説明

フルオロアルキル界面活性剤

式(I):
【化1】


(式中、kは1又は2であり、
Yは、−CH2CH(CF32又は−(CH2nFであり、
Xは、水素、−(CH2nf又は−C(O)[CF(A)]p−B−Rfであり、式中、Bは、共有結合、−O−および−(CH2m−からなる群から選択される2価の基であり;Aは−F又は−CF3であり;各Rfは、独立して、任意に1個以上の酸素で中断されたC1〜C6過フッ素化直鎖又は分岐鎖アルキルであり、
0は、R01であるか、又は、−O−、−OH、−NR−、−N(R)2、および−C(O)NR−からなる群から選択される1個以上の親水基で中断若しくは置換された炭素数約10〜約100の直鎖若しくは分岐鎖アルキルであり、a)親水基、対、炭素原子の比は約1:2〜約1:10であり;b)各炭素原子には1個以下の親水基が結合しており;c)親水基間の共有結合は存在せず、
Rは、水素、又は、C1〜C4直鎖若しくは分岐鎖アルキルであり、
01は、約5〜約50個のエーテル酸素で中断された炭素数約10〜約100の直鎖又は分岐鎖脂肪族基であり、a)エーテル酸素、対、炭素原子の比は約1:2〜約1:3であり;b)各炭素原子には1個以下のエーテル酸素原子が結合しており、c)エーテル酸素原子間の共有結合は存在せず、
但し、
1)Yが−(CH2nfのとき、R0はR01であり;2)Xが水素のとき、Yは−CH2CH(CF32であり;3)Xが−(CH2nfであり、Yが−(CH2nfのとき、R0はR01である)
の化合物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フッ素化界面活性剤並びにその合成および使用に関する。
【背景技術】
【0002】
フルオロケミカル鎖を有する界面活性剤および表面処理剤では、パーフルオロアルキル鎖が長いほど、所与の濃度でフッ素含有率が高く、性能がより優れている。しかし、フッ素化材料は高価である。従って、フッ素含有量を低減しつつ、同等又はそれより高い性能を発揮することが望ましい。フッ素含有量を低減するとコストが削減されるが、製品の性能を維持することが必要である。
【0003】
米国特許第3,621,059号明細書は、ヘキサフルオロプロピレンオキサイドポリマー酸およびモノアミン末端ポリアルキレンオキサイドから誘導され、界面活性剤および乳化剤として機能するアミドを開示している。これらの化合物は、炭素数8以上として例示された1つのパーフルオロアルキル鎖を含有する。
【0004】
界面活性剤又は表面処理剤の性能を改善し、フッ素有効性を増加させること、即ち、界面活性剤表面処理剤の有効性又は性能を向上させ、同レベルの性能を達成するのに必要な高価なフッ素成分の割合がより低くて済むようにすること、又は同レベルのフッ素を使用してより優れた性能を有するようにすることが望ましい。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、式(I):
【0006】
【化1】

【0007】
(式中、
kは1又は2であり、
Yは、−CH2CH(CF32又は−(CH2nfであり、
Xは、水素、−(CH2nf、又は−C(O)[CF(A)]p−B−Rfであり、
Bは、共有結合、−O−および−(CH2m−からなる群から選択される2価の基であり、
mは1〜約10の整数であり、
pは0又は1の整数であるが、但し、pが0のとき、Bは共有結合又は−(CH2m−であり、
nは約3〜約10の整数であり、
Aは−F又は−CF3であり、
各Rfは、独立して、任意に1個以上の酸素で中断されたC1〜C6過フッ素化直鎖又は分岐鎖アルキルであり、
0は、R01であるか、又は、−O−、−OH、−NR−、−N(R)2、および−C(O)NR−からなる群から選択される1個以上の親水基で中断若しくは置換された炭素数約10〜約100の直鎖若しくは分岐鎖アルキルであり、a)親水基、対、炭素原子の比は約1:2〜約1:10であり、b)各炭素原子には1個以下の親水基が結合しており、c)親水基間の共有結合は存在せず、
Rは、水素、又は、C1〜C4直鎖若しくは分岐鎖アルキルであり、
01は、約5〜約50個のエーテル酸素で中断された炭素数約10〜約100の直鎖又は分岐鎖脂肪族基であり、a)エーテル酸素、対、炭素原子の比は約1:2〜約1:3であり、b)各炭素原子には1個以下のエーテル酸素原子が結合しており、c)エーテル酸素原子間の共有結合は存在せず、
但し、
1)Yが−(CH2nfのとき、R0はR01であり、
2)Xが水素のとき、Yは−CH2CH(CF32であり、
3)Xが−(CH2nfであり、Yが−(CH2nfのとき、R0はR01である)
の化合物を含む。
【0008】
本発明は、更に、媒体を前述の式(I)の組成物と接触させる工程を含む、媒体の表面張力を低下させる方法を含む。
【0009】
本発明は、更に、第一級アミンをヘキサフルオロイソブチレンと接触させて、ヘキサフルオロイソブチル基がアミンに共有結合した第二級フルオロアルキルアミンを得る工程を含む、第一級アミンのフルオロアルキル化の方法を含む。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本明細書では、商標は全て大文字で示される。本明細書に引用される特許は全て参照により本明細書に援用される。
【0011】
本発明の一態様は、式(I):
【0012】
【化2】

