質の治療活性を減少させることができ、タンパク質に対してIgE抗体が産生された場合には第2の曝露時にアナフィラキシー反応も誘導し得る。したがって、全長フラゲリンと比較した抗体の量および多様性の任意の減少によって改善する。したがって、フラゲリンおよびそのフラグメントの反復導入後、本発明者らは、a)第2の暴露後に得られる放射線防護の有効性、b)局所および全身アレルギー反応、およびc)抗体力価をモニタリングした。
【0132】
本発明者らは、AA’がAA’に曝露されたマウスを防護する能力を試験した。20匹のNIH−Swissマウス群に、5μg/マウス(0.2mg/kg)のAA’を皮下注射した。等用量のAA’の第2の注射を、21日後(10匹)および28日後(別の10匹)に行い、抗体形成に十分な時間を置いた。第2のAA’注射後に、13Gyの全身γ照射を行った(注射から1時間後)。以前にAA’に曝露していなかったマウスで認められたように、両群で100%の30日生存が認められた(データ示さず)。これらの結果は、長期にわたる反復投与でもAA’の活性が減少せず、多目的適用の可能性が再確認されることを示す。また、フラゲリンまたはAA’のいずれにおいても局所アレルギー反応またはアナフィラキシーは認められなかった。
【0133】
本発明者らは、AA’が生物の免疫状態に与える影響を定量するための抗体力価のELISAによる決定も行った。96ウェルプレートを、20mg/mlのフラゲリンまたはAA’(50ml/ウェル)でコーティングし、+4℃で一晩インキュベートした。マウスから回収した血清サンプルを、数倍に希釈してウェルに添加し、一晩インキュベートし、その後、二次ヤギ抗マウスIgG HPO−抱合体抗体と6時間反応させた。414nmのフィルターを使用した分光光度計を使用して測定を行った。各マウスについて決定した抗体力価および平均力価を、図19および図20に示す。
【0134】
AA’は、マウスで非常に低いレベルの抗体を誘導し(図19)、21日目に約0.8mg/ml血清および28日目に約10%超である。他方では(図20)、フラゲリンは高力価の抗体を誘導し、21日目および28日目の両方で約20mg/mlである。概して、これは、超可変ドメインの除去が元のタンパク質と比較してAA’の免疫原性を激しく減少させる(約25倍)ことを示す。図19は、大部分のAA’特異的抗体がフラゲリンを認識することができることも示す。これにより、AA’の合理的デザインによって新規の免疫原性エピトープはあまり産生されない一方で、元のタンパク質の95%を超える免疫原性が除去されることが確認される。
【0135】
(実施例13 フラゲリンおよびAA’の急性毒性研究)
Salmonellaフラゲリンの致死用量は、1mg/kg(全身性炎症)と10mg/kg(100%死亡)との間である。本発明者らは、0.5、1、2、4、および8mg/kgの漸増用量のAA’をマウス(4匹/用量群)に皮下投与した。より低い(約60%)分子量により、8mg/kgのAA’は、モル換算で13.3mg/kgのフラゲリンの用量に相当する。全用量の投与から数日後に、目に見える有害な影響(死亡率、罹患率、または活性の減少および熱などの全身性炎症の兆候など)は認められなかった。これは、全長フラゲリンと比較してAA’の炎症促進効果を無視することができることを示し、特に、AA’が0.2mg/kgで有効な放射線防護を示すと見なされる。毒性の減少は、AA’フラグメント中の主要な炎症促進ドメインの不在に起因し得る。
【0136】
(実施例14 AA’による分割照射からの防護)
短期間内の反復照射は、例えば、宇宙照射事象および臨床的放射治療レジメン(regimen)と共通し得る。本発明者らは、AA’フラゲリンフラグメントがマウスを分割γ線照射の亜致死レジメン(3Gyで4回の処置)および100%致死レジメン(4Gyで4回の処置)から防護する能力を試験した。フラグメントAA’または生理食塩水を、各照射前に(1日1回を4日間)NIH−Swiss雌マウスに投与した。単回線量照射について上記のように、AA’を投与した(5μg/マウス、照射1時間前に皮下投与)。
【0137】
図21の結果は、AA’が短い時間枠内の反復被爆量を有意に防護することを示す。AA’処置後の100%30日生存に依然として適合する分割照射の累積線量は、単回線量照射シナリオで得られた累積線量に匹敵する。
【0138】
(実施例15 AA’は、照射の抗腫瘍治療効果を損なうことなく正常組織を防護する)
癌治療における潜在的な放射線防護剤の最終試験は、腫瘍選択性(腫瘍を全くまたはほとんど防護することなく正常組織を防護する能力)である。本発明者らは、10匹のNIH−Swissマウスの両側腹(全部で20腫瘍)に、2×106細胞の同系肉腫細胞株モデル(NIH3T3に由来し、ドミナントネガティブインヒビターGSE56によって不活化されたp53で自発的に形質転換した肉腫)を皮下注射した。腫瘍の直径が5〜7mmのサイズに到達した場合(5日目)、マウスに、0.2mg/kgのAA’または生理食塩水の賦形剤を皮下注射し、1時間後に4Gyの全身γ線照射(3×4.3Gy=12.9Gyの総線量)を行った。5、6、および7日目に注射および照射を行った。
【0139】
結果を図11に示すように、AA’によって腫瘍の照射誘導性収縮が増強された。18日目までに、全ての照射された腫瘍保有マウスが急性照射毒性によって死亡したのに対して、放射線療法およびAA’の両方を受けたマウスの100%が治癒し、治療を生き延びた。別の同系腫瘍モデル(B16黒色腫細胞)を使用しても類似の結果が得られた(図11、右のパネル)。驚いたことに、非照射マウスでさえ、AA’投与によって腫瘍の成長速度が減少した。これは、Toll様受容体の他のリガンドによって生じることが公知のAA’誘導性免疫刺激に起因し得る。これらの結果は、AA’が2つの腫瘍型の放射線感受性に影響を与えずにマウスの照射耐性を増加させ、それにより、放射線療法とAA’との組み合わせが治療結果を改善する可能性を切り開くことを示す。
【0140】
(実施例16 AA’およびLPSの放射線防護機構は異なる)
