説明

フラビウイルス融合インヒビター

本発明は、フラビウイルスビリオンエンベロープと標的細胞膜の間の融合を阻害するペプチド及び方法、ウイルスゲノムを細胞の細胞質へ送達するプロセスに関する。本発明は、フラビウイルス:細胞の融合を阻害するペプチド又はペプチド誘導体を使用する方法を提供する。本発明は、一部、肝炎ウイルスのE1エンベロープ糖蛋白質及びペスティウイルスのE2エンベロープ糖蛋白質は、先に説明された構造の、切断型クラスII融合蛋白質を有するという発見を基にしている。本発明は、フラビウイルスにより誘導された疾患を治療及び予防するためのペプチド及び方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本出願は、2002年11月8日に出願され、その全体が本願明細書に参照として組入れられている、米国特許仮出願第60/424,746号の利益を請求するものである。
【0002】
1.発明の技術分野
本発明は、フラビウイルス科の一員により、細胞感染症及び/又はビリオン:細胞融合を阻害するペプチド及び方法に関する。
【背景技術】
【0003】
2.発明の背景
2.1. エンベロープを有する動物ウイルスの侵入には、ウイルスの膜と、形質膜又は細胞内膜のいずれかの細胞膜の間の融合を必要とする。クラスI融合蛋白質は、アミノ末端又はその近傍の「融合ペプチド」、延長されたαヘリックスの対、及び一般に疎水性膜貫通アンカードメインに近接している芳香族アミノ酸のクラスターを有する(Carr及びKim, 1993;Suarezら、2000;Wilson、Skehel、及びWiley、1981)。オルソミクソウイルス、パラミクソウイルス、レトロウイルス、アレナウイルス、及びフィロウイルスを含む、いくつかのその他の点では本質的に異なるウイルスは、長さ及び配列は変動するが、全体の構造は類似しているクラスI融合蛋白質をコードしている(Gallaher、1996;Gallaherら、1989)。フラビウイルス科のフラビウイルス属の一員であるダニ媒介脳炎ウイルス(TBEV)のE-糖蛋白質(E-蛋白質)のX-線結晶解析は、この融合蛋白質の他の融合蛋白質とは異なる構造を明らかにした(Reyら、1995)。E-蛋白質は、ジシステイン連結により安定化された内部融合ペプチド及びほとんど逆平行βシートで構成される3個のドメイン(I-III)を保持する。ビリオン内に存在するE-蛋白質のわずかに曲がった棒状の立体配置において、この融合ペプチドは、C-末端膜貫通アンカーから離れた最も遠い点であるドメインIIの先端に位置している。Lescarと同僚らによるトガウイルス科のセムリキ森林熱ウイルス(SFV)の融合蛋白質E1の実験(2001)は、TBEV Eのスカフォールドとの驚くべき一致を明らかにした。最近、医学上重要なフラビウイルスであるデング熱ウイルスのE-糖蛋白質もクラスII構造を有することが示された(Kuhnら、2002)。
【0004】
2.2. フラビウイルス科は、フラビウイルス、ヘパシウイルス及びペスティウイルスの3つの属からなる。米国だけでも、400万人がヘパシウイルス属の一員であるC型肝炎ウイルス(HCV)に感染している。これはHIVに感染している人数の4倍である。米国において毎年、30-50,000名の新たなHCV感染症が発生し、約15-20,000名が死亡している。これらの数は、劇的に増加すると予想される。この感染症は、主に麻薬使用者の針の共有により蔓延するが、偶発的針誤穿刺、1992年以前の血液製剤、長期の血液透析、及び頻繁な性的接触によるリスクもある。リバビリン及びインターフェロンを使用する現在のHCV治療法は、年間$8,000〜$20,000も経費がかかり、患者のほぼ半数を部分的に救済するのみである。末期のHCV疾患は、肝移植の最も頻度の高い適応症であり、その経費は$250,000〜$300,000である。HCV感染症を治療するより良い薬物及びHCV感染症を予防する有効なワクチンが、緊急に必要とされている。フラビウイルス属の一員であるデング熱ウイルス、日本脳炎ウイルス、黄熱病ウイルス、及び西ナイルウイルスは、重要なヒト疾患を世界中で引き起こしている。ウシウイルス性下痢症ウイルス及びボーダー病ウイルスのようなペスティウイルスは、重大な動物疾患を引き起こしている。
【0005】
3.発明の概要
配列類似性を基に、西ナイルウイルスを含むフラビウイルス科のフラビウイルス属の他の一員のE糖蛋白質も、恐らくクラスII融合蛋白質であろう。本願明細書において提示された解析は、フラビウイルス科の別の2種の属であるヘパシウイルス及びペスティウイルスの一員のウイルスの糖蛋白質は、これまで説明されていない構造を有することを示している。ヘパシウイルスであるC型肝炎ウイルスのエンベロープ糖蛋白質E1、及びペスティウイルスのエンベロープ糖蛋白質E2は、クラスII融合蛋白質の切断型に類似している、新規構造を有する。以前には、この構造を持つウイルス蛋白質は同定されていない。本発明者らの知見は予想外であり、既報の研究とは対照的である。C型肝炎ウイルスは、ふたつのエンベロープ糖蛋白質E1(gp35)及びE2(gp70)をコードしており、両方ともC-末端膜貫通アンカードメインを伴う。先行する研究は、別のHCV蛋白質であるE2はクラスII構造を有することを示した。ヘパシウイルス及びペスティウイルス融合蛋白質の構造決定は、薬物及びワクチン開発のためのフラビウイルス融合蛋白質のこれまでは不明であるいくつかの特徴の同定も可能にする。
【0006】
従って本発明は、HCVエンベロープ糖蛋白質E1は、これまで未知の構造である切断されたクラスII融合蛋白質を有することを開示している。この構造は、ウイルス:細胞融合に重要である、HCV E1及び他のクラスIIウイルスの融合蛋白質の領域を同定している。本発明は、クラスII構造を伴う融合ペプチドを有するHCV及びフラビウイルス科の他の一員を含むウイルス類を阻害するペプチドをデザインすることができることも開示している。
【0007】
本明細書において同定されるフラビウイルスエンベロープ糖蛋白質の構造特徴は、フラビウイルス感染症を予防又は治療するためのワクチン及び/又は薬物の開発に関する驚くべき指針を提供する。X-線構造データが利用できるようになる以前に(Wild、Greenwell及びMatthews、1993;Wildら、1994)、いくつかの強力なHIV-1 TMインヒビターが、Gallaher HIV-1 TM融合蛋白質モデルを基に開発された(Gallaherら、1989)。DP178(T20)ペプチド(図5A)は、第III相臨床試験の予備的結果において、AIDS患者のHIV-1負荷(load)を実質的に低下することが報告されている(Hoffman-La Roche及びTrimeris、2002)。ペプチド薬物は、本発明者らの構造を基に開発が比較的容易であるはずである。一旦有効なペプチドインヒビターが説明されたならば、非-ペプチド薬物を開発することができる。
【0008】
より詳細に述べると、本発明は、フラビウイルスによるウイルス感染症及び/又はフラビウイルスのビリオンエンベロープと標的細胞の膜の間の融合(ウイルスゲノムを細胞の細胞質に送達するプロセス)を阻害する方法を提供する。本発明は、本明細書に説明したヘパシウイルスエンベロープ糖蛋白質E1及びペスティウイルスE2糖蛋白質は新規構造を有するという発見に関連している。本発明は、フラビウイルス:細胞融合を阻害するために、ペプチド又はペプチド誘導体を使用する方法を提供する。本発明は、フラビウイルスにより誘導された疾患を治療及び予防する方法を提供する。
【0009】
本発明の様々な態様は、下記群の1種又は複数から選択された1種又は複数のペプチドを含有する医薬組成物を提供する:
A)配列番号:1から配列番号:36のいずれかの配列を有するペプチド;
B)異なるフラビウイルスに由来することを除き、配列番号:1から配列番号:36のいずれかひとつに相同なペプチド;
C)配列番号:1から配列番号:36のいずれかひとつと機能的に同等なペプチドであり、ここで機能的に同等なペプチドは、1個又は複数のアミノ酸残基が相同なアミノ酸により置換され、機能的にサイレントな変化を生じているか、もしくは1個又は複数のアミノ酸が欠失されていることを除き、配列番号:1から配列番号:36の少なくとも1種と同一であるもの。
【0010】
本発明のこの態様の様々な局面は、下記から選択された1種又は複数のペプチドを含有する組成物を提供する:
A)配列番号:1から配列番号:36の1種又は複数のアミノ酸配列を有するペプチドであり、ここでN-末端「Xaa」はアミノ基であり、及びC-末端「Xaa」はカルボキシル基であるもの;
B)配列番号:1から配列番号:36のいずれかの配列を有するペプチドであり、ここでN-末端「Xaa」はアミノ基ではなく、及び/又はC-末端「Xaa」はカルボキシル基でなく、ここでN-末端「Xaa」は、アセチル基、疎水基、カルボベンゾキシル基、ダンシル基、t-ブチルオキシカルボニル基、又は高分子キャリヤ基からなる群より選択され、及び/又はここでC-末端「Xaa」は、アミド基、疎水基、t-ブチルオキシカルボニル基又は高分子基からなる群より選択されるもの;
C)隣接(adjacent)アミノ酸残基を連結する少なくとも1個の結合は非-ペプチド結合であることを除き、配列番号:1から配列番号:36のいずれかの配列を有するペプチド;
D)少なくとも1個のアミノ酸残基は、D-異性体立体配置であることを除き、配列番号:1から配列番号:36のいずれかの配列を有するペプチド;
E)少なくとも1個のアミノ酸は、異なるアミノ酸により置換されている(保存的又は非-保存的変化のいずれか)ことを除き、群「A)」又は「B)」のようなペプチド;
F)ペプチドは、配列番号:1から配列番号:36のいずれかひとつの少なくとも3個の近接ヌクレオチドを有する、先の群「A)」から「E)」のいずれかに示したようなペプチドの機能断片であるペプチド。
【0011】
本発明は、前述の1種又は複数のペプチドと特異的に反応する実質的に精製された抗体も提供する。
本発明は、動物又はヒトに前述のペプチド及び/又は抗体を投与することを含む、動物におけるウイルス感染症を治療又は予防する方法も提供する。
【0012】
3.1.略号
HIV--ヒト免疫不全ウイルス
TBEV--ダニ媒介脳炎ウイルス
DV--デング熱ウイルス
WNV--西ナイルウイルス
HCV--C型肝炎ウイルス
GBV--G型肝炎GBウイルス
CSFV--古典的豚コレラウイルス(classical swine fever virus)
BVDV--ウシウイルス性下痢症ウイルス
BD--ボーダー病ウイルス
HSA--ヒト血清アルブミン
【0013】
5.発明の詳細な説明
本発明は、ビリオンエンベロープと細胞膜の間の融合を阻害することを含む、フラビウイルス感染症を阻害する方法、ウイルスのゲノムを細胞の細胞質に送達するプロセスに関する。開示を限定するものではないが、明確にするために、本発明の説明は下記の小項目に分けられている:
(i)本発明のペプチド、
(ii)本発明の利用性。
【0014】
5.1.本発明のペプチド
ヒト宿主に加え非ヒト宿主に感染するフラビウイルスのものを含む、フラビウイルスビリオンエンベロープと細胞膜の間の融合を阻害するペプチド又は蛋白質を、本発明において使用することができる。本発明の様々な態様において、これらのインヒビターは、フラビウイルス融合蛋白質のいくつかの膜-相互作用ドメインに関連したペプチドを含むが、これらに限定されるものではない。
【0015】
本発明のフラビウイルス阻害ペプチドは、アミノ酸配列HCV融合阻害蛋白質1、X-YQVRNSSGLYHVTNDCPNSSIVYEAADAIL-Z (配列番号:1);HCV融合阻害蛋白質2、X-CSALYWVGDLCGSVFLVGQLFTFSPRRHWTTQDC-Z (配列番号:2);HCV融合阻害蛋白質3、X-SPRRHWTTQDCNCSIYPGHITGHRMAWDMMMNWSPT-Z (配列番号:3);もしくは、HCV融合阻害蛋白質4、X-MMMNWSPTAALLRIPQAIMDMIAGAHWGVLAGIKYFSMVGNW-Z (配列番号:4)、又はそれらの一部、あるいは下記表1から4に提供されたような、HGB、DV、JEV、YFV、WNV、CSFV、BVDV、又はBDVを含むが、これらに限定されるものではない別のフラビウイルスに関連した相同なペプチド配列と、同一又は相同である。
【0016】
本願明細書において使用される用語「相同なペプチド」は、好ましくは所定のウイルスの別株由来の、あるいは関連ウイルス由来の類似ペプチドを意味する。
本願明細書において使用される用語「類似のペプチド」は、少なくとも70%同一であるか又は化学的に類似したアミノ酸を有するそのようなペプチドを意味する。より好ましくは、これは、75%、80%、85%、90%、95%、又はそれよりも多い同一の及び/又は化学的に同等のアミノ酸残基を有するペプチドを意味する。
【0017】
本願明細書において使用される用語「それらの一部」は、列記したペプチドのいずれかの一端又は両端から1個又は複数のアミノ酸を除去した後に得られるペプチド、すなわち切断型ペプチドを意味する。除去されるアミノ酸の数は、残存する断片が「機能的」である限りは、1〜10個の間を変動してよい。本願明細書に定義された用語「機能断片」は、ウイルス:細胞融合を阻害することが可能である断片、ウイルス感染性を阻害すること、非-切断型ペプチドを認識し及び特異的結合すること並びに/又はフラビウイルスエンベロープ蛋白質-媒介型細胞感染症と干渉することが可能な抗体を誘起することが可能である断片を意味する。
【0018】
表1:フラビウイルス融合阻害ペプチド1