【0013】
(式中、R0、X、Yおよびkは上記に開示した通りである)
の化合物である。
【0014】
0は、上記に開示したように、1価(k=1のとき)又は2価(k=2のとき)の直鎖若しくは分岐鎖脂肪族基、又は脂環式基であり、典型的には共有結合して第一級モノアミン(例えば、R0NH2)になっているか、又は共有結合して第一級ジアミン(例えば、R0(NH22)になっている。或いは、R0は、モノアミン又はジアミンに転化され得る別の基から、例えば、ハライド若しくはトシレート、又はビスハライド若しくはビストシレートから誘導することができる。
【0015】
式(I)の1つの好ましい実施形態では、R0基は、約5〜約50個のエーテル酸素で中断された炭素数約10〜約100の、より好ましくは約5〜約20個のエーテル酸素で中断された炭素数約20〜約40の直鎖又は分岐鎖脂肪族基として本明細書で定義されるR01であり、エーテル酸素原子、対、炭素原子の比は約1:2〜約1:4、より好ましくは約1:2〜約1:3であり、各炭素原子には1個以下のエーテル酸素原子が結合しており、エーテル酸素原子間の共有結合は存在しない。この実施形態では、好ましくは、R01は、各原子価が−NH2基で占められているとき、分子量が約200〜約2200であり、水に対する溶解度が1重量%以上、より好ましくは5重量%以上である。R01基は、アミン末端ポリオキシアルキレンの反応によって誘導することができる。R01と等しいR0基の選択は、後述の式(II)、(III)、(IV)、(VI)および(VII)のものを含む、他の全ての実施形態に適用可能である。
【0016】
式(I)(式中、R0はR01であり、kは1である)の組成物の形成に有用なアミン末端ポリオキシアルキレンとしては、アミン末端ポリエチレングリコールモノメチルエーテル(mPEGNH2)又はアミン末端ポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコール−ポリエチレングリコールトリブロックモノメチルエーテル(mPEG−PPG−PEG−NH2)が挙げられる。それらは、Bueckmannら(Makromol.Chem.182, p.1379−1384, 1981)によって記載されているように、対応するヒドロキシル末端モノメチルエーテルを臭化チオニルで処理した後、アンモニアで処理することによって得ることができる。同様に、エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドのランダム共重合体のアミン末端モノメチルエーテルも得ることができる。これらの材料の市販の例は、Huntsman Chemical(The Woodlands,TX)製のJEFFAMINE(登録商標)ポリオキシアルキレンアミンXTJ−505およびXTJ−506、並びに、同様にHuntsman Chemical製のSURFONAMINE L−55としても知られる開発サンプルXTJ−580である。
【0017】
式(I)(式中、R0はR01であり、kは2である)の組成物の形成に有用な他のアミン末端ポリオキシアルキレンとしては、アミン末端ポリエチレングリコールエーテル(NH2−PEG−NH2)、アミン末端ポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコール−ポリエチレングリコールトリブロックエーテル(NH2−PEG−PPG−PEG−NH2)、アミン末端ポリプロピレングリコール−ポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコールトリブロックエーテル(NH2−PPG−PEG−PPG−NH2)、および、エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドのアミン末端ランダム共重合体が挙げられる。それらは、対応するヒドロキシル末端ポリマーを塩化チオニルおよびアンモニアで処理することにより合成で得ることができる。これらの材料の市販の例としては、Huntsman Chemical(The Woodlands,TX)から入手可能なJEFFAMINEポリオキシアルキレンアミンED−600(XTJ−500、分子量600)、ED−900(XTJ−501、分子量900)、ED−2003(XTJ−502、分子量2000)、およびHK−511(分子量220)がある。
【0018】
好ましくは、アミン末端ポリオキシアルキレンは、約5〜約20の繰り返し単位、より好ましくは約10〜約20の繰り返し単位を有する。本発明の組成物を調製するのに好ましいアミン末端ポリオキシアルキレンは水に対する溶解度が1重量%以上であり、より好ましくは水に対する溶解度が5重量%以上である。これらの材料は、通常、主に、ポリエチレングリコール(PEG)ベースであり、従って、ポリプロピレングリコール(PPG)ベースの材料よりも親水性が高い。
【0019】
本発明の他の実施形態は、式(II)、(III)および(IV)と称され、スキーム1:
【0020】
【化3】

【0021】
に示される式(I)の具体的な化合物を含む。
【0022】
これらの化合物は、式(I)(式中、Yは−CH2CH(CF32であり、Xはそれぞれ水素、−(CH2nfおよび−C(O)[CF(A)]p−B−Rfであり、R0、Rf、A、B、pおよびkは上記で定義した通りである)によって定義される。
【0023】
本発明は、更に、ヘキサフルオロイソブチル基がアミンに共有結合した第二級フルオロアルキルアミンを得るのに十分な反応温度と反応時間で、第一級アミンをヘキサフルオロイソブチレン(HFIB)と接触させる工程を含む、第一級アミンのフルオロアルキル化の方法を含む。式(II)の組成物は、この方法で調製される。接触させる工程は、溶媒の存在下で、および/又は塩基触媒の存在下で実施することができる。上記方法に言及する際、「第一級アミン」の用語は、本明細書では、式R02(NH2q(式中、qは1〜約100の整数であり;R02は、−O−、−OH、−NR−、−N(R)2、および−C(O)NR−からなる群から選択される1個以上の親水基によって中断又は置換された基を含む、炭素数1〜約100の直鎖若しくは分岐鎖アルキル基、又は脂環式基、又はこれらの組み合わせとして定義され;但し、第一級アミン、qと親水基の合計は、R02中の炭素原子の総数以下であり;各炭素原子には1個以下の第一級アミン又は親水基が結合しており、親水基間の共有結合は存在しない)のモノアミンとポリアミンを含むと定義される。好ましいR02は、第一級アミンを含む親水基、対、炭素原子の比が約1:2〜約1:10のものである。従って、本方法は、様々なモノアミンとポリアミンにヘキサフルオロイソブチル基を付加することを可能にする。本発明の方法に有用なモノ−第一級アミンの例としては、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、イソプロピルアミン、ブチルアミン、イソブチルアミン、2−(N,N−ジメチルアミノ)エチルアミン、ヘキシルアミン、オクチルアミン、ノニルアミンなどの直鎖および分岐鎖アルキルアミン;アミン末端ポリエチレングリコールモノメチルエーテル(mPEGNH2)および上記に開示したアミン末端ポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコール−ポリエチレングリコールトリブロックモノメチルエーテル(mPEG−PPG−PEG−NH2)などのオキシアルキレンアミンが挙げられる。本発明の方法に有用な第一級ジアミンの例としては、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ジエチレントリアミン、並びに、上記に開示したオキシアルキレンジアミンNH2−PEG−NH2およびNH2−PEG−PPG−PEG−NH2が挙げられる。
【0024】
第一級アミンのフルオロアルキル化は、溶媒の存在下で実施しても又は溶媒がない状態で実施してもよい。好ましくは、溶媒を使用する。本発明の方法に好適な溶媒としては、メタノールおよびエタノールなどのアルコール;テトラヒドロフラン(THF)、ジオキサン、およびジメトキシエタンなどのアルキルエーテル;酢酸エチルおよび酢酸ブチルなどのアルキルエステル;キシレンおよびトルエンなどの炭化水素;1,2−ジクロロエタンおよびジクロロメタンなどのハロゲン化炭化水素;アセトニトリルなどのニトリル;およびジメチルホルムアミドおよびジメチルアセトアミド(DMAc)などのアミドが挙げられる。
【0025】
第一級アミンのフルオロアルキル化は、必要に応じて、塩基触媒の存在下で実施してもよい。好適な触媒としては、トリエチルアミンなどの第三級アルキルアミン;水酸化ナトリウムおよび水酸化カリウムなどのアルキル金属水酸化物;水素化ナトリウムおよび水素化カリウムなどのアルカリ金属水素化物が挙げられる。
【0026】
第一級アミンのフルオロアルキル化は、ヘキサフルオロイソブチレンを収容する圧力容器内で実施してもよく、又は、ヘキサフルオロイソブチレンを凝縮するために二酸化炭素溶媒スラリーなどの冷却材を使用して大気圧で実施してもよい。後者の場合、反応は、通常、約0℃〜約40℃で、好ましくは約10℃〜約35℃で、約0.1〜約15時間行われる。
【0027】
スキーム1によれば、パーフルオロアルキルアルキレンハライド又はトシレート:Rf(CH2nX(式中、Xは、好ましくは、臭素、ヨウ素、又はトシレートから選択される脱離基である)で式(II)の化合物を処理することによって、式(III)の化合物を調製することができる。欧州特許第193202号明細書に記載の手順でRf(CH2nI(式中、nは4である)を製造することができる。
【0028】
式(IV)の化合物は、フルオロアルキルカルボン酸誘導体X1−C(O)[CF(A)]p−B−Rf[式中、X1は、C1〜C4直鎖又は分岐鎖アルコキシ;フッ素および塩素から選択されるハロゲン;および、C1〜C4カルボキシレートからなる群から選択される脱離基であり;p、A、BおよびRfは前述の通りであり、但し、pが0のとき、Bは共有結合又は−(CH2m−(式中、mは1〜約10である)である]で式(II)の化合物を処理することによって、調製することができる。X1−C(O)[CF(A)]p−B−Rfが酸ハライドであるとき、典型的には、処理中に1当量以上の有機塩基(ピリジン又はトリエチルアミンなど)が存在する。典型的には、トルエン若しくはキシレンなどの非ヒドロキシ炭化水素溶媒、又はジクロロメタンなどのハロカーボンが処理に使用される。
【0029】
式(IV)の化合物の調製に有用なフルオロアルキルカルボン酸誘導体、X1−C(O)[CF(A)]p−B−Rfとしては、pが0のとき、2H,2H,3H,3H−パーフルオロヘキサノイルクロライド、2H,2H,3H,3H−パーフルオロヘプタノイルクロライド、2H,2H,3H,3H−パーフルオロノナノイルクロライド、パーフルオロヘプタノイルクロライド、パーフルオロペンタノイルクロライド、2H,2H−パーフルオロペンタノイルクロライド、2H,2H−パーフルオロヘキサノイルクロライド、および2H,2H−パーフルオロオクタノイルクロライドが挙げられる。式(IV)の組成物の合成に有用な他のフッ素化カルボン酸ハライドとしては、pが1のとき、本件特許出願人(Wilmington, Delaware)から入手可能なヘキサフルオロプロピレンオキサイドダイマー(化合物D1);およびテロマー酸フルオライド、化合物D2(式中、sは1〜4である)が挙げられる。化合物D2を含むテロマー酸フルオライド(式中、sは1である)は、英国特許第1,097,679号明細書およびAfonsoら、Phys.Chem.Chem.Phys.,2000,2 1393−1399に開示されているように、合成によって得ることができる。
【0030】
【化4】

