説明

フラックス供給方法及びフラックス供給装置

【課題】フラックス供給量を微量かつ高精度に制御でき、フラックス洗浄工程を省略すること。
【解決手段】本発明のフラックス供給方法は、溶融はんだ吐出装置から溶融はんだ液滴を吐出する工程と、前記吐出された溶融はんだ液滴が接合対象物に到着する前に、当該溶融はんだ液滴の表面にフラックスを付着させる工程と、を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フラックス供給方法及びフラックス供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
はんだ付けは、電子部品の電極等の接合(例えば、ランドとリード線の接合、複数のランドの相互接合)や、基板上のバンプ形成などに多用されている。近年、電子部品の小型化が進むにつれ、はんだ接合部に対して必要量の溶融はんだを供給する方法として、溶融はんだを液滴状に吐出する溶融はんだ吐出装置が提案されている。例えば、特許文献1には、溶融はんだ吐出装置から吐出された溶融はんだ液滴を基板の下地金属に接合させて、該下地金属上にバンプを形成する技術が開示されている。
【0003】
一般に、溶融はんだを用いてはんだ接合を行う際には、フラックスが使用される。フラックスは、(1)接合対象物の表面を洗浄する機能、(2)溶融はんだの表面張力を低下させる機能(ぬれ性改善)、及び(3)はんだ接合部の再酸化を防止する機能を有する。かかるフラックスを供給するために、特許文献1では、接合対象物である下地金属上に予めフラックスを塗布しておき、溶融はんだ吐出装置から吐出された溶融はんだ液滴を下地金属に衝突させている。また、特許文献2では、溶融はんだ液滴を吐出するノズルの先端にフラックスを塗布しておき、ノズル開口を通過する溶融はんだ液滴に対してフラックスを供給することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−188264号公報
【特許文献2】特開平10−117059号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1記載のように、溶融はんだ吐出装置から吐出された溶融はんだ液滴を、予めフラックスが塗布された接合対象物に対して衝突させる方法では、フラックス供給量が過多である場合、溶融はんだの移動(滑り、跳ね等)やブリッジが発生してしまう。このため、溶融はんだと接合対象物との間の十分な接合力を実現するためには、フラックス供給量を厳密に制御する必要がある。かかる供給方法としては、マスク印刷、スプレー塗布、スピン塗布、ディスペンス塗布等が提案されているが、いずれの方法においても、フラックス供給量を微量かつ高精度に制御することは困難である。また、特許文献1記載の方法では、接合対象物に塗布されたフラックスを除去するために、溶融はんだ吐出後にリフロー工程と洗浄工程が必要となってしまう。
【0006】
また、上記特許文献2に記載のようにノズル開口でフラックスを供給する方法では、フラックスとともにノズル周辺の汚れ(酸化物等)が溶融はんだ液滴に付着してしまうおそれがある。よって、汚れのないフラックスを溶融はんだ液滴に供給できるとともに、フラックス供給量を容易に厳密に制御することが可能な方法が希求されていた。
【0007】
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、フラックス供給量を微量かつ高精度に制御でき、フラックス洗浄工程を省略することが可能な、新規かつ改良されたフラックス供給方法及びフラックス供給装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、溶融はんだ吐出装置から溶融はんだ液滴を吐出する工程と、前記吐出された溶融はんだ液滴が接合対象物に到着する前に、当該溶融はんだ液滴の表面にフラックスを付着させる工程と、を含む、フラックス供給方法が提供される。
【0009】
前記溶融はんだ吐出装置の下方に配置された傾斜ガイド上に前記フラックスを供給する工程をさらに含み、前記フラックスを付着させる工程では、前記溶融はんだ吐出装置から前記傾斜ガイド上に滴下された前記溶融はんだ液滴を、前記フラックスが供給された前記傾斜ガイド上で滑落させることにより、前記溶融はんだ液滴の表面に前記フラックスを付着させるとともに、前記フラックスが付着した前記溶融はんだ液滴を前記接合対象物に案内するようにしてもよい。
【0010】
前記溶融はんだ吐出装置の下方に配置されたフラックス保持体に前記フラックスを供給して、前記フラックス保持体に設けられた開口にフラックス膜を形成する工程をさらに含み、前記フラックスを付着させる工程では、前記溶融はんだ吐出装置から前記開口に向けて滴下された前記溶融はんだ液滴が、前記開口に形成された前記フラックス膜を通過することにより、前記溶融はんだ液滴の表面に前記フラックスを付着させ、前記フラックスが付着した前記溶融はんだ液滴を前記接合対象物に滴下するようにしてもよい。
【0011】
前記溶融はんだ吐出装置の下方に傾斜配置された反射台上に前記フラックスを供給する工程をさらに含み、前記フラックスを付着させる工程では、前記溶融はんだ吐出装置から前記反射台上に滴下された前記溶融はんだ液滴を、前記フラックスが供給された前記反射台で反射させることにより、前記溶融はんだ液滴の表面に前記フラックスを付着させるとともに、前記フラックスが付着した前記溶融はんだ液滴を前記接合対象物に案内するようにしてもよい。
【0012】
また、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、溶融はんだ吐出装置と接合対象物との間に配置され、前記溶融はんだ吐出装置から吐出された溶融はんだ液滴が前記接合対象物に到着する前に、前記溶融はんだ液滴の表面にフラックスを付着させるフラックス付着部と、前記フラックス付着部に前記フラックスを供給するフラックス供給部と、を備える、フラックス供給装置が提供される。
【0013】
前記フラックス付着部は、前記溶融はんだ吐出装置の下方に配置された傾斜ガイドを備え、前記フラックス供給部により前記傾斜ガイド上に前記フラックスを供給し、前記溶融はんだ吐出装置から前記傾斜ガイド上に滴下された前記溶融はんだ液滴を、前記フラックスが供給された前記傾斜ガイド上で滑落させることにより、前記溶融はんだ液滴の表面に前記フラックスを付着させるとともに、前記フラックスが付着した前記溶融はんだ液滴を前記接合対象物に案内するようにしてもよい。
【0014】
