説明

フラックス塗布装置およびフラックス塗布方法

【課題】スキージを容易に取付けて、均一にフラックスを塗布する。
【解決手段】スキージ(ベース部14、スキージ本体16)を有するスキージユニット10と、マスクが押し当てられた塗布対象基板およびユニット10の少なくとも一方を他方に接近させる第1方向に移動させて先端部16xをマスクに押し当てた状態で塗布対象基板およびユニット10の少なくとも一方を他方に対して塗布面に沿った第2方向に移動させてフラックスを塗り拡げさせる移動機構とを備え、ユニット10は、ベース部11a,11bと、ベース部11aに対するベース部11bの第1方向に沿った相対的な移動を許容しつつベース部11a,11bを相互に連結する直動案内機構12と、ベース部11a,11bを相互に離間させる方向に付勢するスプリング13とを備え、軸長が第2方向に沿うように配設された回動軸15を介してスキージがベース部11bに取り付けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗布面にマスクを押し当てた塗布対象基板に対してスキージを用いてフラックスを塗り拡げて塗布するフラックス塗布装置およびフラックス塗布方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種のフラックス塗布装置として、電子部品を半田付けする基板にフラックスを塗布するフラックスの塗布装置(以下、単に「塗布装置」ともいう)が特開平8−250853号公報に開示されている。この塗布装置は、フラックスを塗布する基板(以下、「塗布対象基板」ともいう)を載置可能な昇降テーブルと、塗布対象基板におけるフラックスの塗布領域(半田プリコート部)に対応してパターン孔が設けられたスクリーンマスク(以下、単に「マスク」ともいう)と、一対のスキージとを備えて構成されている。この場合、両スキージは、上記のマスクと平行に配設されたボールねじに対して螺合させられたホルダによって保持されて(ホルダにそれぞれ固定されて)、その先端部がマスクの表面にそれぞれ当接させられている。
【0003】
この塗布装置によるフラックスの塗布処理に際しては、まず、昇降テーブルを上昇させて塗布対象基板におけるフラックスの塗布面をマスクの裏面に押し付ける。次いで、両スキージの間にフラックスを供給すると共に、ボールねじを回転させる。この際には、ボールねじの回転に伴ってホルダが移動し、これにより、ホルダに固定されている両スキージがマスクの表面に沿って移動してフラックスを塗り拡げる。これにより、パターン孔を介して塗布対象基板の塗布領域にフラックスが塗布される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−250853号公報(第2−3頁、第1図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、従来の塗布装置には、以下の問題点が存在する。すなわち、従来の塗布装置では、ホルダに固定された一対のスキージによってフラックスを塗り拡げる構成が採用されている。この場合、ボールねじの回転によってホルダを移動させることでスキージを移動させるタイプの移動機構では、一般的に、ホルダがボールねじと共に回転することのないように、ガイドレール(直動案内具)によって保持されて、ボールねじの長手方向にホルダ(スキージ)が直動させられる構成が採用されている。これにより、従来の塗布装置では、ホルダに固定された両スキージが、ホルダの移動に伴ってマスクの表面に沿って直動させられて(平行移動させられて)、フラックスを塗り拡げることが可能となっている。
【0006】
しかしながら、例えば、ボールねじの軸芯を中心として回動するようにして傾きが生じた状態でスキージがホルダに取り付けられた状態では、フラックスの塗布処理に際して、傾きが生じたままスキージが直動させられる(平行移動させられる)ため、このような取付け状態では、スキージの幅方向においてフラックスの塗布むらが生じるおそれがある。このため、ホルダに対するスキージの取付け作業時には、スキージの先端部における幅方向の各部をマスクの表面に対して均一に押し付けることができるように(傾きが生じることのないように)ホルダに対するスキージの固定姿勢を調整する必要がある。したがって、従来の塗布装置では、ホルダに対するスキージの取付け作業が非常に煩雑となっているという問題点がある。この場合、従来の塗布装置のように2枚のスキージを備えているときには、両スキージの先端部が互いに平行となるように調整する必要が生じることから、取付け作業が一層煩雑となっている。
