説明

フラットケーブルとバスバーの接続構造

【課題】フラットケーブルとバスバーの溶接による固定の前後にわたって、フラットケーブルに対する保持力を高めて、製造工程における不良の発生を抑制するとともに、作業性の向上を図る。
【解決手段】フラットケーブル11の先端側の接続部分15を、モールド部32に保持されたバスバー31に重ねた状態で固定したのちにフラットケーブル11とバスバー31の間で接続がなされるフラットケーブルとバスバーの接続構造において、前記固定を、一部が変形する留め部材71の固定で行う。この留め部材71は、前記接続部分15よりも基部側で前記モールド部32に重合する部位に、該部位を前記モールド部32に対して上から押え付ける押圧部72と、該押圧部72両端におけるフラットケーブル11の幅方向外側を挟む位置に垂設されて前記モールド部32の下部において前記押圧部72が外れないように変形される変形脚部73とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、フラットケーブルをバスバーに接続するためのフラットケーブルとバスバーの接続構造に関し、より詳しくは、フラットケーブルとバスバーの溶接による接続の前後にわたって、バスバーに対するフラットケーブルの保持力を高められるようなフラットケーブルとバスバーの接続構造に関する。
【背景技術】
【0002】
フラットケーブルをバスバーに接続するときには、まずバスバーをインサート成形して形成したモールド部の上に、先端部の平角導体を露出させたフラットケーブルをのせて、平角導体とバスバーの相互の位置関係が所望通りになるように固定する。次に、この状態で溶接工程に移行して、平角導体がバスバーに溶接される。
【0003】
前記の固定は、たとえば下記特許文献1に開示されているように、フラットケーブルの平角導体の露出部分よりも基部側の部分を、モールド部に対して上から嵌め込んで固定されるクランパで保持したり(特許文献1の図9参照)、モールド部に取り付けるカバーでフラットケーブルを挟み込んだり(特許文献1の図1参照)して行われていた。
【0004】
また、似たような構造ではあるが、図14(a)に示したように、樹脂製の押え部材101をモールド部102の基部103に差し込んでフラットケーブル104固定することが行われていた。
【0005】
押え部材101は、図14(a)、図14(b)に示したように、平面視横なが長方形に形成され、長手方向の両側に、モールド部102に形成された左右一対の押え片105の下に入り込む薄い挿入片106が形成された構造である。挿入片106の挿入方向後端部には、挿入を規制する挿入止め107を有する。図中108は、差し込む際に指先を引っ掛ける突条である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平7−169519号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、前記特許文献1のクランパで固定する場合には、上から嵌めるだけであるので、フラットケーブルに対する保持力が低い。嵌めるための突起と嵌合相手の孔の、成形品ゆえの寸法のばらつきによる影響が出やすいことも、保持力の低下につながる。そのうえ、クランパの固定は突起の嵌合で行うので、作業性がよくない。特に、狭ピッチ化したフラットケーブルの場合には、クランパが小さいので、作業性はますます低下する。
【0008】
また、前記特許文献1のカバーで固定する場合には、カバーをねじで固定するので、作業性が悪い。その上、軽量化や小スペース化等の要求にも反する。
【0009】
図14に示したような押え部材101で固定する場合には、前記特許文献1のクランパで固定する場合と同様に、フラットケーブル104に対する保持力が高くなく、作業性もあまりよくない。
【0010】
保持力が高くないのは、フラットケーブル104の幅方向中間部分では両側部分よりも押さえが弱くなりがちであるからと思われる。また、押え部材101は挿し込まれているだけなので、外力によってずれたり外れたりするおそれもある。特に、挿し込み作業性を考慮して押え部材101の上面には突条108が形成されているので、この突条108が位置ずれや外れの端緒となってしまうおそれがある。
【0011】
そもそも押え部材101や前記クランパとカバーは、後の工程である溶接工程において溶接点の位置ずれを防止する目的と、溶接後から装置への組み込みまでの間にハンドリングによるひきつれ等で外力が溶接点へ影響を与えないようにする目的がある。保持力が弱いと、溶接部分への負荷の遮断ができず、溶接点の剥がれなどの重大な不具合が起こることになる。