前記傾斜ガイドには、前記溶融はんだ液滴の滑落経路に沿って案内溝が形成されており、前記フラックス供給装置により前記傾斜ガイドの前記案内溝に前記フラックスを供給しながら、前記フラックスが供給された前記案内溝内で前記溶融はんだ液滴を滑落させるようにしてもよい。
【0015】
前記フラックス付着部は、前記溶融はんだ吐出装置の下方に配置されたフラックス保持体を備え、前記フラックス保持体には、前記溶融はんだ吐出装置から滴下された前記溶融はんだ液滴を通過させるための開口が設けられており、前記フラックス供給部により前記フラックス保持体上に前記フラックスを供給して、前記開口にフラックス膜を形成し、前記溶融はんだ吐出装置から前記開口に向けて滴下された前記溶融はんだ液滴が、前記開口に形成された前記フラックス膜を通過することにより、前記溶融はんだ液滴の表面に前記フラックスを付着させ、前記フラックスが付着した前記溶融はんだ液滴を前記接合対象物に滴下するようにしてもよい。
【0016】
前記フラックス保持体は、回転テーブルであり、前記開口は、前記回転テーブルに形成された環状のスリットであり、前記回転テーブルを回転させながら、前記フラックス供給部により前記回転テーブル上に前記フラックスを供給して、前記スリットにフラックス膜を形成し、前記溶融はんだ吐出装置から前記スリットに向けて滴下された前記溶融はんだ液滴が、前記スリットに形成された前記フラックス膜を通過することにより、前記溶融はんだ液滴の表面に前記フラックスを付着させるようにしてもよい。
【0017】
前記フラックス付着部は、前記溶融はんだ吐出装置の下方に傾斜配置された反射台を備え、前記フラックス供給部により前記反射台上に前記フラックスを供給し、前記溶融はんだ吐出装置から前記反射台上に滴下された前記溶融はんだ液滴を、前記フラックスが供給された前記反射台で反射させることにより、前記溶融はんだ液滴の表面に前記フラックスを付着させるとともに、前記フラックスが付着した前記溶融はんだ液滴を前記接合対象物に案内するようにしてもよい。
【0018】
前記フラックス付着部は、前記反射台の傾斜角度を調整する角度調整機構をさらに備えるようにしてもよい。
【0019】
上記構成によれば、溶融はんだ吐出装置から溶融はんだ液滴が吐出され、該吐出された溶融はんだ液滴が接合対象物に到着する前に、当該溶融はんだ液滴の表面にフラックスを付着させる。これにより、接合対象物と溶融はんだ液滴のはんだ接合部に対するフラックスの供給量を微量かつ高精度に制御できる。
【発明の効果】
【0020】
以上説明したように本発明によれば、フラックス供給量を微量かつ高精度に制御でき、フラックス洗浄工程を省略することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る滑落型のフラックス供給装置の全体構成を示す縦断面図である。
【図2】同実施形態に係る滑落型のフラックス供給装置の傾斜ガイドの構造を示す断面図である。
【図3】同実施形態に係るフラックス供給方法を利用した溶融はんだ吐出接合法を示すフローチャートである。
【図4】同実施形態に係る通過型のフラックス供給装の全体構成を示す縦断面図である。
【図5】同実施形態に係る通過型のフラックス供給装置のフラックス保持体を示す上面図である。
【図6】同実施形態に係る通過型のフラックス供給装置のフラックス保持体を示す側面図である。
【図7】同実施形態に係るフラックス供給方法を利用した溶融はんだ吐出接合法を示すフローチャートである。
【図8】本実施形態に係る反射型のフラックス供給装置の全体構成を示す縦断面図である。
【図9】本実施形態に係る反射型のフラックス供給装置の反射台を示す上面図である。
【図10】同実施形態に係るフラックス供給方法を利用した溶融はんだ吐出接合法を示すフローチャートである。
【図11】本発明の第3の実施形態に係るはんだ接合方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0023】
なお、説明は以下の順序で行うものとする。
1.本発明の実施形態の概要
2.第1の実施の形態(滑落型のフラックス供給方法)
3.第2の実施の形態(通過型のフラックス供給方法)
4.第3の実施の形態(反射型のフラックス供給方法)
5.まとめ
【0024】
[1.本発明の実施形態の概要]
まず、本発明の好適な実施形態に係るフラックス供給方法の概要について説明する。溶融はんだ吐出装置から液滴状に吐出された溶融はんだ(溶融はんだ液滴)を用いてはんだ接合する際、洗浄工程を省略するためには、フラックスの供給量を微量かつ高精度に制御して、微量かつ必要十分な量のフラックスを供給することが求められる。従来のフラックス供給方法としては、溶融はんだ吐出装置から溶融はんだ液滴を吐出する前に、予め接合対象物にフラックスを塗布しておく方法が一般的であった。しかし、かかる方法では、微細なフラックス供給量の調整が困難であり、どうしてもフラックスが供給過多となってしまう。このため、はんだ接合工程で、はんだ接合部における溶融はんだの移動やブリッジが発生するとともに、はんだ接合工程後にも、はんだ接合部の周辺にフラックス残渣が生じるため、リフロー工程や洗浄工程が必要となっていた。
【0025】
上記溶融はんだの移動やブリッジが起こる原因は、次の通りと考えられる。溶融はんだ液滴がフラックスに接触する際に、フラックスが急激に熱せられ、該フラックスに含まれる溶剤が急激に揮発する。その結果、溶融はんだ液滴は、接合対象物(ランド等)と合金層を形成する前に、フラックスの揮発するガスに押し出されるようにして、接合対象物からはじかれると推測される。この現象は、はんだと接合対象物の材質にも依存すると考えられる。例えば、接合対象物がAuランドである場合、該Auランドははんだに比較的拡散しやすく、Auランドに衝突した溶融はんだ液滴は、はじかれる前に合金層を形成するため、該溶融はんだ液滴の移動が発生しにくい。また、接合対象物がCuランドである場合、CuランドはAuランドよりもはんだに拡散しづらいため、溶融はんだ液滴の移動が発生しやすい。
【0026】
以上のように、フラックス供給方法として、接合対象物上に予めフラックスを塗布しておく方法を用いた場合、どうしてもフラックスが供給過多となってしまう。このため、接合対象物に衝突した溶融はんだ液滴の移動が発生したり、リフロー工程や洗浄工程等の後工程が必要となったりするという問題があった。
【0027】