【0007】
また、従来の塗布装置では、両スキージの先端部をマスクの表面に接触させた状態において、このマスクの裏面側に昇降テーブルによって塗布対象基板の塗布面を押し付ける構成が採用されている。この場合、従来の塗布装置では、マスクとボールねじとの相対的な位置が変わることのないように双方の位置関係が固定され、これにより、ボールねじに螺合させられたホルダに固定されているスキージの先端部をマスクの表面に対して接触させた状態を維持することができるように構成されている。しかしながら、従来の塗布装置では、複数枚の塗布対象基板に対するフラックスの塗布を行うことでスキージの先端部が摩耗したときに、マスクの表面に対してスキージの先端部を十分な接触圧で接触させるのが困難な状態となることがある。このような状態においては、マスクの表面に沿ってフラックスを確実に塗り拡げるのが困難となり、フラックスの塗布むらが生じるおそれがある。同様にして、昇降テーブルによって上昇させられた塗布対象基板の塗布面に傾きが生じている状態においてもフラックスの塗布むらが生じるおそれがある。
【0008】
本発明は、かかる問題点に鑑みてなされたものであり、スキージを容易に取付け可能とし、かつ、塗布面の全域に対して均一にフラックスを塗布し得るフラックス塗布装置およびフラックス塗布方法を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成すべく請求項1記載のフラックス塗布装置は、供給されたフラックスを塗布対象基板の塗布面に塗り拡げるスキージを有するスキージユニットと、前記塗布面における前記フラックスの塗布領域を露出させる開口部が設けられたマスクが当該塗布面に押し当てられた前記塗布対象基板および前記スキージユニットの少なくとも一方を他方に対して接近させる第1方向に移動させて前記スキージの平面視直線状の先端部を当該マスクの表面に押し当てた状態において当該塗布対象基板および当該スキージユニットの少なくとも一方を他方に対して前記塗布面に沿った第2方向に移動させて前記塗布領域に前記フラックスを塗り拡げさせる移動機構とを備え、前記スキージユニットが、第1ベース部および第2ベース部と、前記第1ベース部に対する前記第2ベース部の前記第1方向に沿った相対的な移動を許容しつつ当該第1ベース部および当該第2ベース部を相互に連結する連結機構と、前記第1ベース部および前記第2ベース部を相互に離間させる方向に付勢する付勢部材とを備えると共に、軸長が前記第2方向に沿うように配設された回動軸を介して前記スキージが前記第2ベース部に取り付けられて構成されている。
【0010】
また、請求項2記載のフラックス塗布装置は、請求項1記載のフラックス塗布装置において、前記スキージが、スキージ本体と、前記回動軸を介して前記第2ベース部に取り付けられると共に前記スキージ本体を取り外し可能に構成された第3ベース部とを備えて構成されている。
【0011】
さらに、請求項3記載のフラックス塗布方法は、請求項1または2記載のフラックス塗布装置を使用して前記塗布対象基板の前記塗布領域に前記フラックスを塗布する。
【発明の効果】
【0012】
請求項1記載のフラックス塗布装置、および請求項3記載のフラックス塗布方法では、第1ベース部および第2ベース部と、第1ベース部に対する第2ベース部の第1方向に沿った相対的な移動を許容しつつ第1ベース部および第2ベース部を相互に連結する連結機構と、第1ベース部および第2ベース部を相互に離間させる方向に付勢する付勢部材とを備えると共に、軸長が第2方向に沿うように配設された回動軸を介して第2ベース部にスキージを取り付けたスキージユニットを使用して塗布対象基板の塗布面にフラックスを塗り拡げる。
【0013】
したがって、請求項1記載のフラックス塗布装置、および請求項3記載のフラックス塗布方法によれば、スキージが傾いた状態で取り付けられているとき、フラックスの塗布に際してスキージを押し付けるマスクや塗布対象基板に傾きが生じているとき、および研磨によってスキージの先端部が斜め状態となっているときのいずれの場合においても、移動機構によってスキージユニットおよび塗布対象基板の少なくとも一方を移動させてスキージ本体の先端部をマスクの表面に当接させたときに、スキージが回動軸を中心として第2ベース部に対して回動する結果、スキージにおける先端部の幅方向の全体をマスクに当接させることができる。また、移動機構によってスキージユニットおよび塗布対象基板の少なくとも一方をさらに移動させることで付勢部材が第1ベース部に対して第2ベース部(スキージ)を離間方向に押圧する結果、第2ベース部に取り付けられているスキージの先端部を十分な押圧力でマスクの表面に押し当てることができる。