【0019】
表2:フラビウイルス融合阻害ペプチド2


【0020】
表3:フラビウイルス融合阻害ペプチド3

【0021】
表4:フラビウイルス融合阻害ペプチド4

【0022】
本発明に従うフラビウイルス融合阻害ペプチド(FIP)に関連したペプチドは、好ましくはFIPペプチドの、又は相同なペプチドの少なくとも3個の近接(contiguous)残基を含み、より好ましくはこれらは4、5、6又は7個の近接残基を含む。更により好ましくはこれらは、少なくとも8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、又は30個の近接残基を含み、最も好ましくはこれらの配列の全ての残基を含む。本願明細書において使用される用語フラビウイルス阻害ペプチドは、好ましくはフラビウイルス阻害蛋白質の対応する部分と同一の配列を有するペプチド及び1個又は複数のアミノ酸が機能的に同等なアミノ酸により置換されているペプチドを意味する(下記参照)。この用語は、ベンジル化された誘導体、グリコシル化された誘導体、及び天然のアミノ酸のエナンチオマーを含むペプチドを含むが、これらに限定されるものではない、これらのペプチドの誘導体も意味する。別の本発明の態様において、フラビウイルス阻害ペプチド、関連したペプチド又は誘導体は、蛋白質のようなキャリヤ分子に連結される。本発明のこの態様において有用であることが企図される蛋白質は、(ヒト血清アルブミン)を含むが、これらに限定されるものではない。追加のアミノ酸を含むフラビウイルス阻害ペプチド-関連ペプチドも、本発明において有用であることが企図されている。
【0023】
ペプチドは、天然の又は組換えウイルス蛋白質から生成されるか、又は標準の組換えDNA技法(例えば、適当な転写プロモーターの制御下での所望のペプチドをコードしている組換え核酸分子を含む微生物によるペプチドの発現、及び該微生物からの所望のペプチドの収集)を用い生成されてもよい。好ましくは本発明のペプチドは、メリフィールド固相合成法(Clark-Lewisら、Science、231: 134-139 (1986))を含むが、これらに限定されるものではない当該技術分野において公知のいずれかの方法を用い、合成されてもよい。
【0024】
本発明のFIP、又はそれらの断片もしくは誘導体は、一次アミノ酸配列として、アミノ酸配列HCV融合阻害蛋白質1、X-YQVRNSSGLYHVTNDCPNSSIVYEAADAIL-Z (配列番号:1);HCV融合阻害蛋白質2、X-CSALYWVGDLCGSVFLVGQLFTFSPRRHWTTQDC-Z (配列番号:2);HCV融合阻害蛋白質3、X- SPRRHWTTQDCNCSIYPGHITGHRMAWDMMMNWSPT-Z (配列番号:3);又は、HCV融合阻害蛋白質4、X-MMMNWSPTAALLRIPQAIMDMIAGAHWGVLAGIKYFSMVGNW-Z (配列番号:4)、又はそれらの単独もしくは複数の機能的部分を含むものを含むが、これらに限定されるものではない。同じく、HGB、DV、JEV、YFV、WNV、CSFV、BVDV、又はBDVを含むが、これらに限定されるものではない、別のフラビウイルスに関連した相同なペプチド配列も企図される。同じく機能的に同等なアミノ酸残基がその配列内の残基と置換され、機能的にサイレントな変化を生じているような変更された(すなわち、本願明細書において言及された配列のいずれかから変更された)配列も企図される。例えば、配列内の1個又は複数のアミノ酸残基は、当初のアミノ酸を、機能的同等物として作用する同様の極性の別のアミノ酸と交換し、機能的にサイレントな変更を生じることにより置換することができる。この配列内のアミノ酸の置換は、そのアミノ酸が属するクラスの別の一員から選択されてもよい。例えば、非極性(疎水性)アミノ酸は、アラニン、ロイシン、イソロイシン、バリン、プロリン、フェニルアラニン、トリプトファン、及びメチオニンを含む。極性中性アミノ酸は、グリシン、セリン、トレオニン、システイン、チロシン、アスパラギン及びグルタミンを含む。正帯電した(塩基性)アミノ酸は、アルギニン、リシン及びヒスチジンを含む。負帯電した(酸性)アミノ酸は、アスパラギン酸及びグルタミン酸を含む。例えば、限定するものではないが、このようなペプチドは、1個又は複数のD-アミノ酸も含むことができる。更に、本発明のいずれかの態様において、ペプチドは、不充分なキャリヤ蛋白質を含むか、又は全くキャリヤ蛋白質を含まない。
【0025】
5.3.本発明の利用
本発明のフラビウイルス阻害ペプチドは、フラビウイルスビリオン:細胞融合を阻害するために利用することができ、従ってフラビウイルス感染症の治療及び更にはフラビウイルス感染症に対する予防において使用することができる。本発明のペプチドは、生理食塩水、緩衝した生理食塩水、デキストロース、及び水を含むが、これらに限定されるものではない、いずれかの無菌の、生体適合性医薬キャリヤ中において、患者へ投与することができる。ペプチドを患者へ投与する方法は、当該技術分野において周知であり;これらは、皮内、筋肉内、腹腔内、静脈内、皮下、経口及び鼻腔内を含むが、これらに限定されるものではない。加えて、脳室内及び髄腔内注射を含む、いずれか適当な経路により、中枢神経系へ本発明の医薬組成物を導入することが望ましいことがある。
【0026】
本発明は、リポソーム、微粒子、又はマイクロカプセルを介して投与されたフラビウイルス阻害ペプチド、ペプチド断片、又は誘導体(前述のような)を含有する医薬組成物を提供する。本発明の様々な態様は、フラビウイルス阻害ペプチドの持続放出を実現するためのそのような組成物の使用を企図している。別の態様は、分子キャリヤ(例えば、HSA)に連結された、FIP又はそれらの誘導体の投与を企図している。
【0027】
本発明の様々な態様は、フラビウイルス阻害ペプチド及び/又はこれらのペプチドに特異的な抗体の、フラビウイルス感染症(例えば、デング出血熱、西ナイル病、C型肝炎又は古典的豚コレラ)に罹患したヒト又は動物対象への投与を提供する。いずれかの態様において、これらのペプチド及び/又は抗体は、典型的には実質的に精製される(本願明細書において使用される用語「実質的に精製される」は、純度約80%より大きいペプチド、ペプチドアナログ、又は抗体を意味する。より好ましくは、「実質的に精製される」は、純度が約90%より大きい又は約95%より大きい、ペプチド、ペプチドアナログ、又は抗体を意味する。最も好ましくは、純度が約99%より大きい、ペプチド、ペプチドアナログ、又は抗体を意味する。)。機能的に、「実質的に精製される」は、それを本願明細書に提供される目的に適したものにすることができる程度に夾雑物を含有しないことを意味する。別の態様は、フラビウイルス感染症のリスクのあるものへのこれらのペプチドの予防的投与を提供する。
本発明の別の態様は、フラビウイルス科の一員による、ビリオン:細胞融合に関連している切断型フラビウイルス融合蛋白質の構造を同定する方法及び構造それ自身を提供する。
【0028】
本発明の他の態様は、下記の1種又は複数の選択された式を有するペプチドを提供する。
A.本発明の様々な態様は、下記のC型肝炎ウイルス融合阻害ペプチドを提供する:C型肝炎ウイルス融合阻害蛋白質1、X-YQVRNSSGLYHVTNDCPNSSIVYEAADAIL-Z (配列番号:1);HCV融合阻害蛋白質2、X-CSALYWVGDLCGSVFLVGQLFTFSPRRHWTTQDC-Z (配列番号:2);HCV融合阻害蛋白質3、X-SPRRHWTTQDCNCSIYPGHITGHRMAWDMMMNWSPT-Z (配列番号:3);又は、HCV融合阻害蛋白質4、X-MMMNWSPTAALLRIPQAIMDMIAGAHWGVLAGIKYFSMVGNW-Z (配列番号:4)。
【0029】
B.本発明の別の態様は、そのフラビウイルスが、ヘパシウイルス属の一員又は仮の一員であるペプチド又はペプチドホモログを提供する。本発明の好ましい態様は、ヘパシウイルス属の仮の一員がG型肝炎ウイルスであるペプチド又はペプチドアナログを描き、及びペプチドは、下記のG型肝炎ウイルス融合阻害ペプチドからなる群より選択される:G型肝炎ウイルス融合阻害蛋白質1、X-RVTDPDTNTTILTNCCQRNQVIYCSPSTCL-Z (配列番号:5);G型肝炎ウイルス融合阻害蛋白質2、X-TCDALDIGELCGACVLVGDWLVRHWLIHIDLNET-Z (配列番号:13);G型肝炎ウイルス融合阻害蛋白質3、X-IHIDLNETGTCYLEVPTGIDPGFLGFIGWMAGKVEA-Z (配列番号:21);又は、G型肝炎ウイルス融合阻害蛋白質4、X-WMAGKVEAVIFLTKLASQVPYAIATMFSSVHYLAVGALIYYS-Z (配列番号:29)。
【0030】
C.本発明の別の態様は、フラビウイルス属由来のペプチド又はペプチドホモログを提供する。この態様の好ましい局面において、ペプチド又はペプチドアナログは、デング熱ウイルス由来であり、及びこれらのペプチドは、下記のデング熱ウイルス融合阻害ペプチドからなる群より選択される:デング熱ウイルス融合阻害蛋白質1、X-RDFVEGVSGGSWVDIVLEHGSCVTTMAKNKPTLDF-Z (配列番号:6);デング熱ウイルス融合阻害蛋白質2、X-KRFVCKHSMVDRGWGNGCGLFGKGGIVTCAMFTC-Z (配列番号:14);デング熱ウイルス融合阻害蛋白質3、X-MVLLQMEDKAWLVHRQWFLDLPLPWLPGADTQGSNW-Z (配列番号:22);又は、デング熱ウイルス融合阻害蛋白質4、X-MAILGDTAWDFGSLGGVFTSIGKALHQVFGAIYGAAFSGVSW-Z (配列番号:30)。