そこで、本発明の実施形態に係るフラックス供給方法では、予めフラックスを接合対象物上に供給しておくのではなく、溶融はんだ吐出装置から溶融はんだ液滴が吐出されてから接合対象物に到達するまでの間に、該溶融はんだ液滴にフラックスを供給する。このために、溶融はんだ吐出装置と接合対象物との間にフラックス供給部を設置し、溶融はんだ吐出装置から吐出された溶融はんだ液滴が接合対象物に到達する前に、上記フラックス供給部を用いて、当該溶融はんだ液滴の表面に微細量のフラックスを付着させる。
【0028】
かかるフラックス供給方法により、溶融はんだ吐出装置から溶融はんだ液滴を接合対象物に吐出するだけで、フラックス塗布等の前工程を行わなくても、溶融はんだ液滴を接合対象物に直接的にはんだ接合することが可能となる。また、溶融はんだ液滴に対するフラックスの供給量を微量かつ高精度に制御できるので、必要十分な微細量のフラックスをはんだ接合部に供給できる。さらに、該溶融はんだ液滴と接合対象物とはんだ接合した後には、接合対象物の周辺にフラックス残渣がほとんど生じないので、フラックス残渣を除去するためのリフロー工程や洗浄工程等の後工程が不要となる。
【0029】
以下の実施形態で使用するはんだは、鉛フリーはんだであることが好ましいが、例えば、鉛含有はんだ(例えばSn−Pb系)であってもよい。鉛フリーはんだとしては、例えば、Sn−Ag−Cu系、Sn−Zn系、Sn−Bi系、Sn−Bi−Ag(Au)系、Sn−Cu−Ni系などの合金組成のはんだを使用できる。
【0030】
また、以下の実施形態で使用するフラックスは、溶融はんだ液滴に接触して特定の温度以上になると活性化し、上述した3つの機能、即ち、(1)接合対象物表面の洗浄機能、(2)溶融はんだの表面張力低下機能(ぬれ性改善)、(3)はんだ接合部の再酸化防止機能を発揮する。該フラックスとしては、例えば、樹脂系フラックス(主剤:ロジン、ロジン変性、合成樹脂等)、有機酸系フラックス(主剤:水ベース又は溶剤ベースの有機酸等)、無機酸系フラックス(主剤:水溶性又は非水溶性の無機酸等)などを使用できる。
【0031】
以下では、本発明の第1〜第3の実施形態に係る滑落型、通過型及び反射型のフラックス供給方法について説明するが、これら3つのフラックス供給方法の特性に応じて、フラックスの種類を選定することが好ましい。
【0032】
例えば、第1の実施形態に係る滑落型のフラックス供給方法においては、傾斜ガイド上で溶融はんだ液滴を滑落しやくするために、粘度が低く、流れやすい液状のフラックスを使用することが好ましい。また、第2の実施形態に係る通過型のフラックス供給方法においては、フラックス薄膜を形成しやすいように、液状のフラックスを使用することが好ましい。また、第3の実施形態に係る反射型のフラックス供給方法においては、反射台上で溶融はんだ液滴をより反射しやすくするため、固形分濃度が高く、粘度が高いフラックスを使用することが好ましい。なお、フラックスは、腐食性又は非腐食性のいずれのタイプのフラックスであってもよい。また、フラックスに含まれる主剤以外の活性剤、添加剤、溶剤成分等も、適宜変更してもよい。
【0033】
また、第1、3の実施形態に係る反射型、滑落型のフラックス供給方法においては、いずれも傾斜配置された部材に溶融はんだを吐出する。第1の実施形態に係る滑落型のフラックス供給方法では、傾斜ガイド上で溶融はんだ液滴が滑落し易くするために、溶融はんだ吐出装置のノズルと傾斜ガイドの距離を、例えば15mm程度とすることが好ましい。当該距離が遠ければ、溶融はんだ液滴は、吐出時と比べて温度が低下して(例えば100℃程度)、その表面が固くなるので、傾斜ガイド上滑落しやすくなる。一方、第3の実施形態に係る反射型のフラックス供給方法では、反射台上で溶融はんだ液滴が反射し易くするために、溶融はんだ吐出装置のノズルと反射台の距離を、例えば5mm以内にすることが好ましい。当該距離が近ければ、溶融はんだ液滴は、吐出時の高温に近い温度を維持して(例えば200℃程度)、その表面が柔らいままであるので、反射台上で反射しやすくなる。なお、上記距離の具体的数値は、吐出された溶融はんだ液滴の直径が0.3mmである場合であり、該溶融はんだ液滴の径に応じて、上記距離を調整すればよい。
【0034】
なお、以下で説明するラックス供給方法で用いる溶融はんだ吐出装置は、例えば、溶融金属を液滴状に吐出可能な溶融金属吐出装置で構成される。
【0035】
[2.第1の実施形態]
次に、本発明の第1の実施形態に係る滑落型のフラックス供給方法及び装置について説明する。
【0036】
[2.1.フラックス供給装置]
次に、図1及び図2を参照して、本実施形態に係る滑落型のフラックス供給装置20の構成について説明する。図1は、本実施形態に係る滑落型のフラックス供給装置20の全体構成を示す縦断面図であり、図2は、本実施形態に係る滑落型のフラックス供給装置20の傾斜ガイド21の構造を示す断面図である。
【0037】
図1及び図2に示すように、滑落型のフラックス供給装置20は、傾斜ガイド21と、フラックス吐出装置22と、廃フラックス受け槽23とを備える。該フラックス供給装置20は、フラックス吐出装置22により傾斜ガイド21上にフラックス2を供給しながら、溶融はんだ吐出装置10から傾斜ガイド21上に滴下された溶融はんだ液滴1を傾斜ガイド21上で滑落させることにより、溶融はんだ液滴1の表面にフラックス2を付着させるとともに、フラックス2が付着した溶融はんだ液滴を接合対象物3に案内する。
【0038】
なお、接合対象物3は、溶融はんだ液滴1を接合する対象物であり、例えば、プリント配線基板等の各種の基板又は電子部品などである。かかる基板等に形成されたランド、パターン、下地金属等に溶融はんだ液滴1が付着することで、例えば、ランド上にバンプを形成したり、複数のランドを相互に接合したりできる。
【0039】
傾斜ガイド21は、溶融はんだ液滴1の表面にフラックス2を付着させるフラックス付着部の一例である。該傾斜ガイド21は、溶融はんだ吐出装置10の下方に配置され、溶融はんだ吐出装置10から吐出された溶融はんだ液滴1が接合対象物3に到着する前に、溶融はんだ液滴1の表面にフラックス2を付着させる。傾斜ガイド21は、溶融はんだ吐出装置10から滴下された溶融はんだ液滴1を受け止め、該溶融はんだ液滴1を接合対象物3に向けて滑落させて、該接合対象物3上に案内する機能を有する。
【0040】
傾斜ガイド21は、例えば、金属製(例えばSUS製)の帯状ブロックで構成され、溶融はんだ吐出装置10の直下に配置される。傾斜ガイド21は、その接合対象物3側の端部が、溶融はんだ吐出装置10側の端部よりも低くなるように、傾斜して配置される。溶融はんだ液滴1が、傾斜ガイド21上を滑落してその下端部から飛び出し、接合対象物3上の目標位置に着地するように、傾斜ガイド21の取付角度や接合対象物3側の端部の位置が調整される。傾斜ガイド21の取付角度は任意で調整可能であるが、溶融はんだ液滴1が円滑に滑落することを考慮して、例えば45〜60°とすることが好ましい。