これにより、このフラックス塗布装置、およびフラックス塗布方法によれば、スキージに傾きが生じないように移動機構等に対するスキージユニットの固定位置を微調整する煩雑な作業が不要となる結果、移動機構等に対してスキージユニットを容易に取り付けることができるだけでなく、上記の各種の状態において、先端部における幅方向の全体をマスクの表面に対して均一な押圧力で押し付けた状態においてフラックスを塗り拡げることができるため、塗布むらを生じさせることなく、塗布対象基板の塗布領域にフラックスを均一に塗布することができる。
【0014】
また、請求項2記載のフラックス塗布装置によれば、スキージ本体と、回動軸を介して第2ベース部に取り付けられると共にスキージ本体を取り外し可能に構成された第3ベース部とを備えてスキージを構成したことにより、スキージ本体の研磨作業時にスキージユニットの全体を取り外すことなく、スキージ本体だけを第3ベース部から取り外して作業することができる。また、複数回の研磨によってスキージ本体が短くなったときには、スキージ本体だけを新たな部品に交換することで、第1ベース部、第2ベース部および第3ベース部等を継続して使用することができるため、フラックス塗布装置のランニングコストを十分に低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】フラックス塗布装置1の構成を示す構成図である。
【図2】スキージユニット10(10a,10b)の正面図である。
【図3】取付部4aに取り付けられた状態のスキージユニット10(10a,10b)の断面図である。
【図4】スキージユニット10(10a,10b)の構成について説明するための説明図である。
【図5】塗布対象基板P、メタルマスク20および塗布ユニット2(スキージユニット10a,10b)を上側から見た平面図である。
【図6】スキージユニット10a,10bをメタルマスク20に接触させた状態の断面図である。
【図7】スキージユニット10a,10bを移動させてフラックスFを塗布している状態の断面図である。
【図8】塗布対象基板Pの塗布領域Paに対するフラックスFの塗布が完了した状態の断面図である。
【図9】先端部16xに欠けや摩耗が生じた状態のスキージ本体16の正面図である。
【図10】先端部16xの研磨が完了した状態のスキージ本体16の正面図である。
【図11】先端部16xの研磨が完了したスキージ本体16を取り付けた状態のスキージユニット10(10a,10b)の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、フラックス塗布装置およびフラックス塗布方法の実施の形態について、添付図面を参照して説明する。
【0017】
図1に示すフラックス塗布装置1は、マスクおよびスキージを使用したフラックス塗布方法に従って塗布対象基板Pにフラックスを塗布可能に構成された塗布装置であって、塗布ユニット2、フラックス供給部3、移動機構4、基板搬送機構5および制御部6を備えている。この場合、塗布対象基板Pは、基板本体の一面(フラックスの塗布面)に複数の凹部が形成されると共に、各凹部の底部にパッドが設けられてバンプ形成部が構成されている(図示せず)。
【0018】
また、この塗布対象基板Pにフラックスを塗布するためのメタルマスク20(マスクの一例)は、複数のバンプ形成部を含む広い領域を塗布領域Pa(図5参照)として規定すると共に、フラックスを塗布する領域を制限して塗布領域Paだけにフラックスを塗布するように構成されている。具体的には、図5〜8に示すように、このメタルマスク20は、例えばステンレススチール等の金属材料で薄板状に形成されると共に、後述するように塗布対象基板Pの表面(塗布面)に押し当てられた状態においてフラックスFを塗布すべき塗布領域Pa(すなわち、上記の各バンプ形成部が形成されている領域)を露出させるように平面視矩形状の開口部20aが形成されている。また、メタルマスク20は、その厚みが塗布領域Paに塗布すべきフラックスFの塗布厚(塗布すべきフラックスFの量)に応じて規定されている。なお、フラックスFの塗布処理時に使用するマスクは、上記のメタルマスク20に限定されず、樹脂マスク(樹脂製のマスク)を使用することもできる。
【0019】