【0031】
D.本発明の別の態様は、フラビウイルス属の一員である日本脳炎ウイルス由来のペプチド又はペプチドホモログを提供する。これらの態様の好ましい局面において、ペプチド及び/又はペプチドアナログは、下記の日本脳炎ウイルス融合阻害ペプチドからなる群より選択される:日本脳炎ウイルス融合阻害蛋白質1、X-RDFIEGASGATWVDLVLEGDSCLTIMANDKPTLDV-Z (配列番号:7);日本脳炎ウイルス融合阻害蛋白質2、X-SSYVCKQGFTDRGWGNGCGLFGKGSIDTCAKFSC-Z (配列番号:15);日本脳炎ウイルス融合阻害蛋白質3、X-FYVMTVGSKSFLVHREWFHDLALPWTSPSSTAWRNR-Z (配列番号:23);又は、日本脳炎ウイルス融合阻害蛋白質4、X-LAALGDTAWDFGSIGGVFNSIGKAVHQVFGGAFRTLFGGMSW-Z (配列番号:31)。
【0032】
E. 本発明の別の態様は、フラビウイルス属の一員が黄熱病ウイルスであるペプチド又はペプチドホモログを提供し、これらのペプチドは、下記の黄熱病ウイルス融合阻害ペプチドからなる群より選択される:黄熱病ウイルス融合阻害蛋白質1、X-RDFIEGVHGGTWVSATLEQDKCVTVMAPDKPSLDI-Z (配列番号:8);黄熱病ウイルス融合阻害蛋白質2、X-GDNACKRTYSDRGWGNGCGLFGKGSIVACAKFTC-Z (配列番号:16);黄熱病ウイルス融合阻害蛋白質3、X-SYIAEMETESWIVDRQWAQDLTLPWQSGSGGVWREM-Z (配列番号:24);又は、黄熱病ウイルス融合阻害蛋白質4、X-LAVMGDTAWDFSSAGGFFTSVGKGIHTVFGSAFQGLFGGLNW-Z (配列番号:32)。
【0033】
F.本発明の別の態様は、フラビウイルス属の一員が西ナイルウイルスであるペプチド及び/又はペプチドホモログを提供し、これらのペプチドは、下記の西ナイルウイルス融合阻害ペプチドからなる群より選択される:西ナイルウイルス融合阻害蛋白質1、X-RDFLEGVSGATWVDLVLEGDSCVTIMSKDKPTIDV-Z (配列番号:9);西ナイルウイルス融合阻害蛋白質2、X- PAFVCRQGVVDRGWGNGCGLFGKGSIDTCAKFAC-Z (配列番号:17);西ナイルウイルス融合阻害蛋白質3、X-YYVMTVGTKTFLVHREWFMDLNLPWSSAGSTVWRNR-Z (配列番号:25);又は、西ナイルウイルス融合阻害蛋白質4、X-LAALGDTAWDFGSVGGVFTSVGKAVHQVFGGAFRSLFGGMSW-Z (配列番号:33)。
【0034】
G.本発明の他の態様は、フラビウイルスが、ペスティウイルス属の一員であるペプチド及び/又はペプチドホモログを提供する。これらのペプチド又はそれらのホモログの態様の様々な局面において、ペスティウイルス属の一員は、古典的豚コレラウイルスであり、これらのペプチドは下記の豚コレラウイルス融合阻害ペプチドからなる群より選択される:古典的豚コレラウイルス融合阻害蛋白質1、X-GQLACKEDYRYAISSTNEIGLLGAGGLTTTWKEYN-Z (配列番号:10);古典的豚コレラウイルス融合阻害蛋白質2、X-KGKYNTTLLNGSAFYLVCPIGWTGVIECTAVSPT-Z (配列番号:18);又は、古典的豚コレラウイルス融合阻害蛋白質3、X-TLRTEVVKTFRRDKPFPHRMDAVTTTVENEDLFY-Z (配列番号:26);又は、古典的豚コレラウイルス融合阻害蛋白質4、X-QQYMLKGEYQYWFDLDVTDRHSDYFAEFVVLVVVALLGGRYI-Z (配列番号:34)。
【0035】
H.本発明の別の態様は、ペスティウイルス属の一員が、ウシウイルス性下痢症ウイルスであるペプチド及びペプチドホモログを提供し、これらのペプチドは、下記のウシウイルス性下痢症ウイルス融合阻害ペプチドからなる群より選択される:ウシウイルス性下痢症ウイルス融合阻害蛋白質1、X-GHLDCKPEFSYAIAKDERIGQLGAEGLTTTWKEYS-Z (配列番号:11);ウシウイルス性下痢症ウイルス融合阻害蛋白質2、X-RGKFNTTLLNGPAFQMVCPIGWTGTVSCTSFNMD-Z (配列番号:19);又は、ウシウイルス性下痢症ウイルス融合阻害蛋白質3、X-TLATEVVKIYKRTKRFRSGLVATHTTIYEEDLYH-Z (配列番号:27);又は、ウシ下痢症ウイルス融合阻害ペプチド4、X-QQYMLKGEYQYWFDLEVTDHHRDYFAESILVVVVALLGGRYV-Z (配列番号:35)。
【0036】
I.本発明の別の態様は、ペスティウイルス属の一員が、ボーダー病ウイルスであるペプチド及びペプチドホモログを提供し、及びこれらのペプチドは、下記のボーダー病ウイルス融合阻害ペプチドからなる群より選択される:ボーダー病ウイルス融合阻害ペプチド:古典的豚コレラウイルス融合阻害蛋白質1、X-GEFACREDHRYALAKTKEIGPLGAESLTTTWTDYQ-Z (配列番号:12);ボーダー病ウイルス融合阻害蛋白質2、X-RGKYNATLLNGSAFQLVCPYEWTGRVECTTISKS-Z (配列番号:20);又は、ボーダー病ウイルス融合阻害蛋白質3、X-TLATTVVRTYRRSKPFPHRQGAITQKNLGEDLH-Z (配列番号:28);又は、ボーダー病ウイルス融合阻害ペプチド4、X-QQYMLKGQYQYWFDLEVISSTHQIDLTEFIMLAVVALLGGRYV-Z (配列番号:36)。
【0037】
前述のいずれの群においても、アミノ酸は一文字表記で表されている。これらの態様の様々な局面において、"X"は、アミノ基、アセチル基、疎水基又は高分子キャリヤ基を含み;"Z"は、カルボキシル基、アミド基、疎水基又は高分子キャリヤ基を含む。本発明のこの態様の別の局面において、Xは、疎水基、カルボベンゾキシル基、ダンシル基、t-ブチルオキシカルボニル基、脂質複合体(lipid conjugate)、ポリエチレングリコール基、又は炭水化物である。この態様のいずれかの局面において、Zは、t-ブチルオキシカルボニル基、脂質複合体、ポリエチレングリコール基、又は炭水化物であってよい。
【0038】
更に、この態様の局面は、隣接アミノ酸残基に連結している少なくとも1個の結合が、非-ペプチド結合であるペプチドも含む。特にこの態様の好ましい局面において、非-ペプチド結合は、イミド、エステル、ヒドラジン、セミカルバゾイド又はアゾ結合である。
この態様の別の局面は、少なくとも1個のアミノ酸がD-異性体アミノ酸であるペプチドを提供する。
本発明のこの態様の追加の局面は、妥協的な(compromising)少なくとも1個のアミノ酸置換が、第一のアミノ酸残基が、第二の異なるアミノ酸残基と置換されるように行われるペプチドを提供する。これらの置換は、保存的又は非-保存的であることができる。このペプチドである限りは、本発明に従い依然機能的である。
【0039】
本発明のこの態様の他の局面は、少なくとも1個のアミノ酸が欠失されているペプチドを提供する。先に注記されたように、本発明のこの態様のペプチドは、先に示した配列番号のひとつの少なくとも3個の近接アミノ酸を含まなければならず、並びに機能的セグメントでなければならない。
前述の修飾の組合せは、本発明の一部であるとみなされることが注目される。
【0040】
6.実施例:C型肝炎ウイルスE1は切断型クラスII融合蛋白質である
プロテオミクスのコンピュータツールを用い、HCV E1蛋白質を、プロトタイプのクラスII融合蛋白質であるTBEV Eのスカフォールドに合致させた。HCV E1はTBEV Eよりも短いので、本発明者らは、前者は、後者に対しいくつかの「欠失」を含むであろうと判断した。HCV E1融合ペプチド(Flintら、1999)は、そのカルボキシル末端(C-末端)膜貫通アンカードメインから最も遠くのその分子の末端に位置し、並びに他のクラスII融合蛋白質と同様に、ほとんどは逆平行β-シートで構成されると仮定された。この後者の仮定は、Chou-Fasman解析(Chou及びFasman、1974)並びにRobson-Garnier解析(Biouら、1988)、最も一般的には二次構造予測アルゴリズムの適用により裏付けられた。
【0041】
HCV融合ペプチド(完全長ポリ蛋白質のアミノ酸[aa]272から281)を、TBEV Eの融合ペプチド(aa 385-396)と並置した(図1A)。TBEV E及びHCV E1の両方の融合ペプチドは、いずれかの末端にシステイン残基を有し、並びにほとんど芳香族及び疎水性アミノ酸であるコアを含む(図1A)。HCV E1において容易に同定可能である別のドメインは、膜貫通ドメインである。E1のカルボキシル末端近傍の疎水性配列のアミノ酸361から381は、TMpred(膜貫通予測ソフトウェア、ch.embnet.org参照)により、膜貫通ヘリックスを形成すると推定された(TMpredスコア1308、>500は統計学的に有意である)。