【0041】
また、図2に示すように、傾斜ガイド21の上面には、溶融はんだ液滴1の滑落経路に沿ってV字状の案内溝24が形成されている。このV字状の案内溝24内をフラックス2が流下するとともに、溶融はんだ液滴1が滑落する。該案内溝24と、溶融はんだ液滴1が吐出される位置とが合う位置に、傾斜ガイド21が配置される。かかる案内溝24により、溶融はんだ液滴1を接合対象物3に向けて真っ直ぐに滑落させることができるので、該溶融はんだ液滴1を接合対象物3に供給する際の位置精度を向上できる。また、上記案内溝24により、傾斜ガイド21上の必要な箇所にのみフラックス2を供給できるので、フラックス2の供給量を抑制できる。
【0042】
なお、案内溝24は、溶融はんだ液滴1が滑落可能な形状であれば、V字状以外にも、例えばU字状、半円状、コの字形など任意の形状であってもよい。また、図1に示す例の傾斜ガイド21では、傾斜ガイド21の長手方向に沿った直線状の案内溝24が形成されており、傾斜ガイド21上での溶融はんだ液滴1の滑落経路は直線状である。しかし、かかる例に限定されず、溶融はんだ液滴1の滑落経路は、例えば、傾斜ガイド21の長手方向に沿って下に凸の湾曲状であってもよい。これにより、傾斜ガイド21の下端から飛び出した溶融はんだ液滴1の飛翔距離を延ばすことができる。
【0043】
また、傾斜ガイド21の構造は、図1に示すガイドレール状に限定されず、溶融はんだ液滴1が滑落することが可能な傾斜した滑落経路を有する構造であれば、適宜設計変更可能である。さらに、傾斜ガイド21における溶融はんだ液滴1の滑落性を向上させるため、傾斜ガイド21の滑落面(上記案内溝24)に対して、ダイヤモンドライクカーボン加工(DLC加工)等の処理を施してもよい。また、接合対象物3と溶融はんだ液滴1の接合性を高めるため、接合対象物3及び傾斜ガイド21を例えば200℃程度で予備加熱しておいてもよい。
【0044】
フラックス吐出装置22は、フラックス供給部の一例であり、フラックス付着部である傾斜ガイド21にフラックス2を供給する。フラックス吐出装置22は、例えば、ディスペンサ等の液体定量吐出装置で構成され、傾斜ガイド21の上端部側の直上に配置され、該傾斜ガイド21の案内溝24にフラックス2を供給する。このフラックス吐出装置22によりフラックス2が供給された案内溝24上を、溶融はんだ液滴1が滑落する最中に、該溶融はんだ液滴1の表面にフラックス2が付着する。
【0045】
フラックス2を溶融はんだ液滴1に安定して供給するため、フラックス吐出装置22は、溶融はんだ液滴1の吐出中には常時、傾斜ガイド21にフラックス2を供給し続ける。また、傾斜ガイド21上を流下したフラックス2が、プリント配線板等の接合対象物3に滴下しないように、傾斜ガイド21の下端から例えば3mm程度の位置にフラックス排出口25が設けられる。このフラックス排出口25は、案内溝24の底部に鉛直方向に貫通形成された孔からなる。該フラックス排出口25の直径は、吐出する溶融はんだ液滴1の径に合わせて調整され、溶融はんだ液滴1(例えば直径0.3mm)が落下しない程度の大きさ(例えば直径0.1mm)に設定される。傾斜ガイド21の案内溝24内を流下したフラックス2は、上記フラックス排出口25から、その下方に設けられた廃フラックス受け槽23に回収される。
【0046】
[2.2.フラックス供給方法]
次に、図3を参照して、上記滑落型のフラックス供給装置20を用いたフラックス供給方法と、該方法を利用した溶融はんだ吐出接合法について説明する。図3は、本実施形態に係るフラックス供給方法を利用した溶融はんだ吐出接合法を示すフローチャートである。
【0047】
図3に示すように、まず、フラックス供給装置20により、傾斜ガイド21の案内溝24にフラックス2を供給開始する(ステップS100)。フラックス供給装置20から傾斜ガイド21の上端側に供給されたフラックス2は、傾斜ガイド21の案内溝24内を流下して、フラックス排出口25から廃フラックス受け槽23に排出される。かかるフラックス2の供給は、S112のはんだ接合が終了するまで継続して行われる。
【0048】
次いで、接合対象物3の熱容量が基準値以上である場合には(ステップS102)、不図示の加熱装置により、接合対象物3及び傾斜ガイド21を例えば200℃程度に予備加熱する(ステップS104)。かかる予備加熱により、はんだ接合工程S112における接合対象物3と溶融はんだ液滴1の接合性が向上する。一方、接合対象物3の熱容量が基準値未満である場合には(ステップS102)、予備加熱することなく、S106に進む。上記基準値は、溶融はんだ液滴1の温度又は材質に応じて設定される。電子部品の生産所要時間に対して、フラックス2の活性時間(酸化膜除去時間)が長い場合、予備加熱を行うことにより、該活性時間の短縮等を実現できる。
【0049】
その後、溶融はんだ吐出装置10から溶融はんだ液滴1を吐出して、上記S100でフラックス2が供給された傾斜ガイド21の案内溝24に、該溶融はんだ液滴1を滴下する(ステップS106)。すると、溶融はんだ液滴1は、フラックス2が供給された傾斜ガイド21の案内溝24上を滑落しながら、フラックス2を帯びる(ステップS108)。この結果、図1及び図2に示したように、溶融はんだ液滴1の表面全体に、フラックス2が膜状に付着する。
【0050】
さらに、上記フラックス2が付着した溶融はんだ液滴1は、傾斜ガイド21の下端から飛び出して、曲線状の軌跡で飛翔し、接合対象物3の目標位置に衝突する(ステップS110)。このように、傾斜ガイド21は、接合対象物3の目標位置に溶融はんだ液滴1が衝突するように、滑落する溶融はんだ液滴1を案内する。この結果、該溶融はんだ液滴1に付着したフラックス2により、接合対象物3と溶融はんだ液滴1の酸化膜を除去しつつ、該溶融はんだ液滴1と接合対象物3とが接合して、はんだ接合が完了する(ステップS112)。
【0051】
以上のように、本実施形態に係るフラックス供給方法によれば、溶融はんだ吐出装置10から吐出された溶融はんだ液滴1は、接合対象物3に到着するまでの間に、フラックス2が供給された傾斜ガイド21上を滑落する。これにより、溶融はんだ液滴1の表面に対して、はんだ接合に必要十分な微細量のフラックス2を付着させることができ、フラックス2の供給量を厳密に制御できる。従って、該フラックス2が付着した溶融はんだ液滴1は、接合対象物3と好適に接合できるとともに、接合後にフラックス2の残渣はほとんどない。よって、はんだ接合工程後に、はんだ接合部を洗浄する必要がなく、リフロー工程や洗浄工程を省略できる。
