説明

フルオロベンズアミド誘導体の新規結晶

(−)−N−{2−[(R)−3−(6,7−ジメトキシ−1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリン−2−カルボニル)ピペリジノ]エチル}−4−フルオロベンズアミド 一リン酸塩の新規な結晶の提供。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、(−)−N−{2−[(R)−3−(6,7−ジメトキシ−1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリン−2−カルボニル)ピペリジノ]エチル}−4−フルオロベンズアミド 一リン酸塩(以下、「化合物A」という。)の新規結晶及びその製造法に関するものである。
【背景技術】
化合物Aは、I電流を阻害する作用を有し、選択的に心拍数を低下させ、心筋の酸素消費量を減少させる、強力で特異的な活性を示すことより、狭心症や心筋梗塞等の虚血性心疾患、うっ血性心不全及び不整脈等の循環器系疾患の予防及び/又は治療剤として有用であることが知られている(特許文献1)。
該文献の実施例49には、化合物Aが具体的に開示されており、その結晶が197−199℃の融点を示すことが記載されている。しかし、化合物Aが結晶多形を示すことについては、開示も示唆もない。
一方、結晶多形が存在する化合物は、結晶形によって種々の性質が相違するため、たとえ同一化合物であっても全く異なる作用効果を示すことがある。特に医薬品においては、作用効果の異なる化合物を同一効力と予想し使用した場合、予測と異なる作用効果を生じ、不測の事態を招くことが考えられるため、常に一定の作用効果が期待できる同一品質の化合物を提供することが要請されている。従って、結晶多形が存在する化合物を医薬品として使用する場合、医薬品として要求される均一な品質及び一定の作用効果を確保するためには、その化合物のある単一の結晶を常に一定して提供することが必要である。
上記のような状況下、医薬品の原薬供給の観点から、均一な品質及び一定の作用効果を確保でき、工業的生産において安定に供給できる化合物Aの結晶及びその製造法の確立が切望されている。
【特許文献1】国際公開第WO00/75133号パンフレット
【発明の開示】
本発明者等は、化合物Aの結晶の提供に関し鋭意研究した結果、意外にもその詳細な製造条件の違いにより生成する結晶が変動すること、即ち、化合物Aに結晶多形が存在することを見出した。
その中でも特に、図1に示される粉末X線回折スペクトルを有する結晶(以下、この結晶を「α型結晶」という。)が、特に吸湿特性に優れるため、原薬の取り扱い上、及び製剤化上有利であり、さらに、工業的生産上、安定供給に優れることを見出した。
また、化合物Aのα型結晶と異なる、図2に示される粉末X線回折スペクトルを有する結晶(以下、この結晶を「β型結晶」という。)の存在を見出した。
即ち、本発明はこれらの知見に基づいて完成されたものであり、本発明によれば、Cu−Kα線を使用して得られる粉末X線回折スペクルにおいて格子間隔19.36、6.23、4.73及び3.81Å付近に主ピークを有することを特徴とする、化合物Aの結晶;好ましくは、Cu−Kα線を使用して得られる粉末X線回折スペクトルにおいて格子間隔及び相対強度が表1で示されることを特徴とする、化合物Aの結晶;及び、DSC曲線において、吸熱ピークトップ温度が206−207℃付近にあることを特徴とする、化合物Aの結晶が提供される。

さらに、本発明によれば、Cu−Kα線を使用して得られる粉末X線回折スペクトルにおいて格子間隔18.40、6.52、5.22、4.38及び4.09Å付近に主ピークを有することを特徴とする、化合物Aの結晶;好ましくは、Cu−Kα線を使用して得られる粉末X線回折スペクトルにおいて格子間隔及び相対強度が表2で示されることを特徴とする、化合物Aの結晶;及び、DSC曲線において、吸熱ピークトップ温度が176−177℃付近にあることを特徴とする、化合物Aの結晶が提供される。

なお、粉末X線回折スペクトルはデータの性質上、結晶の同一性認定においては、結晶格子間隔や全体的なパターンが重要であり、相対強度は結晶成長の方向、粒子の大きさ、測定条件によって多少変動しうるものであるから、厳密に解されるべきではない。また、本発明は純粋な化合物Aのα型結晶、β型結晶に関するものであるが、これらの純粋なα型結晶、β型結晶と本質的に同一視できる混合物もまた本発明に包含される。
以下、本発明を詳細に説明する。