【0031】
他の有用な化合物は、米国特許第3,692,843号明細書に記載されるように合成によって得ることができる、式D3(式中、vは1〜3である)の分岐鎖テロマー酸フルオライドである。
【0032】
【化5】

【0033】
式(IV)の化合物の調製に有用な他のフルオロアルキルカルボン酸誘導体は、メチルエステルなどのアルキルエステルである。
【0034】
f基に言及する際、「任意に1個以上の酸素で中断されている」の用語は、酸素が炭素にのみ結合している限り、即ち、酸素−酸素結合がない限り、Rf基を含む炭素鎖は1個以上の酸素原子によって中断されていてもよいことを意味する。式(I)(式中、Rfは、1個以上の酸素原子によって中断されている)の化合物は、典型的には、上記のD2およびD3などのフッ化アシルから誘導される。
【0035】
好ましい実施形態は、式(II)の化合物をヘキサフルオロプロピレンオキサイドダイマー(化合物D1)で処理することによって誘導される、式(IV)(式中、RfはC37−であり;Bは−O−であり;pは1であり;Aは−CF3である)の化合物である。関連する好ましい実施形態では、上記に開示したように、R0はR01である。
【0036】
本発明の他の実施形態は、本明細書で式(VI)および(VII)と称され、スキーム2:
【0037】
【化6】