【0052】
[3.第2の実施形態]
次に、本発明の第2の実施形態に係る通過型のフラックス供給方法及び装置について説明する。
【0053】
[3.1.フラックス供給装置]
まず、図4〜図6を参照して、第2の実施形態に係る通過型のフラックス供給装置30の構成について説明する。図4は、本実施形態に係る通過型のフラックス供給装置30の全体構成を示す縦断面図である。図5、図6はそれぞれ、本実施形態に係る通過型のフラックス供給装置30のフラックス保持体31を示す上面図、側面図である。
【0054】
図4〜図6に示すように、通過型のフラックス供給装置30は、円盤状のフラックス保持体31と、フラックス供給ローラ32と、フラックス保持体31に形成されたスリット33と、を備える。該フラックス供給装置30は、フラックス供給ローラ32によりフラックス保持体31上にフラックス2を供給して、スリット33内にフラックス薄膜34を形成する。これにより、溶融はんだ吐出装置10から接合対象物3に向けて滴下された溶融はんだ液滴1が、スリット33内に形成されたフラックス薄膜34を通過するときに、該溶融はんだ液滴1の表面にフラックス2が付着し、該フラックス2が付着した溶融はんだ液滴1が接合対象物3に滴下される。
【0055】
フラックス保持体31は、溶融はんだ液滴1の表面にフラックス2を付着させるフラックス付着部の一例である。図示のように、フラックス保持体31は、例えば、水平配置される円盤状の回転テーブルで構成され、フラックス供給ローラ32により供給されたフラックス2を保持する機能を有する。該円盤状のフラックス保持体31は、溶融はんだ吐出装置10と接合対象物3との間に配置され、溶融はんだ吐出装置10から滴下された溶融はんだ液滴1が接合対象物3に到着する前に、溶融はんだ液滴1の表面にフラックス2を付着させる。
【0056】
上記フラックス保持体31には、溶融はんだ吐出装置10から滴下された溶融はんだ液滴1を通過させるための開口として、環状のスリット33が鉛直方向に貫通形成されている。該環状のスリット33は、上記円盤状のフラックス保持体31と同心円状に形成され、溶融はんだ吐出装置10の直下に配置される。スリット33の幅は、溶融はんだ液滴1が通過可能で、かつ、スリット33内にフラックス薄膜34を形成可能な幅に調整される。例えば、溶融はんだ液滴1の径が0.3mmである場合、スリット33の幅は1mm程度とすればよい。
【0057】
フラックス供給ローラ32は、フラックス供給部の一例であり、フラックス付着部であるフラックス保持体31上にフラックス2を供給する機能を有する。図示のように、フラックス供給ローラ32は、例えば、フラックス2を含浸可能な材質(例えばスポンジ)で形成された円錐台状のローラで構成され、該フラックス供給ローラ32の外周は、フラックス保持体31の上面に接触している。そして、円盤状のフラックス保持体31が回転軸35を中心に回転すると、フラックス供給ローラ32も、フラックス保持体31の回転に追従して回転軸36を中心に回転する。
【0058】
上記フラックス供給ローラ32に不図示のディスペンサ等からフラックス2を供給しつつ、円盤状のフラックス保持体31を一定の速度で回転させる。これにより、フラックス保持体31の上面にフラックス2が均等かつ連続的に塗布され、フラックス保持体31上にフラックス2の薄膜が形成される。なお、フラックス2を溶融はんだ液滴1に安定して供給するため、溶融はんだ液滴1の吐出中には常時、フラックス保持体31を回転させ、フラックス供給ローラ32によりフラックス保持体31上にフラックス2を供給し続ける。
【0059】
上記フラックス供給ローラ32によりフラックス保持体31上にフラックス2が供給されると、図4に示すように、該フラックス2はスリット33内に入り込み、該フラックス2の表面張力によりスリット33内にフラックス薄膜34が形成される。かかる状態で、溶融はんだ吐出装置10から接合対象物3に向けて溶融はんだ液滴1を吐出すると、該溶融はんだ液滴1は、スリット33内に形成されたフラックス薄膜34を通過する。このとき、フラックス薄膜34の表面張力により、該溶融はんだ液滴1の表面全体にフラックス2が付着し、該フラックス2が付着した溶融はんだ液滴1が接合対象物3に落下する。このように本実施形態では、フラックス薄膜34を通過させることで、溶融はんだ液滴1の表面にフラックス2を供給する。
【0060】
なお、フラックス保持体31の厚み(即ち、スリット33の深さ)を変化させることにより、スリット33内のフラックス薄膜34の厚みも変化する。これにより、溶融はんだ液滴1に対するフラックス2の付着量を調整することができる。また、接合対象物3と溶融はんだ液滴1の接合性を高めるため、接合対象物3を例えば200℃程度で予備加熱しておいてもよい。
【0061】
また、上記の例では、溶融はんだ液滴1を通過させるための開口として、フラックス保持体31に環状のスリット33を設けたが、かかる例に限定されない。溶融はんだ液滴1が通過可能で、かつ、フラックス膜を形成可能な開口であれば、例えば、直線状のスリット、1又は2以上の貫通孔等であってもよい。また、フラックス保持体31は、円盤状の回転テーブルでなくても、フラックス2を保持可能な部材であれば、任意の形状であってよい。
【0062】
[3.2.フラックス供給方法]
次に、図7を参照して、上記通過型のフラックス供給装置30を用いたフラックス供給方法と、該方法を利用した溶融はんだ吐出接合法について説明する。図7は、本実施形態に係るフラックス供給方法を利用した溶融はんだ吐出接合法を示すフローチャートである。
【0063】
図7に示すように、まず、フラックス供給ローラ32によりフラックス保持体31上にフラックス2を供給する(ステップS200)。具体的には、フラックス供給ローラ32にフラックス2を供給しながら、円盤状のフラックス保持体31を回転させる。これにより、フラックス保持体31上にフラックス2が塗布され、適当な厚さのフラックス膜が形成される。次いで、さらにフラックス保持体31を回転させることで、フラックス保持体31のスリット33内にフラックス2が浸透し、スリット33内にフラックス薄膜34(図4参照。)が形成される(ステップS202)。かかるフラックス2の供給及びフラックス薄膜34の形成は、S214のはんだ接合が終了するまで継続して行われる。