グラム陰性細菌のリポポリサッカリド(LPS)は、別のToll様受容体(TLR4)のリガンドである。LPSは、NF−κBの強力な誘導因子であり、サイトカインのその後のカスケードである。LPSは、放射線防護化合物として公知であるが、その高い毒性により、その使用が不可能である(放射線防護用量が致死用量と非常に近い)。LPSによる放射線防護の基礎をなす主な機構の1つは、GI防護プロスタグランジンの合成を駆動するシクロオキシゲナーゼ2(COX−2)の活性化である。TLR5による放射線防護もCOX−2活性に依存する可能性を、NIH−Swissマウスの照射の1時間前に、1mg/kgのNS398(合成COX−2インヒビター)または対応する賦形剤のi.p.注射と組み合わせたLPS(2mg/kg)、AA’(0.2mg/kg)、または賦形剤のs.c.投与によって試験した。次いで、マウスを、13Gyの全身γ線照射で処置した。NS398は、LPS媒介性放射線防護を完全に除去したが、AA’の放射線防護は除去しなかった(図12)。この結果は、AA’の活性がCOX−2に有意に依存せず、LPS媒介性防護機構と異なる機構によって放射線防護を誘導することを示す。
【0141】
(実施例17 AA’は複数のマウス系統を防護する)
本発明者らは、AA’がNIH−SwissマウスおよびICRマウスを照射から防護することを確認した。AA’の放射線防護活性が少数のマウス系統に制限されないことを確認するために、異なる起源のいくつかのさらなるマウス系統を、AA’:129/Sv、DBA/2(比較的放射線抵抗性を示す)、Balb/c(比較的放射線感受性を示す)、およびBalb/c×DBA/2 F1ハイブリッドCD2F1によって防護について試験した。実験群に照射の30分前に0.2mg/kgのAA’を注射する一方で、コントロール群に賦形剤(PBS)を注射した。
【0142】
全マウス群(各8〜10匹、8〜12週齢の雌)に、10Gyの単回線量を全身γ線照射した。10日目および30日目のマウスの生存を示す。結果を、円錐グラフとして図27に示す。10日目に、Balb/cマウスのみが死亡し、この死亡はAA’投与によって劇的に減少する(0%生存対100%生存)。30日目に、全試験株は、AA’投与後に生存率が改善された(0〜25%対50〜100%)。
【0143】
(実施例18 AA’の薬物動態)
薬物動態パラメーター(生物中に存在する薬物の有効濃度および持続時間)は、薬物投与の経路、用量、および時間に重要であり得る。したがって、CBLB502(AA’)の薬物動態を、以下の4つの一般的な注射経路について試験した:静脈内(i.v.)、皮下(s.c.)、腹腔内(i.p.)、または筋肉内(i.m.)。CBLB502(AA’)の放射線防護用量(0.2mg/kg)を、12〜15週齢のICRマウスに注射し、注射後の特定の時間に血漿サンプルを回収した(少なくとも3匹/測定点)。血漿中のCBLB502レベルを、較正のためにコントロールICR血漿中で急増させた既知濃度のCBLB502を使用したサンドイッチELISAによって測定した。結果を、図28および図29に示す。
【0144】
結果は、筋肉内または腹腔内注射によって血漿中のCBLB502が最も高いレベルおよび最も長い持続時間で存在することを示す。筋肉内注射後、3時間を超えてマウス血漿中に有意な(5ng/ml超)レベルのCBLB502が認められる。静脈内注射により、血流からCBLB502がより急速に消失する。
【0145】
(実施例19 γ線照射に対するAA’の影響は、A549細胞の細胞死および成長阻害を誘導する)
A549ヒト肺癌細胞株は、NF−κB DNA結合活性の活性化によってフラゲリンに応答すると報告されている(Tallant T.,et.al.,BMC Microbiol.2004 Aug 23;4:33)。本発明者らは、細胞成長阻害アッセイにおいてこの活性化がγ−IRからの細胞の防護に変換されるかどうかをチェックすることを決定した。
【0146】
腫瘍細胞を、3つの異なる密度で(単一の細胞、予備、または半接触層を産生する0.5×104、1×104、および2×104細胞/ウェル)3つの96ウェルプレートのウェルに播種した。細胞をプラスチックに付着させた後、CBLB502(2μg/ml)を非照射細胞または7Gyもしくは10Gyのγ線照射の15分前にウェルに添加した。コントロールウェルに、同体積の賦形剤(PBS)を投与した。全ての時点を四連で行った。照射から72時間後、培地をメチレンブルーを含む50%メタノールに置換し、ウェル中の生細胞の相対数を、分光光度計を使用して650nmで測定した。結果を図30に示す。この実験を、固定用量の1×104A549細胞/ウェルを使用しても繰り返し、5、10、または15Gyのγ線照射の1時間前にCBLB502を添加した(データ示さず)。全ての試験した実験条件で類似のフラゲリン効果が認められた。
【0147】
γ線照射により、3つ全ての密度でプレートしたA549細胞数の線量依存性の減少が誘導された(非照射コントロール群と比較して60%まで)。CBLB502は、γ線照射使用の有無にかかわらず、細胞数に対する効果が無いかわずかであった。これは、腫瘍細胞がCBLB502(AA’)によって照射から有意に防護されないことを示す。この効果は、構成性に活性なNF−κB経路またはいくつかの他の機構を有する腫瘍細胞に起因し得る。
【0148】
(実施例20 γ線照射に対するAA’の影響は、複数の細胞株の細胞死および成長阻害を誘導する)
A549細胞の結果に基づいて、いくつかのさらなる腫瘍細胞株(ヒト黒色腫Mel−7およびMel−29、結腸癌HCT116、肺癌HT1080)、不死化腎臓上皮細胞(NEK)および正常マウス大動脈内皮細胞(MAEC)を、インタクトなコントロールと比較したCBLB502で前処置を行うか行わない10Gyおよび15Gyのγ線照射後の成長阻害アッセイで試験した。処置の前日に、細胞を96ウェルプレートに播種した。照射の4時間前、1時間前、または10分前にCBLB502(2μg/ml)をウェルに添加した(全ての時点を四連で行った)。48時間後、メチレンブルー染色を行い、ウェル中の生細胞の相対量を決定した。3つ全ての時点で同一の結果を示した(照射の1時間前に添加したCBLB502についての結果を図31に示す)。成長阻害率を、コントロール非照射ウェルにおけるOD650を0%阻害として計算した。