【0012】
作業性がよくないのは、押え部材101の差し込みに際して押え部材101の向きを正しく定めなければならず、また押え部材101とモールド部102相互間に余分なあそびはないからである。押え部材101は小さく薄いものであるため、向きの判別が容易ではなく、指先に持って向きを変える作業にも熟練性が必要である。そして、挿し込みに際しては、押え部材101の挿入止めがモールド部102の押え片105に当接するまでしっかりと押し込まなければならない。
【0013】
特に、狭ピッチ化したフラットケーブル104の場合には、押え部材101が小型化するため、作業性の悪さがますます顕著になる。
【0014】
そこで、この発明は、フラットケーブルに対する保持力の向上や作業性の向上を図ることを主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
そのための手段は、フラットケーブルの接続部分を、保持部材に保持されたバスバーに重ねた状態で固定したのちにフラットケーブルとバスバーの間で接続がなされるフラットケーブルとバスバーの接続構造であって、前記固定が、前記接続部分よりも基部側で前記保持部材に重合する部位に、該部位を前記保持部材に対して上から押え付ける押圧部と、該押圧部両端におけるフラットケーブルの幅方向外側を挟む位置に垂設されて前記保持部材の下部において前記押圧部が外れないように変形される変形脚部とを有した留め部材の固定でなされるフラットケーブルとバスバーの接続構造である。
【0016】
留め部材の押圧部がフラットケーブルを上から押えつけるとともに、変形脚部が保持部材の下部において、押圧部の脱落を防止する。留め部材は、たとえば上下の型で挟み込むだけで簡単に固定可能にできる構造である。
【発明の効果】
【0017】
この発明によれば、フラットケーブルに対する保持力を向上して、適切な溶接が行えるとともに、溶接点の剥がれなどの重大な不具合の発生を抑制できる。また、作業性の向上を図ることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】フラットケーブルとバスバーの接続構造の平面図。
【図2】フラットケーブルとバスバーの分離状態の平面図。
【図3】図1におけるA−A断面図とB−B断面図断面図。
【図4】バスバーとモールド部の斜視図。
【図5】係合凹部と係合凸部の係合状態を示す平面図。
【図6】係合凹部と係合凸部の他の例を示す平面図。
【図7】他の例に係るフラットケーブルとバスバーの接続構造の平面図。
【図8】他の例に係るフラットケーブルとバスバーの接続構造の平面図。
【図9】留め部材の斜視図と断面図。
【図10】留め部材とその作用状態を示す断面図。
【図11】他の例に係るモールド部の部分平面図。
【図12】他の例に係る留め部材の作用状態を示す断面図。
【図13】他の例に係る留め部材とその作用状態を示す断面図。
【図14】従来技術を示す平面図と正面図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
この発明を実施するための一形態を、以下図面を用いて説明する。
図1は、フラットケーブル11とバスバー31の接続構造を示す平面図、図2は接続前のフラットケーブル11とバスバー31の分離状態の平面図、図3(a)は図1におけるA−A断面図、図3(b)は図1におけるB−B断面図である。
【0020】
これらの図に示すように、フラットケーブル11とバスバー31は、フラットケーブル11の平角導体12とバスバー31とが相互に溶接で接続されている部分の周辺において、位置決めと固定がなされている。位置決めは、前記溶接をする前段においてフラットケーブル11とバスバー31の相対位置を定めるために行われ、固定は、その定めた相対位置を保持して溶接が所望通りに行えるようにするとともに、溶接後に溶接部分に負荷がかかったりすることを防止するために行われる。
【0021】
まず、フラットケーブル11とバスバー31の概略構造について簡単に説明した後、つぎに、位置決めのための構成について説明し、続いて、固定のための構成について説明する。
【0022】
フラットケーブル11は、複数本の平角導体12が隙間を隔てて平行に並んだ状態にラミネート13で被覆された構造である。幅方向の両側縁には、平角導体12のない耳部14を有する。そして、先端側の接続部分15における適宜位置には、平角導体12をバスバー31と溶接するためにラミネート13を切除した窓部16が形成されている。
【0023】