【0064】
次いで、接合対象物3の熱容量が上記基準値以上である場合には(ステップS204)、不図示の加熱装置により、接合対象物3を例えば200℃程度に予備加熱する(ステップS206)。かかる予備加熱により、はんだ接合工程S212における接合対象物3と溶融はんだ液滴1の接合性が向上する。一方、接合対象物3の熱容量が上記基準値未満である場合には(ステップS204)、予備加熱することなく、S208に進む。
【0065】
その後、溶融はんだ吐出装置10から溶融はんだ液滴1を吐出して、上記S202でフラックス薄膜34が形成されたフラックス保持体31のスリット33に、該溶融はんだ液滴1を滴下する(ステップS208)。すると、溶融はんだ液滴1は、スリット33内のフラックス薄膜34を通過する際に、フラックス2を帯びる(ステップS210)。この結果、図4に示したように、溶融はんだ液滴1の表面全体に、フラックス2が膜状に付着する。
【0066】
さらに、上記フラックス2が付着した溶融はんだ液滴1は、スリット33の位置から接合対象物3に向けて落下して、接合対象物3の目標位置に衝突する(ステップS212)。この結果、該溶融はんだ液滴1に付着したフラックス2により、接合対象物3と溶融はんだ液滴1の酸化膜を除去しつつ、該溶融はんだ液滴1と接合対象物3とが接合して、はんだ接合が完了する(ステップS214)。
【0067】
以上のように、本実施形態に係るフラックス供給方法によれば、溶融はんだ吐出装置10から吐出された溶融はんだ液滴1は、接合対象物3に到着するまでの間に、フラックス薄膜34が形成された開口(スリット33)を通過する。これにより、溶融はんだ液滴1の表面に対して、はんだ接合に必要十分な微細量のフラックス2を付着させることができ、フラックス2の供給量を厳密に制御できる。従って、該フラックス2が付着した溶融はんだ液滴1は、接合対象物3と好適に接合できるとともに、接合後にフラックス2の残渣はほとんどない。よって、はんだ接合工程後に、はんだ接合部を洗浄する必要がなく、リフロー工程や洗浄工程を省略できる。
【0068】
[4.第3の実施形態]
次に、本発明の第3の実施形態に係る反射型のフラックス供給方法及び装置について説明する。
【0069】
[4.1.フラックス供給装置]
まず、図8〜図10を参照して、第3の実施形態に係る反射型のフラックス供給装置40の構成について説明する。図8は、本実施形態に係る反射型のフラックス供給装置40の全体構成を示す縦断面図である。図9、図10はそれぞれ、本実施形態に係る反射型のフラックス供給装置40の反射台41を示す上面図、側面図である。
【0070】
図8〜図10に示すように、反射型のフラックス供給装置40は、円盤状の反射台41と、フラックス供給ローラ42と、反射台41に形成されたスリット33と、を備える。該フラックス供給装置40は、フラックス供給ローラ42により反射台41上にフラックス2を供給しながら、溶融はんだ吐出装置10から滴下された溶融はんだ液滴1を、フラックス2が供給された反射台41で反射させる。これにより、溶融はんだ液滴1の表面にフラックス2を付着させるとともに、フラックス2が付着した溶融はんだ液滴1を接合対象物3に案内する。
【0071】
反射台41は、溶融はんだ液滴1の表面にフラックス2を付着させるフラックス付着部の一例である。図示のように、反射台41は、例えば、水平配置される円盤状の回転テーブルで構成され、フラックス供給ローラ42により供給されたフラックス2を保持する機能を有する。該反射台41は、溶融はんだ吐出装置10の下方に傾斜配置される。この反射台41の上面は、溶融はんだ吐出装置10から滴下された溶融はんだ液滴1を反射させるための反射面43であり、該反射面43は、溶融はんだ液滴1を接合対象物3に向けて反射させるために、水平面に対して適切な角度だけ傾斜している。反射台41は、フラックス2が供給された反射面43上で溶融はんだ液滴1を反射させることで、溶融はんだ吐出装置10から滴下された溶融はんだ液滴1が接合対象物3に到着する前に、溶融はんだ液滴1の表面にフラックス2を付着させる。
【0072】
フラックス供給ローラ42は、フラックス供給部の一例であり、フラックス付着部である反射台41上にフラックス2を供給する機能を有する。図示のように、フラックス供給ローラ42は、例えば、フラックス2を含浸可能な材質(例えばスポンジ)で形成された円錐台状のローラで構成され、該フラックス供給ローラ42の外周は、反射台41の上面に接触している。そして、円盤状の反射台41が回転軸44を中心に回転すると、フラックス供給ローラ42も、反射台41の回転に追従して回転軸45を中心に回転する。
【0073】
上記フラックス供給ローラ42に不図示のディスペンサ等からフラックス2を供給しつつ、円盤状の反射台41を一定の速度で回転させる。これにより、反射台41の上面にフラックス2が均等かつ連続的に塗布され、反射台41上にフラックス2の薄膜が形成される。なお、フラックス2を溶融はんだ液滴1に安定して供給するため、溶融はんだ液滴1の吐出中には常時、反射台41を回転させ、フラックス供給ローラ42により反射台41上にフラックス2を供給し続ける。
【0074】
上記のようにして反射台41上にフラックス2の薄膜が形成された状態で、溶融はんだ吐出装置10から反射台41上を滴下すると、該溶融はんだ液滴1は、反射台41上で反射して、その進行方向が変わる。このよう溶融はんだ液滴1が反射する際に、反射台41上のフラックス2が該溶融はんだ液滴1の表面全体に付着する。そして、該フラックス2が付着した溶融はんだ液滴1は、接合対象物3に向けて飛翔して、接合対象物3に落下する。このように本実施形態では、フラックス2の薄膜が形成された反射台41上で溶融はんだ液滴1を反射させることで、溶融はんだ液滴1の表面にフラックス2を供給する。
【0075】
なお、反射台41上で常に同じ条件(フラックス膜厚)で溶融はんだ液滴1を反射させるためには、円盤状の反射台41は常に一定の速度で回転することが好ましい。また、反射台41又はフラックス供給ローラ42の回転速度を制御することにより、溶融はんだ液滴1に対するフラックス2の付着量を調整することができる。フラックス供給ローラ42の回転速度が速いほど、フラックス供給ローラ42から反射台41に対するフラックス2の供給量が少なくなるので、溶融はんだ液滴1に対するフラックス2の供給量も少なくなる。一方、フラックス供給ローラ42の回転速度が遅いほど、フラックス供給ローラ42から反射台41に対するフラックス2の供給量が多くなるので、溶融はんだ液滴1に対するフラックス2の供給量も多くなる。