【0149】
ヒト黒色腫細胞株およびMAEC細胞の両方は、むしろγ線照射対耐性を示し、インタクトな細胞(0Gy)と比較して、10Gyおよび15Gy後にわずかな(20%未満)成長阻害のみを示した。NKE細胞、HT1080細胞、およびHCT116細胞は、γ線照射後に40%までの成長阻害を示した。顕著には、CBLB502は、照射の有無にかかわらず腫瘍細胞成長に対する阻害効果は無いかわずかにあるのみであった。実験を2回繰り返した。さらに、肺癌H1299細胞および前立腺癌CWR22において類似の結果を得た(データ示さず)。これは、CBLB502によって腫瘍細胞株が照射誘導性細胞死から有意に防護されないことを示す。
【0150】
(実施例21 小腸陰窩へのBrdU組み込みに対する照射およびAA’の影響)
アポトーシスの直接阻害に加え、一過性の増殖の半減(half)およびその後の修復は、放射線防護の別の機構であり得、TGF−β3などの他の放射線防護剤について記載されている(Booth D.,et.al.,Int J Cancer.2000 Apr l;86(l):53−9)。したがって、本発明者らは、最初の投与から数時間の小腸(照射するかしていない)中の細胞の増殖活性にCBLB502(AA’)が影響を与える可能性を試験することを決定した(図32)。CBLB502またはPBSをマウスにi.p.注射し、30分後に15Gyの照射を行った(使用する場合)。注射から2時間後(照射を適用した場合、照射から1.5時間後)、BrdUを腹腔内注射した。さらに1.5時間後に小腸サンプルを得た。
【0151】
照射することなく、BrdUが高レベルで非処置NIH−Swissマウスの腸陰窩中の細胞の核に組み込まれたのに対して(図32の左上)、DNA合成(BrdU組み込みによって測定)はCBLB502処置マウスの陰窩でほぼ検出できなかった(図32の右上)。賦形剤処置照射マウスでは、コントロールマウスよりもBrdU組み込みが低かった。重要には、BrdU組み込みレベルはCBLB502によって非常に減少し、おそらく、より後期の(G2期)照射誘導性成長停止と対照的に、早い(S期)成長停止を示す。したがって、CBLB502またはフラゲリンの細胞増殖抑制活性は、小腸のさらなる放射線防護機構であり得る。
【0152】
(実施例22 AA’媒介性成長停止の持続時間およびBrdU組み込みの減少)
本発明者らは、次に、小腸におけるCBLB502誘導性細胞停止の持続時間を決定した。CBLB502またはPBSをマウスにi.p.注射し、BrdUを1時間後または4時間後に注射し、さらに1.5時間後にいくつかのマウスから小腸サンプルを得た(3匹のマウス由来のサンプルを示す)(図33)。
【0153】
腸内のBrdUの組み込みは、1時間後にBrdUを注射した場合、(2時間後にBrdUを注射した前の実験で示すように)コントロールと比較して減少した。NIH−Swissマウス、ICRマウス、およびBalb/cマウスは、類似の程度のBrdU組み込みのCBLB502媒介性遮断を示した(Balb/cサンプルを、図33に示す)。CBLB502注射から4時間後にBrdUを注射した場合、組み込み/DNA合成レベルは、コントロールで依然として高かった。これは、CBLB502による腸幹細胞増殖の阻害が一過性のもので迅速に(4時間までに)解決することができ、その後増殖し得る(おそらく、細胞の部分的同期化に起因する)ことを示す。
【0154】
(実施例23 結腸陰窩へのBrdU組み込みに対するAA’の影響)
結腸は、小腸よりも放射線感受性がはるかに低い。小腸における増殖の減少と放射線防護との間の関係をさらに試験するために、本発明者らは、結腸へのBrdU組み込みに対するCBLB502の効果を決定した。CBLB502またはPBSをマウスにi.p.注射し、1時間後にBrdUを注射し、さらに1.5時間後に小腸サンプルを得た(図34)。
【0155】
小腸と異なり、CBLB502は結腸へのBrdU組み込み効果がなかった。両器官中にTLR5が豊富であるので、これは驚くべきである。効果の相違は、CBLB502によって誘導されるさらなるTLR5シグナル伝達効果を隠し得る結腸中のより多い共生細菌量に起因し得る。
【0156】
(実施例24 投与経路による放射線防護可能性の比較)
本発明者らは、次に、以下のいくつかの経路を介して投与されたFliCフラゲリンによる放射線防護を試験した:静脈内(i.v.)、腹腔内(i.p.)、筋肉内(i.m.)、皮下(s.c.)、および細管栄養(gavage)。非経口(非細管栄養)経路のために、マウスにPBSまたは賦形剤に溶解した0.2mg/kgのFliCフラゲリンを注射し、1時間後に13Gyの照射を行った。細管栄養送達実験では、13Gyのγ線照射の1時間前に、5匹のマウスに増加した用量(50μg)のFliCを含む50μlのPBSを嚥下させた。8〜10週齢のメスNIH−Swissマウス(5〜10匹/群)で両実験を行った。
【0157】
細管栄養を加えた全ての試験経路は、類似の程度の防護を示し、85〜90%のマウスが30日生存した(データ示さず)。細管栄養送達によって照射に対する防護は認められず、これは、胃腸環境によるタンパク質の消化に起因し得る。さらに、フラゲリン受容体(TLR5)は、腸内容物に曝露された腸上皮の管腔部位に存在しない(Gewirtz AT.,et.al.,J Immunol.2001 Aug 15;167(4):1882−5)。
【0158】
(実施例25 小腸の形態に対するAA’の効果)
フラゲリン(およびCBLB502)は、TLR5への結合を介してNF−κB活性を誘導し得る。したがって、CBLB502媒介性放射線防護は、TLR5の存在および活性に依存し得る。MOLF/Eiマウスは、TLR5欠損の公知の天然モデルである(Sebastiani G.,et.al.,Genomics.2000 Mar 15;64(3):230−40)。CBLB502媒介性放射線防護が実際にTLR5依存性であることを検証するために、本発明者らは、MOLF/EiマウスおよびNIH−SwissマウスにおけるCBLB502による照射からの小腸の防護を試験した(図35)。15Gyのγ線照射の0.5時間前に、両マウス系統に0.2mg/kgのCBLB502(AA’)またはPBSを投与した。照射から4日後に小腸サンプルを得て、ヘマトキシリン−エオシンで染色し、病理形態学的分析に供した。