【0038】
に示される式(I)の組成物を含む。
【0039】
式(VI)は、式(I)(式中、XおよびYはそれぞれRf(CH2) nであり、R0はR01である)によって定義される。式(VII)は、式(I)(式中、Xは−C(O)[CF(A)]p−B−Rfであり、YはRf(CH2) nであり、R0はR01である)によって定義される。
【0040】
式(VI)の化合物は、第一級モノアミン、R01NH2;又は第一級ジアミン、R01(NH22をそれぞれ2当量又は4当量のパーフルオロアルキルアルキレンハライド又はトシレート:Rf(CH2) nXで処理することによって調製することができる。R01NH2およびR01(NH22は、好ましくは、上記に定義されたアミン末端ポリオキシアルキレンである。処理は、例えば、テトラヒドロフラン(THF)などの溶媒を含んでもよく、処理は、例えば、アルカリ金属炭酸塩などの塩基を含んでもよい。
【0041】
同様に、式(V)の中間化合物は、第一級モノアミン、R01NH2;又は第一級ジアミン、R01(NH22をそれぞれ1当量又は2当量のパーフルオロアルキルアルキレンハライド又はトシレート:Rf(CH2) nXで処理することによって調製することができる。化合物(V)をフルオロアルキルカルボン酸誘導体X1−C(O)[CF(A)]p−B−Rfで、上記の式(IV)の化合物について記載したのと同様に処理することによって、式(VII)の化合物が得られる。式(VII)の好ましい化合物は、RfがC37−であり;Bが−O−であり;pが1であり;Aが−CF3のものであり、それは式(V)の化合物をヘキサフルオロプロピレンオキサイドダイマー(化合物D1)で処理することによって誘導される。
【0042】
本発明は、更に、媒体を前述の式(I)の組成物と接触させることを含む、媒体の表面張力を低下させる方法を含む。様々な媒体のいずれも本発明の方法に使用するのに好適である。通常、媒体は液体である。好適な媒体の例としては、例えば、コーティング組成物、ラテックス、ポリマー、床仕上げ剤、インク、乳化剤、発泡剤、離型剤(release agent)、撥水撥油剤、流れ調整剤、皮膜蒸発抑制剤(film evaporation inhibitor)、湿潤剤、浸透剤、クリーナー、研削剤(grinding agent)、電気めっき剤、腐食防止剤、エッチング液、半田剤(soldering agent)、分散助剤、微生物剤、パルプ剤、すすぎ助剤(rinsing aid)、艶出剤、パーソナルケア組成物、乾燥剤、帯電防止剤、床磨き剤、又は結合剤が挙げられる。本発明の組成物を媒体に添加すると、本発明の組成物の界面活性特性のため、媒体の表面張力が低下する。本発明の組成物は、通常、単に媒体とブレンドされるか又は媒体に添加される。表面張力を約24mN/m未満、好ましくは約22mN/m未満に低下させるのに、界面活性剤約0.1重量%の低濃度で十分である。本発明の多くの界面活性剤では、約22mN/m未満の表面張力を達成するのに、界面活性剤0.01重量%の濃度で有効である。
【0043】
本発明は、更に、基材に堆積する前に、前述の式(I)の1つ以上の化合物を含む組成物をコーティングベースに添加する工程を含む、被コーティング基材に濡れおよびレベリングを付与する方法を含む。本明細書で「コーティングベース」の用語で称される、好適なコーティング組成物としては、アルキドコーティング、タイプIウレタンコーティング、不飽和ポリエステルコーティング、又は水に分散させたコーティングの組成物、典型的には液体配合物が挙げられ、参照により本明細書に援用されるOutlines of Paint Technology(Halstead Press, New York, NY, Third edition, 1990)およびSurface Coatings Vol.1, Raw Materials and Their Usage(Chapman and Hall, New York, NY, Second Edition, 1984)に記載されている。このようなコーティングベースは、基材表面に耐久性フィルムを作り出す目的で、基材に塗付される。これらは、従来の塗料、ステイン、床磨き剤、および類似のコーティング組成物である。
【0044】
「水分散コーティング」の用語は、本明細書で使用される時、水相中に分散した皮膜形成材料の乳濁液、ラテックス、又は懸濁液などの、水を必須分散成分として構成される基材の装飾又は保護を目的としたコーティングを意味する。「水分散コーティング」は、多数の配合物を表す一般的な分類であり、様々な分類として前述の分類の要素を含む。水分散コーティングは、一般に、他の一般的なコーティング成分を含有する。水分散コーティングの例としては、ラテックス塗料などの顔料コーティング、ウッドシーラー、ステイン、仕上剤、艶出剤などの非顔料コーティング、メーソンリーおよびセメント用のコーティング、並びに水をベースにするアスファルト乳剤が挙げられるが、これらに限定されない。水分散コーティングは、任意に、界面活性剤、保護コロイドおよび増粘剤、顔料および体質顔料、防腐剤、殺真菌剤、凍解安定剤、消泡剤、pH調整剤、融合助剤(coalescing aids)、および他の成分を含有する。ラテックス塗料では、皮膜形成材は、アクリレート、アクリル、ビニル−アクリル、ビニル、又はこれらの混合物のラテックスポリマーである。このような水分散コーティング組成物は、C.R.Martensによって「Emulsion and Water−Soluble Paints and Coatings」(Reinhold Publishing Corporation, New York, NY, 1965)に記載されている。
【0045】
「乾燥コーティング」の用語は、本明細書で使用される時、コーティング組成物が乾燥、固化又は硬化した後に得られる最終的な装飾および/又は保護皮膜を意味する。このような最終皮膜は、例えば、硬化、融合(coalescing)、重合、相互侵入、放射線硬化、紫外線硬化、又は蒸発によって得ることができるが、これらに限定されない。最終皮膜は、また、ドライコーティングにおけるように乾燥した最終的な状態で塗布することもできる。
【0046】
床用ワックス、磨き剤、又は仕上剤(以下、「床仕上剤」)は、一般に、水ベース又は溶媒ベースのポリマーエマルションである。本発明の式Iの界面活性剤は、このような床仕上剤に使用するのに好適である。市販の床仕上剤組成物は、典型的には、1つ以上の有機溶媒、可塑剤、コーティング助剤、消泡剤、界面活性剤、ポリマーエマルション、金属錯化剤、およびワックスを含む水性エマルションベースのポリマー組成物である。通常、ポリマーの粒度範囲および固形分を調整して、製品粘度、皮膜硬度、および耐劣化性を調整する。極性基を含有するポリマーは、溶解度を高める機能をし、また、高光沢および反射像の明瞭さなどの良好な光学的特性を付与する湿潤剤又はレベリング剤の役割を果たし得る。
【0047】
床仕上剤に使用するのに好ましいポリマーとしては、アクリルポリマー、環状エーテルから誘導されるポリマー、およびビニル置換芳香族化合物から誘導されるポリマーが挙げられる。アクリルポリマーとしては、様々なポリ(アルキルアクリレート)、ポリ(アルキルメタクリレート)、ヒドロキシル置換ポリ(アルキルアクリレート)、およびポリ(アルキルメタクリレート)が挙げられる。床仕上剤に使用される市販のアクリル共重合体としては、例えば、メタクリル酸メチル/アクリル酸ブチル/メタクリル酸(MMA/BA/MAA)共重合体;メタクリル酸メチル/アクリル酸ブチル/アクリル酸(MMA/BA/AA)共重合体等が挙げられる。市販のスチレン−アクリル共重合体としては、スチレン/メタクリル酸メチル/アクリル酸ブチル/メタクリル酸(S/MMA/BA/MMA)共重合体;スチレン/メタクリル酸メチル/アクリル酸ブチル/アクリル酸(S/MMA/BA/AA)共重合体等が挙げられる。環状エーテルから誘導されるポリマーは、通常、環の炭素数が2〜5であり、環上に任意のアルキル置換基を有する。例としては、様々なオキシラン、オキセタン、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、ジオキサン、トリオキサンおよびカプロラクトンが挙げられる。ビニル置換芳香族化合物から誘導されたポリマーとしては、例えば、スチレン、ピリジン、共役ジエンから製造されたもの、およびこれらの共重合体が挙げられる。ポリエステル、ポリアミド、ポリウレタンおよびポリシロキサンもまた床仕上剤に使用される。
【0048】
床仕上剤に使用されるワックス又はワックスの混合物としては、植物、動物、合成および/又は鉱物起源のワックスが挙げられる。代表的なワックスとしては、例えば、カルナバ、カンデリラ、ラノリン、ステアリン、蜜蝋、酸化ポリエチレンワックス、ポリエチレンエマルション、ポリプロピレン、エチレンとアクリルエステルの共重合体、硬化ヤシ油又は大豆油、および、パラフィン又はセレシンなどのミネラルワックスが挙げられる。ワックスは、典型的には、仕上剤組成物の重量を基準にして0〜約15重量%、好ましくは約2〜約10重量%の範囲である。
【0049】
前述の式(I)の本発明の組成物は、コーティングベースまたは床磨き剤への添加剤として使用されるとき、室温又は周囲温度で入れて完全に攪拌することにより、組成物に有効に導入される。振盪機を使用すること又は熱若しくは他の方法の提供することなどの、より入念な混合を使用することができる。本発明の組成物は、コーティングベースまたは床磨き剤への添加剤として使用されるとき、一般に湿潤組成物中に本発明の組成物の乾燥重量で約0.001重量%〜約5重量%添加される。好ましくは約0.01重量%〜約1重量%、より好ましくは約0.1重量%〜約0.5重量%が使用される。