各種スペクトルから得られる数値は、その結晶成長の方向、粒子の大きさ、測定条件等によって多少の誤差が生じる場合がある。従って、本明細書中、粉末X線回折スペクトルにおける格子間隔の値に用いられる「付近」の語は、おおよそその格子間隔の値であることを意味し、好ましくはその値の前後1.0Åの範囲にあればよいことを意味し、さらに好ましくはその値の前後0.3Åの範囲にあればよいことを意味する。また、DSC曲線における吸熱ピークトップ温度の値に用いられる「付近」の語は、おおよそその吸熱ピークの温度の値であることを意味し、好ましくはその値の前後2℃の範囲にあればよいことを意味し、さらに好ましくはその値の前後1℃の範囲にあればよいことを意味する。
本発明の化合物Aのα型結晶は、対応するフリー体をリン酸を用いて造塩する際に、エタノール(EtOH)溶媒中若しくは少量の水を加えたEtOH溶媒中、30℃程度の温度で行うことにより製造することができる。
また、本発明の化合物Aのβ型結晶は、対応するフリー体をリン酸を用いて造塩する際に、EtOH溶媒中若しくは少量の水を加えたEtOH溶媒中、5℃程度の冷却下で行うことにより製造することができる。
さらに、本発明の化合物Aのα型結晶は、得られた結晶をEtOH溶媒中若しくは水を加えたEtOH溶媒中、再結晶を行うことにより製造することができる。再結晶を行う際には、種晶を接種して行うこともできるが、急激に結晶化が進むのを防ぐため、接種温度は好ましくは室温以上、より好ましくは30℃以上、特に好ましくは50℃以上である。
また、本発明の化合物Aのα型結晶は、α型結晶とβ型結晶の混合物、又はβ型結晶を、EtOH溶媒若しくは水を加えたEtOH溶媒に懸濁させ、40℃程度で攪拌することによっても得ることができる。
本発明にかかる化合物Aの2種類の新規な結晶の吸湿特性を図5及び図6に示す。
図5及び図6に示すように、本発明の化合物Aのα型結晶は、β型結晶に比べて吸湿特性に優れるため、原薬の取り扱い上、及び製剤化上有利である。また、上記製造法により、化合物Aのα型結晶を単一の結晶形として製造すれば、医薬品として要求される一定の品質を確保することができる。なお、本発明の化合物Aのα型結晶及びβ型結晶は、形態学的に純粋である。
【発明を実施するための最良の形態】
以下に、参考例及び実施例を挙げて、本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
なお、TGA−DSC熱分析は以下のように行った。
<TGA−DSC熱分析>
試料5mgを試料容器に充填したあと、一定の加熱速度(10℃/分)に従って加熱炉部を加熱し、この温度変化の過程で試料に発生する熱量変化(DSC)及び熱重量変化(TGA)を連続的に測定し記録した。なお、データ処理を含む装置の取り扱いは、各装置で指示された方法及び手順に従った(使用機器:DSC2910及びHi−Res TGA2950)。
また、化合物純度は高速液体クロマトグラフィー(以下、「HPLC」)を用いて測定した。
なお、NMRは(CHSiを内部標準とし、特に記載がない場合にはDMSO(ジメチルスルホキシド)−dを測定溶媒とするH−NMRにおけるピーク値(ppm)を示す。
参考例1−a
2−(4−フルオロフェニル)−4,5−ジヒドロオキサゾール120.0gにトルエン1200ml、(R)−ピペリジン−3−カルボン酸エチルエステル137.07gを加えた。トルエン600mlで(R)−ピペリジン−3−カルボン酸エチルエステルを洗い込んだ。次いでp−トルエンスルホン酸一水和物145.1gを加え、トルエン600mlで洗い込んだ。次いで加熱し、溶媒を常圧蒸留して600mlを留去した。その後、還流下にて27時間攪拌した。反応液を冷却後、酢酸エチル(EtOAc)960ml及び4%(w/v)NaHCO水溶液(aq)を960ml加えた。反応液を静置して内温35℃付近で分液した。有機層を4%(w/v)NaHCO aq960mlで2回洗浄した。有機層を減圧濃縮し、82.8%の純度を有する(R)−1−{2−[(4−フルオロベンゾイル)アミノ]エチル}ピペリジン−3−カルボン酸エチルエステルを得た。
NMR:δ 1.16(3H,t),1.35−1.80(4H,m),2.05−2.10(1H,m),2.20−2.26(1H,m),2.45−2.51(3H,m),2.65−2.70(1H,m),2.85−2.90(1H,m),3.30−3.38(2H,m),4.05(2H,q),7.25−7.33(2H,m),7.85−7.95(2H,m),8.35−8.40(1H,m).
FAB−MS m/z:323(M+1).