バスバー31は、保持部材としてのモールド部32にインサート成形により保持されている。バスバー31は複数本備えられ、前記平角導体12と同様に隙間を隔てて平行に並ぶようにモールド部32に保持されている。図4がそのバスバー31を保持したモールド部32の斜視図であり、平面視略横なが長方形をなす略厚板状に形成され、バスバー31は、接続端子部31aとなる一端側がモールド部32の幅方向の一方(図示例では上方)の側面から突出するように保持されている。
【0024】
そして、モールド部32の幅方向の中間には、幅方向両側の堤部(第1堤部33、第2堤部34)よりも低い保持溝部35が形成されている。保持溝部35の底には並設されたバスバーが露出している。
【0025】
なお、図示例では、フラットケーブル11とバスバー31を直交させた接続構造を示したが、一直線上に並ぶ接続構造などであってもよい。
【0026】
つぎに前記位置決めのための構成について説明する。
前記位置決めのための構成は、フラットケーブル11の長手方向に延びる縁である前記耳部14に切欠き形成された係合凹部51と、バスバー31を保持する前記モールド部32に形成された係合凸部52とで構成される。すなわち、これら係合凹部51と係合凸部52が係合することによりフラットケーブル11及びバスバー31相互間の面方向での位置決めがなされる。
【0027】
前記係合凹部51は、図1、図2に示したように、前記接続部分15における両側縁の耳部14に形成される。係合凹部51の形成位置と個数は、モールド部32の保持溝35に嵌めたときに保持溝35に収まればよいので、前記接続部分15に収まる範囲内で適宜設定される。図示例においては、両側縁に2個ずつの係合凹部51が形成された例を示す。
【0028】
これら係合凹部51のうち、フラットケーブル11の幅方向の一方(前記バスバー31の接続端子部31aが延びる方向の第1堤部33に対向する側)の係合凹部51は、平面視長方形に切欠かれて形成されている。
【0029】
これに対して、フラットケーブル11の幅方向の他方(前記バスバー31の接続端子部31aが延びる方向とは反対の第2堤部34に対向する側)の係合凹部51は、平面視アリ溝形状または逆台形に切欠かれて形成される。
【0030】
つまり、この、フラットケーブル11の幅方向の他方(前記バスバー31の接続端子部31aが延びる方向とは反対の第2堤部34に対向する側)の係合凹部51は、フラットケーブル11の幅方向に対して交差するとともに、係合凹部51と係合凸部52がフラットケーブル11の幅方向に離間するときには抜け止めとなる方向に傾斜する傾斜面51aを有する。係合凹部51は、平面視アリ溝形状または逆台形をなすので、前記傾斜面51aは、異なる方向に傾斜する2つの傾斜面51aということになり、これらを一組の傾斜面51aと想定すると、この一組の傾斜面51aが一つの係合凹部51に形成されたことになる。
【0031】
前記係合凸部52は、前記係合凹部51を有したフラットケーブル11の接続部分15をモールド部32の保持溝35に対して上から嵌めたときに、係合凹部51と係合するものである。すなわち、モールド部32の第1堤部33の保持溝35側の側面には、平面視横なが長方形をなす直方体形状の係合凸部52が形成されている。また、モールド部32の第2堤部34の保持溝35側の側面には、平面視アリ溝形状または逆台形の係合凸部52が形成されている。
【0032】
つまり、この、第2堤部34に形成された係合凸部52は、フラットケーブル11の幅方向に対して交差するとともに、係合凹部51と係合凸部52がフラットケーブル11の幅方向で離間するときには抜け止めとなる方向に傾斜する傾斜面52aを有する。係合凸部52は、平面視アリ溝形状または逆台形をなすので、前記傾斜面52aは、異なる方向に傾斜する2つの傾斜面52aということになり、これらを一組の傾斜面52aと想定すると、この一組の傾斜面52aが一つの係合凸部52に形成されたことになる。
【0033】
係合凹部51と係合凸部52の傾斜面51a,52aの角度は同一である。
【0034】
これらのような係合凹部51と係合凸部52の係合状態を拡大して示すと、図5のようになる。係合凹部51と係合凸部52が係合するのでフラットケーブル11の長手方向(図5中、矢印X方向)には相対位置のずれがないのはもちろんのこと、係合凹部51と係合凸部52は相対向する傾斜面51a,52aを有するので、係合後はフラットケーブル11の幅方向(図5中、矢印Y方向)で抜けることはない。しかも、フラットケーブル11の幅方向でのあそびが生じにくく、あそびが生じたとしてもその程度が小さい。
【0035】