【0159】
NIH−Swiss(TLR5野生型)マウスでは、PBS処置マウスにおける短い絨毛および正常な陰窩構造の消失と比較して、CBLB502の前処置によって腸の形態が保存された(長い絨毛、正常な陰窩)。その一方で、TLR5欠損MOLF/Eiマウスでは、CBLB502の投与によって15Gyのγ線照射後の腸の形態に対する影響は改善されず、CBLB502使用の有無にかかわらず短い絨毛および正常な陰窩構造の破壊が認められた。これは、TLR5の存在が小腸におけるCBLB502媒介性放射線防護に必要であり得ることを示す。
【0160】
(実施例26 フラゲリン誘導体)
図36に示すドメイン構造に基づいて、さらなるフラゲリン改変体を産生した。次いで、フラゲリン改変体を、上記で考察したいくつかの改変体と共に、NF−κB刺激活性について試験した(表3)。A549細胞を、刺激しないままにするか、表示のTNF(10ng/ml)または1μg/mlの精製フラゲリンもしくは種々の表示のフラゲリン誘導体で45分間刺激し、全細胞抽出物を実施例7に記載のように調製した。EMSAアッセイを行い、NF−κB DNA−タンパク質複合体を実施例7に記載のように検出した。
【0161】
表3
【0162】
【表3】
表3の結果は、アミノ末端領域(aa1〜176)およびカルボキシ末端領域(aa402〜505)内に含まれるドメインに結合した少なくとも1つの重合ドメイン(aa1〜50またはaa450〜505)を有するフラゲリン変異形がNF−κBを刺激することができ、それにより、放射線防護剤であると予想されることを示す。トランスで結合していないドメインはNF−κBを活性化できないので、認識ドメインの物理的結合は活性に必要であり得る。1つのポリペプチド中のドメインの結合の代替物として、ドメインを、2つの分子を連結するために使用される分子であるリンカーを使用して結合させることができる。リンカーは、両分子と共有結合または高親和性非共有結合を形成することができる。適切なリンカーは当業者に周知であり、直鎖または分枝鎖の炭素リンカー、複素環式炭素リンカー、またはペプチドリンカーが含まれるが、これらに限定されない。リンカーを、その側鎖基を介して(例えば、システインへのジスルフィド結合を介して)成分アミノ酸に連結することができる。
【0163】
カルボキシル重合ドメイン(aa450〜505)が存在しない場合、活性にアミノ酸163と176との間の領域が必要であり得る。カルボキシル重合ドメインが存在する場合にこの領域は活性に重要でないので、この領域は誘導体の安定性に関与し得る。アミノ酸70と129との間の領域は活性化に重要であり、誘導体の安定化に関与し得る。アミノ酸402と450との間の領域も活性に必要であり得る。上記で同定したドメインは、3つの巨大なα−ヘリックス内に存在し(アミノ酸54〜129および402〜450内に存在する)、活性誘導体を産生するために、環様構造(重合ドメインを含むか含まない)を形成することが必要であり得る。
【図面の簡単な説明】
【0164】
【図1】図1は、p53欠損によってマウスのGI症候群の発症が促進されることを示す。パネルA:PFTα(10mg/kg)のI.P.注射によって、単回の9Gyの線量のγ線および12.5Gyの分割された放射線の蓄積線量(5×2.5Gy)からC57B1/6Jマウス(他で示さない限り、ここおよび以下で6〜8週齢の雄を使用した)が防護される。PFTαは、単回の12.5Gyおよび25Gy線量のIRで処置したマウスの生存に影響を与えない(各実験の結果を示す;4Gy/分の線量率でShepherd 4000Ciセシウム137源を使用した)。パネルB:野生型およびp53−ヌルC57B1/6Jマウスは、その相対感受性が低線量(10Gy)と高線量(15Gy)のγ線で異なる:野生型マウスは、p53−ヌルマウスと比較して10Gyに対してより感受性が高いが、15Gyに対してより耐性が高い。パネルC:12時間後の11Gyの全身γ線照射で処置したマウスに、野生型またはp53−ヌル同系C57B1/6Jマウス由来の1.5×107個の骨髄細胞を注射した。(この線量により、非構成マウスコントロール群は100%死亡した)。2ヶ月後、造血の完全な回収後、動物を、15Gyの全身γ線照射で処置し、その骨髄のp53状態が異なる2群間の死亡率が異ならなかった。パネルD:15Gyのγ線照射後の表示の時点での野生型マウスおよびp53−ヌルマウスの小腸に対する損傷の動力学の比較により、p53−ヌルマウスの損傷が加速される(ヘマトキシリン−エオシン染色パラフィン切片;125倍)。24時間のパネルは、陰窩切片のTUNEL染色の画像を含む。巨大なアポトーシスが野生型では明らかであるが、p53欠損上皮では明らかでない。
【図2】図2は、野生型マウスおよびp53−ヌルマウスの小腸における細胞増殖および生存の動力学を証明する。パネルA:IRでの処置後の野生型マウスおよびp53ヌルマウスの腸における増殖率の比較。(左)15Gyのγ線で処置しているか処置していない14C−チミジン(10μCi/動物)を腹腔内注射した4週齢の野生型マウスおよびp53ヌルマウスの全身切片(1.7倍)のオートラジオグラフ。矢印は腸を示す。(右)15Gyのγ線での処置後の異なる時点での野生型およびp53−ヌルマウスの小腸中のBrdU組み込みの比較。BrdU(50mg/kg)を、マウス屠殺の2時間前に注射し、その後に免疫染色を行った。96時間のパネルの小部分は、高倍率(400倍)を示す。パネルB:15Gyのγ線での処置後の異なる時点での野生型およびp53−ヌルマウスの小腸中のBrdU陽性細胞/陰窩数の比較。各時点で3匹の動物を分析し、各動物由来の5つの回腸の断面を調製し、顕微鏡で分析して陰窩および絨毛の数を評価した。陰窩中のBrdU陽性細胞数を、200倍での5つの無作為な視野(100〜30陰窩)で計数し、平均BrdU用生細胞数をプロットした。パネルC:15Gyのγ線照射後の異なる時点での野生型マウスおよびp53−ヌルマウスの小腸中のBrdU標識細胞の数および位置の軌跡。照射前にBrdUを30分間注射し、マウスを表示の時点で屠殺した。p53−ヌルマウスにおいて標識細胞の陰窩から絨毛までの移動の加速およびその後の急速な消失が認められた。