一方、図1に示すように、塗布ユニット2は、一例として、一対のスキージユニット10a,10bと、フラックス供給部3から供給されたフラックスFを吐出するためのノズル3aとを備えている。スキージユニット10a,10b(以下、区別しないときには「スキージユニット10」ともいう)は、フラックス供給部3から供給されてノズル3aから吐出されたフラックスFを塗布対象基板Pの塗布領域Paに塗り拡げるための機構部品であって、図2,3に示すように、ベース部11a,11b、直動案内機構12、スプリング13,13、ベース部14、回動軸15、スキージ本体16および取付け用板17,17を備えている。
【0020】
ベース部11a,11bは、第1ベース部および第2ベース部に相当し、直動案内機構12によって相互に連結されている。また、直動案内機構12は、連結機構の一例であって、ベース部11aに対するベース部11bの上下方向(図4に示す矢印Aの方向:移動機構4によるスキージユニット10のメタルマスク20に対する押し付け方向である「第1方向」に沿った方向)に沿った相対的な移動を許容しつつベース部11a,11bを相互に連結する。この直動案内機構12は、図2,3に示すように、ベース部11a,11bの幅方向における中央部に配設されたシャフト12aと、ベース部11a,11bにおける幅方向の両端部に配設された一対のシャフト12b,12bとを備えている。また、シャフト12b,12bの周囲には、ベース部11a,11bを相互に離間させる向きに付勢するスプリング13(コイルスプリング:「付勢部材」の一例)がそれぞれ取り付けられている。
【0021】
ベース部14は、スキージ本体16と相俟って「スキージ」を構成する。このベース部14は、第3ベース部に相当し、回動軸15を介してベース部11bに取り付けられている。この場合、回動軸15は、フラックス塗布装置1によるフラックスFの塗布処理に際して移動機構4がスキージユニット10を移動させる方向(図6,7に示す矢印Cの向き、および、図8に示す矢印Dの向き:「第2方向」の一例)にその軸長が沿うようにして配設されて、ベース部11b,14を相互に連結する。これにより、図4に示すように、このスキージユニット10では、ベース部11a,11b等に対して、ベース部14およびスキージ本体16(スキージ)が矢印B1,B2の向きで揺動可能となっている。これにより、このスキージユニット10では、後述するようにして、スキージ本体16の先端部16xにおける幅方向の各部がメタルマスク20の表面に対して均一な押圧力で押し付けられる。
【0022】
また、スキージ本体16は、ベース部14とは別体に形成され、図3に示すように、一対の取付け用板17によって挟まれるようにして、ベース部14に対して取り外し可能に取り付けられている。また、スキージ本体16は、一例として、樹脂材料(ポリウレタン等)で平板状に形成された板状部16aと、この板状部16aを保持するホルダ16bとが一体化されて構成されている。また、スキージ本体16は、上記の板状部16aの先端部16xが平面視直線状となり、かつ、メタルマスク20や塗布対象基板Pに対して線的に接触するように先端部16xが尖らされている。なお、樹脂製の板状部16aに代えて、金属やセラミック等の各種材料で形成した板状部をホルダ16bによって保持してスキージ本体16を構成することもできるし、樹脂材料、金属およびセラミック等の各種材料で板状部およびホルダを一体形成して、スキージ本体16を構成することもできる。
【0023】
ノズル3aは、図1に示すように、フラックス供給部3に連結されると共に、スキージユニット10a,10bの間に配設され、フラックス供給部3から供給されたフラックスFをスキージユニット10a,10bの間に吐出(供給)する。フラックス供給部3は、制御部6の制御に従って規定量のフラックスFを塗布ユニット2に向けて圧送することで、塗布対象基板Pの塗布面(塗布面に押し当てられたメタルマスク20の表面:図6参照)にノズル3aからフラックスFを供給する。
【0024】
移動機構4は、図3に示すように、塗布ユニット2(スキージユニット10a,10bおよびノズル3a)を取り付けるための取付部4aを備え、制御部6の制御に従ってメタルマスク20および塗布対象基板Pに対して塗布ユニット2を移動させる。具体的には、移動機構4は、後述するようにして、基板搬送機構5によってフラックスFの塗布処理位置に搬送された塗布対象基板Pに向けて上記の塗布ユニット2(スキージユニット10)を下降させてスキージ本体16における先端部16xをメタルマスク20の表面に押し当てる(「マスクが押し当てられた塗布対象基板およびスキージの少なくとも一方」が「スキージユニット10(塗布ユニット2)である構成の例)。また、移動機構4は、メタルマスク20の表面にスキージ本体16の先端部16xが押し当てられた状態の両スキージユニット10を図5〜7に示す矢印C、または図5,8に示す矢印Dの向きに移動させて塗布対象基板Pの塗布領域PaにフラックスFを塗り拡げさせる。