参考例1−b
参考例1−aの化合物230gにEtOH690mlを加え、次いで水345mlを加えた。冷却後、NaOH aq(NaOH42.8g/水480ml)を加え、25℃以下で2時間攪拌した。冷却下、反応液に濃塩酸を加え、pH3.0とした。この液を減圧濃縮し、この残さにトルエン1000mlを仕込み、減圧濃縮し86.3%の純度を有する(R)−1−{2−[(4−フルオロベンゾイル)アミノ]エチル}ピペリジン−3−カルボン酸を得た。
NMR(90℃):δ 1.46−1.60(1H,m),1.79−2.05(3H,m),2.75−3.60(7H,m),3.68(2H,q),7.20−7.27(2H,m),7.95−8.03(2H,m),8.74(1H,brs).
FAB−MS m/z:295(M+1).
参考例1−c
参考例1−bの化合物206.4gにN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)810ml、6,7−ジメトキシ−1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリン 一塩酸塩120.8gを加え、攪拌し、冷却した。次いでトリエチルアミン53.22gを12℃以下で加え、DMF217mlを加えた。次いで1H−1,2,3−ベンゾトリアゾール−1−オール(HOBt)21.32gを5℃以下で加え、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド 塩酸塩(WSC・HCl)121.0gを5℃以下で加えた。反応液を0〜4℃で15.5時間攪拌した。反応液に水340ml、EtOAc2000ml、8%(w/v)NaOH aq550mlを加え、分液した。水層にEtOAc1000mlを加え、分液した。次いで、有機層を混合し、8%(w/v)NaOH aq700ml、水300mlで2回洗浄した。有機層を水900mlで洗浄した後、減圧濃縮し、83.9%の純度を有する(−)−N−{2−[(R)−3−(6,7−ジメトキシ−1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリン−2−カルボニル)ピペリジノ]エチル}−4−フルオロベンズアミドを得た。
NMR(CDCl):δ 1.54−1.68(2H,m),1.75−1.87(2H,m),2.05−2.95(9H,m),3.45−3.63(2H,m),3.70(1H,t),3.75−3.82(1H,m),3.84(3H,s),3.85(3H,s),4.59(1H,br),4.62(1H,br),6.55−6.65(2H,m),6.95(1H,br),7.11(2H,t),7.77−7.88(2H,m).
FAB−MS m/z:470(M+1).
実施例1(化合物Aのα型結晶の製造)
参考例1と同様にして得た化合物11.94gにEtOHを加えて溶解し、全量を97.8gとした。この溶液32.6gにEtOH5ml、水0.47gを加え、さらに85%リン酸0.86gを加え、EtOH5mlで洗いこんだ。晶析液を30℃で一晩攪拌した。結晶を濾取し、EtOHで結晶を洗浄した後、減圧乾燥することにより、95.8%の純度を有する(−)−N−{2−[(R)−3−(6,7−ジメトキシ−1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリン−2−カルボニル)ピペリジノ]エチル}−4−フルオロベンズアミド 一リン酸塩(α型結晶)3.38gを得た。
NMR:δ 1.30−1.47(1H,m),1.60−1.85(3H,m),2.30−2.85(6H,m),3.00−3.20(3H,m),3.40−3.56(2H,m),3.60−3.78(8H,m),4.50(1H,q),4.64(1H,q),6.73(1H,s),6,78,6.86(併せて1H,s),7.23−7.33(2H,m),7.90−8.00(2H,m),8.65−8.77(1H,m).
FAB−MS m/z:470(M+1).
実施例2(化合物Aのβ型結晶の製造)
参考例1と同様にして得た化合物11.94gにEtOHを加えて溶解し、全量を97.8gとした。この溶液32.6gにEtOH5ml、水0.47gを加え、更に85%リン酸0.86gを加え、EtOH5mlで洗いこんだ。晶析液を5℃で一晩攪拌した。結晶を濾取し、EtOHで結晶を洗浄した後、減圧乾燥することにより、96.4%の純度を有する(−)−N−{2−[(R)−3−(6,7−ジメトキシ−1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリン−2−カルボニル)ピペリジノ]エチル}−4−フルオロベンズアミド 一リン酸塩(β型結晶)3.27gを得た。
NMR:δ 1.30−1.48(1H,m),1.60−1.85(3H,m),2.26−2.85(6H,m),3.00−3.20(3H,m),3.40−3.55(2H,m),3.60−3.78(8H,m),4.50(1H,q),4.63(1H,q),6.73(1H,s),6,78,6.86(併せて1H,s),7.22−7.33(2H,m),7.88−8.00(2H,m),8.64−8.77(1H,m).
FAB−MS m/z:470(M+1).