【0042】
HCV E1における予想されたβシート及びαヘリックスのいくつかの領域は、TBEV Eの二次構造を仮定するためにわかっている配列との類似性を示した(図1A)。アミノ末端から始まるHCV E1の第一の類似性は、TBEV EのβシートD0において始まり、前記融合ペプチドを通じて伸びている。配列アラインメントアルゴリズムであるPRSS3を用い、HCV E1のアミノ酸246-281とTBEV Eのアミノ酸350-396の間に有意な類似性が存在する(p<0.025)ことを確認した(図1B)。この融合ペプチドは、クラスII融合蛋白質のβシートの側方に位置し、Chou-Fasman解析及びRobson-Garnier解析により、TBEV Eのb及びc βシートとの類似性を伴う予想されたβシートは、実際、推定HCV E1融合ペプチドのいずれかの側に存在すると推定された。HCV E1は、TBEV Eの2個の最長ヘリックスαA及びαBの間のアミノ酸配列との類似性のある延長された領域も有する。HCV E1のアミノ酸316-356の、TBEV Eのアミノ酸496-544とのアラインメントには、統計学的有意性が存在する(P<0.025)(図1B)。
【0043】
これらのアラインメントの説得性(plausibility)を評価するために、HCV E1の三次元モデルを、TBEV EのドメインII上でスカフォールドとした(図2A)。同様の配列/構造を、同様の位置に描いた。E1の「b」シートの再配向(reorienting)は、8個のシステイン残基を密に近接させるために必要であるEに対する唯一の変化である。HCV E1の4個のジシステインは、TBEV EのドメインIIの3個のジシステインのように、その分子の中心に「ジッパー」を形成する可能性がある(図2B)。このモデルは、これらが表面に接近可能であるように、5個のHCV E1グリコシル化部位を定める。加えてほとんどの疎水性残基は、融合ペプチドと膜貫通アンカーの間のE1の一方側の領域に存在する(下記、図5参照)。
【0044】
図2Bに描かれたHCV E1構造の各々は、「i」から「αB」の領域以外は、Chou-Fasman及びRobson-Garnierの両予測に適合した。「i」及び「j」と指定された構造は、Chou-Fasman解析によってはβシートであるが、Robson-Garnier解析によってはαヘリックスであると推定された。「αB」と指定された構造は、Chou-Fasman解析によりβシートであるが、Robson-Garnier解析によってはαヘリックスであると推定された。HCV E1は、TBEV Eに比べ、膜貫通ヘリックス前の分子の部分(プレ-アンカー)の多くを失っているように見える。TBEV Eのこの領域には、X-線結晶解析により試験したEのエクトドメイン部分を作製するために使用したアミノ酸395のトリプシン切断部位が続き、その結果TBEV Eプレ-アンカー(基部)構造は不確定である。TBEV Eのプレ-アンカーは、両親媒性のαヘリックスを形成すると予測されている(Allisonら、1999)。TBEV Eのプレ-アンカードメインの配列(aa 693-721)は、ロシンジッパーの特徴を有し、すなわち、7個のアミノ酸周期性の第一及び第四の位置(a及びd)がロイシン又は他の疎水性アミノ酸である(図1A)。HCV E1のプレ-アンカー配列も、「ロイシンジッパー」の特徴を伴うαヘリックスであると予測された(Charloteauxら、2002)。HCV E1の「αA」と「αB」の間の二次構造の、TBEV Eとの有意なアミノ酸配列類似性のために、これは、TBEV Eにおいて描かれた。図2Bに描かれたHCV E1の3Dモデルにはいくつかの可能性のある代案が存在し、及びその二次構造は膜との相互作用を変化することが可能である。
【0045】
本発明者らの解析は、HCV E1とは対照的に、TBEV E又は他のフラビウイルスE蛋白質のドメインI又はIIにおける配列との有意な類似性を伴うHCV E2の配列を全く明らかにしなかった(4種の主要な血清群の各々の代表を試験した)。HCV E2のN-末端の半分の大半は、超可変領域1(HVR1)を含むが、これはTBEV Eとの配列類似性を伴わなかった。しかし本発明者らは、HCV E2のC-末端の半分(aa 549-726)の、TBEV EのドメインIIIから、ふたつの推定された膜貫通ドメインの最初のものを通る、TBEV Eの領域(aa 590-763)との有意なアラインメントを検出した(p<0.025)(図1、TBEV E TM1、アミノ酸448-469、TMpred:1496;TM2、アミノ酸474-496、TMpred:1962)。先に考察したように、TBEV Eのプレ-アンカー領域は、「ロイシンジッパー」の特徴を伴う配列(aa 693-721)を有し;類似のモチーフ(aa 675-703)が、HCV E2プレ-アンカーにおいて認められた(図1)。加えて、HCV E2のカルボキシル(C)末端は、TBEV Eのもの同様、膜を2回貫通する可能性がある疎水性アミノ酸の短い配列(stretch)を含む。HCV E2の膜貫通アンカー(複数)(TMpredスコア:1364)は、TBEV EのTM1のように、帯電したアミノ酸により中断された。従って配列アラインメント及び構造予測により、HCV E2とTBEV EのC-末端部分の間には、明らかな類似性が存在した。
G型肝炎GBウイルス(GBV-B)のE1のHCV E1との有意なアラインメントは、このフラビウイルス科の未分類の一員も、切断型クラスII融合蛋白質をコードしていることを示している。
【0046】
6.1.材料及び方法
フラビウイルス科の代表的なプロトタイプ株を、配列及び構造の比較に使用した。試験した株は、TBEVの株Neudoerfl(寄託番号:P14336);及び、C型肝炎ウイルス(P27958)のヒトプロトタイプ株H(亜型1a)を含んだ。日本脳炎ウイルス、JAOARS982株(P32886)、黄熱病ウイルス、17D-204株(P19901)、デング熱ウイルス2型PR-159/S1株(P12823)、及び西ナイルウイルスNY 2000-crow3356株(AF404756)を含む、フラビウイルスの主要な血清群の代表を、いくつかの比較に使用した。本発明者らは、HCV配列を、フラビウイルスに割当てられていない一員であるGBウイルス-Bウイルス(AAC54059)のそれとも比較した。
【0047】
MACMOLLY(登録商標)蛋白質解析用ソフトウェア(Soft Gene社、ベルリン)を用い、制限された配列類似性の領域を位置づけ、Chou-Fasman及びRobson-Garnier解析を行った。PRSS3は、rdf2由来のプログラムであり(Pearson及びLipman、1988)、Smith-Waterman配列アラインメントアルゴリズムを使用するが(Smith及びWaterman、1981)、これを用い、蛋白質アラインメントの有意性を決定した。PRSS3は、ftp. virginia. eduからアノニマスftpで利用可能な配列解析プログラムのFASTAパッケージの一部である。PRSS3のデフォルトの設定を用い、これはblosum50スコアリングマトリックス、ギャップオープニングペナルティが12、及びギャップ伸長ペナルティが2であった。示されたアラインメントは、有意なスコアを生じる最長の配列よりもむしろ、最高アラインメントスコアを生じるものであった。Chou-Fasman及びRobson-Garnierアルゴリズムは、水性環境における蛋白質構造を推定するものであるが、これらは脂質二重層内の蛋白質構造は推定することができない。膜貫通ヘリックスを形成するための有意な性向を伴うドメインは、TMpred(EXPASY、Swiss Institute of Bioinformatics)により同定した。TMpredは、天然の膜貫通糖蛋白質のデータベースであるTMbaseの統計解析を基礎にしている(Hofmann及びStoffel、1993)。Roger Sayleにより開発されたRasMacを使用し、TBEV Eの3Dモデルを表示した。
【0048】
6.2.結果及び考察
これらの結果は、ヘパシウイルスのエクトドメインは、クラスII融合蛋白質構造の切断型であることを示している。HCV E1のエクトドメインは、「ヒンジ」領域から融合ペプチドまでのTBEV Eの一部とおおまかに同等である(図2)。本発明者らの結論は、HCV E2は完全なクラスII融合蛋白質のスカフォールドと合致すると推定したYagnikらの結論(2000)とは対照的である。これらのモデルは、以前には説明されていなかった。Yagnikら(2000)は、HCV E2は完全なクラスII融合蛋白質のスカフォールドと合致すると説明した。Lescarとその同僚ら(2001)は、それらのSFV E1の構造決定は、融合蛋白質の第二のクラスの存在を確立し、これは「フラビウイルスエンベロープ蛋白質Eの3D構造を基にした、C型肝炎ウイルスエンベロープ蛋白質E2の提唱されたモデルを事実上裏付けた」と発表した。これとは対照的に本発明者らのモデルは、HCV E1は、クラスIIであるが、先に説明されたものとは類似していないことを示した。HCV E2とTBEV Eの間には配列及び構造の類似性が存在するが、これらの類似性は、これらの蛋白質のC-末端部分に限定されており、先に提唱されたもの(Yagnikら、2000)とは異なっている。