【0025】
基板搬送機構5は、制御部6の制御に従ってフラックスFを塗布すべき塗布対象基板Pを塗布処理位置に搬送すると共に、フラックスFの塗布が完了した塗布対象基板Pを塗布処理位置から搬出する。制御部6は、フラックス塗布装置1を総括的に制御する。具体的には、制御部6は、基板搬送機構5に対して制御信号S1を出力して塗布対象基板Pを塗布処理位置に搬送させる。この場合、このフラックス塗布装置1では、一例として、メタルマスク20が塗布処理位置に固定され、基板搬送機構5がメタルマスク20の裏面に塗布面を押し当てるようにして塗布対象基板Pを塗布処理位置に位置決めする構成が採用されている。また、制御部6は、移動機構4に対して制御信号S2を出力して塗布ユニット2を塗布対象基板P上(メタルマスク20上)に移動させると共に、フラックス供給部3に対して制御信号S3を出力してフラックスFを供給させる。さらに、制御部6は、移動機構4を制御して塗布ユニット2を移動させることによってフラックスFを塗布対象基板Pの塗布面に塗布する(塗り拡げる)塗布処理を実行する。
【0026】
次に、フラックス塗布装置1によるフラックス塗布方法について、添付図面を参照して説明する。
【0027】
このフラックス塗布装置1では、塗布処理の開始が指示されたときに、制御部6が、まず、基板搬送機構5に制御信号S1を出力して塗布対象基板Pを塗布処理位置に搬送させる。この際に、基板搬送機構5は、メタルマスク20の裏面に塗布対象基板Pの塗布面を押し当てるようにして塗布対象基板Pを上昇させる。次いで、制御部6は、移動機構4に制御信号S2を出力して塗布ユニット2をメタルマスク20における開口部20aの外側(一例として、図5に実線で示す位置)に移動させる。続いて、制御部6は、移動機構4を制御して、図6に示すように、メタルマスク20の表面(塗布対象基板Pの塗布面)に向けて塗布ユニット2を下降させて両スキージユニット10におけるスキージ本体16の先端部16xをメタルマスク20の表面に押し付けさせる。
【0028】
この際に、例えば、図4に一点鎖線で示すように、スキージユニット10aにおけるスキージ本体16に傾きが生じていたときには、塗布ユニット2の下降に伴い、まず、先端部16xにおける幅方向の一端部(この例では、同図における左端部)がメタルマスク20の表面に当接する。次いで、移動機構4によって塗布ユニット2がさらに下降させられたときには、スキージユニット10aのベース部14が回動軸15を中心としてベース部11bに対して矢印B1の向きで回動して、先端部16xにおける幅方向の全体がメタルマスク20の表面に当接する。これにより、同図に破線で示すように、スキージユニット10aにおけるスキージ本体16の傾きが矯正される。
【0029】
また、図4に二点鎖線で示すように、スキージユニット10bにおけるスキージ本体16に傾きが生じていたときには、塗布ユニット2の下降に伴い、まず、先端部16xにおける幅方向の一端部(この例では、同図における右端部)がメタルマスク20の表面に当接する。次いで、移動機構4によって塗布ユニット2がさらに下降させられたときには、スキージユニット10bのベース部14が回動軸15を中心としてベース部11bに対して矢印B2の向きで回動して、先端部16xにおける幅方向の全体がメタルマスク20の表面に当接する。これにより、同図に破線で示すように、スキージユニット10bにおけるスキージ本体16の傾きが矯正される。
【0030】
さらに、スキージユニット10を押し付けるメタルマスク20や塗布対象基板Pに傾きが生じてたときには(図示せず)、塗布ユニット2の下降に伴い、まず、先端部16xにおける幅方向の一端部がメタルマスク20の表面に当接する。次いで、移動機構4によって塗布ユニット2がさらに下降させられたときには、スキージユニット10のベース部14が回動軸15を中心としてベース部11bに対して矢印B1の向きまたは矢印B2の向きで回動して、メタルマスク20や塗布対象基板Pに生じた傾きに応じてスキージ本体16にも同様の傾きが生じた状態となる。これにより、先端部16xにおける幅方向の全体がメタルマスク20の表面に当接する。
【0031】