融点:195.5−196.3℃
実施例2の化合物の粉末X線回折データを示すチャートを図2に、TGA−DSC熱分析データを示すチャートを図4に、吸湿特性を示すチャートを図6に示す。
参考例2−a
水110l、炭酸カリウム36.8kgの溶液に、2−ブロモエチルアミン 一臭化水素酸塩27.3kgを−5℃以下で攪拌しながら加えた。反応液にEtOAc100lを加え、次いで4−フルオロベンゾイルクロリド21.1kgを5℃以下で攪拌しながら加えた。
これにEtOAc10lを加えた。この反応液をHPLC測定し、85.2%の純度を有するN−(2−ブロモエチル)−4−フルオロベンズアミドの生成を確認した。
参考例2−b
参考例2−aの反応液を加熱し、45〜52℃で4時間攪拌した。反応液にトルエン40lを加え、静置して内温35℃付近で分液した。有機層を水80lで洗浄した。これにより、98%の純度を有する2−(4−フルオロフェニル)−4,5−ジヒドロオキサゾールのトルエン−EtOAc溶液を得た。
参考例2−c
参考例2−bで得られたトルエン−EtOAc溶液にトルエン440l、(R)−ピペリジン−3−カルボン酸エチルエステル25.1kg、p−トルエンスルホン酸 一水和物26.6kgを加え、加熱し、溶媒を常圧蒸留して260l留去した。その後、還流下にて32時間攪拌した。反応液を冷却後、EtOAc260l及び4%(w/v)NaHCO aqを180l加えた。反応液を静置して内温30℃付近で分液した。有機層を4%(w/v)NaHCO aq180lで2回洗浄した。有機層を減圧濃縮し、86.7%の純度を有する(R)−1−{2−[(4−フルオロベンゾイル)アミノ]エチル}ピペリジン−3−カルボン酸エチルエステルを得た。
参考例2−d
参考例2−cで得られた化合物にEtOH260lを加え、次いで水64lを加えた。冷却後、NaOH aq(NaOH8.0kg/水90l)を加え、25℃以下で2時間攪拌した。冷却下、反応液に濃塩酸を加え、pH3.06とした。この液を減圧濃縮し、この残さにトルエン190lを仕込み、減圧濃縮した。この残さにトルエン190lを仕込み、減圧濃縮した。この残さにトルエン190lを仕込み、減圧濃縮し、90.4%の純度を有する(R)−1−{2−[(4−フルオロベンゾイル)アミノ]エチル}ピペリジン−3−カルボン酸を得た。
参考例2−e
参考例2−dで得られた化合物にDMF200l、6,7−ジメトキシ−1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリン 一塩酸塩23.0kgを加え、攪拌し、冷却した。次いでトリエチルアミン10.1kgを10℃以下で加え、HOBt4.0kgを5℃以下で加えた。次いで、WSC・HCl23.0kgを5℃以下で加え、−4〜4℃で一晩攪拌した。反応液に水64l、EtOAc380l、8%(w/v)NaOH aq105lを加え、分液した。水層にEtOAc190lを加え、分液した。次いで、有機層を混合し、8%(w/v)NaOH aq130l、水57lで2回洗浄した。有機層を水170lで洗浄した後、減圧濃縮し、79%の純度を有する(−)−N−{2−[(R)−3−(6,7−ジメトキシ−1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリン−2−カルボニル)ピペリジノ]エチル}−4−フルオロベンズアミドを得た。これにEtOH140lを加え、溶解した。
実施例3(化合物Aのα型結晶の製造)
参考例2−eで得られたEtOH溶液にEtOH330lを加えた。次いで、85%リン酸11.5kg、水52lを加え、加熱し、この溶液を濾過した。この濾液を攪拌下加熱した後、冷却し、種晶として実施例1と同様の結晶形を有する化合物を55℃付近で加え、更に冷却し、0〜5℃付近で攪拌した。析出した結晶を濾取し、EtOHで結晶を洗浄した後、減圧乾燥することにより、98.9%の純度を有する(−)−N−{2−[(R)−3−(6,7−ジメトキシ−1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリン−2−カルボニル)ピペリジノ]エチル}−4−フルオロベンズアミド 一リン酸塩(α型結晶)36.51kgを得た。
NMR:δ 1.30−1.50(1H,m),1.60−1.85(3H,m),2.30−2.85(6H,m),3.05−3.20(3H,m),3.40−3.57(2H,m),3.60−3.77(8H,m),4.50(1H,q),4.63(1H,q),6.72(1H,s),6,77,6.86(併せて1H,s),7.27(2H,t),7.88−8.00(2H,m),8.70(1H,br).
FAB−MS m/z:470(M+1).