【0049】
7.実施例:ペスティウイルスE2は切断型クラスII融合蛋白質である
HCV E1クラスII融合蛋白質モデルに関する追加の証拠を提供するために、本発明者らは、第三のフラビウイルス科の属であるペスティウイルスの融合蛋白質が、フラビウイルス属及びヘパシウイルス属の一員の融合蛋白質と、構造/配列類似性を共有するかどうかを決定した。ペスティウイルスは、3種のエンベロープ糖蛋白質Erns、E1及びE2をコードしている。RNAse活性による分泌蛋白質であるErnsは、疎水性膜貫通アンカードメインを有さない。Ernsは、二重膜を超えたErnsの移行(translocation)を媒介するC-末端の帯電した両親媒性セグメントを有さない(Langedijk、2002)。ペスティウイルスE1及びE2は両方とも、膜貫通アンカーとして機能することができるC-末端疎水性ドメインを有する。従って、本発明者らは、ペスティウイルスE1又はE2のいずれかは、ペスティウイルス融合蛋白質でなければならないと仮定した。
【0050】
推定融合ペプチド(aa 818-828)は、CSFV E2に存在し、これは2個のシステイン残基間に位置した芳香族及び疎水性アミノ酸を伴うコンセンサス配列を含んでいる(図1)。これらのシステイン残基に加えその間の配列は、ペスティウイルス間で高度に保存されており、これはクラスI及びIIの他のエンベロープを有するRNAウイルス由来の融合ペプチド(図示せず)についてもあてはまる。CSFV E2とTBEV EのN-末端の間(又は他のフラビウイルス間)に統計学的に有意なアラインメントは検出されないが、この領域のCSFV E2(aa 792-835)とHCV E1(aa 253-294)の間には、有意なアラインメントが検出された(p<0.01)(図1B)。更に、この推定融合ペプチドの側方に位置する配列は、Chou-Fasman及びRobson-Garnierの両解析によりβシートを形成すると推定された(補足データ)。CSFV E2(aa 841-913)とHCV E1(aa 301-383)の間の有意なアラインメント(p<0.05)も決定した。伸長により、CSFV E2の中心部分は、TBEV EのドメインIIに構造上似ていると推定された。CSFV E2のアミノ酸914-1018とTBEV EのドメインIIIの配列(aa 587-685)の間に、有意なアラインメント(p<0.005)が検出された(図1B)。CSFV E2のこの領域(aa 914-1123)と、TBEVドメインIIIとアラインメントするHCV E2の領域内の配列(aa 549-743)にも、有意な類似性が存在した(p<0.005)。加えてTMpredは、CSFV E2の疎水性C-末端ドメインは、脂質二重層を貫通する高い性向を有する(スコア:1137)ことを確認した。HCV E1/E2及びTBEV TM1の膜貫通ドメインのように、CSFV E2の推定膜貫通アンカーは、中心に正電荷を有している。
【0051】
可能性のある融合ペプチドの内部位置と組合せた、CSFV E2、HCV E1/E2及びTBEV Eの間の有意な配列類似性の領域を基に、本発明者らは、TBEV Eと比べ、CSFV E2は、βシートE0からI0に対応するセグメントを含むドメインI部分を欠いていると結論付けた。CSFV E2は、プレ-アンカードメイン配列中のTBEV Eと比べ若干短いセグメント、すなわち、TBEV EドメインIII及び膜貫通ドメインとのアラインメント間の配列を含むようにも見える(図1B)。ロイシンジッパーは、CSFV E2のプレ-アンカー中には明らかでない。CSFV E2の三次元モデル(図2C)は、図1のアラインメントがもっともらしいことを確認している。各システイン残基は、別のシステイン残基に近接しており、ジシステイン橋を形成する可能性がある。CSFV E2は、HCV E1よりもフラビウイルスEと比べより少ない切断を伴うにもかかわらず、HCV E1のように、切断型クラスII融合蛋白質の構造に適合する。E2はペスティウイルス属間で保存されているので、CSFV E2のTBEV Eとの類似性は、他のペスティウイルスに拡大される。
【0052】
いずれのペスティウイルスのE1エンベロープ糖蛋白質も、配列決定されたフラビウイルスE蛋白質との有意な配列類似性を持たない。未熟なフラビウイルスビリオンは、小さい膜蛋白質Mに対する前駆体prMを含む。prMは、ウイルス放出時に、フューリン又はフューリン様プロテアーゼにより小胞体において切断され、フラビウイルスビリオンの表面に局在化された成熟M蛋白質を生成する(Stadlerら、1997)。CSFV E1の配列(アミノ酸173-256)は、TBEV prMのアミノ酸583-654に対し、類似性を有する(p=0.030)(図3A)。CSFV E1は、フューリンコンセンサス切断部位である、配列RXR/KR(配列番号:37)を含まない。TMpredは、CSFV E1の1/3に、有意な膜貫通ドメインを推定するが、CSFV E1も、同定可能な融合ペプチドを含まない。TBEV Eの膜貫通ドメイン同様、HCV E1及びE2及びCSFV E2、並びにTBEV prM (TMpredスコア=1828) CSFV E1のC-末端は、中心に正電荷を伴う膜貫通ドメイン(TMpredスコア=1884)を形成すると推定された。
【0053】
7.1.材料及び方法
古典的豚コレラウイルスのAlfort 187株、aka hogコレラウイルス(CAA61161)を、フラビウイルス科のペスティウイルス属のプロトタイプとして使用した。ウシウイルス性下痢症ウイルス(BVDV)遺伝子型1、akaペスティウイルス1型、菌株NADL(CAB91847)及びボーダー病ウイルス株BD31(AAB37578)を含む、他のペスティウイルスの種の型を、別の比較に使用した。プロテオミクスのためにコンピュータを使用する方法は、6.1に説明している。
【0054】
7.2.結果及び考察
ペスティウイルスE2蛋白質は、ヘパシウイルスE1よりもフラビウイルスE と比べより少ない切断を伴うが、切断型クラスII融合蛋白質である。
【0055】
8.実施例:フラビウイルス科ゲノムの遺伝子の順番
類似した機能を有する蛋白質をコードしている遺伝子は、フラビウイルス科の様々な一員のゲノムにおいて類似した位置に存在することができる。フラビウイルス科の全員の正-極性の一本鎖RNAゲノムは、1個の大きいポリ蛋白質に翻訳され、これは引き続きウイルスの及び細胞のプロテアーゼにより、機能蛋白質へ切断される。TBEV及びフラビウイルス属の他の一員のポリ蛋白質中の蛋白質の順番(N末端からC末端へ)は、C-prM-E-非構造(C:カプシド)であり、並びにヘパシウイルスのポリ蛋白質の蛋白質の順番は、C-E1-E2-P7-非構造的である(図4)。フラビウイルスE遺伝子の5'位置は、E蛋白質のドメインII内の融合ペプチドをコードしているのに対し、Eの受容体結合ドメインは、E遺伝子の 3'位置によりコードされたドメインIII内に恐らく位置している(Crill及びRoehrig、2001;Mandlら、2000)。融合機能及び受容体機能は、各々、ふたつの異なるHCV蛋白質、E1及びE2内に存在し、これらの機能を実行するフラビウイルスEのドメインと同じ順番で生じることができる(図4)。ヘパシウイルスE1及びE2は、先祖E遺伝子への、膜貫通アンカー及び超可変領域1を含む可変ドメインの挿入(HVR-1、図1)により作成することができる。あるいは、HCV E1は、先祖prMから個別の融合蛋白質へ進化され、E2において融合ペプチド及び融合機能を同時に喪失している。しかしTBEV E及びHCV E1及びE2の間の配列類似性は、この後者の可能性については好ましいものではない。
【0056】
ペスティウイルスポリ蛋白質中の蛋白質の順番は、Npro-C-Erns-E1-E2-p7-被構造である。ペスティウイルスは、他のふたつのフラビウイルス属の一員間では明確に相同でない、ふたつの蛋白質Npro及びErnsをコードしている。ペスティウイルスE1及びE2は、各々、フラビウイルスM及びEと配列が類似している。TBEV Eのように、ペスティウイルスE2は、融合蛋白質及び受容体結合蛋白質の両方として役立つことができる。これらの機能は、ペスティウイルスE2の類似構造により提示されるように思われる、TBEV EドメインII及びIIIにより実行される(図4)。TBEV PrM/Mは、内部細胞膜をE2により媒介された融合から保護するように機能し、及びペスティウイルスE1は、融合/受容体蛋白質であるE2について同じ機能を利用することが可能である。Npro及びErnsを除き、配列及びその他の類似性を伴う構造蛋白質の順番は、ペスティウイルス及びフラビウイルスのポリ蛋白質において類似している。
【0057】
TBEV Eは、ふたつの疎水性C-末端膜貫通ドメインTM1及びTM2を有する(図1)。ヘパシウイルス及びペスティウイルスは、小さい疎水性ペプチド「p7」をコードしており、これは細胞膜又はウイルス膜に会合することができる。p7を作出する切断は不充分であり及び遅延され、その結果、HCV E2及びペスティウイルスE2の多くは、未切断のE2-p7前駆体として細胞内に存在する(Harada、Tautz、及びThiel、2000)。p7遺伝子は、類似したゲノムの位置に局在化され、並びにフラビウイルスEの第二の膜貫通ドメインTM2をコードしている配列から進化している(図4)。従ってコンセンサスフラビウイルス科ゲノムは、X1-C-X2-M-融合-結合-TM1-TM2-非構造-3'として表すことができ、ここでX1及びX2は各々、ペスティウイルスに挿入された配列Npro及びErnsを表し、Mは、フラビウイルスのprM/M、ペスティウイルスのE1を表し、並びにTM2は、フラビウイルスの第二の膜貫通ドメイン並びにヘパシウイルス及びペスティウイルスのp7である。これらの遺伝子の順番及び機能の類似性は、E1は、HCVの融合蛋白質であるという仮説を裏付けている。