【0076】
また、反射した溶融はんだ液滴1が着地する接合対象物3の位置や、反射角度を調整可能とするため、反射台41の反射面43の傾斜角度θを調整するための角度調整機構(図示せず。)を設けてもよい。これにより、反射台41で反射した溶融はんだ液滴1を、接合対象物3の所望の位置に案内することができるので、接合対象物3の種類や目標位置の変化に柔軟に対応可能となる。また、接合対象物3と溶融はんだ液滴1の接合性を高めるため、接合対象物3と反射台41を例えば200℃程度で予備加熱しておいてもよい。
【0077】
なお、反射台41の構造は、図8に示す円盤状の回転テーブルの例に限定されず、溶融はんだ液滴1が反射することが可能な反射面43を有する構造であれば、適宜設計変更可能である。また、反射台41にフラックス2を供給する方法としては、上記回転機構及びフラックス供給ローラ42の例に限定されない。例えば、ディスペンサ等のフラックス吐出装置から反射台41の上部側に一定量のフラックス2を供給し、フラックス2が反射面43上を流下するようにしてもよい。
【0078】
[4.2.フラックス供給方法]
次に、図11を参照して、上記反射型のフラックス供給装置40を用いたフラックス供給方法と、該方法を利用した溶融はんだ吐出接合法について説明する。図11は、本実施形態に係るフラックス供給方法を利用した溶融はんだ吐出接合法を示すフローチャートである。
【0079】
図11に示すように、まず、フラックス供給ローラ42により反射台41上にフラックス2を供給する(ステップS300)。具体的には、フラックス供給ローラ42にフラックス2を供給しながら、円盤状の反射台41を回転させる。これにより、反射台41上にフラックス2が塗布され、適当な厚さのフラックス膜が形成される。なお、かかるフラックス2の供給は、S314のはんだ接合が終了するまで継続して行われる。
【0080】
次いで、角度調整機構により反射台41の反射面43の傾斜角度を適当な角度に調整することで、反射台41上における溶融はんだ液滴1の反射方向を調整する(ステップS302)。かかる角度調整により、反射台41上で反射した溶融はんだ液滴1を、接合対象物3の目標位置に案内できるようになる。
【0081】
次いで、接合対象物3の熱容量が上記基準値以上である場合には(ステップS304)、不図示の加熱装置により、接合対象物3を例えば200℃程度に予備加熱する(ステップS306)。かかる予備加熱により、はんだ接合工程S312における接合対象物3と溶融はんだ液滴1の接合性が向上する。一方、接合対象物3の熱容量が上記基準値未満である場合には(ステップS304)、予備加熱することなく、S308に進む。
【0082】
その後、溶融はんだ吐出装置10から溶融はんだ液滴1を吐出して、上記S302でフラックス2の薄膜が形成された反射台41に、該溶融はんだ液滴1を滴下する(ステップS308)。すると、溶融はんだ液滴1は、反射台41の反射面43で反射するときに、反射台41上に形成されたフラックス2の薄膜に接触してフラックス2を帯びる(ステップS310)。この結果、図8に示したように、溶融はんだ液滴1の表面全体に、フラックス2が膜状に付着する。
【0083】
さらに、上記フラックス2が付着した溶融はんだ液滴1は、反射台41から接合対象物3に向けて曲線状の軌跡で飛翔して、接合対象物3の目標位置に衝突する(ステップS312)。この結果、該溶融はんだ液滴1に付着したフラックス2により、接合対象物3と溶融はんだ液滴1の酸化膜を除去しつつ、該溶融はんだ液滴1と接合対象物3とが接合して、はんだ接合が完了する(ステップS314)。
【0084】
以上のように、本実施形態に係るフラックス供給方法によれば、溶融はんだ吐出装置10から吐出された溶融はんだ液滴1は、接合対象物3に到着するまでの間に、反射面43上にフラックス2の薄膜が形成された反射台41で反射する。これにより、溶融はんだ液滴1の表面に対して、はんだ接合に必要十分な微細量のフラックス2を付着させることができ、フラックス2の供給量を厳密に制御できる。従って、該フラックス2が付着した溶融はんだ液滴1は、接合対象物3と好適に接合できるとともに、接合後にフラックス2の残渣はほとんどない。よって、はんだ接合工程後に、はんだ接合部を洗浄する必要がなく、リフロー工程や洗浄工程を省略できる。
[5.まとめ]
【0085】
以上、第1〜第3の実施形態に係るフラックス調整方法及び装置について説明した。従来のフラックス供給方法(印刷法やディスペンス法など)では、フラックスの供給量を微量かつ高精度に制御できないので、フラックスが供給過多になっていた。このため、はんだ接合後に、はんだ接合部周辺に残存しているフラックを洗浄する工程が必要であった。
【0086】
これに対し、本実施形態によれば、溶融はんだ吐出装置10から溶融はんだ液滴1を吐出してから、該溶融はんだ液滴1が接合対象物3に到着するまでの間に、該溶融はんだ液滴1にフラックス2を供給する。つまり、溶融はんだ吐出装置10から吐出された溶融はんだ液滴1が接合対象物3に到着する途中で、該溶融はんだ液滴1の表面にフラックス2を付着させる。これにより、はんだ接合部に対するフラックス2の供給量を微量かつ高精度に制御できるので、必要最小限のフラックス供給ではんだ接合が可能となる。その結果、フラックス洗浄工程を省略することができ、製造コストを抑えることができる。
【0087】
また、従来の溶融はんだ吐出接合法においては、溶融はんだ液滴を吐出する前に予め接合対象物にフラックス供給を行う必要があった。また、従来のフラックス供給方法である印刷法では、周辺に凹凸がある接合対象物の領域に対しては、フラックス供給が困難であった。また、ディスペンス法では、微量かつ高精度な供給は困難であった。しかし、本実施形態によれば、接合対象物3に対してはフラックス2を供給する必要が無くなり、印刷法やディスペンス法では不可能であった接合対象物3の領域にも、溶融はんだ吐出接合法を適用可能となる。
【0088】
さらに、フラックス2の供給量を厳密に制御できるので、安定したはんだ接合やバンプ形成を、安価かつ簡易的に実現できる。また、フラックス洗浄工程のみならず、リフロー工程も省略することができるとともに、フラックス供給方法を簡易化できる。
【0089】
加えて、従来の他のフラックス供給方法では、溶融はんだ吐出装置のノズル開口部でフラックスを供給しているが。この方法では、フラックスとともにノズル周辺の汚れ(酸化物等)が溶融はんだ液滴に付着してしまう。これに対して、本実施形態では、溶融はんだ吐出装置のノズルから離れた位置で、フラックス2を供給するので、ノズル周辺の汚れが溶融はんだ液滴に付着することがない。
