説明

フランジ締結構造

【課題】樹脂製部材よりなるフランジにクリープが生じることを抑制でき、長期に渡り安定した固定を持続することが出来るフランジ締結構造を実現する。
【解決手段】基台2の一方の面に一方の面が接するリング状の樹脂材からなるフランジ1と、このフランジ1の他方の面を前記基台2に押圧固定する袋ナット5とを具備するフランジ締結構造において、前記フランジ1の他方の面と前記袋ナット5の底面との間に設けられた弾性手段と、前記フランジ1の外周面と前記袋ナット5の内側面との間に設けられた所定寸法のクリープ停止隙間部12とを具備したことを特徴とするフランジ締結構造である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フランジ締結構造に関するものである。
更に詳述すれば、樹脂製部材よりなるフランジにクリープが生じることを抑制でき、長期に渡り安定した固定を持続することが出来るフランジ締結構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図2は従来より一般に使用されている従来例の要部構成説明図、図3は図2の動作説明図、図4は図2の動作説明図である。
図2において、樹脂材よりなるアンテナキャップの固定に使用されたフランジ締結構造の例を示す。
【0003】
図において、フランジ1は、金属製の基台2の一方の面に一方の面が接し、リング状の樹脂材からなる。
フランジ1は、この場合は、樹脂材よりなるアンテナキャップ3の固定用フランジで、アンテナキャップ3とは、始めから一体成形されている。
アンテナキャップ3は、内部にアンテナ線4が内蔵され、基台2にねじ止め3aされている。
【0004】
金属材よりなる袋ナット5は、底面5aでフランジ1の他方の面を、基台2に押圧し、ねじ止め5bして固定する。
その際、フランジ1の他方の面がストッパーとなり、袋ナット5が止るところまでねじ合わせ、固定する。
5cは、フランジ1の外周面と袋ナット5との間に設けられた隙間である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平08−222927号公報
【特許文献2】特開平09−148812号公報
【特許文献3】特開平11−261318号公報
【特許文献4】特開2000−091827号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このような装置においては、以下の問題点がある。
フランジは樹脂製部材である以上、クリープを避けることは出来ない。
また、例えば、アンテナカバーは、電波特性上金属にする事ができない。
製品コストを考慮すると、アンテナ保護部とフランジ部を一体成型で製作する事でコストメリットがある。
【0007】
樹脂製部材であるフランジ1は、基台1と袋ナット5により鋏み込まれる事で、長時間荷重が掛かった状態となりクリープが進行する。
一方、図2に示す構造において、フランジ1の外周部と袋ナット5の内面との隙間5Cは、組立上皆無にすることは出来ない。
【0008】
したがって、図3に示す如く、構造的にフランジ1は、半径方向の放射線状にクリープ変形Aし、締め付け軸力の低下を招く(フランジ部の弾性力が失われる)為、袋ナット5に緩みが生ずる。
【0009】
また、樹脂の粘性は温度に大きく依存するので、図1のアンテナの組立構造物が曝される屋外環境(周囲温度変化)により、更に、クリープが助長され、アンテナカバー3の保持が出来なくなり、安定した固定を持続できなくなる(アンテナカバーのぐらつきを起こす。)。
【0010】
前述の、「クリープが助長され」とは、フランジ1の部分の樹脂製部材と基台2、袋ナット5の金属部材とで熱膨張係数の違いから、温度変化環境において、樹脂製部材1へ圧縮力が印加される事になる。
この事実は、熱衝撃試験(高温⇔低音のサイクル試験)で確認されている。
【0011】
従って、図4に示す如く、周囲温度によっては、フランジ1にクリープが進行し、クリープ変形Bと、フランジ1と袋ナット5間に隙間Cを生じ、軸力が全く掛からない状態が起こり袋ナット5に緩みが生じる。
一つの解決策として、袋ナット5の増し締めの励行があるが、クリープの進行度合いが屋外設置環境に依存するため、実施時期が正確に割り出せない事から、増し締めによる保全がし難い問題がある。
【0012】
本発明の目的は、上記の課題を解決するもので、樹脂製部材よりなるフランジにクリープが生じることを抑制でき、長期に渡り安定した固定を持続することが出来るフランジ締結構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
このような課題を達成するために、本発明では、請求項1のフランジ締結構造においては、
基台の一方の面に一方の面が接するリング状の樹脂材からなるフランジと、このフランジの他方の面を前記基台に押圧固定する袋ナットとを具備するフランジ締結構造において、前記フランジの他方の面と前記袋ナットの底面との間に設けられた弾性手段と、前記フランジの外周面と前記袋ナットの内側面との間に設けられた所定寸法のクリープ停止隙間部とを具備したことを特徴とする。
【0014】
本発明の請求項2のフランジ締結構造においては、請求項1記載のフランジ締結構造において、
前記弾性手段はウェーブばねが使用されたことを特徴とする。
【0015】
本発明の請求項3のフランジ締結構造においては、請求項1又は請求項2記載のフランジ締結構造において、
一方の面が前記フランジの他方の面に接し他方の面が前記弾性手段に接する受圧板を具備したことを特徴とする。
【0016】
本発明の請求項4のフランジ締結構造においては、請求項3記載のフランジ締結構造において、
前記受圧板の内径側に設けられ前記袋ナット方向に凸状をなし前記受圧手段を受圧板の半径方向に係止する凸部を具備したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明の請求項1によれば、次のような効果がある。