【0058】
8.1.材料及び方法
6.1及び7.1に説明されたフラビウイルス科の代表のプロトタイプ株を、配列比較のために使用した。
【0059】
8.2.結果及び考察
アルファウイルスのようなヘパシウイルスは、結合のためにひとつのエンベロープ蛋白質(E2)を及び融合のために別のもの(E1)を使用するように見える。対照的に、TBEV、デング熱ウイルス、及び他のフラビウイルス属の一員のE糖蛋白質は、受容体結合及び膜融合の両方の機能を媒介する。E2は、ペスティウイルス受容体-結合蛋白質のひとつとして機能し(Hulst及びMoormann、1997)、並びに現在の解析が正確である場合は、ビリオン:細胞融合機能も実行する。フラビウイルスは、Eに加え、膜蛋白質prMをコードしており、その機能は、細胞膜をEの融合ペプチドから遮蔽することを含む(Kuhnら、2002)。フラビウイルスの小さい膜蛋白質の機能は、フラビウイルスprMと有意な配列類似性を有するペスティウイルスのE1に授けられている。成熟フラビウイルスビリオンは、Mに切断されるprMを含む。Mとは異なり、ペスティウイルスE1は、前駆体蛋白質のようなビリオンエンベロープに会合せず、及びフューリン切断部位を欠いている。
【0060】
ここで説明されたフラビウイルス融合蛋白質の構造ドメイン及び機能ドメインは、有意な配列類似性を伴うエンベロープ糖蛋白質、HCV E1/2、TBEV E及びペスティウイルスE2及びTBEV prM並びにペスティウイルスE1は、フラビウイルス科の3種の属によりコードされたポリ蛋白質において同様の位置にあるという知見により裏付けられる。これらの結果は、フラビウイルス科の一員が、共通の先祖を持つことができることを示唆している。この科の3種の属における融合蛋白質の遺伝子の分岐は、クラスII融合蛋白質のドメイン組織化(domain organization)により拘束されたカセット様式の配列の獲得及び/又は配列の喪失のいずれかを介して生じることがある。
【0061】
9.実施例:クラスI融合蛋白質及びHCV E1における膜界面(interfacial)ドメイン
クラスI及びII融合蛋白質の全体の構造は異なるが、これらは、二重膜と相互作用し及び二重膜を破壊する分子の一部において、構造的/機能的特徴は共有することができる。クラスI融合蛋白質は、融合にとって重要である分子のアミノ末端に、融合ペプチドを有することはよく確立されている(Gallaher、1987;Gallaher、1996;Gallaherら、1989;Gallaher、DiSimone、及びBuchmeier、2001)。クラスII融合蛋白質は、膜貫通アンカーから離れた位置での二次構造の折畳み後に位置する内部融合ペプチドを有する(Kuhnら、2002;Lescarら、2001;Reyら、1995)。HCV E1及びペスティウイルスE2の提唱されたモデルに関する更なる裏付けを提供するために、本発明者らは、別のプロテオミクスのためにコンピュータを使用する方法を用い、それらの蛋白質内の他の可能性のある膜相互作用ドメインを、HIV-1膜貫通糖蛋白質(TM)、クラスI融合蛋白質と比較した。融合ペプチドに加え、ウイルス:細胞融合において重要であり得るクラスI融合蛋白質の別のモチーフは、アンカーに近接している芳香族アミノ酸が豊富なモチーフである(図5A、アミノ酸667-683)(Suarezら、2000)。クラスI融合蛋白質のプレ-アンカードメインは、Kyte-Doolittleヒドロパシー予測アルゴリズムによると、高度に疎水性ではないが、これらのドメインは、Wimley-White膜界面疎水性スケールを用いる分析により明らかにされるように、二重膜を分配する(partition)傾向がある(Suarezら、2000;Wimley及びWhite、1996)。HCV E1は、Membrane Protein eXplorerを用い調べたところ、有意なWimley-White分配スコアを生じる3個のドメインを含んでいる(Jaysinghe、Hristova、及びWhite、2000)。これらのひとつは、膜貫通アンカー(aa 361-372)である。有意なWimley-White分配スコアを伴う残りのふたつの配列は、融合ペプチド(aa 284-300)の直後及び図2Bのモデルが二重膜に近いと予想する位置(aa 321-340)に位置している(図5B)。
【0062】
9.1.材料及び方法
脂質二重層に分配する性向を伴う配列は、デフォルトの設定を使用する、Stephen White研究室のMembrane Protein eXplorerにより同定された(Jaysinghe、Hristova、及びWhite、2000)。
【0063】
9.2.結果及び考察
これらふたつのHCV E1ドメインは、融合ペプチド及び膜貫通アンカーと組合せ、ビリオン:細胞融合時に脂質を移動するチャンネルである膜相互作用領域の連続した飛跡(track)を形成する可能性がある。従ってこれらのWimley-White分配解析は、E1は、HCVの融合蛋白質であるという主張の追加の裏付けを提供している。
【0064】
10.実施例:HCVエンベロープ蛋白質により媒介された融合/感染を阻害するペプチドの同定
フラビウイルスの膜融合誘導性エンベロープ糖蛋白質は、「融合ペプチド」及びほとんど逆平行βシートからなる球状ドメイン構造を含む、いくつかの共通の構造特徴を共有している。更に、HCVのE1蛋白質並びにDEN、WNV及びYFVのE蛋白質は、Wimley-White膜界面疎水性スケールを使用するアルゴリズムにより明らかにされるような、二重膜と相互作用する高い性向を伴ういくつかのモチーフを有する。これらの構造的特徴及び膜界面モチーフは、フラビウイルス融合、侵入及び感染において恐らく重要であり、並びにフラビウイルス感染症のためのペプチド薬物開発のための標的を表しているであろう。
【0065】
10.1.材料及び方法
HCVを増殖するための従来の細胞培養システムが存在しないことを克服するために、HCVエンベロープ糖蛋白質を発現している感染性偽型ウイルスが作出されている(Hsuら、2003)。HIVコア蛋白質及びHCVエンベロープ蛋白質を伴う偽型は、菌株H77及びHIVエンベロープ欠損プロウイルスゲノムのHCV E1及びE2を発現している同量のプラスミドpNL4.3. Luc. R-E-による、293-T細胞の同時トランスフェクションにより作出した(Pohlmannら、2003)。7〜10個のアミノ酸が重複し、及びHCV菌株H77のE1の全アミノ酸配列を表している18merペプチドセット由来のペプチドを、20%DMSO中に溶解し、希釈した(最終DMSO濃度<2%)。ペプチドは、p24抗原-標準化した(normalized)HCV偽型ウイルスの上清と共に、氷上で30分間インキュベーションした。ペプチドの平均濃度は〜25μMであったが、溶液中の一部のペプチドの実際の濃度は、DMSO中の低い溶解度のために、10μM又はそれ未満であった(表5においてアスタリスクで示す)。上清は、DMSO溶媒単独又は偽型の感染力を中和することがわかっているHCV E2に対するMab(モノクローナル抗体)によっても処理した。HCVペプチド、溶媒、及び抗-E2 MAbも、細胞傷害性を制御するために、マウス白血病ウイルス(MLV)エンベロープ蛋白質及びHIVカプシド蛋白質を発現している偽型と共にインキュベーションした。処理したペプチド並びに対照HCV及びMLV偽型を細胞に添加し、これを37℃で72時間インキュベーションした。その後細胞溶解液を、説明されたようなルシフェラーゼ活性について試験した(Hsuら、2003)。
【0066】
10.2.結果及び考察
4種のHCV E1ペプチドは、HCV偽型感染力を70%以上阻害し、ひとつ(ペプチド54)は、HCV偽型感染力を>99.9%低下したことを明らかにした(表5、図5B)。2種のペプチド(66及び70)は、Wimley-White膜界面疎水性スケールの適用により決定されたように、二重膜の表面と相互作用する高い性向を伴う配列に対応している。ペプチド66も、HIV(MLV)偽型による感染を50%以上阻害し、これはこのペプチドは、ウイルス融合の全般的インヒビターであること又はこれは細胞傷害性であることのいずれかを示唆している。残りの2種の阻害ペプチド(54及び74)は、全体が「折畳まれ」及び高いWimley-White膜界面疎水性スコアを示しているE1の部分と相互作用すると予測されたHCV E1の配列を表している(図5B)。主張されたこれらのドメインにわたる折畳みは、最初に発表された図面において矢印により示した(図5、Garry及びDash、2003)。これらの結果は、抗HCV薬としてのペプチドの可能性を示し、並びに同様の戦略は、他のフラビウイルスの融合及び感染力を阻害するペプチドを同定することができることを指摘している。