【図3】図3は、組換えフラゲリンがNF−κB活性化が可能であること証明する。
【図4】図4は、照射からマウスを防護するためのフラゲリンの能力を試験する各実験を示す。C56BL6マウス(6週齢の雄、10匹/群)に、2.0μg(0.1mg/kg)または5μg(0.25mg/kg)のフラゲリンを含むPBSをi.v.注射下。4時間後、マウスに、15Gyを照射し、マウスの生存率を毎日モニタリングした。
【図5】図5は、0.25mg/kgのフラゲリンのi.v.注射を行ったか行っていない15Gyのγ線で処置したマウスの小腸上皮の組織学的切片(HE染色)を示す。コントロールマウスにおける陰窩および絨毛の完全な破壊は、フラゲリン処置マウス由来の組織の通常の形態と非常に対照的である。
【図6】図6は、10Gyの全身γ線照射に対するマウスの感受性に対するフラゲリンの効果を示す。
【図7】図7は、13Gy(左)および10Gy(右)の全身γ線照射に対するマウスの感受性に対する照射前の表示の時点でi.v.注射したフラゲリンの効果を示す。
【図8】図8は、10、13、および15Gyの全身γ線照射に対するマウスの感受性に対するフラゲリンの効果を示す。
【図9】図9は、細菌フラゲリンのドメイン構造を示す。F41のCa骨格の軌跡、疎水性コアの分布、および構造情報。ドメインD1、D2a、D2b、およびD3を規定する4つの異なる疎水性コア。全疎水性側鎖の原子を、Ca骨格と共に示す。側鎖原子を色分けしている:Ala、黄色;Leu、Lle、またはVal、橙色;PheおよびTyr、紫色(炭素原子)および赤色(酸素原子)。c、フラゲリンのアミノ酸配列中の種々の特徴的な構造の位置および領域。以下に示す(上から下):F41フラグメント(青色)、3つのb葉(b−folium)折り畳み(褐色);a−ヘリックスを有する二次構造の分布(黄色)、b構造(緑色)、およびb−ターン(紫色);50番目の残基毎のチック(tic)マーク(青色);ドメインD0、D1、D2、およびD3;プロト−エレメント(proto−element)内の軸サブユニット接触領域(シアン);十分に保存されたアミノ酸配列(赤色)および可変領域(紫色);異なるスーパーコイルのエレメントを産生するF41中の点変異。下の文字は、変異エレメントの形態を示す:L(D107E、R124A、R124S、G426A)、L型直線;R(A449V)、R型直線;C(D313Y、A414V、A427V、N433D)、ねじれた33(curly33)。
【図10】図10は、Salmonella属フラゲリンドメイン、そのフラグメント、およびTLR5との相互作用を示す。暗色のバーは、A、B、C、A’、およびB’を含むフラグメントを構築するために使用したフラゲリン遺伝子の領域を示す。
【図11】図11は、SDS−PAGEによる断片化後の溶性フラゲリン(FliC)および2つのフラグメント(AA’およびBB’)を示し、分子量マーカーを左側に列挙した。
【図12】図12は、Salmonella属フラゲリン(FliC)およびフラゲリンフラグメントによるNF−κB核転位置の誘導を示す。
【図13】図13は、H116細胞におけるフラゲリンおよびフラゲリンフラグメントによるNF−κB調節ルシフェラーゼレポーター構築物の活性化を示す。タンパク質濃度を、μg/mlで示す。
【図14】図14は、フラゲリンおよびフラゲリンフラグメントによって誘導されたHT29ヒト結腸癌細胞におけるNF−κB DNA結合を示す。
【図15】図15は、全長フラゲリンおよびフラゲリンフラグメントによるHCT116レポーター細胞におけるNF−κBレポーターの活性化を示す。
【図16】図16は、フラゲリン(FliC)およびフラグメントAA’およびBB’の放射線防護性の比較を示す。
【図17】図17は、AA’フラグメントが照射によって生じる変性から腸上皮を防護することを示す。A:14Gy照射から5日後のマウスの小腸上皮の組織学的切片(ヘマトキシリンおよびエオシン染色)を示す。B:TUNELアッセイによって決定したところ、AA’フラグメントでの処置により、照射から5時間後に持続している絨毛の内皮細胞中のアポトーシスが防止される(内皮マーカーCD31の免疫染色によって検出し、矢印で示す)。C:14Gyのγ線照射から5日後の皮膚の組織学的切片は、脂腺のAA’フラグメントに対する防護効果を証明する(赤色の矢印)。
【図18】図18は、AA’フラグメントが17Gyおよび20Gyの全身γ線照射での超致死(supralethal)照射後のマウスの死亡を部分的に防護し、遅延することを示す。
【図19】図19は、フラゲリンおよびAA’による21日後および28日後のマウスで誘導された抗フラゲリン抗体力価を示す。各マウスについて、2つの測定値の平均を示す。マウスに、F1:フラゲリンまたはAA’を注射した。21dおよび28ds−マウスに21日目に最初の投与を行い、28日目に第2の投与をそれぞれ行う。PBS:生理食塩水(血清なし)コントロール;ブランク:空のウェル読み取りコントロール。
【図20】図20は、フラゲリンおよびAA’による21日後および28日後のマウスで誘導された抗フラゲリン力価を示す。各マウスについて、2つの測定値の平均を示す。マウスに、F1:フラゲリンまたはAA’を注射した。21dおよび28ds−マウスに21日目に最初の投与を行い、28日目に第2の投与をそれぞれ行う。PBS:生理食塩水(血清なし)コントロール;ブランク:空のウェル読み取りコントロール。
【図21】図21は、フラゲリンフラグメントAA’が複数の連続的γ線照射からマウスが防護されることを示す。矢印は照射処置を示す(1〜4日目)。