続いて、移動機構4によって塗布ユニット2がさらに下降させられたときには、直動案内機構12の案内に従って、両スキージユニット10のベース部11aが矢印Aの向きでベース部11bに対してそれぞれ直動する(下降する)。この際には、ベース部11aの下降に伴い、両スプリング13が押し縮められるように弾性変形して、ベース部11bがメタルマスク20(塗布対象基板P)に向けて付勢される。これにより、スキージユニット10a,10bの双方において、ベース部14を介してベース部11bに連結されているスキージ本体16の先端部16xが、所望の押圧力でメタルマスク20の表面に押し付けられる。
【0032】
次いで、制御部6は、フラックス供給部3に制御信号S3を出力してノズル3aに向けてフラックスFを圧送させる。この際には、図6に示すように、ノズル3aからスキージユニット10a,10bの間にフラックスFが供給される。続いて、制御部6は、移動機構4を制御して塗布対象基板Pの塗布面(メタルマスク20の表面)に沿って塗布ユニット2を矢印Cの方向に移動させる。この際には、図7に示すように、ノズル3aから供給されたフラックスFが、塗布ユニット2の移動に伴ってスキージユニット10aによって矢印Cの方向に移動させられ、開口部20aの口縁部においてメタルマスク20上から塗布対象基板Pにおける塗布面に移動させられる。この際に、スキージユニット10aが開口部20aの上方に位置した状態においては、同図に示すように、その先端部16xがメタルマスク20の表面とほぼ同じ高さに維持されて塗布対象基板P(塗布面)から離間した状態となる。これにより、スキージユニット10aの移動に伴って塗布面上に移動させられたフラックスFがメタルマスク20の厚み分だけ塗布面に残留させられるようにして均一に平される。
【0033】
続いて、図5に一点鎖線で示す位置に向けて塗布ユニット2を矢印Cの方向にさらに移動させる。この際には、図8に示すように、スキージユニット10aの移動に伴って塗布面上を移動させられたフラックスFのうちの塗布領域Paに塗布されなかった余分なフラックスFが塗布面上からメタルマスク20の上に移動させられる。これにより、1枚目の塗布対象基板Pの塗布面における塗布領域Paに対するフラックスFの塗布処理が完了する。この後、制御部6は、基板搬送機構5を制御して塗布処理が完了した塗布対象基板Pを塗布処理位置から搬出させ、次にフラックスFを塗布すべき塗布対象基板Pを塗布処理位置に搬送させる。また、制御部6は、フラックス供給部3を制御してノズル3aからスキージユニット10a,10bの間にフラックスFを供給させた後に、移動機構4を制御して、塗布ユニット2を矢印Dの向きに移動させる。これにより、塗布ユニット2を矢印Cの向きに移動させた上記の例におけるスキージユニット10aに代えて、スキージユニット10bによって塗布対象基板Pの塗布領域PaにフラックスFが塗り拡げられる。これにより、2枚目の塗布対象基板Pに対するフラックスFの塗布処理が完了する。
【0034】
一方、複数枚の塗布対象基板Pに対するフラックスFの塗布処理を繰り返して実行したときには、図9に示すように、両スキージユニット10のスキージ本体16における先端部16xに欠け(傷付き)や摩耗が生じることがある。このように欠けや摩耗が生じたスキージ本体16では、塗布対象基板Pの塗布領域Paにおける全域に対してフラックスFを均一に塗布するのが困難となり、フラックスFの塗布厚が規定の厚みよりも厚い領域が移動機構4による塗布ユニット2の移動方向に沿って筋状に形成される(筋状の塗布むらが生じる)こととなる。したがって、このフラックス塗布装置1では、先端部16xに欠けや摩耗が生じたときに、ベース部14とは別体に構成されたスキージ本体16を取り外し、同図に破線で示す位置まで先端部16xを研磨することができるように構成されている。なお、同図では、先端部16xに生じた欠けや摩耗を誇張して大きく図示している。
【0035】
この場合、スキージ本体16の研磨に際しては、板状部16aの先端部16xがその基端部側(ホルダ16bによって保持されている部位)と平行となるように研磨するのが好ましいが、図10に示すように、先端部16xが基端部に対して斜めとなるように研磨されることがある。なお、同図では、研磨に際して先端部16xが斜めとなった度合いを誇張して図示している。このような状態に研磨されたスキージ本体16を取り付けたスキージユニット10では、フラックスFの塗布処理に際して塗布ユニット2が移動機構4によって下降させられたときに、まず、研磨後の先端部16xにおける幅方向の一端部(この例では、図10における左端部)がメタルマスク20の表面に当接する。次いで、移動機構4によって塗布ユニット2がさらに下降させられたときには、図11に示すように、ベース部14が回動軸15を中心としてベース部11bに対して矢印B1の向きで回動して、先端部16xにおける幅方向の全体がメタルマスク20の表面に当接する。これにより、同図に示すように、研磨によって斜めとなった状態の先端部16xにおける幅方向の全体がメタルマスク20の表面に対してほぼ均一に押し付けられる結果、フラックスFの塗布むらが生じる事態が回避される。