【0067】
表5. HCVエンベロープ蛋白質により媒介された感染力を阻害するリードペプチドの同定

aH77-E1 E2は、HCVのH77株のエンベロープ糖蛋白質E1及びE2を発現している偽型である。
cMLVは、マウス白血病ウイルスのエンベロープ糖蛋白質を発現している類似の偽型であり、ペプチド対照として使用している。
b数値は、濃度〜25μMのペプチドの存在下での、HCV又はMLVの偽型のいずれかにより感染後に生成されたルシフェラーゼ単位の数値(ルーメン)を表している。









【0068】
表6:表5に示されたペプチドの配列及び位置

【0069】
本発明は、本願明細書に説明された具体的態様により範囲が限定されるものではない。実際、本願明細書に説明されたものに加え、本発明の様々な修飾が、前述の説明及び添付図面から当業者には明らかであろう。このような修飾は、「特許請求の範囲」内であることが意図されている。様々な刊行物が本願明細書において引用されており、それらの各々の説明は、その全体が本願明細書に参照として組入れられている。本出願の各章の参考文献の引用又は確認は、そのような参考文献が本発明の先行技術として利用可能であることを承認するように構築されてはいない。
【0070】
参考文献
下記の各々は、その全体が本願明細書に参照として組入れられている。

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【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】図1は、ダニ媒介脳炎ウイルスE、C型肝炎ウイルスE1及び古典的豚コレラウイルスE2の糖蛋白質のアラインメントである。パネルA:この図及び次の図において、アミノ酸は、TBEV、HCV及びCSFVポリ蛋白質の始まりから番号付けられている。括弧付きのHCV挿入断片配列は覆われ(wrapped)ており、アラインメント比較を表していない。「(:)」は、同一アミノ酸を示す。「(.)」は、化学的に類似したアミノ酸を示す。パネルB:Reyらの論文(1995)により決定されたTBEV Eのドメイン構造の直線配置である。PRSS3 配列アラインメントプログラムにより決定されたHCV E1及びE2並びにCSFV E2におけるTBEV Eに類似した有意な配列の領域が示されている。確率(p-値)は、1000シャッフル(shuffle)を基にした。
【図2】図2は、ヘパシウイルスE1及びペスティウイルスE2の糖蛋白質の構造である。パネルA。Reyら(1995)により決定されたTBEV Eの構造が、概略的に示されている(RasMac molecular visualizationソフトウェアレンダリングからトレースした)。パネルB:HCV E1の構造。TBEV E 配列との類似性を伴うHCV E1配列には、引用符を付けている。パネルC:CSFV E2の構造。
【図3】図3は、ダニ媒介脳炎ウイルスの小さい膜蛋白質prM前駆体、及び古典的豚コレラウイルスE1のアラインメントである。パネルA:アラインメントは、本文に詳述されたように構築された。パネルB:指定されたPPSS3アルゴリズムにより決定された配列類似性の領域を伴う、TBEV prM及びCSFV E1の直線配置である。
【図4】図4は、フラビウイルス科ポリ蛋白質における蛋白質の共通の順番である。類似機能を伴う蛋白質又は蛋白質の一部は、フラビウイルス科の一員のポリ蛋白質に沿って同様の位置に位置している。疎水性ドメインは、TMpredを用い推定した。
【図5】図5は、ヒト免疫不全ウイルス膜貫通糖蛋白質(TM)の、C型肝炎ウイルスエンベロープ糖蛋白質1(E1)との比較である。パネルA:Gallaherらの論文(1989)記載の、虹色順(rainbow order)で示された構造モチーフを伴う、HIV-1 TM最新の構造。アミノ酸は、Envポリ蛋白質の始まりから番号付けした。HIV-1 TMは、膜貫通ドメイン後に切断されている。TM N-及びC-ヘリックスの正確な末端は、構造データに矛盾があるために、不明である。N-及びC-ヘリックスは、接触点はコイルドコイル形であることは解明されているが、並置は試みられていない。TM上の公知の中和エピトープの位置、更にHIV-1感染性を阻害するペプチドCS3及びDP178(T20)(Qureshiら、1990;Wildら、1994)に対応する配列が示されている。パネルB:HIV-1 TMと共通のモチーフを伴う、HCV E1の構造。太い白抜き矢印は、TBEV Eの指摘されたβシートに類似していると推定されたβシート構造である。推定されたαヘリックス構造の輪郭を描いている。黒矢印は、HCV E1構造が三次元で折畳まれている方向を示している。
【図1A−1】