【図22】図22は、照射処置に対する腫瘍感受性に対するAA’の効果を示す。左のパネル:NIH−SwissマウスにNIH3T3誘導性肉腫細胞をs.c.注射した。腫瘍の直径が7〜10mmに到達した場合、AA’で前処置するかしないでマウスに3回の4.3Gyの線量の全身照射を行った。照射処置後の腫瘍成長の動力学を示す。U/t:未処置、AA’:照射しないでAA’で処置、3×4Gy:照射のみ、3×4Gy+AA’:AA’および照射。(曲線の形状は、このモデルに特徴的な遅い腫瘍成長を反映する)。最後の照射から7日後に測定した腫瘍体積に対して正規化した相対腫瘍体積として結果を示す。右のパネル:別の同系マウス腫瘍モデルを使用した同一の方法で試験を行った:B16黒色腫(C57BL6バックグラウンド)。腫瘍の直径が4〜5mmに到達した場合に処置を適用し、この処置には、AA’で前処置(照射30分前、5μg/マウス)するかしないその後の3回の4Gyの線量の全身γ線照射が含まれた。
【図23】図23は、13Gyの全身γ線照射後のマウスにおけるLPSおよびAA’の放射線防護に対するNS398の影響を示す。
【図24】図24は、21種の細菌由来の保存アミノ酸末端(図24A)およびカルボキシ末端(図24B)のアミノ酸配列の比較を示す。TLR5活性に重要な13の保存アミノ酸を、影をつけることによって示す。アミノ酸配列を、TrEMBL(最初の文字=Q)またはSwiss−Prot(最初の文字=P)由来のそのアクセッション番号によって識別する。
【図25】図25は、クエリー配列として配列番号1を使用したBLAST検索の結果を示す。全検索で使用したパラメーターは以下であった:期待値カットオフ=10、行列=BLOSUM62、存在のギャップペナルティ=11、および伸長=1、フィルタリング=なし。図25A:NR_細菌(タンパク質−タンパク質);図25B:NR_細菌(タンパク質−DNA);図25C:細菌ゲノム(タンパク質−タンパク質);図25D:細菌ゲノム(タンパク質−DNA)。
【図26】図26は、図25と同一の検索パラメーターを使用してhttp://www.expasy.org/からのBLASTの結果で示すように、配列番号1と比較して図24に示すホモログのアミノ末端およびカルボキシ末端の同一率を示す。
【図27】図27は、AA’が10Gyの全身γIR後の複数のマウス系統の救出(rescue)を媒介することを証明する。
【図28】図28は、静脈内(i.v.)、皮下(s.c.)、腹腔内(i.p.)、または筋肉内(i.m.)注射後のAA’の薬物動態を証明する。
【図29】図29は、筋肉内(i.m.)注射後のAA’の薬物動態の拡大を証明する。
【図30】図30は、A549細胞におけるγ線照射誘導性細胞死および成長阻害に対するAA’の影響を証明する。
【図31】図31は、複数の細胞株におけるγ線照射誘導性細胞死および成長阻害に対するAA’の影響を証明する。
【図32】図32は、NIH−Swissマウスの小腸陰窩におけるBrdU組み込みに対する照射およびAA’の影響を証明する。15Gyのγ線照射を行ったか行っていないコントロールおよびAA’処置NIH−Swissマウスの小腸中のBrdU組み込みの比較を示す。BrdU(50mg/kg)をマウス屠殺の1.5時間前に注射し、以前に記載のように免疫染色を行った(Watson AJ & Pritchard DM.,Am J Physiol Gastrointest Liver Physiol.2000 Jan;278(l):Gl−5)。画像の赤色チャネルを示す(陽性シグナルは暗色バックグラウンド上の明るい白色である)。
【図33】図33は、マウス小腸におけるAA’媒介性成長停止およびBrdU組み込みの減少の持続時間を示す。BrdU(50mg/kg)を、CBLB502(AA’)注射から1時間後または4時間後にBalb/cマウスにi.p.注射した。BrdU注射から1.5時間後に小腸サンプルを得た。以前に記載のように免疫染色を行った(Watson AJ & Pritchard DM.,Am J Physiol Gastrointest Liver Physiol.2000 Jan;278(l):Gl−5)。倒立像を示す(陽性シグナルは明色バックグラウンド上の暗色である)。
【図34】図34は、NIH−Swissマウスの結腸陰窩へのBrdU組み込みに対するAA’の影響を証明する。BrdU(50mg/kg)を、CBLB502(AA’)注射から1時間後にNIH−Swissマウスにi.p.注射した。以前に記載のように免疫染色を行った(Watson AJ & Pritchard DM.,Am J Physiol Gastrointest Liver Physiol.2000 Jan;278(l):Gl−5)。倒立像を示す(陽性シグナルは明色バックグラウンド上の暗色である)。下のパネルは、サンプルのより小さな倍率/大きな領域を示す。
【図35】図35は、AA’での処置後のTLR5欠損MOLF/EiおよびTLR5 wtNIH−Swissマウスの小腸の形態学を証明する。
【図36】図36は、フラゲリン誘導体を示す。選択されたフラゲリン誘導体のドメイン構造およびおおよその境界(アミノ酸座標)(右に列挙する)。Salmonella・dublinのFliCフラゲリンは、505アミノ酸(aa)内にコードされる。
【図37】図37は、NF−κB刺激活性について試験したさらなるフラゲリン誘導体の試験を示す。
【図38−1】図38は、以下のフラゲリン改変体のヌクレオチド配列およびアミノ酸配列を示す:AA’(配列番号7〜8)、AB’(配列番号9〜10)、BA’(配列番号11〜12)、BB’(配列番号13〜14)、CA’(配列番号15〜16)、CB’(配列番号17〜18)、A(配列番号19〜20)、B(配列番号21〜22)、C(配列番号23〜24)、GST−A’(配列番号25〜26)、GST−B’(配列番号27〜28)、AA’n1−170(配列番号29〜30)、AA’n1−163(配列番号33〜34)、AA’n54−170(配列番号31〜32)、AA’n54−163(配列番号335〜36)、AB’n1−170(配列番号37〜38)、AB’n1−163(配列番号39〜40)、AA’n1−129(配列番号41〜42)、AA’n54−129(配列番号43〜44)、AB’n1−129(配列番号45〜46)、AB’n54−129(配列番号47〜48)、AA’n1−100(配列番号49〜50)、AB’n1−100(配列番号51〜52)、AA’n1−70(配列番号53〜54)、およびAB’n1−70(配列番号55〜56)。pRSETbリーダー配列を、斜体で示す(リーダーには、FliCのアミノ酸1であるMetが含まれる)。N末端定常ドメインに下線を引いている。アミノ酸リンカー配列を太字で示す。C末端定常ドメインに下線を引いている。存在する場合、GSTを強調している。