【0050】
式(I)の化合物は、その界面活性特性のため、他の多くの用途に有用である。幾つかの用途の例としては以下が挙げられる。
【0051】
本発明の式(I)で表される化合物は、例えば、湿潤剤、乳化剤、および/又は分散体として消火組成物に使用するのに好適である。それらは、また、水成膜形成性消火剤の成分として、およびエアゾールタイプの消火器の粉末消火剤の添加剤として、およびスプリンクラーの水用の湿潤剤としても有用である。
【0052】
本発明の式(I)の化合物は、農業用組成物に使用するのに好適である。例としては、除草剤(herbicides)、殺真菌剤、殺草剤(weed killers)、殺寄生虫剤、殺虫剤、殺病原菌剤(germicides)、殺菌剤(bactericides)、殺線虫剤、殺微生物剤(microbiocides)、枯葉剤(defolients)、肥料およびホルモン成長調整剤用の湿潤剤、乳化剤および/又は分散剤としての使用が挙げられる。式(I)化合物は、また、葉用の、家畜浸液用の、および家畜の皮膚を濡らすための湿潤剤として;消毒、変色、および洗浄組成物の成分として;および、昆虫忌避組成物にも好適である。式(I)の化合物は、また、紙および合板ベニア製造用の湿潤剤、乳化剤、および/又は分散剤としても有用である。式(I)の化合物は、また、紙、木材、皮革、皮膚、金属、テキスタイル、石、およびタイル用の撥脂剤/撥油剤として、および防腐剤含浸用の浸透剤として使用するのにも好適である。
【0053】
本発明の式(I)によって表される化合物は、また、重合反応、特にフルオロモノマーの重合用の湿潤剤、乳化剤、および/又は分散剤として使用するのにも好適である。これらの化合物は、また、プラスチックおよびゴム産業で、ラテックス安定剤として;展着、はじき、および端縁の盛り上がりを制御するために泡塗布用の添加剤として;発泡剤として、離型剤又は脱型剤として;ポリオレフィン用の内部用帯電防止剤およびブロッキング防止剤として;ホットメルトの押出、展延、均一性、窪み防止のための流動調整剤として;および、可塑剤の移行又は揮散の遅延剤としても好適である。
【0054】
本発明の式(I)の化合物は、更に、石油産業で、油井処理、掘穿泥水用の湿潤剤として;ガソリン、ジェット燃料、溶剤、および炭化水素用の皮膜蒸発抑制剤として;潤滑剤又は浸透時間を改善するための切削油向上剤として;流出油回収剤(oil spill collecting agent)として;および、三次油井回収を改善するための添加剤として使用するのに好適である。
【0055】
本発明の式(I)の化合物は、更に、テキスタイルおよび皮革産業で、湿潤剤、消泡剤、浸透剤又は乳化剤として;又は、テキスタイル、不織布および皮革処理用の潤滑剤として;展延および均一性のための繊維仕上剤用に;染色用の湿潤剤として;不織布のバインダとして;および、漂白剤用の浸透添加剤として好適である。
【0056】
本発明の式(I)の化合物は、更に、鉱業および金属工業に、薬品工業、自動車、ビルメンテナンスおよびクリーニングに、家庭用品、化粧品および個人用品に、並びに写真技術に使用するのに好適である。
【0057】
式(I)、(II)、(III)、(IV)、(VI)および(VII)の化合物は、水溶液および水性エマルションの界面活性剤およびレベリング剤として有用である。それらは、更に、このような媒体の表面特性を変化させるのに有用である。本発明の組成物は、現在市販されている製品と比較して高いフッ素有効性を有する。本発明の組成物は、同レベルの性能を達成するのに、より少ないフッ素を使用して表面特性を変えるという利点を提供する、又は従来技術の組成物と同レベルのフッ素を使用して、より優れた性能を付与する。
【0058】
方法および材料
次の試験方法および材料を本明細書の実施例に使用した。
【0059】
試験方法1
界面活性剤の表面張力測定は、MILLIPOREろ過精製水中で、製造業者のマニュアルに従って使用されるSigma 70張力計(KSV Instruments Inc.(Monroe, CT))又はKruss K11張力計(Kruss USA(Matthews, NC))でWilhelmyプレート法を使用して測定した。MILLIPOREフィルタは、Millipore Corporation(Billerica, MA)から入手可能である。最初、測定される最も高い濃度と等しい濃度でサンプルを調製し、次の一連の希釈を行った:0.1、0.01、0.003、0.001、0.0003、および0.0001重量%。各濃度を5回自動測定し、その機器で平均と標準偏差を求めた。容器は全て洗浄し、まず水道水で、次いで脱イオン水で十分にすすぎ、次いでMILLIPOREろ過水で3回すすいだ。実施例10および11を除く全てのサンプルについて、容器を全てプラズマクリーニングした。実施例10および11は、プラズマクリーニングを行わず、50mLの滅菌遠心分離管を使用してサンプルを調製し、Kruss K11張力計で測定した。
【0060】
試験方法2−湿潤およびレベリング試験
湿潤およびレベリング能力におけるサンプルの性能を試験するため、サンプルを床磨き剤(Rohm & Haas(Spring House, PA)によって供給されるRHOPLEX 3829を使用して最終試験配合物を調製した)に添加し、被覆を剥がした12インチ×12インチ(30.36cm×30.36cm)のビニルタイルの半分に塗布した。脱イオン水で希釈することによって、試験される界面活性剤の1重量%溶液を調製した。製造業者のプロトコルに従って、RHOPLEX 3829配合物100g分を調製した後、1重量%の界面活性剤溶液0.75gを添加して試験床磨き剤を得た。
【0061】
タイルの中心に試験磨き剤3mL分を付け、アプリケータを使用して上から下まで広げ、最後に、アプリケータを使用してタイル全体に大きい「X」を描くことによって、試験床磨き剤をタイルに塗布した。タイルを25〜30分間乾燥させ、合計5層のコーティングを塗布した。各コーティングの後、タイル表面における磨き剤の湿潤およびレベリングを促進する界面活性剤の能力について、タイルを1〜5のスケール(1は最低であり、5は最高である)で評価した。次のスケールに従い、界面活性剤が添加されていない床磨き剤で処理されたタイルの比較に基づいて評価を決定した:
【0062】
タイル評価スケール
1 皮膜の不均一な表面被覆、顕著な縞模様、および表面欠陥
2 目に見える縞模様および表面欠陥、タイルの縁部からの皮膜の後退(withdrawal)
3 多数の表面欠陥および縞模様が明らかであるが、概ね皮膜はタイル表面全体を被覆している
4 小さい表面欠陥又は縞模様
5 目に見える表面欠陥又は縞模様がない
【0063】
材料
ヘキサフルオロイソブチレン(HFIB)およびパーフルオロ−2−メチル−3−オキサヘキサノイルフルオライド(HFPOダイマー)は、本件特許出願人から入手した。パーフルオロエチルブチルアイオダイド(C25(CH24I)およびパーフルオロブチルブチルアイオダイド(C49(CH24I)は、欧州特許第193202号明細書に開示されている手順に従って調製した。
【0064】
SURFONAMINE L−55としても知られる、Huntsman Chemical(The Woodlands,Texas)製のJEFFAMINE XTJ−580は、エチレンオキサイド/ポリプロピレンオキサイド比約2.5/7.0および分子量約550を有するモノアミン末端ポリオキシアルキレンである。XTJ−502としても知られる、Huntsman Chemical製のJEFFAMINE ED−2003は、主に、約39のPEG繰り返し単位に対して約6のプロピレングリコール繰り返し単位を有するポリエチレングリコール主鎖をベースにするポリエーテルジアミンであり、分子量約2000である。XTJ−500としても知られる、Huntsman Chemical製のJEFFAMINE ED−600は、主に、約9のPEG繰り返し単位に対して約3.6のプロピレングリコール繰り返し単位を有するポリエチレングリコール主鎖をベースにするポリエーテルジアミンであり、分子量約600である。XTJ−501としても知られる、Huntsman Chemical製のJEFFAMINE ED−900は、主に、約12.5のPEG繰り返し単位に対して約6のプロピレングリコール繰り返し単位を有するポリエチレングリコール主鎖をベースにするポリエーテルジアミンであり、分子量約900である。
【実施例】
【0065】
実施例1
イソプロピルアミン(5.65g)とジメチルホルムアミド(DMF、5mL)の混合物に、HFIBを幾つかの部分に分けて、散逸しないHFIBの穏やかな還流が観察されるまで約0.5時間にわたって添加した。ドライアイス凝縮器を使用して、25℃で15時間、HFIBを穏やかに還流した。反応混合物を水(100mL)に注ぎ込み、下層を分離し、水(10mL)で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、N−イソプロピルN−(2−トリフルオロメチル−3,3,3−トリフルオロプロピル)アミン(15g)を得た:MS(m/e)223(M+,1.2%),208(100%),72(7.8%);1H NMR(CDCl3)1.06(d,J=6Hz,6H),1.12(m,1H),2.81(m,1H),3.07(m,3H)ppm;19F NMR−67.0(d,J=9Hz)ppm。
【0066】
実施例2