【図1A−2】

【図1B】

【図2−1】

【図2−2】

【図2−3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)配列番号:1から配列番号:36のいずれかの配列を有するペプチド;
b)別のフラビウイルス由来の配列番号:1から配列番号:36のいずれかひとつと相同な配列を有するペプチド;及び
c)配列番号:1から配列番号:36のいずれかひとつと機能的に同等なペプチドであり、ここで機能的に同等なペプチドは、1個又は複数のアミノ酸残基が相同なアミノ酸と置換され、機能的にサイレントな変化を生じているか、もしくは1個又は複数のアミノ酸が欠失されていることを除き、配列番号:1から配列番号:36の少なくとも1種と同一である、ペプチド;
からなる群より選択される、1種又は複数のペプチドを含有する医薬組成物。
【請求項2】
a)配列番号:1から配列番号:36の1種又は複数のアミノ酸配列を有するペプチドであり、ここでN-末端「Xaa」がアミノ基であり、及びC-末端「Xaa」がカルボキシル基である、ペプチド;
b)配列番号:1から配列番号:36のいずれかの配列を有するペプチドであり、ここでN-末端「Xaa」はアミノ基でなく、及び/又はC-末端「Xaa」はカルボキシル基でなく、ここでN-末端「Xaa」は、アセチル基、疎水基、カルボベンゾキシル基、ダンシル基、t-ブチルオキシカルボニル基、もしくは高分子キャリヤ基からなる群より選択され、及び/又はここでC-末端「Xaa」は、アミド基、疎水基、t-ブチルオキシカルボニル基もしくは高分子基からなる群より選択される、ペプチド;
c)配列番号:1から配列番号:36のいずれかの配列を有するペプチドであり、ここで隣接アミノ酸残基に連結する少なくとも1個の結合は、非-ペプチド結合である、ペプチド;
d)配列番号:1から配列番号:36のいずれかの配列を有するペプチドであり、ここで少なくとも1個のアミノ酸残基は、D-異性体立体配置である、ペプチド;
e)少なくとも1個のアミノ酸が、異なるアミノ酸により置換されている以外は、「a)」又は「b)」の部分のペプチド;又は
f)配列番号:1から配列番号:36のいずれかひとつの少なくとも3個の近接ヌクレオチドを有する、「a)」から「e)」の部分のいずれかに示されたペプチドの機能断片;
の1種又は複数から選択された少なくとも1種のペプチドを含有する、医薬組成物。
【請求項3】
ペプチドが、配列番号:1、2、3及び4からなる群の1種又は複数より選択される、請求項2記載の組成物。
【請求項4】
N-末端「Xaa」はアセチル基、疎水基、カルボベンゾキシル基、ダンシル基、t-ブチルオキシカルボニル基、又は高分子キャリヤ基であり;及び/又は、C-末端「Xaa」は、疎水基、t-ブチルオキシカルボニル基又は高分子基である、請求項3記載の組成物。
【請求項5】
N-末端「Xaa」は、脂質複合体、ポリエチレングリコール、もしくは炭水化物から選択される高分子キャリヤ基であり;及び/又は、C-末端「Xaa」は、脂質複合体、ポリエチレングリコール、もしくは炭水化物から選択される高分子キャリヤ基である、請求項3記載の組成物。
【請求項6】
少なくとも1個の結合は、イミド結合、エステル結合、ヒドラジン結合、セミカルバゾイド結合及びアゾ結合からなる群より選択される、非-ペプチド結合である、請求項3記載の組成物。
【請求項7】
少なくとも1個のアミノ酸は、D-異性体アミノ酸である、請求項3記載の組成物。
【請求項8】
N-末端「Xaa」はアミノ基であり、及びC-末端「Xaa」はカルボキシル基である、請求項3記載の組成物。
【請求項9】
ペプチドは、配列番号:5、13、21、及び29からなる群の1種又は複数より選択される、請求項2記載の組成物。
【請求項10】
N-末端「Xaa」は、アセチル基、疎水基、カルボベンゾキシル基、ダンシル基、t-ブチルオキシカルボニル基、もしくは高分子キャリヤ基であり;及び/又は、C-末端「Xaa」は、疎水基、t-ブチルオキシカルボニル基もしくは高分子基である、請求項9記載の組成物。
【請求項11】
N-末端「Xaa」は、脂質複合体、ポリエチレングリコール、もしくは炭水化物から選択される高分子キャリヤ基であり;及び/又は、C-末端「Xaa」は、脂質複合体、ポリエチレングリコール、もしくは炭水化物から選択される高分子キャリヤ基である、請求項9記載の組成物。
【請求項12】
少なくとも1個の結合は、イミド結合、エステル結合、ヒドラジン結合、セミカルバゾイド結合及びアゾ結合からなる群より選択される、非-ペプチド結合である、請求項9記載の組成物。
【請求項13】
少なくとも1個のアミノ酸は、D-異性体アミノ酸である、請求項9記載の組成物。
【請求項14】
N-末端「Xaa」はアミノ基であり、及びC-末端「Xaa」はカルボキシル基である、請求項9記載の組成物。
【請求項15】
ペプチドは、配列番号:6-9、14-17、22-25、及び30-33からなる群の1種又は複数より選択される、請求項2記載の組成物。
【請求項16】
N-末端「Xaa」は、アセチル基、疎水基、カルボベンゾキシル基、ダンシル基、t-ブチルオキシカルボニル基、もしくは高分子キャリヤ基であり;及び/又は、C-末端「Xaa」は、疎水基、t-ブチルオキシカルボニル基もしくは高分子基である、請求項15記載の組成物。
【請求項17】
N-末端「Xaa」は、脂質複合体、ポリエチレングリコール、もしくは炭水化物から選択される高分子キャリヤ基であり;及び/又は、C-末端「Xaa」は、脂質複合体、ポリエチレングリコール、もしくは炭水化物から選択される高分子キャリヤ基である、請求項15記載の組成物。
【請求項18】
少なくとも1個の結合は、イミド結合、エステル結合、ヒドラジン結合、セミカルバゾイド結合及びアゾ結合からなる群より選択される、非-ペプチド結合である、請求項15記載の組成物。
【請求項19】
少なくとも1個のアミノ酸は、D-異性体アミノ酸である、請求項15記載の組成物。
【請求項20】
N-末端「Xaa」はアミノ基であり、及びC-末端「Xaa」はカルボキシル基である、請求項15記載の組成物。
【請求項21】
ペプチドは、配列番号:10-12、18-20、26-28、及び34-36からなる群の1種又は複数より選択される、請求項2記載の組成物。
【請求項22】
N-末端「Xaa」は、アセチル基、疎水基、カルボベンゾキシル基、ダンシル基、t-ブチルオキシカルボニル基、もしくは高分子キャリヤ基であり;及び/又は、C-末端「Xaa」は、疎水基、t-ブチルオキシカルボニル基もしくは高分子基である、請求項21記載の組成物。
【請求項23】
N-末端「Xaa」は、脂質複合体、ポリエチレングリコール、もしくは炭水化物から選択される高分子キャリヤ基であり;及び/又は、C-末端「Xaa」は、脂質複合体、ポリエチレングリコール、もしくは炭水化物から選択される高分子キャリヤ基である、請求項21記載の組成物。
【請求項24】
少なくとも1個の結合は、イミド結合、エステル結合、ヒドラジン結合、セミカルバゾイド結合及びアゾ結合からなる群より選択される、非-ペプチド結合である、請求項21記載の組成物。
【請求項25】
少なくとも1個のアミノ酸は、D-異性体アミノ酸である、請求項21記載の組成物。
【請求項26】
N-末端「Xaa」はアミノ基であり、及びC-末端「Xaa」はカルボキシル基である、請求項21記載の組成物。
【請求項27】
請求項1記載の医薬組成物の有効量を患者へ投与することを含む、フラビウイルス感染症を治療又は予防する方法。
【請求項28】
請求項2記載の医薬組成物の有効量を患者へ投与することを含む、フラビウイルス感染症を治療又は予防する方法。
【請求項29】
請求項1記載のペプチドに特異的な、実質的に精製された抗体。
【請求項30】
請求項0記載のペプチドに特異的な、実質的に精製された抗体。

【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2006−507328(P2006−507328A)
【公表日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−551940(P2004−551940)
【出願日】平成15年11月7日(2003.11.7)
【国際出願番号】PCT/US2003/035666
【国際公開番号】WO2004/044220
【国際公開日】平成16年5月27日(2004.5.27)
【出願人】(502137178)ザ アドミニストレイターズ オブ ザ テューレイン エデュケイショナル ファンド (5)
【出願人】(596171834)ザ ロックフェラー ユニヴァーシティ (11)
【Fターム(参考)】