【図38−2】図38は、フラゲリン改変体のヌクレオチド配列およびアミノ酸配列を示す。
【図38−3】図38は、フラゲリン改変体のヌクレオチド配列およびアミノ酸配列を示す。
【図38−4】図38は、フラゲリン改変体のヌクレオチド配列およびアミノ酸配列を示す。
【図38−5】図38は、フラゲリン改変体のヌクレオチド配列およびアミノ酸配列を示す。
【図38−6】図38は、フラゲリン改変体のヌクレオチド配列およびアミノ酸配列を示す。
【図38−7】図38は、フラゲリン改変体のヌクレオチド配列およびアミノ酸配列を示す。
【図38−8】図38は、フラゲリン改変体のヌクレオチド配列およびアミノ酸配列を示す。
【図38−9】図38は、フラゲリン改変体のヌクレオチド配列およびアミノ酸配列を示す。
【図38−10】図38は、フラゲリン改変体のヌクレオチド配列およびアミノ酸配列を示す。
【図38−11】図38は、フラゲリン改変体のヌクレオチド配列およびアミノ酸配列を示す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アポトーシスを誘発する1つまたは複数の治療または状態から哺乳動物を防護する方法であって、薬学的有効量のフラゲリンを含む組成物を患者に投与する工程を包含し、該フラゲリンは、配列番号1、または配列番号1のフラグメント、改変体、アナログ、ホモログ、誘導体、またはその組み合わせを含み、該フラゲリンはTLR−5媒介活性を誘導する、方法。
【請求項2】
前記フラゲリンが、配列番号1の1〜174および418〜505のアミノ酸と少なくとも30%同一である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記フラゲリンが、89位、90位、91位、95位、98位、101位、115位、422位、423位、426位、431位、436位、および452位からなる群から選択される位置において、少なくとも10個の保存アミノ酸を含む、請求項1または請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記フラゲリンが、配列番号1、配列番号8、配列番号10、配列番号12、配列番号30、配列番号32、配列番号34、配列番号36、配列番号38、配列番号40、配列番号42、配列番号44、配列番号46、配列番号48、配列番号50、および配列番号52からなる群から選択される配列を含む、請求項1〜請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記状態が、放射線への被爆である、請求項1〜請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記フラゲリンを、放射線防護剤と組み合わせて投与する、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記治療が癌治療である、請求項1〜請求項4に記載の方法。
【請求項8】
前記治療が化学療法である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記治療が放射線療法である、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記フラゲリンを、放射線防護剤と組み合わせて投与する、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記治療が、創傷、中毒、細菌感染、ウイルス感染、および温度衝撃からなる群から選択されるストレスである、請求項1〜請求項4に記載の方法。
【請求項12】
前記アポトーシスが、胃腸管、肺、腎臓、肝臓、心血管系、血管内皮、中枢神経系、末梢神経系、造血前駆細胞、免疫系、および毛包からなる群から選択される組織において誘発される、請求項1〜請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記哺乳動物において、敗血症が予防される、請求項1〜請求項12に記載の方法。
【請求項1】
アポトーシスを誘発する1つまたは複数の治療または状態から哺乳動物を防護する方法であって、薬学的有効量のフラゲリンを含む組成物を患者に投与する工程を包含し、該フラゲリンは、配列番号1、または配列番号1のフラグメント、改変体、アナログ、ホモログ、誘導体、またはその組み合わせを含み、該フラゲリンはTLR−5媒介活性を誘導する、方法。
【請求項2】
前記フラゲリンが、配列番号1の1〜174および418〜505のアミノ酸と少なくとも30%同一である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記フラゲリンが、89位、90位、91位、95位、98位、101位、115位、422位、423位、426位、431位、436位、および452位からなる群から選択される位置において、少なくとも10個の保存アミノ酸を含む、請求項1または請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記フラゲリンが、配列番号1、配列番号8、配列番号10、配列番号12、配列番号30、配列番号32、配列番号34、配列番号36、配列番号38、配列番号40、配列番号42、配列番号44、配列番号46、配列番号48、配列番号50、および配列番号52からなる群から選択される配列を含む、請求項1〜請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記状態が、放射線への被爆である、請求項1〜請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記フラゲリンを、放射線防護剤と組み合わせて投与する、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記治療が癌治療である、請求項1〜請求項4に記載の方法。