また、前記のように、傾斜面51a,52aを有する係合凹部51と係合凸部52が、フラットケーブル11の長手方向に延びる一方(第2堤部34側)の縁、またはこれに対応する部位に設けられているので、係合凹部51と係合凸部52との係合により抜けないことによって、フラットケーブル11を一方に寄せた状態で位置決めができることになる。
【0036】
なお、図6(a)に示したように、相互に係合する係合凹部51と係合凸部52のうち、係合凹部51の傾斜面51aを2つではなく1つとすることもできる。逆に、図6(b)に示したように、係合凸部52の傾斜面52aを1つとすることもできる。また、たとえば図6(c)に示したように、2つ以上の傾斜面51a,52aを係合凹部51と係合凸部52に備えることも可能である。
【0037】
さらに、図7に示したように、係合凹部51と係合凸部52は、前記傾斜面51a,52aを有した係合凹部51と係合凸部52のみで構成することもできる。
【0038】
このほか、図8に示したように、異なる方向に傾斜する一組の傾斜面51a,52aが、フラットケーブル11の長手方向に沿って並ぶ複数の係合凹部51および係合凸部52に分割して形成されたものであってもよい。具体的には、長手方向に沿って並ぶ2個の係合凹部51と係合凸部52の相反する方向の一方の側面に、傾斜面51a,52aが形成されている。長手方向に沿って並ぶ2個の係合凹部51と係合凸部52の相対向する一方の側面に形成することもできる。
【0039】
さらに、前記係合凹部51と係合凸部52における相互に対向する傾斜面51a,52aの角度は、同一でなくともよい。
【0040】
続いて前記固定のための構成について説明する。
前記固定のための構成は、フラットケーブル11の先端側の接続部分15よりも基部側で前記モールド部32に重合する部位に、固定される留め部材71で構成される。この留め部材71は、前記フラットケーブル11の先端側の接続部分15よりも基部側で前記モールド部32に重合する部位を前記モールド部32に対して上から押え付ける押圧部72と、該押圧部72両端におけるフラットケーブル11の幅方向外側を挟む位置に垂設されてモールド部32の下部において前記押圧部71が外れないように変形される変形脚部73とを有する。
【0041】
前記押圧部72と変形脚部73を有する留め部材71は、適宜の金属製で、線状体または帯状体を折曲して形成され、全体として図9(a)の斜視図に示したように正面視横コ字状または門型をなす。そして、その断面形状は長手方向全体にわたって同一で、図9(b)に示したように略長方形をなし、フラットケーブル11に接する側の角には角アール部74が形成されている。これは、フラットケーブル11のラミネート13の破れや傷つきを防止するためである。
【0042】
図9(c)に示したように樹脂の被覆等により緩衝層75を形成してもよく、この場合には、図9(d)のように角アール部74を省略することもできる。
【0043】
前記押圧部72は、フラットケーブル11の幅よりも若干長く形成され、前記変形脚部73は、変形したときにモールド部32の下部において湾曲し、先端部が所望位置に達する適宜長さになるように形成されている。そして、これら押圧部72と変形脚部73の間には湾曲部76を有する。
【0044】
一方、この留め部材71を固定する対象である前記モールド部32には、図2、図3に示したように前記保持溝35の長手方向の一方側から横に張り出す突出部36が形成され、この突出部36に前記変形脚部73を変形させる型溝部37が一体に形成されている。型溝部37は、図3、図4に示したように幅方向両側に形成され、真っ直ぐな変形脚部73を受け入れる竪穴37aと、この竪穴37aの下端から湾曲して幅方向の内側に入り込む第1湾曲部37bと、この第1湾曲部37bから続いて折り返すように湾曲する第2湾曲部37cを有する。この型溝部37は、変形脚部73の先端部がフラットケーブル11の幅方向の中間側に位置するように形成されるとよい。フラットケーブル11の幅方向中間側の位置においても積極的な保持力を発揮できるからである。
【0045】
また、モールド部32における前記留め部材71が固定される部位の上面、すなわち前記保持溝35の底面に連なる突出部36の上面における前記型溝部37に挟まれる位置(留め部材を固定する部位)には、図3(b)、図4に示したように、留め部材71よりも幅広の支持溝部38が形成されている。この支持溝部38は、留め部材71による締め付けを強力に発揮させるためのものである。支持溝部38の深さは、極浅くてよい。支持溝部38の両端には面取り部38aが形成される。
【0046】