【0090】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0091】
1 溶融はんだ液滴
2 フラックス
3 接合対象物
10 溶融はんだ吐出装置
20 滑落型のフラックス供給装置
21 傾斜ガイド
22 フラックス吐出装置
23 廃フラックス受け槽
24 案内溝
25 フラックス排出口
30 通過型のフラックス供給装置
31 フラックス保持体
32 フラックス供給ローラ
33 スリット
34 フラックス薄膜
35、36 回転軸
40 反射型のフラックス供給装置
41 反射台
42 フラックス供給ローラ
43 反射面
44、45 回転軸



【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶融はんだ吐出装置から溶融はんだ液滴を吐出する工程と、
前記吐出された溶融はんだ液滴が接合対象物に到着する前に、当該溶融はんだ液滴の表面にフラックスを付着させる工程と、
を含む、フラックス供給方法。
【請求項2】
前記溶融はんだ吐出装置の下方に配置された傾斜ガイド上に前記フラックスを供給する工程をさらに含み、
前記フラックスを付着させる工程では、前記溶融はんだ吐出装置から前記傾斜ガイド上に滴下された前記溶融はんだ液滴を、前記フラックスが供給された前記傾斜ガイド上で滑落させることにより、前記溶融はんだ液滴の表面に前記フラックスを付着させるとともに、前記フラックスが付着した前記溶融はんだ液滴を前記接合対象物に案内する、請求項1に記載のフラックス供給方法。
【請求項3】
前記溶融はんだ吐出装置の下方に配置されたフラックス保持体に前記フラックスを供給して、前記フラックス保持体に設けられた開口にフラックス膜を形成する工程をさらに含み、
前記フラックスを付着させる工程では、前記溶融はんだ吐出装置から前記開口に向けて滴下された前記溶融はんだ液滴が、前記開口に形成された前記フラックス膜を通過することにより、前記溶融はんだ液滴の表面に前記フラックスを付着させ、前記フラックスが付着した前記溶融はんだ液滴を前記接合対象物に滴下する、請求項1に記載のフラックス供給方法。
【請求項4】
前記溶融はんだ吐出装置の下方に傾斜配置された反射台上に前記フラックスを供給する工程をさらに含み、
前記フラックスを付着させる工程では、前記溶融はんだ吐出装置から前記反射台上に滴下された前記溶融はんだ液滴を、前記フラックスが供給された前記反射台で反射させることにより、前記溶融はんだ液滴の表面に前記フラックスを付着させるとともに、前記フラックスが付着した前記溶融はんだ液滴を前記接合対象物に案内する、請求項1に記載のフラックス供給方法。
【請求項5】
溶融はんだ吐出装置と接合対象物との間に配置され、前記溶融はんだ吐出装置から吐出された溶融はんだ液滴が前記接合対象物に到着する前に、前記溶融はんだ液滴の表面にフラックスを付着させるフラックス付着部と、
前記フラックス付着部に前記フラックスを供給するフラックス供給部と、
を備える、フラックス供給装置。
【請求項6】
前記フラックス付着部は、前記溶融はんだ吐出装置の下方に配置された傾斜ガイドを備え、
前記フラックス供給部により前記傾斜ガイド上に前記フラックスを供給し、前記溶融はんだ吐出装置から前記傾斜ガイド上に滴下された前記溶融はんだ液滴を、前記フラックスが供給された前記傾斜ガイド上で滑落させることにより、前記溶融はんだ液滴の表面に前記フラックスを付着させるとともに、前記フラックスが付着した前記溶融はんだ液滴を前記接合対象物に案内する、請求項5に記載のフラックス供給装置。
【請求項7】
前記傾斜ガイドには、前記溶融はんだ液滴の滑落経路に沿って案内溝が形成されており、
前記フラックス供給装置により前記傾斜ガイドの前記案内溝に前記フラックスを供給しながら、前記フラックスが供給された前記案内溝内で前記溶融はんだ液滴を滑落させる、請求項6に記載のフラックス供給装置。
【請求項8】
前記フラックス付着部は、前記溶融はんだ吐出装置の下方に配置されたフラックス保持体を備え、
前記フラックス保持体には、前記溶融はんだ吐出装置から滴下された前記溶融はんだ液滴を通過させるための開口が設けられており、
前記フラックス供給部により前記フラックス保持体上に前記フラックスを供給して、前記開口にフラックス膜を形成し、前記溶融はんだ吐出装置から前記開口に向けて滴下された前記溶融はんだ液滴が、前記開口に形成された前記フラックス膜を通過することにより、前記溶融はんだ液滴の表面に前記フラックスを付着させ、前記フラックスが付着した前記溶融はんだ液滴を前記接合対象物に滴下する、請求項5に記載のフラックス供給装置。
【請求項9】
前記フラックス保持体は、回転テーブルであり、
前記開口は、前記回転テーブルに形成された環状のスリットであり、
前記回転テーブルを回転させながら、前記フラックス供給部により前記回転テーブル上に前記フラックスを供給して、前記スリットにフラックス膜を形成し、前記溶融はんだ吐出装置から前記スリットに向けて滴下された前記溶融はんだ液滴が、前記スリットに形成された前記フラックス膜を通過することにより、前記溶融はんだ液滴の表面に前記フラックスを付着させる、請求項8に記載のフラックス供給装置。
【請求項10】
前記フラックス付着部は、前記溶融はんだ吐出装置の下方に傾斜配置された反射台を備え、
前記フラックス供給部により前記反射台上に前記フラックスを供給し、前記溶融はんだ吐出装置から前記反射台上に滴下された前記溶融はんだ液滴を、前記フラックスが供給された前記反射台で反射させることにより、前記溶融はんだ液滴の表面に前記フラックスを付着させるとともに、前記フラックスが付着した前記溶融はんだ液滴を前記接合対象物に案内する、請求項5に記載のフラックス供給装置。
【請求項11】
前記フラックス付着部は、前記反射台の傾斜角度を調整する角度調整機構をさらに備える、請求項10に記載のフラックス供給装置。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−251296(P2011−251296A)
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−125024(P2010−125024)
【出願日】平成22年5月31日(2010.5.31)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】