融点:203.8−204.7℃
実施例3の化合物の粉末X線回折データを示すチャートを図1に、TGA−DSC熱分析データを示すチャートを図3に、吸湿特性を示すチャートを図5に、元素分析値を表3に示す。

実施例4(化合物Aのα型結晶の製造)
実施例3の化合物80.0gにEtOH800ml、水91mlを加え、加熱して溶解し、この溶液を濾過した。この濾液を攪拌下加熱した後、冷却し、種晶として実施例1と同様の結晶形を有する化合物を60℃付近で加え、更に20℃付近まで冷却し、攪拌晶析した。析出した結晶を濾取し、EtOHで結晶を洗浄した後、減圧乾燥することにより、99.7%の純度を有する(−)−N−{2−[(R)−3−(6,7−ジメトキシ−1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリン−2−カルボニル)ピペリジノ]エチル}−4−フルオロベンズアミド 一リン酸塩(α型結晶)67.08gを得た。
【産業上の利用可能性】
本発明によれば、I電流を阻害する作用を有し、選択的に心拍数を低下させ、心筋の酸素消費量を減少させる、強力で特異的な活性を示すことより、狭心症や心筋梗塞等の虚血性心疾患、うっ血性心不全及び不整脈等の循環器系疾患の予防及び/又は治療剤として有用である化合物Aのα型結晶及びβ型結晶が提供される。これらの結晶は、純粋な化合物Aのα型結晶、β型結晶、乃至これらの純粋なα型結晶、β型結晶と本質的に同一視できる混合物であるため、本発明により、医薬品として要求される均一な品質及び一定の作用効果を確保できる単一の結晶を常に一定して提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
図1: 化合物Aのα型結晶(実施例3)の粉末X線回折データを示すチャートであり、縦軸はX線の強度を、横軸は回折角(2θ)を示す。
図2: 化合物Aのβ型結晶(実施例2)の粉末X線回折データを示すチャートであり、縦軸はX線の強度を、横軸は回折角(2θ)を示す。
図3: 化合物Aのα型結晶(実施例3)のTGA−DSC熱分析データを示すチャートである。
図4: 化合物Aのβ型結晶(実施例2)のTGA−DSC熱分析データを示すチャートである。
図5: 化合物Aのα型結晶(実施例3)の吸湿特性を示すチャートである。
図6: 化合物Aのβ型結晶(実施例2)の吸湿特性を示すチャートである。
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
Cu−Kα線を使用して得られる粉末X線回折スペクトルにおいて格子間隔19.36、6.23、4.73及び3.81Å付近に主ピークを有することを特徴とする、(−)−N−{2−[(R)−3−(6,7−ジメトキシ−1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリン−2−カルボニル)ピペリジノ]エチル}−4−フルオロベンズアミド 一リン酸塩の結晶。
【請求項2】
Cu−Kα線を使用して得られる粉末X線回折スペクトルにおいて格子間隔及び相対強度が表4で示されることを特徴とする、請求項の範囲1記載の結晶。

【請求項3】
DSC曲線において、吸熱ピークトップ温度が206−207℃付近にあることを特徴とする、(−)−N−{2−[(R)−3−(6,7−ジメトキシ−1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリン−2−カルボニル)ピペリジノ]エチル}−4−フルオロベンズアミド 一リン酸塩の結晶。
【請求項4】
Cu−Kα線を使用して得られる粉末X線回折スペクトルにおいて格子間隔18.40、6.52、5.22、4.38及び4.09Å付近に主ピークを有することを特徴とする、(−)−N−{2−[(R)−3−(6,7−ジメトキシ−1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリン−2−カルボニル)ピペリジノ]エチル}−4−フルオロベンズアミド 一リン酸塩の結晶。
【請求項5】
Cu−Kα線を使用して得られる粉末X線回折スペクトルにおいて格子間隔及び相対強度が表5で示されることを特徴とする、請求の範囲4記載の結晶。

【請求項6】
DSC曲線において、吸熱ピークトップ温度が176−177℃付近にあることを特徴とする、(−)−N−{2−[(R)−3−(6,7−ジメトキシ−1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリン−2−カルボニル)ピペリジノ]エチル}−4−フルオロベンズアミド 一リン酸塩の結晶。

【国際公開番号】WO2004/089933
【国際公開日】平成16年10月21日(2004.10.21)
【発行日】平成18年7月6日(2006.7.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−505254(P2005−505254)
【国際出願番号】PCT/JP2004/004794
【国際出願日】平成16年4月1日(2004.4.1)
【出願人】(000006677)アステラス製薬株式会社 (274)
【Fターム(参考)】