【0036】
このように、このフラックス塗布装置1、およびフラックス塗布装置1によるフラックス塗布方法では、ベース部11a,11bと、ベース部11aに対するベース部11bの第1方向(図4に示す矢印Aの方向)に沿った相対的な移動を許容しつつベース部11a,11bを相互に連結する直動案内機構12と、ベース部11a,11bを相互に離間させる方向に付勢するスプリング13,13とを備えると共に、軸長が塗布対象基板Pに対する移動方向(図5〜7に示す矢印Cの向き、および図5,8に示す矢印Dの向き:第2方向)に沿うように配設された回動軸15を介してベース部11bにスキージ(この例では、ベース部14およびスキージ本体16)を取り付けたスキージユニット10a,10bを使用して塗布対象基板Pの塗布面にフラックスFを塗り拡げる。
【0037】
したがって、このフラックス塗布装置1、およびフラックス塗布装置1によるフラックス塗布方法によれば、ベース部14およびスキージ本体16(スキージ)が傾いた状態で取り付けられているとき、フラックスFの塗布に際してスキージ本体16を押し付けるメタルマスク20や塗布対象基板Pに傾きが生じているとき、および研磨によって先端部16xが斜め状態となっているときのいずれの場合においても、移動機構4によってスキージユニット10(塗布ユニット2)を下降させてスキージ本体16の先端部16xをメタルマスク20の表面に当接させたときに、ベース部14およびスキージ本体16(スキージ)が回動軸15を中心としてベース部11bに対して回動する結果、スキージ本体16における先端部16xの幅方向の全体をメタルマスク20に当接させることができる。また、移動機構4によってスキージユニット10(塗布ユニット2)をさらに下降させることでスプリング13が縮長してベース部11a(移動機構4)に対してベース部11b(ベース部14およびスキージ本体16)を下向きに押圧する結果、ベース部11bに取り付けられているスキージ本体16の先端部16xを十分な押圧力でメタルマスク20の表面に押し当てることができる。これにより、このフラックス塗布装置1、およびフラックス塗布装置1によるフラックス塗布方法によれば、ベース部14およびスキージ本体16(スキージ)に傾きが生じないように移動機構4に対するスキージユニット10の固定位置を微調整する煩雑な作業が不要となる結果、移動機構4に対してスキージユニット10を容易に取り付けることができるだけでなく、上記の各種の状態において、先端部16xにおける幅方向の全体をメタルマスク20の表面に対して均一な押圧力で押し付けた状態においてフラックスFを塗り拡げることができるため、塗布むらを生じさせることなく、塗布対象基板Pの塗布領域PaにフラックスFを均一に塗布することができる。
【0038】
また、このフラックス塗布装置1、およびフラックス塗布装置1によるフラックス塗布方法によれば、スキージ本体16と、回動軸15を介してベース部11bに取り付けられると共にスキージ本体16を取り外し可能に構成されたベース部14とを備えてスキージを構成したことにより、スキージ本体16(板状部16a)の研磨作業時に移動機構4からスキージユニット10の全体を取り外すことなく、スキージ本体16だけをベース部14から取り外して作業することができる。また、複数回の研磨によってスキージ本体16(板状部16a)が短くなったときには、スキージ本体16だけを新たな部品に交換することで、ベース部11a,11b,14等を継続して使用することができるため、フラックス塗布装置1のランニングコストを十分に低減することができる。
【0039】
なお、フラックス塗布装置の構成、およびフラックス塗布方法は、上記の構成および方法に限定されない。例えば、スキージユニット10a,10bの2枚のスキージを有するフラックス塗布装置1を例に挙げて説明したが、1枚のスキージユニット10だけを備えてフラックス塗布装置を構成することもできる。具体的には、一例として、上記の例において塗布ユニット2を矢印Cの方向に移動させるときにだけフラックスFを塗布する(スキージユニット10aだけでフラックスを塗布する)場合には、上記の塗布ユニット2におけるスキージユニット10bを不要とすることができる。また、3枚以上のスキージユニット10を備えてフラックス塗布装置を構成することもできる。これらの構成を採用した場合においても、上記のスキージユニット10a,10bを備えたフラックス塗布装置1と同様の効果を奏することができる。