ノニルアミン(7.5g)とアセトニトリル(10mL)の混合物に、HFIBを幾つかの部分に分けて、散逸しないHFIBの穏やかな還流が観察されるまで約0.5時間にわたって添加した。ドライアイス凝縮器を使用して、25℃で15時間、HFIBを穏やかに還流した。反応混合物を水(150mL)に注ぎ込み、下層を分離し、水で洗浄し、N−ノニルN−(2−トリフルオロメチル−3,3,3−トリフルオロプロピル)アミン(13.5g)を得た:1H NMR(CDCl3)0.88(t,J=7Hz,3H),1.28(m,12H),1.47(quintet,J=7Hz,2H),2.62(t,J=7Hz,2H),3.09(m,3H)ppm;19F NMR(CDCl3)−67.0(d,J=8Hz)ppm;MS(m/e)307(M+,2.5%),292(0.2%),278(0.3%),264(0.5%),250(0.8%),236(0.5%),208(2.6%),194(100%),156(5.9%)。
【0067】
実施例3
1,3−ジアミノプロパン(3.5g)とメタノール(4mL)の混合物に、HFIBを幾つかの部分に分けて、散逸しないHFIBの穏やかな還流が観察されるまで約0.5時間にわたって添加した。ドライアイス凝縮器を使用して、20℃で15時間、HFIBを穏やかに還流した。混合物を水(100mL)に注ぎ込み、下層を水で洗浄し、1,3−ジ−(2−トリフルオロメチル−3,3,3−トリフルオロプロピルアミノ)プロパン(13g)を得た:MS(m/e)402(M+,0.5%),251(12%),221(82%),208(23%),194(100%);1H NMR(CDCl3)1.66(quintet,J=6.5Hz,2H),2.72(t,J=6.5Hz,4H),3.08(m,6H)ppm。
【0068】
実施例4
これは、式(II)(式中、k=1である)の化合物の形成を説明する。
【0069】
水素化ナトリウム(30mg)をJeffamine(登録商標)XTJ−580(11g)とテトラヒドロフラン(THF、5mL)の混合物に室温で添加し、得られる混合物を室温で10分間攪拌した。過剰のHFIBを幾つかの部分に分けて、散逸しないHFIBの穏やかな還流が観察されるまで約0.5時間にわたって添加した。ドライアイス凝縮器を使用して、20℃で1時間、HFIBを穏やかに還流した。過剰のHFIBとTHF溶媒を減圧下で留去し、式(II)(式中、kは1である)のヘキサフルオロイソブチルアミン付加生成物を得た:19F NMR(CDCl3)−67.0ppm。
【0070】
実施例5
実施例4のヘキサフルオロイソブチルアミン付加生成物をエチルエーテル(20mL)およびトリエチルアミン(TEA、2.5g)と混合した後、HFPOダイマー(6.7g)を室温でゆっくりと添加した。得られる混合物を室温で一晩攪拌した後、水(50mL)に注ぎ込み、エチルエーテル(100mL)で抽出した。抽出物を水(20mL)、HCl(0.05N、10mL)、水(20mL)で2回、および飽和塩化ナトリウム(20mL)で連続して洗浄した後、減圧下で濃縮および乾燥を行い、式(IV)(式中、kは1である)の油:16.5gを得た。試験方法1を使用して測定した精製水中での表面張力を表1に記載する。実施例5をRHOPLEX 3829床磨き剤に添加し、試験方法2を使用してタイル表面での床磨き剤の濡れおよびレベリングを試験した。結果を表3に記載する。
【0071】
実施例6
Jeffamine XTJ−580(MW550、19g)、C49(CH24I(29g、2当量)、炭酸ナトリウム(7.42g)およびDMF(30mL)の混合物を115℃で15時間、加熱攪拌した。混合物を塩化ナトリウム水溶液(10%、200mL)と混合し、エチルエーテル(2×300mL)で抽出した。合わせた抽出物を塩化ナトリウム水溶液(2×100mL)で洗浄し、減圧で濃縮、乾燥させ、式(VI)(式中、kは1である)の油(37g、収率98%)を得た:19F NMR(CDCl3)−81.5(m,3F),−115.0(m,2F),−124.9(m,2F),−126.5(m,2F)ppm。試験方法1を使用して測定した精製水中での表面張力を表1に記載する。実施例6をRHOPLEX 3829床磨き剤に添加し、試験方法2を使用してタイル表面での床磨き剤の濡れおよびレベリングを試験した。結果を表4に記載する。
【0072】
実施例7
Jeffamine XTJ−580(10g)、C25(CH24I(12g、2当量)、炭酸ナトリウム(4.0g)およびTHF(15mL)の混合物を80℃で75時間加熱した。ろ過により固体を取り除き、エチルエーテル(2×50mL)で洗浄した。合わせたろ液とエーテル洗浄液を、水(2×50mL)および飽和塩化ナトリウム(50mL)で連続して洗浄し、減圧で濃縮、乾燥させ、式(VI)(式中、kは1である)の油(11.0g、収率67%)を得た:19F NMR(CDCl3)−85.9(s,3F),−118.6(t,J=18Hz,2F)ppm。試験方法1を使用して測定した精製水中での表面張力を表1に記載する。
【0073】
実施例8
Jeffamine XTJ−580(10g)、ヨウ化物C25(CH24I(5.6g、1当量)、炭酸ナトリウム(2.2g)およびTHF(15mL)の混合物を35℃で15時間および80℃で8時間加熱した。液体をデカントして別のフラスコに入れ、液体約1gを濃縮して、式(V)のモノアルキル付加生成物を油として得、分析した。液体の残部にTEA(1.8g)を添加し、液体を氷水浴で10℃に冷却した。HFPOダイマー(6.1g)を10〜25℃でゆっくり添加した後、室温で3時間攪拌した。混合物を水(200mL)に注ぎ込み、エチルエーテル(2×150mL)で抽出した。合わせたエーテル抽出物を水(2×50mL)および飽和塩化ナトリウム(20mL)で洗浄し、減圧で濃縮、乾燥させ、式(VII)(式中、kは1である)の油(15.3g、収率81%)を得た。試験方法1を使用して測定した精製水中での表面張力を表1に記載する。
【0074】
実施例9
ED−600(10.3g)、THF(20mL)およびTEA(0.5g)の混合物にHFIBを幾つかの部分に分けて、散逸しないHFIBの穏やかな還流が観察されるまで約0.5時間にわたって添加した。ドライアイス凝縮器を使用して、10〜20℃で3.5時間、HFIBを穏やかに還流した。過剰のHFIBおよび溶媒を減圧下で留去し、油を得た:19F NMR(CDCl3)−67.0ppm。
【0075】
上記の油とTEA(3.06g)の混合物にHFPOダイマー(10.5g)を室温で30分にわたってゆっくり添加した。得られる混合物を室温で一晩攪拌し、水(75mL)に注ぎ込み、エチルエーテル(150mL)で抽出した。エーテル抽出物を5重量%の炭酸水素ナトリウム溶液で洗浄してpH約7にした後、飽和塩化ナトリウム(20mL)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、減圧で濃縮して式(IV)(式中、kは2である)の油(23.8g)を得た。Maldi MS分析は、所望の生成物の形成を示した。試験方法1を使用して測定される、MILLIPOREろ過水中での表面張力を表1に記載するが、調製はBranson 3510ソニケータ(Branson Ultrasonics Corp., Danbury, CT)を使用して水性サンプルを音波処理することにより行った。
【0076】
実施例10
ED−900(10.7g)、THF(20mL)およびTEA(0.5g)の混合物にHFIBを幾つかの部分に分けて、散逸しないHFIBの穏やかな還流が観察されるまで約0.5時間にわたって添加した。ドライアイス凝縮器を使用して、10〜20℃で3.5時間、HFIBを穏やかに還流した。過剰のHFIBおよび溶媒を減圧下で留去し、油を得た:19F NMR(CDCl3)at−67.0ppm。
【0077】
上記の油とTEA(2.22g)の混合物にHFPOダイマー(7.75g)を室温で30分にわたってゆっくり添加した。得られる混合物を室温で一晩攪拌し、水(75mL)に注ぎ込み、エチルエーテル(150mL)で抽出した。得られる混合物は3層に分離した。上層を単離し、5重量%の炭酸水素ナトリウム溶液で洗浄してpH約7にした後、飽和塩化ナトリウム(20mL)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、減圧で濃縮して式(IV)(式中、kは2である)の油(17.2g)を得た。Maldi MS分析は、所望の生成物の形成を示した。試験方法1を使用して測定される、MILLIPOREろ過水中での表面張力を表1に記載するが、調製はBranson 3510ソニケータを使用して水性サンプルを音波処理することにより行った。
【0078】
比較例A
比較例Aは、炭素数2〜16の範囲、主に炭素数6、8および10のエトキシ化パーフルオロアルキル同族体の混合物を含有するフルオロアルキルエトキシレート界面活性剤(本件特許出願人(Wilmington,DE)から市販されている)からなった。表面張力は、試験方法1を使用して、MILLIPOREろ過水中で測定した。結果を表1に記載する。比較例AをRHOPLEX 3829床磨き剤に添加し、試験方法2を使用してタイル表面での床磨き剤の濡れおよびレベリングを試験した。結果を表3に記載する。
【0079】
比較例B
比較例Bは、炭素数が2〜16の範囲の、主に炭素数6、8および10のエトキシ化パーフルオロアルキル同族体の混合物を含有する本件特許出願人(Wilmington, DE)から入手可能な市販の界面活性剤であった。エトキシ化のレベルは、比較例Aにおけるより高い。表面張力は、試験方法1を使用して、MILLIPOREろ過水中で測定した。結果を表1に記載する。比較例BをRHOPLEX 3829床磨き剤に添加し、試験方法2を使用してタイル表面での床磨き剤の濡れおよびレベリングを試験した。結果を表4に記載する。
【0080】
【表1】