弾性手段とクリープ停止隙間部とが設けられたので、クリープを見越し、押圧力を発生し続けさせる事ができる。
したがって袋ナットの緩みが抑制され、安定し継続的なフランジの保持を実現できるフランジ締結構造が得られる。
【0018】
本発明の請求項2によれば、次のような効果がある。
弾性手段はウェーブばねが使用されたので、樹脂材よりなるフランジを適切な強度で保持できるフランジ締結構造が得られる。
【0019】
本発明の請求項3によれば、次のような効果がある。
一方の面がフランジの他方の面に接し、他方の面が弾性手段に接する受圧板が設けられたので、フランジのクリープによる変形を適切な方向に誘導できるフランジ締結構造が得られる。
【0020】
本発明の請求項4によれば、次のような効果がある。
受圧板の内径側に設けられ、袋ナット方向に凸状をなし、弾性手段を受圧板の半径方向に係止する凸部が設けられたので、弾性手段のセンタリングが容易なフランジ締結構造が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の一実施例の要部構成説明図である。
【図2】従来より一般に使用されている従来例の構成説明図である。
【図3】図2の動作説明図である。
【図4】図2の動作説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下本発明を図面を用いて詳細に説明する。
図1は本発明の一実施例の要部構成説明図である。
図において、図2と同一記号の構成は同一機能を表す。
以下、図2との相違部分のみ説明する。
【0023】
図1において、弾性手段11は、フランジ1の他方の面と、袋ナット5の底面との間に設けられている。
この場合は、弾性手段11はウェーブばねが使用されている。
クリープ停止隙間部12は、フランジ1の外周面と袋ナットの内側面との間に設けられ所定寸法をなす。
【0024】
また、この場合は、受圧板13は、一方の面がフランジ1の他方の面に接し、他方の面が弾性手段11に接する。
また、この場合は、凸部14は、受圧板13の内径側に設けられ、袋ナット5の方向に凸状をなし、弾性手段11を受圧板13の半径方向に係止する。
【0025】
以上の構成において、ウェーブばね11は、フランジ1がクリープにより薄く変形(流動)しても必要な軸力Dを発生し続けられる様に作用する。
そして、フランジ1の外周面が、クリープ停止隙間部12を越えて、袋ナット5の内面に付き当たるとクリープが抑制される。
【0026】
受圧板13は、ばね力をフランジ1の面に均等に加える役割をなしている。
また、受圧板13の凸部14は、ウェーブばね11の組み付けにおいて、偏りがなく無調整でもセンタリングができる様にしたものである。
【0027】
この結果、弾性手段11とクリープ停止隙間部12とが設けられたので、クリープを見越し、押圧力を発生し続けさせる事ができる。
したがって袋ナット5の緩みが抑制され、安定し継続的なフランジ1の保持を実現できるフランジ締結構造が得られる。
【0028】
弾性手段11はウェーブばねが使用されたので、樹脂材よりなるフランジ1を適切な強度で保持できるフランジ締結構造が得られる。
【0029】
一方の面がフランジ1の他方の面に接し、他方の面が弾性手段11に接する受圧板13が設けられたので、フランジ1のクリープによる変形を適切な方向に誘導できるフランジ締結構造が得られる。
【0030】
受圧板13の内径側に設けられ、袋ナット5の方向に凸状をなし、弾性手段11を受圧板13の半径方向に係止する凸部14が設けられたので、弾性手段11のセンタリングが容易なフランジ締結構造が得られる。
【0031】
なお、以上の説明は、本発明の説明および例示を目的として特定の好適な実施例を示したに過ぎない。
したがって本発明は、上記実施例に限定されることなく、その本質から逸脱しない範囲で更に多くの変更、変形をも含むものである。
【符号の説明】
【0032】
1 フランジ
2 基台
3 アンテナキャップ
3a ねじ
4 アンテナ線
5 袋ナット
5a 底面
5b ねじ
5c 隙間
11 弾性手段
11 ウェーブばね
12 クリープ停止隙間部
13 受圧板
14 凸部
A クリープ変形
B クリープ変形
C 隙間
D 軸力

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基台の一方の面に一方の面が接するリング状の樹脂材からなるフランジと、このフランジの他方の面を前記基台に押圧固定する袋ナットとを具備するフランジ締結構造において、
前記フランジの他方の面と前記袋ナットの底面との間に設けられた弾性手段と、
前記フランジの外周面と前記袋ナットの内側面との間に設けられた所定寸法のクリープ停止隙間部と
を具備したことを特徴とするフランジ締結構造。
【請求項2】
前記弾性手段はウェーブばねが使用されたこと
を特徴とする請求項1記載のフランジ締結構造。
【請求項3】
一方の面が前記フランジの他方の面に接し他方の面が前記弾性手段に接する受圧板
を具備したことを特徴とする請求項1又は請求項2記載のフランジ締結構造。
【請求項4】
前記受圧板の内径側に設けられ前記袋ナット方向に凸状をなし前記受圧手段を受圧板の半径方向に係止する凸部
を具備したことを特徴とする請求項3記載のフランジ締結構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−164156(P2010−164156A)
【公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−7893(P2009−7893)
【出願日】平成21年1月16日(2009.1.16)
【出願人】(000006507)横河電機株式会社 (4,443)
【Fターム(参考)】