【0040】
また、上記のフラックス塗布装置1では、スキージユニット10a,10bの2枚を移動機構4(取付部4a)に取り付けて両スキージユニット10a,10bを同時に同じ方向に移動させる構成を採用しているが、スキージユニット10aを移動させる移動機構、およびスキージユニット10bを移動させる移動機構を別個に設けて両スキージユニット10a,10bを別個独立して移動させる構成を採用することもできる。さらに、上記のフラックス塗布装置1では、移動機構4によって塗布ユニット2をメタルマスク20および塗布対象基板Pに対して第2方向に移動させてフラックスFを塗り拡げる構成を採用しているが、予め決められた位置(例えば、フラックス塗布装置のフレーム)に固定した塗布ユニット2(スキージユニット10)に対して、例えば基板搬送機構5によってメタルマスク20および塗布対象基板Pを第2方向に移動させてフラックスFを塗り拡げる構成を採用することもできる。また、移動機構4によって塗布ユニット2を第2方向に移動させると共に、基板搬送機構5等によってメタルマスク20および塗布対象基板Pを第2方向に移動させてフラックスFを塗り拡げる構成を採用することもできる。これらの構成においても、上記のフラックス塗布装置1と同様の効果を奏することができる。
【0041】
さらに、コイルスプリングで構成されたスプリング13を付勢部材として配設したスキージユニット10a,10bを例に挙げて説明したが、コイルスプリングに代えて、リーフスプリングおよびエアスプリング等の各種スプリングや、弾性樹脂等で付勢部材を構成して配設することもできる。
【符号の説明】
【0042】
1 フラックス塗布装置
2 塗布ユニット
3 フラックス供給部
3a ノズル
4 移動機構
4a 取付部
5 基板搬送機構
6 制御部
10a,10b スキージユニット
11a,11b,14 ベース部
12 直動案内機構
12a,12b シャフト
13 スプリング
15 回動軸
16 スキージ本体
16x 先端部
17 取付け用板
20 メタルマスク
20a 開口部
F フラックス
P 塗布対象基板
Pa 塗布領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
供給されたフラックスを塗布対象基板の塗布面に塗り拡げるスキージを有するスキージユニットと、前記塗布面における前記フラックスの塗布領域を露出させる開口部が設けられたマスクが当該塗布面に押し当てられた前記塗布対象基板および前記スキージユニットの少なくとも一方を他方に対して接近させる第1方向に移動させて前記スキージの平面視直線状の先端部を当該マスクの表面に押し当てた状態において当該塗布対象基板および当該スキージユニットの少なくとも一方を他方に対して前記塗布面に沿った第2方向に移動させて前記塗布領域に前記フラックスを塗り拡げさせる移動機構とを備え、
前記スキージユニットは、第1ベース部および第2ベース部と、前記第1ベース部に対する前記第2ベース部の前記第1方向に沿った相対的な移動を許容しつつ当該第1ベース部および当該第2ベース部を相互に連結する連結機構と、前記第1ベース部および前記第2ベース部を相互に離間させる方向に付勢する付勢部材とを備えると共に、軸長が前記第2方向に沿うように配設された回動軸を介して前記スキージが前記第2ベース部に取り付けられて構成されているフラックス塗布装置。
【請求項2】
前記スキージは、スキージ本体と、前記回動軸を介して前記第2ベース部に取り付けられると共に前記スキージ本体を取り外し可能に構成された第3ベース部とを備えて構成されている請求項1記載のフラックス塗布装置。
【請求項3】
請求項1または2記載のフラックス塗布装置を使用して前記塗布対象基板の前記塗布領域に前記フラックスを塗布するフラックス塗布方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−78905(P2011−78905A)
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−233131(P2009−233131)
【出願日】平成21年10月7日(2009.10.7)
【出願人】(000227180)日置電機株式会社 (982)
【Fターム(参考)】