このような型溝部37等を有する突出部36を有するので、図10に示したようにフラットケーブル11をモールド部32の所定位置に位置決めした後、留め部材71をモールド部32の型溝部37の竪穴37aに挿入した状態で、上型91を下ろして加圧し、留め部材71を押し込めば、仮想線で示したように留め部材71の変形脚部73は型溝部37の形状に沿って変形し、モールド部32に固定される。そして、留め部材71の押圧部72がフラットケーブル11を押え付けた状態が得られる。
【0047】
なお、図11に示したように、モールド部32における留め部材71を固定する部位に、前記変形脚部73が入るとともにフラットケーブル11の長手方向においての留め部材71の位置ずれを防止する脚部保持溝39が形成されると、上型91による加圧時に、留め部材71の不測の傾きなどの位置ずれを防止できるのでよい。
【0048】
また、図12に示したように、モールド部32の型溝部37を省略することもできる。すなわち、前記突出部36は型溝部37がないぶん薄く形成され、下面は平坦などの適宜の形状に形成される。型溝部37を持たない場合には、図13に示したように、別体の上型91と下型92によって留め部材71を加圧して変形脚部73の変形を行うと、前記と同様にフラットケーブル11の固定が行える。
【0049】
このように構成されたフラットケーブル11とバスバー31の接続構造においてフラットケーブル11とバスバー31の接続を行うには、まず、図2に示したように係合凹部51と窓部16が形成されたフラットケーブル11の接続部分を、保持溝35と係合凸部52と突出部36と型溝部37と支持溝部38が形成されたモールド部32の保持溝35に対して上から嵌める。係合凹部51と係合凸部52が係合しあうことにより、図1、図5に示したようにフラットケーブル11の幅方向の一方側(第2堤部34側)の係合凹部51と係合凸部52が相互に対向する傾斜面51a,52aを有するため、幅方向に抜けないようになる。つまり、フラットケーブル11は傾斜面51a,52aを有する係合凸部52によって拘束され、保持溝35内でのフラットケーブル11のあそびの発生を抑えることができる。
【0050】
この結果、フラットケーブル11の長手方向では勿論のこと、幅方向においても精度よく位置決めができる。
【0051】
しかも、フラットケーブル11をモールド部32の一方側に寄った位置で拘束するので、溶接の基準とあわせることによって、あらかじめ形成した窓部16における溶接を確保できる。この点で、適正な溶接を可能にし、不良の発生を抑えられる。
【0052】
特に、前記のような傾斜面51aを有する係合凹部51と、傾斜面52aを有する係合凸部を備えるので、フラットケーブル11とモールド部32の各部の寸法が公差内であってもフラットケーブル11の幅方向での位置が定まらないというような不都合はなく、適正な溶接が確実に行える。
【0053】
次に、モールド部32に対してこのような位置決め状態が得られたフラットケーブル11を、図3、図10に示したような留め部材71の固定により前記の位置決め状態を保持する。すなわち、傾斜面51a,52aを有した係合凹部51と係合凸部52によって位置決めがなされているフラットケーブル11の上から、フラットケーブル11を跨ぐようにして留め部材71をモールド部32の型溝部37に打ち込む。フラットケーブル11の位置決めは精度よくなされているので、留め部材71の固定は単に打ち込むだけで行え、簡単である。これにより、前記のごとく留め部材71の変形脚部73は変形して、留め部材71の押圧部72がフラットケーブル11を押え付けた状態を保持することができる。この留め部材71は、部材を単に嵌め込んだりするのとは異なり、一部(変形脚部73)を機械的に変形させて、しかもフラットケーブル11を抱きかかえるように拘束するので、高い保持力を有し、前記位置決め状態を確実に保持することができる。
【0054】
この結果、フラットケーブル11の位置ずれを効果的に抑制することができ、続く溶接工程での溶接を所望通りに正確に行わせることが可能となる。そのうえ、留め部材71はフラットケーブル11を抱きかかえるように保持し、保持力も高いので、フラットケーブル11における留め部材71よりも基端側と先端側との間の負荷の伝達を遮断することができる。つまり、留め部材71は接続部分15よりも基部側に位置するため、溶接工程やその後の工程におけるハンドリング時にフラットケーブル11の留め部材71よりも基端側にかかる外力によってひきつれ等が発生しても接続部分15が不用意に動くことを防止でき、溶接する部位や溶接した部位に負荷がかかることを抑制する。
【0055】
したがって、溶接が適正に行える上にその部分の保護も可能であって、製造工程における不良発生率を大幅に低減できる。