【0081】
実施例5〜10と比較例AおよびBの表面張力の比較から、実施例5〜10の方が0.0001および0.0003の非常に低い濃度で概ね低い表面張力を示すことが分かった。濃度が増加するにつれ、実施例5〜10の表面張力は比較例AおよびBと同等になるが、依然として純粋よりずっと低く、有用な界面活性特性を示す。
【0082】
下記の表2は、水の表面張力を22mN/m以下に低下させるのに必要な重量%濃度;並びに、水の表面張力を22mN/m以下に低下させるのに必要なフッ素%に関する実施例5〜10と比較例AおよびBの界面活性剤の性能を比較する。
【0083】
【表2】

【0084】
表2のデータから、実施例5、6および8が、比較例AおよびBより低いフッ素%で22mN/m未満の所望の表面張力を達成したことが分かる。実施例7を例外として、本発明の実施例は全て、比較例Bより低いフッ素%で22mN/m未満の所望の表面張力を達成した。実施例7は24mN/mの最低表面張力を提供し、式(VI)の化合物は界面活性剤として機能するが、あまり好ましくないことを示唆した。
【0085】
【表3】

【0086】
表3のデータから、床磨き剤中で濡れおよびレベリングを向上させることに関して、実施例5の性能の方が比較例Aより優れていることが分かる。
【0087】
比較例C
比較例Cは、エチレングリコールおよび水の中に、炭素数が2〜16の範囲の、主に炭素数6、8および10のエトキシ化パーフルオロアルキル同族体の混合物を含有する本件特許出願人(Wilmington, DE)から入手可能な市販の界面活性剤であった。比較例Cは、比較例Aと同レベルのエトキシ化を有するが、エチレングリコールおよび水の溶媒中にある。試験方法2に従って市販の床磨き剤中での比較例Cの濡れ性およびレベリング性における性能を試験した。結果を表4に記載する。
【0088】
【表4】