【請求項8】
前記治療が化学療法である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記治療が放射線療法である、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記フラゲリンを、放射線防護剤と組み合わせて投与する、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記治療が、創傷、中毒、細菌感染、ウイルス感染、および温度衝撃からなる群から選択されるストレスである、請求項1〜請求項4に記載の方法。
【請求項12】
前記アポトーシスが、胃腸管、肺、腎臓、肝臓、心血管系、血管内皮、中枢神経系、末梢神経系、造血前駆細胞、免疫系、および毛包からなる群から選択される組織において誘発される、請求項1〜請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記哺乳動物において、敗血症が予防される、請求項1〜請求項12に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24(A)−1】
【図24(A)−2】
【図24(B)】
【図25A−1】
【図25A−2】
【図25A−3】
【図25A−4】
【図25A−5】
【図25A−6】
【図25A−7】
【図25A−8】
【図25A−9】
【図25A−10】
【図25A−11】
【図25A−12】
【図25A−13】
【図25A−14】
【図25A−15】
【図25A−16】
【図25A−17】
【図25A−18】
【図25A−19】
【図25A−20】
【図25B−1】
【図25B−2】
【図25B−3】
【図25B−4】
【図25B−5】
【図25B−6】
【図25B−7】
【図25B−8】
【図25B−9】
【図25B−10】
【図25B−11】
【図25B−12】
【図25B−13】
【図25B−14】
【図25B−15】
【図25B−16】
【図25B−17】
【図25B−18】
【図25B−19】
【図25C−1】
【図25C−2】
【図25C−3】
【図25C−4】
【図25C−5】
【図25C−6】
【図25C−7】
【図25D−1】
【図25D−2】
【図25D−3】
【図25D−4】
【図25D−5】
【図25D−6】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38−1】
【図38−2】
【図38−3】
【図38−4】
【図38−5】
【図38−6】
【図38−7】
【図38−8】
【図38−9】
【図38−10】
【図38−11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24(A)−1】
【図24(A)−2】
【図24(B)】
【図25A−1】
【図25A−2】
【図25A−3】
【図25A−4】
【図25A−5】
【図25A−6】
【図25A−7】
【図25A−8】
【図25A−9】
【図25A−10】
【図25A−11】
【図25A−12】
【図25A−13】
【図25A−14】
【図25A−15】
【図25A−16】
【図25A−17】
【図25A−18】
【図25A−19】
【図25A−20】
【図25B−1】
【図25B−2】
【図25B−3】
【図25B−4】
【図25B−5】
【図25B−6】
【図25B−7】
【図25B−8】
【図25B−9】
【図25B−10】
【図25B−11】
【図25B−12】
【図25B−13】
【図25B−14】
【図25B−15】
【図25B−16】
【図25B−17】
【図25B−18】
【図25B−19】
【図25C−1】
【図25C−2】
【図25C−3】
【図25C−4】
【図25C−5】
【図25C−6】
【図25C−7】
【図25D−1】
【図25D−2】
【図25D−3】
【図25D−4】
【図25D−5】
【図25D−6】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38−1】
【図38−2】
【図38−3】
【図38−4】
【図38−5】
【図38−6】
【図38−7】
【図38−8】
【図38−9】
【図38−10】
【図38−11】
【公表番号】特表2008−525472(P2008−525472A)
【公表日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−548451(P2007−548451)
【出願日】平成17年12月22日(2005.12.22)
【国際出願番号】PCT/US2005/046485
【国際公開番号】WO2006/069198
【国際公開日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【出願人】(502093896)クリーブランド クリニック ファウンデイション (6)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年12月22日(2005.12.22)
【国際出願番号】PCT/US2005/046485
【国際公開番号】WO2006/069198
【国際公開日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【出願人】(502093896)クリーブランド クリニック ファウンデイション (6)
【Fターム(参考)】
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