【0056】
また、従来の押え部材のように樹脂成形品を使用しないため、金型費用を抑えることができ、コスト削減が可能である。
【0057】
さらに、留め部材71は、型で押すだけで機械的に容易に固定できるので、従来の押え部材を挿し込んで固定するときとは異なり、作業に手間がかからない。しかも、フラットケーブル11とモールド部32との位置関係を正しく規制した状態で留め部材71を加圧するだけであるので、係合凹部51と係合凸部52で位置決めした状態を保持した状態のままで固定が行える。
【0058】
加えて、従来の押え部材では手で挿し込むので小型化にも限界があったが、留め部材71は機械的に保持され加圧することができるので、留め部材71は小さくてもよい。このため、フラットケーブル11の狭ピッチ化やモールド部32の小型化が進んでも対応できる有益な接続構造である。
【0059】
以上のように、精度の高い位置決めと、保持力の高い固定がなされる。そして、係合凹部51と係合凸部52による位置決めは留め部材71による固定を容易にし、留め部材71による固定は係合凹部51と係合凸部52による位置決めを効果あるものとする。
【0060】
このような位置決めと固定の協働により、フラットケーブル11の平角導体12とバスバー31との溶接が適正に行える上に、その溶接部分が製造工程における取り扱いによって悪影響を受けないようにフラットケーブル11の接続部分15を強固に保持でき、優良な製品を得られる。しかも、位置決め固定のための構成は前記のように簡素な構成であるので、位置決めや固定の作業は容易であり、作業の手間や材料費がかからないことからコストを抑えることもできる。
【0061】
この発明の構成と、前記一形態の構成との対応において、
この発明の保持部材は、前記モールド部32に対応するも、
この発明は前記の構成のみに限定されるものではなく、その他の構成を採用することもできる。
【0062】
例えば、前記支持溝部は省略してもよい。
【0063】
また、留め部材は、例えば押圧部のほうが幅広であるなど、押圧部と変形脚部で断面形状に違いがある形状であってもよい。
【符号の説明】
【0064】
11…フラットケーブル
15…接続部分
31…バスバー
32…モールド部
37…型溝部
38…支持溝部
39…脚部保持溝
71…留め部材
72…押圧部
73…変形脚部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フラットケーブルの接続部分を、保持部材に保持されたバスバーに重ねた状態で固定したのちにフラットケーブルとバスバーの間で接続がなされるフラットケーブルとバスバーの接続構造であって、
前記固定が、前記接続部分よりも基部側で前記保持部材に重合する部位に、該部位を前記保持部材に対して上から押え付ける押圧部と、該押圧部両端におけるフラットケーブルの幅方向外側を挟む位置に垂設されて前記保持部材の下部において前記押圧部が外れないように変形される変形脚部とを有した留め部材の固定でなされる
フラットケーブルとバスバーの接続構造。
【請求項2】
前記保持部材における前記留め部材が固定される部位の上面に、留め部材よりも幅広の支持溝部が形成された
請求項1に記載のフラットケーブルとバスバーの接続構造。
【請求項3】
前記変形脚部を変形させる型溝部が、前記保持部材に設けられた
請求項1または請求項2に記載のフラットケーブルとバスバーの接続構造。
【請求項4】
前記保持部材における前記留め部材を固定する部位に、前記変形脚部が入るとともにフラットケーブルの長手方向においての留め部材の位置ずれを防止する脚部保持溝が形成された
請求項1から請求項3のうちのいずれか一項に記載のフラットケーブルとバスバーの接続構造。
【請求項5】
前記変形脚部の先端部が、フラットケーブルの幅方向の中間側に位置するように変形された
請求項1から請求項4のうちのいずれか一項に記載のフラットケーブルとバスバーの接続構造。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate


【公開番号】特開2011−210416(P2011−210416A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−74727(P2010−74727)
【出願日】平成22年3月29日(2010.3.29)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【出願人】(391045897)古河AS株式会社 (571)
【Fターム(参考)】