【0089】
表4のデータから、実施例6の方が比較例Cより優れた性能を示したことが分かる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
【化1】

(式中、
kは1又は2であり、
Yは、−CH2CH(CF32又は−(CH2nfであり、
Xは、水素、−(CH2nf又は−C(O)[CF(A)]p−B−Rfであり、
Bは、共有結合、−O−および−(CH2m−からなる群から選択される2価の基であり、
mは1〜約10の整数であり、
pは0又は1の整数であるが、但し、pが0のとき、Bは共有結合又は−(CH2m−であり、
nは約3〜約10の整数であり、
Aは−F又は−CF3であり、
各Rfは、独立して、任意に1個以上の酸素で中断されたC1〜C6過フッ素化直鎖又は分岐鎖アルキルであり、
0は、R01であるか、又は、−O−、−OH、−NR−、−N(R)2、および−C(O)NR−からなる群から選択される1個以上の親水基で中断若しくは置換された炭素数約10〜約100の直鎖若しくは分岐鎖アルキルであり、a)親水基、対、炭素原子の比は約1:2〜約1:10であり、b)各炭素原子には1個以下の親水基が結合しており、c)親水基間の共有結合は存在せず、
Rは、水素、又は、C1〜C4直鎖若しくは分岐鎖アルキルであり、
01は、約5〜約50個のエーテル酸素で中断された炭素数約10〜約100の直鎖又は分岐鎖脂肪族基であり、a)エーテル酸素、対、炭素原子の比は約1:2〜約1:3であり、b)各炭素原子には1個以下のエーテル酸素原子が結合しており、c)エーテル酸素原子間の共有結合は存在せず、
但し、
1)Yが−(CH2nfのとき、R0はR01であり、
2)Xが水素のとき、Yは−CH2CH(CF32であり、
3)Xが−(CH2nfであり、Yが−(CH2nfのとき、R0はR01である)
の化合物。
【請求項2】
1)XがHであり、Yが−CH2CH(CF32である、2)Xが−(CH2nfであり、Yが−CH2CH(CF32である、又は3)Xが−C(O)[CF(A)]p−B−Rfであり、YがCH2CH(CF32である、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
1)Xが−(CH2nfであり、Yが−(CH2nfであり、R0がR01である、又は2)Xが−C(O)[CF(A)]p−B−Rfであり、Yが−(CH2nfであり、R0がR01である、請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
fがC37−であり、Bが−O−であり、pが1であり、Aが−CF3である、請求項2又は3に記載の化合物。
【請求項5】
第一級アミンをヘキサフルオロイソブチレンと接触させて、ヘキサフルオロイソブチル基が前記アミンに共有結合した第二級フルオロアルキルアミンを得る工程を含む、第一級アミンのフルオロアルキル化の方法であって、前記接触させる工程が、任意に、アルコール、アルキルエーテル、アルキルエステル、炭化水素、ハロゲン化炭化水素、ニトリル、およびアミドからなる群から選択される溶媒の存在下で行われる、方法。
【請求項6】
前記接触させる工程が、第三級アルキルアミン、アルカリ金属水酸化物、およびアルカリ金属水素化物からなる群から選択される塩基触媒の存在下で行われる、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記第一級アミンが、式R02(NH2q(式中、qは1〜約100の整数であり;R02は、−O−、−OH、−NR−、−N(R)2、および−C(O)NR−からなる群から選択される1個以上の親水基によって中断又は置換された基を含む、炭素数1〜約100の直鎖若しくは分岐鎖アルキル基、又は脂環式基、又はこれらの組み合わせとして定義され;但し、1)前記第一級アミン、qと親水基の合計が、R02中の炭素原子の総数以下であり;2)各炭素原子には1個以下の第一級アミン又は親水基が結合しており、3)親水基間の共有結合は存在しない)のモノアミン又はポリアミンである、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記第一級アミンを含む親水基、対、炭素原子の比が約1:2〜約1:10である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
媒体を式(I):
【化2】

(式中、
kは1又は2であり、
Yは、−CH2CH(CF32又は−(CH2nfであり、
Xは、水素、−(CH2nf又は−C(O)[CF(A)]p−B−Rfであり、
Bは、共有結合、−O−および−(CH2m−からなる群から選択される2価の基であり、
mは1〜約10の整数であり、
pは0又は1の整数であるが、但し、pが0のとき、Bは共有結合又は−(CH2m−であり、
nは約3〜約10の整数であり、
Aは−F又は−CF3であり、
各Rfは、独立して、任意に1個以上の酸素で中断されたC1〜C6過フッ素化直鎖又は分岐鎖アルキルであり、
0は、R01であるか、又は、−O−、−OH、−NR−、−N(R)2、および−C(O)NR−からなる群から選択される1個以上の親水基で中断若しくは置換された炭素数約10〜約100の直鎖若しくは分岐鎖アルキルであり、a)親水基、対、炭素原子の比は約1:2〜約1:10であり、b)各炭素原子には1個以下の親水基が結合しており、c)親水基間の共有結合は存在せず、
Rは、水素、又は、C1〜C4直鎖若しくは分岐鎖アルキルであり、
01は、約5〜約50個のエーテル酸素で中断された炭素数約10〜約100の直鎖又は分岐鎖脂肪族基であり、a)エーテル酸素、対、炭素原子の比は約1:2〜約1:3であり、b)各炭素原子には1個以下のエーテル酸素原子が結合しており、c)エーテル酸素原子間の共有結合は存在せず、
但し、
1)Yが−(CH2nfのとき、R0はR01であり、
2)Xが水素のとき、Yは−CH2CH(CF32であり、
3)Xが−(CH2nfであり、Yが−(CH2nfのとき、R0はR01である)
の組成物と接触させる工程を含む、媒体の表面張力を低下させる方法。
【請求項10】
前記媒体が、コーティング組成物、ラテックス、ポリマー、床仕上げ剤、インク、乳化剤、発泡剤、離型剤、撥水撥油剤、流れ調整剤、皮膜蒸発抑制剤、湿潤剤、浸透剤、クリーナー、研削剤、電気めっき剤、腐食防止剤、エッチング液、半田剤、分散助剤、微生物剤、パルプ剤、すすぎ助剤、艶出剤、パーソナルケア組成物、乾燥剤、帯電防止剤、床磨き剤、又は結合剤である、請求項9に記載の方法。

【公表番号】特表2010−535794(P2010−535794A)
【公表日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−520244(P2010−520244)
【出願日】平成20年8月4日(2008.8.4)
【国際出願番号】PCT/US2008/072088
【国際公開番号】WO2009/020910
【国際公開日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】